(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】シールドプリント配線板及びシールドプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20230704BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K3/00 R
(21)【出願番号】P 2020559306
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048648
(87)【国際公開番号】W WO2020122166
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2018232930
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】春名 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山内 志朗
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏
(72)【発明者】
【氏名】石岡 宗悟
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041953(JP,A)
【文献】特開2017-059801(JP,A)
【文献】国際公開第2016/032006(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
H05K 9/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板と、絶縁層と、前記プリント配線板と前記絶縁層の間に配置された導電性接着剤層と、を備え、
前記プリント配線板は、ベース部材と、前記ベース部材の表面に設けられた回路パターンと、前記回路パターンを覆う絶縁保護層とを有し、
前記絶縁層及び前記導電性接着剤層を厚さ方向に貫通する、外部グランド接続用のスルーホールを有し、
前記導電性接着剤層は前記絶縁層よりも前記スルーホール内方に延出する延出部を有し、
前記延出部の終端部における、延出部下面と延出部上面とがなす角度が鋭角であるシールドプリント配線板。
【請求項2】
前記延出部の始端部における、延出部下面に対する垂直面と延出部上面とがなす角度が鋭角である、請求項1に記載のシールドプリント配線板。
【請求項3】
回路パターンを有するプリント配線板、絶縁層、及び前記プリント配線板と前記絶縁層の間に配置された導電性接着剤層(i)を備え、且つ前記絶縁層及び前記導電性接着剤層(i)を厚さ方向に貫通する、外部グランド接続用のスルーホールを有するシールドプリント配線板本体を準備するシールドプリント配線板本体準備工程、
前記スルーホールの上面に、導電性接着剤層(ii)を備える外部グランド接続用部材を、前記導電性接着剤層(ii)が前記シールドプリント配線板本体に接触するように積層する外部グランド接続用部材積層工程、
及び、熱圧着により、前記導電性接着剤層(i)を前記絶縁層よりもスルーホール内方に延出させ
延出部を形成し、前記延出部の終端部における、延出部下面と延出部上面とがなす角度を鋭角とし、且つ前記導電性接着剤層(ii)をスルーホール内に流入させて、前記導電性接着剤層(i)と前記導電性接着剤層(ii)とを当接させる熱圧着工程、を備えたシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記導電性接着剤層(i)は、150℃における損失正接が0.1~0.7である、請求項3に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドプリント配線板及びシールドプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、機構の中に回路を組み込むために多用されている。また、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したシールドプリント配線板が用いられている。
【0003】
そのようなシールドプリント配線板として、例えば、
図6に示すような、回路基板110と、電子機器本体のアース部150に接続されたグランド部140との間に配置する電磁波シールド積層体120であって、回路基板110の絶縁保護膜111上に電磁波シールド層121及び絶縁層122の順に積層され、電磁波シールド層121及び絶縁層122を貫通するスルーホール123を有し、スルーホール123の上面に、導電性接着剤層141及びグランド接続部材142からなるグランド部140が載置され、スルーホール123を介して電磁波シールド層121とグランド部140とが電気的に接続するように電磁波シールド層121と絶縁層122とを積層した電磁波シールド積層体120を有する電磁波シールド層付き基板100が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、信号の高速化や装置の軽薄短小化に伴い、配線同士の離間距離が狭くなり、回路設計の自由度の高さが求められている。また、高速伝送に伴う電磁妨害(Electro Magnetic Interference(EMI))をより効果的に防止する技術の向上を図る技術が求められている。
【0006】
特許文献1には、当該文献に開示の電磁波シールド積層体は、電磁波シールド層及び絶縁層を貫通するスルーホールを介してグランド接続部材と導通することができるため、グランド接続が確実となり、グランド接続の信頼性が向上することが可能となるという効果を奏することが記載されている。
【0007】
特許文献1に開示の電磁波シールド層付き基板では、グランド部140の導電性接着剤層141が電磁波シールド積層体120の電磁波シールド層121や導電性接着剤層と電気的に接続するために物理的に接している必要がある。このため、特許文献1に開示の電磁波シールド層付き基板において、グランド部とシールドフィルムとの接続安定性を確保するためには、スルーホール123の開口部面積を大きくする必要がある。しかしながら、開口部面積を大きくすると回路設計の自由度が低下する。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても、接続安定性に優れ、回路設計の自由度が高いシールドプリント配線板を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても、接続安定性に優れ、回路設計の自由度が高いシールドプリント配線板を、容易に製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、導電性接着剤層及び絶縁層に、厚さ方向に貫通するように設けられたスルーホールを有する電磁波シールドフィルムにおいて、導電性接着剤層が絶縁層よりもスルーホール内方に延出する構成を有する電磁波シールドフィルムが積層されたシールドプリント配線板によれば、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても、接続安定性に優れ、回路設計の自由度が高いことを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、プリント配線板と、絶縁層と、上記プリント配線板と上記絶縁層の間に配置された導電性接着剤層と、を備え、上記プリント配線板は、ベース部材と、上記ベース部材の表面に設けられた回路パターンと、上記回路パターンを覆う絶縁保護層とを有し、上記絶縁層及び上記導電性接着剤層を厚さ方向に貫通する、外部グランド接続用のスルーホールを有し、上記導電性接着剤層は上記絶縁層よりも上記スルーホール内方に延出する延出部を有する、シールドプリント配線板を提供する。
【0012】
本発明のシールドプリント配線板は、プリント配線板と、導電性接着剤層と、絶縁層とを備える。本発明のシールドプリント配線板は、上記絶縁層及び上記導電性接着剤層を厚さ方向に貫通する、外部グランド接続用のスルーホールを有する。そして、上記導電性接着剤層は上記絶縁層よりも上記スルーホール内方に延出する延出部を有する。本発明のシールドプリント配線板は、このような延出部を有することにより、導電性接着剤層を、外部グランド接続用部材を用いて外部グランドに電気的に接続した際、上記外部グランド接続用部材における導電材料と上記導電性接着剤層との接触面積が上記延出部を有しない場合に対して大きいため、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても接続安定性に優れる。そして、スルーホールの開口部面積を小さくすることができるため、回路設計の自由度が高くなる。
【0013】
上記延出部の終端部における、延出部下面と延出部上面とがなす角度は鋭角であることが好ましい。上記角度が鋭角であることにより、外部グランド接続用部材における導電材料が熱圧着によりスルーホール内に流入した際に延出部及び絶縁保護層の近辺にも充填されやすく、スルーホールに充填された導電材料中に空隙が発生しにくい。空隙が存在する場合、後の部品実装工程(リフロー工程)においてシールドプリント配線板が加熱されると空隙が膨れて導電材料とシールドフィルムとの接続が損なわれるおそれがある。
【0014】
上記延出部の始端部における、延出部下面に対する垂直面と延出部上面とがなす角度は鋭角であることが好ましい。上記角度が鋭角であることにより、外部グランド接続用部材における導電材料が熱圧着によりスルーホール内に流入した際に延出部及び絶縁層の近辺にも充填されやすく、スルーホールに充填された導電材料中に空隙が発生しにくい。空隙が存在する場合、後の部品実装工程(リフロー工程)においてシールドプリント配線板が加熱されると空隙が膨れて導電材料とシールドフィルム及びグランド接続部材との接続が損なわれるおそれがある。
【0015】
また、本発明は、回路パターンを有するプリント配線板、絶縁層、及び上記プリント配線板と上記絶縁層の間に配置された導電性接着剤層(i)を備え、且つ上記絶縁層及び上記導電性接着剤層(i)を厚さ方向に貫通する、外部グランド接続用のスルーホールを有するシールドプリント配線板本体を準備するシールドプリント配線板本体準備工程;上記スルーホールの上面に、導電性接着剤層(ii)を備える外部グランド接続用部材を、上記導電性接着剤層(ii)が上記シールドプリント配線板本体に接触するように積層する外部グランド接続用部材積層工程;及び、熱圧着により、上記導電性接着剤層(i)を上記絶縁層よりもスルーホール内方に延出させ、且つ上記導電性接着剤層(ii)をスルーホール内に流入させて、上記導電性接着剤層(i)と上記導電性接着剤層(ii)とを当接させる熱圧着工程;を備えたシールドプリント配線板の製造方法を提供する。
【0016】
本発明のシールドプリント配線板の製造方法は、シールドプリント配線板本体準備工程、外部グランド接続用部材積層工程、及び熱圧着工程を有する。シールドプリント配線板本体準備工程は、プリント配線板、導電性接着剤層(i)、及び絶縁層を備えるシールドプリント配線板本体を準備する工程である。上記シールドプリント配線板本体は、上記絶縁層及び導電性接着剤層(i)を厚さ方向に貫通する、外部グランド接続用のスルーホールを有する。外部グランド接続用部材積層工程は、上記スルーホールの上面に、導電性接着剤層(ii)を備える外部グランド接続用部材を、上記導電性接着剤層(ii)が上記シールドプリント配線板本体に接触するように積層する工程である。そして、上記熱圧着工程は、熱圧着により、上記導電性接着剤層(i)をスルーホール内方に延出させ、上記導電性接着剤層(ii)をスルーホール内に流入させる工程である。上記熱圧着工程により、上記導電性接着剤層(i)と上記導電性接着剤層(ii)とが当接する。
【0017】
本発明のシールドプリント配線板の製造方法は、このような熱圧着工程を備えることにより、一度の熱圧着により、導電性接着剤層(i)を軟化させてスルーホール内方に延出させ、同時に導電性接着剤層(ii)を軟化させてスルーホール内に流入させることができ、容易に上記延出部を有するシールドプリント配線板を製造することができる。このため、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても接続安定性に優れ、回路設計の自由度が高いシールドプリント配線板を容易に製造することができる。
【0018】
上記導電性接着剤層(i)は、150℃における損失正接が0.1~0.7であることが好ましい。上記損失正接が0.1以上であることにより、熱圧着時の導電性接着剤層(i)の過剰な延出を抑制することができる。上記損失正接が0.7以下であることにより、熱圧着時の導電性接着剤層(i)の延出が生じやすいため、上記延出部を有するシールドプリント配線板をより容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシールドプリント配線板は、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても接続安定性に優れる。このため、従来のシールドプリント配線板よりも回路設計を自由に行うことができる。また、本発明のシールドプリント配線板の製造方法によれば、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても、接続安定性に優れ、回路設計の自由度が高いシールドプリント配線板を、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のシールドプリント配線板の一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】本発明のシールドプリント配線板の他の一実施形態を示す断面模式図である。
【
図4】本発明のシールドプリント配線板の製造方法の一実施形態を示す断面模式図である。
【
図5】本発明のシールドプリント配線板の製造方法の他の一実施形態を示す断面模式図である。
【
図6】従来のシールドプリント配線板の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[シールドプリント配線板]
本発明のシールドプリント配線板は、プリント配線板と、導電性接着剤層と、絶縁層とを備える。上記導電性接着剤層は、上記プリント配線板と上記絶縁層の間に配置されている。上記プリント配線板は、ベース部材と、上記ベース部材の表面に設けられた回路パターンと、上記回路パターンを覆う絶縁保護層とを有する。本発明のシールドプリント配線板は、上記絶縁層及び上記導電性接着剤層を厚さ方向に貫通する、外部グランド接続用のスルーホールを有する。そして、上記導電性接着剤層は上記絶縁層よりも上記スルーホール内方に延出する延出部を有する。なお、本明細書において、電磁波シールド積層体における上記導電性接着剤層を「導電性接着剤層(I)」と称する場合がある。
【0022】
本発明のシールドプリント配線板の一実施形態について、以下に説明する。
図1は、本発明のシールドプリント配線板の一実施形態を示す断面模式図である。
【0023】
図1に示すように、シールドプリント配線板1は、プリント配線板10と、導電性接着剤層(導電性接着剤層(I))21と、絶縁層22とを備える。導電性接着剤層21は、プリント配線板10と絶縁層22の間に配置されている。シールドプリント配線板1は、絶縁層22及び導電性接着剤層21を厚さ方向に貫通する外部グランド接続用のスルーホール23を有する。そして、導電性接着剤層21は絶縁層22よりもスルーホール23内方に延出する延出部21aを有する。なお、スルーホール23を有する導電性接着剤層21及び絶縁層22から構成される積層体20を「電磁波シールド積層体」と称する場合がある。シールドプリント配線板1は、さらに、スルーホール23上に外部グランド接続用部材40を有する。
【0024】
(プリント配線板)
プリント配線板10は、ベース部材11と、ベース部材11の表面に部分的に設けられた回路パターン13と、回路パターン13を覆い絶縁保護する絶縁保護層(カバーレイ)14と、回路パターン13を覆い且つ回路パターン13及びベース部材11と絶縁保護層14とを接着するための接着剤層12と、を有する。回路パターン13は、複数の信号回路を含む。
【0025】
回路パターン13は、シールドプリント配線板の用途に応じて適宜設計される。回路パターン13は、信号回路以外にグランド回路を有していてもよい。
【0026】
上記プリント配線板における上記ベース部材は、プリント配線板の種類に応じて適宜選択され、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板が挙げられる。リジッド基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、テフロン(登録商標)基板、セラミックス基板などが挙げられる。
【0027】
上記ベース部材の構成材料としては、公知乃至慣用のエンジニアリングプラスチックが挙げられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。上記材料は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0028】
上記ベース部材としては、コストの観点からはポリエステルフィルムが、難燃性に優れる観点からはポリフェニレンサルファイドフィルムが、耐熱性に優れる観点からはポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ガラスエポキシフィルムが好ましい。上記ベース部材の厚さは、特に限定されないが、5~100μmが好ましい。
【0029】
上記回路パターンの構成材料は、特に限定されないが、Cu、Al、Au、Ag、Ni、Pd、Sn、Cr、W、Fe、Ti等の金属、及びSUS等の上記金属のうちの二種以上の合金などの導電材料が挙げられる。
【0030】
上記絶縁保護層は、回路パターンを保護する役割を担い、絶縁性を有し、後述する熱圧着工程に耐え得る層である。上記絶縁保護層としては、無機材料膜及び有機材料膜が挙げられる。上記無機材料膜の構成材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、窒素含有酸化シリコンなどが挙げられる。上記有機材料膜の構成材料としては、上述のベース部材の構成材料として例示された樹脂や、ポリベンゾオキサゾールなどが挙げられる。上記絶縁保護膜は単層であってもよく、複層であってもよい。
【0031】
上記接着剤層には、公知乃至慣用の接着性樹脂を用いることができる。上記接着性樹脂としては、例えば、後述の導電性接着剤層(I)に用いられるバインダー樹脂として例示されたものが挙げられる。上記接着性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0032】
(電磁波シールド積層体)
電磁波シールド積層体20は、プリント配線板10上に、具体的にはプリント配線板10における絶縁保護層14上に、導電性接着剤層21、絶縁層22の順に積層されている。導電性接着剤層21及び絶縁層22は、厚さ方向に貫通する(すなわちプリント配線板10表面が露出する)スルーホール23を有する。スルーホール23を有することにより、スルーホール23において導電性接着剤層21と、外部グランド接続用部材40における導電材料41とが接触し電気的に接続することができる。スルーホール23の底はプリント配線板14であり、具体的には絶縁保護層14である。すなわち、スルーホール23は、絶縁層22側面、延出部21a上面、及びプリント配線板14(特に絶縁保護層14)表面より形成されている。
【0033】
導電性接着剤層21は絶縁層22よりもスルーホール23内方に延出する延出部21aを有する。延出部21aは、上部に絶縁層22を有しない導電性接着剤層21の一部分であり、上面が絶縁層22に覆われていない。このような延出部21aを有することにより、外部グランド接続用部材40を用いて導電性接着剤層21を後述の外部グランド50に電気的に接続した際、外部グランド接続用部材40における導電材料41と導電性接着剤層21との接触面積が、延出部21aを有しない場合(例えば
図6に示す電磁波シールド層付き基板100)に対して大きいため、スルーホール23の開口部面積(スルーホール23を上面から見た際の面積)が小さい場合であっても接続安定性に優れる。そして、スルーホール23の開口部面積を小さくすることができるため、回路設計の自由度が高くなる。
【0034】
延出部の形状は、特に限定されず、
図1に示す延出部21aのような環状(中空円柱状、中空角柱状、不定形中空柱状等)であってもよく、
図2に示す延出部21bのような、始端部から終端部にかけて厚さ(高さ)が連続的若しくは段階的に漸減する形状(段丘状、階段状等)であってもよく、これらを組み合わせた形状であってもよい。また、延出部の厚さは、導電性接着剤層21の延出部以外の部分の厚さと同じであってもよく、薄くてもよい。
【0035】
このような延出部21aが形成されたスルーホール23の形状(導電性接着剤層21の欠損部分に相当する部分の形状)は、略柱状(円柱状、角柱状、不定形柱状等) であってもよい。また、延出部21bが形成されたスルーホール23の形状は、絶縁保護層14側が上底となるような略円錐台形であってもよい。
【0036】
図2に示すように、上記延出部の終端部(導電性接着剤層(I)のスルーホール内方への延出が終了する部分)における、延出部下面と延出部上面とがなす角度は鋭角であることが好ましく、より好ましくは70°以下、さらに好ましくは60°以下、特に好ましくは45°以下である。上記角度が直角又は鈍角である場合、外部グランド接続用部材における導電材料をスルーホールに充填する際に、導電材料が、終端部における延出部及び絶縁保護層の近辺に充填されず空隙が生じ、後の部品実装工程(リフロー工程)においてシールドプリント配線板が加熱されると空隙が膨れて導電材料とシールドフィルムとの接続が損なわれるおそれがある。
【0037】
また、上記延出部の始端部(導電性接着剤層(I)のスルーホール内方に延出が始まる部分)における、延出部下面に対する垂直面と延出部上面とがなす角度は鋭角であることが好ましく、より好ましくは70°以下、さらに好ましくは60°以下、特に好ましくは45°以下である。上記角度が直角又は鈍角である場合、外部グランド接続用部材における導電材料をスルーホールに充填する際に、導電材料が延出部及び絶縁層の近辺に充填されず空隙が生じ、後の部品実装工程(リフロー工程)においてシールドプリント配線板が加熱されると空隙が膨れて導電材料とシールドフィルムとの接続が損なわれるおそれがある。
【0038】
図2に示す延出部21b付近(
図2中○で囲われた部分)の拡大図を
図3に示す。延出部21bは、延出部の下面f1、上面f2、及び下面f1に対する垂直面f3に囲まれた領域である。延出部21bの終端部21b-1における、延出部下面f1と延出部上面f2とがなす角度r2は鋭角である。また、延出部21bの始端部21b-2における、延出部下面f1に対する垂直面f3と延出部上面f2とがなす角度r1は鋭角である。
【0039】
上記スルーホールの開口部の形状(スルーホールを上面から見た際の形状)は特に限定されず、真円、楕円等の円形や四角等の多角形など、必要に応じて設定できる。スルーホールの開口部面積は、0.01~100mm2が好ましく、より好ましくは0.1~80mm2で、さらに好ましくは0.1~50mm2である。スルーホールの開口部面積を上記の範囲にすることで、後述の外部グランド50との接続安定性及び電磁波シールド性をより高めることができる。上記開口部が円形である場合の開口部の直径は0.5~5mmが好ましく、より好ましくは0.5~3mm、さらに好ましくは0.8~3mmである。
【0040】
スルーホールの数は、1つであってもよく、複数であってもよい。グランド接続をより強化する観点から、複数であることが好ましい。
【0041】
スルーホールの開口部面積の、外部グランド接続用部材の貼り付け面積に対する割合は、0.1~90%が好ましく、より好ましくは1~70%である。上記割合が上記範囲内であると、外部グランド接続用部材における導電材料の接着力とグランド信頼性がより向上する。
【0042】
上記延出部の形成方法としては、予めスルーホールが形成され且つ延出部を有する電磁波シールド積層体を用いる方法、予めスルーホールが形成されているものの延出部を有しない電磁波シールドフィルムを用い、熱圧着により導電性接着剤層を軟化させ、スルーホール内方に流動させて延出部を形成する方法が挙げられる。なお、電磁波シールド積層体におけるスルーホールは、プリント配線板上に積層する前に形成されてもよいし、プリント配線板上に積層した後に形成されてもよい。スルーホールの形成には、打ち抜き加工、レーザー加工などを採用することができる。
【0043】
電磁波シールド積層体における導電性接着剤層(I)は、回路パターンから発生する電磁波の外部への漏洩を防ぎ、また、外部から回路への電磁波(ノイズ)を遮蔽する役割を担う。
【0044】
導電性接着剤層(I)は、バインダー樹脂及び導電性粒子を含むことが好ましい。上記バインダー樹脂は、導電性接着剤層(I)において他の成分をバインドし、マトリックスを形成する役割を有する。
【0045】
上記バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物などが挙げられ、リフロー工程における耐熱性に優れる観点からは熱硬化性樹脂の硬化物が好ましい。なお、後工程においてリフロー工程等の加熱工程を有しない場合は、熱可塑性樹脂が好ましい。上記バインダー樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0046】
上記熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等)、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0047】
上記バインダー樹脂は、熱圧着により導電性接着剤層(I)を形成する成分が流動しスルーホール内方に延出しやすく、またプリント配線板がグランド回路を有する場合はグランド回路上部の絶縁保護層に設けられた開口部への流入及び充填が容易となる観点から、熱により軟化する樹脂であることが好ましい。
【0048】
上記導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、カーボンフィラーなどが挙げられる。上記導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0049】
上記金属粒子及び上記金属被覆樹脂粒子の被覆部を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛などが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0050】
上記金属粒子としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。上記金属粒子は、電解法、アトマイズ法、還元法などにより作製することができる。
【0051】
上記導電性粒子の形状としては、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、導電性接着剤層(I)の抵抗値がより低く、シールド性がより良好となる観点から、フレーク状が好ましい。
【0052】
上記絶縁層は、電磁波シールド積層体の導電性接着剤層(I)よりも表面側に設けることにより、導電性接着剤層(I)を絶縁保護し、他の導電部材との接触時の短絡を防止できる。上記絶縁層は、バインダー樹脂を含むことが好ましい。上記バインダー樹脂としては、上述の導電性接着剤層(I)におけるバインダー樹脂として例示及び説明されたものが挙げられる。上記バインダー樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0053】
上記電磁波シールド積層体は、絶縁層と導電性接着剤層(I)の間に、金属層を有していてもよい。金属層を有する場合、スルーホールは、絶縁層、金属層、及び導電性接着剤層(I)を貫通する。外部グランド接続用部材と導通を取るためにスルーホールに導電材料を流入させて電気的に接続する際、金属層が絶縁層を補強する下地となるため、熱圧着時の圧力が導電材料に伝わりやすくなり、流入を促進させ、より確実に外部グランド接続用部材と導電性接着剤層(I)との導通を確保することができる。
【0054】
上記電磁波シールド積層体は、導電性接着剤層(I)及び絶縁層の他に、他の層を有していてもよい。上記他の層とは、ハードコート層、水蒸気バリア層、酸素バリア層、熱伝導層、低誘電率層、高誘電率層、耐熱性付与層などが挙げられる。
【0055】
(外部グランド接続用部材)
外部グランド接続用部材40は、導電材料41とグランド接続部材42を有し、導電性接着剤層21と導電材料41とが接触し電気的に接続するように、電磁波シールド積層体20におけるスルーホール23の開口部を塞ぐように配置されている。導電材料41は、電磁波シールド積層体20側に配置され、スルーホール23を充填し、スルーホール23において導電性接着剤層21と電気的に接続する作用を有する。グランド接続部材42は、外部グランド50側に配置され、外部グランド50と導電材料41とを電気的に接続する作用を有する。
【0056】
上記導電材料は、導電性接着剤層が好ましい。なお、本明細書において、外部グランド接続用部材における上記導電性接着剤層を「導電性接着剤層(II)」と称する場合がある。
【0057】
導電性接着剤層(II)は、バインダー樹脂及び導電性粒子を含むことが好ましい。上記バインダー樹脂は、導電性接着剤層(II)において他の成分をバインドし、マトリックスを形成する役割を有する。
【0058】
また、導電性粒子の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層(II)100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上である。また、上記含有割合は、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下である。上記含有割合が5質量%以上であると、導電性接着剤層(II)と導電材との接続安定性が良好となる。上記含有割合が95質量%以下であると、導電性接着剤層(II)とプリント配線板の絶縁保護層との密着性が良好となる。
【0059】
上記バインダー樹脂としては、上述の導電性接着剤層(I)におけるバインダー樹脂として例示及び説明されたものが挙げられる。上記バインダー樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。中でも、スルーホールを充填し、熱圧着により熱硬化することで導電性接着剤層(I)と導通することができる観点から、熱硬化性樹脂の硬化物が好ましい。
【0060】
上記バインダー樹脂は、熱圧着により導電性接着剤層(II)を形成する成分が流動しスルーホール内への流入及び充填が容易となる観点から、熱により軟化する樹脂であることが好ましい。
【0061】
上記導電性粒子としては、上述の導電性接着剤層(I)における導電性粒子として例示及び説明されたものが挙げられる。上記導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0062】
導電性接着剤層(II)は、粘着性付与剤を含んでいてもよい。上記粘着性付与剤としては、例えば、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂などが挙げられる。
【0063】
上記グランド接続部材は、例えば、金、銀、銅、アルミ、鉄、ニッケル、これらのうちの2以上の金属の合金からなる金属板が挙げられる。中でも、グランド接続部材としての導電性、コスト、及び化学的安定性の観点から、銅、アルミ、ニッケル、銀が好ましい。
【0064】
シールドプリント配線板1は、外部グランド接続用部材40が取り付けられたシールドプリント配線板本体30を設計に基づいて組み立て、導電性接着剤層(I)21を、導電材料41及びグランド接続部材42を通して外部グランド50に接続し接地する。グランド接続部材42と外部グランド50は不図示のガスケット及び導電性粘着シートで接続する。
【0065】
(外部グランド)
外部グランド(アース部)50は、導電性を有する部材である。上記外部グランドとしては、電子機器本体内部に配置された導電性を有するボード、筐体部の金属メッキ部、筐体に貼り付けられた金属板、着脱自在に構成された蓋等の部材などが挙げられる。
【0066】
外部グランド接続用部材を含む本発明のシールドプリント配線板と、外部グランド接続用部材と電気的に接続された外部グランドとを含む電子機器は、外部グランド接続用部材を用いることで、グランド接続を強化されるとともに、シールドプリント配線板本体が形状保持性を有することができる。電磁波シールド積層体の上面に一定の面積の外部グランド接続用部材を貼り付けることで、シールドプリント配線板を折り曲げた際に、これら積層体の形状が戻ろうとする力を抑制し、折り曲げたままの状態の形状を保持することができる。このため、本発明のシールドプリント配線板は、フレキシブルプリント配線板(FPC)であることが好ましい。
【0067】
[シールドプリント配線板の製造方法]
本発明のシールドプリント配線板の製造方法は、回路パターンを有するプリント配線板、絶縁層、及び上記プリント配線板と上記絶縁層の間に配置された導電性接着剤層(i)を備え、且つ上記絶縁層及び上記導電性接着剤層(i)を厚さ方向に貫通する外部グランド接続用のスルーホールを有するシールドプリント配線板本体を準備する工程(シールドプリント配線板本体準備工程)、上記スルーホールの上面に、導電性接着剤層(ii)を備える外部グランド接続用部材を、上記導電性接着剤層(ii)が上記シールドプリント配線板本体に接触するように積層する工程(外部グランド接続用部材積層工程)、及び、熱圧着により、上記導電性接着剤層(i)を上記絶縁層よりもスルーホール内方に延出させ、且つ上記導電性接着剤層(ii)をスルーホール内に流入させて、上記導電性接着剤層(i)と上記導電性接着剤層(ii)とを当接させる工程(熱圧着工程)を備える。なお、本発明のシールドプリント配線板の製造方法を、単に「本発明の製造方法」と称する場合がある。
【0068】
本発明の製造方法の一実施形態について、
図4を用いて説明する。
【0069】
(シールドプリント配線板本体準備工程)
シールドプリント配線板本体準備工程では、例えば
図4(c)に示すような、回路パターンを有するプリント配線板10、絶縁層22、及び、プリント配線板10と絶縁層22の間に配置された導電性接着剤層(i)21’を備えたシールドプリント配線板本体30’を準備する。なお、準備されるシールドプリント配線板本体30’は、絶縁層22及び導電性接着剤層(i)21’を厚さ方向に貫通する外部グランド接続用のスルーホール23を有する。なお、本明細書では、外部グランド接続用部材を有しないシールドプリント配線板(例えば、プリント配線板10と電磁波シールド積層体20からなるシールドプリント配線板30、プリント配線板10と電磁波シールドフィルム20’からなるシールドプリント配線板30’)を、「シールドプリント配線板本体」と称する場合がある。但し、シールドプリント配線板本体も、シールドプリント配線板に該当する。
【0070】
シールドプリント配線板本体準備工程における一実施形態では、
図4(a)に示すように、まず、ベース部材11と、ベース部材11上に部分的に設けられた回路パターン13と、回路パターン13を絶縁保護する絶縁保護層14と、回路パターン13を覆い且つ回路パターン13及びベース部材11と絶縁保護層14とを接着するための接着剤層12と、を有するプリント配線板10を準備する。なお、
図4(a)に示すプリント配線板10に替えて、回路パターン13として信号回路とともにグランド回路、及びグランド回路上の絶縁保護層に形成されたビアを有するプリント配線板を用いてもよい。ビアは、例えば、レーザー加工などにより形成できる。また、予めビアを形成した絶縁保護膜をラミネートしてもよい。
【0071】
次に、
図4(b)に示すように、プリント配線板10の絶縁保護層14上に、導電性接着剤層(i)21’及び絶縁層22の積層体である電磁波シールドフィルム20’を積層する。プリント配線板の絶縁保護層にビアが形成されている場合、積層後、ビアに導電性接着剤層(i)21’を充填するために熱圧着を行ってもよい。熱圧着は、例えば、熱圧着機を用いて電磁波シールドフィルムを加熱しつつ加圧することにより行う。
【0072】
次に、
図4(c)に示すように、積層された電磁波シールドフィルム20’の外部グランド接続用部材の取り付け部に対応する箇所に、導電性接着剤層(i)21’及び絶縁層22を貫通するようにスルーホール23を形成する。スルーホール23の形成は、例えばレーザー加工により行う。導電性接着剤層(i)21’は、後述の熱圧着工程における熱圧着時に流動し硬化することで導電性接着剤層(I)を形成し、電磁波シールド積層体が形成される。
【0073】
導電性接着剤層(i)は、150℃における損失正接が0.1~0.7であることが好ましく、より好ましくは0.1~0.4である。上記損失正接が0.1以上であると、熱圧着時の導電性接着剤層(i)の過剰な延出を抑制することができる。上記損失正接が0.7以下であると、熱圧着時の導電性接着剤層(i)の延出が生じやすいため、上記延出部を有するシールドプリント配線板をより容易に製造することができる。上記150℃における損失正接は、例えばレオメーター(商品名「MCR302」、Anton Paar社製)により、30~200℃の範囲について測定し、求めることができる。測定試料としては、導電性接着剤層(i)を直径25mm、厚さ1mmのディスク状に成形したものを用いる。また、レオメーターの測定条件は以下の条件としてもよい。
プレート:D-PP25/AL/S07 直径25mm
振り角:0.1%
周波数:1Hz
測定範囲:30~200℃
昇温スピード:6℃/min
【0074】
導電性接着剤層(i)は、バインダー成分及び導電性粒子を含むことが好ましい。上記バインダー成分としては、上述の導電性接着剤層(I)に含まれ得るバインダー樹脂を形成する成分が挙げられる。
【0075】
上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のうちの少なくとも一方であることが好ましい。リフロー工程における耐熱性に優れる観点からは熱硬化性樹脂が好ましく、後工程においてリフロー工程等の加熱工程を有しない場合は熱可塑性樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、上述の導電性接着剤層(I)における熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として例示及び説明されたものが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0076】
上記導電性粒子としては、上述の導電性接着剤層(I)に含まれ得る導電性粒子として例示及び説明されたものが挙げられる。上記導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0077】
上記バインダー成分が熱硬化性樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の種類は、熱硬化性樹脂が有する官能基の種類に応じて適宜選択することができる。上記硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤などが挙げられる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0078】
(外部グランド接続用部材積層工程)
外部グランド接続用部材積層工程では、スルーホール23の上面に、導電性接着剤層(ii)41’を備える外部グランド接続用部材40’を、導電性接着剤層(ii)41’がシールドプリント配線板本体30’(例えば絶縁層22)に接触するように積層する。
【0079】
具体的には、外部グランド接続用部材積層工程では、
図4(d)に示すように、導電性接着剤層(ii)41’とグランド接続部材42とを貼り合わせ、任意のサイズにカットした外部グランド接続用部材40’の導電性接着剤層(ii)41’の面を、スルーホール23の開口部を塞ぐように絶縁層22の表面に配置する。
【0080】
(熱圧着工程)
熱圧着工程では、熱圧着により、導電性接着剤層(i)21’を絶縁層22よりもスルーホール23内方に延出させ、且つ導電性接着剤層(ii)41’をスルーホール23内に流入させて、導電性接着剤層(i)21’と導電性接着剤層(ii)41’ とを当接させる。
【0081】
具体的には、熱圧着工程において、加熱及び加圧により導電性接着剤層(i)21’は軟化して流動し、絶縁層22よりもスルーホール23内方に延出する。そしてその後の冷却あるいは熱重合により硬化することで導電性接着剤層(I)21を形成し、延出部21aを有する電磁波シールド積層体20を形成する。また、上記加熱及び加圧により、導電性接着剤層(ii)41’も軟化して流動し、加圧時の圧力によってスルーホール23内に流入充填する。そしてその後の冷却あるいは熱重合により硬化することで導電性接着剤層(II)41を形成し、外部グランド接続用部材40を形成する。このように、導電性接着剤層(i)21’と導電性接着剤層(ii)41’とが熱圧着により流動することで当接する。そして、熱圧着により得られたシールドプリント配線板1において、外部グランド接続用部材40と電磁波シールド積層体20とは、導電性接着剤層(I)21と導電性接着剤層(II)41とが接触していることで電気的に接続する。
【0082】
導電性接着剤層(i)のスルーホール内方への延出は、導電性接着剤層(i)の損失正接と熱圧着時の条件(圧力条件、温度条件など)の組み合わせが重要となる。
【0083】
熱圧着工程の圧力、温度、時間等の条件は、導電性接着剤層(i)及び導電性接着剤層(ii)の種類(特に、バインダー成分及び硬化剤の種類)に応じて適宜選択することができる。熱圧着時の圧力は、特に限定されないが、1~5MPaであることが好ましい。熱圧着時の温度は、バインダー成分として熱硬化性樹脂を用いる場合、特に限定されないが、140~200℃であることが好ましい。熱圧着時間は、バインダー成分として熱硬化性樹脂を用いる場合、特に限定されないが、1~60分であることが好ましい。但し、熱硬化性樹脂は、流動が可能であれば熱圧着前に硬化してもよい。
【0084】
また、本発明の製造方法の他の一実施形態について、
図5を用いて説明する。
【0085】
図5に示す本発明の製造方法は、シールドプリント配線板本体準備工程において、
図4(b)に示すようなスルーホールを有しない電磁波シールドフィルム20’を積層する代わりに、
図5(b)に示すように、予めスルーホール23が形成された電磁波シールドフィルム20’を積層する点で異なる。本実施形態では、プリント配線板に積層する前の段階において電磁波シールドフィルムにスルーホールを形成することとなるため、スルーホールは、レーザー加工のみならず、より容易な打ち抜き加工によって形成することができ、より容易にスルーホールを形成することができる。
【0086】
本実施形態は、上記以外は
図4に示す本発明の製造方法と同様である。
図5(a)に示すプリント配線板10を準備する段階、
図5(c)に示す外部グランド接続用部材積層工程、及び
図5(d)に示す熱圧着工程は、それぞれ、
図4(a)示すプリント配線板10を準備する段階、
図4(d)に示す外部グランド接続用部材積層工程、及び
図4(e)に示す熱圧着工程と同様である。
【0087】
以上のようにして本発明のシールドプリント配線板を製造することができる。
【0088】
本発明の製造方法は、熱圧着により、導電性接着剤層(I)を絶縁層よりもスルーホール内方に延出させて延出部を形成することができるため、打ち抜きや切削により延出部を形成する工程を経る必要がない。さらに、一度の熱圧着により、上記延出部の形成と、導電性接着剤層(ii)をスルーホール内に流入させることができる。このため、本発明のシールドプリント配線板を容易に製造することができる。よって、本発明の製造方法によれば、スルーホールの開口部面積が小さい場合であっても、接続安定性に優れ、回路設計の自由度が高いシールドプリント配線板を、容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 シールドプリント配線板
10 プリント配線板
11 ベース部材
12 接着剤層
13 回路パターン
14 絶縁保護層(カバーレイ)
20 電磁波シールド積層体
21 導電性接着剤層(導電性接着剤層(I))
22 絶縁層
23 スルーホール
30 シールドプリント配線板(シールドプリント配線板本体)
40 外部グランド接続用部材
41 導電材料
42 グランド接続部材
50 外部グランド
20’ 電磁波シールドフィルム
21’ 導電性接着剤層(i)
30’ シールドプリント配線板(シールドプリント配線板本体)
40’ 外部グランド接続用部材
41’ 導電性接着剤層(ii)