(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】発光素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 33/38 20100101AFI20230704BHJP
H01L 33/42 20100101ALI20230704BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/42
(21)【出願番号】P 2020540207
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031036
(87)【国際公開番号】W WO2020044991
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018159251
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】菅原 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】半澤 康成
(72)【発明者】
【氏名】野澤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】汐先 政貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武志
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-157496(JP,A)
【文献】特開2012-089846(JP,A)
【文献】特開2013-251496(JP,A)
【文献】特開2012-169435(JP,A)
【文献】特開2005-276899(JP,A)
【文献】特開2003-347589(JP,A)
【文献】特表2009-522803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0200861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項11】
第1の半導体型を有する第1の半導体層と、発光層と、第2の半導体型を有する第2の半導体層とがこの順で積層された積層体であって、前記第1の半導体層の前記発光層とは反対側の面であり、前記発光層において生じた光が出射する光出射面と、前記第2の半導体層の前記発光層とは反対側の面である非光出射面と、前記光出射面と前記非光出射面の間を接続する側面とを有し、前記側面は前記積層体の層面方向に対して垂直な方向から前記側面間の距離が前記光出射面に向かって広がるように傾斜している積層体と、前記第1の半導体層に電気的に接続された第1の電極であって、前記第1の半導体層の周縁において前記光出射面に設けられた凹部に配置され、前記光出射面よりも前記発光層側に位置する部分を有する第1の電極と、前記積層体の前記非光出射面側に設けられ、前記第2の半導体に電気的に接続された第2の電極と、前記積層体の前記非光出射面側に設けられ、前記第2の電極と絶縁された第3の電極と、前記側面を介して前記第1の電極と前記第3の電極を電気的に接続する側面配線とを備える発光素子
を具備する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、片面電極構造を有する発光素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロLED(light emitting diode)等の発光素子では、p型電極とn型電極を素子の片面に形成した片面電極構造が多く用いられる。片面電極構造とすることにより、フリップチップ実装等が利用でき、実装が容易となる。
【0003】
通常、p型半導体層とn型半導体層は発光素子の表裏面の位置関係となるため、p型電極とn型電極を片面に配置させるには、一方の電極を他方の面に電気的に接続する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1には、発光層を挟んでn型クラッド層とp型クラッド層が積層された発光素子であって、発光素子の側面に設けられた配線によってn型クラッド層側の素子表面とp型クラッド層を電気的に接続した発光素子が開示されている。n型電極とp型電極はn型クラッド層側の素子表面に設けられ、片面電極構造が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような構造では、素子面積の低減に限界がある上、p型クラッド層への側面配線の接続面積が限られ、電気的接続が安定化しないという問題がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、素子面積の低減が可能であり、安定した電気的接続を実現することが可能な発光素子及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本技術に係る発光素子は、積層体と、第1の電極と、第2の電極と、第3の電極と、側面配線とを具備する。
上記積層体は、第1の半導体型を有する第1の半導体層と、発光層と、第2の半導体型を有する第2の半導体層とがこの順で積層された積層体であって、上記第1の半導体層の上記発光層とは反対側の面であり、上記発光層において生じた光が出射する光出射面と、上記第2の半導体層の上記発光層とは反対側の面である非光出射面と、上記光出射面と上記非光出射面の間を接続する側面とを有し、上記側面は上記積層体の層面方向に対して垂直な方向から上記側面間の距離が上記光出射面に向かって広がるように傾斜している。
上記第1の電極は、上記第1の半導体層に電気的に接続された第1の電極であって、上記第1の半導体層の周縁において上記光出射面に設けられた凹部に配置され、上記光出射面よりも上記発光層側に位置する部分を有する。
上記第2の電極は、上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の半導体に電気的に接続されている。
上記第3の電極は、上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の電極と絶縁されている。
上記側面配線は、上記側面を介して上記第1の電極と上記第3の電極を電気的に接続する。
【0009】
この構成によれば、積層体の側面を上記のように傾斜させることにより、第1の電極を発光素子の中央部に寄せることができ、発光素子の素子面積の縮小(チップシュリンク)が可能である。また、第1の電極と第1の半導体層の接触面積が増加し、第1の電極と第1の半導体層の電気的接続を安定化することが可能である。
【0010】
上記凹部の上記光出射面からの深さは、上記第1の電極と上記発光層の間の上記第1の半導体層の厚みより大きくてもよい。
【0011】
上記第1の電極は、全体が上記光出射面よりも上記発光層側に位置してもよい。
【0012】
上記第1の電極は、上記光出射面よりも上記発光層側に位置する第1の部分と、上記光出射面上に設けられ、上記光出射面に被さる第2の部分とを有してもよい。
【0013】
上記第1の半導体層は、上記光出射面側に高純度不純物領域を有し、上記第2の部分は上記高純度不純物領域に接触してもよい。
【0014】
上記発光素子は、上記光出射面上に積層された透明導電性材料からなる透明導電層をさらに具備し、上記第2の部分は上記透明導電層に接触してもよい。
【0015】
上記第1の電極は、上記側面配線の上記光出射面側の端面に接触してもよい。
【0016】
上記第1の電極は、上記側面配線の上記積層体側の面である内面に接触してもよい。
【0017】
上記第1の部分は、上記側面配線の上記積層体側の面である内面と、上記側面配線の上記光出射面側の端面に接触してもよい。
【0018】
上記発光素子は、複数の上記第1の電極を備えてもよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本技術に係る電子機器は、発光素子を具備する。上記発光素子は、第1の半導体型を有する第1の半導体層と、発光層と、第2の半導体型を有する第2の半導体層とがこの順で積層された積層体であって、上記第1の半導体層の上記発光層とは反対側の面であり、上記発光層において生じた光が出射する光出射面と、上記第2の半導体層の上記発光層とは反対側の面である非光出射面と、上記光出射面と上記非光出射面の間を接続する側面とを有し、上記側面は上記積層体の層面方向に対して垂直な方向から上記側面間の距離が上記光出射面に向かって広がるように傾斜している積層体と、上記第1の半導体層に電気的に接続された第1の電極であって、上記第1の半導体層の周縁において上記光出射面に設けられた凹部に配置され、上記光出射面よりも上記発光層側に位置する部分を有する第1の電極と、上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の半導体に電気的に接続された第2の電極と、上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の電極と絶縁された第3の電極と、上記側面を介して上記第1の電極と上記第3の電極を電気的に接続する側面配線とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図2】本技術の実施形態に係る発光素子の平面図である。
【
図3】本技術の実施形態に係る発光素子が備える積層体の断面図である。
【
図4】本技術の実施形態に係る発光素子の効果を示す模式図である。
【
図5】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図6】本技術の実施形態に係る発光素子が備える積層体の断面図である。
【
図7】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図8】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図9】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図10】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図11】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図12】本技術の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図13】本技術の実施形態に係る発光素子の平面図である。
【
図14】本技術の実施形態に係る発光素子の平面図である。
【
図15】本技術の実施形態に係る発光素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本技術の実施形態に係る発光素子について説明する。
【0022】
[発光素子の構造]
図1は本技術の実施形態に係る発光素子100の構造を示す断面図であり、
図2は発光素子の平面図である。
図1は、
図2のA-A線での断面図である。
【0023】
発光素子100はLED(light emitting diode)であり、特に好適にはマイクロLEDである。
【0024】
図1及び
図2に示すように、発光素子100は、第1半導体層101、発光層102、第2半導体層103、コンタクト層104、絶縁層105、側面配線106、第1電極107、第2電極108及び第3電極109を備える。
【0025】
第1半導体層101、発光層102及び第2半導体層103はこの順で積層され、積層体110を構成する。以下、第1半導体層101、発光層102及び第2半導体層103の層面方向をX-Y方向とし、積層方向をZ方向とする。
【0026】
第1半導体層101は、p型半導体又はn型半導体からなる。第1半導体層101はp型半導体の場合、例えばキャリア濃度1×1017~1×1018cm3のp型(Al0
.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるものとすることができる。また、第1半導体層101がn型半導体の場合、例えばキャリア濃度1×1018cm3のn型(Al0
.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるものとすることができる。
【0027】
発光層102は、電子と正孔の再結合による発光を生じる層である。発光層102は、例えばInGaPからなる量子井戸層と(Al0.6Ga0.4)0.5In0.5Pからなる障壁層を交互に複数層積層した量子井戸構造を有するものとすることができる。また、発光層102はこの他にも再結合による発光を生じる構造であればよい。
【0028】
第2半導体層103は、n型半導体又はp型半導体のうち、第1半導体層101とは半導体型が異なる半導体からなる。第2半導体層103はn型半導体からなる場合、例えばキャリア濃度1×1018cm3のn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるものとすることができる。また、第2半導体層103はp型半導体からなる場合、例えばキャリア濃度1×1017~1×1018cm3のp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるものとすることができる。
【0029】
積層体110では、第1半導体層101と第2半導体層103の間に電圧が印加されると、発光層102において発光が生じる。光は第1半導体層101を透過して出射される。以下、第1半導体層101の表面であって、発光層102とは反対側の面を光出射面101aとする。また、第2半導体層103の表面であって発光層102とは反対側の面を非光出射面103aとする。
【0030】
図3は、積層体110のみを示す断面図である。同図に示すように、積層体110は、光出射面101aと非光出射面103aの間を接続する側面110aを有する。
【0031】
側面110aは、積層体110の層面方向(X-Y方向)に対して垂直な方向(Z方向)から、側面110a間の距離が光出射面101aに向かって広がるように傾斜している。即ち、層面方向(X-Y方向)と側面110aがなす角をθとすると、θは90°未満である。
【0032】
また、
図3に示すように、第1半導体層101の周縁には凹部101bが設けられている。凹部101bは光出射面101aから所定の深さに掘り下げられて形成され、凹部101bの深さtは光出射面101aから発光層102の間とすることができる。具体的には、深さtは300nm以上400nm以下とすることができる。
【0033】
図3に示すように凹部101bの内周面のうち、層面方向(X-Y方向)に平行な面を底面101cとし、積層方向(Z方向)に平行な面を側面101dとする。
【0034】
図1に示すように凹部101bには第1電極107が設けられる。凹部101bの数や配置は後述するように種々の構成とすることができる。
【0035】
コンタクト層104は、第2半導体層103と第2電極108の間に設けられ、第2半導体層103と第2電極108を電気的に接続する。コンタクト層104は導電性材料からなり、第2半導体層103がn型半導体の場合にはn型GaAs、第2半導体層103がp型半導体の場合にはp型GaAs、p型GaP又はp型AlGaAs等からなるものとすることができる。
【0036】
絶縁層105は、積層体110の非光出射面103a及び側面110aを被覆し、絶縁する。絶縁層105は、透明絶縁性材料からなり、例えばSiO2、SiN又はAl2O3等からなるものとすることができる。非光出射面103a上では非光出射面103aに連通する開口105aが設けられ、開口105a内にコンタクト層104が設けられている。
【0037】
側面配線106は、側面110a上において絶縁層105上に配置され、側面110aを介して第1電極107と第3電極109を電気的に接続する。側面配線106は、
図1に示すように、光出射面101a側の端面106aが第1電極107に接触することにより、第1電極107に接続されている。また、側面配線106は、発光層102から放出された光を光出射面101a側に反射する光反射体としても機能する。
【0038】
側面配線106は、導電性及び光反射性を有する材料からなり、例えばAuからなるものとすることができる。側面配線106の厚みは例えば300nm以上400m以下とすることができる。なお、側面配線106は、スパッタリングにより形成することができるが、上記のように側面110aが傾斜しているため、側面110aが傾斜していない場合に比べて非光出射面103a側から容易に形成することが可能である。
【0039】
第1電極107は、第1半導体層101に電気的に接続され、側面配線106を介して第3電極109に電気的に接続されている。第1電極107は、凹部101bに配置され、光出射面101aよりも発光層102側に位置する。
図1では第1電極107は全体が光出射面101aよりも発光層102側に位置しているが、後述するように第1電極107は一部が光出射面101aよりも発光層102側に位置するものであってもよい。第1電極107は、凹部101bの底面101c及び側面101dに接触する形状とすることができる。
【0040】
発光素子100は、
図2に示すように2つの第1電極107を備えるものとすることができる。また、発光素子100は1つの第1電極107を備えるものでもよく、3つ以上の第1電極107を備えるものであってもよい。
【0041】
第1電極107は、導電性を有する材料からなり、第1半導体層101がp型の場合にはp型GaAs、p型GaP又はp型AlGaAsからなり、第1半導体層101がn型の場合には、n型GaAsからなるものとすることができる。第1電極107の厚みは、凹部101bの深さと同程度が好適であり、300nm以上400nm以下とすることができる。
【0042】
第2電極108は、積層体110の非光出射面103a側に設けられ、第2半導体層103に電気的に接続される。第2電極108は、コンタクト層104上に形成され、コンタクト層104を介して第2半導体層103に電気的に接続されているものとすることができる。第2電極108は導電性を有する材料からなり、例えばAuからなるものとすることができる。
【0043】
第3電極109は、積層体110の非光出射面103a側に設けられ、第2電極108と絶縁されている。第3電極109は絶縁層105上において第2電極108とは離間して設けられているものとすることができる。第3電極109は、側面配線106を介して第1電極107に電気的に接続され、即ち第1半導体層101に電気的に接続されている。第3電極109は導電性を有する材料からなり、例えばAuからなるものとすることができる。
【0044】
発光素子100は以上のような構成を有する。第1半導体層101及び第2半導体層103にそれぞれ電気的に接続された第2電極108及び第3電極109は、積層体110に対して非光出射面103a側の同一面上に設けられている。これにより、片面電極構造が実現されている。
【0045】
[発光素子による効果]
発光素子100による効果について説明する。
図4は、発光素子100の効果を示す図であり、比較例に係る発光素子200及び発光素子300と本実施形態に係る発光素子100のサイズを比較した図である。
【0046】
発光素子200は、第1半導体層201、発光層202、第2半導体層203、コンタクト層204、絶縁層205、側面配線206、第1電極207、第2電極208及び第3電極209を備える。第1半導体層201、発光層202及び第2半導体層203が積層されて積層体210が構成されている。
【0047】
発光素子200の構造では、積層体210の側面210aは層面方向に対して垂直となっている。発光素子200では製造工程において第1電極207を形成後、その上に側面配線206を形成する必要がある。
【0048】
発光素子300は、第1半導体層301、発光層302、第2半導体層303、コンタクト層304、絶縁層305、側面配線306、第1電極307、第2電極308及び第3電極309を備える。第1半導体層301、発光層302及び第2半導体層303が積層されて積層体310が構成されている。
【0049】
発光素子300は、発光素子200と同じ素子幅H1を有し、積層体310の側面310aを傾斜させた構造を有する。この構造では、側面310aを傾斜させることにより、発光層302で生じた光を光出射面301aに向けて反射させ、発光効率を向上させることができる。
【0050】
また、第1電極307上に側面配線306を形成する必要がなく、製造工程数を削減することができる。
【0051】
発光素子100は、この発光素子300の構成に対してさらに素子幅を縮小することが可能である。
【0052】
図4に示すように、発光素子100では、発光素子300に対して第1電極107が光出射面101aよりも発光層102側に移動して配置されている。発光層102からの第1電極107の移動距離は凹部101bの深さtに等しい。
【0053】
第1電極107を発光層102側に移動させることにより、光出射面101aの面積(図中、幅S)を維持したまま、側面110aの傾斜に沿って第1電極107を発光素子100の中央部へ寄せることが可能となる。具体的には、
図4に示すように、発光素子300に対する発光素子100での寄せ幅を幅wとすると、幅wはt/tanθとなる。これにより発光素子100の幅は幅H1から幅H2に縮小される。
【0054】
このように発光素子100では、素子幅の縮小(チップシュリンク)が可能である。さらに、側面110aを傾斜させることにより、光取出し効率の向上も実現されている。
【0055】
[第1電極の配置について]
第1電極107は、より発光層102に接近させて配置してもよい。
図5は、第1電極107をより発光層102に接近させた発光素子100の断面図であり、
図6はこの場合の積層体110の断面図である。
【0056】
図6に示すように、凹部101bは、上記深さtよりさらに深い、深さt2を有する。第1電極107(
図5参照)と発光層102の間の第1半導体層101の厚みを厚みdとすると、深さt2は厚みdより大きいものとすることができる。具体的には、深さt2は例えば1100nm以上1300nmとすることができる。
【0057】
なお、深さt2は発光層102に到達しない深さとする。凹部101bが発光層102に到達すると、発光層102の体積が減少し、発光効率が低下するためである。また、凹部101bの形成時に発光層102にダメージが生じるおそれもある。
【0058】
この構成では、第1電極107を発光層102により接近させることにより、第1電極107をさらに素子中央部に寄せ、素子面積を低減させることが可能である。具体的には、上記比較例に係る発光素子300の幅H1に対する縮小幅を幅w2とすると、幅w2はt2/tanθとなる。これにより発光素子100の幅は幅H1から幅H3に縮小される。
【0059】
さらに、第1電極107を発光層102により接近させることにより、凹部101bの側面101dの面積が増加し、第1電極107と第1半導体層101の接触面積が増加するため、第1電極107と第1半導体層101の接触抵抗を低減させることが可能である。
【0060】
また、第1電極107は、凹部101bの内部から光出射面101a上にわたって配置してもよい。
図7は、光出射面101a上にわたって形成された第1電極107を示す断面図である。
【0061】
同図に示すように、第1電極107は、第1部分107aと第2部分107bを有する。第1部分107aは、凹部101b内に配置され、光出射面101aよりも発光層102側に位置する部分である。
【0062】
第2部分107bは、第1部分107aから光出射面101a上に延伸され、光出射面101aに被さる部分である。第2部分107bは、光出射面101aを遮蔽しないように光出射面101aの周縁上に設けられている。
【0063】
第2部分107bが光出射面101a上にも形成されることにより、第1電極107と第1半導体層101の接触面積がさらに向上し、第1電極107と第1半導体層101の接触抵抗をより低減させることが可能である。
【0064】
また、底面101cの幅を小さくすることにより、第1電極107による光出射面101aの遮蔽面積を抑制し、光出射面101aの面積(図中、幅S)を維持することが可能である。
【0065】
さらに、第1電極107が光出射面101a上に形成される場合、第1半導体層101の表面に高不純物領域を形成してもよい。
図8は、第1半導体層101の表面に高不純物領域101eが形成された発光素子100の断面図である。
【0066】
高不純物領域101eは、不純物を多量にドープした領域である。第1半導体層101がp型半導体からなる場合には、Zn又はC等のp型ドーパントを多量にドープした領域とすることができる。また、第1半導体層101がn型半導体からなる場合には、Si等のn型ドーパントを多量にドープした領域とすることができる。
【0067】
第1半導体層101の表面に高不純物領域101eを設けることにより、第1電極107と第1半導体層101の接触電圧を安定させ、かつ低減させることが可能である。
【0068】
なお、高不純物領域101eに代えて第1半導体層101上に透明導体層を積層してもよい。
図9は、透明導体層111を備える発光素子100の断面図である。透明導体層111はITO(Indium Tin Oxide)等の光透過性を有する導電性誘電材料からなるものとすることができる。
【0069】
第1電極107の第2部分107bを透明導体層111に接触させることにより、第1電極107と第1半導体層101の接触電圧を安定させ、かつ低減させることが可能である。
【0070】
[第1電極と側面配線の接続について]
上記説明では、第1電極107は側面配線106の端面106aに接触する(
図1参照)としたが、側面配線106の端面106a以外の部分に接触する構成であってもよい。
【0071】
図10は、第1電極107が側面配線106の内面106bに接触する構成を示す模式図である。内面106bは、側面配線106の表面のうち積層体110側の面である。同図に示すように、側面配線106を第1電極107よりも光出射面101a側に延伸させ、第1電極107の端面を内面106b(膜面)に接触させることができる。
【0072】
第1電極107が端面106aに接触する構成では、側面配線106の厚みを薄くすると第1電極107と側面配線106の接触面積が減少する。これに対し、第1電極107が内面106bに接触する構成では、側面配線106の厚みを薄くしても第1電極107と側面配線106の接触面積が減少しない。
【0073】
このため、第1電極107と側面配線106の電気的接続の安定性を維持したままで側面配線106を薄くすることができ、その分素子面積を低減させることが可能となる。
【0074】
さらに、第1電極107は、側面配線106の内面106bと端面106aの両者に接触させてもよい。
図11は、第1電極107が側面配線106の内面106b及び端面106aに接触する構成を示す模式図である。
【0075】
この構成では、第1電極107と側面配線106の電気的接続を安定させ、接触抵抗をさらに低減することが可能である。
【0076】
また、この構成において第1電極107は、光出射面101aに被さる第2部分107bを有してもよい。
図12は、第1電極107が内面106b及び端面106aに接触し、かつ光出射面101aに被さる構成を示す模式図である。
【0077】
光出射面101aには高不純物領域101eが設けられている。この構成では、高不純物領域101eと第1電極107の接触抵抗を低減し、かつ第1電極107と側面配線106の接触抵抗を低減させることが可能である。
【0078】
なお、光出射面101aには高不純物領域101eに代えて透明導体層111を積層してもよく、高不純物領域101e及び透明導体層111が設けられてなくてもよい。
【0079】
[第1電極の平面配置について]
第1電極107の平面配置は
図2に示すものに限られない。
図13乃至
図15は第1電極107の配置例を示す模式図である。
図13及び
図14に示すように第1電極107は発光素子100の4辺にそれぞれ設けられてもよい。また、
図15に示すように、発光素子100の周縁を囲むように設けられてもよい。
【0080】
それぞれの第1電極107は、上記説明したいずれかの構造とすることができる。4辺の全てに第1電極107を設けることより4辺の全てで素子幅を縮小させることが可能となる。なお、発光素子100の平面形状は四角形に限られず、多角形や円形であってもよい。
【0081】
[電子機器について]
発光素子100は、ディスプレイの画素や照明の光源、その他の各種電子機器に搭載される発光素子として利用することが可能である。上述のように発光素子100は光出射面101aの面積を維持したまま素子面積の縮小が可能であり、高密度で実装することができる。また、安定した電気的接続が実現されており、消費電力の低減も可能である。
【0082】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
【0083】
(1)
第1の半導体型を有する第1の半導体層と、発光層と、第2の半導体型を有する第2の半導体層とがこの順で積層された積層体であって、上記第1の半導体層の上記発光層とは反対側の面であり、上記発光層において生じた光が出射する光出射面と、上記第2の半導体層の上記発光層とは反対側の面である非光出射面と、上記光出射面と上記非光出射面の間を接続する側面とを有し、上記側面は上記積層体の層面方向に対して垂直な方向から上記側面間の距離が上記光出射面に向かって広がるように傾斜している積層体と、
上記第1の半導体層に電気的に接続された第1の電極であって、上記第1の半導体層の周縁において上記光出射面に設けられた凹部に配置され、上記光出射面よりも上記発光層側に位置する部分を有する第1の電極と、
上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の半導体に電気的に接続された第2の電極と、
上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の電極と絶縁された第3の電極と、
上記側面を介して上記第1の電極と上記第3の電極を電気的に接続する側面配線と
を具備する発光素子。
【0084】
(2)
上記(1)に記載の発光素子であって、
上記凹部の上記光出射面からの深さは、上記第1の電極と上記発光層の間の上記第1の半導体層の厚みより大きい
発光素子。
【0085】
(3)
上記(1)又は(2)に記載の発光素子であって、
上記第1の電極は、全体が上記光出射面よりも上記発光層側に位置する
発光素子。
【0086】
(4)
上記(1)又は(2)に記載の発光素子であって、
上記第1の電極は、上記光出射面よりも上記発光層側に位置する第1の部分と、上記光出射面上に設けられ、上記光出射面に被さる第2の部分とを有する
発光素子。
【0087】
(5)
上記(4)に記載の発光素子であって、
上記第1の半導体層は、上記光出射面側に高純度不純物領域を有し、上記第2の部分は上記高純度不純物領域に接触する
発光素子。
【0088】
(6)
上記(4)に記載の発光素子であって、
上記光出射面上に積層された透明導電性材料からなる透明導電層をさらに具備し、上記第2の部分は上記透明導電層に接触する
発光素子。
【0089】
(7)
上記(1)から(4)のいずれか一つに記載の発光素子であって、
上記第1の電極は、上記側面配線の上記光出射面側の端面に接触する
発光素子。
【0090】
(8)
上記(1)から(7)のいずれか一つに記載の発光素子であって、
上記第1の電極は、上記側面配線の上記積層体側の面である内面に接触する
発光素子。
【0091】
(9)
上記(4)から(6)のいずれか一つに記載の発光素子であって、
上記第1の部分は、上記側面配線の上記積層体側の面である内面と、上記側面配線の上記光出射面側の端面に接触する
発光素子。
【0092】
(10)
上記(1)から(9)のいずれか一つに記載の発光素子であって、
複数の上記第1の電極を備える
発光素子。
【0093】
(11)
第1の半導体型を有する第1の半導体層と、発光層と、第2の半導体型を有する第2の半導体層とがこの順で積層された積層体であって、上記第1の半導体層の上記発光層とは反対側の面であり、上記発光層において生じた光が出射する光出射面と、上記第2の半導体層の上記発光層とは反対側の面である非光出射面と、上記光出射面と上記非光出射面の間を接続する側面とを有し、上記側面は上記積層体の層面方向に対して垂直な方向から上記側面間の距離が上記光出射面に向かって広がるように傾斜している積層体と、上記第1の半導体層に電気的に接続された第1の電極であって、上記第1の半導体層の周縁において上記光出射面に設けられた凹部に配置され、上記光出射面よりも上記発光層側に位置する部分を有する第1の電極と、上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の半導体に電気的に接続された第2の電極と、上記積層体の上記非光出射面側に設けられ、上記第2の電極と絶縁された第3の電極と、上記側面を介して上記第1の電極と上記第3の電極を電気的に接続する側面配線とを備える発光素子
を具備する電子機器。
【符号の説明】
【0094】
100…発光素子
101…第1半導体層
101a…光出射面
101b…凹部
101e…高不純物領域
102…発光層
103…第2半導体層
103a…非光出射面
106…側面配線
106a…端面
106b…内面
107…第1電極
107a…第1部分
107b…第2部分
108…第2電極
109…台電極
110…積層体
110a…側面
111…透明導体層