(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】マイクロコントローラによって温度調節可能な硬性内視鏡用防曇システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20230704BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230704BHJP
A61B 1/303 20060101ALI20230704BHJP
A61B 1/307 20060101ALI20230704BHJP
A61B 1/313 20060101ALI20230704BHJP
A61B 1/317 20060101ALI20230704BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61B1/12 532
A61B1/00 R
A61B1/303
A61B1/307
A61B1/313
A61B1/317
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2021536416
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 ES2019070582
(87)【国際公開番号】W WO2020043928
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-30
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】521084736
【氏名又は名称】ノルコ エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ルイズ コラーレス,フアン ルイス
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0268032(US,A1)
【文献】中国実用新案第205386130(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088366(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200406(US,A1)
【文献】特開2003-144375(JP,A)
【文献】特表平10-511298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管(11)と内管(2)とによって形成される二重同軸管構造であって、両方の管(2、11)の間には、光ファイバ(9)が同軸空間の長さに沿って配置される前記同軸空間がある前記二重同軸管構造と、
前記光ファイバ(9)用のライトポスト(14)を備える本体(12)であって、前記本体(12)は、前記二重同軸管構造の後端部に結合され、前記ライトポスト(14)は、ライトケーブルをその中に差し込み、前記ライトケーブルを光源に差し込むように構成される前記本体(12)と、
前記本体(12)に接続されたアイピース(13)と、
前記内管(2)の内側に配置された複数のレンズ(7)と、
前記内管(2)の前端部の内側に配置された対物レンズシステム(5)であって、前記前端部は、前記二重同軸管構造の前記後端部とは反対側の領域に位置する対物レンズシステム(5)と、を備える硬性内視鏡用医療装置において、
該硬性内視鏡用医療装置は、前記二重同軸管構造の前記同軸空間の内側に配置された対物レンズシステム(5)の周りに、ニクロムで作られた電気抵抗器(1)を備えており、
前記電気抵抗器(1)は、前記内管(2)の周りにコイル状に巻かれており、前記内管(2)の外面に貼り付けられた耐高温性テープによって十分に接着および絶縁されており、
前記光ファイバ(9)は、前記対物レンズシステム(5)の曇りを防止するように構成された前記電気抵抗器(1)を取り囲んでいることを特徴とする、硬性内視鏡用医療装置。
【請求項2】
電流によって温度を調節および制御するため、前記電気抵抗器(1)に電力を供給できるように、前記本体(12)は、電気接続のために構成された2つの接続ピン(15)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の硬性内視鏡用医療装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は医療外科装置の分野に属し、より具体的には、低侵襲手術の分野に属する。
【0002】
本発明の主な目的は、任意の硬性内視鏡の製造工程において実施される、マイクロコントローラによって温度調節可能なシステムを提供することである。これにより、子宮鏡検査、泌尿器科、一般外科、関節鏡検査等の、硬性内視鏡が使用される任意の介入(intervention)において、曇り/凝縮を防止する目的で、遠位端の温度レベルを制御することができる。
【0003】
〔発明の背景〕
内視鏡下手術は今日、一般的で安全な医療技術である。それは、中空器官または体腔の可視化のために、自然開口(natural orifice)、外科的切開または損傷を通じて行われる、外科的技術である。ビデオカメラの助けを用いることで、医療チームは患者の体内の術野を見て、患者への介入を行うことができる。光は、有害な熱を伝えることなく、照明および可視化のために、ファイバグラスを通して伝播する。
【0004】
これらの技術は、開腹手術または従来の手術によって必要とされるメスによる大きな切開を防ぎ、それにより、術後期間をより早く、かつ、より快適にし得るので、低侵襲性と呼ばれる。
【0005】
病態の診断および治療のための内視鏡検査の手続きは、それがすべての病院および医療センターで一般的な手続きとなるまでに、発展してきた。
【0006】
硬性内視鏡は現在、一般的で安全な診断-手術技術である。それは、中空器官または体腔の可視化のために、自然開口、外科的切開または損傷を通じて行われる、外科的技術である。ビデオカメラの助けを用いることで、医療チームは患者の体内の術野を見て、患者への介入を行うことができる。これらの技術は、大きな介入を妨ぎ、それにより、回復期間を、併存症(comorbidities)がはるかに少ないものとし、また患者にとってより快適なものとし得るので、低侵襲性として知られている。
【0007】
疾病の内視鏡治療は現在、腹腔の中身を可視化するための腹腔鏡検査、関節に対する関節鏡検査、膀胱および尿道の内面に対する膀胱鏡検査、膣および子宮頸部を通じた子宮内部に対する子宮鏡検査等、様々な技術を含んでいる。
【0008】
内視鏡下手術が始まって以降、手術中の視覚の問題は低侵襲技術の発展において障害となってきた。手術中に正確な視覚(映像)を維持することは、技術の有効性および安全性を維持するために極めて重要である。これらの視覚における障害は、手術時間の増加または合併症(complications)の発生につながり得る。これらの視覚の問題のいくつかは、光学素子(optics)とモニタとの両方における、より高精細の視覚システムの開発と並行して改善されてきた。しかし、患者の体内とレンズとの間の温度差による、該手術に固有のレンズの曇り(レンズ曇り(Lens Fogging(LF)))に由来する、いくつかの視覚の問題がある。Lawrentschukらは、実験的研究において、腹腔鏡検査中のLFに由来する該(複数の)視覚の問題は、光学素子のレンズの温度が低下するにつれて増大し、また腹腔内湿度のパーセンテージが上昇するにつれて増大することを証明した。
【0009】
内視鏡の先端または遠位端の曇り(LF)は、該先端のガラスの2つの面の間の温度差によって生じる。空気は、温度と直接的な関係を有する、蒸気の形態で湿気を保持する容量を有する。したがって、ある体積の水蒸気を保持するある体積の空気が冷却すると、その保持容量が減少し、余分な湿気が凝縮する。冷たい表面に接している空気の薄い層は、余分な湿気を発散するよう強いられる。内視鏡のガラスを曇らせるのはこの凝縮である。レンズの曇りの原因は次のとおりである:胃手術などの特定の手術で使用される低温の送気ガス(CO2)、患者の体温それ自体、体液の存在により術野内に存在する湿気、手術器具と内視鏡との相互作用、および(複数の)外的変数。
【0010】
この問題を防止するために、複数の解決策が提案されている。LFを減少させるために提案された複数の選択肢の中には、3つの大きなグループを見出すことができる:
【0011】
1.内視鏡を加熱するための機構。内視鏡の端部を、曇りを低減させる温度に維持するため、さまざまな方法が述べられてきた。LFを減少させるための効率的な理論的方法として、外部で加熱され加湿されたCO2の使用が提案されたが、実際の臨床的実証はなかった。古典的には、内視鏡の温度を上昇させるために高温の食塩水を使用することが、および、血清をより長時間高温に保つためにサーモス(登録商標)を使用することさえが、述べられてきた。光学素子の先端を乾燥状態で加熱する装置も開発されている。
【0012】
2.防曇剤溶液。腹腔鏡の先端に界面活性物質を使用することで曇りやすさを低減するため、いくつかの製品が使用されてきた。ベータジン(Betadine)(登録商標)またはクロルヘキシジン等の古典的なもの、またはより詳しくは、FRED(商標)(Covidien、ダブリン、アイルランド)、Resoclear(商標)(Resorba、ニュルンベルク、ドイツ)等である。
【0013】
3.内視鏡装置の修正。従来の内視鏡に対する様々な修正が、LFを減少させるために述べられてきた。Ohdairaのグループはカメラの曇りを減らすために、光学素子のガラスに二酸化チタンの層を使用すること、および光学素子の先端の振動システムが自己洗浄を行うことを述べた。その開発および商業化を妨げてきた主な欠点のうちの1つは、高価格および内視鏡の滅菌に関する問題である。
【0014】
しかしながら、これらは一時的な解決策にすぎない。光学素子の温度が低下した瞬間に、レンズが再び曇るからである。未解決のこれらの困難は、次の原因となる:術野または検査領域での視覚の損失。内視鏡の曇りを除去し、外科的処置を継続するために、介入中に体内で内視鏡の抜去と挿入とが連続して繰り返されることによって生じる、該介入中の時間の損失。機器および/または患者の汚染のリスク。とりわけ、外科的処置の間のユーザの疲労の増加。
【0015】
これまで見てきたように、ほとんどの刊行物および研究は、さまざまな温度のさまざまな溶液か、または、局所加熱システムかのいずれかで、内視鏡の先端を外部加熱するための方法に焦点を当てている。LFの発生における最も重要な因子が、光学素子と患者の体内との間の温度差であると仮定したうえで、介入の間に発生する条件にかかわらず、該介入の間中、内視鏡を一定の温度に維持し、そうすることで、LFを排除して該介入中の外科医の視覚の質を改善する、調節可能な自己加熱システムが開発されてきた。
【0016】
曇りの問題を解決するために、像(image)について取り組むこと、言い換えれば、(複数の)対物レンズ、(複数の)レンズ、カメラおよびモニタといった、像の構成要素に解決策を適用することを、当業者ならば考えるだろう。本発明では、像について取り組むことはしていない。しかしながら、我々は、該製品の外部および内部の寸法を変更することなく、首尾よく視覚の質を改善する。
【0017】
文献CN20538610 UおよびUS2007149856 A1に記載のものは、電気抵抗器がニクロムではなく、電気抵抗器が内管の内側に配置されているが、それらとは異なり、本特許出願に記載の硬性内視鏡用医療装置では、該電気抵抗器は前記内管の外側に配置されている。
【0018】
本明細書に記載の装置とCN20538610 Uとの間の別の重要な違いは、本発明の装置が備える二重同軸管構造とは対照的に、後者が単一の管を備えることである。
【0019】
文献CN20538610 UおよびUS2007149856 A1に関する、発明の他の相違は、電気抵抗器が内管の外面に貼り付けられたテープによって十分に接着および絶縁されており、同時に、光ファイバもまた、前記電気抵抗器を包囲する同軸空間の内側に配置されている、という事実に関する。
【0020】
このように、(ニクロムで作られてはいない)電気抵抗器が(複数の)レンズと共に内管の内側にある文献CN20538610 UおよびUS2007149856 A1とは対照的に、本発明では、ニクロム電気抵抗器が内管と外管とに境界を画定された同軸空間内に位置しており、光ファイバが前記同軸空間を通り、かつ、位置している(絶縁体によって区切られている)。
【0021】
この状況において、誰も考えつかなかったことは、電気抵抗器の戦略的な配置である。該配置において、電気抵抗器は制御された温度を提供し、そうすることで(複数の)レンズおよび対物レンズを保護する。これは、CN20538610 UおよびUS2007149856 A1において起こることとは対照的である。これらは一度も製造されたことがない。該発明は像のシステムの構成要素(対物レンズ)であり、対物レンズの望ましくない温度上昇を引き起こす。したがって、市場でのその適用は不可能である。
【0022】
さらに、内視鏡の劣化の主な問題は、湿気の流入口およびシールの欠損である、ということは言及されるべきである。湿気または流体のこの流入口が生じるとき、前記流入口は、レンズシステムを通じて直接生成される。本発明の装置では、電気抵抗器はレンズシステムの外側に配置され、それと直接は接触しないため、電気的なリスクが防止される。
【0023】
対照的に、文献CN20538610 UおよびUS2007149856 A1に記載されているような従来の内視鏡では、電気抵抗器およびレンズシステムが共に配置されている空間に湿気または液体が入る場合、前記電気抵抗器は湿り、破損し、または損傷する。このことは、製品および温度調節可能なコントローラへの接続(部)に対して、電気的なリスクを生ずる。
【0024】
この全てに対して、本明細書に記載された電気抵抗器は、製品の規格にいかなる変更も含まない、ということが付け加えられるべきである。認証された品質をもつ同レンズシステムは、なおも使用することができる。したがって、内管と外管との間に取り付けられている電気系統に影響を与えることなく、シール性が原因で劣化した場合に、レンズシステムの修理が簡単に行える。
【0025】
また、CN20538610 UおよびUS2007149856 A1に記載されているような内視鏡装置は、適合が不可能であるために製造されていない、具体的には、製品および従来の共通部品の規格を変更しなければ、とりわけ十分なスペースがないために、このように製造することが不可能である、という情報を我々は有していることにも、留意されたい。
【0026】
また、本発明の硬性内視鏡用医療装置では、仮に介入中のある時点で、内視鏡の防曇効果が使用を停止しなければならない場合にも、術野を照明することを第一に可能にする目的で、それを従来通りに使用し続けることができるように、(複数の)接続ピンが配置されている、ということにも留意されたい。これが、(複数の)接続ピンが光の送信を担うライトポストの隣にあるIDリングに配置されている理由である。
【0027】
ライトポストの汎用性は、既存の(複数の)ライトケーブルの適合性を促進し、該防曇システムに対する代替物の使用を可能にする。
【0028】
さらに、内視鏡のその部分(IDリング4)における(複数の)接続ピンの位置が、該適合性を促進する、ということに留意されたい。
【0029】
このように、本発明の硬性内視鏡用医療装置は、最適化に焦点を当てた製品設計、ならびに、ユーザおよび製品自体に対するリスクなしに容易に製造される、という点で、新規なシステムである。
【0030】
〔発明の解説〕
本発明は、マイクロコントローラによって温度調節することができる防曇システムであり、このシステムは、任意の硬性内視鏡の製造工程において実施される。そのため、介入中に内視鏡が曇ることがないように、その温度は制御される。
【0031】
本発明は、任意のタイプの内視鏡下手術において適用されてもよく、光学素子は、有機体、ヒトまたは動物の空洞に挿入される。これにより、内視鏡下手術はその適用分野となる。これは、これまで解決されていなかった、曇りによる術野における視覚の損失という困難を克服するものである。
【0032】
光学素子の先端または遠位端の曇りは、該先端のガラスの2つの面の間の温度差によって生じる。空気は、温度と直接的な関係を有する、蒸気の形態で湿気を保持する容量を有する。したがって、ある体積の水蒸気を保持するある体積の空気が冷却すると、その保持容量が減少し、余分な湿気が凝縮する。冷たい表面に接している空気の薄い層は、余分な湿気を発散するよう強いられる。光学素子のガラスを曇らせるのはこの凝縮である。
【0033】
レンズの曇りの原因は次のとおりである:
-胃手術などの特定の手術で使用される、低温の送気ガス(CO2);
-患者の体温それ自体;
-体液の存在により術野内に存在する湿気;
-手術器具と内視鏡との相互作用;
-(複数の)外的変数。
【0034】
現在の外科手術の実践では、レンズの曇りは、2つの異なる瞬間で対処されている:
【0035】
(介入前)
-光学素子を空洞に挿入する前に、それを50℃の高温の血清に浸漬し、そうすることで、その複数の壁を加熱し、その表面が冷たくなって水蒸気が凝縮するのを防ぐ;
-加熱された通気ダクトを通して、CO2の温度を上昇させる。
【0036】
(介入中)
-イソプロピルアルコールおよび市販の他の製品などの防曇剤を、光学素子の先端に塗布する;
-ガーゼパッドによってレンズを人の手で綺麗にし、内視鏡を50℃の高温血清中に浸漬する;
-内視鏡の遠位先端を補助加熱装置に挿入する。
【0037】
しかしながら、これらは一時的な解決策にすぎない。光学素子の温度が低下した瞬間に、レンズが再び曇るからである。
【0038】
未解決のこれらの困難は、以下の原因となる:
-術野または検査領域での視覚の損失;
-内視鏡の曇りを除去し、手術または医学検査を継続するために、介入中に体内で内視鏡の抜去と挿入とが連続して繰り返されることによって生じる、該介入中の時間の損失;
-消耗品であるCO2プローブの高いコスト
【0039】
本発明の主な利点は以下の通りである:
【0040】
-外科医は、常にはっきりとした視界を有する。このようにして、彼らは、内視鏡の作動温度を30~50℃の範囲に制御することができる。
【0041】
-それは、内視鏡の曇りを除去し、手術または医学検査を継続するために、介入中に体内で内視鏡の抜去と挿入とが連続して繰り返されることを防ぐ。外部で(体外で)その曇りを除くために操作を連続して行う必要がないので、このことは、介入時間の著しい減少をもたらす。同様に、介入中に生じる可能性のある出血に対しては、より多くの制御が可能となる。
【0042】
-消耗品のコストがより低く、したがって、金銭的にかなりの節約がある。加熱されたCO2送気器を使用する場合、使用される(消耗品の)プローブは使い捨てであり、高い経済的なコストがある。
【0043】
-この防曇システムがいったん取り付けられると、該内視鏡は、標準的な内視鏡のサイズ、長さまたは重量を変更することがない。したがって、トロッカー(trocar)などの手術室用器具を交換する必要がない。
【0044】
-制御の難しい外的変数を修正することができ、このことは、手術の時間および結果に直接に影響を及ぼす:外科医は、手術室内の周囲条件により生じ得る曇りを防止する。内視鏡と同時に患者の身体に挿入される残りの外科用器具、例えば、焼灼器、または熱を発生させ得る他の任意の器具の使用。これらの器具はすべて、介入が行われている空洞の内側で熱を発生させ、それは、レンズが曇るまでの観察時間に直接、影響する。同じことは、患者の人体計測的な特性そのものでも起こる。
【0045】
〔発明の説明〕
本発明の目的である防曇熱制御システムは、内管の中に耐高温性テープで絶縁された、ニクロム(ニッケルとクロムとの合金)で作られた電気抵抗器を取り付けることで構成される。前記電気抵抗器は、温度の調節が可能であり、30℃~50℃の可変的な範囲で作動する。温度調節は、光源に取り付けられたマイクロコントローラによって達成される。
【0046】
電気抵抗器は、内視鏡の内管の外面に結合され、遠位端で半径方向に端をもつ。この電気抵抗器は、内視鏡の本体に配置されたコネクタを通じて電気を受け取り、それによって、内視鏡の複数の光ファイバの電源と防曇システムとが、双方が光源に接続されているにもかかわらず、独立となる。
【0047】
〔図面の簡単な説明〕
与えられた説明を補足するものとして、また本発明の特徴をより容易に理解できるようにするのを助ける目的で、前記説明には、限定するものではなく例示するものとして、以下を表す一組の図面が添付されている:
【0048】
図1は、外管のない状態での本発明の装置の側面図を示す。
【0049】
図2は、最終製品に組み立てられた本発明の装置の側面図の断面を示し、それを構成するさまざまな要素の分解図を見ることができる。
【0050】
図3は、最終製品に組み立てられた本発明の装置の側面図を示す。
【0051】
【0052】
図5は、温度制御のための接続部の別の詳細図を示す。
【0053】
【0054】
【0055】
〔発明の好ましい実施形態〕
言及された図面を考慮し、使用された番号付けに従って、図面は、以下に示され詳細に説明される部品および構成要素を備える、本発明の好ましい例示的な実施形態を示す。
【0056】
硬性内視鏡の構造は、主に4つの部分から構成されている:
-外管(11)
-本体(12)
-アイピース(13)
-ライトポスト(14)
【0057】
外管(11)は、(複数の)レンズ(7)、(複数の)1型スペーサ(8)、(複数の)2型スペーサ(6)および対物レンズシステム(5)が配置された、内管(2)を収容している。光ファイバ(9)と電気抵抗器(1)とは、内管(2)と外管(11)との間に位置している。電気抵抗器(1)は、内管(2)の表面にコイル状に巻かれており、耐高温性テープによって十分に接着および絶縁されている。従って、光ファイバ(9)は、内管(2)上に既にコイル状に巻かれた電気抵抗器(1)上に配置されており、こうして、外管(11)の内面までの、残りの空間を占有し尽くしている。
【0058】
本体(12)は、最終製品を構成する複数のサブアセンブリの各々を組み立てる役割を担う構成要素である。アイピース(13)は、外管(11)およびライトポスト(14)と共に、その中に集められている。したがって、それは視覚情報の伝達、光の伝達、および熱制御可能な防曇システムの役割を担う該複数のサブアセンブリ間の結合手段である。
【0059】
その中のアイピース(13)は、近位端の視覚情報に関連する全ての構成要素を集める。フォーカスシステム(10)は、このサブアセンブリ内に配置されている。アイピース(13)は、硬性内視鏡によって得られた画像をモニタ上に投影することができるように、カメラに接続されている。
【0060】
ライトポスト(14)は、光の伝達に関連する複数の構成要素を収容する役割を担うアセンブリである。このアセンブリは、ライトケーブルに直接、接続されている。外管(11)の内側に沿って延在する光ファイバ(9)は、このアセンブリを通過している。
【0061】
内管(2)の周囲に配置された電気抵抗器(1)は、ニクロムで作られている。ニクロムはニッケルとクロムとで作られる合金である。それは、高温に対して高い耐性を有する金属である点、かつ、高い電気抵抗を有する点で、抜きんでている。その主な性質は以下の通りである:
-高い耐腐食性および高い耐酸化性;
-高温への高い耐性(高い融点);
-大きな電気抵抗(それは他の金属ほど優れた導体ではない);
-それは磁性を持たない;
-シルバーグレーの色;
-抵抗性および可撓性。
【0062】
(https://www.micro-log.com/index.php?controller=attachment&id_attachment=19)
【0063】
電気抵抗器(1)の温度は、30℃~50℃の熱間隔で可変的な温度に到達することによって、調節することができる。電気抵抗器(1)の直径は0.2mm、電気抵抗器(1)の値は180Ω、その消費量は1.2Wである。
【0064】
電気抵抗器(1)は、内管(2)の周囲に配置されているが、あらかじめポリアミド耐高温性テープで絶縁されている。前記テープは、-269℃程度の低い温度および400℃程度の高い温度での適用において、問題なく使用される。該テープは、内視鏡の内管(2)に貼り付けるために、接着フィルムを有している。それは、電気的、熱的、化学的、機械的性質を独特に組み合わせた、高い性能、信頼性および耐久性を有している。
【0065】
(http://www.dupont.com/content/dam/dupont/products-and-services/membranes-and-films/poIyimde-films/documents/DEC-Kapton-HN-datasheet.pdf)
【0066】
いったん内視鏡が組み立てられると、電気抵抗器(1)は、それに接続される機器を用いて温度調節を行えるように、
図4に示すような、内視鏡の本体(12)から外へ出る2つの接続ピン(15)に接続される。
【0067】
図1は、電気抵抗器(1)、内管(2)、アイピースリング(3)およびIDリング(4)を有する、本発明の装置を表している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】外管のない状態での本発明の装置の側面図を示す。
【
図2】最終製品に組み立てられた本発明の装置の側面図の断面を示し、それを構成するさまざまな要素の分解図を見ることができる。
【
図3】最終製品に組み立てられた本発明の装置の側面図を示す。
【
図5】温度制御のための接続部の別の詳細図を示す。