(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】モバイルECGセンサ装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/332 20210101AFI20230704BHJP
【FI】
A61B5/332
(21)【出願番号】P 2020549629
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 US2019022098
(87)【国際公開番号】W WO2019178263
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-02
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512318556
【氏名又は名称】アライヴコア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・イー・アルバート
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・サッチウェル
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ベック
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518713(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024476(WO,A1)
【文献】特表2013-531522(JP,A)
【文献】特開平11-299740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/332
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルECGセンサであって、
電極を含む電極アセンブリであって、前記電極アセンブリは、使用者の皮膚と接触しているとき、心臓関連信号を検知し、前記検知された心臓関連信号を表す電気信号を生成する、電極アセンブリと、
前記電極アセンブリに電気的に接続され、前記電気信号を変調信号に変換するように構成されたコンバータアセンブリであって、前記変調信号は、前記検知された心臓関連信号を表す前記電気信号を搬送する、コンバータアセンブリと、
前記変調信号をワイヤレスにコンピューティングデバイスに送信する送信器と、
前記電極アセンブリ、前記コンバータアセンブリ、および前記送信器を収容するハウジングと
を
備え、
前記ハウジングは、クレジットカード型であり、クレジットカードの保管、所持に必要な曲げ剛性を有し、
前記ハウジングは、上面および下側を有する上部と、上側および底面を有する底部とを備え、前記上部の前記下側は、前記底部の前記上側に取り付けられ、
前記電極アセンブリは、前記上部の前記上面に配置された少なくとも2つの電極パッドと、前記上部の前記下面に配置され、前記少なくとも2つの電極パッドに電気的に接続され、前記コンバータに電気的に接続された少なくとも2つの導電性フレキシブル膜と、を備え、
前記コンバータアセンブリ及び前記送信器は、前記上部の前記下側に配置された、モバイルECGセンサ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの導電性フレキシブル膜は、前記少なくとも2つの電極パッドと接触している、請求項
1に記載のモバイルECGセンサ。
【請求項3】
前記変調信号は、周波数変調信号であり、前記送信器は、
6kHzから
20kHzの範囲の搬送周波数を有する前記周波数変調信号を出力する、請求項
1に記載のモバイルECGセンサ。
【請求項4】
前記変調信号は、Bluetooth(登録商標)プロトコルに従う、請求項
1に記載のモバイルECG
センサ。
【請求項5】
前記変調信号は、Bluetooth
(登録商標)ワイヤレス通信規格のヘッドセットプロファイルに従う、請求項
1に記載のモバイルECG
センサ。
【請求項6】
モバイルECGセンサであって、
クレジットカード
型のハウジングを備え、前記
ハウジングは、クレジットカードの保管、所持に必要な曲げ剛性を有し、
前記ハウジングは、
上面および下側を有する上部と、
上側および底面を有する底部であって、前記上部の前記下側は、前記底部の前記上側に取り付けられた、底部と、を備え、
前記ハウジングは、
前記
上部の前記上面に配置された電極を含む電極アセンブリであって、前記電極アセンブリは、使用者の皮膚と接触しているとき、心臓関連信号を検知し、前記検知された心臓関連信号を表す電気信号を生成する、電極アセンブリと、
前記電極アセンブリに電気的に接続され
、前記上部の前記下側に配置されたコンバータアセンブリであって、プロセッサを備える、コンバータアセンブリと、
前記コンバータアセンブリに電気的に接続されたディスプレイであって、前記
上部の前記
上面に配置された、ディスプレイと、
前記プロセッサに前記検知された心臓関連信号を処理し、前記心臓関連信号を前記ディスプレイに表示させる命令を含む
、前記上部の前記下側に配置されたメモリと
を収容する、モバイルECGセンサ。
【請求項7】
前記心臓関連信号は、ECG信号を含む、請求項
6に記載のモバイルECGセンサ。
【請求項8】
前記心臓関連信号は、心拍数信号を含む、請求項
6に記載のモバイルECGセンサ。
【請求項9】
前記プロセッサに電気的に接続され、前記
ハウジングに収容された送信器をさらに備え、前記送信器は、前記処理された心臓関連信号をワイヤレスに送信することができる、請求項
6に記載のモバイルECGセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年6月8日に出願された米国特許出願第12/796,188号(現在は米国特許第8,509,882号)の一部継続出願である、2011年5月16日に出願された米国特許出願第13/108,738号の一部継続出願である、2014年4月16日に出願された米国特許出願第14/254,310号(現在は米国特許第9,351,654号)の継続出願である、2016年4月27日に出願された米国特許出願第15/140,072号(現在は米国特許第9,833,158号)の継続出願である、2017年9月29日に出願された米国特許出願第15/721,038号(現在は公開US-2018-0020939号)の一部継続出願である、2018年3月16日に出願された米国特許出願第15/923,699号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本出願は、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2010年6月8日に出願された米国特許出願第12/796,188号(現在は米国特許第8,509,882号)の分割出願である、2013年8月12日に出願された米国特許出願第13/964,490号(現在は米国特許第9,649,042号)の継続出願である、2017年4月13日に出願された米国特許出願第15/486,777号(現在は公開US-2017-0215755号)の一部継続出願でもある、2018年3月16日に出願された米国特許出願第15/923,699号に基づく優先権を主張する。
【0003】
参照による引用
本明細書において言及するすべての公報および特許出願は、個々の公報または特許出願各々が参照により組み込まれるよう具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、本明細書において参照により組み込まれる。
【0004】
本願において請求および開示する発明の概念は、一般に、個人的生理機能監視デバイスおよび方法に関し、より詳細には、限定としてではなく、スマートフォンなどのコンピューティングデバイスを利用する、ECG、心拍数、心不整脈監視を提供するためのデバイス、システム、およびソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0005】
従来技術は、ECGデータなどが監視され、かつ/または患者から特定の診療所もしくは保健サービスセンターに送信される多数のシステムを含む。たとえば、米国特許第5,735,285号は、患者のECG信号を、周波数変調オーディオ信号に変換し、次いで周波数変調オーディオ信号が、選択されたハンドヘルドコンピュータデバイスへ、または指定された診療所へ、電話システムを介してオーディオ入力することによって分析され得る、ハンドヘルドデバイスの使用を開示する。同様に、米国特許第6,264,614号は、心臓モニタを開示し、この心臓モニタは、鼓動などの生物学的機能を検知するために患者によって操作され、可聴信号をコンピュータマイクロフォンに出力する。コンピュータは、可聴信号を処理し、結果として生じたデータ信号を、ネットワークまたはインターネットを介して送る。米国特許第6,685,633号は、患者が患者の胸部に保持することができる心臓モニタを開示する。このデバイスは、心臓の鼓動など、機能または状態に応じた可聴信号を、コンピュータに接続されたマイクロフォンに出力する。これらのオーディオ送信の各々は、可聴音の送信に限られる。言い換えれば、人間によって聞かれる搬送周波数を上回る、すなわち17kHzを上回る、搬送周波数での周波数変調音声送信は、企図されなかった。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0220487号は、合成され、振幅変調されたECG電気信号を検知するECG電極を有するシステムを開示する。コンポジット信号は、コンピューティングデバイスの音声ポートに有線によりまたはワイヤレスに送信される。19kHzから21kHzの通過帯域を有するデジタルバンドパスフィルタが検討されるが、市販のコンピューティングデバイスを使用する、この周波数範囲での復調手段は検討されていない。さらに、送信を行うために音波を使用することは考えられていない。
【0007】
米国特許出願公開第2010/0113950号は、使用者の心臓信号を検出するためのいくつかのリードを含む心臓センサを有する電子デバイスを開示する。リードは、センサを見えないように隠すために電子デバイスハウジングの内面に結合される。検出された信号を使用して、電子デバイスは次いで、使用者を識別または認証することができる。
【0008】
米国特許第6,820,057号は、ECGデータを収集し、記録し、送信するためのシステムを開示し、ECG信号は、オーディオ範囲のキャリアトーンを有する周波数変調オーディオトーンで符号化される。しかしながら、約3kHzを上回る搬送周波数は実際に検討されておらず、また、可聴を上回る搬送周波数は検討されておらず、また、より高い搬送周波数での復調方法は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第5,735,285号
【文献】米国特許第6,264,614号
【文献】米国特許第6,685,633号
【文献】米国特許出願公開第2004/0220487号
【文献】米国特許出願公開第2010/0113950号
【文献】米国特許第6,820,057号
【非特許文献】
【0010】
【文献】http://en.labs.wikimedia.org/wiki/Acoustics
【文献】www.neuroreille.com/promenade/english/audiometry/audiometry.htm
【文献】www.hearinglossky.org/hlasurvival1.html
【文献】www.bluetooth.org
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電話伝送および可聴音響信号を利用する従来技術の制約は、近傍における会話またはその他の騒々しい活動によって小さくなる信号対雑音比を含み、したがって、心臓監視データ信号の完全性を潜在的に危うくする。さらに、可聴信号は、コンピュータおよび心臓モニタの近傍にいる誰でも聞くことができ、このことは使用者にとっても、近傍にいる他者にとっても煩わしいことがある。他の適用例は、スマートフォンなどの既存のコンピューティングデバイスに容易に適合し、信頼性があり、費用がかからない個人監視デバイスを提供することができない。リアルタイムの生理学的データを送信する個人監視デバイスにおいて、これらの問題が対処されれば有利であろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】http://en.labs.wikimedia.org/wiki/Acousticsからの人間の聴覚範囲および閾値の図式表現である。
【
図2】www.neuroreille.com/promenade/english/audiometry/audiometry.htmからの年齢に伴う聴力損失の図式表現である。
【
図3】www.hearinglossky.org/hlasurvival1.htmlからの一般的な音の強度および周波数を示すオージオグラムである。
【
図4】コンピューティングデバイスに送信している個人監視デバイスの一実施形態の概略図である。
【
図5】本発明の個人監視デバイスの別の実施形態の概略図である。
【
図7A】静かなオフィス環境における雑音のスペクトログラムである。
【
図7B】本発明で具現化されるECG監視デバイスからの変調超音波信号のスペクトログラムである。
【
図8A】管形状をしている本発明の個人監視デバイスの一実施形態の概略図である。
【
図8B】スマートフォン保護ケースとして使用可能である本発明の個人監視デバイスの別の実施形態の概略図である。
【
図8C】パッドとして使用可能である本発明の個人監視デバイスの一実施形態の概略図である。
【
図9A】クレジットカードフォームファクタを有する本発明の一実施形態の斜視図である。
【
図9B】
図9Aに示す本発明の実施形態の上層の下側を示す図である。
【
図9C】
図9Aに示す本発明の実施形態の上層の上側を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態による個人監視デバイスの斜視図である。
【
図11】チェストストラップ内に配置されて含まれる、本発明のECGデバイスの一実施形態の概略図である。
【
図12】本発明のコンピュータ可読記憶媒体実施形態の概略図である。
【
図14】バンドパスフィルタリング後の周波数スペクトルの例示的な図である。
【
図15】元のサンプリングレートの半分でアンダーサンプリングした後の周波数スペクトルの例示的な図である。
【
図16】超音波FM ECG音声信号を受信および復調するためのシステムの実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその応用において、以下の説明に示す構成要素の構造の詳細、実験、例示的データ、および/または配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実践もしくは実行されることが可能である。また、本明細書で用いられる用語は、説明のためであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0014】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明では、開示をより十分に理解できるように、多数の具体的な詳細を示す。しかしながら、当業者には明らかであるように、本開示内の概念は、これらの具体的な詳細なしに実践することができる。他の事例では、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、よく知られている特徴を詳細に説明していない。
【0015】
人間の聞こえる範囲は、しばしば、20Hz~20kHzといわれる。理想的な実験室条件の下での子供の最大可聴範囲は、実際には低くて12Hz、高くて20kHzである。しかしながら、
図1に示すように、しきい値周波数、すなわち検出可能な最小強度は、10kHz~20kHzで急激に痛覚しきい値に上昇する。したがって、約16kHzを上回る音は、かなり強烈に聞こえるはずである。生まれてからほぼすぐに、これらの高周波数に対するしきい値音声レベルは高くなる。
図2に示すように、平均的な20歳は、8kHz範囲で約10dBを損なっており、年齢90では、平均的な人は、この周波数で100dB以上を損なっている。
【0016】
非常に高い周波数の音を使用する例示的な製品は、モスキートアラーム(Mosquito alarm)であり、これは、意図的にいらいらさせる17.4kHzのアラームを発し、若者がうろつくのをやめさせるために使用される、物議を醸す装置である。この周波数における大人の聴力損失により、この周波数は一般に、25歳未満の人々にのみ聞こえる。同様に、学生は、学校にいる間、自分たちの携帯電話で15~17kHzの「モスキート」着信音を使用することによって、大人の聴力損失を利用する。学生は、「モスキート」着信音を聞くことができるが、大人の教師は聞くことができない。「超音波」という用語は、一般的に、人間によって知覚される範囲を超えることを意味する。しかしながら、実証されているように、聴感周波数(hearing frequency)の上限は、個人によって、および年齢によって一般的に異なる。この上限の違いのため、本明細書および添付の特許請求の範囲では、「超音波」という用語は、「17kHz以上の音声周波数」を指すものとして定義される。
【0017】
しかしながら、興味深いことに、約10kHzを超える周囲音または雑音はごくわずかである。
図3を参照すると、ほとんどの日常音は、約4kHzを下回る周波数で発生する。したがって、超音波範囲の信号の使用は、周囲の者にとって静かであるだけでなく、非常に望ましい信号対雑音比(SNR)を可能にする。
【0018】
音響エンジニアは、約20kHzを超えるあらゆる周波数は知覚される音に影響がないと仮定しても差し支えなく、音響エンジニアはこの範囲を超えるすべてをフィルタリングする。20kHz未満であるが依然として超音波範囲にある音は、ほとんど問題がなく、標準的なサンプリング手順が適宜に確立されている。一般的に、アナログ信号のサンプリングは、無線信号であろうと、可聴音信号であろうと、fs/2>fとなるような、ただし、fは正弦波周波数である、サンプリング周波数fsを必要とすると理解される。このため、サウンドシステムは、20kHzのサウンド上限に対して40kHzという計算されたナイキスト-シャノンのサンプリングレートよりも幾分高く設定された、44.1kHzという現在の標準的なサンプルレートで音声をサンプリングするように設計される。既存の復調手順、コンピュータ、電話、携帯電話、ステレオサウンドシステムなどを使用した超音波範囲のFM狭帯域信号の実際の復調は、元の信号の極めて劣悪な再生という結果をもたらす。これは、上述のように、超音波範囲の搬送信号もまた、これらのより高い周波数では自然の「雑音」が極めて少ないという事実により、極めて低い信号対雑音比を有することになるため、望ましくない。
【0019】
本明細書で開示する発明の概念は、生理学的信号を測定し、これらの測定値をワイヤレスにかつ音を出さずに、伝統的な電話伝送方法と比較して大幅に改善された信号対雑音比を有する周波数変調超音波信号を使用して送信するための個人監視デバイス、方法、およびシステムを対象とする。また、既存のコンピュータおよびスマートフォン技術を使用して優れた精度で超音波信号を受信し、変調する方法およびアルゴリズムを提供する。
【0020】
本願において請求および開示する発明の概念は、個人監視デバイス10を提供し、その実施形態を
図4および
図5に概略的に示す。監視デバイス10の収集電子機器11は、使用者の皮膚と接触すると生理学的信号を検知するように構成されたセンサアセンブリ12を含む。センサアセンブリ12は、検知された生理学的信号を表す電気信号を生成し、電気信号は、センサアセンブリ12と一体化されたコンバータアセンブリ14に入力する。コンバータアセンブリ14は、センサアセンブリ12によって生成された電気信号を、周波数変調超音波信号に変換し、これが超音波送信器24によって出力される。一実施形態では、周波数変調超音波信号は、約18kHzから約24kHzの範囲の搬送周波数を有する。別の実施形態では、周波数変調超音波信号は、約20kHzから約24kHzの範囲の搬送周波数を有する。
【0021】
センサアセンブリ12は、使用者が監視することを望む生理学的信号を検出するように動作可能な任意の好適なセンサを含むことができる。そのような生理学的信号の非限定的な例には、限定はしないが、呼吸、鼓動、心拍数、心電図(ECG)、筋電図(EMG)、眼電図(EOG)、パルスオキシメトリ、光電容積脈波(PPG)、および脳波図(EEG)が含まれる。
【0022】
呼吸検出器は、従来のマイクロフォン付聴診器(microphone assisted stethoscope)12'であることがある。鼓動および心拍数は、同じく従来のマイクロフォン付聴診器12'を使用して、または時間とともに心臓によって生成される電気信号を検知する電極アセンブリ18を使用することによって、検出することができる。そのような電極18は、心電図記録法(electrocardiography:ECG)のために時間とともに心臓の電気的活動を検出するために使用することもできる。ECGは、各鼓動の間に心筋が脱分極するとき生成される、皮膚上の小さい電気的変化の測定である。一対の電極18からの出力は、リード20として知られている。心臓の両側に配置された2つの電極間の電圧の小さい上昇および下降は、
図6に示す例示的なECGなどのグラフィカルECG表現22を生成するために処理することができる。
【0023】
筋電図記録法(EMG)は、細胞が電気的または神経学的に活性化されるとき、筋細胞によって生成される電位を検出する。信号は、医学的異常を検出するために分析されうる。眼電図記録法(EOG)は、網膜の静止電位を測定するための技法である。通常、電極18のペアは、眼の上下、または眼の左右のどちらかに配置され、電位差測定値は、眼球位置の尺度である。
【0024】
人のヘモグロビンの酸素化は、血液サンプルから直接的に測定するのではなく、パルスオキシメトリセンサを使用して非侵襲的な方法で間接的に監視されうる。センサは、指先または耳たぶなど、人の体の細い部分に配置され、赤の波長と赤外の波長の両方を含む光が、一方の側から他方の側に通される。2つの波長の各々の吸光度の変化が測定され、差は、人の血液の酸素飽和度および皮膚における血液量の変化を推定するために使用される。次いで、パルスオキシメータを使用して、または単一の光源を使用する光学センサを用いて、光電容積脈波(PPG)が取得されうる。PPGは、血流および心拍数を測定するために使用されうる。脳波図(EEG)は、頭皮に貼り付けられた電極を使用して監視されることができ、脳活動によって生成された電圧を測定する。
【0025】
コンバータアセンブリ14は、センサアセンブリ12によって生成された電気信号を、コンピューティングデバイス16によって受信できる周波数変調超音波信号に変換する。
図5に示す実施形態では、コンバータアセンブリ14は、コンバータ23と、たとえば約18kHzから約24kHzの範囲の搬送周波数を有する周波数変調超音波信号を出力するための超音波送信器24とを含む。好適な超音波送信器24の非限定的な例には、限定はしないが、小型スピーカー、圧電ブザーなどが含まれる。超音波信号は、たとえば、スマートフォン30、携帯情報端末(PDA)、タブレットパーソナルコンピュータ、ポケットパーソナルコンピュータ、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバコンピュータなどのコンピューティングデバイス16のマイクロフォン25によって受信されうる。
【0026】
従来技術のデバイスは、収集ハードウェアとコンピューティングデバイスとの間で通信するために、周波数変調した生理学的信号を使用してきた。信号は、ECG信号を送信するために使用される伝統的な1.9kHzのFM周波数といった可聴範囲内の搬送周波数を有する。しかしながら、キャリアとして、約18kHzから約24kHz、さらに20kHzから24kHzの範囲の周波数といった超音波周波数を使用することによって、個人監視デバイス10の収集電子機器11と、スマートフォンなどのコンピューティングデバイス16との間の音響通信は、ほぼ無音であり、伝統的な1.9kHzのFM ECG周波数よりもはるかに雑音耐性があることが発見された。実際に、超音波範囲のオーディオ信号出力の測定は、17kHz以上の搬送周波数が、周囲および音声「雑音」汚染の影響を受けない通信を実現すると決定した。「最も騒がしい」環境でさえも、超音波搬送周波数を使用することによって、収集電子機器11と、スマートフォン30、ノートブックコンピュータなどのコンピューティングデバイス16との間で、雑音のない、無音通信を生み出す。
【0027】
たとえば、
図7Aは、静かなオフィス環境における音声のスペクトログラムを示す。図に示すように、周囲雑音は、2kHzでは約35dbである。
図7Bは、同じ静かなオフィス環境における、超音波変調されたECG信号のスペクトログラムを示す。19kHzでの周囲雑音は、たった20dbであり(わずかな上昇はアーチファクトである)、標準的な2kHz信号と比較して19kHzの超音波信号では少なくとも15dbの利点を持つことに留意されたい。これは、信号対雑音比(SNR)での著しい改善であり、通り、ショッピングモール、または騒々しい家などの雑音の多い環境ではなお一層改善する。相乗的に、信号の量は、存在する「聴取者」を気にせずに、超音波周波数でさらに増やすことができる。聴取者は信号を聞くことができないからである。
【0028】
一実施形態では、個人監視デバイス10は、ECGデバイス10'であり、使用者の皮膚と接触すると心臓関連信号を検知し、検知された心臓関連信号をECG電気信号に変換するように構成された電極アセンブリ18を含む。以下で詳細に説明するように、ECGデバイス10'は、超音波周波数変調ECG信号を、たとえばスマートフォン30などのコンピューティングデバイス16に送信する。コンピュータ16またはスマートフォン30上で実行されているソフトウェアが、オーディオをリアルタイムでデジタル化および処理し、周波数変調ECG信号は復調される。ECGは、心拍数を計算し、不整脈を識別するために、アルゴリズムを使用してさらに処理されうる。ECG、心拍数、および心律動情報は、コンピュータ16またはスマートフォン30上に表示され、後の検索のためにローカルに記憶され、かつ/または2G/3G/4G、WiFiもしくは他のインターネット接続によりリアルタイムでウェブサーバ52に送信され得る。ECGデータの表示およびローカル処理に加えて、コンピュータ16またはスマートフォン30は、ECG、心拍数、および心律動データを、(たとえばスマートフォン30の2G/3G/4GまたはWiFi接続を使用して)ウェブブラウザインターフェースにより閲覧、記憶、さらに分析するために、安全なウェブ接続によりリアルタイムで送信することができる。サーバソフトウェアが、PDF ECGリズムストリップドキュメントおよび/または他のレポート、ならびにリモートまたはローカルで印刷するためのフォーマットの記憶、さらなる処理、リアルタイムもしくはレトロスペクティブな表示および作成を実現する。
【0029】
別の実施形態では、ECGデバイス10'のコンバータアセンブリ14は、電極アセンブリ18と統合され、これに電気的に接続され、電極アセンブリ18によって生成された電気ECG信号を、約18kHzから約24kHzの範囲の搬送周波数を有する周波数変調ECG超音波信号に変換するように構成される。20kHzから24kHzの範囲の搬送周波数を利用することが望ましいことがある。超音波範囲は、収集電子機器11とスマートフォン30、ノートブックなどのコンピューティングデバイス16との間で、より低い雑音と無音通信の両方を生み出す。
【0030】
ECGデバイス10'は、それの機能と一致するいかなる方法でも構成可能であり、すなわちECGデバイス10'は、使用者のECGを取得するために、手、胸部、または体の他の部位で使用者の皮膚に接触するのに利用可能な電極と、超音波を使用して受信デバイスにECGを送信するための手段とを含むべきである。たとえば、ハンドヘルドECGデバイス10'が、
図5にあるような、底面に2つの電極を有する、クレジットカードのような形をしていることがあり、またはECGデバイス10'は、
図8Aにあるような、円筒面57上の一方の電極18が所有者の手に触れ、他方の電極18'が、端部59にあって、使用時に胸部、手、または他の身体部位に触れる、フラッシュライトまたはペンのような形をしていることがある。
【0031】
別の構成では、ECGデバイス10'は、
図8Bに示すように、スマートフォン保護ケース60として使用可能である。1つの例示的な構成は、iPhone(登録商標)または他のスマートフォン30用の「スリップオン」保護ケース60を利用し、この保護ケース60は、一体化されたECG電極アセンブリ18と、収集電子機器11(ECGデータの単一リードを生成するための2、3、または4つの電極)とを含む。ECG電極は、表示画面58の反対の、ケース60の側面62に位置している。スマートフォン30は、それのECG適合保護ケース60に入れて、両手で持つことができ(リード1、左腕マイナス右腕を生成する)、または、修正された胸部リードを生成するために、人の胸部に配置することができる。ECGは、収集電子機器11によって測定され、周波数変調超音波信号に変換される。好適な搬送周波数または中心周波数の非限定的な例には、約18kHzから約24kHz、またはいくつかの実施形態では約20kHzから24kHzが含まれる。周波数変調超音波信号は、小型スピーカー64または圧電ブザー66によって出力される。
【0032】
図9Aは、ECGデータをリモートまたはモバイルで収集するための、
図5Aの10'として示したものと同様の、クレジットカードの様な監視デバイス100(「クレジットカードセンサ」)の別の実施形態を示す。いくつかの実施形態は、金融銀行またはクレジットカードと同様の形態を有してもよく、厚さ約0.75mmを有してもよく、可撓性があり、ポリ塩化ビニルアセテート(PVCA)などのプラスチックまたはポリマーで作られてもよい。クレジットカードセンサのいくつかの実施形態は、0.65mm~0.85mmの厚さを有し、いくつかは0.70~0.78mmの厚さを有する。クレジットカードセンサのいくつかの実施形態は、曲げ剛性の範囲を有してもよく、いくつかはISO 7810 ID-1型によって示される規格を満たしてもよい。クレジットカードの様なセンサの実施形態は、使用者が、通常のクレジットカードを保管し、所持する方法と同様にして、クレジットカードの様なセンサを財布または札入れに入れることを可能にする曲げ剛性または可撓性を有してもよい。
【0033】
図9Aを参照すると、クレジットカードセンサ100の一実施形態の斜視図が示されている。クレジットカードセンサ100は、上層102および下層104、幅a、長さb、ならびに厚さcを持つ、サンドイッチ構造を有する。
図9Bは、上層102の下側103を示す。下側103は、クレジットカードセンサ100の各側に1つのフレキシブル膜電極106と、コンバータ108と、バッテリ109と、圧電超音波エミッタ(piezo ultrasonic sound emitter)110と、電源ボタン112と、LEDインジケータ114とを有する。バッテリ109は、コンバータ108に電力を供給し、コンバータ108は、ファームウェアをその上にインストールしたプリント基板であってもよい。
図9Cは、上層102の上側101を示す。上側101は、フレキシブル膜電極106に電気的に接触しているタッチパッド105を露出している。
【0034】
本明細書で説明するように、使用者は、リードI ECGのために電気信号を検知するタッチパッド105(たとえば、左の指および右の指)に触れる。コンバータ108は、タッチパッド105から生成された電気信号を、コンピューティングデバイス116が受信できる周波数変調信号、たとえば超音波信号またはBluetooth信号(以下でさらに説明する)に変換する。
図9A~
図9Cに示す実施形態では、コンバータアセンブリは、コンバータ108と、たとえば約18kHzから約24kHzの範囲の搬送周波数を有する周波数変調超音波信号を出力するための超音波送信器110とを含む。超音波信号は、たとえば、(図示のように)スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、タブレットパーソナルコンピュータ、ポケットパーソナルコンピュータ、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバコンピュータ、スマートウォッチまたはウェアラブルなどのコンピューティングデバイス116のマイクロフォンによって受信することができる。コンピューティングデバイス116は、ECGデータをリアルタイムで収集すること、デジタル化すること、復調すること、処理すること、次いで表示することのうちの1つまたは複数を行うことがあるマイクロプロセッサ/CPU(図示せず)を有する。
【0035】
代替実施形態では、クレジットカードセンサ100は、使用者のECGのほぼリアルタイムの表示を可能にするディスプレイ(図示せず)を有してもよい。この実施形態では、たとえば、クレジットカードセンサ100が、受信器(図示せず)を含んでもよく、受信器は、コンバータ108とともに含まれてもよく、コンバータ108は、コンピューティングデバイスから処理されたECG信号を受信し、それをクレジットカードセンサ100上のディスプレイ(図示せず)に表示する。代替的に、クレジットカードセンサ100は、プロセッサ(図示せず)を含んでもよく、プロセッサは、コンピューティングデバイス116のCPUと同様にして、タッチパッド105からの信号を処理し、表示する能力を有するコンバータ108とともに含まれてもよい。この実施形態では、すべての接続が、配線接続またはワイヤレスであってもよい。クレジットカードセンサ100は、メモリ(図示せず)を含んでもよく、メモリは、コンバータ108の一部もしくはコンバータ108とは別個であってもよく、またはプロセッサは、ファームウェア(図示せず)を含んでもよく、メモリもしくはファームウェアは、タッチパッド105に触れる使用者からの検知された心臓の信号(たとえば、ECG信号など)をプロセッサに処理させることと、クレジットカードセンサ100の外面にあるディスプレイ(図示せず)に心臓の信号を表示することとを行うための命令を含んでもよい。送信器110が、処理された信号をコンピューティングデバイスに送信するために使用されてもよく、医療専門家が記録を見てもよい。代替的に、コンピューティングデバイスが、データを受信すると、よく知られている通信およびデータ転送技術を使用して、データを医療専門家に送ってもよい。
【0036】
図10(以前は‘042の
図7)および
図11(以前は‘042の
図8)に示す、また別の実施形態では、コンバータアセンブリ108が、Bluetooth Special Interest Group (SIG)によって定義され、URLアドレスwww.bluetooth.orgで入手できるBluetooth(登録商標)ワイヤレス通信規格のヘッドセットプロファイル(HSP)を使用して、センサアセンブリ12によって生成された電気信号を変換および送信するように構成されたワイヤレス無線送信器37を含む。センサアセンブリ12によって生成された電気信号は、Bluetooth(登録商標)トランシーバ34およびアンテナ36を使用して、変換および送信され、ヘッドセットコントローラ38によって提供される命令に従って、コンピューティングデバイス13、好ましくはスマートフォン30またはスマートウォッチに通信される。ヘッドセットバッテリ40によって電力供給される、市販のヘッドセットコントローラ38、Bluetooth(登録商標)トランシーバ34、およびアンテナ36を使用することによって、経済性、ならびに分離性および利便性がもたらされ、スマートフォン30などのコンピューティングデバイス13と通信するための電子機器は、商業的に構成され、大量生産される。
【0037】
コンピューティングデバイス電子機器42は、一般的に、コントローラ44と、Bluetooth(登録商標)トランシーバ46と、ワイヤレスBluetooth(登録商標)デバイスからの入力を受信するためのアンテナ48とを含む。ほとんどのコンピューティングデバイス、およびすべてのスマートフォン、およびほとんどのウェアラブルは、メモリ56と、表示画面58と、セルラーアンテナ54またはWiFi接続により基地局またはウェブサーバ52と情報信号を送受信するためのトランシーバ50とを含む。したがって、コンピューティングデバイス電子機器42は、個人監視デバイス10からの情報をメモリ56に記憶する、および/または当業者によく理解されているワイヤレス通信技術により、基地局52もしくは特定の通信アドレスに情報を送信するために、使用することができる。
【0038】
図11に概略的に示す、また別の実施形態では、ECGデバイス10'は、フィットネス心拍数モニタのようなチェストストラップデバイス68として使用可能である。一体化されたECG電極アセンブリ18および収集電子機器11「ポッド」を備えるチェストストラップ69は、周波数変調超音波ECG信号を生成し、それをスマートフォン30などのコンピューティングデバイス16に送る。
【0039】
いずれの構成においても、スマートフォン30などのコンピューティングデバイス16は、ECGデータをリアルタイムで収集し、デジタル化し、復調し、処理し、次いで表示するために、それの内蔵マイクロフォン25およびCPUを利用する。また、コンピューティングデバイス16、スマートフォン30、またはスマートウォッチは、リアルタイムの心拍数測定値を計算し、心房細動のような心臓律動診断を決定することができる。コンピューティングデバイス16またはスマートフォン30は、リアルタイムの遠距離表示、記憶、および分析のためにECGおよび他のデータを安全なウェブサーバ52に送信するのに、2G、3G、4G Bluetooth(登録商標)、およびWiFi接続を利用することができる。また、ECGデータは、後で検討または送信するために、スマートフォン30にローカルに記憶されうる。
【0040】
スマートフォン30上のソフトウェアは、GPSおよび加速度計など、スマートフォン30に組み込まれている他のセンサからのデータおよび信号を結合することもできる。このデータをさらに処理すると、速度、場所、距離、歩幅、歩調、体位、転倒検出、およびエネルギー消費など、使用者に関係する追加情報がもたらされる。センサからの未処理信号および引き出された情報は、スマートフォン30にローカルに表示および記憶されるとともに、インターネット接続を介してウェブサーバ52に送信され得る。ウェブサーバ52上のソフトウェアは、スマートフォン30から受信された信号および情報のリアルタイムまたはレトロスペクティブな表示のためにウェブブラウザインターフェースを提供し、さらなる分析および報告もまた含む。
【0041】
次に
図12を参照すると、コンピュータ可読記憶媒体56は、命令72のセットを記憶し、命令72は、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16によって実行されることが可能である。好適なコンピューティングデバイス16の非限定的な例には、スマートフォン30、携帯情報端末(PDA)、タブレットパーソナルコンピュータ、ポケットパーソナルコンピュータ、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、およびサーバコンピュータが含まれる。命令72が実行されると、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16は、超音波周波数変調ECG信号などのセンサ入力74をデジタル化および復調するようにされて、リアルタイムの復調デジタルECGデータを生成する。命令72は、リアルタイムの復調デジタルECGデータを、コンピューティングデバイス16の表示画面58に表示させることもできる。
【0042】
FM復調に使用される一般的な技法は、ゼロ交差検出に基づき、ゼロ交差間の時間間隔は、周波数を計算し、復調信号を再構成するために使用される。いくつかの応用では、ゼロ交差間のオーディオサンプル数を単にカウントすると、周波数推定のために十分な精度がもたらされ得る。精度は、ゼロ交差点のより優れた推定、およびその後の周波数推定をもたらす、サンプル間の補間によって上げることができる。ゼロ交差検出に基づくFM復調は、実装が簡単であり、FFT(高速フーリエ変換)を使用する技法などの他の技法と比較してほとんど計算を必要とせず、低電力のポータブルコンピューティングデバイスでリアルタイムのアプリケーションに使用するのに特に好適である。
【0043】
しかしながら、FM狭帯域信号がデジタルサンプリングされたオーディオのナイキスト周波数に近い場合、サイクルあたりのサンプルが極めて少ないので、ゼロ交差推定における誤差が大きくなる。これは、超音波搬送周波数に対して一般的なゼロ交差復調技法を使用することを制限する。本開示の一実施形態は、ゼロ交差技法の簡単さおよび効率の良さを維持しながら、正確な周波数推定を行う、ナイキスト周波数に近いFM狭帯域信号を復調する方法を提供する。
【0044】
次に
図13を参照すると、ECG信号を表す超音波FM信号が、たとえば、携帯電話30または他のコンピューティングデバイス16のマイクロフォン25によって拾われ、アナログ信号に変換される。アナログ信号は、時間的に連続し、アナログデジタルコンバータ80においてデジタル値のフローに変換され、FM復調器82において復調され、スマートフォン30または他のコンピューティングデバイス16のディスプレイ58に示される、または記憶メモリ56に保持される。一般にADCと呼ばれる、実用的なアナログデジタルコンバータ80は、瞬時変換を行うことができないので、入力値は、コンバータが変換を行う時間の間、必ず不変に維持されなければならない。新しいデジタル値がアナログ信号からサンプリングされるレートは、ADCのサンプリングレートまたはサンプリング周波数と呼ばれる。携帯電話および他のパーソナルコンピューティングデバイスは、一般的にオーディオを44kHzで記録することに制限される。ANDROID(登録商標)および IPHONE(登録商標) などのいくつかのスマートフォンは、48kHzでサンプリングすることができる。
【0045】
デジタル化された超音波信号は、次いで、信号対雑音比を向上させ、通過帯域外の不要なオーディオを減らすために、およそFM信号の超音波搬送周波数でバンドパスフィルタリングされ得る。
図14に示すように、フィルタリングされたFM信号は、次いで、元のオーディオのサンプリングレートの半分で「アンダーサンプリング」される。これは、周波数スペクトルをより低い周波数帯域に偏移させ、反転させる、FM信号のエイリアシングを生じる。周波数スペクトルがアンダーサンプリング動作によって反転された結果、
図15に示すように復調出力が反転されることになる。反転は、最終の復調出力を単に反転させることによって補正される。
【0046】
より低い周波数のFM信号では、サイクルあたりにより多くのオーディオサンプルがあり、ゼロ交差推定などの復調プロセスは、顕著により正確である。たとえば、ゼロ交差検出器は、オーディオ信号が符号を変えるゼロ交差を識別する。ゼロ交差点の精度は、ゼロ交差の両側のサンプル間の線形補間によってさらに向上する。最終的に、ゼロ交差間の期間は、周波数の推定を計算するために使用され、復調信号を再構成する。上記で説明した復調手順は、ゼロ交差推定を利用するが、他の復調手順を利用することができること、および他の復調手順の精度もまた、アンダーサンプリング動作から恩恵を受けることを理解されたい。
【0047】
実施例
図16に示す、1つの実施例では、システムが、ポータブルECGモニタから携帯電話30ならびにパーソナルコンピュータ16のマイクロフォン25に送信される超音波FM ECG信号を使用した。これは、信号を受信するためにいかなる追加のハードウェアも必要とすることなく、マイクロフォンを有するほとんどの携帯電話およびコンピュータに適合する、低コストのワイヤレス伝送ソリューションをもたらした。
【0048】
FM信号は、ほとんどの人々に聞き取れず、音楽または会話を妨げず、またオーディオ干渉を起こしにくいように、18kHzを上回ることが望ましい。またFM信号は、オーディオ干渉の影響の受けやすさをさらに減らすために、狭帯域を有することが望ましい。この事例では、ECGモニタは、19kHzの超音波FMキャリアを使用し、200Hz/mVおよび±5mVの範囲を有するECGで復調した。これは、18kHz~20kHzの超音波FM信号を生じた。
【0049】
最初に、オーディオFM信号は、マイクロフォン25によって拾われ、44kHzで携帯電話30のADC80によってデジタル化された。オーディオは、次いで、パスバンド外のオーディオ雑音を除去するために、18kHz~20kHzでフィルター82においてバンドパスフィルタリングされた。次の段階84において、オーディオは、1つおきのオーディオサンプルのみが使用される22kHzでアンダーサンプリングされた。そのようなアンダーサンプリング後に生成されたデジタル信号は、2kHz~4kHzの範囲に現れるように周波数スペクトルを偏移および反転させるエイリアシングを生じる。次いでゼロ交差検出器86が、オーディオ信号が符号を変える場所を同定する。ゼロ交差点は、その場合、ゼロ交差の両側のサンプル間で線形補間することによって、周波数推定ステップ88でより正確に計算される。この例では、300Hzで出力信号を復調したために、周波数推定が、3.33msごとに必要とされるにすぎない。これは、ゼロ交差の数をカウントし、最も近い固定数のサイクルにわたる期間を測定することによって実現され、この期間の間、固定の300Hz出力を提供する。次いで、アンダーサンプリング動作によって反転されている周波数スペクトルを補正するために、復調出力を反転させる。最終的に、300Hz復調ECGデータは、当該のECG帯域幅が40Hzを下回るので、40Hzローパスフィルタを通過する。これは、周波数推定および復調出力からの雑音をさらに低減する。FM復調器は、16ビット、300HzのECGを出力する。
【0050】
センサ入力74は、追加のセンサならびにユーザ入力74'からのリアルタイム情報を含むこともできる。たとえば、コンピューティングデバイス16がスマートフォン30である実施形態では、入力74は、復調デジタルECGデータに加えて、スマートフォン30のGPSおよび/または加速度計からのリアルタイム情報を含むことができる。ユーザ入力74'は、コンピューティングデバイス16のマイクロフォンを介して入力される発話ボイスメッセージを含むこともできる。命令72は、センサならびに/またはユーザ入力74および74'が、コンピューティングデバイス16の記憶メモリ56に記録および保持されるようにすることができる。
【0051】
一実施形態では、命令72のセットはさらに、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16によって実行されると、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16に、周波数変調ECG超音波信号によって表される心拍数をリアルタイムで計算および表示させることができる。さらに、復調デジタルECGデータが、不整脈の発生を識別するために処理され得る。そのような設計では、記憶媒体70は、不整脈の発生時に、コンピューティングデバイス16に表示画面58上に警告を表示させる、またはスピーカー76を介して可聴アラートを出させる命令72を含むことができる。
【0052】
命令72は、コンピューティングデバイス16に、復調デジタルECGデータを、後の検索のために、1つまたは複数のコンピューティング16のメモリ56に記憶させることができる。命令72のセットはさらに、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16に、必要に応じて、記憶された復調デジタルECGデータを、コンピューティングデバイス16上のインターネット接続によりウェブサーバ52に、検索および送信させることができる。記録された発話ボイスメッセージは、復調デジタルECGデータと同時に、記憶され、ウェブサーバ52に送信され得る。
【0053】
他の実施形態では、命令72は、1つまたは複数のコンピューティングデバイス16に復調デジタルECGデータ、および/またはボイスメッセージを、リアルタイムでウェブサーバ52に送信させることができる。
【0054】
スマートフォンソフトウェアのバージョンは、他の第三者ソフトウェアアプリケーションと統合されうるソフトウェアライブラリとしてパッケージ化される。これは、第三者アプリケーションが、それら自体のデータ収集、復調、および信号処理アルゴリズムを開発する必要なしに、心拍数および他の引き出された情報を取得するのにECGデバイス10'を使用するための簡略化された、標準的な方法を提供する。
【0055】
ソフトウェアのバージョンはまた、PC上で実行され、復調、処理、記憶、およびウェブサーバ52への送信を含む。ソフトウェアは、オーディオ収集、復調、ECG分析、および加速度解析モジュールを含む。
【0056】
ADCからのオーディオサンプルは、場合によっては、変調範囲外の不要な周波数を除去するためにデジタルバンドパスフィルタを通される。復調モジュールは、スペクトルをより低い周波数範囲に偏移させるためにオーディオサンプルの周波数の約半分でのアンダーサンプリングを使用し、続いて線形近似およびゼロ交差アルゴリズムを使用して、周波数変調ECG超音波信号を復調する。復調器は、特定のECGデバイスに整合させるために異なる変調パラメータを選択することを可能にする。ゼロ交差および線形近似だけを使用する復調は、44kHzサンプリングを用いて、6kHz以下、10kHzを上回る搬送周波数ではうまくいくが、スペクトルを偏移させるためにアンダーサンプリングが使用されないかぎり、線形近似からの誤差は大きくなる。
【0057】
アルゴリズムは、次いで入ってくるデータの符号を調べる。符号が変わると、アルゴリズムは2点の間に直線を引き、ゼロ値を挿入する。アルゴリズムは、300Hzの出力サンプリングレートでECGデータを提供する、3.333ms区間にわたる平均周波数を決定するためにこれを使用する。
【0058】
ECG分析モジュールは、拍動を検出および分類するためにECGを処理するアルゴリズムを含み、心拍数推定を提供する。心拍間隔(beat-to-beat)心拍数が、拍動間の間隔から計算され、RR間隔の中央値フィルタリングを使用して、心拍数のよりロバストな測定が計算される。
【0059】
加速度分析モジュールは、人のエネルギー消費、歩幅、歩調、および体位の推定を導出するために、および転倒を検出するために、スマートフォン30の内蔵3軸加速度センサからの信号を処理するアルゴリズムを含む。
【0060】
以上の説明から、本願において開示および特許請求する発明の概念は、目的を実行するために、および本明細書に述べる利点、ならびに開示および特許請求する本発明の概念に特有の利点を得るために、よく適合していることは明らかである。本実施形態は、この開示のために説明したが、当業者には容易に思いつく、また開示および特許請求する本発明の概念の趣旨内でなされる多数の変更が行われ得ることは理解されよう。
【符号の説明】
【0061】
10 個人監視デバイス
10' ECGデバイス
11 収集電子機器
12 センサアセンブリ
12' マイクロフォン付聴診器
13 コンピューティングデバイス
14 コンバータアセンブリ
16 コンピューティングデバイス
18 電極アセンブリ
20 リード
22 グラフィカルECG表現
23 コンバータ
24 超音波送信器
25 マイクロフォン
30 スマートフォン
34 Bluetooth(登録商標)トランシーバ
36 アンテナ
37 ワイヤレス無線送信器
38 ヘッドセットコントローラ
40 ヘッドセットバッテリ
42 コンピューティングデバイス電子機器
44 コントローラ
46 Bluetooth(登録商標)トランシーバ
48 アンテナ
50 トランシーバ
52 ウェブサーバ、基地局
54 セルラーアンテナ
56 メモリ
57 円筒面
58 表示画面
59 端部
60 保護ケース
64 小型スピーカー
66 圧電ブザー
68 チェストストラップデバイス
69 チェストストラップ
70 記憶媒体
72 命令
74 センサ入力
76 スピーカー
100 クレジットカードセンサ
101 上側
102 上層
103 下側
104 下層
105 タッチパッド
106 フレキシブル膜電極
108 コンバータ
109 バッテリ
110 圧電超音波エミッタ、超音波送信器
112 電源ボタン
114 LEDインジケータ
116 コンピューティングデバイス