(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/209 20210101AFI20230704BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20230704BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20230704BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20230704BHJP
【FI】
H01M50/209
H01G11/10
H01M50/264
H01M50/55 101
(21)【出願番号】P 2021023191
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 渉
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 誠一
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126846(JP,A)
【文献】特開2016-219211(JP,A)
【文献】特開2013-069657(JP,A)
【文献】特開2020-140855(JP,A)
【文献】特開2013-114752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01G 11/10
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型の筐体を各々含み、平坦面状の直方体形状に各々形成された複数の蓄電セルを前記筐体の短手方向である第1の方向に沿って積層する工程(S10)と、
前記第1の方向に沿って前記複数の蓄電セルを圧縮する第1の加圧工程(S30)と、
前記第1の加圧工程の加圧力を解除した後に、前記第1の方向に直交
し、前記筐体の長手方向である第2の方向において前記複数の蓄電セルの位置合わせを行う工程(S40)と、
前記第2の方向における前記複数の蓄電セルの位置合わせを行った後に、前記第1の方向に沿って前記複数の蓄電セルを圧縮する第2の加圧工程(S50)と、
前記第2の加圧工程の加圧力を加えた状態で、前記複数の蓄電セルに対して前記第1の方向の両側に拘束部を配置する工程(S60)と、
前記拘束部を配置した後に、前記第2の加圧工程の加圧力を解除して、前記第1の方向に沿って前記拘束部に前記複数の蓄電セルを拘束させる工程(S70)とを備え、
前記複数の蓄電セルは、正極端子および負極端子を各々含み、
前記第2の方向は、前記正極端子および前記負極端子が並ぶ方向である、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1の加圧工程において、前記複数の蓄電セルを過圧縮領域にまで圧縮する、
請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第2の加圧工程において、前記複数の蓄電セルを過圧縮領域にまで圧縮する、請求項1
または請求項2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記複数の蓄電セルを積層した後、前記第1の加圧工程を行う前に、前記第2の方向における仮の位置合わせを行う工程(S20)をさらに備えた、請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セル(蓄電セル)を積層した電池モジュール(蓄電モジュール)が従来から知られている。このような構造は、たとえば、特開2010-272378号公報(特許文献1)などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層された複数の蓄電セルの位置合わせが十分でない状態で積層体を積層方向に加圧して拘束すると、蓄電セルの位置を想定どおりの位置に矯正することが困難になり得る。従来の構造は、上記の観点から、必ずしも十分なものではない。
【0005】
本技術の目的は、積層された複数の蓄電セルの位置合わせを精度良く行うことが可能な蓄電モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る蓄電モジュールの製造方法は、第1の方向に沿って複数の蓄電セルを積層する工程(S10)と、第1の方向に沿って複数の蓄電セルを圧縮する第1の加圧工程(S30)と、第1の加圧工程の加圧力を解除した後に、第1の方向に直交する第2の方向において複数の蓄電セルの位置合わせを行う工程(S40)と、第2の方向における複数の蓄電セルの位置合わせを行った後に、第1の方向に沿って複数の蓄電セルを圧縮する第2の加圧工程(S50)と、第2の加圧工程の加圧力を加えた状態で、複数の蓄電セルに対して第1の方向の両側に拘束部を配置する工程(S60)と、拘束部を配置した後に、第2の加圧工程の加圧力を解除して、第1の方向に沿って拘束部に複数の蓄電セルを拘束させる工程(S70)とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本技術によれば、積層された複数の蓄電セルの位置合わせを精度良く行うことが可能な蓄電モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す組電池における電池セルおよびエンドプレートを示す図である。
【
図3】
図1に示す組電池における電池セルを示す図である。
【
図4】蓄電モジュールの製造方法の各工程を示すフロー図である。
【
図5】仮圧縮および幅方向仮規制の工程(S21,S22)を示す図である。
【
図6】上面仮押えの工程(S23)を示す図である。
【
図7】過圧縮(1回目)の工程(S30)を示す図である。
【
図8】上面仮押さえ解除の工程(S41)を示す図である。
【
図9】過圧縮(1回目)解除および幅方向規制の工程(S42,S43)を示す図である。
【
図10】幅方向規制解除の工程(S44)を示す図である。
【
図11】過圧縮(2回目)の工程(S50)を示す図である。
【
図12】拘束部配置の工程(S60)を示す図である。
【
図13】過圧縮(2回目)解除の工程(S70)を示す図である。
【
図14】
図4の工程を経た電池セルに残される痕跡を説明する図である。
【
図15】電池パックの構成を示す分解斜視図である。
【
図16】仮圧縮および幅方向仮規制の工程(S21,S22)を示す図である。
【
図17】上面仮押えの工程(S23)を示す図である。
【
図18】過圧縮(1回目)の工程(S30)を示す図である。
【
図19】上面仮押さえ解除の工程(S41)を示す図である。
【
図20】過圧縮(1回目)解除および幅方向規制の工程(S42,S43)を示す図である。
【
図21】幅方向規制解除の工程(S44)を示す図である。
【
図22】過圧縮(2回目)解除の工程(S70)を示す図である。
【
図24】拘束部配置の工程(S60)を示す図である。
【
図25】過圧縮(2回目)解除の工程(S70)を示す図である。
【
図27】
図4の工程を経た電池セルに残される痕跡を説明する図である。
【
図28】電池セルのばね定数の特性を示す概念図である。
【
図29】時間の経過とセル反力およびセル厚みとの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0010】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0011】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含むが、当該構成以外の他の構成を含むことを除外しない。
【0012】
図1は、組電池1の基本的構成を示す図である。
図2は、組電池1に含まれる電池セル100とエンドプレート200とを示す図である。
図3は、組電池1における電池セル100を示す図である。
【0013】
図1,
図2に示すように、「蓄電モジュール」の一例としての組電池1は、電池セル100と、エンドプレート200と、拘束部材300とを備える。
【0014】
一例として、電池セル100はリチウムイオン電池であるが、電池セル100はニッケル水素電池など他の電池であってもよい。また、本開示において「蓄電モジュール」は組電池1に限定されず、電池セル100に代えて、たとえばキャパシタが「蓄電セル」として用いられてもよい。
【0015】
複数の電池セル100は、Y軸方向(配列方向)に並ぶように設けられる。電池セル100は、電極端子110を含む。複数の電池セル100の間には、図示しないセパレータが介装されている。2つのエンドプレート200に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート200によって押圧され、2つのエンドプレート200の間で拘束されている。
【0016】
エンドプレート200は、Y軸方向(配列方向)において組電池1の両端に配置されている。エンドプレート200は、組電池1を収納するケースなどの基台に固定される。
【0017】
拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに接続する。拘束部材300は、2つのエンドプレート200に取り付けられる。
【0018】
複数の電池セル100およびエンドプレート200の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300をエンドプレート200に係合させ、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート200を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに近づける方向に押圧する。
【0019】
図3に示すように、電池セル100は、平坦面状の直方体形状に形成されている。電極端子110は、正極端子111と、負極端子112とを含む。電極端子110は、角型の筐体120上に形成されている。筐体120には、図示しない電極体および電解液が収容されている。
【0020】
図4は、組電池1(蓄電モジュール)の製造方法の各工程を示すフロー図である。
図4に示すように、組電池1の製造方法は、Y軸方向(第1の方向:積層方向)に沿って複数の電池セル100(蓄電セル)を積層する工程(S10:積層工程)と、複数の電池セル100を積層した後、Y軸方向に直交するX軸方向(第2の方向:幅方向)における仮の位置合わせを行う工程(S20)と、Y軸方向に沿って複数の電池セル100を過圧縮領域にまで圧縮する1回目の過圧縮工程(S30:第1の加圧工程)と、1回目の過圧縮工程の加圧力を解除した後に、X軸方向において複数の電池セル100の位置合わせを行う工程(S40)と、X軸方向における複数の電池セル100の位置合わせを行った後に、Y軸方向に沿って複数の電池セル100を過圧縮領域にまで圧縮する2回目の過圧縮工程(S50:第2の加圧工程)と、2回目の過圧縮工程の加圧力を加えた状態で、複数の電池セル100に対してY軸方向の両側に拘束部材300を配置する工程(S60)と、拘束
部材300を配置した後に、2回目の過圧縮工程の加圧力を解除して、Y軸方向に沿って拘束部材300に複数の電池セル100を拘束させる工程(S70)とを備える。
【0021】
X軸方向における仮の位置合わせを行う工程(S20)は、仮圧縮の工程(S21)と、幅方向仮規制の工程(S22)と、上面仮押さえの工程(S23)とを含む。X軸方向における複数の電池セル100の位置合わせを行う工程(S40)は、上面仮押さえを解除する工程(S41)と、過圧縮(1回目)を解除する工程(S42)と、幅方向規制の工程(S43)と、幅方向規制を解除する工程(S44)とを含む。
【0022】
図5は、Y軸方向(積層方向)の仮圧縮の工程(S21)およびX軸方向(幅方向)の仮規制の工程(S22)を示す図である。
図5に示すように、治具400によって、電池セル100およびエンドプレート200の積層体に圧縮力が加えられる。このとき、電池セル100の筐体120は、内部のガス圧により若干膨張した状態にある。
【0023】
また、治具500によってX軸方向に沿った複数の電池セル100の仮の位置合わせが行われる。治具500は、第1部材510と、第2部材520とを含む。第1部材510に向かって第2部材520を矢印X1方向に移動させることにより、複数の電池セル100のX軸方向の仮の位置合わせが行われる。ただし、電池セル100が膨張した状態にあるため、第1部材510および第2部材520によって電池セル100を挟持しても、複数の電池セル100のX軸方向の位置合わせは完全には行われない。
【0024】
図6は、X軸方向の仮規制後の、上面仮押えの工程(S23)を示す図である。
図6に示すように、電池セル100およびエンドプレート200の積層体は、治具600によりZ軸方向に挟持される。治具600は、第1部材610と、第2部材620とを含む。第1部材610に向かって第2部材620を矢印Z1方向に移動させることにより、複数の電池セル100の上面の仮押えが行われる。
【0025】
図7は、過圧縮(1回目)の工程(S30)を示す図である。
図7に示すように、治具400によりY軸方向の圧縮力(矢印Y1,Y2)が加えられ、電池セル100は略直方体の形状に圧縮される。このとき、複数の電池セル100の上面は仮押えされている。
【0026】
ここで、「過圧縮」とは、筐体120内に収容された電極体が圧縮され、変形している状態を意味する。この状態から圧縮を解放すると、電極体は元の形状に戻る。ただし、電極体は一時的に圧縮された形状を維持しようとするため、時間を掛けて徐々に元の形状に戻る。
【0027】
次に、
図8~
図10を用いて、複数の電池セル100の位置合わせを行う工程(S40)について説明する。
図8は、上面仮押さえ解除の工程(S41)を示す図であり、
図9は、過圧縮(1回目)解除および幅方向規制の工程(S42,S43)を示す図であり、
図10は、幅方向規制解除の工程(S44)を示す図である。
【0028】
図8に示すように、治具600の第2部材620が矢印Z2方向に移動して電池セル100から離間する(S41)。続いて、
図9に示すように、治具400による圧縮力を解除(S42)する。このとき、電池セル100の筐体120が元の形状(若干膨張した状態)に戻る前に、治具500の第1部材510を矢印X1方向に移動させ、複数の電池セル100のX軸方向の位置合わせ(S43)を行う。筐体120が直方体形状を維持しているため、正確な位置合わせを行うことができる。ここで、治具500の第1部材510および第2部材520の表面には押さえ部材510A,520Aが各々設置されている。
【0029】
複数の電池セル100のX軸方向の位置合わせが行われた後、
図10に示すように、治具500の第2部材が矢印X2方向に移動して幅方向(X軸方向)の規制力が解除される(S44)。
【0030】
図11は、過圧縮(2回目)の工程(S50)を示す図である。
図12は、拘束部材300配置の工程(S60)を示す図である。
図13は、過圧縮(2回目)解除の工程(S70)を示す図である。
【0031】
図11に示すように、2回目の過圧縮工程は、ローラ630A付きの第3部材630により電池セル100の上面を押さえた状態で行われる。
図12に示すように、過圧縮状態を維持したまま、拘束部材300を配置する。この状態から、
図13に示すように、治具400を矢印Y1,Y2方向またはそのどちらか一方向に移動させ、過圧縮状態を解除することにより、電池セル100およびエンドプレート200Aの積層体の軸長が拡大し、拘束部材300により積層方向に拘束される。
【0032】
図14は、電池セル100に残される痕跡を説明する図である。本実施の形態に係る組電池1の製造方法によれば、2回の過圧縮工程を経ているため、電池セル100の積層方向の表面に、複数の電池セル100間に配置されるセパレータの形状に対応した凹部100Aが形成される。
【0033】
次に、「拘束部」の変形例として、拘束部材300に代えてケース700により直接支持する構造について説明する。
【0034】
図15は、電池パック2の構成を示す分解斜視図である。電池パック2は、電池セル100と、ケース700(密閉ケース)と、熱伝導材800とを含む。
【0035】
複数の電池セル100(蓄電セル)は、Y軸方向(積層方向)に沿って積層される。ケース700は、ケース本体710と、蓋部材720とを含む。ケース本体710は、ケース700の底面および側面を構成する。蓋部材720は、ケース700の上面を構成する。ケース本体710は、複数の電池セル100の上側(電極端子110側)に開口を有する。蓋部材720は、ケース本体710の開口上に設けられる。
【0036】
ケース700は、電池セル100の積層体を収納する内部空間を有する。ケース本体710および蓋部材720は、たとえばアルミニウム、マグネシウムなどの金属材からなる鋳造部品(ダイキャスト材)であってもよいし、カーボン含有素材からなるプレス成型部品であってもよい。ケース700は上記の態様に限定されず、強度、放熱性、熱伝導性などの点において、所定の特性を満たすものであればよい。たとえば樹脂製のケース本体710および蓋部材720である場合もあり得る。
【0037】
ケース本体710と蓋部材720との接合部は、ゴム等のシール材、接着剤、およびホットメルト材などを用いて密閉されるか、超音波溶着、レーザ溶着などにより両者が接合されてもよい。これにより、ケース本体710および蓋部材720からなるケース700の内部に密閉空間が形成される。
【0038】
熱伝導材800は、電池セル100とケース700のケース本体710との間に設けられ、電池セル100において発生した熱のケース700への伝達を促進する。
【0039】
電池パック2は、車両に搭載され得る。電池パック2が車両に搭載されるとき、典型的には、ケース本体710に対して蓋部材720が上側に位置する。本件明細書では、Z軸方向を「上下方向」と称し、Z軸方向におけるケース本体710側を「下側」、蓋部材720側を「上側」と称する場合がある。
【0040】
電池パック2において、電池セル100の積層体は、ケース本体710によりY軸方向(積層方向)に圧縮され、拘束される。
【0041】
図16は、Y軸方向(積層方向)の仮圧縮の工程(S21)およびX軸方向(幅方向)の仮規制の工程(S22)を示す図である。
図16に示すように、治具400Aによって、電池セル100およびエンドプレート200Aの積層体に圧縮力が加えられる。このとき、電池セル100の筐体120は、内部のガス圧により若干膨張した状態にある。
【0042】
また、治具500によってX軸方向に沿った複数の電池セル100の仮の位置合わせが行われる。治具500は、第1部材510と、第2部材520とを含む。第1部材510に向かって第2部材520を矢印X1方向に移動させることにより、複数の電池セル100のX軸方向の仮の位置合わせが行われる。ただし、電池セル100が膨張した状態にあるため、第1部材510および第2部材520によって電池セル100を挟持しても、複数の電池セル100のX軸方向の位置合わせは完全には行われない。
【0043】
図17は、X軸方向の仮規制後の、上面仮押えの工程(S23)を示す図である。
図17に示すように、電池セル100およびエンドプレート200Aの積層体は、治具600によりZ軸方向に挟持される。治具600は、第1部材610と、第2部材620とを含む。第1部材610に向かって第2部材620を矢印Z1方向に移動させることにより、複数の電池セル100の上面の仮押えが行われる。
【0044】
図18は、過圧縮(1回目)の工程(S30)を示す図である。
図18に示すように、治具
400AによりY軸方向の圧縮力(矢印Y1,Y2)が加えられ、電池セル100は略直方体の形状に圧縮される。このとき、複数の電池セル100の上面は仮押えされている。
【0045】
次に、
図19~
図21を用いて、複数の電池セル100の位置合わせを行う工程(S40)について説明する。
図19は、上面仮押さえ解除の工程(S41)を示す図であり、
図20は、過圧縮(1回目)解除および幅方向規制の工程(S42,S43)を示す図であり、
図21は、幅方向規制解除の工程(S44)を示す図である。
【0046】
図19に示すように、治具600の第2部材620が矢印Z2方向に移動して電池セル100から離間する(S41)。続いて、
図20に示すように、治具
400Aによる圧縮力を解除(S42)する。このとき、電池セル100の筐体120が元の形状(若干膨張した状態)に戻る前に、治具500の第1部材510を矢印X1方向に移動させ、複数の電池セル100のX軸方向の位置合わせ(S43)を行う。筐体120が直方体形状を維持しているため、正確な位置合わせを行うことができる。ここで、治具500の第1部材510および第2部材520の表面には押さえ部材510A,520Aが各々設置されている。
【0047】
複数の電池セル100のX軸方向の位置合わせが行われた後、
図21に示すように、治具500の第2部材が矢印X2方向に移動して幅方向(X軸方向)の規制力が解除される(S44)。
【0048】
図22は、過圧縮(2回目)の工程(S50)を示す図である。
図23は、「拘束部」となるケース本体710を示す図である。
図24は、拘束部としてのケース700配置の工程(S60)を示す図である。
図26は、過圧縮(2回目)解除の工程(S70)を示す図である。
【0049】
図22に示すように、2回目の過圧縮工程は、ローラ630A付きの第3部材630により電池セル100の上面を押さえた状態で行われる。
図23に示すように、ケース本体710は、複数の電池セル100を把持した状態で治具400Aを挿入可能な凹部710Aを有する。
図24に示すように、過圧縮状態を維持したまま、治具400Aを凹部710Aに挿入する。これにより、電池セル100およびエンドプレート200Aの積層体の両端側に「拘束部」としてのケース本体710が配置される。この状態から、治具400AをZ軸方向(
図24の紙面に垂直な方向)に移動させ、過圧縮状態を解除することにより、電池セル100およびエンドプレート200Aの積層体の軸長が拡大し、ケース本体710の壁面により積層方向に拘束される。
【0050】
図26,
図27は、電池セル100に残される痕跡を説明する図である。
図26に示すように、電池セル100の積層体は、薄型のエンドプレート200Aを介して治具400Aにより、2回にわたって過圧縮される。したがって、電池セル100の積層方向の表面に、治具400Aの形状に対応した凹部100Bが形成される。
【0051】
図28は、電池セル100のばね定数の特性を示す概念図である。
図28に示すように、電池セル100は、スタック長が小さくなるに従って、セル反力-スタック長の傾き(電池セル100の「ばね定数」)が大きくなる特性を有する。
【0052】
「スタック長ばらつき」を考慮した電池セル100の「ばね定数」の2本の曲線(
図28中の2本の破線)の間に位置する部分(
図28中の「A」)が「拘束荷重許容範囲」の中に収まるように「拘束部内寸」の長さが設定される。
【0053】
図29は、時間の経過とセル反力およびセル厚みとの関係の一例を示す図である。
図29に示すように、1回目の過圧縮工程(S30)において、セル反力10の上昇に伴い、セル厚み20は低減する。その後、複数の電池セル100の位置合わせを行う工程(S40)において過圧縮を解除する(S42)と、一定の時間を掛けてセル厚み20は増大する。この間に複数の電池セル100のX軸方向の位置合わせ(S43)を行うことが可能である。その後、2回目の過圧縮工程(S50)において、セル反力10の上昇に伴い、セル厚み20は低減する。これにより、拘束部材300ないしケース本体710の配置が可能となる。
【0054】
本実施の形態に係る組電池1の製造方法によれば、1回目の過圧縮工程(S30)の後、圧縮力を解除した状態で電池セル100のX軸方向の位置合わせを行うことにより、X軸方向の位置合わせを正確に行うことができる。また、電池セル100の上面を押さえた状態で1回目および2回目の過圧縮工程を(S30,S50)を実施するため、Z軸方向の位置合わせも正確に行われる。したがって、Y軸方向に加えて、X軸方向およびZ軸方向における複数の電池セル100の位置合わせが正確に行われた組電池1を得ることができる。三軸方向において複数の電池セル100の位置合わせが正確に行われることにより、複数の電池セル100間のバスバー接合を安定して確実に行うことができる。
【0055】
なお、1回目および2回目の過圧縮工程(S30,S50)は、必ずしも電極体が変形する過圧縮状態に達している必要はなく、過圧縮に近い状態であって、電池セル100のX軸方向の位置合わせを行う間だけ、セル厚みが低減された時間を確保することができるものであれば、本技術の範囲に含まれ得る。
【0056】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 組電池、2 電池パック、100 電池セル、100A,100B 凹部、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、200,200A エンドプレート、300 拘束部材、400,400A,500,600 治具、510,610 第1部材、510A 押さえ部材、520,620 第2部材、520A 押さえ部材、630 第3部材、630A ローラ、700 ケース、710 ケース本体、710A 凹部、720 蓋部材、800 熱伝導材。