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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】振動試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20230704BHJP
   G01M 7/04 20060101ALI20230704BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20230704BHJP
   G05D 19/02 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G01M7/02 B
G01M7/04
G05B11/36 H
G05D19/02 A
G05B11/36 505A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019163513
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021043004
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠太
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-156308(JP,A)
【文献】特開平04-149663(JP,A)
【文献】特開平10-197394(JP,A)
【文献】特開2009-058522(JP,A)
【文献】特開昭60-136602(JP,A)
【文献】特開昭53-123165(JP,A)
【文献】特許第5490335(JP,B1)
【文献】特開2009-294150(JP,A)
【文献】特開2008-102127(JP,A)
【文献】特開2012-237634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/02- 7/06
G05B 11/36-11/42
G05D 19/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体に振動を与える加振器と、
前記加振器の応答を検知する検知器と、
目標指令に基づいて前記加振器を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
ニューラルネットワークモデルを利用して前記目標指令に対する前記加振器の応答特性を同定する同定部と、
前記同定部で求めた前記応答特性の逆特性に基づいて前記目標指令を補正して補正指令を求める補正部と、
前記補正指令に基づいて制御指令を生成して前記加振器を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、
前記検知器で検知した前記加振器の応答と前記補正指令との偏差に基づいて操作指令を求めるフィードバック部と、
前記加振器に与える前記制御指令の入力に対する前記加振器の応答を模擬して出力する規範モデル部を有し、
前記検知器で検知した前記加振器の応答と前記規範モデル部が模擬した応答との差と前記操作指令とに基づいて前記制御指令を求める
ことを特徴とする振動試験装置。
【請求項2】
前記規範モデル部は、
前記加振器の応答を模擬する加振器応答模擬部と、
前記加振器応答模擬部が模擬した前記加振器の応答の入力により前記供試体の応答を模擬する供試体応答模擬部とを有し、
前記加振器応答模擬部は、前記制御指令と前記供試体応答模擬部が模擬した前記供試体の応答との入力により前記加振器の応答を模擬して出力する
ことを特徴とする請求項に記載の振動試験装置。
【請求項3】
前記加振器応答模擬部は、
前記制御指令と前記供試体応答模擬部が模擬した前記供試体の応答とに基づいて、前記加振器の物理モデルを利用して前記加振器の応答を求める加振器物理モデル部と、
前記加振器物理モデル部に並列されて、前記制御指令と前記供試体応答模擬部が模擬した前記供試体の応答とに基づいて、ニューラルネットワークモデルを利用して、前記加振器物理モデル部が求めた応答に加算する前記加振器の非線形応答を求める加振器非線形部とを有する
ことを特徴とする請求項に記載の振動試験装置。
【請求項4】
前記加振器物理モデル部および前記加振器非線形部とに並列されて、ニューラルネットワークモデルを利用して前記加振器に与える制御指令および前記制御指令および前記供試体応答模擬部が模擬した前記供試体の応答に基づいて前記加振器物理モデル部が求めた応答に加算する前記加振器の線形応答を求める加振器線形部とを有する
ことを特徴とする請求項に記載の振動試験装置。
【請求項5】
前記供試体応答模擬部は、
前記加振器応答模擬部が模擬した前記加振器の応答に基づいて、前記供試体の物理モデルを利用して前記供試体の応答を求める供試体物理モデル部と、
前記供試体物理モデル部に並列されて、前記加振器応答模擬部が模擬した前記加振器の応答に基づいてニューラルネットワークモデルを利用して、前記供試体物理モデル部が求
めた応答に加算する前記供試体の非線形応答を求める供試体非線形部とを有する
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の振動試験装置。
【請求項6】
前記加振器は、シリンダと、前記シリンダ内に移動自在に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、前記シリンダ内に移動自在に挿入されて前記ピストンに連結されるロッドと、ポンプから吐出される作動油を前記伸側室と前記圧側室とに選択的に供給するサーボ弁とを備えたアクチュエータであって、
前記同定部は、前記目標指令の周波数と前記サーボ弁の弁開度に対する前記加振器の前記応答特性を同定する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の振動試験装置。
【請求項7】
前記同定部は、前記目標指令の周波数、前記サーボ弁の開度および供試体の温度に対する前記加振器の前記応答特性を同定する
ことを特徴とする請求項に記載の振動試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動試験装置は、たとえば、供試体に振動を与える加振器と、加振器を制御するコントローラを備えている。コントローラは、一般的には、加振器の応答をセンサで検知して、検知した応答をフィードバックする制御を行って加振器を制御するが、加振器が油圧アクチュエータで供試体に振動を与える油圧サーボ系では応答に位相遅れがあり、非線形特性を備えているので、単なるフィードバック制御では試験条件通りに供試体に振動を与えることが難しい。
【0003】
そこで、このような振動試験装置では、供試体を装着した後に、加振器にランダムノイズ信号を与え、加振器に設けたセンサで供試体に作用する加速度を検出することで、加振器へ与える信号とセンサ出力との関係を伝達関数マトリクスとして得ておき、この伝達関数マトリクスの逆マトリクスを用いて試験条件が指示する加速度データを加振器へ入力すべき加振信号に変換することが行われる(たとえば、特許文献1参照)。つまり、従来の振動試験装置では、コントローラが加振器の制御信号に対する応答の逆特性を周波数に対するゲインのテーブルとして保有しており、目標指令にテーブルから得られるゲインを乗じて制御指令を生成して加振器を制御する。このように従来の振動試験装置は、加振器の応答遅れや非線形な特性に起因した波形乱れ等を解消する制御指令を生成して加振器を制御し、試験条件通りに供試体に振動を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-167557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、振動試験装置が製品は同じであるが異なる供試体に振動を与える場合、加振器および供試体でなる系全体の特性が変化して、予め用意しておいたテーブルでは最適な制御指令を生成できなくなってしまう可能性がある。
【0006】
つまり、前述の振動試験装置では、予め加振器で供試体を振動させた場合の加振器の応答の特性から逆特性を求めておき、この逆特性を用いて制御指令を生成しているので、供試体の特性が変化すると加振器の応答の特性も変化してしまって最適な制御指令を生成することが難しくなるのである。
【0007】
また、従来の振動試験装置では、加振器の逆特性のテーブルにノイズが残ってしまう場合があり、ノイズが残ったテーブルを利用して制御指令を生成して加振器を制御すると、ノイズの影響で加振器が与える振動にノイズが重畳したり歪みが生じたりしてしまう。
【0008】
このように従来の振動試験装置では、最適な制御指令の生成を生成できない場合があり、試験条件通りに供試体に振動を与え得る振動試験装置が要望される。
【0009】
そこで、本発明は、試験条件通りに供試体に振動を与えることができる振動試験装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明のダンパの振動試験装置は、供試体に振動を与える加振器と、目標指令に基づいて加振器を制御するコントローラとを備え、コントローラがニューラルネットワークモデルを利用して目標指令に対する加振器の応答特性を同定する同定部と、同定部で求めた応答特性の逆特性に基づいて目標指令を補正して補正指令を求める補正部と、補正指令に基づいて制御指令を生成して加振器を制御する制御部とを備えている。このように構成された振動試験装置は、ニューラルネットワークモデルを利用した同定部による加振器の応答特性の同定を行って目標指令を補正するために参照される応答特性を絶えず最適化しつつ、加振器を制御することができる。したがって、振動試験装置によれば、製品は同じでも異なる供試体に振動を与える場合であっても加振器および供試体でなる系全体の特性が変化しても最適な制御指令を生成して、試験条件に合致する理想的な振動を供試体に与えられる。また、補正部で参照する応答特性は、ニューラルネットワークモデルを利用した同定部によって加振器の応答特性を同定して最適化され、応答特性にノイズが残ってしまうのを防止できるので、加振器が与える振動にノイズが重畳したり歪みが生じたりしてしまう恐れもない。
【0011】
また、振動試験装置は、加振器の応答を検知する検知器とを備え、制御部が検知器で検知した加振器の応答と補正指令との偏差に基づいて操作指令を求めるフィードバック部と、加振器に与える制御指令の入力に対して加振器の応答を模擬して出力する規範モデル部を有し、検知器で検知した加振器の応答と規範モデル部が模擬した加振器の応答との差と操作指令とに基づいて制御指令を求め。このように構成された振動試験装置は、規範モデル部にて加振器の応答を模擬して、加振器の応答と模擬した応答との差で操作指令を修正して制御指令を求めるので、実際の加振器の応答と規範モデル部が模擬した応答との差を調節するように制御指令が修正でき、加振器の応答をより高精度に目標指令通りに追従させ得る。
【0012】
さらに、振動試験装置は、規範モデル部が加振器の応答を模擬する加振器応答模擬部と、加振器応答模擬部が模擬した応答の入力により供試体の応答を模擬する供試体応答模擬部とを有し、加振器応答模擬部が制御指令と供試体応答模擬部が模擬した供試体の応答との入力により加振器の応答を模擬して出力してもよい。このように構成された振動試験装置では、規範モデル部が加振器の応答を模擬し、さらに、模擬された応答を受けた供試体の応答を模擬するので、実際の加振器と供試体の系を模擬して応答を求めることができる。よって、このように構成された振動試験装置によれば、実際の系に即して加振器の規範となる応答を求めることができ、加振器が供試体に対して精度よく制御指令通りの振動を与えられるようになる。
【0013】
また、振動試験装置は、加振器応答模擬部が制御指令と供試体応答模擬部が模擬した供試体の応答とに基づいて加振器の物理モデルを利用して加振器の応答を求める加振器物理モデル部と、加振器物理モデル部に並列されて制御指令と供試体応答模擬部が模擬した供試体の応答とに基づいてニューラルネットワークモデルを利用して加振器物理モデル部が求めた応答に加算する加振器の非線形応答を求める加振器非線形部とを備えていてもよい。このように構成された振動試験装置によれば、学習によって精度よく加振器を模擬して加振器の応答を求め得るから、加振器が供試体に対してより高精度に制御指令通りの振動を与えられるようになる。
【0014】
さらに、振動試験装置は、加振器物理モデル部および加振器非線形部とに並列されてニューラルネットワークモデルを利用して制御指令および供試体応答模擬部が模擬した供試体の応答に基づいて加振器物理モデル部が求めた応答に加算する線形応答を求める加振器線形部とを備えていてもよい。このように構成された振動試験装置によれば、学習によって精度よく加振器を模擬して応答を求め得るから、加振器が供試体に対してより高精度に制御指令通りの振動を与えられるようになる。また、前述のように構成された振動試験装置によれば、加振器線形部を設けることで、加振器の応答特性による成分を学習できるから、実際の加振器の応答と高精度で一致する模擬応答を得るまでの学習時間を短縮できる。
【0015】
そして、振動試験装置は、供試体応答模擬部が加振器応答模擬部が模擬した加振器の応答に基づいて供試体の物理モデルを利用して供試体の応答を求める供試体物理モデル部と、供試体物理モデル部に並列されて加振器応答模擬部が模擬した加振器の応答に基づいてニューラルネットワークモデルを利用して供試体物理モデル部が求めた応答に加算する供試体の非線形応答を求める供試体非線形部とを備えていてもよい。このように構成された振動試験装置によれば、供試体の応答を学習して精度よく供試体を模擬して応答を求めるので、全く異なる供試体の試験を行う場合であっても、精緻に供試体と加振器の系全体を模擬して加振器の応答を求め得るから、加振器が供試体に対してより高精度に制御指令通りの振動を与えられるようになる。また、既知の物理モデルに従う応答を求める供試体物理モデル部と、実際の供試体の応答に現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した非線形応答を求める供試体非線形部とを備えているので、振動試験装置によれば、製品が同じで異なる供試体の試験を行う場合であっても、供試体非線形部が細かな調整を行うための学習をすれば足りるため、供試体の応答を得るための学習時間を短縮できる。
【0016】
さらに、振動試験装置は、加振器がシリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動自在に挿入されてピストンに連結されるロッドと、ポンプから吐出される作動油を伸側室と圧側室とに選択的に供給するサーボ弁とを備えたアクチュエータであって、同定部が加振器の周波数とサーボ弁の弁開度に対する加振器の応答特性を同定してもよい。このように同定部が目標指令の周波数とサーボ弁の弁開度に対する加振器の応答特性を同定すると、加振器の制御にあたりサーボ弁の弁開度の影響も加味したより最適な補正指令を求めることができ、より高精度に加振器を制御でき供試体により高精度に試験条件通りの振動を与えられる。
【0017】
また、同定部は、目標指令の周波数、サーボ弁の弁開度および供試体の温度に対する加振器の応答特性を同定してもよい。このように同定部が目標指令の周波数、サーボ弁の弁開度および供試体の温度に対する加振器の応答特性を同定すると、加振器の制御にあたり供試体の温度の影響も加味したより最適な補正指令を求めることができ、より高精度に加振器を制御でき供試体により高精度に試験条件通りの振動を与えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の振動試験装置によれば、試験条件通りに供試体に振動を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施の形態における振動試験装置のコントローラの制御ブロック図である。
図2】一実施の形態における振動試験装置の具体的な構成図である。
図3】加振器の応答のゲイン特性を示したマップである。
図4】加振器の応答の位相特性を示したマップである。
図5】同定部の構成を示した図である。
図6】加振器の応答のゲイン特性の逆特性を示したマップである。
図7】一実施の形態の第一変形例における振動試験装置のコントローラの制御ブロック図である。
図8】一実施の形態の第一変形例における振動試験装置の加振機応答模擬部の制御ブロック図である。
図9】(a)は、加振器物理モデル部が生成する変位を示した図である。(b)は、加振器線形部が生成する線形応答を示した図である。(c)は、加振器非線形部が生成する非線形応答を示した図である。(d)は、加振器応答模擬部が模擬した応答を示した図である。
図10】一実施の形態の第一変形例における振動試験装置の供試体応答模擬部の制御ブロック図である。
図11】(a)は、供試体物理モデル部が生成する変位を示した図である。(b)は、供試体非線形部が生成する非線形応答を示した図である。(c)は、供試体応答模擬部が模擬した応答を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態におけるダンパの振動試験装置1は、供試体としてのテレスコピック型のダンパDに振動を与える加振器Eと、加振器Eの応答として変位Xを検知する検知器としてのストロークセンサ2と、目標指令Urefに基づいて制御指令Ucを生成して加振器Eを制御するコントローラCとを備えている。
【0021】
以下、振動試験装置1の各部について詳細に説明する。供試体としてのダンパDは、シリンダ8と、シリンダ8内に出入りするロッド9とを備えたテレスコピック型のダンパとされており、シリンダ8に対してロッド9が軸方向に変位する伸縮時に減衰力を発揮する。
【0022】
他方、加振器Eは、図2に示すように、架台10と、架台10に設けられて図2中左右方向へ移動可能であってダンパDの一端を保持する保持部11と、架台10に設けられてダンパDの他端に接続されてダンパDに振動を与えるアクチュエータ13と、アクチュエータ13を架台10に取り付けるブラケット14とを備えている。
【0023】
アクチュエータ13は、シリンダ13aと、シリンダ13a内に移動自在に挿入されてシリンダ13a内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン13bと、シリンダ13a内に移動自在に挿入されてピストン13bに連結されるロッド13cと、ポンプPから供給される圧油を伸側室R1と圧側室R2とに選択的に送り込むサーボ弁13dとを備えている。
【0024】
サーボ弁13dは、詳細には図示はしないが、中空なハウジングと、ハウジング内に移動自在に挿入されるスプールと、スプールを駆動するソレノイドと、スプールを中立位置に位置決めするばねと、外部からの入力を受け取ってソレノイドを駆動する駆動回路とを備えている。ソレノイドは、駆動回路から供給される電流量に応じてスプールに与える推力を変更でき、スプールの位置を調節できる。そして、サーボ弁13dは、スプールの位置に応じて、前記伸側室へ圧油を供給するポジションと、前記圧側室へ圧油を供給するポジションと、両者への圧油の供給を遮断するポジションとに切り替わり、前記伸側室或いは前記圧側室へ圧油を供給するポジションではソレノイドへ供給される電流量に応じて弁開度を変化させて流量を調節する。
【0025】
本実施の形態では、サーボ弁13dは、入力として制御指令Ucを受けとるとソレノイドの推力を調整して、スプールのハウジングに対する位置を調節して、前記伸側室と前記圧側室のうち入力が指示する室に対して入力が指示する流量の圧油を供給する。アクチュエータ13は、伸側室と圧側室のうちサーボ弁13dから圧油の供給を受けた室を拡大させるとともに圧油の供給のない室を縮小させて、伸縮駆動する。このように、加振器Eは、コントローラCから入力を受けるとアクチュエータ13を伸縮駆動させてダンパDの一端を加振して、ダンパDに振動を与える。なお、駆動回路は、ソレノイドに流れる電流を検知する電流センサを備えており、電流センサで検知する電流をフィードバックして、コントローラCから入力される制御指令Uc通りにソレノイドへ電流を与える。なお、駆動回路は、サーボ弁13d側ではなく、コントローラCに内包されていてもよい。
【0026】
検知器としてのストロークセンサ2は、本実施の形態では、アクチュエータ13のシリンダ13aに対するロッド13cの相対的な変位Xを加振器Eの応答として検知し、コントローラCへ入力する。なお、本実施の形態の場合、加振器Eの応答として変位Xを検知するので、検知器をストロークセンサ2としているが、加振器Eの応答を荷重或いは速度とする場合には検知する対象に応じて適するセンサを検知器とすればよい。
【0027】
コントローラCは、図1に示すように、ニューラルネットワークモデルを利用して目標指令Urefに対する加振器Eの応答特性を同定する同定部3と、同定部3で同定した応答特性の逆特性に基づいて加振器Eの目標指令Urefを補正して補正指令Uaを求める補正部4と、補正指令Uaに基づいて制御指令Ucを生成して加振器Eを制御する制御部5とを備えている。目標指令Urefは、供試体であるダンパDに所定周波数の正弦波振動を繰り返し与える指令となっており、コントローラCは、目標指令Urefが入力されると制御指令Ucを生成して加振器Eを制御する。
【0028】
本実施の形態では、同定部3は、予め目標指令Urefに対する加振器Eの応答特性を同定する。加振器Eの応答特性の同定のため、同定部3は、スイープ信号の入力によってコントローラCが加振器Eへ制御指令Ucを与えて供試体であるダンパDに振動を与える際に、ストロークセンサ2で検知する変位Xと、コントローラCが加振器Eへ与える前記スイープ信号と、サーボ弁13dの弁開度の入力を受けて、ニューラルネットワークモデルを利用して、加振器Eへ与える制御指令の周波数とサーボ弁13dの弁開度に対する加振器Eの応答である変位Xのゲインと位相を得るまでの前記周波数と前記弁開度に乗じる重みづけ係数を加振器Eの応答特性として同定する。
【0029】
スイープ信号は、振幅と周波数を指示する指令となっているので、同定部3は、スイープ信号が指示する加振器Eを伸縮させる周波数を把握することができる。また、サーボ弁13dの弁開度は、サーボ弁13dに供給される電流量と弁開度とが一対一の関係にあるので、前記スイープ信号が指示するサーボ弁13dへ供給する電流量から求めることができるので、スイープ信号の入力によって同定部3はサーボ弁13dの弁開度を把握できる。
【0030】
図3に示すように、コントローラCに入力される指令が指示する振動の周波数が高くなると、加振器Eの応答が小さくなる、つまり、変位Xの振幅が小さくなる傾向となる。つまり、周波数が高くなると加振器Eの変位Xにおけるゲインが小さくなる。また、図4に示すように、コントローラCに入力される指令が指示する振動の周波数が高くなると、加振器Eの応答が遅れる、つまり、指令に対して変位Xが遅れる傾向となる。
【0031】
さらに、図3に示すように、サーボ弁13dの弁開度が小さくなると、振動の周波数が高くなった際の変位Xのゲインの落ち込み度合が小さくなる。つまり、サーボ弁13dの弁開度が大きくなると、同じ周波数でも変位Xのゲインが小さくなる。また、図4に示すように、コントローラCに入力される指令が指示する弁開度が大きくなると、加振器Eの応答が遅れる、つまり、指令に対して変位Xが遅れる傾向となる。
【0032】
同定部3は、周波数と弁開度を入力として変位Xのゲインを得るまでの重みづけ係数を加振器Eの応答のゲインと位相の特性を応答特性としてニューラルネットワークモデルを利用して同定する。
【0033】
具体的には、同定部3は、図5に示すように、スイープ信号が指示する周波数、弁開度を入力層に入力する情報とし、出力層をストロークセンサ2が検知する変位Xのゲインとして、各情報に乗じる重みづけ係数W11,W12,・・・W1n,W21,W22,・・・W2n,W31と、中間層のn個の情報y1,y2,・・・,ynに乗じる係数W31,W32,・・・W3nを入力層の周波数と弁開度の入力に対して変位Xのゲインが得られるように同定する。同様に、同定部3は、図5に示すように、スイープ信号が指示する周波数、弁開度を入力層に入力する情報とし、出力層をストロークセンサ2が検知する変位Xの位相として、各情報に乗じる重みづけ係数W11,W12,・・・W1n,W21,W22,・・・W2n,W31と、中間層のn個の情報y1,y2,・・・,ynに乗じる係数W31,W32,・・・W3nを入力層の周波数と弁開度の入力に対して変位Xの位相が得られるように同定する。
【0034】
このようにして同定した重みづけ係数は、加振器Eの周波数と弁開度を入力とした場合に変位Xのゲインと位相を得るための係数となっており、両者は加振器Eの応答特性を特徴づける係数となっている。この加振器Eの応答特性は、ダンパDの特性も含めた系全体としての応答特性である。なお、同定部3による学習には、Adamの学習則の他、種々の学習則を利用可能である。
【0035】
そして、同定部3によって同定された加振器Eの応答特性の逆特性を得れば、コントローラCは、その時の加振器Eへ与える制御指令の周波数とサーボ弁13dの弁開度に応じて前記逆特性を用いて目標指令Urefを補正して、加振器Eの応答である変位Xを目標指令Uref通りに制御できる。
【0036】
なお、シリンダ8内の作動油の温度が変化すると、ダンパDの減衰特性は変化する。具体的には、ダンパD内の作動油の温度が上昇すると、作動油の粘度が低下してダンパDの減衰係数が低下するので、ダンパDの減衰力が低下する。このようなダンパDの減衰特性の変化に対応する場合、ダンパDの温度を温度センサで検知して、温度センサで検知したダンパDの温度を周波数、弁開度とともに同定部3に入力してゲインと位相を得るための重みづけ係数を加振器Eの応答特性として同定すればよい。ニューラルネットワークモデルでは、情報量が増えても、学習によって重みづけ係数を最適化できるので、制御に必要な加振器Eの応答特性を同定できる。
【0037】
また、同定部3は、振動試験中も絶えず、目標指令Urefと変位Xの入力を得て、周波数および弁開度に対する変位Xの応答特性を学習によって同定し、応答特性を更新し続ける。なお、本実施の形態では、学習時間を短縮するためにスイープ信号の入力によってコントローラCが加振器Eを制御して供試体であるダンパDに振動を与え、同定部3が予め加振器Eの応答特性を同定している。ただし、同定部3は、振動試験に際して予め応答特性を同定していなくとも、目標指令Urefの入力による振動試験が進めば加振器Eの応答特性を学習して、順次更新して最適化できる。
【0038】
補正部4は、目標指令Urefの入力を受けて同定部3が同定した応答特性の逆特性に基づいて、目標指令Uerfを補正して補正指令Uaを求める。ここで、同定部3の応答特性の同定によって得られるゲインと位相は、ゲインをrとし、位相をθとすると複素平面のある点zを極座標と用いて表現するとz=r(cosθ+i・sinθ)として示すことができる。ある周波数と弁開度に対してゲインrと位相θが同定されているので、補正部4は、この逆特性を求め、目標指令が指示する点をフーリエ変換して複素平面に写像してから逆特性を用いて同じ複素平面内で補正し、補正後の点を逆フーリエ変換によって、ユークリッド平面に写像して、補正後の目標指令Uaを得る。
【0039】
なお、、補正部4は、目標指令Urefが指示する周波数と弁開度をパラメータとした応答特性の逆特性のマップを用意しておき、マップ演算によってゲイン補償と位相補償とを行って目標指令Urefを補正して補正指令Uaを求めてもよい。
【0040】
このように目標指令Urefに対する加振器Eの応答のゲイン特性の逆特性は、マップとして示すと、図6に示すような3次元マップとなる。このマップは、周波数と弁開度の双方に対する加振器Eの変位Xの応答特性の逆特性となっているので、図6に示すように、周波数が高くなるとゲインを大きくし、弁開度が大きくなるとゲインを大きくするマップとなっている。なお、図示はしないが、位相特性の逆特性もマップとして示すと3次元マップとなる。
【0041】
ただし、3次元マップを利用する場合、コントローラCの記憶容量を圧迫するので、補正部4は、実際には図6に示したゲイン特性の逆特性の3次元マップと位相特性の逆特性の3次元マップを保有せず、前述のように、フーリエ変換によって目標指令を複素平面内に写像して、目標指令Urefが指示する振動の周波数とサーボ弁13dの弁開度に対応する逆特性に基づいてこの写像を補正し、補正後の写像を逆フーリエ変換して、補正指令Uaを求める。
【0042】
本実施の形態では、補正部4は、マップを用いずに補正指令Uaを求めるので、コントローラCの記憶容量の軽減につながる。このようにして補正部4が逆特性に基づいて目標指令Uerfを補正すると、補正後の補正指令Uaは、加振器Eの応答特性を踏まえて目標指令Uref通りに加振器Eに応答させるのに適した指令となる。
【0043】
ここで、目標指令Urefは、加振器Eを正弦波振動させる指令であり、アクチュエータ13が理想的な正弦波で伸縮する変位を指示する指令となっている。目標指令Urefを加振器Eに入力すると、ダンパDの特性が加味された加振器Eの応答特性によって周波数や弁開度によってゲインと位相が変化するのでアクチュエータ13の変位Xは目標指令Urefが指示する変位に対してずれる。そこで、補正部4で同定部3が生成した加振器Eの応答特性の逆特性に基づいて目標指令Urefに乗じて補正すれば、加振器Eの変位Xを目標指令Urefが指示する変位と一致させる補正指令Uaが得られる。
【0044】
このようにして補正部4によって目標指令Urefが補正されて補正指令Uaが求められると、補正部4は、補正指令Uaを制御部5へ入力する。制御部5は、補正指令Uaの入力を受けて補正指令Uaに基づいて制御指令Ucを生成して、制御指令Ucを加振器Eへ入力する。
【0045】
制御部5は、目標指令Urefを補正する補正部4が出力する補正指令Uaとストロークセンサ2が検知した変位Xとの偏差を求めてPID補償して制御指令Ucを生成するPID補償器とされており加振器Eをフィードバック制御する。本実施の形態では、制御部5は、PID補償器とされているが、PI補償器とされてもよし、H∞制御器とされてもよい。
【0046】
このように構成された振動試験装置1は、以下のように動作する。コントローラCに目標指令Urefが入力されると加振器Eが供試体であるダンパDに振動を与え、ストロークセンサ2が所定のサンプリング周期で加振器Eの変位Xを検知してコントローラCに入力する。同定部3は、目標指令Urefと加振器Eの変位Xの入力によって、加振器Eの振動中に加振器Eの応答特性を学習して応答特性を同定して順次更新する。補正部4は、応答特性としての重みづけ係数を参照してその逆特性に基づいて目標指令Urefを補正して補正指令Uaを生成し、制御部5が補正指令Uaと変位Xの偏差をPID補償して制御指令Ucを生成して、加振器Eのサーボ弁13dへ制御指令Ucを与える。制御指令Ucが入力されたサーボ弁13dは、スプールの位置を制御指令Ucが指示する通りに調節して、アクチュエータ13を伸縮させる。アクチュエータ13が伸縮状況はストロークセンサ2によってモニタされており、変位Xを絶えずコントローラCに入力して、同定部3の加振器Eの応答特性の同定と加振器Eの制御が並行して行われ、目標指令Urefを補正するために参照される応答特性が絶えず最適化される。
【0047】
以上のように、本実施の形態の振動試験装置1は、ダンパ(供試体)Dに振動を与える加振器Eと、目標指令Urefに基づいて加振器Eを制御するコントローラCとを備え、コントローラCがニューラルネットワークモデルを利用して目標指令Urefに対する加振器Eの応答特性を同定する同定部3と、同定部3で求めた応答特性の逆特性に基づいて目標指令Urefを補正して補正指令Uaを求める補正部4と、補正指令Uaに基づいて加振器Eを制御する制御部5とを備えている。このように構成された振動試験装置1は、ニューラルネットワークモデルを利用した同定部3による加振器Eの応答特性の同定を行って目標指令Urefを補正するために参照される応答特性を絶えず最適化しつつ、加振器Eを制御することができる。したがって、振動試験装置1によれば、製品は同じでも異なるダンパ(供試体)Dに振動を与える場合であっても加振器Eおよびダンパ(供試体)Dでなる系全体の特性が変化しても最適な制御指令Ucを生成して、試験条件に合致する理想的な振動をダンパ(供試体)Dに与えられる。また、補正部4で参照する応答特性は、ニューラルネットワークモデルを利用した同定部3によって同定されて最適化されるので、応答特性にノイズが残ってしまうのを防止できるので、加振器Eが与える振動にノイズが重畳したり歪みが生じたりしてしまう恐れもない。以上より、本実施の形態の振動試験装置1によれば、試験条件通りにダンパ(供試)Dに振動を与えることができる。
【0048】
また、同定部3は、ニューラルネットワークモデルを利用しているので、入力される情報がいくら増えても加振器Eの応答特性を同定できるので、加振器Eの応答が変化する因子に対して目標指令Urefを補正し得る。
【0049】
さらに、同定部3は、ニューラルネットワークモデルを利用して加振器Eの応答特性を同定するので、状態方程式や伝達関数を利用した同定に比べて、容易に応答特性を同定できる。
【0050】
そして、同定部3は、ニューラルネットワークモデルを利用して直接に制御指令を求めるのではなく、ニューラルネットワークモデルを利用して加振器Eの応答特性を求めるので、データ量を圧縮できるほか、不連続なテーブルではなくデータの値が連続的に変化するような応答特性を同定でき加振器Eの制御性も向上する。
【0051】
さらに、本実施の形態の振動試験装置1では、加振器Eがシリンダ13aと、シリンダ13a内に移動自在に挿入されてシリンダ13a内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン13bと、シリンダ13a内に移動自在に挿入されてピストン13bに連結されるロッド13cと、ポンプPから吐出される作動油を伸側室R1と圧側室R2とに選択的に供給するサーボ弁13dとを備えたアクチュエータ13であって、同定部3が加振器Eの周波数とサーボ弁13dの弁開度に対する加振器Eの応答特性を同定する。このように同定部3が目標指令Urefの周波数とサーボ弁13dの弁開度に対する加振器Eの応答特性を同定すると、加振器Eの制御にあたりサーボ弁13dの弁開度の影響も加味したより最適な補正指令Uaを求めることができ、より高精度に加振器Eを制御できダンパ(供試体)Dにより高精度に試験条件通りの振動を与えられる。
【0052】
また、同定部3が目標指令Urefの周波数、サーボ弁13dの弁開度およびダンパ(供試体)Dの温度に対する加振器Eの応答特性を同定してもよい。このように同定部3が目標指令Urefの周波数、サーボ弁13dの弁開度およびダンパ(供試体)Dの温度に対する加振器Eの応答特性を同定すると、加振器Eの制御にあたりダンパ(供試体)Dの温度の影響も加味したより最適な補正指令Uaを求めることができ、より高精度に加振器Eを制御できダンパ(供試体)Dにより高精度に試験条件通りの振動を与えられる。
【0053】
つづいて、制御部5は、図7に示すように、構成されてもよい。一実施の形態の第一変形例における振動試験装置1aの制御部5は、目標指令Urefを補正する補正部4が出力する補正指令Uaとストロークセンサ2が検知した変位Xとの偏差を求めてPID補償して操作指令Ubを生成するフィードバック部としてのPID補償器5aと、加振器Eに与える制御指令Ucの入力に対して加振器Eの応答である変位Xsを模擬して出力する規範モデル部5bと、ストロークセンサ2で検知した加振器Eの変位Xと規範モデル部5bが模擬した変位Xsとの差ΔXを求める加算器5cと、差ΔXと操作指令Ubとを加算して制御指令Ucを求める加算器5dとを備えている。
【0054】
PID補償器5aは、目標指令Urefを補正する補正部4が出力する補正指令Uaと、ストロークセンサ2が検知した変位Xとの偏差を求めてPID補償して操作指令Ubを生成するPID補償器とされている。本実施の形態では、PID補償器5aは、PID補償器とされているが、PI補償器とされてもよいし、H∞制御器とされてもよい。
【0055】
規範モデル部5bは、図7に示すように、加振器Eの変位Xsを模擬する加振器応答模擬部5b1と、加振器応答模擬部5b1が模擬した変位Xsの入力によりダンパDの応答として荷重Fdを模擬する供試体応答模擬部5b2とを備えている。加振器応答模擬部5b1は、制御指令Ucと供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパDの荷重Fdとの入力により加振器Eの変位Xsを模擬して出力する。
【0056】
加振器応答模擬部5b1は、図8に示すように、具体的には、加振器物理モデル部5b11と、加振器物理モデル部5b11に並列される加振器線形部5b12と、加振器物理モデル部5b11と加振器線形部5b12とに並列される加振器非線形部5b13と、加振器物理モデル部5b11、加振器線形部5b12および加振器非線形部5b13の各出力を加算する加算器5b14とを備えている。
【0057】
加振器物理モデル部5b11は、制御指令Ucと供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパDの荷重Fdとに基づいて、加振器Eの物理モデルを利用して加振器Eの変位X1を求める。加振器Eの物理モデルは、加振器Eの系を表現したものであり、物理モデルに制御指令Ucが指示する変位とダンパDから受ける荷重とパラメータとして入力すると応答としての変位X1を求め得るものである。物理モデルは、任意に設計でき、パラメータの係数等には設計値を用いてもよいし、機械学習による最適化問題の解を入力してもよい。加振器物理モデル部5b11が求める変位X1は、物理モデルの応答であるから、制御指令Ucや荷重Fdにノイズが重畳していなければ、図9(a)に示すように、外乱やノイズを含まない正弦波波形を持つものとなる。
【0058】
加振器線形部5b12は、加振器物理モデル部5b11と加振器非線形部5b13とに並列されて、ニューラルネットワークモデルを利用して制御指令Ucおよび供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパDの荷重Fdに基づいて線形応答X2を求める。線形応答X2は、加振器物理モデル部5b11が求めた変位X1に加算されて加振器物理モデル部5b11の変位X1の位相および振幅を補正する値である。加振器線形部5b12は、ニューラルネットワークモデルを利用して制御指令Ucが指示する周波数、弁開度および荷重Fdの入力から加振器Eの変位Xを得るまでの重みづけ係数を同定し、同定した重みづけ係数を利用して制御指令Ucと荷重Fdの入力から線形応答X2を求める。詳細には、加振器線形部5b12は、制御指令Ucが指示する周波数、弁開度およびダンパDの荷重Fdを入力層に入力して、各情報に重みづけ係数を乗じて重みづけして出力層の線形応答X2を得る。このように、加振器線形部5b12は、学習によって、入力層から中間層を得る重みづけ係数と、中間層から出力層を得る重みづけ係数を同定することによって加振器Eの応答特性を同定する。こうして得られた線形応答X2は、図9(b)に示すように、実際の加振器Eの応答特性によって生じる変位X1と変位Xのずれを修正する信号である。なお、加振器線形部5b12による学習には、Adamの学習則の他、種々の学習則を利用可能である。
【0059】
そして、加振器非線形部5b13は、加振器物理モデル部5b11と加振器線形部5b12とに並列されて、ニューラルネットワークモデルを利用して制御指令Ucおよび供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパDの荷重Fdに基づいて加振器Eの非線形応答X3を求める。
【0060】
加振器非線形部5b13は、ニューラルネットワークモデルを利用して制御指令Ucおよび荷重Fdの入力から加振器Eの変位Xに重畳されているノイズや歪みといった高周波の非線形応答X3を求める。加振器非線形部5b13は、制御指令Ucが指示する周波数、弁開度およびダンパDの荷重Fdを入力層に入力して、各情報に重みづけ係数を乗じて重みづけして出力層の非線形応答X3を得る。つまり、加振器非線形部5b13は、学習によって、入力層から中間層を得る重みづけ係数と、中間層から出力層を得る重みづけ係数を同定することによって加振器Eの非線形応答X3を求める。こうして得られた非線形応答X3は、図9(c)に示すように、加振器Eの応答特性に起因しない実際の加振器Eの変位Xに現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した信号となる。なお、加振器非線形部5b13による学習には、Adamの学習則の他、種々の学習則を利用可能である。
【0061】
加算器5b14は、図9(d)に示すように、加振器物理モデル部5b11が求めた変位X1と、加振器線形部5b12が求めた線形応答X2と、加振器非線形部5b13が求めた非線形応答X3を加算して、加振器Eの応答を模擬した変位Xsを求める。
【0062】
加振器応答模擬部5b1は、既知の物理モデルに従う変位X1を加振器物理モデル部5b11で求め、加振器Eの応答特性に起因した線形応答X2を加振器物理モデル部5b11に並列される加振器線形部5b12で求め、加振器Eの応答特性に起因しない実際の加振器Eの変位Xに現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した非線形応答X3を加振器物理モデル部5b11と加振器線形部5b12とに並列される加振器非線形部5b13で求め、加振器物理モデル部5b11、加振器線形部5b12および加振器非線形部5b13の各出力を加算して変位Xsを求める。したがって、加振器応答模擬部5b1は、ダンパDの特性を含めた加振器Eの変位Xを学習して精度よく加振器Eを模擬して変位Xsを求め得る。
【0063】
なお、加振器線形部5b12を省略して、加振器Eの応答特性の成分についても加振器非線形部5b13の学習によって模擬し、加振器応答模擬部5b1を加振器物理モデル部5b11と加振器物理モデル部5b11に並列される加振器非線形部5b13と、変位X1と非線形応答X3とを加算する加算器5b14とで構成してもよい。ただし、加振器線形部5b12を設けることで、加振器Eの応答特性による成分を学習できるから、実際の加振器Eの変位Xと高精度で一致する変位Xsを得るまでの学習時間を短縮できる。
【0064】
このようにして加振器応答模擬部5b1が模擬した変位Xsは、供試体応答模擬部5b2に入力される。供試体応答模擬部5b2は、図10に示すように、具体的には、ダンパDの応答として荷重F1を求める供試体物理モデル部5b21と、ダンパDの非線形応答F2を求める供試体非線形部5b22と、供試体物理モデル部5b21および供試体非線形部5b22の各出力を加算する加算器5b23とを備えている。
【0065】
供試体物理モデル部5b21は、加振器応答模擬部5b1が模擬した変位Xsに基づいて、ダンパDの物理モデルを利用してダンパDの荷重F1を求める。ダンパDの物理モデルは、ダンパDをマクスウェルモデル、ケルビンフォークトモデル或いは標準線形固体モデル等で表現したものであり、物理モデルに変位Xsをパラメータとして入力すると応答としての荷重F1を求め得るものである。物理モデルは、任意に設計でき、パラメータの係数等には設計値を用いてもよいし、機械学習による最適化問題の解を入力してもよい。供試体物理モデル部5b21が求める荷重F1は、物理モデルの応答であるから、制御指令Ucや荷重Fdにノイズが重畳していなければ、図11(a)に示すように、外乱やノイズを含まない正弦波波形を持つものとなる。
【0066】
供試体非線形部5b22は、ニューラルネットワークモデルを利用して加振器応答模擬部5b1が模擬した変位XsからダンパDの荷重に重畳されているノイズや歪みといった高周波の非線形応答F2を求める。供試体非線形部5b22は、変位Xsを入力層に入力して、加振器Eに設けたロードセル15で検知したダンパDの荷重Fを出力層として、変位Xsから荷重Fを得るまでの重みづけ係数を学習して同定する。つまり、供試体非線形部5b22は、学習によって、入力層から中間層を得る重みづけ係数と、中間層から出力層を得る重みづけ係数を同定する。そして、供試体非線形部5b22は、同定した重みづけ係数を利用して加振器応答模擬部5b1が模擬した変位XsからダンパDの非線形応答F2を求める。こうして得られた非線形応答F2は、図11(b)に示すように、ダンパDが持つヒステリシスや摩擦等の影響によって実際のダンパDの荷重Fdに現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した信号となる。なお、供試体非線形部5b22による学習には、Adamの学習則の他、種々の学習則を利用可能である。
【0067】
加算器5b23は、図11(c)に示すように、供試体物理モデル部5b21が求めた荷重F1と、供試体非線形部5b22が求めた非線形応答F2を加算して、ダンパDの応答を模擬した荷重Fdを求める。
【0068】
供試体応答模擬部5b2は、既知の物理モデルに従う荷重F1を供試体物理モデル部5b21で求め、実際のダンパDの荷重に現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した非線形応答F2を供試体物理モデル部5b21に並列される供試体非線形部5b22で求め、供試体物理モデル部5b21および供試体非線形部5b22の各出力を加算して荷重Fdを求める。したがって、供試体応答模擬部5b2は、ダンパDの荷重を学習して精度よくダンパDを模擬して荷重Fdを求め得る。このようにして供試体応答模擬部5b2が模擬した荷重Fdは、加振器応答模擬部5b1に入力されて、加振器応答模擬部5b1の変位Xsの生成に利用される。
【0069】
そして、規範モデル部5bは、振動試験装置1によるダンパDの試験中に順次入力される制御指令Ucから変位Xsを模擬して加算器5cに入力する。加算器5cは、変位Xsの他、ストロークセンサ2が検知した変位Xの入力を受けて、変位Xと変位Xsの差ΔXを求める。加算器5cが求めた差ΔXは、操作指令Ubとともに加算器5dに入力され、加算器5dは、差ΔXと操作指令Ubとを加算して制御指令Ucを求める。加算器5dが求めた制御指令Ucは、加振器Eと規範モデル部5bの双方に入力される。
【0070】
このように構成された振動試験装置1aは、以下のように動作する。コントローラCに目標指令Urefが入力されると加振器Eが供試体であるダンパDに振動を与え、ストロークセンサ2が所定のサンプリング周期で加振器Eの変位Xを検知してコントローラCに入力される。同定部3は、目標指令Urefと加振器Eの変位Xの入力によって、加振器Eの振動中に加振器Eの応答特性を学習して同定して順次更新する。補正部4は、応答特性の逆特性に基づいて目標指令Urefを補正して補正指令Uaを生成する。制御部5は、補正指令UaをPID補償して操作指令Ubを求め、さらに、規範モデル部5bが模擬した変位Xsとストロークセンサ2が検知した変位Xとの差ΔXで操作指令Ubを修正して制御指令Ucを求めて、加振器Eのサーボ弁13dへ制御指令Ucを与える。また、制御部5は、制御指令Ucを求めると規範モデル部5bに入力して加振器Eの応答特性および非線形応答、ダンパDの特性を順次学習し、加振器Eの変位を模擬した変位Xsを求める。制御指令Ucが入力されたサーボ弁13dは、スプールの位置を制御指令Ucが指示する通りに調節して、アクチュエータ13を伸縮させる。アクチュエータ13が伸縮状況はストロークセンサ2によってモニタされており、変位Xを絶えずコントローラCに入力して、同定部3の加振器Eの応答特性の同定と加振器Eの制御が並行して行われ、目標指令Urefを補正するために参照される応答特性が絶えず最適化される。また、制御部5は、規範モデル部5bにて加振器Eと供試体であるダンパDの特性を学習し、加振器Eの変位を模擬した変位Xsを求めて、変位Xと模擬した変位Xsとの差ΔXで操作指令Ubを修正して制御指令Ucを求めるので、実際の加振器Eの変位Xと規範モデル部5bの変位Xsとの差を調節するように制御指令Ucが修正されるので、加振器Eの変位Xをより高精度に目標指令Uref通りに追従させ得る。
【0071】
以上より、本実施の形態の振動試験装置1aは、ダンパ(供試体)Dに振動を与える加振器Eと、目標指令Urefに基づいて加振器Eを制御するコントローラCとを備え、コントローラCがニューラルネットワークモデルを利用して目標指令Urefに対する加振器Eの応答特性を同定する同定部3と、同定部3で求めた応答特性の逆特性に基づいて目標指令Urefを補正して補正指令Uaを求める補正部4と、補正指令Uaに基づいて目標指令Urefを生成して加振器Eを制御する制御部5と、加振器Eの応答を検知するストロークセンサ(検知器)2とを備え、制御部5がストロークセンサ(検知器)2で検知した加振器Eの変位(応答)Xと補正指令Uaとの偏差に基づいて操作指令Ubを求めるPID補償器(フィードバック部)5aと、加振器Eに与える制御指令Ucの入力に対して加振器Eの変位(応答)Xsを模擬して出力する規範モデル部5bを有し、ストロークセンサ(検知器)2で検知した加振器Eの変位(応答)Xと規範モデル部5bが模擬した変位(応答)Xsとの差と操作指令Ubとに基づいて制御指令Ucを求めている。
【0072】
このように構成された振動試験装置1aは、ニューラルネットワークモデルを利用した同定部3による加振器Eの応答特性の同定を行って目標指令Urefを補正するために参照される応答特性を絶えず最適化しつつ、加振器Eを制御することができる。したがって、振動試験装置1aによれば、製品は同じでも異なるダンパ(供試体)Dに振動を与える場合であっても加振器Eおよびダンパ(供試体)Dでなる系全体の特性が変化しても最適な制御指令Ucを生成して、試験条件に合致する理想的な振動をダンパ(供試体)Dに与えられる。また、補正部4で参照する応答特性は、ニューラルネットワークモデルを利用した同定部3によって同定されて最適化され、応答特性にノイズが残ってしまうのを防止できるので、加振器Eが与える振動にノイズが重畳したり歪みが生じたりしてしまう恐れもない。以上より、本実施の形態の振動試験装置1によれば、試験条件通りにダンパ(供試)Dに振動を与えることができる。
【0073】
また、このように構成された振動試験装置1aは、規範モデル部5bにて加振器Eの変位(応答)Xsを模擬して、変位(応答)Xと模擬した変位(応答)Xsとの差ΔXで操作指令Ubを修正して制御指令Ucを求めるので、実際の加振器Eの変位Xと規範モデル部5bの変位(応答)Xsとの差を調節するように制御指令Ucが修正でき、加振器Eの変位(応答)Xをより高精度に目標指令Uref通りに追従させ得る。なお、規範モデル部5bにおいて、ニューラルネットワークモデルを利用せず、伝達関数や状態方程式或いはあらかじめ用意したテーブルやマップを利用して加振器Eの変位Xsを模擬して出力することも可能である。ただし、振動試験装置1aは、規範モデル部5bにおいてニューラルネットワークモデルを利用した学習によって変位Xsを求めると、より精度よく加振器Eの変位(応答)Xに一致する変位(応答)Xsを求め得るので、加振器Eの変位Xをより効果的に目標指令Uref通りに追従させ得る。
【0074】
さらに、本実施の形態の振動試験装置1aは、規範モデル部5bが加振器Eの変位(応答)Xsを模擬する加振器応答模擬部5b1と、加振器応答模擬部5b1が模擬した変位(応答)Xsの入力によりダンパ(供試体)Dの荷重(応答)Fdを模擬する供試体応答模擬部5b2とを有し、加振器応答模擬部5b1が制御指令Ucと供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパ(供試体)Dの荷重(応答)Fdとの入力により加振器Eの変位(応答)Xsを模擬して出力してもよい。このように構成された振動試験装置1aでは、規範モデル部5bが加振器Eの変位(応答)Xsを模擬し、さらに、模擬された変位(応答)Xsの入力を受けたダンパ(供試体)Dの荷重(応答)Fdを模擬するので、実際の加振器Eとダンパ(供試体)Dの系を模擬して変位(応答)Xsを求めることができる。よって、本実施の形態の振動試験装置1aによれば、実際の系に即して加振器Eの規範となる変位(応答)Xsを求めることができ、加振器Eがダンパ(供試体)Dに対して精度よく目標指令Uref通りの振動を与えられるようになる。
【0075】
また、本実施の形態の振動試験装置1aは、加振器応答模擬部5b1が制御指令Ucと供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパ(供試体)Dの荷重(応答)Fdとに基づいて加振器Eの物理モデルを利用して加振器Eの変位(応答)X1を求める加振器物理モデル部5b11と、加振器物理モデル部5b11に並列されて制御指令Ucと供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパ(供試体)Dの荷重(応答)Fdとに基づいてニューラルネットワークモデルを利用して加振器物理モデル部5b11が求めた変位(応答)X1に加算する加振器Eの非線形応答X3を求める加振器非線形部5b13とを備えていてもよい。このように振動試験装置1aでは、加振器応答模擬部5b1が既知の物理モデルに従う変位(応答)X1を加振器物理モデル部5b11で求め、加振器Eの応答特性に起因しない実際の加振器Eの変位(応答)Xに現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した非線形応答X3を加振器物理モデル部5b11に並列される加振器非線形部5b13で求めるので、ダンパDの特性を含めた加振器Eの変位(応答)Xを学習して精度よく加振器Eを模擬して変位(応答)Xsを求め得る。よって、前述のように構成された振動試験装置1aによれば、学習によって精度よく加振器Eを模擬して変位(応答)Xsを求め得るから、加振器Eがダンパ(供試体)Dに対してより高精度に目標指令Uref通りの振動を与えられるようになる。
【0076】
さらに、本実施の形態の振動試験装置1aは、加振器物理モデル部5b11および加振器非線形部5b13とに並列されて、ニューラルネットワークモデルを利用して制御指令Ucおよび供試体応答模擬部5b2が模擬したダンパ(供試体)Dの荷重(応答)Fdに基づいて加振器物理モデル部5b11が求めた変位(応答)X1に加算する線形応答X2を求める加振器線形部5b12とを備えていてもよい。このように振動試験装置1aでは、加振器応答模擬部5b1が既知の物理モデルに従う変位(応答)X1を加振器物理モデル部5b11で求め、加振器Eの応答特性に起因した線形応答X2を加振器物理モデル部5b11に並列される加振器線形部5b12で求め、加振器Eの応答特性に起因しない実際の加振器Eの変位(応答)Xに現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した非線形応答X3を加振器物理モデル部5b11に並列される加振器非線形部5b13で求めるので、ダンパDの特性を含めた加振器Eの変位Xを学習して精度よく加振器Eを模擬して変位(応答)Xsを求め得る。よって、前述のように構成された振動試験装置1aによれば、学習によって精度よく加振器Eを模擬して変位(応答)Xsを求め得るから、加振器Eがダンパ(供試体)Dに対してより高精度に目標指令Uref通りの振動を与えられるようになる。また、前述のように構成された振動試験装置1aによれば、加振器線形部5b12を設けることで、加振器Eの応答特性による成分を学習できるから、実際の加振器Eの変位(応答)Xと高精度で一致する模擬変位(応答)Xsを得るまでの学習時間を短縮できる。
【0077】
さらに、本実施の形態の振動試験装置1aは、供試体応答模擬部5b2が、加振器応答模擬部5b1が模擬した加振器Eの変位(応答)Xsに基づいてダンパ(供試体)Dの物理モデルを利用してダンパ(供試体)Dの荷重(応答)F1を求める供試体物理モデル部5b21と、供試体物理モデル部5b21に並列されて加振器応答模擬部5b1が模擬した加振器Eの変位(応答)Xsに基づいてニューラルネットワークモデルを利用して供試体物理モデル部5b21が求めた荷重(応答)F2に加算するダンパ(供試体)Dの非線形応答F2を求める供試体非線形部5b22とを備えていてもよい。このように、振動試験装置1aは、既知の物理モデルに従う荷重(応答)F1を供試体物理モデル部5b21で求め、実際のダンパDの荷重に現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した非線形応答F2を供試体物理モデル部5b21に並列される供試体非線形部5b22で求め、供試体物理モデル部5b21および供試体非線形部5b22の各出力を加算して荷重(応答)Fdを求めるので、ダンパDの荷重を学習して精度よくダンパDを模擬して荷重(応答)Fdを求め得る。よって、前述このように構成された振動試験装置1aによれば、ダンパ(供試体)Dの荷重を学習して精度よくダンパ(供試体)Dを模擬して荷重(応答)Fdを求めるので、全く異なる供試体の試験を行う場合であっても、精緻に供試体と加振器Eの系全体を模擬して加振器Eの変位(応答)Xsを求め得るから、加振器Eが供試体に対してより高精度に目標指令Uref通りの振動を与えられるようになる。また、既知の物理モデルに従う荷重(応答)F1を求める供試体物理モデル部5b21と、実際のダンパDの荷重(応答)に現れる非線形なノイズや歪みの成分を模擬した非線形応答F2を求める供試体非線形部5b22とを備えているので、前述このように構成された振動試験装置1aによれば、製品が同じで異なるダンパ(供試体)Dの試験を行う場合であっても、供試体非線形部5b22が細かな調整を行うための学習をすれば足りるため、ダンパ(供試体)Dの荷重(応答)Fdを得るための学習時間を短縮できる。
【0078】
なお、本実施の形態の振動試験装置1,1aの説明にあたり、供試体をダンパDとしているが、ダンパD以外の供試体の試験にも利用できる。その場合、規範モデル部5bにおける供試体応答模擬部5b2で供試体の応答の模擬できるように設計変更すればよい。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1,1a・・・振動試験装置、2・・・ストロークセンサ(検知器)、3・・・同定部、4・・・補正部、5・・・制御部、5a・・・PID補償器(フィードバック部)、5b・・・規範モデル部、5b1・・・加振器応答模擬部、5b11・・・加振器物理モデル部、5b12・・・加振器線形部、5b13・・・加振器非線形部、5b2・・・供試体応答模擬部、5b21・・・供試体物理モデル部、5b22・・・供試体非線形部、13・・・アクチュエータ、13a・・・シリンダ、13b・・・ピストン、13c・・・ロッド、13d・・・サーボ弁、C・・・コントローラ、D・・・ダンパ(供試体)、E・・・加振器、P・・・ポンプ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室
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