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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230704BHJP
【FI】
A23L27/00 E
A23L27/00 101A
A23L27/00 101Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019566193
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018064324
(87)【国際公開番号】W WO2018220103
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】62/514,482
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/549,242
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】シ,フェ
(72)【発明者】
【氏名】オージェリ,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】コーア,ウェ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ウェイ
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-507376(JP,A)
【文献】特開2011-254783(JP,A)
【文献】特開2001-211854(JP,A)
【文献】特開2014-236680(JP,A)
【文献】特表2010-535022(JP,A)
【文献】特表2010-521181(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063921(WO,A1)
【文献】日本食品科学工学会誌,2006年,53(10),pp.527-533
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モグロシドIII、モグロシドIIIx、モグロシドIV、シアメノシド、ネオモグロシドおよびモグロシドVから選択されるモグロシドを含む1以上の高強度甘味料(単数または複数);および
11-O-モグロシドVを含む低効力甘味料;
を含む甘味改変組成物であって、
ここで、高強度甘味料(単数または複数)および低効力甘味料は、天然源から単離されたか、化学的に合成されたか、または生物学的プロセスによって生産されたものであり
こで、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、低効力甘味料に対する比率が、2:1から12:1までの範囲にあり、およびここで、甘味改変組成物は、甘味付けされた組成物中において、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する量または甘味認識閾値を下回る量で使用されるものであり、
ここで、甘味付けされた組成物は、1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘味を有する量で存在する、高強度甘味料(単数または複数)および低効力甘味料とは異なる少なくとも1の甘味料を含む、
前記甘味改変組成物。
【請求項2】
高強度甘味料(単数または複数)の、低効力甘味料に対する比率が、5:1から12:1まで、または6:1から10:1までの範囲にある、請求項1に記載の甘味改変組成物。
【請求項3】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)が、モグロシドIV、シアメノシド、ネオモグロシドおよびモグロシドVから選択される、請求項1または2に記載の甘味改変組成物。
【請求項4】
高強度甘味料(単数または複数)および低効力甘味料の一方または両方が、天然のものである、請求項1~のいずれか一項に記載の甘味改変組成物。
【請求項5】
甘味改変組成物が、甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性(単数または複数)を、甘味改変組成物中の低効力甘味料が存在しない場合の甘味付けされた組成物の当該甘味特性(単数または複数)のそれぞれに比べて改善する、請求項1~のいずれか一項に記載の甘味改変組成物。
【請求項6】
甘味改変組成物が、甘味付けされた組成物の長引く甘い味を、甘味改変組成物中の低効力甘味料が存在しない場合の甘味付けされた組成物の長引く甘い味に比べて弱化させる、請求項1~のいずれか一項に記載の甘味改変組成物。
【請求項7】
甘味改変組成物が、甘味付けされた組成物の苦いおよび/または渋い味を、甘味改変組成物中の低効力甘味料が存在しない場合の甘味付けされた組成物の当該苦いおよび/または渋い味のそれぞれに比べて弱化させる、請求項1~のいずれか一項に記載の甘味改変組成物。
【請求項8】
甘味改変組成物が、甘味付けされた組成物中において、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する量で使用されるものである、請求項1~のいずれか一項に記載の甘味改変組成物。
【請求項9】
1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さを有する量で存在する、請求項1において定義された高強度甘味料(単数または複数)および低効力甘味料とは異なる少なくとも1の甘味料;および
請求項1~のいずれか一項に記載の甘味改変組成物
を含む、甘味付けされた組成物。
【請求項10】
甘味改変組成物が、組成物中に、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する量で存在する、請求項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項11】
甘味改変組成物の、1以上の高強度甘味料(単数または複数)が、甘味付けされた組成物中に、15ppmと同等かまたはそれを超える、および任意に50ppmと同等かまたはそれ未満の総量で存在する、請求項9または10に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項12】
甘味改変組成物の、1以上の高強度甘味料(単数または複数)が、甘味付けされた組成物中に、約15ppmから約30ppmまでの範囲にある総量で存在する、請求項9~11のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項13】
甘味改変組成物の、低効力甘味料が、甘味付けされた組成物中に、2ppmと同等かまたはそれを超える、および任意に12ppmと同等かまたはそれ未満の総量で存在する、請求項9~12のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項14】
甘味改変組成物の、低効力甘味料が、甘味付けされた組成物中に、2ppmから10ppmまでの範囲にある総量で存在する、請求項9~13のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項15】
少なくとも1の甘味料が、栄養または非栄養甘味料である、請求項9~14のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項16】
少なくとも1の甘味料が、スクロース、高果糖コーンシロップ、アセスルファムカリウム(AceK)、アスパルテーム、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、レバウジオシドG、レバウジオシドH、レバウジオシドI、レバウジオシドJ、レバウジオシドK、レバウジオシドL、レバウジオシドM、レバウジオシドN、レバウジオシドO、ズルコシドA、ズルコシドB、ルブソシドおよびナリンジンジヒドロカルコンなどのステビオールグリコシドおよびスクラロースからなる群から選択される、請求項9~15のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項17】
甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性(単数または複数)が、甘味改変組成物中の1以上の低効力甘味料が存在しない場合の甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性(単数または複数)のそれぞれに比べて改善された、請求項9~16のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項18】
甘味付けされた組成物の長引く甘い味が、甘味改変組成物中の1以上の低効力甘味料が存在しない場合の甘味付けされた組成物の長引く甘い味よりも少ない、請求項9~17のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項19】
甘味付けされた組成物の苦いおよび/または渋い味が、甘味改変組成物中の1以上の低効力甘味料が存在しない場合の苦いおよび/または渋い味のそれぞれよりも少ない、請求項9~18のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項20】
甘味付けされた組成物が、湿った/液体のスープ、乾燥状態かつ料理用の食物、食事ソリューション製品、食事装飾製品、飲料、またはミルク、チーズおよびヨーグルトなどの乳製品、である、請求項9~19のいずれか一項に記載の甘味付けされた組成物。
【請求項21】
11-O-モグロシドVの、低効力甘味料としての、およびモグロシドIII、モグロシドIIIx、モグロシドIV、シアメノシド、ネオモグロシドおよびモグロシドVから選択される1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性(単数または複数)を改善するための使用であって、
ここで、低効力甘味料および高強度甘味料(単数または複数)の総量が、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有し、
ここで、低効力甘味料および高強度甘味料(単数または複数)は、天然源から単離されたか、化学的に合成されたか、または生物学的プロセスによって生産されたものであり:
ここで、甘味付けされた組成物は、1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さを有する量で存在する、高強度甘味料(単数または複数)および低効力甘味料とは異なる少なくとも1の甘味料を含む、前記使用。
【請求項22】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)が、甘味付けされた組成物中に、15ppmから30ppmまでの範囲にある総量で存在する、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
低効力甘味料が、甘味付けされた組成物中に、2ppmと同等かまたはそれを超える、および任意に12ppmと同等かまたはそれ未満の総量で存在する、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
低効力甘味料が、甘味付けされた組成物中に、2ppmから10ppmまでの範囲にある総量で存在する、請求項21~23のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の1以上の甘味特性を改善するための1以上の低効力甘味料(単数または複数)の使用に関する。よって、本発明はまた、少なくとも1の高強度甘味料と少なくとも1の低効力甘味料との混合物を含む組成物にも関する。本発明はさらに、少なくとも1の高強度甘味料と少なくとも1の低効力甘味料との組み合わせの、少なくとも1の他の甘味料と組み合わせて使用される場合の甘味改変剤としての使用、および/または、甘味料としての使用に関する。本発明はさらに、甘味付けされた組成物における甘味増強剤としての1以上のモグロシド(単数または複数)の使用、および前記甘味付けされた組成物に関する。本発明はさらに、本明細書に開示された甘味料および組成物を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永続的な摂取のためであるかまたは吐き出されるため一時的であるかのいずれでも、口から取り入れられることを意図した製品である可食製品(comestible product)における甘さは、しばしば、望ましい特性である。伝統的に、甘さは、1以上の甘味料、とりわけ、スクロース(テーブルシュガー)、フルクトース、グルコース、キシロース、アラビノース、ラムノースなどの低効力の栄養甘味料、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールおよびイノシトールなどの糖アルコール、ならびに高果糖コーンシロップおよび水飴などのシュガーシロップの添加によって提供されてきた。これらは、何ら望ましくない後味もなく相当な甘さを付与する。しかしながら、可食製品のカロリー値を低減させるために、低減された量でこれらの甘味料を使用することが望ましい。したがって、同じかまたは類似の甘さの味を維持しつつ可食製品のカロリー値を低減させることができる代替甘味料を提供することが望ましい。
【0003】
高強度甘味料(HIS)が、この目的のために使用されてきた。高強度甘味料は、天然または人工的であり得、スクロースの甘さの数百倍にもなることができる甘さを有し、よって、理論上は組成物中のはるかにより大きな分量の糖に置き換わることができる。高強度甘味料の例は、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(AceK)、ネオテーム、アドバンテーム、ステビオールグリコシド(ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドDを包含する)、または、支配的な構成要素としてレバウジオシドAおよび/またはステビオシドを有するステビオールグリコシド混合調製物、を包含する。しかしながら、これらの物質は一般的に、それらが可食製品に、望ましくないオフテイスト、典型的には、苦い、金属的なまたは甘草様の味を、あるいは望ましくない長引く甘さを添えることがあり得るという欠点を有する。
したがって、これらの課題の1以上に対処するために、代替的なおよび/または改善された甘味改変組成物および甘味付けされた組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の側面に従えば、
ステビオールグリコシドおよび/またはモグロシドからなる群から選択される1以上の高強度甘味料(単数または複数);および
セロビオース、プシコース、シクラマートおよび/または11-O-モグロシドVからなる群から選択される1以上の低強度甘味料(単数または複数);を含む甘味改変組成物であって、
ここで、該甘味改変組成物は、甘味付けされた組成物の甘さを、該甘味改変組成物単独の甘さよりも大きく増加させ;および/または、
ここで、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率が、約2:1から約12:1までの範囲にある、
前記甘味改変組成物が提供される。
【0005】
本発明の第2の側面に従えば、
約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さを有する量で存在する少なくとも1の甘味料;および
本発明のいずれかの側面または態様に従う甘味改変組成物
を含む、甘味付けされた組成物が提供される。
【0006】
本発明の第3の側面に従えば、ステビオールグリコシドおよび/またはモグロシドからなる群から選択される1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性(単数または複数)を改善するための、セロビオース、プシコース、シクラマートおよび/または11-O-モグロシドVからなる群から選択される1以上の低効力甘味料(単数または複数)の使用であって、ここで、使用される1以上の低効力甘味料(単数または複数)および1以上の高効力甘味料(単数または複数)の合計の濃度が、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する、前記使用が提供される。
【0007】
本発明の第4の側面に従えば、甘味付けされた組成物の甘さを増強させる方法であって、該方法は、その甘味認識閾値もしくはそれより上の量および/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さを有する量で存在する少なくとも1の甘味料を含む、ベース組成物を提供すること、および、ステビオールグリコシドおよび/またはモグロシドからなる群から選択される1以上の高強度甘味料(単数または複数)、ならびにセロビオース、プシコース、シクラマートおよび/または11-O-モグロシドVからなる群から選択される1以上の低効力甘味料(単数または複数)を添加することを含み、ここで、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約2:1から約12:1までであり;および/または、ここで、1以上の高強度甘味料(単数または複数)が、約15ppmと同等かまたはそれを超える、および任意に約50ppmと同等かまたはそれ未満の総量で添加され、かつ、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が、約2ppmと同等かまたはそれを超える、および任意に約12ppmと同等かまたはそれ未満の総量で添加され;および/または、ここで、添加される1以上の高強度甘味料(単数または複数)および1以上の低効力甘味料(単数または複数)の合計の濃度が、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する、前記方法が提供される。
【0008】
本発明の第5の側面に従えば、本発明のいずれかの側面または態様に従う甘味付けされた組成物を作る方法であって、1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)とを組み合わせることを含む方法が提供される。
本発明の第6の側面に従えば、本発明のいずれかの側面または態様に従う甘味付けされた組成物を作る方法であって、ベース組成物と、1以上の高強度甘味料(単数または複数)と、1以上の低強度甘味料(単数または複数)と、少なくとも1の他の甘味料とを組み合わせることを含む方法が提供される。
【0009】
本発明の第7の側面に従えば、1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さを有する量で存在する少なくとも1の甘味料;ならびにモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)を含む、甘味付けされた組成物が提供される。
本発明の第8の側面に従えば、甘味付けされた組成物の甘さを増強させるための、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上の使用が提供される。よって、さらなる側面において、甘味付けされた組成物の甘さを増強させるための方法であって、ベース組成物を提供すること、および、少なくとも1の甘味料ならびにモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)を添加することを含む、前記方法が提供される。
【0010】
本発明の第9の側面に従えば、本発明のいずれかの側面または態様に従う甘味付けされた組成物を作る方法であって、ベース組成物と、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)と、少なくとも1の他の甘味料とを組み合わせることを含む方法が提供される。
本発明の第10の側面に従えば、1以上のモグロシド(単数または複数)を含む、甘味付けされた組成物が提供される。1以上のモグロシド(単数または複数)は、例えば、甘味増強剤として存在し得、および、よって1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する量で存在し得る。そうすると、甘味付けされた組成物は、1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘味を有する量で存在する少なくとも1の甘味料をさらに含む。
【0011】
本発明の第11の側面に従えば、甘味付けされた組成物の甘さを増強させるための1以上のモグロシド(単数または複数)の使用が提供される。よって、甘味付けされた組成物の甘さを増強させるための方法であって、ベース組成物を提供すること、および、少なくとも1の甘味料および1以上のモグロシド(単数または複数)を添加することを含む、前記方法が提供される。
本発明の第12の側面に従えば、本発明のいずれかの側面または態様に従う甘味付けされた組成物を作る方法であって、ベース組成物と、1以上のモグロシド(単数または複数)と、少なくとも1の他の甘味料とを組み合わせることを含む前記方法が提供される。
【0012】
本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料は、モグロシドVであり得るかまたはこれを包含し得、および/または、1以上の低効力甘味料は、11-O-モグロシドVであり得るかまたはこれを包含し得る。
本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約2:1から約12:1までである。本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約5:1から約12:1までである。本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約6:1から約10:1までであり得る。
【0013】
本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、約15ppmから約30ppmまでの範囲にある総量で存在し得、および/または1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、約2ppmから約10ppmまでの範囲にある総量で存在し得る。本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、約22ppmから約28ppmまでの範囲にある総量で存在し得、および/または1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、約2ppmから約5ppmまでの範囲にある総量で存在し得る。
【0014】
本発明の第7~第12の側面のある態様において、1以上のモグロシド(単数または複数)または1以上の甘味増強剤(単数または複数)は、約15ppmから約50ppmまでの範囲にある量で存在し得る。ある態様において、1以上のモグロシド(単数または複数)または1以上の甘味増強剤(単数または複数)は、約15ppmから約35ppmまでの範囲にある量で存在し得る。
本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせは、単独では、約1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有し得る。具体的には、甘味付けされた組成物中における1以上の高強度甘味料(単数または複数)および1以上の低強度甘味料(単数または複数)の濃度は、約1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有し得る。
【0015】
本発明の第7~第12の側面のある態様において、1以上のモグロシド(単数または複数)または1以上の甘味増強剤(単数または複数)は、約1.5%(w/v)スクロース当量未満の総甘味を有し得る。ある態様において、1以上の甘味増強剤(単数または複数)は、甘味付けされた組成物の甘さを、1以上の甘味増強剤(単数または複数)単独の総甘味よりも大きく増加させる。
【0016】
本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせは、甘味付けされた組成物の甘さを、組み合わせ単独の甘さよりも大きく増加させ得る。本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせは、組成物の甘さを、約1.25%(w/v)スクロース当量と同等にまたはそれを超えて増加させ得る。
本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の長引く甘い味を、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が全く存在しない場合の甘味付けされた組成物の長引く甘い味に比べて弱化させる。
【0017】
本発明のいずれかの側面のある態様において、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の苦いおよび/または渋い味を、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が全く存在しない場合の甘味付けされた組成物の甘味付けされた組成物の苦いおよび/または渋い味に比べて弱化させる。
使用される甘味料の1以上(例として、全て)は、天然または合成(人工的)であり得る。甘味料の1以上は、例えば、生物学的プロセスによって、酵素プロセスによって、または合成プロセスによって作られ得る。
【0018】
本発明のいずれかの側面のある態様は、以下の利点の1以上を提供し得る:
・ 組成物における増加した甘さ;
・ なくとも1の甘味料を包含する組成物における増強された甘さ;
・ 所望の甘さを得るために必要な有カロリー甘味料の量の減少;
・ 甘い味をより砂糖(スクロース)に類似させるための、1以上の甘味特性の改善;
・ 長引く甘さの弱化(例として、甘い味が残存する時間の長さを減少させる、および/または甘い味の強度をより迅速に減少させる);
・ 苦い味および/または渋い味および/または甘草様の味および/または金属的な味の弱化;
・ 甘さのインパクトにおける改善(例として、甘い味の最大強度を増加させる、および/または甘い味が検出されるのにかかる時間の長さを減少させる)(例として、長引く甘さを減少させる)。
【0019】
述べられた本発明の側面のいずれかの具体的な1以上のものとの関連で提供される詳細、例および好ましさは、本明細書にさらに記載され、および本発明の全ての側面に同等に適用されることになる。全ての可能なバリエーションにおける本明細書に記載の態様、例および好ましさのいかなる組み合わせも、本明細書で別様に記されない限り、または別様に明確に文脈と矛盾しない限り、本発明に網羅される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、ラカンカ抽出物(下記の表1の抽出物2)のクロマトグラムを示す。
図2図2は、モグロシド1~6の化学構造を示す;
図3A図3は、市販のラカンカ抽出物のLS-MS分析を示す;
図3B図3は、市販のラカンカ抽出物のLS-MS分析を示す;
【0021】
図4-1】図4は、イソ-モグロシドVIの、異なる混合時間(d9)での異核種単一量子コヒーレンス全相関分光(Heteronuclear Single Quantum Coherence-Total Correlation Spectroscopy)(HSQC-TOCSY)(hsqcgpmlph)を示す。A:混合時間10ms。B:混合時間30ms。C:混合時間60ms。D:混合時間100ms。Glc IIのH-1とGlc IIIのH-6aとのオーバーラップのため、Glc IIのHSQC-COSY相関強度はここでは分析されなかった;
図4-2】図4は、イソ-モグロシドVIの、異なる混合時間(d9)での異核種単一量子コヒーレンス全相関分光(Heteronuclear Single Quantum Coherence-Total Correlation Spectroscopy)(HSQC-TOCSY)(hsqcgpmlph)を示す。A:混合時間10ms。B:混合時間30ms。C:混合時間60ms。D:混合時間100ms。Glc IIのH-1とGlc IIIのH-6aとのオーバーラップのため、Glc IIのHSQC-COSY相関強度はここでは分析されなかった;
図5図5は、イソ-モグロシドVIグルコピラノシルの、異なる混合時間でのHSQC-TOCSY(hsqcgpmlph)ピーク強度定量を示す。(HSQC-TOCSY上のC-3およびC-5シグナルは、混合時間100msについて、オーバーラップして出現した。したがって、C-3およびC-5の総積分を棒グラフにおいて使用した);
【0022】
図6図6は、モグロシド糖鎖を解明するための戦略を示す(HSQC-TOCSYのピーク強度を調整しているのであれば、ある混合時間下で出現したC-2~C-6の数は、わずかに変わることがあり得る。それでもなお、異なる混合時間での実験における増加するC-2~C-6の強度を観察することによって、結合順を決定することができる。**これまでのところ、モグロシドグルコピラノシルのC-3上の自然なグリコシル化はない。グルコピラノシル上のC-3グリコシル化は、δ7からδ81へのダウンシフトを引き起こし、HSQC-TOCSY実験によって容易に決定することができる)。図6における一連のステップは、以下のとおり概説することができる: ステップ1において、糖のアノマーC-1およびH-1を決定するために異種核間多結合相関分光法(Heteronuclear multiple bond correlation spectroscopy)(HMBC)を使用した。アグリコンへの糖の連結から出発する。ステップ2において、C-2~C-6の群全体を決定するために、混合時間100msでHSQC-TOCSYを使用した。C-2を割り当てるためのHSQC-COSYまたはHSQC-TOCSY(d9=10ms)。C-3を割り当てるためのHSQC-TOCSY(d9=30ms)。C-4を割り当てるためのHSQC-TOCSY(d9=60ms)。C-5およびC-6を割り当てるためのHSQC-TOCSY(d9=100ms)。ステップ3において、~δ75から~δ81までのC-2のダウンシフト、~δ71から~δ81までのC-4のダウンシフト、または~δ62から~69までのC-6のダウンシフトが観察されたら、これらの位置でのグリコシル化についてHMBCをチェックする。** C-2が~δ75から~δ81までダウンシフトしているか、C-4が~δ71から~δ81までダウンシフトしているか、またはC-6が~δ62から~69までダウンシフトしていたら、これらの位置でのグリコシル化についてHMBCをチェックする。**
【0023】
図7図7は、化学式C6611234および1448.70の精密質量を有するイソ-モグロシドVIについての化学構造を示す。この化学構造を式Iと呼ぶ;ならびに
図8図8は、化学式C6010229および1286.65の精密質量を有する11-エピ-モグロシドVについての化学構造を示す。この化学構造を式IIと呼ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な記載
本発明は、1以上の高強度甘味料(単数または複数)(例として、モグロシドV)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)(例として、11-O-モグロシドV)との組み合わせが、少なくとも1の他の甘味料(例として、スクロース)と相乗的に働くことができ、個々の甘味料の甘さの総和を超える甘さを有する組成物が得られるという驚くべき知見に基づく。本発明はさらに、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が、1以上の高効力甘味料(単数または複数)の1以上のネガティブな甘味特性を相殺するという驚くべき知見に基づく。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)(例として、モグロシドV)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)(例として、11-O-モグロシドV)との組み合わせは、甘味付けされた組成物(すなわち、スクロースなどの少なくとも1の他の甘味料を、その甘味認識閾値より上の量で、および/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で含む組成物)において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を単独で使用することに比べて改善された甘味特性を提供し得る。甘味特性は、よって、例えば、よりスクロースの甘味特性に近くなり得る。
【0025】
よって、本明細書に開示されたとおりの1以上の高強度甘味料(単数または複数)および1以上の低効力甘味料(単数または複数)を含む様々な組成物、特に、その甘味認識閾値より上の量のおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量の少なくとも1の甘味料、ならびに1以上の高強度甘味料および1以上の低効力甘味料(単数または複数)を含む、甘味付けされた組成物が、本明細書で提供される。甘味付けされた組成物は、可食組成物ともまた称されてもよい。本明細書に開示されたとおりの1以上の高強度甘味料(単数または複数)および1以上の低効力甘味料(単数または複数)の様々な使用、ならびに本明細書に開示された様々な組成物を作る方法もまた、本明細書で提供される。
【0026】
本発明はさらに、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドなどのモグロシドが甘味増強剤として作用することができる(すなわち、甘味付けされた組成物の甘さを、甘味増強剤単独の甘さよりも大きく増加させることができる)という驚くべき知見に基づく。
よって、様々な組成物、具体的には、甘味付けされた組成物であって、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上を含むものが、本明細書で提供される。
【0027】
組成物
少なくとも1の高強度甘味料および少なくとも1の低効力甘味料を含む様々な組成物が、本明細書で提供される。1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上を含む組成物もまた、本明細書で提供される。ある態様において、組成物は、可食組成物である。
【0028】
ある態様において、ステビオールグリコシドおよび/またはモグロシドからなる群から選択される少なくとも1の高強度甘味料、ならびに、セロビオース、プシコース、シクラマートおよび/または11-O-モグロシドVからなる群から選択される少なくとも1の低効力甘味料を、含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、甘味改変組成物が提供される。ある態様において、甘味改変組成物は、1つの高強度甘味料および1つの低効力甘味料を、含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。甘味改変組成物は、例えば、甘味付けされた(例として、可食の)組成物中で、可食組成物に所望の甘さを与えるために希釈され得る、濃縮物であってもよい。用語「甘味付けされた組成物」は、その甘味認識閾値より上の量でおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の甘味料を含む組成物を指す。
【0029】
ある態様において、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上、を包含する、甘味付けされた組成物(例として、可食組成物)が提供される。ある態様において、少なくとも1の高強度甘味料および少なくとも1の低効力甘味料を含む、甘味付けされた組成物(例として、可食組成物)が提供される。高強度甘味料(単数または複数)と低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせは、甘味改変組成物と称され得る。1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上もまた、本明細書において甘味改変組成物と称され得る。よって、ある態様において、その甘味認識閾値より上の量でおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の甘味料を含む組成物、ならびに少なくとも1の高強度甘味料および少なくとも1の低効力甘味料を、含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる甘味改変組成物、を含む甘味付けされた組成物が提供される。甘味付けされた組成物は、例えば、可食組成物であり得る。
【0030】
用語「増強する」は、特定の甘味改変組成物との関連で使用されるとき、少なくとも1の他の甘味料と組み合わせて使用される場合の相乗的な甘味付け効果を指す。甘味改変組成物は、甘味付けされた組成物の甘さを、甘味改変組成物単独の甘さよりも大きく増加させる。言い換えれば、少なくとも1の甘味料および少なくとも1の甘味改変組成物を含む組成物の甘さは、組成物中の全ての甘味料の甘さの総和を超える。本明細書に記載の甘味改変組成物は、甘味付けされた(例として、可食の)組成物中において、検出可能な甘さを有しないかまたは甘味と認識される味を有しない(その甘味認識閾値を下回る)量で使用される。典型的には、1.5%(w/v)スクロース当量を下回る甘さを持つ甘味改変組成物は、FEMA(米国食品香料製造業者協会)により「本質的に甘くない」と認められる。甘味改変剤はまた、甘味増強剤とも称され得る。
【0031】
本明細書に開示された通りの甘味改変組成物、および、その甘味認識閾値より上の量でおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の甘味料を含む、甘味付けされた組成物は、甘味改変組成物が存在しない場合の甘味付けされた組成物の甘さより、約1.0%(w/v)スクロース当量以上上回る甘さを有し得る。例えば、甘味付けされた組成物は、甘味改変組成物が存在しない場合の甘味付けされた組成物の甘さより、約1.1%(w/v)スクロース当量以上、または約1.15%(w/v)スクロース当量以上、または約1.2%(w/v)スクロース当量以上、または約1.25%(w/v)スクロース当量以上上回る甘さを有し得る。言い換えれば、甘味改変組成物は、甘味付けされた組成物の甘さを、約1%(w/v)スクロース当量以上、または約1.1%(w/v)スクロース当量以上、または約1.15%(w/v)スクロース当量以上、または約1.2%(w/v)スクロース当量以上、または約1.25%(w/v)スクロース当量以上増加させ得る。比較の組成物は、それが前記甘味改変組成物を包含しないことを除いて、前記甘味改変組成物と同一である。
【0032】
用語「スクロース当量」は、少なくとも1の非スクロース甘味料を含有する組成物の、基準スクロース溶液に対する、甘味の等価性を指す。典型的には、味覚パネリストが、1%~15%スクロース(w/v)の間を含有する基準スクロース溶液の甘味を検出するように訓練される。他の非スクロース甘味料は、次に、所与のスクロース基準に対して同じくらい甘い(すなわち、等甘味)である非スクロース甘味料の濃度を決定するための一系列の希釈液でテイスティングされ得る。用語「等甘味」は、等価の甘さを有する組成物を指す。典型的には、所与の組成物の甘さは、スクロースの溶液を基準にして測定される。Sweeteners: Discovery, Molecular Design and Chemoreception, D.E. Walters, F.T. OrthoeferおよびG.E. DuBois, Eds., American Chemical Society, Washington, DC (1991), pp 261-276における、「A Systematic Study of Concentration-Response Relationships of Sweeteners」、G.E. DuBois, D.E. Walters, S.S. Schiffman, Z.S. Warwick, B.J. Booth, S.D. Pecore, K. Gibes, B.T. CarrおよびL.M. Brandsを参照。
【0033】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせ(例として、甘味改変組成物)は、例えば、約1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有し得る。例えば、高強度甘味料(単数または複数)と低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせ(例として、甘味改変組成物)は、例えば、約1.45%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満、または約1.4%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満、または約1.35%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満、または約1.3%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満の甘さを有し得る。例えば、高強度甘味料(単数または複数)と低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせ(例として、甘味改変組成物)は、約1%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.1%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.15%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.2%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.25%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.3%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さを有し得る。
【0034】
1以上のモグロシド(単数または複数)、例えば、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)は、例えば、約1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有し得る。例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えば、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)は、約1.45%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満、または約1.4%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満、または約1.35%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満、または約1.3%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれ未満の甘さを有し得る。例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えば、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)は、約1%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.1%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.15%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.2%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.25%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える、または約1.3%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さを有し得る。
【0035】
本明細書に開示された組成物中において使用される甘味料および甘味増強剤の各々は、天然または合成(人工)甘味料であり得る。天然に生じない(すなわち、合成の)モグロシドの例は、WO 2017/075257に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。用語「天然甘味料」は、自然から得られた甘味料を指し、これは、酵素処理(例として、グリコシル化)されて天然に見出されない化合物を形成していてもよい混合物を包含する(これは酵素処理された精製化合物を包含しない)。例えば、天然に生じるモグロールグリコシド分布とは異なる(例として、増強された)モグロールグリコシド分布を有する改変された抽出物は、天然として分類され得る。例えば、グリコシル化されたステビオールグリコシドおよび/またはグリコシル化されたモグロシドの混合物は、天然として分類され得る。本明細書に開示された組成物中において使用される甘味料の各々は、食物由来であってもよい。「食物由来の」製品は、典型的な調理条件下、例えば、調理方法において使用されるものに類似した温度を使用するなどにて調製された製品を指す。ある態様において、本明細書に開示された組成物中において(例として、本明細書に開示された甘味改変組成物中において)使用される高強度甘味料および低効力甘味料は、両方とも天然甘味料である。ある態様において、本明細書に開示された組成物中において使用される全ての甘味料は、天然である。
【0036】
本明細書に開示された甘味料は、純粋なまたは精製された形態で使用されてもよく、および、化学的に合成されても、生物工学的プロセス(例として、発酵)によって生産されても、または天然源(例として、限定しないが、果実、サトウキビ、サトウダイコンなどを包含する植物源)から単離されてもよい。
1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、例えば、少なくとも80wt%の純度であり得る。例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、少なくとも約85wt%または少なくとも約90wt%または少なくとも約95wt%または少なくとも約98wt%または少なくとも約99wt%の純度であり得る。例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、100wt%までまたは99wt%までの純度であり得る。
【0037】
用語「高強度甘味料」は、スクロースの甘さの少なくとも100倍の甘さを有する化合物を指す。ある態様において、高強度甘味料は、スクロースの甘さの少なくとも約120または少なくとも約140または少なくとも約150または少なくとも約160または少なくとも約180または少なくとも約200または少なくとも約220または少なくとも約240または少なくとも約250または少なくとも約260または少なくとも約280または少なくとも約300または少なくとも約320または少なくとも約340または少なくとも約350または少なくとも約360または少なくとも約380または少なくとも約400または少なくとも約420または少なくとも約440または少なくとも約450倍の甘さを有する。高強度甘味料は、例えば、スクロースの甘さの少なくとも1000倍までの甘さを有してもよい。高強度甘味料は、スクロースの甘さの少なくとも100倍の甘さを有するが、本明細書に記載のとおりの甘味改変組成物中でのその使用の文脈では、それらは、甘味付けされた組成物中において、何ら検出可能な甘さを有しないかまたは甘味と認識されない量(FEMA(米国食品香料製造業者協会)により「本質的に甘くない」と認められる、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを提供する量)で使用されることになる。
【0038】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、例えば、1以上のステビオールグリコシドおよび/または1以上のモグロシドであり得る。例えば、1以上の高強度甘味料は、ステビオールグリコシドとモグロシドとの混合物であり得る。例えば、1以上の高強度甘味料は、1以上のステビオールグリコシドであり得る。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、1以上のモグロシドであり得る。ある態様において、モグロシドは、甘味増強およびオフノート低減(例として、長引く甘い後味を弱めること)の点でステビオールグリコシドよりも良く機能し得る。
【0039】
高強度甘味料は、例えば、1以上のステビオールグリコシド(単数または複数)であり得る。ステビオールグリコシドの例は、例えば、ステビオシド(CAS:57817-89-7)、レバウジオシドA(CAS:58543-16-1)、レバウジオシドB(CAS:58543-17-2)、レバウジオシドC(CAS:63550-99-2)、レバウジオシドD(CAS:63279-13-0)、レバウジオシドE(CAS:63279-14-1)、レバウジオシドF(CAS:438045-89-7)、レバウジオシドG(CAS:127345-21-5)、レバウジオシドH、レバウジオシドI(CAS:1220616-34-1)、レバウジオシドJ、レバウジオシドK、レバウジオシドL、レバウジオシドM(CAS:1220616-44-3)、レバウジオシドN(CAS:1220616-46-5)、レバウジオシドO(CAS:1220616-48-7)、ズルコシドA(CAS:64432-06-0)、ズルコシドB(CAS:63550-99-2)、ルブソシド(CAS:64849-39-4)およびナリンジンジヒドロカルコン(CAS:18916-17-1)を包含する。
【0040】
高強度甘味料は、例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)であり得る。
ある態様において、高強度甘味料は、本明細書に挙げられたモグロシドの1以上であってもよい。ある態様において、高強度甘味料は、モグロシドIV、シアメノシド、ネオモグロシドおよびモグロシドV(その全ての異性体を包含する)の1つ以上であってもよい。例えば、高強度甘味料は、モグロシドIV、シアメノシドおよびモグロシドV(その全ての異性体を包含する)の混合物であってもよい。1以上のモグロシド(単数または複数)は、例えば、ラカンカ果実抽出物から得られたかまたは得ることができるものであってもよい。
【0041】
用語「低効力甘味料」は、スクロースの甘さの100倍未満の甘さを有する化合物を指す。ある態様において、低効力甘味料は、スクロースの甘さの約95倍までまたは約90倍までまたは約85倍までの甘さを有する。
1以上の低効力甘味料(単数または複数)セロビオース、プシコース、シクラマートおよび/または11-O-モグロシドV(CAS:126105-11-1)の1以上から選択される。例えば、1以上の低強度甘味料(単数または複数)は、セロビオース、プシコースおよび11-O-モグロシドVの1以上であり得る。
【0042】
ある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、高強度のモグロシドであるかまたはこれを包含する。ある態様において、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、低効力のモグロシドであるかまたはこれを包含する。ある態様において、1以上の高強度甘味料は、高強度のモグロシドであるかまたはこれを包含し、および1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、低効力のモグロシドであるかまたはこれを包含する。
ある態様において、1以上の高強度甘味料は、モグロシドVであるかまたはこれを包含する。ある態様において、1以上の低効力甘味料は、11-O-モグロシドVであるかまたはこれを包含する。ある態様において、1以上の高強度甘味料は、モグロシドVであるかまたはこれを包含し、および1以上の低効力甘味料は、11-O-モグロシドVであるかまたはこれを包含する。
【0043】
モグロシドは、トリテルペングリコシドの群であり、果実ラカンカ(Siraitia grosvenorii)(アルハット(arhat)果実または長寿の果実またはスウィングル(swingle)果実としても知られている)から得られる。モグロシドは、新鮮な果実の果肉のほぼ1%を構成する。抽出を通して、80%までのモグロシドを含有する粉末の形態を得ることができる。モグロシド抽出物は、グロスベノリンII、グロスベノリンI、11-O-モグロシドII(I)、11-O-モグロシドII(II)、11-O-モグロシドII(III)、モグロシドII(I)、モグロシドII(II)、モグロシドII(III)、11-デヒドロキシ-モグロシドIII、11-O-モグロシドIII、モグロシドIII(I)、モグロシドIII(II)、モグロシドIV(I)(シアメノシド)、モグロシドIV(II)、モグロシドIV(III)、モグロシドIV(IV)、デオキシモグロシドV(I)、デオキシモグロシドV(II)、11-O-モグロシドV(I)、モグロシドV異性体、モグロシドV、イソ-モグロシドV、7-O-モグロシドV、11-O-モグロシドVI、モグロシドVI(I)、モグロシドVI(II)、モグロシドVI(III)(ネオモグロシド)およびモグロシドVI(IV)を含有する。モグロシドVの精確な量は、果実の成熟度および/または使用した抽出プロセスに依存して変動し得る。
【0044】
モグロシド(単数または複数)は、天然に生じるモグロシド(単数または複数)および天然に生じないモグロシドの両方を包含する。モグロシドの例は、例えば、グロスベノリンII、グロスベノリンI、11-O-モグロシドII(I)、11-O-モグロシドII(II)、11-O-モグロシドII(III)、モグロシドII(I)、モグロシドII(II)、モグロシドII(III)、11-デヒドロキシ-モグロシドIII、11-O-モグロシドIII、モグロシドIII(I)、モグロシドIII(II)、モグロシドIIIe、モグロシドIIIx、モグロシドIV(I)(シアメノシド)、モグロシドIV(II)、モグロシドIV(III)、モグロシドIV(IV)、デオキシモグロシドV(I)、デオキシモグロシドV(II)、11-O-モグロシドV(I)、モグロシドV異性体、モグロシドV、イソ-モグロシドV、7-O-モグロシドV、11-O-モグロシドVI、モグロシドVI(I)、モグロシドVI(II)、モグロシドVI(III)(ネオモグロシド)およびモグロシドVI(IV)を包含する。モグロシド(単数または複数)は、例えば、ラカンカ抽出物から得られたかまたは得ることができるものであってもよい。
【0045】
モグロシドV(CAS:88901-36-4)は、ククルビタン誘導体のグリコシドであり、ならびに化学式C6010229および以下に示すの化学構造を有する。モグロシドVは、果実ラカンカ(Siraitia grosvenorii)からの抽出物などの、ある植物抽出物中において見出すことができる。純粋なモグロシドVは、スクロースの甘さの少なくとも400倍の甘さを有することが見出されている。
【化1】
【0046】
シアメノシド(CAS:126105-12-2)は、Siraitia grosvenoriiの果実中において見出されるククルビタンであり、および以下の化学構造を有する。
【化2】
【0047】
モグロシドIV(CAS:89590-95-4)は、Siraitia grosvenoriiの果実中において見出されるトリテルペンヘテロシドであり、および以下の化学構造を有する。
【化3】
【0048】
ネオモグロシド(CAS:189307-15-1)もまた、Siraitia grosvenoriiの果実中において見出されるククルビタングリコシドであり、および以下の化学構造を有する。
【化4】
【0049】
11-O-モグロシドV(CAS:126105-11-1)は、モグロシドVに由来し、および以下の化学構造を有する。それもまた、果実ラカンカ(Siraitia grosvenorii)からの抽出物などの植物抽出物中に見出される。11-O-モグロシドVは、スクロースの甘さの約84倍の甘さを有することが見出されている。
【化5】
【0050】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約2:1と同等かまたはそれを超える。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約2.5:1と同等かまたはそれを超える、または約3:1と同等かまたはそれを超える、または約3.5:1と同等かまたはそれを超える、または約4:1と同等かまたはそれを超える、または約4.5:1と同等かまたはそれを超える、または約5:1と同等かまたはそれを超える、または約5.5:1と同等かまたはそれを超える、または約6:1と同等かまたはそれを超える、または約6.5:1と同等かまたはそれを超える、または約7:1と同等かまたはそれを超える、または約7.5:1と同等かまたはそれを超える、または約8:1と同等かまたはそれを超えるものであり得る。高強度甘味料の、低効力甘味料に対する比率は、約12:1と同等かまたはそれ未満である。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約11.5:1と同等かまたはそれ未満、または約11:1と同等かまたはそれ未満、または約10.5:1と同等かまたはそれ未満、または約10:1と同等かまたはそれ未満、または約9.5:1と同等かまたはそれ未満、または約9:1と同等かまたはそれ未満、または約8.5:1と同等かまたはそれ未満であり得る。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約5:1から約11:1まで、または約6:1から約10:1まで、または約6.5:1から約9.5:1まで、または約7:1から約9:1まで、または約7.5:1から約8.5:1までの範囲にあり得る。
【0051】
ある態様において、1以上の高強度甘味料(単数または複数)の、1以上の低効力甘味料(単数または複数)に対する比率は、約2:1から約12:1まで、または約4:1から約12:1まで、または約5:1から約12:1まで、または約6:1から約10:1まで、または約7:1から約9:1までである。比率は、重量または体積比であり得る。比率は、甘味改変組成物中における、高強度甘味料(単数または複数)および低効力甘味料(甘味付けされた組成物中において、甘味認識閾値より下の量または1.5%(w/v)スクロース当量未満を有する量で使用される、高強度および低効力甘味料)にのみ適用される。
【0052】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約15ppmと同等かまたはそれを超える総量で存在し得る。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約16ppmと同等かまたはそれを超える、または約17ppmと同等かまたはそれを超える、または約18ppmと同等かまたはそれを超える、または約19ppmと同等かまたはそれを超える、または約20ppmと同等かまたはそれを超える、または約21ppmと同等かまたはそれを超える、または約22ppmと同等かまたはそれを超える、または約23ppmと同等かまたはそれを超える、または約24ppmと同等かまたはそれを超える、または約25ppmと同等かまたはそれを超える総量で存在し得る。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約50ppmと同等かまたはそれ未満、または約48ppmと同等かまたはそれ未満、または約46ppmと同等かまたはそれ未満、または約45ppmと同等かまたはそれ未満、または約44ppmと同等かまたはそれ未満、または約42ppmと同等かまたはそれ未満、または約40ppmと同等かまたはそれ未満、または約38ppmと同等かまたはそれ未満、または約36ppmと同等かまたはそれ未満、または約35ppmと同等かまたはそれ未満、または約34ppmと同等かまたはそれ未満、または約32ppmと同等かまたはそれ未満、または約30ppmと同等かまたはそれ未満の総量で存在し得る。
【0053】
例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約15ppmから約50ppmまで、または約15ppmから約45ppmまで、または約15ppmから約40ppmまで、または約15ppmから約35ppmまで、または約15ppmから約30ppmまでの範囲にある総量で存在し得る。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約15ppmから約30ppmまで、または約20ppmから約30ppmまで、または約22ppmから約28ppmまで、または約23ppmから約27ppmまで、または約24ppmから約26ppmまでの範囲にある総量で存在し得る。例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約20ppmまたは約25ppmの総量で存在し得る。組成物は、例えば、その甘味認識閾値より上の甘さを有するおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量の少なくとも1の甘味料を含む、甘味付けされた組成物であり得る。
【0054】
1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約2ppmと同等かまたはそれを超える総量で存在し得る。例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約3ppmと同等かまたはそれを超える総量で存在し得る。例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)中に、約12ppmと同等かまたはそれ未満、または約11ppmと同等かまたはそれ未満、または約10ppmと同等かまたはそれ未満、または約9ppmと同等かまたはそれ未満、または約8ppmと同等かまたはそれ未満、または約7ppmと同等かまたはそれ未満、または約6ppmと同等かまたはそれ未満、または約5ppmと同等かまたはそれ未満の総量で存在し得る。例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、組成物中に、約2ppmから約12ppmまで、または約2ppmから約10ppmまで、または約2ppmから約5ppmまでの範囲にある総量で、例えば約3ppmの総量で存在し得る。
【0055】
組成物は、例えば、本明細書に開示されたとおりの高強度甘味料と低効力甘味料との組み合わせ(例として、甘味改変組成物)以外の少なくとも1の甘味料を含み得る。
当該濃度範囲は、例えば、飲料などの液体組成物、またはいかなるタンパク質もしくは脂肪も含まない組成物のために、特に好適なものであり得る。ミルクおよびヨーグルトなどのベースを有する組成物、またはタンパク質および/または脂肪を含む他の組成物においては、より高い濃度の1以上の高強度甘味料(単数または複数)および1以上の低効力甘味料(単数または複数)が使用され得る。例えば、液体組成物またはいかなるタンパク質もしくは脂肪も含まない組成物のために使用される濃度よりも約1.5倍高い濃度が使用され得る。例えば、液体組成物またはいかなるタンパク質もしくは脂肪も含まない組成物のために使用される濃度よりも約1.5倍から約3倍まで高い濃度が使用され得る。
【0056】
したがって、例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)は、組成物(例として、ミルクおよびヨーグルトなどのベースを有する組成物、またはタンパク質および/または脂肪を含む他の組成物)中に、約20ppmから約75ppm、例えば約22ppmから約74ppmまで、または約24ppmから約72ppmまで、または約25ppmから約70ppmまで、または約26ppmから約68ppmまで、または約28ppmから約66ppmまで、または約30ppmから約65ppmまで、または約30ppmから約60ppmまで、または約30ppmから約55ppmまで、または約30ppmから約50ppmまで、または約30ppmから約45ppmまでの範囲にある総量で存在し得る。
【0057】
したがって、例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、組成物(例として、ミルクおよびヨーグルトなどのベースを有する組成物、またはタンパク質および/または脂肪を含む他の組成物)中に、約3ppmから約20ppmまで、または約4ppmから約18ppmまで、または約4ppmから約16ppmまで、または約5ppmから約15ppmまで、または約6ppmから約15ppmまでの範囲にある総量で存在し得る。
【0058】
ある態様において、甘味付けされた組成物は、その甘味認識閾値より上の甘さを有するおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量の少なくとも1の甘味料、ならびに、15ppm~約50ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の高強度甘味料(単数または複数)および2ppm~12ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の低効力甘味料(単数または複数)からなる本明細書に記載のとおりの甘味改変組成物を含む。ある態様において、可食組成物は、少なくとも1の甘味料、ならびに、15ppm~約30ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の高強度甘味料(単数または複数)および2ppm~10ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の低効力甘味料(単数または複数)からなる甘味改変組成物を含む。
【0059】
ある態様において、可食組成物は、少なくとも1の甘味料、ならびに、20ppm~約30ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の高強度甘味料(単数または複数)および2ppm~10ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の低効力甘味料(単数または複数)からなる甘味改変組成物を含む。ある態様において、可食組成物は、少なくとも1の甘味料、ならびに22ppm~約28ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の高強度甘味料(単数または複数)および2ppm~5ppmの本明細書に記載のとおりの1以上の低効力甘味料(単数または複数)からなる甘味改変組成物を含む。ある態様において、高強度甘味料は、モグロシドVである。ある態様において、低効力甘味料は、11-O-モグロシドVである。
【0060】
1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、例えば、甘味付けされた組成物中に、約15ppmと同等かまたはそれを超える総量で存在し得る。例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、例えば、甘味付けされた組成物中に、約16ppmと同等かまたはそれを超える、または約17ppmと同等かまたはそれを超える、または約18ppmと同等かまたはそれを超える、または約19ppmと同等かまたはそれを超える、または約20ppmと同等かまたはそれを超える、または約21ppmと同等かまたはそれを超える、または約22ppmと同等かまたはそれを超える、または約23ppmと同等かまたはそれを超える、または約24ppmと同等かまたはそれを超える、または約25ppmと同等かまたはそれを超える総量で存在し得る。
【0061】
例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、例えば、甘味付けされた組成物中に、約50ppmと同等かまたはそれ未満、例えば約45ppmと同等かまたはそれ未満、例えば約40ppmと同等かまたはそれ未満、例えば約35ppmと同等かまたはそれ未満の総量で存在し得る。例えば、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、甘味付けされた組成物中に約15ppmから約50ppmまでまたは約15ppmから約45ppmまでまたは約15ppmから約40ppmまでまたは約15ppmから約35ppmまでまたは約20ppmから約35ppmまでまたは約20ppmから約30ppmの範囲にある総量で存在し得る。
【0062】
用語「ppm」は、重量での百万分の一単位(単数または複数)、例えばモグロシドVなどの化合物の重量(ミリグラムで)の、かかる化合物を含有する製品のキログラムあたり(すなわち、mg/Kg)、または、モグロシドVなどの化合物(例として、本開示の経口消耗品/可食製品)の重量(ミリグラムで)の、かかる化合物を含有する製品のリットルあたり(すなわち、mg/L)、あるいは体積での百万分の一単位(単数または複数)、例えば、モグロシドVなどの化合物の体積(ミリリットルで)の、かかる化合物を含有する製品のリットルあたり(すなわち、ml/L)を指す。
【0063】
本明細書に記載された甘味改変組成物は、例えば、より高い濃度の高強度および低強度甘味料を含み得、および次に本明細書に謳われている濃度を得るために甘味付けされた組成物中において希釈され得る。
甘味付けされた組成物は、その甘味認識閾値と同等かまたはそれを超える量のおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量の、少なくとも1の甘味料を含む。用語「甘味認識閾値」は、ヒトの味覚によって甘味として知覚され得る、組成物の最も低い既知濃度を指す。約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える甘さは、FEMAにより「本質的に甘い」と認められる。
【0064】
少なくとも1の甘味料は、栄養または非栄養であり得る。栄養甘味料は、それらを含有する食物にカロリー値を追加するものであり、一方で非栄養甘味料はカロリーが極めて低いかまたはカロリーを全く含有しない。唯一の承認済みの栄養高強度甘味料であるアスパルテームは、同量の砂糖におけるカロリーの2%超を含有し、同量の砂糖におけるカロリーの2%未満を含有する非栄養甘味料とは対極的である。
【0065】
少なくとも1の甘味料は、例えば、スクロース、フルクトース、グルコース、キシロース、アラビノース、ラムノース、タガトース、アルロース、トレハロース、イソマルツロース、アセスルファムカリウム(AceK)、アスパルテーム、ステビオールグリコシド(単数または複数)、スクラロース、高果糖コーンシロップ、水飴、サッカリン、スクラロース、ネオテーム、アドバンテーム、ラカンカ抽出物、ネオヘスピリジン、ジヒドロカルコン、ナリンジンジヒドロカルコン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ルブソシド、レバウジオシドA、ステビオシド、ステビア、トリロブテイン、および、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールおよびイノシトールなどの糖アルコールの、1以上から選択され得る。甘味付けされた組成物中において使用され得る甘味料の例は、例えば、WO 2016/038617に開示されており、その内容は,その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
少なくとも1の甘味料は、例えば、スクロース、高果糖コーンシロップ、アセスルファムカリウム(AceK)、アスパルテーム、ステビオールグリコシド(単数または複数)および/またはスクラロースの1以上から選択され得る。
如何にして甘味料を十分量で使用して消費物を甘味付けするかは、当該技術分野において周知である。消費物に依存するが、甘味料の量を、本明細書に記載のとおりの甘味改変組成物の添加によって低減させることができる。例えば、約1°~約4°またはそれよりも大きくBrixを低減することを達成し得る。
【0067】
その甘味認識閾値と同等かまたはそれを超える量でおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の他の甘味料は、例えば、甘味付けされた組成物中において約0.01%(w/v)と同等かまたはそれを超える量で使用され得る。例えば、少なくとも1の他の甘味料は、甘味付けされた組成物中において、約0.1%(w/v)と同等かまたはそれを超える量、または約0.5%(w/v)と同等かまたはそれを超える量、または約1%(w/v)と同等かまたはそれを超える量、または約2%(w/v)と同等かまたはそれを超える量で使用され得る。例えば、少なくとも1の他の甘味料は、可食組成物において、約20%(w/v)と同等かまたはそれ未満の量で、または約15%(w/v)と同等かまたはそれ未満の量で、または約10%(w/v)と同等かまたはそれ未満の量で、または約8%(w/v)と同等かまたはそれ未満の量で、または約6%(w/v)と同等かまたはそれ未満の量で、または約5%(w/v)と同等かまたはそれ未満の量で使用され得る。
その甘味認識閾値と同等かまたはそれを超える量でおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の他の甘味料は、本明細書に開示された甘味付けされた組成物(例として、可食組成物)中において、約2%(w/v)~約15%(w/v)スクロースと等甘味の量で使用され得る。
【0068】
ある態様において、約2:1から約12:1まで、例えば約6:1から約10:1までの範囲にある比率のモグロシドVおよび11-O-モグロシドVからなる甘味改変組成物が、本明細書で提供される。この甘味改変組成物は、可食組成物中の甘味増強剤または改変剤として使用され得る。可食組成物は、例えば、スクロースなどの少なくとも1の他の甘味料を含み得る。モグロシドVは、例えば、可食組成物中において約15ppmから約30ppmまでまたは約20ppmから約30ppmまで(例として、約20ppmまたは約25ppm)の範囲にある量で使用され得る。11-O-モグロシドVは、可食組成物中において約2ppmから約12ppmまでまたは約2ppmから約10ppmまで(例として、約8.5ppmまたは約3ppm)の範囲にある量で使用され得る。少なくとも1の他の甘味料は、例えば、約2%(w/v)~約15%(w/v)スクロースと等甘味の量で、可食組成物中に存在する。
【0069】
組成物は、いかなる好適な形態であってもよく、例えば、個体(例として、粉末、顆粒、錠剤)または溶液(例として、水溶液)、またはエマルションで、または懸濁液であってもよい。例えば、組成物はさらに、希釈剤、または食物繊維などの増量剤を含んでもよい。
本明細書に開示されたとおりの可食組成物は、例えば、以下のものを包含する。
【0070】
- 冷凍スープを包含する、濃度または容器を問わない湿った/液体のスープ。この定義の目的で、スープ(単数または複数)は、肉、鳥肉、魚、野菜、穀類、果実および他の素材から調製された食物であって、これらの材料の一部または全ての目に見える小片を包含し得る液体中で調理された食物を意味する。それは透明(ブロスとして)または濃厚(チャウダーとして)、滑らか、裏漉しされているかまたは具入り、即席、半濃縮、または濃縮であってもよく、熱いうちにまたは冷やして、食事の最初のコースとしてまたはメインのコースとして、または間食として(飲料のようにすするように)出されてもよい。スープは、他の食事の構成要素を調製するための素材として使用してもよく、および、ブロス(コンソメ)からソース(クリームまたはチーズベースのスープ)までの範囲に及んでもよい。
- 粉末、顆粒、ペースト、濃縮液体製品などの調理補助製品を包含する脱水された料理用食物、これはプレスされたキューブ、錠剤または粉末もしくは顆粒形態の、濃縮ブイヨン、ブイヨンおよびブイヨン様製品を包含し、これらは最終製品として個別に、または製品、ソースもしくはレシピミックス(技術を問わない)の内の素材として販売される。
【0071】
- 食事ソリューション製品、例えば:脱水されたスープミックス、脱水されたインスタントスープ、脱水された即席調理スープを包含する、脱水されたフリーズドライスープ、パスタ、ジャガイモおよび米料理を包含する出来合いの料理、食事およびシングルサーブのアントレ(entrees)の、脱水されたまたは常温の調製物
- 食事装飾製品、例えば:調味料、マリネ、サラダドレッシング、サラダトッピング、ディップ、衣、バターミックス、常温保存可能なスプレッド、バーベキューソース、液体レシピミックス、濃縮物、ソースまたはソースミックス(サラダのためのレシピミックスを包含し、脱水、液体または冷凍のいずれであれ、最終製品として、または製品の内の素材として販売される)。
【0072】
- アルコールおよび非アルコール即席乾燥粉末飲料、炭酸および非炭酸飲料(例として、ソーダ、果物または野菜ジュース、アルコールおよび非アルコール飲料)を包含するがこれに限定されない、飲料混合物および濃縮物を包含する飲料。
- 菓子製品、例として、ケーキ、クッキー、パイ、キャンディー、チューインガム、ゼラチン、アイスクリーム、シャーベット、プディング、ジャム、ゼリー、サラダドレッシング、および他の調味料、シリアル、および他の朝食用食品、缶詰の果物および果物ソース等。
- ミルク、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品。
【0073】
- 例えば、シロップ、エマルション、懸濁物、溶液の形態または他の液体形態であり得る、医薬組成物。
- 例えば、口内清涼剤、含嗽剤、口内洗浄剤、練り歯磨き粉、歯用ポリッシュ、歯磨剤、口内スプレーおよびデンタルフロスなどを包含する、歯科組成物。
- 食べられるゲル組成物。
【0074】
本明細書に開示された組成物は、ベース組成物をさらに含み得る。例えば、本明細書に開示された可食組成物は、可食ベース組成物をさらに含み得る。これは、高強度甘味料と低効力甘味料との組み合わせ(例として、甘味改変組成物)を除いて組成物に必要な成分全てを指す。ベース組成物は、例えば、その甘味認識閾値と同等かまたはそれを超える量でおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の他の甘味料を含む、甘味付けされたベース組成物であり得る。これらは、当然に、性質および割合の両方が、組成物の性質および使用に依存して変動し得るが、それらは当該技術分野において周知であり、および、当該技術分野において認識されている割合で使用され得る。想定され得るあらゆる目的のための、かかるベース組成物の処方は、したがって当該技術分野における通常の知識内である。
【0075】
ベース組成物中の成分は、固化防止剤、消泡剤、酸化防止剤、バインダー、着色料、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、カプセル化剤または製剤、酵素、脂肪、フレーバー増強剤、フレーバリング剤、ガム、潤滑剤、多糖、保存料、タンパク質、可溶化剤、溶媒、安定化剤、糖誘導体、界面活性剤、甘味付与剤、ビタミン、ロウ等を包含し得るが、これらに限定されない。使用され得る溶媒は、当業者に知られており、例として、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびトリアセチンを包含する。カプセル化剤およびガムは、マルトデキストリン、アラビアガム、アルギン酸塩、ゼラチン、加工デンプン、および多糖を包含する。
【0076】
フレーバーまたはフレグランス組成物のための添加物、賦形剤、担体、希釈剤または溶媒の例は、例として、「Perfume and Flavour Materials of Natural Origin」、S. Arctander, Ed., Elizabeth, N.J., 1960において;「Perfume and Flavour Chemicals」、S. Arctander, Ed., Vol. I & II, Allured Publishing Corporation, Carol Stream, USA, 1994において;「Flavourings」、E. Ziegler and H. Ziegler (ed.), Wiley-VCH Weinheim, 1998、および「CTFA Cosmetic Ingredient Handbook」、J.M. Nikitakis (ed.), 1st ed., The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association, Inc., Washington, 1988において、見出され得る。
【0077】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせ(例として、甘味改変組成物)またはモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)の割合は、組成物の性質ならびに所望の甘味度および甘味特性に依存する。当業者は、あらゆる場合の適切な割合を、ほんの単純な、発明性のない実験によって、容易に確かめることができる。本明細書に開示された量および割合は、ほんの例示に過ぎず、フレーバリストはこの範囲外を実施することによって特定の効果を探し求めてもよく、それはほんの指標に過ぎないとみなされるべきである。
【0078】
本明細書に開示された組成物のpHは、甘味料ブレンドの味に悪影響を及ぼさないいかなるpHであってもよい。例えば、pHは、約1.8から約8まで、または約2から約5までの範囲であってもよい。当業者には、組成物のpHに依存して使用する各甘味料の好適な濃度を特定することが可能であろう。
【0079】
1以上の低効力甘味料(単数または複数)の1以上の高強度甘味料(単数または複数)との使用は、例えば、1以上の高強度甘味料(単数または複数)単独の使用との比較で、甘味付けされた組成物における1以上の甘味特性を改善し得る。よって、本明細書に開示された甘味付けされた組成物は、例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が存在しない場合の甘味付けされた組成物に比べて1以上の改善された甘味特性を有し得る。モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドから選択される1以上の甘味増強剤(単数または複数)の使用は、例えば、モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上に代えてのラカンカ抽出物などの異なる甘味増強剤の使用との比較で、甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性を改善し得る。
【0080】
本明細書に開示された甘味付けされた組成物は、例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が存在しない場合の甘味付けされた組成物に比べて、または異なる甘味増強剤を含む甘味付けされた組成物に比べて、よりスクロースに類似した1以上の甘味特性を有し得る。
【0081】
本明細書に開示された甘味付けされた組成物は、例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が存在しない場合の甘味付けされた組成物に比べて、または異なる甘味増強剤を含む甘味付けされた組成物に比べて、弱化した長引く甘い味を有し得る。
【0082】
本明細書に開示された甘味付けされた組成物は、例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が存在しない場合の甘味付けされた組成物に比べて、または異なる甘味増強剤を含む甘味付けされた組成物に比べて、弱化した苦い味および/または渋い味および/または金属的な味および/または甘草様の味を有し得る。
【0083】
本明細書に開示された甘味付けされた組成物は、例えば、1以上の低効力甘味料(単数または複数)が存在しない場合の甘味付けされた組成物に比べて、またはまたは異なる甘味増強剤を含む甘味付けされた組成物に比べて、強化された甘さのインパクトを有し得る。
【0084】
比較の甘味付けされた組成物は、それが1以上の低効力甘味料(単数または複数)のいずれも包含しないことを除いて同一であるか、またはそれが1以上のモグロシド(単数または複数)(例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上)に代えて異なる甘味増強剤を含むことを除いて同一である。
【0085】
使用
その甘味認識閾値と同等かまたはそれを超える量で、および/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の他の甘味料を含む組成物の甘さを増強させるための、1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせの使用が、本明細書で提供される。1以上の高強度甘味料(単数または複数)と1以上の低強度甘味料(単数または複数)との組み合わせは、1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する。1以上の高強度甘味料(単数または複数)、1以上の低効力甘味料(単数または複数)、および、少なくとも1の他の甘味料は、本明細書に開示されたいずれの態様に従うものであってもよい。
【0086】
その甘味認識閾値と同等かまたはそれを超える量でおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量で存在する少なくとも1の他の甘味料を含む組成物の甘さを増強させるための、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上の使用が、本明細書で提供される。
【0087】
よって、甘味付けされた組成物の甘さを増強させるための方法であって、その甘味認識閾値より上の甘さを有するおよび/または約1.5%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超える量の少なくとも1の甘味料を含む、ベース組成物を提供すること、および、少なくとも1の低効力甘味料、少なくとも1の高強度甘味料を添加することか;または、1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上を添加することを含む、前記方法が提供される。最終組成物の各構成要素は、所望の最終組成物を得るためにいかなる順序で添加されてもよい。方法は、例えば、構成要素を混ぜることを含んでもよい。
【0088】
1以上の高強度甘味料、ならびに/または1以上の高強度甘味料と1以上の低効力甘味料との組み合わせ(例として、甘味改変組成物)、ならびに/または1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、例えば、甘味付けされた組成物の甘さを、約1.0%(w/v)スクロース当量以上増加させ得る。例えば、高強度甘味料(単数または複数)、ならびに/または高強度甘味料(単数または複数)と低効力甘味料(単数または複数)との組み合わせ、ならびに/または1以上のモグロシド(単数または複数)、例えばモグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドの1以上は、甘味付けされた組成物の甘さを、約1.1%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超えて、または約1.15%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超えて、または約1.2%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超えて、または約1.25%(w/v)スクロース当量と同等かまたはそれを超えて増加させ得る。組成物は、例えば、少なくとも1の他の甘味料を含む組成物であり得る。
【0089】
1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性を改善するための、1以上の低効力甘味料(単数または複数)の使用もまた、本明細書で提供される。1以上の高強度甘味料(単数または複数)および1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、約1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する量で使用される。
【0090】
よって、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を1.5%(w/v)スクロース当量未満の甘さを有する量で含む甘味付けされた組成物の、1以上の甘味特性を改善するための方法であって、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を提供すること、および1以上の低効力甘味料(単数または複数)を添加することを含む前記方法が提供される。最終組成物の各構成要素は、所望の最終組成物を得るためにいかなる順序で添加されてもよい。方法は、例えば、構成要素を混ぜることを含んでもよい。
【0091】
高強度甘味料を含む甘味付けされた組成物の1以上の甘味特性の改善は、例えば、よりスクロースの甘味特性に類似した甘味特性を提供する。
【0092】
甘味特性は、フレーバープロファイル(味覚プロファイル)を指してもよく、これは、所与の化合物のフレーバーおよび知覚属性の強度を指す。甘さの例示のフレーバー属性は、甘味強度、苦さ、黒甘草様、等々である。
【0093】
甘味特性は、一次的なプロファイルを指してもよく、これは甘さの知覚の経時的な変化を指す。あらゆる甘味料は、特有の出現時間(AT)および消滅時間(ET)を呈する。大部分の高効力甘味料は、炭水化物甘味料とは対照的に、長期のET(長引き)を見せる。一般的に、検出されるスクロース当量は、最大応答レベルまでスパイクし、次に経時的に漸減する。漸減に長くかかるほど、化合物からの検出された甘さの長引きは大きくなる。
【0094】
ある態様において、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の長引く甘い味を弱化させるために使用され得る。言い換えれば、低効力甘味料は、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の消滅時間(ET)を減少させることに使用され得る。これは、組成物が初めに摂取されたかもしくは吐き出された後の口内の甘さの味の望ましくない長引きに関連する。長引く甘い味は、例えば、初めに検出された後に甘さの味が残存する時間の長さ、初めに検出された後に甘さの味の強度がどれだけ迅速に減少するかまたは薄れるか、および初めに検出された後の甘さの味の強度を指す。1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、例えば、初めに検出された後に甘さの味が残存する時間の長さを減少させ、および/または初めに検出された後に甘さの味が減少するスピードを増加させ、および/または初めに検出された後の甘さの味の強度を減少させる。
【0095】
ある態様において、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物苦い味および/または渋い味および/または金属的な味および/または甘草様の味を弱化させるために使用され得る。用語「甘草様の」は、化合物の甘い味を指す。
ある態様において、1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、1以上の高強度甘味料(単数または複数)を含む甘味付けされた組成物の甘さのインパクトを強化するために使用され得る。甘さのインパクトは、甘さが初めに検出される前の時間の長さ、および甘さが初めに検出されるときの強度に関連する。1以上の低効力甘味料(単数または複数)は、例えば、甘さが初めに検出される前の時間の量を減少させ得、および/または甘さが初めに検出されるときの強度を増加させ得る。
甘味度および本明細書に記載の他の甘味特性は、訓練された専門家のテイスティングパネルによって、例えば下記の例に記載されたとおりに、評価され得る。
【0096】
製造方法
本明細書に開示された組成物を作る方法が、さらに本明細書で提供される。組成物は、本明細書に開示されたいずれの態様に従うものであってもよい。
方法は、所望の組成物の各構成要素を所望の割合で組み合わせること、および任意に、構成要素を混ぜ合わせることを含み得る。構成要素は、いずれかの好適な順序で組み合わせられおよび混ぜられ得る。
【0097】
当業者は、組成物の性質および所望の甘さの度合いおよび特性に依存して、組成物を作るための好適な方法(例として、構成要素を組み合わせるかまたは混ぜるのに好適な順番)を特定できるであろう。方法は、例えば、所望のベース組成物を提供すること、およびそれに甘味料を添加することを含み得る。
【0098】
本明細書に開示された甘味料の各々は、合成プロセスによって、または生物学的(例として、酵素)プロセスもしくは発酵プロセスによって作られてもよく、あるいは植物または果実などの天然源から単離されてもよい。
プロセスは、例えば、少なくとも1のモグロール前駆体基質をモグロール経路の酵素と接触させることを含んでもよい。酵素は、例えば、細胞溶解物中に存在するか、または宿主細胞(例として、組換え宿主細胞)中に存在するものであってもよい。酵素は、例えば、UGT酵素(UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ)であってもよい。
例えば、モグロシド化合物は、WO 2013/076577またはWO 2014/086842(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示された生合成経路によって作られてもよい。
【0099】
例えば、モグロシドVは、Itkin et al.「The biosynthetic pathway of the nonsugar, high-intensity sweetener mogroside V from Siraitia grosvenorii」、PNAS、2016年11月7日、E7619~E7628およびWO 2016/038617(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示された生合成経路によって作られてもよい。
例えば、モグロシド化合物は、別のモグロシド化合物を改変すること(例として、グリコシド含有量を再分配すること)によって作られてもよい。例えば、モグロシド化合物は、別のモグロシド化合物のグリコシド含有量を、WO 2014/150127(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたとおりの酸または酵素を使用して再分配することによって作られてもよい。
【0100】
プロセスは、例えば、植物または果実などの天然源から1以上の甘味料化合物を抽出することを含んでもよい。これに、例えば、高強度甘味料、低強度甘味料または甘味料の混合物(例として、モグロシドの混合物などの高強度甘味料の混合物)を生み出すための精製ステップが続いてもよい。抽出物は、例えば、比較的高い含有量のモグロシドVおよび/または11-O-モグロシドV(例として、少なくとも約30wt%または少なくとも約40wt%)を有し得る。これには、例えば、分画化、例えばフラッシュカラムクロマトグラフィーによるもの、が関与し得る。1以上のモグロシド化合物(例として、モグロシドV)は、ラカンカ(Siraitia grosvenorii)果実から得てもよい。
【0101】
標的化合物(例として、標的モグロシド化合物)を作るために発酵プロセスが使用される場合、標的を、水性の発酵反応媒体から適切な溶媒(例として、ヘプタン)を使用して抽出することができ、これに分別蒸留が続く。各分画の化学組成はGC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)によって定量的に測定することができる。分画は、フレーバーまたは他の用途における使用のための所望のモグロシド化合物(例として、モグロシドVおよび11-O-モグロシドV)を作り出すために、ブレンドすることができる。
最終ブレンド製品の受入可能性の検証は、基準モグロシドフレーバリング製品(例えば、商業的な供給元から得られる既存の天然フレーバリング商品)との直接比較によって実施することができる。
【0102】

例1
方法
Blue California (Tomas, Rancho Santa Margarita, California)(抽出物4)、Azile LCC (Rolling Hills Est, California)(抽出物1および2)およびChr. Olesen Group (Gentofte, Denmark)(抽出物3)から得られたラカンカ果実抽出物を、抽出物中に存在する化合物を同定するために分析した。
16.52μgの試料を25.0mLの溶媒(アセトニトリル/水 20/80 v/v)中に溶解させることにより、抽出物の試料溶液を調製した。この溶液から、100μLをHPLCバイアル中へと移し、900μLの溶媒を添加した(66.1ppm溶液)。試料溶液から、10μLをHPLCバイアル中へと移し、990μLの溶媒を添加した(6.61ppm溶液)。66.1および6.61ppmの両溶液を、LC-MS上へ2回注入した。
【0103】
9.22mgのモグロシドV(AAPIN chemicals Ltd., Oxfordshire, UKから得られた98.5%のモグロシドV)を10.0mLの溶媒(アセトニトリル/水 20/80 v/v)中に溶解させることにより、モグロシドVのキャリブレーション(基準)溶液を作った。貯蔵液を、冷蔵庫内に保管し、および、モグロシドVの溶液を様々な濃度(0.11ppm、0.34ppm、1.02ppm、3.07ppmおよび9.22ppm)で調製するために使用した。これらの溶液もまた、LC-MS上へ2回注入した。
【0104】
2μLの各溶液を、40℃で、Acquity C18 BEH 1.7μm 150×2.1mmカラム(Waters, Milford, Massachusetts, United States)上へ注入した。化合物を、アセトニトリルと水中0.1%ギ酸との混合物を使用して、20%アセトニトリルから出発して14分間かけて50%アセトニトリルまでで上げて溶離させた。勾配を、1分間かけて初期値に戻し、および5分間安定させた。流速は、運転の間中を通して400μLに設定した。
溶離した化合物を、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を使用して検出した。質量分析計は、ESIネガティブモードにおいて作動させ、150~2000Amuを分解能70000で測定した。ガス流速は、シースを60、補助(aux)を20、およびスイープを3とした。キャピラリー温度および補助ガスヒーター温度は、それぞれ380℃および400℃に設定した。
【0105】
溶液中の各構成要素の%を、以下の等式を使用して算出し、および上に記載したキャリブレーションモグロシドV(基準)溶液の様々な濃度の曲線に対してキャリブレーションした。
【数1】
比= %構成要素
面積= 試料中の構成要素の面積(2回の注入からの平均面積)
V= 試料溶媒体積のリットル
d= 試料の希釈(資料溶液からバイアルへの)
傾斜= b(切片)=0でのモグロシドVのキャリブレーション曲線からの傾斜
SW= サンプル重量のmg
【0106】
結果
図1は、ラカンカ抽出物(下記の表1の抽出物2)のクロマトグラムを示す。
図1は、異なる4つのラカンカ抽出物の組成を示す。モグロシドVは、4つの抽出物全てにおいて最も高い濃度を有するモグロシドである(抽出物1中で約45wt%)。
【0107】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0108】
例2
方法
約68wt%のモグロシドを含有するAzile LCC(Rolling Hills Est, California)から得られたラカンカ果実抽出物(上記の例1の抽出物1)を、逆相(C-18)フラッシュクロマトグラフィーにより分画化した。
水中のメタノール(MeOH)の混合物を使用して、30%MeOHから出発して30~80%MeOHの線形勾配がこれに続き、次に最終的にカラムを80%MeOHでフラッシングして、化合物を溶離させた。溶媒は、分離手順全体にわたって30ml/分の流速で導入した。溶離した化合物を、210nmに設定したUV検出器およびコロナ光散乱検出器で可視化させた。上記の例1に記載された等式を使用して、抽出物中の各構成要素の%を算出した。
【0109】
収集した分画を、下記の表2に従ってプールし、および粉末へとフリーズドライした。下記の表2で与えられたとおりの様々なプールされた分画に対応する粉末を、5%スクロースの上に重ねて様々な濃度で溶解させた。これらの試料の味は、3名の専門家パネリスト(訓練されたフレーバリスト)によって、5%スクロースの対照と比較された。これにより、5%スクロース中において見られた各分画または分画のプールの甘味増強効果を決定した。
【0110】
結果
結果は、下記の表に記される。抽出物全体を、22分画に分けて収集した。分画1~10は、モグロシドVを含有しない。
【0111】
【表2-1】
【表2-2】
【0112】
分画1~10および19~22は、ラカンカ果実の特徴であるオフテイストを有し、甘味の増強の影響力を有しない。
よりよい甘味増強効果は、主にモグロシドを含有する分画12~17内で観察された。分画14および15などの、分画がほとんど純粋なモグロシドVを有する場合には、長引く、雑味がある、発酵した様なノートがより目立つ。よって、純粋なモグロシドVは、本来の長引くオフテイストを有する。
【0113】
分画12は最もすっきりした甘味であったが、少ないパーセンテージのモグロシドVに起因して、より先行が少なかった。分画13は、より良い甘味の質を有するが、わずかにより高い渋味を有する。11-O-モグロシドVおよびモグロシドVは、それらの2つの分画中の2つのメジャーなモグロシドであるが、異なる比率である(F12 モグロシドV:11-O-モグロシドVは4:9であり、およびF13 モグロシドV:11-O-モグロシドVは13:3である)。
モグロシドVは極めて甘く、スクロースよりも425倍甘いと判定され、一方、11-O-モグロシドVは、スクロースよりも84倍甘いと見なされた。
【0114】
例3
方法
約68wt%のモグロシドを含有するAzile LCC(Rolling Hills Est, California)から得られたラカンカ果実抽出物(上記の例1の抽出物1)を分画化し、および各分画の組成を、例1との関連で上に記載したクロマトグラフィー方法によって決定した。
各分画を5%スクロースの溶液と組み合わせ、これらの試料の味は、3名の専門家パネリスト(訓練されたフレーバリスト)によって、5%スクロースの対照と比較された。
【0115】
結果
図3は、抽出物の分画11~20の化学組成を示す。
【0116】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0117】
表4は、分画12~15についてのテイスティングの結果を示す。結果は、例2において得られた結果に類似している。
【0118】
【表4】
【0119】
例4
Agilent 1100分取HPLCシステムをPhenomenex Luna C18 (2)カラム(5μm、210×21.4mm)とともに使用してラカンカ抽出物からモグロシドVおよび11-O-モグロシドVを単離し、および様々な濃度の溶液を形成するために組み合わせた。
これらの溶液を、5%(w/v)スクロースおよび0.03%(w/v)クエン酸を含有する溶液と組み合わせたことで、試験試料が与えられ、およびこれは甘味に敏感な味覚パネルの5名の専門家(訓練されたフレーバリスト)によって評価された。
結果は、下記の表5に示される。
【0120】
【表5】
【0121】
驚くべきことに、11-O-モグロシドVをモグロシドVとブレンドすることは、モグロシドV単独に比べて甘味の質を改善するということが見出された。モグロシドVに重ねた11-O-モグロシドVは、甘味の長引きを低減させる(後の方の甘さの味を弱める)ことおよび渋くて苦い後味をモグロシドV単独に比べて低減させることを助けた。よって、11-O-モグロシドVは、甘さを、モグロシドV単独よりも、より砂糖に類似する味にした(すなわち、より砂糖に近い一時的なプロファイルを提供する手助けをする)。これは、より高度な甘さを得るためにより高い濃度のモグロシドVを使用しつつ、この甘味料をより高い濃度で使用することと関連する不都合(例として、長引く、苦い、および渋い後味)を排除するすることを可能にする。モグロシドVが最も強力なモグロシド甘味料であり、11-O-モグロシドVは大幅に低い効力のものであることを考慮すると、これは驚くべきことであった。
【0122】
例5
甘味に敏感な味覚パネルが、甘味料の混合物(「混合物1」)の溶液の甘さを、スクロース当量を決定するための濃度の範囲にあるスクロース溶液との関連で、ランク付けした。混合物は、例2の分画11~18の組み合わせであり、および8.16wt%の11-O-モグロシドVおよび61.6wt%のモグロシドVを含有した。
結果は、下記の表6に示される。
【0123】
【表6】
【0124】
データは、混合物1が、1%スクロース当量未満の甘さ(7名のパネリストにより決定されたものとして)を有するということを実証しており、これはFEMAにより「本質的に甘くない」と認められる。したがって、混合物1は、これらのレベルではそれが検出可能な甘さを有しないため、記された濃度での甘味改変剤またはブレンドとしての使用のために好適である。
【0125】
1%(35ppm)に近い等甘味閾値を有する混合物1の濃度を選択し、および5%(w/v)スクロース溶液へ添加した。この溶液を、次に5、6、6.5および7%(w/v)スクロース溶液に対してランク付けした。これを、45ppmラカンカ抽出物について繰り返した。各溶液の平均スコアを決定した。結果は、下記の表7に示される。
【0126】
【表7】
【0127】
それらが添加された5%(w/v)スクロース溶液における甘さの増加は甘味料単独の甘さを超えていたので、混合物1およびラカンカ抽出物は、甘味増強剤として作用するということが、驚くべきことに見出された。
【0128】
5%スクロースおよび0.03%クエン酸を含有する溶液中で、様々な濃度の混合物1の味を、3名の専門家パネル(訓練されたフレーバリスト)によって試験した。味は、例2で使用したラカンカ抽出物(Azile LCC(Rolling Hills Est, California)から得られており(上記の例1の抽出物1)、および約68wt%のモグロシドを含有する)と比較した(同じ5%スクロースおよび0.03%クエン酸溶液と組み合わせて)。結果は、下記の表8に示される。
【0129】
【表8】
【0130】
全体的に、混合物1は、ラカンカ抽出物よりも、より良い甘さの質(より不快感が少ない、より甘い)を提供する。
【0131】
例6
甘味に敏感な味覚パネルが、様々な甘味料(モグロシドV、モグロシドIV、シアメノシド、ネオモグロシド、11-O-モグロシドV)の溶液の甘さを、スクロース当量を決定するための濃度の範囲にあるスクロース溶液との関連で、ランク付けした。甘味料は、Agilent 1100分取HPLCシステムをPhenomenex Luna C18 (2)カラム(5μm、210×21.4mm)とともに使用して得られた。結果は、表9~13に示される。
【0132】
【表9】
【0133】
【表10】
【0134】
【表11】
【0135】
【表12】
【0136】
【表13】
【0137】
データは、モグロシドV(25ppm)、モグロシドIV(30ppm)、シアメノシド(25ppm)、モグロシドV(25ppm)と11-O-モグロシドV(3ppm)およびネオモグロシド(30ppm)との組み合わせが全て、1.5%スクロース当量を下回る甘さ(7名のパネリストにより決定されたものとして)を有するということを実証しており、これはFEMAにより「本質的に甘くない」と認められる。したがって、これらの化合物および混合物は、これらのレベルではそれが何ら検出可能な甘さを有しないため、記された濃度での甘味改変剤またはブレンドとしての使用のために好適である。
【0138】
試験する甘味料の濃度を、1%に近い等甘味閾値で選択し、および5%(w/v)スクロース溶液へ添加した。これらの溶液を、次に5、6、6.5および7%(w/v)スクロース溶液に対してランク付けした。各溶液の平均スコアを決定した。結果は、下記の表14に示される。
【0139】
【表14】
【0140】
それらが添加された5%(w/v)スクロース溶液における甘さの増加は甘味料単独の甘さを超えていたので、モグロシドV、シアメノシド、ネオモグロシドおよびモグロシドVは、甘味増強剤として働くということが、驚くべきことに見出された。
【0141】
5%スクロースおよび0.03%クエン酸を含有する溶液中で、これらの甘味料の味を、3名の専門家パネル(訓練されたフレーバリスト)によって試験した。味は、例2で使用したラカンカ抽出物(Azile LCC(Rolling Hills Est, California)から得られており(上記の例1の抽出物1)、および約68wt%のモグロシドを含有する)と比較した。モグロシドIV、シアメノシドおよびネオモグロシドは全て、5%スクロースおよび0.03%クエン酸へ添加したときの甘味の質の点でラカンカ抽出物よりも良い。これらの3つの化合物は、より少ない長引く甘い味を伴って、砂糖の様な味を提供する。シアメノシドは、「より甘いボディ、より甘い、より丸くてややより先立つ、およびより丸い持続する甘味」を有するとされた。モグロシドIVは、「良好でありモグロシドVと類似する甘さ」を有するとされた。ネオモグロシドは、「甘さ、しかしわずかに苦い後味」を有するとされた。モグロシドVについての結果は、表15に示される。
【0142】
【表15】
【0143】
概して、テイスターは、80%のモグロシドVがラカンカ抽出物と同じような完全な丸い甘味プロファイルを有しないことに合意した。80%のモグロシドVは、砂糖/酸/水の溶液へ適用されたときには、より酸性味である。
【0144】
例7
方法
モグロシドV、シアメノシド、モグロシドIVおよびネオモグロシドは、Agilent 1100分取HPLCシステムをPhenomenex Luna C18 (2)カラム(5μm、210×21.4mm)とともに使用して得られた。
モグロシドV、シアメノシド、モグロシドIVおよびネオモグロシドを、5%スクロースおよび0.03%クエン酸を含有する溶液へ、それぞれ25ppm(モグロシドV)、25ppm(シアメノシド)、30ppm(モグロシドIV)および30ppm(ネオモグロシド)の濃度で各々添加した。
【0145】
これらの試験溶液は、7名の専門家パネルによってテイスティングされた。甘い味の様々な側面(先行した甘味、全体的な甘味、長引く甘味、渋い、揮発性オフテイスト)について、各パネリストは、試験溶液を、ベース溶液(5%スクロースおよび0.03%クエン酸の溶液)との比較でスコア付けした。0のスコアは、味覚側面が同じであったことを表しており、1はわずかにより高いことを表し、2はより高いことを表し、3は大幅に高いことを表し、-1はわずかにより低いことを表し、-2はより低いことを表し、および-3は大幅に低いことを表す。各味覚側面について各試験溶液の平均スコアを算出した。結果は、下記の表16に示される。
【0146】
【表16】
【0147】
例8
上記に示されるとおり、シアメノシド、ネオモグロシドおよびモグロシドIVは全て、モグロシドVに比べて、類似のまたはより良い、5%スクロースおよび0.03%クエン酸に重ねた甘い味の質を有する。したがって、これらのモグロシドの各々を加えた11-O-モグロシドVの味は、表17に示されるとおり評価される。
【0148】
【表17】
【0149】
例9
様々なミルクまたはヨーグルトベース中における11-O-モグロシドV有りおよび無しでのモグロシドVの味は、表18に示されるとおり評価される。ミルクおよびヨーグルト中のモグロシドVについての等甘味閾値もまた評価される。
ミルクベース(2%脂肪)は、2%脂肪ミルクおよび5%スクロースを包含する。無脂肪ヨーグルトベースは、プレーン無脂肪ヨーグルトおよび5%スクロースを包含する。全脂肪ヨーグルトベースは、プレーン全脂肪ヨーグルトおよび5%スクロースを包含する。ミルクおよびヨーグルトには、脂肪、タンパク質および他の成分に起因して、より高い用量レベルが使用される。ラカンカ抽出物は、これらの適用のために75ppmで使用される。
【0150】
【表18】
【0151】
例10
Siraitia grosvenoriiからの新規のマイナーなククルビタングリコシドの同定
イントロダクション
Siraitia grosvenorii (Swingle) C. Jeffrey ex Lu et Z. Y. Zhangは、中国南部およびタイ北部に固有のウリ(Cucurbitaceae)科の多年生つる草本である。一般には「ラカンカ」として知られているS. grosvenoriiの果実は、中国において何百年もの間、呼吸器感染症、気管支炎、胃炎、便秘等々の処置として、伝統医薬に使用されている。近年の薬理学的研究は、S. grosvenorii抽出物またはその構成要素が、抗菌、抗炎症、抗糖尿病、抗がん、および免疫賦活などの様々な生物学的活性を保有しているということを確認した[1]。ラカンカは、中国において飲食物中の甘味料として使用されている。それはいまや、世界中にわたって最もよく知られている天然の高強度甘味料の1つである。ククルビタングリコシドモグロシドVがS. grosvenoriiの甘味の素として発見されて以来、これまでのところ、40種よりも多いククルビタントリテルペノイドがS. grosvenoriiから報告されている[1~4]。
【0152】
食品およびフレーバー業界の研究者らは、より良い甘味性能を持つ新規のモグロシドを見出すために、活発に発見しおよびより多くの新規化合物をモグロシドプールへと追加している[5~7]。既知の天然甘味料カテゴリ下の、より良い甘味性能を持つ新規の分子は、食品およびフレーバー業界に引く手数多であった。レバウジオシドM(レバウジオシドXとしても知られている)の商品化は良い例である。2010年に発見されたステビアからのマイナーな天然産物(0.1%未満)であるにもかかわらず、レバウジオシドMは、植物生物学、分子生物学および酵素工学における技術開発によるコスト低減の恩恵を受けてすぐに商品化段階へと進んだ[8、9]。レバウジオシドMは、一般に安全と認識される(Generally Recognized as Safe)(GRAS)というステータスに関してUS FDAから2013年、2014年および2017年に異議なしの通知(Letter of No Objection)を受けた(GRN番号473、512および667)[10~12]。
【0153】
我々は、市販のラカンカ抽出物[13]を使用して、最もよく機能するモグロシドまたはそれらの組み合わせを探し求めるための調査を実施してきた。本明細書では、我々はS. grosvenoriiからの2つの新規のマイナーなククルビタングリコシドについて報告し、および、異なる混合時間でのHSQC-TOCSY実験に基づいた我々の新規のオリゴ糖解明戦略を強調する。
【0154】
材料および方法
一般実験手順
旋光度を、Rudolph Autopol IV旋光計で測定した。NMRスペクトルを、Bruker DRX Avance 300または500分光装置上で記録した。化学シフトは、残留溶媒ピークを基準にしてδ(ppm)で与えられる。低圧クロマトグラフィーを、Biotage Flash System SP1上で行った。分取HPLCを、Agilent 1100分取HPLCシステム上でPhenomenex Lunar C18(2)カラム(5μm、210×21.4mm)または TSKgel Amide-80(5μm、300×21.5mm)(Tosoh Bioscience LLC)を用いて行った。分析HPLCを、Corona CAD検出器を備えたAgilent 1100分析HPLCシステム上で行った。LC-MSを、Waters 2795分離モジュールと連動させたWaters Q-Tofマイクロ質量分析計を使用して行った。
【0155】
植物材料
ラカンカ抽出物(商品名Swingle、~60%のモグロシド)を、Blue California Co., Ltd.から購入した。
器具
クロマトグラフィー条件:クロマトグラフィーを、Waters Acquity H UPLC上で行った。分離は、25Cで、1.0×100mmの、粒子径1.8mmを持ち0.2mm前置フィルターを備えたAcquity UPLC HSS T3カラム(Waters)、を使用して実行した。溶媒Aは水、溶媒Bはアセトニトリルであり、両方の溶媒は0.1%ギ酸を含有した。注入体積を10μlに設定した。クロマトグラフィー流速は200μl/分であった。試料を、以下の線形勾配を使用してLCカラムから溶離させた(カーブナンバー6): 0~40分:90%A~30%A; 40~45分:30~10%A; 45~50分:10%A; 50~51分 10%~90%A、 51~55分 90%Aを再平衡化のために。
【0156】
質量分析法
U-HPLCシステムを、ハイブリッド四重極直交飛行時間型(TOF)質量分析計(hybrid quadrupole orthogonal time-of-flight (TOF) mass spectrometer)(SYNAPT G2 HDMS, Waters MS Technologies, Manchester, UK)と連動させた。質量分析計は、ポジティブエレクトロスプレーイオン化モード(ESI)にて作動させた。サンプリングコーン電圧40、キャピラリー電圧0.7kv、ソース温度40℃、脱溶媒温度450℃、脱溶媒ガス流量800L/h、およびコーンガス流量50L/hを最適化した。ロイシンエンケファリンを、m/z 556.2771でのロックマス[M+H]-として使用した。外部機器キャリブレーションのためにギ酸ナトリウムを使用した。
【0157】
精製
3gのラカンカ抽出物を15mLの水中に溶解させ、および予め平衡化させたC-18 Snapカートリッジ(KP-C18-HS、120g、132mLカラム体積)上へロードした。使用した勾配系(A:水;B:メタノール)は:30% 2CV、30%~80% 10CV、80%~100% 2CV、100% 2CVであった。流速は、30mL/分であった。分画を、試験管あたり27mLで収集した。4回のローディングの合計12gのラカンカを分画化した。標的モグロシドを持つ分画を位置付けるために、全ての分画を分析HPLCによって分析した(アイソクラチック移動相:水中24%アセトニトリル。カラム:Luna C18 5μm 4.6×150mm)。イソ-モグロシドVIおよび11-エピ-モグロシドVを持つ分画36~38を組み合わせて、溶媒を蒸発させた。分画36~38のさらなる分取HPLC精製は、イソ-モグロシドVI(1、22mg)および11-エピ-モグロシドV(2、17mg)をもたらした(水中24%アセトニトリル、10mL/分、それぞれ保持時間13.1分および14.3分)。
【0158】
11-オキソ-モグロシドV(4)およびネオモグロシド(3)は、11-オキソ-モグロシドVをメジャーな構成要素として、主にフラッシュ分画39~40中にあった。逆相C-18分取HPLC上で、ネオモグロシドは、11-オキソ-モグロシドのテールショルダー(tail shoulder)として出現した(水中24%アセトニトリル、10mL/分、それぞれ保持時間17.0分および18.0分)。ピークフロント(peak front)の収集により、105mgの化合物11-オキソ-モグロシドV(4)が与えられた。ショルダーのネオモグロシド(3、15mg)のさらなる精製は、TSKgel Amide-80上での分取HPLC(水中65%アセトニトリル、20mL/分、rt 15.5分)によって達成された。
【0159】
イソ-モグロシドVI(1):白色アモルファス粉末;[α]20 D -8.2 (c 0.12,MeOH);H NMRおよび13C 分光分析データについては表1を参照;HRESIMS:m/z 1449.7075 [M+H] (C6611334についての計算値1447.7113、Δ2.6ppm)。
エピ-モグロシドV(2):白色アモルファス粉末;[α]20 D +4.5 (c 0.13,MeOH);H NMRおよび13C 分光分析データについては表1を参照;HRESIMS:m/z 1287.6558 [M+H] (C6010329についての計算値1287.6585、Δ2.1ppm)。
【0160】
糖の酸加水分解および絶対配置の決定
化合物1(1.2mg)または2(1.8mg)を、1mLの1M HCl中で80℃にて3時間インキュベートした。加水分解後に、溶液をEtOAc(1mL×3)で抽出した。残存する水溶液を、窒素ガスを吹きかけることにより蒸発させ、および凍結乾燥させた。残渣中の糖の絶対配置を、そのO-シリル化された誘導体のGC-MS分析、および、D-グルコースおよびL-グルコース標準の誘導体と比較することによって決定した。手短にいうと、糖残渣、D-グルコース(2mg)またはL-グルコース(2mg)をピリジン(0.5mL)中に溶解させた。ピリジン(0.5mL)中の0.1M L-システインメチルエステル塩酸塩(Aldrich, Milwaukee, WI)を、溶液中へと添加した。混合物を60℃で2時間保ち、および窒素ガスを吹きかけることによって乾燥させた。残渣に1-トリメチルシリルイミダゾール(Fluka, Buchs, Switzerland)(0.5mL)を添加し、および60℃下で1時間インキュベートした。n-ヘキサンおよび水(各1.0mL)を添加することによって混合物を分離した。
【0161】
n-ヘキサン抽出物を、GC-MSによって以下の条件下で分析した:キャピラリーカラムHP-5MS(30m×0.25mm×0.25μm, Agilent);カラム温度、180~230℃ 5℃/分の傾きにて;注入温度、250℃;担体、Heガス;スプリット比、20:1。O-シリル化されたD-グルコースおよびL-グルコースの誘導体は、それぞれ16.02および16.39分の保持時間を示した。保持時間およびコクロマトグラフィーを比較することにより、1および2の酸加水分解後の糖残基はD-グルコースであると決定された。
【0162】
NaBHでの11-オキソ-モグロシドVの還元
25mgの11-オキソ-モグロシドV(4)を、50%ジオキサン中に溶解させ、これに20mg NaBHを添加し、および50℃で3日間加熱した。反応の進行をモニターするために、反応混合物を定期的にHPLCによって分析した。反応の後、混合物を酢酸によって酸性化し、および、窒素ガスを吹きかけることによって乾燥まで濃縮した。残渣を、水中に再溶解させ、および、予め平衡化させたC-18 SPEカラム中に通した。SPEカラムからのメタノール溶離液を濃縮させた。残渣を次に、セミ分取HPLCによって分離した。2つの還元産物は、分析HPLC上のLS-MS分析およびコクロマトグラフィーにより、単離されたモグロシドVおよび11-エピ-モグロシドVと同じ保持時間および分子量を有していた。1-Dおよび2-D NMRデータでもまた、2つの還元産物の構造がモグロシドVおよび11-エピ-モグロシドVであったということを確認した。
【0163】
結果および考察
イソ-モグロシドVI(1)および11-エピ-モグロシド(2)の単離および解明
市販のラカンカ抽出物を60%モグロシドとともにLC-MSで調査する過程の間に、抽出物中における6または5の糖部位を持った数種のモグロシドが、我々の注意を引いた(図2および3)。モグロシドVおよびVI異性体の甘味の特質についての報告がほとんどなかったので、我々は、我々での評価のためにこれらの異性体を精製および単離することにした。抽出物中の1、2、3および4の濃度は、汎用型Corona検出器によると、それぞれ0.8%、0.5%、0.6%、4.9%であると見積もられた。フラッシュクロマトグラフィーシステム上で分画化した後、これに続いて分取HPLC精製を行い、標的とした4つのモグロシド1~4を精製し、およびイソ-モグロシドVI(1)、11-エピ-モグロシド(2)、ネオモグロシド(3)、11-オキソ-モグロシドV(4)であることを決定づけた。
【0164】
1の分子式は、そのHR-ESI-MSスペクトルデータ([M-H]m/z, 1447.6957、C6611134についての計算値1447.6957)によって、C6611234であると推定された。1のNMRスペクトルデータは、六糖トリテルペノイドサポニンの構造を示唆した:66個の炭素のうちの30個は、トリテルペノイドアグリコンに、および66個のうちの36個は6つのヘキソース部位に割り当てられた。1の13CおよびH NMRスペクトルは、7つのシングレット三級メチルのシグナル、ダブレット二級メチルおよびオレフィン性メチンを示し(表19)、これは、典型的な(24R)-ククルビタ-5-エン-3β,11α,24,25-テトラオールモグロールアグリコンを示唆した。1のモグロールアグリコンは、そのH、13C、および2D(COSY、TOCSY、HSQCおよびNOESY)NMRデータの詳しい分析、ならびにモグロシドV標準のNMRデータとの比較によって、さらに確認された。
【0165】
【表19-1】
【0166】
【表19-2】
【0167】
1の水溶性酸加水分解産物のGC-MS分析は、D-グルコースが1の構造中の唯一の単糖であったことを示した。HSQCスペクトルは、6つのグルコシルのアノマー性クロスピークを明確に見せた:Glc-I(δC 106.8およびδH 4.73)、Glc-II(δC 105.1およびδH 5.10)、Glc-III(δC 103.7およびδH 4.85)、Glc-IV(δC 104.6およびδH 4.78)、Glc-V(δC 104.7およびδH 5.43)、Glc-VI(δC 104.8およびδH 5.03)。6つのグルコピラノシル全ての立体化学は、それらのアノマー性プロトンカップリング定数3JH1, H2から、β配置であると決定された。混合時間100msでのHSQC-TOCSY実験(hsqcgpmlph)から、グルコピラノシル炭素シグナルは6つの群に分割することができる(図4)。オリゴ糖解明は、ククルビタンアグリコンのC-3に結び付いたグルコピラノシルから出発した。そのアノマー性プロトン(δH 4.73, d, J = 7.9 Hz)とアグリコンC-3(δC 87.6)とのHMBC相関およびGlc-I H-1とアグリコンH-3とのNOESY相関に従って、Glc-IはアグリコンC-3と結合していると決定された。HSQC-TOCSYによって決定されたとおりのGlc-Iの13Cシグナル(δC 75.1, 77.8, 71.4, 77.2, 70.1)は、δC 62周辺の典型的なC-6炭素シグナルを欠いていた。Glc-I C-6(δC 70.1)の低磁場方向シフトは、個の位置でのグリコシル化を表していた。
【0168】
10から、30、60および100msの増加する混合時間でのHSQC-TOCSYスペクトル(hsqcgpmlph)を比較することによって、磁化移動リレーは、C-2からC-6へ徐々に広がっていることを観察することができる(図4)。 図4に示されるとおり、混合時間10ms下でのHSQC-TOCSYは、グルコピラノシルのH-1とC-2との相関を見せた。混合時間30ms下では、H-1とC-3との相関が、H-1とC-2との相関に加えて出現した。60ms下では、HSQC-TOCSY相関によって表されるとおりの炭素鎖は、C-4まで広がる。H-1とC-2~C-6との完全なHSQC-TOCSY相関は、100ms下で観察することができる。したがって、C-2~C-6のシグナルを、一義的に割り当てることができる。Glc-IIのGlc-Iへの結合は、アノマー性Glc-II H-1(δH 5.10, d, J=7.8 Hz)のGlc-I C-6 (δC 70.1)に対するHMBC相関によって確立された。Glc-IIの13Cシグナル(δC 75.0, 77.8, 71.5, 78.0, 62.5)は、Glc-II上のグリコシル化を示唆しなかった。結果として、アグリコンC-3上の糖鎖は、3-O-(β-D-グルコピラノシル(1→6)-β-D-グルコピラノシルであると提示された。
【0169】
アノマー性プロトン(δH 4.85, d, J=7.5 Hz)の、アグリコン炭素シグナル(δC 92.3)へのHMBC相関は、Glc-III H-1のアグリコンC-24への結び付きを表していた。Glc-IIIの13Cパターン(δC 81.6, 78.3, 71.4, 76.4, 70.0)は、C-2およびC-6グリコシル化シフトを示唆した。混合時間10、30、60および100msでのHSQC-TOCSYの分析は、配列割り当て、および、C-2およびC-6低磁場方向シフトの確認を、結果としてもたらした。Glc-IV は、Glc-IIIのC-6(δC 70.0)とのそのH-1(δH 4.78, d, J=7.5 Hz)HMBC相関から、Glc-IIIのC-6に結び付くと決定された。Glc-IVは、何ら置換されていない通常の末端グルコピラノシル(δC 74.5, 77.7, 71.2, 78.2, 62.4)であった。Glc-Vの、Glc-IIIのC-2への結合は、アノマー性Glc-V H-1(δH 5.43, d, J=7.8 Hz)のGlc-III C-2(δC 81.6)へのHMBC相関により確立された。Glc-V H-1(δH 5.43)の相対的に低磁場方向へのシフトは、類似の構造についての以前の報告に合致していた。通常はδC 70-71にあるC-4の13C 化学シフトは、Glc-Vシグナルのセット(δC 104.7, 75.4, 76.4, 82.0, 76.5, 62.6)においては欠如しており、これはC-4でのグリコシル化を示唆した。
【0170】
混合時間10、30、60および100msでのHSQC-TOCSYからのC-2~C-6リレーを観察することによって、δC 82.0は明確にGlc-VのC-4へと割り当てられた(図4)。Glc-VのC-4(δC 82.0)とGlc-VIのH-1(δH 5.03, d, J=7.7 Hz)との間のHMBCクロスピークは、Glc-VIがこの位置でGlc-Vに結合していたことをさらに確認した。Glc-VIは、さらなる糖鎖の枝を有しない末端グルコピラノシルであった。上記の証拠に基づいて、イソ-モグロシド(1)の構造は、3-O-β-D-グルコピラノシル(1→6)-β-D-グルコピラノシル-モグロール-24-O-β-D-グルコピラノシル-(1→6-[β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシル-(1→2)]-β-D-グルコピラノシルとして割り当てられた。
【0171】
化合物2は、そのHR-ESI-MSデータ([M-H] m/z, 1285.6429)から、C6010229の分子式を割り当てられた。2のオリゴ糖部分のNMRデータは、モグロシドVのそれらと重ね合わせることができた。HSQC、HMBC、NOESY、COSYおよびHSQC-TOCSYを包含する詳細な2-D NMR実験は、2がモグロシドVと同じ糖成分を有していたということを確認した。次に、アグリコンNMRデータへと注意を向けた。C-11とH3-19との間のHMBC相関は、モグロシドV(δC 77.8)と比べると顕著なC-11(δC 72.5)の高磁場方向シフトを明らかにした。2-D NMR実験によるアグリコンデータのさらなる割り当ては、モグロシドVのデータと比較するとC-8、C-10およびC-12上でメジャーな13C化学シフト変化が生じたことを示した(表19)。これは、C-11のα-OHではなくβ-OHを示唆した。2のβ-OH立体構造は、H-8とH3-18、19との;H-10とH3-28、H3-30との;H-11とH3-30との;H-17とH3-30との間のNOE相関によってさらに確立された。前に報告された1つの天然11-β-OHククルビタンおよび1つの半合成11-β-OHククルビタン[14, 15]があった。
【0172】
化合物2アグリコンの13C NMRデータは、ピリジン-d中で記録された半合成11-β-OHククルビタングリコシドのデータとよく一致していた[14]。Matsuda et al による天然11-β-OHククルビタンの13C NMRデータが、メタノール-d中で得られ、およびC-11、C-8、C-10およびC-12の化学シフトの点でかなり異なっていた。2の11-β-OH構造をさらに確認するために、2の半合成を、モグロシドVの11-β-OHおよび11-α-OH異性体への11-オキソ-モグロシドV(4)の化学的還元によって実施した。LC-MS、HPLCコクロマトグラフィーおよびNMRデータ分析から、半合成11-エピ-モグロシドVは、単離された11-エピ-モグロシドVと同一であると決定された。したがって、11-エピ-モグロシドV(2)の構造は、3-O-β-D-グルコピラノシル(1→6)-β-D-グルコピラノシル-11β-OH-モグロール-24-O-β-D-グルコピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→6)]-β-D-グルコピラノシルであると解明された。我々の知る限りでは、これが11-βヒドロキシル基を持つ天然モグロシドについての最初の報告である。
【0173】
オリゴ糖鎖解明のための異なる混合時間でのHSQC-TOCSY。
Gheysen et alは、異なる混合時間でのTOCSY実験を調査し、および、100msがD-グルコース、D-ガラクトースおよびD-マンノースを識別するための最適なスピンロック時間であると結論付けた[16]。彼らの結果を通して、我々は、スピンロック時間がD-グルコースのH-1の磁化移動効率に顕著に影響を及ぼす可能性があったということに気付いた。H-1とH-2乃至H-6との相関は、スピンロック時間が増加するにつれて徐々にH-6へと広がった。彼らの調査から着想を得て、我々は、HSQC-TOCSYのスピンロック時間を増加させることにより、磁化の移動の連鎖が広がるにつれてグルコースのH-1とC-2~C-6との相関がC-2からC-6へと徐々に広がるということを見ることができるはずだと仮定した。増加するスピンロック時間でのHSQC-TOCSYは、炭素配列の情報を知らせるはずであり、これはオリゴ糖解明および割り当てに極めて有用となるであろう。
【0174】
図4は、イソ-モグロシドVIの、混合時間10、30、60および100msでのHSQC-TOCSY(hsqcgpmlph)を示した。図4におけるクロスピークを、それらの積分により定量化し、および図5において比較した。ピーク強度(積分として提示される)は、一部の場合においては、それらのH-1からの距離の指標となり得た。例えば、混合時間30ms実験下では、全てのC-3ピークがC-2ピークよりも顕著に弱かった。しかしながら、60ms下では、C-3ピークはC-2ピークよりも大きくなった。正確な解明を確実にするため、炭素配列は、1の混合時間下でのピーク強度によってのみでなく、異なる混合時間でのHSQC-TOCSYスペクトル全ての概観を通して決定しなければならない。
【0175】
伝統的に、サポニンの糖鎖のNMR解明および割り当ては、アグリコンに結合した糖から出発する。HMBCまたはNOESYにより、分解能の良いアノマー性H-1およびC-1シグナルを同定することができる。次に、COSY相関および3J (H,H)カップリング定数のマッチングを通して、単糖のプロトンシグナルを割り当てることができる。大きなカップリング定数(>7Hz)は、典型的に2つの隣接するアキシアルC-H結合を表し、および小さなカップリング定数(<4Hz)は、アキシアル-エクアトリアルまたはエクアトリアル-エクアトリアルC-H結合を表すので、単糖のタイプを決定することができる。NOE相関は、アキシアル-アキシアル、アキシアル-エクアトリアルまたはエクアトリアル-エクアトリアル関係の立体化学の確認に有用である。サッカリドの炭素シグナル(C-2~C-6)は、HSQCまたはHMQCに従って割り当てられる。異なるタイプの単糖についてのC-1~C-6化学シフトのパターンは、特徴的でありかつ一貫しているので、HSQC/HMQCによって決定されるとおりの炭素シグナルの化学シフトは、単糖のタイプを確認するための極めて重要な情報である。炭素化学シフト変化の観察を通して、糖鎖上のグリコシル化位置を同定することができ、およびさらにHMBC相関法により確認することができる。要約すると、サポニン糖を解明するための伝統的なやり方は:HMBC→C-1、H-1→COSY→H-2~H-6→HSQC/HMQC→C-2~C-6、次に、カップリング定数解析およびNOESY実験により補助および確認される。
【0176】
H-H TOCSY(HOHAHA -同核ハルトマン・ハーン法としても知られる、全相関分光法(Total Correlated Spectroscopy))実験は、複雑な糖プロトンシグナルを群に分割するのに大きな助けとなり得た。アノマー性H-1からフラノースまたはピラノース環の終端までのTOCSYスピンロックの間中の磁化の移動は、途中にある3J (H,H) スカラーカップリング定数の大きさに依存することになる。大きなカップリング定数(>7Hz)を持つアキシアル-アキシアルプロトンは、早い磁化の移動を可能にするが、他方、小さなカップリング定数(<4Hz)を持つアキシアル-エクアトリアルまたはエクアトリアル-エクアトリアルは、移動効率を相当に大きく低減させる。したがって、TOCSY実験は、プロトンシグナルをスピン系へとグループ化することに使用できるだけでなく、サッカリドの立体化学情報をも提供する。例えば、我々は、正しい混合時間でのH-1~H-6を通してグルコースの磁化リレーをとらえることができるようになるはずである。ガラクトースについては、混合時間200msでさえも、H-4の上の磁化リレーはない。
【0177】
しかしながら、5つまたは6つのグルコピラノシルシグナルのセットを持つモグロシドの場合については、H-1~H-6を結び付けるためにCOSYおよびTOCSYを使用することは、かなり扱いにくい可能性がある。モグロシドグルコピラノシルのプロトンシグナルは、極めて類似した化学シフトを有し、およびδH 3.8~4.5の小さな範囲に密集して出現する。かかる分解能の悪いプロトンシグナルを通してCOSYでの結び付きをはっきりさせることは難しい。グルコピラノシル炭素シグナルもまた極めて近く、および、HSQCクロスピークシグナルが互いに強く重なり合い、これらは解明および割り当てをなおもさらに困難にする。
以前に、HSQC-TOCSYは、各スピン系における炭素シグナルを一緒にグループ化することにより、サポニンの構造解明および割り当てに適用されている[17, 18]。我々の調査を通して、我々は初めて、グルコピラノシル炭素基内のシグナルの配列を、HSQC-TOCSY実験において異なる混合時間を適用することによって同定することができるということを実証した。
【0178】
図6は、モグロシドのグルコピラノシルオリゴ糖鎖を解明するための新規のHSQC-TOCSYに基づいた戦略を以下のとおりまとめた:ステップ1において、糖のアノマーC-1およびH-1を決定するために異種核間多結合相関分光法(HMBC)を使用した。アグリコンへの糖の連結から出発する。ステップ2において、C-2~C-6の群全体を決定するために、混合時間100msでHSQC-TOCSYを使用した。C-2を割り当てるためのHSQC-COSYまたはHSQC-TOCSY(d9=10ms)。C-3を割り当てるためのHSQC-TOCSY(d9=30ms)。C-4を割り当てるためのHSQC-TOCSY(d9=60ms)。C-5およびC-6を割り当てるためのHSQC-TOCSY(d9=100ms)。ステップ3において、~δ75から~δ81までのC-2のダウンシフト、~δ71から~δ81までのC-4のダウンシフト、または~δ62から~69までのC-6のダウンシフトが観察されたら、これらの位置でのグリコシル化についてHMBCをチェックする。**C-2が~δ75から~δ81までダウンシフトしているか、C-4が~δ71から~δ81までダウンシフトしているか、またはC-6が~δ62から~69までダウンシフトしていたら、これらの位置でのグリコシル化についてHMBCをチェックする。**
【0179】
Hカップリング定数および13C炭素シグナルパターンなどの1-D NMRデータ、ならびにNOESY、HMBC、TOCSY、COSYおよびHSQCなどの2-D NMR実験は、プロセスを補助し、および結果を確認できたであろう。新規のHSQC-TOCSYに基づいた戦略は、あらゆる新規のまたは既知のモグロシドのグルコピラノシル鎖の解明および割り当てのための単純で素早くかつ一義的なやり方である。該戦略はまた、他の単糖およびオリゴ糖の解明および割り当てにも適合させることができる。
【0180】
ネオモグロシドおよびモグロシドVIの構造
化合物3は、詳しい1-Dおよび2-D NMR分析、ならびに文献データ[19]との比較によって、ネオモグロシドであると決定された。3のオリゴ糖鎖解明のために、10、30、60、100msの異なる混合時間でのHSQC-TOCSYおよびTOCSYの実験によってシグナルを割り当てた。6つのサッカリドの結合を、それらのNOESYとHMBCとの相関によって割り出した。アグリコンのC-3上のオリゴ糖鎖は、明確にβ-D-グルコピラノシル-(1→2)-β-D-グルコピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシルであるとして割り当てることができる。アグリコンのC-24上のグルコピラノシルは、β-D-グルコピラノシル-(1→2)およびβ-D-グルコピラノシル-(1→6)で分岐した。
【0181】
ネオモグロシドは、最初に、S. grosvenoriiから発見され、およびSi et al.により記載された[19]。Scifinderにおいてネオモグロシドを検索すると、CAS番号189307-15-1が返答された。しかしながら、Scifinderによって参照された文献がSi et alによる1996年の記事であったにも関わらず、Scifinderにおいてはネオモグロシドの誤った構造が与えられている。189307-15-1の誤った構造は、Scifinderにおいて、3-O-β-D-グルコピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→6)]-β-D-グルコピラノシル-モグロール-24-O-β-D-グルコピラノシル-(1→6)-[β-D-グルコピラノシル-(1→2)]-β-D-グルコピラノシル(図2中の6の構造)として与えられている。Si et alによるネオモグロシドの報告は、中国語で書かれ、および中国のジャーナルにて1996年に公開されている。この記事へのアクセスのしやすさおよび誤解は、Scifinderにおける誤った構造に導くことがあり得る。
【0182】
Scifinderにおいて、ネオモグロシドとモグロシドVIとは同じCAS番号189307-15-1および同じ構造を有した。Takemoto et alは、最初にS. grosvenoriiからのモグロシドVIについて報告した[2]。しかしそれは、分子式C6611234を持つ純粋なモグロシドのみに言及しており、構造は決定されていない[2]。Prakash et al.は、モグロシドVIの構造およびNMRデータを、2011に公表された彼らの記事において既知の化合物として報告した[6]。彼らの記事において、モグロシドVIの構造は、図2中の6の構造として割り当てられた。Prakashは、モグロシドVIの構造解明がNMR分析によって、および文献値と比較することによってもなされたということを述べた。しかしながら、文献値については引証が与えられていない。
【0183】
知られている化合物について、NMRデータの文献データとの比較は構造決定のために有用であり得た。しかしながら、モグロシドのNMRデータの複雑さは、主にNMRデータと文献データとの比較によって構造を決定することを困難にする。知られているモグロシドのH NMRデータは、使用された異なるNMR溶媒(ピリジンとDOとの比率がシグナルシフトを引き起こし得た)かまたは単に誤った割り当てに起因して、異なる報告においてばらつきを示した。
【0184】
たとえ13C NMRデータがかなり一貫し、H NMRデータよりもよい分解能を有していても、既知のモグロシドのオリゴ糖鎖の構造決定は、13C NMRデータを文献データと直接的に比較することに頼ることはできない。ネオモグロシドの場合を考えると、Glu-VIグルコピラノシル-(1→2)がGlu-I、Glu-II、Glu-III、Glu-IVまたはGluV上で分岐していたら、5つの異性体は極めて類似した13C NMRデータを有し得る。モグロシドのオリゴ糖鎖を一義的に決定する前には、13C NMRデータを文献データと比較するよりも寧ろ、詳しい2-D NMR分析が注意深く行われなければならない。
【0185】
例11
イソ-モグロシドVIおよび11-エピ-モグロシドVの甘味強度
方法
100ppmイソ-モグロシドVI溶液を作るために、10mgのイソ-モグロシドVI(図7)を31mLの水中に溶解させた。11-エピ-モグロシドV(図8)の希釈標準溶液は、374ppm(25ml水中の9.34mgの11-エピ-モグロシドV)であった。一系列の標準スクロース溶液を、甘さの基準として調製した(0.50、0.75、1.00、1.25、1.50%)。
【0186】
結果
4名の甘味に敏感なパネリストが、100ppmイソ-モグロシドVIおよび374ppm11-エピ-モグロシドVおよびスクロース標準品を評価し、スクロースとの甘味等価濃度を知らせるよう求められた。等甘味効力を算出するために、各化合物の平均甘味等価濃度を使用した。イソ-モグロシドVIおよび11-エピ-モグロシドVの等甘味効力値は、それぞれスクロースの甘さの91倍および35倍(100ppmイソ-モグロシドVIは0.91%スクロースと甘味等価;374ppm11-エピ-モグロシドVは1.31%スクロースと甘味等価)であると決定された。
【0187】
例12
方法
例10に記載されたとおりに、イソ-モグロシドVIおよび11-エピ-モグロシドVを得た。5%スクロースおよび0.03%クエン酸を含有する溶液へ、イソ-モグロシドVIおよび11-エピ-モグロシドVを各々、25ppmの濃度にて添加した。これらの試験溶液は、7名の専門家パネルによってテイスティングされた。甘い味の様々な側面(全体的な甘味、先行した甘味、長引く甘味、渋い、揮発性オフノート)について、各パネリストは、試験溶液を、ベース溶液(5%スクロースおよび0.03%クエン酸の溶液)との比較でスコア付けした。0のスコアは、味覚側面が同じであったことを表しており、1はわずかにより高いことを表し、2はより高いことを表し、3は大幅に高いことを表し、-1はわずかにより低いことを表し、-2はより低いことを表し、および-3は大幅に低いことを表す。
【0188】
結果
各味覚側面について各試験溶液の平均スコアを算出した。結果は、下記の表20に示される。
【0189】
【表20】
【0190】
2つの新規のマイナーなククルビタングリコシドを、既知の11-オキソ-モグロシドおよびネオモグロシドとともに、ラカンカの市販抽出物(Siraitia grosvenorii (Swingle) C. Jeffrey ex Lu et Z. Y. Zhang)から精製した。詳しいNMRおよびLC-MS分析ならびに化学合成によって、2つの新規化合物イソ-モグロシドVI(1)および11-エピ-モグロシドV(2)の構造はそれぞれ、3-O-β-D-グルコピラノシル(1→6)-β-D-グルコピラノシル-モグロール-24-O-(β-D-グルコピラノシル-(1→6)-[β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシル-(1→2)]-β-D-グルコピラノシルおよび3-O-β-D-グルコピラノシル(1→6)-β-D-グルコピラノシル-11β-OH-モグロール-24-O-β-D-グルコピラノシル-(1→6)-[β-D-グルコピラノシル-(1→2)]-β-D-グルコピラノシルであると解明された。
【0191】
イソ-モグロシドVIおよび11-エピ-モグロシドVの甘味の効力は、それぞれスクロースの甘さの91倍および35倍(100ppmイソ-モグロシドVIは0.91%スクロースと甘味等価;374ppm11-エピ-モグロシドVは1.31%スクロースと甘味等価)であると評価された。我々の、5または6個のグルコピラノシルを持つ新規のおよび既知のモグロシドを同定する過程で、グルコピラノシル糖鎖の解明および割り当てのための新たな戦略が開発された。異なる混合時間でのHSQC-TOCSYに基づいた新規の戦略は、グルコピラノシル糖鎖の素早くかつ一義的な解明および割り当てを特色とした。我々の詳しいNMRスペクトル分析によるネオモグロシド構造の確認の後、ネオモグロシドおよびモグロシドVIの構造に関しての以前の混乱は見直され、および明確化された。
【0192】
上記は、限定せずに本発明のある態様を広く記載している。当業者に容易に分かるとおり、バリエーションおよび改変は、添付された請求項によって定義されるとおりの本発明の範囲内にあることが意図される。
参考文献
【0193】
【表21-1】
【表21-2】
図1
図2
図3A
図3B
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8