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特許7307158抗ヒト心筋型トロポニンI抗体及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】抗ヒト心筋型トロポニンI抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230704BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230704BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230704BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230704BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230704BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20230704BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/63 Z
G01N33/53 D
G01N33/543 541Z
G01N33/536 B
G01N33/536 C
G01N33/536 D
C07K16/18
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021518970
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2019108689
(87)【国際公開番号】W WO2020073834
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】201811183078.6
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521204910
【氏名又は名称】ファポン バイオテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FAPON BIOTECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジーチアン
(72)【発明者】
【氏名】メン,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ドンメイ
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101942416(CN,A)
【文献】特開2016-141649(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107603955(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105132283(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103173420(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K
C12Q
G01N
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
cTnI抗原結合ドメインを含む単離結合タンパク質であって、
前記抗原結合ドメインは、下記アミノ酸配列を有する6つの相補性決定領域を含み、
相補性決定領域CDR-VH1はG-Y-X1-F-T-X2-Y-V-X3-Hであり、X1がTであり、
相補性決定領域CDR-VH2はY-I-X1-P-Y-X2-D-G-T-X3-Y-N-E-Kであり、X3がKであり、
相補性決定領域CDR-VH3はR-X1-G-Y-G-X2-Y-G-L-Aであり、X1がSであり、
相補性決定領域CDR-VL1はS-X1-G-A-X2-T-T-S-X3-Y-A-Nであり、X1がTであり、
相補性決定領域CDR-VL2はG-S-X1-N-R-X2-Pであり、X2がAであり、
相補性決定領域CDR-VL3はA-X1-V-Y-S-N-X2-Wであり、X1がLであり、
6つの相補性決定領域の突然変異部位は、下記突然変異の組み合わせから選ばれるいずれか1種であり、
配列が順次SEQ ID NO:1~4に示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び/又は、配列が順次SEQ ID NO:5-8に示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む、ことを特徴とする単離結合タンパク質。
【請求項2】
F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、scFv及び二重特異性抗体のうちの1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
抗体定常領域配列をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
前記定常領域配列はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれか1つの定常領域の配列である、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項5】
前記定常領域は牛、馬、乳牛、豚、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、犬、猫、ウサギ、ラクダ、ロバ、シカ、テン、鶏、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、闘鶏又はヒトの物属に由来する、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項6】
前記定常領域はマウスに由来し、
軽鎖定常領域配列はSEQ ID NO:9に示され、
重鎖定常領域配列はSEQ ID NO:10に示される、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項7】
信号強度を示す指示薬で標識された、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質をコードする、ことを特徴とする単離核酸。
【請求項9】
請求項に記載の核酸を含む、ことを特徴とするベクター。
【請求項10】
請求項に記載の核酸又は請求項に記載のベクターを含む、ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項11】
請求項10に記載の宿主細胞を培地にて培養し、産生した結合タンパク質を培地又は培養した宿主細胞から回収するステップを含む、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質の生産方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質の、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定狭心症、心筋障害を診断するための診断薬又はキットの製造における使用。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質、請求項に記載の単離核酸又は請求項に記載のベクターのうちの1種又は複数種を含む、ことを特徴とするキット。
【請求項14】
抗体/抗原結合反応を発生させるのに十分な条件下で、前記テストサンプル中のトロポニンI抗原を請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質と接触させて免疫複合体を形成するステップa)と、
前記テストサンプル中に前記トロポニンI抗原が存在することを示す前記免疫複合体の存在を検出するステップb)とを含む、テストサンプル中のトロポニンI抗原の検出方法。
【請求項15】
前記免疫複合体は前記結合タンパク質に結合される第2の抗体をさらに含む、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップa)では、前記免疫複合体は前記トロポニンI抗原に結合される第2の抗体をさらに含む、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記トロポニンI抗原は心筋型トロポニンI抗原である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年10月10日に中国特許庁に提出された、出願番号が201811183078.6、名称が「抗ヒト心筋型トロポニンI抗体及びその応用」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本出願に組み込まれている。
【0002】
本開示は、生物技術及び医学技術の分野に関し、特に抗ヒト心筋型トロポニンI抗体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
1980年以前、世界保健機関(WHO)はずっと心筋酵素スペクトル活性を急性心筋梗塞(AMI)の診断標準の1つとした。1980年後期、研究者は、トロポニン(troponin、Tn)の感受性と特異性はクレアチンキナーゼ(CK)、クレアチンキナーゼアイソザイム(CK-MB)、乳酸脱水素酵素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼなどのバイオマーカーより高いことを発見した。心筋型トロポニンI(cTnI)は心筋にのみ存在し、心筋細胞のマーカーであり、その異常変化が心臓の拡張収縮機能に影響し、心筋壊死の診断、心筋障害の判断などに応用でき、心筋細胞損傷に対する感受性と特異性が最も強いマーカーの1つになり、AMI、及び急性冠症候群(acute coronary syndromes、ACS)の迅速診断、及びACSリスク層別化補助、予後反映のための公認されている主要な生化学マーカーである。
【0004】
正常な人の血液中のcTnI含有量は一般的に0.3μg/Lより低い。虚血や低酸素などにより心筋細胞の細胞膜の完全性が破壊されると、遊離したcTnIは速やかに細胞膜を透過して血流に入る。そのため、発病初期にヒト血中のcTnI及びその変化傾向を迅速、敏感かつ正確に測定することは急性心筋梗塞の診断、急性冠症候群のリスク層別化、各種因子による心筋障害のモニタリングなどにとって重要な臨床意義を持つ。臨床的にはcTnIレベルを検出するための方法としては、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、化学発光、金コロイドなどがあり、それぞれの長所と短所があるが、cTnIに対する特異的モノクローナル抗体が必要である。
【0005】
従来のcTnI抗体は活性が低く、親和性が低いため、cTnIタンパク質の検出にうまく応用できず、したがって、本分野では、cTnIを効果的かつ特異的に結合して検出する抗体が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、心筋型トロポニンI(cTnI)抗原結合ドメインを含む新規単離結合タンパク質に関し、該結合タンパク質の製造、応用などについて研究した。
【0007】
前記抗原結合ドメインは、下記アミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つの相補性決定領域を含むか、又は下記アミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも80%の配列同一性を有し、かつcTnIとKD<9.96×10-8mol/Lの親和性を有し、
相補性決定領域CDR-VH1はG-Y-X1-F-T-X2-Y-V-X3-Hであり、
X1がS又はTであり、X2がI又はLであり、X3がV、L又はIであり、
相補性決定領域CDR-VH2はY-I-X1-P-Y-X2-D-G-T-X3-Y-N-E-Kであり、
X1がQ、N又はYであり、X2がI又はLであり、X3がR又はKであり、
相補性決定領域CDR-VH3はR-X1-G-Y-G-X2-Y-G-L-Aであり、
X1がS又はTであり、X2がQ、N又はGであり、
相補性決定領域CDR-VL1はS-X1-G-A-X2-T-T-S-X3-Y-A-Nであり、
X1がS又はTであり、X2がA又はVであり、X3がQ又はNであり、
相補性決定領域CDR-VL2はG-S-X1-N-R-X2-Pであり、
X1がN又はQであり、X2がA又はVであり、
相補性決定領域CDR-VL3はA-X1-V-Y-S-N-X2-Wであり、
X1がI又はLであり、X2がQ、H又はNである。
【0008】
1つの重要な利点としては、前記結合タンパク質は活性が高く、ヒトcTnIと高親和性及び感度を有する。
【0009】
1つ又は複数の実施形態において、
前記相補性決定領域CDR-VH1では、X1がTであり、
前記相補性決定領域CDR-VH2では、X3がKであり、
前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がSであり、
前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がTであり、
前記相補性決定領域CDR-VL2では、X2がAであり、
前記相補性決定領域CDR-VL3では、X1がLである。
【0010】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がIであり、X3がVである。
【0011】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がIであり、X3がLである。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がIであり、X3がIである。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がLであり、X3がVである。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がLであり、X3がLである。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がLであり、X3がIである。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がQであり、X2がIである。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がQであり、X2がLである。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がNであり、X2がIである。
【0019】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がNであり、X2がLである。
【0020】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がYであり、X2がIである。
【0021】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がYであり、X2がLである。
【0022】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X2がQである。
【0023】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X2がNである。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X2がGである。
【0025】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がAであり、X3がQである。
【0026】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がAである、X3がNである。
【0027】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がVであり、X3がQである。
【0028】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がVであり、X3がNである。
【0029】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がNである。
【0030】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がQである。
【0031】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がQである。
【0032】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がHである。
【0033】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がNである。
【0034】
1つ又は複数の実施形態において、各相補性決定領域の突然変異部位は下記突然変異の組み合わせから選ばれるいずれか1種である。
【0035】
【0036】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、少なくとも3個のCDRsを含むか、少なくとも6個のCDRsを含む。
【0037】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、可変領域と定常領域を含む完全な抗体である。
【0038】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、ナノ抗体、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体、及び抗体最小認識単位のうちの1種である。
【0039】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、配列が順次SEQ ID NO:1~4に示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び/又は、配列が順次SEQ ID NO:5~8に示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む。
【0040】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は抗体定常領域配列をさらに含む。
【0041】
1つ又は複数の実施形態において、前記定常領域配列は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれか1つの定常領域の配列である。
【0042】
1つ又は複数の実施形態において、前記定常領域の種属由来は、牛、馬、乳牛、豚、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、犬、猫、ウサギ、ラクダ、ロバ、シカ、テン、鶏、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、闘鶏又はヒトである。
【0043】
1つ又は複数の実施形態において、前記定常領域はマウスに由来し、
軽鎖定常領域配列はSEQ ID NO:9に示され、
重鎖定常領域配列はSEQ ID NO:10に示される。
【0044】
本開示は、上記結合タンパク質をコードする単離核酸をさらに提供する。
【0045】
本開示は、上記核酸を含むベクターをさらに提供する。
【0046】
本開示は、上記核酸又はベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。
【0047】
本開示は、上記宿主細胞を培地にて培養し、産生した結合タンパク質を培地又は培養した宿主細胞から回収するステップを含む上記結合タンパク質の産生方法をさらに提供する。
【0048】
本開示は、上記結合タンパク質の、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定狭心症、心筋障害を診断するための診断薬又はキットの製造における応用をさらに提供する。
【0049】
本開示の一態様によれば、本開示は、さらに、
抗体/抗原結合反応を発生させるのに十分な条件下で、前記テストサンプル中のトロポニンI抗原を上記結合タンパク質と接触させて免疫複合体を形成するステップa)と、
前記テストサンプル中に前記トロポニンI抗原が存在することを示す前記免疫複合体の存在を検出するステップb)と、を含む、テストサンプル中のトロポニンI抗原の検出方法に関する。
【0050】
1つ又は複数の実施形態において、前記トロポニンI抗原は心筋型トロポニンI抗原である。
【0051】
1つ又は複数の実施形態において、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記結合タンパク質に結合される第2の抗体をさらに含む。
【0052】
1つ又は複数の実施形態において、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記トロポニンI抗原に結合される第2の抗体をさらに含む。
【0053】
本開示は、上記結合タンパク質、上記単離核酸又は上記ベクターのうちの1種又は複数種を含むキットをさらに提供する。
【0054】
本開示は、さらに、本明細書の前記結合タンパク質の、心筋型トロポニンIに関連する疾患の診断における応用に関する。
【0055】
本開示は、さらに、
結合反応を発生させるのに十分な条件下で、被験体からのサンプルを本開示に記載の結合タンパク質と接触させて結合反応を行うステップA)と、
結合反応により産生した免疫複合体を検出するステップB)と、を含み、
【0056】
前記免疫複合体の存在は、心筋型トロポニンIに関連する疾患の存在を示す心筋型トロポニンIに関連する疾患の診断方法に関する。
【0057】
1つ又は複数の実施形態において、前記方法は、蛍光免疫技術、化学発光技術、金コロイド免疫技術、ラジオイムノアッセイ及び/又は酵素結合免疫測定技術に基づく。
【0058】
1つ又は複数の実施形態において、前記サンプルは、全血、末梢血、血清、血漿又は心筋組織から選ばれる少なくとも1種である。
【0059】
1つ又は複数の実施形態において、前記被験体は、哺乳動物、たとえば霊長類動物、たとえばヒトである。
【0060】
1つ又は複数の実施形態において、前記心筋型トロポニンIに関連する疾患は心血管疾患である。
【0061】
1つ又は複数の実施形態において、前記心筋型トロポニンIに関連する疾患は、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定狭心症、心筋障害又はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本開示は、本開示のいくつかの実施形態の後の説明及びそれに含まれる実施例の詳細によってより容易に理解される。
【0063】
本開示をさらに説明するに先立って、本開示は、実施形態が必然的に多様であるので、前記特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲においてのみ定義されることになるので、限定的なものではなく、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されることも理解されるべきである。
【0064】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示で使用される科学的用語及び技術的用語は、当業者が一般的に理解する意味を有するべきである。用語の意味及び範囲は明確であるべきであるが、潜在的な不明確性がある場合、本明細書で提供する定義は、辞書や外部定義よりも優先される。本出願において、特に断らない限り、「又は」は、「及び/又は」として使用される。さらに、用語「含む」及び他の形態の使用は非限定的なものである。
【0065】
一般的に、本明細書で記載された細胞・組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質・核酸化学、及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及びその技術は、本分野において周知かつ一般的に使用されるものである。特に断らない限り、本開示の方法及び技術は、一般的に、様々な一般的かつより具体的な参照文献に記載されているような、本分野で周知の従来の方法に従って実施され、前記参照文献は、本明細書を通じて引用・検討されている。酵素反応及び精製技術は、製造業者の取扱書にしたがって、本分野で一般的に実施されているか、又は本明細書に記載されているように実施される。本明細書で記載された分析化学、合成有機化学、及び医学・薬物化学で使用される命名法、並びにその実験室手順や技術は、本分野で周知かつ一般的に使用されているものである。
【0066】
本開示をより容易に理解できるように、以下、使用される用語を定義する。
【0067】
「アミノ酸」という用語は、天然又は非天然に存在するカルボキシルα-アミノ酸を意味する。「アミノ酸」という用語は、本出願において使用される場合、天然に存在するアミノ酸及び非天然に存在するアミノ酸を含むことができる。天然に存在するアミノ酸は、アラニン(3文字暗号:A1a、1文字暗号:A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(G1n、Q)、グルタミン酸(G1u、E)、グリシン(G1y、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(I1e、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、及びバリン(Va1、V)を含む。非天然に存在するアミノ酸は、α-アミノアジピン酸、アミノ酪酸、シトルリン、ホモシトルリン、ホモロイシン、ホモアルギニン、ヒドロキシプロリン、ノルロイシン、ピリジルアラニン、サルコシンなどを含むが、これらに限定されない。
【0068】
「単離結合タンパク質」という用語は、誘導起源又は由来のため、その天然の状態でそれに付随する天然結合成分と結合されないタンパク質、同じ種からの他のタンパク質を実質的に含まないタンパク質、様々な種からの細胞によって発現されるタンパク質、又は自然界には存在しないタンパク質である。したがって、化学的に合成されたタンパク質や、その天然由来の細胞とは異なる細胞系で合成されたタンパク質は、その天然結合成分と「単離された」ものとなる。また、単離、たとえば、本分野で周知のタンパク質の精製技術を用いることにより、天然結合成分を実質的に含まないようにすることもできる。
【0069】
「抗原結合ドメインを含む単離結合タンパク質」という用語は、一般的に、CDR領域を含むすべてのタンパク質/タンパク質フラグメントを意味する。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びにこれらの抗体の抗原化合物結合フラグメントを含み、Fab、F(ab')2、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体及び抗体最小認識単位、並びにこれらの抗体及びフラグメントの一本鎖誘導体を含む。抗体のタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選択できる。さらに、「抗体」という用語は、天然に存在する抗体及び非天然に存在する抗体を含み、たとえば、キメラ型(chimeric)、二機能型(bifunctional)、ヒト化(humanized)抗体、及び関連する合成異性体(isoforms)を含む。「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」と交換して使用することができる。
【0070】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖の可変ドメインは「VH」と呼ばれ得る。軽鎖の可変ドメインは「VL」と呼ばれ得る。これらのドメインは、一般的に、抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含む。軽鎖又は重鎖可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる3つの高可変領域と、それらを分離するフレームワーク領域(framework region)とから構成される。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成要件である軽鎖と重鎖の組み合わせの骨格領域は、主に抗原との結合を担うCDRを局在化して整列させる役割を果たす。
【0071】
本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」、「骨格領域」、又は「FR」は、CDRとして定義された領域を除く抗体可変ドメインの領域を意味する。各抗体可変ドメインのフレームワーク領域は、CDRによって分離された隣接領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)にさらに細分化することができる。
【0072】
通常、重鎖及び軽鎖の可変領域VL/VHは、以下の番号を有するCDRとFRをFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のように組み合わせて配列して接続することにより得られ得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド又は核酸に関連する「精製」又は「単離」という用語は、ポリペプチド又は核酸がその天然の媒体中又は天然の形態に存在しないことを意味する。したがって、「単離」という用語は、その原始的な環境から、たとえば、天然に存在する場合、天然環境から得られたポリペプチド又は核酸を含む。たとえば、単離ポリペプチドは、通常それに結合しているもの、又は通常それに混合されているもの、又は溶液中における少なくともあるのタンパク質或いは他の細胞成分を通常含まない。単離ポリペプチドは、細胞溶解物に含まれる、天然に産生する前記ポリペプチド、精製された形態又は部分的に精製された形態の前記ポリペプチド、組換えポリペプチド、細胞により発現又は分泌された前記ポリペプチド、及び異種宿主細胞又は培養物中の前記ポリペプチドを含む。核酸に関連する単離又は精製という用語は、たとえば、前記核酸がその天然のゲノム背景(たとえば、ベクターにおいて発現カセットとしてプロモーターに連結されているか、又は異種宿主細胞に人工的に導入されている)に存在しないことを示す。
【0074】
本明細書で使用されるように、「二重特異性抗体」又は「二機能性抗体」という用語は、2対の異なる重鎖/軽鎖と2つの異なる結合部位とを有する人工ハイブリッド結合タンパク質を指す。二重特異性結合タンパク質は、ハイブリドーマの融合やFab'フラグメントへの連結を含む、様々な方法で生成することができる。
【0075】
本明細書で使用されるように、「配列同一性」という用語は、少なくとも2つの異なる配列間の類似性を意味する。この百分率同一性は、たとえば、基本ローカルアラインメント検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool、BLAST)、NeedlemanなどのアルゴリズムやMeyersなどのアルゴリズムなどの標準アルゴリズムによって決定することができる。1つ又は複数の実施形態において、1組のパラメータは、Blosum 62スコアリング行列及びギャップペナルティ12、ギャップ延長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5であってもよい。1つ又は複数の実施形態において、2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列の間の百分率同一性は、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用するALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込んだMeyers及びMiller((1989)CABIOS 4:11~17)のアルゴリズムを使用して判定することもできる。百分率同一性は、通常、類似長さの配列を比較することによって計算される。
【0076】
本明細書で使用されるように、「親和性」という用語は、結合タンパク質又は抗体の抗原結合ドメインと抗原又は抗原エピトープとの結合の強さを意味する。親和性はKD値で測ることができ、KD値が小さいほど、親和性が大きいことを示す。
【0077】
本開示による抗原結合ドメインを含む単離結合タンパク質では、前記抗原結合ドメインは、下記アミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つの相補性決定領域を含むか、又は下記アミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも80%の配列同一性を有し、かつcTnIとKD≦9.96×10-8mol/Lの親和性を有し、
相補性決定領域CDR-VH1はG-Y-X1-F-T-X2-Y-V-X3-Hであり、
X1がS又はTであり、X2がI又はLであり、X3がV、L又はIであり、
相補性決定領域CDR-VH2はY-I-X1-P-Y-X2-D-G-T-X3-Y-N-E-Kであり、
X1がQ、N又はYであり、X2がI又はLであり、X3がR又はKであり、
相補性決定領域CDR-VH3はR-X1-G-Y-G-X2-Y-G-L-Aであり、
X1がS又はTであり、X2がQ、N又はGであり、
相補性決定領域CDR-VL1はS-X1-G-A-X2-T-T-S-X3-Y-A-Nであり、
X1がS又はTであり、X2がA又はVであり、X3がQ又はNであり、
相補性決定領域CDR-VL2はG-S-X1-N-R-X2-Pであり、
X1がN又はQであり、X2がA又はVであり、
相補性決定領域CDR-VL3はA-X1-V-Y-S-N-X2-Wであり、
X1がI又はLであり、X2がQ、H又はNである。
【0078】
本分野で公知するように、抗体の結合特異性及び親和性はいずれも主にCDR配列によって決定され、成熟して公知である従来の各技術によれば、非CDR領域のアミノ酸配列を容易に改変することにより、類似の生物学的活性を有する変異体を得ることができる。したがって、本開示は、この結合タンパク質の「機能的誘導体」も含む。「機能的誘導体」はアミノ酸置換変異体を意味し、1つの機能的誘導体は検出可能な結合タンパク質活性、好ましくはcTnIに結合し得る抗体の活性を保持する。「機能的誘導体」は、本開示に記載された結合タンパク質と完全に同一のCDR配列を有するので、類似の生物学的活性を有し、「変異体」及び「フラグメント」を含むことができる。
【0079】
1つ又は複数の実施形態において、前記抗原結合ドメインは、下記アミノ酸配列の相補性決定領域と、少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも91%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ心筋型トロポニンIとKD≦9.96×10-8mol/Lを有し、KD値は、2.26×10-8mol/L、6.76×10-8mol/L、3.54×10-8mol/L、9.41×10-9mol/L、7.95×10-9mol/L、5.41×10-9mol/L、4.20×10-9mol/L、1.08×10-9mol/L、8.66×10-10mol/L、6.97×10-10mol/L、3.99×10-10mol/L、1.06×10-10mol/L、又は1.06×10-10mol/L≦KD≦9.96×10-8mol/L、又は1.06×10-10mol/L≦KD≦9.41×10-9mol/Lとしてもよく、又はKDは、2.26×10-8mol/L、6.76×10-8mol/L、3.54×10-8mol/L、9.41×10-9mol/L、7.95×10-9mol/L、5.41×10-9mol/L、4.20×10-9mol/L、1.08×10-9mol/L、8.66×10-10mol/L、6.97×10-10mol/L、3.99×10-10mol/L又は1.06×10-10mol/L以下である。
【0080】
ここで、親和性は、本開示の明細書における方法により測定される。
1つ又は複数の実施形態において、
前記相補性決定領域CDR-VH1では、X1がTであり、
前記相補性決定領域CDR-VH2では、X3がKであり、
前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がSであり、
前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がTであり、
前記相補性決定領域CDR-VL2では、X2がAであり、
前記相補性決定領域CDR-VL3では、X1がLである。
【0081】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がIであり、X3がVである。
【0082】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がIであり、X3がLである。
【0083】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がIであり、X3がIである。
【0084】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がLであり、X3がVである。
【0085】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がLであり、X3がLである。
【0086】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がLであり、X3がIである。
【0087】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がQであり、X2がIである。
【0088】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がQであり、X2がLである。
【0089】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がNであり、X2がIである。
【0090】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がNであり、X2がLである。
【0091】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がYであり、X2がIである。
【0092】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がYであり、X2がLである。
【0093】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X2がQである。
【0094】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X2がNである。
【0095】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X2がGである。
【0096】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がAであり、X3がQである。
【0097】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がAであり、X3がNである。
【0098】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がVであり、X3がQである。
【0099】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X2がVであり、X3がNである。
【0100】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がNである。
【0101】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がQである。
【0102】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がQである。
【0103】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がHである。
【0104】
1つ又は複数の実施形態において、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がNである。
【0105】
1つ又は複数の実施形態において、各相補性決定領域の突然変異部位は、下記突然変異の組み合わせから選ばれるいずれか1種である。
【0106】
【0107】
1つ又は複数の実施形態において、本開示に記載された前記結合タンパク質の6つのCDR領域に現れるX1は、それぞれ独立して、本開示に定義されたアミノ酸を表し、本開示に記載された前記結合タンパク質の6つのCDR領域に現れるX2は、それぞれ独立して、本開示に定義されたアミノ酸を表し、本開示に記載された前記結合タンパク質の6つのCDR領域に現れるX3は、それぞれ独立して、本開示に定義されたアミノ酸を表す。
【0108】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、少なくとも3個のCDRsを含むか、又は、少なくとも6個のCDRsを含む。
【0109】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、可変領域と定常領域を含む完全な抗体である。
【0110】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、ナノ抗体、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体、及び抗体最小認識単位のうちの1種である。
【0111】
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、配列が順次SEQ ID NO:1~4に示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び/又は、配列が順次SEQ ID NO:5~8に示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む。
1つ又は複数の実施形態において、前記結合タンパク質は、抗体定常領域配列をさらに含む。
【0112】
1つ又は複数の実施形態において、前記定常領域配列は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれかの定常領域の配列である。
【0113】
1つ又は複数の実施形態において、前記定常領域の種属由来は、牛、馬、乳牛、豚、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、犬、猫、ウサギ、ラクダ、ロバ、シカ、テン、鶏、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、闘鶏又はヒトである。
【0114】
1つ又は複数の実施形態において、前記定常領域は、マウスに由来し、
軽鎖定常領域配列はSEQ ID NO:9に示され、
重鎖定常領域配列はSEQ ID NO:10に示される。
【0115】
本開示は、上記結合タンパク質をコードする単離核酸をさらに提供する。
【0116】
本明細書では、核酸は、その保守的置換の変異体(たとえば、縮重コドンの置換)及び相補配列を含む。用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は同義であり、遺伝子、cDNA分子、mRNA分子、及び、それらのフラグメント、たとえばオリゴヌクレオチドを含む。
【0117】
本開示は、上記核酸を含むベクターをさらに提供する。
【0118】
ここで、核酸配列は、少なくとも1つの調節配列に操作可能に連結されている。「操作可能に連結されている」とは、コード配列の表現を可能にするように、コード配列が調節配列に連結されていることを意味する。調節配列は、適当な宿主細胞において目的タンパク質の発現を誘導するために使用され、プロモーター、エンハンサー及び他の発現調節要素を含む。
【0119】
本明細書では、ベクターは、本開示の核酸又はそのフラグメントを含み、遺伝子情報を担持することができ、かつ、遺伝子情報を細胞内に送達することができる分子又は試薬を意味することができる。典型的なベクターは、プラスミド、ウイルス、ファージ、コスミド、及びマイクロ染色体を含む。ベクターは、クローニングベクター(すなわち、遺伝子情報を細胞内に導入するためのベクターであって、前記細胞を増殖することができ、前記遺伝子情報が存在又は存在しない前記細胞を選択することができる)又は発現ベクター(すなわち、前記ベクターの遺伝子情報を細胞内で発現させるために必要な遺伝子要素を含むベクター)であってもよい。したがって、クローニングベクターは、選択マーカー、及び前記クローニングベクターによって指定された細胞型に適合する複製開始点を含むことができ、発現ベクターは、指定された標的細胞における発現に影響を与えるのに必要な調節要素を含む。
【0120】
本開示の核酸又はそのフラグメントは、適切なベクターに挿入されて、本開示の核酸フラグメントを担持したクローニングベクター又は発現ベクターを形成することができる。このような新規ベクターも本開示の一部である。前記ベクターは、プラスミド、ファージ、コスミド、マイクロ染色体又はウイルスを含むことができ、特定の細胞においてのみ瞬時発現する裸DNAを含むこともできる。本開示のクローニングベクター及び発現ベクターは、自発的な複製が可能であり、したがって、後続のクローニングのための高レベルの発現又は高レベルの複製の目的のために高いコピー数を提供することができる。発現ベクターは、本開示の核酸フラグメントの発現を駆動するプロモーター、前記ペプチド発現産物を膜上に分泌するか又は組み込むシグナルペプチドをコードする任意選択の核酸配列、本開示の核酸フラグメント、及びターミネーターをコードする任意選択の核酸配列を含むことができる。発現ベクターを生産株又は細胞株で操作するときに、ベクターを宿主細胞に導入する際に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、また、組み込まないこともできる。ベクターは、通常、複製部位と、形質転換細胞において表現型選択を提供することができるマーカー配列とを担持している。
【0121】
本開示の発現ベクターは、宿主細胞を形質転換することに用いられる。このような形質転換細胞も本開示の一部であり、本開示の核酸フラグメント及びベクターを増殖するため、又は本開示のポリペプチドを組み換え的に調製するための培養細胞又は細胞株であり得る。本開示の形質転換細胞は、細菌(たとえば、大腸菌、バチルスなど)のような微生物を含む。宿主細胞はまた、真菌、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞のような多細胞生物由来の細胞、好ましくはCHO細胞のような哺乳動物由来の細胞を含む。前記形質転換細胞は、本開示の核酸フラグメントを複製することができる。本開示のペプチドの組み合わせを組み換え的に調製する場合、前記発現産物は、培地に排出されるか、前記形質転換細胞の表面に担持され得る。
【0122】
本開示は、上記宿主細胞を培地にて培養し、産生した結合タンパク質を培地又は培養した宿主細胞から回収するステップを含む、上記結合タンパク質の生産方法をさらに提供する。
【0123】
前記方法は、たとえば、結合タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸ベクターを宿主細胞にトランスフェクションし、この宿主細胞を適切な条件下で培養してこの結合タンパク質を発現させることであり得る。宿主細胞はまた、結合タンパク質の少なくとも一部をコードするDNAを単独で又は結合して含んでいてもよい1つ又は複数の発現ベクターでトランスフェクションされていてもよい。一般的なタンパク質及びペプチドの精製技術を用いて培地又は細胞溶解物から結合タンパク質を分離することができ、前記技術は、硫酸アンモニウム沈殿、クロマトグラフィー(たとえば、イオン交換、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなど)及び/又は電気泳動を含む。
【0124】
目的のコード及び調節配列を含む適切なベクターの構築は、本分野で公知の標準的な連結及び制限技術を使用して行うことができる。分離したプラスミド、DNA配列又は合成したオリゴヌクレオチドを、必要な形式で、切断し、末端連結して、再連結する。任意の方法でコード配列に突然変異を導入して、本開示の変異体を生成することができ、これらの突然変異は、欠失、挿入又は置換などを含むことができる。
【0125】
本開示は、また、cTnIのエピトープと反応し得る、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む抗体を提供する。この抗体は、完全な結合タンパク質、又はそのフラグメント又は誘導体を含んでいてもよい。好ましい抗体は、結合タンパク質の全部又は一部を含む。
【0126】
本開示は、上記結合タンパク質の、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定狭心症、心筋障害を診断するための診断薬又はキットの製造における応用をさらに提供する。
本開示の一態様によれば、本開示は、さらに、
抗体/抗原結合反応を発生させるのに十分な条件下で、前記テストサンプル中のトロポニンI抗原を上記結合タンパク質と接触させて免疫複合体を形成するステップa)と、
前記テストサンプル中に前記トロポニンI抗原が存在することを示す前記免疫複合体の存在を検出するステップb)と、を含む、テストサンプル中のトロポニンI抗原の検出方法に関する。
【0127】
この実施形態において、前記結合タンパク質は、前記複合体が検出されやすいように、信号強度を示すインジケータで標識することができる。
【0128】
1つ又は複数の実施形態において、前記トロポニンI抗原は心筋型トロポニンI抗原である。
【0129】
1つ又は複数の実施形態において、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記結合タンパク質に結合される第2の抗体をさらに含み、
この実施形態では、前記結合タンパク質は、第1の抗体の形式で、前記第2の抗体と、cTnIの異なる抗原エピトープに結合するためのペア抗体を形成し、
前記第2の抗体は、前記複合体が検出されやすいように、信号強度を示すインジケータで標識することができる。
【0130】
1つ又は複数の実施形態において、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記トロポニンI抗原に結合される第2の抗体をさらに含み、
この実施形態において、前記結合タンパク質は、前記第2の抗体の抗原として機能し、前記第2の抗体は、前記複合体が検出されやすいように、信号強度を示すインジケータで標識することができる。
【0131】
1つ又は複数の実施形態において、信号強度を表示する前記インジケータは、蛍光物質、量子ドット、ジゴキシン標識プローブ、ビオチン、放射性同位体、放射性造影剤、常磁性イオン蛍光微小球、電子密集物質、化学発光マーカー、超音波造影剤、光増感剤、金コロイド、又は酵素のうちのいずれか1種を含む。
【0132】
1つ又は複数の実施形態において、前記蛍光物質は、Alexa 350、Alexa 405、Alexa 430、Alexa 488、Alexa 555、Alexa 647、AMCA、アミノアクリジン、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルローダミン、Cascade Blue、Cy2、Cy3、Cy5、Cy7、6-FAM、ダンシルクロリド、フルオレセイン、HEX、6-JOE、NBD(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Pacific Blue、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレゾールファストバイオレット、クレシルバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、フタロシアニン、アゾメチン、アントシアニジン、キサンチン、サクシニルフルオレセイン、希土類金属クリプタンド、ユーロピアムトリスバイピリジンジアミン、ユウロピウムクリプタンド又はキレート、ジアミン、ビスシアニン、La Jollaブルー染料、アロフィコシアニン、allococyanin B、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チオアミン、フィコエリトロシアニン、P-フィコエリスリンR、REG、ローダミングリーン、ローダミンイソチオシアネート、ローダミンレッド、ROX、TAMRA、TET、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、テトラメチルローダミン及びテキサスレッドのうちのいずれか1種である。
【0133】
1つ又は複数の実施形態において、前記放射性同位体は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154-158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、及び83Srのうちのいずれか1種を含む。
【0134】
1つ又は複数の実施形態において、前記酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びグルコースオキシダーゼのうちのいずれか1種を含む。
【0135】
1つ又は複数の実施形態において、前記蛍光ミクロスフェアは、希土類蛍光イオンユーロピウムをカプセル化したポリスチレン蛍光ミクロスフェアである。
【0136】
さらに、本開示は、上記結合タンパク質、上記単離核酸又は上記ベクターのうちの1種又は複数種を含むキットをさらに提供する。
好ましくは、前記キットは、前記結合タンパク質を標識するためのマーカーをさらに含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、本開示は、たとえば心筋細胞に感染した被験体におけるトロポニンIの存在を決定するためのキットを提供し、前記キットは、本開示による少なくとも1つの結合タンパク質、関連する緩衝剤、液体サンプルを前記結合タンパク質と反応させるために必要な試薬、及び、トロポニンIと結合タンパク質との間の陽性又は陰性の結合反応の有無を決定するための試薬を含む。トロポニンIの存在を決定するために、前記キットは、たとえば、抗体として標識付き結合タンパク質を利用することができ、ここで、前記標識は、任意の適切な標識、たとえば、金コロイド標識であってもよい。
【0138】
本開示は、さらに、本明細書の前記結合タンパク質の、心筋型トロポニンIに関連する疾患の診断における応用に関する。
【0139】
本明細書に使用される「心筋型トロポニンIに関連する疾患」という用語は、そのタンパク質又はコード核酸を含める心筋型トロポニンIをマーカーとする疾患である。特に、本開示の1つ又は複数の実施形態において、心筋型トロポニンIに関連する疾患は、血液中の心筋型トロポニンIレベルの上昇を特徴とする疾患を指す。本開示の1つ又は複数の実施形態において、心筋型トロポニンIに関連する疾患は、心筋組織又は心肌細胞中の心筋型トロポニンIレベルの低下を特徴とする疾患である。
本開示は、さらに、
【0140】
結合反応を発生させるのに十分な条件下で、被験体からのサンプルを本開示に記載の結合タンパク質と接触させて結合反応を行うステップA)と、
結合反応により産生した免疫複合体を検出するステップB)と、を含み、
前記免疫複合体の存在は、心筋型トロポニンIに関連する疾患の存在を示す心筋型トロポニンIに関連する疾患の診断方法に関する。
【0141】
1つ又は複数の実施形態において、前記方法は、蛍光免疫技術、化学発光技術、金コロイド免疫技術、ラジオイムノアッセイ及び/又は酵素結合免疫測定技術に基づく。
【0142】
1つ又は複数の実施形態において、前記サンプルは、全血、末梢血、血清、血漿又は心筋組織から選ばれる少なくとも1種である。
【0143】
1つ又は複数の実施形態において、前記被験体は、哺乳動物、たとえば霊長類動物、たとえばヒトである。
【0144】
1つ又は複数の実施形態において、前記心筋型トロポニンIに関連する疾患は心血管疾患である。
【0145】
1つ又は複数の実施形態において、前記心筋型トロポニンIに関連する疾患は、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定狭心症、心筋障害又はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0146】
以下、本開示を例示的に説明するためにいくつかの実施例を提供するが、本開示の範囲を制限することを意図しない。
【0147】
(実施例1)
本実施例では、制限エンドヌクレアーゼ、Prime Star DNAポリメラーゼはTakara社より購入した。MagExtractor-RNA抽出キットはTOYOBO社より購入した。SMARTERTM RACE cDNA Amplification KitキットはTakara社より購入した。pMD-18TベクターはTakara社より購入した。プラスミド抽出キットは天根公司より購入した。プライマー合成及び遺伝子シーケンシングはInvitrogen社により行われた。Anti-cTnI-21C5モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株は本社の既存のハイブリドーマ細胞株を蘇生して使用に備えたものである。
【0148】
1、プライマー
重鎖及び軽鎖を増幅する5'RACEプライマー
SMARTER II Aオリゴヌクレオチド
5'-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACXXXXX-3';
5'-RACE CDSプライマー(5'-CDS):5'-(T)25VN-3'(N=A、C、G、orT;V=A、G、orC)
ユニバーサルプライマーA混合物(UPM):5'-CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3';
ネストユニバーサルプライマーA(NUP):5'-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3';
MIgG-CKR:5'-CGCCTAACACTCATTCCTGTTGAAGC-3';
MIgG-CHR:5'-CCGCTCATTTACCCGGAGACCG-3'。
【0149】
2、抗体可変領域遺伝子クローン及びシーケンシング
Anti-cTnI 21C5モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株からRNAを抽出し、SMARTERTM RACE cDNA Amplification Kitキット及びキットのSMARTER II Aオリゴヌクレオチドと5'-CDSプライマーを用いて第1の鎖cDNA合成を行い、得た第1の鎖cDNA産物をPCR増幅テンプレートとした。軽鎖遺伝子を、ユニバーサルプライマーA混合物(UPM)、ネストユニバーサルプライマーA(NUP)、及びMIgG-CKRプライマーで増幅し、重鎖遺伝子を、ユニバーサルプライマーA混合物(UPM)、ネストユニバーサルプライマーA(NUP)、及びMIgG-CHRプライマーで増幅した。軽鎖のプライマー対は、約0.7KBの目標バンドを増幅し、重鎖のプライマー対は、約1.4KBの目標バンドを増幅した。アガロースゲル電気泳動で精製して回収し、産物についてrTaq DNAポリメラーゼを用いてA-テーリング反応を行い、pMD-18Tベクターに挿入して、DH5αコンピテントセルに形質転換し、コロニーが成長すると、重鎖及び軽鎖遺伝子をそれぞれクローンして、4個のクローンをInvitrogen社に送ってシーケンシングを行った。
【0150】
3、Anti-cTnI 21C5抗体可変領域遺伝子の配列分析
上記シーケンシングにより得られた遺伝子配列をIMGT抗体データベースに入力して分析し、VNTI11.5ソフトウェアを用いて分析したところ、重鎖及び軽鎖プライマー対で増幅された遺伝子がすべて正確であり、軽鎖により増幅された遺伝子フラグメントでは、VL遺伝子配列は357bpであり、VkII遺伝子ファミリーに属し、その前には57bpのリーダーペプチド配列を有し、重鎖プライマー対で増幅された遺伝子フラグメントでは、VH遺伝子配列は366bpであり、VH1遺伝子ファミリーに属し、その前には57bpのリーダーペプチド配列を有することを確認した。
【0151】
4、組換え抗体発現プラスミドの構築
pcDNATM3.4 TOPO(登録商標)ベクターは、構築した組換え抗体真核発現ベクターであり、該発現ベクターはHindIII、BamHI、EcoRIなどのポリクローナル酵素切断部位を導入されており、pcDNA 3.4A発現ベクターと命名され、以下、3.4A発現ベクターと略し、上記pMD-18Tにおける抗体遺伝子シーケンシングの結果に従って、両端のそれぞれにHindIII、EcoRI酵素切断部位及び保護塩基を有する、Anti-cTnI 21C5抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子特異的プライマーを設計し、プライマーは以下のとおりである。
【0152】
cTnI-21C5-HF:5'-CCCAAGCTTGCCGCCACCATGAGTGTGCTCACTCAGGTCCTGGGGT-3';
cTnI-21C5-HR:5'-GGGGAATTCTCATTTACCCGGAGACCGGGAGATGGTCTTC-3';
cTnI-21C5-LF:5'-CCCAAGCTTGCCGCCACCATGAAGTCACAGACCCAGGTCTTCGTA-3';
cTnI-21C5-LR:5'-CCCGAATTCTCAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACGATG-3'。
【0153】
PCR増幅方法により、0.73KBの軽鎖遺伝子フラグメント及び1.45KBの重鎖遺伝子フラグメントを増幅した。重鎖及び軽鎖遺伝子フラグメントのそれぞれについてHindIII/EcoRI二重消化、3.4AベクターについてHindIII/EcoRI二重消化を行い、フラグメント及びベクターを精製して回収した後、重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子をそれぞれ3.4A発現ベクターに連結して、それぞれ重鎖及び軽鎖の組換え発現プラスミドを得た。
【0154】
5、安定細胞株のスクリーニング
5.1 プラスミドを超純水で400ng/mlに希釈し、CHO細胞を1.43×107cells/mlに調整して遠心分離管に入れて、プラスミド100μlを細胞700μlと混合し、エレクトロトランスフェクションカップに移してエレクトロトランスフェクションし、3、5、7日目にサンプリングして計数し、7日目にサンプルを収集して検出した。
【0155】
対応する抗原を被覆液で所定の濃度に希釈して、1ウェルあたり100μLとし、4℃で一晩放置し、翌日、洗浄液で2回洗浄して、叩いて残留液体を除去し、ブロック液(20%BSA+80%PBS)を、1ウェルあたり120μL加えて、37℃で、1h放置し、叩いて残留液体を除去し、希釈後の細胞上清を、100μL/ウェルで加え、37℃で、30min(一部の上清は1h)放置し、洗浄液で5回洗浄して、叩いて残留液体を除去し、ヤギ抗マウスIgG-HRPを、1ウェルあたり100μL加えて、37℃で、30min放置し、洗浄液で5回洗浄して、叩いて残留液体を除去し、発色液A液(50μL/ウェル)、発色液B液(50μL/ウェル)を加えて、10min放置し、停止液を50μL/ウェル加えて、マイクロプレートリーダーにおいて450nm(630nm参照)でOD値を読み取った。標準品濃度及びOD値から検量線を作成して、細胞上清中の抗体の含有量を計算した。
【0156】
5.2 組換え抗体発現プラスミドの線形化
試薬として、Buffer 50μl、DNA 100μg/本、PuvI酵素10μlを準備し、無菌水で500μlまで補充し、37℃水浴下消化して一晩放置し、まず、等体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール25:24:1(下層)、次に、クロロホルム(水相)で順次抽出し、0.1倍体積(水相)の3M酢酸ナトリウムと2倍体積のエタノールを用いて氷上で沈殿させ、70%エタノールで沈殿をリンスして、有機溶剤を去除し、エタノールが完全に揮発すると、適量の滅菌水で再溶融し、最後に濃度を測定した。
【0157】
組換え抗体発現プラスミドの安定トランスフェクション、安定細胞株の圧力スクリーニング:
【0158】
プラスミドを超純水で400ng/mlに希釈し、CHO細胞を1.43×107cells/mlに調整して遠心分離管に入れて、プラスミド100μlを細胞700μlと混合し、エレクトロトランスフェクションカップに移して、エレクトロトランスフェクションし、翌日計数し、25μmol/L MSX 96ウェルで約25日間加圧培養した。
【0159】
細胞が成長したクローンウェルを顕微鏡下観察して標識し、コンフルエンスを記録し、培養上清を取って検出に供し、抗体濃度、相対濃度の高い細胞株を選択して24ウェルだけトランスフェクションし、約3日目に6ウェルだけトランスフェクションし、3日間後、種を保存してバッチ培養し、細胞密度を0.5×106cells/mlに調整して、2.2mlをバッチ培養し、細胞密度を0.3×106cells/mlにして、2mlについて種を保存し、7日間で6ウェルのバッチ培養上清を検出に供し、抗体濃度及び細胞直径の小さい細胞株を選別してTPPに移して種を保存して継代した。
【0160】
6、組換え抗体の生産
6.1 細胞拡大培養
細胞を蘇生した後、まず、125ml規格の振とうフラスコにて、接種体積を30ml、培地を100%Dynamis培地として培養し、回転数120r/min、温度37℃、二酸化炭素8%のシェーカーにセットした。72h培養し、50万cells/mlの接種密度で接種して拡大培養し、拡大培養体積を生産のニーズに応じて計算し、培地を100%Dynamis培地とした。その後、72hごとに1回拡大培養した。細胞量が生産のニーズを満たすと、接種密度を50万cells/ml程度に厳しく制御して生産した。
6.2 振とうフラスコ生産及び精製
【0161】
振とうフラスコパラメータ:回転数120r/min、温度37℃、二酸化炭素8%。流加投入:振とうフラスコにて72h培養したときから、材料を毎日補充し、HyCloneTM Cell BoostTM Feed 7aについては初期培養体積に対して3%を毎日流加し、Feed 7bについては毎日の流加量を初期培養体積の千分の一とし、12日目まで続けた(12日目に補充)。グルコースを6日目に3g/L補充した。13日目にサンプルを収集した。proteinAアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いてアフィニティ精製を行った。精製すると、組換え抗体500mgを得て、精製抗体4μgについて還元性SDS-PAGEを行った。還元性SDS-PAGEをしたところ、2本のバンドが現れて、一方は23KD程度の軽鎖(配列はSEQ ID NO:11に示される)、他方は50KD程度の重鎖(配列はSEQ ID NO:12に示される)であった。
【0162】
(実施例2)
実施例1で得られたサンプル1の抗体(配列がSEQ ID NO:20及び18に示される軽鎖及び重鎖を有する)は、cTnIタンパク質に対する結合能力を備えたが、親和性及び抗体活性がいずれも不十分であり、このため、出願者は、該抗体の軽鎖CDR及び重鎖CDRを突然変異した。
【0163】
分析した結果、重鎖の相補性決定領域(WT):
CDR-VH1はG-Y-S(X1)-F-T-L(X2)-Y-V-V(X3)-Hであり、
CDR-VH2はY-I-Q(X1)-P-Y-L(X2)-D-G-T-R(X3)-Y-N-E-Kであり、
CDR-VH3はR-T(X1)-G-Y-G-G(X2)-Y-G-L-Aであり、
軽鎖の相補性決定領域:
CDR-VL1はS-S(X1)-G-A-A(X2)-T-T-S-Q(X3)-Y-A-Nであり、
CDR-VL2はG-S-N(X1)-N-R-V(X2)-Pであり、
CDR-VL3はA-I(X1)-V-Y-S-N-H(X2)-Wであり、
ここで、X1、X2、X3はすべて突然変異部位である。
【0164】
【0165】
突然変異後、抗体活性を検出し、被覆液でヤギ抗マウスIgGを1μg/mlに希釈して微孔板を1ウェルあたり100μLで被覆しし、4℃で一晩放置し、翌日、洗浄液で2回洗浄し、叩いて残留液体を除去し、ブロック液(20%BSA+80%PBS)を1ウェルあたり120μL加えて、37℃で、1h放置し、叩いて残留液体を除去し、希釈後のcTnIモノクローナル抗体を100μL/ウェル加えて、37℃で60min放置した後、板内の液体を除去し、叩いて残留液体を除去し、20%マウス陰性血液を加えてブロックし、1ウェルあたり120μLとし、37℃で1h放置し、板内の液体を除去して、叩いて残留液体を除去し、希釈したcTnI抗原(0.15μg/ml)を1ウェルあたり100μLで加え、37℃で40min放置し、洗浄液で5回洗浄し、叩いて残留液体を除去し、HRPで標識された別のcTnIモノクローナル抗体(1:5K)を1ウェルあたり100μLで加え、37℃で30min放置し、発色液A液(50μL/ウェル)、発色液B液(50μL/ウェル)を加えて、10min放置し、停止液を50μL/ウェルで加え、マイクロプレートリーダーにおいて450nm(630nm参照)でOD値を読み取った。
【0166】
一部の結果を以下に示す。
【0167】
【0168】
上表から分かるように、突然変異1は活性効果が最高であり、このため、突然変異1をフレームワーク配列として力価の良好な突然変異部位(スクリーニングした抗体活性が突然変異1に近く、抗体活性±10%であることを確保する)をスクリーニングし、一部の結果を以下に示す。
【0169】
【0170】
親和性分析
AMCセンサを用いて、精製した抗体をPBSTで10μg/mlに希釈し、cTnI品質制御品である組換えタンパク質(本社で生産する組換え抗原)をPBSTで、769.2nmol/ml、384.6nmol/ml、192.3nmol/ml、96.2nmol/ml、48.1nmol/ml、24nmol/ml、12nmol/ml、0nmol/mlで勾配希釈した。
【0171】
作業手順:緩衝液1(PBST)にて60s平衡化し、抗体溶液にて抗体を300s固定化し、緩衝液2(PBST)にて180sインキュベートし、抗原溶液にて420s結合し、緩衝液2では1200s解離して、10mM pH 1.69 GLY溶液及び緩衝液3を用いてセンサ再生を行い、データを出力した。KDは、解離平衡定数である親和性を示し、Konは結合速度を示し、Kdisは解離速度を示した。
【0172】
【0173】
表4から分かるように、表3に記載の突然変異部位は、抗体の親和性への影響が小さかった。
【0174】
上記結果を検証するために、WTをフレームワーク配列として上記実験を繰り返して、突然変異部位の親和性を検証し、一部の結果を以下に示す。
【0175】
【0176】
【0177】
表5及び表6を分析したところ、抗体活性を有することを確保する上に、WT突然変異配列は一定の親和性も備えた。
【0178】
なお、以上の各実施例は、本開示の技術案を説明するために過ぎず、限定的なものではなく、前述各実施例を参照して本開示を詳細に説明したが、当業者が理解できるように、前述各実施例に記載の技術案を修正したり、その技術的特徴の一部又は全部を同等置換したりすることができ、これらの修正又は置換により、対応する技術案の趣旨が本開示の各実施例の技術案の範囲を逸脱することはない。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本開示にかかる心筋型トロポニンIに結合される抗原結合ドメインを含む単離結合タンパク質は、特定の重鎖CDR及び軽鎖CDRを含む。該結合タンパク質は、心筋型トロポニンIタンパク質を特異的に認識して結合することができ、高い感度及び特異性を有し、特に該結合タンパク質は、ヒトcTnIタンパク質とは極めて高い親和性を有する。それによって、心筋型トロポニンI関連疾患の検出及び診断が可能になる。
【配列表】
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