IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エックスライフエスシー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】NY-ESOに対する高親和力のTCR
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230704BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230704BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230704BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230704BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230704BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230704BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230704BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C12N15/12
A61K38/16
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K49/00
A61P35/00
C07K7/06
C07K14/725 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/10 200Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019548515
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2017113631
(87)【国際公開番号】W WO2018099402
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2019-07-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】201611078596.2
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521121053
【氏名又は名称】エックスライフエスシー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, イー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン, チンホア
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】天野 貴子
【審判官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105985427(CN,A)
【文献】特表2013-541332(JP,A)
【文献】The Journal of Immunology,2008年,Vol.180,pp.6116-6131
【文献】Nature biotechnology,2005年,Vol.23, No.3,pp.349-354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体(TCR)であって、
下記のグループから選択されるCDRを有することを特徴とする
CR。
【請求項2】
前記TCRは、可溶であることを特徴とする
請求項1に記載のTCR。
【請求項3】
前記TCRは、αβヘテロ二量体TCRであることを特徴とする
請求項1に記載のTCR。
【請求項4】
前記TCRは、(i)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRα鎖、及び(ii)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRβ鎖を含み、(i)及び(ii)の両方は、TCR鎖の可変ドメイン及び少なくとも一部の定常ドメインを含むことを特徴とする
請求項に記載のTCR。
【請求項5】
前記TCRのα鎖定常領域とβ鎖定常領域との間に人工鎖間ジスルフィド結合が含まれることを特徴とする
請求項に記載のTCR。
【請求項6】
前記TCRαとβ鎖の定常領域の間に人工鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基は、
TRAC*01エクソン1のThr48及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer57、
TRAC*01エクソン1のThr45及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer77、
TRAC*01エクソン1のTyr10及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer17、
TRAC*01エクソン1のThr45及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のAsp59、
TRAC*01エクソン1のSer15及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のGlu15、
TRAC*01エクソン1のArg53及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer54、
TRAC*01エクソン1のPro89及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のAla19、及び
TRAC*01エクソン1のTyr10及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のGlu20から選択される1つまたは複数のグループのサイトを置換したことを特徴とする
請求項に記載のTCR。
【請求項7】
前記TCRは、下記のグループから選択されることを特徴とする
請求項1に記載のTCR。
【請求項8】
前記TCRは、単鎖TCRであることを特徴とする
請求項1に記載のTCR。
【請求項9】
前記TCRは、α鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインからなる単鎖TCRであり、前記α鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインは、柔軟なオリゴペプチド配列(linker)によって連結されることを特徴とする
請求項1に記載のTCR。
【請求項10】
前記TCRα鎖可変ドメインおよび/またはβ鎖可変ドメインの疎水性コアは、変異していることを特徴とする
請求項に記載のTCR。
【請求項11】
前記TCRは、下記のグループから選択されることを特徴とする
請求項1に記載のTCR。
【請求項12】
前記TCRのα鎖および/またはβ鎖のC-またはN-末端にコンジュゲートが結合されることを特徴とする
請求項1~11のいずれか1項に記載のTCR。
【請求項13】
前記TCRに結合されるコンジュゲートは、検出可能なマーカー、治療剤、PK修飾部分または任意のこれらの物質の組み合わせであることを特徴とする
請求項12に記載のTCR。
【請求項14】
前記TCRに結合される治療剤は、前記TCRのαまたはβ鎖のC-またはN-末端に連結される抗-CD3抗体であることを特徴とする
請求項13に記載のTCR。
【請求項15】
多価TCR複合体であって、
少なくとも2つのTCR分子を含み、その中の少なくとも1つのTCR分子は、請求項1~14のいずれか1項に記載のTCRである、前記多価TCR複合体。
【請求項16】
核酸分子であって、
請求項1~14のいずれか1項に記載のTCRをコードする核酸配列またはその相補的な配列を含む、前記核酸分子。
【請求項17】
ベクターであって、
請求項16に記載の核酸分子を含む、前記ベクター。
【請求項18】
宿主細胞であって、
請求項17に記載のベクター、または染色体に統合された外因性である請求項16に記載の核酸分子を含む、前記宿主細胞。
【請求項19】
単離された細胞であって、
請求項1~14のいずれか1項に記載のTCRを発現する、前記単離された細胞。
【請求項20】
薬学的組成物であって、
薬学的に許容される担体及び請求項1~14のいずれか1項に記載のTCR、または請求項15に記載のTCR複合体、または請求項19に記載の細胞を含む、前記薬学的組成物。
【請求項21】
瘍を治療するための医薬を製造するための、請求項1~14のいずれか1項に記載のT細胞受容体、請求項15に記載のTCR複合体または請求項19に記載の細胞の使用。
【請求項22】
請求項1~14のいずれか1項に記載のT細胞受容体を製造する方法であって、
(i)請求項18に記載の宿主細胞を培養して、請求項1~14のいずれか1項に記載のT細胞受容体を発現させるステップと、
(ii)前記T細胞受容体を単離または精製するステップと、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術分野に関し、さらに具体的には、NY-ESO-1タンパク質由来のポリペプチドを識別することができるT細胞受容体(TCR:T cell receptor)に関する。本発明は、また、前記受容体の製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特異的な方法で抗原を識別することができる分子は、2つのタイプのみが存在する。その1つは、免疫グロブリンまたは抗体であり、他の1つは、T細胞受容体(TCR)であり、これはα鎖/β鎖またはγ鎖/δ鎖によってヘテロダイマー(heterodimer)の形式で存在する細胞膜表面の糖タンパク質である。免疫系のTCR総スペクトルの組成は、胸腺でV(D)Jによって組換えされた後、陽性及び陰性の選択によって生成される。末梢環境において、TCRは、主要組織適合性複合体-ペプチド複合体(pMHC)に対するT細胞の特異的な識別を媒介し、従って免疫系の細胞免疫機能にとって非常に重要である。
【0003】
TCRは、主要組織適合性複合体(MHC)上に提示される特異的な抗原ペプチドの唯一の受容体であり、このような外因性ペプチドまたは内因性ペプチドは、細胞で異常が現れる唯一の現象であることができる。免疫系において、抗原特異的なTCRとpMHC複合体の結合により、T細胞と抗原提示細胞(APC)との間の直接的な物理的接触を誘発し、次いでT細胞及びAPCの両方の他の細胞膜表面分子が相互作用して、一連の後続的な細胞シグナル伝達と他の生理的反応を起こし、異なる抗原特異的なT細胞がその標的細胞に免疫効果を発揮するようにする。
【0004】
TCRに対応されるMHC I型とII型の分子リガンドも免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質であるが、抗原の提示に特異的であり、異なる個体が異なるMHCを有するため、一つのタンパク質抗原内の異なるオリゴペプチドがそれぞれのAPC細胞表面に提示されることができる。人間のMHCは、通常HLA遺伝子またはHLA複合体と称する。
【0005】
オリゴペプチドSLLMWITQCは、様々な腫瘍細胞によって発現されたNY-ESO-1タンパク質(Chen et al.,(1997)PNAS USA 94 1914-1918)に由来する。腫瘍細胞のI型HLA分子提示は、SLLMWITQCを含むNY-ESO-1由来のオリゴペプチドを含む。従って、SLLMWITQC-HLA A2複合体は、腫瘍細胞の標識を標的化することができるTCRを提供する。SLLMWITQC-HLA A2複合体に結合することができるTCRは、腫瘍の治療に対して高い適用の価値を持っている。例えば、当該腫瘍細胞標識を標的化することができるTCRは、当該TCRを発現するT細胞を破壊することができるように、細胞毒性剤または免疫刺激剤を標的細胞に伝達し、またはT細胞に形質転換して、養子免疫治療と呼ばれる治療の過程で患者に投与されることができる。前者の目的について、理想的なTCRは、比較的に高い親和力を持つことで、当該TCRが標的化された細胞上に長期間存在させることができる。後者の目的について、好ましくは、中等親和力のTCRを使用する。従って、当業者は、異なる目的を満たすことができる腫瘍細胞標識を標的化するTCRの開発に専念している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、SLLMWITQC-HLA A2複合体に比較的に高い親和力を有するTCRを提供することである。
本発明の他の目的は、前記のタイプのTCRの製造方法及び前記のタイプのTCRの使用を提供することである。
本発明の第1の態様において、SLLMWITQC-HLA A2複合体に結合する活性を有するT細胞受容体(TCR)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
他の一つの好ましい例において、前記T細胞受容体(TCR)は、SLLMWITQC-HLA A2複合体に結合する活性を有し、前記T細胞受容体は、TCRα鎖可変ドメイン及びTCRβ鎖可変ドメインを含み、前記TCRα鎖可変ドメインは、3つのCDR領域を含み、前記TCRα鎖可変ドメインの3つのCDR領域の基準配列は、以下の通りであり、
CDR1α:TSINN
CDR2α:IRSNERE
CDR3α:ATDANGKII、また少なくとも1つの下記の突然変異を含み、
および/または,前記TCRβ鎖可変ドメインは、3つのCDR領域を含み、前記TCRβ鎖可変ドメインの3つのCDR領域の基準配列、以下の通りであり、
CDR1β:SGHDY
CDR2β:FNNNVP
CDR3β:ASSLGSNEQY、また少なくとも1つの下記の突然変異を含む。
【0008】
【0009】
他の一つの好ましい例において、前記TCRα鎖CDR領域の突然変異の数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、または12個であることができる。
【0010】
他の一つの好ましい例において、前記TCRβ鎖CDR領域の突然変異の数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または11個であることができる。
【0011】
他の一つの好ましい例において、本発明によるT細胞受容体(TCR)は、TCRα鎖可変ドメイン及びTCRβ鎖可変ドメインを含み、前記TCRα鎖可変ドメインは、CDR1α、CDR2α、及びCDR3αを含む。
【0012】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3αは、[3αX1][3αX2]D[3αX3][3αX4][3αX5][3αX6][3αX7][3αX8]配列を含み、ここで、[3αX1]、[3αX2]、[3αX3]、[3αX4]、[3αX5]、[3αX6]、[3αX7]、[3αX8]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0013】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX1]は、AまたはMである。
【0014】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX2]は、TまたはYである。
【0015】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX3]は、AまたはEまたはQである。
【0016】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX4]は、NまたはFまたはYまたはWである。
【0017】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX5]は、GまたはAまたはQである。
【0018】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX6]は、KまたはWまたはRまたはTまたはSまたはMまたはLである。
【0019】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX7]は、IまたはWまたはVまたはYまたはPである。
【0020】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX8]は、IまたはNまたはEまたはDまたはQまたはVまたはKまたはGまたはMまたはSである。
【0021】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX1]は、Aであり、[3αX2]は、Tであり、[3αX3]は、Aであり、[3αX4]は、NまたはFまたはWであり、[3αX5]は、Aであり、[3αX6]は、WまたはRであり、[3αX7]は、Wであり、また[3αX8]は、IまたはNまたはEまたはDである。
【0022】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3αは、ATDANARWN、ATDANARWE、ATDANARWD、ATDAFAWWI、及びATDAWARWIから選択される配列を含む。
【0023】
他の一つの好ましい例において、前記CDR1αは、[1αX1][1αX2][1αX3][1αX4]N配列を含み、ここで、[1αX1]、[1αX2]、[1αX3]、[1αX4]、[1αX5]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0024】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX1]は、TまたはGである。
【0025】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX2]は、SまたはWである。
【0026】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX3]は、IまたはAまたはVである。
【0027】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX4]は、NまたはQである。
【0028】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX1]は、Gであり、[1αX2]は、SまたはWであり、[1αX3]は、IまたはAまたはVであり、また[1αX4]は、Qである。
【0029】
他の一つの好ましい例において、前記CDR1αは、GSIQN、GWAQN、GWVQN及びTSINNから選択される配列を含む。
【0030】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2αは、IR[2αX1][2αX2][2αX3][2αX4]E配列を含み、ここで、[2αX1]、[2αX2]、[2αX3]、[2αX4]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0031】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX1]は、SまたはTである。
【0032】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX2]は、NまたはGである。
【0033】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX3]は、EまたはQである。
【0034】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX4]は、R、AまたはQである。
【0035】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2αは、IRTGEQE、IRTGQAE及びIRSNEREから選択される配列を含む。
【0036】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、TCRα鎖可変ドメイン及びTCRβ鎖可変ドメインを含み、前記TCRβ鎖可変ドメインは、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含み、ここで、前記CDR1βは、SGHDY配列を含む。
【0037】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2βは、FN[2βX1][2βX2][2βX3][2βX4]配列を含み、ここで、[2βX1]、[2βX2]、[2βX3]、及び[2βX4]は、それぞれ独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0038】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX1]は、NまたはHである。
【0039】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX2]は、NまたはGである。
【0040】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX3]は、VまたはAである。
【0041】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX4]は、PまたはVである。
【0042】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2βは、FNHGAV、及びFNNNVPから選択される配列を含む。
【0043】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3βは、AS[3βX1][3βX2]G[3βX3]NEQY配列を含み、ここで、[3βX1]、[3βX2]、[3βX3]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0044】
他の一つの好ましい例において、前記[3βX1]は、S、QまたはMである。
【0045】
他の一つの好ましい例において、前記[3βX2]は、L、R、K、またはMである。
【0046】
他の一つの好ましい例において、前記[3βX3]は、S、A、GまたはPである。
【0047】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3βは、ASQRGSNEQY、ASQKGANEQY、ASQLGSNEQY、ASQLGANEQY、ASQLGGNEQY、ASQLGPNEQY、ASQRGANEQY、ASQMGSNEQY、ASQMGANEQY及びASMLGSNEQYから選択される配列を含む。
【0048】
他の一つの好ましい例において、前記TCRのTCRα鎖可変ドメインは、CDR1α:TSINN、CDR2α:IRSNERE、及びCDR3α:ATDANGKIIのようなCDRを同時に含まない。
【0049】
他の一つの好ましい例において、前記TCRのTCRβ鎖可変ドメインは、CDR1β:SGHDY、CDR2β:FNNNVP、及びCDR3β:ASSLGSNEQYのようなCDRを同時に含まない。
【0050】
他の一つの好ましい例において、前記突然変異は、α鎖および/またはβ鎖可変ドメインの1つまたは複数CDR領域で起こる。
【0051】
他の一つの好ましい例において、前記突然変異は、α鎖のCDR1、CDR2および/またはCDR3で起こり、および/または前記突然変異は、β鎖のCDR2および/またはCDR3で起こる。
【0052】
本発明の一つの好ましい例において、前記TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との親和力は、野生型TCRの少なくとも2倍であり、好ましくは、少なくとも5倍であり、さらに好ましくは、少なくとも10倍である。
【0053】
他の一つの好ましい例において、前記TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との親和力は、野生型TCRの少なくとも50倍であり、好ましくは、少なくとも100倍であり、さらに好ましくは、少なくとも500倍であり、最も好ましくは、少なくとも1000倍である。
【0054】
他の一つの好ましい例において、前記TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との親和力は、野生型TCRの少なくとも10倍であり、好ましくは、少なくとも10倍であり、さらに好ましくは、少なくとも10倍であり、もっとも好ましくは、少なくとも10倍である。
【0055】
具体的に、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する前記TCRの解離平衡定数K≦20μMであり、
【0056】
他の一つの好ましい例において、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する前記TCRの解離平衡定数は、5μM≦K≦10μMであり、好ましくは、0.1μM≦K≦1μMであり、さらに好ましくは、1nM≦K≦100nMであり、
【0057】
他の一つの好ましい例において、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する前記TCRの解離平衡定数は、100pM≦K≦1000pMであり、好ましくは、10pM≦K≦100pMであり、さらに好ましくは、1pM≦K≦10pMである。
【0058】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、具体的に下記のグループから選択されるCDRを有する。
【0059】
【0060】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、可溶である。
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、αβヘテロ二量体TCRまたは単鎖TCRである。
【0061】
他の一つの好ましい例において、本発明のTCRは、αβヘテロ二量体TCRであり、前記TCRのα鎖可変ドメインは、配列番号:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも92%、最も好ましくは、少なくとも94%(例えば、少なくとも88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、および/または前記TCRのβ鎖可変ドメインは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも92%、さらに好ましくは、少なくとも94%、最も好ましくは、少なくとも97%、(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0062】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、(i)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRα鎖、及び(ii)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRβ鎖を含み、ここで、(i)及び(ii)の両方は、TCR鎖の可変ドメイン及び少なくとも一部の定常ドメインを含む。
【0063】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、αβヘテロ二量体TCRであり、前記TCRのα鎖可変領域とβ鎖定常領域との間に人工鎖間ジスルフィド結合が含まれる。
【0064】
他の一つの好ましい例において、前記TCRのα鎖可変領域とβ鎖定常領域との間に人工鎖間ジスルフィド結合が形成されるシステイン残基は、
TRAVの46番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の60番目のアミノ酸、
TRAVの47番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1的61番目のアミノ酸、
TRAVの46番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の61番目のアミノ酸、または
TRAVの47番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の60番目のアミノ酸から選択される1つまたは複数のグループのサイトを置換した。
【0065】
他の一つの好ましい例において、α鎖可変領域とβ鎖定常領域との間には人工鎖間ジスルフィド結合が含まれたTCRは、α鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメイン及び膜貫通ドメイン以外の全部または一部のβ鎖定常ドメインを含むが、α鎖定常ドメインを含まず、前記TCRのα鎖可変ドメインは、β鎖とヘテロ二量体を形成する。
【0066】
他の一つの好ましい例において、α鎖可変領域とβ鎖定常領域との間に人工鎖間ジスルフィド結合が含まれたTCRは、(i)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRα鎖、及び(ii)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRβ鎖を含み、ここで、(i)及び(ii)の両方は、TCR鎖の可変ドメイン及び少なくとも一部の定常ドメインを含む。
【0067】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、αβヘテロ二量体TCRであり、(i)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRα鎖、及び(ii)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRβ鎖を含み、ここで、(i)及び(ii)の両方は、TCR鎖の可変ドメイン及び少なくとも一部の定常ドメインを含み、α鎖定常領域とβ鎖定常領域との間には人工鎖間ジスルフィド結合が含まれる。
【0068】
他の一つの好ましい例において、前記TCRαとβ鎖の定常領域の間に人工鎖間ジスルフィド結合が形成されるシステイン残基は、
TRAC*01エクソン1のThr48及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer57、
TRAC*01エクソン1のThr45及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer77、
TRAC*01エクソン1のTyr10及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer17、
TRAC*01エクソン1のThr45及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のAsp59、
TRAC*01エクソン1のSer15及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のGlu15、
TRAC*01エクソン1のArg53及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer54、
RAC*01エクソン1のPro89及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のAla19、及び
TRAC*01エクソン1のTyr10及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のGlu20から選択される1つまたは複数のグループのサイトを置換した。
【0069】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、単鎖TCRである。
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、α鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインからなる単鎖TCRであり、前記α鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインは、柔軟なオリゴペプチド配列(linker)によって連結される。
【0070】
他の一つの好ましい例において、前記TCRα鎖可変ドメインおよび/またはβ鎖可変ドメインの疎水性コアは、突然変異される。
他の一つの好ましい例において、前記疎水性コアが突然変異されたTCRは、α可変ドメインとβ可変ドメインからなる単鎖TCRであり、前記α可変ドメインとβ可変ドメインは、柔軟なオリゴペプチド配列(linker)によって連結される。
【0071】
他の一つの好ましい例において、配列番号:1に示される番号を使用し、本発明のTCRのα鎖可変ドメイン疎水性コアアミノ酸残基19A(即ち、IMGTに列挙されたα鎖可変領域19番目)、21M(即ち、IMGTに列挙されたα鎖可変領域21番目)、79S(即ち、IMGTに列挙されたα鎖可変領域94番目)の中1つまたは複数が突然変異され、および/または配列番号:2に示される番号を使用し、前記TCRβ鎖可変ドメイン疎水性コアアミノ酸残基13T(即ち、IMGTに列挙されたβ鎖可変領域13番目)、82S(即ち、IMGTに列挙されたβ鎖可変領域94番目)の中1つまたは複数が突然変異される。
【0072】
他の一つの好ましい実施例において、配列番号:1に示される番号を使用し、本発明α鎖可変ドメイン疎水性コアは、アミノ酸残基19V、21I及び79V中の1つまたは複数を含み、および/または配列番号:2に示される番号を使用し、前記TCRβ可変ドメイン疎水性コアは、アミノ酸残基13V及び82V中の1つまたは複数を含む。さらに具体的に、前記TCRα可変ドメイン疎水性コアの突然変異形態は、A19V、M21I及びS79V中の1つまたは複数のグループを含み、前記TCRβ可変ドメイン疎水性コアの突然変異の形態は、T13V及びS82V中の1つまたは複数のグループを含む。
【0073】
他の一つの好ましい例において、本発明前記TCRは、単鎖TCRであり、前記TCRのα鎖可変ドメインは、配列番号:3に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも92%、最も好ましくは、少なくとも94%(例えば、少なくとも88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、および/または前記TCRのβ鎖可変ドメインは、配列番号:4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも92%、さらに好ましくは、少なくとも94%、最も好ましくは、少なくとも97%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0074】
他の一つの好ましい例において、前記TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列は、配列番号:9-37及び58-86から選択され、および/または前記TCRのβ鎖可変ドメインアミノ酸配列は、配列番号:38-53及び87-102から選択される。
【0075】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、下記のグループから選択される。
【0076】
【0077】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、下記のグループから選択される。
【0078】
【0079】
他の一つの好ましい例において、前記TCRのα鎖および/またはβ鎖のC-またはN-末端にコンジュゲートが結合される。
【0080】
他の一つの好ましい例において、前記TCRに結合されるコンジュゲートは、検出可能なマーカー、治療剤、PK修飾部分または任意のこれらの物質の組み合わせである。
【0081】
他の一つの好ましい例において、前記TCRに結合される治療剤は、前記TCRのαまたはβ鎖のC-またはN-末端に連結される抗-CD3抗体である。
【0082】
本発明の一つの好ましい実施形態において、前記T細胞受容体(TCR)は、SLLMWITQC-HLA A2複合体に結合する活性を有し、TCRα鎖可変ドメイン及びTCRβ鎖可変ドメインを含み、前記TCRは、配列番号:1に示されるα鎖可変ドメインで突然変異され、前記突然変異のアミノ酸残基のサイトは、27T、28S、29I、30N、51S、52N、53E、54R、90A、91T、93A、94N、95G、96K、97I及び98I中の1つまたは複数を含み、ここで、アミノ酸残基の番号は、配列番号:56または1に示される番号を使用し、および/または前記TCRは、配列番号:2に示されるβ鎖可変ドメインで突然変異され、前記突然変異のアミノ酸残基のサイトは、51N、52N、53V、54P、95S、96L及び98S中の1つまたは複数を含み、ここで、アミノ酸残基の番号は、配列番号:57または2に示される番号を使用し、
好ましくは、突然変異後の前記TCRα鎖可変ドメインは、27G、28W、29Aまたは29V、30Q、51T、52G、53Q、54Qまたは54A、90M、91Y、93Eまたは93Q、94Fまたは94Yまたは94W、95Aまたは95Q、96Wまたは96Rまたは96Tまたは96Sまたは96Mまたは96L、97Wまたは97Vまたは97Yまたは97P、及び98Eまたは98Nまたは98Dまたは98Qまたは98Kまたは98Vまたは98Gまたは98Mまたは98Sから選択される1つまたは複数アミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸残基の番号は、配列番号:1に示される番号を使用し、および/または突然変異後の前記TCRβ鎖可変ドメインは、51H、52G、53A、54V、95Qまたは95M、96Rまたは96Kまたは96M、及び98Aまたは98Gまたは98Pから選択される1つまたは複数アミノ酸残基を含み、アミノ酸残基の番号は、配列番号:2に示される番号を使用する。
【0083】
本発明の第2の態様において、少なくとも2つのTCR分子を含み、その中の少なくとも1つのTCR分子は、本発明の第1の態様によるTCRである多価TCR複合体を提供した。
【0084】
本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様によるTCR分子または本発明の第2の態様による多価TCR複合体をコードする核酸配列またはその相補的な配列を含む核酸分子を提供した。
【0085】
本発明の第4の態様において、本発明の第3の態様による核酸分子を含むを提供した。
【0086】
本発明の第5の態様において、本発明の第4の態様によるベクターまたは染色体に外因性が統合された本発明の第3の態様による核酸分子を含む宿主細胞を提供した。
【0087】
本発明の第6の態様において、本発明の第1の態様によるTCRを発現する単離された細胞を提供した。
【0088】
本発明の第7の態様において、薬学的に許容されるベクター及び本発明の第1の態様によるTCR、または本発明の第2の態様によるTCR複合体、または本発明の第6の態様による細胞を含む薬学的組成物を提供する。
【0089】
本発明の第8の態様において、治療が必要な対象に、本発明の第1の態様によるTCR、または本発明の第2の態様によるTCR複合体、または本発明の第6の態様による細胞、または本発明の第7の態様による薬学的組成物を適量投与するステップを含む疾患を治療する方法を提供した。
【0090】
本発明の第9の態様において、腫瘍を治療するための医薬を製造する本発明の第1の態様によるTCR、または本発明の第2の態様によるTCR複合体、または本発明の第6の態様による細胞の使用を提供する。
【0091】
本発明の第10の態様において、(i)本発明の第5の態様による宿主細胞を培養して、本発明の第1の態様によるT細胞受容体を発現させるステップと、(ii)前記T細胞受容体を単離または精製するステップと、を含む本発明の第1の態様によるT細胞受容体を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0092】
本発明の範囲内で、本発明の前記各技術の特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に記述された各技術的特徴は、互いに組み合わされて、新たなまたは好ましい技術手段を構成することができることを理解すべきである。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返して説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1a-b】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に特異的に結合することができる野生型TCRαとβ鎖可変ドメインアミノ酸配列を示す。
図2a-b】それぞれ本発明で構築された一本鎖鋳型TCRのα可変ドメインアミノ酸配列とβ鎖可変ドメインアミノ酸配列である。
図3a-b】それぞれ本発明で構築された一本鎖鋳型TCRのα可変ドメインのDNA配列とβ鎖可変ドメインのDNA配列である。
図4a-b】それぞれ本発明で構築された一本鎖鋳型TCRの連結オリゴペプチド(linker)のアミノ酸配列とヌクレオチド配列である。
図5(1)-(10)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有する単鎖TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図5(11)-(20)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有する単鎖TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図5(21)-(29)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有する単鎖TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図6(1)-(10)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有する単鎖TCRのβ鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図6(11)-(16)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有する単鎖TCRのβ鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図7a-b】それぞれ本発明で構築された一本鎖鋳型TCRのアミノ酸配列とDNA配列である。
図8a-b】それぞれ本発明における参照TCRαとβ鎖のアミノ酸配列を示す。
図9(1)-(10)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有するヘテロ二量体TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図9(11)-(20)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有するヘテロ二量体TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図9(21)-(29)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有するヘテロ二量体TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図10(1)-(10)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有するヘテロ二量体TCRのβ鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図10(11)-(16)】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に高親和力を有するヘテロ二量体TCRのβ鎖可変ドメインアミノ酸配列を示し、突然変異の残基は、下線で表示される。
図11a-b】それぞれSLLMWITQC-HLA A2複合体に特異的に結合することができる野生型TCRαとβ鎖アミノ酸配列を示す。
図12】参照TCR、即ち野生型TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体の結合曲線である。
図13】本発明の高親和力TCRが形質感染された効果細胞のINF-γ活性実験結果図である。
図14】標的細胞に対する本発明の高親和力TCRが形質感染された効果細胞の殺傷実験結果図である。
図15a-b】効果細胞に対する融合タンパク質の再指向実験結果図である。
図16】本発明の高親和力TCRが形質感染された効果細胞の体内効能結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
本発明は、広範囲なかつ深い研究を経て、SLLMWITQCオリゴペプチド(NY-ESO-1たんぱく質由来)を識別する高親和性のT細胞受容体(TCR)を獲得し、前記SLLMWITQCオリゴペプチドは、ペプチド-HLA A2複合体の形態で提示される。前記高親和性TCRは、そのα鎖可変ドメインの3つのCDR領域であり、
CDR1α:TSINN
CDR2α:IRSNERE
CDR3α:ATDANGKIIで突然変異され、および/またはそのβ鎖可変ドメインの3つのCDR領域であり、
CDR1β:SGHDY
CDR2β:FNNNVP
CDR3β:ASSLGSNEQYで突然変異され、また、前記SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する突然変異後の本発明TCRの親和力および/または結合半減期は、野生型TCRの少なくとも2倍である。
【0095】
本発明を説明する前に、前記の具体的な方法と実験条件は変更されることができるため、本発明は、このような方法と条件に制限されないことを理解すべきである。また、本文に使用される用語は、具体的な実施形態を説明することを目的とし、その意図は限定的ではなく、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲のみによって制限される。
【0096】
他に定義されない限り、本文に使用されたすべての技術と科学用語はすべて当業者によって通常理解されているもののと同じ意味を持つ。
【0097】
本発明の実施またはテストで、本発明によるものと似てたり、等価的な任意の方法と材料を使用することができるが、本文は、ここで好ましい方法と材料を挙げる。
【0098】
用語
T細胞受容体(TCR:T cell receptor)
国際免疫遺伝学情報システム(IMGT)を使用してTCRを記述することができる。天然αβヘテロ二量体TCRは、α鎖とβ鎖を有する。広義的には、各鎖は、可変領域、連結領域及び定常領域を含み、β鎖は、通常は、可変領域と連結領域との間に短い可変領域を含むが、当該可変領域は、一般的に連結領域の一部として考慮される。独特のIMGTのTRAJとTRBJでTCRの連結領域を決定し、IMGTのTRACとTRBCでTCRの定常領域を決定する。
【0099】
各可変領域は、フレーム(frame)配列にキメラされた(chimeric)CDR1、CDR2、お及びCDR3の3つのCDR(相補決定領域)を含む。IMGT命名法において、TRAVとTRBVの異なる番号は、それぞれ異なるVαタイプとVβの種類を指す。IMGTシステムにおいて、α鎖定常ドメインは、TRAC*01の符号を有し、ここで、「TR」は、T細胞受容体遺伝子を表し、「A」は、α鎖遺伝子を表し、Cは、定常領域を表し、「*01」は、対立遺伝子1を表す。β鎖定常ドメインは、TRBC1*01またはTRBC2*01の符号を有し、ここで、「TR」は、T細胞受容体遺伝子を表し、「B」は、β鎖遺伝子を表し、Cは、定常領域を表し、「*01」は、対立遺伝子1を表す。α鎖の定常領域は唯一に決定されるものであり、β鎖の形態で、2つの可能な定常領域遺伝子「C1」と「C2」が存在する。当業者は、開示されたIMGTデータベースによってTCRαとβ鎖の定常領域遺伝子配列を得ることができる。
【0100】
一般的に、TCRのαとβ鎖は、それぞれ2つの「ドメイン」、即ち、可変ドメインと定常ドメインを有するものとみなす。可変ドメインは、連結された可変領域と連結領域で構成される。従って、本願発明の明細書と請求の範囲において、「TCRα鎖可変ドメイン」とは、連結されたTRAVとTRAJ領域を指し、同様に、「TCRβ鎖可変ドメイン」とは、連結されたTRBVとTRBD/TRBJ領域を指す。TCRα鎖可変ドメインの3つのCDRは、それぞれCDR1α、CDR2α及びCDR3αであり、TCRβ鎖可変ドメインの3つのCDRは、それぞれCDR1β、CDR2β及びCDR3βである。本発明のTCR可変ドメインのフレーム配列は、マウスまたはヒト化であることができ、好ましくは、ヒト化である。TCRの定常ドメインは、細胞内の部分、膜貫通領域及び細胞外の部分を含む。可溶性のTCRを得て、TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の親和性を測定するために、本発明のTCRは、好ましくは、膜貫通領域を含まない。さらに好ましくは、本発明のTCRのアミノ酸配列とは、TCRの細胞外アミノ酸配列を指す。
【0101】
本発明による「野生型TCR」のα鎖アミノ酸配列及びβ鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号:103及び配列番号:104であり、図11a及び11bに示された通りである。本発明による「参照TCR」のα鎖アミノ酸配列及びβ鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号:56及び配列番号:57であり、図8a及び8bに示された通りである。本発明において、SLLMWITQC-HLA A2複合体に結合することができる野生型TCRのα及びβ鎖可変ドメインアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:1及び配列番号:2であり、図1a及び1bに示された通りである。本発明において、用語「本発明のポリペプチド」、「本発明のTCR」、「本発明のT細胞受容体」は、相互交換に使用することができる。
【0102】
本発明の一つの好ましい実施形態において、本発明によるT細胞受容体(TCR)は、TCRα鎖可変ドメイン及びTCRβ鎖可変ドメインを含み、前記TCRα鎖可変ドメインは、CDR1α、CDR2α、及びCDR3αを含む。
【0103】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3αは、[3αX1][3αX2]D[3αX3][3αX4][3αX5][3αX6][3αX7][3αX8]配列を含み、ここで、[3αX1]、[3αX2]、[3αX3]、[3αX4]、[3αX5]、[3αX6]、[3αX7]、[3αX8]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0104】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX1]は、AまたはMである。
【0105】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX2]は、TまたはYである。
【0106】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX3]は、AまたはEまたはQである。
【0107】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX4]は、NまたはFまたはYまたはWである。
【0108】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX5]は、GまたはAまたはQである。
【0109】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX6]は、KまたはWまたはRまたはTまたはSまたはMまたはLである。
【0110】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX7]は、IまたはWまたはVまたはYまたはPである。
【0111】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX8]は、IまたはNまたはEまたはDまたはQまたはVまたはKまたはGまたはMまたはSである。
【0112】
他の一つの好ましい例において、前記[3αX1]は、Aであり、[3αX2]は、T、[3αX3]は、Aであり、[3αX4]は、NまたはFまたはWであり、[3αX5]は、Aであり、[3αX6]は、WまたはRであり、[3αX7]は、Wであり、また[3αX8]は、IまたはNまたはEまたはDである。
【0113】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3αは、ATDANARWN、ATDANARWE、ATDANARWD、ATDAFAWWI、及びATDAWARWIから選択される配列を含む。
【0114】
他の一つの好ましい例において、前記CDR1αは、[1αX1][1αX2][1αX3][1αX4]N配列を含み、ここで、[1αX1]、[1αX2]、[1αX3]、[1αX4]、[1αX5]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0115】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX1]は、TまたはGである。
【0116】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX2]は、SまたはWである。
【0117】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX3]は、IまたはAまたはVである。
【0118】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX4]は、NまたはQである。
【0119】
他の一つの好ましい例において、前記[1αX1]は、Gであり、[1αX2は、SまたはWであり、[1αX3]は、IまたはAまたはVであり、また[1αX4]は、Qである。
【0120】
他の一つの好ましい例において、前記CDR1αは、GSIQN、GWAQN、GWVQN及びTSINNから選択される配列を含む。
【0121】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2αは、IR[2αX1][2αX2][2αX3][2αX4]E配列を含み、ここで、[2αX1]、[2αX2]、[2αX3]、[2αX4]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0122】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX1]は、SまたはTである。
【0123】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX2]は、NまたはGである。
【0124】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX3]は、EまたはQである。
【0125】
他の一つの好ましい例において、前記[2αX4]は、R、AまたはQである。
【0126】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2αは、IRTGEQE、IRTGQAE及びIRSNEREから選択される配列を含む。
【0127】
他の一つの好ましい例において、前記TCRは、TCRα鎖可変ドメイン及びTCRβ鎖可変ドメインを含み、前記TCRβ鎖可変ドメインは、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含み、ここで、前記CDR1βは、SGHDY配列を含む。
【0128】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2βは、FN[2βX1][2βX2][2βX3][2βX4]配列を含み、ここで、[2βX1]、[2βX2]、[2βX3]、及び[2βX4]は、それぞれ独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0129】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX1]は、NまたはHである。
【0130】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX2]は、NまたはGである。
【0131】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX3]は、VまたはAである。
【0132】
他の一つの好ましい例において、前記[2βX4]は、PまたはVである。
【0133】
他の一つの好ましい例において、前記CDR2βは、FNHGAV、及びFNNNVPから選択される配列を含む。
【0134】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3βは、AS[3βX1][3βX2]G[3βX3]NEQY配列を含み、ここで、[3βX1]、[3βX2]、[3βX3]は、独立して任意の天然アミノ酸残基から選択される。
【0135】
他の一つの好ましい例において、前記[3βX1]は、S、QまたはMである。
【0136】
他の一つの好ましい例において、前記[3βX2]は、L、R、K、またはMである。
【0137】
他の一つの好ましい例において、前記[3βX3]は、S、A、GまたはPである。
【0138】
他の一つの好ましい例において、前記CDR3βは、ASQRGSNEQY、ASQKGANEQY、ASQLGSNEQY、ASQLGANEQY、ASQLGGNEQY、ASQLGPNEQY、ASQRGANEQY、ASQMGSNEQY、ASQMGANEQY及びASMLGSNEQYから選択される配列を含む。
【0139】
他の一つの好ましい例において、前記TCRのTCRα鎖可変ドメインは、CDR1α:TSINN、CDR2α:IRSNERE、及びCDR3α:ATDANGKIIのようなCDRを同時に含まない。
【0140】
他の一つの好ましい例において、前記TCRのTCRβ鎖可変ドメインは、CDR1β:SGHDY、CDR2β:FNNNVP、及びCDR3β:ASSLGSNEQYのようなCDRを同時に含まない。
【0141】
天然鎖間ジスルフィド結合と人工鎖間ジスルフィド結合
天然TCRの膜近位領域CαとCβ鎖の間にジスルフィド結合が存在し、本発明では「天然鎖間ジスルフィド結合」と称する。本発明において、人工的に導入されて、天然鎖間ジスルフィド結合の位置と異なる位置を有する鎖間の共有ジスルフィド結合を「人工鎖間ジスルフィド結合」と称する。
【0142】
説明の便利のために、本発明でTRAC*01とTRBC1*01またはTRBC2*01アミノ酸配列の位置番号をN端からC端の手順に沿って位置ナンバリングして、例えば、TRBC1*01またはTRBC2*01で、N段からC段の手順に基づいて60番目のアミノ酸は、P(プロリン(Proline))であり、本発明において、これをTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のPro60と記述することができ、これをTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の60番目のアミノ酸と記述することもでき、また、例えば、TRBC1*01またはTRBC2*01で、N段からC段の手順に基づいて61番目のアミノ酸は、Q(グルタミン(Glutamine))であり、本発明において、これをTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のGln61と記述することができで、これをTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の61番目のアミノ酸と記述することもでき、他のものもこれによって類推する。本発明において、可変領域TRAVとTRBVのアミノ酸配列の位置番号は、IMGTに列挙された位置に基づいてナンバリングされる。例えば、TRAVのあるアミノ酸がIMGTに列挙された位置番号が46であれば、本発明でこれをTRAV46番目のアミノ酸で記述し、他のものもこれによって類推する。本発明において、他のアミノ酸の配列の位置番号について特別な説明があれば、特殊な説明に従う。
【0143】
腫瘍
用語「腫瘍」とは、病理学的タイプまたは感染の段階に関係なく、すべてのタイプの腫瘍細胞生長または発がん過程を含む転移組織または悪性形質転換細胞、組織、または器官を指す。腫瘍の実施例は、非制限的に、固形腫瘍、軟組織腫瘍、および転移性病変を含む。固形腫瘍の実施例は、肉腫、扁平上皮癌及び癌のような異なる器官系統の悪性腫瘍を含む。例えば、感染した前立腺、肺、乳房、リンパ、腸胃(例えば、結腸)及び尿生殖路(例えば、腎臓、上皮細胞)、咽頭を含む。肺扁平上皮癌は、ほとんどの結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺部の非小細胞癌、小腸癌及び食道癌のような悪性腫瘍を含む。前記癌の転移性病変は、同様に、本発明の方法と組成物により治療及び予防することができる。
【0144】
発明の詳細な説明
周知のように、TCRのα鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインは、それぞれ3つのCDRを含み、抗体の相補決定領域と類似している。CDR3は、抗原オリゴペプチドと相互作用し、CDR1及びCDR2は、HLAと相互作用する。従って、TCR分子のCDRが、それと抗原オリゴペプチド-HLA複合体の相互作用を決定した。抗原オリゴペプチドSLLMWITQCとHLA A2複合体(即ち、SLLMWITQC-HLA A2複合体)を結合することができる野生型TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列とβ鎖可変ドメインアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:1と配列番号:2であり、当該配列は、本発明者が初めて発見した。これは、下記のCDR領域を有する。
α鎖可変ドメインCDR CDR1α:TSINN
CDR2α:IRSNERE
CDR3α:ATDANGKII
及びβ鎖可変ドメインCDR CDR1β:SGHDY
CDR2β:FNNNVP
CDR3β:ASSLGSNEQY
【0145】
本発明は、前記CDR領域の変異体スクリーニングを介して、SLLMWITQC-HLA A2複合体との親和力が野生型TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体の親和力の少なくとも2倍の高親和力のTCRを獲得した。
【0146】
本発明は、SLLMWITQC-HLA A2複合体に結合される活性を有するT細胞受容体(TCR)を提供した。
【0147】
前記T細胞受容体TCRは、TCRα鎖可変ドメイン及びTCRβ鎖可変ドメインを含み、前記TCRα鎖可変ドメインは、3つのCDR領域を含み、前記TCRα鎖可変ドメインの3つのCDR領域の基準配列は、以下の通りであり、
CDR1α:TSINN
CDR2α:IRSNERE
CDR3α:ATDANGKII、また少なくとも1つの下記の突然変異を含み、
および/または,前記TCRβ鎖可変ドメインは、3つのCDR領域を含み、前記TCRβ鎖可変ドメインの3つのCDR領域の基準配列は、以下の通りであり、
CDR1β:SGHDY
CDR2β:FNNNVP
CDR3β:ASSLGSNEQY、また少なくとも1つの下記の突然変異を含む。
【0148】
【0149】
さらに詳細に、前記TCRα鎖CDR領域の突然変異の数は、3個または4個または6個または8個または9個または11個または12個であり、および/または前記TCRβ鎖CDR領域の突然変異の数は、1個または2個または3個または4個または5個または6個または7個である。
【0150】
さらに、本発明によるTCRは、αβヘテロ二量体TCRであり、前記TCRのα鎖可変ドメインは、配列番号:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも92%、最も好ましくは、少なくとも94%(例えば、少なくとも88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、および/または前記TCRのβ鎖可変ドメインは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と有少なくとも90%、好ましくは、少なくとも92%、さらに好ましくは、少なくとも94%、最も好ましくは、少なくとも97%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0151】
さらに、本発明によるTCRは、単鎖TCRであり、前記TCRのα鎖可変ドメインは、配列番号:3に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも92%、最も好ましくは、少なくとも94%(例えば、少なくとも88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、および/または前記TCRのβ鎖可変ドメインは、配列番号:4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは、少なくとも92%、さらに好ましくは、少なくとも94%、最も好ましくは、少なくとも97%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性であることができる)の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0152】
好ましくは、前記TCRは、(i)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRα鎖、及び(ii)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部のTCRβ鎖を含み、ここで、(i)及び(ii)の両方は、TCR鎖の可変ドメイン及び少なくとも一部の定常ドメインを含む。
【0153】
本発明において、野生型TCRα鎖可変ドメイン配列番号:1の3つのCDR、即ちCDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ配列番号:1の第27-31番、第49-55番及び第90-98番に位置される。これによって、アミノ酸残基の番号は、配列番号:1に示される番号を使用し、27Tは、CDR1αの1番目のTであり、28Sは、CDR1αの2番目のSであり、29Iは、CDR1αの3番目のIであり、30Nは、CDR1αの4番目のNであり、51Sは、CDR2αの3番目のSであり、52Nは、CDR2αの4番目のNであり、53Eは、CDR2αの5番目のEであり、54Rは、CDR2αの6番目のRであり、90Aは、CDR3αの1番目のAであり、91Tは、CDR3αの2番目のTであり、93Aは、CDR3αの4番目のAであり、94Nは、CDR3αの5番目のNであり、95Gは、CDR3αの6番目のGであり、96Kは、CDR3αの7番目のKであり、97Iは、CDR3αの8番目のIであり、98Iは、CDR3αの9番目のIである。
【0154】
同様に、本発明における野生型TCRβ鎖可変ドメイン配列番号:2の3つのCDR、即ち、CDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ配列番号:2の第27-31番、第49-54番及び第93-102番に位置される。従って、アミノ酸残基の番号は、配列番号:2に示される番号を使用し、51Nは、CDR2βの3番目のNであり、52Nは、CDR2βの4番目のNであり、53Vは、CDR2βの5番目のVであり、54Pは、CDR2βの6番目のPであり、95Sは、CDR3βの3番目のSであり、96Lは、CDR3βの4番目のLであり、98Sは、CDR3βの6番目のSである。
【0155】
本発明において、SLLMWITQC-HLA A2複合体に結合する特性を有し、α鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインを含むTCRを提供し、前記TCRは、配列番号:1に示されるα鎖可変ドメインにおいて突然変異され、前記突然変異のアミノ酸残基のサイトは、27T、28S、29I、30N、51S、52N、53E、54R、90A、91T、93A、94N、95G、96K、97I及び98I中の1つまたは複数を含み、ここで、アミノ酸残基の番号は、配列番号:1に示される番号を使用し、および/または前記TCRは、配列番号:2に示されるβ鎖可変ドメインにおいて突然変異され、前記突然変異のアミノ酸残基のサイトは、51N、52N、53V、54P、95S、96L及び98S中の1つまたは複数を含み、ここで、アミノ酸残基の番号は、配列番号:2に示される番号を使用し、
好ましくは、突然変異後の前記TCRα鎖可変ドメインは、27G、28W、29Aまたは29V、30Q、51T、52G、53Q、54Qまたは54A、90M、91Y、93Eまたは93Q、94Fまたは94Yまたは94W、95Aまたは95Q、96Wまたは96Rまたは96Tまたは96Sまたは96Mまたは96L、97Wまたは97Vまたは97Yまたは97P、及び98Eまたは98Nまたは98Dまたは98Qまたは98Kまたは98Vまたは98Gまたは98Mまたは98Sから選択される1つまたは複数アミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸残基の番号は、配列番号:1に示される番号を使用し、および/または突然変異後の前記TCRβ鎖可変ドメインは、51H、52G、53A、54V、95Qまたは95M、96Rまたは96Kまたは96M、及び98Aまたは98Gまたは98Pから選択される1つまたは複数アミノ酸残基を含み、アミノ酸残基の番号は、配列番号:2に示される番号を使用することを特徴とする。
【0156】
さらに具体的に、α鎖可変ドメインによる突然変異の具体的な形態は、T27G、S28W、I29A/V、N30Q、S51T、N52G、E53Q、R54Q/A、A90M、T91Y、A93E/Q、N94F/Y/W、G95A/Q、K96W/R/T/S/M/L、I97W/V/Y/P及びI98N/E/D/Q/K/V/G/M/S中の1つまたは複数のグループを含み、β鎖可変ドメインによる突然変異の具体的な形態は、N51H、N52G、V53A、P54V、S95Q/M、L96R/K/M及びS98A/G/P中の1つまたは複数のグループを含む。
【0157】
当業者に公知された部位特異的突然変異方法によって、野生型TCRα鎖定常領域TRAC*01エクソン1のThr48をシステインに突然変異させ、β鎖定常領域TRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer57をシステインに突然変異させ、参照TCRを得て、そのアミノ酸配列は、それぞれ図8a及び8bに示される通りであり、突然変異後のシステイン残基を太文字で表示した。前記システイン置換は、さらに安定した可溶性TCRを形成するために、参照TCRのαとβ鎖の定常領域の間に人工鎖間ジスルフィド結合を形成することができ、従って、TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和性および/または結合半減期をさらに便利に評価することができる。TCR可変領域のCDR領域が、pMHC複合体との間の親和力を決定し、従って、前記TCR定常領域のシステイン置換は、TCRの結合親和力および/または結合半減期に影響を及ぼさないことを理解すべきである。従って、本発明において、測定された参照TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和力は、野生型TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和力とみたされる。同様に、測定された本発明のTCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和力が、参照TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和力の少なくとも10倍であれば、本発明のTCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和力が、野生型TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和力の少なくとも10倍であることと同等である。
【0158】
任意の適切な方法で結合親和力(解離平衡定数Kと反比例)と結合半減期(T1/2に表示される)を測定することができる。TCRの親和力を倍増するとKが半分に減ることを理解すべきである。T1/2は、In2を解離速度(Koff)で割った値として計算される。従って、T1/2が倍増するとKoffが半分に減る。好ましくは、同じ試験案を使用して、与えられたTCRの結合親和力または結合半減期回数、例えば3回またはもっと測定して、結果の平均値をとった。好ましい実施形態において、本実施例における表面プラズモン共鳴(BIAcore)の方法でこれらの測定を行った。当該方法で測定されたSLLMWITQC-HLA A2複合体に対する参照TCRの解離平衡定数Kは、4.3E-05M、即ち43μMであり、本発明でSLLMWITQC-HLA A2複合体に対する野生型TCRの解離平衡定数Kも43μMであるとみなされる。TCRの親和力が倍増するとKが半分に減るので、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する高親和力TCRの解離平衡定数Kが4.3E-06M、即ち4.3μMと測定されると、当該SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する高親和力TCRの親和性がSLLMWITQC-HLA A2複合体に対する野生型TCRの親和力の10倍であることを説明する。当業者に公知されたK値の単位の間の換算関係は1M=1000μM、1μM=1000nM、1nM=1000pMである。
【0159】
本発明の一つの好ましい例において、前記TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体の親和力は、野生型TCRの少なくとも2倍であり、好ましくは、少なくとも5倍であり、さらに好ましくは、少なくとも10倍である。
【0160】
他の一つの好ましい例において、前記TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体の親和力は、野生型TCRの少なくとも50倍であり、好ましくは、少なくとも100倍であり、さらに好ましくは、少なくとも500倍であり、最も好ましくは、少なくとも1000倍である。
【0161】
他の一つの好ましい例において、前記TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体の親和力は、野生型TCRの少なくとも10倍であり、好ましくは、少なくとも10倍であり、さらに好ましくは、少なくとも10倍であり、最も好ましくは、少なくとも10倍である。
【0162】
具体的に、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する前記TCRの解離平衡定数は、K≦20μMであり、
他の一つの好ましい例において、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する前記TCRの解離平衡定数は、5μM≦K≦10μMであり、好ましくは、0.1μM≦K≦1μMであり、さらに好ましくは、1nM≦K≦100nMであり、
他の一つの好ましい例において、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対する前記TCRの解離平衡定数は、100pM≦K≦1000pMであり、好ましくは、10pM≦K≦100pMであり、さらに好ましくは、1pM≦K≦10pMである。
【0163】
任意の適切な方法で突然変異させることができ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるこのようなものは、制限酵素によるクローニングまたはライゲーション独立クローニング(LIC)の方法を含むがこれらに限定されない。多くの標準的な分子生物学の教科書では、これらの方法を詳細に説明した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異と制限酵素によるクローニングに対するより多くの詳細については、CSHL出版社のSambrookとRussell,(2001)分子クローニング-実験室手帳(Molecular Cloning-A Laboratory Manual)(第3版)を参照することができる。LIC方法に対するより多くの情報は、(Rashtchian,(1995)Curr Opin Biotechnol6(1):30-6)を参照することができる。
【0164】
本発明のTCRを生成する方法は、このようなタイプのTCRを示すファージ粒子の多様なライブラリ(library)からSLLMWITQC-HLA-A2複合体に対して高親和性を有するTCRをスクリーニングであることができるが、これに限定されず、例えば、文献(Li、et al(2005)Nature Biotech23(3):349-354)に記載の通りである。
【0165】
野生型TCRαとβ鎖可変ドメインアミノ酸を発現する遺伝子またはわずかに変形された野生型TCRのαとβ鎖可変ドメインアミノ酸を発現する遺伝子は、すべての鋳型TCRを製造するために使用することができることを理解すべきである。その後、当該鋳型TCRの可変ドメインをコードするDNAに、本発明の高親和力TCRを生成するために必要な変更が導入される。
【0166】
本発明の高親和性TCRは、α鎖可変ドメインアミノ酸配列配列番号:58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86中の1つ、および/またはβ鎖可変ドメインアミノ酸配列配列番号:87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102中の1つを含む。従って、野生型TCRのα鎖可変ドメインアミノ酸配列(配列番号:1)を含むTCRα鎖は、配列番号:87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102中の1つを含むTCRβ鎖とヘテロ二量体TCRまたは単鎖TCR分子を形成することができる。または、野生型TCRのβ可変ドメインアミノ酸配列(配列番号:2)を含むTCRβ鎖は、配列番号:58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86中の1つを含むTCRα鎖とヘテロ二量体TCRまたは単鎖TCR分子を形成することができる。または、TCRα鎖可変ドメインアミノ酸配列配列番号:58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86中の1つを含むTCRα鎖は、TCRβ鎖可変ドメインアミノ酸配列配列番号:87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102中の1つを含むTCRβ鎖とヘテロ二量体TCRまたは単鎖TCR分子を形成することができる。本発明において、ヘテロ二量体TCR分子を形成するα鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、好ましくは下記表1から選択される。
【0167】
【0168】
本発明の目的に基づいて、本発明のTCRは、少なくとも1つのTCRαおよび/またはTCRβ鎖可変ドメインを有する部分である。通常、これらはTCRα鎖可変ドメインとTCRβ鎖可変ドメインを同時に含む。これらは、αβヘテロ二量体または一本鎖形態または他の任意の安定的に存在することができる形態であることができる。養子免疫療法では、αβヘテロ二量体TCRの全長鎖(細胞と膜貫通ドメインを含む)が形質感染することができる。本発明のTCRは、治療剤を抗原提示細胞に伝達するためのターゲット剤又は他の分子と組み合わせて二機能性ポリペプチドを効果細胞に指向させるために使用することができ、この時、好ましくは、TCRは利用可溶形態である。
【0169】
安定性について、先行技術でTCRのαとβ鎖定常ドメインの間に人工鎖間ジスルフィド結合を導入すれば、可溶性の且つ安定的なTCR分子を得ることができることを開示し、例えば、特許文献PCT/CN2015/093806に記述した通りである。従って、本発明のTCRは、そのαとβ鎖定常ドメインの残基の間に人工鎖間ジスルフィド結合された導入するTCRであることができる。システイン残基は、前記TCRのαとβ鎖定常ドメインの間に人工鎖間ジスルフィド結合を形成する。システイン残基は、天然TCR内の適切なサイトの他のアミノ酸残基に置換して、人工鎖間ジスルフィド結合を形成する。例えば、TRAC*01エクソン1のThr48を置換して、及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer57を置換して、ジスルフィド結合を形成する。システイン残基を導入してジスルフィド結合を形成する他のサイトは、さらにTRAC*01エクソン1のThr45及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer77、TRAC*01エクソン1のTyr10及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer17、TRAC*01エクソン1のThr45及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のAsp59、TRAC*01エクソン1のSer15及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のGlu15、TRAC*01エクソン1のArg53及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のSer54、TRAC*01エクソン1のPro89及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のAla19、またはTRAC*01エクソン1のTyr10及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1のGlu20であることができる。即ち、システイン残基が前記αとβ鎖定常ドメイン中の任意のサイトに置換された。システイン残基を含まず、天然鎖間ジスルフィド結合を欠失する目的を達成するために、本発明のTCR定常ドメインの1つまたは複数のC末端から最大15個、または最大10個、または最大8個またはより少ないアミノ酸を切断することができ、天然鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を他の1つのアミノ酸に突然変異させて、前記目的を達成することもできる。
【0170】
上述したように、本発明のTCRは、そのαとβ鎖定常ドメインの残基の間に導入された人工鎖間ジスルフィド結合を含むことができる。定常ドメインの間に上述したように導入された人工ジスルフィド結合を含んでも、含まなくても、本発明のTCRは、TRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列をすべて含むことができることに注意すべきである。TCRのTRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列は、TCR中に存在する天然鎖間ジスルフィド結合によって連結することができる。
【0171】
なお、安定性について、特許文献PCT/CN2016/077680で、TCRのα鎖可変領域とβ鎖定常領域との間に人工鎖間ジスルフィド結合を導入して、TCRの安定性を著しく向上させることができることを開示した。従って、本発明の高親和力TCRのα鎖可変領域とβ鎖定常領域との間に人工鎖間ジスルフィド結合がさらに含まれることができる。具体的に、前記TCRのα鎖可変領域とβ鎖定常領域との間に人工鎖間ジスルフィド結合が形成されたシステイン残基は、TRAVの46番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の60番目のアミノ酸、TRAVの47番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の61番目のアミノ酸、TRAVの46番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の61番目のアミノ酸、またはTRAVの47番目のアミノ酸及びTRBC1*01またはTRBC2*01エクソン1の60番目のアミノ酸を置換した。好ましくは、このようなTCRは、(i)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部TCRα鎖、及び(ii)その膜貫通ドメイン以外の全部または一部TCRβ鎖を含むことができ、ここで、(i)及び(ii)の両方は、TCR鎖の可変ドメイン及び少なくとも一部の定常ドメインを含み、α鎖とβ鎖は、ヘテロ二量体を形成する。さらに好ましくは、このようなTCRは、α鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメイン及び膜貫通ドメイン以外の全部または一部β鎖定常ドメインを含むことができるが、α鎖定常ドメインを含まず、前記TCRのα鎖可変ドメインは、β鎖とヘテロ二量体を形成する。
【0172】
安定性について、一方、本発明のTCRは、その疎水性コア領域で突然変異されたTCRをさらに含み、好ましくは、これらの疎水性コア領域の突然変異は、本発明のTCRの安定性を向上させることができる突然変異であり、例えば、公開番号WO2014/206304の特許文献に記載された通りである。このようなTCRは、(αおよび/またはβ鎖)可変領域のアミノ酸11、13、19、21、53、76、89、91、94番、および/またはα鎖J遺伝子(TRAJ)オリゴペプチドのアミノ酸位置後ろから3、5、7番、および/またはβ鎖J遺伝子(TRBJ)オリゴペプチドのアミノ酸位置後ろから2、4、6番の可変ドメイン疎水性コアの位置で突然変異されることができ、ここで、アミノ酸配列の位置番号は、国際免疫遺伝学情報システム(IMGT)に列挙された位置に基づいてナンバリングされる。当業者は、前記の国際免疫遺伝学情報システムを知っていて、当該データベースに基づいてIMGT中の異なるTCRのアミノ酸残基の位置番号を得ることができる。
【0173】
さらに具体的に、本発明中の疎水性コア領域が突然変異されたTCRは、αとβ鎖の可変ドメインを柔軟なペプチド鎖で連結して構成された高安定性の単鎖TCRであることができる。TCR可変領域のCDR領域は、オリゴペプチド-HLA複合体との間の親和力を決定し、疎水性コアの突然変異は、TCRをさらに安定させることがでるが、オリゴペプチド-HLA複合体との間の親和力に影響を与えない。本発明において、柔軟なペプチド鎖は、任意の適切なTCRαとβ鎖可変ドメインを連結するペプチド鎖であることができることに注意すべきである。本発明の実施例1で構築された高親和性TCRの選別用鋳型鎖は、前記疎水性コア突然変異を含む高安定性の単鎖TCRである。安定性が比較的に高いTCRを使用して、TCRとSLLMWITQC-HLA-A2複合体との間の親和力を容易に評価することができる。
【0174】
当該一本鎖鋳型TCRのα鎖可変ドメイン及びβ鎖可変ドメインのCDR領域と野生型TCRのCDR領域は、完全に同じである。即ち、α鎖可変ドメインの3つのCDRは、それぞれCDR1α:TSINN、CDR2α:IRSNERE、CDR3α:ATDANGKIIであり、β鎖可変ドメインの3つのCDRは、それぞれCDR1β:SGHDY、CDR2β:FNNNVP、CDR3β:ASSLGSNEQYである。当該一本鎖鋳型TCRのアミノ酸配列(配列番号:54)及びヌクレオチド配列(配列番号:55)は、それぞれ図7a及び図7bに示された通りである。これにより、SLLMWITQC-HLA A2複合体に対して高親和性を有するα鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインで構成された単鎖TCRをスクリーニングした。
【0175】
本発明において、一本鎖鋳型TCRα鎖可変ドメイン配列番号:3の3つのCDR、即ち、CDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ配列番号:3の27-31番目、49-55番目及び90-98番目に位置される。これにより、アミノ酸残基の番号は、配列番号:3に示される番号を使用し、27Tは、CDR1αの1番目のTであり、28Sは、CDR1αの2番目のSであり、29Iは、CDR1αの3番目のIであり、30Nは、CDR1αの4番目のNであり、51Sは、CDR2αの3番目のSであり、52Nは、CDR2αの4番目のNであり、53Eは、CDR2αの5番目のEであり、54Rは、CDR2αの6番目のRであり、90Aは、CDR3αの1番目のAであり、91Tは、CDR3αの2番目のTであり、93Aは、CDR3αの4番目のAであり、94Nは、CDR3αの5番目のNであり、95Gは、CDR3αの6番目のGであり、96Kは、CDR3αの7番目のKであり、97Iは、CDR3αの8番目のIであり、98Iは、CDR3αの9番目のIである。
【0176】
同様に、本発明において、一本鎖鋳型TCRβ鎖可変ドメイン配列番号:4の3つのCDR、即ちCDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ配列番号:2の27-31番目、49-54番目及び93-102番目に位置される。従って、アミノ酸残基の番号は、配列番号:2に示される番号を使用し、51Nは、CDR2βの3番目のNであり、52Nは、CDR2βの4番目のNであり、53Vは、CDR2βの5番目のVであり、54Pは、CDR2βの6番目のPであり、95Sは、CDR3βの3番目のSであり、96Lは、CDR3βの4番目のLであり、98Sは、CDR3βの6番目のSである。
【0177】
本発明のSLLMWITQC-HLA-A2複合体に対して高親和性を有するαβヘテロ二量体の獲得は、スクリーニングされた高親和性単鎖TCRのαとβ鎖可変ドメインのCDR領域を野生型TCRα鎖可変ドメイン(配列番号:1)とβ鎖可変ドメイン(配列番号:2)の対応する位置に転移して得られたものである。
【0178】
本発明の一部の実施例において、配列番号:1に示される番号を使用し、本発明のTCRのα鎖可変ドメイン疎水性コアアミノ酸残基19A(即ち、IMGTに列挙されたα鎖可変領域19番目)、21M(即ち、IMGTに列挙されたα鎖可変領域21番目)、79S(即ち、IMGTに列挙されたα鎖可変領域94番目)中の1つまたは複数が突然変異され、および/または配列番号:2に示される番号を使用し、前記TCRβ鎖可変ドメイン疎水性コアアミノ酸残基13T(即ち、MGTに列挙されたβ鎖可変領域13番目)、82S(即ち、IMGTに列挙されたβ鎖可変領域94番目)中の1つまたは複数が突然変異される。
【0179】
さらに具体的に、本発明の一部の実施例において、配列番号:1に示される番号を使用し、本発明α鎖可変ドメイン疎水性コアは、アミノ酸残基19V、21I及び79V中の1つまたは複数を含み、および/または配列番号:2に示される番号を使用し、前記TCRβ可変ドメイン疎水性コアは、アミノ酸残基13V及び82V中の1つまたは複数を含み。さらに具体的に、前記TCRα可変ドメイン疎水性コアの突然変異形態は、A19V、M21I及びS79V中の1つまたは複数のグループを含み、前記TCRβ可変ドメイン疎水性コアの突然変異形態は、T13V及びS82V中の1つまたは複数のグループを含む。
【0180】
本発明の高親和性TCRは、α鎖可変ドメインアミノ酸配列配列番号:9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36及び37中の1つ、および/またはβ鎖可変ドメインアミノ酸配列配列番号:38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52及び53中の1つをさらに含む。従って、前記鋳型鎖としての高安定性の単鎖TCRα鎖可変ドメイン(配列番号:3)は、アミノ酸配列が配列番号:38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52または53のTCRβ鎖可変ドメインと組み合わせて、前記単鎖TCR分子を形成することができる。または、前記鋳型鎖としての高安定性の単鎖TCRβ鎖可変ドメイン(配列番号:4)は、アミノ酸配列が配列番号:9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36または37のTCRα鎖可変ドメインと組み合わせて、前記単鎖TCR分子を形成することができる。または、TCRα鎖可変ドメイン配列番号:9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36及び37中の1つは、TCRβ鎖可変ドメイン配列番号:38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52及び53中の1つの組み合わせて、前記単鎖TCR分子を形成することができる。本発明において、高親和力単鎖TCR分子のα鎖可変ドメインとβ鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、好ましくは下記表2から選択される。
【0181】
【0182】
本発明のTCRは、多価複合体の形態で提供されることもできる。本発明の多価TCR複合体は、p53の4合体ドメインを使用して形成された4合体、または複数の本発明のTCRが、他のいずれかの分子と結合して形成された複合体のような2個、3個、4個またはさらに多い本発明のTCRと結合されて形成されたポリマーを含む。本発明のTCR複合体は、提示特定抗原を体外または体内追跡したり、標的化するために使用することができ、これらのタイプの応用がある他の多価TCR複合体の中間体を製造するために使用することもできる。
【0183】
本発明のTCRは、単独で使用することができ、コンジュゲートと共有結合または他の方法で結合されることもでき、好ましくは、共有方式で結合される。前記コンジュゲートは、検出可能なマーカー(診断目的のためのものであり、ここで、前記TCRは、SLLMWITQC-HLA-A2複合体を提示する細胞の存在を検出するためのものである)、治療剤、PK(タンパク質キナーゼ(Protein kinase))修飾部分または任意の以上これらの物質の組み合わせ結合または接合を含む。
【0184】
診断用の検出可能なマーカーは、蛍光または蛍光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像)、またはCT(コンピュータ断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成することができる酵素を含むが、これに限定されない。
【0185】
本発明のTCRと結合したり、接合されたりする治療剤は、1.放射性核種(Koppe等,2005年,がん転移評論(Cancer metastasis reviews)24,539)、 2.生物毒(Chaudhary等、1989,自然(Nature)339,394; Epel等、2002年,癌免疫学および免疫療法(Cancer Immunology and Immunotherapy)51,565),3.IL-2などのサイトカイン(Cytokine)(Gillies等,1992年,米国国立科学アカデミー(PNAS)89,1428、Card等,2004年,癌免疫学および免疫療法(Cancer Immunology and Immunotherapy)53,345、Halin等,2003年,がん研究(Cancer Research)63,3202)、4.抗体Fc断片(Mosquera等,2005年,免疫学雑誌(The Journal Of Immunology)174,4381)、5.抗体scFv断片(Zhu等,1995,癌国際ジャーナル(International Journal of Cancer)62,319)、6.金ナノ粒子/ナノロッド(Lapotko等,2005年,がん通信(Cancer letters)239,36、Huang等,2006年,米国化学学会誌(Journal of the American Chemical Society)128,2115)、7.ウイルス粒子(Peng等,2004年,遺伝子治療(Gene therapy)11,1234)、8.リポソーム(Liposomes)(Mamot等,2005年,がん研究(Cancer research)65,11631)、9.ナノ磁性粒子、10.プロドラッグ(Prodrug)活性酵素(例えば、DT-ディアポーラ第(DTD)またはビフェニル加水分解酵素類似蛋白質(BPHL))、11.化学治療剤(例えば、シスプラチン(Cisplatin))または任意の形式のナノ粒子を含むが、これらに限定されない。
【0186】
本発明にTCR結合される抗体またはその断片は、抗-CD3または抗-CD28または抗-CD16抗体のような抗-T細胞またはNK-細胞決定抗体を含み、前記抗体またはその断片とTCRの結合は、効果細胞に対して指向して標的細胞をより効果的に標的化することができる。一つの好ましい実施形態において、本発明のTCRは、抗-CD3抗体または前記抗-CD3抗体の機能断片または変異体と結合される。具体的に、本発明のTCRと抗CD3一本鎖抗体の融合分子は、配列番号:9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86から選択されるTCRα鎖可変ドメインアミノ酸配列、及び配列番号:38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102から選択されるTCRβ鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。
【0187】
本発明は、また本発明のTCRをコードする核酸分子に関する。本発明の核酸分子は、DNA形態またはRNA形態であることができる。DNAは、コーディング鎖または非コーディング鎖であることができる。例えば、本発明のTCRをコードする核酸配列は、可以与本発明の図面に示される核酸配列と同じであることができ、または変形された変異体であることができる。「変形された変異体」の意味を例を挙げて説明すれば、本文に使用されたように、「変形された変異体」は、本発明の配列番号:54のタンパク質配列を備えたが、配列番号:55の配列と他の核酸配列をコードすることを指す。
【0188】
通常、本発明の核酸分子全長配列またはその断片は、PCR増幅法、組換え方法または人工合成の方法で得ることができるが、これに限定されない。現在、本発明のTCR(またはその断片、またはその誘導体)をコードするDNA配列を化学合成的に完全に得ることができる。そして、当該DNA配列は、本分野で公知の従来のDNA分子(または、例えばベクター)と細胞に導入することができる。
【0189】
本発明は、また、本発明の核酸分子を含むベクター、および本発明のベクターまたはコード配列から遺伝子工学によって生成された宿主細胞に関する。
【0190】
本発明は、本発明のTCRを発現する単離細胞、特にT細胞をさらに含む。本発明の高親和力TCRをコードするDNAまたはRNAへのT細胞形質感染に適した様々な方法がある(例えば、Robbins等.,(2008)J.Immunol.180:6116-6131)。本発明の高親和性TCRを発現するT細胞は、養子免疫治療に使用することができる。当業者は、養子免疫治療を実行するための多くの適切な方法を知っている(例えば、Rosenberg等.,(2008)Nat Rev Cancer8(4):299-308)。
【0191】
本発明は、薬学的に許容されるベクター及び本発明のTCR、または本発明のTCR複合体、または本発明のTCRを提示する細胞を含む薬学的組成物をさらに提供した。
【0192】
本発明は、治療が必要な対象に、本発明のTCR、または本発明のTCR複合体、または本発明のTCRを提示する細胞、または本発明の薬学的組成物を適量投与するステップを含む疾患を治療する方法をさらに提供する。
【0193】
本文のアミノ酸の名称は、国際的に通用する単一の英語アルパベトルル使用して表示して、これに対応されるアミノ酸の名称は、3つの英語のアルファベットと略称し、それぞれAla(A)、Arg(R)、Asn(N)、Asp(D)、Cys(C)、Gln(Q)、Glu(E)、Gly(G)、His(H)、Ile(I)、Leu(L)、Lys(K)、Met(M)、Phe(F)、Pro(P)、Ser(S)、Thr(T)、Trp(W)、Tyr(Y)、Val(V)であることを理解しなければならなく、
本発明において、Pro60または60Pは、すべて60番目のプロリンを示す。なお、本発明による変異体の具体的な形態の表現方法は、例えば、「T27G」は、27番目のTがGで置換されたことを表し、同様に、「I29A/V」は29番目のIがAで置換され、またはVに置換されたことを表す。他のものもそれに応じて類推する。
【0194】
本分野において、性能が似ていたり、類似のアミノ酸に置換する場合には、一般的にタンパク質の機能を変化させない。通常、C末端および/またはN末端に1つまたは複数のアミノ酸を添加しても、タンパク質の構造と機能を変化させない。従って、本発明のTCRは、本発明のTCRの最大5個、好ましくは3個、さらに好ましくは2個、最も好ましくは1個のアミノ酸(特にCDR領域のほかの場所されたアミノ酸)をさらに含み、性質が似ているか近いアミノ酸に置換されても、まだ機能的TCRを維持することができる。
【0195】
本発明は、本発明のTCRに対して少し変形させたTCRをさらに含む。変形(通常は、1次構造は変更されない)の形式は、アセチル化(Acetylation)またはカルボキシ化(Carboxylation)のような、本発明のTCRの化学的誘導形式を含む。変形はグリコシル化(glycosylation)をさらに含み、例えば、本発明のTCRの合成と加工で、または追加の加工段階でグリコシル化して生成されたTCRある。これらの変形は、TCRをグリコシル化させた酵素(例えば、哺乳動物のグリコシル化酵素または脱グリコシル化酵素)に露出させて完成することができる。変形形式でリン酸化アミノ酸残基(例えば、ホスホチロシン(Phosphotyrosine)、フォースポーセリン(Phosphoserine)、ホスホスレオニン(Phosphothreonine))を有する配列をさらに含む。変形されてその抗タンパク質加水分解性能を向上させたり、溶解性を最適化させたTCRをさらに含む。
【0196】
本発明のTCR、TCR複合体または本発明のTCRで形質感染T細胞は、薬学的に許容されるベクターと一緒に薬学的組成物に提供されることができる。通常、本発明のTCR、多価TCR複合体または細胞は、無菌薬学的組成物の一部として提供され、前記組成物は、通常、薬学的に許容されるベクターを含む。当該薬学的組成物は、任意の適切な形式であることができる(患者に投与されるための方法によって決定される)。単位剤形で提供されることができ、一般的に密閉された容器に提供され、キット(Kit)の一部として提供されることができる。このタイプのキット(しかし、必須ではない)は、使用説明書が含まれる。複数の前記単位剤形を含むことができる。
【0197】
なお、本発明のTCRは、単独で使用することができ、他の治療剤と組み合わせたり、組み合わせて併用することができる(例えば、同じ薬学的組成物に調製する)。
【0198】
薬学的組成物は、薬学的に許容されるベクターをさらに含むことができる。用語「薬学的に許容されるベクター」は、治療剤を投与するためのベクターを意味する。当該用語は、これらの自体には投与を受ける個体に有害な抗体を誘導せず、投与後過度の毒性のない薬剤のベクトルは、前記組成物を指す。これらのベクターは、当業者に公知されたものである。レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co.,N.J. 1991))で、薬学的に許容される賦形剤に関する十分な議論を見つけることができる。これらのベクターは、塩水、緩衝液、ブドウ糖、水、グリセリン(Glycerin)、エタノール(ethanol)、アジュバント、およびそれらの組み合わせを含む(ただし、これに限定されない)。
【0199】
治療性組成物で薬学的に許容されるベクターは、水、塩水、グリセリン及びエタノールのような液体を含むことができる。また、このようなベクターに湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などのような補助物質が存在することができる。
【0200】
通常、治療性組成物は、液体溶液または懸濁液のような注射可能な製剤として製造することができ、注射前に溶液または懸濁液に調製するのに適した固体形態の液体ベクターで製造されることもできる。
【0201】
本発明の組成物で製造されると、これを従来の経路によって投与することができ、ここで眼内、筋肉内、静脈内、皮下、皮内または局所投与を含み(ただし、これらに限定されない)、好ましくは、皮下、筋肉内または静脈内を含む非経口投与である。予防または治療される対象は、動物、特に人であることができる。
【0202】
本発明の薬学的組成物が、実際の治療に使用される場合には、使用状況に応じて、様々な異なる剤形の薬学的組成物を使用することができる。好ましくは、注射剤、経口剤などが挙げられる。
【0203】
これらの薬学的組成物は、通常の方法によって混合、希釈または溶解して調製することができ、また、賦形剤、崩壊剤、接着剤、潤滑剤、シンナー、緩衝剤、等張剤(isotonicities)、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤、および助溶剤のような適切な薬学的添加剤をたまに追加し、当該調製過程は製剤は、通常の方法で行われることができる。
【0204】
本発明の薬学的組成物は、徐放剤の形式で投与することもできる。例えば、本発明のTCRは、徐放性ポリマーがベクトルである錠剤またはマイクロカプセルに混入された後、手術を介して治療するための組織として移植することができる。徐放性ポリマーの例として、エチレン-酢酸ビニル(ethylene-vinyl acetate)ポリマー、ポリヒドロメタアクリレート(polyhydrometaacrylate)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、メチルセルロース(methylcellulose)、乳酸ポリマー、乳酸-グリコール酸重合体などを例に挙げられ、好ましくは、乳酸-グリコール酸共重合体のような生分解性ポリマーを挙げられる。
【0205】
本発明の薬学的組成物が、実際の治療に使用される場合、活性成分である本発明のTCRまたはTCR複合体または本発明のTCRを提示する細胞は、治療される各患者の体重、年齢、性別、症状の程度に応じて決定されることができ、最終的に医師によって合理的な容量が決定される。
【0206】
本発明の主な利点は、下記の通りである。
(1)前記SLLMWITQC-HLA-A2複合体に対する本発明のTCRの親和力および/または結合半減期は、少なくとも野生型TCRの2倍、好ましくは、少なくとも10倍である。
(2)前記SLLMWITQC-HLA-A2複合体に対する本発明のTCRの親和力および/または結合半減期は、少なくとも野生型TCRの100倍であり、好ましくは、少なくとも1000倍であり、さらに好ましくは、10~10倍に達することができる。
(3)本発明の高親和力TCRを形質導入させる効果細胞は、標的細胞に対して非常に強い殺傷作用がある。
次の具体的な実施例では、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、単に本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲はこれに限定されないことを理解しなければならない。下記の実施例において、具体的な条件を示していない実験方法は、例えば、(SambrookおよびRussell等、分子クローン:実験室ハンドブック(Molecular Cloning-A Laboratory Manual)(第3版)(2001)CSHL出版社)に記載された条件、またはメーカーから提案する条件のような通常の条件に従う。他の説明がなければ、割合と部数は重量に基づいて計算される。
【0207】
材料及び方法
本発明の実施例に使用された実験材料について特別な説明がなければ、すべての市販で入手することができて、ここで、E.coli DH5αはTiangenから購入され、E.coli BL21(DE3)はTiangenから購入され、E.coli Tuner(DE3)はNovagenから購入され、プラスミド(Plasmid)pET28aはNovagenから購入される。
【0208】
実施例1.疎水性コア突然変異された安定的な単鎖TCR鋳型鎖の生成
本発明は、部位特定突然変異の方法で、特許文献WO2014/206304による記載に基づいて、1つの柔軟なオリゴペプチド(linker)によってTCRαとβ鎖可変ドメインを連結して構成された安定的な単鎖TCR分子を構築し、そのアミノ酸とDNA配列は、それぞれ配列番号:54と配列番号:55であり、図7a及び図7bに示された通りである。当該単鎖TCR分子を鋳型で高親和性TCR分子をスクリーニングした。当該鋳型鎖のα可変ドメイン(配列番号:3)とβ可変ドメイン(配列番号:4)のアミノ酸配列は、図2a及び図2bに図示された通りであり、これに対応されるDNA配列は、それぞれ配列番号:5と6であり、図3a及び3bに示された通りであり、柔軟なオリゴペプチド(linker)のアミノ酸配列とDNA配列は、それぞれ配列番号:7と8であり、図4a及び4bに示された通りである。
【0209】
鋳型鎖を持った目的遺伝子をNcoIとNotI二重酵素で切断し、NcoIとNotI二重酵素によって切断されたpET28aベクターに連結させる。連結産物をE.coli DH5αに形質転換させ、カナマイシン(Kanamycin)を含有するLBプレートにコーティングし、37℃の温度の下で一晩反転培養し、陽性クローンを取り、PCRでスクリーニングし、陽性組換え体に対してシーケンス(Sequencing)し、配列が正確であるかどうかを確認した後、組換えプラスミドを発現するために抽出して、E.coli BL21(DE3)に形質転換させた。
【0210】
実施例2.実施例1で構築された安定的な単鎖TCRの発現、再生及び精製
実施例1で製造された組換えプラスミドpET28a-鋳型鎖を含有するBL21(DE 3)ギュンラクをカナマイシンを含有するLB培地に完全に接種し、OD600が0.6~0.8になるまで37℃の温度で培養し、IPTGを入れて最終濃度を0.5mMにして、37℃の温度で継続して4時間培養した。5000rpMで15分間遠心分離して細胞沈殿物を得て、Bugbuster Master Mix(Merck)で細胞沈殿物を分解させ、6000rpMで15分間遠心分離して封入体を回収し、再びBugbuster(Merck)で洗浄し、細胞破壊、水と膜成分を除去し、6000rpMで15分間遠心分離して封入体を収集した。封入体を緩衝液(20mM Tris-HCl pH 8.0、8Mの尿素)に溶解させ、高速遠心分離して不溶性物質を除去し、上清液をBCA法で定量して分割入れて、-80℃の温度下で保管した。
【0211】
5mgの溶解された単鎖TCRボンイプチェタンパク質に、2.5mLの緩衝液(6M Gua-HCl、50mM Tris-HCl pH 8.1、100mM NaCl、10mM EDTA)を入れて、DTTを入れて最終濃度を10mMとし、37℃の温度で30分間処理した。注射器で125mLの再生緩衝液(100mM Tris-HCl pH 8.1、0.4ML-アルギニン(Arginine)、5Mの尿素、2mM EDTA、6.5mMβ-mercapthoethylamine、1.87mM Cystamine)に前記処理された単鎖TCRを滴下し、4℃の温度下で10分間攪拌した後、再生液を4 kDaのセルロース膜透析バック(dialysis bag)に入れ、透析バッグを1Lの予冷された水に入れて、4℃の温度下で一晩ゆっくりと攪拌した。17時間後、透析液を1Lの予冷された緩衝液(20mM Tris-HCl pH 8.0)に変えて、4℃の温度で継続して8時間透析した後、透析液を同じ新鮮な緩衝液に変えて継続して一晩透析した。17時間後、サンプルを0.45μmのろ過膜でろ過して、真空脱気した後、陰イオン交換カラム(HiTrap Q HP、GE Healthcare)に、20mMのTris-HCl pH 8.0で製造された0-1MのNaClの線形勾配溶出液に蛋白質を精製し、収集された溶出成分をSDS-PAGEで分析し、単鎖TCRを含有する成分を濃縮させた後、再度ゲルろ過カラム(Superdex 75 10/300、GE Healthcare)で精製し、目的成分SDS-PAGEで分析した。
【0212】
BIAcore分析に使用される溶出成分をさらにゲルろ過法で純度を測定した。条件は、クロマトグラフィーカラムは、Agilent Bio SEC-3(300A、φ7.8×300mm)であり、移動相は、150mMのリン酸塩緩衝液であり、流速は0.5mL/minであり、カラム温度は25℃であり、紫外線検出波長は214nmである。
【0213】
実施例3.結合特性
BIAcore分析
BIAcore T200リアルタイム分析システムとしてTCR分子とSLLMWITQC-HLA-A2複合体の結合活性を測定した。抗ストレプトアビジン(streptavidin)の抗体(GenScript)のカップリングバッファ(Coupling buffer)(10mMの酢酸ナトリウム(Sodium acetate)緩衝液、pH4.77)を入れた後、抗体を事前にEDCとNHSによって活性化されたCM5チップに流して、抗体をチップ表面に固定させ、最後にエタノールアミン(Ethanolamine)の塩酸溶液で未反応活性表面を遮断して、カップリング処理を完了しており、カップリングレベルは、約15000RUである。
【0214】
低濃度のストレプトアビジンを抗体にコーティングされたチップ表面に流すし、SLLMWITQC-HLA-A2複合体を検出チャンネルに流し、他の1つのチャネルを参照チャンネルとし、再び0.05mMのビオチン(biotin)を10μL/minの流速で2分間チップを流して、ストレプトアビジンの残りの結合サイトをブロックした。単一の循環動力学解析方法を使用して親和力を測定し、TCRをHEPES-EP緩衝液(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%P20、pH7.4)で、いくつかの異なる濃度に希釈し、30μL/minの流速で順次チップ表面を流れるようにして、サンプルの1回の注入当たりの結合時間は120秒であり、最後のサンプル注入終了後、これを600秒間解離させる。各ラウンドごとに測定終了後pH1.75の10mMのGly-HClでチップを再生させた。BIAcore Evaluationソフトウェアで動力学パラメータを計算した。
【0215】
前記SLLMWITQC-HLA-A2複合体の製造過程は、下記の通りである、。
【0216】
a.精製
100mlの重鎖または軽鎖の発現を誘導するE.coli菌液を収集し、4℃の温度下で8000gで10分間遠心分離した後、10mlのPBSで菌体を1回洗浄し、次に5mlのBugBuster Master Mix Extraction Reagents(Merck)で激しく振とうして菌体を再浮遊させ、室温下で20分間スピン培養した後、4℃、6000gの条件下で15分間遠心分離させ、上清を捨て、封入体を収集した。
【0217】
前記封入体を5mlのBugBuster Master Mixに再浮遊させ、室温下で5分間スピン培養し、30mlの10倍に希釈されたBugBusterを入れて均一に混合し、4℃、6000gの条件下で15分間遠心分離し、上清を捨て、30mlの10倍に希釈されたBugBusterを入れて封入体を再浮遊し、均一に混合し、4℃、6000gの条件下で15分間遠心分離し、2回繰り返して、30mlの20mMのTris-HCl pH 8.0を入れて封入体を再浮遊し、均一に混合し、4℃、6000gの条件下で15分間遠心分離し、最後に20mMのTris-HCl 8Mの尿素で封入体を溶解し、SDS-PAGEで封入体純度を測定し、BCAキットで濃度を測定した。
【0218】
b.再生
合成されたオリゴペプチドSLLMWITQC(北京賽百盛遺伝子技術有限公司)を20mg/mlの濃度でDMSOに溶解した。軽鎖と重鎖のボンイプチェを8Mの尿素、20mMのTris pH8.0、10mMのDTTで溶解させ、再生前に3Mの塩酸グアニジン(Guanidine hydrochloride)、10mMの酢酸ナトリウム、10mMのEDTAを入れてさらに変性させた。SLLMWITQCペプチドを25mg/L(最終濃度)で再生緩衝液(0.4M L-アルギニン、100mM Tris pH8.3、2mM EDTA、0.5mM酸化グルタチオン(Glutathione)、5mM還元グルタチオン、0.2mM pMSF、4℃まで冷却)に入れた後、20 mg/Lでの軽鎖と90mg/Lでの重鎖(最終濃度であり、重鎖を3回に分けて入れ、8h/回)を順次入れ、再生は4℃の温度で少なくとも3日間に完成し、SDS-PAGEで正常に再生されたかどうかを測定した。
【0219】
c.再生後の精製
10体積の20mMのTris pH8.0で透析して再生緩衝液を変えて、緩衝液を少なくとも2回変えて溶液のイオン強度を減らした。透析後、0.45μmのセルロースアセテート(Cellulose acetate)膜タンパク質溶液を濾過した後、HiTrap Q HP(GEゼネラルエレクトリックカンパニー)陰イオン交換カラム(5mlバッドボリューム(Bed Volume))に入れた。Akta精製器(GEゼネラルエレクトリックカンパニー)で、20mMのTris pH8.0で製造された0~400mMのNaClの線形勾配でタンパク質を溶出し、pMHCが約250mMのNaClで溶出し、ピーク成分を収集し、SDS-PAGEで純度を測定した。
【0220】
d.ビオチン化
Millipore超濾過チューブで精製されたpMHC分子を濃縮するとともに、緩衝液を20mMのTris pH8.0に置換した後、ビオチン化試薬0.05MのBicine pH8.3、10mMのATP、10mMのMgOAc、50μMのD-Biotin、100μg/mlのBirA酵素(GST-BirA)を入れて、室温下で混合液を一晩培養し、SDS-PAGEでビオチン化が完了したかどうかを検出した。
【0221】
e.ビオチン化された複合体の精製
Millipore超濾過チューブでビオチン化標識されたpMHC分子を1mlに濃縮し、ゲル濾過クロマトグラフィーでビオチン化されたpMHCを精製し、Akta精製器(GEゼネラルエレクトリックカンパニー)を使用して、濾過されたPBSでHiPrepTM16/60 S200 HRカラム(GEゼネラルエレクトリックカンパニー)を前平衡させ、1mlの濃縮後のビオチン化pMHC分子を入れた後、PBSで1ml/minの流速で溶出した。ビオチン化されたpMHC分子は、約55mlの単一ピーク溶出であった。タンパク質が含有された成分を併合して、Millipore超濾過チューブで濃縮し、BCA法(Thermo)でタンパク質濃度を測定し、プロテアーゼ(Protease)阻害剤cocktail(Roche)を入れてビオチン化されたpMHC分子を分けて-80℃の温度下で保管した。
実施例4.高親和性単鎖TCRの生成
ファージディスプレイ技術は、高親和力変異体についてスクリーニングするためのTCR高親和力変異体ライブラリーを生成する手段である。Li等((2005)Nature Biotech23(3):349-354)に記載されたTCRファージディスプレイ及びスクリーニング方法を実施例1の単鎖TCR鋳型に応用した。当該鋳型鎖のCDR領域を変異させて高親和性TCRのライブラリーを構築し、選択した。いくつかのラウンドに経て選択されたファージのライブラリーは、すべて対応する抗原に特異的に結合され、その中で、単一のクローンを選択して、配列解析を行った。
【0222】
実施例3のBIAcore方法を使用してTCR分子とSLLMWITQC-HLA-A2複合体の相互作用を分析し、親和力、および/または結合半減期は、少なくとも野生型TCRの2倍の高親和性TCRをスクリーニングし、即ち、スクリーニングされた高親和性TCRがSLLMWITQC-HLA-A2複合体に結合される解離平衡定数KDは、野生型TCRがSLLMWITQC-HLA-A2複合体に結合された解離平衡定数KDの2分の1よりも小さいか同じで、結果は下記表3の通りである。前記の方法を利用して、参照TCRとSLLMWITQC-HLA-A2複合体の相互作用のKD値が43μMであることを測定し、その相互作用グラフは、図12に示した通りであり、即ち、野生型TCRとSLLMWITQC-HLA-A2複合体の相互作用のKD値も43μMであり、即ち、4.3E-05Mである。
【0223】
具体的に、配列番号:1に示される番号を使用して、これらの高親和力TCR突然変異体のα鎖可変ドメインは、27T、28S、29I、30N、51S、52N、53E、54R、90A、91T、93A、94N、95G、96K、97Iと98Iの一つまたは複数のサイトのアミノ酸で突然変異され、および/または配列番号:41に示される番号を使用して、これらの高親和性TCR突然変異体のβ鎖可変ドメインは、51N、52N、53V、54P、95S、96Lと98Sの一つまたは複数のサイトで突然変異される。
【0224】
さらに具体的に、配列番号:1に示される番号を使用して、これらの高親和力TCRのα鎖可変ドメインは、27G、28W、29Aまたは29V、30Q、51T、52G、53Q、54Qまたは54A、90M、91Y、93Eまたは93Q、94Fまたは94Yまたは94W、95Aまたは95Q、96Wまたは96Rまたは96Tまたは96Sまたは96Mまたは96L、97Wまたは97Vまたは97Yまたは97P、及び98Eまたは98Nまたは98Dまたは98Qまたは98Kまたは98Vまたは98Gまたは98Mまたは98Sから選択される1つまたは複数アミノ酸残基を含み、および/または配列番号:2に示される番号を使用にて、これらの高親和力TCRのβ鎖可変ドメインは、51H、52G、53A、54V、95Qまたは95M、96Rまたは96Kまたは96M、及び98Aまたは98Gまたは98Pから選択される1つまたは複数アミノ酸残基を含む。
【0225】
高親和性単鎖TCRのα鎖可変ドメイン(配列番号:9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36和37)とβ鎖可変ドメイン(配列番号:38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52和53)の具体的なアミノ酸配列は、図5(1)~(29)及び図6(1)~(16)に示した通りである。
【0226】
【0227】
実施例5.高親和性αβヘテロ二量体TCRの生成
実施例4でスクリーニングされた高親和力の単鎖TCRのCDR領域の変異をαβヘテロ二量体TCRの可変ドメインの対応するサイトに導入し、BIAcoreを介しSLLMWITQC-HLA-A2複合体との親和力を測定した。前記CDR領域と親和力突然変異の導入は、当業者に公知された部位の特定の変異体の方法を使用した。前記野生型TCRのα鎖とβ鎖可変ドメインのアミノ酸配列はそれぞれ図1a(配列番号:1)と1b(配列番号:2)に示す通りである。
【0228】
留意すべきことは、TCRとSLLMWITQC-HLA A2複合体との間の結合親和性および/または結合半減期をさらに容易に評価するための、より安定的な可溶性TCRを得るために、αβヘテロ二量体TCRは、αとβ鎖の不変領域にそれぞれ一つのシステイン残基を導入して、人工鎖間ジスルフィド結合を形成したTCRであることができ、本実施例において、システイン残基が導入された後、TCRαとβ鎖のアミノ酸配列は、それぞれ図8a(配列番号:56)及び8b(配列番号:57)に示された通りであり、導入されたシステイン残基は、太字のアルファベットで表示した。
【0229】
「分子クローン実験手帳」(Molecular Cloning a Laboratory Manual)(第3版、SambrookおよびRussell)に記述された標準的な方法によって発現されるTCRαとβ鎖の細胞外配列の遺伝子を合成した後、それぞれ発現ベクターpET28a+(Novagene)に挿入し、アップストリーム(Upstream)と下流(Downstream)のクローンサイトは、それぞれNcoIとNotIである。CDR領域の変異は、当業者に公知されたオーバーラップPCR(overlap PCR)によって導入される。挿入された断片は、シーケンシングにより正確かどうかが確認される。
【0230】
実施例6.αβヘテロ二量体TCRの発現、再生及び精製
TCRαとβ鎖の発現ベクターをそれぞれ化学的形質転換法により発現細菌BL21(DE3)に形質転換させ、細菌をLB培養液に生長させ、OD600=0.6時の最終濃度が0.5mMであるIPTGで誘導し、TCRのαおよびβ鎖で発現させた後、形成された封入体をBugBuster Mix(Novagene)で抽出し、BugBuster溶液に何度も繰り返して洗浄し、最終的に封入体を6Mの塩酸グアニジン、10mMのジチオトレイトール(DTT)、10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、20mMのTris(pH8.1)に溶解した。
【0231】
溶解されたTCRαとβ鎖を1:1の質量比で5Mの尿素、0.4Mのアルギニン、20mMのTris(pH8.1)、3.7mMのcystamine、6.6mMのβ-mercapoethylamine(4℃)に速やかに溶解させ、最終濃度は60mg/mLである。混合した後、溶液を10倍体積の脱イオン水で透析して(4℃)、12時間後に脱イオン水を緩衝液(20mM Tris、pH8.0)に変えて継続して4℃の温度下で12時間透析した。透析終了した溶液を0.45μMのろ過膜でろ過した後、陰イオン交換カラム(HiTrap Q HP、5ml、GE Healthcare)で精製した。SDS-PAGEゲル溶出ピークに正常に再生されたαとβの二量体が含有されたことを確認した。TCRをゲルろ過クロマトグラフィー(HiPrep16/60、Sephacryl S-100 HR、GE Healthcare)にさらに精製した。精製されたTCR純度はSDS-PAGEにより90%よりも大きいと測定され、濃度はBCA法で測定した。
【0232】
実施例7.BIAcore分析結果
実施例3による方法を使用して高親和力CDR領域のαβヘテロ二量体TCRとSLLMWITQC-HLA-A2複合体の親和力を測定した。
【0233】
高親和性単鎖TCRαとβ鎖からスクリーニングされたCDR領域をそれぞれ野生型TCRα鎖可変ドメイン配列番号:1とβ鎖可変ドメイン配列番号:2の対応する位置に移動し、αβヘテロ二量体TCRを形成した。得られた新たなTCRαとβ鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、図9(1)~図9(29)及び図10(1)~図10(16)に示される通りである。TCR分子のCDR領域が対応するpMHC複合体との親和力を決定するため、当業者は、高親和力突然変異を導入したαβヘテロ二量体TCRはSLLMWITQC-HLA-A2複合体の高親和力も有すると期待することができる。実施例5による方法で発現ベクターを構築し、実施例6による方法で前記と親和力突然変異を導入したαβヘテロ二量体TCRを発現させ、再生して精製した後、BIAcore T200でSLLMWITQC-HLA-A2複合体との親和力を測定し、表4に示す通りである。
【0234】
【0235】
前記表4からわかるように、CDR領域の突然変異が導入されたαβヘテロ二量体TCRは、SLLMWITQC-HLA-A2複合体の高親和力を維持した。前記ヘテロ二量体TCRの親和性は、野生型TCRがSLLMWITQC-HLA-A2複合体に対する親和性の少なくとも2倍である。
【0236】
実施例8.抗-CD3抗体と高親和性単鎖TCRの融合体の発現、再生及び精製
本発明の高親和性単鎖TCR分子と抗CD3抗体の一本鎖分子(scFv)を融合して融合分子を構築した。オーバーラップ(overlap)PCRの方法を通じて、プライマーを設計して、抗-CD3抗体と高親和性単鎖TCR分子の遺伝子を連結し、中間の連結オリゴペプチド(linker)は、GGGGSに設計され、融合分子の遺伝子断片が制限酵素サイトNcoIとNotIを持つようにした。PCR増幅産物をNcoIとNotI二重酵素で切断し、NcoIとNotI二重酵素で切断されたpET28aベクターによって連結される。連結産物をE.coli DH5αコムピント(competent)細胞に形質転換させ、カナマイシンを含有したLBプレートにコーティングし、37℃の温度の下で一晩反転培養し、陽性クローンをとり、PCRスクリーニングし、陽性組換え体に対してシーケンスし、配列の正確かどうかを確認した後、組換えプラスミドを発現するために抽出して、E.coli BL21(DE3)受容性細胞に形質転換させた。
【0237】
融合タンパク質の発現
目的遺伝子を含有した発現プラスミドを大腸菌菌株BL21(DE3)に形質転換させ、LBプレート(カナマイシン50μg/ml)をにコーティングして、37℃の温度の下で、一晩培養した。次の日、クローンを選択して、10mlのLB液体培地(カナマイシン50μg/ml)を2~3時間培養し、1:100の体積比に基づいて、1LのLB培地(カナマイシン50μg/ml)に接種し、継続して0.5~0.8のOD600まで培養した後、0.5mMの最終濃度のIPTGで目的タンパク質の発現を誘導した。4時間誘導した後、6000rpMで10分間遠心分離して細胞を得た。PBS緩衝液で菌体を1回洗浄し、菌体を分けて入れて、200mlの細菌培養物に該当する菌体をとり、5mlのBugBuster Master Mix(Novagen)に細菌を解離し、6000gで15分間遠心分離して封入体を収集した。その後、洗剤で4回洗浄して細胞を破壊物と膜成分を除去した。その後、PBSのような緩衝液で封入体を洗浄して、洗剤と塩を除去した。最終的には、封入体を8Mの尿素を含有したTris緩衝液で溶解させ、封入体の濃度を測定し、これを分けて入れ、-80℃の温度下で冷凍保管した。
【0238】
融合タンパク質のリフォールディング(refolding)
-80℃の超低温冷蔵庫で約10mgの封入体を取り出した後、解凍し、ジチオトレイトール(DTT)を入れて最終濃度を10mMにし、37℃の温度で30分~1時間の間インキュベーションし(Incubate)ジスルフィド結合が完全に解除されることを確保した。その後、封入体サンプル溶液をそれぞれ200mlの4℃の予冷リフォールディング緩衝液(100mM Tris pH8.1、400mM L-アルギニン、2mM EDTA、5M 尿素、6.5mMβ-mercapthoethylamine、1.87mM Cystamine)に滴下して、約4℃の温度下で30分間ゆっくりと攪拌した。再生溶液を8倍体積の予冷されたHOで16~20時間の間透析した。再び8倍体積の10mMのTris pH8.0で2回透析し、4℃の温度で継続して約8時間の間透析し、透析後のサンプルをろ過した後、下記のように精製した。
【0239】
融合タンパク質の第1のステップの精製
透析されたリポーリング物質(10mM Tris pH8.0に)をPOROS HQ/20陰イオン交換クロマトグラフィー前のロードカラム(Applied Biosystems)を使用して、AKTA精製器(GE Healthcare)で0~600mMのNaClで勾配溶出した。クマシブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue)で染色されたSDS-PAGEで各成分を分析した後、合併した。
【0240】
融合タンパク質の第2のステップの精製
第1のステップの精製合併されたサンプル溶液を濃縮して、このステップの精製に提供し、PBS緩衝液で事前平衡させたSuperdex7510/300GLゲル濾過クロマトグラフィー前のロードカラム(GE Healthcare)を使用して融合タンパク質を精製して、クマシーブリリアントブルーで染色されたSDS-PAGEでのピークの成分を分析した後、合併した。
【0241】
実施例9.抗-CD3抗体と高親和性αβヘテロ二量体TCRの融合体の発現、再生及び精製
抗-CD3の一本鎖抗体(scFv)とαβヘテロ二量体TCRを融合して、融合分子を製造した。抗-CD3のscFvとTCRのβ鎖を融合し、前記TCRβ鎖は、任意の前記高親和性αβヘテロ二量体TCRのβ鎖可変ドメインを含むことができ、融合分子のTCRα鎖は、任意の前記高親和性αβヘテロ二量体TCRのα鎖可変ドメインを含むことができる。
【0242】
融合分子発現ベクターの構築
1.α鎖発現ベクターの構築
αβヘテロ二量体TCRのα鎖を持った目的遺伝子をNcoIとNotI二重酵素で切断し、NcoIとNotI二重酵素で切断されたpET28aベクターに連結した。連結産物をE.coli DH5αに形質転換させ、カナマイシンを含有したLBプレートにコーティングし、37℃の温度下で一晩反転培養し、陽性クローンをとり、PCRスクリーニングし、陽性組換え体に対してシーケンスで、配列の正確かどうかを確認した後、組換えプラスミドを発現するために抽出して、E.coli BL21(DE3)に形質転換させた。
【0243】
2. 抗-CD3(scFv)-β鎖発現ベクターの構築
オーバーラップ(overlap)PCRの方法で、プライマーを設計して抗-CD3 scFvと高親和性ヘテロ二量体TCRβ鎖遺伝子を連結し、中間の連結オリゴペプチド(linker)はGGGGSであり、抗-CD3のscFvと高親和性ヘテロ二量体TCRβ鎖の融合タンパク質の遺伝子断片が制限酵素サイトNcoI(CCATGG)とNotI(GCGGCCGC)を持つようにした。PCR増幅産物をNcoIとNotI二重酵素で切断し、NcoIとNotI二重酵素で切断されたpET28aベクターに連結した。連結産物をE.coliDH5α受容性細胞に形質転換させ、カナマイシンを含有したLBプレートにコーティングし、37℃の温度の下で一晩反転培養し、陽性クローンをとり、PCRスクリーニングし、陽性組換え体に対してシーケンスし、配列の正確かどうかを確認した後、組換えプラスミドを発現するために抽出して、E.coli BL21(DE3)受容性細胞に形質転換させた。
【0244】
融合タンパク質の発現、再生及び精製
発現プラスミドをそれぞれE.coli Tuner(DE3)受容性細胞に形質転換させ、LBプレート(カナマイシン50μg/ mL)にコーティングして、37℃の温度下で一晩培養した。次の日、クローンを選択して、10mlのLB液体培地(カナマイシン50μg/ml)を2~3時間培養し、1:100の体積比に基づいて、1LのLB培地(カナマイシン50μg/ml)に接種し、継続して0.5~0.8のOD600まで培養した後、最終濃度が1mMのIPTGを入れて目的タンパク質の発現を誘導した。4時間誘導した後、6000 rpMで10分間遠心分離して細胞を得た。PBS緩衝液で菌体を1回洗浄し、菌体を分けて入れて、200mlの細菌培養物に該当する菌体をとり、5mlのBugBuster Master Mix(Novagen)に細菌を解離し、6000gで15分間遠心分離して封入体を収集した。その後、洗剤で4回洗浄して細胞を破壊物と膜成分を除去した。その後、PBSのような緩衝液で封入体を洗浄して洗剤と塩を除去した。最終的には、封入体を6Mの塩酸グアニジン、10mMのジチオトレイトール(DTT)、10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、20mMのTris、pH8.1を含有した緩衝液で溶解し、封入体の濃度を測定し、これを分けて入れ、-80℃の温度下で冷凍保管した。
【0245】
溶解されたTCRα鎖と抗-CD3(scFv)-β鎖を2:5の質量比で5Mの尿素(urea)、0.4MのL-アルギニン(L-arginine)、20mMのTris pH8.1、3.7mMのcystamine、6.6mMのβ-mercapoethylamine(4℃)に迅速で混合し、α鎖と抗-CD3(scFv)-β鎖の最終濃度は、それぞれ0.1mg/mL、0.25mg/mLである。
【0246】
混合後の溶液を10倍体積の脱イオン水で透析して(4℃)、12時間後に脱イオン水を緩衝液(10mM Tris、pH8.0)に変えて継続して4℃の温度で12時間透析した。透析終了液を0.45μMのろ過膜でろ過した後、陰イオン交換カラム(HiTrap Q HP、5ml、GE Healthcare)で精製した。SDS-PAGEゲル溶出ピークに正常に再生されたTCRα鎖と抗-CD3(scFv)-β鎖の二量体のTCRが含有されたことを確認した。TCR融合分子をサイズ排除クロマトグラフィー(S-10016/60、GE healthcare)でさらに精製して、陰イオン交換カラム(HiTrap Q HP5ml、GE healthcare)で再精製した。精製されたTCR融合分子の純度は、SDS-PAGEにより90%よりも大きいと測定され、濃度はBCA法で測定した。
【0247】
実施例10.本発明の高親和力TCRが形質感染効果細胞の活性化機能の実験
本実施例では、本発明の高親和力TCRが形質感染された効果細胞が標的細胞に対して優れた特異的活性作用があることを検証した。
【0248】
ELISPOT実験を通して細胞での本発明の高親和力TCRの機能と特異性を測定した。ELISPOT実験を通して、細胞の機能を測定する方法は、当業者によく知られている。本実施例IFN-γELISPOT実験は、健康なボランティアの血液から単離されたCD8+T細胞を使用してレンチウイルス(Lentivirus)によって形質感染TCRを効果細胞とし、それぞれのTCR1(α鎖可変ドメイン配列番号:67、β鎖可変ドメイン配列番号:2)とTCR2(α鎖可変ドメイン配列番号:68、β鎖可変ドメイン配列番号:2)でタグ付けして、対照群の効果細胞をWT-TCR(形質感染野生型TCR)とGFP(緑色蛍光タンパク質)(形質感染GFP)でタグ付けした。標的細胞株は、A375、Mel624、Mel526とNCI-H1650細胞である。ここで、標的細胞株A375とMel624は、関連抗原を発現して、Mel526とNCI-H1650は、関連抗原を発現していないため、対照とした。
【0249】
まず、ELISPOTプレートを準備した。ELISPOTプレートをエタノールに有効にしてコーティングして、4℃の温度の下で一晩経過した、実験1日目に、コーティング液を除去し、洗浄して遮断し、室温下で2時間培養し、ブロック液を除去し、する順番にテストされている各成分をELISPOTプレート:培地に入れて効果細胞を1×10個の細胞/mlに調節し、培地に入れてターゲット細胞株を2×10個の細胞/mlに調節した。均一に混合した後、2×10個の細胞/ml(即ち、20000個の細胞/ウェル)の100μLの標的細胞株、1×10個の細胞/ml(即ち、10000個の細胞/ウェル)の100μLの効果細胞をとり、対応するウェルに入れて、2つのデュプルリケイトウェル(Duplicate Well)を設定した。一晩インキュベーションした(37℃、5%CO)。実験2日目に、プレートを洗浄し、二次検出と発色を行い、プレートを乾燥し、再度免疫ドットプレートリーダー(ELISPOT READER system; AID20会社)で膜に形成された点を計数した。実験結果は、図13に示した通りであり、本発明の高親和力TCRを形質感染させた効果細胞は、標的細胞に対して優れた特異的活性作用がある。
【0250】
実施例11.本発明の高親和力TCRを形質感染させた効果細胞の殺傷機能実験
本実施例は、非放射性細胞毒性実験を通じて、LDHの放出を測定することにより、本発明のTCRを形質導入させた細胞の殺傷機能を検証した。当該試験は、51Cr放出細胞毒性試験の比色代替試験で、細胞分解後放出された乳酸脱水素酵素(LDH)を定量分析した。30分間のカップリングされた酵素反応で培地に放出されたLDHを検出し、酵素反応でLDHはテトラゾリウム塩(INT)を赤色のホルマザン(formazan)に転換させることができる。生成された赤色の産物の量と分解された細胞の数は正比例する。標準96ウェルプレートリーダーで490nmの可視光線データを収集することができる。
【0251】
LDHの放出実験で、細胞の機能を検出する方法は、当業者によく知られている。本実施例LDH実験は、健康なボランティアの血液から単離されたPBL細胞に、レンチウイルスによって形質感染されたTCRを効果細胞とした。標的細胞株は、A375(3525)、MEL624(1605)、NCI-H1650(2)とMEL526(4)細胞である。ここで、A375(3525)とMEL624(1605)は、NY-ESO-1抗原を発現した。NCI-H1650(2)とMEL526(4)は、NY-ESO-1抗原を、基本的に発現せず、これを対照とした。
【0252】
まず、LDHプレートを準備した。実験1日目に、下記の順序に従ってテストされている各成分をプレート:培地に入れて効果細胞を2×10個の細胞/mlに調節し、培地に入れてターゲット細胞株を5×10個の細胞/mlに調節した。均一に混合した後、5×10個の細胞/ml(即ち、50000個の細胞/ウェル)の100μLの標的細胞株、2×10個の細胞/ml(即ち、200000個の細胞/ウェル)の100μLの効果細胞をとり、対応するウェルに入れて、2つのデュプルリケイトウェルを設定した。同時に、効果細胞自発ウェル、標的細胞自発ウェル、標的細胞最大ウェル、体積校正対照ウェルと培地背景対照ウェルを設定した。一晩インキュベーションした(37℃、5%CO)。実験2日目に、発色を測定し、反応終了後、マイクロプレートリーダー(Bioteck)で490nmの下で吸光値を記録した。実験結果は、図14に示した通りであり、本発明のTCRが形質導入された細胞は、関連抗原を発現する標的細胞に対して非常に強い殺傷作用があるが、関連抗原を発現していない標的細胞に対して殺傷作用がない。
【0253】
実施例12.本発明の高親和力TCRと抗-CD3抗体の融合タンパク質の機能の実験
本実施例は、本発明の高親和力TCRと抗-CD3抗体の融合タンパク質が効果細胞に対して方向転換することができ、優れた活性作用があることを検証した。
【0254】
ELISPOT実験を通して、細胞の機能を測定する方法は、当業者によく知られている。本実施例IFN-γELISPOT実験に使用された効果細胞は、健康なボランティアの血液から単離されたCD8+T細胞であり、標的細胞株は、IM9と293Tであり、ここで、IM9は関連抗原を発現し、293Tは、関連抗原を発現していない。本発明の高親和力TCRをランダムに選択して、実施例8に基づいて融合タンパク質を製造し、具体的に、選択された高親和力TCRのαとβ鎖は、下記の通りである。α鎖配列番号:14、β鎖配列番号:38、α鎖配列番号:17、β鎖配列番号:40、α鎖配列番号:13、β鎖配列番号:41、α鎖配列番号:11、β鎖配列番号:40、α鎖配列番号:15、β鎖配列番号:42、α鎖配列番号:16、β鎖配列番号:41、α鎖配列番号:11、β鎖配列番号:38、α鎖配列番号:11、β鎖配列番号:39、α鎖配列番号:10、β鎖配列番号:38、α鎖配列番号:12、β鎖配列番号:41。
【0255】
まず、ELISPOTプレートを準備した。ELISPOTプレートをエタノールに有効にしてコーティングして、4℃の温度下で一晩経過した。実験1日目に、コーティング液を除去し、洗浄して遮断し、室温下で2時間培養して、ブロック液を除去し、下記の順序に従ってテストされている各成分をELISPOTプレート:培地に入れてCD8+T細胞を2×10個の細胞/mlのに調節し、培地に入れてターゲット細胞株を2×10個の細胞/mlに調節し、培地を入れて融合タンパク質を0.04μMの濃度に希釈して、順番に10倍勾配で希釈し、合計6つの濃度の勾配である。均一に混合した後、50μLの融合タンパク質希釈剤、2×10個の細胞/ml(即ち、10000個の細胞/ウェル)の50μLの標的細胞株、2×10個の細胞/ml(即ち、2000個の効果細胞/ウェル)の100μLの効果細胞を取り、対応するウェルに入れて、2つのデュプルリケイトウェルを設定した。一晩インキュベーションした(37℃、5%CO)。実験2日目に、プレートを洗浄し、二次検出と発色を行い、プレートを乾燥し、再度免疫ドットプレートリーダー(ELISPOT READER system、AID20会社)で膜に形成された点を計数した。実験結果は、図15aと15bに示されるように、本発明の高親和力TCRと抗-CD3抗体の融合タンパク質は、効果細胞を方向転換することができ、優れた活性作用がある。
【0256】
実施例13.本発明の高親和力TCR分子の体内効能
本発明の高親和力TCRで形質感染T細胞をヒト黒色腫異種移植片モデルのマウスに注射して、体内で腫瘍の抑制効果を測定した。
【0257】
実験にNSGマウス(南京大学-南京生物医学研究所)(雌性、実験週齢6~8週)を実験対象として使用し、実験時間10日前培養した後収集し、浮遊されたA375腫瘍細胞(ATCC)浮遊液を3*10^6個/匹(注射体積200ul)の数でマウスの腹部の片側皮下に注射して、黒色腫異種移植マウスモデルを構築した。
【0258】
実験開始当日にスライドキャリパー(slide calipers)で、各マウスの成形された腫瘍の長い直径(a)、短い直径(b)をそれぞれ測定し、V=a*b^2/2の式に従って腫瘍体積を測定した後、グループ分けの設定は、PBS群5匹、対照群(TCRを形質感染させていないT細胞)7匹、TCR1(α鎖可変ドメイン配列番号:67、β鎖可変ドメイン配列番号:2)が形質感染されたT細胞群10匹とTCR2(α鎖可変ドメイン配列番号:68、β鎖可変ドメイン配列番号:2)が形質感染されたT細胞群10匹であり、腫瘍体積に基づいて、マウスをランダムに分ける。グループを分けた後、製造されたT細胞を1*10^7個/匹にそれぞれ前記グループのマウスの尾静脈に注射し、PBSグループのマウスの尾静脈に、100ulのPBSを注射した。
【0259】
TCR-T細胞注入後、製造されたIL-2溶液(50000IU/100UL)を再取り、各マウスの腹腔内に100ul注射した後、4日の間に毎日のよう量のIL-2溶液を連続的に注射した。実験開始から前記の方法に基づいて、3日間隔でマウスの腫瘍径を測定し、体積を計算し、マウスの腫瘍が大きすぎて行動に影響を与えたり、腫瘍がおさまるまで維持し、前記データを整理して、各グループのマウス腫瘍体積についてのデータの統計分析処理した。
【0260】
得られた実験結果は、図16に示した通りであり、本発明の高親和性TCRを形質感染させたT細胞を注射したマウス群の腫瘍生長は著しく抑制されて縮小される傾向があるが、TCRを形質感染させていないT細胞群を注射した群とPBSを注射したマウス群の腫瘍体積は、まだすぐに増加した。
【0261】
本発明に記載されているすべての文献は、本願発明では、それぞれの文献が単独で参照として引用されているかのように参照として引用される。このほか、本発明の前記の内容を閲読した後、当業者は、本発明について、様々な変更または修正を行うことができ、このような一等価形式も、本明細書に添付された特許請求の範囲によって限定された範囲に属することを理解しなければならない。
図1a-b】
図2a-b】
図3a-b】
図4a-b】
図5(1)-(10)】
図5(11)-(20)】
図5(21)-(29)】
図6(1)-(10)】
図6(11)-(16)】
図7a-b】
図8a-b】
図9(1)-(10)】
図9(11)-(20)】
図9(21)-(29)】
図10(1)-(10)】
図10(11)-(16)】
図11a-b】
図12
図13
図14
図15a-b】
図16
【配列表】
0007306994000001.app