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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
A61M25/00 540
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021575550
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004803
(87)【国際公開番号】W WO2021157053
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 和也
(72)【発明者】
【氏名】兼子 誉生
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-505201(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079153(WO,A1)
【文献】米国特許第3108595(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の外周側に配置された非変位部と、
前記非変位部と前記カテーテル本体の軸方向に対向する位置に配置された変位部と、
前記非変位部と前記変位部との間において前記カテーテル本体と並行に設けられる複数の線状部と、を備え、
前記非変位部は、前記変位部に向かって開口する凹部を有し、
前記線状部の一方の端部は前記変位部に固定され、他方の端部は、前記凹部内に移動可能に収容されており、
前記凹部と、前記凹部内に収容される前記線状部の前記他方の端部との間には、空隙がある、
カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記凹部は、前記カテーテル本体と一体に形成されている、
カテーテル。
【請求項3】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記凹部は、前記カテーテル本体とは別体に形成されており、前記カテーテル本体を構成する材料と強度が同じ材料、または、前記カテーテル本体を構成する材料よりも強度が高い材料により構成されている、
カテーテル。
【請求項4】
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の外周側に配置された非変位部と、
前記非変位部と前記カテーテル本体の軸方向に対向する位置に配置された変位部と、
前記非変位部と前記変位部との間において前記カテーテル本体と並行に設けられる複数の線状部と、を備え、
前記変位部は、前記非変位部に向かって開口する凹部を有し、
前記線状部の一方の端部は前記非変位部に固定され、他方の端部は、前記凹部内に移動可能に収容されており、
前記凹部と、前記凹部内に収容される前記線状部の前記他方の端部との間には、空隙がある、
カテーテル。
【請求項5】
請求項4に記載のカテーテルであって、
前記凹部は、前記カテーテル本体と一体に形成されている、
カテーテル。
【請求項6】
請求項4に記載のカテーテルであって、
前記凹部は、前記カテーテル本体とは別体に形成されており、前記カテーテル本体を構成する材料と強度が同じ材料、または、前記カテーテル本体を構成する材料よりも強度が高い材料により構成されている、
カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、血管等に挿入されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。
【0003】
カテーテルでは、例えば、経皮的冠動脈形成術(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)において、ガイドワイヤの先端部が偽腔(本来の血流路である真腔とは別に、血管壁内に形成される血流路)に進んだときに、ガイドワイヤの先端部を偽腔から真腔に誘導する処置(「リエントリー」と呼ばれている。)がとられることがある。より具体的には、医者等の手技者が、カテーテルを案内するガイドワイヤを押し引きすることにより、ガイドワイヤの先端部によって偽腔の血管壁を突き破り、ガイドワイヤの先端部を偽腔から真腔に誘導する。この際に、カテーテルの先端部は、手技者が意図しない位置に変位することがある。例えばガイドワイヤを押し引きすることにより生じる反力により、カテーテルの先端部は、手技者が意図しない位置に変位することで、カテーテルによるガイドワイヤのサポートが不十分となりリエントリーが困難となる。ひいては、偽腔を拡大させる恐れがある。
【0004】
このようにカテーテルの先端部が変位することを防止するために、従来、カテーテルの先端部を血管壁等の所定位置に固定するための固定部材を備えるカテーテルが用いられている(例えば、特許文献1参照)。固定部材は、カテーテル本体の外周側に配置されている。固定部材は、先端側線状部と、先端側線状部の基端側に固定された基端側線状部とを備えている。先端側線状部と基端側線状部とは、カテーテル本体の軸方向に略平行な線状をなしている。先端側線状部は、例えば可撓性を有する材料(例えば、金属)により構成される。先端側線状部の先端側は、カテーテル本体に固定されている。基端側線状部は、カテーテル本体の軸方向に変位可能に構成されている。このカテーテルでは、基端側線状部を、カテーテル本体の軸方向の先端側に変位させる(押す)と、先端側線状部は、カテーテル本体の径方向に突出するように変形する。このように先端側線状部が変形し、血管壁に接触することにより、カテーテルは血管壁に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2011-505201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固定部材の先端側線状部の先端側がカテーテル本体に固定された上述の構成では、先端側線状部がカテーテル本体の軸方向に略平行な線状をなしている通常時の形態において、例えば曲がった血管通路に沿ってカテーテル本体の先端部を屈曲させながら進める際に、先端側線状部の内周側の部分が曲がると共にカテーテル本体の軸方向に圧縮され、撓むことがある。これにより、手技者の意図に反して、先端側線状部がカテーテル本体の径方向に突出するように変形し、血管壁に接触することがある。この意図しない先端側線状部の変形により、目的箇所へカテーテルを進めている途中において先端側線状部が血管等の生体組織を傷つけたり、先端側線状部に異物が引っ掛かる(スタックする)恐れがある。スタックした際に、スタックした状態で無理にカテーテルを操作すると、先端側線状部が体内で破損し、破損した先端側線状部が血管等の生体組織を損傷、または、併用している他のデバイスを傷つける恐れがある。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるカテーテルは、カテーテル本体と、前記カテーテル本体の外周側に配置された非変位部と、前記非変位部と前記カテーテル本体の軸方向に対向する位置に配置された変位部と、前記非変位部と前記変位部との間において前記カテーテル本体と並行に設けられる複数の線状部と、を備え、前記非変位部は、前記変位部に向かって開口する凹部を有し、前記線状部の一方の端部は前記変位部に固定され、他方の端部は、前記凹部内に移動可能に収容されており、前記凹部と、前記凹部内に収容される前記線状部の前記他方の端部との間には、空隙がある。
【0010】
本カテーテルでは、前記線状部の前記他方の端部が前記凹部内に移動可能に収容され、前記凹部と、前記凹部内に収容される前記線状部の前記他方の端部との間には、空隙があることにより、前記カテーテルが屈曲した血管内を進むとき、前記カテーテルの先端部が屈曲することによる前記変位部と前記凹部との間の距離の短縮が生じたとしても、前記線状部の前記他方の端部が前記凹部の底面に押し付けられることが抑制され、ひいては、手技者の意図に反して前記線状部が前記カテーテルの軸方向に圧縮され、前記線状部が前記カテーテルの径方向に突出するように変形することが抑制される。従って、意図しない前記線状部の変形に起因して前記線状部が血管等の生体組織を傷つけることを抑制することができる。
【0011】
(2)上記カテーテルにおいて、前記凹部は、前記カテーテル本体と一体に形成されている構成としてもよい。本カテーテルによれば、前記凹部が前記カテーテル本体や上記カテーテルを構成する上記の各部材とは別体の部材によって構成されている構成に比べて、部材の点数を少なくすることができる。
【0012】
(3)上記カテーテルにおいて、前記凹部は、前記カテーテル本体とは別体に形成されており、前記カテーテル本体を構成する材料と強度が同じ材料、または、前記カテーテル本体を構成する材料よりも強度が高い材料により構成されていてもよい。本カテーテルによれば、前記凹部が前記カテーテル本体と一体に形成されている構成に比べて、前記非変位部が破損することを抑制することができる。
【0013】
(4)本明細書に開示されるカテーテルは、カテーテル本体と、前記カテーテル本体の外周側に配置された非変位部と、前記非変位部と前記カテーテル本体の軸方向に対向する位置に配置された変位部と、前記非変位部と前記変位部との間において前記カテーテル本体と並行に設けられる複数の線状部と、を備え、前記変位部は、前記非変位部に向かって開口する凹部を有し、前記線状部の一方の端部は前記非変位部に固定され、他方の端部は、前記凹部内に移動可能に収容されており、前記凹部と前記凹部内に収容される前記線状部の端部との間には、空隙がある。
好ましい形態は、上記(2)および(3)と同じ形態である。
【0014】
本カテーテルでは、前記線状部の前記他方の端部が前記凹部内に移動可能に収容され、前記凹部と、前記凹部内に収容される前記線状部の前記他方の端部との間には、空隙があることにより、前記カテーテルが屈曲した血管内を進むとき、前記カテーテルの先端部が屈曲することによる前記変位部と前記凹部との間の距離の短縮が生じたとしても、前記線状部の前記他方の端部が前記凹部の底面に押し付けられることが抑制され、ひいては、手技者の意図に反して前記線状部が前記カテーテルの軸方向に圧縮され、前記線状部が前記カテーテルの径方向に突出するように変形することが抑制される。従って、意図しない前記線状部の変形に起因して前記線状部が血管等の生体組織を傷つけることを抑制することができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えばカテーテルやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態におけるカテーテルの第1の形態における外観構成を概略的に示す平面図
図2】第1実施形態におけるカテーテルの第1の形態における外観構成を概略的に示す側面図
図3】第1実施形態におけるカテーテルの第2の形態における外観構成を概略的に示す平面図
図4】比較例におけるカテーテルが屈曲したときの状態を示す平面図
図5】第1実施形態におけるカテーテルが屈曲したときの状態を示す平面図
図6】第2実施形態におけるカテーテルの第1の形態における外観構成を概略的に示す平面図
図7】第2実施形態におけるカテーテルの第1の形態における外観構成を概略的に示す側面図
図8】第2実施形態におけるカテーテルの第2の形態における外観構成を概略的に示す平面図
図9】第3実施形態におけるカテーテルの第1の形態における外観構成を概略的に示す平面図
図10】第3実施形態におけるカテーテルの第2の形態における外観構成を概略的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A-1.カテーテル100の構成:
図1は、第1実施形態におけるカテーテル100の第1の形態における外観構成を概略的に示す平面図である。第1の形態とは、カテーテル100に外力(より具体的には、カテーテル100の周方向への外力)がかかっていない通常時の形態である(以下、同様)。図2は、第1実施形態におけるカテーテル100の第1の形態における外観構成を概略的に示す側面図である。図1および図2には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されており、各図において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。また、カテーテル100及びカテーテル100の各構成部材について、カテーテル100の先端から基端側に向かって中途まで延びる部分を「先端部」と記載する。同様に、カテーテル100の基端から先端側に向かって中途まで延びる部分を「基端部」と記載する。これらの点は、図2以降の図についても同様である。図1には、X軸正方向視におけるカテーテル100の構成が示されており、図2には、Y軸正方向視におけるカテーテル100の構成が示されている。また、各図では、カテーテル100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、カテーテル100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。また、各図では、カテーテル100の一部(カテーテル本体10の一部と、ハンドル部)の図示を省略している。この点は、図3以降の図についても同様である。本実施形態のカテーテル100は、体内に挿入される医療用処置具であり、例えば、経皮的冠動脈形成術(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)において、閉塞した心臓の冠動脈を拡張するためのデバイス(バルーンやステント等)を案内するガイドワイヤをサポートする目的として用いられ得る。また、本実施形態のカテーテル100は、血管内超音波(IVUS)により血管内を撮像したときに方向を示す目印としても用いられ得る。
【0018】
図1に示すように、カテーテル100は、カテーテル本体10と、第1の部材20とを備えている。カテーテル本体10の基端には、手技者が操作するハンドル部(図示しない)が接続されている。
【0019】
カテーテル本体10は、カテーテルチューブ11と、カテーテルチューブ11の先端側に接続された先端チップ12とを備えている。先端チップ12は、例えば、溶接、溶着または接着剤等によりカテーテルチューブ11の先端側に接合される。
【0020】
カテーテルチューブ11は、主に樹脂材料により構成された管状部材である。本実施形態では、カテーテルチューブ11は、多層構造をなしており、カテーテル本体10の径方向(図1では、Y軸方向)の内側から順に、内層110と、編組(図示しない)と、外層111とを備えている。編組は、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金、ピアノ線、またはタングステン等の金属材料やポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂材料により構成される。外層111は、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、またはポリウレタン等の樹脂材料により構成される。
【0021】
先端チップ12は、主にポリウレタン等の樹脂材料により構成された管状部材である。第1の部材20および第1の部材20の周辺の詳細構成については、次に述べる。
【0022】
A-2.第1の部材20および第1の部材20の周辺の詳細構成:
図1に示すように、第1の部材20は、カテーテル本体10の外周側に配置されている。第1の部材20は、2つの線状部21と、環状部22(特許請求の範囲における変位部の一例)と、2つの操作ワイヤ23とを備えている。本実施形態では、2つの線状部21と、環状部22と、2つの操作ワイヤ23とは、一体になって形成されていてもよく、別体を接合して形成されていてもよい。第1の部材20のうち、線状部21は可撓性を有する材料、例えばNi-Ti合金またはステンレス鋼などの金属材料やPEEKなどの樹脂材料により構成されており、環状部22および操作ワイヤ23は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料により構成されている。
【0023】
各線状部21は、線状の形状をなしており、カテーテル本体10の先端部の外周側に設けられている先端チップ12と環状部22との間において、カテーテル本体10と並行に設けられている。
【0024】
環状部22は、カテーテル本体10の外周側において、先端チップ12と対向する位置に配置されている。環状部22には、2つの線状部21の基端側(本実施形態では、Z軸負方向側)が固定されている。環状部22は、カテーテル本体10の先端部の一部の外周を覆うように配置されている。環状部22および2つの操作ワイヤ23は、カテーテル本体10の外周面に沿って後述する第1の位置と第2の位置との間で変位可能なように配置されている。
【0025】
各操作ワイヤ23は、環状部22の基端側に接続されている。カテーテルチューブ11の外層111には、カテーテル本体10の軸方向に延びている2つの内腔(図示しない)がカテーテルチューブ11の全長に亘って形成されており、各操作ワイヤ23は、この2つの内腔のそれぞれに挿通されている。この各内腔内において、操作ワイヤ23は、カテーテル100の基端側(言い換えると、上述のハンドル部の辺り)まで延びている。
【0026】
本実施形態では、カテーテル本体10の先端部に先端チップ12(特許請求の範囲における非変位部の一例)を有している。先端チップ12には、線状部21の個数と同数(本実施形態では、2つ)の凹部Rが形成されている。凹部Rは、環状部22よりもカテーテル本体10の先端側に位置し、カテーテル100の基端側に向かって開口している。図1および図2に示すように、環状部22がカテーテル本体10上の所定位置(以下、「第1の位置」という。)に位置する第1の形態においては、線状部21の端部210は、凹部R内に収容されており、かつ、凹部Rの底面と、凹部R内に収容される線状部21の端部210との間には、空隙がある。
【0027】
A-3.カテーテル100の動作:
上述したように、図1および図2には、第1実施形態におけるカテーテル100の第1の形態における外観構成が示されている。また、図3は、第1実施形態におけるカテーテル100の第2の形態における外観構成を概略的に示す平面図である。図4は、比較例におけるカテーテルCEが屈曲したときの状態を示す平面図であり、図5は、第1実施形態におけるカテーテル100が屈曲したときの状態を示す平面図である。図3から図5には、X軸正方向視におけるカテーテル100、CEの構成が示されている。
【0028】
本実施形態のカテーテル100では、第1の形態(図1および図2に示す通常時の形態)をなすカテーテル100を血管内に挿入し、血管通路に沿って進める際には、カテーテル100の周方向への外力はほとんどかからないため、カテーテル100は第1の形態のままである。
【0029】
そして、医者等の手技者がカテーテル100の先端部を血管壁に固定することを意図する際には、第1の形態において、2つの操作ワイヤ23を、カテーテル本体10の基端から先端側に向かって変位させる(押す)ことにより、環状部22の位置を、カテーテル本体10上の所定位置に変位させる(以下、「第2の位置」という。)。言い換えると、環状部22を、第1の位置から第2の位置に変位させる。これによりカテーテル100は図3に示すような第2の形態となる。従って、線状部21は端部210が凹部Rの底面に押し付けられることで撓み、カテーテル100の径方向に突出するように変形する。これにより、変形した線状部21が血管壁に接触することにより、カテーテル100の先端部を血管内で固定することができる。なお、線状部21の横断面(カテーテル本体10の軸方向に直交する断面)の形状は、特に限定されないが、円形や多角形が好ましく、略矩形がより好ましい。
【0030】
ところで、図4に示すように、2つの線状部21の両端がカテーテル本体10J(なお、カテーテル本体10Jは、凹部Rが形成されていない先端チップ12Jを備えている。)に固定されたカテーテルCEでは、第1の形態において、例えば屈曲した血管通路に沿ってカテーテルCEを進める際に、カテーテルCEの先端側が屈曲することで線状部21の両端間の距離が短くなり、線状部21がカテーテルCEの軸方向に圧縮されることで撓み、カテーテルCEの径方向に突出するように変形することがある。そのため、手技者の意図に反して、線状部21が血管等の生体組織に接触する。これにより、目的箇所へカテーテルCEを進めている途中において線状部21が血管等の生体組織を傷つけたり、線状部21が異物に引っ掛かる(スタックする)恐れがある。スタックした場合、スタックした状態でカテーテルCEを無理に操作することにより、線状部21が体内で破損し、破損した線状部21が血管等の生体組織や併用している他のデバイスを傷つけたりする恐れがある。
【0031】
ここで、線状部21の両端がカテーテル本体10に固定される構成として、例えば、図4に示すように、線状部21がその両端側において環状部22を有し、2つの環状部22を介してカテーテル本体10に固定された第1の部材20Jを用いた構成が考えられる。しかしながら、このカテーテルCEにおいては、線状部21がカテーテル本体10Jの先端側にも環状部22を備えるため、カテーテル本体10Jの先端側に環状部22を有さないカテーテルと比べてカテーテルCEの先端部の柔軟性を確保することが困難である。これに対し、本実施形態のカテーテル100では、上述したように線状部21が先端チップ12に形成された凹部R内に収容されることにより線状部21がカテーテル100の径方向に突出するように変形することが抑制される構成であるため、線状部21がカテーテル本体10の先端側に環状部22を有する必要は無い。従って、本実施形態のカテーテル100によれば、上述したように、線状部21の両端に環状部22を有するカテーテルCEと比べて、カテーテル100の先端部の柔軟性を確保することができる。
【0032】
本実施形態のカテーテル100では、上述したように、第1の形態においては、線状部21の端部210は、凹部R内に収容されており、かつ、凹部Rの底面と線状部21の端部210との間には、空隙がある。これにより、例えば、図5に示すようにカテーテル100の先端部が屈曲することにより環状部22と凹部Rの底面との間の距離が短くなった際に、線状部21の端部210が凹部Rの底面に押し付けられることが抑制され、ひいては、カテーテル100が屈曲した血管内を進むとき、手技者の意図に反して線状部21が撓み、カテーテル100の径方向に突出するように変形することが抑制される。従って、本実施形態のカテーテル100では、手技者の意図に反した線状部21の変形により、線状部21の端部210が凹部Rの底面へ押し付けられることによる凹部Rの破損が抑制される。
【0033】
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態のカテーテル100は、カテーテル本体10と、カテーテル本体10の外周側に配置された先端チップ12と、カテーテル本体10の外周側において先端チップ12と対向する位置に配置された環状部22と、先端チップ12と環状部22との間においてカテーテル本体10と並行に設けられる複数の線状部21と、を備えている。先端チップ12は、カテーテル100の基端側に向かって開口する凹部Rを有している。線状部21の端部210は、凹部R内に移動可能に収容されている。凹部Rの底面と線状部21の端部210との間には、空隙がある。
【0034】
本実施形態のカテーテル100では、手技者がカテーテル100の先端部を血管壁に固定することを意図する際には、カテーテル100の周方向への外力がかかっていない通常時の第1の形態において、環状部22と先端チップ12との距離が第1の形態の時の先端チップ12との距離よりも短くなるように、環状部22の位置を変位させる。これにより、カテーテル100は、図3に示すような第2の形態となる。第2の形態においては、上述したように、線状部21の端部210は、凹部Rの底面に接しており、かつ、線状部21は、カテーテル100の径方向に突出するように変形している。第2の形態によれば、線状部21がカテーテル100の径方向に突出するように変形し、血管壁に接触することにより、カテーテル100の先端部を血管壁に固定することができる。
【0035】
また、本実施形態のカテーテル100では、線状部21の端部210が凹部R内に収容されており、また、凹部Rの底面と、凹部R内に収容される線状部21の端部210との間には、空隙がある。これにより、例えばカテーテル本体10の先端部が屈曲することにより環状部22と凹部Rの底面との間の距離が短くなった際に、線状部21の端部210が凹部Rの底面に押し付けられることが抑制され、ひいては、カテーテル100が屈曲した血管内を進むとき、手技者の意図に反して線状部21がカテーテル100の径方向に突出するように変形することが抑制される。従って、本実施形態のカテーテル100によれば、手技者の意図に反して線状部21が撓み、カテーテル100の径方向に突出するように変形することや、線状部21の端部210が凹部Rの底面へ押し付けられることによる凹部Rの破損を抑制することができる。
【0036】
また、例えば手技者の意図に反して線状部21がカテーテル100の径方向に突出するように変形することを抑制する観点から、線状部21の端部210が凹部Rの全長の40%以上の位置まで挿入されていることが好ましい。また、例えばカテーテル100の先端部が屈曲することにより環状部22と凹部Rの底面との間の距離が短くなった際に、線状部21の端部210が凹部Rの底面に押し付けられることを抑制する観点から、線状部21の端部210が凹部Rの全長の60%以下の領域まで挿入されていることが好ましい。第2実施形態以降についても同様である。
【0037】
また、本実施形態のカテーテル100では、凹部Rは、カテーテル本体10と一体に形成されている。そのため、凹部Rがカテーテル本体10やカテーテル100を構成する上記の各部材とは別体の部材によって構成されている構成に比べて、部材の点数を少なくすることができる。
【0038】
また、本実施形態のカテーテル100では、先端チップ12は、環状部22よりもカテーテル本体10の先端側に位置している。そのため、手技者がカテーテル100の先端部を血管壁に固定することを意図する際には、第1の形態において、環状部22を、カテーテル100の基端から先端側に向かって移動させることにより、カテーテル100は、カテーテル100の径方向に突出するように変形させた第2の形態となる。そのため、本実施形態のカテーテル100では、操作ワイヤ23を、カテーテル100の先端から基端側に向かってに引くことにより第2の形態となる構成に比べて、容易に、線状部21をカテーテル100の径方向に突出するように変形させた第2の形態とすることができる。
【0039】
B.第2実施形態:
B-1.カテーテル100Aの構成:
図6は、第2実施形態におけるカテーテル100Aの第1の形態(図6および図7に示す通常時の形態)における外観構成を概略的に示す平面図である。図7は、図6に示すカテーテル100Aの第1の形態における外観構成を概略的に示す側面図である。図8は、第2実施形態におけるカテーテル100Aの第2の形態における外観構成を概略的に示す平面図である。図6および図8には、X軸正方向視におけるカテーテル100Aの構成が示されており、図7には、Y軸正方向視におけるカテーテル100Aの構成が示されている。図6から図8までに示すように、第2実施形態のカテーテル100Aの構成は、上述した第1実施形態のカテーテル100の構成と比較して、線状部21の端部210を収容する凹部RAを構成する部材が異なっている。言い換えると、第2実施形態では、特許請求の範囲における非変位部が筒状部材30から構成されている。以下では、第2実施形態のカテーテル100Aの構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0040】
第2実施形態におけるカテーテル100Aは、各線状部21の端部210を収容する凹部RAを構成する筒状部材30が線状部21の個数と同数(本実施形態では、2つ)備えられている。筒状部材30は、環状部22よりもカテーテル本体10Aの先端側に位置している。筒状部材30は、例えばポリイミド樹脂などの樹脂材料により形成されている。筒状部材30は、カテーテル本体10Aの先端側(本実施形態では、カテーテルチューブ11の先端)に接続されている。筒状部材30は、例えば、溶接、溶着、接着剤等によりカテーテル本体10Aの先端側に接合される。なお、第2実施形態では、凹部RAを構成する部材として、先端チップ12Aとは別体である筒状部材30を備えるため、先端チップ12Aには凹部RAが形成されていない。
【0041】
本実施形態では、環状部22(特許請求の範囲における変位部の一例)は、カテーテル本体10Aの外周側において筒状部材30と対向する位置に配置されている。線状部21は、カテーテル本体10Aの外周側に設けられる筒状部材30と環状部22との間においてカテーテル本体10Aと並行に設けられている。
【0042】
図6および図7に示すように、環状部22が第1の位置に位置する第1の形態では、線状部21の端部210は、凹部RA内に移動可能に収容されており、かつ、凹部RAの底面と線状部21の端部210との間には、空隙がある。図8に示すように、環状部22が第2の位置に位置する第2の形態では、線状部21の端部210は、凹部RAの底面に接しており、かつ、第1の部材20の線状部21は、カテーテル100Aの径方向に突出するように変形している。
【0043】
第2実施形態におけるカテーテル100Aの動作は、第1実施形態のカテーテル100の動作と同様である。そのため、その詳細な説明は省略する。
【0044】
B-2.第2実施形態の効果:
第2実施形態のカテーテル100Aは、カテーテル本体10Aと、カテーテル本体10Aの外周側に配置された筒状部材30と、筒状部材30と対向する位置に配置された環状部22と、筒状部材30と環状部22との間においてカテーテル本体10Aと並行に設けられる複数の線状部21と、を備えている。筒状部材30は、カテーテル100Aの基端側に向かって開口する凹部RAを有している。線状部21の端部210は、凹部RA内に移動可能に収容されている。凹部RAの底面と線状部21の端部210との間には、空隙がある。
【0045】
本実施形態のカテーテル100Aでは、手技者がカテーテル100Aの先端部を血管壁に固定することを意図する際には、カテーテル100Aに外力がかかっていない通常時の第1の形態において、環状部22と筒状部材30との距離が第1の形態の時の筒状部材30との距離よりも短くなるように、環状部22の位置を変位させる。これにより、カテーテル100Aは、図7に示すような第2の形態となる。第2の形態によれば、線状部21が撓み、カテーテル100Aの径方向に突出するように変形することより、カテーテル100Aの先端部を血管壁に固定することができる。
【0046】
また、本実施形態のカテーテル100Aでは、線状部21の端部210が凹部RA内に収容され、また、凹部RAの底面と線状部21の端部210との間には、空隙がある。これにより、例えばカテーテル100Aの先端部が屈曲することにより環状部22と凹部RAの底面との間の距離が短くなった際に、第1実施形態の場合と同様の理由から、線状部21がカテーテル100Aの軸方向に圧縮されることが抑制され、カテーテル100Aが屈曲した血管内を進むとき、手技者の意図に反して線状部21がカテーテル100Aの径方向に突出するように変形することが抑制される。従って、本実施形態のカテーテル100Aによれば、手技者の意図に反した線状部21の変形や、線状部21の端部210が凹部RAの底面へ押し付けられることによる凹部RAの破損を抑制することができる。
【0047】
本実施形態のカテーテル100Aでは、凹部RAは、カテーテル本体10Aとは別体に形成されており、カテーテル本体10Aを構成する材料と強度が同じ材料、または、カテーテル本体10Aを構成する材料よりも強度が高い材料により構成されている。
【0048】
第1実施形態のように凹部RAがカテーテル本体10Aと一体に形成されている構成では、凹部RAが線状部21の端部210に押圧されること等により破損する恐れがある。これに対し、本実施形態のカテーテル100Aでは、凹部RAがカテーテル本体10Aを構成する材料と強度が同じ材料、または、強度が高い材料により構成されているため、凹部RAがカテーテル本体10Aと一体に形成されている構成に比べて、上述のように凹部RAが破損することをさらに抑制することができる。
【0049】
C.第3実施形態:
C-1.カテーテル100Bの構成:
図9は、第3実施形態におけるカテーテル100Bの第1の形態(図9に示す通常時の形態)における外観構成を概略的に示す平面図である。図10は、第3実施形態におけるカテーテル100Bの第2の形態における外観構成を概略的に示す平面図である。図9および図10には、X軸正方向視におけるカテーテル100Bの構成が示されている。図9および図10に示すように、第3実施形態のカテーテル100Bの構成は、上述した第1実施形態のカテーテル100の構成と比較して、第2の部材40を備えており、第1の部材20に換えて第3の部材50を備えている点で異なっている。以下では、第3実施形態のカテーテル100Bの構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。なお、第2の部材40、第3の部材50、およびこれらの周辺の詳細構成については、次に述べる。
【0050】
C-2.第2の部材40、第3の部材50、およびこれらの周辺の詳細構成:
図9に示すように、第2の部材40は、環状部41と、2つの線状部42とを備えている。第2の部材40のうち線状部42は可撓性を有する材料、例えばNi-Ti合金またはステンレス鋼などの金属材料やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂材料により構成されており、環状部41は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料により構成されている。
【0051】
本実施形態の環状部41は、特許請求の範囲における非変位部の一例であり、カテーテル本体10Bの先端側の一部の外周を覆うように配置されている。環状部41は、例えば、溶接、溶着、接着剤等によりカテーテル本体10Bの先端側に接合される。
【0052】
線状部42は、先端が環状部41の基端側に固定されている。各線状部42は、線状の形状をなしており、カテーテル100Bの外周側に設けられる環状部41と環状部51との間においてカテーテル本体10Bと並行に設けられている。
【0053】
図9に示すように、第3の部材50は、環状部51と、2つの操作ワイヤ52とを備えている。本実施形態では、環状部51と、2つの操作ワイヤ52とは、一体になって形成されている。第3の部材50のうち、操作ワイヤ52は、例えばNi-Ti合金またはステンレス鋼などの材料により構成されている。
【0054】
本実施形態の環状部51は、特許請求の範囲における変位部の一例であり、カテーテル本体10Bの外周の一部を覆うように設けられ、カテーテル本体10B上において環状部41と対向する位置に配置されている。環状部51には、線状部42の個数と同数の凹部RBが形成されている。各凹部RBは、カテーテル100Bの基端側に向かって開口している。環状部51は、カテーテル本体10Bの外周面に沿って変位可能なように備えられている。従って、環状部51は、カテーテル本体10Bの軸方向において、後述する第1の位置と第2の位置との間で変位可能である。なお、本実施形態では、環状部51は、環状部41よりもカテーテル本体10Bの基端側に位置している。図9に示すように、環状部51が所定位置(以下、「第1の位置」という。)に位置する第1の形態においては、線状部42の端部421は、凹部RB内に移動可能に収容されており、かつ、凹部RBの底面と線状部42の端部421との間には、空隙がある。
【0055】
各操作ワイヤ52の先端は、例えば、溶接、溶着、接着剤等により環状部51の基端側に接続されている。カテーテルチューブ11の外層111には、カテーテル本体10Bの軸方向に延びている内腔(図示しない)が2つ形成されており、各操作ワイヤ52は、この2つの内腔のそれぞれに挿通されている。操作ワイヤ52は、強度の高い材料(例えば、ステンレス鋼等の金属材料)で構成されており、カテーテル100の基端側(言い換えると、手技者が上述のハンドル部を操作する位置の辺り)まで延びている。
【0056】
C-3.カテーテル100Bの動作:
上述したように、図9には、第3実施形態におけるカテーテル100Bの第1の形態(図6および図7に示す通常時の形態)における外観構成が示されている。また、図10は、第3実施形態におけるカテーテルの第2の形態における外観構成を概略的に示す平面図である。図10には、X軸正方向視におけるカテーテル100Bの構成が示されている。
【0057】
本実施形態のカテーテル100Bでは、第1実施形態等と同様に、第1の形態をなすカテーテル100Bを血管内に挿入し、血管通路に沿ってカテーテル本体10の先端部を進める際には、カテーテル100Bは第1の形態のままである。
【0058】
そして、医者等の手技者がカテーテル100Bの先端部を血管壁に固定することを意図する際には、第1の形態において、環状部51に接続された操作ワイヤ52を、カテーテル100Bの先端から基端側に向かって変位させる(引く)ことにより、環状部51を、カテーテル100Bの先端から基端側に向かって変位させる(引く)。言い換えると、環状部51を、環状部51と凹部RBの底面との距離が第1の形態の時よりも短くなるよう(以下、「第2の位置」という。)に変位させる。これにより、カテーテル100Bは、図10に示すような第2の形態となる。第2の形態においては、環状部51は、第2の位置に位置しており、線状部42の端部421は、凹部RBの底面に接しており、かつ、線状部42は、カテーテル100Bの径方向に突出するように変形している。これにより、カテーテル100の径方向に突出した線状部42が血管壁に接触することにより、カテーテル100Bの先端部を血管壁に固定することができる。なお、線状部42の横断面(カテーテル本体10Bの軸方向に直交する断面)の形状は、特に限定されるものではないが、円形や多角形であることが好ましく、略矩形であることがより好ましい。
【0059】
ところで、仮に線状部42の両端がカテーテル本体10Bに固定された構成では、第1の形態において、例えば屈曲した血管通路に沿ってカテーテル100Bを進める際に、カテーテル100Bが屈曲し、環状部51と凹部RBとの距離が短くなることで線状部42がカテーテル本体10Bの軸方向に圧縮されて撓み、カテーテル100Bの径方向に突出するように変形することがある。そのため、この構成では、手技者の意図に反して、変形した線状部42が血管壁に接触することにより、目的箇所へカテーテル100Bを進めている途中で、線状部42が血管等の生体組織を傷つけたり、線状部42に異物が引っ掛かる(スタックする)恐れがある。スタックした場合、スタックした状態でカテーテル100Bを無理に操作することにより、線状部42が体内で破損し、破損した線状部42が血管等の生体組織や併用している他のデバイスを傷つけたりする恐れがある。
【0060】
これに対し、本実施形態のカテーテル100Bでは、上述したように、第1の形態においては線状部42の端部421は、凹部RB内に収容されており、かつ、凹部RBの底面と線状部42の端部421との間には、空隙がある。これにより、例えばカテーテル100Bの先端部が屈曲することにより、環状部51と凹部RBとの間の距離が短くなった際に、線状部42の端部421が凹部RBの底面に押し付けられることで手技者の意図に反してカテーテル100Bの径方向に突出するように変形することや、線状部42の端部421が凹部RBへ押し付けられることによる凹部RBの破損を抑制することができる。
【0061】
C-4.第3実施形態の効果:
【0062】
本実施形態のカテーテル100Bは、カテーテル本体10Bと、カテーテル本体10Bの外周側に配置された環状部41と、環状部41に対向する位置に配置された環状部51と、環状部41と環状部51との間においてカテーテル本体10Bと並行に設けられる複数の線状部42と、を備えている。環状部51は、カテーテル100Bの基端側に向かって開口する凹部RBを有している。線状部42の端部421は、凹部RB内に移動可能に収容されている。凹部RBの底面と、凹部RBの底面に収容される線状部42の端部421との間には、空隙がある。
【0063】
本実施形態のカテーテル100Bでは、手技者がカテーテル100Bの先端部を血管壁に固定することを意図する際には、カテーテル100Bに外力がかかっていない通常時の第1の形態において、環状部51を、環状部51と凹部RBとの距離よりも短くなるようにカテーテル100Bの軸方向に変位させる。これにより、カテーテル100Bは、図10に示すような第2の形態となる。第2の形態においては、上述したように、線状部42の端部421は、凹部RBの底面に接しており、かつ、線状部42は撓み、カテーテル100Bの径方向に突出するように変形している。第2の形態によれば、線状部42がカテーテル100Bの径方向に突出するように変形し、血管壁に接触することにより、カテーテル100Bの先端部を血管壁に固定することができる。
【0064】
また、本実施形態のカテーテル100Bでは、線状部42の端部421が凹部RB内に収容されており、また、凹部RBの底面と線状部42の端部421との間には、空隙がある。これにより、カテーテル100Bが屈曲した血管内を進むとき、カテーテル100Bの先端部が屈曲することにより凹部RBの底面に線状部42が押し付けられ、手技者の意図に反して線状部42がカテーテル100Bの径方向に突出するように変形することや、線状部42の端部421が凹部RBへ押し付けられることによる凹部RBの破損を抑制することができる。
【0065】
D.変形例:
【0066】
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態におけるカテーテル100、100A、100Bの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0068】
また、各実施形態において、線状部21、42の形状や個数は、種々変更可能である。線状部21、42の形状は、線状に限られず、例えば、中空管状であってもよい。また、凹部R、RA、RBの断面形状や個数も、種々変更可能である。凹部R、RA、RBの断面形状は円形に限られず、多角形、楕円形、円弧形状であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10、10A、10B:カテーテル本体 11:カテーテルチューブ 12、12A、12B:先端チップ 20:第1の部材 21、42:線状部 22、41、51:環状部 23、52:操作ワイヤ 30:筒状部材 40:第2の部材 50:第3の部材 CE、100、100A、100B:カテーテル 110:内層 111:外層 210、421:端部 R、RA、RB:凹部
図1
図2
図3
図4
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図10