(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】プラスティック材料の気化装置、ならびにプラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置および方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20230704BHJP
C10J 1/10 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
C10J1/10
(21)【出願番号】P 2020531400
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2019028647
(87)【国際公開番号】W WO2020017658
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018136987
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019015437
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516331672
【氏名又は名称】株式会社X-Brain
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鹿内 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真道
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-305076(JP,A)
【文献】特開2004-269838(JP,A)
【文献】特開平04-050923(JP,A)
【文献】特開2014-139263(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104258768(CN,A)
【文献】特開平09-075697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/12
C10J 1/10
B01F 27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部において円筒部分を有しており、かつ下部において逆円錐部分もしくは逆円錐台部分を有している容器、当該容器内の上部から下部まで伸びている軸、および当該軸を中心に回転する撹拌翼を備えており、
上記撹拌翼が、上記軸を通る平面に沿って4つ2組として設けられており、各組の撹拌翼のそれぞれは互いに、上記軸を中心にして逆方向に伸びており、当該撹拌翼の一方の組は、当該撹拌翼の他方の組が上記軸に接続されている位置より、当該軸の下側先端に近い位置に接続されており、
上記撹拌翼のうち一方の組および他方の組はそれぞれ、
(a)横断面の形状として、
前記他方の組が湾曲する凸面および
前記一方の組が当該凸面と逆向きの湾曲する凹面を有しており、当該湾曲する凹面は、上記撹拌翼が回転するとき前方を向いている;または
(b)横断面の形状として、半円を有しており、当該一方の組の半円における平面は、上記撹拌翼が回転するとき前方を向いており、当該他方の半円における円弧は容器上部を向いている、
プラスティック材料を気化させる装置。
【請求項2】
上記円筒部分の天面に、逆円錐台形を有している投入口をさらに備えており、抵抗加熱部が、逆円錐台形の軸方向に
沿って当該投入口の外側壁面に設けられている、請求項1に記載のプラスティック材料を気化させる装置。
【請求項3】
少なくとも上記逆円錐部分もしくは逆円錐台部分を外部から加熱する炉、および第2の容器に接続されている流路を、さらに備えている、請求項1または2に記載のプラスティック材料を気化させる装置。
【請求項4】
八角形の内面を有している筒状継手、および軸回転によって当該筒状継手に動力を伝える駆動軸をさらに備えており、
上記軸および駆動軸は八角形の柱状であり、上記軸の上側先端は、上記筒状継手の下部から挿入されており、上記駆動軸は、上記筒状継手の上部から挿入されており、上記駆動軸の下側先端は
、逆八角錐台を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のプラスティック材料を気化させる装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラスティック材料を気化させる装置;
1次冷却槽;および
2次冷却槽
を備えており、
(1)上記容器および上記1次冷却槽、ならびに(2)上記1次冷却槽および上記2次冷却槽のそれぞれは、流路によって接続されており、
上記円筒部分の天面に、逆円錐台形を有している投入口をさらに備えており、抵抗加熱部が、逆円錐台形の軸方向に
沿って当該投入口の外側壁面に設けられている、
プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置。
【請求項6】
上記1次冷却槽は加熱部を備えている、請求項5に記載のプラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置。
【請求項7】
上記2次冷却槽は冷媒によって冷却されている、請求項5または6に記載のプラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置。
【請求項8】
請求項5に記載のプラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置を用いて、プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す方法であって、
プラスティック材料を上記投入口に投入する工程;
上記投入口を加熱することによって、上記プラスティック材料の一部を流動化させる工程;
上記容器において、上記撹拌翼を用いて撹拌しながら、流動化されている上記プラスティック材料を加熱し、当該プラスティック材料に含まれている炭化水素化合物を気化させる工程;
気化されている上記炭化水素化合物を、上記容器より低い温度に維持されている上記1次冷却槽および2次冷却槽に送る工程
を含んでいる、
プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスティック材料の気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスティック材料を構成している複数の炭化水素成分を分離する目的で、プラスティック材料を加熱することによって、当該材料を気化させる装置が知られている。このような装置は、プラスティック材料に伝わる熱量を均等にするために、加熱容器の内部においてプラスティック材料を撹拌する撹拌板を備えていることが一般的である(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-95678号公報(1997年4月8日公開)
【文献】特開平7-37621号公報(1995年4月26日公開)
【文献】特開平7-74338号公報(1995年8月9日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような装置における撹拌板の横断面は、一般的に平板状またはL字型を有している。平板状の撹拌板は、加熱によって溶融したプラスティック材料を十分に撹拌できず、L字型の撹拌板は、溶融したプラスティック材料を長くかぎ状の部分に捉え、プラスティック材料から熱を奪ってしまう。
【0005】
本発明の一態様は、溶融したプラスティックを不要に捉えることなく、溶融したプラスティック材料に対して等しく熱を伝えることのできる、プラスティック材料の気化装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプラスティック材料を気化させる装置は、上部において円筒部分を有しており、かつ下部において逆円錐部分もしくは逆円錐台部分を有している容器、当該容器内の上部から下部まで伸びている軸、および当該軸を中心に回転する撹拌翼を備えており、上記撹拌翼が、上記軸を通る平面に沿って4つ2組として設けられており、各組の撹拌翼のそれぞれは互いに、上記軸を中心にして逆方向に伸びており、当該撹拌翼の一方の組は、当該撹拌翼の他方の組が上記軸に接続されている位置より、当該軸の下側先端に近い位置に接続されており、上記撹拌翼のうち一方の組および他方の組はそれぞれ、(a)横断面の形状として、湾曲する凸面および当該凸面と逆向きの湾曲する凹面を有しており、当該湾曲する凹面は、上記撹拌翼が回転するとき前方を向いている;または(b)横断面の形状として、半円を有しており、当該一方の組の半円における平面は、上記撹拌翼が回転するとき前方を向いており、当該他方の半円における円弧は容器上部を向いている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、溶融したプラスティックを不要に捉えることなく、溶融したプラスティック材料に対して等しく熱を伝えることのできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る装置の構成を表わす図であり、
図1の1010は、装置全体の断面を表わし、
図1の1020は、1010における、4つの撹拌翼のA-A’断面およびB-B’断面を表わし、
図1の1030は、投入口3の拡大斜視図である。■補足事項■
図1に付ける番号を、外国出願用に、形式的に変更致しました。これ以降の説明にも同じ変更を加えております。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る装置の構成を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔プラスティック材料の気化装置〕
本発明の一実施形態は、プラスティック材料の気化装置である。当該気化装置は、上部において円筒部分を有しており、かつ下部において逆円錐部分もしくは逆円錐台部分を有している容器、当該容器内の上部から下部まで伸びている軸、および当該軸を中心に回転する撹拌翼を備えており、上記撹拌翼が、上記軸を通る平面に沿って4つ2組として設けられており、各組の撹拌翼のそれぞれは互いに、上記軸を中心にして逆方向に伸びており、当該撹拌翼の一方の組は、当該撹拌翼の他方の組が上記軸に接続されている位置より、当該軸の下側先端に近い位置に接続されており、上記撹拌翼のうち一方の組および他方の組はそれぞれ、(a)横断面の形状として、湾曲する凸面および当該凸面と逆向きの湾曲する凹面を有しており、当該湾曲する凹面は、上記撹拌翼が回転するとき前方を向いている;または(b)横断面の形状として、半円を有しており、当該一方の組の半円における平面は、上記撹拌翼が回転するとき前方を向いており、当該他方の半円における円弧は容器上部を向いている。
【0010】
上記気化装置の一例(特に上記(a)の場合)を、
図1を参照して、以下に説明する。
図1の1010は、装置全体の断面を表わし、
図1の1020は、1010における、4つの撹拌翼のA-A’断面およびB-B’断面を表わし、
図1の1030は、投入口3の拡大斜視図である。
【0011】
気化装置10は、プラスティック材料を、加熱によって気化させる容器7を備えており、容器7の内部には、八角柱5a(軸)および八角柱5aに接続されている4つの撹拌翼1a~dが収納されている。容器7の上面には、投入口3が開けられており、容器7の上部壁面には、プラスティック材料の加熱によって発生した気体を、液化装置30に導く管9が設けられている。八角柱5aの上端は、八角形の内面を有している継手5bに対してその下方から挿入されている。
【0012】
八角形の横断面を有している駆動軸5cの下端は、気化装置10の運転前に、継手5bに対して上方から挿入される。
図1の1010に示すように、駆動軸5cの下側先端は、先端に近づくにしたがって横断面積が小さくなる、逆八角錐台(テーパ状)を有している。八角柱5aおよび駆動軸5cの横断面はそれぞれ、ほぼ等しい面積を有している正八角形であり、継手5bの内面も正八角形であり、当該横断面よりわずかに大きい面積を有している。したがって、継手5b上部における八角形の開口に部分的に挿入した後に、駆動軸5cを徐々に下げると、八角柱5aおよび駆動軸5cの中心が一致し、八角柱5aおよび駆動軸5cを構成する各壁面が揃う。駆動軸5cの逆八角錐台が、継手5bの内面に対して滑り、かつ回転し、当該逆八角錐台および内面とのずれが、駆動軸5cの重量にしたがって修正される。
【0013】
図1では省略されているが、駆動軸5cは、モータなどの動力に接続されており、当該動力からの回転エネルギーを、継手5bおよび八角柱5aを介して、各撹拌翼1a~dに伝える。容器7は、撹拌翼1aおよびcが伸びている高さまでが少なくとも、液体炭化水素燃料の燃焼を利用する加熱炉に覆われている。
【0014】
図1の1030に示すように、プラスティック材料の投入口3は、上部に広い開口を有しており、下部に上部より小さい開口を有している。投入口3の外径は、およそ逆円錐台形である。投入口3の周面には、繰り返し波打っている導電性の抵抗加熱線3aが、当該逆円錐台形の軸方向に沿って設けられている。抵抗加熱線3aおよび投入口3の周面は、他の部材によって覆われていない。この例における投入口3では、抵抗加熱線3aの、過剰な加熱およびそれに伴う脱落を防ぐために、抵抗加熱線3aは、投入口3の周方向に巻き付けられておらず、抵抗加熱線3aの放熱を妨げる他の部材によって覆われていない。
【0015】
投入口3の内部は、抵抗加熱線3aから受け取る熱によって、約300~400℃(後述する合成樹脂の融点をわずかに超える温度)に維持されている。投入口3の上部から投入されたプラスティック材料は、投入口3の壁面からの熱を受け取って部分的に溶融する。溶融したプラスティック材料は、当該壁面を伝って投入口3の下部付近に達する。完全に溶融している(低い粘性の)プラスティック材料は、容器7の内部に落下し、部分的に溶融している(高い粘性の)プラスティック材料は、粘性が低くなるまで、当該下部付近に留まる。投入口3の下部に形成されている開口には、バルブなどの開閉部材が取り付けられていない。当該下部付近に留まっている高い粘性のプラスティック材料が、当該開口を塞ぐ役割を果たすためである。したがって、容器7において気化した成分のほとんどは、当該開口から気化装置10の外部に放出されない。
【0016】
容器7の内部の温度は、上記プラスティック材料の一部を気化させる温度から選択され、容器11の内部の温度は、容器7において気化された成分の一部を液化させる温度から選択される。一例として、気化装置10における容器7の内部は、加熱炉からの熱を受け取って400℃~500℃に維持されており、液化装置30における容器11の内部は、400℃未満に維持されている。他の例として、気化装置10における容器7の内部は、加熱炉からの熱を受け取って350℃~450℃に維持されており、液化装置30における容器11の内部は、容器7の内部より低い温度に維持されている。いずれの例でも、容器7において気化した成分のほとんどは、上述のように投入口3から放出されずに、管9を通って容器11に導かれる。
【0017】
投入口3の下部にある開口から落下した、プラスティック材料は、容器7の逆円錐台部分に溜まり、当該逆円錐台部分を介して、上記加熱炉から熱をさらに受け取る。投入口3の開口から落下したプラスティック材料は、撹拌翼1a~1d(特に1bおよび1d)にほとんど捉えられない。
図1の1020に示すように、撹拌翼1bおよび1dは、容器7の上方から壁面に向いている凸状の曲面を有しているからである。凸状の曲面の上に落下したプラスティック材料は、当該曲面を滑り落ち、容器7の底部に達する。
【0018】
逆円錐台部分に溜まったプラスティック材料は、撹拌翼1a~dの軸回転によって混合され、逆円錐台部分からほぼ等しく熱を受け取る。撹拌翼1a~d(特に1aおよび1c)の軸回転は、撹拌されているプラスティック材料を、ほとんど捉えない。
図1の1020に示されるように、撹拌翼1aおよび1cは、上方から壁面に向いている凹状の曲面を有しているからである。例えば、撹拌されているプラスティック材料は、撹拌翼1aの軸回転(図面における1aの右への移動)によって、当該曲面上を滑り、当該曲面に持ち上げられ、撹拌翼1aの後方に移動する。
【0019】
撹拌翼1a~dの軸回転は、プラスティック材料の撹拌と同時に、固形の混入物(500℃程度では溶融しない金属など)を、逆円錐台部分にふるい落とすことができる。溶融および気化しない固形物は、溶融しているプラスティック材料よりも容易に撹拌翼1a~dから滑りおち、次第に沈降していく。
【0020】
以上のように、容器7において均質に撹拌されることによって効率的に気化された成分は、投入口3から外部に放出されることなく、管9を通って液化装置30の容器11に達する。
【0021】
液化装置30は、容器11、ヒータ13および管15、17を備えている。気化装置10から容器11に達した、気化された成分は、部分的に凝結し、液体炭化水素として管17から取り出される。凝結しなかった成分は、さらなる液化装置(図示せず)に、管15を介して送られる。また、液体炭化水素を、管17から取り出さずに、ヒータ13による加熱によって、ふたたび気化させ、さらなる液化装置に送り出してもよい。この例では、ヒータ13は、縦向き(容器11の下部から、上部に向かって)に配置されているが、横向き(容器11の側面から内部に向かって)に配置され得る。なお、管17から取り出された液体炭化水素は、気化装置10の下部を覆う加熱炉における燃焼に利用され得る。
【0022】
プラスティック材料は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレン(PE)など)を含んでいる種々の材料である。廃棄物を有効利用できるという観点から、プラスティック材料は、廃棄物から回収された材料であることが好ましい。
【0023】
〔プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置〕
本発明における他の実施形態は、プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置(以下、取り出し装置)であり、当該取り出し装置は、気化装置(
図1に示されている気化装置10)および2つの冷却槽を備えている。当該冷却槽の一方(1次冷却槽)として、当該取り出し装置では、
図1に示されている液化装置30が利用されている。以下では、
図1を用いた説明と重複しない点のみを、本実施形態に係る取り出し装置ついて、
図2を参照して説明する。
【0024】
図2に示されているように、取り出し装置100は、気化装置10、冷却槽30(1次冷却槽)および冷却槽50(2次冷却槽)を備えている。管9は気化装置10および冷却槽30を、管15は冷却槽30および冷却槽50を、繋いでいる。冷却槽50は、取り出し装置100の運転時には、冷媒(例えば水)によって冷却されている(図示せず)。したがって、取り出し装置100の運転時に管17および21を閉じ、管19を解放すると、気化装置10から管9を通って冷却槽30に達した気体は、さらに管15を通って冷却槽50に達する。
【0025】
取り出し装置100は、大きく分けて2つの運転モードを実行する。運転モードaではヒータ13を動作させ、運転モードbではヒータ13を動作させない。したがって、運転モードbのみを実行する取り出し装置100は、ヒータ13を備えていなくてもよい。
【0026】
運転モードaでは、冷却槽30は、ヒータ13からの熱によって、気化装置10より低く、かつ冷却槽50より高い温度に維持される。運転モードaでは、気化装置10(最も高温)から送り出される気体は、冷却槽30(2番目に高温)および冷却槽50(最も低温)を経ることによって、段階的に冷却される。気化装置10から冷却槽30に達した気体のうち沸点の高い炭化水素が凝集し、冷却槽30に留まる。冷却槽30の温度を気化装置10の温度に近づけるほど、より沸点の高い炭化水素が冷却槽30を通過し、冷却槽50に達する。冷却槽50に達した炭化水素は、その一部が凝集し、残りが管19を通って取り出し装置100の外部に取り出される。
【0027】
運転モードbでは、冷却槽30は加熱されず、冷却槽30および50は冷媒によって冷却される。したがって、運転モードbにおける冷却槽30は、運転モードaの冷却槽30よりはるかに低い温度(例えば冷却槽50の温度と同程度)に維持される。運転モードbでは、気化装置10から冷却槽30に達した気体は急冷され、沸点の高い炭化水素~相対的に沸点の低い炭化水素が凝集し、冷却槽30に留まる。冷却槽50に達した炭化水素は、その一部が凝集し、残りが管19を通って取り出し装置100の外部に取り出される。
【0028】
運転モードaおよびbでは、冷却槽30および冷却槽50の温度が異なるだけでなく、取り出し装置100の外部に取り出される気体の炭化水素の量および組成が異なる。運転モードaでは、運転モードbと比べて、気体の炭化水素の量がより多く、より大きい炭素数を有している気体の炭化水素が得られる。逆に、運転モードbでは、運転モードaと比べて、液体の炭化水素の量がより多く、より大きい炭素数を有している液体の炭化水素が得られる。気化装置10からの気体は、運転モードaでは低温(冷却槽50)にさらされる時間が短く、運転モードbでは低温(冷却槽30および冷却槽50)にさらされる時間が長い。
【0029】
運転モードaは、燃焼カロリーの高い(炭素数の大きい)気体の炭化水素を多く得ることができるので、生成された気体を、設置型の燃焼炉(例えばごみの焼却炉および発電用の炉)に供給する用途に適している。運転モードbは、備蓄および運搬に適した液化の炭化水素を多く得ることができるので、生成された液体を、移動型の燃焼炉(例えば、車両および船舶のエンジン)に供給する用途に適している。
【0030】
運転モードaおよびbのいずれでも、冷却槽30は、気化装置10の容器7より低い温度に設定されている。容器7において気化された成分は、管9を通って、より低温の冷却槽30に流れ込む。上述の通り、投入口3の下部付近は、高い粘性のプラスティック材料(部分的に溶融している)によって塞がれている。したがって、以下の(1)~(3)によって、取り出し装置100では、装置内部における流体の流れは、一定の方向および流速に維持される。
【0031】
(1)投入口3から容器7の内部に落下するプラスティック材料と同程度の量のプラスティック材料を、投入口3に連続的に投入する。
【0032】
(2)冷却槽30を、容器7の内部より低温に維持する。
【0033】
(3)容器7において単位時間ごとに気化される気体に対応する量の生成物(気体および液体)を、管17、19および21から取り出す。
【0034】
図2に示す取り出し装置100では、冷却槽30および50は、同じ容積を有している。特に運転モードaでは、冷却槽30において凝縮する気体の体積が小さく、冷却槽50に達する気体の体積が、運転モードbより大きい。運転モードaを実行するときの冷却槽50は、相対的に大きな体積の気体を処理可能な容積を有していればよい。
【0035】
〔プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す方法〕
本発明の一実施形態は、プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す方法に関する。当該方法は、上述の取り出し装置(つまり
図2に例示されている装置)を用いて実施される。当該方法は、以下の工程を含んでいる。
【0036】
プラスティック材料を投入口3に投入する工程;
投入口3を加熱することによって、上記プラスティック材料の一部を流動化させる工程;
容器7において、撹拌翼1a~1dを用いて撹拌しながら、流動化されている上記プラスティック材料を加熱し、当該プラスティック材料に含まれている炭化水素化合物を気化させる工程;
気化されている上記炭化水素化合物を、容器7より低い温度に維持されている1次冷却槽(冷却槽30)および2次冷却槽(冷却槽50)に送る工程。
【0037】
したがって、上記方法の詳細は、上記〔プラスティック材料の気化装置〕および〔プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置〕の記載と重複するので、繰り返さない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、プラスティック材料(特に廃棄プラスティック)の処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1a~d 撹拌翼
3 投入口
3a 抵抗加熱線(抵抗加熱部)
5 軸
5a 八角柱(軸)
5b 継手(筒状継手)
5c 駆動軸
7、11、41 容器
9、15、17、19、21 管
10 気化装置(プラスティック材料を気化させる装置)
13 ヒータ
30 液化装置、冷却槽(1次冷却槽)
50 冷却槽(2次冷却槽)
100 取り出し装置(プラスティック材料から炭化水素化合物を取り出す装置)