(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】連成解析装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20230704BHJP
【FI】
G06F30/23
(21)【出願番号】P 2019224536
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 翔
(72)【発明者】
【氏名】武内 豊
(72)【発明者】
【氏名】滝脇 賢也
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英樹
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-029930(JP,A)
【文献】特開平03-020072(JP,A)
【文献】特開2004-054642(JP,A)
【文献】特開平08-292974(JP,A)
【文献】特開平04-117573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗メッシュで解像度を粗く構成した解析空間に適用される第1解析コードを実行
し、前記粗メッシュの各々に対応する第1要素データを演算する第1実行部と、
細密メッシュで解像度を細かく構成した前記解析空間に適用される第2解析コードを実
行し、前記細密メッシュの各々に対応する数値解を演算する第2実行部と、
前記粗メッシュに格納されている
前記第1要素データにガウス分布の重み付けを付与し補間した第2要素データを、対応する前記細密メッシュに格納させる補間処理部と、
前記第1解析コードを実行し
各々の前記粗メッシュに前記第1要素データを格納させるタイミングと
各々の前記細密メッシュに格納された前記第2要素データを用いて前記第2解析コード
を実行
し前記数値解が演算されるタイミングとを制御し連成解析を実行させるタイミング制御部と、を備える連成解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の連成解析装置において、
前記第1解析コードが実行されたタイミングを通信検知して前記第2解析コードを実行させる第1同期信号を送信する第1同期通信部と、
前記第2解析コードが実行されたタイミングを通信検知して前記第1解析コードを実行させる第2同期信号を送信する第2同期通信部と、を備える連成解析装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の連成解析装置において、
前記第1解析コード及び前記第2解析コードの実行をそれぞれ別々に開始/停止させる操作部と、
前記連成解析の進行状況を監視する監視部と、を備える連成解析装置。
【請求項4】
第1実行部が、粗メッシュで解像度を粗く構成した解析空間に適用される第1解析コードを実行
し、前記粗メッシュの各々に対応する第1要素データを演算するステップと、
第2実行部が、細密メッシュで解像度を細かく構成した前記解析空間に適用される第2解析コードを実
行し、前記細密メッシュの各々に対応する数値解を演算するステップと、
補間処理部が、前記粗メッシュに格納されている
前記第1要素データにガウス分布の重み付けを付与し補間した第2要素データを、対応する前記細密メッシュに格納させるステップと、
タイミング制御部が、前記第1解析コードを実行し
各々の前記粗メッシュに前記第1要素データを格納させるタイミングと
各々の前記細密メッシュに格納された前記第2要素データを用いて前記第2解析コード
を実行
し前記数値解が演算されるタイミングとを制御し連成解析を実行させるステップと、を含む連成解析方法。
【請求項5】
コンピュータに、
粗メッシュで解像度を粗く構成した解析空間に適用される第1解析コードを実行
し、前記粗メッシュの各々に対応する第1要素データを演算するステップ、
細密メッシュで解像度を細かく構成した前記解析空間に適用される第2解析コードを実
行し、前記細密メッシュの各々に対応する数値解を演算するステップ、
前記粗メッシュに格納されている
前記第1要素データにガウス分布の重み付けを付与し補間した第2要素データを、対応する前記細密メッシュに格納させるステップ、
前記第1解析コードを実行し
各々の前記粗メッシュに前記第1要素データを格納させるタイミングと
各々の前記細密メッシュに格納された前記第2要素データを用いて前記第2解析コード
を実行
し前記数値解が演算されるタイミングとを制御し連成解析を実行させるステップ、を実行させる連成解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二つ以上の異なる解析コードを並列的に、要素データを交換しながら、逐次的に実行する弱連成方式に基づく連成解析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力分野では、設計解析から過渡事象解析、事故解析、過酷事故解析と、目的用途に応じて多くの解析コードが用いられる。従来、これら解析コードは主として別々に用いられてきたが、近年、計算機の性能向上に伴い、広範囲の機器や複数の物理現象を同時に解析する試みがなされてきた。
【0003】
各々の解析コードの保守管理性を考慮しつつ、複数の解析コードを同時に連成解析する方法としては、いわゆる弱連成方式が望ましい。弱連成方式は、各々の解析コードの独立性を保持しながら並列ジョブとして解き、決められたタイミングで要素データを連携(通信・同期)する。
【0004】
各々の解析コードは、取扱う物理現象や目的とする事象が異なるため、扱う空間メッシュや時間メッシュの種類や解像度等のメッシュ仕様が各々において異なる。従ってメッシュ仕様が互いに相違する複数の解析コードを用い弱連成方式の数値解析を行う場合、これらメッシュ仕様の相違を考慮して、要素データを連携させる必要がある。
【0005】
解像度が相違する複数の空間メッシュの間で要素データを適切に取り合い弱連成解析する方法として、統合用の空間メッシュを別個に用意する方法が知られている。この場合、統合前の空間メッシュの要素データと統合用の空間メッシュの要素データとが重複する体積割合を算出し、この体積割合を考慮した補間法が用いられる。この補間法は、補間元の空間メッシュの座標位置における要素データ(補間元データ値)から内挿して、補間先の空間メッシュの対応する座標位置の要素データ(補間先データ値)を求めるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した内挿法のうち線形補間は、補間元データ値から簡易的に補間先データ値を求めることができる点で優れている。しかし、空間メッシュを構成する複数の補間元データ値の間に線形関係が無い場合は、得られた補間先データ値の信頼性が損なわれる課題がある。一方において補間元データ値の間に線形関係が無い(非線形の)場合は、高次補間の内挿法が適用される。しかし、補間元データ値の間の非線形関係に単調性が無い場合は、得られた補間先データ値の信頼性が損なわれる課題がある。
【0008】
また、内挿法では、補間先の空間メッシュに設定される要素データ一点に対し、参照される補間元の要素データが二点以上必要である。しかし、原子力プラントの解析コードにおいては、扱う空間メッシュが一つのメッシュでしか構成されていない場合がある。このような1メッシュを補間元として、複数メッシュで構成される空間メッシュを補間先にすることは不可能である。
【0009】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、解像度が互いに異なる複数の空間メッシュの各々に格納される要素データの適切な取合いを可能とする連成解析技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る連成解析装置において、粗メッシュで解像度を粗く構成した解析空間に適用される第1解析コードを実行し前記粗メッシュの各々に対応する第1要素データを演算する第1実行部と、細密メッシュで解像度を細かく構成した前記解析空間に適用される第2解析コードを実行し、前記細密メッシュの各々に対応する数値解を演算する第2実行部と、前記粗メッシュに格納されている第1要素データにガウス分布の重み付けを付与し補間した第2要素データを対応する前記細密メッシュに格納させる補間処理部と、前記第1解析コードを実行し各々の前記粗メッシュに前記第1要素データを格納させるタイミングと格納された前記第2要素データを用いて前記第2解析コードを実行し前記数値解が演算されるタイミングとを制御し連成解析を実行させるタイミング制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態により、解像度が互いに異なる複数の空間メッシュの各々に格納される要素データの適切な取合いを可能とする連成解析技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る連成解析装置のブロック図。
【
図2】(A)解析空間を示す概念図、(B)解析空間の解像度を粗く構成した空間メッシュ(粗メッシュ)を示す概念図、(C)解析空間の解像度を細密に構成した空間メッシュ(細密メッシュ)を示す概念図。
【
図3】(A)(B)(C)(D)解析空間を構成する粗メッシュに格納された第1要素データを、細密メッシュに格納する第2要素データに補間する方法の説明図。
【
図4】非線形の重み関数で表されるガウシアンフィルタを説明するグラフ。
【
図5】実施形態に係る連成解析装置の変形例を示すブロック図。
【
図6】実施形態に係る連成解析方法の工程及び連成解析プログラムのアルゴリズムを示すフローチャート。
【
図7】実施形態に係る連成解析方法の工程及び連成解析プログラムのアルゴリズムの変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る連成解析装置10A(10)のブロック図である。
図2(A)は解析空間20を示す概念図である。
図2(B)は解析空間20の網点て表した空間区画に対して解像度を粗く構成した空間メッシュ(粗メッシュ27)を示す概念図である。
図2(C)は解析空間20の網点で表した空間区画に対して解像度を細密に構成した空間メッシュ(細密メッシュ28)を示す概念図である。
【0014】
このように、連成解析装置10Aは、粗メッシュ27で解像度を粗く構成した解析空間20に適用される第1解析コード15を実行する第1実行部11と、細密メッシュ28で解像度を細かく構成した解析空間20に適用される第2解析コード16を実行する第2実行部12と、粗メッシュ27に格納されている第1要素データ31にガウス分布の重み付けを付与し補間した第2要素データ32を対応する細密メッシュ28に格納させる補間処理部17(第1補間処理部17a)と、第1解析コード15を実行し第1要素データ31を格納させるタイミングと格納された第2要素データ32を用いて第2解析コード16が実行されるタイミングとを制御し連成解析を実行させるタイミング制御部18と、を備えている。
【0015】
補間処理部17(第2補間処理部17b)は、粗メッシュ27に対応する複数の細密メッシュ28において第2実行部12が演算した数値解37を、対応する粗メッシュ27において第1実行部11で演算されるデータ38に補間するものである。なお、
図1に示す実施形態では、第1実行部11と第2実行部12の双方(タスキ掛け)で、自らが演算した数値解を補間して相手方に格納させている。しかし、第1実行部11のみが、自らが演算した数値解(第1要素データ31)から補間した第2要素データ32を、一方的に第2実行部12に格納させる場合もある。また第1実行部11が複数存在し、それぞれ格納された複数の第1要素データ31から補間された複数の第2要素データ32が、第2実行部12に格納される場合もある。
【0016】
図2(A)に示される解析空間20は、解析対象に発現する物理現象を動的にシミュレーションするための数値解析の場である。解析空間20は、
図2(B)(C)に示すように、物理現象を表わす数学モデルを離散化して数値解を演算するメッシュ27,28により構成されている。第1解析コード15及び第2解析コード16は、それぞれ解析対象となる物理現象が異なるもので、適用される各々のメッシュ(粗メッシュ27,細密メッシュ28)の仕様は互いに相違する。そしてこれら粗メッシュ27及び細密メッシュ28には、数値解を演算する際に利用される第1要素データ31及び第2要素データ32がそれぞれ格納されている。
【0017】
タイミング制御部18(
図1)は、第1実行部11及び第2実行部12の各々に対し、第1解析コード15及び第2解析コード16の各々を受け渡し、各々において実行プロセスを展開させる。タイミング制御部18は、展開中の実行プロセスにおいて指令を発し、解析時刻における数値解を演算させる。そしてタイミング制御部18は、実行プロセスを展開中の第1実行部11及び第2実行部12の各々に対し、実行プロセスの停止及び開始を指示するフラッグを送信することもできる。
【0018】
なお第1解析コード15及び第2解析コード16の実行をそれぞれ開始/停止させるタイミングについては、予め操作部25において設定することができる。さらに第1解析コード15及び第2解析コード16の実行がそれぞれ開始/停止を繰り返し、連成解析が進行する状況は監視部26において監視することができる。
【0019】
第1実行部11は、タイミング制御部18からの指令に基づくフラッグ判定による解析ループの開始/停止を伴って、粗メッシュ27の各々に対応する数値解を第1解析コード15に基づき演算する。この第1実行部11における数値解の演算は、粗メッシュ27において前回演算された数値解と、細密メッシュ28に格納された数値解37を第2補間処理部17bで補間したデータ38と、の少なくとも一方を用いて実行される。
【0020】
第2実行部12は、タイミング制御部18からの指令に基づくフラッグ判定による解析ループの開始/停止を伴って、細密メッシュ28の各々に対応する数値解37を第2解析コード16に基づいて演算する。この第2実行部12における数値解37の演算は、粗メッシュ27に格納された数値解(第1要素データ31)を第1補間処理部17aで補間した第2要素データ32を少なくとも用い、さらに細密メッシュ28において前回演算された数値解も任意に用いて実行される。
【0021】
そして、第1実行部11で演算された数値解(第1要素データ31)は、格納される粗メッシュ27の解析空間20における座標情報と時間情報と共に、供給メモリ(図示略)に保存される。また第2実行部12で演算された数値解も、格納される細密メッシュ28の解析空間20における座標情報と時間情報と共に、供給メモリに保存される。
【0022】
補間処理部17(第1補間処理部17a)は、粗メッシュ27に格納されている第1要素データ31にガウス分布の重み付けを付与するガウシアンフィルタの関数(
図3参照)を保持している。そして、粗メッシュ27に位置的に対応する複数の細密メッシュ28に対し、第1要素データ31からガウシアンフィルタで補間した第2要素データ32を、格納させる。
【0023】
図3は解析空間20(
図2(A))を構成する粗メッシュ27に格納された第1要素データ31を、細密メッシュ28に格納する第2要素データ32に補間する方法の説明図である。なお
図3における平面のメッシュは、
図2に示される立体のメッシュを、簡単のため立体から平面に置き換えたものである。
【0024】
図3(A)に示される一つの粗メッシュ27に格納されている第1要素データ31(ここでは仮に1とする)が、補間され、
図3(B)に示される対応する九つの細密メッシュ28に格納されるものとする。
図3(C)に示すように、第1要素データ31“1”を、全ての細密メッシュ28に割り当てる。そして、
図3(D)に示すように、細密メッシュ28に割り当てられた“1”に対し、ガウシアンフィルタg(x、y)を掛け合わせた値を、第2要素データ32として細密メッシュ28に格納させる。なおガウシアンフィルタg(x、y)に含まれるパラメータ(σ,β)は、予め数値が決定されている。
【0025】
例えば、第2要素データ32として
図3(C)に示されるような平均値が細密メッシュ28に格納された場合、同期後の次時刻ステップ以降の解析において、数値的に不安定となることがある。一方において実施形態では、第1要素データ31にガウス分布の重み付けを付与し補間した第2要素データ32が採用される。これにより、非線形の重みが勾配付きで付与され、細密メッシュ28の境界における連続性が向上し、数値解析の安定性が向上する。
【0026】
図4は、非線形の重み関数で表されるガウシアンフィルタを説明するグラフである。このように、重み関数のパラメータ(σ,β)に従って、ガウシアンフィルタの特性は変化する。σの決定方法は、フィルタの中心点の重みを1とする場合は、σ
2=1/(2π)とし、中心点の重みを1よりも大きくする場合はσ
2<1/(2π)とする。βは重み関数の減衰に関係するパラメータであり、減衰が大きい物理量であるならばβを小さく、減衰が小さい物理量であるならばβを大きくとる。
【0027】
重み関数のパラメータ(σ,β)は、解析対象となる物理現象において互いに取り合う要素データと解析コードのメッシュ幅とに応じて決定される。例えば物理現象として温度と圧力のそれぞれにフィルタをかけることを想定する。この場合、温度は物性と空間スケールに依存するが、圧力と比較して減衰量は大きいことが予想できるため、圧力の場合と比べてβを小さくとる。
【0028】
x方向およびy方向に対するフィルタのかけ方として、速度とエンタルピーに対しては流れ方向と垂直の方向にフィルタを掛ける。例えばy方向に流れている場合には、非線形フィルタの変数はxのみをとる。スカラー量の場合には、xおよびy両方向を変数にとるフィルタを掛ける。
【0029】
(実施形態の変形例)
図5は実施形態の変形例を示す連成解析装置10B(10)のブロック図である。なお、
図5において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図5に示す連成解析装置10Bは、
図1に示す連成解析装置10Aの構成に加え、さらに第1同期通信部21と第2同期通信部22とを備えている。
【0030】
第1同期通信部21は、第1解析コード15が実行されたタイミングを通信検知し、第2解析コード16を実行させる第1同期信号35を送信するものである。第1実行部11において第1解析コード15が実行されると、各々の粗メッシュ27に対応する数値解が演算される。この数値解は第1要素データ31として、第1同期通信部21を介して第1補間処理部17aに送られる。
【0031】
第1補間処理部17aに送られた第1要素データ31は、ガウシアンフィルタにより第2要素データ32に補間され、第2同期通信部22を介して第2実行部12に送られる。第1同期通信部21が送信する第1同期信号35は、第2実行部12に第2要素データ32を受信させ第2解析コード16を実行させるトリガなる。
【0032】
また第2実行部12において第2解析コード15が実行されると、各々の細密メッシュ28に対応する数値解37が演算される。この数値解37は、第2同期通信部22を介して第2補間処理部17bに送られ、粗メッシュ27に対応するデータ38に補間される。この補間されたデータ38は、第1同期通信部21を介して第1実行部11に送られる。第2同期通信部22が送信する第2同期信号36は、第1実行部11に、細密メッシュ28から粗メッシュ27に補間されたデータ38を受信させ第1解析コード15を実行させるトリガなる。
【0033】
図6は、実施形態に係る連成解析方法の工程及び連成解析プログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである(適宜、
図1参照)。まず、第1実行部11において、粗メッシュ27で構成され初期状態にある解析空間20に対し第1解析コード15を実行させる(S11a,S12a)。同時に、第2実行部12において、細密メッシュ28で構成され初期状態にある解析空間20に対し第2解析コード16を実行させる(S11b,S12b)。
【0034】
解析の実行ループ内において解析進行の開始/停止のフラッグ判定が行われる(S13a,S13b)。ここで、停止判定のフラッグがタイミング制御部18から送信されているときは、解析コード15、16は実行されない(S14a,S14b)。そして、開始判定のフラッグがタイミング制御部18から送信されているときは、解析コード15、16が実行される(S15a,S15b)。そして、解析コード15,16の実行により得られた数値解は、それぞれ粗メッシュ27及び細密メッシュ28に格納される。
【0035】
そして粗メッシュ27に格納されている数値解は、第1要素データ31として第1補間処理部17aに送信され、そこでガウス分布の重み付けが付与され第2要素データ32に補間される(S16)。さらにこの第2要素データ32は第2実行部12に送信され、第2解析コード16の実行ループとの同期をとって細密メッシュ28に格納される(S17)。
【0036】
そして、上述の実行ループ(S13a,S13b)~(S17)が繰り返されることで(S18a,S18b,No)、第1解析コード15を実行し第1要素データ31を格納させるタイミングと格納された第2要素データ32を用いて第2解析コード16が実行されるタイミングとが制御され連成解析が実行される。そして、終了時間Tendに到達したところで(S18a,S18b,Yes)、連成解析が終了する。
【0037】
図7は、実施形態の変形例に係る連成解析方法の工程及び連成解析プログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
図7に示される各工程は、
図6に示される対応する工程と同一の符号が付されている。この変形例は、補間処理部17がもたらす効果の他の例について説明するものである。この変形例においては、時刻T
1までの解析を第1解析コード15が担当し、時刻T
1以降の解析を第2解析コード16が担当するものである。このような場合、第1解析コード15で計算結果を第2解析コード16の時刻T
1における初期値として同期する必要があるため、補間処理部17の機能が有効に働く。
【0038】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の連成解析装置によれば、ガウス分布の重み付けを付与して補間することにより、解像度が互いに異なる複数の空間メッシュの各々に格納される要素データの適切な取合いが可能となる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0040】
以上説明した連成解析装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0041】
また連成解析装置で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係る連成解析装置で実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、連成解析装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
10(10A,10B)…連成解析装置、11…第1実行部、12…第2実行部、15…第1解析コード、16…第2解析コード、17…補間処理部17a…第1補間処理部、17b…第2補間処理部、18…タイミング制御部、20…解析空間、21…第1同期通信部、22…第2同期通信部、25…操作部、26…監視部、27…粗メッシュ、28…細密メッシュ、31…第1要素データ、32…第2要素データ、35…第1同期信号、36…第2同期信号、37…数値解、38…補間されたデータ。