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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】点検装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20230704BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
G01C15/00 104A
G01C15/00 103A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019230992
(22)【出願日】2019-12-21
(65)【公開番号】P2021098977
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594124993
【氏名又は名称】東京貿易テクノシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】奥村 明敏
(72)【発明者】
【氏名】鎧坂 勝則
(72)【発明者】
【氏名】前田 昌克
(72)【発明者】
【氏名】干潟 太郎
(72)【発明者】
【氏名】川合 良治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 京康
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 頼之
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-138427(JP,A)
【文献】特開2001-201490(JP,A)
【文献】特開2003-057218(JP,A)
【文献】特開2003-043019(JP,A)
【文献】特開2011-095222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周に対向配置した点検具で、前記トンネルを点検する点検装置であって、
前記点検具を支持すると共に、前記点検具を前記トンネル内で指定された座標に配置させる支持機構と、
前記支持機構による前記点検具の移動を制御する制御装置と、
反射体との相対的な位置関係を示す情報を生成する位置情報生成装置と、を有し、
前記位置情報生成装置は、前記トンネル内に複数設置した前記反射体の位置情報であって、前記位置情報生成装置を基準とした位置情報を生成し、
前記制御装置は、
前記トンネルの設計上の三次元形状データに基づいて、前記トンネル内での前記点検具の移動先の座標を教示点として設定する教示点設定部と、
前記トンネルの設計上の三次元形状データと、前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差に基づいて前記教示点を補正する教示点補正部と、を有し、
前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データは、前記トンネル内で前記反射体と同じ位置に設置した識別子の位置情報を有しており、
前記教示点補正部は、
前記識別子の位置情報と前記反射体の位置情報とを用いて、前記位置情報生成装置を基準として、前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データと、前記トンネルの設計上の三次元形状データとの座標合わせを実施して、前記誤差を算出することを特徴とする点検装置。
【請求項2】
前記教示点補正部が算出する前記誤差は、
前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データにより特定される前記トンネル内の座標と、前記トンネルの設計上の三次元形状データにより特定される前記トンネル内の座標との誤差であることを特徴とする請求項1に記載の点検装置。
【請求項3】
前記位置情報生成装置は、
前記反射体に向けてレーザ光を照射する照射部と、
前記反射体で反射した前記レーザ光を受光する受光部と、
前記照射部から照射された前記レーザ光と、前記受光部で受光した前記レーザ光との比較により、前記反射体の前記位置情報を生成する位置情報生成部と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点検装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記支持機構を制御して、前記点検具を前記教示点まで移動させる制御部を、有しており、
前記位置情報生成装置は、前記点検具と前記支持機構の少なくとも一方に設けた前記反射体の位置情報であって、前記位置情報生成装置を基準とした位置情報を生成し
前記制御部は、前記点検具と前記支持機構の少なくとも一方に設けた前記反射体の位置情報により、前記トンネル内における前記点検具の座標を特定し、特定した座標を用いて前記点検具の移動を制御することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の点検装置。
【請求項5】
前記教示点設定部は、前記点検具を前記トンネルの内周に沿って移動させる際の移動軌跡を設定すると共に、前記移動軌跡上にある前記トンネル内の座標を、前記点検具の移動先を示す前記教示点として設定し、
前記制御部は、前記点検具が前記移動軌跡上で並んだ複数の前記教示点を順番に通過するように、前記支持機構を制御し、
前記教示点補正部は、
前記移動軌跡上で並んだ前記教示点のうち、前記点検具の前記移動軌跡に沿う移動に支障を生じる教示点の座標を補正することを特徴とする請求項4に記載の点検装置。
【請求項6】
前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データは、前記トンネルの内周の三次元スキャナによる走査により生成された点群データであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを点検する点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネルなどの構造物を、移動体が備える打診器を用いて点検する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-227632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
打診器などの点検具を用いてトンネルを点検するこの種の技術には、可動式のアームが支持する点検具を、トンネルの内周に沿って移動させつつ、トンネルの内周の異常の有無を点検するものがある。
【0005】
ここで、点検具をトンネルの内周に沿って移動させる場合、点検具が、当該点検具の移動先を示す教示点を順番に通過するようにアームを動作させることで、点検具は、トンネルの内周との間に所定の間隔をあけつつ、複数の教示点からなる軌跡に沿って移動する。
【0006】
教示点が、トンネルの設計上の三次元形状データ(3D-CADデータ)から設定される場合、点検具を教示点に従って移動させると、点検具がトンネルの内周に接触して、点検具の移動に支障が生じる場合がある。
【0007】
これは、トンネルの実際の形状は、施工段階での振れや、経年劣化などの影響を受けて、設計上の三次元形状データにより特定される形状と必ずしも一致しないからである。
【0008】
そこで、点検具の移動に支障を生じないようにするために、教示点を適切に補正できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
トンネルの内周に対向配置した点検具で、前記トンネルを点検する点検装置であって、
前記点検具を支持すると共に、前記点検具を前記トンネル内で指定された座標に配置させる支持機構と、
前記支持機構による前記点検具の移動を制御する制御装置と、
反射体との相対的な位置関係を示す情報を生成する位置情報生成装置と、を有し、
前記位置情報生成装置は、前記トンネル内に複数設置した反射体の位置情報であって、前記位置情報生成装置を基準とした位置情報を生成し、
前記制御装置は、
前記トンネルの設計上の三次元形状データに基づいて、前記トンネル内での前記点検具の移動先の座標を教示点として設定する教示点設定部と、
前記トンネルの設計上の三次元形状データと、前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差に基づいて前記教示点を補正する教示点補正部と、を有し、
前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データは、前記トンネル内で前記反射体と同じ位置に設置した識別子の位置情報を有しており、
前記教示点補正部は、
前記識別子の位置情報と前記反射体の位置情報とを用いて、前記位置情報生成装置を基準として、前記トンネルの実際の形状を示す三次元形状データと、前記トンネルの設計上の三次元形状データとの座標合わせを実施して、前記誤差を算出する構成の点検装置とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、教示点を適切に補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】トンネル点検システムの概略構成を説明する図である。
図2】トンネル点検システムを説明する図である。
図3】位置情報生成装置を説明する図である。
図4】設計上の三次元形状データと、トンネルの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差を説明する図である。
図5】トンネルTの内周に沿って点検具を移動させる際の移動軌跡を説明する図である。
図6】三次元形状データ生成装置での処理を説明するフローチャートである。
図7】トンネルの内周の三次元形状データの作成過程を説明する図である。
図8】点検装置での処理を説明するフローチャートである。
図9】トンネルの内周の点検過程を説明する図である。
図10】点検具の移動軌跡の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、トンネル点検システム1の概略構成を説明する図である。
図2は、トンネル点検システム1を説明する図である。図2の(a)は、トンネル点検システム1の運用例を説明する図である。図2の(b)は、位置特定用のターゲットTGを説明する図である。
図3は、位置情報生成装置6を説明する図である。図3の(a)は、レーザトラッカー61とリフレクタ7との関係を説明する図である。図3の(b)は位置情報生成装置6の概略構成を説明する図である。図3の(a)では、説明の便宜上、リフレクタ7を拡大して模式的に示している。
【0013】
図4の(a)は、トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差を説明する図である。図4の(b)は、トンネルTの設計上の三次元形状データとトンネルTの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差に基づく教示点MPの補正を説明する図である。
図5は、トンネルTの内周Taに沿って点検具4を移動させる際の移動軌跡MLと移動軌跡MLに含まれる教示点MPを説明する図である。図5の(a)は、教示点MPを補正する前の移動軌跡MLを示した図である。図5の(b)は、教示点MPを補正した後の移動軌跡ML’を示した図である。なお、図4および図5では、説明の便宜上、点検具4の位置のみを枠線で示しており、その他の部分の図示を省略している。
【0014】
図1に示すようにトンネル点検システム1は、トンネルTの内周Taの三次元形状データを生成する三次元形状データ生成装置2と、トンネルTを点検する点検装置3と、を有する。
【0015】
図2に示すように、三次元形状データ生成装置2は、トンネルT内を走行可能な車両V1(移動体)に搭載されている。三次元形状データ生成装置2は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(測定により得られた三次元形状データ:点群データ)を生成する。
点検装置3は、トンネルT内を走行可能な別の車両V2(移動体)に搭載されている。点検装置3は、トンネルTの内周Taに対向配置した点検具4を、トンネルTの内周Taに沿って移動させながらトンネルTを点検する。
【0016】
トンネルTの内周Taに沿う点検具4の移動は、トンネルTの設計上の三次元形状データから設定される移動軌跡ML(図5の(a)参照)に沿って点検具4を移動させることで実現する。
【0017】
点検装置3は、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させるにあたり、トンネルTの設計上の三次元形状データに含まれる基準座標と、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データに含まれる基準座標との座標合わせ(位置合わせ)を実施する。
【0018】
そして、座標合わせにより、トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差を求め、求めた誤差を利用して、トンネルTの設計上の三次元形状データから設定された移動軌跡MLを補正する。
【0019】
なお、移動軌跡MLは、当該移動軌跡ML上に並んだ複数の教示点MPから構成される。教示点MPは、移動軌跡ML上にあるトンネルT内の座標であって、点検具4の移動先を示す座標データである。
教示点MPは、トンネルT内の三次元空間における一点を示す座標データであり、通常(X軸、Y軸、X軸)の3成分から構成される。
【0020】
移動軌跡MLの補正は、トンネルT内における教示点MPの位置(座標)を、トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)との誤差に応じて変更することで実施される。
【0021】
ここで、点検具4は、トンネルTの内周Taの打音検査を実施するための打診器、トンネルTの内周Taの画像解析を実施するためカメラなど、非破壊検査に用いられる任意の点検用機器が適宜利用可能である。
例えば、点検具が打診器である場合、点検具4は、トンネルTの内周Taを点検する際に、トンネルTの内周Taに沿って移動しながら、打診器による打音検査を実施する。
【0022】
以下、トンネル点検システム1の構成要素(三次元形状データ生成装置2、点検装置3)を具体的に説明する。
【0023】
図1に示すように、三次元形状データ生成装置2は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)を生成する三次元スキャナ21と、トンネルTの内周Taを撮像するカメラ22と、を有している。
【0024】
三次元スキャナ21は、トンネルTの内周Taに向けて、原点αからレーザ光を照射する照射部210と、トンネルTの内周Taで反射したレーザ光を受光する受光部211と、制御部212と、を有する。
【0025】
制御部212は、照射制御部213と、距離測定部214と、位置情報生成部215と、三次元形状データ生成部216と、を有する。
【0026】
照射制御部213は、照射部210からのレーザ光の照射を制御する。
具体的には、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データを作成する際に、照射制御部213は、照射部210からトンネルTの内周Taに向けてレーザ光を照射させる。
【0027】
この際に照射制御部213は、照射部210の原点αから出射されるレーザ光の出射角を、所定角度θずつ変更して、トンネルTの内周Taにおけるレーザ光の照射点Ptを、断面視におけるトンネルTの内周Taに沿って周方向に移動させる。
これにより、トンネルTの長手方向に直交する断面方向で、断面視において弧状を成すトンネルTの内周に沿ってレーザ光が照射されて、トンネルTの内周Taの走査が行われる。
【0028】
ここで、照射部210から照射されたレーザ光は、トンネルTの内周Taで反射されたのち受光部211で受光される。
距離測定部214は、照射部210から出射されたレーザ光と、受光部211で受光されたレーザ光との位相差から、原点αからトンネルTの内周Taの照射点Ptまでの距離L(図2参照)を算出する。
【0029】
これにより、レーザ光によるトンネルTの内周Taの走査が行われる度に、原点αからトンネルTの内周Taの各照射点Ptまでの距離Lが取得されて、取得された距離Lの集合から、トンネルTの内周Taの断面形状データ(点群データ)が生成される。
【0030】
本実施形態では、レーザ光による走査が完了する度に、照射部210の原点αの位置をトンネルTの長手方向に移動させる。
これにより、トンネルTの長手方向の所定範囲に対して、トンネルTの断面形状データが順番に生成される。生成された断面形状データは、生成された順番で三次元形状データ生成部216に出力される。
【0031】
位置情報生成部215は、カメラ22から入力されるトンネルT内の撮像画像に含まれるターゲットTGの位置から、トンネルT内における三次元形状データ生成装置2の位置を特定する。
【0032】
トンネルT内には、位置特定用の識別子であるターゲットTGが複数設置されている。
図2の(b)に示すように本実施形態においてターゲットTGは、正方形形状の白色領域と正方形形状の黒色領域が中心C周りに交互に並んだ正方形形状を成している。
【0033】
トンネルT内でのターゲットTGの設置位置は、トンネルT内の座標と関連付けて予め決められている。位置情報生成部215は、撮像画像において、公知の画像処理技術によりターゲットTGの領域を特定し、特定したターゲットTGの中心Cの位置を特定する。
そして、位置情報生成部215は、撮像画像における少なくとも3つ以上のターゲットTGの中心Cの位置から、トンネルT内における三次元形状データ生成装置2の位置を特定する。
さらに、位置情報生成部215は、撮像画像に含まれるターゲットTGの中心Cの位置を示す情報を生成する。
【0034】
三次元形状データ生成部216には、距離測定部214から、トンネルTの内周Taの断面形状データ(点群データ)が、順次入力される。
さらに、三次元形状データ生成部216には、トンネルT内における三次元形状データ生成装置2の位置であって、断面形状データが生成された時点での位置を示す情報(座標データ)が、撮像画像に含まれるターゲットTGの中心Cの位置を示す情報と共に、順次入力される。
【0035】
三次元形状データ生成部216は、入力された断面形状データをトンネルTの長手方向に連ねて、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データを生成する。
三次元形状データ生成部216は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データを、記憶部217に記憶させる。
【0036】
ここで、記憶部217に記憶されるトンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データは、後記する点検装置3において、設計上の三次元形状データとの位置合わせを可能にするために、トンネルT内に設置された少なくとも3つ以上のターゲットTG(識別子)の中心位置の位置情報を含んでいる。
【0037】
なお、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データを生成するにあたり、トンネルTの内周Taの細かな凹凸を除外するために、内周Taの表面の凹凸のうちの閾値未満の深さまたは高さの凹凸を、三次元形状データから間引いても良い。
後記する点検具4の移動軌跡の設定に影響を与えることがない範囲内で、生成される三次元形状データから閾値未満の凹凸を間引くことで、生成されるトンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状の情報量を抑えて、後記する点検装置3での処理における負荷を低減できる。
【0038】
なお、トンネルTの内周Taの断面形状データ(点群データ)に含まれる座標データを、凹凸の高さに関係なく一定の間隔や割合で間引くようにしても良い。
【0039】
三次元形状データ生成装置2は、送受信部218を有している。送受信部218は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データを、記憶部217から読み出して、点検装置3に送信する。
なお、三次元形状データ(点群データ)を点検装置3に受け渡すことが可能であれば、受け渡し方法は特に限定されない。例えば、三次元形状データ生成装置2で生成された三次元形状データ(点群データ)を、不揮発性メモリなどの従来公知の情報記録媒体を用いて、点検装置3に受け渡すようにしても良い。
【0040】
図1に示すように点検装置3は、支持機構5による点検具4の移動を制御する制御装置31と、位置情報生成装置6と、を有する。
支持機構5は、点検具4を支持するアーム部51を有している。アーム部51は、トンネルT内の任意の位置に点検具4を配置することが可能な従来公知の可動式のアームである。本実施形態では、一例として、6つの回転軸を持つ可動式のアームを採用している。
【0041】
支持機構5の制御装置31は、支持機構5を駆動するための駆動制御部310を有している。駆動制御部310は、支持機構5のアクチュエータ(図示せず)を駆動して、アーム部51の先端に支持された点検具4を、トンネルT内の指定された座標に配置させる。
【0042】
位置情報生成装置6は、トンネルT内に設置したリフレクタ7との相対的な位置関係を示す第1位置情報と、支持機構5に設置したリフレクタ7との相対的な位置関係を示す第2位置情報を生成する。
位置情報生成装置6は、支持台60の上部に設置されたレーザトラッカー61を有している。図3の(a)、(b)に示すようにレーザトラッカー61は、レーザ光の照射部62と、レーザ光の受光部63と、位置情報算出部64と、測定制御部65と、を有している。
【0043】
支持台60においてレーザトラッカー61は、互いに直交する2軸(鉛直線に沿う軸線X、水平線に沿う軸線Y)回りに回動可能に設けられている。
照射部62は、リフレクタ7に向けてレーザ光を照射し、受光部63は、リフレクタ7で反射されたレーザ光を受光する。
【0044】
リフレクタ7は、レーザトラッカー61から照射されたレーザ光を、レーザトラッカー61に向けて反射する反射体である。
リフレクタ7は、真球状の本体部71を有している。本体部71では、円錐形状の受光部72が外周に開口している。円錐形状の受光部72の頂点は、真球状の本体部71の中心Cpに位置している。中心Cpから本体部71の内周面71aまでの距離(径r)は、同じである。
【0045】
リフレクタ7では、受光部72の表面72aが鏡面となっている。リフレクタ7では、レーザトラッカー61から照射されたレーザ光が、受光部72に入射すると、入射したレーザ光が、表面72aを反射しながら受光部72の頂点(本体部71の中心Cp)に到達する。そして、本体部71の中心Cpに到達したレーザ光は、その進行方向が、本体部71の中心Cpからレーザトラッカー61に向かう方向に変更される。
【0046】
リフレクタ7では、レーザトラッカー61から出射されたのち、受光部72に到達したレーザ光が、最終的に、本体部71の中心Cpから、レーザトラッカー61に向けて常に反射される。
【0047】
ここで、レーザトラッカー61から出射されたレーザ光が、リフレクタ7において受光部72の頂点(本体部71の中心Cp)に直接入射すると、レーザトラッカー61は、出射したレーザ光と同軸のレーザ光を受光する。
レーザトラッカー61から出射されたレーザ光が、リフレクタ7において受光部72の頂点(本体部71の中心Cp)以外の領域に入射すると、レーザトラッカー61は、出射したレーザ光に対して同軸でないレーザ光を受光する。
【0048】
位置情報算出部64は、出射したレーザ光と、受光したレーザ光との比較により、レーザトラッカー61と、リフレクタ7の中心Cpとの相対距離と、レーザトラッカー61を基準としたリフレクタ7の中心Cpの相対座標を算出する。
【0049】
さらに、位置情報算出部64は、リフレクタ7の真球状の本体部71の径rから、リフレクタ7が設置された測定対象物OBJの表面(測定対象点Pо)とレーザトラッカー61との相対距離と、レーザトラッカー61を基準とした測定対象点Pоの相対座標を算出する。
【0050】
本実施形態では、点検装置3でトンネルTの内周Taの点検を行う際には、前記した三次元形状データ生成装置2のターゲットTG(図1参照)と同じ位置にリフレクタ7が設置される。
具体的には、リフレクタ7におけるトンネルTの内周Taとの接触点(測定対象点Pо)が、ターゲットTGの中心Cに一致するように、リフレクタ7が設置される。
【0051】
位置情報生成装置6は、ターゲットTG(図1参照)と同じ位置に設置されたリフレクタ7で反射されたレーザ光から、トンネルT内に配置されたリフレクタ7との相対的な位置関係を示す第1位置情報を生成する。
【0052】
前記したように、本実施形態では、トンネルT内には複数のターゲットTGが設定されている。そして、トンネルT内における各ターゲットTGの中心Cの位置(座標)は、予め設定されている。
本実施形態では、リフレクタ7は、当該リフレクタ7におけるトンネルTの内周Taとの接触点(測定対象点Pо)が、ターゲットTGの中心Cに一致するように、各ターゲットTGに設置される。
【0053】
位置情報生成装置6は、少なくとも3つ以上のリフレクタ7の中心Cpの位置(座標)から、トンネルT内における位置情報生成装置6の位置を示す情報を生成する。
【0054】
さらに、本実施形態では、点検装置3でトンネルTの内周Taの点検を行う際に、点検具4を支持するアーム部51の先端にも、リフレクタ7が設置される。
なお、リフレクタ7は、点検具4に直接設置しても良い。点検具4とアーム部51の少なくとも一方に設置されていれば良い。
【0055】
位置情報生成装置6は、アーム部51に設置されたリフレクタ7で反射されたレーザ光から、アーム部51に設置されたリフレクタ7との相対的な位置関係を示す第2位置情報を生成する。
【0056】
なお、第2位置情報の生成にあたり、トンネルT内の異なる少なくとも3点に点検具4を配置する。そして、異なる3点でのリフレクタ7と位置情報生成装置6との相対的な位置関係と、前記した第1位置情報から、リフレクタ7の現在位置(座標)を示す情報が生成される。
【0057】
なお、アーム部51に設けたリフレクタ7と、アーム部51で支持された点検具4との位置関係が固定されているので、第1位置情報と、第2位置情報と、アーム部51に設けたリフレクタ7と点検具4との位置関係を示す情報と、から、トンネルT内における点検具4の位置(座標)も特定できる。
【0058】
測定制御部65は、照射部62から出射されるレーザ光の指向方向を調整する機能を有している。
例えば、照射部62から照射されたレーザ光と同軸のレーザ光を受光しなかった場合、照射部62から照射されたレーザ光が、リフレクタ7の受光部72における中心Cp以外の領域に到達したことになる。
かかる場合、測定制御部65が、照射部62から照射されるレーザ光がリフレクタ7の中心Cpに到達するようにするために、アクチュエータ66を駆動して、レーザトラッカー61を、互いに直交する2軸(鉛直線に沿う軸線X、水平線に沿う軸線Y)回りに回動させる。
【0059】
これにより、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させる際に、レーザトラッカー61を、点検具4と共に移動するアーム部51のリフレクタ7を指向させた状態に保つことができる。すなわち、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させる際に点検具4の現在位置(座標)を常に特定できるようにしている。
【0060】
この際のレーザトラッカー61の2軸周りの回動量は、レーザトラッカー61と、リフレクタ7の中心Cpとの相対距離および相対座標により決定される。
【0061】
位置情報生成装置6は、トンネルT内における位置情報生成装置6の位置(座標)を特定可能な第1位置情報と、第1位置情報との組み合わせでトンネルT内における点検具4の位置(座標)を特定可能な第2位置情報とを、点検装置3に出力する。
【0062】
図1に示すように制御装置31は、駆動制御部310と、位置情報取得部311と、教示点設定部312と、教示点補正部313と、記憶部317と、送受信部318と、を有している。
【0063】
位置情報取得部311には、第1位置情報と第2位置情報とが、位置情報生成装置6から入力される。
位置情報取得部311は、第1位置情報と第2位置情報を、記憶部317に出力して記憶させる。
位置情報取得部311は、第1位置情報を教示点補正部313に出力する一方で、第1位置情報と第2位置情報を、駆動制御部310に出力する。
【0064】
送受信部318には、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)が入力される。
送受信部318は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データを、記憶部317に出力して記憶させると共に、教示点補正部313に出力する。
【0065】
教示点設定部312は、トンネルTの内周Taを点検する際の点検具4の移動先を示す教示点MPを設定し、設定した複数の教示点MPから、トンネルTの内周Taを点検する際の点検具4の移動軌跡MLを設定する(図5の(a)参照)。
【0066】
点検装置3では、点検具4でトンネルTの内周Taを点検する際に、点検具4を、トンネルTの内周Taとの間に間隔をあけた状態で、トンネルTの内周Taに沿って移動させる。
【0067】
教示点設定部312は、記憶部317に記憶されているトンネルTの設計上の三次元形状データを参照して、トンネルTの内周Taを点検する際の教示点MPを設定し、複数の教示点MPからなる移動軌跡MLを設定する。
そして、教示点設定部312は、設定した移動軌跡MLを教示点補正部313に出力する。
本実施形態では、教示点MPが、トンネルTの内周Taから法線方向に所定の閾値距離Tha以上離れた位置に設定される(図5の(a)参照)。
【0068】
本実施形態では、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させる際に、点検具4が、当該点検具4の移動先を示す教示点MPを順番に通過するようにアーム部51の動作を制御することで、点検具4は、トンネルTの内周Taとの間に所定の間隔をあけつつ、複数の教示点MPからなる移動軌跡MLに沿って移動する。
【0069】
ここで、トンネルTの内周Taの実際の形状は、施工段階での振れや、経年劣化などの影響を受けて、設計上の三次元形状データにより特定される形状と必ずしも一致しない。
例えば、図5の(a)に示すように、トンネルTの内周Taに、設計上の三次元形状データでは存在しない膨出領域Rxが存在する場合がある。
【0070】
かかる場合に、トンネルTの内周Taの設計上の三次元形状データから設定された教示点MPに従って点検具4を移動させると、点検具4がトンネルTの内周Taに接触する可能性がある。
また、点検具4がトンネルTの内周Taに接触しない場合であっても、点検具4がトンネルTの内周Taに近づきすぎて、内周Taと点検具4との距離が点検具4による点検に支障を生じる距離となる可能性がある。
【0071】
そのため、本実施形態では、教示点設定部312で移動軌跡MLが設定されると、教示点補正部313が、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データに基づいて、移動軌跡MLの補正の要否を判定する。そして、移動軌跡MLの補正が必要であると判定されると、教示点補正部313が、教示点設定部312で設定された移動軌跡MLを補正する。
【0072】
教示点補正部313には、教示点設定部312から移動軌跡MLが入力されると共に、送受信部318から、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)が入力される。
さらに、位置情報取得部311から、トンネルT内における位置情報生成装置6の位置の特定に用いられる第1位置情報が入力される。
【0073】
前記したように、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データには、トンネルT内に設置されたターゲットTG(識別子)の中心Cの位置(座標)を示す情報と、少なくとも3つ以上のターゲットTGの中心Cの位置(座標)の相対的な位置関係を特定可能な情報が含まれている。
そして、第1位置情報には、トンネルT内の少なくとも3つのリフレクタ7の中心Cpの位置(座標)を示す情報と、少なくとも3つ以上のリフレクタ7の中心Cpの位置(座標)相対的な位置関係を特定可能な情報が含まれている。
【0074】
そのため、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データに含まれるターゲットTGの中心Cの位置(座標)を示す情報と、第1位置情報とを用いることで、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データと、設計上の三次元形状データとの座標合わせを行うことができる。
【0075】
教示点補正部313は、トンネルT内での位置情報生成装置6の位置を示す情報と、3つ以上のリフレクタ7の中心Cp相対的な位置関係を特定可能な情報と、少なくとも3つ以上のターゲットTGの中心Cの位置(座標)の相対関係を特定可能な情報とを用いて、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データと、設計上の三次元形状データとの座標合わせ(位置合わせ)を実施する。
【0076】
すなわち、トンネルT内での位置情報生成装置6の位置(座標)を基準として、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データと、設計上の三次元形状データとの座標合わせを実施する。
この位置合わせにより、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)と、設計上の三次元形状データとの三次元空間内でのズレ(誤差:Δx、Δy、Δz)が算出可能となる(図4の(a)参照)。
【0077】
本実施形態では、レーザトラッカー61とリフレクタ7との組み合わせにより、トンネルT内での位置情報生成装置6の位置(座標)を正確に測定できるようにしている。
そして、トンネルT内での位置情報生成装置6の位置(座標)を基準として、リフレクタ7の位置(座標)と、ターゲットTGの位置(座標)とが重なるようにして、設計上の三次元形状データと、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データとの座標合わせを実施している。
【0078】
これにより、設計上の三次元形状データと、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データとが、位置精度良く位置合わせ(座標合わせ)されるので、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)と、設計上の三次元形状データとの三次元空間内でのズレ(誤差:Δx、Δy、Δz)を精度良く算出できるようになっている。
【0079】
教示点補正部313は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)と、設計上の三次元形状データとの誤差が算出されると、算出された誤差を考慮して、設計上の三次元形状データから生成された点検具4の移動軌跡MLの補正の要否を確認する。
【0080】
例えば、教示点補正部313は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)に、設計上の三次元形状データから設定された移動軌跡MLに含まれる教示点MPをプロットする(図4の(b)参照)。
そして、教示点補正部313は、教示点MPに従って点検具4を移動させるにあたり、点検具4の移動に支障がある教示点MPの有無を確認する。
【0081】
ここで、点検具4の移動に支障がある教示点MPとは、点検具4がトンネルTの内周Taに接触する可能性のある教示点MPや、点検具4がトンネルTの内周Taに近づきすぎて点検具4による点検に支障がある教示点MPである。
【0082】
一例として、三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taの法線方向において、教示点Mpと内周Taとの離間距離が、所定の閾値距離Tha未満になる教示点が、点検具4による点検に支障がある教示点MPとして認定される。
【0083】
教示点補正部313は、点検具4による点検に支障がある教示点MPが存在する場合には、点検具4による点検に支障がある教示点MPを抽出する。そして、教示点補正部313は、抽出された教示点MPの各々のトンネルT内の空間での座標を、支障を生じない座標に変更し、変更後の座標により特定される教示点を補正後の教示点MP’として設定する。
【0084】
一例として、教示点の位置を、三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taの法線方向にオフセットさせて、オフセット後の位置を、補正後の教示点MP’として設定する。
この際のオフセット量は、以下のような量に決定される。
(i)法線方向における教示点と内周Taとの離間距離が、前記した所定の閾値距離Tha以上となる量。
(ii)トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)と、設計上の三次元形状データとの三次元空間内でのズレ(誤差:Δx、Δy、Δz)に相当する量。
【0085】
図4の(b)では、設計上の三次元形状データから作成された移動軌跡MLに点検具4を配置すると、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データで規定されるトンネルTの内周Taに点検具4が干渉する。
【0086】
そのため、教示点補正部313が、設計上の三次元形状データと、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差を考慮して、教示点MPを、トンネルTの内周Taから離れる方向に移動させた教示点MP’に補正する。
これにより、変更後の教示点MP’を含む移動軌跡ML’が、補正後の移動軌跡として設定される。この補正後の移動軌跡に沿って点検具4を移動させると、トンネルTの内周Taに点検具4を接触させることなく、トンネルTの内周Taの点検を行えるようになる。
【0087】
また、図5の(b)では、点検具4がトンネルTの内周Taに接触する教示点MPの座標を、内周Taから離す方向に変更して、変更後の座標により特定される教示点MP’とすることが示されている。
これにより、変更後の教示点MP’を含む移動軌跡MLに沿って点検具4を移動させた際に、トンネルTの内周Taの膨出領域Rxに点検具4を接触させることなく、トンネルTの内周Taの点検が行えるようになる。
【0088】
教示点補正部313は、教示点が補正された場合には、補正後の教示点MP’を含む移動軌跡ML’を補正後の移動軌跡として設定し、設定した移動軌跡MLを、駆動制御部310に出力する。
教示点補正部313は、教示点が補正されなかった場合には、教示点設定部312から入力された移動軌跡MLを、そのまま駆動制御部310に出力する。
【0089】
駆動制御部310は、点検具4が、教示点補正部313から入力された移動軌跡ML上の各教示点MPを順番に通過するように、アーム部51を動作させる。これにより点検具4は、トンネルTの内周Taとの間に所定の間隔をあけつつ、複数の教示点MPからなる移動軌跡MLに沿って移動する。
【0090】
トンネルTの内周Taに沿って点検具4を移動させている間、駆動制御部310には、第1位置情報と第2位置情報とが、位置情報取得部311から入力される。
第1位置情報は、トンネルT内に設置したリフレクタ7と位置情報生成装置6との相対的な位置関係を示す情報である。
第2位置情報は、支持機構5に設置したリフレクタ7と位置情報生成装置6の相対的な位置関係を示す情報である。
【0091】
駆動制御部310は、第1位置情報と第2位置情報とから、トンネルT内での点検具4の位置(座標)を特定し、点検具4が移動軌跡MLから外れないように、フィードフォワード処理など行いつつ、アーム部51を移動軌跡MLに沿って移動させる。
【0092】
なお、点検具4による点検を行う際に、トンネルT内での点検具4の初期位置(座標)のみを、支持機構5に設置したリフレクタ7を用いて特定するようにしても良い。
点検具4の初期位置(座標)を特定できれば、移動後の点検具4の位置を、駆動制御部310による支持機構5の駆動履歴から、初期位置(座標)を基準とした相対座標として特定できる。
かかる場合、点検具4による点検の実施中に、リフレクタ7を用いた点検具4の現在位置の特定が行われない。そのため、点検装置3において、第2位置情報の生成に起因する負荷の低減が可能となる。
【0093】
以下、トンネル点検システム1の動作を説明する。
図6は、三次元形状データ生成装置2での処理を説明するフローチャートである。
図7は、トンネルの内周の三次元形状データの作成過程を説明する図である。図7の(a)は、トンネルTの内周Taのレーザ光による走査を説明する模式図である。図7の(b)は、トンネルTの内周Taを走査する際のレーザ光の照射点Ptの移動軌跡の一例を示す図である。図7の(c)は、トンネルT内のターゲットTGの配置例を説明する図である。
【0094】
[三次元形状データ生成装置2での処理]
図7の(c)に示すように、三次元形状データ生成装置2は、トンネルT内を走行可能な車両V1(移動体)に搭載されている。
トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データの生成は、トンネルT内をトンネルTの長手方向で複数の走査エリアに区画して、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データを、走査エリア毎に生成し、生成した三次元形状データを繋ぎ合わせて生成される。
【0095】
車両V1が、トンネルTの内周Taの形状測定を実施する走査エリアに到着すると、三次元形状データ生成装置2の制御部212(位置情報生成部215:図1参照)が、カメラ22から入力されるトンネルT内の撮像画像から、トンネルT内における三次元形状データ生成装置2の位置を特定する(ステップS101)。
【0096】
図7の(c)に示すようにトンネルT内には、位置特定用の識別子であるターゲットTGが複数設置されている。トンネルT内でのターゲットTGの設置位置は、トンネルT内の座標と関連付けて予め決められている。
位置情報生成部215は、撮像画像における少なくとも3つ以上のターゲットTGの中心Cの位置から、トンネルT内における三次元形状データ生成装置2の位置を特定する。
【0097】
続いて、照射制御部213(図1参照)が、三次元スキャナ21による走査エリアの走査を実施する(ステップS102)。
具体的には、照射制御部213が、照射部210からトンネルTの内周Taに向けてレーザ光を照射させる。この際に、照射部210の原点αから出射されるレーザ光の出射角を、所定角度θずつ変更して、トンネルTの内周Taにおけるレーザ光の照射点Ptを、断面視におけるトンネルTの内周Taに沿って周方向に移動させる。
【0098】
これにより、トンネルTの長手方向に直交する断面方向で、断面視において弧状を成すトンネルTの内周Taに沿ってレーザ光が照射されて、トンネルTの内周Taの走査が行われる。
図7の(a)、(b)には、トンネルTの内周Taを走査する際のレーザ光の照射点Ptの移動軌跡の一例が示されている。図7の(b)では、トンネルTの内周Taの下端から天頂までの照射点Ptの移動と、天頂から下端までの照射点Ptの移動が、トンネルTの長手方向に位置をずらしながら交互に実施されて、トンネルTの内周Taの走査エリアが走査される一例を示している。
【0099】
続いて、距離測定部214が、走査エリアにおけるトンネルTの内周Taの断面形状データ(点群データ)を生成する(ステップS103)。
具体的には、距離測定部214が、照射部210から出射されたレーザ光と、受光部211で受光されたレーザ光との位相差から、原点αからトンネルTの内周Taの照射点Ptまでの距離Lを算出する。
そして、距離測定部214が、原点αからトンネルTの内周Taの各照射点Ptまでの距離Lの集合から、トンネルTの内周Taの断面形状データを生成する。
【0100】
そして、走査エリア内の走査により得られる複数の断面形状をまとめて、操作エリアの三次元形状データ(点群データ)が生成される(ステップS104)。
【0101】
そして、トンネルT内に設定された総ての走査エリアのうち、三次元形状データが生成されていない走査エリアがある場合には(ステップS105、Yes)、車両V1が隣接する他の走査エリアまで移動した後、新たな走査エリアに対して、上記したステップS101からステップS104の処理を実施して、新たな走査エリアの断面形状データを生成する。
【0102】
設定された総ての走査エリアに対して三次元形状データが生成されると(ステップS105、No)、ステップS106において三次元形状データ生成部216が、走査エリア毎に生成された三次元形状データを繋ぎ合わせて、トンネルT全体の内周Taの形状を示す三次元形状データ(点群データ)を生成する。
【0103】
ここで、各走査エリアに対して生成される三次元形状データは、トンネルT内のターゲットTGの位置(座標)を示す情報を含んでいる。
三次元形状データ生成部216は、隣接する走査エリアの三次元形状データ同士を繋ぎ合わせる際に、ターゲットTGの位置(座標)を示す情報を用いて、三次元形状データ同士の位置合わせを実施する。
【0104】
三次元形状データ生成部216は、トンネルTの内周Taの三次元形状データを、記憶部217に記憶させる。
【0105】
これにより、三次元形状データ生成装置2の記憶部217に、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(測定により得られた三次元形状データ:点群データ)が記憶されることになる。
【0106】
[点検装置3での処理]
図8は、点検装置3での処理を説明するフローチャートである。
図9は、トンネルの内周の点検過程を説明する図である。図9の(a)は、トンネルTの内周Taの点検具4による点検を説明する模式図である。図9の(b)は、トンネルTの内周TaをトンネルT内側から見た状態を示す模式図であって、トンネルTの内周Taを点検する際の点検具4の移動軌跡MLの一例を示す図である。図9の(c)は、トンネルT内のリフレクタ7の配置例を説明する図である。
【0107】
図9の(c)に示すように、点検装置3は、トンネルT内を走行可能な車両V2(移動体)に搭載されている。
トンネルTの内周Taの点検具4による点検は、トンネルT内をトンネルの長手方向で複数の点検エリアに区画して、点検エリア毎に実施される。
【0108】
車両V2が、点検エリアに到着すると、点検装置3の位置情報生成装置6が、トンネルT内における位置情報生成装置6の位置を特定する(ステップS201)。
具体的には、位置情報生成装置6が、トンネルT内の前記したターゲットTGと同じ位置に設置されたリフレクタ7に向けて、レーザトラッカー61からレーザ光を照射する。そして、レーザトラッカー61がリフレクタ7で反射されたレーザ光を受光して、照射したレーザ光と受光したレーザ光との比較により、トンネルT内における位置情報生成装置6の位置を特定するための第1位置情報を生成する。
位置情報生成装置6は、少なくとも3つのリフレクタ7の測定対象点Cоの位置情報から、トンネルT内における位置情報生成装置6の現在位置(座標)を特定するための第1位置情報を生成する。
【0109】
続いて、教示点設定部312が、トンネルT内での位置情報生成装置6の現在位置に基づいて、トンネルTの内周Taの点検具4による点検範囲(点検エリア)を設定する(ステップS202)。
点検エリアは、点検具4を支持するアーム部51(図1参照)の可動範囲と、トンネルT内における位置情報生成装置6の現在位置を基準として設定される。
【0110】
点検範囲が設定されると、教示点設定部312は、点検エリアの内周Taに沿って点検具を移動させるための移動軌跡MLを設定する(ステップS203)。
教示点設定部312が設定する移動軌跡MLは、点検具4をトンネルTの内周Taとの間に所定の間隔をあけつつトンネルTの内周Taに沿って移動させるための移動軌跡であり、記憶部317に記憶されているトンネルTの内周Taの設計上の三次元形状データに基づいて設定される。
【0111】
移動軌跡MLは、移動軌跡ML上に並んだ複数の教示点MPから構成される。教示点MPは、移動軌跡ML上にあるトンネルT内の座標であって、点検具4の移動先を示す座標データである。
図9の(b)の場合には、点検具4が、トンネルTの内周Taの水平位置から天頂までの移動と、天頂から水平位置までの移動を、トンネルTの長手方向に位置をずらしながら交互に実施して、トンネルTの内周Taを点検する際の移動軌跡MLが一例として示されている。
【0112】
移動軌跡MLが設定されると、教示点補正部313が、三次元形状データ生成装置2で生成された三次元形状データ(トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ:点群データ)と、設計上の三次元形状データとを位置合わせを実施する(ステップS204)。
【0113】
この位置合わせは、トンネルT内における位置情報生成装置6の位置を基準として、少なくとも3つのターゲットTGの中心Cの位置(座標)の相対的な位置関係と、少なくとも3つのリフレクタ7の中心Cpの位置(座標)の相対的な位置関係と、を利用して実施される。
【0114】
この位置合わせにより、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)と、設計上の三次元形状データとの三次元空間内でのズレ(誤差:Δx、Δy、Δz)が算出可能となる(図4の(a)参照)。
【0115】
教示点補正部313は、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データと、設計上の三次元形状データとの誤差を算出する(ステップS205)。
そして、教示点補正部313は、教示点補正部313が、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データと、移動軌跡MLとの比較により、移動軌跡MLの補正の要否を判定する(ステップS206)。
【0116】
具体的には、教示点補正部313は、ステップS205で算出された誤差を考慮して、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)に、設計上の三次元形状データから設定された移動軌跡MLに含まれる教示点MPをプロットする。
そして、教示点に従って点検具4を移動させるにあたり、点検具4の移動に支障がある教示点MPの有無を確認する。
【0117】
教示点補正部313は、点検具4がトンネルTの内周Taに接触する可能性のある教示点MPや、点検具4がトンネルTの内周Taに近づきすぎて点検具4による点検に支障がある教示点MPがある場合に、移動軌跡MLの補正が必要であると判定する。
【0118】
一例として、三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taの法線方向において、教示点Mpと内周Taとの離間距離が、所定の閾値距離Tha未満になる教示点が、点検具4による点検に支障がある教示点MPとして認定される。
【0119】
移動軌跡MLの補正が必要であると判定されると(ステップS206、Yes)、教示点補正部313は、教示点設定部312で設定された移動軌跡MLを補正する(ステップS207)。
具体的には、教示点補正部313は、点検具4による点検に支障がある教示点MPの各々のトンネルT内の空間での座標を、支障を生じない座標に変更し、変更後の座標により特定される教示点を補正後の教示点MP’として設定する。
【0120】
一例として、教示点の位置を、三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taの法線方向にオフセットさせて、オフセット後の位置を、補正後の教示点MP’として設定する。
【0121】
そして、補正後の教示点を含む複数の教示点からなる移動軌跡を、移動軌跡MLとして再設定する(ステップS208)。
【0122】
教示点補正部313は、補正後の移動軌跡MLを駆動制御部310に出力する。
一方、移動軌跡MLの補正が必要でないと判定されると(ステップS206、No)、教示点補正部313は、教示点設定部312から入力された移動軌跡を、そのまま駆動制御部310に出力する。すなわち、移動軌跡の補正は実施されない。
【0123】
駆動制御部310は、点検具4の駆動制御を実施して(ステップS209)、点検具4が、教示点補正部313から入力された移動軌跡ML上の各教示点MPを順番に通過するように、アーム部51を動作させる。
これにより点検具4は、トンネルTの内周Taとの間に所定の間隔をあけつつ、複数の教示点MPからなる移動軌跡MLに沿って移動する。
【0124】
移動軌跡MLが設定された点検エリアの点検具4による点検が終わると、点検がされていない点検エリアが存在する場合に(ステップS210、Yes)、ステップS203からステップS209の処理が繰り返されて、点検具4による点検が実施される。
そして、総ての点検エリアの点検が完了すると(ステップS210、No)と、点検装置3によるトンネルTの点検を終了する。
【0125】
このように、トンネルTの内周Taの測定により得られた三次元形状データ(トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ:点群データ)と、設計上の三次元形状データとの誤差を算出する。そして、設計上の三次元形状データから設定された移動軌跡MLに沿って点検具4を移動させるにあたり、点検具4の移動に支障がある教示点MPを、算出された誤差に応じて補正する。
これにより、トンネルTの内周Taの実際の形状と、設計上の三次元形状データにより特定される設計上の形状との差異の影響を受けることなく、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させて、トンネルを適切に点検できる。
【0126】
以上の通り、本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(1)点検装置3は、
点検具4を支持すると共に、点検具4をトンネルT内で指定された座標に配置させる支持機構5と、
支持機構5による点検具4の移動を制御する制御装置31と、
リフレクタ7(反射体)との相対的な位置関係を示す情報を生成する位置情報生成装置6と、を有しており、トンネルTの内周Taに対向配置した点検具4で、トンネルTを点検する。
位置情報生成装置6は、トンネルT内に複数設置したリフレクタ7の位置情報であって、位置情報生成装置を基準とした第1位置情報(位置情報)を生成する。
制御装置31は、
トンネルTの設計上の三次元形状データに基づいて、トンネルT内での点検具4の移動先の座標を教示点MPとして設定する教示点設定部312と、
トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差(Δx、Δy、Δz)に基づいて教示点MPを補正する教示点補正部313と、を有する。
トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データは、トンネルT内でリフレクタ7と同じ位置に設置したターゲットTG(識別子)の位置情報を有している。
教示点補正部313は、
ターゲットTGの位置情報とリフレクタ7の位置情報とを用いて、位置情報生成装置6を基準として、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データと、トンネルTの設計上の三次元形状データとの座標合わせを実施して、誤差(Δx、Δy、Δz)を算出する。
【0127】
このように構成すると、位置情報生成装置6を基準とすることで、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データと、トンネルTの設計上の三次元形状データとの座標合わせを位置精度良く実施できる。
位置情報生成装置6を基準として座標合わせをすることで、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データと、トンネルTの設計上の三次元形状データとを、同じ座標系で取り扱うことができる。よって、トンネルTの設計上の三次元形状データにより作成した点検具4の移動軌跡MLを、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データの座標系にプロットして、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障があるか否かを判断できる。
これにより、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障がある場合には、移動軌跡を補正して、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障が生じる事態を好適に防止できる。
【0128】
本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(2)教示点補正部313が算出する誤差(Δx、Δy、Δz)は、
トンネルの実際の形状を示す三次元形状データにより特定されるトンネルT内の座標と、トンネルTの設計上の三次元形状データにより特定されるトンネル内の座標との誤差である(図4の(a)参照)。
【0129】
このように構成すると、誤差に基づいて、点検具4の移動軌跡MLを構成する教示点MPの位置を補正して、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障が生じる事態を好適に防止できる。
【0130】
本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(3)位置情報生成装置6は、
リフレクタ7に向けてレーザ光を照射する照射部62と、
リフレクタ7で反射したレーザ光を受光する受光部63と、
照射部62から照射されたレーザ光と、受光部63で受光したレーザ光との比較により、リフレクタ7の位置情報を算出する位置情報算出部64と、を有するレーザトラッカー61を有している。
【0131】
レーザトラッカー61とリフレクタ7とを用いることで、トンネルT内における位置情報生成装置6の位置と、少なくとも3つ以上のリフレクタ7の相対的な位置関係を、短時間で精度良く特定できる。これにより、トンネルの実際の形状を示す三次元形状データにより特定されるトンネルT内の座標と、トンネルTの設計上の三次元形状データにより特定されるトンネル内の座標との誤差をより正確に特定できる。よって、誤差に基づいて、点検具4の移動軌跡MLを構成する教示点MPの位置を補正することで、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障が生じる事態をより好適に防止できる。
【0132】
本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(4)制御装置31は、
支持機構5を制御して、点検具4を教示点まで移動させる駆動制御部310(制御部)を、有している。
位置情報生成装置6は、点検具4と支持機構5の少なくとも一方に設けたリフレクタ7の位置情報であって、位置情報生成装置6を基準とした第2位置情報(位置情報)を生成する。
制御装置31は、点検具4と支持機構5の少なくとも一方に設けたリフレクタ7の位置情報により、トンネルT内における点検具4の座標を特定し、特定した座標を用いて点検具4の移動を制御する。
【0133】
このように構成すると、トンネルT内での点検具4の座標をより正確に特定できる。トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データと、トンネルTの設計上の三次元形状データと、点検具4の座標を、同じ座標系で取り扱うことができる。これにより、点検具4の移動を三次元空間内でシミュレートできるので、点検具4の移動に対する支障の有無を適切に判断したうえで、移動軌跡MLを適切に補正できる。
【0134】
本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(5)トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データは、トンネルTの内周Taの三次元スキャナ21による走査により生成された点群データである。
【0135】
このように構成すると、既存の三次元スキャナ21により生成された三次元形状データ(点群データ)のみを利用して、移動軌跡MLを設定または補正する場合に比べて、点検具4の移動に支障を生じさせることなく、点検具4の移動をより適切に制御できる。
【0136】
本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(6)教示点設定部312は、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させる際の移動軌跡MLを設定すると共に、移動軌跡ML上にあるトンネルT内の座標を、点検具4の移動先を示す教示点として設定する。
駆動制御部310は、点検具4が移動軌跡ML上で並んだ複数の教示点MPを順番に通過するように、支持機構5を制御する。
教示点補正部313は、移動軌跡ML上で並んだ教示点のうち、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障を生じる教示点の座標を補正する。
【0137】
このように構成すると、移動軌跡MLにおける補正の必要な教示点MPのみを補正することができるので、移動軌跡MLの補正を最小限に抑えることができる。
【0138】
本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(7)点検具4の移動先を示す教示点MPは、設計上の三次元形状データにより特定されるトンネルTの内周Taから、内周Taの法線方向に所定の閾値距離Tha以上、トンネルTの内側に離れた位置に設定される。
教示点Mpと内周Taとの離間距離が、所定の閾値距離Tha未満になる教示点が、点検具4による点検に支障がある教示点MPとして認定される。
点検具4による点検に支障がある教示点MPは、三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taの法線方向にオフセットさせて、オフセット後の位置を、補正後の教示点MP’として設定する。
【0139】
このように構成すると、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障がある場合には、教示点を補正することで移動軌跡を補正して、点検具4の移動軌跡MLに沿う移動に支障が生じる事態を好適に防止できる。
【0140】
本実施形態にかかる点検装置3は、以下の構成を有する。
(8)補正後の教示点MP’を設定する際のオフセット量は、
(i)法線方向における教示点と内周Taとの離間距離が、前記した所定の閾値距離Tha以上となる量、または
(ii)トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)と、設計上の三次元形状データとの三次元空間内でのズレ(誤差:Δx、Δy、Δz)に相当する量である。
【0141】
このように構成すると、点検具4によるトンネルTの内周Taの点検に支障が生じないように、教示点MPを適切に補正できる。
【0142】
[変形例]
図10の(a)、(b)は、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させる移動軌跡の変形例を説明する図である。
前記した実施形態では、トンネルTの内周Taを点検する際の点検具4の移動軌跡が、以下のような特性を有する場合を例示した。
(i)トンネルTの内周Taの水平位置から天頂までの周方向での点検具4の移動量のほうが、トンネルTの長手方向での点検具4の移動量よりも多い。
【0143】
点検具4の移動軌跡は、トンネルTの内周Taを適切に点検できる範囲で適宜変更可能である。
例えば、図10の(a)に示すように、(ii)トンネルTの長手方向での点検具4の移動量のほうが、トンネルTの内周Taの周方向での点検具4の移動量よりも多い移動軌跡ML1であっても良い。
【0144】
また、図10の(b)に示すように、トンネルを構成する構造体同士のつなぎ目が、点検エリアに含まれる場合には、つなぎ目に沿って周方向に移動する移動軌跡MLaと、トンネルTの長手方向での点検具4の移動量のほうが、トンネルTの内周Taの周方向での点検具4の移動量よりも多い移動軌跡MLbの両方を含む移動軌跡ML2であってもよい。
【0145】
構造体同士のつなぎ目を点検する場合には、点検具4をつなぎ目の長手方向(トンネルTの内周Taの周方向)に沿って移動させた方が、つなぎ目を横切る方向(トンネルの長手方向)に点検具4を移動させる場合よりも、つなぎ目の部分の点検時間を長くとれる。
これにより、つなぎ目の部分での異常の有無をより正確に点検できる。
【0146】
このように、トンネルTの内周Taを点検する際の点検具4の移動軌跡は、点検の目的や、点検箇所などに応じて適宜変更可能である。
【0147】
前記した実施形態では、三次元スキャナ21を用いて、トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)を生成する場合を例示した。三次元スキャナ21によるトンネルTの内周Taの走査方法は、前記した実施形態の態様にのみ限定されない。
トンネルTの内周Taの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)を生成できる限りにおいて、走査方向や走査方法は適宜変更可能である。
【0148】
なお、本件発明は、教示点の補正方法としても特定できる。
具体的には、
(9)教示点の補正方法は、トンネルTの内周Taを点検する際の点検具4の移動軌跡に含まれる教示点を補正するための方法である。
教示点の補正方法は、以下のステップを含んでいる。
(a)トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)との位置合わせを行う位置合わせステップ(図8、ステップS204)。
(b)トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差(Δx、Δy、Δz)を算出する誤差算出ステップ(図8、ステップS205)。
(c)三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taと、教示点MPとの法線方向での離間距離が、所定の閾値距離Tha未満となる教示点の有無を確認し、閾値距離Tha未満となる教示点が存在する場合に、かかる教示点の補正が必要であると判断する判断ステップ(図8、ステップS206)
(d)補正が必要であると判断された教示点MPの座標を、算出された誤差に基づいて補正する補正ステップ(図8、ステップS207、S208)
ここで、教示点MPは、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させる際の点検具4の移動先の座標である。
移動軌跡MLでは、複数の教示点MPが、移動軌跡MLの長手方向に並んでいる。
教示点MPは、トンネルTの設計上の三次元形状データに基づいて設定される。
教示点MPは、トンネルTの設計上の三次元形状データにより特定されるトンネルTの内周Taから、内周Taの法線方向に所定の閾値距離Tha以上離れた位置に設定される。
【0149】
このように構成すると、点検具4の移動先の座標を示す教示点のうち、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taとの離間距離が所定の閾値距離Tha未満となる教示点が補正される。
これにより、設計上の三次元形状データにより特定されるトンネルTの内周Taの形状と、実際のトンネルTの内周Taの形状との間に差異があっても、トンネルTの内周Taの点検に支障のある教示点が補正される。これにより、教示点を順番に移動する点検具4が、トンネルTの内周Taに接触することを好適に防止できる。よって、トンネルTの内周を適切に点検できる。
【0150】
(10)トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)は、トンネルT内に設置したターゲットTG(識別子)の位置情報を有している。
位置合わせステップでは、トンネルT内でターゲットTGと同じ位置に設置したリフレクタ7の位置情報を用いて、設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)との位置合わせを実施する。
リフレクタ7の位置情報は、リフレクタ7に向けて照射されたレーザ光と、リフレクタ7で反射されたレーザ光との比較により算出される。
【0151】
このように構成すると、設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)との位置合わせを精度良く行うことができる。これにより、トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差(Δx、Δy、Δz)をより正確に算出される。
よって、算出された誤差に基づいて、トンネルTの内周Taの点検に支障のある教示点を補正することで、点検具4がトンネルTの内周Taに接触することを防ぎつつ、点検具4によるトンネルTの内周Taの点検を適切に行うことができる。
【0152】
なお、本件発明は、教示点の補正用のプログラムとしても特定できる。
具体的には、
(11)教示点の補正用のプログラムは、トンネルTの内周Taを点検する際の点検具4の移動軌跡に含まれる教示点を補正するためのプログラムである。
教示点の補正用のプログラムは、コンピュータを以下の手段として機能させる。
(a)トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データ(点群データ)との位置合わせを行う位置合わせ手段(図8、ステップS204)。
(b)トンネルTの設計上の三次元形状データと、トンネルTの実際の形状を示す三次元形状データとの誤差(Δx、Δy、Δz)を算出する誤差算出手段(図8、ステップS205)。
(c)三次元形状データ(点群データ)により特定されるトンネルTの内周Taと、教示点MPとの法線方向での離間距離が、所定の閾値距離Tha未満となる教示点の有無を確認し、閾値距離Tha未満となる教示点が存在する場合に、かかる教示点の補正が必要であると判断する判断手段(図8、ステップS206)
(d)補正が必要であると判断された教示点MPの座標を、算出された誤差に基づいて補正する補正手段(図8、ステップS207、S208)
ここで、教示点MPは、点検具4をトンネルTの内周Taに沿って移動させる際の点検具4の移動先の座標である。
移動軌跡MLでは、複数の教示点MPが、移動軌跡MLの長手方向に並んでいる。
教示点MPは、トンネルTの設計上の三次元形状データに基づいて設定される。
教示点MPは、トンネルTの設計上の三次元形状データにより特定されるトンネルTの内周Taから、内周Taの法線方向に所定の閾値距離Tha以上離れた位置に設定される。
【0153】
このように構成することによっても、設計上の三次元形状データにより特定されるトンネルTの内周Taの形状と、実際のトンネルTの内周Taの形状との間に差異があっても、トンネルTの内周Taの点検に支障のある教示点が補正される。これにより、教示点を順番に移動する点検具4が、トンネルTの内周Taに接触することを好適に防止できる。よって、トンネルTの内周を適切に点検できる。
【0154】
本願発明は、上記した実施形態の態様にのみ限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更、修正などが可能である。
【符号の説明】
【0155】
1 :トンネル点検システム
2 :三次元形状データ生成装置
3 :点検装置
4 :点検具
5 :支持機構
6 :位置情報生成装置
7 :リフレクタ
21 :三次元スキャナ
22 :カメラ
31 :制御装置
51 :アーム部
60 :支持台
61 :レーザトラッカー
62 :照射部
63 :受光部
64 :位置情報算出部
65 :測定制御部
66 :アクチュエータ
71 :本体部
71a :内周面
72 :受光部
72a :表面
210 :照射部
211 :受光部
212 :制御部
213 :照射制御部
214 :距離測定部
215 :位置情報生成部
216 :三次元形状データ生成部
217 :記憶部
218 :送受信部
310 :駆動制御部
311 :位置情報取得部
312 :教示点設定部
313 :教示点補正部
317 :記憶部
318 :送受信部
323 :教示点補正部
ML :移動軌跡
MP :教示点
OBJ :測定対象物
T :トンネル
TG :ターゲット
Ta :内周
V1 :車両
V2 :車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10