IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小川 弘の特許一覧 ▶ 藤本 啓一郎の特許一覧

<>
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図1
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図2
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図3
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図4
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図5
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図6
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図7
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図8
  • 特許-紙おむつ処理方法及びその装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】紙おむつ処理方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/35 20220101AFI20230704BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230704BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20230704BHJP
【FI】
B09B3/35
B09B5/00 Z
B09B101:67
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021541390
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032488
(87)【国際公開番号】W WO2021033271
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】592036807
【氏名又は名称】小川 弘
(73)【特許権者】
【識別番号】518052027
【氏名又は名称】藤本 啓一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】小川 弘
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081131(JP,A)
【文献】特開2005-334321(JP,A)
【文献】特開2012-081433(JP,A)
【文献】特開2001-047023(JP,A)
【文献】特開2019-136662(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139358(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00-5/00
B02C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理方法であって、
紙おむつを収容するための周方向に回転可能に設けられた収容槽内に、前記紙おむつを構成する高分子吸収材が吸収した被処理液よりも浸透圧の高い添加材を導入するとともに、前記収容槽内に前記紙おむつを投入する前処理工程と、前記収容槽内の前記紙おむつの前記高分子吸収材を被覆した表面材を、前記収容槽の周壁部の内周面に、該周壁部の中心を外す偏芯した内方を向くように固定されたカッタにより切開することで、前記紙おむつの前記表面材から前記高分子吸収材を分離する切開工程と、前記収容槽内を排水する排水工程と、前記収容槽内を脱水することで、前記表面材から分離した前記高分子吸収材に残留する液体を排出する脱水工程と、を少なくとも備えることを特徴とする紙おむつ処理方法。
【請求項2】
前記切開工程よりも後に、前記収容槽内の前記紙おむつを洗浄する洗浄工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の紙おむつ処理方法。
【請求項3】
前記前処理工程において、前記収容槽内に前記添加材を導入した後に、該収容槽内に前記紙おむつを投入することを特徴とする請求項1または2に記載の紙おむつ処理方法。
【請求項4】
前記前処理工程において、前記収容槽内に導入した前記添加材の重量に基づき、前記収容槽内に投入する前記紙おむつの適正重量を報知することを特徴とする請求項に記載の紙おむつ処理方法。
【請求項5】
前記収容槽と、前記紙おむつの前記表面材を切開するための前記カッタと、を少なくとも備えることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の紙おむつ処理方法に用いる紙おむつ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済みの紙おむつは、一般家庭にて発生するのみならず、例えば保育所・幼稚園や養護老人ホーム等の介護・養護施設、或いは複数の病床を備えた医療機関等の事業所では日々大量に発生するものであり、これらの紙おむつは多くの自治体で焼却対象となる可燃ごみ(一般廃棄物・事業系一般廃棄物等)としてごみ収集され、焼却施設にて廃棄物処理がされている。
【0003】
近年の紙おむつは、排泄物等の液体分を高効率に吸収する高分子吸収材が、通水性を有する不織布からなる表面材に被覆されて構成されることが多く、したがって使用済みの紙おむつは、当然のことながら液体を十分に吸収した膨潤状態で肥大化している。よって、このような液体分を含有する使用済み紙おむつを大量に焼却処理するに際しては、不完全燃焼を防止するため、焼却温度を数百度以上の高温に保つヒータ等の熱源部を備えた焼却装置による処理方法及びその装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-228127号公報(第3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、液体分を多く含む使用済み紙おむつを焼却処理するために、通常の焼却装置よりも高温の熱源部や熱風配管部等の付帯設備を具備する必要があることから、当該熱源部及び付帯設備の構造が複雑化するばかりか、焼却処理の燃料コストが増大する虞が生じ、また焼却処理によって周辺環境に過大な負荷を与えるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、液体分を含む使用済み紙おむつを効率よくリサイクル(燃料化)処理することができるとともに、環境負荷を低減することができる紙おむつ処理方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の紙おむつ処理方法は、
使用済みの紙おむつを処理する紙おむつ処理方法であって、
紙おむつを収容するための収容槽内に、前記紙おむつを構成する高分子吸収材が吸収した被処理液よりも浸透圧の高い添加材を導入するとともに、前記収容槽内に前記紙おむつを投入する前処理工程と、前記収容槽内の前記紙おむつの前記高分子吸収材を被覆した表面材を切開する切開工程と、前記収容槽内を排水する排水工程と、を少なくとも備えることを特徴としている。
この特徴によれば、使用済み紙おむつの被処理液よりも浸透圧の高い添加材を導入し、また使用済み紙おむつを投入した収容槽内にて、紙おむつの表面材が切開されることで、紙おむつの高分子吸収材を添加材によって肥大化させることなく、この紙おむつから排泄物の液体分を吸収した高分子吸収材を分離させるとともに、浸透圧の高い添加材によって高分子吸収材から液体分を排出できるため、紙おむつを効率よく処理することができる。また、液体分を含む高分子吸収材を分離した紙おむつの表面材は、多くの場合、不織布等の高カロリーの材料から成ることから、液体分を分離して分別することで、表面材等を燃料としてリサイクルすることが可能であり、大幅に環境負荷を低減することができる。
【0008】
前記切開工程よりも後に、前記収容槽内の前記紙おむつを洗浄する洗浄工程を更に備えることを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽内で紙おむつから分離された高分子吸収材に残留した排泄物をすすぎ、浄化処理することができる。
【0009】
前記排水工程よりも後に、前記収容槽内を脱水する脱水工程を更に備えることを特徴としている。
この特徴によれば、脱水後の収容槽内にて残置された紙おむつの表面材等の切れ端を容易に回収することができる。
【0010】
前記前処理工程において、前記収容槽内に前記添加材を導入した後に、該収容槽内に前記紙おむつを投入することを特徴としている。
この特徴によれば、添加材の原材料を溶媒で希釈して添加液を生成する場合であっても、収容槽内にて均質状態にした後に、この均質な添加液に紙おむつを浸して処理することができる。
【0011】
前記前処理工程において、前記収容槽内に導入した前記添加材の重量に基づき、前記収容槽内に投入する前記紙おむつの適正重量を報知することを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽に導入された添加材の重量に基づく適正な重量の使用済み紙おむつを投入することで、添加材による処理効率を維持することができる。
【0012】
本発明の紙おむつ処理装置は、前記した紙おむつ処理方法に用いられ、
前記収容槽と、前記紙おむつの前記表面材を切開するための切開部と、を少なくとも備えることを特徴としている。
この特徴によれば、被処理液を吸収した使用済み紙おむつと、この被処理液よりも浸透圧の高い添加材を導入した収容槽内にて、紙おむつの表面材が切開されることで、紙おむつの高分子吸収材を添加材によって肥大化させることなく、この紙おむつから排泄物の液体分を吸収した高分子吸収材を分離させるとともに、浸透圧の高い添加材によって高分子吸収材から液体分を排出できるため、紙おむつを効率よく廃棄処理することができる。
【0013】
前記切開部は、前記収容槽に設けられたカッタであることを特徴としている。
この特徴によれば、収容槽内に投入された紙おむつの表面材を、汎用性の高いカッタによって安価且つ容易に切開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における紙おむつ処理装置の筐体を示す斜視図である。
図2】紙おむつ処理装置の筐体の平面断面図である。
図3】紙おむつ処理装置の筐体の正面断面図である。
図4】(a)は使用前の紙おむつを示す断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
図5】(a)は使用済みの紙おむつを示す部分拡大図であり、(b)は同じくカッタにより表面材を切開した図である。
図6】高分子吸収材の内外の液体流動のメカニズムを説明する図である。
図7】紙おむつ処理方法の工程を示すフロー図である。
図8】実施例2における紙おむつ処理装置の側面断面図である。
図9】(a)は紙おむつ処理装置の一部断面の正面図であり、(b)は処理槽の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る紙おむつ処理方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係る紙おむつ処理方法につき、図1から図7を参照して説明する。先ず図1の符号1は、本発明の紙おむつ処理方法に用いられる紙おむつ処理装置である。
【0017】
図1~3に示されるように、本実施例1の紙おむつ処理装置1は、内空構造を有し上面に開口部2aが形成された筐体2と、筐体2内部に鉛直方向の仮想軸O回りに回転可能に配設された有底筒状の収容槽5と、筐体2内部に固定され、収容槽5よりも大径の有底筒状であって収容槽5を略同軸に外嵌する外筒6と、収容槽5に回転駆動力を付与する駆動部7とから主として構成される。なお本実施例のように、収容槽5及び外筒6の二重槽構造となっている場合、これら収容槽5及び外筒6が本発明の収容槽に相当する。
【0018】
紙おむつ処理装置1は、収容槽5内に使用済みの紙おむつ(図示略)を複数枚収容し、後述する処理工程を筐体2内で行うことで、これらの紙おむつに内蔵された高分子吸収材25(図5参照)を分離して添加材等の他の液体とともに排出するものである。
【0019】
紙おむつ処理装置1の収容槽5は、筐体2の開口部2aに連通するように上端が開放された平面視略円環状の周壁部5aと、周壁部5aの下端に連設された平面視円盤状の底部5cとからなり、これらの周壁部5a及び底部5cには、小径またはスリット状の通水孔5bが複数箇所に形成されている。また、周壁部5aの内周面には、内径方向に突出して軸方向に延びる突条部5dが、周方向に略等配に複数条形成されている。収容槽5は、十数枚~数十枚の使用済み紙おむつを収容可能に例えば数十リットル~百リットル超程度の内部容量を有すると好ましい。
【0020】
周壁部5aの内周面の下端側には、当該内周面よりも内径方向に向けて突出する切削刃11を有し、収容槽5内の紙おむつの表面材22,23及び本体部21,24を切開するためのカッタ10(切開部)が、周方向に沿って離間して複数枚、且つ上下方向に離間して複数段にわたり固定されている。より詳しくは、周壁部5aの上下方向の中央よりも下側の高さ位置に、上段のカッタ10aが、周方向に沿って略90度の等間隔ピッチで離間して計4つ設けられ、またこれらの上段のカッタ10aよりも下方の高さ位置に、下段のカッタ10bが、周方向に沿って略90度の等間隔ピッチで離間して計4つ設けられている。更に上段のカッタ10aと下段のカッタ10bとは、位相角度が互いに45度位置ずれして周壁部5aの内周面に固定されている。これらのカッタ10a,10bの一部は、周壁部5aの内周面に形成された突条部5dに設けられており、当該10a,10bは、周壁部5aの中心を外す偏芯した内方を向くように固定されている。
【0021】
なお、カッタ10が設けられる周方向の離間ピッチは本実施例に限られず、例えば周方向に略120度の等間隔ピッチで離間して計3つ設けられてもよいし、あるいは周方向に略60度の等間隔ピッチで離間して計6つ設けられてもよい。またカッタ10が設けられる上下方向の段数は本実施例に限られず、例えば3段以上でもよいし、あるいは1段のみでも構わない。更に、カッタ10が上下複数段にわたり設けられる場合、必ずしも位相角度を互いに位置ずれさせる態様に限られず、同じ位相角度で設けても構わない。
【0022】
また、本実施例のカッタ10の切削刃11は略水平方向に延びているが、これに限らず例えば水平方向に対し所定角度傾斜してもよい。
【0023】
次に、外筒6は、上端が開放されるとともに周側端が閉塞された平面視円環状の周壁部6aと、周壁部6aの下端に連設された平面視円盤状の底部6cとからなり、収容槽5を略同心位置にて遊嵌状態で外嵌した状態で筐体2内に固定されている。すなわち収容槽5の周壁部5a及び底部5cの外面と、外筒6の周壁部6a及び底部6cの内面とは所定寸法だけ離間している。また外筒6の底部6cには、排出管14の一端に連通する連通孔6dが形成されており、この排出管14の他端は筐体2の側壁を貫通して外部に開口している。
【0024】
また収容槽5の内部には、この収容槽5内の紙おむつ及び液体を攪拌するための攪拌部16が設けられている。攪拌部16は、径方向に延設された回転盤16a及びその上面に固定された複数の攪拌羽根16bと、この回転盤16aの略中央位置を貫通して固定され上下方向に延びる回転軸16cとから主としてなる。攪拌羽根16bは、その正面視で略台形状に形成されている。また回転軸16cは、収容槽5及び外筒6それぞれの底部5c,6cの略中央位置に形成された貫通孔を図示しないシール材を介して密封状に貫通して下方に延設されている。より詳しくはこの回転軸16cは貫通孔に対し上下方向に位置決めされるとともに回転方向に回転自在に軸支されている。また貫通孔の下方に延びる回転軸16cの下端には、回転軸16cよりも大径のプーリー16dが設けられている。
【0025】
また収容槽5の底部5cの下面の略中央位置には、特に図示しないが上下方向に延び外筒6を密封状に貫通する軸部が固設されており、この軸部の下端には、上記した回転軸16cと同様にプーリーが設けられている。
【0026】
モータ7(駆動部)は、図示しない電源に接続されて筐体2内の下側位置に設けられており、攪拌部16の回転軸16c及び収容槽5の軸部と略平行に延設された駆動軸7aを回転駆動させるものであり、駆動軸7aの端部に設けられたプーリー7bと、攪拌部16の回転軸16cのプーリー16dとに架けて環状のベルト8が巻回されている。また特に図示しないが同様に、駆動軸7aの端部と、収容槽5の軸部のプーリーとに架けて環状のベルトが巻回されている。すなわちモータ7は、駆動軸7aを回転することで、ベルト8を介して攪拌部16及び収容槽5に対し回転力を伝達するものである。
【0027】
次に筐体2は、略直方体形状の外形であり、上面には開口部2aを開放若しくは閉塞可能な開閉蓋3及び操作パネル4を備え、筐体2の内部には収容槽5、外筒6、モータ7を内蔵するとともに、操作パネル4及び図示しない電源に電気的に接続された制御部9を水密状態で内蔵している。制御部9は、後述する工程を制御するためのプログラムを備えるとともに、操作パネル4に加え図示しないタイマに接続され、更にモータ7及び所定の開閉弁13,15等に制御信号を伝送可能に接続されている。
【0028】
また本実施例では筐体2の側面の適所に、収容槽5内に水分を上方から供給する給水管12の開口端部、外筒6内に水分を下方から供給する給水管12’の開口端部、収容槽5及び外筒6内の液体を排出する排出管14の開口端部、更に、排出管14内に排出を促すための水分を供給する小径管19の開口端部が延出しており、それぞれ図示しない上水管及び下水管等に接続可能に構成されている。なお、例えば筐体の上面に給水管の開口端部が延出し、若しくは筐体の下底面に排出管の開口端部が延出しても構わない。
【0029】
次に、図4に示されるように、本発明に係る紙おむつ処理方法の処理対象となる紙おむつ20の構造について説明する。紙おむつ20は、不織布等からなり使用者が装着する本体部21,24の略中央の内部に、排泄物等の液体を吸収する高分子吸収材25を備えるものであり、本体部21,24の内外両側の表面に、通水性を有する不織布等からなる表面材22,23が貼着されることで、本体部21,24と表面材22,23との間にて高分子吸収材25が被覆されている。
【0030】
高分子吸収材25は、その自重の数百倍から約千倍程度の水を吸収可能な高い吸水機能、及び吸収した水分を保持する水分保持機能を備えた親水性を有する樹脂からなり、その吸水前は図4(b)に示されるように、小径で多数個の顆粒状に形成されており、また紙おむつの使用後すなわち吸水後の高分子吸収材26は、図5に示されるように、その内部に吸収した液体分を包含するとともに膨潤することで、粘性の高いジェル材の様に一塊の半液体・半固体状に形成されるようになっている。
【0031】
次に本実施例1に係る紙おむつ処理方法について、図7を参照して説明する。
【0032】
先ず、予め添加材用の導入部18を介し、本実施例では添加材として、紙おむつ20が吸収した排泄物等の液体よりも浸透圧の高い添加液(添加材)を液タンク17a内に充填しておく。添加材は、後述するように使用済み紙おむつの高分子吸収材26が内部に吸収した排泄物等の液体分よりも浸透圧の高い材料であれば、例えば凝集剤とも呼ばれる酸化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム(PAC)のほか、フルボ酸、グルコン酸ナトリウム、次亜塩素、塩分濃度の高い水溶液でも良いし、添加材の固体の原材料(例えば塩粒)を上水(真水)に溶かした塩水でも良いし、別の薬剤であっても構わない。
【0033】
前処理工程(S1)
筐体2上面の開口部2aを一旦開放して収容槽5内の空状態を確認した後、操作パネル4のスタートボタンを押圧操作する。操作パネル4の操作信号を受信した制御部9の制御信号によって、添加材用の供給管17cの管路に設けられた開閉弁17bが開放されることで、収容槽5内に、液タンク17a内の添加材が所定量導入される。
【0034】
なお上記した開閉弁15は、タイマにより予め設定された時間開放した後に閉塞されるため、添加液の収容槽5への過導入が防止されている。また添加材の導入量は、操作パネル4によって任意に設定が可能である。
【0035】
次に、筐体2上面の開口部2aを開放して複数枚の使用済み紙おむつを、添加材が導入された収容槽5内に投入し、開閉蓋3により開口部2aを閉塞する。このとき、先の導入工程にて導入した添加材の量に応じて、収容槽5内に投入するに適した使用済み紙おむつの適正枚数若しくは適正重量が、操作パネル4の表示部4aに表示され、目視で確認できるようになっている。このように、収容槽5に導入された添加材の重量に基づく適正な重量の使用済み紙おむつを投入することで、添加材による処理効率を維持することができる。ここで使用者が、上記した適正枚数若しくは適正重量を超えて使用済み紙おむつを収容槽5内に投入した場合、過投入のアラームが表示されるようになっている。
【0036】
なお、添加材の量に応じた使用済み紙おむつの適正枚数若しくは適正重量、及び上記したアラームは、使用者に報知できれば、必ずしも表示部に表示されるものに限られず、例えば音声によって示されても構わない。
【0037】
ここで、前処理工程において、被処理液よりも浸透圧の高い添加液を収容槽5内に導入した後に、この収容槽5内に使用済み紙おむつを投入することで、添加材の原材料を水(溶媒)で希釈して一定濃度の添加液を生成する場合であっても、収容槽5内にて添加液を均質状態にした後に、この均質な添加液に紙おむつを浸して処理することができる。また投入直後の紙おむつが水(溶媒)によって膨潤することがなく、収容槽5内に所定量の紙おむつを安定的に投入することができる。
【0038】
切開工程(S2)
次に、制御部9の制御信号によって、モータ7の駆動軸7aが回転駆動することで、ベルト8及び回転軸16c等を介し駆動力が伝達され、収容槽5及び攪拌部16が所定の回転方向及び回転数で回転する。より詳しくは収容槽5及び攪拌部16は、右回転(正転)、左回転(逆転)を、数秒間隔で反転しながら繰り返すように制御されている。なお、収容槽5又は攪拌部16のいずれかのみが回転するように制御してもよいし、これらの回転方向や回転速度を互いに変化させても構わない。この回転に伴い収容槽5内に乱流が生じ、また収容槽5内の添加液とともに使用済み紙おむつが遠心力により収容槽5の周壁部5aの内面のカッタ10に頻繁に接触しながら周方向に流動する。
【0039】
なお、収容槽5内が攪拌部16により攪拌されている当該切開工程の最中に、導入部18の図示しない開口部が開放され、添加材を追加的に収容槽5内に漸次導入してもよい。また、収容槽5内が攪拌部16により攪拌されている当該切開工程の最中に、制御部9の制御信号によって開閉弁13,13’を開放し、給水管12,12’より上水(真水)を収容槽5内に導入しても構わない。
【0040】
収容槽5内の使用済み紙おむつは、周壁部5aの内面に設けられたカッタ10に接しながら流動することで、図5(b)に示されるように、紙おむつの本体部21,24や表面材22,23がカッタ10の切削刃11によって切開され、表面材22,23の内部にて排泄物の液体分を吸収し肥大化した膨潤状態の高分子吸収材26が、漸次、紙おむつの本体部21,24や表面材22,23に形成された切開部Cを介し外部に露出して、紙おむつの本体部21,24から分離する。上記したように、収容槽5及び攪拌部16が正転・逆転を繰り返すように回転して、収容槽5内に設けられたカッタ10と、収容槽5内の水流に追従して流動する使用済み紙おむつとに周方向に相対移動が生じることで、使用済み紙おむつがカッタ10により切開される。
【0041】
紙おむつの外部に露出した膨潤状態の高分子吸収材26は、収容槽5内を満たす添加液に接することで、該高分子吸収材26の内部に吸収していた液体分が、浸透圧によって高分子吸収材26の外部に排出され、すなわち収容槽5内を満たす添加液に浸される。
【0042】
以下、膨潤状態の高分子吸収材26内外の液体流動の微視的なメカニズムを詳述すると、先ず図6(a)に示されるように、使用済み紙おむつに内蔵され、液体分を吸収した吸水後の高分子吸収材26は、微視的には、通水性を有する被覆膜28と、この被覆膜28によって内部に閉じ込められた排泄物の液体分Dと、から主として構成される。この吸水後の高分子吸収材26が、紙おむつの本体部21,24から分離することで、被覆膜28の内部に閉じ込められた液体分Dよりも浸透圧の高い添加液(添加材)に浸される。そうすると、被覆膜28の内部に閉じ込められた液体分Dが、浸透圧により被覆膜28を通じて外側に漸次流出する結果、肥大化していた高分子吸収材26の体積が小さくなるとともに、被覆膜28の外側に流出した液体分Dは、添加液と混合してゆく。なお、略全量の液体分Dが外部に流出した後の高分子吸収材26は、例えば1ミリ以下程度の微細な形状に収縮される。
【0043】
排水工程(S3)
次に、上記した収容槽5及び攪拌部16の回転が、タイマにより予め設定された時間継続した後、制御部9の制御信号によって、モータ7の回転駆動が停止するとともに、排出管14の管路に設けられた開閉弁15が開放されることで、このとき収容槽5内を満たしている液体、すなわち添加液に加え、高分子吸収材26の外部に流出した排泄物が混合された液体が、収容槽5の周壁部5a及び底部5cに形成された通水孔5b、外筒6の底部6cに形成された通水口6d、及び開閉弁15が開放された排出管14を介し、図示しない下水管に順次排出される。
【0044】
この排水時に、必要に応じて発信される制御部9の制御信号によって、給水管19の管路に設けられた開閉弁19aが開放されることで、排出管14内に上水が導入される。このようにすることで、排出管14内の流動性が高まり、排泄物等の滞留をなくして下水管へのスムーズな排出が促される。
【0045】
洗浄工程(S4)
次に、タイマにより設定された所定時間の経過後、制御部9の制御信号によって、開閉弁15が閉塞されるとともに、給水管12の管路に設けられた開閉弁13、及び給水管12’の管路に設けられた開閉弁13’が開放されることで、収容槽5内に上水(真水)が導入される。なお、外筒6の周壁部6aの上部に細目状形成された給水口6bを介し、上水(真水)をシャワー状に散布するように給水してもよい。
【0046】
なお上記した開閉弁13は、タイマにより予め設定された時間開放した後に閉塞されるため、上水(真水)の収容槽5への過導入が防止されている。また上水(真水)の導入量は、操作パネル4によって任意に設定が可能である。
【0047】
次に、制御部9の制御信号によって、モータ7の駆動軸7aが回転駆動することで、ベルト8及び回転軸16c等を介し駆動力が伝達され、収容槽5及び攪拌部16が所定の回転方向及び回転数で回転する。収容槽5及び攪拌部16は、上記した切開工程における回転と同様に、右回転(正転)及び左回転(逆転)を、数秒間隔で反転しながら繰り返すように制御されている。
【0048】
このとき、収容槽5下部の給水管12’から上水(真水)給水した状態で、収容槽5及び攪拌部16を回転させ、更に収容槽5内を満たす上水を外筒6にオーバーフローさせてもよく、このようにすることで、収容槽5内の水の流動性を上下方向及び周方向に高めて、洗浄効果を向上させることができる。
【0049】
収容槽5内の使用済み紙おむつは、上記した切開工程において切開された本体部21,24や表面材22,23の残がいが、収容槽5内を満たす上水(真水)によって洗浄される。すなわちこれら本体部21,24や表面材22,23の残がいの表面には、高分子吸収材26の外部に流出した排泄物の液体分の一部が付着しているが、このような付着物を洗浄工程においてすすぎ洗い流すことで、浄化処理することができる。
【0050】
排水工程(S5)
次に、上記した収容槽5及び攪拌部16の回転が、タイマにより予め設定された時間継続した後、制御部9の制御信号によって、モータ7の回転駆動が停止するとともに、排出管14の管路に設けられた開閉弁15が開放されることで、このとき収容槽5内を満たしている液体、すなわち上水(真水)によって洗浄された後の排泄物を含む液体が、収容槽5の周壁部5a及び底部5cに形成された通水孔5b、外筒6の底部6cに形成された通水口6d、及び開閉弁15が開放された排出管14を介し、図示しない下水管に順次排出される。
【0051】
なお、この排水工程の終了後に、必要に応じて上記した洗浄工程(S4)及び排水工程(S5)を複数回繰り返すように制御してもよく、このようにすることで、排泄物等の汚物を残留させることなく収容槽5内を清浄にすることができる。
【0052】
脱水工程(S6)
次に、タイマにより設定された所定時間の経過後、制御部9の制御信号によって、モータ7が再び回転駆動され、収容槽5が比較的高速に回転することで、収容槽5内、及び高分子吸収材26が分離された紙おむつに残留する僅かな液体は、回転で生じる遠心力により収容槽5の外径方向に飛散し、周壁部5aの通水孔5b、外筒6の通水口6d、及び開閉弁15が開放された排出管14を介し、下水管に順次排出される。すなわち収容槽5内には高分子吸収材26が分離された紙おむつの本体が脱水された状態で残置される。なお、収容槽5内に収容する操作パネル4によって上記した任意に設定が可能である。
【0053】
取出し工程(S7)
次に、タイマにより設定された所定時間の経過後、制御部9の制御信号によって、モータ7の回転駆動が停止される。収容槽5の回転の完全停止後に、筐体2の開口部2aを閉塞していた開閉蓋3を開放し、高分子吸収材26が分離された脱水状態の紙おむつを開口部2aより取り出して廃棄する。このように、排水工程の後に脱水工程(S6)を備えることで、脱水後の収容槽5内にて水分が除去された状態で残置された紙おむつの表面材22,23等の切れ端を容易に回収することができる。また、脱水工程(S6)を備えることで、収容槽5内にて水分が除去された状態で残置された紙おむつの重量は、処理前の液体分を含む使用済み紙おむつの重量の略5%~30%程度であって、使用前の新品の紙おむつの重量と略同等レベルに軽減することができ、また減容化も達成できる。
【0054】
なお収容槽5が回転しているときに誤って開閉蓋3を開放した場合、制御部9は、収容槽5の回転駆動を緊急停止するように制御しているが、これに限らず例えば制御部9は、収容槽5が回転しているときに開閉蓋3の開放を規制するように制御してもよい。
【0055】
以上説明したように、本発明に係る紙おむつ処理方法及び紙おむつ処理装置1によれば、使用済み紙おむつの被処理液よりも浸透圧の高い添加液(添加材)を導入し、また使用済み紙おむつを投入した収容槽5内にて、紙おむつの表面材22,23が切開されることで、紙おむつの高分子吸収材26を添加液によって肥大化させることなく、この紙おむつから排泄物の液体分Dを吸収した高分子吸収材26を分離させるとともに、浸透圧の高い添加液によって高分子吸収材26から液体分Dを排出できるため、紙おむつを効率よく処理することができる。また、液体分Dを含む高分子吸収材26を分離した紙おむつの本体部21,24や表面材22,23は、多くの場合、不織布等の高カロリーの材料から成ることから、液体分Dを分離して分別することで、本体部21,24や表面材22,23等を燃料としてリサイクルすることが可能であり、大幅に環境負荷を低減することができる。
【0056】
また収容槽5は、高分子吸収材26が分離された紙おむつを取り出す開口部2a(取出口)と、開口部2aとは別に設けられ、高分子吸収材26を排出する排出管14とに連通していることで、収容槽5内で高分子吸収材26が分離された紙おむつと、当該高分子吸収材26とを、個別に排出して廃棄処分することができる。
【0057】
更に収容槽5は、高分子吸収材26が吸収した排泄物の液体分Dよりも浸透圧の高い添加液を収容槽5内に導入する導入部と、排泄物の液体分Dを上水及び添加材とともに収容槽5外に排出する排出管14とに連通していることで、収容槽5内にて紙おむつから分離された高分子吸収材26が、この収容槽5内に導入された添加液(添加材)と混合することで、この添加材の浸透圧により高分子吸収材26が吸収していた排泄物の液体分Dが添加材側に浸透するため、この排泄物の液体分Dを添加液と共に排出管14により排出することができる。
【0058】
また添加材は、例えば塩化ナトリウム(NaCl)を主成分とする塩粒を導入部18より導入するとともに、上水で希釈した添加液とすることで、排泄物の液体Dよりも浸透圧の高い添加材を安価で且つ容易に入手することができる。このとき導入部18は、攪拌部16で攪拌されている収容槽5内に添加材を導入することで、収容槽5に導入された添加材が上水と共に攪拌され、添加材が上水により均一に希釈されるため、高分子吸収材26が吸収した排泄物の液体分Dを確実に外部に浸透させることができる。
【0059】
また、紙おむつの表面材22,23を切開するための切開部として、収容槽5に汎用性の高いカッタ10が設けられていることで、収容槽5内に投入された紙おむつの表面材22,23を安価且つ容易に切開することができる。またカッタ10は、収容槽5の周壁部5aの内面に設けられていることで、この収容槽5内を流動する紙おむつの本体部21,24や表面材22,23の切開を促進することができる。
【0060】
更に、カッタは、攪拌部16の近傍位置に設けられていることで、収容槽5のカッタ10の近傍位置の流動性を高め、紙おむつの本体部21,24や表面材22,23の切開効率を高めることができる。特に、紙おむつが攪拌部16により攪拌されていることで、遠心力により収容槽5の周壁部5aの内面に沿って流動するに伴い、本体部21,24や表面材22,23の切開がされ易い。
【0061】
またカッタ10は、収容槽5の周方向に沿って複数設けられていることで、早期かつ確実に紙おむつの被覆膜を切開することができる。なお、収容槽5の周壁部5aの突条部5dに設けられたカッタ10は、その切削刃11が収容槽5の回転方向に対し傾斜して設けられていることで、収容槽5の回転方向に対し傾斜したカッタ10の切削刃11により、紙おむつの表面材を切開する効率を高めることができる。
【0062】
また収容槽5は、収容槽5の内部を開放又は閉塞可能な開閉蓋3と、開閉蓋3の開放状態において攪拌部16の駆動を規制する規制部としての制御部9と、を備えることで、カッタ10を有する収容槽5の内部を開閉蓋3で閉塞した状態で処理することができ、また開閉蓋3の開放状態では攪拌部16の駆動が制御部9によって規制されるため、安全性高く紙おむつ処理を行うことができる。
【実施例2】
【0063】
次に、実施例2に係る紙おむつ処理装置につき、図8及び図9を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成については同一符号を付して重複する説明を省略する。また収容槽35における処理工程については、前記実施例1の収容槽5における処理工程S1~S7と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
本実施例2の紙おむつ処理装置30は、内空構造を有し開口部32aが形成された筐体32のほか、この筐体32に移送管34を介し接続された処理槽31から主として構成される。紙おむつ処理装置30は、筐体32の収容槽35内に使用済みの紙おむつ(図示略)を複数枚収容し、後述する処理工程を筐体32内、更に処理槽31内で行うことで、これらの紙おむつに内蔵された高分子吸収材26(図5参照)を分離して、添加材により水処理した後に排出するものである。
【0065】
筐体32の内部には、鉛直方向に対し所定角度(本実施例では略70度)傾斜した仮想軸P回りに回転可能に配設された有底筒状の収容槽35と、筐体32内部に固定され、収容槽35よりも大径の有底筒状であって収容槽35を略同軸に外嵌する外筒36と、収容槽35に回転駆動力を付与する駆動部7とから主として構成される。また開口部32aは、筐体32の設置面に略平行の天面に対し傾斜した傾斜面に開口形成されている。
【0066】
なお筐体32は、後述する構成を除き、カッタ10等は実施例1の筐体2と同様の構成を有しているため、その構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
筐体32内の収容槽35及び外筒36に連通する排出管37には、開閉弁15に連設して移送ポンプ38が設けられるとともに、この移送ポンプ38には、筐体32内から排出される管内の被処理水を処理槽31に移送する移送管34の一端が接続されている。なお、移送対象となる被処理水には排泄物等が含まれていることから、移送ポンプ38としては水密性が高く若干の固形分や、半固体状の物質も送出可能なマグネットポンプ等が好適である。
【0068】
処理槽31は、本実施例では内空構造を有し上面に開口部40a,40bが形成された略直方体形状の本体40からなり、この本体40の内部に形成され開口部40aに連通する混合槽41と、この混合槽41の内側の側壁42を介して隣接し、開口部40bに連通する反応槽43と、本体40の上部に設置された操作盤50とから主として構成される。処理槽31は、排水工程(S3)、排水工程(S5)及び脱水工程(S6)において筐体32から排出された被処理水に含まれる高分子吸収材から液体を分離促進するとともに、この被処理水に含まれる排泄物を曝気処理し生物的に浄化した後に、被処理水を下水管等に排水するものである。
【0069】
混合槽41の上部側壁の適所には、この混合槽41に被処理水を移送するための移送管34の端部34aが接続されている。なお、この端部34aよりも僅かに下方位置に、被処理水に含まれる固形分を分離するための分離フィルタを敷設してもよい。また混合槽41の底部の適所には、この混合槽41内を攪拌するための攪拌ポンプ47が配設されている。なお、攪拌ポンプ47に代えて、若しくは加えて、混合槽41の底部の適所に図示しない攪拌羽根を配設しても構わない。
【0070】
また、混合槽41及び反応槽43と水密状に仕切られたポンプ室の内部には、ブロアポンプ44が設置されており、このブロアポンプ44の吐出口に接続された小径の散気管45を介し反応槽43にエアバブルを供給できるように構成されている。
【0071】
次に、反応槽43の底部には、ブロアポンプ44から延設され周面に複数の散気孔45aを備えた散気管45が敷設されるとともに、この散気管45とは離間した反応槽43の底部の適所には、この反応槽43内の被処理水を循環するための循環ポンプ46が配設されている。この反応槽43と混合槽41との間を区画する側壁42の適所には、複数の連通孔42aが貫通形成されていることから、混合槽41内の被処理水が連通孔42aを介し反応槽43内に自然流入するように構成され、また混合槽41内の水位と反応槽43内の水位とは同レベルとなるように構成される。
【0072】
また反応槽43内の側壁42に対向する外壁近傍には、上下方向に排水管55が延設されており、この排水管55の上端部55aは、反応槽43内の上部にて上方を向いて開口するとともに、排水管55の下端部は、処理槽31の本体40の外壁の下部を貫通して外方に延出し、図示しない下水管に接続されている。またこの排水管55の下端部よりも下方の位置には、短管であるドレン管56が本体40の外壁を貫通して水平方向に延設されており、このドレン管56の一端が反応槽43内に開口し、他端が開閉バルブ57を介し外方に延出開口し、図示しない下水管に接続されている。
【0073】
また、これら混合槽41及び反応槽43の上面には、それぞれの開口部40a,40bを開閉可能な上蓋51,52が設けられる。
【0074】
次に本実施例2に係る紙おむつ処理装置1を用いた処理工程について説明する。
【0075】
先ず、筐体32上面の開口部32aを開放して複数枚の使用済み紙おむつを収容槽35内に投入し、開閉蓋33により開口部32aを閉塞するとともに、操作パネル4の図示しないスタートボタンを押圧操作する。
【0076】
以降、筐体32内における紙おむつの処理工程については、収容槽35内に投入される上水の水量が実施例1よりも少量であることを除き、実施例1の筐体2内における処理S1~S7と同様に、収容槽35内に給水し、カッタ10により紙おむつの表面部を切開して高分子吸収材26を外部に露出させ、この高分子吸収材26の内部の水分を、添加材溶液との浸透圧によって外部に浸透させ、収容槽35を高速回転させることで高分子吸収材26が分離された紙おむつを脱水する工程であるため、実施例1と重複する詳しい説明を省略する。
【0077】
本実施例2の収容槽35は、鉛直方向に対し傾斜した仮想軸P回りに回転するように構成されていることから、収容槽35内にて攪拌された紙おむつは、この傾斜した仮想軸Pの外径方向の遠心力、及び鉛直方向の重力の影響を受けて3次元的に複雑に流動する。従って、これらの複雑に流動する紙おむつが、水平方向に対し傾斜して周壁部5aの内面に延出したカッタ10に多数回且つ鋭角に接触することで、極めて効率よく切開されるため、紙おむつ内部の高分子吸収材26を容易且つ早期に外部に露出させることができる。
【0078】
なお、上記したように本実施例2では収容槽35内に投入される上水が少量であることから、筐体32内にてカッタ10により切開され露出した高分子吸収材26の内部の水分は、浸透圧によっても十分に外部に排出されない場合がある。このような場合に二次処理として、処理槽31における被処理水の浄化処理が有効である。以下に、処理槽31内における被処理水の二次処理工程について説明する。
【0079】
収容槽35内の液体、すなわち上記した上水及び添加液に加え、高分子吸収材26の外部に流出した排泄物の液体分が混合された液体は、移送管34を通じ移送ポンプ38により圧送され処理槽31の混合槽41内に移送される。また移送ポンプ38は、前述した液体に加え、内部に幾分かの水分を含むジェル状の高分子吸収材26を若干量であれば移送することも可能である。なお、混合槽41内に図示しない供給管を通じて上水を別途供給してもよい。
【0080】
次に、混合槽41内に塩(添加材)が所定量導入される。混合槽41内に導入された液体と添加液が混合され、一定の塩分濃度を有する塩水が満たされる。なお添加材は、作業者が混合槽41の上蓋51を開放し開口部40aから投入してもよいし、所定濃度に希釈した添加液を図示しない供給ポンプ等により供給してもよい。
【0081】
混合槽41内では、ジェル状の高分子吸収材26が塩水と接することで、高分子吸収材26の内部に吸収していた液体分が、浸透圧によって高分子吸収材26の外部に排出される。よってジェル状の高分子吸収材26は漸次減容化される(図5参照)。
【0082】
次に混合槽41内の液体は、連通孔42aを通じ反応槽43に移送される。なお、連通孔42aは小口径に形成されているため、混合槽41内のジェル状の高分子吸収材26は、この連通孔42aを通過可能な程度に減容化されるまでは反応槽43に移送されず、混合槽41内に留まり、上記した塩水による浸透作用を継続するように構成されている。
【0083】
なお、混合槽41と反応槽43との境界部に、上記した連通孔42aが形成された側壁42に替えて、或いは当該側壁42に加えて、例えば目の細かい格子状のスクリーンやパンチングメタルを配設しても構わない。
【0084】
反応槽43内では、上記したブロアポンプ44より送気されたエアバブルが散気管45を介し送出されることで、反応槽43内の好気性微生物が活性化され、反応槽43内の液体の排泄物に含まれる有機物が生物学的に分解処理される。更に、反応槽43内の液体及びエアバブルは、循環ポンプ46により反応槽43内に生起される循環流によって混合されることで、有機物の分解処理が促進される。
【0085】
上記した処理と共に随時、被処理水が移送管を介し処理槽31に導入され、混合槽41及び反応槽43の水位レベルが漸次高くなる。被処理水の水位レベルが排水管55の上端部55aに達すると、浄化処理後の被処理水の上澄み水が排水管55の上端部55a内に導入され、排水管55内を介し順次外部に排出されるように構成されている。また、反応槽43内には、排水管55の上端部55aよりも僅かに低い高さ位置に、被処理水に含まれる固形分を分離するための分離フィルタ53が水平方向に敷設されているため、この分離フィルタ53を通過し得た被処理水の液体分及び所定径以下の固形分のみが上端部55a内に導入されるようになっている。
【0086】
なお上記した側壁42の連通孔42aの構成、及び排水管55の上方に開口した上端部55aの構成により、混合槽41及び反応槽43の水位レベルは、排水管55の上端部55aと略同じ若しくは低い同一レベルで安定するようになっている。
【0087】
また処理槽31における浄化処理の終了後は、ドレン管56の開閉バルブ57を開放操作することで、混合槽41及び反応槽43内の被処理水の全量を外部に排出することができる。
【0088】
以上説明した本実施例に係る紙おむつ処理装置30によれば、筐体32の排出部に移送管34を介し、高分子吸収材26が内部に吸収した被処理液よりも浸透圧の高い添加材を投入可能な処理槽31が接続されていることで、この処理槽31にて、高分子吸収材26内部の被処理液を浸透圧の高い添加材によって外部に浸透させる二次処理を行うことができる。
【0089】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0090】
例えば、前記実施例では、カッタ10が収容槽5,35の回転軸O,Pに対し直交する方向に設けられているが、これに限らず例えば、カッタが収容槽の回転軸に対し所定角度で傾斜する方向に設けられてもよい。
【0091】
また例えば、前記実施例では、紙おむつ処理の第1ステップとして前処理工程を行っているが、当該前処理工程に先立ち、空状態の収容槽5内を予め洗浄する前洗浄工程を行っても良い。
【0092】
また例えば、前記実施例では、脱水工程の後に取出し工程を行っているが、当該脱水工程の後に、収容槽5内を送風若しくは熱乾燥によって収容槽5内の水分を除去する工程を行っても良い。
【符号の説明】
【0093】
1 紙おむつ処理装置
2 筐体
2a 開口部(取出口)
3 開閉蓋
5 収容槽
5a 周壁部
6 外筒(収容槽)
6a 周壁部
6b 給水口
7 モータ(駆動部)
9 制御部(規制部)
10 カッタ(切開部)
11 切削刃
12 給水管(給水部)
13 開閉弁
14 排出管(排出部)
15 開閉弁
16 攪拌部
16b 攪拌羽根
17a 液タンク
17b 開閉弁
17c 供給管
18 導入部
20 紙おむつ
21,24 本体部
22,23 表面材
25 高分子吸収材(使用前)
26 高分子吸収材(使用済み)
30 紙おむつ処理装置
31 処理槽
32 筐体
32a 開口部(取出口)
33 開閉蓋
34 移送管
35 収容槽
37 排出管(排出部)
41 混合槽
42 側壁
43 反応槽
44 ブロアポンプ
50 操作盤
55 排水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9