(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】生体吸収性骨インプラントおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/28 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
A61F2/28
(21)【出願番号】P 2020501270
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2018068659
(87)【国際公開番号】W WO2019011913
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】102017115403.5
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515121597
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテヒニーク ゲーエムベーハー ウント コーカーゲー
【氏名又は名称原語表記】KARL LEIBINGER MEDIZINTECHNIK GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbinger Strasse 10, 78570 Muehlheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】スウェネン, グウェン
(72)【発明者】
【氏名】レイナウエル, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ウルフラム, トビアス
(72)【発明者】
【氏名】アクス, アデム
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-511198(JP,A)
【文献】特表2001-517972(JP,A)
【文献】登録実用新案第3184817(JP,U)
【文献】特表2015-507491(JP,A)
【文献】米国特許第05769637(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106580520(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎骨発育不全の分野における骨の誤った位置を矯正するための充填要素としての使用に適した骨インプラントであって、前記骨インプラントは、前記骨の第1の骨部分に取り付けるための第1の部分および前記骨の第2の骨部分に取り付けるための第2の部分を有し、前記第1の部分は、前記骨インプラントの第1の側面に配置され且つ前記第1の骨部分に接触するように構成され、前記第2の部分は、前記骨インプラントの第2の側面に配置され且つ前記第2の骨部分に接触するように構成され、前記第1の部分は前記第2の部分に対向するように配置され、前記骨インプラントは、前記骨に固定されると前記第1の骨部分および前記第2の骨部分を互いに対して方向付けて互いからある距離に前記部分を保つように準備され、前記骨インプラントは、前記骨インプラントが前記第1の骨部分と前記第2の骨部分との間に挿入されて前記第1の骨部分に対する前記第2の骨部分の所定の向きを強制することができるよう、そのような幾何学形状を有し、そのように適合され、前記骨インプラントは、前記第2の側面の方向に突出する突起を有するフック形状を有する、骨インプラント。
【請求項2】
前記骨インプラントが、生分解性金属材料を含むか、またはそれらから構成され、および/または、吸収性ポリマーまたはセラミック材料を含むか、またはそれらから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の骨インプラント。
【請求項3】
少なくとも部分的に充填要素の形態の前記骨インプラントがトラス型またはグリッド型構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の骨インプラント。
【請求項4】
ウェブが、上部に接合され、および/または、互いに隣接して接合されて前記骨インプラントの3次元構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載の骨インプラント。
【請求項5】
前記ウェブが、互いに対して傾斜するように延び、接触領域および接続領域を有することを特徴とする、請求項4に記載の骨インプラント。
【請求項6】
前記ウェブ間に少なくとも1つのキャビティが形成されることを特徴とする、請求項4に記載の骨インプラント。
【請求項7】
複数のキャビティが、前記ウェブからある距離にある所定の領域に存在することを特徴とする、請求項4に記載の骨インプラント。
【請求項8】
前記骨インプラントが複合層で構成され、および/または、生成的製造方法で製造されることを特徴とする、請求項1に記載の骨インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の誤った位置、特に誤った顎位置を矯正するための充填要素としての使用に適した骨インプラントに関し、本インプラントは、骨の第1の骨部分に取り付けるための第1の部分と、骨の第2の骨部分に取り付けるための第2の部分とを有し、骨インプラントは、骨に固定されたときに第1の骨部分と第2の骨部分とを互いに対して方向付けて前記部分を互いからある距離に保ち、したがって容積を事前定義するように調製される。さらに、本発明は、そのような骨インプラントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨インプラントはまた、いわゆる顎骨発育不全でも使用される。顎骨発育不全は、歯の位置、歯の形状、顎の形状、互いに対する顎の位置、または頭蓋骨における顎の結合に関する歯、顎および/または咀嚼系の欠陥発達である。これにより、顎および顔領域における審美的および機能的障害の両方が生じる。前記誤った位置には、とりわけ、亀裂および摩擦雑音を伴う顎関節の誤った負荷、ならびに、痛みおよび運動制限などの不満が伴い得る。しかし、不満はまた、顎および顔領域を超えて広がり得る。これらには、顔面筋および咀嚼筋の痛みを伴う緊張、誤った歯の位置または誤った顎の位置を排除するための歯ぎしりまたは圧迫、鼻呼吸の障害、口腔の乾燥、首および肩の筋肉における不満、ならびに慢性的な背部または首の痛みが含まれる。前記不満はすべて、誤った顎位置によって引き起こされる可能性があり、したがって、外科的矯正により誤った顎位置を除去することは一般的な方法である。本発明はこの分野に位置づけられる。
【0003】
顎骨発育不全/誤った顎位置には複数のタイプがある。顎は、その位置が前部に遠すぎたりまたは後部に遠すぎたり、右または左にずれていたり、顔の骨における結合が高すぎたりまたは低すぎたりすることがある。したがって、下顎が上顎に対してリセットされる後方下顎位が、最も頻繁な顎骨発育不全形態である。
【0004】
最新の技術から、手術処置により顎骨を切断し、小さなチタンネジまたはチタンプレートにより新たなその所望位置に顎骨を固定することにより、前記誤った顎位置を矯正することが知られている。これに関して、WO97/01991A1は、その2つの端部のそれぞれにおいて2つの連続ネジ孔を含む縦方向の骨プレートを含む骨片固定装置を開示しており、(A)骨プレートは、プレートの縦方向軸の方向に延びる中央スロットを有し、(B)スロットの範囲を横方向に定めるウェブ上に配置されてプレートの縦の方向軸の方向に変位可能となるスライドが提供され、(C)スライドは、取付状態でプレートの縦の方向軸を横切って延びるスロットを有する。したがって、この装置では、骨が切断され、2つの部分が互いに対して位置決めされて顎の外側から配置されたプレートまたはネジを介して所望位置に取り付けられる。
【0005】
さらに、WO00/59409A1は、スペーサとして機能する骨インプラント装置に関する。さらに、RU2572355C1は、顎骨の切り抜き部分と同一の個々のインプラントを開示している。WO03/03787A1から、患者固有のインプラントの製造方法が知られている。さらに、WO98/12995A2は、正確に適合する骨インプラントを開示している。
【0006】
しかし、一方では、骨の外側からの固定が顔において見えるため、患者の審美性に影響を与えることが、常に最新の技術の欠点である。一方、固定プレートまたは固定ネジを再び取り外すには、2回目の手術処置が必要である。また、切断のこの領域では、たとえくぼみが皮膚で覆われているとしても、くぼみが明らかなままである。これは、審美的に非常に貧弱である。2つの骨部分のお互いの面する向きが手術処置中に実行されて、例えばスロットを介して調整されなければならないことが、別の欠点である。その結果、手術の成功と審美的および機能的な結果とは、外科医のスキルに大きく依存する。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、最新の技術の欠点を回避するか、または少なくとも軽減することである。特に、骨インプラントが身体によって分解されることができて自然の骨に変換されるという事実により、最適な手術結果を確保し、起こりうる2回目の処置を回避する骨インプラントが提供されるべきである。骨再生製品および骨置換材料は知られているが、しかし、それらは顆粒、硬化性セメント、または単純な幾何学形状のプレハブ成形体として提供されるため、それらは、不適切であるか、または、適合した形状および構造を有するインプラントとしての置換について少なくとも制限された範囲でのみ使用可能であるにすぎない。
【0008】
骨インプラントはしたがって、複数の機能を採用することが意図される。そのため、一方では、外科的置換中に隙間が作成されて続いて維持され、他方でそれにより、自己骨置換材料を治癒過程でそこに配置でき、特に前記隙間へと成長/再成長させることができる。この目的のために、骨インプラントは、互いに(完全に)分離された2つの骨部分の間の隙間を埋めて容積を満たす充填材として設計される。治癒過程で、体自身の骨が充填材を吸収しながら充填材内へ成長すると、前記充填材は、完全にまたは少なくとも主に体の骨に置換される。皮下のくぼみなどの望ましくない解剖学的逸脱は、避けられるべきである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、顎骨発育不全の分野における骨の誤った位置を矯正するための充填剤としての使用に適した骨インプラントであって、骨インプラントは、骨の第1の骨部分に取り付けるための第1の部分および骨の第2の骨部分に取り付けるための第2の部分を有し、骨インプラントは、骨に固定されると第1の骨部分および第2の骨部分を互いに対して方向付けて互いからある距離に前記部分を保つように準備され、骨インプラントは、骨インプラントが第1の骨部分と第2の骨部分との間に挿入されて第1の骨部分に対する第2の骨部分の所定の向きを強制することができるよう、そのような幾何学形状を有し、そのように適合される、骨インプラントが提供される。
【0010】
本発明によれば、本発明の目的は、骨インプラントが第1の骨部分と第2の骨部分との間に挿入されて第1の骨部分に対する第2の骨部分の所定の向きを強制することができるよう、骨インプラントがそのような幾何学形状を有し、そのように適合されるという事実によって達成される。言い換えると、これは、骨インプラントが外側から配置されず、つまり、骨部分において外向きに突出はするが、スペーサ/隙間充填材/充填要素/プレースホルダまたは骨くさびの形であることを意味する。骨インプラントはしたがって、例えば骨の縦方向において挿入される。言い換えれば、これはまた、骨インプラントが自然の骨を置換するような位置に挿入される、つまり、誤った位置を矯正する骨片を形成することを意味する。その結果、骨インプラントは、2つの骨部分について板状および/または外部からの外側固定を構成するようには構成されないが、骨の元の/所望の形状を再現する内部固定を構成する。本発明による骨インプラントは、インプラントが挿入されると、第1および第2の骨部分が強制的に方向付けられ、すなわち、2つの骨部分の位置を、例えば手術処置中、もはや手動で必ずしも再調整する必要がないように構成される。もちろん、特定の困難なケースでは、依然として微調整が可能であるべきである。
【0011】
これは、骨インプラントを移植するときに、第1の骨部分および第2の骨部分の強制的な向き、および、所望の最適位置に対応する互いに対向する2つの部分のそれぞれの位置が達成されるという利点を提供する。2つの骨部分の位置をしたがって、手術処置中に必ずしも調整する必要がなくなり、それにより、一方ではより良い結果が得られ、他方では手術時間を大幅に短縮することができる。もっとも、必要に応じて調整を行うことができる。
【0012】
言い換えれば、プレースホルダが使用され、それにより、位置情報が伝達される。前記プレースホルダの機械的完全性により、安定した固定が保証される。
【0013】
有利な実施形態は従属請求項で請求され、以下で詳細に説明される。
【0014】
加えて、第1の部分が第1の骨部分に接触するように構成され、第2の部分が第2の骨部分に接触するように構成され、第1の部分が第2の部分に対向するように配置されると有用である。この文脈において対向とは、骨インプラントの第2の部分が構成される第2の側面/表面とは異なる骨インプラントの側面/表面である骨インプラントの第1の側面/表面に、第1の部分が配置され、第1の側面および第2の側面が互いに対して直径方向に配置されることを意味する。第1の骨部分の第1の側面におよび第2の骨部分の第2の側面に接触する骨インプラントによって、骨インプラントの幾何学形状および骨部分の互いに対する置換がしたがって、規定される。特に、一方では、2つの骨部分間の距離(例えば、互いからの2つの側面の距離による)が矯正され、他方では、相対的置換(例えば、2つの側面の互いに対する傾きによる)は、垂直方向、縦方向、または幅方向において決定される。
【0015】
骨インプラントの幾何学形状が骨の個々の誤った位置に適合される、すなわち、矯正幾何学形状に対応して、すなわち誤った位置と所望位置との差に対応して構成されると、特に有利である。これはまた、過剰矯正として構成または導入することもでき、つまり、充填材/プレースホルダとして機能する骨インプラントが骨から突出するようにすることができる。この場合、過剰な骨溶解を防ぐことができる。このようにして、事前に、つまり、個々の骨インプラントが作成されるときに、どのように顎骨発育不全が矯正されるべきかを決定できる。
【0016】
さらに、骨インプラントが生分解性金属材料を含むか、またはそれらから構成されると、および/または、吸収性ポリマーまたはセラミック材料を含むか、またはそれらから構成されると好ましい。特に、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄合金、バリウムおよびストロンチウムが試験に耐えた。ポリマーおよびセラミックのうち、それらの複合材料も試験に耐えた。この文脈において、特にPDLLA、PLGA、PLA、PGA、キトサン繊維/粒子、HAP、CaCO3、アルファ/ベータTCP、ヒドロキシアパタイト、二相性リン酸カルシウム(BCP)などのリン酸カルシウムなどの材料については言及する価値がある。すべての生分解性金属材料およびすべての吸収性ポリマー、セラミック、およびそれらの複合材料は基本的に適しているが、それらはすべて特定の利点および特色を有する。Ca3(PO4)2O3は、ベータTCPおよびヒドロキシアパタイトの混合物と同様に適している。前記材料にHAを単独で添加する使用も考えられる。
【0017】
天然の骨は大部分がリン酸カルシウムからなり、それにより、合成リン酸カルシウム化合物が適切な骨置換材料を構成するため、充填材がカルシウムおよびリン酸塩を含むとまた有利である。
【0018】
さらに、骨インプラントがリン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)を含むと有利である。特に、前記材料は生体吸収性骨インプラントの形成に適していることが判明した。リン酸三カルシウムは、骨置換材料および骨増強材料として頻繁に使用される。
【0019】
さらに好ましくは、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)がとりわけ形状、構造、生体吸収性、耐性および強度に関して適切な特性を示すため、骨インプラントは、この材料を含み得る。
【0020】
骨インプラントは、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)、ヒドロキシアパタイト(HA)および/またはβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)とヒドロキシアパタイトとの混合物(二相性リン酸カルシウム、BCPと略される)を含むことも可能である。
【0021】
また、血液製剤(PRP)、細胞、ならびに/または、タンパク質、ペプチドもしくはDNA、RNAおよび/もしくはオリゴヌクレオチドなどの生物活性分子、を使用できる。
【0022】
安定した挿入製品を得るために、少なくとも部分的に充填材の形態の骨インプラントがトラス型またはグリッド型の構造を有する場合、その価値が証明されている。有利なことに、閉じたまたは破損したエッジは、トラス型またはグリッド型構造の外側を取り囲み得る。
【0023】
ウェブが上部に接合され、および/または、隣り合わせで接合されて3次元構造を提供する場合、すべての交差部で接触して体積に関して適合している大量の充填材を使用でき、これはトラブルのない使用に結びつけられた初期最低強度をも有する。
【0024】
使用するのに十分な強度を有する骨の成長に適した構造を可能にするために、ウェブが互いに対してほぼ直角に傾斜するように延び、1つのウェブから他のウェブおよび/またはエッジへの単一材料の遷移が行われる接触領域および接続領域を有すると、建設的である。
【0025】
少なくとも1つのキャビティがウェブ間に形成されると有利である。
【0026】
有利な例示的実施形態はまた、複数のキャビティがウェブからある距離にある所定の領域に提供されることを特徴とする。
【0027】
ウェブは、好ましくは閉じた孔壁を有する孔を画定するように構成することができる。代替的または追加的に、ウェブにおいてまた、例えばピン、シリンダの形態で、外科医のためにハンドルが提供されてもよい。ハンドルにおいて、好ましくは充填材の表面、特に外側に設けられたウェブに続いて、所定の破断点が存在しされてもよい。ウェブは、ストランドタイプ状に、またはストランドとして延びされてもよい。それらは直線または曲線であってもよい。ジグザグパターンもまた考えられる。曲がりまたは曲率の場合、一定の曲がり/曲率、または、長さにわたって増加/減少することが実現でき、これは強度の面で利点を伴い得る。
【0028】
ウェブは、密集したボールパッケージの形態であり得、隣接するキャビティは、「ボール」の欠落によって形作られる。ウェブは、1μm~100μmのサイズ/(平均)直径で、粒子/粉末/顆粒/塊およびそれらの断片によって構造化され得る。
【0029】
骨インプラントが、塊状インプラント、すなわち、実質的に凹部および空気含有物なしで形成される堅固で中実なインプラントの形態で、および/または、(ミクロ/マクロ)構造化または多孔性インプラント、すなわち、グリッド構造および/または複数の凹部および/または空気含有物を有するインプラントとしてであると、さらに有利である。用途に応じて、骨インプラントにはしたがって、さまざまな利点を提供できる。特に、このように、骨インプラントの吸収率/強度と重量とに適切に影響を与えることができる。
【0030】
凹部とグリッド構造/ウェブ/繊維とにより、成長因子および/または自己/類似もしくは異種細胞/幹細胞などの細胞系などの血液ベース生成物および/またはタンパク質を同時に吸収することができる。製造されたインプラントの特定の親水特性により、前記成分とインプラント構造との間の迅速な反応が生じ、後で臨床結果の改善がもたらされる。
【0031】
さらに、骨インプラントが複合層から作られていると、および/または、生成的製造方法で製造されていると、有用である。したがって、個々の骨インプラントを特に迅速に生成でき、その後、接合させて複合骨インプラントを形成できる。骨インプラントの機能は損なわれない。
【0032】
好ましい例示的実施形態は、骨インプラントがセラミック粒子(スラリー)を含む有機マトリックスを含むという事実により、優れている。
【0033】
特に、粒子は、均質な分散液を形成するために、すなわち、マトリックスに均一に分布するために好ましい。このように、骨インプラントは、形状全体にわたって同等または類似の構造特性を示す。
【0034】
また、例えばデジタル光処理(DLP)などの選択的露光により、セラミック粒子(1~100μm)を含む有機マトリックスを硬化させることができる。このように、骨インプラントの特に堅固な構造が生成される。強度を高めるために、異なる熱処理プロセスを使用することもできる。
【0035】
個々の層が硬化されるとさらに有利であり、これにより、特に均一な硬度分布が得られ、したがって硬化プロセスを加速することができる。
【0036】
さらに、骨インプラントが生成的製造プロセスで製造されると有利である。これは、計算モデルに基づいて骨インプラントを個別に作成するのに役立つ。3Dプリンティング、レーザ焼結、サンドイッチ技術などの生成的/付加的方法では、インプラントはコンピューターモデルから直接、製造できるため、患者ごとに、したがって個々の骨インプラントごとに別個の金型などを製造する必要がない。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による骨インプラントの製造方法が提供され、患者の顎の解剖学的構造/骨の解剖学的構造が1つのステップで検出され、その後、1つのステップで、誤った骨の位置の矯正のために骨インプラントの幾何学形状が計算されて生成的/付加的に製造される。好ましくは、硬化した骨インプラントを少しずつ硬化中にベッドから持ち上げ、液体内の新しい粒子を既に部分的に硬化した骨インプラントの下に再供給し、レーザなどの照射により再び硬化させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下、本発明を図面により説明する。
【
図1】
図1は、第1の例示的実施形態における本発明による骨インプラントの斜視図を示す。
【
図2】
図2は、第2の例示的実施形態における骨インプラントの斜視図を示す。
【
図3】
図3は、下顎骨に関して埋め込まれた状態の第1の例示的実施形態における骨インプラントの斜視図を示す。
【
図4】
図4は、下顎骨に関して埋め込まれた状態の第2の例示的実施形態における骨インプラントの斜視図を示す。
【
図5】
図5は、骨インプラントの製造方法の方法ステップの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図は単に概略図であり、本発明の理解のためだけに役立つ。同様の要素には、同様の参照番号が付けられている。個々の例示的実施形態の異なる特徴は、自由に交換され得る。
【0040】
図1は、顎骨発育不全の分野において、骨の誤った位置、特に誤った顎位置を矯正するときに骨の隙間を埋めるための充填材として使用される骨インプラント1を示す。骨インプラント1は、骨の第1の骨部分3に取り付けるための第1の部分2と、骨の第2の骨部分5に取り付けるための第2の部分4とを有する。骨インプラント1は、骨に固定されたときに、それが第1の骨部分3と第2の骨部分5とを互いに対して方向付けて前記部分を互いにある距離に保つように準備される。骨インプラント1はしたがって、骨インプラント1を第1の骨部分3と第2の骨部分5との間に挿入できるように適合された、そのような幾何学形状を有する。その結果、骨インプラント1を挿入すると、第1の骨部分3に対する第2の骨部分5の所定の方向が強制される。
【0041】
骨インプラント1の第1の部分2は、骨インプラントの第1の表面6に形成され、骨インプラント1の第2の部分4は、第2の表面7に形成される。2つの表面6、7は、互いに対向するよう配置される。さらに、下側において、骨インプラント1は表面8を含み、上側において、骨インプラント1は、挿入状態で骨の輪郭に適合する表面9を含む。
図1の骨インプラント/インプラント1は、実質的に長方形の形状をとる。しかし、インプラント1の形状は、誤った骨の位置に応じて大きく変化し得る。
【0042】
図2のインプラント1は、「1」の字形状または第2の側面7の方向に突出する尖った突起10を有するフックの形状をとる。挿入状態では、第2の骨部分5は第2の側面7におよび突起10の内側に接触する。突起10の外側は、表面8によって形成される。
【0043】
図1のインプラント1および
図2のインプラント1の両方において、第1の表面6および第2の表面7は、インプラント1の使用が2つの骨部分3、5の間隔および相対回転の両方を達成するのを助けるように互いに向かって傾斜している。
【0044】
図3および
図4ではそれぞれ、
図1および
図2のインプラントがそれぞれ顎に挿入された状態で示されている。骨インプラント1の第1および第2の表面6、7はそれぞれ、第1および第2の骨部分3、5のそれぞれと面一になるように接触する。骨インプラント1は、それが複数の凹部12を有する一種の多孔性インプラントを形成するようグリッド構造11を有するよう設計され得るか(
図1または
図2を参照)、または、中身のあるインプラントとして設計され得る(
図3または
図4を参照)。
【0045】
骨インプラントは、締結具(図示せず)による固定に使用される貫通孔13の形態の複数の凹部を含む。貫通孔13は、骨インプラント1の縦方向に垂直であり、したがって骨の縦方向にも垂直な方向において構成される。
【0046】
図5は、そのような骨インプラント1の製造方法のプロセスステップを示す。第1のステップ14では、例えばコンピュータ断層撮影により患者の顎の解剖学的構造/骨の解剖学的構造が検出される。第2のステップ15では、骨の誤った位置を矯正するために骨インプラント1の幾何学形状が計算される。とりわけ、骨を切断するための交差線が決定され、幾何学形状、特に第1の部分2の幾何学形状および第2の部分4の幾何学形状が交差線に適合される。続いて、第3のステップ16で、(計算された)骨インプラント1の幾何学形状が、非常に薄く規定された複数層に分解される。続く第4のステップ17では、例えば生成的製造方法で複数層が生成され、必要に応じて、熱処理によりその強度がさらに増加される。その後、第5のステップ18で、複数層が上下に積み重ねられ、骨インプラントが形成されるように互いに接続される。
【符号の説明】
【0047】
1 骨インプラント/インプラント
2 第1の部分
3 第1の骨部分
4 第2の部分
5 第2の骨部分
6 第1の面
7 第2の面
8 表面
9 表面
10 突起
11 グリッド構造
12 凹部
13 貫通孔
14 第1のステップ
15 第2のステップ
16 第3のステップ
17 第4のステップ
18 第5のステップ