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特許7307145情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 51/23 20220101AFI20230704BHJP
   H04L 51/21 20220101ALI20230704BHJP
【FI】
H04L51/23
H04L51/21
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021210163
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2019054575の分割
【原出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2022031421
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102717
【氏名又は名称】NTTテクノクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】飯酒盃 優太
(72)【発明者】
【氏名】黒川 智哉
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-148786(JP,A)
【文献】特開2012-133474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 51/23
H04L 51/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信対象メールの宛先に設定されている複数のメールアドレスのうちの所定の個数の組み合わせ毎に、前記組み合わせに対する特徴量を算出する第1の算出手段と、
前記第1の算出手段が算出した特徴量を用いて、同報が禁止されている可能性があるメールアドレスの組み合わせが前記宛先に設定されていることを示す通知を送信する送信手段と、
を有し、
前記特徴量は、前記組み合わせが過去のメール送信履歴に出現する回数又は頻度の順位である、情報処理装置。
【請求項2】
前記メール送信履歴に含まれる各メールの宛先に設定されている複数のメールアドレスを用いて、所定の個数の組み合わせ毎に、前記組み合わせが前記メール送信履歴に出現する回数又は頻度を算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段が算出した回数又は頻度をパーセンタイルに変換することで、前記組み合わせに対する特徴量を算出する第3の算出手段と、
前記組み合わせと、前記組み合わせに対する特徴量とを対応付けたモデルを作成するモデル作成手段と、
を有し、
前記第1の算出手段は、
前記組み合わせ毎に、前記モデルを用いて、前記組み合わせに対する特徴量を算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第3の算出手段が算出する特徴量は、前記回数又は頻度を所定の順で並べた場合における順位である、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
送信対象メールの宛先に設定されている複数のメールアドレスのうちの所定の個数の組み合わせ毎に、前記組み合わせに対する特徴量を算出する第1の算出手順と、
前記第1の算出手順が算出した特徴量を用いて、同報が禁止されている可能性があるメールアドレスの組み合わせが前記宛先に設定されていることを示す通知を送信する送信手順と、
をコンピュータが実行し、
前記特徴量は、前記組み合わせが過去のメール送信履歴に出現する回数又は頻度の順位である、情報処理方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1乃至3の何れか一項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子メール(以降、単に「メール」とも表す。)の誤送信対策として、メールの送信履歴を用いて、送信対象のメールに設定されている送信先アドレスが、過去に送信したことのあるアドレスであるか否かを判定する技術が従来から知られている。このような技術では、例えば、過去に送信したことのあるアドレスへのメール送信は安全であり、過去に送信したことのないアドレスへのメール送信は危険(リスクがある)ものと判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-87327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、同時送信(同報)が禁止されているメールアドレスが設定されている場合におけるメール送信を防止することができなかった。
【0005】
例えば、同報が禁止されているメールアドレスを「メールアドレスA」及び「メールアドレスB」として、メールアドレスA及びメールアドレスBは共に過去に送信したことがあるアドレスであるとする。この場合、メールアドレスA及びメールアドレスBの両方を送信先アドレスに設定したメールは安全と判定され、メール送信を防止することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、同時送信が禁止されている宛先へのメール同時送信を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、一実施形態に係る情報処理装置は、送信対象メールの宛先に設定されている複数のメールアドレスのうちの所定の個数の組み合わせ毎に、前記組み合わせに対する特徴量を算出する第1の算出手段と、前記第1の算出手段が算出した特徴量のうちの最大又は最小の特徴量を用いて、同報が禁止されている可能性があるメールアドレスの組み合わせが前記宛先に設定されていることを示す通知を送信する送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
同時送信が禁止されている宛先へのメール同時送信を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】同時送信が禁止されている可能性がある宛先の組み合わせの一例を説明するための図である。
図2】本実施形態に係るメール誤送信防止システムの全体構成の一例を示す図である。
図3】学習データの一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る学習モデル作成処理の一例を示すフローチャートである。
図5】パーセンタイルの一例を説明するための図である。
図6】本実施形態に係る誤送信リスク判定・通知処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の具体例を説明するための図(その1)である。
図8】本実施形態の具体例を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以降、「本実施形態」とも表す。)について説明する。本実施形態では、同時送信が禁止されている宛先へのメール同時送信を防止することが可能なメール誤送信防止システム1について説明する。なお、本実施形態では、「宛先」とは、メールの送信先となるメールアドレスのことを指すものとする。したがって、宛先とは、メールのTo欄に設定されているメールアドレスと、Cc欄に設定されているメールアドレスと、Bcc欄に設定されているメールアドレスとを指すものとする。ただし、宛先は、メールのTo欄に設定されているメールアドレスと、Cc欄に設定されているメールアドレスと、Bcc欄に設定されているメールアドレスとのうちの少なくとも1つを指すものであってもよい。
【0011】
本実施形態では、過去のメールの送信履歴(以降では、「送信ログ」とも表す。)を用いて学習モデルを作成した上で、この学習モデルにより、同時送信が禁止されている可能性がある宛先の組み合わせが送信対象メールに設定されているか否かを判定する。これにより、同時送信が禁止されている可能性がある宛先へメールが送信されてしまう事態を防止することが可能となる。
【0012】
<同時送信が禁止されている可能性がある宛先>
ここで、本実施形態において、同時送信が禁止されている可能性がある宛先の組み合わせと判定される場合の一例について、図1を参照しながら説明する。図1は、同時送信が禁止されている可能性がある宛先の組み合わせの一例を説明するための図である。なお、図1中のA、B、C及びDはそれぞれメールアドレスを表す。
【0013】
図1に示すように、例えば、送信ログ中には、宛先としてメールアドレスA、メールアドレスB及びメールアドレスDが設定された宛先パターン1のメールと、宛先としてメールアドレスA、メールアドレスB及びメールアドレスCが設定された宛先パターン2のメールと、宛先としてメールアドレスA及びメールアドレスDが設定された宛先パターン3のメールと、宛先としてメールアドレスB及びメールアドレスCが設定された宛先パターン4のメールとが存在するものとする。
【0014】
このとき、本実施形態では、例えば、送信ログ中には存在しないメールアドレスの組み合わせ又は送信回数が少ないメールアドレスの組み合わせを、同時送信が禁止されている可能性がある宛先の組み合わせとする。図1に示す例では、メールアドレスCとメールアドレスDとの組み合わせは送信ログ中に存在しないため、この組み合わせを、同時送信が禁止されている可能性がある組み合わせとする。
【0015】
なお、メールアドレスA、メールアドレスB、メールアドレスC及びメールアドレスDはそれぞれ単独では過去に送信されたことがあるメールアドレスである。このため、従来技術(例えば、送信対象メールに設定されている送信先アドレスが、過去に送信したことのあるアドレスであるか否かを判定する技術)では、メールアドレスCとメールアドレスDとが設定されているメールのメール送信は、安全なメール送信と判定される。
【0016】
一方で、本実施形態では、過去に存在しない組み合わせ又は出現回数(若しくは出現頻度)が少ない組み合わせは、同時送信が禁止されている可能性があるメールアドレスの組み合わせとする。このため、メールアドレスCとメールアドレスDとが設定されているメールのメール送信を、誤送信リスクがあるメール送信と判定することができ、このようなメール送信を防止することが可能となる。
【0017】
<メール誤送信防止システム1の全体構成>
次に、本実施形態に係るメール誤送信防止システム1の全体構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るメール誤送信防止システム1の全体構成の一例を示す図である。
【0018】
図2に示すように、本実施形態に係るメール誤送信防止システム1には、誤送信防止サーバ10と、1台以上のメール送受信端末20とが含まれる。誤送信防止サーバ10と、各メール送受信端末20とは、例えば社内LAN(Local Area Network)等の任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0019】
誤送信防止サーバ10は、メール送受信端末20からのメールを受信すると、予め作成した学習モデルを用いて、同時送信が禁止されている可能性があるメールアドレス(以降、「同時送信禁止アドレス」とも表す。)の組み合わせが当該メールの宛先に設定されているか否かを判定する。そして、誤送信防止サーバ10は、この判定結果に応じて、例えば、同時送信が禁止されている可能性があるメールアドレスの組み合わせが宛先に含まれるため、誤送信リスクがあることを当該メール送受信端末20に通知する。学習モデルは、後述するように、送信ログを用いて統計的手法により作成される。なお、誤送信防止サーバ10は、1又は複数台のコンピュータで実現される。
【0020】
なお、誤送信防止サーバ10は、メールサーバとして機能するサーバであってもよいし、メールサーバとは別に設けられたサーバであってもよい。
【0021】
メール送受信端末20は、メールの送信者(ユーザ)が利用する端末である。メール送受信端末20は、ユーザの操作に応じて、メールの作成及び送信(メールの転送及び返信も含む)を行う。また、メール送受信端末20は、メールサーバから転送されたメールを受信する。なお、メール送受信端末20は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)等で実現される。ただし、メール送受信端末20は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の各種機器又は装置で実現されてもよい。
【0022】
なお、本実施形態では、送信者は、企業や団体等の構成員(例えば、企業の社員、団体の職員、学校の学生等)であるものとする。以降では、これら企業や団体等の構成員を単に「社員」と総称する。
【0023】
ここで、誤送信防止サーバ10は、機能部として、送受信部101と、判定部102と、通知部103と、モデル作成部104とを有する。これら各機能部は、誤送信防止サーバ10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU(Central Processing Unit)等に実行させる処理により実現される。
【0024】
また、誤送信防止サーバ10は、記憶部として、学習データ記憶部111と、学習モデル記憶部112とを有する。これら各記憶部は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等を用いて実現可能である。ただし、これら各記憶部のうちの少なくとも1つの記憶部が、誤送信防止サーバ10と通信ネットワークを介して接続される記憶装置等を用いて実現されていてもよい。
【0025】
送受信部101は、メール送受信端末20からのメール(以降、「送信対象メール」とも表す。)を受信する。また、送受信部101は、判定部102による判定結果に応じて、送信対象メールを他の装置(例えばメールサーバ等)に送信(転送)する。
【0026】
判定部102は、学習モデル記憶部112に記憶されている学習モデルを用いて、送受信部101が受信した送信対象メールの宛先に同時送信禁止アドレスの組み合わせが含まれるか否かを判定する。このとき、判定部102は、送信対象メールの宛先に設定されているメールアドレスを2個ずつの組み合わせに分解した上で、学習モデルにより各組み合わせのスコアを算出することで、同時送信禁止アドレスの組み合わせが当該宛先に設定されているか否かを判定する。
【0027】
通知部103は、送信対象メールの宛先に同時送信禁止アドレスの組み合わせが含まれると判定された場合、送信対象メールの送信元のメール送受信端末20に対して誤送信リスクが存在する旨の通知を送信する。
【0028】
モデル作成部104は、学習データ記憶部111に記憶されている学習データを用いて、メールアドレスの組み合わせが、同時送信禁止アドレスの組み合わせであるか否かを判定するための学習モデルを作成する。
【0029】
学習データ記憶部111は、学習モデルを作成するための学習データを記憶する。学習データとしては、過去にメール送受信端末20から送信されたメールの送信ログを用いる。ここで、学習データの一例を図3に示す。図3は、学習データの一例を示す図である。
【0030】
図3に示すように、1つの学習データ(つまり、1つの送信ログ)には、To欄に設定されたメールアドレスを示す「送信先アドレス(To)」と、Cc欄に設定されたメールアドレスを示す「送信先アドレス(Cc)」と、Bcc欄に設定されたメールアドレスを示す「送信先アドレス(Bcc)」と、件名欄に設定された文字列を示す「件名」と、本文欄に設定された文字列を示す「本文」とが含まれる。送信先アドレス(To)、送信先アドレス(Cc)及び送信先アドレス(Bcc)に設定されたメールアドレスが「宛先」である。
【0031】
なお、送信先アドレス(To)、送信先アドレス(Cc)及び送信先アドレス(Bcc)には、合計で1つ以上のメールアドレスが設定されていればよい。また、各学習データには件名及び本文が必ずしも含まれている必要はなく、例えば、送信ログから宛先(送信先アドレス(To)、送信先アドレス(Cc)及び送信先アドレス(Bcc))のみを抽出して学習データとしてもよい。
【0032】
学習データとする送信ログは、例えば、オンプレミスのメールサーバ等から取得されてもよいし、クラウド型のWebメールサーバ等から取得されてもよい。また、例えば、メール送受信端末20とメールサーバとの間で送信ログを収集する機器又は装置から取得されてもよい。ただし、このとき、例えば、1つのメールアドレスのみが宛先として設定されている送信ログは学習データとして用いないようにしてもよい(言い換えれば、2つ以上のメールアドレスが宛先として設定されている送信ログのみを学習データとしてもよい。)。
【0033】
学習モデル記憶部112は、モデル作成部104により作成された学習モデルを記憶する。
【0034】
なお、図1に示すメール誤送信防止システム1の構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、誤送信防止サーバ10は、学習モデルの作成を行う学習装置と、学習モデルを用いて同時送信禁止アドレスの組み合わせが宛先に含まれるか否かを判定する判定装置とで構成されていてもよい。この場合、学習装置にはモデル作成部104と学習データ記憶部111とが含まれ、判定装置には送受信部101と判定部102と通知部103と学習モデル記憶部112とが含まれる。また、このとき、学習装置及び判定装置の少なくとも一方は、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して接続されるクラウドサーバにより実現されていてもよい。
【0035】
又は、例えば、誤送信防止サーバ10が、メール送受信端末20に含まれる構成としてもよい。
【0036】
<学習モデル作成処理>
次に、学習データ記憶部111に記憶されている学習データを用いて学習モデルを作成する処理について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る学習モデル作成処理の一例を示すフローチャートである。なお、学習データ記憶部111には、複数の学習データ(つまり、学習データ集合)が記憶されているものとする。
【0037】
以降の学習モデル作成処理は、学習モデル記憶部112に学習モデルが記憶されていない場合には、後述する誤送信リスク判定・通知処理を実行する前に実行しておく必要がある。なお、学習モデル作成処理は、例えば、学習モデル再作成して、学習モデル記憶部112に記憶されている学習モデルを更新する場合には、定期的に実行されたり、誤送信防止サーバ10の管理者等が指定したタイミング等に実行されたりしてもよい。
【0038】
まず、モデル作成部104は、学習データ記憶部111から学習データを取得する(ステップS101)。このとき、モデル作成部104は、学習データ記憶部111に記憶されている全ての学習データを取得してもよいし、所定の条件を満たす学習データのみを取得(例えば、直近1年間の送信ログを学習データとして取得する等)してもよい。
【0039】
次に、モデル作成部104は、各学習データの宛先に設定されているメールアドレスを2個ずつの組み合わせに分解する(ステップS102)。
【0040】
例えば、或る学習データの宛先(送信先アドレス(To)、送信先アドレス(Cc)及び送信先アドレス(Bcc)))として、「メールアドレスA」と、「メールアドレスB」と、「メールアドレスC」と、「メールアドレスD」とが設定されている場合、モデル作成部104は、これらのメールアドレスを以下の2個ずつの組み合わせに分解する。
【0041】
・{メールアドレスA,メールアドレスB}
・{メールアドレスA,メールアドレスC}
・{メールアドレスA,メールアドレスD}
・{メールアドレスB,メールアドレスC}
・{メールアドレスB,メールアドレスD}
・{メールアドレスC,メールアドレスD}
このように、モデル作成部104は、各学習データの宛先に設定されているメールアドレスを2個ずつの組み合わせに分解する。一般に、1つの学習データの宛先にn個のメールアドレスが設定されている場合、これらn個のメールアドレスは、個の組み合わせに分解される。以降では、表記を簡単にするため、例えば、{メールアドレスA,メールアドレスB}を単に{A,B}とも表す。他のメールアドレスの組み合わせについても同様に、{A,C}や{A,D}、{B,C}等とも表す。
【0042】
次に、モデル作成部104は、上記のステップS101で取得した学習データ全体における組み合わせ毎の出現回数を算出する(ステップS103)。
【0043】
例えば、上記のステップS101で取得した学習データのうち、{A,B}の組み合わせが宛先に含まれる学習データがN個である場合、{A,B}の出現回数はNとなる。同様に、例えば、上記のステップS101で取得した学習データのうち、{A,C}の組み合わせが宛先に含まれる学習データがN個である場合、{A,C}の出現回数はNとなる。
【0044】
このように、モデル作成部104は、上記のステップS102で分解された組み合わせ毎に、学習データ全体における当該組み合わせの出現回数を算出する。
【0045】
次に、モデル作成部104は、上記のステップS103で算出された出現回数をパーセンタイルに変換して、組み合わせ毎のスコアを算出する(ステップS104)。ここで、パーセンタイルは、出現回数順に組み合わせを並べたものである。スコアとしては、パーセンタイルに変換した後の組み合わせを用いた任意のスコアを用いることができるが、例えば、出現回数の順位(つまり、組み合わせの順位)を用いることができる。
【0046】
ここで、パーセンタイルの一例を図5に示す。図5に示すパーセンタイルは、出現回数順(出現回数の大きい順)に組み合わせを並べたものである。図5に示すパーセンタイルでは、スコアとして、出現回数の順位を用いており、(スコア,出現回数)で表記している。例えば、(1,97)は、最も出現回数が多い或る組み合わせに対応するスコア(1)及び出現回数(97)である。また、例えば、(2,63)は、2番目に出現回数が多い或る組み合わせに対応するスコア(2)及び出現回数(63)である。
【0047】
このように、モデル作成部104は、上記のステップS102で分解された組み合わせをパーセンタイルに変換することで、組み合わせに対応するスコアをそれぞれ算出する。なお、スコア及び組み合わせに対応するスコアは、それぞれ「特徴量」及び「組み合わせの特徴量」等と称されてもよい。
【0048】
次に、モデル作成部104は、上記のステップS102で分解された各組み合わせと、上記のステップS104で算出された各スコアとをそれぞれ対応付けた組を学習モデルとして学習モデル記憶部112に保存する(ステップS105)。
【0049】
例えば、上記のステップS102で分解された組み合わせが{A,B}、{A,C}、{A,D}、{B,C}、{B,D}、{C,D}であり、上記のステップS104で算出された{A,B}のスコアがs、{A,C}のスコアがs、{A,D}のスコアがs、{B,C}のスコアがs、{B,D}のスコアがs、{C,D}のスコアがsである場合、モデル作成部104は、例えば、{{A,B}=s,{A,C}=s,{A,D}=s,{B,C}=s,{B,D}=s,{C,D}=s}を学習モデルとして学習モデル記憶部112に保存する。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る誤送信防止サーバ10は、過去の送信ログを学習データとして、各学習データの宛先に設定されているメールアドレスの組の出現回数からスコアを算出して学習モデルを作成する。これにより、出現回数(又は出現頻度)が低いメールアドレスの組は比較的スコアが低くなり、出現回数(又は出現頻度)が高いメールアドレスの組は比較的スコアが高くなるような学習モデルが作成される。
【0051】
なお、本実施形態では、2つのメールアドレスで構成される組み合わせ毎に、当該組み合わせのスコアを算出したが、所定の個数のメールアドレスで構成される組み合わせ毎に、当該組み合わせのスコアを算出してもよい。これにより、例えば、後述する誤送信リスク判定・通知処理では、所定の個数のメールアドレスで構成される組み合わせが、送信対象メールに含まれるか否かを判定することができるようになる。
【0052】
<誤送信リスク判定・通知処理>
次に、学習モデル記憶部112に記憶されている学習モデルを用いて送信対象メールに誤送信リスクが存在するか否かを判定し、誤送信リスクが存在すると判定された場合はその旨をメール送受信端末20に通知する処理について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る誤送信リスク判定・通知処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、送受信部101は、メール送受信端末20から送信された送信対象メールを受信する(ステップS201)。
【0054】
次に、判定部102は、上記のステップS201で受信した送信対象メールの宛先に設定されているメールアドレスを2個ずつの組み合わせに分解する(ステップS202)。これは、上記のステップS102と同様である。
【0055】
次に、判定部102は、学習モデル記憶部112に記憶されている学習モデルを用いて、上記のステップS202で分解された各組み合わせのスコアを算出する(ステップS203)。
【0056】
例えば、学習モデルが{{A,B}=s,{A,C}=s,{A,D}=s,{B,C}=s,{B,D}=s,{C,D}=s}であり、上記のステップS202で得られた組み合わせが{A,B}、{B,D}及び{C,D}である場合、判定部102は、スコアs、s及びsをそれぞれ算出する。
【0057】
次に、判定部102は、上記のステップS203で算出されたスコアのうち、最大のスコア(最大スコア)が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS204)。すなわち、判定部102は、最大スコアと閾値とを比較して、最大スコアが閾値以上であるか否かを判定する。なお、このような閾値は、メールの送信者毎に設定されてもよいし、グループ(例えば、組織等)毎に設定されてもよい。また、閾値としては任意の値が設定されてもよいし、例えば、明示的に値を設定しない場合には、自身が属するグループの他のユーザが設定している閾値の平均値が設定されてもよい。更に、例えば、時期によってメール送受信の頻度が異なる場合等には、時期によって閾値が自動的に変更されてもよい。
【0058】
なお、本実施形態では、出現回数(又は出現頻度)が少ないほどスコアが大きくなる学習モデルを用いたが、学習モデルによっては、出現回数(又は出現頻度)が少ないほどスコアが小さくなる場合(つまり、出現回数(又は出現頻度)が多いほどスコアが大きくなる場合)も有り得る。この場合には、判定部102は、上記のステップS204で最小のスコアが所定の閾値以下であるか否かを判定してもよいし、スコアの逆数やスコアに負を乗じた数が所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0059】
ステップS204で最大スコアが所定の閾値以上であると判定されなかった場合、送受信部101は、送信対象メールを他の装置(例えばメールサーバ等)に転送する(ステップS205)。この場合、送信対象メールの宛先には同時送信禁止アドレスの組み合わせが含まれていないと考えられ(同時送信禁止アドレスの組み合わせが含まれている可能性が低いと考えられ)、誤送信リスクはない(又は誤送信リスクは低い)ためである。
【0060】
一方で、ステップS204で最大スコアが所定の閾値以上であると判定された場合、通知部103は、送信対象メールの送信元のメール送受信端末20に対して、誤送信リスクが存在する旨の通知を送信する(ステップS206)。この場合、送信対象メールの宛先には同時送信禁止アドレスの組み合わせが含まれていると考えられ(同時送信禁止アドレスの組み合わせが含まれている可能性が高いと考えられ)、誤送信リスクがある(又は誤送信リスクが高い)ためである。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る誤送信防止サーバ10は、予め作成された学習モデルを用いて、送信対象メールの宛先に同時送信禁止アドレスの組み合わせが含まれているか否かを判定し、この判定結果に応じて、誤送信リスクがある旨の通知をメール送受信端末20に送信する。これにより、同時送信が禁止されている可能性があるメールアドレスに対して送信対象メールが同報されてしまう、といった誤送信の発生を防止することが可能となる。
【0062】
最後に、本実施形態の具体例について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7及び図8は、本実施形態の具体例を説明するための図である。
【0063】
図7に示す具体例では、4つの学習データを用いて学習モデルを作成した場合を示している。なお、E~Hはそれぞれメールアドレスを表す。
【0064】
このとき、図7に示す例では、学習データ全体における{E,F},{E,G},{E,H},{F,G},{G,H}の組み合わせの出現回数はそれぞれ2,1,2,2,1,0であり、スコアはそれぞれ20,70,20,20,70,100であったとする。他方で、送信対象メールの送信先アドレスにはE、G及びHが含まれているものとする。この場合、送信対象メールの送信先アドレスにはG及びH(つまり、学習データに出現しない組み合わせ)が含まれているため、この送信対象メールの最大スコアは100となる。
【0065】
また、図8に示す具体例では、上記の4つの学習データを含む大量の学習データを用いて学習モデルを作成した場合を示している。
【0066】
このとき、図8に示す例では、学習データ全体における{E,F},{E,G},{E,H},{F,G},{G,H}の組み合わせの出現回数はそれぞれ100,20,70,80,30,1であり、スコアはそれぞれ3,47,7,6,35,85であったとする。他方で、上記と同様に、送信対象メールの送信先アドレスにはE、G及びHが含まれているものとする。この場合、送信対象メールの送信先アドレスにはG及びH(つまり、学習データ全体で最も出現回数が少ない組み合わせ)が含まれているため、この送信対象メールの最大スコアは85となる。
【0067】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 メール誤送信防止システム
10 誤送信防止サーバ
20 メール送受信端末
101 送受信部
102 判定部
103 通知部
104 モデル作成部
111 学習データ記憶部
112 学習モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8