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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】印刷装置およびインク循環方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20230704BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230704BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/165 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019170122
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021045904
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】陶山 忠義
(72)【発明者】
【氏名】古市 考次
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014193(JP,A)
【文献】特開2009-196207(JP,A)
【文献】特開2017-121784(JP,A)
【文献】国際公開第2006/075314(WO,A2)
【文献】特開2019-006042(JP,A)
【文献】特開2014-180829(JP,A)
【文献】特開2010-064477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドから出てから前記吐出ヘッドに戻る循環経路に沿って前記インクを循環させることで前記吐出ヘッドに前記インクを供給する通常循環と、前記通常循環よりも低い流量で前記循環経路に沿って前記インクを循環させる低速循環とを選択的に実行するインク送液部と、
前記インク送液部に前記通常循環を実行させつつ前記吐出ヘッドに前記ノズルから前記インクを吐出させることで画像を印刷する印刷モードを実行する一方、前記印刷モードの休止時には前記インク送液部に前記低速循環を実行させる制御部と
前記インクを加熱する加熱部と
を備え、
前記制御部は、前記印刷モードの実行時には、前記加熱部に前記インクを加熱させ、
前記制御部は、前記加熱部に前記インクを加熱させつつ前記インク送液部に前記低速循環を実行させる加熱休止モードと、前記加熱部に前記インクを加熱させずに前記インク送液部に前記低速循環を実行させる非加熱休止モードとを、前記印刷モードの休止時に選択的に実行する印刷装置。
【請求項2】
ユーザによる終了指示を受け付ける第1操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記印刷モードの休止時において、前記第1操作部が前記終了指示を受け付けていない間は前記加熱休止モードを実行し、前記第1操作部が前記終了指示を受け付けると前記非加熱休止モードを実行する請求項に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドの前記ノズルを覆うキャッピングを実行するキャップをさらに備え、
前記制御部は、前記印刷モードの実行時には前記キャップに前記キャッピングを実行させない一方、前記非加熱休止モードの実行時には前記キャップに前記キャッピングを実行させる請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記加熱休止モードの実行時に前記キャッピングを実行するように指示するキャッピング指示を受け付ける第2操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2操作部が前記キャッピング指示を受け付けた場合には、前記加熱休止モードの実行時に前記キャップに前記キャッピングを実行させる一方、前記第2操作部が前記キャッピング指示を受け付けていない場合には、前記加熱休止モードの実行時に前記キャップに前記キャッピングを実行させない請求項に記載の印刷装置。
【請求項5】
ユーザによる開始指示を受け付ける第3操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記第3操作部が前記開始指示を受け付けると、前記キャップに前記キャッピングを実行させた状態で、前記インク送液部に前記通常循環を実行させるとともに、前記加熱部に前記インクの加熱を実行させる立上モードを、前記開始指示に伴う前記印刷モードの開始までの期間に実行する請求項3または4に記載の印刷装置。
【請求項6】
吐出ヘッドから出てから前記吐出ヘッドに戻る循環経路に沿ってインクを循環させる通常循環を実行しつつ、前記吐出ヘッドのノズルから前記インクを吐出することで画像を印刷する印刷モードを実行する工程と、
前記印刷モードの休止時に、前記通常循環より低い流量で前記循環経路に沿って前記インクを循環させる低速循環を実行する工程と
を備え、
前記印刷モードの実行時には、インクを加熱する加熱部に前記インクを加熱させ、
前記印刷モードの休止時には、前記加熱部に前記インクを加熱させつつ前記低速循環を実行する加熱休止モードと、前記加熱部に前記インクを加熱させずに前記低速循環を実行する非加熱休止モードとを選択的に実行するインク循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドにインクを循環的に供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式により吐出ヘッドのノズルからインクを吐出することで画像を印刷する印刷装置が知られている。このように吐出ヘッドを用いた印刷では、インクが吐出ヘッドに長時間滞留すると、インクが乾燥して固化して、吐出ヘッドのノズルを詰まらせる場合がある。そこで、特許文献1に記載の印刷装置は、吐出ヘッドにインクを循環的に供給して、吐出ヘッドは供給されたインクをノズルから吐出することで、画像を印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-255580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクの乾燥は、印刷の実行時に限らず、印刷を休止している間にも生じるため、印刷の休止時においてもインクの循環を行う必要がある。しかしながら、インクの循環に伴ってインクに加わった負荷によって、インクが劣化してしまう場合がある。そして、かかるインクの劣化は、インクを循環させる流量が高いほど促進される傾向にある。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、吐出ヘッドにインクを循環的に供給することでインクの乾燥を抑制しつつ、インクの劣化も併せて抑制することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドから出てから吐出ヘッドに戻る循環経路に沿ってインクを循環させることで吐出ヘッドにインクを供給する通常循環と、通常循環よりも低い流量で循環経路に沿ってインクを循環させる低速循環とを選択的に実行するインク送液部と、インク送液部に通常循環を実行させつつ吐出ヘッドにノズルからインクを吐出させることで画像を印刷する印刷モードを実行する一方、印刷モードの休止時にはインク送液部に低速循環を実行させる制御部とを備える。
【0007】
本発明に係るインク循環方法は、吐出ヘッドから出てから吐出ヘッドに戻る循環経路に沿ってインクを循環させる通常循環を実行しつつ、吐出ヘッドのノズルからインクを吐出することで画像を印刷する印刷モードを実行する工程と、印刷モードの休止時に、通常循環より低い流量で循環経路に沿ってインクを循環させる低速循環を実行する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置、インク循環方法)では、印刷モードの休止時には、印刷モードの実行時より低い流量で循環経路に沿ってインクを循環させる。こうして、吐出ヘッドにインクを循環的に供給することでインクの乾燥を抑制しつつ、インクの劣化も併せて抑制することが可能となっている。
【0009】
また、インクを加熱する加熱部を備え、制御部は、印刷モードの実行時には、加熱部にインクを加熱させるように、印刷装置を構成してもよい。このようにインクを加熱することで、ノズルからインクを安定的に吐出することができる。
【0010】
ところで、インクを加熱する時間が長くなれば、インクが乾燥・固化して、吐出ヘッドのノズルを詰まらせるおそれがある。これに対応するため、印刷モードの休止時には、インクの加熱を停止する構成が考えられる。ただし、インクの加熱には時間を要するため、印刷モードの休止に伴って印刷の加熱を停止した後に、印刷モードを再開する際に、インクの加熱のために印刷モードの再開が遅れるといった問題が想定される。
【0011】
そこで、制御部は、加熱部にインクを加熱させつつインク送液部に低速循環を実行させる加熱休止モードと、加熱部にインクを加熱させずにインク送液部に低速循環を実行させる非加熱休止モードとを、印刷モードの休止時に選択的に実行するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、例えば、次の印刷モードまでの時間が短いと予想される場合には、印刷モードの休止時に加熱休止モードを選択することで、印刷モードを速やかに再開できる一方、次の印刷モードまでの時間が長いと予想される場合には、印刷モードの休止時に非加熱休止モードを選択することで、インクの乾燥・固化を抑制することができる。
【0012】
また、ユーザによる終了指示を受け付ける第1操作部をさらに備え、制御部は、印刷モードの休止時において、第1操作部が終了指示を受け付けていない間は加熱休止モードを実行し、第1操作部が終了指示を受け付けると非加熱休止モードを実行するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、ユーザからの終了指示がない場合には、印刷モードの休止時に加熱休止モードが実行されるため、印刷モードを速やかに再開できる一方、ユーザからの終了指示がある場合には、印刷モードの休止時に非加熱休止モードが実行されるため、インクの乾燥・固化を抑制することができる。したがって、ユーザは、印刷モードの再開までの時間が短いと予想する場合には、加熱休止モードを選択すればよく、印刷モードの再開までの時間が長いと予想する場合には、非加熱休止モードを選択すればよい。よって、ユーザの状況判断に応じて、インクの加熱を適切に実行することができる。
【0013】
また、吐出ヘッドのノズルを覆うキャッピングを実行するキャップをさらに備え、制御部は、印刷モードの実行時にはキャップにキャッピングを実行させない一方、非加熱休止モードの実行時にはキャップにキャッピングを実行させるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、非加熱休止モードの際には、吐出ヘッドのノズルがキャップにより覆われるため、ノズルの乾燥・固化をより効果的に抑制することができる。
【0014】
また、加熱休止モードの実行時にキャッピングを実行するように指示するキャッピング指示を受け付ける第2操作部をさらに備え、制御部は、第2操作部がキャッピング指示を受け付けた場合には、加熱休止モードの実行時にキャップにキャッピングを実行させる一方、第2操作部がキャッピング指示を受け付けていない場合には、加熱休止モードの実行時にキャップにキャッピングを実行させないように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、ユーザは、キャッピング指示を第2操作部に対して行うことで、加熱休止モード中のインクの乾燥・固化を抑制できる一方、キャッピング指示を行わないことで、キャッピングの解除に要する時間を排除して、印刷モードを速やかに再開することができる。よって、ユーザの状況判断に応じて、キャッピングを適切に実行することができる。
【0015】
また、ユーザによる開始指示を受け付ける第3操作部をさらに備え、制御部は、第3操作部が開始指示を受け付けると、キャップにキャッピングを実行させた状態で、インク送液部に通常循環を実行させるとともに、加熱部にインクの加熱を実行させる立上モードを、開始指示に伴う印刷モードの開始までの期間に実行するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、印刷モードの開始までの期間は、キャッピングが実行されるため、インクの乾燥・固化を抑制しつつ、印刷モードの開始を待機することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、吐出ヘッドにインクを循環的に供給することでインクの乾燥を抑制しつつ、インクの劣化も併せて抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムを模式的に示す正面図。
図2図1の印刷システムが備える前段印刷装置を模式的に示す正面図。
図3図1の印刷システムが備える後段印刷装置を模式的に示す正面図。
図4】吐出ヘッドの構成を模式的に示す図。
図5】プリントバーを駆動するバー駆動機構の構成を模式的に示す側面図。
図6図4の吐出ヘッドにインクを供給するインク供給装置の構成を模式的に示す図。
図7】前段印刷装置および後段印刷装置が備える電気的構成を示す図。
図8】モード制御の一例を示すフローチャート。
図9図8のモード制御において設定される内容を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムを模式的に示す正面図である。図1および以下に示す図では、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を適宜示す。ここで、X方向およびY方向はそれぞれ水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。図1に示すように、印刷システム1は、互いに同一の高さを有する前段印刷装置2、前段乾燥機3、後段印刷装置6および後段乾燥機7をこの順で配列した構成を具備する。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで印刷媒体Mを搬送しつつ、前段印刷装置2で印刷した印刷媒体Mを前段乾燥機3で乾燥させ、さらに後段印刷装置6で印刷した印刷媒体Mを後段乾燥機7で乾燥させる。ここでは、透明のフィルムである印刷媒体Mに対してエマルジョンインクで印刷を行う場合を例示して説明する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面と、表面の反対側の面を裏面と適宜称する。
【0019】
図2図1の印刷システムが備える前段印刷装置を模式的に示す正面図である。前段印刷装置2では、同図の右から左へ向かう搬送方向Amに沿って印刷媒体Mが搬送される。この前段印刷装置2は、繰出ロール11から繰出された印刷媒体Mを搬入する搬入ローラ21と、印刷媒体Mを前段乾燥機3に向けて搬出する搬出ローラ23とを有する。搬入ローラ21および搬出ローラ23は、印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛けて、印刷媒体Mを搬送方向Amに駆動する。さらに、前段印刷装置2は、搬送方向Amにおいて搬入ローラ21と搬出ローラ23との間に配置された複数のバックアップローラ25を有する。これらバックアップローラ25のそれぞれは、搬送方向Amに搬送される印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛けることで、印刷媒体Mを支持する。
【0020】
複数のバックアップローラ25のうち、搬送方向Amにおいて最上流のバックアップローラ25と最下流のバックアップローラ25との間に、前段印刷経路Paが形成される。最上流および最下流のバックアップローラ25は、互いに同じ高さで印刷媒体Mを支持するとともに、前段印刷経路Paの内側のバックアップローラ25ほどより高い位置で印刷媒体Mを支持する。
【0021】
さらに、前段印刷装置2は、前段印刷経路Paに沿って搬送される印刷媒体Mの上方で搬送方向Amに並んで、印刷媒体Mの表面に対向する複数のプリントバーBを備える。具体的には、隣接する2個のバックアップローラ25の間を進む印刷媒体Mの表面に対してプリントバーBが配置されており、各プリントバーBは、こうして両側が2個のバックアップローラ25によって支持された印刷媒体Mの表面にインクジェット方式でインクを吐出する。ここで示す例では、4色のプロセスカラー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のインクを吐出する4個のプリントバーBと、2色(オレンジ、バイオレット)の特色インクを吐出する2個のプリントバーBとを含む6個のプリントバーBが設けられている。したがって、前段印刷装置2は、互いに異なる色のカラーインクを吐出する6個のプリントバーBによって、カラー画像を印刷媒体Mの表面に印刷することができる。
【0022】
前段印刷経路Paで画像が印刷された印刷媒体Mは、前段印刷経路Paの最下流のバックアップローラ25と搬出ローラ23との間を斜めに下降して搬出ローラ23に到達する。この搬出ローラ23は、複数のバックアップローラ25の搬送方向Amの下流で印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛ける。そして、搬出ローラ23は、印刷媒体Mを前段乾燥機3に搬出する。なお、搬出ローラ23は、印刷媒体Mの裏面を吸引するサクションローラであり、前段乾燥機3から前段印刷装置2へ印刷媒体Mの振動が伝達するのを抑制して、前段印刷経路Paでの印刷媒体Mの位置を安定させる。その結果、前段乾燥機3での印刷媒体Mの搬送が前段印刷装置2での印刷に影響するのを抑制可能となっている。
【0023】
図1に示すように、前段乾燥機3は、印刷媒体Mの搬送方向AmをZ方向に適宜折り返しながら印刷媒体Mを乾燥する。そして、前段乾燥機3で乾燥された印刷媒体Mは、前段乾燥機3から後段印刷装置6へと搬出される。
【0024】
図3図1の印刷システムが備える後段印刷装置を模式的に示す正面図である。後段印刷装置6は、前段乾燥機3からX方向に搬出された印刷媒体Mを斜め上方に折り曲げるエアターンバー61を有する。このエアターンバー61は、エアの噴射によって印刷媒体Mの表面に対して隙間を設けながら、印刷媒体Mの表面を巻き掛ける。また、後段印刷装置6は、印刷媒体Mを後段乾燥機7に向けて搬出する搬出ローラ63と、エアターンバー61と搬出ローラ63との間に配置された搬送ローラ65とを有する。搬送ローラ65および搬出ローラ63は、印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛けて、印刷媒体Mを搬送方向Amに駆動する。
【0025】
また、後段印刷装置6は、搬送ローラ65と搬出ローラ63との間に2個のバックアップローラ67を有する。2個のバックアップローラ67の間には、後段印刷経路Pcが形成される。さらに、後段印刷装置6は、後段印刷経路Pcに沿って搬送される印刷媒体Mの上方で、印刷媒体Mの表面に対向するプリントバーBを備える。具体的には、2個のバックアップローラ67の間を進む印刷媒体Mの表面に対してプリントバーBが配置されており、プリントバーBは、こうして両側が2個のバックアップローラ67によって支持された印刷媒体Mの表面にインクジェット方式でインクを吐出する。ここで示す例では、プリントバーBは白色インクを吐出する。したがって、後段印刷装置6は、前段印刷装置2で印刷されたカラー画像に対して、印刷媒体Mの表面に白色の背景画像をプリントバーBにより印刷することができる。
【0026】
後段印刷経路Pcで画像が印刷された印刷媒体Mは、後段印刷経路Pcの最下流のバックアップローラ67と搬出ローラ63との間を斜めに上昇して搬出ローラ63に到達する。この搬出ローラ63は、2個のバックアップローラ67の搬送方向Amの下流で印刷媒体Mを下方から巻き掛ける。搬出ローラ63は、こうして後段印刷経路Pcから斜めに上昇してきた印刷媒体Mを巻き掛けることで、印刷媒体MがX方向に移動する経路に沿って印刷媒体Mを後段乾燥機7に搬出する。なお、搬出ローラ63は、印刷媒体Mの裏面を吸引するサクションローラであり、後段乾燥機7から後段印刷装置6へ印刷媒体Mの振動が伝達するのを抑制して、後段印刷経路Pcでの印刷媒体Mの位置を安定させる。その結果、後段乾燥機7での印刷媒体Mの搬送が後段印刷装置6での印刷に影響するのを抑制可能となっている。
【0027】
図1に示すように、後段乾燥機7は、印刷媒体Mの搬送方向AmをX方向に適宜折り返しながら印刷媒体Mを乾燥する。そして、後段乾燥機7で乾燥された印刷媒体Mは、後段乾燥機7から搬出されて、巻取ロール12に巻き取られる。
【0028】
上記のように、前段印刷装置2および後段印刷装置6が備えるプリントバーBは、インクジェット方式でインクを吐出する。具体的には、プリントバーBの底部では、Y方向に配列された複数のノズルNから印刷媒体Mへインクを吐出する複数の吐出ヘッドH(図4図6)がY方向に配列されている。
【0029】
図4は吐出ヘッドの構成を模式的に示す図である。図4に示すように、吐出ヘッドHは、ハウジングHaを有し、複数のノズルNがハウジングHaの底部にY方向に配列されて開口する。ハウジングHaの内部には、複数のノズルNにそれぞれ連通する複数のキャビティHbと、複数のキャビティHbに連通するインク供給室Hcとが設けられており、インク供給室Hcから供給されたインクIがキャビティHbに貯留される。そして、キャビティHbに設けられた圧電素子がキャビティHbからインクIを押し出すことで、当該キャビティHbに連通するノズルNからインクIが吐出される。なお、インクIを吐出する具体的方法は、圧電素子による方法によらず、インクIを加熱するサーマル方式でも構わない。また、吐出ヘッドHの上部では、インク供給口Hdと、インク回収口Heとがそれぞれ開口し、インクIは、インク供給口Hdを介してインク供給室Hcに供給され、インク回収口Heを介してインク供給室Hcから回収される。
【0030】
このように構成された各プリントバーBに対しては、プリントバーBを駆動するバー駆動機構8(図5)が、前段印刷装置2および後段印刷装置6それぞれで具備されている。図5はプリントバーを駆動するバー駆動機構の構成を模式的に示す側面図である。バー駆動機構8によるプリントバーBの駆動態様は、前段印刷装置2および後段印刷装置6の各プリントバーBで同様であるため、ここでは、1個のプリントバーBを示してバー駆動機構8の説明を行う。
【0031】
図5に示すように、プリントバーBは、Y方向において異なる対向位置Laと退避位置Lbのいずれかに選択的に位置する。プリントバーBが対向位置Laに位置すると、プリントバーBの各吐出ヘッドHは印刷媒体Mに対向する一方、プリントバーBが退避位置Lbに位置すると、プリントバーBの各吐出ヘッドHは印刷媒体MからY方向に退避して、印刷媒体Mに対向しない。この退避位置Lbに対しては、下方からキャップCが対向する。つまり、退避位置Lbに位置するプリントバーBの各吐出ヘッドHには、キャップCが下方から対向する。
【0032】
これに対応して、バー駆動機構8は、Y方向に平行に設けられたY軸レール81と、Y軸レール81に沿ってY方向に移動する可動部材82とを有し、可動部材82にプリントバーBが取り付けられている。したがって、プリントバーBは、可動部材82に伴ってY方向に移動することで、対向位置Laと退避位置Lbとの間を移動できる。
【0033】
さらに、バー駆動機構8は、可動部材82に取り付けられた昇降レール83と、昇降レール83に沿って昇降する可動部材84とを備え、この可動部材84にプリントバーBが取り付けられている。つまり、プリントバーBは、昇降レール83および可動部材84を介して可動部材82に取り付けられており、可動部材82の移動に伴って、昇降レール83、可動部材84およびプリントバーBがY方向に移動する。さらに、昇降レール83に沿った可動部材84の昇降に伴って、プリントバーBが昇降する。
【0034】
このようなバー駆動機構8は、プリントバーBをY方向に駆動可能であるとともに、プリントバーBを昇降可能であり、図5の状態S1~S3に示すようにプリントバーBを駆動できる。状態S1では、プリントバーBは対向位置Laに位置して、印刷媒体Mに対向する。プリントバーBが有する各吐出ヘッドHのノズルNからインクを吐出して印刷媒体Mに印刷を行う場合には、プリントバーBは対向位置Laに位置する。状態S2、S3では、プリントバーBは、退避位置Lbに位置し、キャップCに上方から対向する。ただし、状態S2では、プリントバーBは上昇位置に位置し、プリントバーBとキャップCとの間には隙間が空く。これに対して、状態S3では、プリントバーBは上昇位置より低い下降位置に位置し、プリントバーBは、キャップCに上方から接触する。つまり、状態S3では、プリントバーBが有する吐出ヘッドHの各ノズルNをキャップCによって覆うキャッピングが実行されている。
【0035】
図6図4の吐出ヘッドにインクを供給するインク供給装置の構成を模式的に示す図である。図6では、インク供給装置9内に存在するインクIがドットハッチングで示されている。前段印刷装置2および後段印刷装置6のそれぞれは、各プリントバーBに対してインク供給装置9を備える。ただし、各プリントバーBでインク供給装置9の構成は共通するため、ここでは、1個のプリントバーBに対するインク供給装置9の構成を説明する。
【0036】
インク供給装置9は、インクIを貯留するフィードリザーバ91fと、フィードリザーバ91fと吐出ヘッドHのインク供給口Hdとを接続するフィード配管92f(フィード経路)とを備える。そして、フィードリザーバ91fからフィード配管92fに流出したインクIは、インク供給口Hdを介してインク供給室Hcに供給される。さらに、インク供給装置9は、インクIを貯留するリターンリザーバ91rと、リターンリザーバ91rと吐出ヘッドHのインク回収口Heとを接続するリターン配管92r(リターン経路)とを備える。そして、吐出ヘッドHのインク供給室Hcからインク回収口Heを介してリターン配管92rに流出したインクIは、リターンリザーバ91rに回収される。
【0037】
また、インク供給装置9は、フィードリザーバ91f内のインクIを加熱するフィードヒータTafと、フィードリザーバ91f内のインクIの温度を検出するフィード温度計Tbfとを備える。同様に、インク供給装置9は、リターンリザーバ91r内のインクIを加熱するリターンヒータTarと、リターンリザーバ91r内のインクIの温度を検出するリターン温度計Tbrとを備える。
【0038】
さらに、インク供給装置9は、リターンリザーバ91rとフィードリザーバ91fとを接続するリザーバ連通管94(リザーバ接続経路)を備える。このリザーバ連通管94は、リターンリザーバ91rとフィードリザーバ91fとを連通させる配管であり、インクIはリターンリザーバ91rからフィードリザーバ91fへ向けてリザーバ連通管94内を移動する。
【0039】
このリザーバ連通管94に対しては、循環ポンプ95、フィルタ96および脱ガス器97が設けられている。循環ポンプ95、フィルタ96および脱ガス器97は、インクIがリザーバ連通管94内を流れる方向にこの順で並ぶ。循環ポンプ95は、ダイアフラムポンプであり、リターンリザーバ91rから流出したインクIをリザーバ連通管94に沿ってフィードリザーバ91fに送る機能を果たす。フィルタ96は、フィードリザーバ91fに流入する前にリザーバ連通管94内を流れるインクIから固形物を除去し、脱ガス器97は、フィードリザーバ91fに流入する前にリザーバ連通管94内を流れるインクIから気体を除去する。
【0040】
また、インク供給装置9は、多量のインクIを貯留可能なメインリザーバ91mと、メインリザーバ91mとリザーバ連通管94とを接続するインク供給管92mとを備える。具体的には、インク供給管92mは、リザーバ連通管94のうち、リターンリザーバ91rと循環ポンプ95との間と、メインリザーバ91mとを接続する。そして、メインリザーバ91m内に貯留されるインクIが、インク供給管92mを介してリザーバ連通管94内に供給される。
【0041】
さらに、インク供給装置9は、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rそれぞれに付与される圧力を調整する圧力調整機構98を備える。この圧力調整機構98は、フィードリザーバ91fに付与する圧力を調整するフィード側調整部98fと、リターンリザーバ91rに付与する圧力を調整するリターン側調整部98rとを有する。これらフィード側調整部98fおよびリターン側調整部98rは共通する構成を具備し、負圧タンクを負圧ポンプにより減圧することで負圧タンク内に生成した負圧を、それぞれフィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rに付与する。
【0042】
かかるインク供給装置9では、フィード側調整部98fおよびリターン側調整部98r(圧力調整機構98)がフィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に負圧差ΔPを生成することで、破線で示す循環経路Wcに沿ってインクIを循環させる。ここで、循環経路Wcは、インクIがフィードリザーバ91fから吐出ヘッドHを経由してリターンリザーバ91rに到った後に、リターンリザーバ91rからリザーバ連通管94を介してフィードリザーバ91fに戻る経路である。
【0043】
具体的には、フィード側調整部98fがフィードリザーバ91f内の圧力Pfを負圧に調整するとともに、リターン側調整部98rがリターンリザーバ91r内の圧力Prを圧力Pfより低い負圧に調整する。これによって、フィードリザーバ91fの圧力Pfとリターンリザーバ91rの圧力Prとの間に負圧差ΔPが生成され、フィードリザーバ91fからリターンリザーバ91rへ向かう圧力がインクIに加わる。また、負圧差ΔPの生成中は、コントローラ99は循環ポンプ95を稼動させて、リターンリザーバ91rからフィードリザーバ91fへ向けてインクIを循環ポンプ95に排出させることで、負圧差ΔPが減少するのを防止する。かかる負圧差ΔPによって、インクIが循環経路Wcを循環する。
【0044】
図7は前段印刷装置および後段印刷装置が備える電気的構成を示す図である。なお、前段印刷装置2および後段印刷装置6のそれぞれが備える図7の構成は共通するため、ここでは、前段印刷装置2および後段印刷装置6を特に区別せずに説明を行う。図7に示すように、印刷装置2、6は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであるコントローラ100を備える。
【0045】
コントローラ100は、圧力調整機構98のフィード側調整部98fおよびリターン側調整部98rを制御することで、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に負圧差ΔPを生成する。特に、コントローラ100は、互いに異なる2通りの負圧差ΔP、すなわち通常負圧差ΔPoおよび低負圧差ΔPlを生成する。低負圧差ΔPlは、通常負圧差ΔPoよりも小さい。したがって、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に通常負圧差ΔPoが生成された状態では、インクIは、通常流量Voで循環経路Wcに沿って循環する(通常循環)。一方、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に低負圧差ΔPlが生成された状態では、インクIは、通常流量Voより低い低速流量Vlで循環経路Wcに沿って循環する(低速循環)。また、コントローラ100は、通常負圧差ΔPoと低負圧差ΔPlとの違いに応じて循環ポンプ95の動作を併せて制御する。
【0046】
このコントローラ100は、フィード温度計Tbfにより検出したインクIの温度に基づきフィードヒータTafの出力をフィードバック制御することで、フィードリザーバ91f内のインクIの温度を所定の印刷温度Tpに制御する。同様に、コントローラ100は、リターン温度計Tbrにより検出したインクIの温度に基づきリターンヒータTarの出力をフィードバック制御することで、リターンリザーバ91r内のインクIの温度を印刷温度Tpに制御する。
【0047】
また、コントローラ100は、バー駆動機構8を制御することで、プリントバーBを駆動する。これによって、プリントバーBは、図5に示す3通りの状態S1~S3のいずれかの状態となる。
【0048】
さらに、印刷装置2、6は、ユーザインターフェース110を備える。ユーザインターフェース110は例えばタッチパネルディスプレイによって構成され、ユーザの入力操作を受け付けたり、ユーザに各種の情報を報知したりする機能を有する。そして、コントローラ100は、ユーザインターフェース110へのユーザの入力操作に応じた制御を実行する。
【0049】
特に、コントローラ100は、印刷装置2、6において実行する以下のモードを制御する。続いては、図8および図9を用いて、このモード制御について説明を行う。ここで、図8はモード制御の一例を示すフローチャートであり、図8のモード制御はコントローラ100によって実行される。図9図8のモード制御において設定される内容を示す図である。図9では、循環経路WcにおけるインクIの循環流量、ヒータTaf、Tarによる加熱の有無(ON/OFF)およびキャッピングの実行態様(ON/OFF/ユーザ選択)が、モード毎に示されている。
【0050】
ステップS101では、コントローラ100は、開始指示がユーザによってユーザインターフェース110に入力されたか否かを確認する。ここで、開始指示が入力されるまでは、後述する非加熱休止モード(ステップS107)が実行されているものとする。そして、開始指示の入力が確認されると(ステップS101で「YES」)、コントローラ100は、立上モードを実行する(ステップS102)。図9に示すように、立上モードでは、プリントバーBに対してキャッピングが実行される。そこで、コントローラ100は、バー駆動機構8を制御することで、退避位置LbでプリントバーBをキャップCに当接させる(状態S3)。こうしてキャッピングを実行した状態で、コントローラ100は、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に通常負圧差ΔPoを生成することで循環経路Wcに沿ってインクIを通常流量Voで循環させつつ(通常循環)、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarによるインクIの加熱を開始する。
【0051】
そして、コントローラ100は、フィード温度計Tbfの検出温度とリターン温度計Tbrの検出温度との両方が印刷温度Tpに到達したのを確認すると(ステップS103で「YES」)、コントローラ100は、印刷モードを実行する(ステップS104)。図9に示すように、印刷モードでは、コントローラ100は、循環経路Wcに沿って通常流量VoでインクIを循環させつつ(通常循環)、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarによりインクIの温度を印刷温度Tpに制御する。このようにインクIの循環流量と加熱については、印刷モードと立上モードとは設定内容が同一であるため、立上モードに続いて印刷モードを実行するにあたり、コントローラ100は、設定の変更を要しない。
【0052】
一方、キャッピングについては、立上モードと印刷モードとで設定内容が異なり、印刷モードでは、プリントバーBを対向位置Laに位置させて、印刷媒体Mに対向させる必要がある。ここでは、立上モードに続いて印刷モードを実行するために、コントローラ100は、キャップCに接触するプリントバーBを上昇させてから(状態S2)、退避位置Lbから対向位置LaまでプリントバーBを移動させる(状態S1)。こうして、対向位置LaへのプリントバーBの移動が完了すると、吐出ヘッドHがノズルNからインクIの吐出を開始して、印刷媒体Mに画像が印刷される。
【0053】
ステップS105では、コントローラ100は、印刷モードによる画像の印刷が完了して、印刷モードを休止するか否かを判断する(ステップS105)。印刷モードを休止する場合(ステップS105で「YES」の場合)には、終了指示がユーザによってユーザインターフェース110に入力されたか否かを確認する。例えば、ユーザは、印刷装置2、6の1日の稼動を終えて帰宅するような場合に終了指示を入力する。
【0054】
終了指示の入力が確認されると(ステップS106で「YES」)、コントローラ100は、非加熱休止モードを実行する(ステップS107)。図9に示すように、非加熱休止モードでは、コントローラ100は、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に低負圧差ΔPlを生成することで循環経路Wcに沿ってインクIを低速流量Vlで循環させつつ(低速循環)、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarによるインクIの加熱を停止する。
【0055】
また、図9に示すように、非加熱休止モードでは、キャッピングを実行する。ここでは、印刷モードに続いて非加熱休止モードを実行するために、コントローラ100は、対向位置Laから退避位置LbまでプリントバーBを移動させてから(状態S2)、プリントバーBを下降させてキャップCに接触させる(状態S3)。そして、ステップS101に戻る。
【0056】
一方、ステップS106で、終了指示の入力が確認されない場合(ステップS106で「NO」の場合)、コントローラ100は、印刷モードの休止の度にキャッピングを実行するようにキャッピング指示がユーザによってユーザインターフェース110に入力されているか否かを確認する。例えば、ユーザは、印刷モードを短い間隔で繰り返す場合にはキャッピング指示を入力しない一方、印刷モードを繰り返す間隔が長い場合にはキャッピング指示を入力するといった判断を行える。
【0057】
キャッピング指示の入力が確認されると(ステップS108で「YES」)、コントローラ100は、対向位置Laから退避位置Lbまで移動させたプリントバーBを下降させてキャップCに接触させることでキャッピングを実行してから(ステップS109)、ステップS110に移行する。一方、キャッピング指示の入力が確認されない場合(ステップS108で「NO」の場合)には、コントローラ100はキャッピングを行わずに、ステップS110に移行する。
【0058】
図9に示すように、ステップS110で実行する加熱休止モードでは、コントローラ100は、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に低負圧差ΔPlを生成することで循環経路Wcに沿ってインクIを低速流量Vlで循環させつつ(低速循環)、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarによるインクIの加熱を行う。ここでは、印刷モードに続いて加熱休止モードを実行するため、コントローラ100は、インクIの加熱を印刷モードから加熱休止モードに渡って継続する。
【0059】
ステップS111では、コントローラ100は、印刷モード(ステップS104)の再開指示がユーザによってユーザインターフェース110に入力されたかを確認する。そして、印刷モードの再開指示の入力が確認されると(ステップS111で「YES」)、ステップS104に戻る。
【0060】
以上に説明する実施形態では、印刷モードの休止時(ステップS107、S110)には、印刷モードの実行時より低い低速流量Vlで循環経路Wcに沿ってインクIを循環させる。こうして、吐出ヘッドHにインクIを循環的に供給することでインクIの乾燥を抑制しつつ、インクIの劣化も併せて抑制することが可能となっている。
【0061】
特に、図6に示すインク供給装置9では、循環経路Wcに沿って高流速でインクIを循環させると、エマルジョンインクに循環ポンプ95やフィルタ96による機械的な負荷が加わる。特に循環ポンプ95としてダイアフラムポンプを用いると、送液の際にインクIに高いせん断が加わるため、エマルジョンの破壊・凝集が引き起こされやすい。その結果、フィルタ96が詰まってインクIの流れが悪化するために、インクIに気泡や凝集物が混ざってしまい、印刷品質が低下するおそれがある。このように印刷品質が低下すると、インクIの入れ換えや、吐出ヘッドHの交換が必要となり、多大な手間やコストが生じる。これに対して、上記の実施形態によれば、このような問題を効果的に回避することができる。
【0062】
また、インクIを加熱するフィードヒータTafおよびリターンヒータTar(加熱部)が具備されている。そして、コントローラ100は、印刷モード(ステップS104)の実行時には、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarによりインクIを加熱する。このようにインクIを加熱することで、ノズルNからインクIを安定的に吐出することができる。
【0063】
ところで、インクIを加熱する時間が長くなれば、インクIが乾燥・固化して、吐出ヘッドHのノズルNを詰まらせるおそれがある。これに対応するため、印刷モードの休止時には、インクIの加熱を停止する構成が考えられる。ただし、インクIの加熱には長時間を要するため、印刷モードの休止に伴ってインクIの加熱を停止した後に印刷モードを再開する際に、インクIの加熱のために印刷モードの再開が遅れるといった問題が想定される。
【0064】
これに対して、コントローラ100は、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarにインクIを加熱させつつ、圧力調整機構98に低速循環を実行させる加熱休止モード(ステップS110)と、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarにインクIを加熱させずに圧力調整機構98に低速循環を実行させる非加熱休止モード(ステップS107)とを、印刷モードの休止時に選択的に実行する。かかる構成では、例えば、次の印刷モードまでの時間が短いと予想される場合には、印刷モードの休止時に加熱休止モード(ステップS110)を選択することで、印刷モードを速やかに再開できる一方、次の印刷モードまでの時間が長いと予想される場合には、印刷モードの休止時に非加熱休止モード(ステップS107)を選択することで、インクIの乾燥・固化を抑制することができる。
【0065】
また、ユーザによる終了指示を受け付けるユーザインターフェース110が具備されている。そして、コントローラ100は、コントローラ100が終了指示を受け付けていない間(ステップS106で「NO」)は、印刷モードの休止時に加熱休止モード(ステップS110)を実行し、ユーザインターフェース110が終了指示を受け付けると(ステップS106で「YES」)、印刷モードの休止時に非加熱休止モード(ステップS107)を実行する。かかる構成では、ユーザからの終了指示がない場合には、印刷モードの休止時に加熱休止モード(ステップS110)が実行されるため、印刷モードを速やかに再開できる(ステップS104)。一方、ユーザからの終了指示がある場合には、印刷モードの休止時に非加熱休止モード(ステップS107)が実行されるため、インクIの乾燥・固化を抑制することができる。したがって、ユーザは、印刷モードの再開までの時間が短いと予想する場合には、加熱休止モード(ステップS110)を選択すればよく、印刷モードの再開までの時間が長いと予想する場合には、非加熱休止モード(ステップS107)を選択すればよい。よって、ユーザの状況判断に応じて、インクIの加熱を適切に実行することができる。
【0066】
また、吐出ヘッドHのノズルNを覆うキャッピングを実行するキャップCが具備されている。そして、コントローラ100は、非加熱休止モード(ステップS107)の実行時にはキャップCにキャッピングを実行させる。かかる構成では、非加熱休止モード(ステップS107)の際には、吐出ヘッドHのノズルNがキャップCにより覆われるため、ノズルNの乾燥・固化をより効果的に抑制することができる。
【0067】
また、ユーザインターフェース110は、加熱休止モード(ステップS110)の実行時にキャッピングを実行するように指示するキャッピング指示を受け付ける。そして、コントローラ100は、ユーザインターフェース110がキャッピング指示を受け付けた場合(ステップS108で「YES」の場合)には、加熱休止モード(ステップS110)の実行時にキャップCにキャッピング(ステップS109)を実行させる。一方、コントローラ100は、ユーザインターフェース110がキャッピング指示を受け付けていない場合(ステップS108で「NO」の場合)には、加熱休止モード(ステップS110)の実行時にキャップCにキャッピングを実行させない。つまり、プリントバーBは、印刷モード(ステップS104)から継続的に対向位置Laに位置する。かかる構成では、ユーザは、キャッピング指示をユーザインターフェース110に対して行うことで、加熱休止モード(ステップS110)中のインクIの乾燥・固化を抑制できる。一方、ユーザは、キャッピング指示を行わないことで、キャッピングの解除に要する時間を排除して、印刷モードを速やかに再開することができる(ステップS104)。よって、ユーザの状況判断に応じて、キャッピングを適切に実行することができる。
【0068】
また、ユーザインターフェース110は、ユーザによる開始指示を受け付ける。そして、コントローラ100は、ユーザインターフェース110が開始指示を受け付けると(ステップS101で「YES」)、キャップCにキャッピングを実行させた状態で、圧力調整機構98に通常循環を実行させるとともに、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarにインクIの加熱を実行させる立上モードを、開始指示に伴う印刷モード(ステップS104)の開始までの期間に実行する。かかる構成では、印刷モードの開始までの期間は、キャッピングが実行されるため、インクIの乾燥・固化を抑制しつつ、印刷モード(ステップS104)の開始を待機することができる。
【0069】
以上に説明した実施形態では、前段印刷装置2あるいは後段印刷装置6が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、圧力調整機構98が本発明の「インク送液部」の一例に相当し、コントローラ100が本発明の「制御部」の一例に相当し、ユーザインターフェース110が本発明の「第1操作部」、「第2操作部」および「第3操作部」の一例に相当し、キャップCが本発明の「キャップ」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「ノズル」の一例に相当し、フィードヒータTafおよびリターンヒータTarが本発明の「加熱部」の一例に相当し、循環経路Wcが本発明の「循環経路」の一例に相当し、ステップS102が本発明の「立上モード」の一例に相当し、ステップS104が本発明の「印刷モード」の一例に相当し、ステップS107が本発明の「非加熱休止モード」の一例に相当し、ステップS110が本発明の「加熱休止モード」の一例に相当する。
【0070】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、モード制御に対して適宜変更を加えることができ、具体的には、モードの種類に拘わらず、キャッピングを実行してもよい。あるいは、モードの種類に拘わらず、インクIの加熱を行ってもよいし、ステップS110において加熱休止モードに代えて非加熱休止モードを実行してもよい。
【0071】
また、循環ポンプ95の種類はダイアフラムポンプに限られず、ダイアフラムポンプ以外のポンプを循環ポンプ95として用いることができる。
【0072】
また、メインリザーバ91mからのインクIの補給先は、リザーバ連通管94に限られない。したがって、メインリザーバ91mからインク供給管92mを介してフィードリザーバ91fにインクIを補給してもよいし、メインリザーバ91mからインク供給管92mを介してリターンリザーバ91rにインクIを補給してもよい。
【0073】
また、前段印刷装置2で印刷媒体Mに吐出するカラーインクの種類は、上記の6色に限られない。
【0074】
また、搬送方向Amにおいて前段印刷装置2の上流側に、白色インクを吐出する印刷装置を設けて、白色インクを印刷媒体Mに吐出してから、カラーインクを印刷媒体Mに吐出するように構成しても良い。
【0075】
また、白色インクの印刷媒体Mへの印刷は、フレキソ印刷あるいはグラビア印刷等のアナログ印刷により実行しても良い。
【0076】
また、前段印刷装置2は、印刷媒体Mをプラテン上で停止させて、プリントバーBを直交方向Arに操作させつつノズルNからカラーインクを吐出するものであっても良い。
【0077】
また、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でも良い。
【0078】
また、インクの種類は、エマルジョンインクに限られず、顔料を分散させた水性インクあるいはUV(Ultra Violet)インクでも構わない。UVインクを用いる場合には、前段乾燥機3および後段乾燥機7に代えて、印刷媒体M上のUVインクに紫外線を照射する光照射装置を配置すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、印刷技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
2…前段印刷装置(印刷装置)
6…後段印刷装置(印刷装置)
98…圧力調整機構(インク送液部)
100…コントローラ(制御部)
110…ユーザインターフェース(第1操作部、第2操作部、第3操作部)
C…キャップ
H…吐出ヘッド
N…ノズル
Taf…フィードヒータ(加熱部)
Tar…リターンヒータ(加熱部)
Wc…循環経路
S102…立上モード
S104…印刷モード
S107…非加熱休止モード
S110…加熱休止モード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9