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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】搬送処理装置および搬送処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20230704BHJP
   B07C 5/342 20060101ALI20230704BHJP
   B65G 47/52 20060101ALI20230704BHJP
   B65G 47/08 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B07C5/342
B65G47/52 B
B65G47/08 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019167026
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041062
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中野 信行
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 尚充
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 侑弥
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186962(JP,A)
【文献】特許第6510102(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B07C 5/342
B65G 47/52
B65G 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送して表面に所定の処理を行う搬送処理装置であって、
錠剤を保持しつつ前記搬送方向に搬送する第1搬送機構と、
錠剤を1つずつ吸着保持する複数の吸着孔を前記搬送方向に移動させる第2搬送機構と、
前記第2搬送機構による搬送経路上の処理位置において、錠剤の表面に前記所定の処理を行う処理部と、
前記処理位置よりも前記搬送方向の上流側の受け渡し位置において、前記第1搬送機構から前記第2搬送機構の前記吸着孔へ錠剤を受け渡す移載機構と、
前記処理位置よりも前記搬送方向の下流側の判定位置において、錠剤の処理状態の良否を判定する判定部と、
前記判定位置よりも前記搬送方向の下流側の不良品排出位置において、前記判定部により不良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、不良品回収口へ錠剤を落下させる不良品回収機構と、
前記不良品排出位置よりも前記搬送方向の下流側の良品排出位置において、前記判定部により良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、良品排出口へ錠剤を落下させる良品排出機構と、
を有し、
前記受け渡し位置は、前記良品排出口の上方から外れた位置に配置され
前記良品排出口は前記不良品回収口よりも上方に位置する、搬送処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送処理装置であって、
前記移載機構は、
水平に延びる軸を中心として回転する吸着ドラム
を有し、
前記吸着ドラムの外周部に、錠剤を1つずつ吸着保持する複数のドラム吸着孔が設けられ、
複数の前記ドラム吸着孔は、それぞれ水平方向に開口し、
前記吸着ドラムは、前記第1搬送機構によって搬送される錠剤を前記ドラム吸着孔に吸着保持しつつ回転して前記搬送方向に移動させ、前記第2搬送機構へ受け渡す、搬送処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送処理装置であって、
前記吸着ドラムから前記第2搬送機構への錠剤の受け渡し角度は、90°以上かつ180°以下である、搬送処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送処理装置であって、
前記移載機構は、
前記搬送経路の幅方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、
前記第1傾斜ドラムに隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムと、
を有し、
前記第1傾斜ドラムは、前記第1側面に、前記第1軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔または前記第1軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、
前記第2傾斜ドラムは、前記第2側面に、前記第2軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔または前記第2軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、
前記第1傾斜ドラムは、前記第1搬送機構から受け渡される錠剤を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ錠剤を受け渡し、
前記第2傾斜ドラムは、前記第1傾斜ドラムから受け渡される錠剤を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2搬送機構へ錠剤を受け渡すことによって、錠剤の表裏を反転させる、搬送処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の搬送処理装置であって、
前記良品排出口は水平である、搬送処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の搬送処理装置であって、
前記第2搬送機構は、
複数の錠剤を前記吸着孔に1つずつ吸着保持しつつ水平面を含む環状の前記搬送経路に沿って搬送する吸着コンベア
を有し、
前記良品排出口は、前記水平面と間隙を隔てて鉛直方向に対向する、搬送処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送処理装置であって、
錠剤は、表面、裏面、および環状の側面を有し、
複数の前記吸着孔はそれぞれ、錠剤の裏面を吸着保持し、
前記水平面と前記良品排出口との間隙の鉛直方向の距離は、錠剤の厚みよりも大きく、錠剤の厚みの2倍よりも小さい、搬送処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送処理装置であって、
前記不良品排出位置は前記良品排出位置よりも前記搬送方向の上流側に位置する、搬送処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の搬送処理装置であって、
前記良品排出口を介して落下した複数の錠剤を載置しつつ外部へ搬出する良品排出コンベアと、
前記良品排出コンベアの上面の一部を覆うカバーと、
をさらに有する、搬送処理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の搬送処理装置であって、
前記良品排出口の高さを調整する高さ調整手段
をさらに有する、搬送処理装置。
【請求項11】
錠剤を搬送して表面に所定の処理を行う搬送処理方法であって、
a)第1搬送機構において錠剤を保持しつつ前記搬送方向に搬送する工程と、
b)第2搬送機構において錠剤を1つずつ吸着保持する複数の吸着孔を前記搬送方向に移動させる工程と、
c)工程b)の途中で、搬送経路上の処理位置において、錠剤の表面に前記所定の処理を行う工程と、
d)前記処理位置よりも前記搬送方向の上流側の受け渡し位置において、前記第1搬送機構から前記第2搬送機構の前記吸着孔へ錠剤を受け渡す工程と、
e)前記処理位置よりも前記搬送方向の下流側の判定位置において、錠剤の処理状態の良否を判定する工程と、
f-1)前記判定位置よりも前記搬送方向の下流側の不良品排出位置において、前記工程e)の判定において不良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、不良品回収口へ錠剤を落下させる工程と、
f-2)前記不良品排出位置よりも前記搬送方向の下流側の良品排出位置において、前記工程e)の判定において良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、良品排出口へ錠剤を落下させる工程と、
を有し、
前記受け渡し位置は、前記良品排出口の上方から外れた位置に配置され、
前記良品排出口は前記不良品回収口よりも上方に位置する、搬送処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を搬送して表面に所定の処理を行う搬送処理装置および搬送処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品である錠剤の表面には、製品を識別するための文字やコードが印字される。このような文字やコードは、刻印により印字される場合もあるが、刻印では視認性が低いという問題があった。特に、近年では、後発医薬品の普及により錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を確実に識別するために、錠剤の表面にインクジェット方式で鮮明な印字を行う技術が注目されている。
【0003】
この種の印刷装置では、装置内へ流し込まれた複数の錠剤を1つ1つ搬送方向に所定の間隔をあけて搬送しつつ、表面に印刷、検査、および乾燥等の所定の処理を行う。この種の印刷装置を用いた錠剤の製造工程では、印刷不良の他、割れや欠け等の形状不良が生じる場合がある。そこで、印刷処理が施された錠剤を検査した結果に基づき良品・不良品の仕分けを行う装置が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の錠剤印刷装置(1)は、搬送部と、印刷部(61,62)と、検査カメラ(71,72)と、制御部(3)とを有する。搬送部は、複数の錠剤を搬送する。搬送部は、搬送ドラム(10)と、第1搬送ベルト(20)と、第2搬送ベルト(30)と、第3搬送ベルト(40)とを含む。印刷部(61,62)は、搬送される複数の錠剤に対して印刷処理を行う。検査カメラ(71,72)は、印刷処理の結果を撮像する。制御部(3)は、検査カメラ(71,72)によって取得された画像データに基づいて、複数の錠剤に対する印刷処理結果を確認する。検査結果に問題の無かった良品の錠剤は、良品ダクト(48)に投入され、良品回収ボックス(58)に回収される。一方、検査結果に問題のあった不良品の錠剤は、不良品ダクト(46)に投入され、不良品ボックス(56)に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-223323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の錠剤印刷装置(1)では、搬送ドラム(10)から第1搬送ベルト(20)への錠剤の受け渡し箇所、第1搬送ベルト(20)から第2搬送ベルト(30)への錠剤の受け渡し箇所、第2搬送ベルト(30)から第3搬送ベルト(40)への錠剤の受け渡し箇所が、それぞれ良品ダクト(48)および良品回収ボックス(58)の上方に形成されている。このため、これらの受け渡し箇所から錠剤が誤って落下した場合、落下した錠剤が良品ダクト(48)または良品回収ボックス(58)内へ入り込む虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、錠剤を搬送しつつ受け渡す際に誤って落下した場合でも、落下した錠剤が良品の錠剤を回収する回収部へ入り込むことを抑制できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、錠剤を搬送して表面に所定の処理を行う搬送処理装置であって、錠剤を保持しつつ前記搬送方向に搬送する第1搬送機構と、錠剤を1つずつ吸着保持する複数の吸着孔を前記搬送方向に移動させる第2搬送機構と、前記第2搬送機構による搬送経路上の処理位置において、錠剤の表面に前記所定の処理を行う処理部と、前記処理位置よりも前記搬送方向の上流側の受け渡し位置において、前記第1搬送機構から前記第2搬送機構の前記吸着孔へ錠剤を受け渡す移載機構と、前記処理位置よりも前記搬送方向の下流側の判定位置において、錠剤の処理状態の良否を判定する判定部と、前記判定位置よりも前記搬送方向の下流側の不良品排出位置において、前記判定部により不良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、不良品回収口へ錠剤を落下させる不良品回収機構と、前記不良品排出位置よりも前記搬送方向の下流側の良品排出位置において、前記判定部により良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、良品排出口へ錠剤を落下させる良品排出機構と、を有し、前記受け渡し位置は、前記良品排出口の上方から外れた位置に配置され、前記良品排出口は前記不良品回収口よりも上方に位置する
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の搬送処理装置であって、前記移載機構は、水平に延びる軸を中心として回転する吸着ドラムを有し、前記吸着ドラムの外周部に、錠剤を1つずつ吸着保持する複数のドラム吸着孔が設けられ、複数の前記ドラム吸着孔は、それぞれ水平方向に開口し、前記吸着ドラムは、前記第1搬送機構によって搬送される錠剤を前記ドラム吸着孔に吸着保持しつつ回転して前記搬送方向に移動させ、前記第2搬送機構へ受け渡す。
【0010】
本願の第3発明は、第2発明の搬送処理装置であって、前記吸着ドラムから前記第2搬送機構への錠剤の受け渡し角度は、90°以上かつ180°以下である。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明の搬送処理装置であって、前記移載機構は、前記搬送経路の幅方向に対して傾斜した第1軸を中心とする円錐状または角錐状の第1側面を有する第1傾斜ドラムと、前記第1傾斜ドラムに隣接し、前記幅方向に対して傾斜した第2軸を中心とする円錐状または角錐状の第2側面を有する第2傾斜ドラムと、を有し、前記第1傾斜ドラムは、前記第1側面に、前記第1軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔または前記第1軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、前記第2傾斜ドラムは、前記第2側面に、前記第2軸を中心として円環状に配列された複数の吸着孔または前記第2軸を中心とする円環状の吸着スリットを有し、前記第1傾斜ドラムは、前記第1搬送機構から受け渡される錠剤を、前記第1側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2傾斜ドラムへ錠剤を受け渡し、前記第2傾斜ドラムは、前記第1傾斜ドラムから受け渡される錠剤を、前記第2側面に吸着保持しつつ回転して、前記第2搬送機構へ錠剤を受け渡すことによって、錠剤の表裏を反転させる。
【0012】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の搬送処理装置であって、前記良品排出口は水平である。
【0013】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の搬送処理装置であって、前記第2搬送機構は、複数の錠剤を前記吸着孔に1つずつ吸着保持しつつ水平面を含む環状の前記搬送経路に沿って搬送する吸着コンベアを有し、前記良品排出口は、前記水平面と間隙を隔てて鉛直方向に対向する。
【0014】
本願の第7発明は、第6発明の搬送処理装置であって、錠剤は、表面、裏面、および環状の側面を有し、複数の前記吸着孔はそれぞれ、錠剤の裏面を吸着保持し、前記水平面と前記良品排出口との間隙の鉛直方向の距離は、錠剤の厚みよりも大きく、錠剤の厚みの2倍よりも小さい。
【0016】
本願の第発明は、第発明の搬送処理装置であって、前記不良品排出位置は前記良品排出位置よりも前記搬送方向の上流側に位置する。
【0017】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の搬送処理装置であって、前記良品排出口を介して落下した複数の錠剤を載置しつつ外部へ搬出する良品排出コンベアと、前記良品排出コンベアの上面の一部を覆うカバーと、をさらに有する。
【0018】
本願の第10発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の搬送処理装置であって、前記良品排出口の高さを調整する高さ調整手段をさらに有する。
【0019】
本願の第11発明は、錠剤を搬送して表面に所定の処理を行う搬送処理方法であって、a)第1搬送機構において錠剤を保持しつつ前記搬送方向に搬送する工程と、b)第2搬送機構において錠剤を1つずつ吸着保持する複数の吸着孔を前記搬送方向に移動させる工程と、c)工程b)の途中で、搬送経路上の処理位置において、錠剤の表面に前記所定の処理を行う工程と、d)前記処理位置よりも前記搬送方向の上流側の受け渡し位置において、前記第1搬送機構から前記第2搬送機構の前記吸着孔へ錠剤を受け渡す工程と、e)前記処理位置よりも前記搬送方向の下流側の判定位置において、錠剤の処理状態の良否を判定する工程と、f-1)前記判定位置よりも前記搬送方向の下流側の不良品排出位置において、前記工程e)の判定において不良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、不良品回収口へ錠剤を落下させる工程と、-2)前記不良品排出位置よりも前記搬送方向の下流側の良品排出位置において、前記工程e)の判定において良品と判定された錠剤が吸着保持された前記吸着孔に陽圧を作用させて前記吸着孔における錠剤の吸着を解除し、良品排出口へ錠剤を落下させる工程と、を有し、前記受け渡し位置は、前記良品排出口の上方から外れた位置に配置され、前記良品排出口は前記不良品回収口よりも上方に位置する
【発明の効果】
【0020】
本願の第1発明~第11発明によれば、錠剤を搬送しつつ第1搬送機構から第2搬送機構へ受け渡す受け渡し位置が、良品と判定された錠剤が排出される良品排出口の上方から外れた位置に配置されている。これにより、錠剤を受け渡す際に誤って落下した場合でも、落下した錠剤が良品排出口へ入り込むことを抑制できる。この結果、良品と判定された錠剤に他の錠剤が誤って混入することを防止できる。また、不良品と判定された錠剤が良品排出口へ誤って落下することを防止できる。
【0021】
特に、本願の第6発明および第7発明によれば、良品排出口に対して側方や斜め上方から錠剤が誤って飛んできた場合でも、飛んできた錠剤が良品排出口へ落下することを防止できる。
【0022】
特に、本願の第8発明によれば、不良品と判定された錠剤が良品排出口へ誤って落下することをさらに防止できる。
【0023】
特に、本願の第発明によれば、良品と判定された錠剤を外部へ搬出する際に、他の錠剤が誤って混入することを防止できる。
【0024】
特に、本願の第10発明によれば、錠剤の厚みに合わせて、第2搬送機構と良品排出口との間隙の鉛直方向の距離を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】錠剤印刷装置の側面図である。
図2】錠剤印刷装置の上面図である。
図3】錠剤印刷装置の下面図である。
図4】吸着コンベアの部分斜視図である。
図5】ヘッドの下面図である。
図6】吸着コンベアおよび反転機構を、図1中の白抜き矢印V1の方向から見た図である。
図7】吸着コンベア、不良品回収機構、および良品搬出機構を、図1中の白抜き矢印V2の方向から見た図である。
図8】良品シュートの分解側面図である。
図9】制御部と各部との接続を示したブロック図である。
図10】錠剤印刷装置における処理の流れを示したフローチャートである。
図11】錠剤の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0027】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、本発明に係る搬送処理装置の一例である錠剤印刷装置1の側面図である。図2は、錠剤印刷装置1の上面図である。図3は、錠剤印刷装置1の下面図である。
【0028】
この錠剤印刷装置1は、医薬品である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表裏両面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。錠剤9は、素錠(裸錠)であってもよいし、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)等のコーティング錠であってもよい。また、錠剤9は、硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤であってもよい。また、錠剤9は、医薬品としての錠剤以外の、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。図11は、錠剤9の斜視図である。図11に示すように、錠剤9は、円形の表面および裏面と、円環状の側面とを有する。ただし、錠剤9の形状は、これに限定されない。
【0029】
図1図3に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、フィーダ10、搬送コンベア20、吸着ドラム30、吸着コンベア40、第1カメラ50、印刷部60、第2カメラ70、乾燥機構80、反転機構90、不良品回収機構100、良品排出機構110、および制御部120を備えている。
【0030】
フィーダ10は、錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9を、搬送コンベア20へ搬入するための機構である。フィーダ10は、例えば、投入ホッパ、回転フィーダ、振動フィーダ等により構成される。錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9は、これらの機構により、複数の列に整列されつつ、搬送コンベア20まで搬送される。具体的には、搬送方向に並ぶ錠剤9の列が、幅方向(搬送方向に直交する水平方向)に複数列(本実施形態では、3列)形成される。そして、整列後の複数の錠剤9が、搬送コンベア20へ供給される。なお、図1では、1つの列の錠剤9のみが示されている。
【0031】
搬送コンベア20は、フィーダ10と吸着ドラム30との間において、錠剤9を保持しつつ水平に搬送する機構である。搬送コンベア20は、一対のプーリ21と、一対のプーリ21の間に架け渡された環状の搬送ベルト22とを有する。一対のプーリ21の一方は、モータM1から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト22が、図1中の矢印の方向に回動する。一対のプーリ21の他方は、搬送ベルト22の回動に伴い従動回転する。
【0032】
フィーダ10から供給された複数の錠剤9は、搬送ベルト22の上面に載置され、搬送ベルト22とともに搬送方向に移動する。このとき、錠剤9は、上述したフィーダ10により幅方向に複数列に整列済みであるが、各列における錠剤9の搬送方向の間隔は、不均一である。複数の錠剤9は、搬送方向に互いに密接した状態または僅かな間隔をあけて搬送される。
【0033】
吸着ドラム30は、搬送コンベア20から吸着コンベア40へ錠剤9を移載するための移載機構である。吸着ドラム30は、幅方向に水平に延びる回転軸Oを中心とする略円筒状の外周面を有する。また、図1中に破線で示したように、吸着ドラム30にはモータM2が接続されている。モータM2を駆動させると、吸着ドラム30は、回転軸Oを中心として回転する。吸着ドラム30の外周部には、複数のドラム吸着孔301が、円周方向に等間隔に設けられている。各ドラム吸着孔301は、幅方向に向けて水平に開口する。
【0034】
吸着ドラム30が回転すると、複数のドラム吸着孔301は、搬送ベルト22の上面に近接した第1受け渡し位置P1と、後述する吸着ベルト42の表面に近接した第2受け渡し位置P2とを含む円環状の経路に沿って移動する。本実施形態では、第1受け渡し位置P1が、吸着ドラム30の回転軸Oの真下に位置する。そして、第2受け渡し位置P2が、吸着ドラム30の回転軸Oよりも高い位置に形成されている。
【0035】
図1に示すように、吸着ドラム30には、第1吸引機構302が接続されている。第1吸引機構302を動作させると、第1受け渡し位置P1と第2受け渡し位置P2との間の角度範囲に位置する吸着ドラム30の内部空間Sから、気体が吸い出される。これにより、当該内部空間Sが、大気圧よりも低い負圧となる。搬送コンベア20により搬送され、第1受け渡し位置P1まで到達した錠剤9は、この負圧によって、吸着ドラム30のドラム吸着孔301に吸着保持される。複数の錠剤9は、各ドラム吸着孔301に1つずつ吸着保持される。これにより、複数の錠剤9の搬送方向の間隔が、ドラム吸着孔301の間隔に応じた所定の間隔となる。
【0036】
錠剤9は、ドラム吸着孔301に吸着保持されつつ、吸着ドラム30の回転によって、第1受け渡し位置P1から第2受け渡し位置P2まで搬送方向に移動する。そして、錠剤9が第2受け渡し位置P2を通過すると、上記の負圧に保たれた内部空間Sの角度範囲から外れることによって、錠剤9の吸着が解除される。これにより、吸着ドラム30から吸着コンベア40へ、錠剤9が受け渡される。なお、本実施形態では、吸着ドラム30から吸着コンベア40への錠剤9の受け渡し角度は、90°以上かつ180°以下である。すなわち、吸着ドラム30は、後述する印刷部60による印刷位置よりも搬送方向の上流側の受け渡し位置(第1受け渡し位置P1と第2受け渡し位置P2とを含む)において、搬送コンベア20から吸着コンベア40へ錠剤9を持ち上げて受け渡す。
【0037】
吸着コンベア40は、複数の錠剤9を吸着保持しつつ環状の搬送経路に沿って搬送する機構である。吸着コンベア40は、一対のプーリ41と、一対のプーリ41の間に架け渡された環状の吸着ベルト42とを有する。一対のプーリ41の一方は、モータM3から得られる動力により回転する。これにより、吸着ベルト42が、図1中の矢印の方向に回動する。一対のプーリ41の他方は、吸着ベルト42の回動に伴い従動回転する。
【0038】
図4は、吸着コンベア40の部分斜視図である。図4に示すように、吸着ベルト42の外周面には、複数の吸着孔421が設けられている。複数の吸着孔421は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、図1に示すように、吸着コンベア40は、吸着ベルト42の内側の空間から気体を吸い出す第2吸引機構43を有する。第2吸引機構43を動作させると、吸着ベルト42の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔421に1つずつ吸着保持される。各吸着孔421は、錠剤9の裏面を吸着保持する。
【0039】
このように、複数の錠剤9は、吸着ベルト42の表面に、搬送方向よび幅方向に整列した状態で保持される。そして、吸着コンベア40は、吸着ベルト42を回動させることによって、複数の錠剤9を環状の搬送経路に沿って搬送する。なお、吸着ベルト42による環状の搬送経路の一部には、水平面422が含まれる。後述する4つのヘッド61の下方と、後述する第2ブロー機構B2および第3ブロー機構B3の下方とでは、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0040】
図1中に示すように、吸着コンベア40は、3つの第1ブロー機構B1と、1つの第2ブロー機構B2と、1つの第3ブロー機構B3とをさらに有する。
【0041】
3つの第1ブロー機構B1は、吸着ベルト42の内側、かつ、後述する第1傾斜ドラム91、第3傾斜ドラム93、および第5傾斜ドラム95と吸着ベルト42を介してそれぞれ対向する位置に、設けられている。3つの第1ブロー機構B1は、吸着ベルト42の複数の吸着孔421のうち、第1傾斜ドラム91、第3傾斜ドラム93、および第5傾斜ドラム95と対向する吸着孔421のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔421が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔421における錠剤9の吸着が解除され、吸着ベルト42から第1傾斜ドラム91、第3傾斜ドラム93、および第5傾斜ドラム95へ、錠剤9が受け渡される。
【0042】
図2および図3に示すように、本実施形態の吸着ベルト42の保持面420には、後述する反転機構90による反転前の錠剤9を保持する第1領域A1と、反転後の錠剤9を保持する第2領域A2とを有する。第1領域A1と第2領域A2とは、幅方向に隣接する。本実施形態では、第1領域A1および第2領域A2に、複数の吸着孔421が、幅方向に3列ずつ設けられる。上述した吸着ドラム30から受け渡された錠剤9は、第1領域A1の吸着孔421に吸着保持される。また、両面に印刷がされた複数の錠剤9は、第2領域A2の吸着孔421から後述する不良品回収機構100または良品排出機構110へ受け渡される。
【0043】
第2ブロー機構B2は、吸着ベルト42の内側、かつ、後述する不良品回収口102と吸着ベルト42を介して対向する位置に、設けられている。第2ブロー機構B2は、吸着ベルト42の複数の吸着孔421のうち、不良品回収口102と対向する吸着孔421のみに、鉛直下向きに気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔421が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔421における錠剤9の吸着が解除され、吸着ベルト42から不良品回収口102へ、錠剤9が落下する。
【0044】
第3ブロー機構B3は、吸着ベルト42の内側、かつ、後述する良品排出口114と吸着ベルト42を介して対向する位置に、設けられている。第3ブロー機構B3は、吸着ベルト42の複数の吸着孔421のうち、良品排出口114と対向する吸着孔421のみに、鉛直下向きに気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔421が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔421における錠剤9の吸着が解除され、吸着ベルト42から良品排出口114へ、錠剤9が落下する。
【0045】
第1カメラ50は、印刷前の錠剤9を撮影するための処理部である。第1カメラ50は、上述した第2受け渡し位置P2よりも搬送経路の下流側かつ印刷部60よりも搬送経路の上流側に位置する。また、第1カメラ50は、第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。第1カメラ50には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第1カメラ50は、吸着ベルト42により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第1カメラ50から後述する制御部120へ送信される。制御部120は、第1カメラ50から得られた画像に基づいて、各吸着孔421における錠剤9の有無、錠剤9の位置、および錠剤9の姿勢を検出する。また、制御部120は、第1カメラ50から得られた画像に基づいて、各錠剤9に欠け等の欠陥が無いかどうかの検査も行う。
【0046】
印刷部60は、吸着コンベア40による搬送経路上の印刷位置において、錠剤9の表面に、インクジェット方式で印刷を行う処理部である。図1および図2に示すように、本実施形態の印刷部60は、4つのヘッド61を有する。4つのヘッド61は、吸着ベルト42の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。各ヘッド61は、吸着ベルト42の第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。4つのヘッド61は、錠剤9に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド61から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0047】
図5は、1つのヘッド61の下面図である。図5には、吸着ベルト42と、吸着ベルト42に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。図5中に拡大して示したように、ヘッド61の下面には、インク滴を吐出可能な複数のノズル611が設けられている。本実施形態では、ヘッド61の下面に、複数のノズル611が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル611は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル611を二次元的に配置すれば、各ノズル611の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル611は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0048】
ノズル611からのインク滴の吐出方式には、例えば、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル611内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル611内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0049】
第2カメラ70は、印刷後の錠剤9を撮影するための処理部である。第2カメラ70は、印刷部60よりも搬送経路の下流側かつ乾燥機構80よりも搬送経路の上流側に位置する。また、第2カメラ70は、第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。第2カメラ70には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第2カメラ70は、上述の印刷位置よりも搬送方向の下流側の判定位置において吸着ベルト42により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第2カメラ70から後述する制御部120へ送信される。制御部120は、第2カメラ70から得られた画像に基づいて、錠剤9の印刷状態を検査する。
【0050】
乾燥機構80は、錠剤9の表面に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構80は、第2カメラ70よりも搬送経路の下流側かつ後述する反転機構90、不良品回収機構100、および良品排出機構110よりも搬送経路の上流側に位置する。また、乾燥機構80は、第1領域A1と第2領域A2との双方に跨がって、幅方向に延びる。乾燥機構80には、例えば、吸着ベルト42により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤9に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。
【0051】
反転機構90は、吸着ベルト42により搬送される錠剤9の表裏を反転させるとともに、第1領域A1から第2領域A2へ錠剤9を移載する移載機構である。反転機構90は、後述する不良品回収機構100および良品排出機構110よりも搬送経路の下流側かつ吸着ドラム30よりも搬送経路の上流側に位置する。
【0052】
図6は、吸着コンベア40および反転機構90を、図1中の白抜き矢印V1の方向から見た図である。図1図3、および図6に示すように、本実施形態の反転機構90は、第1傾斜ドラム91、第2傾斜ドラム92、第3傾斜ドラム93、第4傾斜ドラム94、第5傾斜ドラム95、および第6傾斜ドラム96を有する。
【0053】
第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92は、幅方向に隣接して配置される。第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94は、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92よりも搬送経路の下流側において、幅方向に隣接して配置される。第5傾斜ドラム95および第6傾斜ドラム96は、第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94よりも搬送経路の下流側において、幅方向に隣接して配置される。以下では、吸着コンベア40の搬送経路上の、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92が設けられる位置を「第3受け渡し(反転)位置P3」、第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94が設けられる位置を「第4受け渡し(反転)位置P4」、第5傾斜ドラム95および第6傾斜ドラム96が設けられる位置を「第5受け渡し(反転)位置P5」、とそれぞれ称する。
【0054】
第1傾斜ドラム91は、幅方向に対して傾斜した第1軸C1を中心とする円錐状の第1側面910を有する。第1側面910の一部は、吸着ベルト42の第1領域A1と、僅かな隙間を介して対向する。また、第1傾斜ドラム91は、モータ91Mの出力軸に固定されている。モータ91Mを駆動させると、第1傾斜ドラム91は、第1軸C1を中心として回転する。
【0055】
第2傾斜ドラム92は、幅方向に対して傾斜した第2軸C2を中心とする円錐状の第2側面920を有する。第1傾斜ドラム91と第2傾斜ドラム92とは、互いの頂部が対向するように、幅方向に隣接配置される。第2側面920の一部は、吸着ベルト42の第2領域A2と、僅かな隙間を介して対向する。第2側面920の他の一部は、第1側面910と、僅かな隙間を介して対向する。また、第2傾斜ドラム92は、モータ92Mの出力軸に固定されている。モータ92Mを駆動させると、第2傾斜ドラム92は、第2軸C2を中心として回転する。
【0056】
本実施形態では、吸着コンベア40の搬送方向に見たときの、第1傾斜ドラム91の頂角と、第2傾斜ドラム92の頂角とは、いずれも90°である。また、第1軸C1の保持面420に対する傾斜角度は、45°である。また、第2軸C2の保持面420に対する傾斜角度は、45°である。したがって、第1側面910と第2側面920とは、保持面420に対して90°の位置において、互いに対向する。また、第1傾斜ドラム91と第2傾斜ドラム92とは、互いに同一の形状、構造、および大きさを有する。このため、第1傾斜ドラム91と第2傾斜ドラム92とを、部品として共通化できる。これにより、錠剤印刷装置1の製造コストを低減できる。
【0057】
第1側面910には、複数の吸着孔911が設けられている。複数の吸着孔911は、第1軸C1を中心として円環状に、等角度間隔で設けられている。同様に、第2側面920にも、複数の吸着孔921が設けられている。複数の吸着孔921は、第2軸C2を中心として円環状に、等角度間隔で設けられている。
【0058】
第1傾斜ドラム91の内部空間の圧力は、図示を省略した吸引機構によって、大気圧よりも低い負圧に保たれる。第1傾斜ドラム91は、この負圧によって、複数の吸着孔911に、複数の錠剤9を1つずつ保持する。同様に、第2傾斜ドラム92の内部空間の圧力も、図示を省略した吸引機構によって、大気圧よりも低い負圧に保たれる。第2傾斜ドラム92は、この負圧によって、複数の吸着孔921に、複数の錠剤9を1つずつ保持する。
【0059】
図6中に破線で示したように、第1傾斜ドラム91の内部には、第4ブロー機構B4が設けられている。第4ブロー機構B4は、第1傾斜ドラム91の複数の吸着孔911のうち、第2傾斜ドラム92と対向する吸着孔911のみに、気体を吹付ける。そうすると、当該吸着孔911が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔911における錠剤9の吸着が解除され、第1傾斜ドラム91の吸着孔911から、第2傾斜ドラム92の吸着孔921へ、錠剤9が受け渡される。
【0060】
また、図6中に破線で示したように、第2傾斜ドラム92の内部には、第5ブロー機構B5が設けられている。第5ブロー機構B5は、第2傾斜ドラム92の複数の吸着孔921のうち、吸着ベルト42の第2領域A2と対向する吸着孔921のみに、気体を吹付ける。そうすると、当該吸着孔921が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔921における錠剤9の吸着が解除され、第2傾斜ドラム92の吸着孔921から、吸着ベルト42の第2領域A2の吸着孔421へ、錠剤9が受け渡される。
【0061】
第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94は、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92と、同等の構造を有し、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92と同様に、隣接配置されている。ただし、第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94は、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92が配置される第3受け渡し位置P3よりも搬送経路の下流側の第4受け渡し位置P4に配置される。また、第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94は、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92よりも、錠剤9の幅方向の配列間隔の1つ分だけ、幅方向にずれた位置に配置されている。第3傾斜ドラム93は、モータ93Mの出力軸に固定されている。第4傾斜ドラム94は、モータ94Mの出力軸に固定されている。
【0062】
第5傾斜ドラム95および第6傾斜ドラム96も、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92と、同等の構造を有し、第1傾斜ドラム91および第2傾斜ドラム92と同様に、隣接配置されている。ただし、第5傾斜ドラム95および第6傾斜ドラム96は、第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94が配置される第4受け渡し位置P4よりも搬送経路の下流側の第5受け渡し位置P5に配置される。また、第5傾斜ドラム95および第6傾斜ドラム96は、第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94よりも、錠剤9の幅方向の配列間隔の1つ分だけ、幅方向にずれた位置に配置されている。第5傾斜ドラム95は、モータ95Mの出力軸に固定されている。第6傾斜ドラム96は、モータ96Mの出力軸に固定されている。
【0063】
図3に示すように、吸着ベルト42の幅方向の第1位置W1の吸着孔421に保持されて、搬送方向の第3受け渡し位置P3まで搬送された錠剤9は、第1傾斜ドラム91へ受け渡される。第1傾斜ドラム91は、吸着ベルト42から受け取った錠剤9を、第1側面910の吸着孔911に吸着保持しつつ回転して、第2傾斜ドラム92へ受け渡す。その後、第2傾斜ドラム92は、第1傾斜ドラム91から受け取った錠剤9を、第2側面920の吸着孔921に吸着保持しつつ回転して、吸着ベルト42の幅方向の第2位置W2の吸着孔421へ受け渡す。これにより、第1領域A1に属する第1位置W1から、第2領域A2に属する第2位置W2へ、搬送経路における錠剤9の幅方向の位置が移動するとともに、錠剤9の表裏が反転する。
【0064】
同様に、第3傾斜ドラム93および第4傾斜ドラム94は、搬送方向の第4受け渡し位置P4において、第1領域A1に属する第3位置W3から、第2領域A2に属する第4位置W4へ、搬送経路における錠剤9の幅方向の位置を移動させるとともに、錠剤9の表裏を反転させる。また、同様に、第5傾斜ドラム95および第6傾斜ドラム96は、搬送方向の第5受け渡し位置P5において、第1領域A1に属する第5位置W5から、第2領域A2に属する第6位置W6へ、搬送経路における錠剤9の幅方向の位置を移動させるとともに、錠剤9の表裏を反転させる。
【0065】
不良品回収機構100は、不良品と判定された錠剤9を吸着コンベア40から回収するための機構である。図7は、吸着コンベア40、不良品回収機構100(図示一部省略)、および良品排出機構110を、図1中の白抜き矢印V2の方向から見た図である。図7に示すように、不良品回収機構100は、不良品シュート101と、図示を省略した回収ボックスとを有する。不良品シュート101は、乾燥機構80よりも搬送経路の下流側、かつ、後述する良品排出機構110よりも搬送経路の上流側に位置する。不良品シュート101は、円筒状に形成される。
【0066】
不良品シュート101の上端部の開口である不良品回収口102は、吸着コンベア40の水平面422の第2領域A2と間隙D1を隔てて鉛直方向に対向する。不良品と判定された錠剤9が、上述の判定位置よりも搬送方向の下流側の、不良品シュート101に対向する位置(不良品排出位置P6)に到達すると、第2ブロー機構B2により錠剤9の吸着が解除される。これにより、吸着ベルト42の吸着孔421から、不良品回収口102および不良品シュート101の内部を通って上述の回収ボックス内へ、錠剤9が落下する。そして、回収ボックス内へ落下した錠剤9が、作業者等によって回収され、錠剤印刷装置1の外部へ廃棄される。
【0067】
良品排出機構110は、良品と判定された錠剤9を吸着コンベア40から搬出するための機構である。図7に示すように、良品排出機構110は、良品シュート111と、良品排出コンベア112と、カバー113とを有する。良品シュート111の後述するシュート本体131は、錠剤印刷装置1の筐体に固定される。また、良品シュート111は、円筒形状を有しつつ、一部で曲がった構造を有する。
【0068】
良品シュート111の上端部の開口である良品排出口114は、吸着コンベア40の水平面422の第2領域A2と間隙D2を隔てて鉛直方向に対向する。良品と判定された錠剤9が、上述の判定位置よりも搬送方向の下流側の、良品シュート111に対向する位置(良品排出位置P7)に到達すると、第3ブロー機構B3により錠剤9の吸着が解除される。これにより、吸着ベルト42の吸着孔421から、良品排出口114および良品シュート111の内部を通って良品排出コンベア112へ、錠剤9が落下する。良品排出コンベア112は、上述の搬送コンベア20と同等の構成を有する。良品排出コンベア112のプーリ115がモータM4から得られる動力により回転することによって、搬送ベルト116が、図7中の矢印の方向に回動する。良品排出コンベア112へ落下した複数の錠剤9は、搬送ベルト116に載置されつつ、錠剤印刷装置1の外部へ搬出される。
【0069】
ここで、図1に示すように、搬送コンベア20から吸着ドラム30が錠剤9を吸着保持する第1受け渡し位置P1、吸着ドラム30が吸着コンベア40へ錠剤9が受け渡す第2受け渡し位置P2、および吸着ベルト42の第1領域A1から第2領域A2へ反転機構90が錠剤9を反転しつつ受け渡す第3受け渡し位置P3,第4受け渡し位置P4,および第5受け渡し位置P5や、吸着コンベア40が吸着保持する錠剤9の傾きが大きく変化する箇所であるプーリ41の外周部は、良品排出口114の上方から外れた位置に配置されている。これにより、これらの箇所において錠剤9を受け渡す際や錠剤9の傾きが大きく変化する際に、錠剤9が誤って落下した場合でも、落下した錠剤9が良品排出口114へ入り込むことを抑制できる。この結果、良品と判定された錠剤9に他の錠剤9が誤って混入することを防止できる。
【0070】
また、図7に示すように、良品排出口114は水平であり、吸着コンベア40の水平面422と間隙D2を隔てて鉛直方向に対向する。また、水平面422と良品排出口114との間隙D2の鉛直方向の距離が、錠剤9の厚みd(図11参照)よりも大きく、錠剤9の厚みdの2倍よりも小さくなる程度に、近接して配置される。これにより、良品排出口114に対して側方や斜め上方から錠剤9が誤って飛んできた場合でも、飛んできた錠剤9が良品排出口114へ落下することを防止できる。
【0071】
また、上述のとおり、不良品排出位置P6は、良品排出位置P7よりも搬送方向の上流側に位置する。これにより、不良品と判定された錠剤9が良品排出口114の上方に到達する前に、当該錠剤9を回収できる。また、図7に示すように、良品排出口114は、不良品回収口102よりも上方に位置する。この結果、不良品と判定された錠剤9が、不良品排出位置P6において吸着孔421からの吸着が解除されたときに、不良品回収口102に衝突して跳ね返る等した場合でも、良品排出口114へ誤って落下することをさらに防止できる。
【0072】
さらに、本実施形態の良品排出機構110においては、良品排出コンベア112の上面の一部(良品シュート111の外側)を隙間無く覆うカバー113が設けられている。これにより、良品と判定された錠剤9を外部へ搬出する際に、他の錠剤9が誤って混入することをさらに防止できる。
【0073】
図8は、良品シュート111の分解側面図である。図8に示すように、良品シュート111は、シュート本体131と、厚み調整部材132と、押さえ部材133と、複数(本実施形態では、2本)のネジ134とを有する。シュート本体131、厚み調整部材132、および押さえ部材133のそれぞれの内部には、錠剤9の通過を可能にする貫通孔135b,135m,135uが形成されている。
【0074】
シュート本体131の上端のフランジ部の上面には、複数(本実施形態では、2つ)のネジ孔136が形成される。厚み調整部材132の周縁部には、複数(本実施形態では、2つ)の貫通孔137が形成される。貫通孔137は、厚み調整部材132を鉛直方向に貫通する。押さえ部材133の下端のフランジ部には、複数(本実施形態では、2つ)の貫通孔138が形成される。貫通孔138は、押さえ部材133のフランジ部を鉛直方向に貫通する。
【0075】
2本のネジ134はそれぞれ、押さえ部材133の貫通孔138および厚み調整部材132の貫通孔137を貫通しつつ、シュート本体131のネジ孔136にネジ止めされる。これにより、厚み調整部材132は、シュート本体131と押さえ部材133との間に挟持されつつ固定される。つまり、厚み調整部材132は、シュート本体131に対して着脱可能となっている。また、本実施形態では、厚み調整部材132として、良品シュート111に既に用いられているもの以外に、厚みが互いに異なり、かつ、互いを交換可能な複数の厚み調整部材132が、用意されている。
【0076】
これにより、処理対象となる錠剤9を、厚みまたは径等の異なる他の種類の錠剤9に変更する場合でも、変更後の錠剤9の厚みおよび径等に合った最適な厚み調整部材132を選択し、シュート本体131に取り付けることで、吸着コンベア40の水平面422と良品排出口114との間隙D2の鉛直方向の距離を適当な大きさに容易に調整できる。すなわち、本実施形態の良品シュート111は、良品排出口114の高さを容易に調整するための高さ調整手段を有する。ただし、高さ調整手段の構成は、これに限定されない。
【0077】
制御部120は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。図9は、制御部120と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。図9中に概念的に示したように、制御部120は、CPU等のプロセッサ121、RAM等のメモリ122、およびハードディスクドライブ等の記憶部123を有するコンピュータにより構成される。記憶部123内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムCPが、インストールされている。
【0078】
また、図9に示すように、制御部120は、上述したフィーダ10、搬送コンベア20(モータM1を含む)、吸着ドラム30(モータM2および第1吸引機構302を含む)、吸着コンベア40(モータM3、第2吸引機構43、およびブロー機構B1,B2,B3を含む)、第1カメラ50、印刷部60(ヘッド61を含む)、第2カメラ70、乾燥機構80、反転機構90(モータ91M~モータ96M、ブロー機構B4,B5、および吸引機構を含む)、および良品排出機構110(モータM4を含む)と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。制御部120は、記憶部123に記憶されたコンピュータプログラムCPやデータをメモリ122に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ121が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9の搬送と、各錠剤9に対する印刷処理とが進行する。
【0079】
<2.処理の流れについて>
続いて、上述の錠剤印刷装置1を用いた搬送処理および印刷処理の流れについて、説明する。以下では、ある1つの錠剤9に対して行われる処理について、順に説明する。ただし、この錠剤印刷装置1は、複数の錠剤9を順次に搬送経路に沿って搬送しつつ所定の処理を行う。したがって、錠剤印刷装置1の内部には、同時に複数の錠剤9が存在する。
【0080】
図10は、錠剤印刷装置1における処理の流れを示したフローチャートである。錠剤印刷装置1に複数の錠剤9が投入されると(ステップS1)、まず、フィーダ10は、複数の錠剤9を搬送コンベア20へ供給する。搬送コンベア20に供給された複数の錠剤9は、搬送ベルト22の上面に載置され、搬送ベルト22の回動に伴い、第1受け渡し位置P1まで搬送方向に略水平に移動する(ステップS2)。
【0081】
次に、錠剤9は、第1受け渡し位置P1において、吸着ドラム30のドラム吸着孔301に吸着保持され、吸着ドラム30の回転によって上方の第2受け渡し位置P2まで搬送方向に移動する。このとき、複数の錠剤9の搬送方向の間隔がドラム吸着孔301の間隔に応じた所定の間隔となるように整列される。錠剤9が第2受け渡し位置P2まで到着すると、ドラム吸着孔301における錠剤9の吸着が解除される。これにより、吸着ドラム30から吸着コンベア40へ、錠剤9が受け渡される(ステップS3)。
【0082】
続いて、錠剤9は、吸着ベルト42の第1領域A1の吸着孔421に吸着保持される。そして、吸着ベルト42の回動に伴い、環状の搬送経路に沿って、錠剤9が搬送される。以下では、第1領域A1の吸着孔421に保持された状態において、錠剤9の外側を向く面を「第1面」と称する。また、当該状態において、吸着孔421に吸着される面を「第2面」と称する。図2および図3では、第1面と第2面とを区別するために、錠剤9の第1面に斜線を付している。ただし、この「第1面」および「第2面」は、錠剤9の本来の表裏面とは無関係である。例えば、錠剤9が片面のみに割線130(図11参照)を有する割線錠である場合に、第1領域A1に保持される複数の錠剤9の中に、割線130を有する面が第1面となる錠剤9と、割線130が無い面が第1面となる錠剤9とが、混在していてもよい。
【0083】
錠剤9が第1カメラ50の下方に到達すると、第1カメラ50は、錠剤9の第1面を撮影する。これにより、錠剤9の第1面の画像データを取得する。取得された画像データは、第1カメラ50から制御部120へ送信される。制御部120は、第1カメラ50から受信した画像データに基づいて、第1面の印刷前検査を行う(ステップS4)。具体的には、吸着孔421における錠剤9の有無、錠剤9の表裏、錠剤9の鉛直軸周りの回転姿勢、錠剤9の吸着孔421に対する位置ずれ、錠剤9の形状欠陥の有無、等が検査される。
【0084】
次に、錠剤9が印刷部60の下方の印刷位置に到達すると、4つのヘッド61が、錠剤9の第1面に向けてインク滴を吐出する。これにより、錠剤9の第1面に印刷処理が行われる。その結果、錠剤9の第1面に画像が印刷される(ステップS5)。このとき、制御部120は、上述したステップS4の検査結果に基づいて、各錠剤9に印刷すべき画像を調整する。例えば、割線130を有する面かその反対側の面かに応じて適切な画像を選択し、選択された画像を、各錠剤9の回転姿勢に応じて回転させる。そして、調整後の画像に基づいて、ヘッド61に印刷信号を入力する。その結果、各錠剤9の第1面に、適切な画像が適切な姿勢で印刷される。
【0085】
続いて、錠剤9が第2カメラ70の下方の判定位置に到達すると、第2カメラ70は、錠剤9の第1面を撮影する。これにより、錠剤9の第1面の画像データを取得する。取得された画像データは、第2カメラ70から制御部120へ送信される。また、制御部120は、第2カメラ70から受信した画像データに基づいて、第1面の印刷後検査を行う(ステップS6)。具体的には、制御部120は、例えば、第2カメラ70から受信した画像データと、予め用意された正常画像のデータとを、比較することにより、各錠剤9の第1面の印刷状態の良否を判定する。
【0086】
続いて、錠剤9が乾燥機構80の下方の位置に到達すると、乾燥機構80は、錠剤9の第1面に向けて、熱風を吹き付ける。これにより、錠剤9の第1面に付着したインクが乾燥して、第1面にインクが定着する(ステップS7)。
【0087】
その後、錠剤9が搬送経路上の反転位置である第3受け渡し位置P3,第4受け渡し位置P4,または第5受け渡し位置P5に到達すると、反転機構90が、錠剤9の表裏を反転させるとともに、第1領域A1から第2領域A2へ錠剤9を移載する(ステップS8)。このステップS8により、錠剤9は、第2領域A2の吸着孔421に第1面が吸着され、第2面が外側を向く状態となる。
【0088】
続いて、錠剤9が第1カメラ50の下方に到達すると、第1カメラ50は、錠剤9の第2面を撮影する。これにより、錠剤9の第2面の画像データを取得する。取得された画像データは、第1カメラ50から制御部120へ送信される。また、制御部120は、第1カメラ50から受信した画像データに基づいて、第2面の印刷前検査を行う(ステップS9)。具体的には、吸着孔421における錠剤9の有無、錠剤9の表裏、錠剤9の鉛直軸周りの回転姿勢、錠剤9の吸着孔421に対する位置ずれ、錠剤9の形状欠陥の有無、等が検査される。
【0089】
次に、錠剤9が印刷部60の下方の印刷位置に到達すると、4つのヘッド61が、錠剤9の第2面に向けてインク滴を吐出する。これにより、錠剤9の第2面に印刷処理が行われる。その結果、錠剤9の第2面に画像が印刷される(ステップS10)。このとき、制御部120は、上述したステップS9の検査結果に基づいて、各錠剤9に印刷すべき画像を調整する。例えば、割線130を有する面かその反対側の面かに応じて適切な画像を選択し、選択された画像を、各錠剤9の回転姿勢に応じて回転させる。そして、調整後の画像に基づいて、ヘッド61に印刷信号を入力する。その結果、各錠剤9の第2面に、適切な画像が適切な姿勢で印刷される。
【0090】
続いて、錠剤9が第2カメラ70の下方の判定位置に到達すると、第2カメラ70は、錠剤9の第2面を撮影する。これにより、錠剤9の第2面の画像データを取得する。取得された画像データは、第2カメラ70から制御部120へ送信される。また、制御部120は、第2カメラ70から受信した画像データに基づいて、第2面の印刷後検査を行う(ステップS11)。具体的には、制御部120は、例えば、第2カメラ70から受信した画像データと、予め用意された正常画像のデータとを、比較することにより、各錠剤9の第2面の印刷状態の良否を判定する。
【0091】
続いて、錠剤9が乾燥機構80の下方の位置に到達すると、乾燥機構80は、錠剤9の第2面に向けて、熱風を吹き付ける。これにより、錠剤9の第2面に付着したインクが乾燥して、第2面にインクが定着する(ステップS12)。
【0092】
上述のとおり、制御部120は、第1カメラ50および第2カメラ70から受信した画像データに基づいて、錠剤9の印刷状態の良否や欠け等の形状欠陥の有無を判定する。すなわち、制御部120は、印刷位置よりも搬送方向の下流側の判定位置において、錠剤9の印刷状態や形状の良否を判定する判定部として機能する。さらに、判定部は、各錠剤9に対して、印刷状態が良く、かつ、欠け等の形状欠陥の無い良品であるか、それとも、印刷不良または形状欠陥が有る不良品であるかを判定する(ステップS13)。
【0093】
錠剤9が判定部により不良品であると判定された場合(ステップS13=NO)、その後、不良品と判定された錠剤9が判定位置よりも搬送方向の下流側の不良品排出位置P6に到達すると、当該錠剤9が吸着保持された吸着コンベア40の吸着孔421に陽圧が作用されて吸着孔421における錠剤9の吸着が解除される。これにより、不良品と判定された錠剤9は、不良品回収口102へ排出される(ステップS14)。
【0094】
錠剤9が判定部により良品であると判定された場合(ステップS13=YES)、その後、良品と判定された錠剤9が判定位置よりも搬送方向の下流側の良品排出位置P7に到達すると、当該錠剤9が吸着保持された吸着コンベア40の吸着孔421に陽圧が作用されて吸着孔421における錠剤9の吸着が解除される。これにより、良品と判定された錠剤9は、良品排出口114へ排出される(ステップS15)。良品排出口114から良品排出コンベア112へ落下した複数の錠剤9は、搬送ベルト116に載置されつつ、錠剤印刷装置1の外部へ搬出される。
【0095】
上述のとおり、搬送コンベア20から吸着ドラム30が錠剤9を吸着保持する第1受け渡し位置P1、吸着ドラム30が吸着コンベア40へ錠剤9が受け渡す第2受け渡し位置P2、および吸着ベルト42の第1領域A1から第2領域A2へ反転機構90が錠剤9を反転しつつ受け渡す第3受け渡し位置P3,第4受け渡し位置P4,および第5受け渡し位置P5や、吸着コンベア40が吸着保持する錠剤9の傾きが大きく変化する箇所であるプーリ41の外周部は、良品排出口114の上方から外れた位置に配置されている。これにより、これらの箇所において錠剤9を受け渡す際や錠剤9の傾きが大きく変化する際に、錠剤9が誤って落下した場合でも、落下した錠剤9が良品排出口114へ入り込むことを抑制できる。この結果、良品と判定された錠剤9に他の錠剤9が誤って混入することを防止できる。
【0096】
また、上述のとおり、不良品排出位置P6は、良品排出位置P7よりも搬送方向の上流側に位置する。これにより、不良品と判定された錠剤9が良品排出口114の上方に到達する前に、当該錠剤9を回収できる。また、良品排出口114は、不良品回収口102よりも上方に位置する。この結果、不良品と判定された錠剤9が、不良品排出位置P6において吸着孔421からの吸着が解除されたときに、良品排出口114へ誤って落下することをさらに防止できる。
【0097】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0098】
上述の実施形態の各傾斜ドラムは、複数の小孔である吸着孔を有していた。しかしながら、各傾斜ドラムは、外周面である側面に、円環状の吸着スリット(図示省略)を有していてもよい。例えば、第1傾斜ドラム91は、第1側面910に、第1軸C1を中心とする円環状の吸着スリットを有していてもよい。また、第2傾斜ドラム92は、第2側面920に、第2軸C2を中心とする円環状の吸着スリットを有していてもよい。そして、これらの吸着スリットに、複数の錠剤9を吸着保持してもよい。このようにすれば、吸着スリットの任意の位置において、錠剤9を吸着保持できる。したがって、錠剤9の受け渡しの際に、錠剤9に多少の位置ずれがあったとしても、錠剤9を吸着保持できる。
【0099】
上述の実施形態では、第1傾斜ドラム91~第6傾斜ドラム96は、いずれも、円錐状の側面を有していた。しかしながら、第1傾斜ドラム91~第6傾斜ドラム96の側面の形状は、四角錐、六角錐、八角錐などの多角錐状であってもよい。
【0100】
また、上記の実施形態では、印刷部60に、4つのヘッド61が設けられていた。しかしながら、印刷部60に含まれるヘッド61の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0101】
また、上述の実施形態の錠剤印刷装置1は、吸着コンベア40による搬送経路上の処理位置において錠剤9に所定の処理を行う処理部として、印刷位置において錠剤9に印刷処理を行う印刷部60を備えていた。しかしながら、錠剤印刷装置1は、錠剤9の包装を行う包装装置等の他の処理部を備えていてもよい。
【0102】
すなわち、本発明の搬送処理装置は、錠剤を搬送して表面に所定の処理を行う装置であって、錠剤を保持しつつ搬送方向に搬送する第1搬送機構と、錠剤を1つずつ吸着保持する複数の吸着孔を搬送方向に移動させる第2搬送機構と、第2搬送機構による搬送経路上の処理位置において、錠剤の表面に所定の処理を行う処理部と、処理位置よりも搬送方向の上流側の受け渡し位置において、第1搬送機構から第2搬送機構の吸着孔へ錠剤を受け渡す移載機構と、処理位置よりも搬送方向の下流側の判定位置において、錠剤の処理状態の良否を判定する判定部と、判定位置よりも搬送方向の下流側の良品排出位置において、判定部により良品と判定された錠剤が吸着保持された吸着孔に陽圧を作用させて吸着孔における錠剤の吸着を解除し、良品排出口へ錠剤を落下させる良品排出機構と、を有し、受け渡し位置は、良品排出口の上方から外れた位置に配置されていればよい。ここで、上記の第1搬送機構と第2搬送機構とによる搬送経路および移載機構は、搬送コンベア20と吸着コンベア40とによる搬送経路および吸着ドラム30、または吸着コンベア40における第1領域A1と吸着コンベア40における第2領域A2とによる搬送経路および反転機構90に相当する。
【0103】
また、本発明の搬送処理方法は、錠剤を搬送して表面に所定の処理を行う方法であって、a)第1搬送機構において錠剤を保持しつつ搬送方向に搬送する工程と、b)第2搬送機構において錠剤を1つずつ吸着保持する複数の吸着孔を搬送方向に移動させる工程と、c)工程b)の途中で、搬送経路上の処理位置において、錠剤の表面に所定の処理を行う工程と、d)処理位置よりも搬送方向の上流側の受け渡し位置において、第1搬送機構から第2搬送機構の吸着孔へ錠剤を受け渡す工程と、e)処理位置よりも搬送方向の下流側の判定位置において、錠剤の処理状態の良否を判定する工程と、f)判定位置よりも搬送方向の下流側の良品排出位置において、工程e)の判定において良品と判定された錠剤が吸着保持された吸着孔に陽圧を作用させて吸着孔における錠剤の吸着を解除し、良品排出口へ錠剤を落下させる工程と、を有し、受け渡し位置は、良品排出口の上方から外れた位置に配置されていればよい。
【0104】
また、装置内の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
10 フィーダ
20 搬送コンベア
21 プーリ
22 搬送ベルト
30 吸着ドラム
40 吸着コンベア
41 プーリ
42 吸着ベルト
43 第2吸引機構
50 第1カメラ
60 印刷部
61 ヘッド
70 第2カメラ
80 乾燥機構
90 反転機構
100 不良品回収機構
101 不良品シュート
102 不良品回収口
110 良品排出機構
111 良品シュート
112 良品排出コンベア
113 カバー
114 良品排出口
115 プーリ
116 搬送ベルト
120 制御部
131 シュート本体
132 厚み調整部材
133 押さえ部材
134 ネジ
301 ドラム吸着孔
302 第1吸引機構
421 吸着孔
422 水平面
A1 第1領域
A2 第2領域
P1 受け渡し位置
P2 受け渡し位置
P6 不良品排出位置
P7 良品排出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11