(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20230704BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B3/00 K
(21)【出願番号】P 2021175003
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2021-10-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【氏名又は名称】福屋 好泰
(72)【発明者】
【氏名】端 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋平
(72)【発明者】
【氏名】阿部 航也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 捺未
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142686(JP,A)
【文献】特開2023-41431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ用かごの行先階登録を行うための操作を非接触で操作可能に構成されたエレベータであって、
前記操作を非接触で検出するように構成された操作部と、
前記操作に基づいて報知を行う機能を有する報知部と、
前記行先階登録に基づいて前記かごの運行を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記操作部によって前記操作が検出されてから予め設定された時間が経過したタイミングで所定の報知態様により前記報知部に報知を実行させるとともに、前記報知の実行開始から所定時間が経過するまでの間に前記操作が検出される検出状態から前記操作が検出されない非検出状態に前記操作部の検出状態が変化することを条件として前記行先階登録を受け付けることを特徴とする、
エレベータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記予め設定された時間が経過するまでの間、前記操作部の検出状態が非検出状態に変化しないことを条件に前記所定の報知態様による報知を前記報知部に実行させる、
請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記予め設定された時間が経過するまでの間に前記操作部の検出状態が
非検出状態に変化した場合には前記行先階登録を受け付けない、
請求項1または2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定時間が経過しても前記操作部の検出状態が非検出状態に変化していない場合には、前記報知部における報知態様を前記行先階登録が受け付けられた場合における報知態様と異なる報知態様に変化させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記所定の報知態様には、予め設定された報知音を発生させる態様が含まれる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記所定の報知態様には、光を発生させる態様が含まれる、
請求項1から5のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項7】
前記制御部は、前記報知の実行開始から前記所定時間が経過しても前記
操作部の検出状態が継続している場合には前記行先階登録を受け付けない、
請求項1から6のいずれか1項に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに関し、特に、かごの行先階の登録操作に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかご内や乗場には、かご操作盤や乗場操作盤が設置される。かご操作盤や乗場操作盤には、行先階の数字などを表示した行先階釦や上下釦が設けられている。乗客は、例えば、行先階釦を操作することで、昇降路を移動するかごの行先階を登録する。この行先階釦には、押し釦やタッチパネルのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)といった接触式のものが広く採用されている。
【0003】
また、近年では、公共施設等に設置されるエレベータなどにおいて、衛生面への配慮から、かごの行先階登録の操作を非接触で行うことが可能な非接触式の操作盤も導入されつつある。この種の操作盤では、乗客による行先階登録の操作を、光電センサや静電容量式センサなどを用いて非接触で検出することとしている。
【0004】
ところで、非接触でかごの行先階の登録操作を行う場合には、例えば、乗客の荷物などがセンサの検知エリアに偶発的に進入することによって検知され、行先階が過誤登録されてしまうという問題がある。
【0005】
特許文献1には、操作盤に配置された非接触式のセンサが第1の閾値時間まで継続して行先階の登録操作を検知した場合に行先階の登録を一旦受け付けるものの、さらに、第2の閾値時間まで継続してセンサが行先階の登録操作を検知し続けた場合には行先階の登録を解除することで行先階の過誤登録を解除できるようにしたエレベータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のエレベータでは、乗客の操作により行先階登録を解除できるものの行先階の登録が解除される前にかごの行先階への移動が開始される場合もある。このような場合には、乗客が意図しない行先階にかごが移動してしまい運行効率の低下を招くという問題がある。
【0008】
本発明は、かごの行先階を登録するための操作を非接触で操作可能なエレベータにおいて運行効率の低下を抑制できるエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエレベータは、エレベータ用かごの行先階登録を行うための操作を非接触で操作可能に構成されたエレベータであり、操作を非接触で検出するように構成された操作部と、操作に基づいて報知を行う機能を有する報知部と、行先階登録に基づいてかごの運行を制御する制御部と、を備え、制御部は、操作部によって操作が検出されてから予め設定された時間が経過したタイミングで所定の報知態様により報知部に報知を実行させるとともに、報知の実行開始から所定時間が経過するまでの間に操作が検出される検出状態から操作が検出されない非検出状態に操作部の検出状態が変化することを条件として行先階登録を受け付けるものである。
【0010】
ここで、所定の報知態様によって報知がなされると乗客は行先階の登録操作が受け付けられたものと判断して行先階の登録操作をやめるため検出状態から非検出状態に操作部の検出状態が変化する。一方、乗客の身体の一部や荷物などが偶発的に操作部によって検出されている場合には所定の報知態様による報知を行っても検出状態が継続する場合が多くなる。
【0011】
本発明のエレベータにおいて、予め設定された時間が経過するまでの間、操作部の検出状態が非検出状態に変化しないことを条件に所定の報知態様による報知を報知部に実行させてもよい。
【0012】
本発明のエレベータにおいて、制御部は、予め設定された時間が経過するまでの間に操作部の検出状態が非検出状態に変化した場合には行先階登録を受け付けないようにしてもよい。
【0013】
本発明のエレベータにおいて、所定時間が経過しても操作部の検出状態が非検出状態に変化していない場合には、報知部における報知態様を行先階登録が受け付けられた場合における報知態様と異なる報知態様に変化させてもよい。
【0014】
本発明のエレベータにおいて、所定の報知態様には、予め設定された報知音を発生させる態様が含まれてもよい。
【0015】
本発明のエレベータにおいて、所定の報知態様には、光を発生させる態様が含まれてもよい。
本発明のエレベータにおいて、制御部は、報知の実行開始から所定時間が経過しても操作部の検出状態が継続している場合には行先階登録を受け付けないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエレベータによれば、操作が検出されてから予め設定された時間が経過したタイミングで所定の報知態様による報知が実行され、報知が実行されてから所定時間が経過するまでの間に検出状態から非検出状態に操作部の検出状態が変化した場合に行先階登録が受け付けられる。
【0017】
このため、上記報知を実行してから所定時間が経過するまでの間に操作部の検出状態が非検出状態に変化しない場合には行先階登録が受け付けられない。
【0018】
これにより、乗客の身体の一部や荷物などが偶発的に操作部に検出されることにより行先階の登録が受け付けられてしまい乗客が意図していない行先階にかごが移動してしまうといったことが発生する頻度を低減できる。この結果、エレベータの運行効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態であるエレベータの全体構成図である。
【
図2】
図1に含まれる乗りかご内の構成をかご内奥側から正面側を見た状態で示す図である。
【
図3】
図2に含まれる一般利用者用操作盤の全体構成とともに同操作盤の一部構成を拡大して示す図である。
【
図4】
図3に示す延長機能付き操作盤の全体構成を示す図である。
【
図5】一般利用者用操作盤および延長機能付き操作盤を介して行先階の登録操作が行われた場合の制御装置における行先階登録の受付処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1変形例における一般利用者用操作盤の構成を
図3と同様に示す図である。
【
図7】本発明の第2変形例における一般利用者用操作盤の構成を
図3と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態であるエレベータ用操作盤が適用されるエレベータ10について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、図中に示す「X」は駆動シーブ16Aの軸方向と直交する水平方向Xを示し、「Y」は上下方向Yを示し、「Z」は水平方向X,および上下方向Yに各々直交する水平方向Zを示すものとする。
【0021】
図1に示すように、エレベータ10は、昇降路12の最上部に機械室14を有するトラクション式エレベータであって、例えば、病院や介護施設など公共の建物に設置される。機械室14に設置された巻上機16の駆動シーブ16A及びそらせ車16Bには、主ロープ19が掛けられており、この主ロープ19の一端部にかご20が連結され、他端部にカウンターウェイト24が連結されている。
【0022】
巻上機16のモータ(不図示)からの回転動力が、動力伝達機構(不図示)を介して駆動シーブ16Aに伝達され、駆動シーブ16Aが回転駆動されるとこれに伴って主ロープ19が走行し、主ロープ19に吊り下げられたかご20が、ガイドレール(不図示)に案内されて昇降路12を昇降する。
【0023】
エレベータ10が設置された建物には、異なる階毎に乗場26A,26B,…,26H(以下、特に区別する必要が無い場合は適宜「乗場26」と表記)が設けられており、エレベータ10の運転中、かご20は、現在、着床している階の乗場(
図1では、乗場26H)から、次の行先階の乗場(例えば、乗場26B)までの昇降移動を繰り返す。
【0024】
図2は、かご20内の構成を示す図である。
図3は、一般利用者用操作盤30の構成を示す正面図である。
図3において、後述する非接触式操作領域を1点鎖線で示している。
図2および
図3に示すように、かご20の乗降口側の袖壁20-1に一般利用者用操作盤30が設けられている。また、乗りかご20の左右両側面を構成する側壁20-2,20-3には、延長機能付き操作盤50,60が設置されている。
【0025】
一般利用者用操作盤30は、エレベータ10を利用する一般の乗客が操作することを想定して設置された略縦長長方形状の外観形状を有する操作盤である。同操作盤30は、
図3に示すように、かご20の行先階を決定するための登録操作を非接触で行う機能を有する非接触式操作領域31が中央部に設けられている。
【0026】
非接触式操作領域31には、非接触で行先階登録の操作を検出する複数のセンサ部(操作部)32A,32B,…,32H(以下、特に区別する必要が無い場合には適宜、センサ部「32」と表記)が設けられている。センサ部32A,32B,…,32Hの各々は、1階から8階の各乗場26A,26B,…,26Hに対応している。本例は、1階から8階が行先階となり得る構成になっており、例えば、センサ部32Bは2階を行先階として決定するための操作を行う役割を有する。
【0027】
各センサ部32は、照射した光が物体によって遮られるのを検出する、すなわち、遮光を検出するセンサであり、一例として、投光器と受光器からなる反射型光電センサによって構成される。この反射型光電センサは、投光器から光を照射し、受光器が受光する物体からの反射光の受光量に基づいて物体の有無を検出する。本例では、受光器側の受光量(センサの感度)を調整し、検出距離を非接触式操作領域31から例えば5cm程度の範囲内となるように設定している。反射型光電センサが物体を検出すると、後述する制御装置(制御部)72(
図1参照)に検出信号が送信される。本実施形態では、遮光を検出する光電センサを各センサ部32として用いているが、静電容量式などの近接センサを用いてもよい。
【0028】
各センサ部32の左側に、対応する階を示す数字を模した形状に発光可能に構成された階数表示部(報知部)33A,33B,…,33H(以下、特に区別する必要が無い場合は適宜、階数表示部「33」と表記)が設けられている。さらに、非接触式操作領域31には、左右方向(水平方向Z)において隣接し互いに同じ行先階に対応するセンサ部32および階数表示部33の組合せ毎に区切るようにL字の区切り線表示部(報知部)37A,37B,…,37H(以下、特に区別する必要が無い場合は区切り線表示部「37」と表記)が設けられている。階数表示部33および区切り線表示部37の各々は透光性部材を含み同部材の裏側に格納されたランプ(不図示)が発光することにより点灯状態となるように各々構成される(
図3では、ハッチングを付して2階に対応する階数表示部33B,区切り線表示部37Bが点灯した状態を模式的に示している)。なお、各センサ部32には、乗客の操作を誘導するためのマークが表示されている。
【0029】
図3に示すように、非接触式操作領域31の下部には、かご扉22A,22B(
図2参照)の開閉操作を行う開ボタン38と閉ボタン40が並設されている。また、非接触式操作領域31の上部には、外部との連絡を行うための連絡ボタン42が設けられている。なお、これらのボタン38,40,42は、何れも、従来公知の押しボタンであるが、上記したセンサ部32と同様に、非接触式の操作部を採用することとしても構わない。
【0030】
一般利用者用操作盤30は、さらに、案内表示部44が設けられている。案内表示部44は、例えば、液晶ディスプレイからなり、例えば、かご20の移動(昇降)方向やかご20の通過階、その他乗客に報知する情報を表示する。案内表示部44は、非接触式操作領域31よりもさらに上方の乗客から見やすい高い位置に設けられている。一般利用者用操作盤30には、また、音声を出力するスピーカ(報知部)SPが内蔵されている。
【0031】
一方、
図2に示す延長機能付き操作盤50,60は、例えば、車椅子の利用者や、身体障害者など体の不自由な利用者、妊婦、子供連れの利用者など一般の利用者よりも乗降に時間を要する利用者が行先階登録の操作を行うことを想定した操作盤であり、一般利用者用操作盤30のように縦長ではなく横長に構成され、車椅子の利用者でも操作しやすいようにやや低い位置に設置される。また、延長機能付き操作盤50,60は、同操作盤50,60を介して行先階登録の操作が後述する制御装置72(
図1参照)に受け付けられると同行先階において、例えば、かご扉22A,22Bの戸閉速度が低速となる、或いは、かご扉22A,22Bが戸開し始めてから完全に戸閉するまでの時間、換言すると戸開時間が延長されるように設定される。
【0032】
続いて、延長機能付き操作盤50,60の構成について
図4を用いて説明を行う。
図4は、延長機能付き操作盤60の構成を示す図である(
図4では、ハッチングを付して2階に対応する階数表示部63Bが点灯した状態を模式的に示している)。
図4において、非接触式操作領域を1点鎖線で示している。両操作盤50,60の機能および構成は同一であるため、以下の説明では、延長機能付き操作盤60について主に説明を行うとともに、延長機能付き操作盤50については適宜説明を省略する。
【0033】
図4に示すように、延長機能付き操作盤60は、非接触式操作領域31と同様の機能を有する非接触式操作領域61を中央部に有する。非接触式操作領域61には、各センサ部32A,32B,…,32Hと同一の機能および構成を有するセンサ部(操作部)62A,62B,…,62H(以下、特に区別する必要が無い場合には適宜、センサ部「62」と表記)が水平方向Xに等間隔で並んで配置されており、各センサ部62の直上方に各階数表示部33A,33B,…,33Hと同一の機能および構成を有する階数表示部(報知部)63A,63B,…,63H(以下、特に区別する必要が無い場合には適宜、階数表示部「63」と表記)が各々設けられている。
【0034】
また、各センサ部62の直下方には、上述した連絡ボタン42と同様の機能を有する連絡ボタン65と、上述した開ボタン38および閉ボタン40と同様の機能を有する開ボタン66および閉ボタン67が各々設けられている。また、非接触式操作領域61の上部には、案内表示部44と同様の機能を有する案内表示部64が設けられている。
【0035】
上記構成からなる一般利用者用操作盤30および延長機能付き操作盤60は、機械室14(
図1参照)に設置された制御装置72(
図1参照)と電気的に接続されている。制御装置72は、行先階登録の状況に基づいてかご20の運行制御を行うコンピュータであり、CPU、メモリなどを備える。メモリには、例えば、巻上機16の駆動制御、かご扉22A,22Bの開閉制御や、各操作盤30,60の階数表示部33,63や区切り線表示部37の点灯状態を制御するための各種制御プログラムが格納されている。CPUが、これらのプログラムをメモリから読み出して実行することにより、制御装置72によるエレベータ10の円滑な運転が実現される。
【0036】
そして、エレベータ10では、かご20の行先階登録に関する制御も制御装置72によって行われる。制御装置72のメモリには、かご20の行先階登録に関する制御プログラムが格納されている。制御装置72は、CPUが当該制御プログラムをメモリから読み出し、実行することにより、かご20の行先階登録を制御する。
【0037】
図1に示す制御装置72は、一般利用者用操作盤30および延長機能付き操作盤60から送信される検出信号に基づいてかご20の行先階の登録処理を実行する。具体的には、制御装置72は、各操作盤30,60のセンサ部32,62から上記検出信号が予め設定された時間(例えば、0.5秒)継続して送信されたタイミングで、センサ部32,62に対応する行先階の階数表示部33,63および区切り線表示部37を各々点灯させる報知モードを実行する(所定の報知態様)。本実施形態では、上述のように予め設定された時間の長さを0.5秒としているが、例えば、エレベータ10の利用環境などに応じて0.01秒から0.8秒の範囲の時間の長さに設定すればよく、より好ましくは、0.02秒から0.6秒の範囲の時間の長さに設定すればよい。
【0038】
また、上記予め設定された時間の長さを、一般利用者用操作盤30から検出信号が送信される場合と延長機能付き操作盤60から検出信号が送信される場合とで異なる長さとなるように設定してもよい。より具体的には、一般利用者用操作盤30から検出信号が送信される場合には予め設定された時間を比較的短く設定するとともに、延長機能付き操作盤60から検出信号が送信される場合には予め設定された時間を比較的長く設定することが考えられる。
【0039】
また、上記検出信号が予め設定された時間「継続」して送信されるとは、予め設定された時間が経過するまでの間に上記検出信号が停止していない、すなわち、検出状態から非検出状態にセンサ部32,62の検出状態が変化していないことを意味する。また、上記のように報知モードを実行することにより、行先階登録が受け付けられたと乗客に認識させることができる。
【0040】
さらに、上記のように予め設定された時間だけ検出信号が継続したときに報知モードを実行させることにより偶発的に乗客の身体の一部や手荷物がセンサ部32,62の検出領域を横切った場合に報知モードが不必要に実行されるのを抑制できる。
【0041】
制御装置72は、上記報知モードの実行開始から所定時間(例えば、3秒)が経過するまでの間にセンサ部32,62の検知状態が非検出状態、すなわち、上記検出信号を発信していない状態に変化した場合に行先階登録を受け付ける。上記所定時間の長さは、例えば、エレベータ10の使用環境などに応じて0.9秒から5秒の範囲の時間の長さに設定すればよく、より好ましくは、1秒から4秒の範囲の時間の長さに設定すればよい。なお、センサ部32から検出信号を受信した場合とセンサ部62から検出信号を受信した場合とで所定時間の長さを異なる長さに設定してもよい。
【0042】
ここで、利用者がセンサ部32,62に手をかざすなどして行先階の登録操作を行っている場合には、センサ部32,62に対応する階数表示部33,63および区切り線表示部37の点灯を乗客が視認することにより同操作が受け付けられたと判断し、センサ部32,62に手をかざすのをやめるのが通常である。
【0043】
そのため、上記のように報知モードの実行開始から所定時間が経過するまでの間にセンサ部32,62が非検出状態に変化した場合には行先階登録を受け付けるように構成される。これにより、乗客の意図に沿った行先階登録を円滑に受付処理することができる。
【0044】
一方、偶発的に荷物などがセンサ部32,62によって検出されることにより上記検出信号を制御装置72が受信している場合には上記報知モードの実行開始から所定時間が経過しても検出信号が引き続き検出される場合が多い。
【0045】
そのため、制御装置72は、上記所定時間が経過してもセンサ部32,62の検出状態が継続している場合、換言すると、センサ部32,62が検出状態から非検出状態に変化していない場合には、行先階登録を受け付けないこととしている。これにより、行先階登録の過誤登録を抑制できる。
【0046】
また、制御装置72は、上記報知モードを実行したタイミングから所定時間が経過しても上記検出信号が継続して検出されている場合には、センサ部32,62に対応する階数表示部33,63および区切り線表示部37を消灯させるのが好ましい。このように、行先階登録が受け付けられていることを示唆する点灯状態と異なる報知態様である消灯状態に報知態様を変化させることにより、行先階登録が受け付けられていないことに乗客が認識しやすくなる。
【0047】
また、階数表示部33,63や区切り線表示部37の点灯表示に併せて、或いは、これに代えて、スピーカSPを介して、所定の音や音声を発生させるようにしてもよい。
【0048】
なお、エレベータ10の運転中において階数表示部33,63や区切り線表示部37を行先階登録が受け付けられているか否かに関わらず常時点灯状態とする場合には、予め設定された時間だけ継続してセンサ部32,62から上記検出信号が送信されたタイミングで同信号を送信しているセンサ部32,62に対応する各表示部33,37,63の発光色を他の色に変化させる、或いは、明るさを変化させる、点滅させるなどにより報知態様を異なるものとすればよい。
【0049】
以下、エレベータ10におけるかご20の行先階登録の制御について、延長機能付き操作盤60を介して2階を行先階として登録する場合を例に挙げて、
図5を参照しながら具体的に説明を行う。
図5は、かご20の行先階登録制御の流れを示すフローチャートである。なお、かご20は、現在、最上階である8階の乗場26H(
図1参照)に着床した状態で、かご扉22A,22Bが戸開しているものとする。
【0050】
図5に示すように、制御装置72は、センサ部62Bから検出信号を受信すると、行先階(本例では2階)が登録できる状態か否かを確認する(ステップS1:YES,ステップS2:YES)。ここで、2階を登録できない状態とは、例えば、エレベータ10が運転休止している状態、かご20が2階に着床している状態、すでに2階が行先階登録されている状態などが想定される。一方、各操作盤30,60における複数のセンサ部32B,62Bが同時に遮光を検知している、換言すると、同時に検出信号を発信している場合、すなわち、例えば、複数の乗客が同時に操作を行っていることが想定される場合は登録できる状態として取り扱う。
【0051】
そして、制御装置72は、センサ部62Bから検出信号を受信している状態が予め設定された時間継続されると、上述した報知モードを実行する(ステップS3:YES,ステップS4)。
【0052】
一方、予め設定された時間が経過する前にセンサ部62Bから送信される検出信号が停止した場合には、制御装置72は上記報知モードを実行することなく処理を終了する(ステップS3:NO,ステップS9:YES)。これにより、センサ部62Bの検出領域を偶発的に荷物などが横切るなどした場合に行先階が誤って登録されるのを防止できる。
【0053】
そして、制御装置72は、所定時間の経過前にセンサ部62Bが遮光を検知しない非検知状態に変化することを条件に制御装置72は行先階の登録を受付けて一連の行先階登録の受付処理を終了する(ステップS5:NO,ステップS6:YES,ステップS7)。
【0054】
一方、制御装置72は、所定時間が経過しても上記検出信号を継続して受信している場合には(ステップ5:YES)、センサ部62Bに対応する階数表示部63Bと、階数表示部63Bと同じ行先階に対応する一般利用者用操作盤30の階数表示部33Bおよび区切り線表示部37Bを消灯させる(ステップS8)。このように、行先階登録を受け付けた場合と異なる態様に各表示部33B,37B,63Bの表示態様を変化させることにより、センサ部62Bの検知に基づく行先階登録が受け付けられていないことを乗客に報知できる。そして、制御装置72は、一連の行先階登録の受付処理を終了する。
【0055】
本実施形態では、ステップS2において、複数のセンサ部32,62が同時に遮光を検知している場合には行先階登録ができる状態として取り扱う例をあげているが、複数のセンサ部32,62が同時に検出信号を発信している場合には行先階登録ができない状態であるとして処理してもよい。
【0056】
本実施形態では、制御装置72は報知モードを実行する場合に行先階に対応する階数表示部33,63および区切り線表示部37のすべてを点灯させているが、必ずしも全てを点灯させる必要はない。例えば、各表示部33,37,63のうち検出信号を発信したセンサ部32,62に隣接配置されている表示部のみ点灯させるようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、ステップS3において、制御装置72は、予め設定された時間が経過するまでの間、センサ部32,62から検出信号を継続して受信していることを条件の1つとしてステップS7において行先階の登録を受け付けているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、予め設定された時間が経過するまでの間にセンサ部32,62から検出信号を継続して受信していなくとも、すなわち、制御装置72がセンサ部32,62から検出信号を一旦受信した場合にはその後にセンサ部32,62から検出信号を受信しない非検出状態に変化してもステップS4(
図5参照)に進むものとしてもよい。そして、ステップS4で報知モードを実行してからステップS5に進み所定時間が経過するまでにセンサ部32,62が検出状態から非検出状態に変化することを条件にステップS7(
図5参照)で行先階登録を受け付けるものとしてもよい。
【0058】
本実施形態のエレベータ10によれば、操作が検出されてから予め設定された時間が経過したタイミングで所定の報知態様により報知が実行され、報知が実行されてから所定時間が経過するまでの間に検出状態から非検出状態にセンサ部32,62の検出状態が変化した場合に行先階登録が受け付けられる。
【0059】
このため、上記報知を実行してから所定時間が経過するまでの間にセンサ部32,62の検出状態が非検出状態に変化しない場合には行先階登録が受け付けられない。
【0060】
これにより、乗客の身体の一部や荷物などが偶発的にセンサ部32,62に検出されることにより行先階登録が受け付けられてしまい乗客が意図していない行先階にかご20が移動してしまうといったことが発生する頻度を低減できる。この結果、エレベータ10の運行効率の低下を抑制できる。
【0061】
上記実施形態では、エレベータ10が行先階の操作を非接触で行う機能を有する一般利用者用操作盤30を備える場合を例に挙げて説明しているが、一般利用者用操作盤30に代えて、行先階の操作を非接触式および接触式双方の操作方法で操作可能な一般利用者用操作盤80,90をエレベータ10が備えるようにしてもよい。
【0062】
この場合の第1変形例および第2変形例に係る一般利用者用操作盤80,90の構成について
図6および
図7を参照しつつ説明を行う。以下の説明において、上記実施形態における一般利用者用操作盤30と同一の構成部分については適宜同一の符号を付して示すとともに説明を省略し、構成の異なる部分について主に説明を行うものとする。
【0063】
図6に示すように、一般利用者用操作盤80は、上記実施形態の一般利用者用操作盤30と同様の機能および構成を有し、かご20の行先階を決定する操作を行う機能を有する行先階操作領域80-1が中央部に設けられている。行先階操作領域80-1は、接触式操作部である押釦81A,81B,…,81H(以下、特に区別する必要が無い場合は押釦「81」と表記)と、非接触式のセンサ部(操作部)82A,82B,…,82H(以下、特に区別する必要が無い場合はセンサ部「82」と表記)とが各々隣り合うように上下方向Yに沿って配置される。各センサ部82は、上記実施形態におけるセンサ部32と同一の構成を備え、物体による遮光を検知することにより行先階の登録操作を非接触で実行可能に構成される。左右方向(水平方向Z)に隣接する押釦81とセンサ部82は各々同じ階の乗場26を行先階として登録するための入力操作を行う機能を有する。
【0064】
各押釦81は、乗場26のある各階に対応しており、正面視において円状の外観形状を呈する操作入力部である。本実施形態では、1階から8階が行先階となり得る構成になっており、例えば、押釦81Bは、2階を行先階として決定するための操作を行う役割を有する。
【0065】
また、押釦81は、行先階登録を受け付けたことを利用者に報知する機能も有する。より具体的には、
図6に示すように、押釦81A,81B,…,81Hの正面側平面(主面)部分に行先階を示す数字の形を模した階数表示部(報知部)83A,83B,…,83H(以下、特に区別する必要が無い場合は「階数表示部83」と表記)が設けられている。各階数表示部83は、上記実施形態における階数表示部33とほぼ同一の機能および構成を具備する。なお、
図6では、ハッチングを付して2階に対応する階数表示部83Bが点灯した状態を模式的に示している。また、第1変形例では、接触式操作入力部として押釦81を用いる例を挙げているが、例えば、タッチセンサなどを用いてもよい。
【0066】
この第1変形例に係る一般利用者用操作盤80を上記実施形態における一般利用者用操作盤30の代りに用いる場合にも上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
続いて、第2変形例に係る一般利用者用操作盤90の構成について、
図7を用いて説明を行う。
【0068】
図7に示すように、一般利用者用操作盤90は、上記実施形態の一般利用者用操作盤30と同様の機能および構成を有し、かご20の行先階を決定する操作を行う機能を有する行先階操作領域90-1が中央部に設けられている。行先階操作領域90-1は、接触式操作部である押釦91A,91B,…,91H(以下、特に区別する必要が無い場合は押釦「91」と表記)が上下方向Yに沿って等間隔で配置されている。
【0069】
各押釦91の下部には、各押釦91A,91B,…,91Hと同じ行先階を決定する操作を非接触で操作可能に構成された非接触式のセンサ部92A,92B,…,92H(以下、特に区別する必要が無い場合はセンサ部「92」と表記)が各々内蔵されている。各センサ部92は、上記実施形態におけるセンサ部32と各々同一の構成を具備し、物体による遮光を検知することにより行先階の登録操作を非接触で実行可能に構成される。
【0070】
また、
図7に示すように、各押釦91の上部には、行先階を示す数字の形をした透光性を有する階数表示部93A,93B,…,93H(以下、特に区別する必要が無い場合は「階数表示部93」と表記)が設けられている。各階数表示部93は、上記実施形態における階数表示部33とほぼ同一の機能および構成を具備する。なお、
図7では、ハッチングを付して2階に対応する階数表示部93Bが点灯した状態を模式的に示している。また、第2変形例では、接触式操作入力部として押釦91を用いる例を挙げているが、例えば、タッチセンサなどを用いてもよい。
【0071】
この第2変形例に係る一般利用者用操作盤90を上記実施形態における一般利用者用操作盤30の代りに用いる場合にも上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
上記実施形態では、かご20内に設置される各操作盤30,60,80,90を例に挙げているが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、乗場26に設置される乗場用操作盤に本発明を適用してもよい。
【0073】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0074】
10 エレベータ
26,26A,26B,26H 乗場
30,80,90 一般利用者用操作盤
31,61 非接触式操作領域
32,32A,32B,32H センサ部(操作部)
62,62A,62B,62H センサ部(操作部)
82,82A,82B,82H センサ部(操作部)
92,92A,92B,92H センサ部(操作部)
33,33A,33B,33H 階数表示部(報知部)
63,63A,63B,63H 階数表示部(報知部)
83,83A,83B,83H 階数表示部(報知部)
37,37A,37B,37H 区切り線表示部(報知部)
50,60 延長機能付き操作盤
72 制御装置(制御部)
80-1,90-1 行先階操作領域