(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】間仕切壁
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20230704BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
E04B2/74 551A
E04B1/82 W
(21)【出願番号】P 2019106412
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将平
(72)【発明者】
【氏名】牛山 歩
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023510(JP,A)
【文献】特開2003-064804(JP,A)
【文献】特開2003-064813(JP,A)
【文献】実開昭63-086215(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74,2/82
E04B 1/82
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する第一居室と第二居室を隔てる間仕切壁であって、
前記間仕切壁は、柱と、該柱の周囲において
、該柱との間に隙間を置き、かつ、相互に隙間を置いて配設されている第一スタッド及び第二スタッドと、第一居室用壁パネル及び第二居室用壁パネルと、を有し、
前記柱は、前記第一スタッドよりも第一居室側に張り出し、かつ、前記第二スタッドよりも第二居室側に張り出しており、
前記柱と該柱の
側方にある前記第一スタッドに亘
って、該柱との間に隙間を置いて該第一スタッドの第一居室側に配設されている、第一防音下地材が該第一スタッド
の第一居室側の側面に固定され、該第一防音下地材
の第一居室側の側面に前記第一居室用壁パネルが取り付けら
れ、
前記柱と該柱の
側方にある前記第二スタッドに亘
って、該柱との間に隙間を置いて第二居室側に配設されている、第二防音下地材が該第二スタッド
の第二居室側の側面に固定され、該第二防音下地材
の第二居室側の側面に前記第二居室用壁パネルが取り付けら
れており、
前記第一居室用壁パネルは、前記柱との間に隙間を置いて第一居室側に配設されている、柱周りの第一居室用壁パネルと、該柱周りの第一居室用壁パネルの側方にあって第一居室側に配設されている、一般部の第一居室用壁パネルとを備え、該柱周りの第一居室用壁パネルが該一般部の第一居室用壁パネルよりも第一居室側に張り出し、
前記第二居室用壁パネルは、前記柱との間に隙間を置いて第二居室側に配設されている、柱周りの第二居室用壁パネルと、該柱周りの第二居室用壁パネルの側方にあって第二居室側に配設されている、一般部の第二居室用壁パネルとを備え、該柱周りの第二居室用壁パネルが該一般部の第二居室用壁パネルよりも第二居室側に張り出していることを特徴とする、間仕切壁。
【請求項2】
前記柱の
側方である左右位置には、前記第一スタッドと前記第二スタッドがそれぞれ二つ設けられており、
前記柱を跨いで左右の前記第一スタッドに亘り断面形状がハット型の前記第一防音下地材が配設されており、
前記柱を跨いで左右の前記第二スタッドに亘り断面形状がハット型の前記第二防音下地材が配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の間仕切壁。
【請求項3】
隣接する第一居室と第二居室を隔てるとともに、該第一居室と該第二居室の側方にある外壁に接続される間仕切壁であって、
前記間仕切壁は、柱と、該柱の周囲において
、該柱との間に隙間を置き、かつ、相互に隙間を置いて配設されている第一スタッド及び第二スタッドと、第一居室用壁パネル及び第二居室用壁パネルと、を有し、
前記柱は、前記第一スタッドよりも第一居室側に張り出し、かつ、前記第二スタッドよりも第二居室側に張り出しており、
前記柱と
、該柱の
左右の一方にある前記第一スタッド
と、該柱の左右の他方の前記外壁の内部にある前記第一スタッドに亘
って、該柱との間に隙間を置いて第一居室側に配設されている、第一防音下地材がそれぞれの該第一スタッド
の第一居室側の側面に固定され、該第一防音下地材
の第一居室側の側面に前記第一居室用壁パネルが取り付けら
れ、
前記柱と
、該柱の
左右の一方にある前記第二スタッド
と、該柱の左右の他方の前記外壁の内部にある前記第二スタッドに亘
って、該柱との間に隙間を置いて第二居室側に配設されている、第二防音下地材がそれぞれの該第二スタッド
の第二居室側の側面に固定され、該第二防音下地材
の第二居室側の側面に前記第二居室用壁パネルが取り付けら
れており、
前記第一居室用壁パネルは、前記柱との間に隙間を置いて第一居室側に配設されている、柱周りの第一居室用壁パネルと、該柱周りの第一居室用壁パネルの左右の一方にあって第一居室側に配設されている、一般部の第一居室用壁パネルとを備え、該柱周りの第一居室用壁パネルが該一般部の第一居室用壁パネルよりも第一居室側に張り出し、
前記第二居室用壁パネルは、前記柱との間に隙間を置いて第二居室側に配設されている、柱周りの第二居室用壁パネルと、該柱周りの第二居室用壁パネルの左右の一方にあって第二居室側に配設されている、一般部の第二居室用壁パネルとを備え、該柱周りの第二居室用壁パネルが該一般部の第二居室用壁パネルよりも第二居室側に張り出していることを特徴とする、間仕切壁。
【請求項4】
前記第一防音下地材と前記第二防音下地材が鋼板により形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の間仕切壁。
【請求項5】
前記柱の周囲に吸音材が配設されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の間仕切壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切壁に関する。
【背景技術】
【0002】
建物においては、内部空間を二つに仕切る間仕切壁が一般に適用されており、例えば集合住宅(長屋や共同住宅)においては、間仕切壁に含まれる界壁により隣接する居室が隔てられている。間仕切壁には遮音性が要求されるものがあるが、その中でも界壁には高い遮音性能が要求されている。
【0003】
間仕切壁においては、石膏ボード等による内装材の室内面がフラットな状態で柱やスタッド(間柱)に対してビス等により固定される壁構造が一般的であり、柱を跨ぐようにして一枚の平坦な内装材が配設され、この内装材は、柱と、柱の左右側方にある複数のスタッドに対して固定される。このような一般的な構造の間仕切壁に対して、柱のサイズ(断面寸法)が大きくなった場合でも柱の位置を固定しながら室内空間を可及的に広くしたい等の要請から、例えば、柱の一部が室内側に張り出した、柱型を有する間仕切壁が適用される場合がある。
【0004】
ここで、従来の柱型を有する間仕切壁に含まれる界壁の一例を
図1及び
図2に示す。
図1等に示す界壁100は、第一居室と第二居室を隔てた柱型を有する界壁である。界壁100は、角形鋼管等により形成されている柱10と、柱10の長手方向に間隔を置いて配設され、柱10に対して溶接等により接続されている断面形状がT字状の複数の縦下地ピース15と、縦下地ピース15に対してビス等の固定手段19により固定されている第一スタッド20A及び第二スタッド20Bとを有する。第一スタッド20Aと第二スタッド20Bは、相互に当接してサウンドブリッジを形成しないように、隙間を有して配設されている。第一スタッド20A及び第二スタッド20Bはそれぞれ、界壁100の幅方向であるY方向に間隔を置いて複数配設されており、複数の第一スタッド20Aには界壁の一般部の第一居室用壁パネル30A(内装材)が固定手段19により固定され、複数の第二スタッド20Bには界壁の一般部の第二居室用壁パネル30Bが固定手段19により固定されている。
【0005】
界壁100が柱型を有していることから、柱10の左右にある第一居室用壁パネル30Aには、直交するようにして短尺な第一居室用壁パネル32Aが配設され、第一居室用壁パネル30Aとともに共通の縦桟17に対して固定手段19により固定されている。さらに、左右の第一居室用壁パネル32Aに跨るようにして、第一居室用壁パネル34Aが配設され、第一居室用壁パネル32Aとともに共通の縦桟17に対して固定手段19により固定されている。各第一居室用壁パネル30A,32A,34Aは、耐火性能を担保するべく、例えば二枚の石膏ボード等により形成されている。このような第一居室側の構造と同様の構造が、第二居室側においても適用されている。柱10と、その周囲の第一居室用壁パネル32A,34Aや第二居室用壁パネル32B,34Bの間には、隙間Gが形成されている。さらに、界壁100の一般部を形成する第一居室用壁パネル30Aと第二居室用壁パネル30Bの間には、吸音材50が充填されている。
【0006】
図1は縦下地ピース15が存在する横断面図であり、これに対して、
図2は縦下地ピース15が存在しない(上下の縦下地ピース15に挟まれた位置における)横断面図である。
【0007】
図1に戻り、柱型を有する界壁100においては、図示するように、複数の第一居室用壁パネル30A,32A,34A同士の当接する界面が存在することから、第一居室において発生した音は、これらの界面を通してX1方向やX1'方向に透過して柱10の周囲の隙間Gに入り込み易くなる。このように柱10の周囲の隙間Gに入り込んだ音は、柱10の左側に示すように、サウンドブリッジを形成する縦下地ピース15を介してX2方向に伝達され、第二居室用壁パネル30B,32B,34B同士の当接する界面をX3方向やX3'方向に透過して第二居室に漏れ易い。
【0008】
一方、
図2に示すように、サウンドブリッジとなる縦下地ピース15が存在しない断面においては、柱10の周囲の隙間Gに入り込んだ音が、柱10の周囲の隙間Gを第二居室へX5方向に透過し、第二居室用壁パネル30B,32B,34B同士の当接する界面をX3方向やX3'方向に透過して第二居室に漏れ易くなる。尚、
図1及び
図2では、第一居室の音が第二居室に漏れることを説明しているが、同様に第二居室の音が第一居室にも漏れることになる。
【0009】
このように、柱型を有する界壁100においては、サウンドブリッジとなる縦下地ピース15が存在する断面においても、また、サウンドブリッジとなる縦下地ピース15が存在しない断面においても、一方の居室から柱10の周囲の隙間Gに入り込んだ音が隙間Gを透過して他方の居室に漏れ、遮音性能が低下し得ることいった課題を有している。
【0010】
ここで、隣り合う第一空間および第二空間を仕切る仕切り線に沿って配置される基礎部材と、基礎部材の一方面側および他方面側にそれぞれ固定される面部材とを備える、乾式壁(界壁や間仕切壁)が提案されている。より具体的には、基礎部材は、第一空間側において、弱軸配置構造により仕切り線に沿って間隔を置いて整列する複数の第一のスタッドと、第二空間側において、弱軸配置構造により隣接する第一のスタッドと表裏方向に所定の隙間を有して重なるように、仕切り線に沿って間隔を置いて整列する複数の第二のスタッドとを含んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載される乾式壁によれば、壁の厚みを増大させることなく、遮音性能と壁の強度とを両立することができる。しかしながら、上記するように、柱型を有する間仕切壁において、一方の居室の音が居室用壁パネル同士の当接面から柱の周囲の隙間に入り込み、サウンドブリッジを介した音の透過や隙間を介した音の透過により、他方の居室に音が漏れることを解消する手段を開示するものではない。
【0013】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、柱型を有する間仕切壁において、一方の居室の音が居室用壁パネル同士の当接面から柱の周囲の隙間に入り込み、サウンドブリッジを介した音の透過や隙間を介した音の透過により、他方の居室に音が漏れることを解消することのできる間仕切壁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明による間仕切壁の一態様は、
隣接する第一居室と第二居室を隔てる間仕切壁であって、
前記間仕切壁は、柱と、該柱の周囲において相互に隙間を置いて配設されている第一スタッド及び第二スタッドと、第一居室用壁パネル及び第二居室用壁パネルと、を有し、
前記柱の一部は、前記第一居室と前記第二居室の双方の室内側に張り出しており、
前記柱と該柱の周囲にある前記第一スタッドに亘り、第一防音下地材が配設されて該第一スタッドに固定され、該第一防音下地材に前記第一居室用壁パネルが取り付けらており、
前記柱と該柱の周囲にある前記第二スタッドに亘り、第二防音下地材が配設されて該第二スタッドに固定され、該第二防音下地材に前記第二居室用壁パネルが取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、柱と柱の周囲にあるスタッドに亘り、防音下地材が配設されてスタッドに固定されるとともに、防音下地材に居室用壁パネル(内装材)が取り付けられていることにより、複数の居室用壁パネル同士の界面からの音の漏れを防音下地材により遮蔽することができる。より具体的には、例えば、一方の居室にて発生した音が複数の居室用壁パネル同士の界面を介して柱の周囲の隙間へ透過する途中位置において、防音下地材が存在することにより、界面における音の透過を防音下地材により遮音することができる。このように、柱の周囲の隙間への音の透過が遮音されていることから、音が柱の周囲の隙間を透過して他方の居室に漏れることが解消される。また、仮に柱の周囲の隙間へ音が透過した場合でも、他方の居室側の防音下地材が他方の居室への音の漏れを遮断することにより、同様に他方の居室に音が漏れることが解消される。
【0016】
また、柱周りにある複数の居室用壁パネルを防音下地材に取り付けることができるため、防音下地材により複数の居室用壁パネルの一体化を図ることができる。すなわち、柱型を有する間仕切壁においては、一般的な間仕切壁のように、柱を跨ぐようにして一枚の平坦な居室用壁パネルを配設して柱とその左右にあるスタッドに取り付けることができないため、柱周りでは柱型に適応するようにして複数の居室用壁パネルが相互に当接しながら配設される。この際、柱とスタッドは離れて配設されていることから、複数の居室用壁パネルを柱やスタッドに個別に取り付けるには、多大な施工手間が生じ得る。本態様では、柱型に対応した断面形状の防音下地材が柱の左右にあるスタッドに固定されていることにより、複数の居室用壁パネルを防音下地材に対して効率的に取り付けることができる。
【0017】
また、本発明による間仕切壁の他の態様において、前記柱の左右位置には、前記第一スタッドと前記第二スタッドがそれぞれ二つ設けられており、
前記柱を跨いで左右の前記第一スタッドに亘り断面形状がハット型の前記第一防音下地材が配設されており、
前記柱を跨いで左右の前記第二スタッドに亘り断面形状がハット型の前記第二防音下地材が配設されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、間仕切壁の一般部において、柱を跨いで左右の第一スタッドと第二スタッドに対してそれぞれ、断面形状がハット型の第一防音下地材と第二防音下地材が配設されていることにより、間仕切壁の一般部における遮音と、効率的な居室用壁パネルの取り付けを実現することができる。
【0019】
また、本発明による間仕切壁の他の態様は、前記柱の室内側の側方位置と、該柱の外壁側の側方位置には、前記第一スタッドと前記第二スタッドがそれぞれ二つ設けられており、
前記柱を跨いで二つの前記第一スタッドに亘り断面形状がW型の前記第一防音下地材が配設されており、
前記柱を跨いで二つの前記第二スタッドに亘り断面形状がW型の前記第二防音下地材が配設されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、間仕切壁と外壁の取り合い部に柱型がある場合において、柱の室内側の側方位置と、柱の外壁側の側方位置にあるスタッドに亘り断面形状がW型の防音下地材が配設されていることにより、間仕切壁の外壁側の端部における遮音と、効率的な居室用壁パネルの取り付けを実現することができる。
【0021】
また、本発明による間仕切壁の他の態様は、前記第一防音下地材と前記第二防音下地材が鋼板により形成されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、鋼板により形成されている防音下地材を適用することにより、鋼板は比較的軽量で剛性があることから、高い遮音性が奏される。また、柱の室内側に鋼板により形成されている防音下地材が配設されていることにより、室内における火災時の熱風に対して柱を防護することができ、柱の耐火性を向上させることができる。特に、ハット型やW型の鋼板が、柱の室内側の側面のみならず、柱の左右のスタッドにまで延設していることにより、柱の室内側の側面を熱風から防護するのみならず、柱の左右の側面も熱風から防護することができ、従って柱の全体を熱風から防護することが可能になる。このように、鋼板は、柱型に適用するように複数の内装材を固定できる好適な剛性があり、遮音性能に優れ、例えば1000℃程度の熱風に対しても柱を防護できる耐火性能を有する部材であること、さらには、汎用品であることから材料費が高価にならないこと等、本態様の間仕切壁において好適な部材となる。
【0023】
また、本発明による間仕切壁の他の態様は、前記柱の周囲に吸音材が配設されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、柱の周囲の隙間に吸音材が配設されていることにより、防音下地材による遮音性能と吸音材による吸音性能が相俟って、一方の居室から他方の居室への音漏れをより一層効果的に解消することができる。尚、間仕切壁の一般部にグラスウール等により形成される吸音材が充填されている場合に、柱の周囲にも同様の素材の吸音材を充填することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明の間仕切壁によれば、柱型を有する間仕切壁において、一方の居室の音が居室用壁パネル同士の当接面から柱の周囲の隙間に入り込み、サウンドブリッジを介した音の透過や隙間を介した音の透過により、他方の居室に音が漏れることを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来の柱型を有する間仕切壁に含まれる界壁の一例の横断面図であって、柱とスタッドを繋ぐサウンドブリッジを介して第一居室から第二居室に音が透過している状態をともに示す図である。
【
図2】
図1に対応する横断面図であって、柱とスタッドの間の隙間を介して第一居室から第二居室に音が透過している状態をともに示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る間仕切壁の一例の横断面図である。
【
図4】第一防音下地材(または第二防音下地材)の一例の斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る間仕切壁の変形例の横断面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る間仕切壁の一例の横断面図である。
【
図7】第一防音下地材(または第二防音下地材)の一例の斜視図である。
【
図8】第2の実施形態に係る間仕切壁の変形例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、各実施形態に係る壁構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[第1の実施形態に係る間仕切壁]
はじめに、
図3及び
図4を参照して、第1の実施形態に係る間仕切壁の一例について説明する。ここで、
図3は、第1の実施形態に係る間仕切壁の一例の横断面図であり、
図4は、第一防音下地材(または第二防音下地材)の一例の斜視図である。以下、
図3等においては、間仕切壁に含まれる界壁を取り上げて説明する。
【0029】
図3に示す界壁200は、第一居室と第二居室を隔てた柱型を有する界壁の一般部であり、
図3は柱とその周囲を拡大して示している。界壁200は、角形鋼管等により形成されている柱10と、柱10との間に隙間を有して配設されている第一スタッド20A及び第二スタッド20Bとを有する。第一スタッド20Aと第二スタッド20Bは、例えば溝形鋼(リップ付き溝形鋼を含む)等の形鋼材により形成されている。
図1に示す従来の柱型を有する界壁100と異なり、界壁200では、サウンドブリッジを形成する縦下地ピース15が存在せず、柱10と、第一スタッド20A及び第二スタッド20Bとは完全に縁切りされている。
【0030】
第一スタッド20Aと第二スタッド20Bは、相互に当接してサウンドブリッジを形成しないように、隙間を有して配設されている。第一スタッド20A及び第二スタッド20Bはそれぞれ、界壁200の幅方向に間隔を置いて複数配設されており、複数の第一スタッド20Aには界壁の一般部の第一居室用壁パネル30Aがビス19により固定され、複数の第二スタッド20Bには界壁の一般部の第二居室用壁パネル30Bがビス19により固定されている。界壁200の幅方向に間隔を置いて配設されている複数の第一スタッド20Aは、上下にあるランナー(図示せず)に取り付けられており、間隔を置いて配設されている複数の第二スタッド20Bも同様に、上下にある別途のランナー(図示せず)に取り付けられている。そして、第一居室用壁パネル30Aと第二居室用壁パネル30Bの間には、例えばグラスウール等により形成される吸音材50が充填されている。
【0031】
界壁200は柱型を有しているが、柱10を跨いで左右にある一組の第一スタッド20Aに亘り、断面形状がハット型の第一防音下地材60Aが配設されている。
図4に示すように、第一防音下地材60A(及び第二防音下地材60B)は、平面視矩形の鋼板を、断面形状がハット型となるように折り曲げ加工することにより形成され、左右の第一片61と、第一片61に直交する第二片62と、左右の第二片62を繋ぐ第三片63とを有する。尚、第一防音下地材60Aや第二防音下地材60Bは、鋼板以外にも、硬質の樹脂等から形成されてもよいが、可及的に薄厚かつ硬質で遮音性に優れ、断熱性にも優れ、さらにはコストも安価な鋼板から形成されているのが好ましい。
【0032】
一般部の第一居室用壁パネル30Aは、第一防音下地材60Aの有する第一片61に面接触しながら第一片61に直交する第二片62まで延設し、第一居室用壁パネル30Aと第一片61が第一スタッド20Aに対してビス19により固定されている。
【0033】
第二片62には、細幅の第一居室用壁パネル32Aが面接触し、その端部が第一居室用壁パネル30Aと当接した状態で第二片62に対してビス19により固定されている。
【0034】
また、第三片63には、左右の第一居室用壁パネル32Aに跨る第一居室用壁パネル34Aが面接触し、第三片63に対してビス19により固定されている。
【0035】
このように、柱10の周りにハット型の第一防音下地材60Aが配設されていることにより、柱10の周りにある複数の第一居室用壁パネル30A,32A,34Aを第一防音下地材60Aに対して一体に取り付けることができる。
【0036】
各第一居室用壁パネル30A,32A,34Aは、耐火性能を担保するべく、例えば二枚の石膏ボード等により形成されている。このような第一居室側の構造と同様の構造が、第二居室側においても適用されている。すなわち、柱10の周りにハット型の第二防音下地材60Bが配設され、第二防音下地材60Bに対して第二居室用壁パネル30B,32B,34Bが取り付けられ、第二防音下地材60Bにより複数の第二居室用壁パネル30B,32B,34Bの一体化が図られている。
【0037】
図3からも明らかなように、柱型に対応した第一防音下地材60Aや第二防音下地材60Bが、柱10の左右にある第一スタッド20Aや第二スタッド20Bに固定されることにより、複数の第一居室用壁パネル30A,32A,34Aや第二居室用壁パネル30B,32B,34Bを、第一防音下地材60Aと第二防音下地材60Bに対して効率的に取り付けることができる。
【0038】
また、内装材30A等が石膏ボードから形成される場合には、石膏ボードの室内側の側面において、一般に、石膏ボードの継ぎ目等にパテ処理等の下地調整が施された後にクロスが貼り付けられる。具体的には、第一居室用壁パネル30A,32A,34Aの室内側の側面に連続するようにクロスが貼り付けられ、同様に、第二居室用壁パネル30B,32B,34Bの室内側の側面に連続するようにクロスが貼り付けられる。複数の内装材30A等が共通の部材に一体的に固定されていないと、相互に当接する内装材30A,32A,34A同士(もしくは内装材30B,32B,34B同士)の相対変位により、クロスに皺が生じ易くなるが、界壁200においてはこのようなクロスの皺の発生も抑制することができる。
【0039】
図1を用いて既に説明したように、従来の柱型を有する界壁100においては、複数の第一居室用壁パネル30A,32A,34A同士の当接する界面が存在することから、例えば、第一居室において発生した音は、これらの界面を透過して柱10の周囲の隙間Gに入り込み、サウンドブリッジを形成する縦下地ピース15を介して伝達され、第二居室用壁パネル30B,32B,34B同士の当接する界面を透過して第二居室に漏れ易くなる。
【0040】
しかしながら、界壁200においては、柱10と柱10の周囲にある第一スタッド20Aに亘り、第一防音下地材60Aが配設されて第一スタッド20Aに固定されるとともに、第一防音下地材60Aに内装材30A,32A,34Aが取り付けられていることにより、複数の内装材30A,32A,34A同士の界面を介してX1方向、X1'方向に透過する音を、第一防音下地材60Aにより遮蔽することができる。
【0041】
同様に、第二居室側においても、複数の内装材30B,32B,34B同士の界面を介してX1方向、X1'方向に透過する音を、第二防音下地材60Bにより遮蔽することができる。
【0042】
このように、柱10の周囲の隙間Gへの音の透過が第一防音下地材60Aと第二防音下地材60Bにより遮蔽されていることから、一方の居室にて発生した音がサウンドブリッジや隙間Gを介して透過して他方の居室に漏れることが解消される。
【0043】
また、
図5は、第1の実施形態に係る間仕切壁(界壁)の変形例の横断面図である。図示する界壁200Bは、柱10の周囲の隙間Gに、グラスウール等により形成される吸音材50Aが充填されている。
【0044】
界壁200Aによれば、柱10の周囲の隙間Gに吸音材50Aが配設されていることにより、第一防音下地材60Aや第二防音下地材60Bによる遮音性能と、吸音材50Aによる吸音性能が相俟って、一方の居室から他方の居室への音漏れをより一層効果的に解消することができる。尚、吸音材50Aは、吸音性能に加えて断熱性能を有していてもよい。
【0045】
[第2の実施形態に係る間仕切壁]
次に、
図6及び
図7を参照して、第2の実施形態に係る間仕切壁の一例について説明する。ここで、
図6は、第2の実施形態に係る間仕切壁の一例の横断面図であり、
図7は、第一防音下地材(または第二防音下地材)の一例の斜視図である。以下、
図3等と同様に、間仕切壁に含まれる界壁を取り上げて説明する。
【0046】
図6に示す界壁200Bは、第一居室と第二居室を隔てた柱型を有する界壁と外壁の取り合い部であり、
図6は柱とその周囲を拡大して示している。
【0047】
図示するように、外壁から柱10が居室側に張り出して柱型を形成しており、柱10の右側には
図5にて既に示す界壁の一般部が延びている。柱10の室内側の側方位置と、柱10の外壁側の側方位置にはそれぞれ、溝形鋼により形成される第一スタッド20A及び第二スタッド20Bと、角形鋼管により形成される第一スタッド21A及び第二スタッド21Bが設けられている。そして、柱10を跨いで二つの第一スタッド20A,21Aに亘り、断面形状がW型の第一防音下地材60Cが配設され、同様に、柱10を跨いで二つの第二スタッド20B,21Bに亘り、断面形状がW型の第二防音下地材60Dが配設されている。
【0048】
ここで、外壁の構造について説明すると、柱10の屋外側には、形鋼材(図示例は溝形鋼)が枠状に組み付けられたフレーム部材77が配設されており、フレーム部材77の内側には、グラスウールやロックウール等が充填されることにより形成される断熱材80が配設され、断熱材80の屋外側には、グラスウールボード等により形成される下張材75が配設されている。左右の枠状のフレーム部材77を形成する縦桟の界面は外壁の縦目地72に対応する位置に配設されており、左右の縦桟に対して、それぞれに固有の下張材75とポリスチレンフォーム板等により形成される外装下地材74がビス78により固定されている。
【0049】
左右の外装下地材74の屋外側には外装材71が取り付けられており、左右の外装材71の間の縦目地72には乾式のガスケット等による止水材73が嵌め込まれている。この止水材73は軸方向に二組の係合止水片を左右に張り出しており、一組の係合止水片を左右の外装材71の端面に係合させることにより一次止水部を形成するとともに、他の一組の係合止水片を下張材75に係合させることにより二次止水部を形成している。尚、外装材71は、窯業系もしくは金属系のサイディングボードにより形成される外装パネルからなる。また、外装材71と下張材75の間には、外気に通じている通気層76が形成されている。さらに、断熱材80と内装材36Aの間はエア断熱層となっているが、エア断熱層に替えて、さらに一層もしくは二層の充填断熱材層が形成されてもよい。
【0050】
図7に示すように、第一防音下地材60C(及び第二防音下地材60D)は、平面視矩形の鋼板を、断面形状がW型となるように折り曲げ加工することにより形成され、左端の第一片64と、第一片64に直交する第二片65と、第二片65に直交する第三片66と、第三片66に直交する第四片65とを有し、第一片64と第三片66が相互に平行の関係にあり、第二片65と第四片67が相互に平行の関係にある。
【0051】
外壁の内装材となる第一居室用壁パネル36Aは、第一防音下地材60Cの有する第一片64に面接触しながら第一片64に直交する第二片65まで延設し、第一居室用壁パネル36Aと第一片64が第一スタッド21Aに対してビス19により固定されている。
【0052】
第二片65には、第一居室用壁パネル34Aが面接触し、その端部が第一居室用壁パネル36Aと当接した状態で第二片65に対してビス19により固定されている。
【0053】
また、第三片66には、左右の第一居室用壁パネル34A、30Aに跨る細幅の第一居室用壁パネル32Aが面接触し、第三片66に対してビス19により固定されている。
【0054】
さらに、界壁の一般部を形成する第一居室用壁パネル30Aは、第四片67に面接触しながら第三片66まで延設し、第一居室用壁パネル30Aと第四片67が第一スタッド20Aに対してビス19により固定されている。
【0055】
このように、外壁との取り合い部における柱10の周りにW型の第一防音下地材60Cが配設されていることにより、柱10の周りにある複数の第一居室用壁パネル30A,32A,34A,36Aを第一防音下地材60Cに対して一体に取り付けることができる。このような第一居室側の構造と同様の構造が、第二居室側においても適用されている。すなわち、柱10の周りにW型の第二防音下地材60Dが配設され、第二防音下地材60Dに対して第二居室用壁パネル30B,32B,34B,36Bが取り付けられ、第二防音下地材60Dにより複数の第二居室用壁パネル30B,32B,34B,36Bの一体化が図られている。
【0056】
図6からも明らかなように、柱型に対応した第一防音下地材60Cや第二防音下地材60Dが、柱10の左右にある第一スタッド20A,21Aや第二スタッド20B,21Bに固定されることにより、複数の第一居室用壁パネル30A,32A,34A,36Aや第二居室用壁パネル30B,32B,34B,36Bを、第一防音下地材60Cと第二防音下地材60Dに対して効率的に取り付けることができる。
【0057】
また、柱10と柱10の周囲にある第一スタッド20A,21Aに亘り、第一防音下地材60Cが配設されて第一スタッド20A,21Aに固定されるとともに、第一防音下地材60Cに内装材30A,32A,34A,36Aが取り付けられていることにより、複数の内装材30A,32A,34A,36A同士の界面を介してX6方向、X6'方向、X6"方向に透過する音を、第一防音下地材60Cにより遮蔽することができる。
【0058】
同様に、第二居室側においても、複数の内装材30B,32B,34B,36B同士の界面を介してX6方向、X6'方向、X6"方向に透過する音を、第二防音下地材60Dにより遮蔽することができる。
【0059】
このように、柱10の周囲の隙間Gへの音の透過が第一防音下地材60Cと第二防音下地材60Dにより遮音されていることから、一方の居室にて発生した音がサウンドブリッジや隙間Gを介して透過して他方の居室に漏れることが解消される。
【0060】
また、
図8は、第2の実施形態に係る間仕切壁(界壁)の変形例の横断面図である。図示する界壁200Cは、柱10の周囲の隙間Gに、グラスウール等により形成される吸音材50Aが充填されている。
【0061】
界壁200Cによれば、柱10の周囲の隙間Gに吸音材50Aが配設されていることにより、第一防音下地材60Cや第二防音下地材60Dによる遮音性能と、吸音材50Aによる吸音性能が相俟って、一方の居室から他方の居室への音漏れをより一層効果的に解消することができる。
【0062】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0063】
10:柱(角形鋼管)、15:縦下地ピース、17:縦桟、19:ビス(固定手段)、20A,21A:第一スタッド、20B,21B:第二スタッド、30A,32A,34A,36A:第一居室用壁パネル(内装材)、30B,32B,34B,36B:第二居室用壁パネル(内装材)、50,50A:吸音材、60A,60C:第一防音下地材、60B,60D:第二防音下地材、71:外装材、72:縦目地、73:ガスケット、74:スペーサー、75:下張材、76:通気層、77:フレーム部材、78:ビス(固定手段)、80:断熱材、200,200A,200B,200C:間仕切壁(界壁)、G:隙間