(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】火炎研磨装置及び石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/09 20060101AFI20230704BHJP
C03B 29/02 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C03B23/09
C03B29/02
(21)【出願番号】P 2019143143
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】須釜 明彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 正雄
(72)【発明者】
【氏名】飛田 博幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 敬史
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1704463(KR,B1)
【文献】特開2002-274872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B23/09
C03B29/00-29/16
C03B20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の石英ガラス管の端部を火炎研磨する装置であって、
前記石英ガラス管を水平に静置する静置台と、
前記石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向する位置に配置可能な火炎研磨用のバーナーと
を具備し、
前記バーナーは、前記石英ガラス管の端部の円周に沿って周回移動するように構成されているものであることを特徴とする火炎研磨装置。
【請求項2】
前記バーナーが、前記周回移動する円周上の角度位置に応じて該周回移動の速度を変化させることができるように構成されているものであることを特徴とする請求項1に記載の火炎研磨装置。
【請求項3】
前記静置台が、前記石英ガラス管を複数静置できるものであり、
前記火炎研磨装置は、複数の前記バーナーを具備し、
該複数のバーナーは、それぞれ、前記静置台に静置された前記複数の石英ガラス管のそれぞれの端部の円周の延長上に対向する位置に配置可能であり、
前記複数のバーナーは、それぞれ、前記複数の石英ガラス管の端部の円周に沿って同時に周回移動するように構成されているものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の火炎研磨装置。
【請求項4】
前記バーナーを周回移動させるための機構が、防振ゴムを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の火炎研磨装置。
【請求項5】
前記バーナーを周回移動させるための機構が、アタッチメントの取付位置を変更することにより、前記バーナーの周回移動の半径を変更可能に構成されているものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の火炎研磨装置。
【請求項6】
前記静置台は、前記バーナーに近づける方向及び前記バーナーから遠ざける方向に前後移動させることができるように構成されているとともに、水平面内で回転させることができるように構成されているものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の火炎研磨装置。
【請求項7】
前記バーナーは、前記静置台に近づける方向及び前記静置台から遠ざける方向に前後移動させることができるように構成されているものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の火炎研磨装置。
【請求項8】
前記静置台は、前記石英ガラス管を静置するための溝が形成されているものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の火炎研磨装置。
【請求項9】
前記静置台は、固縛を行うことなく前記石英ガラス管を静置するものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の火炎研磨装置。
【請求項10】
円筒状の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法において、
前記石英ガラス管を水平に静置する工程と、
前記石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向する位置に火炎研磨用のバーナーを配置する工程と、
前記石英ガラス管の端部の円周に沿って前記バーナーを機械的制御により周回移動させながら、前記石英ガラス管の端部に前記バーナーから火炎を当てることにより、前記石英ガラス管の端部を火炎研磨する工程と
を有することを特徴とする石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法。
【請求項11】
前記石英ガラス管の端部の円周に沿って前記バーナーを周回移動させる際に、該円周の最上点を含む上部区間及び最下点を含む下部区間において、前記上部区間及び前記下部区間の間に位置する中部区間よりも、前記バーナーの周回移動の速度を高速にすることを特徴とする請求項10に記載の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法。
【請求項12】
前記上部区間を、前記円周の上部において円周の30°以上90°以下の範囲を占めるものとし、
前記下部区間を、前記円周の下部において円周の10°以上30°以下の範囲を占めるものとし、
前記上部区間及び前記下部区間における前記バーナーの周回移動の速度を、前記中部区間における前記バーナーの周回移動の速度の1.2倍以上1.6倍以下とすることを特徴とする請求項11に記載の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法。
【請求項13】
前記上部区間を、前記円周の上部において円周の50°以上70°以下の範囲を占めるものとし、
前記下部区間を、前記円周の下部において円周の15°以上25°以下の範囲を占めるものとし、
前記上部区間及び前記下部区間における前記バーナーの周回移動の速度を、前記中部区間における前記バーナーの周回移動の速度の1.4倍以上1.5倍以下とすることを特徴とする請求項12に記載の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法。
【請求項14】
前記石英ガラス管を静置する工程において、複数の前記石英ガラス管を静置し、
前記バーナーを配置する工程において、複数の前記バーナーを、それぞれ、前記複数の石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向するように配置し、
前記石英ガラス管の端部を火炎研磨する工程において、前記複数の石英ガラス管の端部のそれぞれの円周に沿って、前記複数のバーナーのそれぞれを同時に周回移動させることにより、前記複数の石英ガラス管の端部を同時に火炎研磨することを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法。
【請求項15】
前記石英ガラス管を静置する工程を、前記石英ガラス管を固縛することなく行うことを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎研磨装置及び石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを研磨処理するための手法として、火炎によって研磨処理する火炎研磨(ファイヤーポリッシュ、「FP」と略されることがある。)がある。例えば、ガラス管の端部の切断面を研磨する際に、火炎研磨が用いられる。
【0003】
大量生産される一般のガラス管では、複数の製品をローラーの上で転がしながら連続的に搬送しつつ、下方から固定バーナーによる火炎を当てて火炎研磨処理する方法が一般的に知られている。しかしながら、製品を物理的に回転させながら搬送するこの方法では、製品への傷の発生の問題が懸念されてきた。
【0004】
この問題に対しては、揮発性潤滑材を活用する方法が考えられている(特許文献1参照)。ただし、この特許文献1に記載された方法では、傷発生の原因自体は除去できていないことに加え、潤滑剤を使用するコストが生じるほか、潤滑材が製品に残留する懸念が新たに生じる。また、製品の組成やサイズに応じて潤滑剤の適正使用量や化学成分も考慮しなければならないことは容易に想定され、そのための負担も増えると考えられる。
【0005】
このため、ガラス管の中でも、傷の発生を極限まで抑えることが求められる石英ガラス管については、従来、静置した石英ガラス管にハンドバーナーによる火炎を当てて、1本ずつ手作業で火炎研磨の作業を行っていた。このような手作業では、(1)対象の石英ガラス管全数を均一かつ適切に火炎研磨加工するには熟練の技能を要する、(2)手作業で火炎研磨処理するため時間がかかる、などのデメリットが生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、処理対象の石英ガラス管の端部を均一に火炎研磨処理することができる火炎研磨装置、及び、火炎研磨する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、円筒状の石英ガラス管の端部を火炎研磨する装置であって、前記石英ガラス管を水平に静置する静置台と、前記石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向する位置に配置可能な火炎研磨用のバーナーとを具備し、前記バーナーは、前記石英ガラス管の端部の円周に沿って周回移動するように構成されているものであることを特徴とする火炎研磨装置を提供する。
【0009】
このような火炎研磨装置であれば、処理対象の石英ガラス管の端部を均一に火炎研磨処理することができる。また、装置により自動で火炎研磨処理を行うことができるため、熟練の技能を有する作業員も必要でない。
【0010】
本発明の火炎研磨装置では、前記バーナーが、前記周回移動する円周上の角度位置に応じて該周回移動の速度を変化させることができるように構成されているものであることが好ましい。
【0011】
このような火炎研磨装置は、円周上の角度位置に応じて周回移動の速度を変化させることにより、石英ガラス管の端部における火炎研磨のムラ(焼きムラ)を低減することができる。
【0012】
また、前記静置台が、前記石英ガラス管を複数静置できるものであり、前記火炎研磨装置は、複数の前記バーナーを具備し、該複数のバーナーは、それぞれ、前記静置台に静置された前記複数の石英ガラス管のそれぞれの端部の円周の延長上に対向する位置に配置可能であり、前記複数のバーナーは、それぞれ、前記複数の石英ガラス管の端部の円周に沿って同時に周回移動するように構成されているものであることが好ましい。
【0013】
このように構成された、複数の石英ガラス管を同時に火炎研磨処理することができる火炎研磨装置であれば、作業の迅速化を図ることができ、生産性を向上することができる。
【0014】
また、前記バーナーを周回移動させるための機構が、防振ゴムを備えることが好ましい。
【0015】
このように、バーナーを周回移動させるための機構が防振ゴムを備えることにより、スムーズな動作を行うことができ、火炎研磨処理を安定して行うことができる。
【0016】
また、前記バーナーを周回移動させるための機構が、アタッチメントの取付位置を変更することにより、前記バーナーの周回移動の半径を変更可能に構成されているものであることが好ましい。
【0017】
このようにバーナーを周回移動させるための機構が構成されていることにより、バーナーの周回移動の半径を容易に変更可能にすることができる。これにより、管径の異なる石英ガラス管の端部の火炎研磨を行う場合であっても、容易にバーナーの周回移動の半径を調整することができる。
【0018】
また、前記静置台は、前記バーナーに近づける方向及び前記バーナーから遠ざける方向に前後移動させることができるように構成されているとともに、水平面内で回転させることができるように構成されているものであることが好ましい。
【0019】
静置台をこのように前後移動させることができるように構成することにより、バーナーと石英ガラス管の端部の距離を容易に調整することができる。また、静置台をこのように水平面内で回転させることができるように構成することにより、石英ガラス管の両端面の処理を迅速に行える火炎研磨装置とすることができる。
【0020】
また、前記バーナーは、前記静置台に近づける方向及び前記静置台から遠ざける方向に前後移動させることができるように構成されているものであることが好ましい。
【0021】
このようにバーナーを前後移動させることができるようにすることにより、バーナーと石英ガラス管の端部の距離を容易に調整することができる。
【0022】
また、前記静置台は、前記石英ガラス管を静置するための溝が形成されているものであることが好ましい。
【0023】
このような溝が形成された静置台とすることにより、石英ガラス管をより安定して静置することができる。
【0024】
また、前記静置台は、固縛を行うことなく前記石英ガラス管を静置するものであることが好ましい。
【0025】
このように、固縛を行うことなく石英ガラス管を静置できる静置台を具備する火炎研磨装置は、固縛による石英ガラス管における傷の発生を防止することができる。
【0026】
また、本発明は、円筒状の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法において、前記石英ガラス管を水平に静置する工程と、前記石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向する位置に火炎研磨用のバーナーを配置する工程と、前記石英ガラス管の端部の円周に沿って前記バーナーを機械的制御により周回移動させながら、前記石英ガラス管の端部に前記バーナーから火炎を当てることにより、前記石英ガラス管の端部を火炎研磨する工程とを有することを特徴とする石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法を提供する。
【0027】
このようなバーナーを機械的制御により周回移動させる火炎研磨方法であれば、処理対象の石英ガラス管の端部を均一に火炎研磨処理することができる。また、機械的制御により自動で火炎研磨処理を行うことができるため、熟練の技能がない作業員でも作業を行うことができる。
【0028】
また、本発明の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法では、前記石英ガラス管の端部の円周に沿って前記バーナーを周回移動させる際に、該円周の最上点を含む上部区間及び最下点を含む下部区間において、前記上部区間及び前記下部区間の間に位置する中部区間よりも、前記バーナーの周回移動の速度を高速にすることが好ましい。
【0029】
このようにバーナーの周回移動の円周上の角度位置に応じて周回移動の速度を変化させることにより、石英ガラス管の端部における火炎研磨のムラを低減することができる。
【0030】
この場合、前記上部区間を、前記円周の上部において円周の30°以上90°以下の範囲を占めるものとし、前記下部区間を、前記円周の下部において円周の10°以上30°以下の範囲を占めるものとし、前記上部区間及び前記下部区間における前記バーナーの周回移動の速度を、前記中部区間における前記バーナーの周回移動の速度の1.2倍以上1.6倍以下とすることが好ましい。
【0031】
この場合、さらに、前記上部区間を、前記円周の上部において円周の50°以上70°以下の範囲を占めるものとし、前記下部区間を、前記円周の下部において円周の15°以上25°以下の範囲を占めるものとし、前記上部区間及び前記下部区間における前記バーナーの周回移動の速度を、前記中部区間における前記バーナーの周回移動の速度の1.4倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。
【0032】
このように周回移動の速度を変化させることにより、石英ガラス管の端部における火炎研磨のムラをより効果的に低減することができる。
【0033】
また、前記石英ガラス管を静置する工程において、複数の前記石英ガラス管を静置し、前記バーナーを配置する工程において、複数の前記バーナーを、それぞれ、前記複数の石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向するように配置し、前記石英ガラス管の端部を火炎研磨する工程において、前記複数の石英ガラス管の端部のそれぞれの円周に沿って、前記複数のバーナーのそれぞれを同時に周回移動させることにより、前記複数の石英ガラス管の端部を同時に火炎研磨することが好ましい。
【0034】
このようにして、複数の石英ガラス管を同時に火炎研磨処理することにより、作業の迅速化を図ることができ、著しく生産性の向上を図ることができる。
【0035】
また、前記石英ガラス管を静置する工程を、前記石英ガラス管を固縛することなく行うことが好ましい。
【0036】
このように、固縛することなく石英ガラス管を静置することにより、固縛による石英ガラス管の傷の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の火炎研磨装置及び石英ガラス管の端部の火炎研磨の方法であれば、処理対象の石英ガラス管の端部を均一に火炎研磨処理することができる。また、自動で火炎研磨処理を行うことができるため、熟練の技能がない作業員でも作業を行うことができる。また、複数の石英ガラス管を同時に処理することも可能なため、生産性を著しく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の火炎研磨装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の火炎研磨装置におけるバーナーによる石英ガラス管の端部の加熱の様子の一例を示す拡大図である。
【
図3】石英ガラス管の端部に対するバーナーの周回移動の様子を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の火炎研磨装置の構成の一例であって、複数の石英ガラス管を複数のバーナーで同時に火炎研磨処理を行うことが可能な火炎研磨装置の構成の一部を示す概略上面図である。
【
図5】本発明の火炎研磨装置に用いることが可能な静置台の一例を示す概略断面図である。
【
図6】本発明の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の火炎研磨装置は、円筒状の石英ガラス管の端部を火炎研磨する装置であって、前記石英ガラス管を水平に静置する静置台と、前記石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向する位置に配置可能な火炎研磨用のバーナーとを具備し、前記バーナーは、前記石英ガラス管の端部の円周に沿って周回移動するように構成されているものであることを特徴とする火炎研磨装置である。
【0040】
以下、図面を参照し、本発明をより具体的に説明する。
【0041】
図1に、本発明の火炎研磨装置100の概略図を示した。本発明の火炎研磨装置100は、静置台11と、火炎研磨用のバーナー21を有する。静置台11は、円筒状の石英ガラス管91を水平に静置するための台である。バーナー21は、石英ガラス管91の端部92の円周の延長上に対向する位置に配置可能に構成されている。
図1には、石英ガラス管91の端部92の円周に対向する位置のうち、最下部にバーナー21の先端を位置させ、火炎22を石英ガラス管91の端部92に当てている様子を示している。なお、石英ガラス管91には反対側のもう1つの端部93もある。
【0042】
本発明においては、さらに、バーナー21は、石英ガラス管91の端部92の円周に沿って周回移動するように構成されている。バーナー21の周回移動は、バーナー周回移動機構24によって実現することができる。バーナーの周回移動の様子を
図2、3に示す。
図2はバーナー21による石英ガラス管91の端部92の加熱の様子の一例を示す拡大図である。
図2には、バーナー21は石英ガラス管91の端部92の円周の最上部の延長上に対向する位置に配置されている状態を示した。この場合、石英ガラス管91の端部92における溶融箇所は
図2中に示したように、端部92の最上部である。バーナー21は、さらに、
図2中に示したように周回移動を行う。なお、周回移動の向きは
図2中に示した矢印の方向に限られず逆方向の周回移動でもよい。
【0043】
図3に、石英ガラス管の端部に対するバーナーの周回移動の様子を示した。
図3中に石英ガラス管91の端部92を示している。これは
図1、2のバーナー21側から石英ガラス管91の端部92を見た図に相当する。バーナー21は、石英ガラス管91の端部92の円周に沿って周回移動する。
図3中の破線で示したバーナーの周回方向31で円周を描くように、バーナー21は、石英ガラス管91の端部92の円周の延長上に対向する位置を周回移動する。この周回移動するバーナー21の円周の径は、石英ガラス管91の径(特に、石英ガラス管91の端部92における外径と内径の中間)と対応する。
【0044】
また、本発明の火炎研磨装置100においては、バーナー21が、周回移動する円周上の角度位置に応じて、該周回移動の速度を変化させることができるように構成されているものであることが好ましい。例えば、
図3のように、バーナー21の移動区間を、円周上の角度位置に応じて、上部区間32、下部区間34、中部区間33、35に分けることができる。上部区間32は円周の最上点を含む区間であり、下部区間34は円周の最下点を含む区間である。中部区間33、35は上部区間32と下部区間34の間に位置する。本発明の説明において、便宜上、中部区間33、35を、上部区間32から下部区間34に移動する間の第1の中部区間33、下部区間34から上部区間32に移動する間の第2の中部区間35として説明する。
図3に示した周回方向31の場合、上部区間32、第1の中部区間33、下部区間34、第2の中部区間35、上部区間32、の順番にバーナー21が周回移動する。ただし、火炎研磨はどの区間から開始してもよい。
【0045】
このような火炎研磨装置は、角度位置に応じて周回移動の速度を変化させることにより、石英ガラス管の端部における火炎研磨のムラ(焼きムラ)を低減することができる。
【0046】
また、本発明の火炎研磨装置100は、複数本の石英ガラス管91の端部92を同時に火炎研磨処理可能な構成とすることができる。この火炎研磨装置の態様を、
図4を参照して説明する。
図4は、複数の石英ガラス管91の端部92を複数のバーナー21で同時に火炎研磨処理を行うことが可能な火炎研磨装置の構成の一部を示した概略上面図である。
図4に示したように、静置台11は、石英ガラス管91を複数静置できるものである。火炎研磨装置100は、複数のバーナー21を具備している。
図4中には、8本のバーナー21で8本の石英ガラス管91の端部92を同時に火炎研磨する例を示した。複数のバーナー21は、それぞれ、静置台11に静置された複数の石英ガラス管91のそれぞれの端部92の円周の延長上に対向する位置に配置可能に構成されている。複数のバーナー21は、それぞれ、複数の石英ガラス管91の端部92の円周に沿って同時に周回移動するように構成されている。複数のバーナー21からそれぞれ火炎22を発生し、それぞれの火炎22が複数本の石英ガラス管91の端部92にそれぞれ当てられる。これにより複数本の石英ガラス管91を同時に火炎研磨処理可能である。このように構成された、複数の石英ガラス管を同時に火炎研磨処理することができる火炎研磨装置であれば、作業の迅速化を図ることができる。
【0047】
また、本発明の火炎研磨装置100は、バーナー21を周回移動させるための機構が、防振ゴムを備えることが好ましい。
図1、4にはこの構成を示した。バーナー周回移動機構24は、シャフト25に防振ゴム26が取り付けられている。このように、バーナー周回移動機構24が防振ゴム26を備えることにより、ガタツキをなくしてバーナー21のスムーズな動作を行うことができ、火炎研磨処理を安定して行うことができる。
【0048】
また、本発明の火炎研磨装置100においては、バーナーを周回移動させるための機構(バーナー周回移動機構24)を、アタッチメントの取付位置を変更することにより、バーナー21の周回移動の半径を変更可能に構成することができる。
図4にこの構成を示した。バーナー周回移動機構24はアタッチメント取付部27を有している。このアタッチメント取付部27は、周回移動における半径が異なるようにアタッチメントを取り付けられるように構成されている。このようにバーナー周回移動機構24が構成されていることにより、バーナー21の周回移動の半径を容易に変更可能にすることができる。これにより、管径の異なる石英ガラス管91の端部92の火炎研磨を行う場合であっても、同じ装置で容易にバーナー21の周回移動の半径を調整することができる。
【0049】
また、本発明の火炎研磨装置100においては、静置台11を、例えば、レール上をスライドさせることで、バーナー21に近づける方向及びバーナー21から遠ざける方向に前後移動させることができるように構成することができる。静置台11をこのように前後移動させることができるように構成することにより、バーナー21と石英ガラス管91の端部92の距離を容易に調整することができる。また、静置台11を、例えば、ターンテーブルとすることで、水平面内で回転させることができるように構成することができる。静置台11をこのように水平面内で回転させることができるように構成することにより、静置台11上の石英ガラス管91の両端部92、93の処理を迅速に行える火炎研磨装置とすることができる。すなわち、
図1に示した石英ガラス管91の端部92の火炎研磨の後、静置台11を水平面内で回転させ、もう一方の端部93の火炎研磨を行うことができる。
【0050】
このような静置台11の前後移動、水平面内での回転は、
図1に示した静置台移動回転機構15によって実現することができる。このような方式はスライド・ターンテーブル方式と呼ぶことができる。
【0051】
静置台11の前後移動と同様に、バーナー21を静置台11に近づける方向及び静置台11から遠ざける方向に前後移動させることができるように構成することもできる。この構成は
図1に示したバーナー前後移動機構29によって実現することができる。このようにバーナー21を前後移動させることができるようにすることにより、バーナー21と石英ガラス管91の端部92の距離を容易に調整することができ、作業性がすこぶる高い。
【0052】
また、本発明の火炎研磨装置100においては、
図5に示したように、静置台11を、溝13を有するものとすることができる。この溝13には石英ガラス管91を静置することができる。
図5は、8つの溝13を形成した例を示しており、
図4中の静置台11の断面図に相当する。溝13の個数は火炎研磨処理する石英ガラス管91の本数に応じて適宜変更することができる。このような溝13が形成された静置台11とすることにより、石英ガラス管91の側面に傷を付けることなく、より安定して静置することができる。
【0053】
また、本発明の火炎研磨装置100においては、静置台11は、固縛を行うことなく石英ガラス管91を静置するものであることが好ましい。固縛を行わないとは、石英ガラス管91を静置台11に静置する際に重力による作用以外で固定を行わないことである。例えば、石英ガラス管91の上から固定用部材を押しつけたり、ひもやバンドで石英ガラス管91を静置台11に固定したりすることは固縛である。固縛を行うことなく石英ガラス管91を静置できる静置台11を具備する火炎研磨装置は、固縛による石英ガラス管の傷の発生を防止することができる。上記の溝13を有する静置台11は、固縛を行わなくても安定して石英ガラス管91を静置することができる。
【0054】
次に、本発明の石英ガラス管の端部を火炎研磨する方法を、
図6を参照して説明する。本発明は、円筒状の石英ガラス管の端部の火炎研磨方法である。この方法は、石英ガラス管を水平に静置する工程(
図6の工程S1)と、石英ガラス管の端部の円周の延長上に対向する位置に火炎研磨用のバーナーを配置する工程(
図6の工程S2)と、石英ガラス管の端部の円周に沿ってバーナーを機械的制御により周回移動させながら、石英ガラス管の端部にバーナーから火炎を当てることにより、石英ガラス管の端部を火炎研磨する工程(
図6の工程S3)とを有する。
【0055】
このような本発明の方法は、
図1に示した本発明の火炎研磨装置100を用いて行うことができる。まず、工程S1では、火炎研磨装置100の静置台11に石英ガラス管91を水平に静置する。この際、
図5に示したように、静置台11に溝13が形成されていると、石英ガラス管91をより安定して静置することができる。この石英ガラス管91を静置する工程は、石英ガラス管91を固縛することなく行うことが好ましい。例えば、
図5に示した上記の溝13を有する静置台11は、固縛を行わなくても安定して石英ガラス管91を静置することができるので、このような静置台11を用いて石英ガラス管91の静置を行うことが好ましい。このように、固縛することなく石英ガラス管91を静置することにより、固縛による石英ガラス管91における傷の発生を防止することができる。
【0056】
次に、工程S2では、石英ガラス管91の端部92の円周の延長上に対向する位置に火炎研磨用のバーナー21を配置する。この配置工程においては、火炎研磨装置100が具備する静置台移動回転機構15やバーナー前後移動機構29を用いて、細かい調整を行うことができる。位置合わせは作業員の手動で行うこともできるが、静置台移動回転機構15やバーナー前後移動機構29の移動をプログラムしておいて自動で行うこともできる。また、大まかな移動を自動で行い、作業員の手動で微調整を行うこともできる。
【0057】
次に、工程S3では、石英ガラス管91の端部92の円周に沿ってバーナー21を機械的制御により周回移動させながら、石英ガラス管91の端部92にバーナー21から火炎22を当てる。これにより、石英ガラス管91の端部92を火炎研磨処理する。この火炎研磨処理工程は、バーナー周回移動機構24が機械的制御により自動でバーナー21を周回移動させる。
【0058】
このようなバーナー21を機械的制御により周回移動させる火炎研磨方法であれば、処理対象の石英ガラス管91の端部92を均一に火炎研磨処理することができる。また、機械的制御により自動で火炎研磨処理を行うことができるため、熟練の技能がない作業員でも作業を行うことができる。
【0059】
本発明の火炎研磨方法では、同時に複数の石英ガラス管91を火炎研磨処理することができる。この方法は
図1、4に示した火炎研磨装置100を用いて行うことができる。まず、上記工程S1(石英ガラス管を静置する工程)において、
図4に示したように複数の石英ガラス管91を静置する。また、上記工程S2(バーナーを配置する工程)において、複数のバーナー21を、それぞれ、複数の石英ガラス管91の端部92の円周の延長上に対向するように配置する。また、上記工程S3(石英ガラス管の端部を火炎研磨する工程)において、複数の石英ガラス管91の端部92のそれぞれの円周に沿って、複数のバーナー21のそれぞれを同時に周回移動させることにより、複数の石英ガラス管91の端部92を同時に火炎研磨する。
【0060】
このようにして、複数の石英ガラス管91を同時に火炎研磨処理することにより、作業の迅速化を図ることができ、石英ガラス管91の生産性を著しく向上させることができる。
【0061】
石英ガラス管91の一方の端部92を火炎研磨した後、通常、もう一方の端部93の火炎研磨を行う。この場合、
図1に示した静置台移動回転機構15を有するスライド・ターンテーブル方式の静置台11を具備する火炎研磨装置100を用いると両端の火炎研磨を行いやすい。スライド・ターンテーブル方式の静置台11の場合、一方の端部92の火炎研磨において上記工程S1~S3を行った後、もう一方の端部93の火炎研磨においては、工程S1は既に行われているため、静置台11を回転させるだけで、石英ガラス管91の他方の端部93に対して工程S2、S3を行うことができる。
【0062】
本発明の火炎研磨方法では、上記工程S1~S3を具備していればよいが、その他の工程を適宜追加することができる。例えば、火炎研磨工程S3の前に、バーナー21により石英ガラス管91の端部92の予熱を行うことができる。予熱工程の段階ではバーナー21の周回移動を行う必要は無い。この予熱は1回ではなく複数回行うこともできる。例えば、バーナー21により石英ガラス管91の端部92の1次予熱を行い、もう一方の端部93の1次予熱を行うことができる。その後、端部92に対するバーナー配置工程S2を行い、さらに端部92の2次予熱を行った後に、火炎研磨工程S3を行うことができる。この場合、端部92の火炎研磨工程S3を行った後、端部93に対するバーナー配置工程S2、端部93の2次予熱、及び火炎研磨工程S3を行うことができる。
【0063】
本発明の火炎研磨方法では、上記工程S3において、石英ガラス管91の端部92の円周に沿ってバーナー21を周回移動させる際に、
図3に示した円周の最上点を含む上部区間32及び最下点を含む下部区間34において、上部区間32及び下部区間34の間に位置する中部区間33、35よりも、バーナー21の周回移動の速度を高速にすることが好ましい。このような周回移動速度の変更は、上記のように、バーナー21が、周回移動する円周上の角度位置に応じて、該周回移動の速度を変化させることができるように構成されていることにより可能である。また、周回移動の速度の変化は、予めプログラムされた機械的制御により行うことができる。このようにバーナー21の周回移動の円周上の角度位置に応じて周回移動の速度を変化させることにより、石英ガラス管91の端部92における火炎研磨のムラを低減することができる。
【0064】
これは、バーナー火炎の性質上、バーナー21による火炎22は、バーナー21の中心軸(すなわち火炎22の中心軸)よりも上方において、下方、横方よりも広がる傾向にあるためと考えられる。このことから、上部区間32及び下部区間34では、火炎22による加熱の影響を相対的に強く受ける傾向にある。また、この傾向は上部区間32の方が下部区間34よりも大きい傾向にある。従って、上部区間32及び下部区間34において、中部区間33、35よりも、バーナー21の周回移動の速度を高速にすることが好ましい。さらに、周回移動の速度を高速にする区間の長さは、上部区間32を下部区間34よりも長くすることが好ましい。
【0065】
この場合、上部区間32を円周の上部において円周の30°以上90°以下の範囲を占めるものとし、下部区間34を、円周の下部において円周の10°以上30°以下の範囲を占めるものとすることが好ましい。さらに、上部区間32及び下部区間34におけるバーナー21の周回移動の速度を、中部区間33、35におけるバーナー21の周回移動の速度の1.2倍以上1.6倍以下とすることが好ましい。
【0066】
この場合、さらに、上部区間32を円周の上部において円周の50°以上70°以下の範囲を占めるものとし、下部区間34を、円周の下部において円周の15°以上25°以下の範囲を占めるものとすることが好ましい。さらに、上部区間32及び下部区間34におけるバーナー21の周回移動の速度を、中部区間33、35におけるバーナーの周回移動の速度の1.4倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。
【0067】
このように周回移動の速度を変化させることにより、石英ガラス管91の端部92における火炎研磨のムラをより効果的に低減することができる。
【0068】
また、上部区間32、下部区間34、中部区間33、35の角度範囲や、各区間の周回移動の速度は、適宜調整を行うことができる。例えば、石英ガラス管91の管径や、室温等に応じて適切な上記角度範囲及び周回移動速度が変化することがあるが、当業者であれば適宜調整することができる。また、上記角度範囲及び周回移動速度は、機械的制御のプログラムの変更により容易に変更することができる。
【実施例】
【0069】
以下に、本発明の実施例及び比較例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
図1、4に示した火炎研磨装置100を用いて石英ガラス管91の端部92の火炎研磨を行った。火炎研磨装置100には、防振ゴム26を有するものを用いた。バーナー前後移動機構29及び静置台移動回転機構15を有する火炎研磨装置100を用いて、バーナー21と静置台11の間の距離の調整は行ったが、静置台11の回転は行わず、石英ガラス管91の一方の端部92のみの火炎研磨を行った。また、静置台11に静置する石英ガラス管91は1本とした。石英ガラス管91は固縛することなく、静置台11の上に水平に静置させた。静置台11としては溝13を有するものを用いた。次に、石英ガラス管91の円周延長線上に対向させた位置に火炎研磨用バーナー21を配置させ、バーナー21を石英ガラス管91の端部92の円周位置に沿って周回させることで石英ガラス管91の端部92に火炎22を照射させた。バーナー21の周回速度は変化させず一定とした。複数本の石英ガラス管を同時に処理することは行わず、1本ずつ処理を行った。
【0071】
なお、周回数は15周とした。また、1つのバーナー21に供給するLPG供給量は2.8L/分、酸素供給量は13.3L/分とした。バーナー21と石英ガラス管91の端部92の間の距離(火炎22の照射距離)は35mmとした。これらの周回数、ガス供給量及び照射距離の条件は後述の実施例2~7、比較例1~3で共通である。
【0072】
[実施例2]
バーナー21の周回速度を火炎22の照射位置に応じて制御した他は実施例1と同様の方法により石英ガラス管91の端部92の火炎研磨を実施した。この際の周回速度は、石英ガラス管91の端部の円周の上部区間32及び下部区間34において、他の区間(中部区間33、35)に比べ高速化することとした。具体的には、上部区間32は60°、下部区間34は20°の範囲において18.6周/分の周回速度とし、中部区間33、35において13.0周/分の周回速度とした(上部区間32、下部区間34において、中部区間33、35の約1.4倍の周回速度)。
【0073】
[実施例3]
バーナー21の周回速度を変更した他は実施例2と同様の方法により石英ガラス管91の端部92の火炎研磨を実施した。具体的には、上部区間32は30°、下部区間34は10°の範囲において16.8周/分の周回速度とし、中部区間33、35において14.0周/分の周回速度とした(上部区間32、下部区間34において、中部区間33、35の約1.2倍の周回速度)。
【0074】
[実施例4]
バーナー21の周回速度を変更した他は実施例2と同様の方法により石英ガラス管91の端部92の火炎研磨を実施した。具体的には、上部区間32は90°、下部区間34は30°の範囲において19.1周/分の周回速度とし、中部区間33、35において11.9周/分の周回速度とした(上部区間32、下部区間34において、中部区間33、35の約1.6倍の周回速度)。
【0075】
[実施例5]
石英ガラス管91を複数本(8本)同時に火炎研磨処理することとした他は実施例2と同様の方法により石英ガラス管91の端部92の火炎研磨を実施した。また、この際の複数本の火炎研磨は、石英ガラス管とバーナーの組み合わせを、石英ガラス管の長軸方向に平行に複数並べて、複数の石英ガラス管の端部を同時に処理することで行った。
【0076】
[実施例6]
静置台移動回転機構15を用いて静置台11を回転させて石英ガラス管91の両端部92、93の火炎研磨処理を行う他は、実施例5と同様にして石英ガラス管91の端部92、93の火炎研磨処理を行った。
【0077】
[実施例7]
防振ゴム26を有しない火炎研磨装置100を用いた他は、実施例1と同様にして石英ガラス管91の端部92の火炎研磨処理を行った。
【0078】
[比較例1]
石英ガラス管を治具の上に静置し、ハンドバーナーを用いた手作業により石英ガラス管の火炎研磨を実施した。
【0079】
[比較例2]
石英ガラス管を一定の回転軸回りに回転させ、石英ガラス管の上端延長線上に対向させた位置にバーナーを固定して配置させ、石英ガラス管の火炎研磨を実施した。この際の石英ガラス管の回転は、シャフトとギアを介してモーターに連結させて回転させることが可能な耐熱性のあるカーボンローラーを2個用意し、その回転軸が平行かつ水平となるように配置し、その2個のカーボンローラーの上に石英ガラス管を載せ、モーターを駆動してカーボンローラーを回転させることで行った。
【0080】
[比較例3]
比較例2と同様に石英ガラス管の端部の火炎研磨を行ったが、揮発性ではない潤滑剤をカーボンローラーに供給した。なお、火炎を用いた加工の現場であるため揮発性の潤滑剤は使用できなかった。
【0081】
[各実施例及び比較例における評価方法]
各実施例及び比較例において製造した石英ガラス管の品質、装置の動作、処理量及び後処理の負荷の評価を以下のようにして行った。
【0082】
品質の評価:
石英ガラス管表面の傷の有無及び端部の火炎研磨の状態について、検査員の目視による外観検査を実施して程度を評価した。その結果、程度の評価は以下の通りとした。
・石英ガラス管を破損する、又は火炎研磨できない 不良
・石英ガラス管にわずかな傷が生じる、又は火炎研磨の焼きムラが生じる
やや良好
・石英ガラス管に傷を生じない、かつ火炎研磨の焼きムラが小さい 良好
・石英ガラス管に傷を生じない、かつ火炎研磨の焼きムラが殆ど無い 特に良好
【0083】
装置の動作の評価:
装置のガタ付きの状態について、作業員が作業中に程度を評価した。その結果、程度の評価は以下の通りとした。
・装置が動作しない 不良
・装置は動作するものの、わずかなガタ付きが生じている やや良好
・装置は動作し、明らかなガタ付きも生じない 良好
【0084】
処理量の評価:
単位時間あたりの処理量を評価した。その結果の評価は以下の通りとした。
・手作業による火炎研磨と同程度 やや良好
・手作業による火炎研磨と同じ~2倍程度 良好
・手作業による火炎研磨の2倍程度以上 特に良好
【0085】
後処理の負荷:
・後処理の負荷量を評価した。その結果の評価は以下の通りとした。
・手作業による火炎研磨と比べ、後処理の負荷が増加している 不良
・手作業による火炎研磨と比べ、後処理の負荷は同程度 良好
なお、後処理とは略2%フッ化水素水溶液(フッ酸)に石英ガラス管を浸漬し、その後純水洗浄及び乾燥することにより行う洗浄の処理、傷発生時の修理の処理、その他の製品を製造するために火炎研磨処理後に必要となる処理である。
【0086】
実施例1~7、比較例1~3で製造したそれぞれの石英ガラス管の火炎研磨条件と、評価結果をまとめ、下記の表1に示した。
【0087】
【0088】
表1からわかるように、実施例1~7では、比較例1の人力による火炎研磨処理よりも安定して火炎研磨処理を行うことができた。比較例1では石英ガラス管の品質にバラツキがあり、特に属人性が強かった。また、熟練した職人であっても失敗することがある。
【0089】
また、特に、実施例2~6のように、円周上の角度位置に応じて周回速度を変更することにより火炎研磨の結果による石英ガラス管の端部の状態も良好であった。また、実施例5、6のように複数本の石英ガラス管を同時に火炎研磨処理することにより、処理量が格段に向上した。
【0090】
また、実施例1と実施例7の比較から、火炎研磨装置100が防振ゴム26を有することによる効果が確認された。これは、防振ゴム26により、機構に持たせた「遊び」の部分によるがたつきの発生を抑えられたことによる。
【0091】
また、比較例2では石英ガラス管に傷が生じた。さらに、この傷の発生により後処理のフッ酸洗浄により傷が拡大し、後処理の負担が増大した。
【0092】
比較例3でも傷の問題は解消しておらず、潤滑剤の拭き取りの必要性などさらに後処理の負担が増大した。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
100…火炎研磨装置、
11…静置台、 13…溝、 15…静置台移動回転機構、
21…バーナー、 22…火炎、
24…バーナー周回移動機構、 25…シャフト、
26…防振ゴム、 27…アタッチメント取付部、
29…バーナー前後移動機構、
31…バーナーの周回方向、
32…上部区間、 33…(第1の)中部区間、
34…下部区間、 35…(第2の)中部区間、
91…石英ガラス管、 92、93…石英ガラス管の端部。