(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】情報発信装置及び時刻補正方法
(51)【国際特許分類】
G04G 5/00 20130101AFI20230704BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G04G5/00 Z
G04G19/00 A
(21)【出願番号】P 2019204769
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】早川 和美
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-186793(JP,A)
【文献】特開2012-160978(JP,A)
【文献】特開2010-066151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 5/00
G04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を計時する計時部と、
情報を発信する発信部と、
照度を検出する検出部と、
前記検出部が検出した照度と、照度を検出した時刻とを互いに対応付け、時刻に対する前記照度の変化を示す第1パタンデータを生成する第1生成部と、
時刻に対する太陽の高度を算出することにより、時刻に対する前記太陽の高度の変化を示す第2パタンデータを生成する第2生成部と、
前記第1パタンデータから得られる時刻と前記第2パタンデータから得られる時刻との間のずれに基づき、前記計時部の時刻を補正する補正部とを有することを特徴とする情報発信装置。
【請求項2】
前記補正部は、複数日分の前記第1パタンデータ及び前記第2パタンデータから日付ごとに前記第1パタンデータと前記第2パタンデータとの組をそれぞれ抽出し、前記抽出した組のパタンのうち、互いに最も類似する一組のパタンの間の時刻のずれを算出することを特徴とする請求項1に記載の情報発信装置。
【請求項3】
太陽電池を有し、
前記検出部は、前記太陽電池により生成される電力に基づき前記照度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の情報発信装置。
【請求項4】
計時部により時刻を計時し、
照度を検出し、
前記照度を検出した時刻及び前記照度を互いに対応付けて、時刻に対する前記照度の変化を示す第1パタンデータを生成し、
時刻に対する太陽の高度の変化を示す第2パタンデータを生成し、
前記第1パタンデータ及び前記第2パタンデータの間の時刻のずれに基づき前記計時部の時刻を補正することを特徴とする時刻補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報発信装置及び時刻補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーコン端末のように、現在位置や広告に関する情報をスマートフォンなどにブロードキャストで発信する情報発信装置がある。例えば情報発信装置は、RTC(Real Time Clock)により時刻を計時し、ある時刻に情報を発信する。RTCの時刻はクロック精度や環境温度に応じて誤差が生ずる。
【0003】
電源のない場所にも設置できるようにソーラーパネルが搭載される情報発信装置は、日当たりの良い高所のように操作が困難な場所に設置されることがあるので、時刻を自動的に補正する手段が必要となる。
【0004】
時刻の補正に関し、例えば特許文献1には、GPS(Global Positioning System)受信機から時計の校正用時刻データが出力される期間中、時計に入力されるクロックパルスの波数に基づき時計を補正する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GPS受信機、または標準電波の受信機を実装する場合、時刻補正は可能となるが、装置規模が増加するおそれがある。また、ネットワークを介した時刻同期機能を情報発信装置に実装した場合、やはり時刻補正は可能となるが、装置規模が増加するおそれがある。
【0007】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、小規模な構成で時刻を補正することができる情報発信装置及び時刻補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、情報発信装置は、時刻を計時する計時部と、情報を発信する発信部と、照度を検出する検出部と、前記検出部が検出した照度と、照度を検出した時刻とを互いに対応付け、時刻に対する前記照度の変化を示す第1パタンデータを生成する第1生成部と、時刻に対する太陽の高度を算出することにより、時刻に対する前記太陽の高度の変化を示す第2パタンデータを生成する第2生成部と、前記第1パタンデータから得られる時刻と前記第2パタンデータから得られる時刻との間のずれに基づき、前記計時部の時刻を補正する補正部とを有する。
【0009】
1つの態様では、時刻補正方法は、計時部により時刻を計時し、照度を検出し、前記照度を検出した時刻及び前記照度を互いに対応付けて、時刻に対する前記照度の変化を示す第1パタンデータを生成し、時刻に対する太陽の高度の変化を示す第2パタンデータを生成し、前記第1パタンデータ及び前記第2パタンデータの間の時刻のずれに基づき前記計時部の時刻を補正する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、小規模な構成で時刻を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】照度パタンデータ及び高度パタンデータの一例を示す図である。
【
図3】1日の理想的な照度パタンデータの一例を示す図である。
【
図4】高度パタンデータと照度パタンデータの比較の一例を示す図である。
【
図5】情報発信装置が行う時刻補正処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、情報発信装置1の一例を示す構成図である。情報発信装置1は、例えばビーコン端末であり、スマートフォンなどの無線通信端末2に対して広告情報を発信する。広告情報は、無線通信端末2に広告表示をするために用いられる情報である。
【0013】
情報発信装置1は、電源のない場所にも設置できるようにソーラーパネル17の電力により駆動される。このため、情報発信装置1は、日当たりの良い屋外の高所などに設置されるのが好ましい。
【0014】
情報発信装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、ROM(Read Only Memory)11、RAM(Random Access Memory)12、主記憶装置13、無線通信回路14、RTCモジュール15、照度検出回路16、ソーラーパネル17、電源制御回路18、外部インターフェース部(外部IF)19、バッテリ180、アンテナ140、及び発振器150を有する。CPU10は、互いに信号の入出力ができるように、ROM11、RAM12、主記憶装置13、無線通信回路14、RTCモジュール15、照度検出回路16、外部IF19と、バスBを介して接続されている。
【0015】
ROM11は、CPU10を駆動するプログラムが格納されている。プログラムには、RTCモジュール15の時刻補正を実行するソフトウェアが含まれる。RAM12は、CPU10のワーキングメモリとして機能する。
【0016】
外部IF19は、ユーザが情報発信装置1に情報を入力する装置である。外部IF19としては、I2C(Inter-Integrated Circuit)などの外部との通信処理回路などが挙げられる。外部IF19は、ユーザが入力した情報を、バスBを介しCPU10に出力する。
【0017】
無線通信回路14は、例えばBLE(Blue tooth Low Energy)によりCPU10と無線通信端末2の間の無線通信を処理する。無線通信回路14は、アンテナ140を介して無線通信端末2と各種のデータを送受信する。
【0018】
RTCモジュール15は、発振器150から入力するクロック信号に従って時刻を計時する。RTCモジュール15は、クロック信号に従って時刻及び日付をカウントし、CPU10からの要求に応じて出力する。
【0019】
RTCモジュール15が示す時刻は、クロック信号の精度や環境温度に応じて誤差が生ずる。このため、CPU10は、太陽光の照度に基づいてRTCモジュール15の時刻を補正する。なお、RTCモジュール15は、計時部の一例である。
【0020】
ソーラーパネル17は、複数の太陽電池を有し、太陽光を受けて発電することにより、情報発信装置1の電力を生成する。ソーラーパネル17が生成した電力は、電源制御回路18に出力される。
【0021】
電源制御回路18は例えばコンバータであり、ソーラーパネル17が出力する電力を所定の電源電圧に変換する。電源制御回路18は、CPU10、主記憶装置13、及び無線通信回路14などの各部に電力を供給する。
【0022】
電源制御回路18はバッテリ180に接続され、ソーラーパネル17が生成した電力の一部を二次電池などのバッテリ180に充電する。電源制御回路18は、例えばソーラーパネル17により生成された電力が情報発信装置1の動作に必要な量に満たない場合、バッテリ180に充電された電力を情報発信装置1の各部に供給する。このため、情報発信装置1は、天候が悪く、ソーラーパネル17から十分な電力を得られない場合でも動作することができる。なお、バッテリ180に代えて、またはバッテリ180とともにスーパーキャパシタが設けられてもよい。
【0023】
電源制御回路18は、ソーラーパネル17が生成した電力を示す電流信号を照度検出回路16に出力する。電流信号の電流値はソーラーパネル17が生成した電力の大きさに該当する。
【0024】
照度検出回路16は、電源制御回路18からの電流値に基づいて照度を検出する。照度検出回路16が検出する照度はソーラーパネル17に照射された太陽光の量であるため、ソーラーパネル17が生成する電力とともに増減する。
【0025】
照度検出回路16は電源制御回路18から入力された電流信号の電流値から所定の変換式を用いて照度を算出する。照度検出回路16は、CPU10からの要求に従って照度を通知する。
【0026】
CPU10は、ROM11からプログラムを読み込むと、機能として装置制御部100、発信部101、照度記録部102、高度算出部103、及び時刻補正部104を生成する。なお、装置制御部100、発信部101、照度記録部102、高度算出部103、及び時刻補正部104は、ソフトウェアの機能に限定されず、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified Integrated Circuit)などのハードウェアから構成されてもよい。
【0027】
装置制御部100は、情報発信装置1の全体の動作を制御する。装置制御部100は、所定のアルゴリズムに従って発信部101、照度記録部102、高度算出部103、及び時刻補正部104に動作を指示する。
【0028】
また、装置制御部100は、情報発信装置1の初期設定を実行する。例えば装置制御部100は、外部IF19から入力された広告情報130及び位置情報131を主記憶装置13に格納する。位置情報131は、情報発信装置1の設置場所の緯度及び経度を示す。
【0029】
発信部101は、時刻に応じて広告情報130を発信する。発信部101は、RTCモジュール15から時刻を取得し、時刻が所定の範囲内である場合、主記憶装置13から広告情報130を読み出して無線通信回路14に出力する。なお、広告情報130は時刻によらず随時発信することもできる。無線通信回路14は、アンテナ140を介して広告情報130を無線通信端末2に送信する。
【0030】
無線通信端末2は、情報発信装置1から受信した広告情報130に基づいて液晶モニタなどの画面にタイムセールなどのタイムリーな広告を表示することができる。
【0031】
照度記録部102は、検出した照度と照度を検出した時刻とを互いに対応付け、時刻に対する照度の変化を示す照度パタンデータ132を生成する。この際、照度記録部102は、RTCモジュール15から照度を検出したときの日付及び時刻を取得し、照度検出回路16から照度を取得する。
【0032】
照度記録部102は、生成した照度パタンデータ132を主記憶装置13に記録する。照度記録部102は、複数の日数分の照度パタンデータ132を記録するのが好ましい。なお、照度記録部102は第1生成部の一例であり、照度パタンデータ132は第1パタンデータの一例である。
【0033】
高度算出部103は、時刻に対する太陽の高度の変化を示す高度パタンデータ133を生成する。高度算出部103は特に、照度記録部102が照度を取得した日付及び時刻に対する太陽の高度を情報発信装置1が設置された位置情報131に基づき算出し、時刻に対する太陽の高度の変化を示す高度パタンデータ133として主記憶装置13に記録する。なお、高度算出部103は第2生成部の一例であり、高度パタンデータ133は第2パタンデータの一例である。
【0034】
時刻補正部104は、照度パタンデータ132に基づく時刻と高度パタンデータ133に基づく時刻のずれに基づきRTCモジュール15の時刻を補正する。時刻補正部104による時刻補正を行う際は、複数の日数分の照度パタンデータ132及び高度パタンデータ133から日付ごとに複数組のパタンをそれぞれ抽出し、複数組のデータのうち互いに最も類似する一組のパタンを検出し、その一組のパタンの間の時刻のずれを求めるのが好ましい。
【0035】
時刻補正部104は、照度パタンデータ132と高度パタンデータ133との時刻の差分が所定値以上である場合、差分に基づきRTCモジュール15の時刻を補正し、バスBを介してRTCモジュール15に補正後の時刻を設定する。なお、時刻補正部104は補正部の一例である。
【0036】
主記憶装置13は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)である。主記憶装置13には、広告情報130、位置情報131、照度パタンデータ132、及び高度パタンデータ133が格納されている。
【0037】
図2は、照度パタンデータ132及び高度パタンデータ133の一例を示す図である。照度パタンデータ132は、日時及び照度を対応付けたデータである。照度パタンデータ132の日時は、照度記録部102が照度検出回路16から照度を取得したときの日付及び時刻である。照度記録部102は、例えば数日分の照度パタンデータ132を記録する。
【0038】
高度パタンデータ133は、日時及び太陽の高度を対応付けたデータである。高度パタンデータ133には、少なくとも照度パタンデータ132に記録されている日時における太陽の高度が含まれる。高度算出部103は、例えば以下の手法により高度を算出する。
【0039】
sinh=sinφ・sinδ+cosφ・cosδ・cost ・・・(1)
t=(Tm-12) ・・・(2)
【0040】
高度算出部103は、位置情報131に基づき式(1)から高度hを算出する。式(1)において、変数φは緯度であり、変数δは太陽赤緯であり、変数tは太陽の時角を表す。緯度φは位置情報131から得られ、太陽赤緯δは、現在の日付に対応する値として得られる。また、時角tは式(2)により算出される。式(2)において、変数Tmは時刻である。
【0041】
高度算出部103は、少なくとも照度パタンデータ132に記録された日時について太陽の高度hを算出する。
【0042】
図3は、1日の理想的な照度パタンデータ132の一例を示す図である。横軸は時刻を示し、縦軸は照度を示す。
【0043】
照度は、日の出時刻t1以前、及び日没時刻t3以後において0となり、南中時刻t2に最大値となる。照度パタンデータ132は、南中時刻t2を挟んで対称なパタンを有する。日の出時刻t1から日没時刻t3までのパタンWは、日付ごとに固有である。
【0044】
太陽光の照度は太陽の高度に応じて増減するため、太陽の高度も照度と同様のパタンとなる。したがって、時刻補正部104は、日の出時刻t1から日没時刻t3まで測定した照度のパタンWを、同じ日付の高度パタンデータ133のパタンと比較することにより、RTCモジュール15の時刻のずれを算出することができる。
【0045】
図4は、高度パタンデータ133と照度パタンデータ132の比較の一例を示す図である。符号Gaは、4日分の太陽の高度の時刻変化のパタンを示し、高度パタンWa~Wdを含む。符号Gbは、4日分の照度の時刻変化のパタンを示し、照度パタンWe~Whを含む。なお、各パタンの点は、高度パタンデータ133及び照度パタンデータ132として記録されている個々の値を表す。
【0046】
時刻補正部104は、高度パタンデータ133と照度パタンデータ132との組を日付ごとに抽出する。ここで、高度パタンWa~Wdは、高度パタンデータ133のうち高度が0より大きいデータを抽出したものであり、照度パタンWe~Whは、照度パタンデータ132のうち照度が0より大きいデータを抽出したものである。
【0047】
時刻補正部104は、各組の高度パタンデータ133及び照度パタンデータ132を参照して、同一日付のパタンWa~Wh同士の対応関係を認識する。例えばパタンWa,Weは8月1日の日付であり、パタンWb,Wfは8月2日の日付であり、パタンWc,Wgは8月3日の日付であり、パタンWd,Whは8月4日の日付である。
【0048】
8月1日の照度パタンWeは一日中曇りであったために照度が低いパタンとなり、8月2日及び3日の照度パタンWf,Wgは一部の時間帯で曇りであったために歪んだパタンとなったと仮定する。また、8月4日の照度パタンWhは、一日中快晴であったために理想的なパタンになったと仮定する。
【0049】
一方、高度パタンWa~Wdは、それぞれの日時に応じて式(1)及び(2)に基づき理論的に算出した理想的なパタンとなる。
【0050】
時刻補正部104は、照度パタンWe~Whに正規化などの処理を行った後、同一日付の高度パタンWa~Whとの相関を求める。時刻補正部104は、相関の一例として、高度及び照度を正規化した値の偏差を算出する。
【0051】
符号Gcは、同一日付の組ごとの照度パタンと高度パタンとの偏差を示す。高度パタンWaと照度パタンWeの組の偏差は、最も高い10であり、高度パタンWdと照度パタンWhの組の偏差は最も低い2である。つまり、パタンWa,Wwの組が互いに最も類似しておらず、パタンWd,Whの組が互いに最も類似する。
【0052】
このため、時刻補正部104は、最も理想的なパタンとして照度パタンWhを選択し、照度パタンWhと高度パタンWdの間の時刻のずれを検出する。時刻補正部104は、例えば高度パタンWdの頂点Paと照度パタンWhの頂点Pbを検出し、頂点Paの時刻Taと頂点Pbの時刻TbのずれΔtを算出する。
【0053】
Δt=Ta-Tb ・・・(3)
【0054】
時刻補正部104は、例えばパタンWd,Whを二次関数に近似することにより各頂点Pa,Pbの時刻Ta,Tbを検出する。時刻補正部104は、式(3)に基づき時刻Ta,Tbから時刻Ta,TbのずれΔtを算出する。
【0055】
例えば頂点Paの時刻Taが12時00分であり、頂点Pbの時刻Tbが13時30分である場合、各時刻を分単位に換算すると、時刻Taは720分(=12×60)となり、時刻Tbは810分(=13×60+30)となる。このため、時刻のずれΔtは、-90分(=720-810)と算出される。この場合、RTCモジュール15の時刻は、実際の時刻より90分だけ進んでいることがわかる。
【0056】
したがって、時刻補正部104は、RTCモジュール15の時刻を90(分)だけ遅らせる補正を行う。このようにして、RTCモジュール15の時刻が補正される。
【0057】
上述したように、時刻補正部104は、複数の日数分の照度パタンデータ132及び高度パタンデータ133から日付ごとに照度パタンと高度パタンの組を抽出する。時刻補正部104は、複数組の高度パタンWa~Wd及び照度パタンWe~Whのうち、互いに最も類似する一組の照度パタンWdと高度パタンWhを検出し、一組の照度パタンWdと高度パタンWhの間の時刻のずれΔtを算出する。時刻補正部104は、時刻のずれΔtに基づきRTCモジュール15の時刻を補正する。
【0058】
情報発信装置1が日当たりの良好な場所に設置されても、天候などの要因により日照量が不十分な日には、理想的ではない照度パタンWe~Wgが生成される可能性がある。これに対し、日照量が十分な日には理想的な照度パタンWhが生成され、照度パタンが同日付の理想的な高度パタンに近づくことが期待できる。そのため、時刻補正部104は、複数の日数分の高度パタンWa~Wdと照度パタンWe~Whの組のうち、互いに最も類似する一組の照度パタンWdと高度パタンWhを選び、選んだ照度パタンWdと高度パタンWhの間の時刻のずれΔtを算出する。
【0059】
このため、情報発信装置1は、高精度に時刻のずれΔtを算出してRTCモジュール15の時刻を補正することができる。
【0060】
図5は、情報発信装置1が行う時刻補正処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
装置制御部100は、ユーザが外部IF19から入力した現在時刻をRTCモジュール15に設定する(St1)。次に装置制御部100は、ユーザが外部IF19から入力した緯度及び経度により位置情報131を設定する(St2)。次に装置制御部100は、照度の取得回数Nに1を設定する(St3)。取得回数Nの最大数Nmaxは、照度パタンデータ132を取得する期間(
図4の例では4日間)における照度取得と計測を行う回数であり、例えばユーザから外部IF19を介して設定される。
【0062】
情報発信装置1には、広告情報を発信する時間帯に応じて、情報発信の開始時刻Tsと終了時刻Teとが設定されている。そこで、発信部101は、RTCモジュール15の時刻が開始時刻Tsと終了時刻Teの間であるか否かを判定する(St4)。開始時刻Tsと終了時刻Teは、例えばユーザから外部IF19を介して設定される。
【0063】
RTCモジュール15の時刻が開始時刻Tsと終了時刻Teの間である場合(St4のYes)、発信部101は主記憶装置13から広告情報130を読み出し、無線通信回路14及びアンテナ140を介して無線通信端末2に送信する(St5)。また、RTCモジュール15の時刻が開始時刻Tsと終了時刻Teの間ではない場合(St4のNo)、発信部101は広告情報130を送信しない。なお、発信する情報としては、広告情報130に限定されず、情報発信装置1が設置されている会議室や応接室などの設置位置に関する他の情報であってもよい。
【0064】
次に照度記録部102は、照度検出回路16から照度を取得し、RTCモジュール15から照度取得の日時を取得する(St6)。次に照度記録部102は、St6で取得した日時と照度を対応付けることにより照度パタンデータ132を生成して主記憶装置13に記録する(St7)。なお、上記ではSt5の情報発信に合わせて照度を取得しているが、時刻を補正する上でSt4およびSt5の処理は必須ではないので、St4およびSt5の処理を実行しないか、あるいは
図5の処理から独立してSt4およびSt5の処理を行うようにしてもよい。また、照度の取得は各日の同一時刻でもよく、日ごとに異なる時刻であってもよい。なお、日没から日の出までの間は太陽が出ていないため、照度取得の処理は不要である。
【0065】
次に装置制御部100は取得回数Nに1を加算する(St8)。次に装置制御部100は取得回数Nと最大数Nmaxを比較する(St9)。取得回数Nが最大数Nmax以下である場合(St9のNo)、再びSt4以降の各処理が実行される。取得回数Nが最大数Nmaxを超える場合(St9のYes)、照度取得の処理を終了し、以下のSt10以降の各処理が実行される。
【0066】
次に高度算出部103は、式(1)及び(2)に基づき、照度パタンデータ132に記録されている日付と同じ日付及び時刻における太陽の高度を算出する(St10)。高度パタンと照度パタンとを比較する上では高度を算出する時刻と照度を取得した時刻とを同一とした方が好ましいが、同一時刻でなくともよい。高度算出部103は、日時と算出した高度を対応付けることにより高度パタンデータ133を生成して主記憶装置13に記録する(St11)。
【0067】
次に時刻補正部104は、日付ごとに高度パタンWa~Wdと照度パタンWe~Whとの組を抽出する(St12)。次に時刻補正部104は、抽出した組の高度パタンと照度パタンを互いに比較して、互いに最も類似する高度パタンと照度パタンとの組を検出する(St13)。
図4の例では、高度パタンWdと照度パタンWhとの組が検出される。
【0068】
次に時刻補正部104は、検出した各パタンWd,Whの頂点Pa,Pbをそれぞれ検出する(St14)。次に時刻補正部104は、式(3)から頂点Paの時刻Taと頂点Pbの時刻Tbとを求め、時刻Taと時刻TbのずれΔtを算出する(St15)。
【0069】
次に時刻補正部104は、時刻Ta,TbのずれΔtを所定数Kと比較する(St16)。所定数Kは、ユーザが外部IF19から設定する時刻補正を行うか否かの基準となるものであり、例えば1時間である。
【0070】
時刻Ta,TbのずれΔtが所定数Kより大きい場合(St16のYes)、時刻補正部104は、ずれΔtによりRTCモジュール15の時刻を補正する(St17)。時刻補正部104は、ずれΔtが正の値である場合にはRTCモジュール15の時刻が実際の時刻より遅れているため、RTCモジュール15の時刻を、ずれΔtだけ進ませる。また、時刻補正部104は、ずれΔtが負の値である場合にはRTCモジュール15の時刻が実際の時刻より進んでいるため、RTCモジュール15の時刻を、ずれΔtだけ遅らせる。
【0071】
また、時刻Ta,TbのずれΔtが所定数K以下である場合(St16のNo)、時刻補正は実行されずに再びSt3以降の各処理が実行される。このように、時刻のずれが一定以上の場合のみ時刻を補正するため、過度な時刻補正によるCPU10の処理の負荷が抑制される。
【0072】
これまで述べたように、照度記録部102は、照度検出回路16が検出した照度とその照度を検出した時刻とを互いに対応付け、時刻に対する照度の変化を示す照度パタンデータ132を生成する。高度算出部103は、時刻に対する太陽の高度の変化を示す高度パタンデータ133を生成する。
【0073】
また、時刻補正部104は、照度パタンデータ132と高度パタンデータ133とのそれぞれから得た時刻のずれΔtに基づきRTCモジュール15の時刻を補正する。
【0074】
このため、情報発信装置1は、GPS受信機及び標準電波の受信機を必要とせず、またネットワークを介した時刻同期を行わずに、小規模な構成でRTCモジュール15の時刻を補正することができる。
【0075】
また、照度検出回路16は、情報発信装置1が備えるソーラーパネル17により生成される電力に基づき照度を検出する。このため、情報発信装置1には、別途照度センサを設ける必要がなく、規模が削減される。
【0076】
図6は、情報発信装置1の他の例を示す構成図である。
図6において、
図1と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0077】
情報発信装置1はソーラーパネル17を備えておらず、外部コンセント(不図示)から給電を受ける電源ユニット17aを備える。電源ユニット17aはインバータなどの電気回路を有しており、交流電力を直流電力に変換して電源制御回路18に出力する。
【0078】
情報発信装置1は、照度検出回路16に代えて照度センサ16aを備える。照度センサ16aは、検出部の一例であり、バスBに接続され、照度記録部102からの要求に従って照度を通知する。
【0079】
この構成によると、情報発信装置1は、ソーラーパネル17がない場合でも照度を検出することができ、検出した照度に基づく時刻補正が可能となるため、上記と同様の効果が得られる。なお、ソーラーパネルと照度検出用の照度センサとの双方を情報発信装置1に設けてもよい。この場合、ソーラーパネルからの出力を照度検出に用いる必要はない。
【0080】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 情報発信装置
15 RTCモジュール
16 照度検出回路
16a 照度センサ
101 発信部
102 照度記録部
103 高度算出部
104 時刻補正部
132 照度パタンデータ
133 高度パタンデータ