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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】多糖含有ポリウレタンポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/64 20060101AFI20230704BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20230704BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20230704BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230704BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230704BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230704BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20230704BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
C08G18/64 084
C08G18/34
C08G18/50 021
C09D175/04
C09J175/04
C08L75/04
D06M15/564
C08G101:00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019503210
(86)(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 US2017042990
(87)【国際公開番号】W WO2018017789
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】62/365,411
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/371,359
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/377,707
(32)【優先日】2016-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/449,218
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ナタエル・ベハブトゥ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ピーター・レンジェス
(72)【発明者】
【氏名】ティザズゥ・エイチ・メコーネン
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン・オッパー
(72)【発明者】
【氏名】アイサ・センディジャレヴィック
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム・センディジャレヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァヒド・センディジャレヴィック
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-308827(JP,A)
【文献】特開昭63-186660(JP,A)
【文献】特開昭52-140588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0132485(US,A1)
【文献】国際公開第2015/162523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18
C09D
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンポリマーであって、
a)少なくとも1種のポリイソシアネート;
b)多糖であって、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)構造Iにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化1】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)前記化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化2】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-Cx-COOHを含む第1の基であり、前記第
1の基の前記-Cx-部分は2~18個の炭素原子の鎖を含み、
(F)前記化合物は、約0.001~約0.1の、前記第1の基による置換度を有する);または
v)構造IIIにより表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物:
【化3】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)前記エーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
を含む多糖;ならびに
c)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;
を含む、ポリウレタンポリマー。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナトトルエン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、または2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項1に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項3】
ポリオールが存在する、請求項1または2に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項4】
ポリオールが、C2~C12アルカンジオール、1,2,3-プロパントリオール、2-
ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、ポリエーテルポリオール、またはポリエステルポリオールである、請求項3に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項5】
前記ポリウレタンポリマーが少なくとも1種のヒドロキシ酸を含む少なくとも1種の第2のポリオールを更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項6】
前記第2のポリオールが、2-ヒドロキシメチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-エチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-プロピル-3-ヒドロキシプロパン酸、または酒石酸である、請求項5に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項7】
前記多糖がポリα-1,3グルカンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項8】
ポリα-1,3-グルカンが、90%以上のα-1,3-グリコシド結合を含む、請求項7に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項9】
前記多糖が構造Iにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項10】
前記多糖がポリα-1,3-1,6-グルカンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項11】
前記多糖が構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項12】
前記第1の基が、2~6個の炭素原子の鎖を含む、請求項11に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項13】
前記多糖が構造IIIにより表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項14】
前記多糖が、前記ポリウレタンポリマーの総重量を基準として約0.1重量%~約50重量%の量で前記ポリウレタンポリマー中に存在する、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項15】
更にポリエーテルアミンを含有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマー。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマーを含有するポリウレタン組成物であって、溶媒を更に含有し、前記溶媒が水、有機溶媒、またはこれらの組み合わせである、ポリウレタン組成物。
【請求項17】
前記組成物が、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、不凍剤、難燃剤、殺菌剤、防かび剤、防腐剤、ポリマー、またはポリマー分散剤から選択される1種以上の添加剤を更に含有する、請求項16に記載のポリウレタン組成物。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマーを含むポリウレタン発泡体。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマーを含む、接着剤、コーティング、フィルム、または成形物品。
【請求項20】
コーティングされた繊維質基材であって、
表面を有し、前記表面が前記表面の少なくとも一部に請求項1~15のいずれか1項に記載のポリウレタンポリマーを含有するコーティングを含む、コーティングされた繊維質基材。
【請求項21】
前記繊維質基材が、繊維、糸、布地、繊維製品、または不織布である、請求項20に記載のコーティングされた繊維質基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月22日に出願された“Polyurethane Polymers”という表題の米国仮特許出願第62/365411号;2016年8月5日に出願された“Polyurethane Polymers Comprising Polysaccharides”という表題の米国仮特許出願第62/371359号;2016年8月22日に出願された“Polyurethane Polymers Comprising Polysaccharides”という表題の米国仮特許出願第62/377707号;および2017年1月23日に出願された“Polyurethane Polymers Comprising Polysaccharides”という表題の米国仮特許出願第62/449218号に基づく優先権および利益を主張するものであり、これらそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、酵素的重合プロセスで生成した多糖および多糖誘導体を含有するポリウレタンポリマーおよびポリウレタン組成物に関する。ポリウレタンポリマーおよび組成物は、パーソナルケア製品におけるコーティング、フィルム、発泡体、接着剤として、吸水材として、または複合材料の構成要素として有用な場合がある。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタンは、重要な分類のポリマーであり、多くの産業において使用することができる。これらは、フィルム、繊維、塗料、エラストマー、シーラント、接着剤、コーキング、食品包装、絶縁体、成形品、発泡体、および他の様々な用途として有用な場合がある。
【0004】
ポリウレタンは、典型的には、2つ以上のイソシアネート基が存在するイソシアネート官能性モノマーまたはイソシアネート官能性プレポリマーと、モノマーまたはプレポリマーあたり2つ以上のヒドロキシル基が存在する1種以上のヒドロキシル官能性モノマーまたはプレポリマーとの反応生成物である。イソシアネート官能性成分およびヒドロキシル官能性成分は、典型的には、再生不可能な石油系資源由来である。
【0005】
ポリウレタンの一部を形成する1種以上の成分の新しい供給源、特には成分が再生可能な資源から製造される新しい供給源を見出すことが望まれる。
【0006】
酵素的合成、または微生物もしくは植物宿主の遺伝子組み換え技術を用いた新規な構造の多糖類を見出したいとの願いから、研究者らは、生分解性であり、再生可能な資源を主体とする原料から経済的に製造可能な多糖類を発見してきた。そのような多糖の例は、ポリα-1,3-グルカンであり、α-1,3-グリコシド結合を有することを特徴とするグルカンポリマーである。このポリマーは、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)から単離されたグルコシルトランスフェラーゼ酵素とスクロースの水溶液とを接触させることによって単離された(非特許文献1)。更に、異なる結合、一級および二級ヒドロキシルの含有率、調整された分子量、分岐および直鎖構造、ならびに結晶化度の多糖を、本明細書に記載の通りに単離および使用することができる。多糖は、ポリウレタン中で使用されるポリオール、イソシアネート、グラフトポリオール、フィラー、および添加剤などのポリウレタン配合物の成分に加えて入れるか、または代わりに使用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Simpson et al.,Microbiology 141:1451-1460,1995
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、ポリウレタンポリマーであって、
a)少なくとも1種のポリイソシアネート;
b)多糖であって、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)構造Iにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化1】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)この化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-1,3-グルカンポリマー;
v)デキストラン;
vi)構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物:
【化2】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)この化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する);
vii)構造IIIにより表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物:
【化3】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
を含む多糖;ならびに
c)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;
を含む、ポリウレタンポリマーが開示される。
【0009】
いくつかの実施形態においては、ポリイソシアネートは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナトトルエン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、またはこれらの組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの実施形態においては、ポリオールが存在し、このポリオールは、C~C12アルカンジオール、1,2,3-プロパントリオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはこれらの組み合わせである。
【0011】
いくつかの実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、d)少なくとも1種のヒドロキシ酸を含む少なくとも1種の第2のポリオールを更に含む。いくつかの実施形態においては、第2のポリオールは、2-ヒドロキシメチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-エチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-プロピル-3-ヒドロキシプロパン酸、クエン酸、酒石酸、またはこれらの組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、ポリエーテルアミンを更に含む。
【0013】
一実施形態においては、多糖はポリα-1,3-グルカンを含む。一実施形態においては、多糖はポリα-1,3-1,6-グルカンを含む。一実施形態においては、多糖は90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマーを含む。一実施形態においては、多糖はデキストランを含む。
【0014】
一実施形態においては、多糖は、構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む。
【化4】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)この化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する)。
【0015】
一実施形態においては、多糖は、構造IIによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含有する組成物を含む:
【化5】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)この化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する)。
【0016】
いくつかの実施形態においては、多糖は、構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエ-テル化合物を含む:
【化6】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する)。
【0017】
一実施形態においては、多糖は酵素的に製造された多糖を含む。
【0018】
一実施形態においては、多糖は、ポリウレタンポリマーの総重量を基準として約0.1重量%~約50重量%の範囲の量でポリウレタンポリマー中に存在する。
【0019】
また、本明細書では、ポリウレタンポリマーを含有するポリウレタン組成物であって、溶媒を更に含有するポリウレタン組成物も開示される。いくつかの実施形態においては、溶媒は水、有機溶媒、またはこれらの組み合わせである。
【0020】
いくつかの実施形態においては、ポリウレタン組成物は、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、不凍剤、難燃剤、殺菌剤、防かび剤、防腐剤、ポリマー、ポリマー分散剤、またはこれらの組み合わせのうちの1種以上である1種以上の添加剤を更に含有する。
【0021】
また別の実施形態においては、ポリウレタンポリマーを含むポリウレタン発泡体が開示される。他の実施形態においては、ポリウレタンポリマーを含む接着剤、コーティング、フィルム、および成形品が開示される。また、表面を有し、表面が表面の少なくとも一部にポリウレタンポリマーを含有するコーティングを含む、コーティングされた繊維質基材も開示される。いくつかの実施形態においては、繊維質基材は、繊維、糸、布地、繊維製品、または不織布である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において使用される用語「実施形態」または「開示」は、限定されることを意味するものではなく、請求項で定義されるまたは本明細書に記載される実施形態のいずれかに一般的に適用される。これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0023】
明記されない限り、本明細書において使用される用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つまたは複数の(すなわち、少なくとも1つの)言及される特徴を包含することを意図する。
【0024】
量、濃度、値、またはパラメータが、範囲、または上限値と下限値の列挙のいずれかとして示される場合、これは、範囲が別個に開示されているか否かに関わらず、任意の上限範囲と任意の下限範囲の任意の対から形成された全ての範囲を具体的に開示していると理解すべきである。例えば、「1~5」の範囲が列挙されている場合、列挙されている範囲は、その範囲内の任意の単一の値を含むものとして、あるいは例えば「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2および4~5」、「1~3および5」のように範囲の間に包含される任意の値を含むものとして、解釈されるべきである。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その端点ならびにその範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。
【0025】
当業者であれば、以下の詳細な説明を読むことにより、本開示の特徴および利点を更に容易に理解するであろう。明確化のため、別個の実施形態との関係において上下に記載されている本開示の特定の特徴は、単一要素中で組み合わせて提供されてもよいことを理解すべきである。反対に、簡潔にするために単一実施形態の状況で記載されている本開示の様々な特徴は、別個に、または任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。更に、文脈から具体的に別の記載がない限り、単数形についての言及は複数も含む可能性がある(例えば、「1つの」は、1つ以上を意味する可能性がある)。
【0026】
本出願に明記した様々な範囲内での数値の使用は、特に明示的に指示しない限り、規定範囲内の最小値と最大値のどちらにも用語「約」が先行するかのように近似値として記載されている。この方法で、規定範囲の上下のわずかな変動を使用しても、この範囲内の数値と実質的に同一の結果を達成することができる。同様に、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のありとあらゆる数値を含む連続範囲であることが意図されている。
【0027】
本明細書では:
用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「体積%(vol%)」、「体積/体積%(v/v%)」は、本明細書では互換的に使用される。溶液中の溶質の体積パーセントは、次の式を使用して決定することができる:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%。
【0028】
用語「重量によるパーセント」、「重量パーセンテージ(wt%)」、「重量/重量パーセンテージ(w/w%)」は、本明細書では互換的に使用される。重量パーセントとは、組成物、混合物、または溶液中に含まれる質量を基準とした物質のパーセンテージを指す。
【0029】
用語「増加(した)」、「上昇(した)」および「改良(された)」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、例えば、増加した量または活性が比較される量または活性よりも、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、または200%(または1%~200%の間の任意の整数)多い量または活性を意味し得る。
【0030】
用語「非水溶性」は、例えばα-(1,3-グルカン)ポリマーなどの物質が、23℃の100ミリリットルの水に5g未満溶解することを意味する。他の実施形態では、非水溶性は、23℃の水に4g未満または3g未満または2g未満または1g未満の物質が溶解することを意味する。
【0031】
用語「ポリウレタン」または「ポリウレタンポリマー」は、2つ以上のウレタン(-N(H)-C(O)-)結合を有するポリマーを意味する。ポリウレタンの構造は複雑な場合があるため、本明細書に記載のポリウレタンは、ポリウレタンを形成するために使用される様々なモノマーに関して説明される。
【0032】
用語「脂肪族イソシアネート」は、イソシアネート基(-NCO)がsp混成を有する炭素に結合しているイソシアネート官能性分子を意味する。対照的に、「芳香族イソシアネート」は、イソシアネート基がsp混成を有する炭素原子に結合しているイソシアネート官能性分子である。
【0033】
用語「ポリイソシアネート」は、二官能以上のイソシアネートと定義され、この用語にはオリゴマーが含まれる。主に2つ以上のイソシアネート基を有する任意のポリイソシアネートが、本明細書に開示のポリウレタンポリマーの合成での使用に適している。
【0034】
本明細書で使用される用語「多糖」は、グリコシド結合によって一体に結合された単糖単位の長い鎖からなり、加水分解すると構成単糖またはオリゴ糖を与える高分子炭水化物分子を意味する。
【0035】
本明細書で使用される用語「布地」は、繊維または糸の多層構造を指す。
【0036】
本明細書で使用される用語「繊維」は、その長さ寸法が幅および厚さの横断寸法よりもはるかに大きい細長い物体を指す。したがって、繊維という用語には、規則的または不規則な断面を有するモノフィラメント繊維、マルチフィラメント繊維、リボン、ストリップ、複数のこれらの任意の1つまたは組み合わせなどが含まれる。
【0037】
本明細書で使用される用語「糸」は、繊維の連続ストランドを指す。
【0038】
本明細書で使用される用語「繊維製品」は、製品が元の布地の特徴的な柔軟性および風合いを保持する場合の、繊維、糸、または布地から製造された衣類および他の物品を指す。
【0039】
本開示は、ポリウレタンポリマーであって、
a)少なくとも1種のポリイソシアネート;
b)多糖であって、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)構造Iにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化7】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)この化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;
v)デキストラン;
vi)構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化8】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C>-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)この化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する);または
vii)構造IIIにより表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物:
【化9】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
を含む多糖;ならびに、
c)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;
を含むかこれらから本質的になる、ポリウレタンポリマーに関する。
【0040】
他の実施形態においては、ポリウレタンポリマーは1種以上のアミンおよび/または1種以上のヒドロキシ酸を更に含んでいてもよい。
【0041】
少なくとも1種のポリイソシアネートは、任意の公知のポリイソシアネートであってもよい。例えば、ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、または芳香族基と脂肪族基の両方を有するポリイソシアネートであってもよい。ポリイソシアネートの例としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-および2,6-のトルエンジイソシアネートの混合物、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナトトルエン、ビス(3-イソシアナトフェニル)メタン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、1,3-ジイソシアナト-o-キシレン、1,3-ジイソシアナト-p-キシレン、1,3-ジイソシアナト-m-キシレン、2,4-ジイソシアナト-1-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、2,5-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、m-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1-メトキシ-2,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。例えばアロファネート、ビウレット、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、またはカルボジイミド基を含むポリイソシアネートなどの、ポリイソシアネートのホモポリマーも有用である。
【0042】
多糖は、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)構造Iにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化10】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)この化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3→グルカン)ポリマー;または
v)デキストラン;
vi)構造IIにより表されるポリポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化11】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)このエステル化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する)。
vii)構造IIIにより表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物:
【化12】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
を含む。
【0043】
これらの多糖の混合物も使用することができる。一実施形態においては、多糖は、約0.05~約3.0の置換度を有するポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む。
【0044】
いくつかの実施形態においては、多糖はポリウレタンポリマーの形成においてポリオールとして反応する。理論に拘束されるものではないが、ポリウレタンポリマー内では、多糖はポリオール(反応性フィラー)として、非反応性フィラーとして、またはその両方として機能することができると考えられる。多糖が反応性または非反応性のフィラーとして機能できる程度は、多糖の溶解性、および多糖とポリイソシアネートと他のポリオール(存在する場合)との相対的な量に関係すると考えられる。
【0045】
一実施形態においては、多糖はポリα-1,3-グルカンを含む。用語「ポリα-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカンポリマー」、および「グルカンポリマー」は、本明細書においては互換的に使用される。本明細書における用語「グルカン」は、グリコシド結合によって連結されたD-グルコースモノマーの多糖を指す。ポリα-1,3-グルカンは、少なくとも50%のグリコシド結合がα-1,3-グルカン結合である、グリコシド結合によって一体に連結したグルコースモノマー単位を含むポリマーである。ポリα-1,3-グルカンは、多糖の1種である。ポリα-1,3-グルカンの構造は、以下のように示すことができる:
【化13】
【0046】
ポリα-1,3-グルカンは、化学的方法を用いて合成することができ、またはこれはポリα-1,3-グルカンを産生する真菌などの様々な有機体から抽出することによって合成することができる。あるいは、ポリα-1,3-グルカンは、例えば米国特許第7,000,000号明細書、同第8,642,757号明細書、および同第9,080,195号明細書に記載されている通りに、1種以上のグルコシルトランスフェラーゼ(gtf)酵素を用いてスクロースから酵素的に製造することができる。これらの中で示されている手順を使用することで、ポリマーは、組み換えグルコシルトランスフェラーゼ酵素、例えば触媒としてのgtfJ酵素および基質としてのスクロースを使用して、一段階酵素反応で直接製造される。ポリα-1,3-グルカンは、副生成物としてのフルクトースを用いて製造される。反応が進行するにつれて、ポリα-1,3-グルカンは溶液から析出する。
【0047】
例えば、グルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いてスクロースからポリα-1,3-グルカンを製造する方法により、水中のポリα-1,3-グルカンのスラリーを得ることができる。スラリーをろ過して水の一部を除去することで、30~50重量パーセントの範囲のポリα-1,3-グルカンを含有し残部が水であるウェットケーキとして、固体のポリα-1,3-グルカンを得ることができる。いくつかの実施形態においては、ウェットケーキは、35~45重量パーセントの範囲のポリα-1,3-グルカンを含む。ウェットケーキを水で洗浄することで、例えばスクロース、フルクトース、またはリン酸緩衝液などの全ての水溶性不純物を除去することができる。いくつかの実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンを含むウェットケーキはそのまま使用することができる。他の実施形態においては、ウェットケーキを、減圧下、高温で、凍結乾燥により、またはこれらの組み合わせにより、更に乾燥させることで、50重量パーセント以上のポリα-1,3-グルカンを含む粉末を得ることができる。いくつかの実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンは、20重量パーセント以下の水を含む粉末であってもよい。他の実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンは、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1重量パーセント以下の水を含む乾燥粉末であってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態においては、α-1,3である、ポリα-1,3-グルカンのグルコースモノマー単位間のグリコシド結合のパーセンテージは、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%(または50%~100%の任意の整数値)である。したがって、このような実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンは、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、または0%の(または0%~50%の任意の整数値)の、α-1,3でないグリコシド結合を有する。
【0049】
用語「グリコシド結合」および「グリコシド結合」は、本明細書において互換的に使用され、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物等の別の基に結合させる共有結合のタイプを指す。本明細書において使用される用語「α-1,3-グリコシド結合」は、隣接するα-Dグルコース環の1位および3位の炭素を介してα-D-グルコース分子を相互に結合する共有結合のタイプを指す。この結合は、上述のポリα-1,3-グルカンの構造において例示される。本明細書では、「α-D-グルコース」を「グルコース」と呼ぶ。本明細書で開示する全てのグリコシド結合は、別段の記載がない限り、α-グリコシド結合である。
【0050】
ポリα-1,3-グルカンは、少なくとも約400の重量平均重合度(DPw)を有し得る。いくつかの実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンは、約400~約1400、または約400~約1000、または約500~約900のDPwを有する。
【0051】
ポリα-1,3-グルカンは、例えば5重量%未満または水を含有する乾燥粉末として使用することができ、あるいは他の実施形態では、ポリα-1,3-グルカンは5重量%超の水を含有するウェットケーキを使用することができる。
【0052】
一実施形態においては、多糖は90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマーを含む。
【0053】
語句「α-(1,3-グルカン)ポリマー」は、グリコシド結合により一体に連結したグルコースモノマー単位を含む多糖であって、少なくとも約50%のグリコシド結合が、α-1,3-グリコシド結合である多糖を意味する。他の実施形態においては、α-1,3-グリコシド結合のパーセンテージは、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%(または50%~100%の任意の整数値)であってもよい。したがって、α-(1,3→グルカン)ポリマーは、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下または0%のα-1,3-グリコシド結合ではないグリコシド結合を含む。α-(1,3→グルカン)ポリマーは、55~10,000の範囲の数平均重合度も有する。
【0054】
一実施形態においては、多糖は、約0.05~約3.0の置換度を有するポリα-1,3-グルカンエステル化合物である。一実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、構造Iによって表すことができる:
【化14】

(式中、
(A)nは少なくとも6であってもよく;
(B)各Rは、独立して水素原子(H)またはアシル基であってもよく;
(C)このエステル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する)。本明細書に開示のポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、合成の人工化合物である。ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、米国特許第9,278,988号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている通り、実質的に無水の反応において、ポリα-1,3-グルカンを、少なくとも1種の酸触媒と、少なくとも1種の酸無水物と、少なくとも1種の有機酸とに接触させることにより合成することができる。この接触工程において、酸無水物由来のアシル基がポリα-1,3-グルカンにエステル化され、それによりポリα-1,3-グルカンエステル化合物が生成する。
【0055】
本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を製造するために使用されるポリα-1,3-グルカンは、好ましくは直鎖/非分岐である。特定の実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンは、分岐点を全く有さないか、またはポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の分岐点を有する。分岐点の例には、ムタンポリマーの中に存在するものなどのα-1,6分岐点が含まれる。
【0056】
本明細書のポリα-1,3-グルカンエステル化合物を合成するために使用されるポリα-1,3-グルカンのMまたはMは、少なくとも約500~約300000であってもよい。あるいは、MまたはMは、例えば、少なくとも約10000、25000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、225000、250000、275000、または300000(または10000~300000の任意の整数)であってもよい。
【0057】
用語「ポリα-1,3-グルカンエステル化合物」、「ポリα-1,3-グルカンエステル」、および「ポリα-1,3-グルカンエステル誘導体」は、本明細書においては互換的に使用される。ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、部分構造-C-O-CO-C-を含むことに基づいて、本明細書において「エステル」と称され、この中の「-C-」は、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の2、4、または6位の炭素を表し、「-CO-C-」はアシル基に含まれる。
【0058】
本明細書における「アシル基」の基は、例えばアセチル基(-CO-CH)、プロピオニル基(-CO-CH-CH)、ブチリル基(-CO-CH-CH-CH)、ペンタノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH)、ヘキサノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH-CH)、ヘプタノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH)、またはオクタノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH)であってもよい。アシル基のカルボニル基(CO)は、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の2、4、または6位の炭素にエステル結合している。
【0059】
本明細書に開示の特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、1つの種類のアシル基を含んでいてもよい。例えば、上の式の中のグルコース基にエステル結合した1つ以上のR基はプロピオニル基であってもよく;この具体的な例におけるR基は、結果として独立して水素およびプロピオニル基となるであろう。別の例として、上の式の中のグルコース基にエステル結合した1つ以上のR基はアセチル基であってもよく;この具体的な例におけるR基は、結果として独立して水素およびアセチル基となるであろう。本明細書のポリα-1,3-グルカンエステル化合物の特定の実施形態は、2.75以上のアセチル基によるDoSを有さない。
【0060】
あるいは、本明細書に開示のポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、2つ以上の異なる種類のアシル基を含むことができる。そのような化合物の例は、(i)アセチル基およびプロピオニル基(ポリα-1,3-グルカンアセテートプロピオネート、この中のR基は独立してH、アセチル、またはプロピオニルである)、または(ii)アセチル基およびブチリル基(ポリα-1,3-グルカンアセテートブチレート、この中のR基は独立してH、アセチル、またはブチリルである)などの、2つの異なるアセチル基を含む。
【0061】
命名法に関し、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、本明細書では化合物中のアシル基に対応する有機酸を引用することにより言及することができる。例えば、アセチル基を含むエステル化合物はポリα-1,3-グルカンアセテートと呼ぶことができ、プロピオニル基を含むエステル化合物はポリα-1,3-グルカンプロピオネートと呼ぶことができ、ブチリル基を含むエステル化合物はポリα-1,3-グルカンブチレートと呼ぶことができる。しかしながら、この命名法は、本明細書において酸自体としてのポリα-1,3-グルカンエステル化合物を指すことを意味するものではない。
【0062】
本明細書において、「ポリα-1,3-グルカントリアセテート」とは、アセチル基による置換度が2.75以上のポリα-1,3-グルカンエステル化合物を指す。
【0063】
用語「ポリα-1,3-グルカンモノエステル」および「モノエステル」は、本明細書においては互換的に使用される。ポリα-1,3-グルカンモノエステルは、1種類のみのアシル基を含む。そのようなモノエステルの例は、ポリα-1,3-グルカンアセテート(アセチル基を含む)およびポリα-1,3-グルカンプロピオネート(プロピオニル基を含む)である。
【0064】
用語「ポリα-1,3-グルカン混合エステル」および「混合エステル」は、本明細書においては互換的に使用される。ポリα-1,3-グルカン混合エステルは、2つ以上の種類のアシル基を含む。そのような混合エステルの例は、ポリα-1,3-グルカンアセテートプロピオネート(アセチル基およびプロピオニル基を含む)およびポリα-1,3-グルカンアセテートブチレート(アセチル基およびブチリル基を含む)である。
【0065】
用語「有機酸」および「カルボン酸」は、本明細書では互換的に使用される。有機酸は式R-COOHを有し、式中のRは有機基であり、COOHはカルボキシル基である。本明細書におけるR基は、典型的には飽和の直鎖炭素鎖(最大7個の炭素原子)である。有機酸の例は、酢酸(CH-COOH)、プロピオン酸(CH-CH-COOH)、および酪酸(CH-CH-CH-COOH)である。
【0066】
本明細書におけるポリα-1,3-グルカンおよびポリα-1,3-グルカンエステル化合物の「分子量」は、数平均分子量(M)としてまたは重量平均分子量(M)として表すことができる。あるいは、分子量は、ダルトン、グラム/モル、DPw(重量平均重合度)、またはDPn(数平均重合度)として表すこともできる。これらの分子量の大きさを計算するために、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、またはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手法が当該技術分野で公知である。
【0067】
ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.05~約3.0の置換度(DoS)を有する。本明細書で使用する用語「置換度」(DoS)は、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物の各モノマー単位中の置換されたヒドロキシル基の平均数を指す。ポリα-1,3-グルカンの中の各モノマー単位に3つのヒドロキシル基が存在するため、本明細書のポリα-1,3-グルカンエステル化合物におけるDoSは3以下とすることができる。あるいは、本明細書に開示のポリα-1,3-グルカンエステル化合物のDoSは約0.2~約2.0であってもよい。あるいは更に、DoSは、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0であってよい。本明細書に開示のポリα-1,3-グルカンエステル化合物は約0.05~約3.0の置換度を有するため、化合物のR基は水素のみにはなり得ないことを当業者ならば理解するであろう。
【0068】
DoS値に言及する代わりに、本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物中の1つ以上のアシル基の重量%に言及することができる。例えば、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物中のアシル基の重量%は、少なくとも約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%であってよい。
【0069】
ポリα-1,3-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位間のα-1,3であるグリコシド結合のパーセンテージは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(または50%~100%の任意の整数)である。したがって、このような実施形態においては、化合物は、約50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または0%(または0%~50%の任意の整数値)の、α-1,3ではないグリコシド結合を有する。
【0070】
本明細書に開示のポリα-1,3-グルカンエステル化合物の主鎖は、好ましくは直鎖/非分岐である。特定の実施形態においては、化合物は、分岐点を全く有さないか、またはポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の分岐点を有する。分岐点の例は、α-1,6分岐点を含む。
【0071】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の式は、少なくとも6のn値を有することができる。あるいは、nは、少なくとも10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、または4000(または10~4000の任意の整数)の値を有することができる。
【0072】
本明細書に開示されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の分子量は、数平均分子量(M)としてまたは重量平均分子量(M)として測定することができる。あるいは、分子量は、ダルトンまたはグラム/モルで測定することができる。これは、化合物のポリα-1,3-グルカンポリマー成分のDP(重量平均重合度)またはDP(数平均重合度)を言及するためにも有用な場合がある。
【0073】
本明細書に開示のポリα-1,3グルカンエステル化合物のMまたはMは、少なくとも約1000であってもよい。あるいは、MまたはMは、少なくとも約1000~約600000であってもよい。あるいは更に、MまたはMは、例えば、少なくとも約10000、25000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、225000、250000、275000、もしくは300000(または10000~300000の任意の整数)であってもよい。
【0074】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステルは、最大約2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、または3.00の、アセチル基によるDoSを有することができる。そのため、例えばアセチル基によるDoSは、最大約2.00~2.40、2.00~2.50、または2.00~2.65であってもよい。別の例として、アセチル基によるDoSは、約0.05~約2.60、約0.05~約2.70、約1.2~約2.60、または約1.2~約2.70であってもよい。そのようなポリα-1,3-グルカンエステルは、モノエステルであっても混合エステルであってもよい。
【0075】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステルは、最大約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、または55%のプロピオニル基の重量%を有し得る。そのようなポリα-1,3-グルカンエステルは、モノエステルであっても混合エステルであってもよい。混合エステルに関し、ポリα-1,3-グルカンアセテートプロピオネートは、例えば最大約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%のアセチル基の重量%と、上に列挙したプロピオニルの重量%のいずれかの通りのプロピオニル基の重量%とを有していてもよい。
【0076】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステルは、最大約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のブチリル基の重量%を有し得る。他の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステルは、最大約0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、または1.20の、ブチリル基によるDoSを有し得る。そのようなポリα-1,3-グルカンエステルは、モノエステルであっても混合エステルであってもよい。混合エステルに関し、ポリα-1,3-グルカンアセテートブチレートは、例えば最大約0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、または36%のアセチル基の重量%と、上に列挙したブチリル基の重量%のいずれかの通りのブチリル基の重量%とを有していてもよい。
【0077】
ポリα-1,3-グルカンエステル生成物の構造、分子量、およびDoSは、NMR分光法およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当該技術分野で公知の様々の生理化学的解析法を使用して確認することができる。
【0078】
一実施形態においては、多糖はポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含み、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、ポリα-1,3-グルカンアセテートプロピオネート;ポリα-1,3-グルカンアセテートブチレート;ポリα-1,3-グルカンアセテート;またはこれらの混合物である。一実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、ポリα-1,3-グルカンアセテートプロピオネートである。一実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、ポリα-1,3-グルカンアセテートブチレートである。一実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、ポリα-1,3-グルカンアセテートである。
【0079】
一実施形態においては、多糖はポリα-1,3-1,6-グルカンである。一実施形態においては、多糖はポリα-1,3-1,6-グルカンを含み、(i)ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,3-結合であり、(ii)ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,6結合であり、(iii)ポリα-1,3-1,6-グルカンは、少なくとも1000の重量平均重合度(DP)を有し、(iv)ポリα-1,3-1,6-グルカンのα-1,3結合およびα-1,6結合が互いに連続して交互にはならない。別の実施形態においては、ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも60%がα-1,6結合である。本明細書において使用される用語「α-1,6-グリコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環の1位および6位の炭素を介してα-D-グルコース分子を相互に結合する共有結合を指す。
【0080】
ポリα-1,3-1,6-グルカンは、米国特許出願公開第2015/0232785A1号明細書の中で開示されている通りの、グルコシルトランスフェラーゼ酵素の産生物である。
【0081】
本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の形態は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して決定することができる。例えば、結合の形態は、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば13C NMRまたはH NMR)を使用する方法を用いて決定することができる。使用することができるこれらの方法や他の方法は、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui.Ed,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
用語「ポリα-1,3-1,6-グルカン」、「α-1,3-1,6-グルカンポリマー」、および「ポリ(α-1,3)(α-1,6)グルカン」は、本明細書では互換的に使用される(これらの用語における結合の記号「1,3」および「1,6」の順序は重要でないことに留意されたい)。本明細書におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、グリコシド結合によって一体に連結した(すなわちグルコシド結合)グルコースモノマー単位を含むポリマーであって、グリコシド結合の少なくとも約30%がα-1,3-グリコシド結合であり、グリコシド結合の少なくとも30%がα-1,6-グリコシド結合であるポリマーである。ポリα-1,3-1,6-グルカンは、混合グリコシド結合成分を含有する多糖の種類である。本明細書の一実施形態では、用語ポリα-1,3-1,6-グルカンの意味から「アルテルナン」が除外される。これは、互いに連続的に交互するα-1,3結合とα-1,6結合とを含有するグルカンである(米国特許第5702942号明細書、米国特許出願公開第2006/0127328号明細書)。互いに「連続的に交互の」α-1,3結合およびα-1,6結合は、例えば…G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-…と視覚的に表すことができ、この中のGはグルコースを表す。
【0083】
ポリウレタンポリマーの中で有用なポリα-1,3-1,6-グルカンの「分子量」は、数平均分子量(M)または重量平均分子量(M)として表すことができる。または、分子量は、ダルトン、グラム/モル、DP(重量平均重合度)、またはDP(数平均重合度)として表すことができる。これらの分子量の大きさを計算するために、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、またはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手法が当該技術分野で公知である。
【0084】
本明細書における用語「ポリα-1,3-1,6-グルカンウェットケーキ」は、スラリーから分離されて、水または水溶液で洗浄されたポリα-1,3-1,6-グルカンを指す。ウェットケーキを作製する場合、ポリα-1,3-1,6-グルカンは完全には乾燥されない。
【0085】
本明細書において、「水性組成物」は、溶媒が例えば少なくとも約20重量%の水であり、例えばポリα-1,3-1,6-グルカンを含む溶液または混合物を指す。本明細書の水性組成物の例は、水溶液および親水コロイドである。
【0086】
用語「親水コロイド」および「ハイドロゲル」、本明細書では、互換的に使用される。親水コロイドは、水が分散媒であるコロイド系を意味する。本明細書の「コロイド」は、また別の物質全体に微視的に分散している物質を意味する。そのため、本明細書における親水コロイドは、水または水溶液の中のポリα-1,3-1,6-グルカンの、分散液、エマルジョン、混合物、または溶液も意味し得る。
【0087】
本明細書の用語「水溶液」は、溶媒が水である溶液を意味する。ポリα-1,3-1,6-グルカンは、水溶液の中に分散、混合、および/または溶解されていてもよい。水溶液は、本明細書の親水コロイドの分散媒として機能することができる。
【0088】
いくつかの実施形態においては:
(i)ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,3結合であり、
(ii)ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,6結合であり、
(iii)ポリα-1,3-1,6-グルカンは、少なくとも1000の重量平均重合度(DP)を有し、
(iv)ポリα-1,3-1,6-グルカンのα-1,3結合およびα-1,6結合は互いに連続的に交互しない。
【0089】
ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,3結合であり、ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,6結合である。あるいは、本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカン中のα-1,3結合のパーセンテージは、少なくとも31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、または64%であってもよい。あるいは更に、本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカン中のα-1,6結合のパーセンテージは、少なくとも31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、または69%であってもよい。
【0090】
ポリα-1,3-1,6-グルカンは、パーセンテージの合計が100%を超えない限り、α-1,3結合の前述のパーセンテージのいずれか1つとα-1,6結合の前述のパーセンテージのいずれか1つとを有することができる。例えば、本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンは、パーセンテージの合計が100%を超えない限り、(i)30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%(30%~40%)のいずれか1つのα-1,3結合と、(ii)60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、または69%(60%~69%)のいずれか1つのα-1,6結合とを有することができる。非限定的な例としては、31%のα-1,3結合と67%のα-1,6結合とを有するポリα-1,3-1,6-グルカンが挙げられる。特定の実施形態においては、ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも60%がα-1,6結合である。
【0091】
ポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満のα-1,3およびα-1,6以外のグリコシド結合を有し得る。別の実施形態においては、ポリα-1,3-1,6-グルカンはα-1,3結合およびα-1,6結合のみを有する。
【0092】
α-1,3およびα-1,6結合形態の他の例およびこれらの製品のための方法は、米国特許出願公開第2015/0232785号明細書に開示されている。米国特許出願公開第2015/0232785号明細書に開示されているような様々なGtf酵素によって産生されるグルカンの結合およびDPwは、以下の「結合」表に列挙されている。
【0093】
【表1】
【0094】
本明細書に開示のポリα-1,3-1,6-グルカンの主鎖は、直鎖/非分岐であってもよい。あるいは、ポリα-1,3-1,6-グルカンに分岐が存在してもよい。そのため、特定の実施形態におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、分岐点を有さないか、約30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の分岐点をポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして有し得る。
【0095】
ポリα-1,3-1,6-グルカンのα-1,3結合およびα-1,6結合は互いに連続的に交互しない。以下の検討のためには、…G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-…(Gはグルコースを表す)は、α-1,3結合およびα-1,6結合が連続して交互することにより連結された6つのグルコースモノマー単位の広がりを表すとみなされる。本明細書の特定の実施形態におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、交互のα-1,3結合およびα-1,6結合により連続的に連結された、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の数未満のグルコースモノマー単位を含む。
【0096】
ポリα-1,3-1,6-グルカンの分子量は、DP(重量平均重合度)またはDP(数平均重合度)として測定することができる。あるいは、分子量は、ダルトンまたはグラム/モルで測定することができる。ポリα-1,3-1,6-グルカンの数平均分子量(M)または重量平均分子量(M)に言及することが有用な場合もある。
【0097】
ポリウレタンポリマーの中で有用なポリα-1,3-1,6-グルカンは、少なくとも約1000のDPを有し得る。例えば、ポリα-1,3-1,6-グルカンのDPは少なくとも約10000であってもよい。あるいは、DPは少なくとも約1000~15000であってもよい。あるいは更に、DPは、例えば、少なくとも約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、または15000(または1000~15000の任意の整数)であってもよい。本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンが少なくとも約1000のDPを有することができるとすると、そのようなグルカンポリマーは典型的には非水溶性である。
【0098】
ポリウレタンポリマーの中で有用なポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば、少なくとも約50000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、1100000、1200000、1300000、1400000、1500000、または1600000(または50000~1600000の任意の整数)のMを有し得る。特定の実施形態におけるMは、少なくとも約1000000である。あるいは、ポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば少なくとも約4000、5000、10000、20000、30000、または40000のMを有し得る。
【0099】
本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば少なくとも20個のグルコースモノマー単位を含み得る。あるいは、グルコースモノマー単位の数は、例えば、少なくとも25、50、100、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、または9000(または10~9000の任意の整数)であってもよい。
【0100】
本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば乾燥時には粉末の形態で、あるいは濡れている場合にはペースト、コロイド、または他の分散液の形態で、提供することができる。
【0101】
いくつかの実施形態においては、ポリウレタンポリマーの中で有用な多糖にはデキストランが含まれる。一実施形態においては、デキストランは、
(i)87~93%のα-1,6グリコシド結合;
(ii)0.1~1.2%のα-1,3-グリコシド結合;
(iii)0.1~0.7%のα-1,4-グリコシド結合;
(iv)7.7~8.6%のα-1,3,6-グリコシド結合;
(v)0.4~1.7%のα-1,2,6-グリコシド結合またはα-1,4,6-グリコシド結合;
を含み、デキストランの重量平均分子量(Mw)は約5,000万~2億ダルトンであり、デキストランのz平均回転半径は約200~280nmである。任意選択的には、デキストランは、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)グルコシルトランスフェラーゼ酵素の産生物ではない。他の実施形態では、コーティング組成物は、(i)1位および6位で結合した約89.5~90.5重量%のグルコース;(ii)1位および3位で結合した約0.4~0.9重量%のグルコース;(iii)1位および4位で結合した約0.3~0.5重量%のグルコース;(iv)1位、3位、および6位で結合した約8.0~8.3重量%のグルコース;および(v)(a)1位、2位、および6位、または(b)1位、4位、および6位で結合した約0.7~1.4重量%のグルコース;を有するデキストランポリマーから本質的になる。
【0102】
用語「デキストラン」、「デキストランポリマー」、および「デキストラン化合物」は、本明細書では互換的に使用され、主としてα-1,3-結合によって結合された側鎖(分岐)を備える、実質的に(大部分が)α-1,6-結合グルコースモノマーの鎖を概して含む複雑な分岐α-グルカンを意味する。本明細書における用語「ゲル化デキストラン」は、本明細書に開示の1種以上のデキストランが、(i)酵素的デキストランの合成中に、および任意選択的に、(ii)そのように合成されたデキストランが単離され(例えば、>90%純粋)、その後水性組成物中に入れられた場合に、粘性溶液もしくはゲル様組成物を形成する能力に関する。
【0103】
本明細書のデキストラン「長鎖」は、「実質的に[もしくは大部分が]α-1,6-グリコシド結合」を含む可能性があるが、これは一部の態様ではそれらが少なくとも約98.0%のα-1,6-グリコシド結合を有し得ることを意味する。本明細書のデキストランは、一部の態様では、「分岐鎖構造」(分岐状構造)を含み得る。この構造内では、長鎖は、おそらく反復形式で、他の長鎖から分岐する(例えば、長鎖は他の長鎖からの分岐鎖であってもよく、これは今度はその分岐鎖自体が他の長鎖からの分岐鎖であってもよい、など)ことが企図されている。この構造内の長鎖は、分岐鎖構造内の全長鎖の少なくとも70%の長さ(DP[重合度])が分岐鎖構造の全長鎖の平均長の±30%内であることを意味する「長さが類似」であってよいことが企図されている。
【0104】
一部の実施形態におけるデキストランは、典型的には長さが1~3つのグルコースモノマーであり、デキストランポリマーの全グルコースモノマーの約10%未満を含む、長鎖から分岐している「短鎖」を更に含み得る。そのような短鎖は、典型的にはα-1,2-、α-1,3-および/またはα-1,4-グリコシド結合を含む(一部の態様では、長鎖内に少ないパーセンテージのそのような非α-1,6結合も存在し得ると考えられる)。
【0105】
デキストランの「分子量」は、数平均分子量(Mn)または重量平均分子量(Mw)として表すことができ、それらの単位はダルトンもしくはグラム/モルである。あるいは、分子量は、DPw(重量平均重合度)またはDPn(数平均重合度)として表すことができる。これらの分子量の大きさを計算するために、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、またはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手法が当該技術分野で公知である。
【0106】
本明細書における用語「回転半径」(Rg)は、デキストランの平均半径を意味し、分子の重心からデキストラン分子の成分(原子)の二乗平均平方根距離として計算される。Rgは、例えば、オングストロームまたはナノメートル(nm)単位で表示することができる。本明細書のデキストランの「z平均回転半径」は、光散乱法(例えばMALS)を使用して測定されるデキストランのRgを意味する。z平均Rgを測定するための方法は公知であり、本明細書で適宜に使用できる。例えば、z平均Rgは、米国特許第7531073号明細書、米国特許出願公開第2010/0003515号明細書および米国特許出願公開第2009/0046274号明細書、Wyatt(Anal. Chim.Acta 272:1-40)、ならびにMoriおよびBarth(Size Exclusion Chromatography,Springer-Verlag,Berlin,1999)に開示される通りに測定でき、それらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
デキストランポリマーは、米国特許出願公開第2016/0122445A1号明細書に記載されているアミノ酸配列を含むグルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いた酵素的プロセスによって製造することができる。いくつかの実施形態においては、デキストランは、(i)1位および6位のみで結合した約87~93重量%のグルコース;(ii)1位および3位のみで結合した約0.1~1.2重量%のグルコース;(iii)1位および4位のみで結合した約0.1~0.7重量%のグルコース;(iv)1位、3位、および6位のみで結合した約7.7~8.6重量%のグルコース;ならびに(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位のみで結合した約0.4~1.7重量%のグルコース;を含み得る。特定の実施形態においては、デキストランは、(i)1位および6位でのみ連結した約89.5~90.5重量%のグルコース;(ii)1位および3位でのみ連結した約0.4~0.9重量%のグルコース;(iii)1位および4位でのみ連結した約0.3~0.5重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位でのみ連結した約8.0~8.3重量%のグルコース;ならびに(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位でのみ連結した約0.7~1.4重量%のグルコース;を含み得る。
【0108】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位および6位でのみ結合した約87、87.5、88、88.5、89、89.5、90、90,5、91、91.5、92、92.5、もしくは93重量%のグルコースを含み得る。いくつかの例では、1位および6位でのみ連結した約87~92.5、87~92、87~91.5、87~91、87~90.5、87~90、87.5~92.5、87.5~92、87.5~91.5、87.5~91、87.5~90.5、87.5~90、88~92.5、88~92、88~91.5、88~91、88~90.5、88~90、88.5~92.5、88.5~92、88.5~91.5、88.5~91、88.5~90.5、88.5~90、89~92.5、89~92、89~91.5、89~91、89~90.5、89~90、89.5~92.5、89.5~92、89.5~91.5、89.5~91、もしくは89.5~90.5重量%のグルコースが存在し得る。
【0109】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位および3位でのみ結合した約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1もしくは1.2重量%のグルコースを含み得る。いくつかの例では、1位および3位でのみ連結した約0.1~1.2、0.1~1.0、0.1~0.8、0.3~1.2、0.3~1.0、0.3~0.8、0.4~1.2、0.4~1.0、0.4~0.8、0.5~1.2、0.5~1.0、0.5~0.8、0.6~1.2、0.6~1.0、もしくは0.6~0.8重量%のグルコースが存在し得る。
【0110】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位および4位でのみ結合した約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、もしくは0.7重量%のグルコースを含み得る。いくつかの例では、1位および4位でのみ連結した約0.1~0.7、0.1~0.6、0.1~0.5、0.1~0.4、0.2~0.7、0.2~0.6、0.2~0.5、0.2~0.4、0.3~0.7、0.3~0.6、0.3~0.5、もしくは約0.3~0.4重量%のグルコースが存在し得る。
【0111】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、1位、3位および6位でのみ結合した約7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、もしくは8.6重量%のグルコースを含み得る。一部の例では、1位、3位および6位でのみ結合した約7.7~8.6、7.7~8.5、7.7~8.4、7.7~8.3、7.7~8.2、7.8~8.6、7.8~8.5、7.8~8.4、7.8~8.3、7.8~8.2、7.9~8.6、7.9~8.5、7.9~8.4、7.9~8.3、7.9~8.2、8.0~8.6、8.0~8.5、8.0~8.4、8.0~8.3、8.0~8.2、8.1~8.6、8.1~8.5、8.1~8.1、8.1~8.3もしくは8.1~8.2重量%のグルコースが存在し得る。
【0112】
他の実施形態では、デキストランポリマーは、(a)1位、2位および6位または(b)1位、4位および6位でのみ結合した、約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、もしくは1.7重量%のグルコースを含み得る。いくつかの例では、(a)1位、2位および6位または(b)1位、4位および6位でのみ連結した約0.4~1.7、0.4~1.6、0.4~1.5、0.4~1.4、0.4~1.3、0.5~1.7、0.5~1.6、0.5~1.5、0.5~1.4、0.5~1.3、0.6~1.7、0.6~1.6、0.6~1.5、0.6~1.4、0.6~1.3、0.7~1.7、0.7~1.6、0.7~1.5、0.7~1.4、0.7~1.3、0.8~1.7、0.8~1.6、0.8~1.5、0.8~1.4、0.8~1.3重量%のグルコースが存在し得る。
【0113】
本明細書のデキストランは、互いから反復して分岐する長鎖(大多数または全てのα-1,6-結合を含む)が存在する分岐構造(例えば、長鎖は他の長鎖からの分岐であってもよく、これは今度はその分岐鎖自体が他の長鎖からの分岐であってもよい、など)である場合があると考えられる。分岐構造は長鎖からの短い分岐も含んでいてよい;これらの短鎖は、大部分が例えばα-1,3および-1,4結合を含むと考えられる。デキストラン中の分岐点は、他の長鎖から分岐した長鎖からであろうと、長鎖から分岐した短鎖からであろうと、α-1,6-結合内に含まれるグルコースからのα-1,3、-1,4、または-1,2結合を含むと思われる。平均すると、いくつかの実施形態においては、デキストランの全分岐点の約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~35%、20~30%、20~25%、25~35%、または25~30%が長鎖に分岐する。大部分(>98%もしくは99%)または全部の他の分岐点が、短鎖に分岐する。
【0114】
デキストラン分岐構造の長鎖は、一部の態様では長さが類似していてもよい。長さが類似であるとは、分岐構造内の全ての長鎖の少なくとも70%、75%、80%、85%、または90%の長さ(DP)が、分岐構造の全ての長鎖の平均長の±15%(または10%、5%)の範囲内にあることを意味する。いくつかの態様では、長鎖の平均(mean)長(平均(average)長)は、約10~50DP(すなわち、10~50グルコースモノマー)である。例えば、長鎖の平均個別長は、約10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、10~50、10~40、10~30、10~25、10~20、15~50、15~40、15~30、15~25、15~20、20~50、20~40、20~30、もしくは20~25DPであってもよい。
【0115】
特定の実施形態におけるデキストラン長鎖は、実質的にα-1,6-グリコシド結合および少量(2.0%未満)のα-1,3-および/またはα-1,4-グリコシド結合を含み得る。例えば、デキストラン長鎖は、約または少なくとも約98%、98.25%、98.5%、98.75%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、もしくは99.9%のα-1,6-グリコシド結合を含み得る。特定の実施形態におけるデキストラン長鎖は、α-1,4-グリコシド結合を含まない(すなわち、そのような長鎖は、大部分のα-1,6結合と少量のα-1,3結合とを有する)。これとは逆に、一部の実施形態におけるデキストラン長鎖は、α-1,3-グリコシド結合を含まない(すなわち、そのような長鎖は、大部分のα-1,6結合と少量のα-1,4結合とを有する)。上の実施形態の任意のデキストラン長鎖は、例えば、更にα-1,2-グリコシド結合を含まない場合がある。更に一部の態様では、デキストラン長鎖は、100%のα-1,6-グリコシド結合を含み得る(他の鎖から分岐するためにそのような長鎖によって使用される結合を除く)。
【0116】
一部の態様におけるデキストラン分子の短鎖は、長さが1~3グルコースモノマーであり、デキストランポリマーの全グルコースモノマーの約5~10%未満を占める。本明細書の短鎖の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは全部が、長さが1~3グルコースモノマーである。デキストラン分子の短鎖は、例えば、デキストラン分子の全グルコースモノマーの約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満もしくは1%未満を含み得る。
【0117】
一部の態様におけるデキストラン分子の短鎖は、α-1,2-、α-1,3-、および/またはα-1,4-グリコシド結合を含み得る。短鎖は、全部を(個別的にではなく)一体としてみなした場合、例えば(i)これらの結合の3つ全て、または(ii)α-1,3-およびα-1,4-グリコシド結合を含んでいてもよい。本明細書のデキストラン分子の短鎖は、デキストランの他の短鎖に関して異種(すなわち、結合形態における幾らかの変化を示す)であっても同種(すなわち、類似または同一の結合形態を共有する)であってもよいと考えられる。
【0118】
特定の実施形態におけるデキストランは、約または少なくとも約5,000万、5,500万、6,000万、6,500万、7,000万、7,500万、8,000万、8,500万、9,000万、9,500万、1億、1億500万、1億1,000万、1億1,500万、1億2,000万、1億2,500万、1億3,000万、1億3,500万、1億4,000万、1億4,500万、1億5,000万、1億5,500万、1億6,000万、1億6,500万、1億7,000万、1億7,500万、1億8,000万、1億8,500万、1億9,000万、1億9,500万もしくは2億(または5,000万~2億の間のいずれかの整数)(またはこれらの値の2つの間のいずれかの整数)の重量平均分子量(Mw)を有し得る。デキストランのMwは、例えば、約5,000万~2億、6,000万~2億、7,000万~2億、8,000万~2億、9,000万~2億、1億~2億、1億1,000万~2億、1億2,000万~2億、5,000万~1億8,000万、6,000万~1億8,000万、7,000万~1億8,000万、8,000万~1億8,000万、9,000万~1億8,000万、1億~1億8,000万、1億1,000万~1億8,000万、1億2,000万~1億8,000万、5,000万~1億6,000万、6,000万~1億6,000万、7,000万~1億6,000万、8,000万~1億6,000万、9,000万~1億6,000万、1億~1億6,000万、1億1,000万~1億6,000万、1億2,000万~1億6,000万、5,000万~1億4,000万、6,000万~1億4,000万、7,000万~1億4,000万、8,000万~1億4,000万、9,000万~1億4,000万、1億~1億4,000万、1億1,000万~1億4,000万、1億2,000万~1億4,000万、5,000万~1億2,000万、6,000万~1億2,000万、7,000万~1億2,000万、8,000万~1億2,000万、9,000万~1億2,000万、1億~1億2,000万、1億1,000万~1億2,000万、5,000万~1億1,000万、6,000万~1億1,000万、7,000万~1億1,000万、8,000万~1億1,000万、9,000万~1億1,000万、1億~1億1,000万、5,000万~1億、6,000万~1億、7,000万~1億、8,000万~1億、9,000万~1億、もしくは9,500万~1億500万であってよい。これらのMwのいずれも、必要に応じて、Mwを162.14で割ることによって重量平均重合度(DPw)で表すことができる。
【0119】
本明細書のデキストランのz平均回転半径は、約200~280nmであってよい。例えば、z平均Rgは、約200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、もしくは280nm(または200~280nmの間の任意の整数)であってよい。他の例として、z平均Rgは、約200~280、200~270、200~260、200~250、200~240、200~230、220~280、220~270、220~260、220~250、220~240、220~230、230~280、230~270、230~260、230~250、230~240、240~280、240~270、240~260、240~250、250~280、250~270、もしくは250~260nmであってよい。
【0120】
別の実施形態においては、多糖は、構造IIによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含有する組成物を含む:
【化15】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)このエステル化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する)。
このようなポリα-1,3-グルカンエステルおよびそれらの合成は、国際公開第2017/003808号パンフレットに開示されており、これはその全体が本明細書に組み込まれる。
【0121】
構造IIのポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、部分構造-C-O-CO-C-を含むことに基づいて、本明細書において「エステル」と称され、「-C-」は、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の2、4、または6位の炭素を表し、「-CO-C-」は、第1の基に含まれる。
【0122】
本明細書における「第1の基」は、-CO-C-COOHを含む。用語「-C-」は、典型的には2~6個の炭素原子の鎖を含み、各炭素原子が好ましくは4つの共有結合を有する第1の基の部分を指す。
【0123】
用語「ポリα-1,3-グルカンモノエステル」および「モノエステル」は、本明細書においては互換的に使用される。ポリα-1,3-グルカンモノエステルは、1種類の第1の基を含む。
【0124】
用語「ポリα-1,3-グルカン混合エステル」および「混合エステル」は、本明細書においては互換的に使用される。ポリα-1,3-グルカン混合エステルは、2つ以上の種類の第1の基を含む。
【0125】
用語「反応」、「エステル化反応」、「反応組成物」、「反応調製物」等は、本明細書においては互換的に使用され、ポリα-1,3-グルカンと、少なくとも1種の環状有機無水物を含む反応、またはこれらからなる反応を指す。反応は、ポリα-1,3-グルカンのグルコース単位の1つ以上のヒドロキシル基を、環状有機無水物により供給される第1の基を用いてエステル化するのに好適な条件(例えば、時間、温度、pH)下に置かれ、それにより、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物を生じる。
【0126】
用語「環状有機無水物」、「環状有機酸無水物」、「環状酸無水物」等は、本明細書においては互換的に使用される。本明細書における環状有機無水物は、下に示される式を有し得る:
【化16】

上の式の-C-部分は、典型的には2~6個の炭素原子の鎖を含み;この鎖中の各炭素原子は好ましくは4個の共有結合を有する。本明細書におけるエステル化反応中、環状有機無水物の無水物基(-CO-O-CO-)が壊れ、その結果、壊れた無水物の一方の端が、-COOH基となり、他方の端が、ポリα-1,3-グルカンのヒドロキシル基とエステル化されることにより、エステル化された第1の基(-CO-C-COOH)をもたらす。
【0127】
ポリα-1,3-グルカンエステル化合物の式中の各R基は、独立して、-Hであってもよく、-CO-C-COOHを含む第1の基であってもよい。第1の基の-C-部分は、典型的には2~6個の炭素原子を含み;これらの炭素原子のそれぞれは、好ましくは4つの共有結合に関与する。通常、鎖中の各炭素は、鎖中の隣り合った炭素原子または隣接するC=OおよびCOOH基の炭素原子と共有結合していることとは別に、水素にも、有機基等の置換基にも結合でき、および/または炭素-炭素二重結合に関与できる。例えば、-C-鎖中の炭素原子は、飽和であってもよく(つまり、-CH-)、-C-鎖中の隣り合った炭素原子と二重結合していてもよく(例えば、-CH=CH-)、および/または水素や有機基に結合していてもよい(つまり、1個の水素が有機基で置換される)。当業者ならば、炭素の原子価が4であることを考慮して、-CO-C-COOHを含む第1の基の-C-部分の炭素原子が、通常どのように結合できるかを理解できるであろう。いくつかの実施形態においては、第1の基の-C-部分は、2~16、2~17、または2~18の炭素数の鎖を含むことができると企図されている。
【0128】
特定の実施形態においては、第1の基(-CO-C-COOH)の-C-部分は、CH基のみを含む。-C-部分がCH基のみを含む第1の基の例は、-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH、および-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHである。ポリα-1,3-グルカンエステル化合物を合成するプロセスに関して以下に更に開示するように、これらの第1の基は、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、または無水スベリン酸をポリα-1,3-グルカンと反応させることにより、それぞれ誘導できる。
【0129】
ポリα-1,3-グルカンエステル化合物を合成するプロセスに関して下に更に開示するように、少なくとも1つの有機基の分岐を伴う-C-部分を含むこれらの第1の基のそれぞれは、適切な環状有機無水物をポリα-1,3-グルカンと反応させることにより、誘導できる。別の説明例には、無水メチルコハク酸を用いて、ポリα-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが含まれ、そこで結果として生成される第1の基は、-CO-CH-CH(CH)-COOHまたは-CO-CH(CH)-CH-COOHである。このように、上に列挙した第1の基のいずれかで表される-C-部分を含む環状有機無水物(ここで、環状有機無水物の対応する-C-部分は、無水物基[-CO-O-CO-]の各側に結合して一緒に環を形成する部分である)は、ポリα-1,3-グルカンと反応して、対応する第1の基(-CO-C-COOH)を有するそれらのエステルを生成できる。
【0130】
特定の実施形態においては、構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、-CO-C-COOHを含む1つの種類の第1の基を含み得る。例えば、上式においてグルコース基にエステル結合した1種以上のR基は、-CO-CH-CH-COOHであってよく;そのためこの特定の例におけるR基は、独立して水素および-CO-CH-CH-COOH基(そのようなエステル化合物はポリα-1,3-グルカンサクシネートと呼ばれる場合があり、その合成は本明細書の実験項の実施例の中に記載されている)となるであろう。
【0131】
本明細書に開示のポリウレタンポリマーの中で有用なポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.001~約0.1の、1つ以上の第1の基(-CO-C-COOH)による置換度(DoS)を有する。あるいは、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物のDoSは、例えば、約0.001~約0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、または0.1であってよい。あるいは更に、DoSは例えば少なくとも約0.001、0.01、0.05、または0.1であってもよいと考えられる。DoSは、任意選択的には、これらの値のうちの任意の2つの間の範囲として表すことができる。本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物は約0.001~約0.1の置換度を有するので、化合物のR基は水素のみにはなり得ないことを当業者ならば理解するであろう。
【0132】
本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%(または50%~100%の任意の整数)の、α-1,3であるグリコシド結合を有し得る。したがって、このような実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、約50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、もしくは0%(または0%~50%の任意の整数値)未満の、α-1,3-ではないグリコシド結合を有する。ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、少なくとも約98%、99%、または100%の、α-1,3であるグリコシド結合を有するのが好ましい。
【0133】
本明細書のポリα-1,3-グルカンエステル化合物の主鎖は、好ましくは直鎖/非分岐である。特定の実施形態においては、化合物は、分岐点を全く有さないか、またはポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の分岐点を有する。分岐点の例は、α-1,6分岐点を含む。
【0134】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の式は、少なくとも6のn値を有することができる。あるいは、nは、例えば、少なくとも10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、もしくは4000(または10~4000の任意の整数)の値を有することができる。更に他の例におけるnの値は、25~250、50~250、75~250、100~250、150~250、200~250、25~200、50~200、75~200、100~200、150~200、25~150、50~150、75~150、100~150、25~100、50~100、75~100、25~75、50~75、または25~50の範囲内であってよい。
【0135】
本明細書に開示されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の分子量は、数平均分子量(M)または重量平均分子量(M)として測定することができる。あるいは、分子量は、ダルトンまたはグラム/モルで測定することができる。これは、化合物のポリα-1,3-グルカンポリマー成分のDP(重量平均重合度)またはDP(数平均重合度)を言及するためにも有用な場合がある。本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物のMまたはMは、例えば少なくとも約1000であってよい。あるいは、MまたはMは、少なくとも約1000~約600000であってもよい。あるいは更に、MまたはMは、例えば、少なくとも約10000、25000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、225000、250000、275000、または300000(または10000~300000の任意の整数)であってもよい。
【0136】
構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の製造方法は:
(a)環状有機無水物との反応においてポリα-1,3-グルカンを接触させることにより、構造IIで表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を生成すること:
(b)任意選択的に、工程(a)において生成したポリα-1,3-グルカンエステル化合物を単離すること;
を含む。
【0137】
ポリα-1,3-グルカンは、開示した反応において、少なくとも1種の環状有機無水物と接触する。本明細書における環状有機無水物は、下に示す式:
【化17】

を有し得る。
上の式の-C-部分は、典型的には2~6個の炭素原子の鎖を含み;各炭素原子は好ましくは4個の共有結合を有する。いくつかの実施形態においては、-C-部分が、2~16、2~17、または2~18の炭素数の鎖を含み得ることが企図される。本発明の方法の反応中、環状有機無水物の無水物基(-CO-O-CO-)が壊れ、その結果、壊れた無水物の一方の端が-COOH基となり、他方の端がポリα-1,3-グルカンのヒドロキシル基とエステル化されることにより、エステル化された第1の基(-CO-C-COOH)をもたらす。使用される環状有機無水物に応じて、典型的にはそのようなエステル化反応の1種または2種の可能性のある生成物が存在し得る。
【0138】
本明細書における反応に含まれ得る環状有機無水物の例としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、および無水スベリン酸が挙げられる。これらを使用して、第1の基としての-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH、および-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとそれぞれエステル化することができる。これらは全て、-C-部分がCH基だけを含む第1の基の例である。したがって、本明細書における環状有機無水物は、上の式の-C-部分がCH基だけ(例えば、2~6個のCH基)を含む環状有機無水物であってもよい。
【0139】
本明細書における環状有機無水物は、いくつかの態様においては、上の式の-C-部分が有機基を含む少なくとも1つの分岐を含む環状有機無水物であってもよい。そのような環状有機無水物の例としては、第1の基として-CO-CH-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-COOHまたは-CO-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-CH-COOHを生じる環状有機無水物が挙げられる。そのような環状有機無水物の他の例としては、第1の基として-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH、または-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHを生じるが、それらの少なくとも1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の水素が有機基分岐(R)で置換されている環状有機無水物が挙げられる。そのような環状有機無水物の更に別の例としては、第1の基として-CO-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-CH-COOH、または-CO-CH-CH-CH-CH-CH=CH-COOHを生じるが、それらの少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上の水素がRで置換されている環状有機無水物が挙げられる。本明細書におけるR基の好適な例としては、アルキル基およびアルケニル基が挙げられる。本明細書におけるアルキル基は、例えば1~18個の炭素(直鎖または分岐)(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、またはデシル基)を含み得る。本明細書におけるアルケニル基は、例えば1~18個の炭素(直鎖または分岐)(例えば、チレン、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル[例えば2-オクテニル]、ノネニル[例えば2-ノネニル]、またはデセニル基)を含み得る。
【0140】
本明細書の反応に含まれ得る環状有機無水物の名称による例としては、無水マレイン酸、無水メチルコハク酸、無水メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸無水物、2-エチル-3-メチルマレイン酸無水物、2-へキシル-3-メチルマレイン酸無水物、2-エチル-3-メチル-2-ペンテン二酸無水物、無水イタコン酸(2-メチレンコハク酸無水物)、2-ノネン-1-イルコハク酸無水物、および2-オクテン-1-イルコハク酸無水物が挙げられる。具体的には、例えば無水マレイン酸を使用して第1の基としての-CO-CH=CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる;無水メチルコハク酸を使用して第1の基としての-CO-CH-CH(CH)-COOHおよび/または-CO-CH(CH)-CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる;無水メチルマレイン酸を使用して第1の基としての-CO-CH=C(CH)-COOHおよび/または-CO-C(CH)=CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる;無水ジメチルマレイン酸を使用して第1の基としての-CO-C(CH)=C(CH)-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる;2-エチル-3-メチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-C(CHCH)=C(CH)-COOHおよび/または-CO-C(CH)=C(CHCH)-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる;2-へキシル-3-メチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-C(CHCHCHCHCHCH)=C(CH)-COOHおよび/または-CO-C(CH)=C(CHCHCHCHCHCH)-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる;無水イタコン酸を使用して第1の基としての-CO-CH-C(CH)-COOHおよび/または-CO-C(CH)-CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる;2-ノネン-1-イルコハク酸無水物を使用して第1の基としての-CO-CH-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-COOHおよび/または-CO-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。
【0141】
本開示の1種、2種、3種、またはそれ以上の環状有機無水物を、例えばエステル化反応に使用できる。環状有機無水物は、通常濃縮した(例えば、>95%、96%、97%、98%、または99%純粋な)形態で市販品として得ることができる。本明細書のエステル化反応における環式有機酸無水物の量は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有するポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物が得られるように選択することができる。
【0142】
別の実施形態においては、多糖は、構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエ-テル化合物を含む:
【化18】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する)。ポリウレタンポリマーの製造に有用なポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、ポリα-1,3-グルカンのアルキルエーテルおよび/またはヒドロキシアルキルエーテル誘導体であってもよい。そのようなポリα-1,3-グルカンエーテル化合物およびそれらの合成は、米国特許第9,139,718号明細書に開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。エーテル化合物を含む多糖の混合物も使用することができる。
【0143】
用語「ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物」、「ポリα-1,3-グルカンエーテル」、および「ポリα-1,3-グルカンエーテル誘導体」は、本明細書においては互換的に使用される。
【0144】
本明細書で使用する「有機基」という基は、(i)式-C2n+1(すなわち、完全に飽和しているアルキル基)を有するか、または(ii)ほとんど飽和しているが、他の原子もしくは官能基(すなわち、「置換アルキル基」)で置換された1個以上の水素原子を有する、1個以上の炭素の鎖を意味する。そのような置換は、1つ以上のヒドロキシル基、酸素原子(それによりアルデヒド基もしくはケトン基が形成される)、カルボキシル基、または他のアルキル基によるものであってもよい。
【0145】
本明細書の「ヒドロキシアルキル」基は、アルキル基の1個以上の水素原子がヒドロキシル基で置換されている置換アルキル基を意味する。本明細書の「カルボキシアルキル」基は、アルキル基の1個以上の水素原子がカルボキシル基で置換されている置換アルキル基を意味する。
【0146】
ポリウレタンポリマーの合成に有用なポリα-1,3-グルカンエーテル化合物の置換度(DoS)は、約0.05~約3.0であってもよい。あるいは、DoSは約0.2~2.0であってもよい。あるいは更に、DoSは、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0であってよい。本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は約0.05~約3.0の置換度を有するので、またエーテルであることから、化合物のR基は水素のみにはなり得ないことを当業者ならば理解するであろう。
【0147】
本明細書のポリα-1,3-グルカンエーテル化合物のグルコースモノマー単位間のα-1,3であるグリコシド結合の割合は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(または50%~100%の任意の整数)である。したがって、このような実施形態においては、化合物は、約50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または0%(または0%~50%の任意の整数値)の、α-1,3ではないグリコシド結合を有する。
【0148】
本明細書のポリα-1,3-グルカンエーテル化合物の主鎖は、好ましくは直鎖/非分岐である。特定の実施形態においては、化合物は、分岐点を全く有さないか、またはポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満の分岐点を有する。分岐点の例は、α-1,6分岐点を含む。
【0149】
特定の実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物の式は、少なくとも6のn値を有することができる。あるいはnは、例えば少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、もしくは4000(または25~4000の任意の整数)の値を有することができる。更に他の例におけるnの値は、25~250、50~250、75~250、100~250、150~250、200~250、25~200、50~200、75~200、100~200、150~200、25~150、50~150、75~150、100~150、25~100、50~100、75~100、25~75、50~75、または25~50の範囲内であってよい。
【0150】
ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物の分子量は、数平均分子量(M)として、または重量平均分子量(M)として測定することができる。あるいは、分子量は、ダルトンまたはグラム/モルで測定できる。これは、化合物のポリα-1,3-グルカンポリマー成分のDP(重量平均重合度)またはDP(数平均重合度)を言及するためにも有用な場合がある。
【0151】
ポリウレタンポリマーの中で有用なポリα-1,3グルカンエーテル化合物のMまたはMは、少なくとも約1000であってもよい。あるいは、MまたはMは、少なくとも約1000~約600000であってもよい。あるいは更に、MまたはMは、例えば、少なくとも約2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、35000、40000、45000、50000、75000、100000、150000、200000、250000、300000、350000、400000、450000、500000、550000、または600000(または2000~600000の任意の整数)であってもよい。
【0152】
ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物の式中の各R基は、独立してHまたは有機基であってもよい。有機基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノ二ル基、またはデシル基などのアルキル基であってもよい。
【0153】
あるいは、有機基は、アルキル基の1つ以上の炭素に置換基を有する置換アルキル基であってもよい。置換基は、1つ以上のヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、および/またはカルボキシル基であってもよい。例えば、置換アルキル基は、ヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、またはカルボキシアルキル基であってもよい。
【0154】
好適なヒドロキシアルキル基の例は、ヒドロキシメチル(-CHOH)基、ヒドロキシエチル(例えば、-CHCHOH、-CH(OH)CH)基、ヒドロキシプロピル(例えば、-CHCHCHOH、-CHCH(OH)CH、-CH(OH)CHCH)基、ヒドロキシブチル基、およびヒドロキシペンチル基である。他の例としては、ジヒドロキシメチル基、ジヒドロキシエチル(例えば、-CH(OH)CHOH)基、ジヒドロキシプロピル(例えば、-CHCH(OH)CHOH、-CH(OH)CH(OH)CH)基、ジヒドロキシブチル基、およびジヒドロキシペンチル基などのジヒドロキシアルキル基(ジオール)が挙げられる。
【0155】
好適なカルボキシアルキル基の例は、カルボキシメチル(-CHCOOH)基、カルボキシエチル(例えば、-CHCHCOOH、-CH(COOH)CH)基、カルボキシプロピル(例えば、-CHCHCHCOOH、-CHCH(COOH)CH、-CH(COOH)CHCH)基、カルボキシブチル基、およびカルボキシペンチル基である。
【0156】
あるいは更に、アルキル基の1個以上の炭素は、また別のアルキル基による置換を有していてもよい。そのような置換アルキル基の例は、メチル基、エチル基、およびプロピル基である。具体例を挙げると、R基は、例えば、-CH(CH)CHCH基もしくは-CHCH(CH)CH基であってもよく、これらはどちらもメチル置換基を有するプロピル基である。
【0157】
上の様々な置換アルキル基の例から明らかなように、所定の実施形態では、アルキル基上の置換基(例えば、ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基)は、アルキル基の末端炭素原子に結合していてもよく、この末端の炭素基は、上の式中のグルコース基にエーテル結合している末端の反対側にある。この末端置換基の例は、ヒドロキシプロピル基-CHCHCHOHである。または、置換基は、アルキル基の内部炭素原子上にあってもよい。内部置換基の例は、ヒドロキシプロピル基-CHCH(OH)CHである。アルキル基は1つ以上の置換基を有することができ、それらは同一(例えば、2つのヒドロキシル基[ジヒドロキシ])であっても、異なって(例えば、ヒドロキシル基およびカルボキシル基)いてもよい。
【0158】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、1つの種類の有機基を含んでいてもよい。例えば、上の式の中のグルコース基にエーテル結合した1つ以上のR基はメチル基であってもよく;そのため、この具体的な例におけるR基は、独立して水素およびメチル基である。1種類のみの有機基を含むポリα-1,3-グルカンエーテル化合物の特定の実施形態は、有機基としてカルボキシアルキル基(例えばカルボキシメチル基)を有さない。
【0159】
あるいは、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、2つ以上の異なる種類の有機基を含んでいてもよい。そのような化合物の例は、(i)R基としての2つの異なるアルキル基、(ii)R基としてのアルキル基およびヒドロキシアルキル基(一般的に言えば、アルキルヒドロキシアルキルα-1,3-グルカン)、(iii)R基としてのアルキル基およびカルボキシアルキル基(一般的に言えば、アルキルカルボキシアルキルポリα-1,3-グルカン)、(iv)R基としてのヒドロキシアルキル基およびカルボキシアルキル基(一般的に言えば、ヒドロキシアルキルカルボキシアルキルポリα-1,3-グルカン)、(v)R基としての2つの異なるヒドロキシアルキル基または(vi)R基としての2つの異なるカルボキシアルキル基を含む。そのような化合物の特定の非限定的な例としては、エチルヒドロキシエチルポリα-1,3-グルカン(すなわち、R基は独立してH、エチル、またはヒドロキシエチルである)、ヒドロキシアルキルメチルポリα-1,3-グルカン(すなわち、R基は独立してH、ヒドロキシアルキル、またはメチルである)、カルボキシメチルヒドロキシエチルポリα-1,3-グルカン(すなわち、R基は独立してH、カルボキシメチル、またはヒドロキシエチルである)、およびカルボキシメチルヒドロキシプロピルポリα-1,3-グルカン(すなわち、R基は独立してH、カルボキシメチル、またはヒドロキシプロピルである)が挙げられる。2つ以上の異なる種類の有機基を含むポリα-1,3-グルカンエーテル化合物の特定の実施形態は、有機基の1つとしてカルボキシアルキル基(例えばカルボキシメチル基)を有さない。
【0160】
一実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、ヒドロキシプロピルポリα-1,3-グルカンを含む。別の実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、ヒドロキシエチルポリα-1,3-グルカンを含む。更なる実施形態においては、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、カルボキシメチルポリα-1,3-グルカンを含む。
【0161】
ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、米国特許第9,139,718号明細書に開示されている通り、アルカリ条件下でポリα-1,3-グルカンを、有機基を含む少なくとも1種のエーテル化剤と接触させることによって合成することができる。エーテル化剤としては、ジアルキルサルフェート、ジアルキルカーボネート、アルキルハライド、アルキルトリフレート、およびアルキルフルオロスルホネートが挙げられる。ヒドロキシアルキルポリα-1,3-グルカンエーテルを合成するために適したエーテル化剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはこれらの組み合わせなどのアルキレンオキシドが挙げられる。
【0162】
追加的な実施形態においては、多糖には酵素的に製造された多糖が含まれる。酵素的に製造された多糖の例としては、ポリα-1,3-グルカン;ポリα-1,3-1,6-グルカン;90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;ならびにデキストランが挙げられる。ポリα-1,3-グルカンの製造のための酵素的方法は、例えば、米国特許第7,000,000号明細書;同第8,642,757号明細書;および同第9,080,195号明細書に記載されている。ポリα-1,3-1,6-グルカンの酵素的製造は、米国特許出願公開第2015/0232785A1号明細書に開示されている。デキストランポリマーは、米国特許出願公開第2016/0122445A1号明細書に記載されているアミノ酸配列を含むグルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いた酵素的プロセスによって製造することができる。
【0163】
一実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、a)少なくとも1種のポリイソシアネート;b)ポリα-1,3-グルカン;およびc)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;を含む。
【0164】
別の実施形態においては、ポリウレタンポリマーは:
a)少なくとも1種のポリイソシアネート;
b)多糖であって、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)約0.05~約3.0の置換度を有するポリα-1,3-グルカンエステル化合物;
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;または
v)デキストラン;
を含む多糖;ならびに
c)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;
を含む。
【0165】
更なる実施形態においては、ポリウレタンポリマーは:
a)少なくとも1種のポリイソシアネート;
b)多糖であって、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)約0.05~約3.0の置換度を有するポリα-1,3-グルカンエステル化合物;
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;
v)デキストラン;または
vi)次の構造により表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物:
【化19】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(C)この化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する)
を含む多糖;ならびに
c)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;
を含む。
【0166】
追加的な実施形態においては、ポリウレタンポリマーは:
a)少なくとも1種のポリイソシアネート;
b)多糖であって、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)構造Iにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化20】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)この化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;
v)構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化21】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)この化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する);または
vi)構造IIIにより表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物:
【化22】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
を含む多糖;ならびに
c)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;
を含む。
【0167】
多糖は、ポリウレタンポリマーの総重量を基準として約0.1重量%~約50重量%の範囲の量でポリウレタンポリマー中に存在する。いくつかの実施形態においては、多糖は、ポリウレタンポリマーの総重量を基準として、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、0.1~1、0.1~5、0.1~10、1~5、5~10、5~15、5~20、5~25、5~30、10~20、10~30、10~40、10~50、20~30、20~40、20~50、15~25、25~35、25~50、または40~50重量%の量でポリウレタンポリマー中に存在する。
【0168】
少なくとも1種のポリオールは、例えばC~Cアルカンジオール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ブタンジオールの異性体、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2,3-プロパントリオール(グリセロール)、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパノール(トリメチロールエタン)、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(ペンタエリスリトール);ポリマーポリオール(例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール)、またはこれらの組み合わせなどの、2つ以上のヒドロキシル基を含む任意のポリオールであってもよい。いくつかの実施形態においては、ポリオールは、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリ1,3-プロパンジオールであってもよい。ポリエステルポリオールも使用することができる。ポリエステルポリオールは当該技術分野において周知であり、典型的には脂肪族二酸と脂肪族ジオールとのエステル交換によって製造される。好適な脂肪族二酸としては、例えば、C~C10二酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸を挙げることができる。いくつかの実施形態においては、ポリエステルポリオールを形成するために芳香族および/または不飽和二酸を使用することもできる。二酸が具体的に挙げられているが、望みのポリエステルポリオールを形成するために、二酸のエステルまたは二ハロゲン化物を使用することが一般的である。ポリエステルポリオールを形成するために、上述したポリオールのいずれか、特にはジオールを使用することができる。上述のポリオールのいずれかの組み合わせも使用することができる。
【0169】
いくつかの実施形態においては、ポリウレタンは、1種以上1種以上のアミン;および/または1種以上のヒドロキシ酸を更に含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、少なくとも1種のヒドロキシ酸を含む少なくとも1種の第2のポリオールを更に含み得る。適切なアミンとしては、例えば、1,2-エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジプロピルトリアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。適切なヒドロキシ酸としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2-ヒドロキシメチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-エチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-プロピル-3-ヒドロキシプロパン酸、クエン酸、酒石酸、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態においては、ヒドロキシ酸は、ポリウレタンの中への組み込みのために有用であり、この中のカルボン酸基は、アミン(例えばトリエチルアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N、N-ジメチルイソプロパノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、トリイソプロピルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、アンモニア)を使用して後に中和されることで四級アンモニウム塩を形成する。四級アンモニウム塩の存在は、ポリウレタンを水性溶媒中に分散させるために役立ち得る。中和アミンが使用される場合、これは、イソシアネート官能性プレポリマーの形成中に、またはイソシアネート官能性プレポリマーの形成後に添加することができる。
【0170】
追加的な実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、ポリエーテルアミンを更に含む。2種以上のポリエーテルアミンの混合物も使用することができる。有用なポリエーテルアミンとしては、ポリエーテル骨格を有するモノアミン、ジアミン、およびトリアミンが挙げられる。ポリエーテル骨格は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール、またはポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)/(ポリプロピレングリコール)コポリマーを主体としていてもよい。ポリエーテルアミンは、約200g/モル~約5000g/モルまたはそれ以上の範囲の分子量を有し得る。ポリエーテルアミンは、当技術分野で公知の方法によって合成することができ、あるいは例えば、HuntsmanのJEFFAMINE(登録商標)製品ラインから商業的に入手することができる。
【0171】
一実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、ポリウレタンポリマーの総重量を基準として、約0~80重量パーセント(重量%)の量のポリエーテルアミンを含む。別の実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、1~60重量%の量のポリエーテルアミンを含む。また別の実施形態においては、ポリウレタンポリマーは、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、または80重量%(または0~80の任意の値)のポリエーテルアミンを含む。
【0172】
ポリウレタンの形成を補助するために触媒を添加することができる。好適な触媒としては、例えば、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、トリエチルアミン、スズ(II)オクトエート、ジブチルスズジアセテート、塩化第一スズ、ジブチルスズジ-2-エチルヘキサノエート、酸化第一スズ、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4-ジアザビシクロ[3.2.0]-7-ノナン、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、1-メチル-4-ジメチルアミノエチルピペラジン、メトキシプロピルジメチルアミン、N、N、N’-トリメチルイソプロピルプロピレンジアミン、3-ジエチルアミノプロピルジエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0173】
多糖を含むポリウレタンは、様々な方法で製造することができ、発泡体、フィルム、コーティング、および成形組成物を製造することができる組成物が得られる。少なくとも1種のポリイソシアネートと、多糖と、任意選択的な少なくとも1種のポリオールとを含む成分は、一度に全て混合することができ、これらは分割して添加することができ、あるいはこれらは逐次的に添加することができる。他の実施形態においては、ポリウレタンは、最初にイソシアネート官能性プレポリマーを形成することによって製造することができる。イソシアネート官能性プレポリマーは、ポリイソシアネートを少なくとも1種のポリオールと接触させ、例えば1.5:1~2.5:1の範囲のNCO:OH比のような高い高いNCO:OH比を選択することによって製造することができる。少なくとも1種のポリイソシアネートは、イソシアネート官能性プレポリマーを形成するために少なくとも1種のポリオールと接触させることができる。イソシアネート官能性プレポリマーは1分子当たり2つ以上のイソシアネート官能基を有する。接触させる工程は、溶媒の存在下または非存在下、20℃~150℃の範囲の温度で行うことができる。溶媒は、水、有機溶媒、またはこれらの組み合わせでああってもよい。必要に応じて、接触工程の間に1種以上のアミンおよび/またはヒドロキシ酸を添加することができる。
【0174】
必要に応じて、水分散性イソシアネート官能性プレポリマーを形成することができる。水分散性イソシアネート官能性プレポリマーを形成するために、少なくとも1種のポリオールは、例えば上に記載したもののいずれかなどのヒドロキシ酸を含んでいてもよい。一実施形態においては、ヒドロキシ酸は、2,2-ジメチロールプロピオン酸であってもよい。イソシアネート官能性プレポリマーの形成後、カルボン酸基は、アミンまたは塩基(例えば金属水酸化物、金属炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム)で中和されてもよく、中和後に、水が添加され十分に混合されることで、イソシアネート官能性プレポリマーの水性分散液を形成することができる。
【0175】
イソシアネート官能性プレポリマーを多糖と接触させることで、望みのポリウレタンを形成することができる。多糖は、乾燥粉末として添加されてもウェットケーキとして添加されてもよく、その後、十分に撹拌されることで、水または有機溶媒中の分散液として望みのポリウレタンを形成することができる。
【0176】
ポリウレタンポリマーを含有するポリウレタン組成物であって、溶媒を更に含有するポリウレタン組成物を形成することができる。いくつかの実施形態においては、溶媒は水、有機溶媒、またはこれらの組み合わせである。有用な有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドを挙げることができる。いくつかの実施形態においては、有用な有機溶媒としては、ポリエーテルアミン、ポリエーテルグリコール、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態においては、ポリウレタン組成物は、ポリウレタンポリマーの水性分散液を含む。いくつかの実施形態においては、ポリウレタン組成物は、ポリウレタンポリマーの非水性分散液を含む。
【0177】
ポリウレタンポリマーおよび組成物は、例えば接着剤、コーティング、フィルム、および/または発泡体としてなどの様々な用途で使用することができる。
【0178】
ポリウレタン発泡体は、多糖、少なくとも1種のポリオール、および触媒を、水中でおよび/または発泡剤を使用して、高せん断混合条件下でポリイソシアネートと混合することにより製造することができる。発泡体は、典型的には室温で製造することができるが、必要に応じて高温を使用することもできる。
【0179】
本明細書に開示の多糖含有ポリウレタンポリマーおよび組成物は、例えば良好な水不透過性および改善された水蒸気透過率を有し、着用者にとって改善された快適性を有する防水衣類を提供するための布地などの、繊維質基材をコーティングするために使用することができる。一実施形態においては、表面を有し、表面が表面の少なくとも一部に本明細書に開示のポリウレタンポリマーを含有するコーティングを含む、コーティングされた繊維質基材が開示される。繊維質基材としては、繊維、糸、布地、布地ブレンド、繊維製品、不織布、紙、皮革、およびカーペットを挙げることができる。一実施形態においては、繊維質基材は、繊維、糸、布地、繊維製品、または不織布である。繊維質基材は、綿、セルロース、羊毛、絹、レーヨン、ナイロン、アラミド、アセテート、アクリル、ジュート、サイザル、海藻、コイア、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアラミド、またはこれらのブレンド物などの天然または合成繊維を含んでいてもよい。「布地ブレンド」とは、2種類以上の繊維から製造された布地を意味する。典型的には、これらのブレンドは、少なくとも1種の天然繊維と少なくとも1種の合成繊維との組み合わせであるが、2種以上の天然繊維または2種以上の合成繊維のブレンドを含み得る。不織基材としては、例えば、DuPontから入手可能なSONTARA(登録商標)のようなスパンレース不織布およびスパンボンド-メルトブローン-スパンボンド不織布が挙げられる。
【0180】
本明細書に開示の組成物および物品の非限定的例としては、以下が挙げられる:
1.ポリウレタンポリマーであって、
a)少なくとも1種のポリイソシアネート;
b)多糖であって、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)構造Iにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化23】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)この化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
iii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iv)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;
v)デキストラン;
vi)構造IIにより表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物:
【化24】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)この化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する);
vii)構造IIIにより表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物:
【化25】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する);
を含む多糖;ならびに
c)任意選択的な少なくとも1種のポリオール;
を含む、ポリウレタンポリマー。
【0181】
2.上記ポリイソシアネートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナトトルエン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、またはこれらの組み合わせである、実施形態1に記載のポリウレタンポリマー。
【0182】
3.ポリオールが存在し、上記ポリオールが、C~C12アルカンジオール、1,2,3-プロパントリオール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはこれらの組み合わせである、実施形態1または2に記載のポリウレタンポリマー。
【0183】
4.上記ポリウレタンポリマーが、
d)少なくとも1種のヒドロキシ酸を含む少なくとも1種の第2のポリオール
を更に含む、実施形態1、2、または3に記載のポリウレタンポリマー。
【0184】
5.上記第2のポリオールが、2-ヒドロキシメチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-エチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-プロピル-3-ヒドロキシプロパン酸、クエン酸、酒石酸、またはこれらの組み合わせである、実施形態1、2、3、または4に記載のポリウレタンポリマー。
【0185】
6.上記多糖がポリα-1,3グルカンを含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー。
【0186】
7.上記多糖がポリα-1,3グルカンエステル化合物を含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー。
【0187】
8.上記多糖が構造Iにより表されるポリα-1,3グルカンエステル化合物を含む、実施形態1、2、3、4、5、または7に記載のポリウレタンポリマー:
【化26】

(式中、
(A)nは少なくとも6であり、
(B)各Rは独立して-Hまたはアシル基であり、
(C)この化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する)。
【0188】
9.上記ポリα-1,3-グルカンエステル化合物が、ポリα-1,3-グルカンアセテートプロピオネート;ポリα-1,3-グルカンアセテートブチレート;ポリα-1,3-グルカンアセテート;またはこれらの混合物である、実施形態1、2、3、4、5、7、または8に記載のポリウレタンポリマー。
【0189】
10.上記多糖がポリα-1,3-1,6-グルカンを含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー。
【0190】
11.上記多糖が、90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点、および55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマーを含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー。
【0191】
12.上記多糖がデキストランを含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー。
【0192】
13.上記多糖が構造IIにより表されるポリα-1,3グルカンエステル化合物を含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー:
【化27】

(式中、
(D)nは少なくとも6であり、
(E)各Rは独立して-Hまたは-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は2~6個の炭素原子の鎖を含み、
(F)この化合物は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有する)。
【0193】
14.上記多糖が構造IIIにより表されるポリα-1,3グルカンエーテル化合物を含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー:
【化28】

(式中、
(G)nは少なくとも6であり、
(H)各Rは独立して-Hまたは有機基であり、
(J)このエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有する)。
【0194】
15.上記多糖が酵素的に製造された多糖を含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載のポリウレタンポリマー。
【0195】
16.上記多糖が、上記ポリウレタンポリマーの総重量を基準として約0.1重量%~約50重量%の範囲の量で上記ポリウレタンポリマー中に存在する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15に記載のポリウレタンポリマー。
【0196】
17.ポリエーテルアミンを更に含有する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16に記載のポリウレタンポリマー。
【0197】
18.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17に記載のポリウレタンポリマーを含有するポリウレタン組成物であって、溶媒を更に含有するポリウレタン組成物。
【0198】
19.上記溶媒が、水、有機溶媒、またはこれらの組み合わせである、実施形態18に記載のポリウレタン組成物。
【0199】
20.上記組成物が、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、不凍剤、難燃剤、殺菌剤、防かび剤、防腐剤、ポリマー、ポリマー分散剤、またはこれらの組み合わせのうちの1種以上である1種以上の添加剤を更に含有する、実施形態18または19に記載のポリウレタン組成物。
【0200】
21.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17に記載のポリウレタンポリマーを含むポリウレタン発泡体。
【0201】
20.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17に記載のポリウレタンポリマーを含む接着剤、コーティング、フィルム、または成形物品。
【0202】
21.
表面を有し、上記表面が上記表面の少なくとも一部に実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17に記載のポリウレタンポリマーを含有するコーティングを含む、コーティングされた繊維質基材。
【0203】
22.上記繊維質基材が、繊維、糸、布地、繊維製品、または不織布である、実施形態21に記載のコーティングされた繊維質基材。
【0204】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、当業者によって通常理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと類似のまたは均等な方法および材料を、開示された組成物の実施形態の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料について以下に記載する。更に、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定的であることを意図しない。
【0205】
以上の本明細書において、特定の実施形態を参照して本発明の概念を開示してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに様々な修正形態および変更形態がなされ得ることを認識する。
【0206】
特定の実施形態に関して、利益、他の利点、および問題に対する解決法を前述で記載してきた。しかしながら、これらの利益、利点、問題の解決策、ならびに任意の利益、利点、または解決策を発生させるかまたはより顕著にすることがある任意の特徴は、実施形態のいずれかまたは全ての重要な、必要な、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【実施例
【0207】
特に明記しない限り、全ての原料は、The Sigma-Aldrich Company,St.Louis,Missouriから入手可能である。
【0208】
Poly-G 85-29ポリエーテルトリオールは、Arch Chemicals,INC.,Norwalk,Connecticutから入手可能である。
【0209】
VORANOLTM VORACTIV6340ポリエーテルポリオールおよびSPECFLEXTMポリオールは、Dow Chemicals,Inc.,Midland,Michiganから入手可能である。
【0210】
TEGOSTAB(登録商標)B4690シリコーン界面活性剤は、Evonik Industries,Hopewell,Virginiaから入手可能である。
【0211】
LUMULSETM POE26ポリオールは、Lambent Technologies,Gurnee,Illinoisから入手可能である。
【0212】
DABCO(登録商標)33LVおよびDABCO(登録商標)T-12触媒は、Air Products,Allentown,Pennsylvaniaから入手可能である。
【0213】
LUPRANATE(登録商標)TD80トルエンジイソシアネートは、BASF Polyurethanes North America,Wyandotte,Michiganから入手可能である。
【0214】
TERATHANE(登録商標)2000ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールは、INVISTA,Wilmington,Delawareから入手可能である。
【0215】
FORMEZ(登録商標)44-56(2000MWのブタンジオール-アジペートポリエステルポリオール)は、Chemtura,Philadelphia,Pennsylvaniから入手可能である。
【0216】
略語「Comp.Ex.」は比較例を意味する。略語「PU」はポリウレタンを意味する。略語「MDI」はメチレンジフェニルジイソシアネートを意味する。
【0217】
ポリα-1,3-グルカンの典型的な調製
ポリα-1,3-グルカンは、米国特許第7,000,000号明細書;米国特許出願公開第2013/0244288号明細書(現在米国特許第9,080,195号明細書);および米国特許出願公開第2013/0244287号明細書(現在米国特許第8,642,757号明細書)(これらは全てその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなgtfJ酵素調製物を用いて調製することができる。
【0218】
ポリα-1,3-グルカンポリマーは、米国特許出願公開第2014/0179913号明細書(現在米国特許第9,139,718号明細書)(例えばこの中の実施例12を参照のこと)の中に開示されている手順に従って合成することができ、またそのウェットケーキを調製することができ、これらは共にその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0219】
比較ポリウレタン分散液Aの調製
撹拌機、窒素ブランケットを備えた反応容器に、46.8gのイソホロンジイソシアネートを入れ、75℃まで加熱した。100gのTERATHANE(登録商標)2000ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールと6.7gの2,2-ジメチロールプロピオン酸との混合物を反応容器に数回に分けて添加した。Air Products,Allentown,Pennsylvaniaから入手可能なDABCO(登録商標)T-12触媒0.045gを反応混合物に添加した。反応を80℃で1.5時間保持することで、イソシアネート官能性プレポリマーを形成した。
【0220】
反応混合物を60℃に冷却し、カルボン酸基を5.17gのトリエチルアミンで中和した。その後、この混合物を40℃に冷却した。次いで、激しく撹拌しながら245gの水を滴下した。混合物を20分間撹拌することで、イソシアネート官能性プレポリマーを得た。
【0221】
イソシアネート官能性プレポリマーを含む反応混合物を室温まで冷却した後、6.65gのエチレンジアミンを数回に分けて添加した。混合物を室温で30分間撹拌することで、ポリウレタン分散物である比較例Aを形成した。
【0222】
ポリウレタン-グルカン分散液♯1の調製
撹拌機、窒素ブランケットを備えた反応容器に、46.8gのイソホロンジイソシアネートを入れ、75℃まで加熱した。100gのFORMEZ(登録商標)44-56(2000MWのブタンジオール-アジペートポリエステルポリオール)と6.7gの2,2-ジメチロールプロピオン酸との混合物を反応容器に数回に分けて添加した。Air Products,Allentown,Pennsylvaniaから入手可能なDABCO(登録商標)T-12ジブチルスズジラウレート0.045gを反応混合物に添加した。反応を80℃で1.5時間保持することで、イソシアネート官能性プレポリマーを形成した。
【0223】
反応混合物を60℃に冷却し、カルボン酸基を5.14gのトリエチルアミンで中和した。その後、この混合物を40℃まで冷ました。109.9gのグルカンウェットケーキを366.7gの水と混合することにより、グルカンのスラリーを製造した。このスラリーを、中和したポリウレタン混合物に激しく撹拌しながら滴下した。混合物を20分間撹拌した。
【0224】
反応混合物を室温まで冷却した後、6.81gのエチレンジアミンを数回に分けて添加した。混合物を室温で30分間撹拌することで、分散液♯1を形成した。
【0225】
ポリウレタン-グルカン分散液♯2の調製
撹拌機、窒素ブランケットを備えた反応容器に、46.8gのイソホロンジイソシアネートを入れ、75℃まで加熱した。100gのTERATHANE(登録商標)2000ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールと6.7gの2,2-ジメチロールプロピオン酸との混合物を反応容器に数回に分けて添加した。0.046gのDABCO(登録商標)T-12触媒を反応混合物に添加した。反応を80℃で1.5時間保持することで、イソシアネート官能性プレポリマーを形成した。
【0226】
反応混合物を60℃まで冷却し、カルボン酸基を5.12gのトリエチルアミンで中和した。その後、この混合物を40℃まで冷ました。109.9gのグルカンウェットケーキを366.7gの水と混合することにより、グルカンのスラリーを製造した。このスラリーを、中和したポリウレタン混合物に激しく撹拌しながら滴下した。混合物を20分間撹拌した。
【0227】
反応混合物を室温まで冷却した後、6.73gのエチレンジアミンを数回に分けて添加した。この混合物を室温で30分間撹拌することで、分散液♯2を形成した。
【0228】
ポリウレタン-グルカン分散液♯3の調製
分散液#1のアルカリ度は、33gの分散液#1に0.42gの固体水酸化カリウムを添加することによって調整した。分散液#3のpHは14であった。
【0229】
ポリウレタン-グルカン分散液♯4の調製
分散液#2のアルカリ度は、33gの分散液#1に0.21gの固体水酸化カリウムを添加することによって調整した。分散液#3のpHは11.5であった。
【0230】
フィルムおよびコーティングの作製
ドクターブレードを用いて水性分散液をポリプロピレン基材上にコーティングすることにより、各ポリウレタン分散液からフィルムを作製した。室温で3日間乾燥した後、ポリプロピレン基材からフィルムを外して、分散液#1、#2、#3、#4、および比較例Aから、それぞれフィルム#1、フィルム#2、フィルム#3、フィルム#4、および比較フィルムAを得た。
【0231】
ドクターブレードを用いて鋼基板パネル(S-46、Q-Lab Corporation,Westlake,Ohioから入手可能)上に各水性ポリウレタン分散液をコーティングすることで、コーティング#1、コーティング#2、コーティング#3、コーティング#4、および比較コーティングAをそれぞれ得ることにより、分散液のコーティングを作製した。コーティングは、試験前に室温で3日間乾燥させた。
【0232】
フィルムおよびコーティングの様々な特性を分析した。試験方法および結果は表1にまとめられている。試験は、室温、50℃、および70℃で行った。ポリウレタン分散液の接着剤として機能するための能力は、ASTM D3359-97(接着テープ試験)およびD1002(接着接合金属の重ねせん断)に従って決定した。重ねせん断試験では、0.2gのポリウレタン分散液をアルミニウム板(AR-14、Q-Labから入手可能なAl板)に塗布し、1/2インチ×1インチ(約1.3cm×2.5cm)の結合領域の上に広げた。その後、2枚の板を接着領域の上から一体に挟んで固定し、接着強度を試験する前に室温で3日間乾燥させた。
【0233】
【表2】
【0234】
【表3】
【0235】
表1の結果は、グルカンを組み込むと、ほとんどの実施例においてより大きい引張り強さ、接着性、および硬度特性が得られることを示している。
【0236】
グルカンを含むフリーライズポリウレタン発泡体の作製
高トルクミキサー(Craftsman 10インチドリルプレスモデル番号137.219000)を使用して表2の成分を3,100回転毎分(rpm)で混合することにより発泡体を作製した。高トルクミキサーを用いて成分を5~7秒間混合した。混合後、組成物をポリエチレン容器(約34cm×21cm×11.7cm)に移し、フリーライズさせた。発泡体が膨張した後、これらを75℃に予熱した空気循環式オーブンの中に30分間入れた。その後、発泡体をオーブンから取り出し、試験前に少なくとも1週間寝かせた。
【0237】
乾燥ポリα-1,3-グルカンは、ポリα-1,3-グルカンウェットケーキを60℃に設定された乾燥オーブン中で一晩乾燥させることにより製造した。乾燥ポリα-1,3-グルカンの含水率は1重量%であると見積もられた。
【0238】
【表4】
【0239】
ASTM D3574に従って、発泡体の引張特性を測定した。圧縮力たわみ(CFD)は、Instronメカニカル試験機を使用して、25%、50%、および65%のたわみで測定した。CFDと引張り強さの両方を、発泡体の膨張と並行して測定した。試験結果を表3に示す。
【0240】
【表5】
【0241】
表3の結果は、ポリα-1,3-グルカンを用いたフリーライズ発泡体が、ポリα-1,3-グルカンを含有しない比較発泡体Aの特性に非常に類似した特性を与えることを示している。この結果は、密度および弾性を維持し、かつ圧縮力たわみを増加させながらのポリα-1,3-グルカンの組み込みを示している。
【0242】
ポリウレタンフィルムの作製
ポリウレタン水性分散液Bの調製
100重量部(pbw)のFOMREZ(登録商標)44-56ポリオールと、6.7pbwのジメチロールプロピオン酸とを135℃でブレンドした。混合物を80℃まで冷ました。この混合物を46.4重量部のイソホロンジイソシアネートに数回に分けて添加した。少量(0.047pbw)のDABCO T-12を触媒として添加した。混合を80℃で1.5時間継続した。イソシアネート官能性プレポリマーを60℃まで冷却し、トリエチルアミン5.1pbwを添加した。トリエチルアミンを添加した後、混合物を40℃まで冷却した。その後、激しく混合しながら240pbwの水を滴下した。その後、この混合物に、激しく混合しながら室温で5.86pbwのエチレンジアミンを数回に分けて添加してポリウレタン水性分散液を形成した。
【0243】
水性グルカン分散液Cの調製
33%のグルカンウェットケーキ25重量部(pbw)を76pbwの蒸留水の中に分散させた。混合物をスピードミキサーで60秒間ブレンドした。25pbwのこの混合物を45pbwの蒸留水で更に希釈し、スピードミキサーを用いて60秒間混合することで、粘度が1250cpsである水性グルカン分散液を形成した。
【0244】
ポリウレタン/グルカン分散液#5、#6、および#7の調製
ポリウレタン水性分散液と水性グルカン分散液とのいくつかのブレンド液を、室温でスピードミキサー(2200rpmで60秒間)中で混合することにより調製した。ポリウレタン/グルカン分散液#5については、70pbwのポリウレタン水性分散液と30pbwの水性グルカン分散液とを使用した。ポリウレタン/グルカン分散液#6については、60pbwのポリウレタン水性分散液と40pbwの水性グルカン分散液とを使用した。ポリウレタン/グルカン分散液#7については、50pbwのポリウレタン水性分散液と50pbwの水性グルカン分散液とを使用した。分散液は室温で安定であった。
【0245】
ポリウレタン/グルカン分散液#8の調製
100重量部(pbw)のFOMREZ(登録商標)44-56ポリオールと、6.7pbwのジメチロールプロピオン酸とを135℃でブレンドした。混合物を80℃まで冷ました。この混合物を46.4重量部のイソホロンジイソシアネートに数回に分けて添加した。少量(0.047pbw)のDABCO T-12を触媒として添加した。混合を80℃で1.5時間継続した。イソシアネート官能性プレポリマーを60℃まで冷却し、トリエチルアミン5.1pbwを添加した。トリエチルアミンを添加した後、混合物を40℃まで冷却した。その後、240pbwの水を激しく混合しながら滴下した。その後、混合しながら403pbwの水性グルカン分散液を滴下した。次いで、混合しながら5.51pbwのエチレンジアミンを添加し、添加が完了した後に30分間攪拌した。
【0246】
フィルム5~8ならびに比較フィルムBおよびCの作製
ドクターブレードを使用して分散液をポリプロピレンパネル上にコーティングすることにより、ポリウレタン水性分散液B、ポリウレタン/グルカン分散液5~8、および水性グルカン分散液のフィルムを作製した。フィルムは、ドクターブレードを用いて各分散液をスチールパネル(Q-パネル、S-46スチールパネル)上にコーティングすることによっても作製した。フィルムは試験前に3日間室温で乾燥させた。各フィルムを、引張強さおよび伸び(ASTM D2370);水吸収(室温で3日間水に浸漬);硬度、鉛筆ゲージ硬度(ASTM D3363);耐衝撃性(ASTM D2794);接着テープ試験(ASTM D3359-97、試験方法A、Xカットテープ試験、Scotch Magicテープ、3Mから入手可能);について試験した。結果は表4の中で見られる。
【0247】
接着剤としての分散液の特性を試験するために、各分散液0.2gをアルミニウム基板(1×4×0.063インチ、Q-Lab、AR-14パネル)に乗せ、1/2×1インチの接着領域の上に広げた。第2のパネルを分散液の上に置き、2枚のパネルを一体に挟んで固定し、試験前に3日間室温で乾燥/コンディショニングした。接着特性は、重ねせん断試験、ASTM D1002を用いて測定した。分離した接着パネルを95%の湿度で3日間、38℃で寝かせてから試験した。結果は表5で見ることができる。水性グルカン分散液Cから得られたフィルムは非常に脆く、それ以上試験しなかった。
【0248】
【表6】
【0249】
耐衝撃性は、1/2インチ(1.27cm)圧子パンチ重量および21lb(9.52kg)の落下重量で実施した。落下高さは49インチ(124.5cm)であった。
【0250】
【表7】
【0251】
表4および5の結果は、ポリα-1,3-グルカンをポリウレタンポリマーに組み込むことにより、接着性および硬度を維持しながらも、50、100、および200%の伸びおよび破壊荷重でより大きい引張応力が得られることを示している。
【0252】
ポリウレタン/グルカンでコーティングされた布地の作製
ポリウレタン/グルカン分散液9、10、11、12、ならびに比較ポリウレタン分散液DおよびEの調製
いくらかの自己架橋特性を有するEdolan SNと、架橋剤としてのEdolan XClを含むEdolan GSとの、2種の市販の水性ポリウレタン分散体を選択した。成分の説明については表6を参照のこと。次の手順を使用してポリウレタン/グルカン分散液を調製した。調製した各分散液について、使用した成分およびその量を表7に示す。比較分散液DおよびEはグルカンを全く含んでいなかった。ポリα-1,3-グルカン(40重量%のウェットケーキ粉末、DP800)を、粘度が高い均一な分散液が得られるまで6000rpmでDispermat(登録商標)ミキサーを使用して水中の10重量%スラリー(グルカン分散液)として分散させた。その後、グルカン分散液をポリウレタン分散液に添加し、Edolan XTPを添加することにより全体の粘度を調整した。粘度は、分散液9~12ならびに比較分散液DおよびEの全てについてほぼ同じになるように調整した。グルカン対ポリウレタンポリマーの選択した比率は15/85および25/75であった(配合の詳細については表7を参照)。グルカンは、分散が不安定になる問題なしに分散液の中へ容易に分散することができた。
【0253】
【表8】
【0254】
【表9】
【0255】
コーティングされた布地試料9、10、11、12、ならびに比較試料DおよびEの作製および評価
各分散液を、Concordia Textileから入手したA4サイズのW004ポリエステル織布上にコーティングした。コーティングユニットは、Mathis LTE-Sのラボコーターであった。100μmのブレードコーターを使用して基材をポリウレタン/グルカン分散液でブレードコーティングした。その後、コーティングされた布地試料を110℃で1分間乾燥させてから160℃で2分間硬化させた。
【0256】
各コーティングされた布地試料を、静水圧/水浸透に対する耐性(EN20811)、水蒸気透過(ASTM E96)、および耐磨耗性(EN12947)について評価した(括弧内に示されている方法による)。
【0257】
コーティングされた布地試料によって支持される静水頭は、コーティングされた布地を通る水の通過に抗する尺度である。試験片は、標準条件下で3か所に浸透が生じるまで、絶え間なく増加された水の圧力を1つの面で受ける。水が3番目の場所で布地に浸透した際の圧力を記録する。試験はコーティングされた面で行った。
【0258】
水蒸気透過度(WVTR)は、ASTM E96に従って、32℃の温度および50%の相対湿度で評価した。デシカント法では、試験片を乾燥剤が入っている試験皿の開口部に密封し、このアセンブリを制御された雰囲気の中におく。定期的に計量することによって、試験片を通って乾燥剤の中へ移動する水蒸気の速度を決定する。
【0259】
コーティングされた布地試料の耐磨耗性は、防護服材料の耐摩耗性を決定するEN530に従って評価した。研磨材はサンドペーパー(タイプF2)であった。印加圧力は9kPaであった。500サイクル後、重量損失を決定した。
【0260】
【表10】
【0261】
ポリウレタン配合物へのグルカンの添加は、コーティングされた布地の水不透過性を損なわなかった。これは防水コーティングの重要な要件である。また、ポリウレタン配合物へのグルカンの添加により、コーティングされた布地の耐摩耗性は最小限しか影響を受けず、許容可能なレベルにとどまった。ポリウレタン/グルカン分散液を含むコーティングを有する布地は、重要な性能基準を維持しながらも、100%のポリウレタンを主体とするコーティングを有する比較布地DおよびEと比較して、水蒸気透過度の有意な増加を示した。
【0262】
粘弾性(メモリー)ポリウレタン/グルカン発泡体の作製
粘弾性発泡体を作製するために使用した原材料は表9に記載されている。グルカン以外の全ての材料は、供給業者から受け取ったままの状態で使用した。
【0263】
ポリα-1,3-グルカンの4つの試料を使用してポリウレタン/グルカン粘弾性発泡体を作製した。全てのグルカン試料は使用前に60℃で一晩乾燥させた。
【0264】
グルカン#1は、本明細書の上で記載した通りに調製したウェットケーキであった。グルカン#1を、実施例13A~13Fの配合物および発泡体で使用した。
【0265】
グルカン#2およびグルカン#3は、粉砕したウェットケーキの2つの異なるバッチであった。ウェットケーキを、流動床ジェットミルを用いて5ミクロンのd50に粉砕した。実施例14A~14Cおよび実施例15A~15Cの配合物および発泡体にはグルカン#2を使用した。
【0266】
グルカン#4は、乾燥されてから20メッシュ未満にふるい分けされたウェットケーキであった。実施例17A~17Fの配合物および発泡体にはグルカン#4を使用した。
【0267】
比較例Fおよび比較例Gは、グルカンを全く用いずに作製したポリウレタン配合物および発泡体であった。
【0268】
【表11】
【0269】
触媒および添加する水の調節を全くせずに、4種のポリオールPoly-G 30-240、Poly-G 76-120、Poly-G 85-34、およびLumulse POE 26の比例的な代替として、乾燥グルカンをモデル発泡体配合物の中に入れた。
【0270】
全ての発泡体は、高トルクミキサー(CRAFSTMAN 10インチドリルプレス、モデル番号137.219000)を用いて3,100rpmの速度で作製した。全ての発泡実験において、発泡系のポリオール成分とイソシアネート成分とを10秒間混合した。その後、混合物をポリエチレンライナーで覆われた開放系ポリエチレン容器に移し、フリーライズさせた。膨張時間の後、発泡体を直ちに70°に予熱した空気循環式オーブンの中に60分間入れて硬化を完了させた。
【0271】
全ての発泡体は、試験前に最低1週間室内条件下で寝かせた。指示がない限り、300gのポリオール成分を使用して作製した発泡体に対して試験を行った。
【0272】
以下の特性をASTM D 3574-08に従って測定した:
- 泡密度(試験A)、
- ボール反発よる弾性(試験H)、
- 破断引張強さ(試験E)、
- 破断伸び(試験E)、
- 引裂き強さ(試験F)、
- CFD、25%、50%、および65%のたわみでの圧縮力たわみ(修正された試験C)、
- 60秒のドウェルタイムで50%たわみでのCFD(試験C)、
- ヒステリシス(手順B-CFDヒステリシスロス)、
- 乾燥定たわみ永久圧縮歪み(試験D)、
- 湿潤定たわみ永久圧縮歪み(試験Dおよび湿熱老化、試験L)
- 60秒のドウェルタイムで50%たわみでの湿潤老化したCFDの変化(試験Cおよび湿熱老化、試験L)。
【0273】
ASTM D624、ダイC法に従って引裂き強さも測定した。セルの大きさはASTM D 3576に従って測定した。
【0274】
回復時間は、社内プロトコルを用いてInstron試験機で測定した。測定パラメータは次の通りであった:
・試料寸法:2”×2”×1”
・圧子先端面積:18mm
・速度:500mm/分
・インデンテーション:80%
・保持時間:60秒。
【0275】
試験片を支持板上に置いた。圧子先端を試験片と接触させた。直ちに、試験片を500mm/分の速度でその初めの厚さの80%に押し込み、60秒間保持した。60秒のドウェルタイムの後、圧子を500mm/分の速度で0%のたわみに戻した。圧子の上方への動きの開始直後にストップウオッチをスタートさせた。圧子先端の跡が見えなくなってすぐに時間を記録した。更に2つの試験片で測定を繰り返し、平均回復時間を計算した。
【0276】
表10はグルカン#1を有する発泡体の配合物を示し、表11はこれらの発泡体の特性を示す。
【0277】
表12はグルカン#2を有する発泡体の配合物を示し、表13はこれらの発泡体の特性を示す。
【0278】
表14はグルカン#2および異なる界面活性剤を有する発泡体の配合物を示し、表15はこれらの発泡体の特性を示す。
【0279】
表16はグルカン#3を有する発泡体の配合物を示し、表17はこれらの発泡体の特性を示す。
【0280】
表18および19はグルカン#4を有する発泡体の配合物を示し、表20はこれらの発泡体の特性を示す。
【0281】
【表12】
【0282】
【表13】
【0283】
【表14】
【0284】
【表15】
【0285】
【表16】
【0286】
【表17】
【0287】
【表18】
【0288】
【表19】
【0289】
【表20】
【0290】
【表21】
【0291】
【表22】
【0292】
【表23】
【0293】
マイクロセル発泡体の作製
マイクロセル発泡体を作製するために使用した原材料は表21に記載されている。グルカン以外の全ての材料は、供給業者から受け取ったまま使用した。
【0294】
ポリウレタン/グルカンマイクロセル発泡体を作製するために、乾燥ポリα-1,3-グルカンの2つの試料を使用した。全てのグルカン試料は使用前に60℃で一晩乾燥させた。
【0295】
グルカン#5および#6は、本明細書の上で記載した通りに調製し、更に処理したウェットケーキであった。グルカン#5は、単離され、乾燥され、20メッシュ未満にふるい分けされたウェットケーキであった。実施例18A~18Dの配合物および発泡体ではグルカン#5を使用した。グルカン#6は、上述した方法で単離および乾燥されたウェットケーキであり、5ミクロン未満に粉砕した。実施例19A~19Fの配合物および発泡体にはグルカン#6を使用した。
【0296】
比較例Hおよび比較例Jは、グルカンを全く使用せずに作製したポリウレタン配合物および発泡体であった。
【0297】
【表24】
【0298】
全てのマイクロセルエラストマーは、高トルクミキサー(CRAFSTMAN 10インチドリルプレス、モデル番号137.219000)を用いて3,100rpmの速度で調製した。室温でコンディショニングしたポリウレタン系のポリオール成分の材料を400mLのポリプロピレン製tri-pourカップの中に量り入れ、ドリルミキサーで30秒間混合した。次いで、ポリオール成分が入っている容器の中にイソシアネート成分を量り入れ、直ちにドリルミキサーで20秒間混合した。その後、混合物を1000mLのポリプロピレン製tri-pourカップに注ぎ、自由膨張させるか、予熱したアルミニウムモールドに入れ、次いでこれを閉じ、周囲温度で15分間放置してから型から取り出した。
【0299】
ポリウレタン系のポリオール成分の材料をポリプロピレンカップに入れ、下の表に列挙した順序で高トルクミキサーで混合したが、Dabco T-12は、Speed Mixer DAC 400V(FlackTek)を用いて2100rpmで60秒間混合することにより予め1,4-ブタンジオールとブレンドした。
【0300】
フリーライズ発泡体について、クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム、およびタックフリータイムを測定した。フリーライズ発泡体を、室温で30分間カップ内で硬化させた後に取り出した。
【0301】
6mmのフレームを有するアルミニウムモールドを70℃で予熱し、12mmのフレームを有するモールドを50℃に予熱してから、ポリウレタン系のイソシアネートとポリオール成分との混合物を注ぎ入れた。マイクロセルエラストマーの成形に使用したモールドの表面は、ブラシを用いて離型剤PU-11331(離型剤、Chem-Trend)で被覆した。
【0302】
全てのマクロセルエラストマーは、試験前に最低1週間、室内条件下で寝かせた。試験方法および条件を表22に示す。
【0303】
【表25】
【0304】
表23は、多糖を10%組み込んだ一般的なフリーライズ配合物を示す。様々な重量パーセンテージでグルカン#5またはグルカン#6を用いて製造したマイクロセルエラストマーについて、更に詳細に特性を調べた。2種のポリオールPoly-G 55-25およびPoly-G 85-29の比例的な完全互換品として乾燥多糖を、ならびに鎖伸長剤としての1,4-BDを配合物に導入した。結果として、ポリウレタンマトリックスの一部(ある割合の2種のポリオール、鎖延長剤、およびイソシアネート成分)を多糖で置き換えた。
【0305】
多糖は、ポリオール成分中に直接添加される水の量を全く調節せずに導入した。結果として、多糖の添加により理論的には水の合計が増加した。乾燥多糖中の含水率が1%であると仮定して化学量論量を計算した。
【0306】
【表26】
【0307】
表24は、グルカン#5を含有するフリーライズおよび成形マイクロセルエラストマーのための配合物を示し、表25は、これらの特性を示す。
【0308】
表26は、グルカン#6を含有するフリーライズおよび成形マイクロセルエラストマーのための配合物を示し、表27は、これらの発泡体の特性を示す。
【0309】
【表27】
【0310】
【表28】
【0311】
【表29】
【0312】
【表30】
【0313】
【表31】
【0314】
【表32】
【0315】
実施例20および比較例J
接着剤用途のための水系ポリウレタン分散液(PUD)中でのポリα-1,3-グルカンサクシネートの使用
ポリα-1,3-グルカンサクシネートの調製
ポリα-1,3-グルカンサクシネートを、下の表28に示されている具体的な量を使用して、次の手順に従って調製した。ジャケット付き反応器に水および50%NaOHを入れ、系を60℃に平衡化させた。その後、グルカンウェットケーキをミキサーに入れ、その直後に無水コハク酸粉末を系に添加した。次いで、反応を60℃の一定温度で1時間維持した。反応が完了した後、系をろ過し、脱イオン水で洗浄した。最初のろ過(これにより約3.5kgの水を除去)の後、固体物質を3kgの水で再スラリー化し、再度ろ過することで、ウェットケーキとしてのポリα-1,3-グルカンサクシネートを得た。
【0316】
ウェットケーキとしてのポリα-1,3-グルカンサクシネートの含水率は72.4%であることが分かった。多糖は分子構造が直鎖であり、非水溶性であった。
【0317】
【表33】
【0318】
接着剤配合物
比較例Jの対照のPUDは、次の通りに調整した:脂肪族ジイソシアネートをポリエステルポリオールジオールおよび鎖延長剤(DMPA)と反応させてペンダントカルボキシル基をプレポリマー主鎖に導入することにより、脂肪族イソシアネートプレポリマーを合成した。カルボキシル基をトリエチルアミンで中和して、プレポリマーの水中での分散を可能にする塩の基を形成した。プレポリマーの水中への分散は、激しく混合しながら(2200rpm)1分間行った。最後に、水分散プレポリマーをエチレンジアミンと重合させてPUD対照を形成した。
【0319】
実施例20のPUD-多糖分散液は、脂肪族イソシアネートプレポリマーをポリアルファ-1,3-グルカンサクシネートウェットケーキと水中で最初に混合(2200rpmで1分間)することによって調製した。その後、約20重量%のポリアルファ-1,3-グルカンサクシネートの存在下で、プレポリマーとエチレンジアミンとのin situ重合を行った。in situ重合により、イソシアネートがポリアルファ-1,3-グルカンサクシネートで共有結合によりグラフトされると見込まれる。比較例Jおよび実施例20に使用した組成物を表29に示す。
【0320】
【表34】
【0321】
表29に示した通りに調製した分散液を、アルミニウム金属基板上の一液型接着剤として評価した。1×4×0.063インチ(2.54cm×10.16cm×0.16cm)の標準化されたアルミニウム板を接着試験の基板として使用した。標準化された接着試験板の0.5インチ×1インチ(1.27cm×2.54cm)の接着領域の上に0.2gの各調製した水分散接着剤を広げた。2枚の板を接着領域の上から一体に挟んで固定し、50℃で3日間硬化させた。その後、樹脂の接着性能を、ASTM D1002に従って重ねせん断試験を用いてアルミニウム基板上で試験した。結果を表30に示す。
【0322】
【表35】
【0323】
比較例Jと実施例20の両方の配合物の接着破壊は凝集であり、接着剤自体が頑丈であることを示している。せん断強度試験からは、約20重量%のポリα-1,3-グルカンサクシネートウェットケーキを組み込むと、比較例JのPUD配合物と比較して接着強度が85%増加することが明確に示された。実施例20の配合物から製造された接着層の破断荷重および破断伸びの、比較例Jの配合物と比較したそれぞれ100.7%および53.3%の改善は、多糖による靭性の改善である。複合接着剤配合物のこれらの接着性能の改善は、無水コハク酸による修飾によって誘導されたその優れた分散性と組み合わされたポリα-1,3-グルカンサクシネートの固有の強度および強化能力に起因すると考えられる。また、PUDとポリα-1,3-グルカンサクシネートとの間の可能な共有結合によるグラフト化も、これらの観察されたことの理由であると考えられる。
【0324】
比較例Kおよび実施例21
尿素-エラストマーにおけるポリエーテルアミン分散液の使用
多糖を、様々な分子量範囲を有するポリエーテルジアミンおよびポリエーテルトリアミンの中に分散させた。多糖(実施例21)として本明細書の上で記載した通りに調製したポリα-1,3-グルカンサクシネートを使用した配合物、および多糖を含まない対照の配合物(比較例K)は、表31に示されている。実施例21の配合物では、約10重量%のポリエーテルトリアミンを多糖で置き換えた。ポリプロピレングリコール主鎖および約5000g/molの分子量を有する三官能性一級アミンであるJEFFAMINE(登録商標)T-5000と、主鎖に繰り返しオキシプロピレン単位を有し約2000g/molの分子量を有する二官能性一級アミンであるJEFFAMINE(登録商標)D-2000との2種類のポリエーテルアミンを使用した。
【0325】
実施例21および比較例Kのそれぞれについて、表31に示す通りのプレポリマーおよび樹脂を多軸ミキサー中で25秒間混合し、硬化のためのモールドに注いだ。硬化は25℃で3時間行った。硬化したエラストマーを離型し、機械的特性および熱的特性の評価のために試験片を作製した。引張強さ、伸び、および弾性率などの機械的特性は、ASTM D638に従ってInstronを用いて測定した。結果を表32に示す。
【0326】
【表36】
【0327】
【表37】
【0328】
ポリエーテルアミン中および後の配合物中での湿った状態の多糖の安定した分散が得られたことが観察された。配合物中で多糖を使用することで、目に見える多糖粒子がない均一なフィルムが得られた。硬化温度および混合時間は、多糖の使用によっては影響を受けなかった。
【0329】
引張特性の分析(表32)から、Jeffamine(登録商標)T 5000における分散液による多糖の使用が、尿素-エラストマーの引張強さを増加させるが、破断伸びは影響を受けないままであることが示された。したがって、このデータは、ポリα-1,3-グルカンサクシネート/Jeffamine(登録商標)5000分散液が、尿素-エラストマーの靭性を増加させ得ることを示している。
【0330】
対照(比較例K)および多糖を主体とする配合物(実施例21)の熱特性分析からは、エラストマーが約-59℃での一次ガラス転移温度および約50℃での二次ガラス転移を有することが示された。多糖の導入は、尿素エラストマーの全体の熱特性に影響を与えなかった。
【0331】
実施例22
比較例L
乾燥ポリα-1,3-グルカン粉末を使用して、本明細書においてヒドロキシプロピルグルカンBと呼ぶグルカンエーテルの2つのバッチを製造した。ヒドロキシプロピルグルカンBは、米国特許第9,139,718号明細書に記載されているものと同様の手順を用いて調製した。モル置換(MoS)を変えるために、プロピレンオキシド(PO)対アンヒドログルコース単位(AGU)の比を調整した。ヒドロキシプロピルグルカンBを調製するために使用した試薬のモル比は、1AGU、16PO、および0.4NaOHであった。本明細書で使用する用語「モル置換」は、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物のモノマー単位当たりの有機基のモルを指す。ポリα-1,3-グルカンのモル置換の値には上限がない場合があることに留意されたい。例えば、ヒドロキシル基を含有する有機基(例えばヒドロキシプロピル)がポリα-1,3-グルカンにエーテル化されている場合は、有機基のヒドロキシル基が更に反応してポリα-1,3-グルカンにより多くの有機基を結合させる場合がある。
【0332】
グルカンエーテルの特徴を表33に示す。
【0333】
【表38】
【0334】
方法
ヒドロキシプロピルグルカンBのヒドロキシル価は、次の手順を用いてp-トルエンスルホニルモノイソシアネート(TSI)により決定した。
【0335】
トルエンは、モレキュラーシーブ上で24時間乾燥させた。ASTM D 4672によりカールフィッシャーを用いて決定した乾燥トルエンの含水率は0.01%であった。テトラヒドロフラン(THF)(100mL)およびTSI(6.0g)を密封可能な瓶の中に量り入れ、磁気攪拌子で2時間混合した。この溶液のNCO%は、自動滴定装置Mettler Toledo T-50を用いてASTM D 4274法に従って決定した。ポリオールと多糖との水分を除去したブレンド物(約0.7g)を10mLのTSI-THF混合物に溶解し、密閉したガラスバイアルの中で5分間撹拌しながら反応させた後、未反応イソシアネートをジブチルアミン法(ASTM D 4274)により滴定した。NCO%の変化を用いてポリオール試料の当量を計算した。多糖のヒドロキシル価は、試験のためにTHF中の10%の多糖の試料を使用することによって決定した。
【0336】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)配合物および特性
多糖をTHFの中に溶解させ、次いでポリオールの中にブレンドした。THFおよび水分を真空で除去した。
【0337】
多糖を含有する熱可塑性ポリウレタンの2つの試料を調製した。各試料について、ヒドロキシプロピルグルカンBの公称10%のTHF溶液100gを次の通りに調製した。この溶液に、90gのポリオールPOLY G55-112(EOでキャッピングされたPPGジオール、分子量1000g/mol、Monument Chemical,Brandenburg,KYから入手)を添加してブレンドした。ロータリーエバポレーターを用いてブレンド物からTHFを除去した。ブレンド物のヒドロキシル価を決定し、ポリウレタンエラストマーの計算に使用した。ポリウレタンエラストマー配合物は、1当量のポリオール、1当量の1,4-ブタンジオール鎖延長剤、および2.04当量の4,4’-MDIイソシアネート(イソシアネート指数1.02)に基づいた。
【0338】
ポリウレタンエラストマーは、従来の実験室圧縮成形法(Carverプレス)を用いて調製した。ポリオールと多糖とのブレンド物、鎖延長剤1,4-BDをスピードミキサーカップの中へ量り入れ、スピードミキサー(Flack Tek Inc.)を用いて2200rpmで30秒間混合し、続いて空気循環式オーブンの中で100℃で15分間加熱した。70℃でコンディショニングした液体イソシアネートを、シリンジによりポリオールと鎖延長剤との混合物に添加した(表34に示す量)。全ての成分をスピードミキサーにより2200rpmで混合し、120℃で予熱したTeflonシートで覆ったアルミニウムモールドに移した。ゲルタイムでモールドを閉じ、TPUを120℃で2時間硬化させた。その後、試料を空気循環式オーブンの中で100℃で32時間後硬化させた。
【0339】
試料を試験前に室内条件で1日間室温で寝かせた。エラストマーの応力-歪み特性はASTM D 412により試験した。多糖を含まない対照(比較例L)およびヒドロキシプロピルグルカンBを含む2つの試料(多糖については「PS」、実施例22Aおよび22B)の配合および特性を表34に示す。実施例22Aについては、使用した多糖(ヒドロキシプロピルグルカンB)の量は、Poly G 55-112および多糖の総重量を基準として9.8重量%であった。実施例22Bについては、使用した多糖(ヒドロキシプロピルグルカンB)の量は、Poly G 55-112および多糖の総重量を基準として10.3重量%であった。
【0340】
【表39】
【0341】
実施例22Bでは、ヒドロキシプロピルグルカンBを含むTPU配合物は、ソフトセグメントの-7.8℃での熱転移およびハードセグメントの177℃での熱転移を示す。類似の対照(比較例L)は、-6.7℃の熱遷移のみを示す。引張り強さは維持されているが、対照と比較して大きい弾性率を示す。100%伸びでの引張強さは5倍大きい。破断伸びは4倍小さい。特性は、架橋を変化させることによって調整することができる。