(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20230704BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20230704BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230704BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230704BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20230704BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230704BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230704BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20230704BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20230704BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/209
H01M50/204 401H
H01M50/548 101
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/6555
(21)【出願番号】P 2020548062
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029349
(87)【国際公開番号】W WO2020059297
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2018175616
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】山城 豪
(72)【発明者】
【氏名】越智 新吾
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061894(WO,A1)
【文献】特開2009-110833(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110055(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206059484(CN,U)
【文献】国際公開第2019/155713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/289
H01M 10/647
H01M 10/613
H01M 10/653
H01M 10/6555
H01M 50/291
H01M 50/209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電池と、
隣接する2つの前記電池の間に配置されて、当該2つの電池間を絶縁するセパレータと、を備え、
前記セパレータは、熱伝導抑制部および位置規制部を有し、
前記熱伝導抑制部は、前記位置規制部よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの前記電池間の熱伝導を抑制し、
前記位置規制部は、前記熱伝導抑制部よりも剛性が高く、電池の積層方向の寸法が前記熱伝導抑制部の前記積層方向の寸法以上であり、隣接する2つの前記電池に当接して前記積層方向における前記電池の位置を規制
し、
前記電池は、外装缶と、前記外装缶に収容される電極体と、前記外装缶の第1表面に設けられる出力端子と、を有し、
前記位置規制部は、前記第1表面と前記第1表面に背向する第2表面とが並ぶ第1方向において、前記出力端子とは反対側に偏るように配置され、
前記位置規制部は、前記第1表面側に配置される第1部分と、前記第2表面側に配置される第2部分と、を有し、前記第1部分および前記第2部分は、前記第1方向と交わる第2方向に延びる長尺状であり、
前記電極体は、前記第2方向に長い矩形状であり、
前記電池の積層方向から見て、前記第1部分は前記電極体の前記第1表面側の長辺と重なり、前記第2部分は前記電極体の前記第2表面側の長辺と重なることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記熱伝導抑制部は、前記第1部分と前記第2部分との間に配置される請求項
1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記熱伝導抑制部は、前記第1方向の寸法が前記第1部分と前記第2部分との間隔よりも小さい請求項
2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記セパレータは、前記電池の積層方向にセパレータを貫通する貫通孔を有し、
前記位置規制部は、前記貫通孔の周囲を囲うように配置され、
前記熱伝導抑制部は、前記積層方向から見て前記貫通孔内に配置される請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が直列接続された構造を有する電池モジュールが知られている。特許文献1には、電池とセパレータとが交互に積層された構造を有する電池モジュールが開示されている。この電池モジュールでは、隣接する2つの電池間にセパレータを配置することで、2つの電池間を絶縁していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電池モジュールでは、使用中にある電池の温度が過度に上昇し、その熱が隣接する電池にも伝わってこの隣接する電池の温度も過度に上昇するという、過熱の連鎖が生じるおそれがある。過熱の連鎖が起こると、電池モジュールの性能が大幅に低下してしまう。また、電池モジュールでは、積層された電池の固定が十分でないと各電池の電気的接続を維持することが困難であり、電池モジュールの性能低下につながり得る。
【0005】
本発明者らは、上述の電池モジュールについて鋭意研究を重ねた結果、従来の電池モジュールには、電池モジュールの性能の低下を抑制する上で改善の余地があることを認識するに至った。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池モジュールの性能の低下を抑制するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電池モジュールである。当該電池モジュールは、積層された複数の電池と、隣接する2つの電池の間に配置されて、当該2つの電池間を絶縁するセパレータと、を備える。セパレータは、熱伝導抑制部および位置規制部を有する。熱伝導抑制部は、位置規制部よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの電池間の熱伝導を抑制する。位置規制部は、熱伝導抑制部よりも剛性が高く、電池の積層方向の寸法が熱伝導抑制部の積層方向の寸法以上であり、隣接する2つの電池に当接して積層方向における電池の位置を規制する。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電池モジュールの性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る電池モジュールの斜視図である。
【
図3】互いに組み付けられた状態にある電池およびセパレータの断面図である。
【
図4】電池に組み付けられた状態にあるセパレータの正面図である。
【
図5】熱伝導抑制部および位置規制部の積層方向の寸法を説明するための模式図である。
【
図6】位置規制部の配置を説明するための模式図である。
【
図7】実施の形態2に係る電池モジュールが備える熱伝導抑制部および位置規制部の寸法関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電池モジュールの斜視図である。
図2は、電池およびセパレータの分解斜視図である。
図3は、互いに組み付けられた状態にある電池およびセパレータの断面図である。
図4は、電池に組み付けられた状態にあるセパレータの正面図である。なお、
図1では、電池2の図示を簡略化している。また、
図2および
図3では、任意の2つの電池2と、この2つの電池2の間に配置されるセパレータ4を図示している。また、
図3では、電池2の内部構造のうち電極体12のみを模式的に図示している。
【0013】
電池モジュール1は、複数の電池2と、複数のセパレータ4と、一対のエンドプレート6と、一対の拘束部材8と、を主な構成として備える。
【0014】
各電池2は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。電池2は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶10を有する。外装缶10の一面には図示しない略長方形状の開口が設けられ、この開口を介して外装缶10に電極体12や電解液等が収容される。外装缶10の開口には、外装缶10を封止する封口板14が設けられる。封口板14は、矩形状の板である。封口板14は、外装缶10の第1表面10aを構成する。
【0015】
外装缶10の第1表面10a、つまり封口板14には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子16が設けられ、他端寄りに負極の出力端子16が設けられる。一対の出力端子16はそれぞれ、電極体12を構成する正極板、負極板と電気的に接続される。以下では適宜、正極の出力端子16を正極端子16aと称し、負極の出力端子16を負極端子16bと称する。また、出力端子16の極性を区別する必要がない場合、正極端子16aと負極端子16bとをまとめて出力端子16と称する。外装缶10、封口板14および出力端子16は導電体であり、例えば金属製である。封口板14と外装缶10の開口とは、溶接等により接合される。各出力端子16は、封口板14に形成された貫通孔14aに挿通される。各出力端子16と各貫通孔14aとの間には、絶縁性のシール部材が介在する。
【0016】
本実施の形態では、説明の便宜上、外装缶10の第1表面10aを電池2の上面、外装缶10の第1表面10aに背向する第2表面10bを電池2の底面とする。また、電池2は、上面および底面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池2が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。また、主表面は、上面および底面の長辺に接続される長側面である。上面、底面および2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池2の側面とする。この側面は、上面および底面の短辺に接続される短側面である。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本発明において上面と規定された部分は、底面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0017】
封口板14には、一対の出力端子16の間に安全弁18が設けられる。安全弁18は、外装缶10の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。各電池2の安全弁18は、図示しないガスダクトに接続され、電池内部のガスは安全弁18からガスダクトに排出される。
【0018】
複数の電池2は、隣り合う電池2の主表面どうしが対向するにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池2の積層には、複数の電池2を水平に並べることも含まれる。また、各電池2は、出力端子16が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態では便宜上、各電池2は、出力端子16が鉛直方向上方を向くように配置される。隣接する2つの電池2は、一方の電池2の正極端子16aと他方の電池2の負極端子16bとが隣り合うように積層される。正極端子16aと負極端子16bとは、図示しないバスバーを介して電気的に接続される。なお、隣接する複数個の電池2における同極性の出力端子16どうしをバスバーで並列接続して電池ブロックを形成し、電池ブロックどうしを直列接続してもよい。
【0019】
各セパレータ4は、絶縁スペーサとも呼ばれ、隣接する2つの電池2の間に配置されて、当該2つの電池2間を電気的に絶縁する。各セパレータ4は、枠部20と、熱伝導抑制部22と、位置規制部24と、を有する。
【0020】
枠部20は、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。枠部20を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。枠部20は、電池2の主表面に平行な平面部20aと、平面部20aの端部から電池2の積層方向Xに延びる壁部20bとを有する。本実施の形態では、平面部20aおよび壁部20bは一体成形されている。
【0021】
平面部20aは、電池2の主表面と同じ矩形状である。平面部20aは、隣り合う2つの電池2の対向する主表面間に介在する。これにより、隣り合う電池2の外装缶10どうしが絶縁される。
【0022】
壁部20bは、電池2の上面、底面および側面それぞれの一部を被覆する。これにより、電池2またはエンドプレート6の表面での結露等が原因で生じ得る、隣り合う電池2間の短絡を抑制することができる。すなわち、壁部20bによって、隣り合う電池2間の沿面距離を確保することができる。また、壁部20bは、電池モジュール1が組み立てられた状態で、電池2と拘束部材8との間に位置する。これにより、電池2と拘束部材8との間の短絡を抑制することができる。
【0023】
熱伝導抑制部22は、隣接する2つの電池2の間に配置されて、当該2つの電池2間の熱伝導を抑制する。また、熱伝導抑制部22は、絶縁性を有する。本実施の形態では、セパレータ4は、電池2の積層方向Xに平面部20aを貫通する貫通孔26を有する。そして、熱伝導抑制部22は、貫通孔26に嵌め込まれている。つまり、熱伝導抑制部22は、積層方向Xから見て貫通孔26内に配置される。また、電池2の上面と底面とが並ぶ鉛直方向Zにおける熱伝導抑制部22および貫通孔26の寸法はおおよそ同一である。また、正極端子16aと負極端子16bとが並ぶ水平方向Yにおける熱伝導抑制部22および貫通孔26の寸法もおおよそ同一である。したがって、積層方向Xから見て、熱伝導抑制部22は貫通孔26の全域に拡がっている。
【0024】
熱伝導抑制部22は、シート状であり、一例として断熱材およびラミネートフィルムで構成される。熱伝導抑制部22の厚さは、例えば1~2mmである。
【0025】
断熱材は、シート状であり、不織布等からなる繊維シートの繊維間に、シリカキセロゲル等の多孔質材が担持された構造を有する。シリカキセロゲルは、空気分子の運動を規制するナノサイズの空隙構造を有し、熱伝導率が低い。断熱材の熱伝導率は、約0.018~0.024W/m・Kである。断熱材は、特に狭スペースで使用される断熱材として有用である。断熱材の熱伝導率は、空気の熱伝導率よりも低い。このため、熱伝導抑制部22を設けることで、隣接する2つの電池2間に断熱層として空気の層を備える場合よりも、当該電池2間の熱伝導をより抑制することができる。また、熱伝導抑制部22は、枠部20および位置規制部24よりも熱伝導性が低い。
【0026】
また、シリカキセロゲルは外部からの押圧に対してその構造を安定的に維持することができる。このため、拘束部材8による積層方向Xの締め付けがあっても、断熱材の断熱性能を安定的に維持することができる。したがって、電池モジュール1は、熱伝導抑制部22を備えることで、電池2間に断熱層として空気の層を備える場合よりも、電池2間の熱伝導をより安定的に抑制することができる。さらに、断熱材は空気よりも熱伝導率が低いため、空気の層に比べてより薄い層厚で同程度の断熱効果を得ることができる。よって、電池モジュール1の大型化を抑制することができる。
【0027】
ラミネートフィルムは、断熱材の全体を包んで保護するための部材である。ラミネートフィルムにより、断熱材における多孔質材が繊維シートから脱落することを抑制することができる。また、ラミネートフィルムで断熱材を被覆することで、電池モジュール1の組み立て時に熱伝導抑制部22を外装缶10に接着させやすくすることができる。ラミネートフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる。
【0028】
熱伝導抑制部22は、枠部20および位置規制部24よりも耐熱性が高い。より具体的には、断熱材の耐熱性が枠部20および位置規制部24の耐熱性よりも高い。さらに具体的には、繊維シートが枠部20および位置規制部24よりも融点が高い繊維を含むか、多孔質材が枠部20および位置規制部24よりも融点が高い物質からなるか、あるいはその両方である。例えば、断熱材は、融点が300℃以上である。具体的には、断熱材を構成する繊維シートおよび/または多孔質材の融点が300℃以上である。特に、繊維シートを構成する繊維の融点を300℃以上とすることが好ましい。これにより、断熱材が高温に曝された場合であっても、繊維シートが多孔質材を担持した状態を維持することができる。
【0029】
熱伝導抑制部22の耐熱性を枠部20および位置規制部24の耐熱性よりも高くすることで、電池2の発熱により枠部20および位置規制部24が溶融した場合であっても、熱伝導抑制部22を残存させることができる。このため、枠部20および位置規制部24が溶融した場合であっても、熱伝導抑制部22により電池2間の絶縁を維持することができる。また、隣り合う電池2間の熱伝導が抑制された状態を、より長期間維持することができる。
【0030】
位置規制部24は、熱伝導抑制部22よりも剛性が高く、隣接する2つの電池2に当接して積層方向Xにおける電池2の位置を規制する。また、位置規制部24は、枠部20と同じ樹脂材料からなる。本実施の形態では、位置規制部24と枠部20とは一体成形されている。
【0031】
位置規制部24は、第1部分24aと、第2部分24bと、を有する。第1部分24aは、外装缶10の第1表面10a側に配置され、第2部分24bは、外装缶10の第2表面10b側に配置される。第1部分24aおよび第2部分24bはともに長尺状であり、第1表面10aと第2表面10bとが並ぶ第1方向と交わる第2方向に延びる。本実施の形態では、第1方向は鉛直方向Zであり、第2方向は水平方向Yである。
【0032】
また、位置規制部24は、第3部分24cと、第4部分24dと、を有する。第3部分24cおよび第4部分24dは、ともに長尺状である。第3部分24cは、第1方向に延びて第1部分24aおよび第2部分24bの一方の端部どうしをつなぐ。第4部分24dは、第1方向に延びて第1部分24aおよび第2部分24bの他方の端部どうしをつなぐ。
【0033】
本実施の形態の位置規制部24は、貫通孔26の周囲を囲うように配置される。具体的には、第1部分24a、第2部分24b、第3部分24cおよび第4部分24dによって貫通孔26が縁取りされている。上述のように、熱伝導抑制部22は、積層方向Xから見て貫通孔26内に配置される。したがって、熱伝導抑制部22は、第1部分24aと第2部分24bとの間に配置される。また、熱伝導抑制部22は、第3部分24cと第4部分24dとの間に配置される。
【0034】
積層された複数の電池2および複数のセパレータ4は、一対のエンドプレート6で挟まれる。各エンドプレート6は、例えば金属板からなる。一対のエンドプレート6は、積層方向Xにおける両端の電池2と、熱伝導抑制部22を有しない公知のセパレータを介して隣り合うように配置される。これにより、電池2とエンドプレート6との間を絶縁するとともに、エンドプレート6を介した電池2の放熱が妨げられることを回避することができる。エンドプレート6における電池2の主表面と対向する面には、ねじ28が螺合するねじ穴(図示せず)が設けられる。
【0035】
一対の拘束部材8は、バインドバーとも呼ばれ、積層方向Xを長手方向とする長尺状の部材である。一対の拘束部材8は、積層方向Xと直交し、封口板14の長手方向と平行な水平方向Yにおいて、互いに向かい合うように配列される。一対の拘束部材8の間には、複数の電池2、複数のセパレータ4および一対のエンドプレート6が介在する。各拘束部材8は、電池2の側面と平行に延びる矩形状の平面部8aと、平面部8aの各端辺から電池2側に突出する4つの庇部8bとを有する。積層方向Xにおいて互いに対向する2つの庇部8bには、ねじ28が挿通される貫通孔(図示せず)が設けられる。
【0036】
平面部8aには、電池2の側面を露出させる開口部8cが設けられる。開口部8cは、積層方向Xの外力に対する拘束部材8の剛性に極力影響しないよう配置されることが好ましい。これにより、拘束部材8の剛性を維持しながら、拘束部材8の軽量化を図ることができる。
【0037】
電池モジュール1は、例えば以下のようにして組み立てられる。すなわち、まず電池2にセパレータ4が組み付けられる。具体的には、まず位置規制部24を含む枠部20が電池2に嵌め合わされる。なお、セパレータ4は枠部20を備えなくてもよく、この場合は位置規制部24は外装缶10に接着剤等により取り付けられる。続いて、外装缶10の主表面に熱伝導抑制部22が取り付けられる。このとき、熱伝導抑制部22は、枠部20の貫通孔26内に配置される。熱伝導抑制部22は、接着剤等により外装缶10に貼り付けられる。
【0038】
電池2とセパレータ4との組み合わせが複数積層され、これらが一対のエンドプレート6で積層方向Xに挟まれて集合体が形成される。そして、集合体が一対の拘束部材8で水平方向Yに挟まれる。各拘束部材8は、拘束部材8の貫通孔がエンドプレート6のねじ穴と重なるように位置合わせされる。そして、ねじ22が貫通孔に挿通され、ねじ穴に螺合される。このように、一対の拘束部材8が一対のエンドプレート6に係合されることで、複数の電池2と複数のセパレータ4とが拘束される。
【0039】
複数の電池2は、拘束部材8によって積層方向Xにおいて締め付けられることで、積層方向Xの位置決めがなされる。また、複数の電池2は、底面がセパレータ4の枠部20を介して拘束部材8の下側の庇部8bに当接し、上面が枠部20を介して拘束部材8の上側の庇部8bに当接することで、鉛直方向Zの位置決めがなされる。これらの位置決めが完了した後に、各電池2の出力端子16にバスバーが取り付けられて、各出力端子16が電気的に接続される。つづいて、カバー部材(図示せず)が各電池2の上面を覆うように取り付けられて、電池モジュール1が得られる。
【0040】
続いて、熱伝導抑制部22および位置規制部24の積層方向Xにおける寸法と、位置規制部24の配置と、について詳細に説明する。
図5は、熱伝導抑制部および位置規制部の積層方向の寸法を説明するための模式図である。位置規制部24は、電池2の積層方向Xの寸法D1が熱伝導抑制部22の積層方向Xの寸法D2以上である。
図5には、位置規制部24の寸法D1が熱伝導抑制部22の寸法D2よりも大きい場合の構造が図示されている。
【0041】
図6は、位置規制部の配置を説明するための模式図である。位置規制部24は、第1表面10aと第2表面10bとが並ぶ第1方向における中心C1が、第1方向における電池2の中心C2よりも第2表面10b側に位置する。位置規制部24の中心C1は、例えば第1部分24aの最も第1表面10a側の点と、第2部分24bの最も第2表面10b側の点との第1方向における中間点の位置である。電池2の中心C2は、出力端子16の先端と第2表面10bとの第1方向における中間点の位置である。
【0042】
また、電極体12は、第2方向に長い矩形状である。そして、電池2の積層方向Xから見て、第1部分24aは電極体12の第1表面10a側の長辺12aと重なり、第2部分24bは電極体12の第2表面10b側の長辺12bと重なる。なお、本実施の形態では、第3部分24cおよび第4部分24dが電極体12の短辺と重なっている。つまり、電極体12の全周が位置規制部24と重なっている。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係る電池モジュール1は、積層された複数の電池2と、隣接する2つの電池2の間に配置されて、当該2つの電池2間を絶縁するセパレータ4と、を備える。セパレータ4は、熱伝導抑制部22および位置規制部24を有する。熱伝導抑制部22は、位置規制部24よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの電池2間の熱伝導を抑制する。位置規制部24は、熱伝導抑制部22よりも剛性が高く、電池2の積層方向Xの寸法D1が熱伝導抑制部22の積層方向Xの寸法D2以上である。そして、位置規制部24は、隣接する2つの電池2に当接して積層方向Xにおける各電池2の位置を規制する。
【0044】
このように、2つの電池2の間に熱伝導抑制部22を挟むことで、電池モジュール1の使用中に任意の電池2の温度が過度に上昇しても、その熱が隣接する電池2に伝達することを抑制することができる。したがって、過熱の連鎖を抑制することができる。また、位置規制部24の積層方向Xの寸法D1を熱伝導抑制部22の積層方向Xの寸法D2以上とすることで、位置規制部24をより確実に各電池2の外装缶10に当接させることができる。これにより、積層方向Xにおける各電池2の変位を抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、過熱の連鎖の抑制と、積層方向Xにおける電池2の固定との両立を図ることができる。よって、電池モジュール1の性能の低下を抑制することができる。
【0045】
また、電池2の膨張によって積層方向Xにおける電池2の寸法が大きくなると、熱伝導抑制部22が両側の電池2の外装缶10によって圧迫される。位置規制部24よりも剛性の低い熱伝導抑制部22は、この圧迫により変形して、各外装缶10に密着する。この結果、2つの電池2間の熱伝導をより確実に抑制することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、電池2が外装缶10と、外装缶10に収容される電極体12と、外装缶10の第1表面10aに設けられる出力端子16と、を有する。そして、位置規制部24は、第1表面10aと第2表面10bとが並ぶ第1方向における中心C1が、第1方向における電池2の中心C2よりも第2表面10b側に位置する。つまり、位置規制部24は、電池2の主表面上で出力端子16とは反対側に偏るように配置される。
【0047】
電池2は、外装缶10の第1表面10aから出力端子16が突出している。このため、外装缶10に収容される電極体12の中心は、電池2の中心C2よりも第2表面10b側にずれる。また、外装缶10内において、電極体12と出力端子16との間には両者を電気的に接続する集電体が延在する。このため、電池2の中心C2を外装缶10の中心とした場合であっても、電極体12の中心は電池2の中心C2よりも第2表面10b側にずれる。したがって、位置規制部24の中心C1を電池2の中心C2よりも第2表面10b側にずらすことで、位置規制部24の中心C1を電極体12の中心に近づけることができる。
【0048】
電池モジュール1の使用時に生じ得る電池2の膨張は、電極体12に含まれる活物質の膨張が主な原因である。すなわち、電池2は、電極体12の延在部分がより膨張し易い。これに対し、位置規制部24の中心C1を電極体12の中心に近づけることで、電池2の膨張をより効率よく抑制することができる。
【0049】
また、位置規制部24は、第1表面10a側に配置される第1部分24aと、第2表面10b側に配置される第2部分24bと、を有する。第1部分24aおよび第2部分24bは、第1方向と交わる第2方向に延びる長尺状である。また、電極体12は、第2方向に長い矩形状である。そして、積層方向Xから見て、第1部分24aは電極体12の第1表面10a側の長辺12aと重なり、第2部分24bは電極体12の第2表面10b側の長辺12bと重なる。電極体12は、短辺側に比べて長辺側の変形量が大きい。このため、長辺12a,12bに第1部分24a、第2部分24bを重ねることで、電極体12の変形をより効率よく抑制することができる。
【0050】
また、熱伝導抑制部22は、第1部分24aと第2部分24bとの間に配置される。これにより、熱伝導抑制部22の設置スペースの効率化を図ることができ、熱伝導抑制部22を設けることによるセパレータ4の大型化を抑制することができる。また、第1部分24aが電極体12の第1表面10a側の長辺12aと重なり、第2部分24bが電極体12の第2表面10b側の長辺12bと重なる構造により、電池2の変形抑制と熱伝導抑制部22の設置面積増大との両立を図ることができる。
【0051】
また、本実施の形態のセパレータ4は、積層方向Xにセパレータ4を貫通する貫通孔26を有する。そして、位置規制部24は貫通孔26の周囲を囲うように配置され、熱伝導抑制部22は積層方向Xから見て貫通孔26内に配置される。これにより、熱伝導抑制部22の位置を貫通孔26あるいは位置規制部24で規制することができ、熱伝導抑制部22のずれを抑制することができる。この結果、電池モジュール1の性能の低下をより確実に抑制することができる。また、貫通孔26により熱伝導抑制部22の収容空間を確保することができる。これにより、熱伝導抑制部22が電池2の膨張によって過度に押圧されることを抑制することができる。
【0052】
(実施の形態2)
実施の形態2は、熱伝導抑制部および位置規制部の寸法関係が異なる点を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
図7は、実施の形態2に係る電池モジュールが備える熱伝導抑制部および位置規制部の寸法関係を説明するための模式図である。
【0053】
本実施の形態の熱伝導抑制部22は、第1方向の寸法H1が第1部分24aと第2部分24bとの間隔H2よりも小さい。したがって、熱伝導抑制部22と、第1部分24aおよび/または第2部分24bとの間に隙間が生じる。言い換えれば、熱伝導抑制部22の積層方向Xへの投影面積が貫通孔26の開口面積以下である。これにより、熱伝導抑制部22および位置規制部24の第1方向の寸法公差を許容することができ、熱伝導抑制部22を第1部分24aと第2部分24bとの間により確実に配置することができる。また、電池モジュール1の組み立て工程を簡略化することができる。間隔H2は、例えば第1部分24aの最も第2部分24b側の点と、第2部分24bの最も第1部分24a側の点との第1方向における距離である。また、本実施の形態では、第1方向は鉛直方向Zである。
【0054】
電池モジュール1の組み立て時、熱伝導抑制部22と位置規制部24とは、第1部分24aまたは第2部分24bを基準として互いに位置関係が定められる。
図7に示す構造では、第2部分24bを基準として互いの位置関係が定められている。つまり、熱伝導抑制部22は、その底辺が第2部分24bに接するようにして電池2の主表面に固定されている。したがって、熱伝導抑制部22の上辺と第1部分24aとの間に隙間がある。このように、位置規制部24を基準として熱伝導抑制部22を設置することで、電池モジュール1の組み立てばらつきを減らすことができる。
【0055】
なお、熱伝導抑制部22および位置規制部24は、第1部分24aを基準として互いの位置関係が定められてもよい。つまり、熱伝導抑制部22の上辺が第1部分24aに接するように、熱伝導抑制部22が電池2の主表面に固定されてもよい。この場合は、熱伝導抑制部22の底辺と第2部分24bとの間に隙間が生じる。
【0056】
また、本実施の形態の熱伝導抑制部22は、第2方向の寸法W1が第3部分24cと第4部分24dとの間隔W2よりも小さい。したがって、熱伝導抑制部22と、第3部分24cおよび/または第4部分24dとの間に隙間が生じる。これにより、熱伝導抑制部22および位置規制部24の第2方向の寸法公差を許容することができ、熱伝導抑制部22を第3部分24cと第4部分24dとの間により確実に配置することができる。また、電池モジュール1の組み立て工程を簡略化することができる。本実施の形態では、第2方向は水平方向Yである。
【0057】
図7に示す構造では、熱伝導抑制部22の第2方向における中心と第3部分24cおよび第4部分24dの第2方向における中心とが一致するようにして、熱伝導抑制部22および位置規制部24が配置されている。したがって、熱伝導抑制部22の左辺と第3部分24cとの間、および熱伝導抑制部22の右辺と第4部分24dとの間に隙間がある。なお、熱伝導抑制部22および位置規制部24は、第3部分24cまたは第4部分24dを基準として配置されてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0059】
電池モジュール1が備える電池2の数は特に限定されない。また、電池2は、外装缶10の表面を被覆する、シュリンクチューブ等の絶縁フィルムを有してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 電池モジュール、 2 電池、 4 セパレータ、 10 外装缶、 10a 第1表面、 10b 第2表面、 12 電極体、 12a,12b 長辺、 16 出力端子、 22 熱伝導抑制部、 24 位置規制部、 24a 第1部分、 24b 第2部分、 26 貫通孔。