(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】ポジ型光パターン形成が可能なシリコーン
(51)【国際特許分類】
G03F 7/075 20060101AFI20230704BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230704BHJP
G03F 7/38 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G03F7/075 521
G03F7/004 501
G03F7/38 511
G03F7/075 511
G03F7/075 501
(21)【出願番号】P 2020554853
(86)(22)【出願日】2019-02-04
(86)【国際出願番号】 US2019016454
(87)【国際公開番号】W WO2019209395
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ、リジィ
(72)【発明者】
【氏名】フー、ホンフェイ
【審査官】石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-211616(JP,A)
【文献】特開昭63-210839(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108705(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0160936(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0025492(KR,A)
【文献】国際公開第2008/105503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00-7/18;7/26-7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成シリコーン層を製造する方法であって、
(a)(i)アルケニル基を含むポリシロキサンと、(ii)ケイ素-水素結合を含むシラン架橋剤と、(iii)ヒドロシリル化触媒と、(iv)光潜在性アミン発生剤と、を含む組成物であって、組成物固形分の重量を基準として、エポキシ基を有するシロキサン単位を0重量%超~5重量%以下含む、又は、エポキシ基を有するシロキサン単位を含まない組成物を基材上に付着させて未硬化樹脂を形成する工程と、
(b)マスクを通して前記未硬化樹脂を紫外線又は電子ビーム照射に露光してパターン形成樹脂を製造する工程と、
(c)前記パターン形成樹脂を加熱する工程と、
(d)前記パターン形成樹脂の前記未硬化部分の少なくとも一部を除去して、最終的なパターン形成シリコーン層を製造する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記アルケニル基を含むポリシロキサンが、0.5~20重量%のアルケニル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルケニル基を含むポリシロキサンが、アルケニル末端ポリシロキサン、ビニル置換MQ樹脂、又はこれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シラン架橋剤が、少なくとも3個のケイ素-水素結合を有する化合物、又は0.01~2.0重量%のSiHを有するポリマーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルケニル末端ポリシロキサンが、R
1R
2SiO
2/2単位及びアルケニル末端基(式中、R
1及びR
2は独立して、C
1~C
20置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(i)アルケニル基を含むポリシロキサンと、(ii)ケイ素-水素結合を含むシラン架橋剤と、(iii)ヒドロシリル化触媒と、(iv)光潜在性アミン発生剤と、を含む組成物であって、組成物固形分の重量を基準として、エポキシ基を有するシロキサン単位を0重量%超~5重量%以下含
み、又は、エポキシ基を有するシロキサン単位を含ま
ず、
前記アルケニル基を含むポリシロキサンが、0.5~20重量%のアルケニル基を含み、前記アルケニル基を含むポリシロキサンは、(a)R
1
R
2
SiO
2/2
単位及びアルケニル末端基(式中、R
1
及びR
2
は独立して、C
1
~C
20
置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す)を含むアルケニル末端ポリシロキサン、(b)ビニル置換MQ樹脂、又は(c)これらの組み合わせであり、
前記シラン架橋剤が、少なくとも3個のケイ素-水素結合を有する化合物、又は0.01~2.0重量%のSiHを有するポリマーである、組成物。
【請求項7】
前記組成物が、エポキシ基を有するシロキサン単位を0.1重量%以下含む、請求項
6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光領域を除去することができるシリコーン材料のための方法に関する。
【0002】
一般の光パターン形成可能なシリコーン組成物(photopatternable silicone compositions、PPS)はネガ型である。すなわち、紫外線又は電子ビーム照射に露光した領域が硬化し、未露光領域が除去される。例えば米国特許第9,690,197号を参照のこと。
【0003】
ポジ型光パターン形成が可能な組成物は有用である。この組成物では、組成物コーティングのうちの未露光部分は硬化性のままであり、その後硬化すると除去できなくなるが、コーティングのうち照射に露光した部分はその後の硬化が妨げられる(したがって、除去可能なままである)。このようなポジ型光パターン形成が可能な組成物は、未露光組成物の硬化時間が数時間ではなく数分間のオーダーであれば、更により望ましいものとなるであろう。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、ポジ型光パターン形成が可能な組成物を提供するという課題を解決する。この組成物では、組成物コーティングのうちの未露光部分は硬化性のままであり、その後硬化すると除去できなくなるが、コーティングのうち照射に露光した部分はその後の硬化が妨げられる(したがって、除去可能なままである)。また、このポジ型光パターン形成が可能な組成物では、未露光組成物の硬化時間が数時間ではなく数分間のオーダーであった。
【0005】
本発明は、(i)アルケニル基を含むポリシロキサンと、(ii)ケイ素-水素結合を含むシラン架橋剤と、(iii)ヒドロシリル化触媒と、(iv)光潜在性アミン発生剤と、を含む組成物であって、組成物固形分の重量を基準として、エポキシ基を有するシロキサン単位を5重量%以下含む、組成物を提供する。
【0006】
本発明は更に、パターン形成シリコーン層を製造する方法であって、(a)(i)アルケニル基を含むポリシロキサンと、(ii)ケイ素-水素結合を含むシラン架橋剤と、(iii)ヒドロシリル化触媒と、(iv)光潜在性アミン発生剤と、を含む組成物を基材上に付着させて未硬化樹脂を形成する工程と、(b)マスクを通して未硬化樹脂を紫外線又は電子ビーム照射に露光してパターン形成樹脂を製造する工程と、(c)パターン形成樹脂を加熱する工程と、(d)パターン形成樹脂の未硬化部分の少なくとも一部を除去して、最終的なパターン形成シリコーン層を製造する工程と、を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特に指定しない限り、百分率は重量百分率(重量%)であり、温度は℃である。特に指定しない限り、操作は室温で行った。「有機置換基」は炭素原子及び水素原子を含み、酸素、窒素、ケイ素、硫黄、リン、臭素、塩素及びフッ素から選択されるヘテロ原子もまた含有してもよい。好ましくは、有機置換基は酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を3個以下含み、好ましくは2個以下、好ましくは1個以下含み、好ましくは含まない。「ヒドロカルビル」基は脂肪族又は芳香族炭化水素由来の置換基であり、直鎖状、分岐鎖状又は環状であり得、クロロ、フルオロ、メチル、エチル、メトキシ及びエトキシから選択される1個以上の置換基を有し得る。好ましくは、ヒドロカルビル基は非置換である。アルキル基は、直鎖でも分枝鎖でもよい飽和ヒドロカルビル基である。好ましくは、アルキル基は、1~6個、好ましくは、1個又は2個の炭素原子を有する。好ましくは、アルキル基は非置換である。アリール基は芳香族炭化水素化合物由来の置換基であり、単核又は多核であり得、炭素原子と置換された窒素原子を最大3個有し得、好ましくは2個以下有し、好ましくは1個以下有し、好ましくは有しない。アリール基は、本明細書において別段の指定がない限り、クロロ基、フルオロ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、又はエトキシ基により置換されていてもよい。好ましくは、アリール基は、非置換である。
【0008】
シリコーン樹脂に関して、MQ、MDTQなどのような頭字語は符号M、D、T、及びQに由来し、その各々は、Si--O--Si結合により連結されたシロキサン単位を含有するシリコーン樹脂中に存在し得る構造単位を表す。1官能性(M)単位は(R)3SiO1/2(式中、各Rは独立して水素及びアルキル基から選択される)を表す。2官能性(D)単位は(R)2SiO2/2(式中、各Rは独立して水素及びアルキル基から選択される)を表す。3官能性(T)単位はRSiO3/2(式中、Rは水素及びアルキル基から選択される)を表し、この単位により分枝直鎖状(branched linear)シロキサンが形成される。4官能性(Q)単位はSiO4/2を表し、この単位により樹脂性シリコーン組成物が形成される。樹脂は、単一の文字で表されるシロキサン単位からなる。1個以上の反応性基(エポキシ基、アクリレート基、チオール基、アルケニル基、ビニルエーテル基、アミノ基、フルオロ基、又はこれらの任意の組み合わせなど)を有するシロキサン単位タイプは、単一の文字記号と「’」(プライム記号)を組み合わせて示してもよい。
【0009】
本明細書で使用する場合、分子量、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びz平均分子量(Mz)は別途記載のない限り従来の意味を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される。真空デガッサを備えたWater 2695 Separations Module、及びWaters 410示差屈折率検出器を用いて、ゲル透過クロマトグラフィーにより分子量を測定する。300ミリメートル×7.5ミリメートルのPolymer Laboratories PLgel 5マイクロメートル Mixed-Cカラム2個(分子量分離範囲は200~2,000,000、PLgel 5マイクロメートルガードカラム(50ミリメートル×7.5ミリメートル)が先行)を用いて分離を実施する。溶離液として1.0ミリリットル/分で流れる特級グレードのテトラヒドロフラン(THF)を使用し、カラム及び検出器を用いて35℃で分析を行う。サンプルをTHF中固形分約0.5w/v%にて調製し、時折振盪しながら約3時間溶媒和させ、続いて分析前に0.45マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルターを通して濾過する。100マイクロリットルの注入量を使用し、データを25分間収集する。データ収集及び分析のため、ThermoLabsystems Atlas chromatography software及びPolymer Laboratories Cirrus BPC softwareを使用する。580~2,300,000の分子量範囲をカバーするポリスチレン標準を使用して作成した較正曲線(3次)を基準として、平均分子量を求める。本明細書で、分子量をg/mol単位で報告する。屈折率は、ナトリウムD線(589nm)で20℃にて測定する。
【0010】
好ましくは、基材はシリコン、ガラス、ポリイミド、又はFR4基板(FR4はガラス繊維エポキシ積層体(glass fiber epoxy laminate))である。好ましくは基材は実質的に平面であり、例えば、ウェハ、基板、ディスク、又はフィルムである。
【0011】
好ましくは、アルケニル基を含むポリシロキサンは、アルケニル基(CH=CH2、CH=CH)を0.1重量%以上、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%から含み、一方で同時に、アルケニル基を好ましくは30重量%以下、好ましくは20重量%以下、好ましくは15重量%以下、好ましくは10重量%以下含み、重量%はアルケニル基を含むポリシロキサンの重量に対するものである。好ましくは、アルケニル基を含むポリシロキサンは、アルケニル末端ポリシロキサン、ビニル置換MQ樹脂、又はこれらの組み合わせである。好ましくは、アルケニル末端ポリシロキサンは、R1R2SiO2/2単位及びアルケニル末端基を含む。好ましくは、R1及びR2は独立して、C1~C20有機置換基、好ましくはC1~C20置換又は非置換ヒドロカルビル基を表し、好ましくは、アルキル、アルケニル、又はアリール基であり、好ましくはC1~C12アルキル又はC6~C20アリール、好ましくはC6~C10アリール又はC1~C4アルキル、好ましくはメチル又はフェニル、好ましくはメチルである。好ましくは、アルケニル末端ポリシロキサンはR1R2SiO2/2を20~1000単位含み、好ましくは少なくとも50単位、好ましくは少なくとも70単位、好ましくは700単位以下、好ましくは500単位以下、好ましくは300単位以下、好ましくは200単位以下含む。
【0012】
好ましくは、ビニル置換MQ樹脂は、アルケニル基を有するM単位(「MVi」単位)、ヒドロカルビル基を有するM単位、及びQ単位を含む。好ましくは、ビニル置換MQ樹脂はMVi単位を1~20モル%含み、好ましくは少なくとも2モル%、好ましくは少なくとも3モル%、好ましくは15モル%以下、好ましくは10モル%以下、好ましくは8モル%以下含む。好ましくは、ビニル置換MQ樹脂はQ単位を30~80モル%含み、好ましくは少なくとも40モル%、好ましくは少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも50モル%、好ましくは75モル%以下、好ましくは70モル%以下、好ましくは65モル%以下含む。好ましくは、ビニル置換MQ樹脂はM単位を15~55モル%含み、好ましくは少なくとも20モル%、好ましくは少なくとも25モル%、好ましくは少なくとも30モル%、好ましくは50モル%以下、好ましくは45モル%以下、好ましくは40モル%以下含む。モル%は、ビニル置換MQ樹脂のモル数を基準とする。
【0013】
シラン架橋剤は、少なくとも3個のケイ素-水素結合を有する化合物、又は0.01~2.0重量%のSiH単位を有するポリマーである。いくつかの実施形態では、シラン架橋剤化合物は4個のケイ素-水素結合を有する。好ましくは、シラン架橋剤の分子量は、200以上、好ましくは250以上、好ましくは300以上であり、一方で同時に、5000以下、好ましくは2000以下、好ましくは1000以下であり、かつ500以下であり得る。好ましくは、各ケイ素-水素結合は異なるケイ素原子と接続している。好ましくは、シラン架橋剤化合物は、式Si(OSiR2H)4(式中、RはC1~C6アルキル、好ましくはC1~C4アルキル、好ましくはメチル又はエチル、好ましくはメチルである)を有する。好ましくは、シラン架橋剤ポリマーは、式MM’DD’、MM’T、MM’Q又はMM’DD’TQを有する。好ましくは、シラン架橋剤ポリマーは、シラン架橋剤の重量を基準として、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、同時に好ましくは1.7重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、好ましくは1.3重量%以下、好ましくは1.1重量%以下、好ましくは0.9重量%以下のSiH単位を有する。好ましいシラン架橋剤ポリマーは、MDaDH
bM(式中、aは0.5~10(好ましくは1~6)であり、bは2~10(好ましくは3~9)であり、「DH」は少なくとも1個のRが水素である2官能性D単位を指す)を含む。
【0014】
好ましくは、ヒドロシリル化触媒は白金化合物又は錯体、例えばH2PtCl6、ジ-μ.-カルボニルジ-.π.-シクロペンタジエニルジニッケル、白金-カルボニル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体及び白金アセチルアセトネート(acac)である。他の典型的なヒドロシリル化触媒としては、ニッケル化合物及びロジウム化合物、例えばRh(acac)2(CO)2及びNi(acac)2が挙げられる。好ましくは、ヒドロシリル化触媒は、組成物の重量を基準として、0.5~50ppm、好ましくは少なくとも1ppm、好ましくは少なくとも2ppm、好ましくは少なくとも5ppm、好ましくは少なくとも10ppm、好ましくは40ppm以下、好ましくは30ppm以下、好ましくは10ppm以下、好ましくは8ppm以下の量で組成物中に存在する。
【0015】
光潜在性アミン発生剤は、光照射時に遊離アミンを生成する化学化合物である。好適な光潜在性アミン発生剤の例としては、構造(I)~(IV)を有するものが挙げられる:
【化1】
(式中、NB1は環状又は非環状の第三級アミンを示し、NB2は一級又は二級アミンを示し、Arは置換又は非置換アリール基を示す)。好ましくは、Arは5~20個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子を含む。好ましいAr基としては、フェニル基、2-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、ナフタレニル基、アントランセニル(anthrancenyl)基及びチオキサントン基が挙げられる。上に示した光潜在性アミン発生剤の構造にはまた、この構造のいずれかにおけるメチレン炭素上のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基(例えば、以下のIRGACURE化合物の構造を参照のこと)も含まれ得る。好ましくは、NB1及びNB2は各々、5~30個の炭素原子、好ましくは6~25個の炭素原子を含む。対イオンは、ポリシロキサン組成物中で安定な塩を形成する任意のアニオンである。好ましい対イオンとしては、(Ph)
4B
-(Ph=フェニル)、BF
4
-、B(C
6F
5)
4
-、PF
6
-、SbF
6
-、ClO
4
-、カルボキシレート及びフェニルグリオキシレートが挙げられる。好ましい窒素塩基(NB1、NB2)としては、以下の構造を有するものが挙げられる:
【化2】
DBUは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン;DBNは1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン;TBDは1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン;PS:プロトンスポンジ;2B-TMGは2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン;6-DBA-DBUは6-ジブチルアミノ-DBU;PDはピリジン誘導体であって、Gはピリジン環の任意の位置における任意の置換基を表し;アミンはアルキルアミンを指し;R、R’及びR’’は独立して、水素、C
1~C
30ヒドロカルビルであるか、又はR、R’及びR’’の2個が連結して脂肪族環を形成する。光潜在性アミン発生剤は民間の供給元から購入することができる。BASF製のIrgacure 907及びIrgacure 369などであり、これらを以下に示す:
【化3】
【0016】
好ましくは、組成物は、アルケニル基を含むポリシロキサンを70~99重量%含み、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは97重量%以下、好ましくは96重量%以下、好ましくは95重量%以下含む。好ましくは、組成物は、シラン架橋剤を0.5~20重量%含み、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは15重量%以下、好ましくは10重量%以下、好ましくは8重量%以下含む。好ましくは、組成物は、光潜在性アミン発生剤を0.1~20重量%含み、好ましくは少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは15重量%以下、好ましくは10重量%以下、好ましくは8重量%以下、好ましくは5重量%以下含む。
【0017】
好ましくは、組成物は、エポキシ基を有するシロキサン単位を3重量%以下含み、好ましくは2重量%以下、好ましくは1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下含み、好ましくは含まない。エポキシ基を有するシロキサン単位の百分率は、固形分基準(すなわち、組成物中に存在し得る任意の溶剤を除く組成物固形分)で計算される。
【0018】
好ましくは、組成物は、ヒドロシリル化反応の阻害剤を更に含む。ヒドロシリル化の阻害剤は周知である。阻害剤により、組成物をゲル化させずに処理するのに十分な阻害がなされる。例としては、1,3ジビニルジシロキサン、(MeViSiO2/2)4、2-メチル-3-ブチノール、1-エチニル-1-シクロヘキサノールが挙げられる。好ましくは、組成物は、阻害剤を1~500ppm含み、好ましくは少なくとも5ppm、好ましくは少なくとも10ppm、好ましくは少なくとも20ppm、好ましくは300ppm以下、好ましくは100ppm以下含む。
【0019】
好ましくは、組成物は、組成物の粘度を調整するために使用する1個以上の溶剤を更に含む。好ましくは、溶剤の沸点は摂氏70度(℃)以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、120℃以上であり得、一方で同時に、一般に200℃以下、好ましくは180℃以下であり、170℃以下、160℃以下、及び更には150℃以下であり得る。
【0020】
好ましい溶剤としては、3~20個の炭素原子を有する脂肪族ケトン、脂肪族エーテル、及び脂肪族エステル、例えば、メチルエチルケトン、PGMEA、PGME、MIBK、2-ヘプタノン、酢酸ブチル及び乳酸エチルが挙げられる。好ましくは、溶剤は芳香族ではない。好ましくは、溶剤は成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の総量の最大20重量%の量で組成物に加えられ、好ましくは15重量%以下の量で加えられる。溶剤を調整して目標粘度を得ることは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0021】
工程(c)では、好ましくは、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃の温度が実現されるように、一方で同時に、好ましくは190℃以下、好ましくは170℃以下の温度が実現されるように加熱が行われる。フィルムを硬化させるための加熱時間は、任意のフィルムに対して容易に決定される。
【0022】
好ましくは、紫外線による光照射は180ナノメートル(nm)~450nmの波長で行われ、好ましくは200~380nmの波長で行われる。好ましくは、線量レベルは1平方センチメートル当たり5~3000ミリジュール(mJ/cm2)、好ましくは50~2000mJ/cm2、好ましくは100~1000mJ/cm2である。
【0023】
好ましくは、基材上の組成物の厚みは1マイクロメートル以上、好ましくは30マイクロメートル以上、より好ましくは50マイクロメートル以上からであり、一方で同時に、望ましくは300マイクロメートル以下、好ましくは200マイクロメートル以下、より好ましくは170マイクロメートル以下である。
【0024】
好ましくは、組成物の未硬化部分は上記のタイプの溶剤を使用して除去される。
【0025】
本発明の組成物は、光増感剤、充填剤、高放出の添加剤(high release additives)、反応性希釈剤、フォトクロミック材料、染料、着色剤、防腐剤、及び他の放射線硬化性化合物といった任意の構成要素を含み得る。
【実施例】
【0026】
実施例1:光照射なしで十分に硬化性であるフィルム
メチルエチルケトン(MEK)1.2重量部に溶解させた光潜在性アミン塩基である、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(IRGACURE 369、Cibaにより提供)0.3重量部を熱硬化性シリコーン配合物9.7重量部と組み合わせて溶液を形成することで、光塩基溶液(photobase solution)を調製する。熱硬化性シリコーン配合物は、2官能性のビニル末端PDMS流体(重合度(degree of polymerization、DP)=120、75.0重量%、例えばGelest製の製品DMS-V35、CAS番号68083-19-2)、ビニルMQ樹脂(MMViQ、モル比35/5/60、20.0重量%、例えばSiltech製のSilmer VQ2012、CAS番号68988-89-6)、SiH含有架橋剤(ジメチルシロキサンとメチル水素シロキサンとのコポリマー、DPは約10、SiH%=0.78%、5.0重量%、Gelest製のHMS-301として市販、CAS番号68037-59-2)、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(シロキサンポリマーに対して20ppm)、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(シロキサンポリマーに対して60ppm)を含有する。配合物を激しく振盪させて混合した。ドクターブレードコーターを用いて配合物をスライドガラス上にコートし、100μmのフィルムを得た。フィルムを周囲条件で迅速に乾燥させた。コートしたフィルムを120℃のオーブンに入れて5分以内に硬化させ、UV照射なしでの硬化を実証した。
【0027】
実施例2:光照射後のアミンによる硬化阻害
コートしたフィルムが乾燥するまでは、実施例1と同じサンプルを調製する。次いでフィルムをUVチャンバに入れ、500mJ/cm2、248nmのUV光に露光した。露光後、フィルムを120℃のオーブンに1時間入れた。フィルムは依然として未硬化であり、粘着性が残っており、溶剤により除去することができる。これは、UV照射後の硬化阻害を実証するものである。
【0028】
実施例3:光パターン形成フィルム
1.93部のビニル官能性MQ樹脂(M0.37M’0.05Q0.58、ビニル基の重量%はビニル官能性MQ樹脂の1.5~2.5重量%)、SiHを0.11%含有する1.0部のSiH架橋剤ポリマー(MD108D’10M)、及び0.52部の酢酸ブチルを混合して、塩基硬化性のシロキサン配合物を形成する。1-エチニル-1-シクロヘキサノール(シロキサンに対して60ppm)及びPt触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、シロキサンに対して2ppm)を加える。次いで、酢酸ブチル溶剤に溶解させた光潜在性アミン発生剤である、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(IRGACURE 369、BASFにより提供)0.5重量%を加え、完全な配合物を得る。この配合物を、シリコンウェハ上に1000rpmで30秒間スピンコートした(CT62 RC Spin Coater)。フィルムを室温で10分間乾燥させた。乾燥後、UVチャンバ内にて、フィルムをマスクの下で200mJ/cm2、248nmのUV光に露光した。次いで、ウェハをホットプレート上で150℃にて2分間ベークする。ベーク後、溶剤現像のため、ウェハをスピンコーター上に戻した。ウェハをコーター上で回転させながら溶剤をウェハ上に加え、フィルムの未硬化部分を溶解させて遠心力で振り落とす。現像後、ウェハ上にパターンが生成した。
【0029】
実施例4:光パターン形成フィルム
1.93部のビニル官能性MQ樹脂(M0.37M’0.05Q0.58、Vi%=1.5~2.5重量%)、SiHを0.11%含有する1.0部のSiH架橋剤ポリマー(MD108D’10M)、及び0.52部の酢酸ブチルを混合して、塩基硬化性のシロキサン配合物を形成する。1-エチニル-1-シクロヘキサノール(シロキサンに対して60ppm)及びPt触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、シロキサンに対して2ppm)を加える。次いで、酢酸ブチル溶剤中の光潜在性アミン発生剤、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン(IRGACURE 907、BASFにより提供)0.5重量%を加え、完全な配合物を得る。この配合物を、シリコンウェハ上に1000rpmで30秒間スピンコートした(CT62 RC Spin Coater)。フィルムを室温で10分間乾燥させた。乾燥後、UVチャンバ内にて、フィルムをマスクの下で200mJ/cm2、248nmのUV光に露光した。次いで、ウェハをホットプレート上で150℃にて2分間ベークする。ベーク後、溶剤現像のため、ウェハをスピンコーター上に戻した。ウェハをコーター上で回転させながら溶剤をウェハ上に加え、フィルムの未硬化部分を溶解させて遠心力で振り落とす。現像後、ウェハ上にパターンが生成した。