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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】基板及び基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20230704BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K3/46 H
C04B35/622
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021532316
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083867
(87)【国際公開番号】W WO2020120289
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】102018131605.4
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライマー, ネーレ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァインツガー, マンフレッド
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-235549(JP,A)
【文献】特開平04-114961(JP,A)
【文献】特開2012-015433(JP,A)
【文献】特開2004-342683(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169749(WO,A1)
【文献】特開2003-069236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
C04B 35/622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ主成分として同一のセラミック材料を含有する第1のグリーンシート(1)及び第2のグリーンシート(2)を含むグリーンシート・スタック(10)が1つのステップにおいて形成される基板の製造方法であって、
前記第1のグリーンシート(1)は焼結助剤を含まず、
前記第2のグリーンシート(2)は前記セラミック材料に加えて更に焼結助剤を含み、
それぞれ少なくとも1つの第1のグリーンシート(1)から成る、前記グリーンシート・スタック(10)の2つの端部層(3)が形成され、
前記第1のグリーンシート(1)及び前記第2のグリーンシート(2)を含む前記グリーンシート・スタック(10)が更なるステップにおいて焼結され、その際、前記焼結助剤は部分的に前記第1のグリーンシート(1)へ拡散し、
前記端部層(3)は、焼結ステップの後及び前記基板の完成の後、前記グリーンシート・スタック(10)から形成されたセラミック基体の上に残存し、
前記グリーンシート・スタック(10)は、複数の第1のグリーンシート(1)を有し、前記第1のグリーンシート(1)のうちの少なくとも1つは、2つの第2のグリーンシート(2)の間に配置されている方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のグリーンシート(1,2)の前記セラミック材料は、焼結材料の含有量においてのみ異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結助剤は部分的に前記第2のグリーンシート(2)から前記第1のグリーンシート(1)へ拡散する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記端部層(3)は、積層方向(z)に沿って、前記グリーンシート・スタック(10)の互いに反対側の表面に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記グリーンシート・スタック(10)は、一体化された再配線(6)を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記一体化された再配線(6)は金属ペーストを含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一体化された再配線(6)はタングステンを含有する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記グリーンシート・スタック(10)は、第1及び第2のグリーンシート(1,2)の交互の積層順序を有するように形成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記グリーンシート・スタック(10)は、焼結の後、3つの空間方向のうちの少なくとも2つにおいて、空間方向当たり16%未満の焼結収縮を示す、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2のグリーンシート用の前記セラミック材料の前記主成分が、AlN、Al、Si、BN、SiC、BeO、ZTAを含む群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のグリーンシート(2)に含有される焼結助剤の比率aは、前記セラミック材料の100wt%に対して以下のように選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
2wt%≦a≦10wt%
【請求項12】
前記焼結助剤が、金属酸化物及び金属ハロゲン化物を含む群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記焼結助剤が、Y、CaO、CaF、YF及び希土類酸化物を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グリーンシート・スタック(10)は、1600℃~2000℃の範囲から選択される温度で焼結される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記グリーンシート・スタック(10)は、2時間~10時間の範囲から選択される保持時間で焼結される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記焼結ステップによって、前記焼結助剤から二次相が生成される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記焼結ステップによって、前記第1及び第2のグリーンシート(1,2)から、第1及び第2の体積領域(4,5)が形成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記焼結ステップによって形成された前記第1の体積領域(4)は、前記第2の体積領域(5)より少ない二次相を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
それぞれ同一のセラミック材料を含有する第1の体積領域(4)及び第2の体積領域(5)を有する焼結されたセラミック基体(21)を含む基板(20)であって、
前記第1の体積領域(4)は前記第2の体積領域(5)よりも少ない二次相を含有し、前記セラミック基体の前記第1の体積領域(4)及び前記第2の体積領域(5)は、層構造を形成し、前記層構造の端部の層は、前記第1の体積領域(4)から形成され
前記層構造は、複数の第1の体積領域(4)を有し、前記第1の体積領域(4)のうちの少なくとも1つは、2つの第2の体積領域(5)の間に配置されており、
前記第1及び第2の体積領域(4,5)は、主成分として同一のセラミック材料を含む基板。
【請求項20】
前記第1及び第2の体積領域(4,5)の前記セラミック材料は、二次相の含有量においてのみ異なる、請求項19に記載の基板。
【請求項21】
前記セラミック基体(21)は、300μm~400μmの範囲の厚さを有すると共に、少なくとも450MPaの曲げ破断強度を有する、請求項19又は20に記載の基板。
【請求項22】
前記セラミック基体(21)は、前記基板の上に部品を実装するための接触面(8)、及び/又は、一体化された再配線(6)及び/又はビア(7)を備える、請求項1921のいずれか1項に記載の基板。
【請求項23】
前記一体化された再配線(6)は、タングステンを含有する材料から形成されている、請求項22に記載の基板。
【請求項24】
前記セラミック基体(21)の前記層構造は、記第1及び第2の体積領域(4,5)の交互の順序を有する、請求項19~23のいずれか1項に記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基体を含む基板の製造方法、及び、当該方法によって製造される基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板は、集積回路のようなマイクロ電子部品及びLEDのようなパワー半導体をその上に配置し接触させるための、工業生産において広く使用されている構成要素である。そのようにして実装されたマイクロ電子部品及びパワー半導体は、続いて、別の電子部品又は回路に容易に一体化され得る。
【0003】
更なる電子部品の小型化及び性能に関して絶えず増大する要求に起因して、基板の所定の面積上に実装され得るマイクロ電子部品及びパワー半導体の数を増加させることが必要である。そこから、基板に対して増大する要求が生じる。これらの要求に適合するために、多層構造のセラミック基体を含む多層基板が、従来から使用されている。これらの多層基板は、例えば、セラミック基体内に再配線を一体化することを可能とする。
【0004】
多層基板に対して絶えず増大する要求に起因して、そのような多層基板の製造方法に対する要求も同時に増大している。
【0005】
セラミック多層基板の製造方法は、通常、多数のグリーンシートを積層することによるグリーンシート・スタックの形成を含む。続いて、グリーンシート・スタックは、プレスされ、脱炭される。プレスされ脱炭されたグリーンシート・スタックのその後の焼結によって、多層基板のセラミック基体が製造される。
【0006】
これらの方法に対して絶えず増大する要求を満たすために、グリーンシート・スタックの焼結の際に生じる焼結収縮を考慮することが、特に重要である。例えば、大きな焼結収縮は、セラミック基体内の亀裂形成につながり得るセラミック基体内の応力を発生させる可能性がある。更に、一体化された再配線の設計の際にも、焼結収縮は考慮されなければならない。なぜなら、焼結収縮を考慮しないと、セラミック基体内に部分的に使用不能な一体化された再配線がもたらされる可能性があるからである。焼結収縮は、セラミック基体の場合、3つの空間方向の全てにおいて生じ得る。
【0007】
空間方向は、ここおよび以下においては、デカルト座標系の3つの軸によって規定される方向であると理解されたい。通常の慣例によれば、デカルト座標系は、それぞれが空間方向を規定するx軸、y軸及びz軸を含む。
【0008】
更に、焼結収縮は、ここ及び以下においては、それぞれ焼結の前後の、グリーンシートの又はプレスされたグリーンシート・スタックの、1つ又は複数のエッジのエッジ長の差であると理解されたい。換言すれば、グリーンシートの又はグリーンシート・スタックの少なくとも1つのエッジは、焼結前において焼結後よりも長い。
【0009】
焼結収縮を決定するために、焼結の前後にエッジ長が測定され、焼結前のエッジ長に対してパーセンテージ偏差が算出される。例えば、エッジ長は、焼結前は20mm、焼結後は18mmであり得る。そこから2mmの差が生じ、その結果10%の焼結収縮が生じる。大きな焼結収縮は、ここ及び以下においては、17%を超える値であると見なされたい。換言すれば、17%以下の焼結収縮は、ここ及び以下においては、小さな焼結収縮であると見なされたい。
【0010】
焼結収縮が3つの空間方向の全てにおいて均等に生じる必要は、必ずしもないことに注意しなければならない。したがって、例えば、1つの空間方向に延びるエッジの焼結収縮が、他の2つの空間方向のうちの1つの方向に延びる別のエッジの焼結収縮と異なっている可能性がある。
【0011】
焼結収縮が大きければ大きいほど、焼結されたグリーンシート・スタック内に、セラミック基体内の亀裂形成につながり得る応力が発生する危険性が大きくなる。更に、一体化された再配線は、焼結後に少なくとも部分的に使用不能となる可能性がある。なぜなら、当該一体化された再配線は、焼結収縮を引き起こすグリーンシート・スタックの収縮によって、変形し又は完全に引き裂かれるからである。
【0012】
使用不能な一体化された再配線の数を減少させるために、一体化された再配線を有するセラミック基体の形成には、主成分としてセラミック材料を含有すると共に、付加的に焼結助剤を含有するグリーンシートが、従来から使用されている。更に、一体化された再配線の塗布には、所定の割合のセラミック材料及び焼結助剤を含有する金属ペーストが使用される。それにより、一体化された再配線が、少なくとも近似的に、グリーンシート・スタックと同様の熱による長さ変化挙動を示すことが達成される。それにより、セラミック基体内の使用不能な一体化された再配線の割合が低減される。
【0013】
それにもかかわらず、そのようにして製造されたグリーンシート・スタックにおいては大きな焼結収縮が生じ、それにより、更に、使用不能な一体化された再配線及びセラミック基体内での亀裂の発生に対する著しい危険性が存在する。
【0014】
焼結収縮に加えて、セラミック基体の組成も考慮されなければならない。例えば、焼結によってセラミック基体の表面に蓄積する焼結助剤は、そのようなセラミック基体を含む部品が、もはや確実に作動しなくなるという結果をもたらす可能性がある。
【0015】
したがって、特許文献1から、焼結によってセラミック基体の表面に蓄積した焼結助剤が、機械加工又はエッチングによって完全に又は部分的に除去される方法が知られている。それにより、上述した方法によって製造されたセラミック基体を含む部品が、確実に作動することが可能となる。
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、焼結後に付加的な加工工程が必要であるため、セラミック基体の製造は、より労力がかかり、コスト集約的になる。更に、セラミック基体の事後的な加工は、セラミック基体が事後的な加工によって損傷を受け、したがって使用不能となる危険性を常にはらんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許出願公開第3375767号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の課題は、基板を含む部品の確実な作動を保証する、基板の製造方法を提供することであり、当該方法は、発生する焼結収縮がより小さいグリーンシート・スタックの形成を含む。更に、本発明の課題は、当該方法によって製造される基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。当該方法の更なる実施形態、及び、当該方法によって製造される基板は、更なる請求項から見て取ることができる。
【0020】
それぞれ主成分としてセラミック材料を含有する第1のグリーンシート及び第2のグリーンシートを含むグリーンシート・スタックが形成される基板の製造方法であって、前記第2のグリーンシートは付加的に焼結助剤を含む方法が提供される。この方法では、第2のグリーンシートにおいて、第1のグリーンシートよりも大きな焼結収縮が生じる。
【0021】
更に、本発明の課題は、当該方法によって製造される基板を提供することである。基板は、それぞれセラミック材料を含有する第1の体積領域及び第2の体積領域を有するセラミック基体を含み、第1の体積領域は、焼結助剤を、第2の体積領域よりも低い濃度で含有する。
【0022】
セラミック基体は、上述した方法によって形成されたグリーンシート・スタックの焼結により製造される。
【0023】
異なる濃度の焼結助剤を有する体積領域は、基板の製造方法において、焼結助剤を有する第2のグリーンシートと、焼結助剤を有さない第1のグリーンシートとが積層されることによって生じる。焼結によって、焼結助剤は、部分的に第2のグリーンシートから第1のグリーンシートへ拡散する。それにより、元々は第1のグリーンシートによって形成されたセラミック基体の体積領域も、元々は第2のグリーンシートによって形成された体積領域よりも低い濃度ではあるが、ある特定の量の焼結助剤を有する。
【0024】
方法は、グリーンシート・スタックが、当該グリーンシート・スタックの端部層がそれぞれ少なくとも1つの第1のグリーンシートから成るように形成されるステップを、含むことができる。
【0025】
ここ及び以下においては、グリーンシート・スタック内において仮想中央平面から最も遠く隔てられたグリーンシートが、端部層と称される。仮想中央平面は、グリーンシートに対して平行に、グリーンシート・スタックの中心を通って延びる。通常、グリーンシート・スタックは2つの端部層を有し、仮想中央平面はグリーンシート・スタックを2つの仮想半体に分割し、それぞれの端部層は、2つの仮想半体のうちの一方に位置する。端部層は、それぞれ、1つ又は複数のグリーンシートを含むことができる。
【0026】
更に、方法は、2つの第2のグリーンシートの間に1つ又は複数のグリーンシートが形成されたグリーンシート・スタックの形成を含むことができる。特に、グリーンシート・スタックの第1及び第2のグリーンシートは、交互の積層順序を有することができる。
【0027】
第1及び第2のグリーンシートを用いてグリーンシート・スタックを形成することによって、焼結収縮を著しく低減することができる。発明者らは、この効果が、第2のグリーンシートよりも小さな焼結収縮が生じる第1のグリーンシートが、第2のグリーンシートに反力を及ぼすという事実に基づくと仮定する。この反力は、第2のグリーンシートのより大きな焼結収縮をもたらす力に対抗する。それにより、グリーンシート・スタック全体の焼結収縮は、第1のグリーンシートが無い場合に生じるであろう程度には生じない。第1及び第2のグリーンシートの積層順序を変えることにより、焼結収縮をある特定の範囲内で任意に調整することができる。
【0028】
更に、方法は、焼結後のグリーンシート・スタックにおいて、3つの空間方向のうちの少なくとも2つにおいて、各空間方向において16%未満の焼結収縮が生じるように実施することができる。有利には、方法は、焼結後のグリーンシート・スタックにおいて、3つの空間方向のうちの少なくとも2つにおいて、各空間方向において14%未満の焼結収縮が生じるように実施することができる。この焼結収縮は、従来の方法で生じる焼結収縮よりも著しく小さい。そのような小さな焼結収縮は、それぞれが少なくとも1つの第1のグリーンシートを含む2つの端部層を有するグリーンシート・スタックが形成されることによって達成される。有利には、グリーンシート・スタックは、それぞれ少なくとも2つの第1のグリーンシートを含む2つの端部層を有する。
【0029】
更に、当該方法においては、第1及び第2のグリーンシートの主成分として、AlN、Al、Si、BN、SiC、BeO、ジルコニア強化アルミナ(ZTA)を含む群からセラミック材料を選択することができる。有利には、AlNを主成分として使用することができる。なぜなら、これは非常に良好な熱伝導率を有するからである。それにより、特にパワー半導体への電力線を、基板に一体化することが可能である。これにより、基板をよりコンパクトに設計し、それにより、そのような部品の更なる小型化に対する要求を満たすことが可能となる。
【0030】
更に、当該方法においては、第2のグリーンシートに含有されている焼結助剤の比率aは、セラミック材料の100wt%に対して以下のように選択され得る:
2wt%≦a≦10wt%
【0031】
更に、当該方法のために、金属酸化物及び金属ハロゲン化物を含む群から選択される焼結助剤を選択することができる。特に、焼結助剤は、Y、CaO、CaF、YF及び希土類酸化物を含む群から選択することができる。
【0032】
更に、当該方法において、グリーンシート・スタックの焼結は、1600℃~2000℃の範囲から選択される温度で行うことができる。好ましくは、焼結は、1800℃~1850℃の範囲から選択される温度で行うことができる。特に有利には、焼結は、1810℃~1840℃の範囲から選択される温度で行うことができる。
【0033】
更に、当該方法において、グリーンシート・スタックは、2時間~10時間の範囲、好ましくは4時間~6時間の範囲から選択される保持時間で焼結することができる。特に有利には、焼結は、4時間の保持時間で行うことができる。
【0034】
グリーンシート・スタックが、特定の範囲内にある温度及び保持時間で焼結される場合、グリーンシート・スタックは、大きな焼結収縮を生じることなく、要求に対応して、高密度に焼結され得る。
【0035】
更に、グリーンシート・スタックの焼結は、還元性雰囲気中で行うことができる。還元性雰囲気は、酸素濃度が非常に低いため、焼結中に、場合によっては存在する一体化された再配線を含めて、基体の構成要素の酸化が起こり得ない雰囲気である。還元性雰囲気は、例えば、主にN/Hから成る混合物を含む雰囲気である。その際、2つのガスの混合比は、特定の値に限定されない。
【0036】
焼結は、大気圧又は減圧下で行うこともできる。減圧は、大気圧よりも低い圧力であると理解されたい。更に、焼結は、真空又は高真空中でも行うことができる。高真空は、10-3~10-7の残圧を有する真空であると理解されたい。
【0037】
上述した実施形態を参照すると、方法は、以下のステップを含むことができる:
- セラミック材料を準備するステップ、
- 焼結助剤を準備するステップ、
- 前記セラミック材料を含有する第1のグリーンシートを製造するステップ、
- 前記セラミック材料及び前記焼結助剤を含有する第2のグリーンシートを製造するステップ、
- 前記第1のグリーンシート及び前記第2のグリーンシートの上に再配線を塗布するステップ、
- グリーンシート・スタックを形成するために、前記第1及び第2のグリーンシートを積層するステップ、
- プレスされたグリーンシート・スタックを得るために、前記グリーンシート・スタックをプレスするステップ、
- プレスされ脱炭されたグリーンシート・スタックを得るために、前記プレスされたグリーンシート・スタックを脱炭するステップ、
- 基板用のセラミック基体を得るために、前記プレスされ脱炭されたグリーンシート・スタックを焼結するステップ。
【0038】
セラミック基体の第1及び第2の体積領域は、層構造を形成することができる。この層構造は、元の第1及び第2のグリーンシートの積層順序の結果として生じる。
【0039】
更に、セラミック基体は、300μm~400μmの範囲の厚さを有することができる。有利には、セラミック基体は360μmの厚さを有する。
【0040】
セラミック基体の厚さが上述した範囲内にある場合、セラミック基体は少なくとも450MPaの曲げ破断強度を有する。有利には、セラミック基体は、少なくとも500MPaの曲げ破断強度を有することができる。上述した曲げ破断強度は、従来の3点法を用いて決定することができる。少なくとも450MPaの曲げ破断強度は、従来の方法によって製造される通常の高強度基板が有する曲げ破断強度の範囲内にある。それにより、上述した基板は、小さな焼結収縮に加えて、高い堅牢性も有する。
【0041】
更に、セラミック基体は、一体化された再配線及び/又はビアを有することができる。ビアによって、基板の両側に部品を実装することが可能である。更に、一体化された再配線は、基板が、当該基板の所定の面積上に多数の構成要素を実装することを可能とし、それにより、構成要素を有する基板を含む部品は、よりコンパクトに構成されることができ、及び/又は、より高い性能を有する。部品を組み付けるために、セラミック基体の外面上には接触面が配置されている。接触面は、一体化された再配線及び/又はビアに導電的に接続されている。
【0042】
更に、再配線は、タングステンを含有する材料から形成され得る。一体化された再配線用の成分としてのタングステンの使用は、これが上述した焼結温度で液体にならず及び/又は蒸発しないので、有利である。それにより、焼結によって、一体化された再配線の顕著な変化は生じず、それにより、使用不能な一体化された再配線の危険性が低減される。
【0043】
以下において、基板の製造方法が、プレスされたグリーンシート・スタック、グリーンシート・スタック内の第1及び第2のグリーンシートの可能な積層順序、並びに、基板の概略図に基づいて、詳細に説明される。更に、セラミック基体の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)が示される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】プレスされたグリーンシート・スタックを示す。
図2】グリーンシート・スタックの第1の積層順序を、断面で示す。
図3】グリーンシート・スタックの第2の積層順序を、断面で示す。
図4】グリーンシート・スタックの第3の積層順序を、断面で示す。
図5】基板を、断面で示す。
図6】セラミック基体の断面の一部のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
同一の要素、類似の又は明らかに同一の要素には、図面において同一の参照符号が付されている。図面及び図面中の大きさの比率は、縮尺どおりではない。
【0046】
図1は、プレスされたグリーンシート・スタック10を示す。プレスされたグリーンシート・スタック10は、第1及び第2のグリーンシート(図示せず)を含む。プレスされたグリーンシート・スタック10の空間的な広がりは、寸法矢印x、y及びzによって示される。寸法矢印x、y及びzは、それぞれ、デカルト座標系における同名の軸に対して平行に延びるので、当該寸法矢印は、ここ及び以下において、座標系の対応する軸とも呼ばれる。換言すれば、寸法矢印x、y、zは、それぞれ、デカルト座標系におけるx軸、y軸、z軸に対応する。以下の図は、プレスされたグリーンシート・スタック10の第1及び第2のグリーンシート(図示せず)の可能な積層順序を示すので、軸の名称は、以下の図において、全ての積層順序に対して同様に用いられる。
【0047】
図2は、合計14枚のグリーンシートを有するプレスされたグリーンシート・スタック10を形成するための、第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の第1の積層順序を、断面で示す。プレスされたグリーンシート・スタック10は、それぞれ1つの第1のグリーンシート1を含む2つの端部層3を備える。プレスされたグリーンシート・スタック10の他の全ての層は、第2のグリーンシート2から成る。断面は、プレスされたグリーンシート・スタック10を通る平面内を延びており、当該平面は、x軸及びz軸によって張られる平面に対して平行に延びている。
【0048】
第1のグリーンシート1は、主成分としてAlNを含有するセラミック材料を含む。第2のグリーンシート2は、主成分としてAlNを含有すると共に、AlN 100wt%に対して付加的に3.4wt%のYを焼結助剤として含有する、セラミック材料を含む。第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の積層により、グリーンシート・スタック(図示せず)が形成される。これが、プレスされたグリーンシート・スタック10を得るために、プレスされる。続いて、第1の積層順序を有するプレスされたグリーンシート・スタック10をベースとする第1のセラミック基体(図示せず)を得るために、プレスされたグリーンシート・スタック10が、先ず空気中において600℃で脱炭され、次に大気圧下で主にN/Hを含有する雰囲気中において1810℃で4時間焼結される。
【0049】
第1のセラミック基体(図示せず)は、約360μmの厚さを有する。更に、第1のセラミック基体は、プレスされたグリーンシート・スタック10に対して、そのx軸に沿って15.9%の収縮、及び、そのy軸に沿って15.8%の収縮を示す。この焼結収縮は、比較し得るセラミック基体を製造するための従来の方法で生じる焼結収縮よりも、著しく小さい。
【0050】
更に、第1のセラミック基体(図示せず)は、495MPaの曲げ破断強度を有する。この値は、従来の方法によって製造される同様の厚さを有するセラミック基体について達成される値よりも、著しく高い。
【0051】
図3は、合計14枚のグリーンシートを有するプレスされたグリーンシート・スタック10を形成するための、第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の第2の積層順序を、断面で示す。断面は、プレスされたグリーンシート・スタック10を通る平面内を延びており、当該平面は、x軸及びz軸によって張られる平面に対して平行に延びている。第2の積層順序によれば、プレスされたグリーンシート・スタック10は、それぞれ2つの第1のグリーンシート1から成る端部層3を備える。更に、プレスされたグリーンシート・スタック10の他の全ての層は、第2のグリーンシート2から成る。
【0052】
第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の組成は、図2に対する説明で述べた第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の組成と同じである。第2の積層順序を有するグリーンシート・スタック10をベースとする第2のセラミック基体(図示せず)の製造方法は、図2に対する説明で述べた方法に類似している。
【0053】
第2のセラミック基体(図示せず)は、約360μmの厚さを有する。第2のセラミック基体(図示せず)は、第2の積層順序を有するプレスされたグリーンシート・スタック10に対して、そのx軸に沿って13.7%の焼結収縮、及び、そのy軸に沿って13.8%の焼結収縮を示す。これは、2つの第1のグリーンシート1を用いた端部層3の構成が、焼結収縮の更なる低減をもたらすことを示している。
【0054】
更に、第2のセラミック基体(図示せず)は、516MPaの曲げ破断強度を有する。この値も、図2に対する説明から分かるように、第1のセラミック基体(図示せず)に対して得られる値よりも高い。曲げ破断応力のこの高い値により、セラミック基体の堅牢性に対する最も高い要求を満たすことができる。
【0055】
図4は、合計14枚のグリーンシートを有するプレスされたグリーンシート・スタック10を形成するための、第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の第3の積層順序を、断面で示す。断面は、グリーンシート・スタック10を通る平面内を延びており、当該平面は、x軸及びz軸によって張られる平面に対して平行に延びている。第3の積層順序によれば、プレスされたグリーンシート・スタック10は、それぞれ1つの第1のグリーンシート1から成る2つの端部層3を備える。更に、第3の積層順序を有するグリーンシート・スタック10は、2つの第2のグリーンシート2の間に形成された第1のグリーンシート1を備える。端部層3を形成する第1のグリーンシート1と、2つの第2のグリーンシート2の間に形成された第1のグリーンシート1との間には、それぞれ、上下に積層された3つの第2のグリーンシート2が配置されている。更に、2つの第2のグリーンシート2の間に形成された第1のグリーンシート1は、上下に積層された4つの第2のグリーンシート2によって互いに分離されている。このような積層順序は、焼結収縮に的確に影響を及ぼすことを可能とする。
【0056】
第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の組成は、図2に対する説明で述べた第1のグリーンシート1及び第2のグリーンシート2の組成と同じである。第3の積層順序を有するグリーンシート・スタック10をベースとする第3のセラミック基体(図示せず)の製造方法は、図2に対する説明で述べた方法に類似している。
【0057】
図5は、セラミック基体21を含む基板20を、断面で示す。セラミック基体21は、第2の積層順序を有するグリーンシート・スタックをベースとしている。第1及び第2のグリーンシートの組成は、図2に対する説明で述べた組成と同じである。焼結温度及び保持時間も、図2に対する説明で述べた温度及びび保持時間と同じである。
【0058】
セラミック基体21は、第1の体積領域4及び第2の体積領域5を有する。第1の体積領域4は、第2の体積領域5よりも低い焼結助剤濃度を有する。更に、基板は、一体化された再配線6及びビア7を備える。ビア7によって、基板は、接触面8を介して両側に部品を実装することができる。更に、一体化された再配線6によって、一体化された再配線6がない場合よりも多くの部品を、接触面8を介して基板20の所定の面積上に実装することができる。それにより、更なる小型化が可能となる。
【0059】
図6は、第2の積層順序を有するグリーンシート・スタックをベースとするセラミック基体21の断面の一部を、SEM写真で示す。SEM写真中の明るい点は、焼結助剤によって生成される二次相を示す。元々は第2のグリーンシートによって形成された第2の体積領域5は、元々は第1のグリーンシートによって形成された第1の体積領域4よりも、多数の二次相を有することが明らかに分かる。第1の体積領域4が完全に二次相を含まないわけではないという事実は、焼結によって引き起こされる第2のグリーンシートから第1のグリーンシートへの焼結助剤の拡散に基づく。
【0060】
それにもかかわらず、第1の体積領域4は、著しく少ない二次相を有する。これらの二次相は優先的に表面上で結晶化するので、これらの表面の粗さは大幅に増大する。第1のグリーンシートから成る端部層を用いることにより、表面の粗さを大幅に低減することができる。
【0061】
本発明は、図示された実施例に限定されない。特に、グリーンシート・スタックのグリーンシートの総数、並びに、第1及び第2のグリーンシートの積層順序は、異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 第1のグリーンシート
2 第2のグリーンシート
3 端部層
4 第1の体積領域
5 第2の体積領域
6 一体化された再配線
7 ビア
8 接触面
10 グリーンシート・スタック
20 基板
21 セラミック基体
図1
図2
図3
図4
図5
図6