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特許7307165蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池の製造方法
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  • 特許-蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20230704BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20230704BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230704BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230704BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230704BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230704BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230704BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230704BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230704BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230704BHJP
【FI】
H01M10/052
H01G11/50
H01G11/86
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M10/0566
H01M10/058
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021524669
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007734
(87)【国際公開番号】W WO2020246081
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2019103671
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮内 裕之
(72)【発明者】
【氏名】安東 信雄
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 4/00-4/62
H01M 10/058
H01G 11/50
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、セパレータ、及び、負極を備える電極ユニットと、電解液と、を備え、
前記負極にリチウムがドープされた蓄電デバイスであって、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを備え、
前記負極活物質層は、
前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、
前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、
前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、
を有し、
前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記余剰領域Aの負極電位VAと、前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記中心領域Cの負極電位VCとが、以下の式(1)~(3)を充足する蓄電デバイス。
式(1) VA≦2.0V
式(2) VC≦1.0V
式(3) VA/VC≧0.7
【請求項2】
正極、セパレータ、及び、負極を備える電極ユニットと、電解液と、を備え、
前記負極にリチウムがドープされた蓄電デバイスであって、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを備え、
前記負極活物質層は、
前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、
前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、
前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、
を有し、
充電状態で前記蓄電デバイスを解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(4)及び以下の式(5)を充足し
充電状態で前記蓄電デバイスを解体し、前記放電容量QA及び前記放電容量QCに加えて、前記端部領域Bの放電容量QBをさらに測定した場合、以下の式(6)をさらに充足する蓄電デバイス。
式(4) 0<QA<QC
式(5) 0.001≦QA/QC≦0.8
式(6) 0.001≦QA/QB≦0.8
【請求項3】
請求項に記載の蓄電デバイスであって、
以下の式(7)をさらに充足する蓄電デバイス。
式(7) 0.7≦QB/QC≦0.99
【請求項4】
正極、セパレータ、及び、負極を備える電極ユニットと、電解液と、を備え、
前記負極にリチウムがドープされた蓄電デバイスであって、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを備え、
前記負極活物質層は、
前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、
前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、
前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、
を有し、
充電状態で前記蓄電デバイスを解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記端部領域Bの放電容量QBと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(7)及び式(9)を充足する蓄電デバイス。
式(7) 0.7≦QB/QC≦0.99
式(9) QA/QC≦0.1
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
前記負極活物質層が炭素系材料を含み、
前記負極活物質層における前記炭素系材料の含有率が80質量%以上99質量%以下である蓄電デバイス。
【請求項6】
請求項に記載の蓄電デバイスであって、
前記炭素系材料は黒鉛系粒子である蓄電デバイス。
【請求項7】
請求項に記載の蓄電デバイスであって、
前記炭素系材料はハードカーボン系粒子又はソフトカーボン系粒子である蓄電デバイス。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
前記負極活物質層の片面における目付量が30g/m以上150g/m以下である蓄電デバイス。
【請求項9】
請求項のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
前記負極活物質層の片面における厚みが45μm以上220μm以下である蓄電デバイス。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
前記負極活物質層がシリコン系材料を含み、
前記負極活物質層における前記シリコン系材料の含有率が10質量%以上95質量%以下である蓄電デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の蓄電デバイスであって、
前記シリコン系材料はSiOx(0≦x≦1.5)を含有するものである蓄電デバイス。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の蓄電デバイスであって、
前記負極活物質層の片面における目付量が10g/m以上150g/m以下である蓄電デバイス。
【請求項13】
請求項1012のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
前記負極活物質層の厚みが7μm以上150μm以下である蓄電デバイス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の蓄電デバイスであって、
前記負極へのリチウムドープは、前記負極の作成後、且つ前記電極ユニットの組立前に実施されたものである蓄電デバイス。
【請求項15】
電極セルを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える負極にリチウムをドープし、
リチウムをドープされた前記負極と、セパレータと、正極活物質層を備える正極とを順次積層して前記電極セルを形成し、
前記負極活物質層は、
前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、
前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、
前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、
を有し、
前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記余剰領域Aの負極電位VAと、前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記中心領域Cの負極電位VCとが、以下の式(1)~(3)を充足するリチウムイオン二次電池の製造方法。
式(1) VA≦2.0V
式(2) VC≦1.0V
式(3) VA/VC≧0.7
【請求項16】
電極セルを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える負極にリチウムをドープし、
リチウムをドープされた前記負極と、セパレータと、正極活物質層を備える正極とを順次積層して前記電極セルを形成し、
前記負極活物質層は、
前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、
前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、
前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、
を有し、
充電状態で前記リチウムイオン二次電池を解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(4)及び以下の式(5)を充足し
充電状態で前記リチウムイオン二次電池を解体し、前記放電容量QA及び前記放電容量QCに加えて、前記端部領域Bの放電容量QBをさらに測定した場合、以下の式(6)をさらに充足するリチウムイオン二次電池の製造方法。
式(4) 0<QA<QC
式(5) 0.001≦QA/QC≦0.8
式(6) 0.001≦QA/QB≦0.8
【請求項17】
電極セルを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える負極にリチウムをドープし、
リチウムをドープされた前記負極と、セパレータと、正極活物質層を備える正極とを順次積層して前記電極セルを形成し、
前記負極活物質層は、
前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、
前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、
前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、
を有し、
充電状態で前記リチウムイオン二次電池を解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記端部領域Bの放電容量QBと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(7)、(9)を充足するリチウムイオン二次電池の製造方法。
式(7) 0.7≦QB/QC≦0.99
式(9) QA/QC≦0.1
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2019年6月3日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2019-103671号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2019-103671号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましい。電子機器の小型化・軽量化に伴い、電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても、小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
電池に対する小型化・軽量化の要求を満足するために、非水電解質二次電池が開発されている。非水電解質二次電池として、例えば、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。さらに、ナトリウムイオン型の電池やキャパシタも知られている。ナトリウムは、リチウムより低コストで資源的に豊富である。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、アルカリ金属を電極活物質に予めドープするプロセスが採用されている。アルカリ金属を電極活物質に予めドープするプロセスはプレドープと呼ばれている。
【0006】
例えば、リチウムイオンキャパシタでは、負極電位を下げ、エネルギー密度を高めることを目的としてリチウムのプレドープが行われる。この場合のプレドープの方法は、主に、貫通孔を有する集電体を利用してセル内で負極活物質にプレドープを行う方法である。この方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0007】
また、リチウムイオン二次電池では、負極の不可逆容量を低減させることを目的としてプレドープが行われる。この場合のプレドープの方法として、前記方法の他、電池を組み立てる前に負極活物質にプレドープを行う方法が知られている。この方法は、例えば、特許文献2、3に記載されている。さらに、ナトリウムイオン型の蓄電デバイスを作製する場合も、蓄電デバイスを組み立てる前に負極にナトリウムをプレドープする方法が採用されている。この方法は、例えば、特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-67105号公報
【文献】特開平7-235330号公報
【文献】特開平9-293499号公報
【文献】特開2012-69894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
負極の端部の周囲には電解液が潤沢にある。そのため、負極の端部に電流が集中し易い。また、負極の端部からリチウムが析出し易い。負極からリチウムが析出すると様々な問題が生じる。一方、負極の端部にプレドープを行わないと、プレドープによる効果が十分得られず、蓄電デバイスの特性が低下してしまう。
【0010】
本開示の一局面では、負極からリチウムが析出することを抑制でき、優れた特性を有する蓄電デバイス及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一局面は、正極、セパレータ、及び、負極を備える電極ユニットと、電解液と、を備え、前記負極にリチウムがドープされた蓄電デバイスであって、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、を有し、前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記余剰領域Aの負極電位VAと、前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記中心領域Cの負極電位VCとが、以下の式(1)~(3)を充足する蓄電デバイスである。
【0012】
式(1) VA≦2.0V
式(2) VC≦1.0V
式(3) VA/VC≧0.7
本開示の一局面である蓄電デバイスは、負極からリチウムが析出することを抑制でき、優れた特性を有する。
【0013】
本開示の別の局面は、正極、セパレータ、及び、負極を備える電極ユニットと、電解液と、を備え、前記負極にリチウムがドープされた蓄電デバイスであって、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、を有し、充電状態で前記蓄電デバイスを解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(4)を充足する蓄電デバイスである。
【0014】
式(4) 0<QA<QC
本開示の別の局面である蓄電デバイスは、負極からリチウムが析出することを抑制でき、優れた特性を有する。
【0015】
本開示の別の局面は、正極、セパレータ、及び、負極を備える電極ユニットと、電解液と、を備え、前記負極にリチウムがドープされた蓄電デバイスであって、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、を有し、充電状態で前記蓄電デバイスを解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記端部領域Bの放電容量QBと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(7)及び式(9)を充足する蓄電デバイスである。
【0016】
式(7) 0.7≦QB/QC≦0.99
式(9) QA/QC≦0.1
本開示の別の局面である蓄電デバイスは、負極からリチウムが析出することを抑制でき、優れた特性を有する。
【0017】
本開示の別の局面は、電極セルを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える負極にリチウムをドープし、リチウムをドープされた前記負極と、セパレータと、正極活物質層を備える正極とを順次積層して前記電極セルを形成し、前記負極活物質層は、前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、を有し、前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記余剰領域Aの負極電位VAと、前記正極と前記負極とを短絡させた後の前記中心領域Cの負極電位VCとが、以下の式(1)~(3)を充足するリチウムイオン二次電池の製造方法である。
【0018】
式(1) VA≦2.0V
式(2) VC≦1.0V
式(3) VA/VC≧0.7
本開示の別の局面であるリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、負極からリチウムが析出することを抑制でき、優れた特性を有するリチウムイオン二次電池を製造できる。
【0019】
本開示の別の局面は、電極セルを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える負極にリチウムをドープし、リチウムをドープされた前記負極と、セパレータと、正極活物質層を備える正極とを順次積層して前記電極セルを形成し、前記負極活物質層は、前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、を有し、充電状態で前記リチウムイオン二次電池を解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(4)を充足するリチウムイオン二次電池の製造方法である。
【0020】
式(4) 0<QA<QC
本開示の別の局面であるリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、負極からリチウムが析出することを抑制でき、優れた特性を有するリチウムイオン二次電池を製造できる。
【0021】
本開示の別の局面は、電極セルを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える負極にリチウムをドープし、リチウムをドープされた前記負極と、セパレータと、正極活物質層を備える正極とを順次積層して前記電極セルを形成し、前記負極活物質層は、前記正極活物質層と対向しない余剰領域Aと、前記正極活物質層のうち、前記正極活物質層の端部から、前記正極活物質層の中心から前記端部までの長さの5%の長さだけ、前記中心の方向に延びる領域と対向する端部領域Bと、前記余剰領域A及び前記端部領域B以外の中心領域Cと、を有し、充電状態で前記リチウムイオン二次電池を解体し、前記余剰領域Aの放電容量QAと、前記端部領域Bの放電容量QBと、前記中心領域Cの放電容量QCとを測定した場合、以下の式(7)、(9)を充足するリチウムイオン二次電池の製造方法である。
【0022】
式(7) 0.7≦QB/QC≦0.99
式(9) QA/QC≦0.1
本開示の別の局面であるリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、負極からリチウムが析出することを抑制でき、優れた特性を有するリチウムイオン二次電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電極製造装置の構成を表す説明図である。
図2図2Aは、電極前駆体及び蓄電デバイス用負極の構成を表す平面図であり、図2Bは、図2AにおけるIIB-IIB断面での断面図である。
図3】余剰領域A、端部領域B、中心領域C、及び有効幅EWを表す説明図である。
図4】対極ユニット、多孔質絶縁部材、及び樹脂板の構成を表す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1…電極製造装置、3、5…電解液槽、7…洗浄槽、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45…搬送ローラ、47…供給ロール、49…巻取ロール、51…対極ユニット、53…多孔質絶縁部材、55…支持台、57…循環濾過ユニット、61…直流電源、63…ブロア、67、68…支持棒、69…仕切り板、70…支持棒、71…空間、73…電極前駆体、75…蓄電デバイス用負極、79…アルカリ金属含有板、81…フィルタ、83…ポンプ、85…配管、93…負極集電体、95…負極活物質層、99…正極活物質層、108…マスク、109…露出部
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
1.蓄電デバイス
(1-1)蓄電デバイスの全体構成
本開示の蓄電デバイスは、電極ユニットと、電解液とを備える。電極ユニットは、正極、セパレータ、及び負極を備える。負極は、負極集電体と、負極活物質層とを備える。負極活物質層は、負極集電体の表面に形成されている。負極には、リチウムがドープされている。
【0027】
本明細書において、「正極」とは、放電の際に電流が流出し、充電の際に電流が流入する側の極を意味する。本明細書において、「負極」とは、放電の際に電流が流入し、充電の際に電流が流出する側の極を意味する。本明細書において、正極と負極とを短絡させた後の負極電位とは、以下の方法で求められる負極電位をいう。具体的には蓄電デバイスを充放電試験機にて12時間以上かけて0Vまで定電流放電させ、次いで、正極端子と負極端子とを電気的に短絡させた状態で12時間以上放置した後に短絡を解除し、短絡解除後0.5~1.5時間内に測定した値である。
【0028】
本明細書において、「リチウムがドープされた」とは、リチウムが、金属、イオン、化合物等の各種の状態で吸蔵、インターカレーション、吸着、担持、合金化、又は挿入された状態を意味する。「ドープ」として、例えば、正極活物質にリチウム及びアニオンの少なくとも一方が入る現象、及び、負極活物質にリチウムイオンが入る現象等が挙げられる。「脱ドープ」とは、脱離、放出を意味する。「脱ドープ」として、例えば、正極活物質からリチウムイオン又はアニオンが脱離する現象、及び、負極活物質からリチウムイオンが脱離する現象等が挙げられる。
【0029】
本開示の蓄電デバイスにおいて、負極及び正極の少なくとも一方にリチウムを予めドープすることが好ましい。本開示の蓄電デバイスにおいて、負極にリチウムを予めドープすることがより好ましい。
【0030】
負極及び正極の少なくとも一方にリチウムを予めドープする方法として、例えば、電極製造装置により、負極及び正極の少なくとも一方とリチウム極とを電気的に接続することで、リチウムをドープする方法が挙げられる。リチウム極は、金属リチウム等を含む。
【0031】
本開示の蓄電デバイスは、例えば、以下のように製造できる。正極集電体の表面に正極活物質層を形成して正極を製造する。負極集電体の表面に負極活物質層を形成して負極を製造する。負極にリチウムイオンをドープする。負極にリチウムイオンをドープするために、例えば、ドーピングユニットを使用することができる。ドーピングユニットは、例えば、ドーピング槽と、搬送ユニットと、対極ユニットと、接続ユニットと、多孔質絶縁部材とを備える。後述する電極製造装置1はドーピングユニットに対応する。後述する電解液槽3、5はドーピング槽に対応する。
【0032】
ドーピング槽は、リチウムイオンを含む溶液を収容する。搬送ユニットは、ドーピング槽内を通過する経路に沿って、電極前駆体を搬送する。対極ユニットは、ドーピング槽に収容される。接続ユニットは、電極前駆体と対極ユニットとを電気的に接続する。多孔質絶縁部材は、電極前駆体と対極ユニットとの間に配置され、電極前駆体と非接触である。
【0033】
次に、正極、第1のセパレータ、負極、及び第2のセパレータを順次積層し、積層体を形成する。積層体は、例えば、正極、第1のセパレータ、負極、及び第2のセパレータから成る単位を3単位以上積層したものである。積層体の形態は、例えば、板状、シート状、捲回された形態等である。積層体は電極ユニットに対応する。
【0034】
次に、電極ユニットを外装容器に封入する。外装容器の形態は、例えば、角型、円筒型、ラミネート状等である。外装容器は、フィルムであってもよいし、缶であってもよい。その後、外装容器に電解液を充填する。以上の工程により、蓄電デバイスが完成する。
【0035】
リチウムドープ割合は、負極の放電容量C2に対して5%以上95%以下であることが好ましく、10%以上70%以下であることがより好ましく、15%以上50%以下であることがさらに好ましい。リチウムドープ割合とは、負極の放電容量C2に対する、負極活物質層へのリチウムのドープ量の比率である。負極活物質層へのリチウムのドープ量とは、リチウムのドープに用いた電流の容量を負極活物質の質量で除した値である。負極活物質層へのリチウムのドープ量の単位はmAh/gである。
【0036】
負極の放電容量C2とは、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で負極を充放電した際の負極の放電容量を前記負極活物質層に含まれる負極活物質の質量で除した値である。リチウムドープ割合が、負極の放電容量C2の5%以上95%以下である場合、蓄電デバイスのサイクル耐久性が一層向上する。
【0037】
本開示の蓄電デバイスは、例えば、特開2004-266091号公報等に記載されている蓄電デバイスと基本的に同様の構成を備えることができる。
【0038】
(1-2)蓄電デバイスの具体例
本開示の蓄電デバイスの具体例として、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。本明細書において、リチウムイオン二次電池とは、正極及び負極が非分極性電極である、リチウムイオンを含有する蓄電デバイスを意味する。
【0039】
(1-3)集電体
本明細書において「集電体」とは、正極集電体と負極集電体との両方を意味する。正極は、電気を受配電する正極集電体を備える。負極は、電気を受配電する負極集電体を備える。
【0040】
(1-4)正極集電体
正極集電体の材質として、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。正極集電体の材質として、アルミニウムが好ましい。正極集電体の厚みは特に限定されないが、1μm~50μmの範囲が好ましく、5μm~40μmの範囲がより好ましく、10μm~40μmの範囲が特に好ましい。
【0041】
正極集電体における開口率(以下では正極集電体開口率とする)は、0%以上0.1%以下が好ましく、0%がより好ましい。ここで、正極集電体開口率は、下記式(10)により求めることができる。
【0042】
式(10) 正極集電体開口率(%)=〔1-(正極集電体の質量/正極集電体の真比重)/(正極集電体の見かけ体積)〕×100
前記式(10)において、「正極集電体の真比重」とは、正極集電体に孔が開いていないと仮定した場合の正極集電体の単位体積当たりの質量である。「正極集電体の見かけ体積」とは、正極集電体に孔が開いていないと仮定した場合の正極集電体の体積である。「正極集電体の見かけ体積」は、正極集電体の縦寸法、横寸法及び厚み寸法をそれぞれ測定し、それらの測定値に基づいて算出される体積である。正極集電体開口率が0%以上0.1%以下であることにより、正極集電体への正極活物質層の塗工が容易になる。
【0043】
(1-5)正極活物質
正極活物質として、リチウムを可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質が用いられる。正極活物質として、例えば、コバルト酸リチウム、活性炭等が挙げられる。コバルト酸リチウムの比表面積は、0.1m/g~30m/gであることが好ましい。また、活性炭の50%体積累積径(D50)は、活性炭の充填密度の観点から、3μm~30μmであることが好ましい。活性炭の比表面積及び50%体積累積径(D50)が上記の範囲内にある場合、蓄電デバイスのエネルギー密度がさらに向上する。ここで、50%体積累積径(D50)の値は、マイクロトラック法により求められる値である。
【0044】
得られる正極が3V以上の領域で充放電できるように、正極活物質を選択することが好ましい。「3V以上の領域で充放電できる」とは、正極を作用極とし、対極、参照極に金属リチウムを用いた3極式セルにて、掃引速度0.1mV/minで3V以上の領域でサイクリックボルタンメトリー測定を行った場合に、3V以上の領域に酸化電流と還元電流が確認され、酸化電流の面積に対する還元電流の面積比が0.5以上であり、且つ、還元電流の面積から計算される容量が50mAh/g以上であることを意味する。
【0045】
なお、酸化電流の面積は、電流値0Aを示す軸と、酸化波とに囲まれた領域の面積である。また、還元電流の面積は、電流値0Aを示す軸と、還元波とで囲まれた領域の面積である。酸化電流の面積に対する還元電流の面積比は通常、2.0以下である。還元電流の面積から計算される容量は通常、1000mAh/g以下である。
【0046】
3V以上の領域で充放電できる正極を得るための正極活物質として、例えば、遷移金属酸化物、無機酸系化合物が挙げられる。遷移金属酸化物として、コバルト酸リチウム等のコバルト酸化物、ニッケル酸リチウム等のニッケル酸化物、マンガン酸リチウム等のマンガン酸化物、バナジウム酸リチウム等のバナジウム酸化物等、ニッケル-コバルト-マンガンの三元系遷移酸化物、ニッケル-コバルト-アルミニウムの三元系遷移酸化物等のリチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられる。また、無機酸系化合物として、リン酸鉄リチウム、ピロリン酸鉄リチウム等のリン酸系化合物等が挙げられる。
【0047】
(1-6)正極活物質層
正極活物質層は、正極集電体に、正極活物質を付着させることにより形成される。正極活物質を付着させる方法として、例えば、塗布、印刷、射出、噴霧、蒸着又は圧着等が挙げられる。
【0048】
正極活物質層の厚みは、10μm~200μmであることが好ましく、25μm~100μmであることがより好ましく、50~100μmであることが特に好ましい。
【0049】
正極の両面に正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の厚みとは、正極の両面に形成された正極活物質層の合計の厚みに1/2を乗じた、片面あたりの平均の厚みを意味する。正極の片面のみに正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の厚みとは、正極の片面に形成された正極活物質層の厚みを意味する。また、正極活物質層の厚みとは、正極活物質層をロールプレスした後の厚みである。
【0050】
正極活物質層の厚みが上記範囲内である場合、正極活物質層内を移動するイオンの拡散抵抗が小さくなる。その結果、蓄電デバイスの内部抵抗が低下する。また、正極活物質層の厚みが上記範囲内である場合、正極容量を大きくすることができるため、セル容量を大きくすることができる。その結果、蓄電デバイスの容量が大きくなる。
【0051】
ロールプレスした正極活物質層の電極密度は、0.1g/cm~5g/cmであることが好ましく、1g/cm~4.5g/cmであることがより好ましく、2g/cm~4g/cmであることが特に好ましい。正極活物質層の電極密度が上記の下限以上、上記の上限以下の範囲内である場合、蓄電デバイスのエネルギー密度が大きくなり、蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。
【0052】
正極活物質層の電極密度は、以下の方法で測定できる。蓄電デバイスを解体することによって正極を得る。得られた正極をジエチルカーボネートで洗浄処理し、100℃で真空乾燥する。正極活物質層の質量及び正極活物質の外形体積を測定する。正極活物質層の質量を、当該正極活物質層の外形体積によって除することによって、正極活物質層の電極密度を求める。ここで、「正極活物質層の外形体積」とは、正極活物質層の縦寸法、横寸法及び厚み寸法をそれぞれ測定し、それらの測定値に基づいて算出される体積である。
【0053】
なお、正極活物質層の電極密度を上記範囲に設定する方法として、正極活物質層に対し、ロールプレス等を行う方法が挙げられる。
【0054】
正極活物質層の目付量は、10g/m~500g/mであることが好ましく、20g/m~250g/mであることがさらに好ましい。正極の両面に正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の目付量とは、正極の両面に形成された正極活物質層の合計の目付量に1/2を乗じた、片面あたりの平均の目付量を意味する。正極の片面のみに正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の目付量とは、正極の片面に形成された正極活物質層の目付量を意味する。
【0055】
正極活物質層の目付量が上記範囲内である場合、蓄電デバイスのエネルギー密度が大きくなり、蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。
【0056】
正極活物質層の目付量は、以下の方法で測定できる。蓄電デバイスを解体することによって正極を得る。得られた正極をジエチルカーボネートで洗浄処理し、100℃で乾燥する。正極から、所定の面積を有する測定サンプルを打ち抜いて質量を測定する。その後、測定サンプルにおいて、正極活物質層を正極集電体から剥離し、残った正極集電体の質量を測定する。測定サンプルの質量から、残った正極集電体の質量を差し引いて正極活物質層の質量を算出する。正極活物質層の質量を、測定サンプルの面積で除することによって、正極活物質層の目付量を算出する。
【0057】
(1-7)負極集電体
負極集電体として、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。負極集電体の厚みは特に限定されない。負極集電体の厚みは、通常、1μm~50μmであり、5μm~20μmであることが特に好ましい。
【0058】
負極集電体の開口率(以下では負極集電体開口率とする)は、0%以上0.1%以下である。負極集電体開口率は、0%以上0.05%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。負極集電体が貫通孔を有さない場合、負極集電体開口率は0%となる。ここで、負極集電体開口率は、下記式(11)により求めることができる。
【0059】
式(11) 負極集電体開口率(%)=〔1-(負極集電体の質量/負極集電体の真比重)/(負極集電体の見かけ体積)〕×100
前記式(11)において、「負極集電体の真比重」とは、負極集電体に孔が開いていないと仮定した場合の負極集電体の単位体積当たりの質量である。「負極集電体の見かけ体積」とは、負極集電体に孔が開いていないと仮定した場合の負極集電体の体積である。「負極集電体の見かけ体積」は、負極集電体の縦寸法、横寸法及び厚み寸法をそれぞれ測定し、それらの測定値に基づいて算出される体積である。
【0060】
負極集電体開口率の上限は、0.05%であることが好ましく、0%であることが特に好ましい。負極集電体開口率が上記の上限以下である場合、負極集電体の厚みが小さくても、負極集電帯の電極強度を維持することができる。その結果、電極及びセル製造時における負極集電体の破断を抑制することができる。さらに、負極集電体開口率が上記の上限以下である場合、負極の抵抗を低減することができる。
【0061】
(1-8)負極活物質
負極活物質として、リチウムを可逆的にドープ・脱ドープ可能である物質を使用できる。負極活物質として、例えば、シリコン系材料、炭素系材料等が挙げられる。シリコン系材料として、例えば、Si、SiO、SiOC等が挙げられる。炭素系材料として、例えば、黒鉛系粒子、ハードカーボン系粒子、ソフトカーボン系粒子、ポリアセン系有機半導体(PAS)等が挙げられる。黒鉛系粒子として、例えば、黒鉛系複合粒子、ポリアセン系有機半導体(PAS)等が挙げられる。
【0062】
黒鉛系粒子、ハードカーボン系粒子、ソフトカーボン系粒子は、それぞれ、黒鉛、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)を主材として含有する複合粒子を含む。複合粒子として、例えば、上記主材の芯粒子と、芯粒子の表面を被覆する黒鉛化物質とを備えるものが挙げられる。黒鉛化物質として、例えば、タール、ピッチ由来の黒鉛化物質等が挙げられる。
【0063】
黒鉛系粒子、ハードカーボン系粒子、ソフトカーボン系粒子の50%体積累積径(D50)は、1.0μm~35μmの範囲内であることが好ましく、2μm~30μmの範囲内であることがより好ましい。黒鉛系粒子、ハードカーボン系粒子、ソフトカーボン系粒子の50%体積累積径(D50)が1.0μm以上である場合、黒鉛系粒子の製造が容易である。また、黒鉛系粒子、ハードカーボン系粒子、ソフトカーボン系粒子の50%体積累積径(D50)が1.0μm以上である場合、充電時にガスが発生し難い。その結果、蓄電デバイスの耐久性が向上する。黒鉛系粒子、ハードカーボン系粒子、ソフトカーボン系粒子の50%体積累積径(D50)は、マイクロトラック法により求められる値である。
【0064】
ポリアセン系有機半導体は、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物である。ポリアセン系有機半導体は、ポリアセン系骨格構造を有する。ポリアセン系骨格構造において、水素原子及び炭素原子の原子数比は0.05~0.50である。水素原子及び炭素原子の原子数比とは、水素原子の数を炭素原子の数で除した値である。
【0065】
ポリアセン系有機半導体において、水素原子及び炭素原子の原子数比が0.50以下である場合、電子伝導性が高くなるため、セルの内部抵抗が高くなる。水素原子及び炭素原子の原子数比が0.05以上である場合は、単位質量当たりの容量が増加するため、セルのエネルギー密度が増加する。
【0066】
上記芳香族系縮合ポリマーとは、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との縮合物である。芳香族炭化水素化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。アルデヒド類として、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。
【0067】
負極活物質の比表面積は、0.1m/g~200m/gであることが好ましく、0.5m/g~50m/gであることがより好ましい。負極活物質の比表面積が0.1m/g以上である場合、得られる蓄電デバイスの抵抗が低くなる。負極活物質の比表面積が200m/g以下である場合、得られる蓄電デバイスの充電時における不可逆容量が低くなり、充電時にガスが発生し難くなる。その結果、蓄電デバイスの耐久性が向上する。
【0068】
(1-9)負極活物質層
負極活物質層は、負極集電体の表面に負極活物質を付着させることにより形成される。負極活物質を付着させる方法として、例えば、塗布、印刷、射出、噴霧、蒸着又は圧着等が挙げられる。
【0069】
図3に示すように、負極活物質層95は、例えば、余剰領域Aと、端部領域Bと、中心領域Cと、を有する。図3は、負極の幅方向Wに平行な断面で負極活物質層95を表した模式図である。負極が長尺の帯状の形態を有する場合、幅方向Wとは、負極の長手方向に直交する方向である。また、負極が矩形の形態を有する場合、幅方向Wとは、負極のいずれかの辺に平行な方向である。
【0070】
余剰領域Aとは、負極及び正極の厚み方向において、正極活物質層99と対向しない領域である。端部領域Bとは、負極及び正極の厚み方向において、正極活物質層99の正極端部領域101と対向する領域である。正極端部領域101とは、正極活物質層99の幅方向Wにおける端部103から、長さL1だけ、中心105の方向に延びる領域である。中心105は、正極活物質層99の幅方向Wにおける中心である。長さL1は、端部103から中心105までの長さL2の5%である。中心領域Cは、負極活物質層95のうち、余剰領域A及び端部領域B以外の領域である。負極活物質層95の幅方向Wにおける中心は、例えば、負極及び正極の厚み方向において、中心105と対向する。負極活物質層95は、例えば、図3に示すように、幅方向Wにおける両側に、それぞれ、余剰領域A及び端部領域Bを有する。
【0071】
負極を蓄電デバイスの製造に用いる場合、負極活物質層は、以下の式(1)~(3)を充足することが好ましい。負極をリチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、負極活物質層は、以下の式(1)~(3)を充足することが好ましい。
【0072】
式(1) VA≦2.0V
式(2) VC≦1.0V
式(3) VA/VC≧0.7
VAは、正極と負極とを短絡させた後の余剰領域Aの負極電位である。VCは、正極と負極とを短絡させた後の中心領域Cの負極電位である。VA及びVCの測定方法は、後述する実施例に記載された測定方法である。
【0073】
また、負極活物質層は、以下の式(4)を充足することが好ましい。
【0074】
式(4) 0<QA<QC
QAは、充電状態で蓄電デバイスを解体し、測定した余剰領域Aの放電容量である。QCは、充電状態で蓄電デバイスを解体し、測定した中心領域Cの放電容量である。QA及びQCの測定方法は、後述する実施例に記載された測定方法である。
【0075】
また、QA/QCは、0.001以上0.8以下であることが好ましく、0.002以上0.2以下であることがより好ましい。QA/QCが0.001以上0.8以下である場合、過放電を抑制し、リチウムの析出を抑制することができる。QA/QCが0.002以上0.2以下である場合、過放電を一層抑制し、リチウムの析出を一層抑制することができる。
【0076】
QA/QBは、0.001以上0.8以下であることが好ましく、0.002以上0.2以下であることがより好ましい。QBは、充電状態で蓄電デバイスを解体し、測定した余端部領域Bの放電容量である。QBの測定方法は、後述する実施例に記載された測定方法である。QA/QBが0.001以上0.8以下である場合、過放電を抑制し、リチウムの析出を抑制することができる。QA/QBが0.002以上0.2以下である場合、過放電を一層抑制し、リチウムの析出を一層抑制することができる。
【0077】
また、QB/QCは、0.7以上0.99以下であることが好ましく、0.8以上0.98以下であることがより好ましい。QB/QCが0.7以上0.99以下である場合、過放電を抑制し、リチウムの析出を抑制することができる。QB/QCが0.8以上0.98以下である場合、過放電を一層抑制し、リチウムの析出を一層抑制することができる。
【0078】
また、負極活物質層は、以下の式(7)及び式(9)を充足することが好ましい。
【0079】
式(7) 0.7≦QB/QC≦0.99
式(9) QA/QC≦0.1
式(7)及び式(9)を充足する場合、リチウムの析出を抑制することができる。
【0080】
また、QB/QCは、0.75以上0.95以下であることが好ましい。QB/QCが0.75以上0.95以下である場合、リチウムの析出を一層抑制することができる。
【0081】
また、QA/QCは、0以上0.04以下であることが好ましい。QA/QCが0以上0.04以下である場合、リチウムの析出を一層抑制することができる。
【0082】
負極をリチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、負極活物質層の密度は、1.50g/cc~2.00g/ccであることが好ましく、1.60g/cc~1.90g/ccであることがより好ましい。
【0083】
負極活物質層は、シリコン系材料を含むことが好ましい。シリコン系材料として、例えば、Si、SiO、SiOC等が挙げられ、SiOxを含有するものが好ましい。xの値は0以上1.5以下である。負極活物質層がシリコン系材料を含む場合、負極容量が増大する。
【0084】
負極活物質層におけるシリコン系材料の含有率は、5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、10質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。負極活物質層におけるシリコン系材料の含有率が上記の範囲内である場合、負極容量が一層増大する。
【0085】
負極活物質層がシリコン系材料を含有する場合、負極活物質層の目付量は、10g/m以上150g/m以下であることが好ましく、20g/m以上90g/m以下であることがより好ましく、30g/m以上80g/m以下であることがさらに好ましい。
【0086】
負極の両面に負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の目付量とは、負極の両面に形成された負極活物質層の合計の目付量に1/2を乗じた、片面あたりの平均の目付量を意味する。負極の片面のみに負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の目付量とは、負極の片面に形成された負極活物質層の目付量を意味する。
【0087】
負極活物質層の目付量が上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。負極活物質層におけるシリコン系材料の含有率が5質量%以上99質量%以下であるとともに、負極活物質層の目付量が上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が一層向上する。なお、負極活物質層の目付量は、正極活物質層の目付量と同様の方法で測定できる。
【0088】
負極活物質層の厚みは、7μm以上150μm以下であることが好ましく、10μm以上60μm以下であることがより好ましく、25μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
【0089】
負極の両面に負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の厚みとは、負極の両面に形成された負極活物質層の合計の厚みに1/2を乗じた、片面あたりの平均の厚みを意味する。負極の片面のみに負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の厚みとは、負極の片面に形成された負極活物質層の厚みを意味する。また、負極活物質層の厚みとは、負極活物質層をロールプレスした後の厚みである。
【0090】
負極活物質層の厚みが上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。負極活物質層におけるシリコン系材料の含有率が5質量%以上99質量%以下であるとともに、負極活物質層の厚みが上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が一層向上する。
【0091】
また、負極活物質層は、炭素系材料を含むことが好ましい。負極活物質層が炭素系材料を含む場合、蓄電デバイスのサイクル特性が一層向上する。負極活物質層における炭素系材料の含有率は、80質量%以上99質量%以下であることが好ましい。負極活物質層における炭素系材料の含有率がこの範囲内である場合、蓄電デバイスのサイクル特性が一層向上する。
【0092】
負極活物質層における炭素系材料の含有率が80質量%以上99質量%以下である場合、負極活物質層の目付量は、30g/m以上150g/m以下であることが好ましく、60g/m以上130g/m以下であることがより好ましく、90g/m以上120g/m以下であることがさらに好ましい。負極活物質層の目付量が上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。
【0093】
負極活物質層における炭素系材料の含有率が80質量%以上99質量%以下である場合、負極活物質層の厚みは、45μm以上220μm以下であることが好ましく、60μm以上180μm以下であることがより好ましく、80μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。負極活物質層の厚みが上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。
【0094】
(1-10)正極及び負極の製造
上記のような正極活物質層を有する正極、及び負極活物質層を有する負極は、既知の製造方法により製造することができる。
【0095】
例えば、正極を、以下のようにして製造することができる。正極活物質と、バインダと、溶媒とを混合し、正極スラリーを調製する。正極スラリーは、必要に応じて、導電材や増粘剤をさらに含んでいてもよい。
【0096】
正極スラリーを正極集電体に塗布する方法で、正極活物質層を有する正極を製造することができる。また、正極スラリーをシート状に成形し、シート状の成形物を正極集電体に貼付する方法で、正極活物質層を有する正極を製造することができる。
【0097】
例えば、負極を、以下のようにして製造することができる。負極活物質と、バインダと、溶媒とを混合し、負極スラリーを調製する。負極スラリーは、必要に応じて、導電材や増粘剤をさらに含んでいてもよい。
【0098】
負極スラリーを負極集電体に塗布する方法で、負極活物質層を有する負極を製造することができる。また、負極スラリーをシート状に成形し、シート状の成形物を負極集電体に貼付する方法で、負極活物質層を有する負極を製造することができる。
【0099】
正極スラリー又は負極スラリーに含まれるバインダとして、例えば、ゴム系バインダ、含フッ素系樹脂、及びアクリル系樹脂等が挙げられる。ゴム系バインダとして、例えば、SBR等が挙げられる。含フッ素系樹脂として、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等をアクリル系樹脂でシード重合させた含フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0100】
正極スラリー又は負極スラリーに含まれる溶媒として、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。 正極スラリー又は負極スラリーに含まれる導電材として、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、金属粉末等が挙げられる。正極スラリー又は負極スラリーに含まれる増粘剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0101】
正極スラリー又は負極スラリーにおけるバインダ及び導電材の添加量は、用いる活物質の電気伝導度、作製する電極形状等に応じて適宜調整することができる。バインダ及び導電材の添加量は、通常、活物質に対して2質量%~20質量%であることが好ましく、2質量%~10質量%であることが特に好ましい。なお、活物質とは正極活物質又は負極活物質を意味する。
【0102】
(1-11)セパレータ
本開示の蓄電デバイスにおけるセパレータの材料として、透気度が1sec~200secの範囲内にあるセパレータが好ましい。透気度は、JISP8117に準拠した方法により測定される値である。
【0103】
セパレータとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース、ポリオレフィン、セルロース/レーヨン等から構成される不織布や微多孔質膜等の中から適宜選択して用いることができる。セパレータとして、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はセルロース/レーヨン製の不織布が好ましい。
【0104】
セパレータの厚みは、例えば、5μm~20μmであり、5μm~15μmであることが好ましい。セパレータの厚みが5μm以上の場合、短絡が生じ難い。セパレータの厚みが20μm以下の場合、抵抗が低くなる。
【0105】
(1-12)電解液
本開示の蓄電デバイスにおいて、電解液として、例えば、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を用いることができる。
【0106】
電解液は、例えば、非プロトン性有機溶媒を含む。非プロトン性有機溶媒として、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート等が挙げられる。環状カーボネートとして、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートとして、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(EC)、メチルプロピルカーボネート等が挙げられる。電解液は、上述した物質のうち、2種以上を混合した混合溶媒であってもよい。
【0107】
非プロトン性有機溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネート以外の有機溶媒を含んでいてもよい。環状カーボネート及び鎖状カーボネート以外の有機溶媒として、例えば、環状エーテル、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状エーテルとして、例えば、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルとして、例えば、プロピオン酸エチル等が挙げられる。鎖状エーテルとして、例えば、ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0108】
電解液は電解質を含む。電解質として、例えば、リチウム塩等が挙げられる。リチウム塩として、例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LiN(CSO、LiN(CFSO等が挙げられる。
【0109】
リチウム塩として、特に、LiPFが好ましい。LiPFは、イオン伝導性が高く、低抵抗である。電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.1mol/L以上であることが好ましく、0.5~1.5mol/Lであることがより好ましい。電解液におけるリチウム塩の濃度が上記の範囲内である場合、蓄電デバイスの内部抵抗を低くすることができる。
【0110】
2.蓄電デバイス用負極の製造方法
(2-1)電極製造装置1の構成
蓄電デバイスが備える負極(以下では、蓄電デバイス用負極ともいう)は、例えば、図1に示す電極製造装置1により製造できる。
【0111】
電極製造装置1の構成を、図1に基づき説明する。電極製造装置1は、電解液槽3、5と、洗浄槽7と、搬送ローラ9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール47と、巻取ロール49と、対極ユニット51と、多孔質絶縁部材53と、支持台55と、循環濾過ユニット57と、2つの直流電源61と、ブロア63と、を備える。
【0112】
電解液槽3は、上方が開口した角型の槽である。電解液槽3の底面は、略U字型の断面形状を有する。電解液槽3内には、仕切り板69と、4個の対極ユニット51と、4個の多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ17とが存在する。
【0113】
仕切り板69は、その上端を貫く支持棒67により支持されている。支持棒67は図示しない壁等に固定されている。仕切り板69のうち、上端を除く部分は、電解液槽3内にある。仕切り板69は上下方向に延び、電解液槽3の内部を2つの空間に分割している。仕切り板69の下端に、搬送ローラ17が取り付けられている。仕切り板69と搬送ローラ17とは、それらを貫く支持棒68により固定されている。なお、仕切り板69の下端付近は、搬送ローラ17と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ17と、電解液槽3の底面との間には空間が存在する。
【0114】
4個の対極ユニット51は、それぞれ、それらの上端を貫く支持棒70により支持され、上下方向に延びている。支持棒70は図示しない壁等に固定されている。対極ユニット51のうち、上端を除く部分は、電解液槽3内にある。4個の対極ユニット51のうち、2個は、仕切り板69を両側から挟むように配置されている。残りの2個の対極ユニット51は、電解液槽3の内側面に沿って配置されている。
【0115】
仕切り板69側に配置された対極ユニット51と、電解液槽3の内側面に沿って配置された対極ユニット51との間には空間71が存在する。対極ユニット51は、直流電源61のプラス極に接続される。対極ユニット51の詳しい構成は後述する。
【0116】
それぞれの対極ユニット51における空間71側の表面に、多孔質絶縁部材53が取り付けられている。多孔質絶縁部材53の詳しい構成は後述する。
【0117】
洗浄槽7は、基本的には電解液槽3と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽7の内部には、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53は存在しない。
【0118】
電解液槽5は、基本的には電解液槽3と同様の構成を有する。ただし、電解液槽5内には、搬送ローラ17でなく、搬送ローラ27が存在する。
【0119】
搬送ローラ群は、後述する電極前駆体73を一定の経路に沿って搬送する。その経路は、供給ロール47から、電解液槽3の中、電解液槽5の中、洗浄槽7の中を順次通り、巻取ロール49に至る経路である。
【0120】
その経路のうち、電解液槽3の中を通る部分は、まず、電解液槽3の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ17により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽3の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0121】
また、上記の経路のうち、電解液槽5の中を通る部分は、まず、電解液槽5の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ27により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽5の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0122】
また、上記の経路のうち、洗浄槽7の中を通る部分は、まず、洗浄槽7の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ37により移動方向を上向きに変えられ、最後に、洗浄槽7の内側面と、仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0123】
搬送ローラ群のうち、搬送ローラ15、21、25、29は導電性の材料から成る。また、搬送ローラ15、21、25、29は、直流電源61のマイナス極に接続される。搬送ローラ13は、電極前駆体73を搬送ローラ15の方向に押圧する。搬送ローラ19は、電極前駆体73を搬送ローラ21の方向に押圧する。搬送ローラ23は、電極前駆体73を搬送ローラ25の方向に押圧する。搬送ローラ31は、電極前駆体73を搬送ローラ29の方向に押圧する。搬送ローラ群は搬送ユニットに対応する。搬送ローラ15、21、25、29は導電性の搬送ローラに対応する。
【0124】
搬送ローラ13、19、23、31は、軸受部分を除き、エラストマーから成る。すなわち、搬送ローラ13、19、23、31は、それらの表面も含めて、エラストマーから成る。エラストマーは弾性体の一例である。よって、搬送ローラ13、19、23、31は弾性変形可能である。
【0125】
エラストマーは、天然ゴムであってもよいし、合成ゴムであってもよい。エラストマーとしては、例えば、EPDM、EPR、SBR、NBR、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0126】
供給ロール47は、その外周に電極前駆体73を巻き回している。すなわち、供給ロール47は、巻き取られた状態の電極前駆体73を保持している。搬送ローラ群は、供給ロール47に保持された電極前駆体73を引き出し、搬送する。
【0127】
巻取ロール49は、搬送ローラ群により搬送されてきた蓄電デバイス用負極75を巻き取り、保管する。なお、蓄電デバイス用負極75は、電極前駆体73に対し、電解液槽3、5においてリチウムのドープを行うことで製造されたものである。
【0128】
なお、リチウムのドープの態様としては、リチウムをイオンの状態で活物質にインターカレーションさせる態様であってもよいし、リチウムの合金が形成される態様であってもよいし、リチウムイオンがSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜となって消費される態様であってもよい。
【0129】
対極ユニット51は、上記のように、電解液槽3、5内に収容されている。対極ユニット51は、板状の形状を有する。対極ユニット51は、導電性基材と、アルカリ金属含有板とを積層した構成を有する。導電性基材の材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板の形態は特に限定されず、例えば、リチウム板、リチウムの合金板等が挙げられる。
【0130】
図3にアルカリ金属含有板79を示す。アルカリ金属含有板79のうち、幅方向Wにおける端部付近を、例えば、マスク108により覆うことができる。マスク108は、後述する樹脂板97であってもよいし、他の部材であってもよい。
【0131】
アルカリ金属含有板79のうち、マスク108等で覆われていない部分を露出部109とする。マスク108が存在しない場合、アルカリ金属含有板79の全体が露出部109となる。露出部109の、幅方向Wにおける長さを有効幅EWとする。
【0132】
マスク108を使用しない場合、アルカリ金属含有板79の幅を変化させることで、有効幅EWを変化させることができる。マスク108を使用する場合、マスク108の幅を変化させることで、有効幅EWを変化させることができる。
【0133】
電極前駆体73が電解液槽3、5の中を通るとき、図3に示すように、アルカリ金属含有板79は、負極活物質層95と対向する。有効幅EWを変化させることで、余剰領域A、端部領域B、及び中心領域Cのドープ量を変化させることができる。有効幅EWを小さくするほど、中心領域Cのドープ量に比べて、余剰領域A、及び端部領域Bのドープ量は少なくなる。有効幅EWが小さくなったときのドープ量の減少量は、余剰領域Aのドープ量の方が、端部領域Bのドープ量より一層著しい。
【0134】
有効幅EWを小さくするほど、放電容量QCに比べて、放電容量QA、及び放電容量QBは小さくなる。有効幅EWが小さくなったときの放電容量の減少量は、放電容量QAの方が、放電容量QBより一層著しい。
【0135】
有効幅EWを小さくするほど、負極電位VCに比べて、負極電位VA、及び負極電位VBは高くなる。有効幅EWが小さくなったときの負極電位の変化量は、負極電位VAの方が、負極電位VBより一層著しい。アルカリ金属含有板の厚みは、例えば、0.03~3mmとすることができる。
【0136】
多孔質絶縁部材53は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材53は、対極ユニット51の表面に取り付けられている。多孔質絶縁部材53が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材53が対極ユニット51の表面に取り付けられている際の形状である。多孔質絶縁部材53は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0137】
多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ群により搬送される電極前駆体73とは非接触である。多孔質絶縁部材53の表面から、電極前駆体73までの最短距離は、0.5~100mmの範囲内であることが好ましく、1~10mmの範囲内であることが特に好ましい。最短距離とは、多孔質絶縁部材53の表面のうち、電極前駆体73に最も近い点と、電極前駆体73との距離である。
【0138】
多孔質絶縁部材53は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材53を通過することができる。そのことにより、対極ユニット51は、ドープ溶液に接触することができる。
【0139】
多孔質絶縁部材53としては、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0140】
メッシュの目開きは適宜設定でき、例えば、0.1μm~10mmとすることができるが、0.1~5mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定でき、例えば、1μm~10mmとすることができるが、30μm~1mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定でき、例えば、5~95%とすることができるが、50~95%の範囲内にあることが好ましい。
【0141】
多孔質絶縁部材53は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0142】
例えば、図4に示すように、樹脂板97を使用することができる。樹脂板97は、アルカリ金属含有板79の表面のうち一部を覆っている。樹脂板97は、導電性基材77にネジ止めされている。アルカリ金属含有板79及び多孔質絶縁部材53は、樹脂板97と導電性基材77とに挟まれている。アルカリ金属含有板79のうち、樹脂板97で覆われている部分からは、アルカリ金属イオンがドープ溶液中に溶出しにくい。そのため、樹脂板97を設けることで、溶出するアルカリ金属イオンの量を抑制できる。
【0143】
また、樹脂板97の幅を調整することにより、溶出するアルカリ金属イオンの量を制御することができる。樹脂板97を、図3に示すマスク108とすることができる。この場合、樹脂板97は、図4に示すように、アルカリ金属含有板79のうち、幅方向Wにおける両端付近を覆う。マスク108の幅を変化させることにより、アルカリ金属含有板79の幅によらず、有効幅EWを変化させることができる。
【0144】
樹脂板97の材料は特に限定されない。樹脂板97の材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を用いることができる。
【0145】
支持台55は、電解液槽3、5及び洗浄槽7を下方から支持する。支持台55は、その高さを変えることができる。仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53の上下方向における位置を維持したまま、支持台55を低くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽3、5を相対的に下方に移動させることができる。また、支持台55高くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽3、5を相対的に上方に移動させることができる。
【0146】
循環濾過ユニット57は、電解液槽3、5にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット57は、フィルタ81と、ポンプ83と、配管85と、を備える。
【0147】
電解液槽3に設けられた循環濾過ユニット57において、配管85は、電解液槽3から出て、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通り、電解液槽3に戻る循環配管である。電解液槽3内のドープ溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再び電解液槽3に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ81により濾過される。異物としては、ドープ溶液から析出した異物や、電極前駆体73から発生する異物等が挙げられる。なお、図1において、ドープ溶液の記載は便宜上省略している。
【0148】
電解液槽5に設けられた循環濾過ユニット57において、配管85は、電解液槽5から出て、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通り、電解液槽5に戻る循環配管である。電解液槽5内のドープ溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再び電解液槽5に戻る。電解液槽5に設けられた循環濾過ユニット57も、電解液槽3に設けられた循環濾過ユニット57と同様の作用効果を有する。
【0149】
フィルタ81の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂とすることができる。フィルタ81の孔径は適宜設定でき、例えば、30~50μmとすることができる。
【0150】
2つの直流電源61のうちの一方(以下では、一方の直流電源61とする)におけるマイナス端子は、搬送ローラ15、21とそれぞれ接続する。また、一方の直流電源61のプラス端子は、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。この4個の対極ユニット51は電解液槽3内にある対極ユニット51である。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ15、21と接触し、また、電極前駆体73と、電解液槽3内にある対極ユニット51とは電解液であるドープ溶液中にあるから、電極前駆体73と、電解液槽3内にある対極ユニット51とは電気的に接続する。
【0151】
2つの直流電源61のうちの他方(以下では、他方の直流電源61とする)におけるマイナス端子は、搬送ローラ25、29とそれぞれ接続する。また、他方の直流電源61のプラス端子は、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。この4個の対極ユニット51は電解液槽5内にある対極ユニット51である。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ25、29と接触し、また、電極前駆体73と、電解液槽5内にある対極ユニット51とは電解液であるドープ溶液中にあるから、電極前駆体73と、電解液槽5内にある対極ユニット51とは電気的に接続する。
【0152】
ブロア63は、洗浄槽7から出てきた蓄電デバイス用負極75にガスを吹きつけて洗浄液を気化させ、蓄電デバイス用負極75を乾燥させる。使用するガスは、リチウムがドープされた活物質に対して不活性なガスであることが好ましい。そのようなガスとして、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、水分が除去された除湿空気等が挙げられる。
【0153】
(2-2)電極前駆体73の構成
電極前駆体73の構成を、図2A及び図2Bに基づき説明する。電極前駆体73は、長尺の帯状の部材である。図2Bに示すように、電極前駆体73は、負極集電体93と、負極活物質層95と、を備える。負極活物質層95は、負極集電体93の両面に形成されている。電極前駆体73において、負極活物質層95はリチウムを未だドープされていない。
【0154】
負極スラリーを負極集電体93に塗布する方法で、負極活物質層95を形成することができる。また、負極スラリーをシート状に成形し、シート状の成形物を負極集電体93に貼付する方法で、負極活物質層95を形成することができる。負極活物質層95は、例えば、図3に示すように、余剰領域Aと、端部領域Bと、中心領域Cと、を有する。
【0155】
(2-3)蓄電デバイス用負極の製造方法
電極前駆体73を供給ロール47に巻き回す。電解液槽3、5にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、リチウムイオンと、溶媒とを含む。溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。
【0156】
非プロトン性の有機溶媒として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、イオン液体等が挙げられる。イオン液体として、例えば、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等が挙げられる。上記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
【0157】
上記ドープ溶液に含まれるリチウムイオンは、リチウム塩を構成するイオンである。リチウム塩を構成するアニオン部としては、例えば、PF 、PF(C 、PF(CF 、等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF 、BF(CF) 、BF(CF、B(CN) 等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO 、N(CFSO 、N(CSO 等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CFSO 等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0158】
上記ドープ溶液におけるリチウム塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。ドープ溶液におけるリチウム塩の濃度が上記の範囲内である場合、リチウムのドープが効率良く進行する。
【0159】
上記ドープ溶液は、更に、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤を含有することができる。
【0160】
また、洗浄槽7に洗浄液を収容する。洗浄液は、例えば、非プロトン性溶剤を含むことが望ましい。非プロトン性溶剤として、例えば、カーボネート系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、含硫黄系溶剤及びアミド系溶剤から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0161】
洗浄液は、実質的に非プロトン性溶剤から成っていてもよいし、非プロトン性溶剤に加えて他の成分を含んでいてもよい。非プロトン性溶剤の沸点は、30℃以上200℃以下であることが好ましく、40℃以上150℃以下であることがより好ましく、50℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。沸点が30℃以上であることにより、洗浄槽7中の洗浄液が過度に気化してしまうことを抑制できる。沸点が200℃以下であることにより、洗浄後の蓄電デバイス用負極75から洗浄液を除去することが容易になる。
【0162】
電解液槽3に収容するドープ溶液の組成と、電解液槽5に収容するドープ溶液の組成とは異なることが好ましい。この場合、一層高品質の蓄電デバイス用負極75を効率的に製造することができる。
【0163】
電解液槽3、5におけるドープ溶液の組成が異なる態様としては、例えば、電解液槽3に収容されるドープ溶液におけるSEI被膜形成成分の濃度が、電解液槽5に収容されるドープ溶液におけるSEI被膜形成成分の濃度に比べて、高いこと等が挙げられる。電解液槽3に収容するドープ溶液の組成と、電解液槽5に収容するドープ溶液の組成とが異なることは、第1ドープ工程と第2ドープ工程とで、リチウムを活物質にドープする条件が異なることに対応する。
【0164】
次に、搬送ローラ群により、電極前駆体73を供給ロール47から引き出し、上述した経路に沿って搬送する。電極前駆体73が電解液槽3、5内を通過するとき、負極活物質層95に含まれる活物質にリチウムがドープされる。
【0165】
前記のようにリチウムがドープされる工程は、ドープ工程に対応する。電解液槽3で行われる第1ドープ工程における電流密度と、電解液槽5で行われる第2ドープ工程における電流密度とは異なることが好ましい。この場合、一層高品質の蓄電デバイス用負極75を効率良く製造することができる。
【0166】
第1ドープ工程と第2ドープ工程とで電流密度が異なる態様としては、例えば、第1ドープ工程における電流密度の方が、第2ドープ工程における電流密度に比べて、高い、あるいは、低いこと等が挙げられる。第1ドープ工程における電流密度と、第2ドープ工程における電流密度とが異なることは、第1ドープ工程と第2ドープ工程とで、リチウムを活物質にドープする条件が異なることに対応する。
【0167】
また、電解液槽3、5内に収容される対極ユニット51が導電性基材、及び前記導電性基材上に配置されたリチウム含有板を備える場合、電解液槽3内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量と、電解液槽5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量とが異なっていてもよい。
【0168】
また、電解液槽3における有効幅EWと、電解液槽5における有効幅EWとは、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、異なることが好ましい。電解液槽3における有効幅EWと、電解液槽5における有効幅EWとを異ならせる方法として、例えば、図3に示すマスク108を用いて、電解液槽3又は電解液槽5における有効幅EWを変化させる方法がある。また、電解液槽3における有効幅EWと、電解液槽5における有効幅EWとを異ならせる方法として、電解液槽3が備えるアルカリ金属含有板79自体の幅、又は、電解液槽5が備えるアルカリ金属含有板79自体の幅を変化させる方法がある。
【0169】
電解液槽3、5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量が異なる態様としては、例えば、電解液槽3内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量の方が、電解液槽5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量に比べて、多い、あるいは、少ないことが挙げられる。電解液槽3内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量と、電解液槽5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量とが異なることは、第1ドープ工程と第2ドープ工程とで、リチウムを負極活物質にドープする条件が異なることに対応する。
【0170】
負極活物質にリチウムがドープされることにより、電極前駆体73が蓄電デバイス用負極75となる。蓄電デバイス用負極75は搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽7で洗浄される。最後に、蓄電デバイス用負極75は、巻取ロール49に巻き取られる。蓄電デバイス用負極75は、負極活物質にリチウムがドープされている点を除き、電極前駆体73と同様の構成を有する。
【0171】
電極製造装置1は、リチウムイオン型のキャパシタ又は電池が備える蓄電デバイス用負極の製造に適しており、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が備える蓄電デバイス用負極の製造に特に適している。
【0172】
負極活物質層でのリチウムドープ割合は、負極の放電容量C2の5%以上95%以下であることが好ましい。この場合、負極容量及びサイクル耐久性はともに向上する。負極の放電容量C2とは、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で負極を充放電した際の負極の放電容量を前記負極活物質層に含まれる負極活物質の質量で除した値である。
【0173】
3.電池の製造方法
本開示の電池の製造方法は、正極、負極及び電解質を備える電池の製造方法であって、上記「2.蓄電デバイス用負極の製造方法」により蓄電デバイス用負極を製造する工程を含む。
【0174】
電池として、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池であれば特に限定されない。電池は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。電池として、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、空気電池等が挙げられる。その中でもリチウムイオン二次電池が好ましい。
【0175】
電池を構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質としては、既に例示したものの他、ニトロキシラジカル化合物等の有機活物質や酸素を使用することもできる。
【0176】
電池を構成する電解質の形態は、通常、液状の電解液である。電解液の基本的な構成は、上述したドープ溶液の構成と同様である。また、電解質におけるアルカリ金属イオンの濃度及びアルカリ金属塩の濃度は、0.1モル/L以上であることが好ましく、0.5~1.5モル/Lの範囲内であることがより好ましい。電解質は、漏液を防止する目的で、ゲル状又は固体状の形態を有していてもよい。
【0177】
電池は、正極と負極との間に、それらの物理的な接触を抑制するためのセパレータを備えることができる。セパレータとして、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムが挙げられる。
【0178】
電池の構造として、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る板状の構成単位が、3単位以上積層されて積層体を形成し、その積層体が外装フィルム内に封入された積層型セルが挙げられる。積層体は電極ユニットに対応する。電池の構造の別の形態として、捲回体が外装フィルムや外装缶内に封入された捲回型セルが挙げられる。捲回体は、長尺の帯状の負極、セパレータ、正極、セパレータを順に積層しながら捲回したものである。
【0179】
電池は、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0180】
4.実施例
(4-1)実施例1-1の蓄電デバイス用負極の製造
長尺の帯状の負極集電体を用意した。負極集電体のサイズは、幅150mm、長さ100m、厚さ8μmであった。負極集電体の表面粗さRaは0.1μmであった。負極集電体は銅箔から成っていた。
【0181】
図2Bに示すように、負極集電体93の両面に、それぞれ負極活物質層95を形成した。負極集電体93の両面に形成された負極活物質層95の片面あたりの平均の厚みは50μmであった。負極活物質層95は、負極集電体93の長手方向に沿って形成された。負極活物質層95は、負極集電体93の幅方向Wにおける中央部に、幅120mmにわたって形成された。負極集電体93の幅方向Wにおける両端での負極活物質層未形成部はそれぞれ15mmであった。負極活物質層未形成部とは、負極活物質層95が形成されていない部分である。
【0182】
その後、乾燥、プレス、及び裁断を行うことにより、電極前駆体73を得た。電極前駆体73の幅は135mmであった。電極前駆体73が備える負極活物質層95の幅は120mmであった。電極前駆体73は、幅方向Wにおける片側のみに負極活物質層未形成部を備えていた。負極活物質層未形成部の幅は15mmであった。
【0183】
負極活物質層95は、負極活物質、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック、バインダ及び分散剤を、質量比で88:3:5:3:1の比率で含んでいた。負極活物質は、シリコン系活物質と黒鉛系活物質の混合物であった。活物質は、シリコン系活物質と、黒鉛系活物質とを、質量比で2:8の比率で含んでいた。シリコン系活物質はSiOxを含有するものであった。xの値は1.0であった。アセチレンブラックは導電剤に対応する。
【0184】
次に、以下のようにして対極ユニットを製造した。まず、厚さ2mmの長尺の銅板を用意した。この銅板上に、リチウム金属板を貼り付けた。リチウム金属板のサイズは、幅120mm、長さ800mm、厚さ1mmであった。リチウム金属板は、銅板の長手方向に沿って貼り付けられた。このようにリチウム金属板を貼り付けた銅板を、対極ユニット51とした。同じ対極ユニット51を8枚製造した。リチウム金属板はアルカリ金属含有板79に対応する。
【0185】
図1に示す電極製造装置1を用意し、電極前駆体73を設置した。また、電解液槽3、5にそれぞれ対極ユニット51を設置した。次に、電解液槽3、5内に電解液を供給した。電解液は、1.4MのLiPFを含む溶液である。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合溶媒である。
【0186】
次に、電極製造装置1に設置した電極前駆体73及び対極ユニット51を電流・電圧モニター付き直流電源に接続し、電極前駆体73を0.1m/minの速度で搬送しながら、5Aの電流を通電した。このとき、電極前駆体73が備える負極活物質層95の幅方向Wにおける中心と、対極ユニット51が備えるリチウム金属板の幅方向Wにおける中心とが一致していた。通電時間は、不可逆容量を考慮した上、負極活物質層におけるリチウムドープ割合が負極の放電容量C2の25%になる時間とした。
【0187】
なお、不可逆容量は、リチウムをドープした後の負極の放電容量を測定することにより予め見積もっておいた。この工程により、負極活物質層95中の負極活物質にリチウムがドープされ、電極前駆体73は蓄電デバイス用負極75となった。なお、本実施例及び後述する各実施例及び各比較例において蓄電デバイス用負極はリチウムイオン二次電池用負極である。
【0188】
蓄電デバイス用負極75を、洗浄槽7を通過させた後、巻き取った。洗浄槽7には、25℃のDMC(ジメチルカーボネート)を収容しておいた。以上のようにして、蓄電デバイス用負極75を製造した。
【0189】
(4-2)実施例1-1の蓄電デバイス用正極の製造
長尺の帯状の正極集電体を用意した。正極集電体のサイズは、幅150mm、長さ100m、厚さ12μmであった。正極集電体はアルミニウム箔から成っていた。
【0190】
正極集電体の両面に、それぞれ正極下塗り層を形成した。正極下塗り層の上に、さらに正極活物質層を形成して、正極を作製した。次に、正極活物質層をロールプレスし、裁断することにより、正極を得た。正極が備える正極集電体の幅は125mmであった。正極が備える正極活物質層の幅は110mmであった。正極の両面に形成された正極活物質層の片面あたりの平均の厚みは67μmであった。
【0191】
正極活物質層未形成部は、正極の幅方向Wにおける片側のみにあった。正極活物質層未形成部とは、正極のうち、正極活物質層が形成されていない部分である。正極活物質層未形成部の幅は15mmであった。正極活物質層は、コバルト酸リチウム、アセチレンブラック、及びポリフッ化ビニリデンを、質量比で100:3:3の比率で含んでいた。
【0192】
上記で得た正極を作用極として用いて、対極および参照極に金属リチウムを用いた3極式セルを作製し、サイクリックボルタンメトリー測定を実施した。測定条件は、掃引速度0.1mV/秒、電圧範囲3.0~4.3Vとした。2ndサイクルの測定結果から、酸化電流に対する還元電流の面積比を見積もったところ、0.99であり、還元電流の面積から算出される容量は135mAh/gであった。以上から、上記で得た正極は3V以上の領域で充放電できることが確認できた。
【0193】
(4-3)実施例1-1の蓄電デバイスの製造
評価用の蓄電デバイスとして、捲回型セルを作成した。捲回型セルの電極ユニットは、セパレータを介して正極と負極とを積層して積層体を作成し、その積層体を捲回することによって作成した。セパレータは、厚さ35μmのポリエチレン製不織布から成っていた。作成された電極ユニットは捲回体であった。
【0194】
電極ユニットにおいて、正極集電体の正極活物質層未形成部と、負極集電体の負極活物質層未形成部とは、幅方向Wにおいて反対側となっていた。また、正極活物質層の幅方向Wにおける中心と、負極活物質層の幅方向Wにおける中心とは一致していた。その結果、負極活物質層の余剰領域Aの幅は、幅方向Wでの両側においてそれぞれ5mmであった。
【0195】
次に、正極活物質層未形成部に正極の集電リード部を超音波溶接した。また、負極活物質層未形成部に負極の集電リード部を超音波溶接した。正極の集電リード部は、電池蓋に装着された正極端子に接続されていた。負極の集電リード部は、電池蓋に装着された負極端子に接続されていた。
【0196】
次に、レーザ溶接により、電池蓋を電池缶に溶接した。最後に、電池蓋に設けられている注液口から必要量の電解液を注入して真空含浸させ、注液口をレーザ溶接した。電解液は、1.4MのLiPFを含み、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合液であった。以上の工程により、評価用の捲回型セルを得た。
【0197】
実施例1-1における負極活物質の組成と、負極活物質層の厚みと、負極活物質層の目付量と、負極活物質層の幅と、電解液槽3における有効幅EWと、電解液槽5における有効幅EWと、負極におけるリチウムドープ割合と、正極活物質の材料と、正極活物質層の幅とを表1に示す。表1におけるLCOとはコバルト酸リチウムを意味する。表1におけるLFPとはリン酸鉄リチウムを意味する。
【0198】
【表1】
【0199】
(4-4)他の実施例及び比較例の蓄電デバイスの製造
実施例1-2~1-7、実施例2-1~2-3、及び比較例1-1~1-3の蓄電デバイスを、基本的には実施例1-1の蓄電デバイスと同様に製造した。ただし、負極活物質の組成と、負極活物質層の厚みと、負極活物質層の目付量と、負極活物質層の幅と、電解液槽3における有効幅EWと、電解液槽5における有効幅EWと、負極におけるリチウムドープ割合と、正極活物質の材料と、正極活物質層の幅とを、表1又は表2に示すとおりとした。
【0200】
【表2】
【0201】
実施例1-2では、電解液槽3、5のそれぞれにおいて、幅120mmのリチウム金属板を使用した。そして、リチウム金属板のうち、幅方向Wにおける両端付近を、幅2.5mmずつ、樹脂板97で覆った。その結果、電解液槽3、5において、有効幅EWは115mmとなった。
【0202】
実施例1-6では、電解液槽3に、幅115mmのリチウム金属板を使用した。電解液槽3における有効幅EWは115mmであった。また、実施例1-6では、電解液槽5に、幅99mmのリチウム金属板を使用した。電解液槽5における有効幅EWは99mmであった。
【0203】
実施例1-7では、電解液槽3に、幅120mmのリチウム金属板を使用した。電解液槽3における有効幅EWは120mmであった。また、実施例1-7では、電解液槽5に、幅105mmのリチウム金属板を使用した。電解液槽5における有効幅EWは105mmであった。
【0204】
比較例1-2では、電解液槽3において、幅120mmのリチウム金属板を使用した。電解液槽3における有効幅EWは120mmであった。また、比較例1-2では、電解液槽5において、幅120mmのリチウム金属板を使用した。そして、電解液槽5のリチウム金属板のうち、幅方向Wにおける両端それぞれ5mmの範囲を除く中央部を幅110mmの樹脂板で覆った。比較例1-2では、余剰領域Aのリチウムドープ割合が放電容量の100%となり、中心領域Cのリチウムドープ割合が20%となるように電流値及び搬送速度を調整した。
【0205】
比較例1-3では、電極前駆体73に対しプレドープを行わなかった。比較例1-3では、プレドープが行われていない電極前駆体73を蓄電デバイス用負極75として、蓄電デバイスを製造した。
【0206】
実施例2-1~2-3、及び比較例2-1では、電解液槽3、5に、幅120mmのリチウム金属板を使用した。
【0207】
実施例1-2では、電解液槽3、5のそれぞれにおいて、リチウム金属板の幅方向Wにおける両端付近を、それぞれ14mmずつ、樹脂板97で覆った。その結果、実施例1-2では、電解液槽3、5において、有効幅EWは92mmとなった。
【0208】
実施例2-2、2-3及び比較例2-1でも、樹脂板97を用いて、電解液槽3、5での有効幅EWを表2に示す値に調整した。
【0209】
実施例1-2、1-3、実施例2-1~2-3、比較例1-1~1-3、及び比較例2-1では、正極活物質としてコバルト酸リチウムを使用した。これらの正極につき、実施例1-1と同様にサイクリックボルタンメトリー測定を行ったところ、いずれの正極でも、酸化電流に対する還元電流の面積比は0.99であり、還元電流の面積から算出される容量は135mAh/gであった。
【0210】
実施例1-4~1-7では、正極活物質としてリン酸鉄リチウムを使用した。これらの正極についても、電圧範囲を3.0~4.0Vとした点以外は実施例1-1と同様に、3極式セルを用いてサイクリックボルタンメトリー測定を行った。その結果、いずれの正極でも、酸化電流に対する還元電流の面積比は0.99であり、還元電流の面積から算出される容量は160mAh/gであった。
【0211】
(4-5)蓄電デバイス(実施例1-4~1-7を除く)の評価方法
実施例1-1~1-3、実施例2-1~2-3、比較例1-1~1-3、及び比較例2-1の蓄電デバイスについて、初期放電容量、短絡後の負極電位、充電状態での負極放電容量、25℃5Cサイクル後の不良率、及び60℃1Cサイクル後の容量維持率をそれぞれ評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0212】
(初期放電容量の評価)
蓄電デバイスを、1Aの定電流でセル電圧が4.3Vになるまで充電した。次に、4.3Vの定電圧を印可する定電流―定電圧充電を30分間行った。次に、1Aの定電流でセル電圧が2.0Vになるまで放電した。以上のサイクルを繰り返すサイクル試験を行い、2回目の放電における放電容量を測定した。この測定値を初期放電容量とした。
(短絡後の負極電位)
上述した初期放電容量の評価後の蓄電デバイスを充放電試験機にて12時間以上かけて0Vまで定電流放電させた。次に、正極端子と負極端子とを電気的に短絡させた状態で12時間以上放置した。次に、短絡を解除した。次に、蓄電デバイスを解体し、余剰領域A、端部領域B、中心領域Cをそれぞれサンプリングした。短絡解除後0.5~1.5時間内に余剰領域Aの負極電位VAと、端部領域Bの負極電位VBと、中心領域Cの負極電位VCとをそれぞれ測定した。
(充電状態での負極放電容量)
上述した初期放電容量の評価後の蓄電デバイスを充放電試験機にて1Aの定電流でセル電圧が4.3Vになるまで充電した。次に、蓄電デバイスに対し、4.3Vの定電圧を印可する定電流―定電圧充電を30分間行った。次に、蓄電デバイスを解体し、余剰領域A、端部領域B、中心領域Cをそれぞれサンプリングした。そして、余剰領域Aの負極放電容量QAと、端部領域Bの負極放電容量QBと、中心領域Cの負極放電容量QCとをそれぞれ測定した。さらに、QA/QB、QA/QC、QB/QCを算出した。
(25℃5Cサイクル後の不良率)
上述した初期放電容量の評価後の蓄電デバイスを10個準備し、それぞれの初期放電容量を測定した。次に、10個の蓄電デバイスのそれぞれについて、25℃の雰囲気下でサイクル試験を実施した。サイクル試験は、初期放電容量測定と基本的には同じサイクルを100回繰り返す試験であった。ただし、サイクル試験では、定電流の充電及び放電を、5C相当の電流値で行った。5Cは、初期放電容量を1/5時間で放電できる電流である。
【0213】
次に、10個の蓄電デバイスをそれぞれ解体した。リチウム金属が負極表面に析出している蓄電デバイスを不良と判定した。10個に対する不良の蓄電デバイスの個数の比率(以下では25℃5Cサイクル後の不良率とする)を算出した。
(60℃1Cサイクル後の容量維持率)
蓄電デバイスの初期放電容量を測定した。次に、蓄電デバイスに対し、60℃の雰囲気下でサイクル試験を実施した。サイクル試験は、初期放電容量測定と基本的には同じサイクルを100回繰り返す試験であった。ただし、サイクル試験では、定電流の充電及び放電を、1C相当の電流値で行った。1Cは、初期放電容量を1時間で放電できる電流である。
【0214】
次に、蓄電デバイスを常温まで冷却した。次に、初期放電容量の測定方法と同様の方法で、100サイクル後の放電容量を測定した。初期放電容量に対する、100サイクル後の放電容量の比率(以下では60℃1Cサイクル後の容量維持率とする)を算出した。
【0215】
(4-6)実施例1-4~1-7の蓄電デバイスの評価方法
基本的には実施例1-1等の評価方法と同様の方法で、実施例1-4~1-7の蓄電デバイスを評価した。ただし、実施例1-4~1-7の蓄電デバイスの評価においては、期放電容量、充電状態での放電容量、25℃5Cサイクル後の不良率、及び60℃1Cサイクル後の容量維持率の評価において、蓄電デバイスを充電する際の上限電圧を4.0Vとした。
【0216】
(4-7)蓄電デバイスの評価結果。
【0217】
実施例1-1~1-7、及び比較例1-1~1-3の評価結果を表3に示す。実施例2-1~2-3、及び比較例2-1の評価結果を表4に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
【表4】
【0220】
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0221】
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0222】
(2)上述した蓄電デバイスの他、当該蓄電デバイスを構成要素とするシステム等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
図1
図2
図3
図4