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特許7307210クライアント装置、地図情報サーバ及び地図情報システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】クライアント装置、地図情報サーバ及び地図情報システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20230704BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20230704BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230704BHJP
【FI】
G09B29/00 F
G09B29/00 A
G06Q10/20
G06Q50/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022002112
(22)【出願日】2022-01-11
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】松野 直也
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-182215(JP,A)
【文献】特開2004-302266(JP,A)
【文献】特開2003-316808(JP,A)
【文献】特開2006-267228(JP,A)
【文献】特開2005-107352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00 - 29/14
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 50/20
G06Q 50/26 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報サーバと通信可能に接続されたクライアント装置であって、
前記地図情報サーバから対象領域の地図に関する情報であってユーザにより指定された表示領域の地図情報と、当該対象領域に設置された複数種別の設備に関する情報である設備情報とを取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記地図情報に基づく第1のレイヤと前記設備情報に基づく第2のレイヤとを生成し、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤを重ねることで地図を生成する地図生成部と、を備え、
前記第2のレイヤは、前記取得部で取得した前記設備情報に基づいてユーザにより指定された種別の備を描画する単一の透明レイヤであり、
前記地図生成部は、前記地図上に表示させる前記設備に合わせて前記単一の透明レイヤを書き換える、
クライアント装置。
【請求項2】
前記第2のレイヤでは、前記設備毎に事前に作成した中間レイヤを重ね合わせることなく、ユーザが前記設備を指定するたびに前記設備を前記単一の透明レイヤに書き込む、
請求項1に記載のクライアント装置。
【請求項3】
ユーザの指示に基づいて前記地図上に多角形領域を設定すると、設定された多角形領域内に含まれる前記設備を抽出し、抽出された設備数又は設備全体の物性値を算出し、前記地図生成部により生成された前記第2のレイヤに算出された設備数又は設備全体の物性値を描画する設備抽出部をさらに備える、
請求項1又は2に記載のクライアント装置。
【請求項4】
前記設備は、前記対象領域に設置された電線を含み、
前記クライアント装置は、ユーザの指示に基づいて指定された開始地点から終了地点まで繋がる電線を検索し、前記第2のレイヤに描画された電線のうち検索により抽出された開始地点から終了地点まで繋がる電線に重なるように色変更線を描画する電線経路検索部をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のクライアント装置。
【請求項5】
前記第1のレイヤに前記設備が写し出された写真画像を描画させ、前記地図生成部により生成された前記地図を参照したユーザの指示に基づいて修正された前記設備の位置情報を記憶部に記憶させると共に、前記地図情報サーバに送信させる位置情報修正部をさらに備える、
請求項1からのいずれか1項に記載のクライアント装置。
【請求項6】
前記地図生成部は、前記第1のレイヤに描画された対象領域の地図及び前記第2のレイヤに描画された前記備のいずれかに対応する線を表示する第3のレイヤを生成し、前記第1のレイヤ、前記第2のレイヤ及び前記第3のレイヤを重ねることで前記地図を生成する、
請求項1からのいずれか1項に記載のクライアント装置。
【請求項7】
クライアント装置と通信可能に接続された地図情報サーバであって、
対象領域の地図に関する情報である地図情報と、当該対象領域に設置された設備に関する情報である設備情報とを記憶する記憶部と、
前記クライアント装置からの要求に応じて前記記憶部に記憶された対象領域の地図情報のうちユーザにより指定された表示領域の地図情報と、当該対象領域の設備情報とを前記クライアント装置に送信する送信部と、を備え、
前記設備情報は、前記クライアント装置の表示部に表示させる項目の順番に合わせて予め配列のソート順が決められ、コンピュータのメモリ上で展開したイメージのままのバイナリデータで構成されるデータ構造を備える、
地図情報サーバ。
【請求項8】
前記設備情報は、複数の項目を有する2次元データも1次元配列で読み込むことができるように各項目を順番に配列したデータ構造を備える、
請求項に記載の地図情報サーバ。
【請求項9】
前記設備情報は、その冒頭部分に配列の大きさが書き込まれたデータ構造を備え、
前記送信部は、前記設備情報の冒頭部分を読み込んで配列の大きさを宣言した後に配列の順番を指定せずに配列を読み込み、読み込まれた配列をパケットに格納して送信する、
請求項又はに記載の地図情報サーバ。
【請求項10】
前記設備情報は、前記設備が更新されるまで不変である固定設備情報と、前記設備の稼働状態に応じて変動する変動設備情報のいずれかに分類され、
前記固定設備情報及び前記変動設備情報は、それぞれ異なるファイルに書き込まれた状態で前記記憶部に記憶され、
前記送信部は、前記記憶部に記憶された前記ファイルの更新日時が更新されている場合に当該更新されたファイルを前記クライアント装置に向けて送信する、
請求項からのいずれか1項に記載の地図情報サーバ。
【請求項11】
請求項1からのいずれか1項に記載のクライアント装置と、
前記クライアント装置に通信可能に接続された請求項から10のいずれか1項に記載の地図情報サーバと、を備え
前記クライアント装置の前記地図生成部は、前記取得部により取得された前記設備情報のデータをメモリ上でデコードせず、予め決められた配列のソート順に応じて前記クライアント装置の表示部に表示させる項目を検索することで前記設備情報に基づく第2のレイヤを生成する、
地図情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライアント装置、地図情報サーバ及び地図情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
配電線路の保守管理を効率的に実施するには、配電線路の設備に関する情報である設備情報を管理し、必要に応じて所望の設備情報をユーザが参照できるようにする必要がある。配電線路には膨大な設備が設置されているため、設備情報の全てを数値で管理することは現実的でなく、多数の設備情報を表示した地図をユーザに提供する地図情報システムが用いられている。例えば、特許文献1には、地図上に需要家宅、電柱、配電線及び停電エリアを表示すると共に、ユーザにより指定された電柱の電柱番号及び配電状況を表示する停電情報提供システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-87201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の停電情報提供システムにおいて電柱以外の多種多様な設備情報を地図上に表示する場合、電柱及び変圧器といった各種の設備情報毎にレイヤを作成し、これらのレイヤを地図の背面レイヤに重ねることが考えられる。しかし、このような手法では、多数の中間レイヤを作成して重ね合わせる必要があるため、ユーザの要求に応じた任意の設備情報を地図上に迅速に表示させることが困難である。このような問題は、配電線路の設備を地図上に表示させる場合のみならず、他の設備を地図上に表示させる場合にも存在している。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、ユーザの要求に応じて任意の設備に関する情報を地図上に迅速に表示させることが可能なクライアント装置、地図情報サーバ及び地図情報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るクライアント装置は、
地図情報サーバと通信可能に接続されたクライアント装置であって、
前記地図情報サーバから対象領域の地図に関する情報であってユーザにより指定された表示領域の地図情報と、当該対象領域に設置された複数種別の設備に関する情報である設備情報とを取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記地図情報に基づく第1のレイヤと前記設備情報に基づく第2のレイヤとを生成し、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤを重ねることで地図を生成する地図生成部と、を備え、
前記第2のレイヤは、前記取得部で取得した前記設備情報に基づいてユーザにより指定された種別の備を描画する単一の透明レイヤであり、
前記地図生成部は、前記地図上に表示させる前記設備に合わせて前記単一の透明レイヤを書き換える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの要求に応じて任意の設備に関する情報を地図上に迅速に表示させることが可能なクライアント装置、地図情報サーバ及び地図情報システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る地図情報システムの構成を示す概略図である。
図2】(a)は、本発明の実施の形態に係る地図情報サーバのハードウェア構成を示すブロック図であり、(b)は、本発明の実施の形態に係る固定設備情報記憶部のデータ構造の一例を示す図であり、(c)は、本発明の実施の形態に係る変動設備情報記憶部のデータ構造の一例を示す図である。
図3】(a)は、一般的なパケットのデータ構造の一例を示す図であり、(b)は、本発明の実施の形態に係る地図情報サーバによるパケットのデータ構造の一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係るクライアント装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態に係るクライアント装置により表示される地図の一例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係るクライアント装置により生成される地図のレイヤ構造を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係るクライアント装置が電線を選択する手順を説明するための図である。
図8】本発明の実施の形態に係るクライアント装置により選択された電線の詳細情報を描画した地図の一例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態に係るクライアント装置により設定された多角形領域を描画した地図の一例を示す図である。
図10】本発明の実施の形態に係るクライアント装置が多角形領域内の設備を抽出する手順を説明するための図である。
図11】本発明の実施の形態に係るクライアント装置により抽出された電線経路を描画した地図の一例を示す図である。
図12】(a)は、本発明の実施の形態に係るクライアント装置により修正前の電柱及び電線が描画された地図を示す図の一例であり、(b)は、修正後の電柱及び電線が描画された地図を示す図の一例である。
図13】本発明の実施の形態に係るクライアント装置が実行する設備抽出処理の流れを示すフローチャートである。
図14】本発明の実施の形態に係るクライアント装置が実行する電線経路検索処理の流れを示すフローチャートである。
図15】本発明の実施の形態に係るクライアント装置が実行する位置情報修正処理の流れを示すフローチャートである。
図16】(a)、(b)は、いずれも本発明の変形例に係るクライアント装置により生成される落雷情報が描画された地図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るクライアント装置、地図情報サーバ及び地図情報システムを、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0010】
地図情報システム1は、GIS(Geographic Information System)の一例であり、送電線及び配電線の設備に関する情報である設備情報を地図上に表示し、電力会社の指令者、作業員といったユーザに提供するシステムである。図1に示すように、地図情報システム1は、地図情報サーバ100と、クライアント装置200と、を備える。地図情報サーバ100及びクライアント装置200は、インターネットのような通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。地図情報サーバ100には、複数のクライアント装置200が接続されてもよい。
【0011】
地図情報サーバ100は、例えば、汎用コンピュータである。地図情報サーバ100は、地図情報及び設備情報を記憶し、クライアント装置200からの要求に応じて地図情報及び設備情報を提供する。
【0012】
クライアント装置200は、例えば、ユーザに割り当てられたPC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末である。クライアント装置200は、地図情報サーバ100に地図情報及び設備情報の提供を要求し、地図情報サーバ100から地図情報及び設備情報を取得すると、地図上に設備情報を描画し、ユーザに提供する。
【0013】
設備情報が対象とする設備は、送電線、配電線、その支持物及び付帯設備を含む。配電線は、例えば、高圧線、低圧線、共同地線である。支持物は、例えば、電柱、鉄塔である。付帯設備は、例えば、一般開閉器、高圧引き込み用開閉器、耐雷設備、変圧器である。以下、配電線の設備情報を描画する場合を例に説明する。
【0014】
図2(a)を参照して、実施の形態に係る地図情報サーバ100のハードウェア構成を説明する。地図情報サーバ100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、を備える。地図情報サーバ100の各部は、内部バス(図示せず)で相互に接続されている。
【0015】
通信部110は、通信ネットワークや各種の機器に接続することが可能なインターフェースである。通信ネットワークは、例えば、インターネットである。
【0016】
記憶部120は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)を備える。記憶部120は、制御部130に実行されるプログラムや各種の情報を記憶する。また、記憶部120は、制御部130が処理を実行するためのワークメモリとしても機能する。記憶部120は、地図情報記憶部121と、固定設備情報記憶部122と、変動設備情報記憶部123と、をさらに備える。
【0017】
地図情報記憶部121は、対象地域毎に作成され、配電線路が設置された地域の地図に関する地図情報を含む。地図には、例えば、地形、水系、交通路、施設が載せられている。地図は、特定の型式に限定されず、例えば、各種の記号及び文字を用いて平面上に作成した地図であってもよく、写真画像(例えば、航空写真画像、衛星写真画像)を並べて作成した地図であってもよい。
【0018】
図2(b)に示すように、固定設備情報記憶部122は、対象地域毎に作成された複数のデータ構造で構成され、設備ID(Identification)に対応付けて固定設備情報を記憶する。設備IDは、設備毎に割り振られた固有の識別番号であり、例えば、001、002、…と表現されている。固定設備情報は、設備に関して時間が経過しても不変の設備情報であり、一旦クライアント装置200に提供されると、対象とする設備そのものが工事で置き換えられない限り、そのままの情報が固定設備情報記憶部122に記憶される。
【0019】
固定設備情報は、例えば、設備の種別、属性、位置を示す情報を含む。種別は、例えば、高圧線、開閉器といった設備の種別に関する情報である。属性情報は、例えば、設備の名称、寸法、規格、性能といった情報を含む。属性情報には、設備毎に個別に割り振られた設備番号(例えば、電線番号、電柱番号、鉄塔番号、開閉器番号)、当該設備に隣接する設備の設備番号、支持物間の電線の長さである電線径間、送配電の系統番号といった情報を含む。位置情報は、例えば、設備の位置を示す経度x及び緯度yに関する情報であり、(xa,ya)、(xb,yb)、…のように表現される。電線の位置情報には、少なくとも電線の開始地点及び終了地点の位置情報を含む。
【0020】
図2(c)に示すように、変動設備情報記憶部123は、対象地域毎に作成された複数のデータ構造で構成され、設備IDに対応付けて変動設備情報を記憶する。変動設備情報は、設備に関して時間が経過すると変動する情報であり、設備の稼働状態が変化するたびに地図情報サーバ100からクライアント装置200に最新のものが提供される。変動設備情報は、設備の稼働状態に関する情報を含み、稼働状態情報は、例えば、開閉器の入り切り、高圧線の充停電、負荷の停電の有無に関する情報を含む。変動設備情報は、固定設備情報に簡単に紐づけできる構造を有する。
【0021】
設備情報は、固定設備情報及び変動設備情報のいずれかに分類され、それぞれ個別のデータ構造として記憶されることで、情報が更新されるたびに全てのデータを再度読み込むことを回避できる。クライアント装置200は、変動設備情報記憶部123に記憶されたファイルの更新日時を常時監視し、ファイルが更新された時点で地図情報サーバ100から更新された変動設備情報を送信させる。以下、固定設備情報と変動設備情報との区別が不要な場合、両者を単に設備情報と表現する。
【0022】
図2(a)に戻り、制御部130は、地図情報サーバ100の各部の制御を行うプロセッサを備える。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部130は、記憶部120に記憶されているプログラムを実行することにより、以下の処理を実行する。
【0023】
制御部130は、クライアント装置200からの地図データ要求を受け付けると、記憶部120に記憶され、ユーザにより指定された対象領域のうち表示部220に表示される表示領域分の地図データを生成し、クライアント装置200に送信する。また、クライアント装置200は、記憶部120に記憶されている設備情報のうち、当該対象領域の全ての設備情報をメモリ配列構造のままクライアント装置200に送信する。クライアント装置200は、地図表示前に対象領域の全ての設備情報を受け取っているため、クライアント装置200で地図の表示範囲を対象領域内で変更したり表示対象設備を変更したりしても、地図情報サーバ100から設備情報を再び読み込む必要がなく、クライアント装置200の処理速度を向上できる。
【0024】
なお、クライアント装置200の制御部は、地図情報サーバ100の固定設備情報記憶部122及び変動設備情報記憶部123のいずれかに記憶された設備情報の更新日時を監視し、更新日時が新たなものに更新された場合に更新日時が更新された当該設備情報のみを読み込んで、地図情報サーバ100からクライアント装置200に転送させる。
【0025】
記憶部120に記憶された全ての設備情報をそのまま地図情報サーバ100からクライアント装置200に送信すると、通信や処理に多くの時間を要する。このため、設備情報のデータ構造は、通信や処理の高速化を実現するために、以下の3つの特徴を有する。
【0026】
1つ目の特徴は、設備情報をコンピュータのメモリ上で展開したイメージそのままのバイナリデータとすることである。このバイナリデータは、クライアント装置200の表示部で表示させる項目の順番に応じて、該当する項目を素早く検索できるように予めソート順が決められ、このソート順に合わせて各項目を並べて記憶部120に記憶されている。設備情報をコンピュータのメモリ上で展開したイメージそのままのバイナリデータとしているため、設備情報を取得した後にデータをメモリ上でデコードする必要がない。また、設備情報をバイナリ形式のファイルで記憶するため、データ量を圧縮できる。
【0027】
2つ目の特徴は、複数の項目を持つ2次元データも1次元配列で読み込むことができるように順番に配列することである。これは、汎用OS(Operating System)の開発言語において高速読み込みが可能なバイナリデータが1次元配列に限られているためである。例えば、電線の設備情報の一例として高圧線の設備情報では、以下の順序で1次元配列となるように各項目を配列する。
線種・太さ(2バイト変数)
長さ(2バイト変数)
供給フィーダ(4バイト変数)
製造年・設置年(2バイト変数)
開始地点・終了地点の位置座標(4バイト変数4つを順に配列)
【0028】
上記の高圧線の設備情報のうち開始地点・終了地点の位置座標は、図2(b)の固定設備情報記憶部122に記憶された位置情報であり、その他は属性情報である。供給フィーダは、変電所から幹線に至るまでの分岐のない配電線であり、上記の配列では高圧線に接続された供給フィーダを識別するための情報を含む。線種・太さは、2バイト変数を上位の数値及び下位の数値に分割し、それぞれを線種及び太さに割り当てる。製造年・設置年は、2バイト変数を上位の数値及び下位の数値に分割し、それぞれを製造年及び設置年に割り当てる。
【0029】
開始地点座標は、例えば、(開始地点緯度-142,開始地点経度-42)で、終了地点座標は、(終了地点緯度-142,終了地点経度-42)で表現する。一例として、1本の電線の開始地点及び終了地点の座標は、x1、y1、x2、y2の4つの座標値で表現できるが、複数の電線を考慮する場合には、N番目の電線のx1をxy(N,1)、x2をxy(N,2)、…のように2次元のデータで表現する必要がある。これをコンピュータで読み込む時点で1次元配列として扱うことにする。具体的には、N番目の電線のx1をxy(N*4+1)、x2をxy(N*4+2)、…のように1次元のデータで表現する。1次元配列として読み込むことによりコンピュータによる読み込み時間を短縮できる。なお、上記の配列では、データを小さくし、転送時間を短くするために、2バイト変数又は4バイト変数としているが、配列の変数はこれに限られない。
【0030】
3つ目の特徴は、設備情報では、要素数が変更可能な動的配列を用い、冒頭部分に配列の大きさ(情報量)を書き込むことである。これにより地図情報サーバ100の記憶部120に最初に配列の大きさが読み取られた時点で、制御部130が各変数の1次元配列の大きさを宣言し、配列の順番を指定せずに配列の全てを一気にクライアント装置200に向けて送信させることができる。
【0031】
3つ目の特徴は、地図情報サーバ100から不特定多数のクライアント装置200への通信時に、回線の利用を時間分割して転送するパケット通信技術を用いることと関連している。パケット通信では、情報をパケットと呼ばれる入れ物に入れてパケット単位で送信するため、配列を順番に読み込むと、図3(a)に示すようにパケットのデータ領域に含まれる実データ領域が小さくなってしまう。他方、予め配列の大きさを宣言し、配列の全てを一気に読み込むと、図3(b)に示すように各パケットのデータ領域に情報を詰め込むことができる。これによりパケット数を抑制して通信を高速化できる。
以上が、地図情報サーバ100のハードウェア構成である。
【0032】
次に、図4を参照して、実施の形態に係るクライアント装置200のハードウェア構成を説明する。クライアント装置200は、操作部210と、表示部220と、通信部230と、記憶部240と、制御部250と、を備える。クライアント装置200の各部は、内部バス(図示せず)で相互に接続されている。
【0033】
操作部210は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部250に供給する。操作部210は、例えば、マウス、キーボードを備える。
【0034】
表示部220は、制御部250から供給される情報に基づいて、ユーザに向けて各種の画像を表示する。表示部220は、例えば、設備の詳細情報(例えば、種別情報、属性情報、位置情報及び稼働状態)を載せた地図を表示する。
【0035】
通信部230は、通信ネットワークや各種の機器に接続することが可能なインターフェースである。
【0036】
記憶部240は、RAM、ROM、フラッシュメモリを備える。記憶部240は、制御部250に実行されるプログラムや各種の情報を記憶する。また、記憶部240は、制御部250が処理を実行するためのワークメモリとしても機能する。記憶部240は、地図情報記憶部241と、固定設備情報記憶部242と、変動設備情報記憶部243と、をさらに備える。地図情報記憶部241、固定設備情報記憶部242及び変動設備情報記憶部243は、それぞれ地図情報記憶部121、固定設備情報記憶部122及び変動設備情報記憶部123と同一又は同等のデータを記憶する。
【0037】
制御部250は、クライアント装置200の各部の制御を行うプロセッサを備える。プロセッサは、例えば、CPUである。制御部250は、記憶部240に記憶されているプログラムを実行することにより、図13の設備抽出処理、図14の電線経路検索処理及び図15の位置情報修正処理をそれぞれ実行する。制御部250は、機能的には、取得部251と、地図生成部252と、設備抽出部253と、電線経路検索部254と、位置情報修正部255と、出力部256と、を備える。
【0038】
取得部251は、ユーザが操作部210を操作して地図ソフトウェアを起動すると、地図情報サーバ100に対象領域の地図情報であってユーザにより指定された表示領域分の地図情報の送信を要求し、取得した地図情報を記憶部240に記憶させる。また、取得部251は、地図情報サーバ100から地図上での描画に必要な最新の設備情報を取得すると、記憶部240に記憶された設備情報を最新の設備情報に更新する。取得部251によるデータの取得には、地図情報サーバ100からデータを取得することのみならず、記憶部240に記憶されたデータを読み出すことも含まれる。
【0039】
地図生成部252は、取得部251により取得された地図情報及び設備情報に基づいて複数のレイヤを生成し、各レイヤを互いに重ね合わせて設備情報が載せられた地図を生成する。地図生成部252は、例えば、図5に示すように建物や道路が描画された地図上に、設備の位置情報に基づいて配置された設備(例えば、電柱、変圧器、開閉器)を示す記号や配電線を示す線が描画された地図を生成する。
【0040】
以下、図6を参照して、地図のレイヤ構造を説明する。レイヤ構造は、最下層(背景レイヤ)、中間層(中間レイヤ)及び最上層(前面レイヤ)の3層で構成される。背景レイヤは、第1のレイヤの一例であり、中間レイヤは、第2のレイヤの一例であり、前面レイヤは、第3のレイヤの一例である。背景レイヤでは地図情報を、中間レイヤでは設備情報や落雷情報を、前面レイヤでは地図及び設備情報のいずれかに対応する線、例えば、拡大表示の枠線、選択電線の色変更線といった線をそれぞれ表示させる。中間レイヤは、単一の透明レイヤで構成され、地図上に表示したい設備情報に合わせてレイヤそのものの上書きや書き換えを行う。
【0041】
一般的にGISでは、多数の中間レイヤを重ね合わせる手法が用いられるが、設備情報毎に多数の中間レイヤを作成するならば、ユーザの指示により任意の設備情報を迅速に表示させるために事前に大量の中間レイヤを作成する必要がある。このような大量の中間レイヤの作成には膨大な時間が必要となる。他方、実施の形態に係るクライアント装置200のようにユーザにより指定された設備情報をその都度、単一の透明レイヤに書き込むようにするならば、事前の中間レイヤの作成が不要になるため、コンピュータの計算負荷を抑制できる。
【0042】
地図生成部252は、操作部210が受け付けたユーザの指示に基づいて、中間レイヤの上書きや書き換えも実施する。具体的には、地図生成部252は、ユーザが図5の表示画面のメニューの「設備表示」で設備を選択すると、固定設備情報記憶部242から選択された設備の位置情報を取得し、「設備表示」で選択された設備の記号や線を中間レイヤ上に描画させることができる。例えば、配電線を表示する場合であれば、高圧線、一般開閉器、高圧引き込み線開閉器、開閉器番号、耐雷設備、変圧器、低圧・共同地線の少なくとも1つを選択して描画させることができる。
【0043】
地図生成部252は、ユーザが図5の表示画面のメニューの「表示色」で各設備の目的別に表示色を選択すると、設備を目的別に色分けする。例えば、配電線の色分けであればフィーダ別、太さ別のいずれかに色分けする。地図生成部252は、中間レイヤに描画された配電線に重ねるように、固定設備情報記憶部242に記憶された配電線の位置情報に基づいて配電線の色を変更する色変更線を描画する。
【0044】
地図生成部252は、ユーザが図5の表示画面のメニューの「拡大表示サイズ」ボタンを選択すると、マップ内に拡大範囲の枠を表示部220に表示させる。拡大範囲の枠は、前面レイヤに描画される。ここで、ユーザが操作部210を操作して枠をドラッグして拡大表示する位置を指定すると、枠内を拡大した地図を表示部220に表示させる。
【0045】
地図生成部252は、地図表示が拡大されていることを検知すると、拡大領域に含まれる設備の設備情報を記憶部240から予め読み取る。具体的には、拡大領域に含まれる設備の設備情報の配列番号(設備ID)を読み取り、配列番号を別の配列に保存しておく。これは、地図表示が拡大された後に地図に描画された設備の設備情報を表示させるようユーザが要求することが多いためである。
【0046】
地図生成部252は、ユーザの操作部210の操作によりマウスポインタを目標とする設備上に移動させると、当該設備に対応する詳細情報を記憶部240から抽出し、中間レイヤの上書き又は書き換えを行うことで中間レイヤに詳細情報を描画する。地図生成部252は、変圧器、開閉器のような一地点に設定される設備については、当該設備から一定範囲内の地点が選択された場合に、当該設備がユーザにより選択されたと判断する。
【0047】
地図生成部252は、ユーザの操作部210の操作により地図上の電線が選択されると、電線の詳細情報を抽出して中間レイヤに描画する。以下、図7を参照して、ユーザが電線を選択したかどうかを判断する手順を説明する。
【0048】
地図上にxy座標系を設定し、電線のx座標値の最小値及び最大値をx1、x2とし、y座標値の最小値及び最大値をy1、y2とする。電線のx、y座標値の最小値及び最大値は、固定設備情報記憶部242に記憶された電線の開始地点及び終了地点の位置情報から読み取られる。マウスが指し示すポインタの座標(x、y)が4つの頂点(x1,y1)、(x1,y2)、(x2,y1)、(x2,y2)からなる矩形領域に含まれるかどうかを判別する。ポインタの座標が矩形領域に含まれる場合、電線が描画された位置に基づいて以下の2つの式を作成する。ただし、a、cは、表示画面上の電線の傾き、b、dは、表示画面上の電線の位置を示す切片である。
Y=ax+b …(1)
X=cy+d …(2)
【0049】
上記の式(1)及び式(2)にポインタの座標値x、yをそれぞれ代入してX、Y値を算出し、差分X-x、Y-yの絶対値がそれぞれ閾値以内であれば、当該電線が選択されたもの判断する。その後、図8に示すように選択された電線上に色変更線を重ねて描画すると共に当該電線の詳細情報を表示させるとよい。図8の具体例では、1つの高圧線と3つのVA線とが選択され、それぞれの詳細情報が表示されている。
【0050】
図4に戻り、設備抽出部253は、地図上に任意の多角形領域を設定すると、固定設備情報記憶部242に記憶された設備の位置情報に基づいて、設定された多角形領域内に含まれる設備を抽出し、抽出された設備数又は設備全体の物性値を算出する。多角形領域は、前面レイヤに描画され、図9に示すように地図上に表示される。設備数は、例えば、電柱の基数、需要家の戸数であり、設備全体の物性値は、例えば、トランス容量、線路亘長である。多角形の角の数(ポイント数)は、例えば、3~10の範囲内で指定する。「範囲指定ポイント数」で多角形のポイント数を指定すると、地図上のクリック位置で多角形が描画され、この状態で「検索」を指示すると、多角形領域内の設備が抽出される。以下、図10を参照して、設備が多角形領域内に含まれるかどうかを判断する手順を説明する。
【0051】
多角形領域の枠のx座標値の最小値及び最大値をx3、x4とし、y座標値の最小値及び最大値をy3、y4とする。まず、4つの頂点(x3,y3)、(x3,y4)、(x3,y4)、(x4,y4)からなる矩形領域に入っている設備を全て選択する(初期検索)。次に、初期検索で選択された設備毎に、設備の座標点を基準として多角形の隣接する2つの頂点のなす角をそれぞれ順番に算出する。なす角は、例えば、右回りの回転角度でプラス、左回りの回転角度でマイナスとする。このように算出された多角形の隣接する2つの頂点のなす角を合計すると、なす角の合計値は360°か0°のいずれになる。なす角の合計値が360°であれば、当該設備は多角形領域内にあると判断でき、なす角の合計値が0°であれば、当該設備が多角形領域外にあると判断できる。
【0052】
例えば、多角形領域内にある設備Sを一例として説明すると、辺ASと辺BSとのなす角、辺BSと辺CSとのなす角、辺CSと辺DSとのなす角、辺DSと辺ESとのなす角及び辺ESと辺ASとのなす角は右回りの回転角度であるためプラスの値であり、これらのなす角を全て合計すると、合計値は360°になる。他方、多角形領域内にない設備S’を一例として説明すると、辺AS’と辺BS’とのなす角、辺BS’と辺CS’とのなす角及び辺CS’と辺DS’とのなす角は右回りの回転角度であるためプラスの値であり、辺DS’と辺ES’とのなす角及び辺ES’と辺AS’とのなす角は左回りの回転角度であるためマイナスの値である。これらのなす角を全て合計すると、合計値は0°になる。
【0053】
図4に戻り、電線経路検索部254は、ユーザにより指定された開始地点(開始電柱番号)から終了地点(終了電柱番号)まで繋がる電線を検索する。開始地点及び終了地点の位置座標は、ユーザの指示に基づいて固定設備情報記憶部242から読み取る。開始地点は、図11に示すように設定され、開始地点から電線の検索がスタートする。具体的には、検索ポイント毎に電線の開始地点につながっている電線を順番に検出し、検出された電線の電線番号(フィーダ番号)と電線の繋がり数とを繋がり情報として動的配列で記憶する。検索ポイントは、電線が繋がっているかどうかを確認するために設定された箇所である。繋がり情報には、固有の繋がり情報番号が割り当てられる。繋がり情報番号も動的配列で記憶する。これにより2つの配列情報を順次記憶していく。
【0054】
検索ポイントでの手順は以下に示すとおりである。ある検索ポイントで電線の繋がりを1つ検出した場合には、その先に向けて電線の検索を継続する。ある検索ポイントで電線の繋がりを2つ以上検出した場合には、最後に検出した電線に分岐して検索を継続する。ある検索ポイントで電線の繋がりを検出できなかった場合には、最後に電線の繋がりを検出した検索ポイントに戻り、未検索の電線に向かって検索を再開する。終了地点に到達した場合には、開始地点からたどってきた繋がり情報を電線経路として記憶し、図11に示すように地図上で電線経路に色変更線を描画する。なお、この電線経路のデータは、ドローンの飛行ルートの作成に用いることができる。ドローンの飛行ルートは、現在地から目的地に至るように電線経路に沿ってドローンが飛行するルートである。
【0055】
図4に戻り、位置情報修正部255は、背面レイヤの衛星写真画像に基づいて配電線路の設備、例えば、鉄塔や電柱、配電線の位置情報を修正する。記憶部240には、固定設備情報記憶部242に記憶された位置情報とは別に、修正後の設備の位置を示す位置修正情報も記憶されている。位置修正情報には、設備の元の位置、配電情報基幹システムに記憶された設備の修正位置、最終修正位置及び最終更新日時に関する情報が含まれている。位置情報と位置修正情報の2つのデータを用いるのは、固定設備情報記憶部242に記憶された位置情報をいきなり修正してしまうと、配電情報基幹システムにおける設備の位置情報の訂正ができなくなるためである。なお、固定設備情報記憶部242に記憶された位置情報と位置修正情報との区別が不要な場合に、両者をまとめて位置情報と表現することがある。このときの位置情報は、設備の位置に関するあらゆる情報を含む。
【0056】
具体的には、ユーザが操作部210を操作して「位置情報修正機能」を選択すると、図12(a)に示すように背面レイヤとして電柱が写し出された衛星写真画像が選択される。背面レイヤの電柱と中間レイヤの電柱の位置とがずれている場合、ユーザは操作部210のマウスを操作して中間レイヤの電柱の記号をつかみ、背面レイヤの電柱に合わせるようにドラッグして移動させる。このドラッグ操作により図12(b)に示すように電柱の位置修正情報が生成され、電柱の位置修正に連動して配電線の位置修正情報も生成される。位置情報修正部255は、生成された最新の位置修正情報を設備の元の位置、配電情報基幹システムに記憶された設備の修正位置、更新日時に対応付けて記憶部240に記憶させる。位置情報修正部255は、位置修正情報が生成又は更新されると、地図情報サーバ100に向けて最新の位置修正情報を送信し、地図情報サーバ100は、受け取った最新の位置修正情報を他のクライアント装置200及び配電情報基幹システムからの要求に応じて送信する。
【0057】
配電情報基幹システムにおける設備の位置修正は、内部に組み込まれた自動修正システムが実行する。自動修正システムは、例えば、マウスレコーダのようなソフトウェアを用いてあたかも人間が操作しているように位置修正情報に基づくマウス操作を実行することで、配電情報基幹システムにおける設備の位置修正を実行する。具体的に説明すると、まず、位置修正情報に含まれる更新日時情報に基づいて更新対象の設備を抽出する。次に、位置修正情報に含まれる配電情報基幹システムの修正位置に基づいて設備の元位置を計算し、マウスダウンさせる。次に、位置修正情報に含まれる最終修正位置に基づいて電柱の移動先座標を計算し、電柱の移動先座標へのマウスムーブの後にマウスアップを行わせる。
【0058】
設備の位置修正時に電柱番号の情報に依存する配電情報基幹システムの位置情報は更新しないものとする。これは、電柱番号を修正してしまうと用地承諾書等の書類を再取得する必要があるためである。このため、配電情報基幹システムで設備を表示する場合には、その都度、位置修正情報を参照して設備の表示位置を位置情報に基づく位置からずらして表示する必要がある。なお、位置修正情報は、現地距離を一定単位で、例えば、約10cm単位で設定される補正値を保存することが好ましい。
【0059】
図4に戻り、出力部256は、地図生成部252、設備抽出部253、電線経路検索部254及び位置情報修正部255で生成された各レイヤのイメージ領域を重ね合わせた地図に関する情報や検索された設備情報をファイル又はクリップボードに出力し、外部で利用できるようにする。出力部256は、例えば、電線経路情報をクリップボードに出力できる。ユーザは、クリップボードに出力された電線経路情報を、表計算ソフトを用いて加工することで、所望のドローン飛行ルートを作成できる。
以上が、クライアント装置200のハードウェア構成である。
【0060】
(設備抽出処理)
以下、図13を参照して、実施の形態に係るクライアント装置200の制御部250が実行する設備抽出処理の流れを説明する。設備抽出処理は、地図上に任意の多角形領域を設定すると、設定された多角形領域内に含まれる設備を抽出し、抽出された設備の数や設備全体の物性値を算出する処理であり、ユーザからの指示を受け付けた時点で開始される。ユーザは、抽出対象の設備の種別、多角形領域のポイント数を指定する。
【0061】
まず、設備抽出部253は、ユーザからの指示に基づいて、地図上に指定されたポイント数の多角形領域を設定する(ステップS11)。例えば、図9に示すように5角形の領域(ポイント数5)を設定する。
【0062】
次に、設備抽出部253は、ステップS11の処理で設定された多角形領域に外接する矩形領域を設定する(ステップS12)。例えば、図10に示すように5角形の領域に対して矩形領域を設定する。矩形領域は、多角形領域の枠のx座標値の最小値及び最大値をx3、x4とし、y座標値の最小値及び最大値をy3、y4とすると、4つの頂点(x3,y3)、(x3,y4)、(x3,y4)、(x4,y4)からなる矩形の領域である。
【0063】
次に、設備抽出部253は、固定設備情報記憶部242に記憶された設備の位置情報に基づいて、ステップS12の処理で設定された矩形領域内に含まれる設備を抽出する(ステップS13)。図10の例では、8つの設備が抽出される。
【0064】
次に、設備抽出部253は、ステップS13の処理で抽出された矩形領域内の設備と隣接する2つのポイントとのなす角の合計値を算出する(ステップS14)。
【0065】
次に、設備抽出部253は、ステップS14の処理で算出された合計値が360°である設備を多角形領域内の設備として抽出する(ステップS15)。図10の例では、4つの設備が除外され、残りの4つの設備が抽出される。
【0066】
次に、設備抽出部253は、ステップS15の処理で抽出された設備の色を変更すると共に、該当する設備の属性情報及び稼働状態情報を描画させるように中間レイヤを更新し(ステップS16)、処理を終了する。
以上が、設備抽出処理の流れである。
【0067】
(電線経路検索処理)
以下、図14を参照して、実施の形態に係るクライアント装置200の制御部250が実行する電線経路検索処理の流れを説明する。電線経路検索処理は、ユーザにより指定された開始地点から終了地点まで繋がる電線を検索する処理であり、ユーザからの指示を受け付けた時点で開始される。
【0068】
まず、電線経路検索部254は、開始地点と繋がる電線の検索を開始する(ステップS21)。
【0069】
次に、電線経路検索部254は、検索ポイントで電線の繋がりを検出したかどうかを判定する(ステップS22)。電線の繋がりを検出したと判定された場合(ステップS22;Yes)、ステップS23の処理に移動する。他方、電線の繋がりを検出しないと判定された場合(ステップS22;No)、ステップS24の処理に移動する。
【0070】
ステップS22の処理でYesの場合、電線経路検索部254は、電線経路に関する情報及び最後の分岐に関する繋がり情報を記憶部240に一時的に記憶させる(ステップS23)。繋がり情報は、検出された電線の電線番号(フィーダ番号)と電線の繋がり数とを動的配列で記憶したものであり、繋がり情報毎に固有の繋がり情報番号が割り当てられる。
【0071】
他方、ステップS22の処理でNoの場合、電線経路検索部254は、最後に検出された分岐に戻り(ステップS24)、記憶部240に一時的に記憶された最後の分岐以降の電線経路情報及び最後の分岐情報を削除し(ステップS25)、ステップS22の処理に戻る。
【0072】
ステップS23の処理の実行終了後、電線経路検索部254は、検索ポイントが終了地点に到達したかどうかを判定する(ステップS26)。検索ポイントが終了地点に到達したと判定された場合(ステップS26;Yes)、電線経路検索部254は、記憶部240に一時的に記憶された電線経路に関する情報及び電線の繋がり情報を読み込み、最終的な電線経路に関する情報として記憶部240に記憶させると共に電線経路上に色変更線を描画する(ステップS27)。他方、検索ポイントが終了地点に到達していないと判定された場合(ステップS26;No)、同一地点の繋がりを更に探すために処理をステップS22に戻す。
以上が、電線経路検索処理の流れである。
【0073】
(位置情報修正処理)
以下、図15を参照して、実施の形態に係るクライアント装置200の制御部250が実行する位置情報修正処理の流れを説明する。位置情報修正処理は、衛星写真画像に基づいて配電線路の設備の位置情報を修正する処理であり、ユーザからの指示を受け付けた時点で開始される。以下、電柱及び配電線の位置情報を修正する場合を例に説明する。
【0074】
まず、位置情報修正部255は、ユーザからの指示を受け付けると、背面レイヤをデフォルトの地図から衛星写真画像に変更する(ステップS31)。
【0075】
次に、位置情報修正部255は、ステップ31の処理で変更された背面レイヤの衛星写真画像に基づいて中間レイヤの電柱の位置を移動させる(ステップS32)。ユーザの操作に基づいて中間レイヤの電柱を選択し、選択された電柱の位置を移動させる。この操作に合わせて電柱に架設された配電線の位置も連動して移動する。
【0076】
次に、位置情報修正部255は、ステップS32の処理で移動した電柱及び配電線に関する最新の位置修正情報を記憶部240に記憶させる(ステップS33)。次に、位置情報修正部255は、最新の位置修正情報を記録したファイルを地図情報サーバ100に向けて送信させ(ステップS34)、処理を終了する。地図情報サーバ100は、クライアント装置200から電柱及び配電線に関する最新の位置修正情報を取得すると、記憶部120に記憶された位置修正情報に含まれる更新日時を修正する。他のクライアント装置200は、記憶部120に記憶された位置修正情報に含まれる更新日時を監視し、更新日時が新たなものに更新された場合に更新日時が更新された位置修正情報のみを読み込んでクライアント装置200に転送させる。また、この最新の位置修正情報は、配電情報基幹システムの設備情報の修正に利用することも可能である。
以上が、位置情報修正処理の流れである。
【0077】
以上説明したように、実施の形態に係るクライアント装置200は、地図情報サーバ100から対象領域の地図に関する情報であってユーザにより指定された表示領域の地図情報と、当該対象領域に設置された設備に関する情報である設備情報とを取得する取得部251と、取得部251で取得された地図情報に基づく第1のレイヤと設備情報に基づく第2のレイヤとを生成し、第1のレイヤ及び第2のレイヤを重ねることで地図を生成する地図生成部252と、を備え、第2のレイヤは、取得部251で取得した設備情報に基づいて、ユーザにより指定された設備情報を描画する単一の透明レイヤである。このため、クライアント装置200は、設備情報毎に多数のレイヤを生成して重ねる必要が無く、ユーザの要求に応じた任意の設備に関する情報を地図上に迅速に表示させることができる。また、クライアント装置200は、設備を表示させた座標位置を把握しているため、操作部210により操作されるマウスポインタを表示された設備に合わせることで、当該設備に関する詳細情報を容易に表示させることができる。
【0078】
本発明は上記の実施形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0079】
(変形例)
上記実施の形態では、地図のレイヤ構造を最下層、中間層及び最上層の3層で構成していたが、本発明はこれに限られない。例えば、最上層を省略し、最下層及び中間層の2層で構成してもよい。一例として、レイヤ構造を背面レイヤ及び前面レイヤの2層で構成し、各レイヤにフロント及びバックのイメージ領域を設けてもよい。この構成では、地図全体で最大4層のイメージ領域を用いることができる。背面レイヤのバック領域には、地図を描画し、フロント領域には、必要に応じでハザードマップを半透明で描画すればよい。前面レイヤのフロント領域には、各種の設備を含む系統図を描画すればよい。ラインコントロールは、簡単に消える書き方を使って系統図と同じ前面レイヤのフロント領域に描画すればよい。
【0080】
上記実施の形態では、ユーザにより指定された対象領域の全ての設備情報を地図情報サーバ100からクライアント装置200に向けて送信していたが、本発明はこれに限られない。対象領域の一部の設備情報を地図情報サーバ100からクライアント装置200に向けて送信してもよい。例えば、対象領域にある特定の設備の設備情報を地図情報サーバ100からクライアント装置200に向けて送信してもよい。
【0081】
上記実施の形態では、地図情報サーバ100に記憶された地図情報をクライアント装置200に受信させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、インターネットの地図配信サービスを利用してもよい。
【0082】
なお、設備の位置情報は、緯度及び経度で表現していたが、本発明はこれに限られない。例えば、電柱番号、開閉器番号で表現してもよい。変換テーブルを用いて緯度及び経度と電柱番号又は開閉器番号とを互いに向けて変換してもよい。
【0083】
上記実施の形態では、記憶部120、240に地図情報及び設備情報を記憶していたが、本発明はこれに限られない。例えば、地図情報及び設備情報に加えて気象に関する情報である気象情報を記憶部120、240に記憶してもよい。気象情報は、例えば、落雷情報、降雨情報、風速情報といった情報を含んでもよい。
【0084】
落雷情報は、落雷の発生日時、発生位置、大きさといった情報を含む。クライアント装置200は、ユーザからの落雷情報を表示させるようにとの指示に基づいて、地図上の落雷発生位置に対応する中間レイヤの位置に落雷情報を描画してもよい。落雷情報は、例えば、図16(a)に示すように、その時間変化を早送りして中間レイヤに順次描画してもよい。図16(a)では、落雷の発生位置を記号(正極性は記号+、負極性は記号×)で、落雷の経過時間を記号の色で表現している。
【0085】
また、図16(b)に示すように、地図を分割するように複数の正方形のセルからなるメッシュを最上位レイヤに描画し、落雷情報に基づいて一定期間あたりのセル毎の落雷回数をカウントし、各セルに対応するカウント数を中間層レイヤの対応する位置に描画してもよい。図16(b)では、セルの色を落雷のカウント数に合わせて変化させている。セルの大きさは、最小1km単位で、表示エリアの大きさにより自動可変となるように構成する。
【0086】
上記実施の形態では、地図情報と配電線及び送電線の設備情報とに基づいて地図を生成していたが、本発明はこれに限られない。設備情報は、例えば、上水道、下水道、ガス管、線路、道路のいずれかと、それに付帯する設備に関する情報とを含んでもよい。
【0087】
上記実施の形態では、地図情報及び設備情報は地図情報サーバ100及びクライアント装置200の記憶部120、240に記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各種の情報は、その全部又は一部が通信ネットワークを介して接続されている外部のサーバに記憶されてもよい。
【0088】
上記実施の形態では、通信ネットワークとしてインターネットを用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)や専用線を用いて実現してもよい。
【0089】
上記実施の形態では、地図情報サーバ100及びクライアント装置200は、それぞれ記憶部120、240に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
【0090】
上記実施の形態では、地図情報サーバ100は汎用コンピュータであったが、本発明はこれに限られない。地図情報サーバ100は、専用のシステムで実現してもよく、クラウド上に設けられたコンピュータであってもよい。
【0091】
上記実施の形態では、地図情報サーバ100及びクライアント装置200が実行する処理は、上述の物理的な構成を備える装置が、それぞれの記憶部120、240に記憶されたプログラムを実行することによって実現されていたが、本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
【0092】
また、上述の処理動作を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical Disk)といったコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理動作を実行する装置を構成してもよい。
【0093】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 地図情報システム
100 地図情報サーバ
120 記憶部
130 制御部
200 クライアント装置
250 制御部
251 取得部
252 地図生成部
253 設備抽出部
254 電線経路検索部
255 位置情報修正部
256 出力部

【要約】
【課題】ユーザの要求に応じて任意の設備に関する情報を地図上に迅速に表示させることが可能なクライアント装置、地図情報サーバ及び地図情報システムを提供する。
【解決手段】クライアント装置200は、地図情報サーバから対象領域の地図に関する情報であってユーザにより指定された表示領域の地図情報と、当該対象領域に設置された設備に関する情報である設備情報とを取得する取得部251と、取得部251で取得された地図情報に基づく第1のレイヤと設備情報に基づく第2のレイヤとを生成し、第1のレイヤ及び第2のレイヤを重ねることで地図を生成する地図生成部252と、を備える。第2のレイヤは、取得部251で取得した設備情報に基づいて、ユーザにより指定された設備情報を描画する単一の透明レイヤである。
【選択図】図4

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16