(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】虚像投射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2020094047
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】毛利 考宏
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 竜志
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107044(WO,A1)
【文献】特開平09-090510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光を生成する虚像投射装置であって、
光を出射する光源と、
該光源から出射した光を所定の角度分布の光として出射するマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイからの光を集光する結像レンズと、
前記結像レンズで集光された光によって照明され映像を生成する表示部と、
前記表示部で生成された映像を映像光として投射する投射部を備え、
前記マイクロレンズアレイはレンズセルの短辺方向が直線に並ばないように配置されて
おり、
前記投射部から投射された映像光を導光する導光部を備え、
前記マイクロレンズアレイはレンズセルの短辺方向が前記導光部の伝搬方向と一致して配置されていることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項2】
映像光を生成する虚像投射装置であって、
光を出射する光源と、
該光源から出射した光を所定の角度分布の光として出射するマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイからの光を集光する結像レンズと、
前記結像レンズで集光された光によって照明され映像を生成する表示部と、
前記表示部で生成された映像を映像光として投射する投射部を備え、
前記マイクロレンズアレイはレンズセルの短辺方向
が直線に並ばないように千鳥配置とし
、
前記投射部から投射された映像光を導光する導光部を備え、
前記マイクロレンズアレイはレンズセルの短辺方向が前記導光部の伝搬方向と一致して配置されていることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項3】
映像光を生成する虚像投射装置であって、
光を出射する光源と、
該光源から出射した光を所定の角度分布の光として出射するマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイからの光を集光する結像レンズと、
前記結像レンズで集光された光によって照明され映像を生成する表示部と、
前記表示部で生成された映像を映像光として投射する投射部を備え、
前記マイクロレンズアレイはレンズセルの短辺方向
が直線に並ばないように複数段にわたってずらして配置
されており、
前記投射部から投射された映像光を導光する導光部を備え、
前記マイクロレンズアレイはレンズセルの短辺方向が前記導光部の伝搬方向と一致して配置されていることを特徴とする虚像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイを用いた虚像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
虚像投射装置として、利用者が頭部に装着して利用するヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)が知られている。HMDは、画像パターンを表示する表示部と投射器の組合せによって映像を投射するものであって、利用者は映像の虚像を視覚により認識することにより、様々な情報を取得することができる。
【0003】
本技術分野における先行技術として特許文献1がある。特許文献1では、光源部からの光をマルチレンズアレイと結像レンズによって高効率に表示部を照明する虚像投射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高輝度を得るために表示部の照明をマイクロレンズアレイ(MLA)を使用したケーラー照明とする場合、投射器の射出瞳位置にMLAの表面が結像する。MLAのレンズセル内は光源の平面強度分布が反映されるため、MLA表面結像位置で周期的に強度分布を持ってしまう。これが輝度むらとして顕在化するという課題がある。特許文献1では、この輝度むらについて考慮されていない。
【0006】
発明の目的は、輝度むらを低減可能な虚像投射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その一例を挙げるならば、映像光を生成する虚像投射装置であって、光を出射する光源と、光源から出射した光を所定の角度分布の光として出射するマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイからの光を集光する結像レンズと、結像レンズで集光された光によって照明され映像を生成する表示部と、表示部で生成された映像を映像光として投射する投射部を備え、マイクロレンズアレイはレンズセルの短辺方向が直線に並ばないように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、輝度むらを低減可能な虚像投射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1におけるHMDの光学系である映像表示部の構成図である。
【
図2】
図1におけるHMDの光学系の光の結像位置を説明する概略図である。
【
図3】通常のMLAのレンズセル配列及びMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【
図4】実施例1におけるMLAのレンズセルの配置及びMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【
図5】実施例1におけるMLAのレンズセルの他の配置及びMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【
図6】実施例2におけるスペクトル分布の広い平行光を入れた場合の導光部の内部の映像光の伝搬を説明する図である。
【
図7】実施例2におけるスペクトル分布の広い近距離からの発散(収束)光を入れた場合の導光部の内部の映像光の伝搬を説明する図である。
【
図8】実施例2におけるMLAのレンズセルが縦横に整列され短辺方向が導光部の伝搬方向と一致する場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【
図9】実施例2におけるMLAのレンズセルの短辺方向が千鳥配置で、短辺方向が導光部の伝搬方向と一致する場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【
図10】実施例3におけるMLAのレンズセルが縦横に整列されMLAのレンズセルのアスペクト比が光源の発光領域形状のアスペクト比と近い場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【
図11】実施例3におけるMLAのレンズセルの短辺方向が千鳥配置で、MLAのレンズセルのアスペクト比が光源の発光領域形状のアスペクト比と近い場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、本実施例では、虚像投射装置の1例としてHMDを用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例におけるHMDの光学系である映像表示部の構成図である。
図1において、映像表示部10は、光源部20とMLA30と結像レンズ40からなる照明部50と、表示部60と、投射器70と、導光部80を備えている。表示部60は、別途入力される映像信号に基づいて、照明部50から入射した光を変調して映像情報が重畳された映像光を生成する。投射器70は表示部60からの映像光を投射し、導光部80で映像光を装着者の瞳孔に導く。導光部は、映像光を複製して広げることで、装着者の装着位置ずれがあっても映像光が装着者の瞳孔に到達できるようにする。
【0012】
図2は、
図1における光学系の光の結像位置を説明する概略図である。
図2において、
図1と同じ構成は同じ符号を付している。
図2において、光源部20は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光をそれぞれ出射する光源21として例えば3つのLEDを備え、これらの光源21から出射した光は、集光レンズ22で集光され図示しない色合成部で各色の光束を合成することで、フルカラーの映像光を提供するための照明光を生成する。
【0013】
MLA30は、入射面と出射面に対向したレンズを複数備えている。入射面に備えられたレンズは、入射した略平行光を出射面に備えているレンズに向かって集光する。一方、MLA30の出射面に備えられたレンズは、それぞれ対向する入射面に備えられたレンズの開口形状に対応した所定の角度分布の光を出射する
結像レンズ40は、MLA30が出射する光束を表示部60に向かって結像させる。高輝度を得るために表示部60の照明をMLA30を使用したケーラー照明とし、MLA30の入射面に備えられたそれぞれのレンズの開口の像を拡大して表示部0の全域に照明するので、結像される像は、それぞれのレンズの像が重ね合わせたものになる。
【0014】
表示部60からの光を投射器70にて投射することは、同時に投射器70の射出瞳位置にMLA30の表面の像を結像することになる。この結像面は虚像とは通常異なる位置にあるため、虚像を注視している状態では明瞭には見えないものの、ぼけた状態で瞳孔に入る。MLA30表面の像は輝度均一とすることは困難なため、ぼけた状態とはいえ、輝度むらとして認識される。この輝度むら解消にはMLA30から表示部60の間(結像レンズ40近辺が望ましい)に適度な拡散板を入れて像を強制的にぼかすことで解消できるが、拡散による効率の低下が避けられない。
【0015】
図3は、通常のMLAのレンズセル配列及びMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
【0016】
図3に示すように、通常のMLAのレンズセルは縦横に整列されている。一方、光源であるLEDの発光領域形状は、一般的に正方アスペクト比(1:1)であり、MLAのレンズセルが例えば16:9のアスペクト比であった場合、このようなLEDとの組み合わせでは、
図3に示すように、レンズセル1個の中にLEDの発光領域形状が映りこむ形となり、MLAのレンズセルの短辺方向の境界は暗くなりやすい。特に、一列に並ぶことで目立ちやすくなる。
【0017】
そこで、本実施例では、少なくとも、MLAのレンズセルの短辺方向が直線に並ばないように配置する。これにより規則性を減らし目立たなくすることで輝度むらが低減できる。
【0018】
図4は、本実施例におけるMLAのレンズセルの配置の一例である。
図4においては、MLAのレンズセルの短辺方向を千鳥配置とした例である。
【0019】
また、
図5は、本実施例におけるMLAのレンズセルの配置の他の例である。
図5においては、MLAのレンズセルの短辺方向を複数段にわたってずらして配置する。
図5では、4段にわたってずらし、それを繰り返すように配置している。
【0020】
なお、MLAのレンズセルの短辺方向が直線に並ばないようにする配置としては、
図4や
図5に限定されず、例えば、ランダムに配置してもよい。
【0021】
このように、本実施例によれば、輝度むらを低減可能な虚像投射装置を提供できる。
【実施例2】
【0022】
本実施例では、導光部内の伝搬のために回析を使用する場合、回析角度の波長依存性を利用した輝度むら低減について説明する。
【0023】
図6は、本実施例の前提となる、導光部の内部の映像光の伝搬を説明する図である。
図6において、入力される映像光として波長分布の広い映像光を入力した場合、例えば、波長λ1の入力In1と波長λ2の入力In2が導光部に入力されると、回折の場合、回折角度の波長依存性が強く、図示したように、波長によって伝搬位置がずれるため、波長分布の広い光(LEDなど)は、図における横方向の伝搬方向に連続的に射出光位置がOut1とOut2のようにずれて重なる。しかしながら、
図6においては、本来の映像は結像面が遠く略平行光のため入力光は略平行であり、出射光も略平行となり出射角度は同じとなる。ここで、人間の目は対象の点の方向(角度)を認識し、それを基に両眼の視差等による距離認識を経て、空間認識する。よって、観測者からは角度のみで像のずれが認識されるので、
図6における射出光位置のずれは像のずれに影響しない。
【0024】
図7は、波長分布の広い近距離からの発散(収束)光を入れた場合の導光部の内部の映像光の伝搬を説明する図である。
図7において、入力信号と出力信号は
図6と同様の符号を付しているが、MLA表面結像面は観測者の眼に近く非平行光であるため、入力光In1、In2は発散または収束光であり、
図6と同様に波長によって伝搬位置がずれ、出射光位置がOut1とOut2のようにずれると共に、出射角度が異なる。よって、射出光位置のずれは像位置のずれとして認識され、波長によって伝搬方向にずれた像が重なることでぼけてみえる。
【0025】
図8は、本実施例におけるMLAのレンズセルが縦横に整列され短辺方向が導光部の伝搬方向と一致する場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。MLAのレンズセルが通常配置で短辺方向が導光部の伝搬方向と一致する場合、広い波長幅を有する光源からの光を導光部に入力すると、導光部の回折角度の波長依存性により、
図8に示すように、実線、点線、鎖線が近似色の異なる波長とすると、導光部の伝搬方向に像がずれて観測される。よって、MLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の導光部の伝搬方向の輝度むらを軽減できる。なお、
図8では、導光部の伝搬方向のみ輝度むらが低減されるので一方向のみの低減であり、その低減効果は不十分である。
【0026】
図9は、本実施例におけるMLAのレンズセルの短辺方向が千鳥配置で、短辺方向が導光部の伝搬方向と一致する場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
図9においては、実施例1の
図4に示すように、MLAのレンズセルの短辺方向が直線に並ばないように千鳥配置にし、かつ、MLAのレンズセルの短辺方向が導光部の伝搬方向と一致するように配置する。これにより、2方向の輝度むらの低減が可能となる。言い換えれば、MLAのレンズセルの短辺方向が導光部の伝搬方向と一致し、千鳥配置のように導光部の伝搬方向と異なる方向にレンズセルの短辺方向をずらすように配置する。なお、本実施例においては、レンズセルの短辺方向が直線に並ばないように配置すればよく、千鳥配置に限定されるものではなく、例えば、
図5のようにレンズセルの短辺方向を複数段にわたってずらして配置してもよく、ランダム配置としてもよい。
【0027】
このように本実施例によれば、より輝度むらを低減可能な虚像投射装置を提供できる
【実施例3】
【0028】
本実施例では、光源の発光領域形状のアスペクト比とMLAのレンズセルのアスペクト比を近くすることでMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の輝度むらを低減する例について説明する。
【0029】
光源の発光領域形状が、MLAのレンズセルの形状、つまり照明したい領域の形状に近いほど、レンズアレイのパターン結像面に見える像のレンズセルの短辺方向の境界の暗い領域が小さくなり輝度むらが軽減される。また、光源の発光領域形状と投射する映像の形状が近いほど光利用効率は大きくなる。もちろん光源、レンズセル、投射映像の各形状アスペクト比が一致することで、むらは最小となり、光利用効率は最大となるので最も望ましいが、完全に一致させることは現実的に難しい。
【0030】
そこで、MLAのレンズセルのアスペクト比を光源の発光領域形状のアスペクト比に近づけることでMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の輝度むらを低減することが出来る。
【0031】
また、MLAのレンズセルのアスペクト比の値を光源の発光領域形状のアスペクト比の値と投射映像のアスペクト比の値の間とすることでMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の輝度むらを低減すると共に光利用効率も高くできる。
【0032】
図10は、本実施例における、MLAのレンズセルが縦横に整列され、MLAのレンズセルのアスペクト比が光源の発光領域形状のアスペクト比と近い場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
図10に示すように、例えば、光源であるLEDの発光領域形状が正方アスペクト比(1:1)であった場合、MLAのレンズセルのアスペクト比を16:9から16:10や、3:2、4:3、5:4のように、その比の値を1に近づけるように小さくすれば、
図3の場合に比べて、レンズセルの短辺方向の境界の暗い領域が小さくなり輝度むらが軽減される。
【0033】
また、
図11は、本実施例における、MLAのレンズセルの短辺方向が千鳥配置で、MLAのレンズセルのアスペクト比が光源の発光領域形状のアスペクト比と近い場合のレンズアレイのパターン結像面に見える像の模式図である。
図11において、
図10と同様にMLAのレンズセルのアスペクト比を光源の発光領域形状のアスペクト比に近づけ、かつ、MLAのレンズセルの短辺方向を
図4と同様に千鳥配置とすることで、より輝度むらを目立たなくさせ、輝度むら低減を実現できる。なお、本実施例においては、レンズセルの短辺方向が直線に並ばないように配置すればよく、千鳥配置に限定されるものではなく、例えば、
図5のようにレンズセルの短辺方向を複数段にわたってずらして配置やランダム配置としてもよい。
【0034】
このように本実施例によれば、光源の発光領域形状とMLAのレンズセルのアスペクト比を近づけることでMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の輝度むらを低減可能な虚像投射装置を提供できる。また、MLAのレンズセルのアスペクト比を光源の発光領域形状のアスペクト比と投射映像のアスペクト比の間とすることでMLAのレンズアレイのパターン結像面に見える像の輝度むらを低減すると共に光利用効率も高くできる虚像投射装置を提供できる。
【0035】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10:映像表示部、20:光源部、21:光源、22:集光レンズ、30:マイクロレンズアレイ(MLA)、40:結像レンズ、50:照明部、60:表示部、70:投射器、80:導光部