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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】新規mTOR阻害剤化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20230704BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C07D487/04 143
C07D487/04 CSP
C07D519/00 311
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/08
A61P17/16
A61P17/10
A61P29/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020534448
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018086066
(87)【国際公開番号】W WO2019122059
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】1771407
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】599045604
【氏名又は名称】ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・クラリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ・フルニエ
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ウーブリー
(72)【発明者】
【氏名】ユシュマ・ブルース-アルコール
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ・トロー
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・トマ
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-505933(JP,A)
【文献】特表2011-503103(JP,A)
【文献】特表2014-506600(JP,A)
【文献】国際公開第2009/114874(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/157125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその立体異性体
(式中、
R1は、-NH2基を表し;
R2は、F、Cl、Br、I又は-NH2基を表し;
R3は、縮合二環式ヘテロ芳香族基を表し、この基は、任意選択でF、Cl、Br、I、-NHR5、ニトリル、メチル、エチル、トリフルオロメチル、及び-OR6から選択される1つ若しくは複数の基で一置換若しくは多置換され;R5は、水素原子、シクロプロピル、アシル、又は和若しくは不飽和のC1~C6アルキルを表し、C 1 ~C 6 アルキルは任意選択でO及びSから選択されるヘテロ原子で中断され、C 1 ~C 6 アルキルは任意選択でC 3~C5シクロアルキル若しくはC 3 ~C 5 ヘテロシクロアルキルで置換され;R6は、水素原子又はメチル基を表し;
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキル基又はC 3~C10 炭素環を表し、C 3 ~C 10 アルキル基又はC 3 ~C 10 炭素環は任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、任意選択でフルオロ、C 3~C6シクロアルキル若しくはC 3 ~C 6 ヘテロシクロアルキルから選択される1つ若しくは複数の基で置換され;C 3 ~C 10 炭素環は任意選択でC 3 ~C 10 二環であり;
Aは、窒素原子を表す)。
【請求項2】
R1は、-NH2基を表し;
R2は、Cl原子又は-NH2基を表し;
R3は、縮合二環式ヘテロ芳香族基を表し、この基は、F、Cl、Br、I、-NHR5、ニトリル、メチル、エチル、トリフルオロメチル、及び-OR6から選択される1つ又は複数の基で一置換又は多置換され;R5は、水素原子、シクロプロピル、アシル、又は和若しくは不飽和のC1~C6アルキルを表し、C 1 ~C 6 アルキルは任意選択でO及びSから選択されるヘテロ原子で中断され、C 1 ~C 6 アルキルは任意選択でC 3~C5シクロアルキル若しくはC 3 ~C 5 ヘテロシクロアルキルで置換され;R6は、水素原子及びメチル基を表し;
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキル基又はC 3~C10 炭素環を表し、C 3 ~C 10 アルキル基又はC 3 ~C 10 炭素環は任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、任意選択でフルオロ、C 3~C6シクロアルキル若しくはC 3 ~C 6 ヘテロシクロアルキルから選択される1つ若しくは複数の基で置換され;C 3 ~C 10 炭素環は任意選択でC 3 ~C 10 二環であり;
Aは、窒素原子を表す、
一般式(I)の、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその立体異性体
【請求項3】
式(Ia)
【化2】
の、請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその立体異性体
(式中、
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキル基、C3~C10 炭素環を表し、C 3 ~C 10 アルキル基又はC 3 ~C 10 炭素環は任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、任意選択でフルオロ、C 3~C6シクロアルキル若しくはC 3 ~C 6 ヘテロシクロアルキルから選択される1つ若しくは複数の基で置換され;C 3 ~C 10 炭素環は任意選択でC 3 ~C 10 二環であり;
R9は、水素原子又はメチル若しくはエチル基を表し;
1つ又は複数のR10は、独立して、水素原子、Cl、F、-OH、メチル、又は-OMe基を表す)。
【請求項4】
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキルを表し;
R9は、水素原子を表し;
1つ又は複数のR10は、独立して、水素原子、Cl、F、又はメチル基を表す、
式(Ia)の、請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその立体異性体
【請求項5】
R4は、分枝鎖状のC4~C6アルキルを表し;
R9は、水素原子を表し;
R10は、水素又はフッ素原子を表す、
式(Ia)の、請求項4に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
生理学的に許容される媒体中に、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物。
【請求項7】
前記組成物の総質量に対して0.001質量%から5質量%の間の前記化合物を含むことを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
経口又は局所投与に好適な形態であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
局所投与に好適な形態であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
医薬としての使用のための、請求項6から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
セリン-スレオニンキナーゼ活性を有するmTOR酵素が関与する疾患の処置における使用のための、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
殖性、炎症性及び/又は免疫アレルギー性要素を伴う角化障害に関連する皮膚科学的愁訴の処置における使用のための、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
乾癬、アトピー性皮膚炎、紫外線角化症又はざ瘡の処置における使用のための、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
アトピー性皮膚炎の処置における使用のための、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
アトピー性皮膚炎の炎症性要素の処置における使用のための、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
アトピー性皮膚炎を患う患者におけるバリア機能を強化するための使用のための、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
以下の化合物:
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
N-(5-(4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)アセトアミド;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(3-メチルチエタン-3-イルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
1-(2,2-ジメチルプロピル)-3-(2-エチルアミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブタ-3-エニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
(+)-3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-2-メチル-2-テトラヒドロフラン-2-イルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブタ-3-イニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-[4,6-ジアミノ-3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-2,2-ジメチルプロパン-1-オール;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2-メチル-2-メチルスルファニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-4-クロロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-6-メトキシベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
2-[4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-オール;
3-(2-アミノ-6-メトキシベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2-エチル-2-メタンスルホニルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-4-クロロ-1-イソブチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン;
3-(2-アミノ-6-クロロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-N*6*-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
5-(6-アミノ-4-メチル-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン;
3-(2-シクロプロピルアミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノ-7-メチル-ベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
5-(6-アミノ-4-クロロ-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン
から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリン/スレオニンキナーゼmTOR(「mechanistic target of rapamycin」、FRAP、RAFT、RAPT及びSEPとしても公知)を阻害する、新規化合物に関する。本発明は、これを含む組成物、これを調製するための方法、及び医薬としての組成物におけるこの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼmTORは、機能的に別個の2つの多タンパク質複合体の触媒中心であり、すべての真核生物において維持され、mTORC1及びmTORC2と名付けられている(Dunlopら、「Mammalian target of rapamycin complex 1: signalling inputs, substrates and feedback mechanisms」、2009年;Guertinら、「The pharmacology of mTOR inhibition」、2009年)。mTORは、Raptor(regulatory associated protein of TOR)及びmLST8(mammalian lethal with sec13 protein 8)と会合するとき、複合体mTORC1を形成する。この複合体は、Deptor(DEP domain-containing mTOR-interacting protein)、FKBP38及びPRAS40(proline-rich Akt substrate of 40 kDa)と相互作用し、これらはmTORC1の下方制御因子である。mTORC2を形成するために、mTORは、タンパク質のRictor(rapamycin-insensitive companion of TOR)、Sin1(stress-activated map kinase-interacting protein 1)及びmLST8と相互作用する。更に、mTORC2は、その活性を抑制するDeptor、及びその機能が依然として不明であるPPR5/Protorとも会合するようになる。ラパマイシンは、FKBP12と結合するとき、mTORC1を特異的に阻害する。
【0003】
mTORは、細胞増殖、細胞成長、細胞可動性、細胞生存、タンパク質の生合成及び転写を調節することが、とりわけ知られている。
【0004】
mTORシグナル伝達経路の破綻は、いくつかの疾患、特に様々な種類のがん及び多発性過誤腫の原因であることが示されている。
【0005】
例えば、mTOR阻害二環式化合物を開示している特許国際公開第2007/061737号が公知である。mTOR阻害二環式化合物は、乳がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎臓がん(kidney cancer)、腎臓癌(renal carcinoma)、前立腺がん、血液がん、肝臓がん、卵巣がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、リンパ腫、腎細胞癌、又はマントル細胞リンパ腫のような、がんの処置に使用される。
【0006】
特許国際公開第2009/117482号も公知であり、これは国際公開第2007/061737号において記載されているものと同一の種類の、がん処置においても使用される、mTOR阻害二環式化合物の塩及び他の多形体をより具体的に記載している。
【0007】
mTOR阻害剤のラパマイシンは、長期にわたり、その免疫抑制特性で知られてきた。それにもかかわらず、乾癬を患う患者に全身投与したときには、ラパマイシンによる治療の成功は限られたものである。また、近年のデータにより、mTORシグナル伝達経路は、損傷性の乾癬皮膚において活性化過剰となり、角化細胞の成熟を妨げることにより疾患の原因となり得ることが示されている。イミキモド誘導性乾癬マウスモデルにおけるラパマイシンを用いた局所処置の効果が試験された(Burgerら、「Blocking mTOR Signalling with Rapamycin Ameliorates Imiquimod-induced Psoriasis in Mice」、2017年)。免疫組織学的分析により、ラパマイシンは、mTORシグナル伝達経路(P-mTOR及びP-S6のレベル)の活性化を阻止するだけでなく、表皮分化マーカーの発現をほぼ正常化することが明らかとなった。加えて、ラパマイシンを用いる処置により、自然免疫細胞の流入領域リンパ神経節(draining lymphatic ganglion)への流入が部分的に減少した。これらのデータは、乾癬の病因におけるmTORシグナル伝達経路の役割を強調し、新規な抗乾癬戦略としてのmTORの局所阻害の試験を支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2007/061737号
【文献】国際公開第2009/117482号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Dunlopら、「Mammalian target of rapamycin complex 1: signalling inputs, substrates and feedback mechanisms」、2009年
【文献】Guertinら、「The pharmacology of mTOR inhibition」、2009年
【文献】Burgerら、「Blocking mTOR Signalling with Rapamycin Ameliorates Imiquimod-induced Psoriasis in Mice」、2017年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、乾癬のような疾患を患う患者のための処置、特に局所処置を開発する、必要性が実際に存在する。
【0011】
前述を考慮した上で、本発明が解決することを提案する1つの課題は、とりわけ免疫介在性増殖性又は炎症性皮膚疾患の処置を改善するための新規mTOR阻害剤を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人は、新規mTOR阻害化合物を開発した。
【0013】
したがって、本発明の一態様は、一般式(I)
【0014】
【化1】
【0015】
のmTOR阻害化合物又はその薬学的に許容される塩であり、各記号は、以降に定義され記載されるとおりである。
【0016】
本発明の一態様はまた、生理学的に許容される媒体中に、本発明による式(I)のmTOR阻害化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物である。組成物は、特に、セリン-スレオニンキナーゼ活性を有するmTOR酵素が関与する疾患の処置、とりわけ、増殖性、炎症性及び/又は免疫アレルギー性要素を伴う角化障害に関連する皮膚科学的愁訴(dermatological complaint)、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、紫外線角化症又はざ瘡、好ましくはアトピー性皮膚炎、より好ましくはアトピー性皮膚炎の炎症性要素の処置、なお好ましくはアトピー性皮膚炎の炎症性要素の局所処置において、医薬として使用されることが意図される。
【0017】
本発明は、添付の図面に関して立案された以下の非限定的な記載を読むことで、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】化合物3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(実施例1)を合成するための経路を表す図である。
図2】化合物3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-N6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(実施例26)を合成するための経路を表す図である。
図3】化合物2-[4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-オール(実施例19)を合成するための経路を表す図である。
図4】化合物3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-4-クロロ-1-イソブチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン(実施例23)、3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン(実施例24)及び5-(6-アミノ-4-メチル-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(実施例27)を合成するための経路を表す図である。
図5】化合物5-(6-アミノ-4-クロロ-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミンを合成するための経路を表す図である(実施例31)。
図6】実施例33による、マウスにおけるアトピー性皮膚炎のパッチモデルの時間経過図である。
図7】実施例34による、mTORアンタゴニストの適用後の、アトピー性皮膚炎のパッチモデルにおける、経表皮水分喪失(又はTEWL)テストの結果を表す図である。
図8】実施例35による、mTORアンタゴニストの適用後の、アトピー性皮膚炎のパッチモデルにおける、表皮の厚さを表す図である。
図9】実施例36による、mTORアンタゴニストの適用後の、アトピー性皮膚炎のパッチモデルにおける、炎症スコアを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、新規mTOR阻害化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0020】
「mTOR阻害剤」という用語は、mTORC1及び/又はmTORC2のレベルで、有利には選択的に、基質と競合することにより、又はこれらの酵素の活性部位を修飾し、したがってもはや所定の基質を触媒できないようにしうることにより、mTORシグナル伝達経路の活性化を下方制御する、すなわち減少、遮断また更には抑制する、化合物を指す。(mTOR)「アンタゴニスト」及び(mTOR)「阻害剤」という用語は、本発明により優先されることなく使用される。
【0021】
本発明による化合物は、一般式(I)
【0022】
【化2】
【0023】
又はその薬学的に許容される塩により表すことができる
(式中、
R1は、-NH2、-NHMe又は-NHEt基を表し;
R2は、水素原子、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、-NH2、-NHアルキル、-NHAc、ニトリル、メチル(Me)、エチル(Et)、トリフルオロメチル、-OH又はメトキシ基を表し;
R2が-NH2基以外であるとき、R1は-NH2基を表すことが理解され;
R3は、単環又は縮合二環式芳香族又はヘテロ芳香族基を表し、この基は、非置換であるか、又はF、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、-NHR5、ニトリル、メチル、エチル、トリフルオロメチル、-OR6から選択される1つ若しくは複数の基で一置換若しくは多置換され;R5は、水素原子、シクロプロピル、アシル、飽和又は不飽和のC1~C6アルキルの中からの基を表し、任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、非置換であるか又はC3~C5シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキルで置換され;R6は、水素原子及びメチル基を表し;
R4は、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のC1~C10アルキル基、飽和若しくは不飽和のC3~C10環若しくは二環を表し、任意選択で1つ若しくは複数のヘテロ原子O、S及びNで中断され、非置換であるか若しくはスルホン、フルオロ、シアノ、エステル、-NR7、-NR7R8、C3~C6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキルの中からの基で置換され、又は芳香族環若しくは複素環を表し、この基は、非置換であるか、若しくはCl及びFから選択されるハロゲン原子若しくは-OH、-OMe、トリフルオロメチル、メチル、エチル、-NH2、-NHMe、-NMe2の中からの基で一置換若しくは多置換され;R7及びR8は、互いに独立して、水素原子、C1~C3アルキル、シクロプロピル若しくはアシル基を表すか、又は一緒になってC3~C5環を形成し;
Aは、-CH基又は窒素原子を表す)。
【0024】
本発明によると、「アルキル」という用語は、例えば、1から6(C1~C6)又は1から3(C1~C3)炭素原子を含有する直鎖状又は分枝鎖状の基、有利には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、2-メチルブチル、ペンチル、2-メチルペンチル又はヘキシル基を意味する。
【0025】
「アシル」という用語は、カルボン酸からヒドロキシル基を除去することにより得られる基を意味し、式-RCOOHのカルボン酸に対応するアシル基は式-RCOを有することになり、式中で炭素原子及び酸素原子は二重結合を介して連結している(カルボニル基)。
【0026】
「シクロアルキル」という用語は、有利にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルから選択される、3から6の炭素原子を含有するシクロアルキル基を意味する。
【0027】
「ヘテロシクロアルキル」又は「複素環」という用語は、例えば、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ又はピペラジノ基を意味する。
【0028】
「芳香族環」という用語は、(4n+2)個の非局在化電子を含有する平面環式基を意味し、nは基を構成する環の数であり、環が炭素及び水素以外の要素を含有する場合、それは芳香族複素環又はヘテロアリール基と称される。
【0029】
本発明による化合物が薬学的に許容される塩の形態であるとき、それは好ましくは非毒性の塩基又は酸から得た塩である。
【0030】
「薬学的に許容される塩」という用語は、良好な医学的判断の文脈において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずに、ヒト及び下等動物組織との接触に使用するのに好適であり、合理的なベネフィット/リスク比に見合う塩を指す。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知である。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機及び有機の酸及び塩基に由来するものが含まれる。
【0031】
本発明の化合物が酸性であるとき、その対応する塩は、無機塩基及び有機塩基を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から調製されてもよい。
【0032】
これらの無機塩基に由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム及び類似の塩が含まれる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が、特に好ましい。
【0033】
薬学的に許容される非毒性有機塩基に由来する塩には、一級、二級及び三級アミン類、並びに環状アミン類、並びに天然に置換及び合成されたアミン類のような置換アミン類の塩が含まれる。
【0034】
塩が形成されうる他の薬学的に許容される非毒性有機塩基には、イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N',N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等が含まれる。
【0035】
本発明の化合物が塩基性であるとき、その対応する塩は、無機酸及び有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性酸から調製されてもよい。
【0036】
このような酸には、例えば、酢酸、ベンセンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸又はp-トルエンスルホン酸等が含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸は、特に好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態によると、薬学的に許容される塩は、トロメタミン、ナトリウム、カルシウム及びL-アルギニンから選択される。
【0038】
本発明の別の実施形態によると、塩は、マグネシウム、カリウム、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-メチル-D-グルカミン及びピペラジンから選択される。
【0039】
特定の実施形態では、塩は、水和物又は溶媒和物塩形態である。
【0040】
特定の実施形態では、塩は、実質的に非晶質形態である。
【0041】
特定の実施形態では、塩は、本質的に結晶形態である。
【0042】
特定の実施形態では、塩は、少なくとも約95質量%が結晶形態である。
【0043】
特定の実施形態では、塩は、実質的に単結晶形態である。
【0044】
本発明によると、好ましい化合物は、一般式(I)
【0045】
【化3】
【0046】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である
(式中、
R1は、-NH2基を表し;
R2は、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子又は-NH2基を表し;
R3は、縮合二環式ヘテロ芳香族基を表し、この基は、非置換であるか、又はF、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、-NHR5、ニトリル、メチル、エチル、トリフルオロメチル、-OR6から選択される1つ若しくは複数の基で一置換若しくは多置換され;R5は、水素原子、シクロプロピル、アシル、飽和又は不飽和のC1~C6アルキルの中からの基を表し、任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、非置換であるか又はC3~C5シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキルで置換され;R6は、水素原子及びメチル基を表し;
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキル基、C3~C10環又は二環を表し、任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、非置換であるか又はフルオロ及びC3~C6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキルから選択される1つ若しくは複数の基で置換され;
Aは、窒素原子を表す)。
【0047】
本発明によるより好ましい化合物は、一般式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であり、
式中、
R1は、-NH2基を表し;
R2は、Cl原子又は-NH2基を表し;
R3は、縮合二環式ヘテロ芳香族基を表し、この基は、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、-NHR5、ニトリル、メチル、エチル、トリフルオロメチル、-OR6から選択される1つ又は複数の基で一置換又は多置換され;R5は、水素原子、シクロプロピル、アシル、飽和又は不飽和のC1~C6アルキルの中からの基を表し、任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、非置換であるか又はC3~C5シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキルで置換され;R6は、水素原子及びメチル基を表し;
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキル基、C3~C10環又は二環を表し、任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、非置換であるか又はフルオロ及びC3~C6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキルから選択される1つ若しくは複数の基で置換され;
Aは、窒素原子を表す。
【0048】
本発明によると、より一層好ましい化合物は、式(Ia)
【0049】
【化4】
【0050】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である
(式中、
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキル基、C3~C10環又は二環を表し、任意選択でヘテロ原子O又はSで中断され、非置換であるか又はフルオロ及びC3~C6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキルから選択される1つ若しくは複数の基で置換され;
R9は、水素原子又はメチル若しくはエチル基を表し;
1つ又は複数のR10は、独立して、水素原子、Cl及びFから選択されるハロゲン原子、又は-OH、メチル若しくは-OMe基を表す)。
【0051】
より好ましくは、式(I)若しくは(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
式中、
R4は、分枝鎖状のC3~C10アルキルを表し;
R9は、水素原子を表し;
1つ又は複数のR10は、独立して、水素原子、Cl及びFから選択されるハロゲン原子、又はメチル基を表す
ものである。
【0052】
より一層好ましくは、式(I)若しくは(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
式中、
R4は、分枝鎖状のC4~C6アルキルを表し;
R9は、水素原子を表し;
R10は、水素又はフッ素原子を表す
ものである。
【0053】
特に好ましい式(I)若しくは(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
式中、
R4は、(S)-1,3-ジメチルブチル基を表し;
R9は、水素原子を表し;
R10は、水素原子を表す
ものである。
【0054】
本発明の文脈に当てはまる式(I)又は(Ia)の化合物の中でも、以下の化合物がとりわけ言及されうる。
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ N-(5-(4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)アセトアミド;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(3-メチルチエタン-3-イルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 1-(2,2-ジメチルプロピル)-3-(2-エチルアミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブタ-3-エニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ (+)-3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-2-メチル-2-テトラヒドロフラン-2-イルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブタ-3-イニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-[4,6-ジアミノ-3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-2,2-ジメチルプロパン-1-オール;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2-メチル-2-メチルスルファニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-4-クロロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-6-メトキシベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 2-[4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-オール;
・ 3-(2-アミノ-6-メトキシベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2-エチル-2-メタンスルホニルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-4-クロロ-1-イソブチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン;
・ 3-(2-アミノ-6-クロロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-N*6*-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 5-(6-アミノ-4-メチル-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン;
・ 3-(2-シクロプロピルアミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノ-7-メチル-ベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン;
・ 5-(6-アミノ-4-クロロ-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン
【0055】
本発明の一態様はまた、生理学的に許容される媒体中に、上記で定義される本発明による式(I)若しくは(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物である。
【0056】
薬学的に許容される媒体は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずに、ヒト及び動物細胞、特に皮膚、粘膜及び/又は外皮との接触に使用するのに適合性があり且つ好適であり、合理的なベネフィット/リスク比に見合う媒体を示す。
【0057】
本発明による薬学的に許容される媒体は、本発明によるmTOR阻害化合物と適合性のある、薬学分野において使用される任意の公知のアジュバントを含んでもよい。
【0058】
言及されうる非限定的な例には、溶媒、緩衝液、着香剤、結合剤、キレート化剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、ゲル化剤、湿潤剤、保湿剤、保存剤、抗酸化剤、鎮静剤、前浸透剤(pro-penetrating agent)、着色剤、芳香剤等、又はそれらの混合物が含まれる。
【0059】
言うまでもないが、当業者は、これらの組成物に添加する任意選択の化合物を選択する際、本発明に本来関連する有利な特性が、想定される添加により悪影響を受けない又は実質的に受けないように注意を払うであろう。任意選択の化合物が本発明による化合物の有利な特性を害さないように、それらの濃度も選択される。
【0060】
本発明による化合物及びそれを含む組成物は、経口、直腸、局所又は非経口(皮下、筋肉内若しくは静脈内)で投与されてもよい。これらは、好ましくは、経口又は局所、より好ましくは局所で投与される。
【0061】
本発明による組成物は、液体、固体又は気体の形態である。
【0062】
経口経路を介しては、組成物は、制御放出を可能とする、錠剤、ゲルカプセル剤、被覆錠剤、シロップ剤、懸濁液、溶液、粉末、顆粒、エマルション、マイクロスフェア又はナノスフェア又は脂質又は高分子ベシクルの懸濁液の形態であってもよい。
【0063】
非経口経路を介しては、組成物は、灌流又は注入のための溶液又は懸濁液の形態であってもよい。
【0064】
好ましくは、薬学的組成物は、局所適用に好適な形態に調整される。
【0065】
局所経路を介する場合、したがって組成物は、皮膚及び粘膜を処置することがとりわけ意図され、液体、ペースト状又は固体の形態、とりわけ、軟膏、クリーム剤、乳剤、ポマード、粉末、含浸パッド、合成洗剤、溶液、ゲル、スプレー、ムース、ローション、懸濁液、スティック、シャンプー又は洗浄基材(washing base)の形態であってもよい。組成物はまた、活性化合物の制御放出を可能とする、マイクロスフェア若しくはナノスフェア若しくは脂質若しくは高分子ベシクルの懸濁液、又はポリマー若しくはゲルパッチ、又はヒドロゲルの形態であってもよい。これらの局所組成物は、更に、無水形態又は水性形態のいずれかであってもよい。
【0066】
本発明による組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して0.001質量%と5質量%の間の、式(I)又は(Ia)の前記化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0067】
本発明により使用される有効に投与される量は、所望の治療効果に依存し、したがって、広範囲で変動してもよい。当業者、特に医師は、彼の一般知識に基づいて、適切な量を容易に決定することができる。
【0068】
本発明による組成物は、少なくとも1つの他の活性成分を含んでもよい。
【0069】
さらなる活性成分は、好ましくは、これらに限定されるものではないが、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤、麻酔剤、鎮痛剤、抗アレルギー剤、レチノイド、フリーラジカルスカベンジャー、抗そう痒剤(antipruriginous agent)、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、コルチコステロイド、角質溶解剤、静注用免疫グロブリン、抗血管新生剤、抗炎症剤及び/又はそれらの混合物を含む群から選択される。
【0070】
より好ましくは、さらなる活性成分は、乾癬、アトピー性皮膚炎、紫外線角化症又はざ瘡のような、増殖性、炎症性及び/又は免疫アレルギー性要素を伴う角化障害に関連する皮膚科学的愁訴を処置することにおけるその有効性で知られている。
【0071】
本発明は、式(I)又は(Ia)の新規mTOR阻害化合物に関する。
【0072】
したがって、本発明の一態様は、医薬として使用されることが意図される、上記のような式(I)又は(Ia)の化合物である。
【0073】
本発明の一態様は、また、特に患者におけるセリン-スレオニンキナーゼ活性を有するmTOR酵素が関与する疾患の処置における、医薬としての使用のための本発明による組成物である。
【0074】
本発明において使用される場合、「処置する」又は「処置」という用語は、以下に記載されるような、疾患若しくは障害、又は疾患若しくは障害の1つ若しくは複数の症状の、反転、減弱、進行の阻害、発症の遅延、改善、及び/若しくは部分的若しくは完全な緩和に関する。特定の実施形態では、処置は、1つ又は複数の症状が発現した後に投与されてもよい。ある具体的な実施形態では、処置は、疾患又は障害の進行を予防又は停止するために、予防措置として投与されてもよい。この文脈において、「予防」という用語は、所定の疾患又は障害を獲得するリスクの減少を示す。他の実施形態では、処置は、無症状で投与されてもよい。例えば、処置は、症状が現れる前に(例えば、症状歴及び/又は遺伝因子若しくは他の素因に照らして)素因を有する個体に投与されてもよい。処置はまた、症状の消失後に、例えば症状の再発現を予防又は遅延するために続けられてもよい。したがって、特定の実施形態では、「処置」という用語は、疾患又は障害の、再燃又は再発の予防を含む。
【0075】
本発明で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳類を示し、ヒト及び動物の個体を含み、好ましくはヒトである。
【0076】
本発明による組成物は、より具体的には、増殖性、炎症性及び/又は免疫アレルギー性要素を伴う角化障害に関連する皮膚科学的愁訴の処置に使用されることが意図される。
【0077】
増殖性、炎症性及び/又は免疫アレルギー性要素を伴う角化障害に関連する皮膚科学的愁訴には、細胞増殖に関連する角化状態又は障害、とりわけ、尋常性ざ瘡、面皰、多形、酒さ性ざ瘡、嚢胞性ざ瘡、集簇性ざ瘡、老人性ざ瘡(senile acne)、及び日射ざ瘡(solar acne)、薬物関連ざ瘡、又は職業性ざ瘡のような二次ざ瘡、他の角化障害、とりわけ、魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエ病(Darier's disease)、掌蹠角皮症、白板症及び白板症様状態、及び皮膚又は粘膜(口腔)苔癬、炎症性及び/又は免疫アレルギー性要素を伴う角化障害に関連する他の皮膚科学的愁訴、とりわけ、皮膚、粘膜又は爪の乾癬のすべての形態の乾癬、更には乾癬リウマチ、又は、アトピー性皮膚炎(アトピー性湿疹)のような皮膚アトピー若しくは呼吸性アトピー若しくは歯肉肥大、尋常性疣贅、扁平疣贅、疣贅状表皮発育異常症、口腔若しくは血液性乳頭腫症のような、ウイルス性若しくは非ウイルス性起源にかかわらず良性若しくは悪性のすべての皮膚若しくは上皮の増殖、紫外線照射により誘導されうる病変若しくは増殖、とりわけ紫外線角化症の症例、並びに基底細胞及び脊髄細胞上皮腫が含まれる。
【0078】
より好ましくは、本発明による組成物は、乾癬、アトピー性皮膚炎、紫外線角化症又はざ瘡、より一層好ましくはアトピー性皮膚炎のような、増殖性、炎症性及び/又は免疫アレルギー性要素を伴う角化障害に関連する皮膚科学的愁訴の処置に使用されることが意図される。
【0079】
特に有利には、本発明による組成物は、アトピー性皮膚炎の炎症性要素の処置、好ましくはアトピー性皮膚炎の炎症性要素の局所処置に使用されることが意図される。
【0080】
本発明の別の特に有利な実施形態によると、組成物は、アトピー性皮膚炎を患う患者における皮膚バリア機能を強化するために使用されることが意図される。
【0081】
「アトピー性皮膚炎の炎症性要素」という用語は、CD4+リンパ球、好酸球、肥満細胞及びTh2サイトカインに関与する炎症を意味する。
【0082】
「バリア機能」又は「皮膚バリア」という用語は、環境(すなわち、水分喪失、物理的及び/又は化学的攻撃並びに感染因子)に対する、表皮細胞、特に角化層の保護的役割を指す。
【0083】
バリア機能は、経表皮水分喪失(若しくはTEWL)テスト及び/又は表皮の厚さの組織学的評価を用いて評価することができる。「経表皮水分喪失」という用語は、ケラチン物質(より正確には角化層)を通過し、それらの表面で蒸発した水のパーセンテージを意味する。TEWLを測定するためのプロトコールは、以下の実施例において詳述する。
【0084】
本発明の一態様はまた、特に図1において与えられる反応スキームによる、式(I)又は(Ia)の化合物を調製するための方法である。
【0085】
本発明による一般式(I)又は(Ia)の活性化合物の製造のいくつかの実施例及び阻害活性の結果を以下に示すが、例示としてであり、限定的な性質を伴うものではない。
【実施例1】
【0086】
図1に例示するような、化合物3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(実施例1)を合成するための経路
【0087】
【化5】
【0088】
a) 1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
(R)-4-メチルペンタン-2-オール(0.25ml;2.0mmol;1.1当量)を、テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(500mg;1.8mmol;1.0当量)(1)及びトリフェニルホスフィン(1.43g;5.4mmol;3.0当量)に添加する。反応媒体を0℃に冷却し、その後、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.1ml;5.4mmol;3.0当量)を添加する。反応媒体を、室温で、30分間撹拌する。反応を、水及び1N水酸化ナトリウム冷溶液を塩基性pHまで添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(25g、固体析出物、ジクロロメタン/メタノール溶出液、メタノール0から15%)。1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(308mg;47%)(2)を、淡黄色の泡状物の形態で得る。
【0089】
b) 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(570mg;1.6mmol;1.0当量)(2)の溶液、(2-アミノベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ボロン酸二塩酸塩(407mg;1.9mmol;1.2当量)及び1,4-ジオキサン(5.7ml)中の炭酸カリウム(2.4ml;2.0M;4.8mmol;3.0当量)の溶液を、窒素下で10分間脱気し、その後、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、ジクロロメタン(65mg;0.08mmol;0.05当量)を添加する。媒体を、30分間、110℃で加熱する。反応を、水を添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(12g、固体析出物、ジクロロメタン/メタノール溶出液、メタノール0から15%、TLC:ジクロロメタン/メタノール95/5 Rf=0.07)。アセトニトリル/水からの再結晶後、3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(399mg;69%)(3)を、白色の結晶性固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.81 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.89 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.20 - 1.34 (m, 1H), 1.37 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.52 (ddd, J = 13.6, 8.6, 5.1 Hz, 1H), 2.00 (ddd, J = 13.6, 10.0, 5.4 Hz, 1H), 4.72 - 4.82 (m, 1H), 6.11 (s, 4H), 7.19 (dd, J = 8.2, 1.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.44 (dd, J = 8.1, 5.2 Hz, 1H), 7.50 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 367 [M+H] +
【実施例2】
【0090】
3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0091】
【化6】
【0092】
a) 1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
(R)-4-メチルペンタン-2-オール(0.25ml;2.0mmol;1.1当量)を、テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(500mg;1.8mmol;1.0当量)及びトリフェニルホスフィン(1.43g;5.4mmol;3.0当量)に添加する。反応媒体を0℃に冷却し、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.1ml;5.4mmol;3.0当量)を添加する。反応媒体を、室温で、30分間撹拌する。反応を、水及び1N水酸化ナトリウム冷溶液を塩基性pHまで添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(25g、固体析出物、ジクロロメタン/メタノール溶出液、メタノール0から15%)。1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(308mg;47%)を、淡黄色の泡状物の形態で得る。
【0093】
b) 3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(230mg;0.6mmol;1.0当量)の溶液、6-フルオロ-5-(4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾオキサゾール-2-イルアミン(213mg;0.8mmol;1.2当量)及び1,4-ジオキサン(2.3ml)中の炭酸カリウム(0.96ml;2.0M;1.9mmol;3.0当量)の溶液を、窒素下で10分間脱気し、その後、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、ジクロロメタン(26mg;0.03mmol;0.05当量)を添加する。媒体を、2時間、110℃で加熱する。反応を、水を添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、その後、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、蒸発させる。粗生成物を、分取HPLC(C18カラム、溶出液:水中のアセトニトリル/0.2%炭酸アンモニウム)により精製する。
【0094】
3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(175mg;69%)(3)を、やや白色の結晶性固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.80 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.88 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.22 - 1.32 (m, 1H), 1.37 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.52 (ddd, J = 13.4, 8.4, 5.0 Hz, 1H), 1.98 (ddd, J = 13.6, 10.0, 5.4 Hz, 1H), 4.76 (ddd, J = 9.9, 6.9, 5.3 Hz, 1H), 6.10 (s, 4H), 7.17 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.52 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 385 [M+H] +
【実施例3】
【0095】
3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0096】
【化7】
【0097】
a) トルエン-4-スルホン酸チエタン-3-イルメチルエステル
p-トルエンスルホニルクロリド(782mg;4.1mmol;1.5当量)を、0℃で、ジクロロメタン(5.7ml)に溶解したチエタン-3-イルメタノール(300mg;2.7mmol;1.0当量)、トリエチルアミン(1.14ml;8.2mol;3.0当量)及び4-ジメチルアミノピリジン(33mg;0.3mmol;0.1当量)にゆっくりと添加する。反応媒体を、室温で、1時間撹拌する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(25g、液体析出物、ヘプタン/酢酸エチル溶出液、酢酸エチル0から50%)。トルエン-4-スルホン酸チエタン-3-イルメチルエステル(631mg;89%)を、無色の油状物の形態で得る。
【0098】
b) 3-ヨード-1-チエタン-3-イルメチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
トルエン-4-スルホン酸チエタン-3-イルメチルエステル(618mg;2.4mmol;1.1当量)を、N,N'-ジメチルホルムアミド(6.0ml)中の3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(600mg;2.2mmol;1.0当量)及び炭酸セシウム(1.42g;4.4mmol;2.0当量)の懸濁液に添加する。反応媒体を、マイクロ波により、20分間、120℃で加熱する。反応を、水を添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、蒸発させる。残留物をエタノール中に取り、濾過する。3-ヨード-1-チエタン-3-イルメチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(412mg;52%)を、オレンジ色の粉末の形態で得る。
【0099】
c) 3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
3-ヨード-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(200mg;0.6mmol;1.0当量)の溶液、4-フルオロ-5-(4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾオキサゾール-2-イルアミン(186mg;0.7mmol;1.2当量)及び1,4-ジオキサン(2.0ml)中の炭酸カリウム(0.84ml;2.0M;1.7mmol;3.0当量)の溶液を、窒素下で10分間脱気し、その後、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、ジクロロメタン(23mg;0.03mmol;0.05当量)を添加する。媒体を、30分間、110℃で加熱する。反応を、水を添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、蒸発させる。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(25g、固体析出物、ジクロロメタン/メタノール溶出液、メタノール0から15%)。生成物は純粋でないため、生成物を、分取HPLC(C18カラム、溶出液:水中のアセトニトリル/0.1%ギ酸)により再精製する。3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(81mg;38%)を、白色の固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.11 (s, 3H), 1.58 - 1.74 (m, 3H), 1.84 (tdd, J = 7.5, 5.9, 2.1 Hz, 1H), 2.16 (qd, J = 8.8, 8.0, 3.9 Hz, 2H), 4.09 (s, 2H), 6.13 (s, 2H), 7.04 (dd, J = 8.2, 6.6 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.68 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 383 [M+H] +
【実施例4】
【0100】
3-(2-アミノ-6-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0101】
【化8】
【0102】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.10 (s, 3H), 1.59 - 1.69 (m, 3H), 1.80 - 1.88 (m, 1H), 4.08 (s, 2H), 6.13 (s, 4H), 7.16 - 7.18 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.46 - 7.48 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.52 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 383 [M+H] +
【0103】
実施例4~18、20、21、22、25及び28~30の化合物は、図1に記載される方法により、R1、R2、R4又はR5基が前もって導入されている前駆体を使用して、得ることができる(図1を参照)。
【実施例5】
【0104】
3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0105】
【化9】
【0106】
a) 1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
(R)-4-メチルペンタン-2-オール(0.25ml;2.0mmol;1.1当量)を、テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(500mg;1.8mmol;1.0当量)及びトリフェニルホスフィン(1.43g;5.4mmol;3.0当量)に添加する。反応媒体を0℃に冷却し、その後、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.1ml;5.4mmol;3.0当量)を添加する。反応媒体を、室温で、30分間撹拌する。反応を、水及び1N水酸化ナトリウム冷溶液を塩基性pHまで添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(25g、固体析出物、ジクロロメタン/メタノール溶出液、メタノール0から15%)。1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(308mg;47%)を、淡黄色の泡状物の形態で得る。
【0107】
b) 3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(160mg;0.4mmol;1.0当量)の溶液、4-フルオロ-5-(4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾオキサゾール-2-イルアミン(148mg;0.5mmol;1.2当量)及び1,4-ジオキサン(1.6ml)中の炭酸カリウム(0.67ml;2.0M;1.3mmol;3.0当量)の溶液を、窒素下で10分間脱気し、その後、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、ジクロロメタン(18mg;0.02mmol;0.05当量)を添加する。媒体を、30分間、110℃で加熱する。反応を、水を添加することにより停止させ、その後、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、蒸発させる。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(25g、固体析出物、ジクロロメタン/メタノール溶出液、メタノール0から15%)。アセトニトリル/水からの再結晶後、3-(2-アミノ-4-フルオロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,3-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(75mg;44%)(3)を、ベージュ色の結晶性固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.80 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.88 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.28 (dt, J = 14.4, 6.8 Hz, 1H), 1.37 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.52 (ddd, J = 13.4, 8.5, 5.0 Hz, 1H), 1.98 (ddd, J = 14.2, 9.9, 5.3 Hz, 1H), 4.77 (dt, J = 10.8, 5.9 Hz, 1H), 6.10 (s, 4H), 6.98 - 7.11 (m, 1H), 7.30 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.67 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 325 [M+H] +
【実施例6】
【0108】
N-(5-(4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)アセトアミド;
【0109】
【化10】
【0110】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.89 (t, J=7.5 Hz, 3 H), 0.91 (s, 6 H), 1.33 (q, J=7.5 Hz, 2 H), 2.23 (s, 3 H), 3.95 (s, 2 H), 6.12-6.36 (br s, 4 H), 7.48 (dd, J=8.4, 1.8 Hz, 1 H), 7.68 - 7.74 (m, 2 H), 11.70 (br s, 1 H)
MS (ESI) m/z = 409 [M+H] +
【実施例7】
【0111】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0112】
【化11】
【0113】
a) 1-(2,2-ジメチルプロピル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
炭酸セシウム(2.36g;7.3mmol;2.0当量)及びその後、1-ブロモ-2,2-ジメチルプロパン(502μl;4.0mmol;1.1当量)を、N,N'-ジメチルホルムアミド(20ml)中の3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(1.00g;3.6mmol;1.0当量)の溶液に添加する。反応媒体を、2日間、110℃で加熱する。冷却された反応媒体を水で加水分解し、酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過及び蒸発させる。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフにかけ、ジクロロメタン/メタノール(98/2から95/5)で溶離する。1-(2,2-ジメチルプロピル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(1.04g;83%)を、白色の固体の形態で得る。
【0114】
b) 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
1-(2,2-ジメチルプロピル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(323mg;0.9mmol;1.0当量)の溶液、5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(364mg;1.4mmol;1.5当量)及び1,4-ジオキサン(3.2ml)中の炭酸カリウム(1.4ml;2.0M;2.8mmol;3.0当量)の溶液を、窒素下で10分間脱気し、その後、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、ジクロロメタン(152mg;0.19mmol;0.20当量)を添加する。媒体を、30分間、110℃で加熱する。水性相を除去し、媒体をセライトに通して濾過する。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフにかけ、ジクロロメタン/メタノール(95/5から80/20)で溶離する。溶媒を濃縮し、不溶性物質を濾別して、真空下、40℃で乾燥させる。3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(160mg;48%)を、サーモンベージュ色の固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.97 (s, 9H), 3.93 (s, 2H), 6.12 (s, 4H), 7.19-7.21 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.42-7.44 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.49 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 353 [M+H] +
【実施例8】
【0115】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0116】
【化12】
【0117】
a)1-(2,2-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
アゾジカルボン酸ジ-tert-ブチル(1.25g;5.4mmol;1.5当量)を、0℃に冷却したトルエン(10ml)中トリフェニルホスフィン(1.43g;5.4mmol;1.5当量)溶液に添加する。反応媒体を、0℃で、30分間撹拌する。2,2-ジメチルブタン-1-オール(555mg;5.4mmol;1.5当量)をその後滴下添加し、反応媒体を0℃で30分間撹拌する。最後に、3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(1.00g;3.6mmol;1.0当量)を添加し、反応媒体を、1時間15分間、110℃で加熱する。
【0118】
この工程を繰り返すが、3.5mlトルエン中のアゾジカルボン酸ジ-tert-ブチル(0.42g;1.8mmol;0.5当量)、トリフェニルホスフィン(0.48g;1.8mmol;0.5当量)及び2,2-ジメチルブタン-1-オール(185mg;1.8mmol;0.5当量)を用いる。この溶液を反応媒体に添加し、1時間10分間、110℃で加熱する。
【0119】
反応媒体を、真空下で濃縮する。残留物を酢酸(8ml)及び水(2ml)の溶液に取る。反応媒体を、1時間30分間、100℃で加熱する。反応媒体を窒素下で蒸発させ、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフにかけ、ジクロロメタン/メタノール(98/2から95/5)で溶離する。1-(2,2-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(0.81g;62%)を、黄色の固体の形態で得る。
【0120】
b) 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
1-(2,2-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(880mg;2.4mmol;1.0当量)の溶液、5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(953mg;3.7mmol;1.5当量)及び1,4-ジオキサン(8.8ml)中の炭酸カリウム(3.7ml;2.0M;7.3mmol;3.0当量)の溶液を、窒素下で10分間脱気し、その後、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、ジクロロメタン(399mg;0.5mmol;0.20当量)を添加する。反応媒体を、110℃で、45分間加熱する。水性相を除去し、媒体をセライトに通して濾過する。残留物を、分取HPLCにより酸性条件下で(ACN25%から35%)精製する。アセトニトリルを蒸発させ、水性相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和させ、酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過及び濃縮する。固体を濾別して、真空下、40℃で乾燥させる。3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(414mg;46%)を、淡ベージュ色の固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.87-0.91 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 0.91 (s, 6H), 1.30-1.35 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.94 (s, 2H), 6.10 (s, 4H), 7.19-7.21 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.42-7.44 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.49 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 367 [M+H] +
【実施例9】
【0121】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(3-メチルチエタン-3-イルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0122】
【化13】
【0123】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.29 (s, 3H), 2.79-2.81 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 3.43-3.46 (d, J = 9.4 Hz, 2H), 4.22 (s, 2H), 6.19 (s, 4H), 7.20-7.22 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.37 (s,1H), 7.43-7.45 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.50 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 383 [M+H] +
【実施例10】
【0124】
1-(2,2-ジメチルブチル)-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0125】
【化14】
【0126】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.89 (m, 9H), 1.32 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 3.95 (s, 2H), 6.10 (s, 3H), 7.04 (dd, J = 8.2, 6.6 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.68 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 385 [M+H] +
【実施例11】
【0127】
1-(2,2-ジメチルプロピル)-3-(2-エチルアミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0128】
【化15】
【0129】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.97 (s, 9 H), 1.20 (t, J=7.2 Hz, 3 H), 3.36 (qd, J=7.2, 5.7 Hz, 2 H), 3.93 (s, 2 H), 6.11 (br s, 4 H), 7.20 (dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.39 (dd, J=1.8, 0.4 Hz, 1 H), 7.44 (dd, J=8.1, 0.4 Hz, 1 H), 8.00 (t, J=5.7 Hz, 1 H).
MS (ESI) m/z = 381 [M+H] +
【実施例12】
【0130】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブタ-3-エニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0131】
【化16】
【0132】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.08 (s, 6H), 4.03 (s, 2H), 4.86 - 5.09 (m, 2H), 6.00 (dd, J = 17.5, 10.8 Hz, 1H), 6.13 (s, 3H), 7.20 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.50 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 365 [M+H] +
【実施例13】
【0133】
(+)-3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-2-メチル-2-テトラヒドロフラン-2-イルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0134】
【化17】
【0135】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.88 - 0.89 (d, J = 1.7 Hz, 6H), 1.63-1.70 (m, 1H), 1.78-1.91 (m, 3H), 3.63-3.72 (m, 2H), 3.74-3.79 (m, 1H), 3.97-4.00 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 4.12-4.15 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 6.15 (s, 4H), 7.19-7.21 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 1H), 7.36-7.37 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.43-7.45 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.52 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 409 [M+H] +
【実施例14】
【0136】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブタ-3-イニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0137】
【化18】
【0138】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.26 (s, 6H), 2.99 (s, 1H), 4.18 (s, 2H), 5.96 - 6.47 (m, 4H), 7.21 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.51 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 363 [M+H] +
【実施例15】
【0139】
3-[4,6-ジアミノ-3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-2,2-ジメチルプロパン-1-オール
【0140】
【化19】
【0141】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.89 (s, 6H), 3.10 (d, J = 6.2 Hz, 2H), 5.08 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 6.27 (s, 4H), 7.20 (dd, J = 8.0, 1.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.50 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 369 [M+H] +
【実施例16】
【0142】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2-メチル-2-メチルスルファニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0143】
【化20】
【0144】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.74 (s, 6H), 1.85 (s, 3H), 3.35 (s, 2H), 6.06 (s, 4H), 7.16-7.18 (dd, J = 8.1, 1.4 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.42-7.44 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.49 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 385 [M+H] +
【実施例17】
【0145】
3-(2-アミノ-4-クロロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0146】
【化21】
【0147】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.97 (s, 9H), 3.94 (s, 2H), 6.10 (s, 4H), 7.02 - 7.04 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.39 - 7.41 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.77 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 387 [M+H] +
【実施例18】
【0148】
3-(2-アミノ-6-メトキシベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0149】
【化22】
【0150】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.97 (s, 9H), 3.76 (s, 3H), 3.91 (s, 2H); 6.03 (s, 2H), 7.09 (s, 1H), 7.29 (d, J = 3.0 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z = 383 [M+H] +
【実施例19】
【0151】
2-[4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-オール
【0152】
この化合物は、図3において提示される方法により得ることができる。
【0153】
【化23】
【0154】
a) 1-ネオペンチル-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
アルゴンで脱気したトルエン(0.15M)中1-(2,2-ジメチルプロピル)-3-ヨードピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(1.37g;3.97mmol;1当量)溶液に、ヘキサメチルジスタンナン(1.56g、4.75mmol;1.2当量)、続いてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.2mmol;0.05当量)を添加する。混合物を、110℃で、30分間撹拌する。混合物を真空下で直接濃縮し、残留物を塩基性アルミナゲルで精製し、1-ネオペンチル-3-(トリメチルスタンニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(792mg;2.06mmol;52%)を、茶色の固体の形態で得た。
【0155】
b) 3-(5-メトキシ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
アルゴンで脱気したN,N'-ジメチルホルムアミド(0.14M)中3-トリメチルスタンニルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(1当量)溶液に、2-ヨード-5-メトキシ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(1.6mmol、1当量)、続いてトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.16mmol;0.1当量)、トリ-o-トリルホスフィン(0.48mmol;0.3当量)及びトリエチルアミン(0.48mmol;3当量)を添加する。混合物をその後、80℃で2時間撹拌し、総変換を得る。室温へと戻した後、混合物を、水を添加することにより希釈し、その後、水性相を酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける。3-(5-メトキシ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(234mg;29%)を、無色の固体の形態で得る。
【0156】
c) 2-[4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-オール
メタノール(0.5M)中の3-(5-メトキシ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(1当量)の溶液に、炭酸カリウム(2当量)を添加する。混合物を、変換が完了するまで65℃で撹拌し、水/酢酸エチルの1/1混合物で希釈する。水性相を酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮する。生成物を、さらなる精製なしに、次の工程において直接使用する。
【0157】
-78℃の、ジクロロメタン(0.06M)中の3-(5-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(1当量)の溶液に、ボロントリブロミド(ジクロロメタン中1M;9当量)の溶液を添加する。反応混合物を徐々に室温に戻しながら14時間撹拌し、反応を、0℃の飽和炭酸水素ナトリウム溶液を添加することにより停止させ、その後、水性相を酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかける。2-[4,6-ジアミノ-1-(2,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-オール(16.5mg;44%)を、無色の固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.98 (s, 9H), 3.96 (s, 2H), 6.18 (s, 2H), 6.45 (s, 2H), 6.58 (s, 1H), 7.33 (d, J = 2.61 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 2.61 Hz, 1H), 9.15 (s, 1H), 11.70 (s, 1H).
MS (ESI) m/z = 353 [M+H]+
【実施例20】
【0158】
3-(2-アミノ-6-メトキシベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0159】
【化24】
【0160】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.90 (s, 9H), 1.31-1.33 (d, J = 6.2 Hz, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.91 (s, 2H), 6.03 (s, 4H), 7.07 (s, 1H), 7.28 (s, 1H), 7.30 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 397 [M+H] +
【実施例21】
【0161】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0162】
【化25】
【0163】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.43 (d, J = 6.7 Hz, 6H), 4.79-4.85 (p, J = 6.7 Hz, 1H), 6.14 (s, 2H), 7.18-7.21 (dd, J = 8.1-1.7 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.50 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 325 [M+H] +
【実施例22】
【0164】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2-エチル-2-メタンスルホニルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0165】
【化26】
【0166】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.02 (t, J = 7.4 Hz, 6H), 1.90 (p, J = 7.3 Hz, 4H), 3.09 (s, 3H), 4.54 (s, 2H), 6.23 (s, 2H), 7.20 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.51 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 445 [M+H] +
【実施例23】
【0167】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-4-クロロ-1-イソブチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン
【0168】
この化合物は、図4において提示される方法により得ることができる。
【0169】
【化27】
【0170】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.89 (d, J=6.8 Hz, 6 H), 2.19 - 2.32 (m, 1 H), 4.03 (d, J=7.3 Hz, 2 H), 7.24 - 7.30 (m, 3 H), 7.40 (d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.42 - 7.50 (m, 3 H).
MS (ESI) m/z = 358 [M+H] +
【実施例24】
【0171】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン
【0172】
この化合物は、図4において提示される方法により得ることができる。
【0173】
【化28】
【0174】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.48 (d, J = 6.7 Hz, 6H), 4.90 (p, J = 6.6 Hz, 1H), 6.90 (s, 2H), 7.41 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.50 (s, 2H), 7.59 (dd, J = 8.2, 1.7 Hz, 1H), 7.72 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 9.06 (s, 1H).
MS (ESI) m/z = 310 [M+H] +
【実施例25】
【0175】
3-(2-アミノ-6-クロロベンゾオキサゾール-5-イル)-1-((S)-1,2-ジメチルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0176】
【化29】
【0177】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.69 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.97 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.41 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.13 (dt, J = 8.8, 6.6 Hz, 1H), 4.28 - 4.40 (m, 1H), 6.09 (s, 2H), 7.18 (s, 1H), 7.63 (s, 1H), 7.65 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 387 [M+H] +
【実施例26】
【0178】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-N6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0179】
この化合物は、図2において提示される方法により得ることができる。
【0180】
【化30】
【0181】
a) 6-クロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン
4,6-ジクロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(15.8g;50.2mmol;1当量)(1)を、1,4-ジオキサン(480mL;0.1M)に溶解する。アンモニア水性溶液(474.00ml;32.00%g/g;890.61mmol;30.00V)を添加し、全体を90℃で1時間加熱する。室温へと戻した後、不均質媒体を真空下で濃縮し、得られたオレンジ色の固体を酢酸エチル中に取り、その後、瀘別し、所望の生成物(14g、93%)をベージュ色の固体の形態で得る。
【0182】
b) 6-クロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン
N,N'-ジメチルホルムアミド(7mL)中の6-クロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(500mg;1.69mmol;1当量)(2)の溶液に、炭酸セシウム(1.10g;3.38mmol;2当量)、続いて2-ヨードプロパン(0.17mL;1.69mmol;1当量)を添加する。媒体を50℃で2時間撹拌し、室温へと戻した後、媒体を濾過し、その後、真空下で濃縮乾固する。生成物をシリカゲル上で精製し、6-クロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(160mg、29%)(3)を白色の固体の形態で得る。
【0183】
c) 3-ヨード-1-イソプロピル-N6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
1,4-ジオキサン(1mL)中の6-クロロ-3-ヨード-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(150mg;0.44mmol;2当量)(3)の溶液に、メタノール(555.47μl;2.00M;1.11mmol;5当量)中のメチルアミンを添加し、全体を85℃で撹拌する。媒体を冷却した後、全体を真空下で濃縮する。粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフにかけ(25g、固体析出物、ヘプタン/酢酸エチル溶出液、酢酸エチル45%から85%)、3-ヨード-1-イソプロピル-N6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(65mg;88%)(4)を白色の固体の形態で得る。
【0184】
d) 3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-N6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
3-ヨード-1-イソプロピル-N6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(65mg;0.20mmol;1当量)(4)の溶液に、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、ジクロロメタン(16mg;0.02mmol;0.10当量)、5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(76.35mg;0.29mmol;1.5当量)及び1,4-ジオキサン(650.00μl)中の2M炭酸カリウム水性溶液(0.29mL;2.00M;0.59mmol;3当量)を添加する。反応媒体を、100℃で、1時間加熱する。総変換後、媒体を冷却し、その後、真空下で濃縮し、続いて直接シリカゲル上でクロマトグラフィーにかける(12g、固体析出物、ジクロロメタン/メタノール溶出液、メタノール3%から10%)。3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-N6-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン(40mg;59%)(5)を、黄土色の固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.44 (d, J = 6.7 Hz, 6H), 2.82 (d, J = 4.7 Hz, 3H), 4.73 - 4.99 (m, 1H), 6.53 (s, 1H), 7.20 (dd, J = 8.2, 1.7 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.51 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 339 [M+H] +
【実施例27】
【0185】
5-(6-アミノ-4-メチル-1-ネオペンチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン
【0186】
この化合物は、図4において提示される方法により得ることができる。
【0187】
【化31】
【0188】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1H NMR (600 MHz, DMSO-d6, 300K) δ ppm 7.47 (s, 2 H) 7.36 - 7.43 (m, 2 H) 7.21 (dd, J=8.1, 1.4 Hz, 1 H) 6.72 (s, 2 H) 4.01 (s, 2 H) 2.36 (br s, 3 H) 0.97 (s, 9 H)
MS (ESI) m/z = 352 [M+H] +
【実施例28】
【0189】
3-(2-シクロプロピルアミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0190】
【化32】
【0191】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.56 - 0.60 (m, 2 H), 0.73 - 0.77 (m, 2 H), 1.42 (d, J=6.7 Hz, 6 H), 2.76 (m, 1 H), 4.82 (spt, J=6.7 Hz, 1 H), 6.11 (br s, 4 H), 7.22 (dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.43 (dd, J=1.8, 0.4 Hz, 1 H), 7.46 (dd, J=8.1, 0.4 Hz, 1 H), 8.26 (d, J=2.7 Hz, 1 H).
MS (ESI) m/z = 365 [M+H] +
【実施例29】
【0192】
3-(2-アミノ-7-メチルベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(2,2-ジメチルブチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0193】
【化33】
【0194】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 0.90 (d, J = 10.0 Hz, 9H), 1.32 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.42 (s, 3H), 3.93 (s, 2H); 6.11 (s, 2H), 7.03 (s, 1H), 7.18 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.47 (s, 2H)
MS (ESI) m/z = 381 [M+H] +
【実施例30】
【0195】
3-(2-アミノベンゾオキサゾール-5-イル)-1-(1-メチルシクロブチルメチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン
【0196】
【化34】
【0197】
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.12 (s, 3H), 1.59 - 1.76 (m, 3H), 1.77 - 1.91 (m, 1H), 2.12 - 2.24 (m, 2H), 4.09 (s, 2H), 6.14 (s, 4H), 7.20 (dd, J = 8.2, 1.8 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.50 (s, 2H).
MS (ESI) m/z = 365 [M+H] +
【実施例31】
【0198】
5-(6-アミノ-4-クロロ-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン
【0199】
この化合物は、図5において提示される方法により得ることができる。
【0200】
【化35】
【0201】
a) 4-クロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン
アセトニトリル(60.0mL)及びDMF(4.00mL)中の4-クロロ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン(4.00g;23.59mmol;1.00当量)(1)の溶液に、N-ヨードスクシンイミド(10.61g;47.18mmol;2.00当量)を室温で添加する。その後、混合物を、5日間、80℃で加熱する。反応媒体を、真空下で濃縮する。媒体を、NaOH(1M)及びMeTHF(30mL)の溶液に溶解する。水性相を、MeTHF(5mL)で抽出する。有機相を合わせ、脱水し(MgSO4)、濃縮し、残留物をEt2Oで粉砕し、4-クロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン(4.52g、65%)(2)をベージュ色の固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 7.28-7.40 (br s, 2H), 13.5 (s, 1H)
MS (ESI) m/z = 295.77 [M+H]+
【0202】
b) 4-クロロ-3-ヨード-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン
4-クロロ-3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン(2.54g;8.60mmol;1.00当量)(2)をDMF(50.0mL)に溶解し、炭酸セシウム(2.80g;8.60mmol;1.00当量)、続いて2-ヨードプロパン(0.86mL;8.60mmol;1.00当量)を添加する。反応混合物を、室温で、3時間30分間撹拌する。水を媒体に添加し、その後、EtOAcで抽出する。収集した有機相を洗浄し、脱水し(MgSO4)、真空下で濃縮する。粗生成物を分取LCMS(C18カラム、溶出液:水/0.1%ギ酸中のアセトニトリル)により精製し、4-クロロ-3-ヨード-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン(623.00mg;21.47%)(3)を、ベージュ色の固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.40-1.42 (d, J = 6 Hz, 6H), 4.74-4.86 (h, J = 6 Hz, 1H), 7.39 (br s, 2H), 13.5 (s, 1H)
MS (ESI) m/z = 337.85 [M+H]+
【0203】
c) 5-(6-アミノ-4-クロロ-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン
6mLマイクロ波管に、1,4-ジオキサン(5.28ml)中の4-クロロ-3-ヨード-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミン(0.50g;1.48mmol;1.00当量)及び5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(0.58g;2.22mmol;1.50当量)、続いて炭酸カリウム水性溶液(2.22ml;2.00M;4.44mmol;3.00当量)を仕込み、その後、混合物を窒素下で3回脱気し、その後、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン(120.96mg;0.15mmol;0.10当量)を速やかに添加する。反応媒体を、マイクロ波により、1時間、100℃で加熱し、室温へと冷却し、EtOAc(10mL)に溶解し、濾過し、濃縮乾固する。得られた残留物を、分取LCMS(C18カラム、溶出液:水/0.1%ギ酸中のアセトニトリル)により精製し、5-(6-アミノ-4-クロロ-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(0,21g、41%)を、白色の結晶性固体の形態で得る。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 1.47 (d, J = 6.7 Hz, 6H), 4.91 (p, J = 6.7 Hz, 1H), 7.22 - 7.32 (m, 3H), 7.41 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.44 - 7.50 (m, 3H)
MS (ESI) m/z = 344 [M+H]+
【実施例32】
【0204】
mTOR酵素活性及びmTORC1/mTORC2細胞活性
32.1 mTORキナーゼの阻害活性
mTORに対する分子の阻害活性をスクリーニングするためのモデルは、LANTHASCREEN(商標)技術(Lifetechnologies社)を用いて開発した。反応基質(最終400nM)、分子の段階希釈物(最終1% DMSO)及び酵素(<1nM)を、384ウェルプレート(Corning 4514)に連続して添加し、最終体積を1ウェルあたり10μLとする。1時間の室温での反応後、最終10mMのEDTA及び最終2nMのテルビウムで標識された抗体を含有する10μLの溶液を添加する。室温での少なくとも30分のインキュベーション後、供給会社の推奨に従って好適なマイクロプレートリーダーを用いてTR-FRETシグナルを測定する。データを、陽性対照(飽和濃度の参照阻害剤を含有する「POS」)及び陰性対照(1% DMSOを含有する「NEG」)で正規化する:%阻害=((X-NEG)*100)/(POS-NEG)。IC50値を、4パラメーターロジスティックモデルを使用して、XLFitソフトウェア(IDBS社)の助力を得て、算出する。
【0205】
32.2 mTORC1/mTORC2阻害活性
A431細胞を、ポリ-L-リジンでコーティングされた96ウェルプレート中、1ウェルあたり25000細胞で培地全体(DMEM+10% FCS)に播種する。実験の24時間前に、培地を無血清培地と交換する。試験分子の段階希釈物を添加する(最終DMSO 0.1%)。3時間の37℃でのインキュベーション後、バイオマーカーS6RP(mTORC1)及びAKT(mTORC2)のリン酸化を、供給業者の推奨に従ってHTRF技術(Cisbio社)を使用して測定する。データを、陽性対照(飽和濃度の参照阻害剤を含有する「POS」)及び陰性対照(1% DMSOを含有する「NEG」)で正規化する:%阻害=((X-NEG)*100)/(POS-NEG)。IC50値を、4パラメーターロジスティックモデルを使用して、XLFitソフトウェア(IDBS社)の助力を得て、算出する。
【0206】
【表1A】
【0207】
【表1B】
【0208】
【表1C】
【0209】
【表1D】
【0210】
酵素に対する阻害剤の親和性は、酵素部位の半数が占有される阻害濃度を表す阻害定数Kiによって得られる。したがって、阻害剤の親和性は、Kiがより小さいほど、比例してより大きい。この阻害定数は、1リットルあたりのモルで表され、酵素-阻害剤複合体の解離定数にも対応する。
【0211】
上記の結果を考慮して、5nM未満の活性を有する化合物(IC50 mTORC1及び/又はIC50 mTORC2)は、特に好ましい。
【実施例33】
【0212】
マウスにおけるアトピー性皮膚炎のパッチモデルの時間経過図
図6に例示するように、雌のBalb/cマウスを、アレルゲンのヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus、DERP)を用いて、2つのパッチを週2回適用し、続いて2週間休息する、3サイクルの過程の腹部皮膚に対する経皮(パッチ)感作で、7週間処置した。実施例31によるテストされるアンタゴニスト(mTOR阻害剤)を、アセトンビヒクル中0.07%で製剤化し、DERPパッチを適用する前にマウスの背中の皮膚に適用し(2つの面に対して10μl/ear)、2時間放置した。アンタゴニスト(mTOR阻害剤)又はコルチコステロイド(対照として使用したベタメタゾン17-吉草酸エステル0.01%)を用いた局所処置を、3回目の最終週の感作の過程において3回(44日目、47日目及び50日目)のみ実施した。
【実施例34】
【0213】
mTORアンタゴニストの適用後の、アトピー性皮膚炎のパッチモデルにおける、経表皮水分喪失(又はTEWL)テスト
この処置プロトコールを図6に示す。
【0214】
経表皮水分喪失TEWLは、対照動物に対してTEWAMETER(登録商標)を使用して測定される。TEWAMETER(登録商標)プローブは、中空シリンダー内の2対のセンサー(温度及び相対湿度)を用いて、皮膚からの水分蒸発の密度勾配を間接的に測定する。マイクロプロセッサが、値を分析し、蒸発率をg/h/m2で表す。
【0215】
得られた結果を図7に示す。
【実施例35】
【0216】
mTORアンタゴニストの適用後の、アトピー性皮膚炎のパッチモデルにおける、表皮の厚さ
この処置プロトコールを図6に示す。
【0217】
表皮の厚さは、生理食塩水で予め固定した皮膚試料を使用した、HEで染色した6μm厚さの切片に対する組織形態計測学的分析により測定する。
【0218】
得られた結果を図8に示す。
【実施例36】
【0219】
mTORアンタゴニストの適用後の、アトピー性皮膚炎のパッチモデルにおける、炎症スコア
処置プロトコールを図6に示す。
【0220】
炎症スコアは、乾燥、皮膚発疹、脱毛、擦傷及び苔蘚化の事前に定義されたスケールの関数として視覚的に定義される。所定の日の個々のマウスに起因する5つのスコアの平均は、その特定の日に起因する臨床スコアを与える。
【0221】
得られた結果を図9に示す。
【実施例37】
【0222】
アトピー性皮膚炎(AD)のパッチモデルにおける、本発明によるmTORアンタゴニストの試験
アトピー性皮膚炎の炎症反応に対するmTORの寄与を評価するために、本発明者らは、前述のアトピー性皮膚炎モデルを、ヤケヒョウヒダニ(DERP)を抗原として、反復経皮感作に基づいて(Spergelら、JCI 1998年;Staumont-Salleら、JEM 2015年)使用した。このモデルにおいて、アトピー性皮膚炎により引き起こされた皮膚病変は、好酸球産生物の堆積及びTh2サイトカインの皮膚発現の増大を伴う、CD4+Tリンパ球及び好酸球の皮膚浸潤により特徴づけられる、Th2優勢の炎症を示す。
【0223】
実施例33のプロトコールに従い、滅菌生理食塩溶液中の100μgのアレルゲン(ヤケヒョウヒダニ又はDERP)又はビヒクルに浸漬したパッチを剃毛の24時間後に腹部皮膚に適用し、1週間の期間(週の半ばにパッチを変えて)の留置を、適用の間に2週間の間隔を置いて3回することで、経皮感作によりアトピー性皮膚炎の炎症反応を誘発した。パッチ及び上にある透明な密封包帯の存在により、マウスが舐め、噛み、引っかくことを防ぎ、結果として、このモデルにおける炎症反応は、かゆみサイクル(itching cycle)に起因するものではない。
【0224】
実施例31によるアンタゴニスト(mTOR阻害剤)をアセトンベースのビヒクル中0.07%で製剤化し、DERPパッチの取り付けの2時間前に、感作された皮膚に適用した。本発明によるアンタゴニスト又はコルチコステロイド(対照として使用した)を用いた局所処置を、3回目の最終週の感作の過程において3回(44日目、47日目及び50日目)のみ実施した。
【0225】
最後のパッチの除去時(51日目)、皮膚試料を、組織学的及び免疫組織学的分析のために収集した。図6は、処置の時間経過図を示す。
【0226】
結果を、図7から図9に示す。実施例31によるアンタゴニスト(mTOR阻害剤)は、試験されたすべてのパラメーターを減少させる。
【0227】
皮膚バリアの機能不全の臨床徴候である経表皮水分喪失TEWLの割合の増大は、有意に低減する(-68%)。
【0228】
皮膚バリアの機能不全の別のパラメーターである表皮肥厚は、mTORアンタゴニストを用いると部分的に回復する(表皮の厚さに対してそれぞれ-39%)。
【0229】
炎症スコア(-40)のような炎症パラメーターも影響を受ける。
【0230】
本発明によるmTORアンタゴニスト(mTOR阻害剤)の有効性は、コルチコステロイドを用いた処置に非常に類似する。
【0231】
本出願人は驚くべきことに、かゆみに起因しないアトピー性皮膚炎のネズミモデルにおいて、mTORアンタゴニスト(mTOR阻害剤)は、臨床徴候(臨床スコア及び経表皮水分喪失又はTEWLのような)並びに組織学的パラメーター(真皮中の炎症細胞の数及び表皮の厚さのような)を有意に低減することを今回発見した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9