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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】電池制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20230704BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/48 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021064063
(22)【出願日】2021-04-05
(62)【分割の表示】P 2018535526の分割
【原出願日】2017-07-19
(65)【公開番号】P2021114901
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2016163530
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山添 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】坂部 啓
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156264(WO,A1)
【文献】特開2014-197345(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072002(WO,A1)
【文献】特開2011-176481(JP,A)
【文献】特開2011-205455(JP,A)
【文献】特開昭48-086419(JP,A)
【文献】特開2006-072663(JP,A)
【文献】特開2016-042447(JP,A)
【文献】特表2013-530580(JP,A)
【文献】特開昭60-132443(JP,A)
【文献】特開2013-066065(JP,A)
【文献】特開昭57-148439(JP,A)
【文献】特開2012-222913(JP,A)
【文献】特開2010-146991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の状態を取得する複数のセルコントローラからなるセルコントローラ群を複数備え、
複数の前記セルコントローラ群と無線通信するバッテリコントローラと、
複数の前記セルコントローラ群と無線通信する無線通信用の複数のバッテリコントローラ用アンテナと、を有し、
前記セルコントローラ群は、前記電池の状態を取得する複数の前記セルコントローラおよび前記セルコントローラに設けられた無線通信用のセルコントローラアンテナを有し、
前記バッテリコントローラは、無線通信対象である前記セルコントローラ群に応じて無線通信に使用する複数の前記バッテリコントローラ用アンテナを時分割で順番に切り替えるアンテナ選択手段を有し、
前記セルコントローラ群は、電波を送出している前記バッテリコントローラ用アンテナを識別し、送出している前記バッテリコントローラ用アンテナが当該セルコントローラ群のために使用するものであった場合にのみ前記バッテリコントローラと通信すると共に
複数の前記セルコントローラ群は、第1セルコントローラ群および第2セルコントローラ群を含み、
複数の前記バッテリコントローラ用アンテナは、前記第1セルコントローラ群と無線通信する第1バッテリコントローラ用アンテナと、前記第2セルコントローラ群と無線通信する第2バッテリコントローラ用アンテナを含み、
前記アンテナ選択手段は、前記バッテリコントローラと、前記第1バッテリコントローラ用アンテナおよび前記第2バッテリコントローラ用アンテナとの間の接続を切り替えるスイッチを有し、
前記バッテリコントローラと前記第1セルコントローラ群とを通信する場合は、前記スイッチを前記第1バッテリコントローラ用アンテナと接続することにより、前記第1セルコントローラ群の前記セルコントローラが、前記バッテリコントローラから前記第1バッテリコントローラ用アンテナの識別子を含む無線データを受信した場合のみ、前記第1バッテリコントローラ用アンテナを介して前記第1セルコントローラ群の前記セルコントローラと前記バッテリコントローラと無線通信し、
前記バッテリコントローラと前記第2セルコントローラ群とを通信する場合は、前記スイッチを前記第2バッテリコントローラ用アンテナと接続することにより、前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラが、前記バッテリコントローラから前記第2バッテリコントローラ用アンテナの識別子を含む無線データを受信した場合のみ、前記第2バッテリコントローラ用アンテナを介して前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラと前記バッテリコントローラと無線通信する
ことを特徴とする電池制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記バッテリコントローラは、前記スイッチを前記第1バッテリコントローラ用アンテナに接続する状態と、前記スイッチを前記第2バッテリコントローラ用アンテナに接続する状態とを時分割で切り替えることにより、前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群と時分割で無線通信することを特徴とする電池制御システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記バッテリコントローラは、前記第1セルコントローラ群と無線通信する場合は、前記第1バッテリコントローラ用アンテナの識別子を含む通信データを前記第1バッテリコントローラ用アンテナ経由で発信し、
前記バッテリコントローラは、前記第2セルコントローラ群と無線通信する場合は、前記第2バッテリコントローラ用アンテナの識別子を含む通信データを前記第2バッテリコントローラ用アンテナ経由で発信する
ことを特徴とする電池制御システム
【請求項4】
請求項2において、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、電源がONされると前記バッテリコントローラからの無線通信を待機する受信待機モードに移行し、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、前記受信待機モードにおいて受信した前記バッテリコントローラからの無線通信に対して返信した後は、前記受信待機モードよりも消費電力が小さい動作モードを所定時間だけ継続し、前記所定時間が経過すると改めて前記受信待機モードに移行する
ことを特徴とする電池制御システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、電源がONされると前記バッテリコントローラが送信する無線電波の受信強度を測定する受信強度測定モードに移行し、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、前記受信強度が所定閾値以上である場合は、前記バッテリコントローラからの無線通信を待機する受信待機モードに移行し、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、前記受信待機モードにおいて受信した前記バッテリコントローラからの無線通信に対して返信した後は、前記受信強度測定モードに戻る
ことを特徴とする電池制御システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、前記受信強度測定モードにおいては、前記受信待機モードにおいて用いる電子部品よりも消費電力が小さい電子部品を用いて動作するように構成されている
ことを特徴とする電池制御システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記バッテリコントローラは、前記第1バッテリコントローラ用アンテナおよび前記第2バッテリコントローラ用アンテナを介して無変調搬送波を送信し、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、前記無変調搬送波に対する反射波を利用して前記バッテリコントローラと無線通信する
ことを特徴とする電池制御システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、変調スイッチをON/OFFすることにより前記無変調搬送波に対して振幅変調を施す変調部を備え、
前記バッテリコントローラは、前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラに対して応答を要求するコマンドを送信した後、前記無変調搬送波を送信し、
前記第1セルコントローラ群および前記第2セルコントローラ群の前記セルコントローラは、前記バッテリコントローラから前記コマンドを受け取ると、前記変調部による前記振幅変調を開始する
ことを特徴とする電池制御システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記第1バッテリコントローラ用アンテナは、前記第1セルコントローラ群の複数のセルコントローラと無線通信し、
前記第2バッテリコントローラ用アンテナは、前記第2セルコントローラ群の複数のセルコントローラと無線通信し、
前記第1セルコントローラ群に属する各セルコントローラは、前記第1セルコントローラ群に属する他のセルコントローラと重ならないようにあらかじめ割り当てられた時間スロットを用いて、前記第1バッテリコントローラ用アンテナと無線通信し、
前記第2セルコントローラ群に属する各セルコントローラは、前記第2セルコントローラ群に属する他のセルコントローラと重ならないようにあらかじめ割り当てられた時間スロットを用いて、前記第2アバッテリコントローラ用ンテナと無線通信する
ことを特徴とする電池制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、地球環境問題が大きくクローズアップされる中、地球温暖化防止のため、あらゆる場面で炭酸ガスの排出削減が求められている。炭酸ガスの大きな排出源となっているガソリンエンジン自動車については、ハイブリッド電気自動車や電気自動車などへの代替が始まっている。
【0003】
ハイブリッド電気自動車や電気自動車の動力用電源に代表される大型2次電池は、高出力、大容量であることが必要である。そのため、大型2次電池を構成する蓄電池モジュールは、複数の電池(以降、セルと言う)を直並列接続することにより構成される。また2次電池であるリチウムイオン電池は、高電圧充電の防止や過放電による性能低下を適切に防止することが必要である。そこで、ハイブリッド電気自動車や電気自動車に搭載される蓄電池モジュールは、電池の状態である電圧、電流、温度などを検出する機能を備えている。
【0004】
電池制御システムは一般に、セルコントローラ(CC)とバッテリコントローラ(BC)を有する。1つのCCは、1以上のセルの電池状態を計測する。BCは、各CCからセルの電池状態を取得し、その結果に基づき充電状態(SOC:State of Charge)や電池劣化状態(SOH:State of Health)を演算する。BCは演算結果を上位のコントローラなどに対して通知する。
【0005】
特許文献1は、電池制御システムの構成を開示している。同文献においては、CCとBCとの間を無線通信により接続することにより、配線コスト、高電圧対策のための絶縁コスト、組み立てコストなどを低減することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-135762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の技術においては、1つのBCが複数のCCと無線通信する。そのため、CCの台数が増加すると、1つのBCのみでは通信性能が不足する可能性がある。そこで、CC台数の増加に合わせてBC台数も増加させることが考えられる。しかしBC台数を増加させると、電池制御システムのコストも増大してしまう。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、CC台数が増加してもBC台数の増加を抑制することにより、電池制御システムのコストを抑えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電池制御システムは、セルコントローラまたはそのグループごとにアンテナを備える。バッテリコントローラは、スイッチによりアンテナを切り替えて各セルコントローラまたはそのグループと無線通信する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電池制御システムによれば、セルコントローラの台数が増えたとしても、アンテナの増設とスイッチの変更によって対処することができる。これにより、バッテリコントローラの増加を抑制することができるので、電池制御システムのコスト増加を抑えることできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る電池制御システム1の構成図である。
図2】セルコントローラ100とバッテリコントローラ200との間の接続を説明する図である。
図3】セルコントローラ100の構成図である。
図4】バッテリコントローラ200の構成図である。
図5】バッテリコントローラ200とセルコントローラ100との間の通信手順を説明するタイムチャートである。
図6】セルコントローラ100の間欠動作を説明するタイムチャートである。
図7】実施形態2におけるセルコントローラ100の間欠動作を説明するタイムチャートである。
図8】実施形態2におけるセルコントローラ100の構成図である。
図9】セルコントローラ100が反射波を用いて応答する構成例を示す図である。
図10】実施形態3におけるバッテリコントローラ200とセルコントローラ100との間の通信手順を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る電池制御システム1の構成図である。電池制御システム1は、セル10を制御するシステムである。電池制御システム1は、リレーボックス410を介して、セル10が供給する電力をインバータ430へ供給する。インバータ430は、モータ440を駆動制御する。ハイブリッドコントローラ420は、電池制御システム1を含むシステム全体を制御する上位コントローラである。
【0013】
電池制御システム1は、セルコントローラ(CC)100とバッテリコントローラ(BC)200を備える。セルコントローラ100は、1以上のセル10を有するセルグループと接続され、そのセルグループに属する各セル10の状態を計測する。セルグループが複数ある場合は、セルグループごとにセルコントローラ100を配置する。バッテリコントローラ200は、各セルコントローラ100からセル10の状態を取得する。セルコントローラ100とバッテリコントローラ200との間は、図2で説明する無線通信によって接続される。
【0014】
図2は、セルコントローラ100とバッテリコントローラ200との間の接続を説明する図である。図2において、第1セルコントローラ(CC1)~第5セルコントローラ(CC5)は第1セルコントローラグループを形成し、第6セルコントローラ(CC6)~第10セルコントローラ(CC10)は第2セルコントローラグループを形成しているものとする。以下では記載の便宜上、セルコントローラグループは2つのみであるものとするが、3以上のセルコントローラグループが存在する場合も同様の構成を採用することができる。
【0015】
電池制御システム1は、セルコントローラグループごとにアンテナを備える。図2においては、アンテナ321は第1セルコントローラグループに属する各セルコントローラと無線通信し、アンテナ322は第2セルコントローラグループに属する各セルコントローラと無線通信する。バッテリコントローラ200は、アンテナ321を介して第1セルコントローラグループに属する各セルコントローラと無線通信し、アンテナ322を介して第2セルコントローラグループに属する各セルコントローラと無線通信する。
【0016】
電池制御システム1は、スイッチ310を備える。スイッチ310は、アンテナ321と322のいずれかとバッテリコントローラ200との間の接続を切り替える。バッテリコントローラ200は、スイッチ310を切り替えることにより、いずれのセルコントローラグループと無線通信するかを切り替えることができる。
【0017】
通信電波強度を考慮すると、アンテナ321は第1セルコントローラグループの近傍に設置することが望ましく、アンテナ322は第2セルコントローラグループの近傍に設置することが望ましい。
【0018】
図3は、セルコントローラ100の構成図である。セルコントローラ100は、セル10またはその近傍に取り付けられたセンサ20からセル10の状態(電圧、電流、温度など)を取得する。セルコントローラ100は、プロセッサ130、無線回路140、アンテナ150を備える。無線回路140は、アンテナ150を介してアンテナ321または322と無線通信する。
【0019】
プロセッサ130は、電源回路131、アナログ/デジタル変換回路(ADC)132、CPU(Central Processing Unit)133、メモリ134、クロック発生器135を備える。電源回路131は、セル10から電力を受け取り、これを用いて動作電圧VccとVddを出力する。ADC132は、センサ20が出力する計測信号をデジタルデータに変換する。CPU133は、ADC132の出力を取得し、無線回路140を介してこれを無線送信する。メモリ134は、後述するアンテナIDなどのデータを記憶する記憶装置である。クロック発生器135は、数MHz程度の高速クロックと数十kHz程度の低速クロックを切り替えて発振することができる。
【0020】
CPU133は、無線回路140が受け取った通信データに基づき、例えば以下の処理を実施する:(a)セルコントローラ100が備える各回路のオン/オフ、(b)クロック発生器135が発振するクロック周波数の切り替え、(c)メモリ134に対するリード/ライト、(d)バッテリコントローラ200から受け取った指示の実施。
【0021】
図4は、バッテリコントローラ200の構成図である。バッテリコントローラ200は、無線回路210、CPU220、電源回路230、メモリ240を備える。スイッチ310とアンテナ321~322は、バッテリコントローラ200の構成要素としてもよいしバッテリコントローラ200とは別に設けてもよい。
【0022】
無線回路210は、スイッチ310とアンテナ321~322を介して、セルコントローラ100と無線通信する。電源回路230は、バッテリコントローラ200が備えるバッテリまたは外部バッテリから電力供給を受け、これを用いて動作電圧VccとVddを出力する。メモリ240は、後述するアンテナIDなどのデータを記憶する記憶装置である。CPU220は、無線回路210を介して無線通信することにより、セルコントローラ100に対して指示を送信し、またはセルコントローラ100からセル10の状態についての計測結果を受け取る。
【0023】
バッテリコントローラ200は、スイッチ310を時分割で切り替えることにより、各セルコントローラグループとの間で時分割に無線通信する。さらにセルコントローラグループ内に2以上のセルコントローラが属する場合、バッテリコントローラ200と各セルコントローラは、あらかじめ割り当てられた時間スロットを用いて、通信が互いに競合しないように時分割で無線通信する。以下その具体的手順を説明する。
【0024】
図5は、バッテリコントローラ200とセルコントローラ100との間の通信手順を説明するタイムチャートである。ここでは図2に示すように、CC1~CC5が第1セルコントローラグループを形成し、CC6~CC10が第2セルコントローラグループを形成しているものとする。以下図5を用いて、コントローラ間の通信手順について説明する。
【0025】
バッテリコントローラ200は、スイッチ310をアンテナ321と接続し、アンテナ321を介して、セル10の状態を送信するよう要求するコマンドをブロードキャスト送信する。バッテリコントローラ200は、そのコマンドのなかに、アンテナ321の識別子(アンテナID)を記述しておく。
【0026】
第1セルコントローラグループに属するCC1~CC5は、あらかじめメモリ134が格納しているアンテナIDと、バッテリコントローラ200から受信したアンテナIDとを比較する。両者が一致した場合、CC1~CC5は、バッテリコントローラ200が送信したコマンドに対する返信として、セル10の状態を記述した通信データを送信する。
【0027】
複数のCCがセルコントローラグループに属する場合、あらかじめ各セルコントローラに対して時間スロットを割り当てておき、各セルコントローラは自身に割り当てられた時間スロットにおいてバッテリコントローラ200へ通信データを送信する。図5に示す例においては、CC1から順に所定の時間スロットにおいてバッテリコントローラ200と無線通信する。バッテリコントローラ200は、各セルコントローラから通信データを受信する。
【0028】
アンテナ321の位置や電波強度によっては、CC6~CC10もバッテリコントローラ200からのコマンドを受信する場合がある。ただしCC6~CC10は後述するようにメモリ134内にアンテナ322のIDを保持しているので、この時点においてはバッテリコントローラ200からのコマンドに対して応答しない。
【0029】
バッテリコントローラ200は、CC1~CC5に対して割り当てられている時間スロットが全て経過すると、スイッチ310をアンテナ322と接続する。バッテリコントローラ200は、アンテナ322を介して、セル10の状態を送信するよう要求するコマンドをブロードキャスト送信する。バッテリコントローラ200は、そのコマンドのなかに、アンテナ322の識別子(アンテナID)を記述しておく。
【0030】
第2セルコントローラグループに属するCC6~CC10は、あらかじめメモリ134が格納しているアンテナIDと、バッテリコントローラ200から受信したアンテナIDとを比較する。両者が一致した場合、CC6~CC10は、バッテリコントローラ200が送信したコマンドに対する返信として、セル10の状態を記述した通信データを送信する。以下の動作は第1セルコントローラグループと同様である。
【0031】
図6は、セルコントローラ100の間欠動作を説明するタイムチャートである。ここでは図2に示すように、CC1~CC5が第1セルコントローラグループを形成し、CC6~CC10が第2セルコントローラグループを形成しているものとする。以下図6を用いて、セルコントローラ100の間欠動作について説明する。
【0032】
セルコントローラ100は、電源がONされると受信待機モードとなり、バッテリコントローラ200からセル状態を送信するよう要求するコマンドを待ち受ける。セルコントローラ100は、バッテリコントローラ200から同コマンドを受け取ると、セル状態を送信する時間スロットを決定し、その時間スロットを用いてバッテリコントローラ200に対して返信する。セルコントローラ100はさらに、バッテリコントローラ200からセル状態を送信するよう要求するコマンドを受け取る次回タイミングをセットし、そのタイミングまではスリープモード(受信待機モードやセル状態を送信する動作モードよりも消費電力が小さい動作モード)に移行する。
【0033】
次回タイミングは、電池制御システム1が備えるセルコントローラ100の台数に応じて変わる。例えばセルコントローラ100の台数に応じて適当な値をあらかじめメモリ134に格納しておき、CPU133はその値を次回タイミングとしてセットすることができる。
【0034】
セルコントローラ100は、先にセットした次回タイミングに到達すると、改めて受信待機モードに移行する。以後の動作は、セルコントローラ100の電源がONされたときと同様である。
【0035】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る電池制御システム1は、セルコントローラグループごとにアンテナを備え、バッテリコントローラ200はスイッチ310を用いてアンテナを切り替えることにより、特定のセルコントローラグループを通信先として選択する。これにより、セルコントローラ100の台数が増えても、バッテリコントローラ200の台数増加を抑制しつつバッテリコントローラ200と各セルコントローラ100との間の通信を確保することができる。
【0036】
<実施の形態2>
実施形態1では、セルコントローラ100の消費電力を抑制する動作手順として、次回受信タイミングまでスリープモードに移行することを説明した。本発明の実施形態2ではセルコントローラ100の消費電力を抑制するその他の動作手順を説明する。
【0037】
図7は、本実施形態2におけるセルコントローラ100の間欠動作を説明するタイムチャートである。ここでは図2に示すように、CC1~CC5が第1セルコントローラグループを形成し、CC6~CC10が第2セルコントローラグループを形成しているものとする。以下図7を用いて、セルコントローラ100の間欠動作について説明する。
【0038】
セルコントローラ100は、電源がONされると、受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を測定する動作モードに移行する。バッテリコントローラ200がアンテナ321を選択し、セル状態を送信するよう要求するコマンドを送信すると、CC1~CC5における受信強度が高くなる。セルコントローラ100は、受信強度があらかじめ定めた閾値以上になると受信待機モードに移行する。ここではCC1~CC5が受信待機モードに移行することになる。以後の動作は実施形態1と同様である。
【0039】
バッテリコントローラ200は、セルコントローラ100を受信待機モードに移行させるため、例えばコマンドを送信する時間スロットの最初の所定期間(例えば1ms)は空の通信データを送信してもよい。この所定期間としては、セルコントローラ100が受信強度測定モードから受信待機モードに移行するために充分な時間を適宜確保すればよい。
【0040】
CC6~CC10も、電源がONされると受信強度を測定する動作モードに移行する。ただしバッテリコントローラ200がアンテナ321を選択している場合は受信強度が閾値以上に達しないので、受信待機モードに移行しない。CC6~CC10は、バッテリコントローラ200がアンテナ322を選択してコマンドを送信した時点で、受信待機モードに移行する。
【0041】
図8は、本実施形態2におけるセルコントローラ100の構成図である。実施形態1で説明した構成については記載を省略した。検波部161は、アンテナ150が受信した無線電波をLNA(ローノイズアンプ)162によって増幅し、ミキサ163を用いて検波する。これに対し受信強度検出部164は、ダイオードやコンデンサなどのパッシブ部品によって受信強度を検出することができる。これらパッシブ部品は一般に、検波部161が備える電子部品よりも消費電力が小さい。したがってセルコントローラ100は、受信強度測定モードにおいては、バッテリコントローラ200と無線通信する動作モードよりも消費電力を小さくすることができる。
【0042】
<実施の形態3>
実施形態1~2において、セルコントローラ100がバッテリコントローラ200からのコマンドに対して応答する際に、バッテリコントローラ200が送信する無変調搬送波に対する反射波を用いて応答を送信することもできる。本発明の実施形態3では、そのための構成について説明する。
【0043】
図9は、セルコントローラ100が反射波を用いて応答する構成例を示す図である。図9において、アンテナ150の特性を等価回路141によって表すことができるものとする。アンテナ150は、バッテリコントローラ200から無変調搬送波を受け取ると、バッテリコントローラ200に対して反射波を送信するように構成されている。無線回路140はスイッチ142を備え、スイッチ142をON/OFFすることにより、無変調搬送波に対して振幅変調を施すことができる。この振幅変調により、バッテリコントローラ200から受け取ったコマンドに対する応答データを表すことができる。
【0044】
図10は、本実施形態3におけるバッテリコントローラ200とセルコントローラ100との間の通信手順を説明するタイムチャートである。ここでは図2に示すように、CC1~CC5が第1セルコントローラグループを形成し、CC6~CC10が第2セルコントローラグループを形成しているものとする。以下図10を用いて、コントローラ間の通信手順について説明する。
【0045】
バッテリコントローラ200は、各セルコントローラ100に対して、セル10の状態を送信するよう要求するコマンドを送信する。バッテリコントローラ200は、コマンドを送信した後、無変調搬送波を連続的に発信する。
【0046】
セルコントローラ100は、バッテリコントローラ200からコマンドを受け取ると、自身に割り当てられた時間スロットに到達するまで待機する。セルコントローラ100はその時間スロットに到達すると、スイッチ142を動作させることにより振幅変調を実施する。このときバッテリコントローラ200が無変調搬送波を送信している場合、スイッチ142によってその無変調搬送波に対して振幅変調が施された上で、反射波としてバッテリコントローラ200に対して送信される。セルコントローラ100は、この振幅変調により、バッテリコントローラ200から要求されたデータ(例えばセル10の状態を記述したデータ)を返信することができる。
【0047】
<実施の形態3:まとめ>
本実施形態3に係る電池制御システム1において、セルコントローラ100は、無変調搬送波に対する反射波を利用してバッテリコントローラ200に対して応答することにより、送信時の消費電力を抑制することができる。
【0048】
<本発明の変形例について>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について他の構成の追加・削除・置換をすることができる。
【0049】
以上の実施形態において、バッテリコントローラ200はセルコントローラ100に対してコマンドを送信する際に、アンテナ321~322のIDを送信データ内に含めることを説明した。このIDは、セルコントローラ100がコマンドを受け取ったときそのコマンドが自身に宛てたものであるか否かを判断するためのものであるので、その判断をすることができるのであれば必ずしもアンテナ321~322のIDでなくともよい。
【符号の説明】
【0050】
1:電池制御システム,10:セル,100:セルコントローラ,130:プロセッサ,140:無線回路,150:アンテナ,200:バッテリコントローラ,210:無線回路,220:CPU,230:電源回路,240:メモリ,310:スイッチ,321~322:アンテナ。
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