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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】発光ダイオードを備えた光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/32 20100101AFI20230704BHJP
   H01L 33/36 20100101ALI20230704BHJP
   H01L 33/44 20100101ALI20230704BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L33/36
H01L33/44
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019535789
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084776
(87)【国際公開番号】W WO2018122354
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】1663509
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ツェン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェイ シン
(72)【発明者】
【氏名】ベイックス,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ジレー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】チョウルフィアン,ピエール
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3174776(JP,U)
【文献】国際公開第2016/034388(WO,A1)
【文献】特開2012-031047(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0008456(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0155900(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0034984(US,A1)
【文献】特開2016-178307(JP,A)
【文献】特開2002-359402(JP,A)
【文献】特開2016-127249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0037885(US,A1)
【文献】特表2015-501085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイスを製造する方法であって、
a) 少なくとも部分的に半導体材料から形成されている基板を準備する工程、
b) 対向する第1の面及び前記基板の側の第2の面を有し、複数の発光ダイオードを更に有する、半導体層の積層体を、対向する第3の面及び第4の面を有する前記基板の前記第3の面上に形成する工程、
c) 前記第1の面の側で前記積層体を板状の制御回路に接合する工程、
d) 工程c)の後、前記発光ダイオードの少なくとも一部に対向する貫通開口部を前記第4の面の側から前記基板に形成し、前記基板に壁を画定する工程、
e) 前記貫通開口部の少なくとも一部内の前記第2の面に前記積層体と接するように導電性パッドを形成する工程、及び
f) 前記貫通開口部の少なくとも一部に光輝性ブロックを形成する工程
を連続的に有することを特徴とする方法。
【請求項2】
工程c)と工程d)との間に、前記基板を薄くする工程を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の面と直交する方向に測定された、薄くする工程の後の前記基板の高さは、500 nm~200 μmの範囲内であり、好ましくは5μm~30μmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)で、前記積層体の半導体層の少なくとも1つの成長を有利にする材料から、前記基板と接するシード層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記シード層を、窒化アルミニウム(AlN) 、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN) 、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN) 、窒化アルミニウムインジウム(AlInN) 又は窒化シリコン(SiN) から少なくとも部分的に形成し得ることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板は、電気絶縁層によって覆われた支持体を有し、前記電気絶縁層は半導体層によって覆われ、
工程b)で、前記半導体層と接するように前記積層体を前記半導体層上に形成することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、SOI 基板であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程d)で、前記支持体を完全にエッチングして、前記電気絶縁層及び前記半導体層をエッチングして前記貫通開口部を形成することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程c)の前に、前記積層体をエッチングして前記第1の面から前記積層体に延びているトレンチを形成し、前記トレンチを電気絶縁性の被覆体で覆う工程を更に有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程c)の前に、前記積層体にイオンを注入して、前記第1の面から前記積層体に延びる電気絶縁性の領域を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程a)で準備される基板は、前記半導体材料及び前記半導体材料とは異なる充填材料から形成されたコアを含む基板であり、
前記壁の所望の位置に対応するように前記第3の面から前記基板をエッチングして開口部を形成し、その後、前記開口部に充填材料を堆積させることにより、前記コアを形成し、
工程d)で、前記基板での貫通開口部の形成を、残存しているコアが前記貫通開口部の周りで壁を画定するように、前記半導体材料を完全に除去することにより行うことを特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
複数の発光ダイオードを有し、対向する第1の面及び第2の面を更に有する積層体と、
前記積層体の前記第1の面に接合されている板状の制御回路と、
前記制御回路の反対側で前記積層体の前記第2の面上に置かれた半導体又は電気絶縁性材料から少なくとも部分的に形成された壁であって、前記発光ダイオードの少なくとも一部に対向する開口部を画定している前記壁と、
前記開口部の少なくとも一部に設けられた、前記積層体と接する導電性パッドと、
前記開口部の少なくとも一部内の光輝性ブロックと
を備えていることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項13】
前記第2の面と直交する方向に測定された前記壁の高さは、500 nm~200 μmの範囲内であり、好ましくは5μm~30μmの範囲内であることを特徴とする請求項12に記載の光電子デバイス。
【請求項14】
前記壁と前記積層体との間に、前記壁及び前記積層体と接するシード部分を更に備えており、前記シード部分は、前記積層体の半導体層の少なくとも1つの成長を有利にする材料から形成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の光電子デバイス。
【請求項15】
前記シード部分は、窒化アルミニウム(AlN) 、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN) 、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN) 、窒化アルミニウムインジウム(AlInN) 又は窒化シリコン(SiN) から少なくとも部分的に形成され得ることを特徴とする請求項14に記載の光電子デバイス。
【請求項16】
前記壁の最上部に電気絶縁部分を更に備えていることを特徴とする請求項12~15のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項17】
前記積層体内に延びて、電気絶縁性の被覆体で覆われているトレンチを更に備えていることを特徴とする請求項12~16のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項18】
前記積層体内に延びている電気絶縁性の領域を更に備えていることを特徴とする請求項12~17のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項19】
前記第2の面は、粗面化されているか、又は周期的なパターンを有していることを特徴とする請求項12~18のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項20】
前記導電性パッドは、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通す材料から形成されていることを特徴とする請求項12~19のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項21】
前記第1の面から前記第2の面に前記積層体を貫通する電気接続部を更に備えており、前記電気接続部は、前記積層体の半導体層から絶縁され、前記壁と接していることを特徴とする請求項12~20のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項22】
前記壁は、電気絶縁層で覆われた半導体材料のコアを有していることを特徴とする請求項12~21のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体材料に基づく発光ダイオードを備えた光電子デバイス、特に表示画面又は画像投影デバイス、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像の画素は、光電子デバイスによって表示される画像の単位素子に相当する。光電子デバイスがカラー画像を表示する光電子デバイスである場合、光電子デバイスは一般に、画像の各画素を表示するために表示サブ画素とも称される少なくとも3つの成分を備えており、これらの成分は実質的に単一色(例えば赤、緑及び青)で光放射線を夫々放射する。3つの表示サブ画素によって放射される放射線を重ね合わせることにより、表示画像の画素に対応する色感覚が観察者に与えられる。この場合、画像の画素を表示するために使用される3つの表示サブ画素によって形成される集合体が光電子デバイスの表示画素と称される。
【0003】
例えば、以下III-V 族化合物と称される少なくとも1つのIII 族元素及び1つのV 族元素、特に窒化ガリウム(GaN) を含む半導体層の積層体を有する半導体材料に基づく発光ダイオードを備えた光電子デバイスがある。
【0004】
光輝性材料のブロックが半導体層の積層体上に形成され得る。各ブロックは、発光ダイオードによって放射される放射線を所望の放射線に変換すべく適合されている。ブロックは、サブ画素配置に応じて半導体層の積層体上に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示装置では、1つのサブ画素に関連付けられた発光ダイオードによって放射される光が別のサブ画素に関連付けられた光輝性ブロックに達すると、クロストークが生じる。サブ画素間のクロストークを低減するために、光輝性ブロック間に不透明壁又は反射壁を設けることが知られている。壁は電気めっき技術によって形成され得る。しかしながら、このような技術により、サブ画素の大きさ及び光輝性ブロックの大きさに適した縦横比で壁を形成することは一般に不可能である。
【0006】
実施形態の目的は、発光ダイオードを備えた前述した光電子デバイスの不利点の全て又は一部を克服することである。
【0007】
実施形態の別の目的は、隣り合うサブ画素間のクロストークを低減することである。
【0008】
実施形態の別の目的は、発光ダイオードが例えば主にIII-V 族化合物を含む半導体層の積層体を備えていることである。
【0009】
実施形態の別の目的は、発光ダイオードからの赤、緑及び青の自然の色が同一のブロックにない場合、壁が色変換層を収容するためにキャビティを形成することである。例えば主にIII-V 族化合物を含む発光ダイオードからの赤、緑及び青の自然の色が同一のブロックにある場合、壁が画素ブロックのためのサブ画素の機能を果たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、実施形態は、光電子デバイスを製造する方法であって、
a) 少なくとも部分的に半導体材料から形成され、対向する第1及び第2の面を有する基板を準備する工程、
b) 対向する第3の面及び前記基板の側の第4の面を有し、発光ダイオードを更に有する、半導体層の積層体を前記第1の面上に形成する工程、
c) 前記第3の面の側で前記積層体を電子回路に接合する工程、
d) 前記発光ダイオードの少なくとも一部に対向する貫通開口部を前記第2の面の側から前記基板に形成し、前記基板に壁を画定する工程、
e) 前記貫通開口部の少なくとも一部内の前記第4の面に前記積層体と接するように導電性パッドを形成する工程、及び
f) 前記貫通開口部の少なくとも一部に光輝性ブロックを形成する工程
を連続的に有することを特徴とする方法を提供する。
【0011】
実施形態によれば、工程b)で、前記積層体の半導体層の少なくとも1つの成長を有利にする材料から、前記基板と接するシード層を形成する。
【0012】
実施形態によれば、前記シード層を、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウムインジウムガリウム、窒化アルミニウムインジウム又は窒化シリコンから少なくとも部分的に形成し得る。
【0013】
実施形態によれば、前記基板は、電気絶縁層によって覆われた支持体を有し、前記電気絶縁層は半導体基部によって覆われ、工程b)で、前記半導体基部と接するように前記積層体を前記半導体基部上に形成する。
【0014】
実施形態によれば、工程d)で、前記支持体を完全にエッチングして、前記電気絶縁層及び前記半導体基部を通って前記貫通開口部をエッチングする。
【0015】
実施形態によれば、前記方法は、工程c)の前に、前記第3の面から前記積層体に延びているトレンチを前記積層体にエッチングして、前記トレンチを電気絶縁性の被覆体で覆う工程を更に有する。
【0016】
実施形態によれば、前記方法は、工程c)の前に、前記積層体にイオンを注入して、前記第3の面から前記積層体に延びる電気絶縁性の領域を形成する工程を更に有する。
【0017】
実施形態によれば、前記方法で、工程b)の前に、前記第1の面から前記基板内に開口部を形成して、前記基板とは異なる材料の一部で少なくとも形成された壁を前記開口部に形成し、更に、工程d)で前記基板を除去して前記壁を露出する。
【0018】
別の実施形態は、発光ダイオードを有する積層体と、
前記積層体上に置かれた半導体又は電気絶縁性材料から少なくとも部分的に形成された壁であって、前記発光ダイオードの少なくとも一部に対向する開口部を画定している前記壁と、
前記開口部の少なくとも一部に設けられた、前記積層体と接する導電性パッドと、
前記開口部の少なくとも一部内の光輝性ブロックと
を備えていることを特徴とする光電子デバイスを提供する。
【0019】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記壁と前記積層体との間に、前記壁及び前記積層体と接するシード部分を更に備えており、前記シード部分は、前記積層体の半導体層の少なくとも1つの成長を有利にする材料から形成されている。
【0020】
実施形態によれば、前記シード部分は、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウムインジウムガリウム、窒化アルミニウムインジウム又は窒化シリコンから少なくとも部分的に形成され得る。
【0021】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記壁の最上部に電気絶縁部分を更に備えている。
【0022】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記積層体内に延びて、電気絶縁性の被覆体で覆われているトレンチを更に備えている。
【0023】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記積層体内に延びている電気絶縁性の領域を更に備えている。
【0024】
実施形態によれば、前記積層体は、粗面化された面又は周期的なパターンを有している。
【0025】
実施形態によれば、前記導電性パッドは、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通す材料から形成されている。
【0026】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記第3の面から前記第4の面に前記積層体を貫通する電気接続部を更に備えており、前記電気接続部は、前記積層体の半導体層から絶縁され、前記壁と接している。
【0027】
実施形態によれば、前記壁は、電気絶縁層で覆われた半導体材料のコアを有している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
前述及び他の特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない特定の実施形態について以下に詳細に説明する。
【0029】
図1】光電子デバイスの実施形態を示す断面略図である。
図2】光電子デバイスの実施形態を示す平面図である。
図3】光電子デバイスの他の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図4】光電子デバイスの他の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図5】光電子デバイスの他の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図6】光電子デバイスの他の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図7A図1に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図7B図1に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図7C図1に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図7D図1に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図7E図1に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図8A図3に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図8B図3に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図8C図3に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図8D図3に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図9】光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図10A図9に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図10B図9に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図10C図9に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図10D図9に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図10E図9に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図10F図9に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図10G図9に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
明瞭化のために、同一の要素は様々な図面において同一の参照番号で示されており、更に、電子回路の表示ではよくあるように、様々な図面は正しい縮尺で示されていない。更に、本明細書の理解に有用な要素のみが示され説明されている。特に、光電子デバイスの発光ダイオードにバイアスをかけるための手段は公知であり、説明されていない。
【0031】
以下の記載では、「実質的に」、「約」及び「程度」という用語は、特に示されていない場合、「10%の範囲内」を意味する。更に、発光ダイオードの「活性領域」は、発光ダイオードによる電磁放射線の大部分を放射する発光ダイオードの領域を表す。更に、第1の要素がエピタキシャル関係によって第2の要素に結合していると言うとき、これは、第1の要素が第1の層から形成され、第2の要素が第1の層上にエピタキシによって成長する第2の層から形成されているか、又はその逆を意味する。
【0032】
更に、本開示との関連で使用されるような「粒子」という文言は広い意味で理解されるべきであり、略球状の密集した粒子だけでなく、角のある粒子、平坦な粒子、フレーク状の粒子、繊維形状の粒子又は繊維状の粒子などにも相当する。本開示との関連で述べられる粒子の「サイズ」は、粒子の最小横断寸法を意味すると理解されるべきである。材料の粒子は、材料が粒子クラスタの形態で生じる場合があると分かった上で、個々に検討される粒子、すなわち、材料の単位要素を意味する。粒子の「平均サイズ」という語句は、本開示によれば、粒子サイズの算術平均、すなわち、粒子サイズの合計を粒子の数で割った数字を意味する。粒子の粒度分布は、例えばMalvern Mastersizer 2000を使用してレーザ粒度測定によって測定されてもよい。
【0033】
図1及び図2は、例えば表示画面又は画像投影デバイスに対応する光電子デバイス10の実施形態を示す。
【0034】
光電子デバイス10は2つの集積回路12, 14を備えている。第1の集積回路12は発光ダイオード16を有しており、以下の記載では光電子回路又は光電子チップと称される。第2の集積回路14は、第1の集積回路12の発光ダイオード16を制御するために使用される電子部品(不図示)、特にトランジスタを有している。第2の集積回路14は、以下の記載では制御回路又は制御チップと称される。光電子回路12は制御回路14に接合されている。接合タイプに応じて、ボンディングパッド18が光電子チップ12と制御チップ14との間に設けられてもよい。
【0035】
実施形態によれば、発光ダイオード16は、対向する2つの面20, 21を有する半導体層の積層体19によって形成されている。積層体19は、図1の下から上に、
第1の導電型、例えばP型にドープされて面20を画定している半導体層22、
活性領域23、及び
第1の導電型と反対の第2の導電型、例えばN型にドープされて面21を画定している半導体層24
を有している。
【0036】
光電子回路12は、半導体層24上に壁30を更に有している。壁30は、壁30と半導体層24との間に配置されているシード部分32上に置かれている。シード部分32は、半導体層24の面21及び壁30と接している。壁30は、面21の一部を露出する開口部34を画定している。実施形態によれば、壁30は格子を形成しており、開口部34は行及び列に配置されている。例として、9つのサブ画素Pix が図2に示されている。本実施形態では、開口部34は図2に示されているように正方形の形状を有している。しかしながら、開口部34の形状は異なってもよい。
【0037】
面21と接する導体パッド36が各開口部34内に配置されている。導体パッド36は導電性材料から形成されている。本実施形態では、導体パッド36は発光ダイオード16によって放射される光を通さなくてもよい。導体パッド36は、開口部34内の面21の露出した部分を部分的にのみ覆っていることが好ましい。本実施形態では、サブ画素Pix 毎に、導体パッド36が開口部34の4つの角部に設けられており、一部の導体パッド36は壁30に沿って延びている。更に、隣り合うサブ画素Pix の導体パッド36は、両方のサブ画素Pix を分離する壁30を越えて延びている結合部分37によって互いに接続されてもよい。変形例として、サブ画素Pix 毎に、導体パッド36が面21を覆う格子として配置されてもよい。
【0038】
面21と接する光輝性ブロック38が開口部34の少なくとも一部内に配置されている。光輝性ブロック38は図2には示されていない。一部の開口部34には光輝性ブロックが設けられなくてもよい。各光輝性ブロック38は蛍光体を有しており、蛍光体は、サブ画素Pix の発光ダイオード16によって放射される光によって励起されると、発光ダイオード16によって放射される光の波長とは異なる波長で光を放射することができる。
【0039】
光電子回路12は、半導体層22の側で制御回路14に接合されている。実施形態によれば、1つのボンディングパッド18がサブ画素Pix 毎に設けられている。
【0040】
動作中、電圧が導体パッド36とボンディングパッド18との間に印加されるため、サブ画素Pix 毎に、サブ画素Pix の開口部34に面する活性領域23の一部が、サブ画素Pix に関連付けられた導体パッド36とボンディングパッド18との間に印加される電圧に応じた強度で光を放射する。壁30は、隣り合うサブ画素Pix 間のクロストークを低減する。
【0041】
実施形態によれば、光抽出を改善するために開口部34内の面21の露出した部分を粗面化する及び/又はパターン化することができる。
【0042】
半導体層22, 24は、少なくとも1つの半導体材料から少なくとも部分的に形成されている。半導体材料は、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、III-V 族化合物、II-VI 族化合物、又はこれらの化合物の少なくとも2つの組み合わせであってもよい。半導体層22の厚さは10nm~1μmの範囲内である。半導体層24の厚さは10nm~10μmの範囲内である。半導体層24の厚さを減らすと、サブ画素間のクロストークが実質的に減少する。
【0043】
半導体層22, 24は、III-V 族化合物、例えばIII-N 化合物を主に含む半導体材料から少なくとも部分的に形成されてもよい。III 族元素の例として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)又はアルミニウム(Al)が挙げられる。III-N 化合物の例として、GaN 、AlN 、InN 、InGaN 、AlGaN 又はAlInGaN が挙げられる。他のV 族元素、例えばリン又はヒ素が使用されてもよい。一般に、III-V 族化合物内の元素は異なるモル分率で組み合わせられてもよい。
【0044】
半導体層22, 24は、II-VI 族化合物を主に含む半導体材料から少なくとも部分的に形成されてもよい。II族元素の例として、IIA 族元素、特にベリリウム(Be)及びマグネシウム(Mg)、並びにIIB 族元素、特に亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)が挙げられる。VI族元素の例として、VIA 族元素、特に酸素(O) 及びテルル(Te)が挙げられる。II-VI 族化合物の例として、ZnO 、ZnMgO 、CdZnO 、CdZnMgO 、CdHgTe、CdTe又はHgTeが挙げられる。一般に、II-VI 族化合物内の元素は異なるモル分率で組み合わせられてもよい。半導体層24は、エピタキシャル関係によってシード部分32に結合していることが好ましい。
【0045】
活性領域23は、発光ダイオードLED による放射線の大部分を放射する層である。実施例によれば、活性領域23は閉込め手段を有してもよい。活性領域23は単一量子井戸を有してもよい。そのため、活性領域23は、半導体層22, 24を形成する半導体材料とは異なり、半導体層22, 24のバンドギャップより小さなバンドギャップを有する半導体材料を含んでもよい。活性領域23は多重量子井戸を有してもよい。そのため、活性領域23は、量子井戸及び障壁層が交互に形成された半導体層の積層体を有している。活性領域23は、例えば、厚さが3~20nm(例えば6nm)のGaN 層及び厚さが1~30nm(例えば2.5 nm)のInGaN 層を交互に形成することにより得られる。GaN 層は、例えばN型又はP型にドープされてもよい。別の実施例によれば、活性領域は、例えば厚さが10nmより大きい単一のInGaN 層を有してもよい。活性領域23の層はエピタキシャル関係によって半導体層24に結合していることが好ましい。
【0046】
壁30は、少なくとも1つの半導体材料から少なくとも部分的に形成されている。半導体材料は、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、III-V 族化合物、II-VI 族化合物、又はこれらの化合物の少なくとも2つの組み合わせであってもよい。壁30は、マイクロエレクトロニクスで実施される製造方法と適合する半導体材料から形成されていることが好ましい。壁30は高濃度にドープされてもよく、低濃度にドープされてもよく、又はドープされなくてもよい。壁30は単結晶シリコンから形成されていることが好ましい。
【0047】
面21と直交する方向に測定された壁30の高さは、500 nm~200 μmの範囲内であり、好ましくは5μm~30μmの範囲内である。面21と平行な方向に測定された壁30の厚さは、100 nm~50μmの範囲内であり、好ましくは0.5 μm~10μmの範囲内である。図2を参照すると、開口部34の面積は、1μm~100 μm、好ましくは3μm~15μmの範囲内の辺を有する正方形の面積に相当する。
【0048】
実施形態によれば、壁30は、光輝性ブロック38及び/又は発光ダイオード16によって放射される放射線の波長のために反射材料から形成されるか、又は反射被覆体によって覆われることができる。
【0049】
シード部分32は、半導体層24の成長を有利にする材料から形成されている。シード部分32は、半導体層24を成長させるときにより少ない欠陥又はクラッキングを実現するために更に遷移層の機能を果たすことができる。例として、シード部分32を形成する材料はIII-窒化物材料であってもよい。例として、シード部分32は、窒化アルミニウム(AlN) 、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN) 、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN) 、窒化アルミニウムインジウム(AlInN) 又は窒化シリコン(SiN) から形成されてもよい。シード部分32は、壁30の導電型と同一の導電型にドープされてもよい。面21と直交する方向に測定されたシード部分32の厚さは、1nm~10μmの範囲内であり、好ましくは50nm~3μmの範囲内である。シード部分32は、エピタキシャル関係によって壁30に結合していることが好ましい。
【0050】
導体パッド36は、導電性材料、例えばアルミニウム、チタン、ニッケル、金、銀、銅又は亜鉛のような金属から形成されている。面21と直交する方向に測定された導体パッド36の高さは5nm~10μmの範囲内である。面21と平行な方向に測定された導体パッド36の厚さは1nm~100 μmの範囲内である。導体パッド36は半導体層24と接している。導体パッド36は更に壁30と接してもよい。
【0051】
各光輝性ブロック38は、少なくとも1つの光輝性材料の粒子を含んでいる。光輝性材料の例として、YAG:Ce又はYAG:Ce3+とも称される3価セリウムイオンによって活性化されるイットリウムアルミニウムガーネット(YAG) である。従来の光輝性材料の粒子の平均サイズは一般に5μmより大きい。
【0052】
実施形態では、各光輝性ブロック38は、以下半導体ナノ結晶とも称される半導体材料のナノメートル範囲の単結晶粒子が分散しているマトリクスを含んでいる。光輝性材料の内部量子効率QYintは、放射光子の数と光輝性物質に吸収される光子の数との比率に等しい。半導体ナノ結晶の内部量子効率QYint は5%より大きく、好ましくは10%より大きく、より好ましくは20%より大きい。
【0053】
実施形態によれば、半導体ナノ結晶の平均サイズは、0.5 nm~1,000 nm、好ましくは0.5 nm~500 nm、より好ましくは1nm~100 nm、特には2nm~30nmの範囲内である。50nmより小さい大きさでは、半導体ナノ結晶の光変換特性は基本的に量子閉込め現象に応じて決められる。そのため、半導体ナノ結晶は量子箱に相当する。
【0054】
実施形態によれば、半導体結晶の半導体材料は、セレン化カドミウム(CdSe)、リン化インジウム(InP) 、硫化カドミウム(CdS) 、硫化亜鉛(ZnS) 、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO) 、酸化亜鉛カドミウム(ZnCdO) 、硫化カドミウム亜鉛(CdZnS) 、セレン化カドミウム亜鉛(CdZnSe)、硫化銀インジウム(AgInS2)、及びこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を含む群から選択されている。実施形態によれば、半導体ナノ結晶の半導体材料は、Le Blevenec 等著のPhysica Status Solidi (RRL) - Rapid Research Letters Volume 8,No. 4,p. 349-352,2014年4月の刊行物に記載されている材料から選択されている。
【0055】
実施形態によれば、半導体ナノ結晶の大きさは、半導体ナノ結晶によって放射される放射線の所望の波長に応じて選択されている。例として、平均サイズが3.6 nm程度であるCdSeナノ結晶は、青色の光を赤色の光に変換することができ、平均サイズが1.3 nm程度であるCdSeナノ結晶は、青色の光を緑色の光に変換することができる。別の実施形態によれば、半導体ナノ結晶の組成は、半導体ナノ結晶によって放射される放射線の所望の波長に応じて選択されている。
【0056】
マトリクスは典型的には、光輝性ブロック38を形成するために蛍光体、サブミクロン蛍光体及びナノ結晶材料のような光輝性材料と混ぜ合わせられた封止材料から構成されている。マトリクスは、少なくとも部分的に透明な材料から形成されている。マトリクスは、例えばシリカから形成されている。マトリクスは、例えば、あらゆる少なくとも部分的に透明なプラスチック材料、特に少なくとも部分的に透明なポリマー、特にシリコーン又はポリ乳酸(PLA) 又はポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)から形成されている。マトリクスは、PLA のような三次元プリンタと共に使用される少なくとも部分的に透明なポリマーから形成されてもよい。実施形態によれば、マトリクスは、2~90質量%、好ましくは10~60質量%のナノ結晶、例えば約20質量%のナノ結晶を含んでいる。
【0057】
面21と直交する方向に測定された光輝性ブロック38の高さは100 nm~1mmの範囲内である。光輝性ブロック38の高さは、壁30及びシード部分32の高さの合計より低いことが好ましい。
【0058】
図3は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス40の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス40は、図1に示されている光電子デバイス10と同一の要素を備えており、壁30の最上部を覆う絶縁部分42を更に備えている。絶縁部分42は、以下に開示されるように壁30を形成するために使用される基板からの残存物に相当してもよい。
【0059】
絶縁部分42は、誘電体材料、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy、ここでxは約3に等しく、yは約4に等しく、例えばSi3N4 )、(特に一般的な式SiOxNyの)酸窒化シリコン(例えばSi2ON2)、酸化アルミニウム(Al2O3) 、酸化ハフニウム(HfO2)又はダイヤモンドから形成されてもよい。面21と直交する方向に測定された絶縁部分42の厚さは10nm~10μmの範囲内である。
【0060】
図4は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス50の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス50は、図1に示されている光電子デバイス10と同一の要素を備えており、面20から積層体19を通って延びているトレンチ52を更に備えている。トレンチ52は、少なくとも半導体層22及び活性領域23の厚さ全体を通って延びている。トレンチ52は半導体層24を通って延びなくてもよく、又は半導体層24を部分的若しくは完全に通って延びてもよい。トレンチ52は、シード部分32の厚さの全て又は一部に亘ってシード部分32を通って更に延びてもよい。トレンチ52は、壁30の高さの全て又は一部に亘って壁30を通って更に延びてもよい。
【0061】
トレンチ52は、発光ダイオード16毎に、半導体層22の一部54及び活性領域23の一部56を含むブロックを画定している。各トレンチ52は、電気絶縁性の層又は被覆体58で覆われている。トレンチ52は充填材料60で充填されてもよい。充填材料60は、不透明層、反射層、透明層又は前述した材料特性の組み合わせであってもよい。トレンチ52は、好ましくは壁30と一列に配置されている。トレンチ52は、隣り合うサブ画素Pix 間のクロストークを更に低減する。
【0062】
面21と平行な方向に測定されたトレンチ52の厚さは10nm~10μmの範囲内である。トレンチ52の厚さは、壁30の厚さと実質的に等しくてもよい。絶縁層58の厚さは1nm~10μmの範囲内である。絶縁層58は、絶縁部分42に関して前述した材料と同一の材料から形成されてもよい。充填材料60は、エポキシ、樹脂、シリコーン、金属層、誘電体又は空気を含む群から選択されてもよい。
【0063】
別の実施形態では、光電子回路12は、積層体19を完全に通過して積層体19の層から絶縁された電気接続部(バイア)を有してもよい。電気接続部は、一端部で壁30と接して、他端部でボンディングパッド18の内の一部と接してもよく、これらのボンディングパッド18は、その場合、半導体層22から絶縁されている。導体パッド36は壁30と接しており、前記電気接続部を用いて制御回路14によって導体パッド36に電圧を印加し得ることが好ましい。既に開示したトレンチ52が設けられている場合、電気接続部は、導電性の充填材料60を使用して形成されてもよい。
【0064】
図5は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス70の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス70は、各導体パッド36が発光ダイオード16によって放射される電磁放射線を少なくとも部分的に通す導電層72と取り替えられている点を除いて、図4に示されている光電子デバイス50と同一の要素を備えている。導電層72は、サブ画素毎に壁30によって画定された面21の露出した部分全体を覆ってもよい。導電層72は、グラフェン又は透明導電性酸化物(TCO) のような透明な導電性材料、例えば、酸化インジウムスズ(ITO) 、Al若しくはGaのいずれか又はこれら両方がドープされた酸化亜鉛(ZnO) から形成されてもよい。例として、導電層72の厚さは5nm~500 nmの範囲内であり、好ましくは20nm~50nmの範囲内である。
【0065】
図6は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス80の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス80は、図3に示されている光電子デバイス40と同一の要素を備えており、面20から発光ダイオードを形成する積層体19を通って延びている実質的に電気絶縁性の絶縁領域82を更に備えている。絶縁領域82は、少なくとも半導体層22及び活性領域23の厚さ全体を通って延びている。絶縁領域82は、半導体層24を通って延びなくてもよく、又は半導体層24を部分的若しくは完全に通って延びてもよい。図6では、絶縁領域82が半導体層24を完全に通って延びている。絶縁領域82は、発光ダイオード16毎に、半導体層22の一部84、活性領域23の一部86、及び該当する場合には半導体層24の一部88を含むブロックを画定している。絶縁領域82は、積層体19へのイオン注入によって形成されることができ、格子損傷を与えるためにN又はArのような非電気的な活性種をイオン注入することによって典型的に形成される。注入量は、十分な損傷を与えて高い抵抗率をもたらすように設定されている。絶縁領域82は、好ましくは壁30と一列に配置されるが、壁30より広く又は狭くすることができる。絶縁領域82は、隣り合うサブ画素Pix 間のクロストークを更に低減する。
【0066】
面21と平行な方向に測定された絶縁領域82の厚さは10nm~100 μmの範囲内である。
【0067】
図7A~7Eは、図1に示されている光電子デバイス10を製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0068】
図7Aは、
対向する2つの面91, 92を有する一体の基板90を準備する工程、
基板90の面92にシード層94を形成する工程、
シード層94上に半導体層24を形成する工程、
半導体層24上に活性領域23を形成する工程、及び
活性領域23上に半導体層22を形成する工程
の後に得られた構造を示す。
【0069】
基板90は、壁30と同一の材料から形成されている。基板90は、更にSOI 基板とすることができる。シード層94は、シード部分32と同一の材料から形成されている。シード層94は、化学蒸着法(CVD) 又は有機金属気相エピタキシ法(MOVPE) としても知られている有機金属化学蒸着法(MOCVD) のような方法によって得られてもよい。しかしながら、分子線エピタキシ法(MBE) 、ガスソースMBE 法(GSMBE) 、有機金属MBE 法(MOMBE) 、プラズマ支援MBE 法(PAMBE) 、原子層エピタキシ法(ALE) 、ハイドライド気相エピタキシ法(HVPE)のような方法を使用してもよく、更に原子層堆積法(ALD) 又は物理蒸着法(PVD) を使用してもよい。更に、蒸着法又は反応性カソードスパッタリング法のような方法を使用してもよい。シード層94は、半導体層24の成長を有利にする材料から形成されている。シード層94は、半導体層24を成長させるときにより少ない欠陥又はクラッキングを実現するために更に応力緩和層の機能を果たしてもよい。
【0070】
CVD 、MOCVD 、MBE 、GSMBE 、PAMBE 、ALE 、HVPE、ALD のタイプの処理によって半導体層24、活性領域23及び半導体層22を成長させてもよい。
【0071】
図7Bは、半導体層22の側で光電子チップ12に制御チップ14を接合した後に得られた構造を示す。本実施形態では、光電子チップ12への制御チップ14の接合を、接続マイクロビーズ又はスタッドバンピングのような挿入体18を使用して行ってもよい。或いは、光電子チップ12への制御チップ14の接合を、挿入体を使用せず直接接合によって行ってもよい。直接接合として、光電子チップ12の金属領域及び制御チップ14の金属領域の金属同士の直接接合又は共晶接合が含まれてもよい。直接接合は、光電子チップ12の表面の誘電体領域、及び制御チップ14の表面の誘電体領域の誘電体同士の接合に基づくこともできる。光電子チップ12への制御チップ14の接合を、光電子チップ12を制御チップ14に接するように置いて加圧及び加熱を行う熱圧着法によって行ってもよい。
【0072】
図7Cは、面91から基板90及びシード層94に開口部34をエッチングして面21の一部を露出させて壁30及びシード部分32を画定した後に得られた構造を示す。開口部34の大きさは、光輝性ブロック38の所望の大きさに相当する。このエッチングを半導体層24上で停止するか、又は半導体層24を部分的に通って停止する。面21の表面形態は滑らかにすることができるが、光抽出効率を高めるために粗面化されるか又は周期的な特徴を含むことができる。実行されるエッチングは、例えば塩化物若しくはフッ化物に基づくプラズマによるドライエッチング、誘導結合プラズマ(ICP) エッチング、反応性イオンエッチング(RIE) 、ウェットエッチング、化学機械研磨又はこれらの方法の組み合わせであってもよい。別の実施形態では、開口部34を形成する前に、基板90をまず壁の高さに至るまで、例えば化学機械研磨(CMP) 処理によって薄くしてもよい。その後、開口部34をドライエッチング処理又はウェットエッチング処理を使用してエッチングする。
【0073】
図7Dは、導体パッド36を形成した後に得られた構造を示す。この構造は、開口部34内の面21上に壁30を覆って、導体パッド36の材料から導電層を共形的に堆積させ、導電層をエッチングして導体パッド36を画定することにより得られてもよい。実行されるエッチングは、例えば塩化物若しくはフッ化物に基づくプラズマによるドライエッチング、又は反応性イオンエッチング(RIE) であってもよい。導体パッド36をリフトオフ処理によって形成することもできる。
【0074】
図7Eは、開口部34の少なくとも一部の内側に光輝性ブロック38を形成した後に得られた構造を示す。光輝性ブロック38は、場合によっては特定の開口部34を樹脂で塞いで、例えば、いわゆるアディティブ処理によって、特定の開口部34を結合マトリクスの半導体ナノ結晶のコロイド分散体で充填することにより形成されてもよい。いわゆるアディティブ処理として、例えばインクジェット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン、フレキソ印刷、スプレーコーティング、エーロゾルコーティング又はドロップキャストによる、所望の位置でのコロイド分散体の直接印刷が含まれてもよい。
【0075】
図8A~8Dは、図3に示されている光電子デバイス40を製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0076】
図8Aは、
SOI 基板100 の表面102 にシード層94を形成する工程、
シード層94上に半導体層24を形成する工程、
半導体層24上に活性領域23を形成する工程、及び
活性領域23上に半導体層22を形成する工程
の後に得られた構造を示す。
【0077】
基板100 は、半導体基部108 を覆う絶縁層106 と、絶縁層106 を覆う半導体層110 とを含む多層構造であってもよい。半導体層110 は、壁30に関して前述した材料と同一の材料から形成されてもよい。絶縁層106 は、絶縁部分42に関して前述した材料と同一の材料から形成されてもよい。
【0078】
図8Bは、半導体層22の側で光電子チップ12に制御チップ14を接合した後に得られた構造を示す。この構造を、図7Bに関連して前述したように製造してもよい。
【0079】
図8Cは、半導体基部108 をエッチングした後に得られた構造を示す。このエッチングを絶縁層106 上で停止する。実行されるエッチングは、例えばCl2 若しくはSF6 の化学的性質を使用した誘導結合プラズマ(ICP) 若しくは反応性イオンエッチング(RIE) のようなプラズマに基づく処理によるドライエッチング、又はウェット化学エッチングであってもよい。ドライ/ウェットエッチング処理の前に基板を薄くするために、化学機械研磨(CMP) によるウエハ薄層化を使用することもできる。
【0080】
図8Dは、画素毎に面21の露出部分を形成して、絶縁部分42、壁30及びシード部分32を画定するために絶縁層106 、半導体層110 及びシード層94に開口部34をエッチングした後に得られた構造を示す。実行されるエッチングは、例えばCl2 に基づくプラズマによるドライエッチング若しくは反応性イオンエッチング(RIE) 、又はウェットエッチングであってもよい。
【0081】
本方法のその後の工程は、図7D及び図7Eに関連して前述した工程であってもよい。
【0082】
図4に示されている光電子デバイス50を製造する方法の実施形態は、図7A図7Eに関連して前述した工程を有してもよく、制御チップ14を光電子チップ12に接合する工程の前に、少なくとも半導体層22及び活性領域23、場合によっては半導体層24、シード部分32及び壁30にトレンチ52をエッチングして、トレンチ52の内側に絶縁層58を形成し、トレンチ52に充填材料60を充填する工程を更に有してもよい。
【0083】
図6に示されている光電子デバイス80を製造する方法の実施形態は、図7A図7Eに関連して前述した工程を有してもよく、制御チップ14を光電子チップ12に接合する工程の前に、イオンを積層体19の内部に注入して絶縁領域82を形成する工程を更に有してもよい。
【0084】
図9は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス120 の別の実施形態の図1と類似する部分的な断面略図である。光電子デバイス120 は、壁30がシード部分32上に置かれている壁122 と取り替えられ、各壁122 は電気絶縁層126 で覆われている充填材料のコア124 を有している点を除いて、図1に示されている光電子デバイス10と同一の要素を備えている。変形例として、壁122 毎に電気絶縁層126 が設けられなくてもよい。
【0085】
壁122 の大きさは壁30の大きさと同一であってもよい。コア124 は、半導体材料、例えばシリコン、特には多結晶シリコン、又は電気絶縁性材料、例えばSiO2から形成されてもよい。絶縁層126 は、誘電体材料、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy、ここでxはおよそ3に等しく、yはおよそ4に等しく、例えばSi3N4 )、(特に一般的な式SiOxNyの)酸窒化シリコン(例えばSi2ON2)又は酸化ハフニウム(HfO2)から形成されてもよい。絶縁層126 は、例えば熱酸化シリコンから形成されている。絶縁層126 の厚さは50nm~1000nmの範囲内であってもよい。
【0086】
図10A ~10G は、図9に示されている光電子デバイス120 を製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0087】
図10A は、壁122 の所望の位置で基板90に面92から開口部128 を形成した後に得られた構造を示す。例えばドライエッチングによって基板90をエッチングすることにより、開口部128 を得ることができる。
【0088】
図10B は、各開口部128 に絶縁層126 及び絶縁コア124 を形成した後に得られた構造を示す。一実施形態によれば、絶縁層126 を構成する材料の層を、開口部128 の内部及び基板90の面92の残り部分の上に堆積させてもよく、コア124 を構成する材料の層を、特に開口部128 を充填するために構造全体の上に堆積させてもよい。絶縁層126 を構成する材料の層及びコア124 を構成する材料の層を、開口部128 の外側で、例えばエッチングによって除去する。このようにして壁122 が得られる。利点は、高い縦横比(壁の高さ及び幅の比)を有する壁122 を、幅を狭くして得ることができるということである。基板90と接する壁122 の外層は、処理の後の段階で実行される壁122 に対する基板90の選択エッチングを可能にする材料から形成されている。従って、基板90がシリコンから形成される場合、壁122 の絶縁層126 はSiO2から形成されてもよい。基板90がGaN 又はGaAsから形成される場合、絶縁層126 は設けられなくてもよく、壁122 は完全にシリコンから形成されてもよい。
【0089】
図10C は、図7Aに関連して前述した工程と同一の工程の後に得られた構造を示す。
【0090】
図10D は、図7Bに関連して前述した工程と同一の工程の後に得られた構造を示す。
【0091】
図10E は、基板90を除去して壁122 を露出させた後に得られた構造を示す。基板90の除去を、少なくとも2つの工程、例えば面91から、例えば機械研磨によって基板90を薄層化し、絶縁層126 に達する前に停止する第1の工程、及び、例えば化学エッチングを行って基板90の残り部分を除去する第2のエッチング工程で行ってもよい。利点は、絶縁層126 が基板90のエッチング中に停止層の機能を果たし得ることである。
【0092】
図10F は、図7Dに関連して前述した工程と同一の工程の後に得られた構造を示す。
【0093】
図10G は、図7Eに関連して前述した工程と同一の工程の後に得られた構造を示す。
【0094】
特定の実施形態が述べられている。様々な変更及び調整が当業者に想起される。特に、前述した実施形態では光電子チップ12は制御チップ14に直接接合されているが、光電子チップ12及び制御チップ14はプリント回路に夫々接合されてもよい。更に、前述した実施形態では、壁30は面21に実質的に直交する側面を有するが、壁30の側面は面21に対して直交しなくてもよく、例えば傾いてもよい。
【0095】
更に、様々な変更を有する複数の実施形態が記載されている。これらの実施形態及び変更の一部の要素を組み合わせることができる。例として、図5に関連して前述した光電子回路70では、トレンチ52が、図1に関連して前述した実施形態の光電子デバイス10及び図3に関連して前述した実施形態の光電子デバイス40の場合と同様に設けられなくてもよい。
【0096】
本特許出願は、本明細書の不可欠な部分とみなされる仏国特許出願第16/63509 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G