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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】吸着パッド器を備えたロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
B25J15/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020053418
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151685
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】513000436
【氏名又は名称】株式会社バイナス
(74)【代理人】
【識別番号】100103067
【弁理士】
【氏名又は名称】神戸 真澄
(72)【発明者】
【氏名】大島幸雄
(72)【発明者】
【氏名】水谷龍二
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-23022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムにより形成された四角形状の袋に半流動体の内容物が充填されたワークが次から次にベルトコンベアにより搬送されている状態で、アームを有し、該アームの先端部に取り付けられた複数の吸着パッドを有する吸着パッド器にバルブ手段を開放して負圧流体を流すことにより前記ワークを吸着すると共に、前記バルブ手段を閉成して前記負圧流体を遮断することにより前記ワークを解放し、位置指令信号に基づいて前記アームを移動して停止する吸着パッド器を備えたロボット装置であって、
前記吸着パッド器により前記ワークを吸着して前記アームを移動して停止すると、前記半流動体が移動していた方向に偏る偏り部と、該偏り部の隣で該偏り部よりも高さが低く傾斜する傾斜部と、前記偏り部の上方に盛り上がる盛り上がり部と、を形成する性質を有しており、
前記吸着パッド器が前記ワークの表面に接触するタイミングで前記負圧流体を流す吸着指令信号を発生すると共に、前記アームが停止した後、前記負圧流体を遮断する遮断指令信号を発生する吸着制御手段と、
前記ワークを撮像して撮像情報を得る撮像手段と、
前記吸着パッド器は、固定板を有しており、該固定板には、前記吸着パッドが偶数個を並べて配置された第1の吸着パッド群を成し、隣には、前記第1の吸着パッド群よりも、一つ少ない奇数個の前記吸着パッドが並べて配置され第2の吸着パッド群を有しており、
前記撮像情報に基づいて前記アームを移動し、前記吸着パッド器を前記ワークの表面に接触して、前記第1の吸着パッド群が前記ワークの前記傾斜部が形成される前記ワークの表面を接触すると共に、前記第2の吸着パッド群前記ワークの前記偏り部が形成される前記ワークの表面を接触する前記位置指令信号を発生する位置制御手段と、
を備えたことを特徴とする吸着パッド器を備えたロボット装置。
【請求項2】
前記吸着パッドは、上端部には、前記負圧流体が供給される供給通路を有したアダプタと、
前記アダプタの下端部に連結されると共に、前記負圧流体を流すベローズと、を備え、
該ベローズの先端に形成されると共に、前記負圧流体を流すパッド部を有し、
前記パッド部には、内周側を仕切る底板を有し、
前記底板には、前記ベローズよりも硬度が高く、多数の第1の孔が同一密度により形成され、前記第1の孔よりも開口面積が広いと共に、第1の孔よりも数が少ない第2の孔が中心から放射状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸着パッド器を備えたロボット装置。
【請求項3】
前記吸着パッドにより前記ワークを吸着すると、前記吸着パッドに前記袋が部分的に吸い込まれて表面にしわが形成される性質を有しており、
前記ベローズは、蛇腹状に軸方向に蛇腹状で伸縮自在に形成されており、
前記パッド部には、前記ワークを吸着しながら接触するスカートを備え、
前記スカートは、下方に向かって斜め方向に拡開するように形成されると共に、上方に放射状に多数のリブが形成されており、
前記スカートは、前記ベローズと別の材質から形成されると共に、前記ベローズよりも硬度が低く、前記プラスチックフィルムと同等の硬度を有する材質である、
ことを特徴とする請求項2に記載の吸着パッド器を備えたロボット装置。
【請求項4】
前記負圧流体を流れる供給通路は、それぞれの前記吸着パッに独立して配管しており、
それぞれ前記供給通路に負圧流体を供給する負圧流体供給手段と、
前記供給通路を流れるそれぞれの前記負圧流体を前記吸着指令信号に基づいて開放すると共に、前記遮断指令信号に基づいて遮断するバルブ手段と、
前記供給通路のそれぞれ圧力を検出してそれぞれの圧力検知信号を発生する圧力検出手段と、
前記圧力検知信号に基づいて負圧検出値を求めると共に、前記負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、それぞれの予備遮断信号を発生して、前記予備遮断信号の数が予め定めた数を越えると、異常断信号を発生する圧力判断手段とを備え、
前記吸着制御手段は、さらに、前記異常遮断信号に基づいて前記遮断指令信号を発生
する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の吸着パッド器を備えたロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着パッド器を備えたロボット装置に関し、特に、フィルムにより形成された四角形状の袋に半流動体の内容物が充填されたワークを複数の吸着パッドを有する吸着パッド器により不均一に吸着する吸着パッドを備えたロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置に用いられる吸着パッドは、負圧流体が供給される供給通路を有したアダプタと、アダプタの下端部に連結されるベローズと、該ベローズの先端に形成されたパッド部とを有し、パッド 部には、ワークWを吸着する吸着面に複数の第1及び第2リブを有している。この第1リブは、パッド部の中央に設けられたアタッチメントの外周側に設けられ外周側に向かって延在し、第2リブは、第1リブの外周側に設けられると共に、該第1リブに対して周方向にオフセットするように設けられる。そして、スカートの周方向に沿って並んだ各第1リブの間には、アタッチメントから負圧流体が供給される供給路が形成される。
【0003】
上記吸着パッドによれば、吸着されているワークの形状が変化した場合でも、吸着パッドを追従させるように変形させ、且つ、供給路に保持された負圧流体によって安定した吸着力でワークを吸着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-23022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、吸着パッドがロボットのアーム先端部に取り付けられて、プラスチックフィルムにより形成された袋に内容物としての半流動体が充填されたワークを吸着パッドにより吸引して、移動して停止すると、ワークに作用する慣性力によってワークが移動していた方向に半流動体も移動して内容物が偏ると共に、該偏った反対の方向に半流動体の移動に伴う力も作用する。このため、発明者は、上記特許文献1の吸着パッドを適当な数にして、複数の吸着パッドでワークを均一の吸引力で吸着しても、ワークを適切に吸着パッドによる吸着を維持し得ないと共に、ワークの移動から停止に伴う半流動体の移動を無暗に抑制し過ぎることは、半流動体の緩衝機能として作用を阻害し得るという課題を見出したものである。ここで、上記課題を解決するのに、吸着パッドの吸引力を上昇したり、サイズを大きくしたりする手段もあるが、吸着パッドがプラスチックフィルムを吸引し過ぎて袋を傷つきやすくなり、吸着パッドが大型化したり、負圧流体装置が大型化したりし得るので、適切な解決手段とは言えない。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ワークを複数の吸着パッドにより不均一に吸引して、移動して停止すると、ワークに作用する慣性力によってワークが移動していた方向に半流動体も移動して内容物が偏ると共に、該偏った反対の方向に半流動体の移動に伴う力も作用しても、半流動体の上昇方向の移動による緩衝機能を利用しながら、ワークをしっかりと吸着し得る複数の吸着パッドを有する吸着パッド器を備えたロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る吸着パッド器を備えたロボット装置は、プラスチックフィルムにより形成された四角形状の袋に半流動体の内容物が充填されたワークが次から次にベルトコンベアにより搬送されている状態で、アームを有し、該アームの先端部に取り付けられた複数の吸着パッドを有する吸着パッド器にバルブ手段を開放して負圧流体を流すことにより前記ワークを吸着すると共に、前記バルブ手段を閉成して前記負圧流体を遮断することにより前記ワークを解放し、位置指令信号に基づいて前記アームを移動して停止する吸着パッド器を備えたロボット装置であって、
前記吸着パッド器により前記ワークを吸着して前記アームを移動して停止すると、前記半流動体が移動していた方向に偏る偏り部と、該偏り部の隣で該偏り部よりも高さが低く傾斜する傾斜部と、前記偏り部の上方に盛り上がる盛り上がり部と、を形成する性質を有しており、
前記吸着パッド器が前記ワークの表面に接触するタイミングで前記負圧流体を流す吸着指令信号を発生すると共に、前記アームが停止した後、前記負圧流体を遮断する遮断指令信号を発生する吸着制御手段と、
前記ワークを撮像して撮像情報を得る撮像手段と、
前記吸着パッド器は、固定板を有しており、該固定板には、前記吸着パッドが偶数個を並べて配置された第1の吸着パッド群を成し、隣には、前記第1の吸着パッド群よりも、一つ少ない奇数個の前記吸着パッドが並べて配置され第2の吸着パッド群を有しており、
前記撮像情報に基づいて前記アームを移動し、前記吸着パッド器を前記ワークの表面に接触して、前記第1の吸着パッド群が前記ワークの前記傾斜部が形成される前記ワークの表面を接触すると共に、前記第2の吸着パッド群前記ワークの前記偏り部が形成される前記ワークの表面を接触する前記位置指令信号を発生する位置制御手段と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
このような吸着パッド器を備えたロボット装置によれば、吸着パッ器によりワークを吸引して持ち上げると、ワーク内の半流動体が垂れ下がり、ワークが反山形状となりながら、目的の位置に移動して、停止すると、ワーク内の半流動体は、移動から停止への減速に伴い、反山形状から停止側に大きく偏った形状へと移行する。
撮像手段がワークを撮像して撮像情報を発生して、位置制御手段は、撮像情報に基づいてアームを移動して吸着パッド器がワークの表面に接触する。吸着制御手段は、吸着指令信号を発生して、吸着パッド器によりワークを吸着すると共に、第1の吸着パッド群がワークの偏り部が形成されるワークの表面を吸着すると共に、第1の吸着パッド群よりも吸着パッドが一つ少ない第2の吸着パッド群がワークの傾斜部が形成されるワークの表面を吸着する。これにより、吸着パッド器がワークを不均一に吸着する。
【0009】
しかも、ワークを停止した直後の状態では、第2の吸着パッド群の方が第1の吸着パッド群よりも吸着パッドの数が少ないので、ワークが第2の吸着パッド群により吸着されていない近傍でワーク内の半流動体が上昇方向(Z軸方向)に移動し得る。この上昇方向へ半流動体の移動がワークの停止ショックとしての緩衝として作用する。特に、ワークが移動していた方向の停止ショックを緩和する。これにより、第1の吸着パッド群に作用する力が減少し得る。さらに、第1の吸着パッド群に第2の吸着パッド群よりも移動していた方向に大きな力が加わるが、第1の吸着パッド群の方が第2の吸着パッド群よりも吸着パッドの数が多いので、ワークをしっかりと吸着し続け得る。ここ、第2の吸着パッド群を成す吸着パッがベローズを有しており、ベローズが蛇腹状に軸方向に蛇腹状で伸縮自在に形成されていると、上記ワーク内の半流動体が上昇方向への移動も容易になるので、ワークの停止ショックとしての緩衝として作用するを促進し得る。
【0010】
第1の吸着パッド群は、ワークの大きさ、重さ等にもよるが例えば4個で、第2の吸着パッド群は、第1の吸着パッド群よりも数が一つ少なく、3個が好ましい。第1の吸着パッド群と第2の吸着パッド群の配置は、第1の吸着パッド群を成す第1の吸着パッドどうしの間に第2の吸着パッド群を成す第の吸着パッドの底面から見た幅が最大値となる最径部が位置することが好ましい。吸着パッ群の幅を狭くでき、コンパクトになるからである。
さらに、第1及び第2の吸着パッド群を成す各吸着パッドは、同一であることがより好ましい。均一な吸着力を得ることができるからである。
また、ワーク内の半流動体は、移動して停止すると、半流動体が停止側に偏る偏り部を形成し、該偏り部の隣で該偏り部よりも低い傾斜部が形成されれば足りるが、マヨネーズ、ケチャップ、スープを例示できる。
【0011】
第2の発明に係る吸着パッド器を備えたロボット装置における前記吸着パッドは、上端部には、負圧流体が供給される供給通路を有したアダプタと、
前記アダプタの下端部に連結されると共に、前記負圧流体を流すベローズと、を備え、
該ベローズの先端に形成されると共に、前記負圧流体を流すパッド部を有し、
前記パッド部には、内周側を仕切る底板を有し、
前記底板は、前記ベローズよりも硬度が高く、多数の第1の孔が同一密度により形成され、前記第1の孔よりも開口面積が広いと共に、第1の孔よりも数が少ない第2の孔が中心から放射状に形成されている、
ことが好ましい。
このように吸着パッドによれば、同一密度に形成された多数の第1の孔がワークの吸引力を均一にしながら補いながら、第1の孔よりも数が少ない第2の孔が中心から放射状に形成された第2の孔により均一に吸引力を増加して、吸着パッドがワークをしっかりと吸着しながら、ワークの袋がプラスチックフィルムでも、第1及び第2の孔に吸い込むことを抑制する。
さらに、プラスチックフィルムにより形成されたワークの袋を吸着パッドが吸引しても、吸着パッドの底板の硬度が高いので、底板が撓みにくくなり吸着パッドの内部にワークの袋の吸い込みを底板によっても抑制できる。したがって、ワークをロボット装置により、搬送した後、吸着パッドによるワークへの吸着痕も低減できる。
ここで、第1の孔の形状は丸孔で、第2の孔の形状は長方形で、時計盤で示す3時、6時、9時、12時の位置にそれぞれ形成されていることがより好ましい。
【0012】
第3の発明に係る吸着パッド器を備えたロボット装置は、前記吸着パッドにより前記ワークを吸着すると、前記吸着パッドに前記袋が部分的に吸い込まれて表面にしわが形成される性質を有しており、
前記ベローズは、蛇腹状に軸方向に蛇腹状で伸縮自在に形成されており、
前記パッド部には、前記ワークを吸着しながら接触するスカートを備え、
前記スカートは、下方に向かって斜め方向に拡開するように形成されると共に、上方に放射状に多数のリブが形成されており、
前記スカートは、前記ベローズと別の材質から形成されると共に、前記ベローズよりも硬度が低く、前記プラスチックフィルムと同等の硬度を有する材質である、
ことが好ましい。
【0013】
ここで、ワークの袋となるプラスチックフィルムは、ポリ塩化ビニル、 塩化ビニリデン、ポリエチレン、 ポリビニールアルコール、ポリエステ ル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレンなどを例示できる。れらの素材がワークに用いられた場合には、同一の素材を吸着パッドのスカートに用いることが好ましい。このような同等の素材を用いても良い。硬度が同じ程度であるからである。
【0014】
このような吸着パッドを用いて、流動体が充填されたワークを吸引して吸着すると、ワークの表面が吸着パッドに吸い込まれて、ワークの袋にしわができても、袋と吸着パッドのスカートとがプラスチックフィルムと同等の材質から成っている。このため、吸着パッドは、スカートが変形して、ワークの表面とよく馴染むことで、ワークとスカートとの間に隙間が形成されにくくなるので、吸着パッドへの負圧流体の漏れ量が軽減されワークが吸着パッドから外れにくくなる。
また、スカートに形成された放射状のリブによってスカートの強度も維持されるので、ワークをしっかりと吸着できる。
【0015】
第4の発明に係る吸着パッド器を備えたロボット装置は、前記負圧流体を流れる供給通路は、それぞれの前記吸着パッに独立して配管しており、
それぞれ前記供給通路に負圧流体を供給する負圧流体供給手段と、
前記供給通路を流れるそれぞれの前記負圧流体を前記吸着指令信号に基づいて開放すると共に、前記遮断指令信号に基づいて遮断するバルブ手段と、
前記供給通路のそれぞれ圧力を検出してそれぞれの圧力検知信号を発生する圧力検出手段と、
前記圧力検知信号に基づいて負圧検出値を求めると共に、前記負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、それぞれの予備遮断信号を発生して、前記予備遮断信号の数が予め定めた数を越えると、異常断信号を発生する圧力判断手段とを備え、
前記吸着制御手段は、さらに、前記異常遮断信号に基づいて前記遮断指令信号を発生
する、ことが好ましい。
【0016】
このような吸着パッド器を備えたロボット装置によれば、圧力検出手段が供給通路のそれぞれ圧力を検出してそれぞれの圧力検知信号を発生し、圧力判断手段は、圧力検知信号に基づいて負圧検出値を求めると共に、負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、それぞれの予備遮断信号を発生して、予備遮断信号の数が予め定めた数を越えると、異常断信号を発生する。圧力判断手段は、圧力検知信号に基づいて負圧検出値を求めると共に、負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、それぞれの予備遮断信号を発生して、予備遮断信号の数が予め定めた数を越えると、異常断信号を発生する。
吸着制御手段は、異常遮断信号に基づいて遮断指令信号を発生し、バルブ手段を遮断して負圧流体の供給を停止する。これにより、吸着パッド器がワークを解放する。好ましくは、位置制御手段は、異常遮断信号に基づいて次に搬送される前記ワークを撮像情報に基づいてアームを移動して吸着パッド器を用いてワークの表面に接触する位置指令信号を発生する。これにより、吸着パッド器がワークの表面に接触するタイミングで負圧流体を流す吸着指令信号を発生して、バルブ手段を開放して吸着パッド器がワークを吸着する。
【0017】
これにより、吸着パッド器がワークの吸着に失敗したことを速やかに検知して、吸着パッド器へ流れる負圧流体をバルブ手段により遮断して、吸着パッド器からワークを強制的に落下させる。次に搬送されてくるワークを吸着パッド器により速やかに吸着できる。したがって、吸着パッド器によりワークの吸着に失敗してワークが自然落下した後に、次に搬送されるワークを吸着パッド器により吸着する場合に比較して、ロボット装置のアームによりワークを搬送するスピードが増加し得る。このため、吸着パッド器を備えたロボット装置によりワークを搬送する作業効率が増加する。ここで、予めワークの必要な吸着力により定まる吸着パッドの数よりも、多めの吸着パッドの数で吸着パッド器を形成すれば、上記予備遮断信号の数が予め定めた数を二つ以上で異常遮断信号を発生する場合には、一つの吸着パッドにおいて負圧流体漏れが発生して一つの予備遮断信号が発生しても、吸着パッド器によりワークを吸着し続ける。これは、吸着パッド器全体では、一つの吸着パッドの吸着力が減少したに過ぎず、残りの複数の吸着パッドが負圧流体の漏れていないため、ワークを吸着するのに要する吸着力を維持している。これにより、ロボット装置の吸着パッド器により継続してワークを搬送可能なため、ロボット装置による搬送運転の冗長性を確保できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ワークを吸着パッドにより吸引して、移動して停止すると、ワークに作用する慣性力によってワークが移動していた方向に半流動体も移動して内容物が偏ると共に、該偏った反対の方向に半流動体の移動に伴う力が吸着パッドに作用しても、しっかりと吸着を維持し続ける複数の吸着パッドを有する吸着パッド器を備えたロボット装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態による半流動体が袋に充填されたワークの平面図(a)、側面図(b)である。
図2図1に示すワークが搬送されていて、ロボット装置の吸着パッド器を用いて、ワークを吸着しながらアームを移動して停止して、吸着パッドからワークを解放する搬送システムの全体図である。
図3図2に示す吸着パッド器を成す吸着パッド器の底面図である
図4図3に示す吸着パッの正面図である。
図5図3に示す吸着パッの詳細底面図である。
図6図3による吸着パッド器によりワークを吸着した状態を示す正面図である。
図7図3による吸着パッド器によりワークを吸引直前の状態を示す正面図(a)、アームを移動してワークを移動している状態を示す正面図(b)、ワークを停止した直後の状態を示す正面図(c)である。
図8図3による吸着パッド器によりワークを吸引する位置を示す側面図(a)、平面図(b)である。
図9図2による搬送システムにおいて、ロボット装置の吸着パッド器でワークの吸着・吸引の動作を示すタイムチャートである。
図10図2による吸着パッド器を備えたロボット装置を用いてベルトコンベアを搬送されるワークを移動する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1から図8によって説明する。図1において、ワークWは、プラスチックフィルムにより形成された長方体形状の袋12に半流動体14が充填されており、両端には、密閉された板状の両端部12aを有している。ここで、プラスチックフィルムとしては、ポリ塩化ビニル、 塩化ビニリデン、ポリエチレン、 ポリビニールアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレンなどを例示できる。また、半流動体としては、ケチャップ、マヨネーズなどを例示できる。
【0021】
図2おいて、吸着パッド器120を有するロボット装置200を備えた搬送システム100は、ベルトコンベア1100によりワークWが次から次に矢印Aの方向に搬送されており、ロボット装置200のアーム210の先端部に取り付けられた吸着パッド器120に負圧流体装置400からの負圧流体をバルブ手段としての電磁バルブB1~B7を制御して、ワークWを吸着しながら持ち上げながら移動して停止して解放することにより、ワークWを段ボール箱600に収納するものである。負圧流体装置400には、負圧配管N1からN7内のそれぞれ圧力を検出してそれぞれの第1から第7の圧力検知信号を発生する圧力検出手段としての圧力検出器430を有している。
【0022】
ロボット装置200は、吸着パッド器120を成す吸着パッド20の吸着及び解放を制御すると共に、アーム210の回転、上下動などを制御する制御器250を有している。撮像手段としてのカメラ170がベルトコンベア1100の上方に設けられており、ワークWを撮像して撮像情報(撮像画像)を制御器250に入力するように形成されている。位置制御部252は、ワークWの吸着目標位置として、撮像情報に基づく画像をX軸上と、Y軸上との二次座標で中心位置Xp、Ypを求める。なお、吸着目標位置としてのZ軸は、ベルトコンベア1100の高さと、ワークWの太さを考慮して予めロボット装置200に教示されている。
【0023】
位置制御部252には、アーム210に取り付けられた吸着パッド器120のX,Y,Z位置を制御するために、アーム210を回転しながら移動して停止する位置指令信号Liを発生すると共に、アーム210の先端としての吸着パッド器120の位置を位置検出器212により検出して位置検出信号Lsが入力され、位置指令信号と位置検出信号との差が適正値になるように制御されている。吸着制御部254は、ワークWに吸着パッド器120の先端部が接触する第1のタイミングで、吸着指令信号を発生すると共に、ワークWを移動して目標位置に到達して停止する第2のタイミングで、遮断指令信号を発生するように形成されている。ここで、第1のタイミングは、吸着パッド器120の先端部がワークWに接触するアーム210への位置指令信号又は位置検出信号をいい、第2のタイミングは、吸着パッド器120の先端部が目標位置に到達して停止するアーム210の位置指令信号又は位置検出信号をいう。
なお、吸着指令信号により電磁バルブB1~B7を介して負圧流体を吸着パッド20に供給すると共に、ワークWを移動して目標位置に到達して停止すると、遮断指令信号により電磁バルブB1~B7を閉成して負圧流体を遮断するように形成されている。
【0024】
吸着制御部254は、遮断指令信号に基づいて電磁バルブB1~B7を遮断すると共に、次に搬送されるワークWをカメラ170からの撮像情報に基づいて解放信号を発生して電磁バルブB1~B7を開放すると共に、吸着パッド器120を用いてワークWを吸着するように形成されている。圧力判断部256は、第1から第7の圧力検知信号を入力して、これらの圧力信号に基づいて第1から第7の負圧検出値を求めると共に、第1から第7の負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、それぞれの第1から第7の予備遮断信号を発生して、第1から第7の予備遮断信号の数が予め定めた数として二つを越えると、異常断信号を発生するに形成されている。ここで、予めワークWの必要な吸着力により定まる吸着パッド20の数よりも、多めの吸着パッド20の数で吸着パッド器120が形成されている。また、負圧閾値は、吸着パッド器120を成す吸着パッド20が同一で、負圧流体の圧力、流量なども同一であるので、一つの値を有している。
【0025】
図2において、吸着パッド器120に負圧流体を供給および停止する負圧流体装置400を有している。負圧流体装置400は、空気が七つの配管a1~a7を流れ、その配管a1~a7の空気をそれぞれ閉成及び開放する電磁バルブB1~B7を有している。負圧流体供給器410は、配管a1~a7から空気が流入すると共に、負圧流体を発生し、吸着パッド器120を成す各吸着パッド20に七つの負圧配管N1~N7により負圧流体が独立して供給されるように形成されている。
【0026】
図3において、吸着パッド器120は、平面視で小判状の固定板125を有しており、長手方向と短手方向とからなる固定板125には、同一の吸着パッド20が偶数個としての四つ等間隔で長手方向に並べて配置される第1の吸着パッド121を形成している。第1の吸着パッド121の隣には、第1の吸着パッド群121の吸着パッド20よりも、一つ少ない三つの第2の吸着パッド群122を有しており、同一の吸着パッド20が奇数個を等間隔で長手方向に並べて配置されている。第1の吸着パッド群121と第2の吸着パッド群122の配置は、第1の吸着パッド群121を成す第1の吸着パッド20どうしの間に第2の吸着パッド群122を成す第2の吸着パッド20の底面から見た幅が最大値となる最径部が位置するように配置されている。吸着パッ器120の幅を狭くでき、コンパクトになるからである。第1及び第2の吸着パッド群121、12の輪郭は点線に示すように上が下底よりも長い台形状に形成されている。
【0027】
図4において、吸着パッド20は、上端部には、負圧流体が供給される供給通路を有すると共に、ねじ部22aが形成された円筒状のアダプタ22を備え、アダプタ22に連結したベローズ24を有している。ベローズ24は、上端には、一定径で円筒状に形成された筒部24aが形成されており、この筒部24aを介して弾性を有したゴム等から円筒状に形成されると共に、伸縮及び屈曲自在な蛇腹構造を有している。
【0028】
また、吸着パッド20のベローズ24には、その軸方向に沿って交互となるように拡径した環状山部24cと縮径した環状谷部24bとが形成され、その下端部にはワークWに対して接触して吸着するパッド部26が一体的に形成されている。ベローズ24の内部は、中空状に形成されており、この内部には、負圧流体が供給されて流通する流路と成っている。
【0029】
図4及び図5において、パッド部26の下端部には、筒部26aが形成されており、筒部26aの内周側に円板状の底板27が設けられている。底板27には、同一密度で多数の丸孔27eを有すると共に、丸孔27eよりも開口面積が広い長方形状の四つの長孔27Lが形成されており、長孔27Lが時計盤で示す3時、6時、9時、12時の位置に底板27の中心からそれぞれ放射状に形成されている。ここで、同一密度により丸孔27eを形成するのは、ワークWの吸引力を均一にするためである。長孔27Lを設けているのは、丸孔27eの吸引力を補うためである。底板27は、パッド部26よりも硬質なプラスチックからなっている。ワークWの袋12が吸引によりベローズ24内に侵入することを防止するためである。これにより、ロボット装置200の吸着パッド器120によりワークWを搬送した後、ワークWへの吸着痕も低減できる。
【0030】
パッド部26には、ワークWを吸着しながら接触するスカート28を備え、筒部26aの下端に連結されている。スカート28には、上端部に筒状の係合部28aと、係合部28aと連通したスカート部28sとを有しており、係合部28aが筒部26aに挿入して嵌合されており、スカート部28sは、図5に示すように、底面から見て円形で、係合部28aよりも薄い薄膜で環状に形成され、係合部28aから下方に向かって斜め方向に拡開するように形成されると共に、撓曲自在に形成されている。スカート部28sの内側には、上方に放射状に多数のリブ28rが突起状に形成されている。
【0031】
スカート28は、ベローズ24とスカート28とが別の材質から形成され、スカート28がベローズ24よりも硬度が低く、ワークWの袋12となるプラスチックフィルムと同じ材料で形成されている。このため、ワークWの袋12がポリエチレンの材料から成っていると、スカート28もポリエチレンの材料から形成されている。ここで、ワークWの袋12となるプラスチックフィルムと同等の硬度を有する材質で形成されている。このため、ワークWのプラスチックフィルムの材質が、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリビニールアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレンのいずれかであれば、スカート28の材質は、これらの上記材質であれば、同等の材質であれば、足りる。ワークWの袋12の材料の硬度とスカート28の材質の度とが同等となる。これにより、スカート28が袋12を吸引によってしわが形成されても、スカート28も形を変えて袋12との接触になじみ易くなるからである。したがって、吸着パッド20への負圧流体の漏れ量が軽減されワークWが吸着パッド20から外れにくくなる。
【0032】
図6において、吸着パッド20によりワークWを吸着すると、吸着パッド20にワークWを成す袋12が部分的に吸い込まれて表面にしわS1が形成される。吸着パッ器120によりワークWを移動して停止すると、ワークW内の半流動体が停止側に偏り、偏り部14hと、該偏り部14hの隣で該偏り部14hよりも低い傾斜部14Lを形成する性質を有している。ここで、図8(a)及び(b)に示すように、制御器250の位置制御部252は、カメラ170からの撮像情報に基づいてアーム210を回転しながら移動し、吸着パッド器120によりワークWに接触すると共に、第1の吸着パッド群121がワークWの傾斜部14Lが形成されるワークWの表面を接触し、第2の吸着パッド群122がワークWの偏り部14hが形成されるワークWの表面に接触するように位置指令信号を発生するように形成されている。
【0033】
上記のように構成された吸着パッド器を備えたロボット装置を用いてコンベアを搬送しているワークを持ち上げて移動してダンボール箱に搬入する動作を図1から図10を参照して説明する。図9図2による搬送システムにおいて、ロボット装置の吸着パッドでワークの吸着・吸引の動作を示すタイムチャート、図10図2による吸着パッド器を備えたロボット装置を備えた搬送システムの動作を示すフローチャートである。
【0034】
いま、図2に示すように、ベルトコンベア1100の上を次から次にワークWが搬送されている。ここで、ワークWをカメラ170により撮像して、撮像情報を位置制御部252に入力する(ステップS101)。位置制御部252は時間t1で、ワークWが予め定められたX軸上の位置に到達すると(ステップS103)、アーム210を回転しながら移動して吸着パッド器120によりワークWを吸着する位置に移動する位置指令信号を発生する。吸着パッド器120がワークWに接触すると、吸着制御部254が吸着指令信号を発生し、図8(a)に示すように、第1の吸着パッド群121がワークWの偏り部14hが形成されるワークWの表面を吸着すると共に、第2の吸着パッド群122がワークWの傾斜部14Lが形成されるワークWの表面を吸着する(ステップS105)。
【0035】
ここで、吸着パッド器120の各吸着パッド20がワークWを吸着すると、図6に示すように、吸着パッド20を成すスカート部28sが撓みながらワークWの袋12が部分的に吸い込まれて表面にしわS1が形成される。ワークWの袋12にしわS1ができても、袋12がプラスチックフィルムにより形成され、吸着パッド20のスカート部28sが薄膜状でプラスチックフィルムと同等の材質から成っている。このため、吸着パッド20は、スカート部28sが変形して、ワークWの表面とよく馴染ことで、ワークWとスカート部28sの先端との間の隙間が形成されにくくなるので、ワークWから外れなくなる。しかも、吸着パッド20は、スカート部28sが放射状のリブ28rによって強度も維持されるので、ワークWの袋12が吸い込まれても、袋12にしわS1が形成されてもワークWをしっかりと吸着できる。
【0036】
圧力検出器430は、負圧配管N1からN7内のそれぞれ圧力を検出してそれぞれの第1から第7の圧力検知信号を発生し、圧力判断部256がこれらの圧力信号を取得する(ステップS107)。圧力判断部256は、第1から第7の圧力検知信号を入力して、これらの圧力信号に基づいて第1から第7の負圧検出値を求めると共に、第1の負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも低いか否かを判断する(ステップS109)。
【0037】
ステップS109において、低いと判断すると、ロボット装置200は、位置指令信号によりアーム210が回転しながら移動し、吸着指令信号により、吸着パッ器120によりワークWを持ち上げると、ワークW内の半流動体14が垂れ下がり、図7(b)に示すように、ワークWが反山形状となりながら、目標の位置に移動する(ステップS111)。 ロボット装置200は、位置指令信号によりアーム210の移動から減速して停止すると、ワークWは、図7(b)に示す反山形状から、図7(c)に示す停止側に大きく偏った偏り部14hと、該偏り部14hの隣で傾斜部14Lを形成する。さらに、停止直後には、ワークWは、図7(c)の点線で示すように半流動体が第2の吸着パッド群122の長手方向の端部付近で盛り上がる盛り上がり部14tを形成する。吸着パッド器120によってワークWが目標の位置に移動して停止すると、吸着制御部254からの遮断指令信号により吸着パッド器120の吸引を止め、ワークWが自然落下してダンボール箱600に収まる(ステップS113)。
【0038】
一方、ステップS109において、圧力判断部256は、第1から第7の圧力検知信号を入力して、これらの圧力信号に基づいて第1から第7の負圧検出値を求めると共に、第1の負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、図9に示すように、時間t2で、第4の負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、時間t3で、第4の予備遮断信号を発生する。圧力判断部256は、第1及び第2の予備遮断信号の数が予め定めた数として二つを越えると、異常断信号を発生する。吸着制御部254が電磁バルブB1~B7を閉成し、負圧流体を遮断してワークWを吸着パッド器120から解放してワークWが落下する(ステップS201)。
【0039】
次に搬送されるワークWを撮像情報に基づいて位置制御部252が位置指令信号を発生してアーム210を移動して吸着パッド器120がワークWの表面に接触する。この接触するタイミングで、吸着制御部254は、開放指令信号を発生して電磁バルブB1~B7を開放し、負圧流体を流して吸着パッド器120を用いてワークWを吸着する(ステップS203)。
【0040】
これにより、圧力判断部256は、吸着パッド器120がワークWの吸着に失敗したことを圧力検知信号に基づいて速やかに検知して、吸着パッド器120への電磁バルブB1~B7の負圧流体を遮断して、ワークWを強制的に落下させる。次に搬送されてくるワークWを吸着パッド器120によりワークWを吸着できる。したがって、吸着パッド器120により吸着したワークWの吸着に失敗して自然落下した後に、次に搬送されるワークWを吸着パッド器120により吸着する場合に比較して、ロボット装置200のアーム210によりワークWを搬送するスピードが増加し得る。ここで、予めワークの必要な吸着力により定まる吸着パッド20の数よりも、多めの吸着パッド20の数で吸着パッド器120が形成されているので、上記予備遮断信号の数が予め定めた数を二つ以上で異常遮断信号を発生する場合には、一つの吸着パッドにおいて負圧流体の漏れが発生して一つの予備遮断信号が発生しても、吸着パッド器120によりワークWを吸着し続けことができる。これは、吸着パッド器全体120では、一つの吸着パッド20の吸着力が減少したに過ぎず、残りの複数の吸着パッド20の負圧流体が漏れていないため、ワークWを吸着するのに要する吸着力を維持している。これにより、ロボット装置200の吸着パッド器120により継続してワークWを搬送可能なため、ロボット装置200の吸着パッド器120による搬送運転の冗長性を確保できる。
【0041】
本実施の形態によれば、ワークWが移動して停止した直後の状態では、第1の吸着パッド群121がワークWの傾斜部14Lの表面を吸着しており、第2の吸着パッ群122がワークWの偏り部14hの表面を吸着している。しかも、第2の吸着パッド群122の方が第1の吸着パッド群121よりも吸着パッド20の数が少ないので、第2の吸着パッド群122の両端部近傍でワークW内の流動体が上昇方向に移動して盛り上がる盛り上がり部14tを形成する。このため、上昇方向へも半流動体14が移動するので、ワークWの移動方向(X軸方向)の停止ショックの緩衝機能として作用する。
【0042】
殊に、吸着パッド20は上端部には、負圧流体が供給される供給通路を有したアダプタ22と、アダプタ22の下端部に連結されると共に、負圧流体を流すベローズ24とを備え、ベローズ24は、蛇腹状に軸方向に蛇腹状で伸縮自在に形成されているので、ワークW内の流動体が上昇方向に移動し易くなるので、上記緩衝機能が増大する。これにより、第1の吸着パッド群121にワークWの半流動体14の移動により作用する移動方向(X軸方向)の力が減少し得る。よって、吸着パッド器120によりワークWの吸着を維持し続け得る。
【0043】
さらに、第1の吸着パッド群121に第2の吸着パッド群122よりもワークWが移動していた方向にワークWの内容物となる半流動体14の移動も伴って大きな力が加わるが、第1の吸着パッド群121の方が第2の吸着パッド群122よりも吸着パッド20の数が一つ多いので、ワークWをしっかりと吸着し続け得る。
【0044】
また、吸着パッド20のスカート部28sは、ベローズ24とスカート部28sとが別の材質から形成され、スカート部28sがベローズ24よりも硬度が低く、ワークWの袋12となるプラスチックフィルムと同じ材料で形成されている。これにより、スカート部28sが袋12を吸引によってしわS1が形成されても、スカート部28sも形を変えて袋12との接触になじみ易くなり、より一層、ワークWとスカート部28sとの間の隙間の形成を抑制できる。
【0045】
本発明は、上記発明の実施の形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。
例えば、上記実施の形態では、吸着パッド器120は、第1の吸着パッド群121が偶数個の四つの吸着パッド20から成り、第2の吸着パッド群122は、第1の吸着パッド群121よりも、一つ少ない奇数個の三つの第2の吸着パッド20としたが、ワークWの大きさを考慮して第1及び第2の吸着パッド群121、122の数を定めると共に、第1の吸着パッド群121が偶数個の吸着パッド20から成り、第2の吸着パッド群122は第1の吸着パッド群121よりも、一つ少ない奇数個の吸着パッド20を有するようにしても良い。
【0046】
また、圧力判断部256は、第1から第7の圧力検知信号を入力して、これらの圧力検知信号に基づいて第1から第7の負圧検出値を求めると共に、第1から第7の負圧検出値が予め定められた負圧閾値よりも高いと、それぞれの第1から第7の予備遮断信号を発生して、第1から第7の予備遮断信号の数が予め定めた数として二つを越えると、遮断指令信号を発生するに形成されたが、予め定められた数を一つ以上で、異常断信号を発生しても良い。ワークWを吸着し続けるのに可能な吸着パッド器120を成す吸着パッド20の数が異なるからである。
【符号の説明】
【0047】
W ワーク、12 袋、14 半流動体、14h 偏り部、14L 傾斜部、20 吸着パッド、22 アダプタ、24 ベローズ、27 底板、27e 丸孔(第1の孔)、27L 長孔(第2の孔)、28 スカート、28s スカート部、28r リブ、120 吸着パッド器、121 第1の吸着パッド群、122 第2の吸着パッド群、125 固定板、170 カメラ(撮像手段)、200 ロボット装置、210 アーム、250 制御器、252 位置制御部(位置制御手段)、254 吸着制御部(吸着制御手段)、256 圧力判断部(圧力判断手段)、410 負圧流体供給器(負圧流体供給手段)、430 圧力検出器(圧力検出手段)、1100 ベルトコンベア、B1~B7 電磁バルブ(バルブ手段)、N1~N7 配管。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10