IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ−インダストリー コーオペレイション グループ オブ キョンヒ ユニバーシティの特許一覧 ▶ ナヴィファーム カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図1
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図2
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図3
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図4
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図5
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図6
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図7
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図8
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図9
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図10
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図11
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図12
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図13
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図14
  • 特許-新規な乳酸菌およびその用途 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】新規な乳酸菌およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20230704BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230704BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20230704BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A61K35/745
A61P25/00
A61P25/06
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
C12N1/20 E
C12N15/11 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022031656
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2020518088の分割
【原出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2022071102
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127422
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12297P
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM11807P
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12090P
(73)【特許権者】
【識別番号】512139102
【氏名又は名称】ユニバーシティ-インダストリー コーオペレイション グループ オブ キョンヒ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY-INDUSTRY COOPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】512318752
【氏名又は名称】ナヴィファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ミョンジュ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/167365(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0191998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A23L 33/135
A61K 35/745
A61P 25/00
A61P 25/06
A61P 25/14
A61P 25/16
A61P 25/18
A61P 25/22
A61P 25/24
A61P 25/28
C12N 15/11
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
AGRICOLA(STN)
BIOTECHNO(STN)
FSTA(STN)
SCISEARCH(STN)
TOXCENTER(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)。
【請求項2】
前記ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)は、配列番号38の16S rDNA塩基配列を含む、請求項1に記載のビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98 KCCM1297P。
【請求項3】
ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)を含む脳神経精神疾患の予防または治療用の薬学組成物。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98 KCCM1297Pは、その生菌体、その死菌体、その培養物、その破砕物またはその抽出物である、請求項3に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記脳神経精神疾患は、神経退行性疾患または精神障害である、請求項3から4の何れか1項に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記精神障害は、不安、うつ病、気分障害、不眠症、妄想障害、強迫障害、偏頭痛、ストレス、記憶障害、認知障害および注意力障害を含む群より選択されたいずれか一つ以上 である、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記神経退行性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮 性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、脊髄 小脳変性症(Spinocerebellar Atrophy)、トゥレット症候群( Tourette’s Syndrome)、フリードライヒ運動失調症(Friedr ich’s Ataxia)、マチャド・ジョセフ病(Machado-Joseph’ s disease)、痴呆、ジストニア(Dystonia)および進行性核上性麻痺 (Progressive Supranuclear Palsy)を含む群より選択 されたいずれか一つ以上である、請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記薬学組成物は、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38(Bifido bacterium adolescentis IM38)(KCCM11807 P)をさらに含む、請求項3から4の何れか1項に記載の薬学組成物。
【請求項9】
ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)を含む脳神経精神疾患の予防または改善用の健康機能食品。
【請求項10】
ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)を含む炎症疾患の予防または治療用の薬学組成物。
【請求項11】
ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)を含む炎症疾患の予防または改善用の健康機能食品 。
【請求項12】
脳神経精神疾患の予防または治療用薬剤の調製におけるビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)の使用。
【請求項13】
炎症疾患の予防または改善用薬剤の調製におけるビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(KCCM12297P)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリおよびビフィドバクテリウム・アドレセンティスに関し、具体的には、脳神経精神疾患または炎症疾患の予防および治療に有用な新規な乳酸菌を含む組成物に関する。
また、本発明は、腸内微生物レベルを測定する製剤を含む脳神経精神疾患診断用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、急増するストレスなどにより不安、うつ、精神分裂などを含む脳神経精神疾患が増加している。特に個人主義が広まった現時代の社会的、構造的な原因などの様々な原因により、うつ病および不安症などの精神障害を抱える患者が増加する傾向にある。
精神障害を抱える患者はひどい場合には自殺につながりうるし、特にうつ病患者の過半数以上が自殺を考えると報告されたことがあり、実際に10~15%の患者が自殺を試みると知られている。
【0003】
精神障害は明確で客観的な判断基準がなく患者ごとに症状が異なりうるし、精神障害が疑われる場合には正確な診断および検査に応じた治療が求められるが、精神障害による病院治療に対する否定的な社会認識のため、ろくな治療が行われていない実情である。また、精神障害を治療するために用いられる抗うつ剤などの薬物は治療効果がそれほど大きくなく、心血管系疾患および自殺などの深刻な副作用が現れるのでその使用が制限的である。
【0004】
一方、天然物を用いた研究の結果として、大韓民国公開特許第10-2017-0061457号にはツリガネタケ抽出物および紫草抽出物を用いた精神障害治療用の組成物が開示されているが、精神障害を治療できる効果的な乳酸菌については持続的な研究が未だに必要な実情である。
【0005】
このような背景下、本発明者らは、精神障害の予防および治療剤を研究している最中、腸内微生物群集の変化から精神障害を診断できることを確認し、さらには、ヒトおよびマウスの糞便から分離した新規な乳酸菌が神経退行性疾患誘発因子を抑制し、不安およびうつ行動を改善する効果などを示し、脳神経精神疾患、具体的には神経退行性疾患および精神障害の予防または治療に有用に使用できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許第10-2017-0061457号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規な乳酸菌を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、新規な乳酸菌を含む脳神経精神疾患の予防または治療用の組成物を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、新規な乳酸菌を含む炎症疾患の予防または治療用の組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、腸内微生物レベルを測定する製剤を含む脳神経精神疾患診断用の組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、脳神経精神疾患が疑われる個体から分離した糞便から腸内微生物レベルを測定するステップ;および前記腸内微生物レベルを脳神経精神疾患ではない対照群の糞便の腸内微生物レベルと比較するステップを含む脳神経精神疾患の診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための一様態として、本発明は、新規な乳酸菌を提供する。
【0013】
具体的には、本発明において、前記新規な乳酸菌は、ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)(寄託機関:韓国微生物保存センター、寄託日:2017.08.04、受託番号:KCCM12090P)またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)(寄託機関:韓国微生物保存センター、寄託日:2018.08.03、受託番号:KCCM12297P)であってもよい。
【0014】
本発明のラクトバチルス・ロイテリNK33またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98は、ヒトまたはマウスの糞便から分離および同定された新規な乳酸菌であることを特徴とする。
【0015】
本発明のラクトバチルス・ロイテリNK33の同定および分類のための16S rDNA塩基配列は、本明細書に添付された配列番号1の通りである。したがって、本発明のラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)は、配列番号1の16S rDNAを含むことができる。前記配列番号1の16S rDNA塩基配列の分析結果、公知のラクトバチルス・ロイテリ菌株と99%の相同性を示しており、ラクトバチルス・ロイテリと最も高い分子系統学的類縁関係を示した。したがって、前記乳酸菌をラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)に同定し、ラクトバチルス・ロイテリNK33に命名し、韓国微生物保存センターに2017年8月4日付で寄託した(受託番号KCCM12090P)。
【0016】
本発明のラクトバチルス・ロイテリNK33はグラム陽性菌であり、細胞の形態は桿菌である。より具体的なラクトバチルス・ロイテリNK33の生理学的特性は当該技術分野における通常の方法により分析することができ、その結果は下記表3の通りである。具体的には、ラクトバチルス・ロイテリNK33は、炭素源として、L-アラビノース、D-リボース、D-キシロース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、マンニトール、ソルビトール、N-アセチル-グルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、セロビオース、マルトース、ラクトース、メリビオース、スクロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノース、ゲンチオビオース、D-ツラノースおよびグルコネートを用いることができる。
【0017】
本発明のビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の同定および分類のための16S rDNA塩基配列は、本明細書に添付された配列番号38の通りである。したがって、本発明のビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)は、配列番号38の16S rDNAを含むことができる。前記配列番号38の16S rDNA塩基配列の分析結果、公知のビフィドバクテリウム・アドレセンティス菌株と98%の相同性を示しており、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスと最も高い分子系統学的類縁関係を示した。したがって、前記乳酸菌をビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)に同定し、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98に命名し、韓国微生物保存センターに2018年8月3日付で寄託した(受託番号KCCM12297P)。
【0018】
本発明のビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の生理学的特性は当該技術分野における通常の方法により分析することができ、その結果は下記表4の通りである。具体的には、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98は、炭素源として、D-グルコース、D-マンニトール、D-ラクトース、D-サッカロース、D-マルトース、サリシン、D-キシロース、L-アラビノース、ゼラチン、エスクリンクエン酸鉄、D-セロビオース、D-ラフィノースおよびD-トレハロースを用いることができる。
【0019】
前記目的を達成するための他の一様態として、本発明は、新規な乳酸菌を含む脳神経精神疾患の予防または治療用の薬学組成物を提供する。
【0020】
本発明において、前記新規な乳酸菌は、ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)またはこれらの混合物であってもよい。
【0021】
本発明の「ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)」および「ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)」は、前記で説明した通りである。
【0022】
具体的には、本発明の薬学組成物に含まれる乳酸菌は、その生菌体、その死菌体、その培養物、その破砕物またはその抽出物であってもよいが、脳神経精神疾患の予防または治療の効果を達成できる乳酸菌の形態であれば、特に制限されない。
【0023】
本発明における用語「培養物」は乳酸菌を公知の液体培地または固体培地で培養させて得たものを意味し、本発明においては新規な乳酸菌を含む概念である。
【0024】
本発明の脳神経精神疾患は、神経退行性疾患または精神障害であってもよい。
【0025】
具体的には、本発明の脳神経精神疾患は精神障害であってもよく、前記精神障害は不安、うつ病、気分障害、不眠症、妄想障害、強迫性障害、偏頭痛、ストレス、記憶障害、認知障害および注意力障害を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0026】
本発明の一実施例においては、ストレスが誘導された動物モデルにラクトバチルス・ロイテリNK33またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)の投与時、ストレスによる不安およびうつ行動が顕著に改善され、ストレスが誘導された動物モデルの海馬においてNF-κBの活性が抑制され、脳由来神経栄養因子の発現が増加し、血中ストレス指標因子であるコルチコステロン、IL-6、TNF-αおよびリポポリサッカライド(lipopolysaccharide、LPS)の量が減少することを確認した。それにより、前記乳酸菌を含む薬学組成物が脳神経精神疾患、具体的には精神障害の予防または治療に有用に使用できることを確認した。
【0027】
具体的には、本発明の脳神経精神疾患は神経退行性疾患であってもよく、前記神経退行性疾患はパーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、脊髄小脳変性症(Spinocerebellar Atrophy)、トゥレット症候群(Tourette’s Syndrome)、フリードライヒ運動失調症(Friedrich’s Ataxia)、マチャド・ジョセフ病(Machado-Joseph’s disease)、痴呆、ジストニア(Dystonia)、進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy)および前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia)からなる群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0028】
本発明の一実施例においては、神経細胞にストレスホルモンであるコルチコステロンと共に前記乳酸菌の処理時、アルツハイマーのような神経退行性疾患を誘発する物質として知られたNF-κBの活性が抑制されると共に、老化および痴呆などにおいて発現が減少するものとして知られた脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現が増加することを確認した(表5および6)。それにより、前記乳酸菌を含む薬学組成物が脳神経精神疾患、具体的には神経退行性疾患の予防および治療に有用に使用できることを確認した。
【0029】
また、本発明の一実施例においては、ラクトバチルス・ロイテリNK33およびビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を併用投与する場合、前記乳酸菌の単独投与群に比べて脳神経精神疾患、具体的にはストレス改善効果が顕著に上昇することを確認した(表20)。
本発明において、前記薬学組成物は、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38(Bifidobacterium adolescentis IM38) KCCM11807Pをさらに含むことができる。
【0030】
前記ビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38(Bifidobacterium adolescentis IM38) KCCM11807Pは、大韓民国公開特許第10-2017-0090359号に開示された公知の乳酸菌であって、大韓民国公開特許第10-2017-0090359号を根拠に容易に入手可能である。
【0031】
本発明の一実施例においては、ストレスが誘導された動物モデルにラクトバチルス・ロイテリNK33またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98とビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38との併用投与時、ストレスによる不安およびうつ行動が顕著に改善され、血中ストレス指標因子であるコルチコステロンの量が減少することを確認した。
【0032】
前記目的を達成するためのまた他の様態として、本発明は、ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)またはこれらの混合物を含む炎症疾患の予防または治療用の薬学組成物を提供する。
本発明の「ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)」および「ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)」は、前記で説明した通りである。
【0033】
具体的には、本発明の薬学組成物に含まれる乳酸菌はその生菌体、その死菌体、その培養物、その破砕物またはその抽出物であってもよいが、炎症疾患の予防または治療効果を達成できる乳酸菌の形態であれば、特に制限されない。
【0034】
本発明における用語「培養物」は乳酸菌を公知の液体培地または固体培地で培養させて得たものを意味し、本発明においては新規な乳酸菌を含む概念である。
【0035】
本発明の炎症疾患は、関節炎、通風、肝炎、喘息、肥満、角膜炎、胃炎、腸炎、腎臓炎、大腸炎、糖尿、結核、気管支炎、胸膜炎、腹膜炎、脊椎炎、膵臓炎、炎症痛、尿道炎、膀胱炎、膣炎、動脈硬化症、敗血症、火傷、皮膚炎、歯周炎および歯肉炎を含む群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0036】
本発明の一実施例においては、マウスから分離したマクロファージに炎症反応誘導物質であるリポポリサッカライドと共に前記乳酸菌の処理時に炎症反応が顕著に抑制されることを確認した(表5および表6)。それにより、本発明の前記乳酸菌を含む薬学組成物が炎症疾患の予防および治療に有用に使用できることを確認した。
具体的には、前記炎症疾患は大腸炎であってもよい。
【0037】
本発明の一実施例においては、ストレスにより大腸炎が誘導された動物モデルにラクトバチルス・ロイテリNK33またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の投与時、大腸炎の指標である大腸の長さが正常レベルに回復し、大腸炎の指標因子であるミエロペルオキシダーゼ、COX-2およびiNOSの量が減少し、TNF-αの活性が減少することを確認した(図15および表15)。それにより、前記ラクトバチルス・ロイテリNK33またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を含む薬学組成物が炎症疾患、具体的には大腸炎の予防および治療に有用に使用できることを確認した。
【0038】
本発明に係る脳神経精神疾患の予防または治療用の薬学組成物または炎症疾患の予防または治療用の薬学組成物は、哺乳動物に投与された後に活性成分の迅速、持続または徐放を提供できるように当業界で周知の方法を利用して薬学的剤形に製造することができる。剤形の製造において、本発明に係る薬学組成物は、新規な乳酸菌の活性を阻害しない範囲内で薬剤学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。
【0039】
前記薬剤学的に許容可能な担体は、通常用いられるもの、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油などを含むが、これらに制限されるものではない。また、本発明の薬学的組成物は、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤、その他の薬剤学的に許容可能な添加剤を含むことができる。
【0040】
本発明に係る薬学組成物の投与量は、薬剤学的に有効な量でなければならない。「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受惠/危険の比率で脳神経精神疾患または炎症疾患を予防または治療するのに十分な量を意味する。有効用量レベルは、製剤化方法、患者の状態および体重、患者の性別、年齢、疾患の程度、薬物の形態、投与経路および期間、排泄速度、反応感応性などのような要因に応じて当業者により多様に選択できる。有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用および他の薬剤と共に使用できる可能性に応じて異なりうる。しかし、好ましい効果のために、経口投与剤の場合、一般に、成人に1日に体重1kg当たりに本発明の組成物を1日に0.0001~100mg/kgで、好ましくは0.001~100mg/kgで投与することができる。上記のように投与剤を投与する場合、本発明のラクトバチルス・ロイテリNK33またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を1日に1×10CFU/60kg~1×1011CFU/60kgで投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0041】
本発明の脳神経精神疾患の予防または治療用の薬学組成物、または炎症疾患の予防または治療用の薬学組成物は、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路を通して投与できる。具体的には、本発明の薬学組成物は、経口または非経口投与(例えば、塗布または静脈内、皮下、腹腔内注射)してもよいが、経口投与が好ましい。経口投与のための固形製剤には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸剤などが含まれる。経口のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、エアロゾルなどが該当するが、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。非経口投与のための製剤としては、各々通常の方法により滅菌された水溶液、液剤、非水性溶剤、懸濁剤、エマルション、点眼剤、眼軟膏剤、シロップ、坐剤、エアロゾルなどの外用剤および滅菌注射製剤の形態に剤形化して用いることができ、好ましくは、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、眼軟膏剤、点眼剤、 ペースト剤またはカタプラズマ剤の薬剤学的組成物を製造して用いることができるが、これらに限定されるものではない。局所投与のための製剤は、臨床的処方に応じて無水型または水性型であってもよい。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としてはウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0042】
前記目的を達成するためのまた他の様態として、本発明は、ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)またはこれらの混合物を個体に投与するステップを含む脳神経精神疾患の予防または治療方法を提供する。
【0043】
前記目的を達成するためのまた他の様態として、本発明は、ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)またはこれらの混合物を個体に投与するステップを含む炎症疾患の予防または治療方法を提供する。
【0044】
本発明の「ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)」、「ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)」、「投与」、「脳神経精神疾患」および「炎症疾患」などの用語は、前記で説明した通りである。
【0045】
前記個体は動物をいい、典型的には、本発明の新規な乳酸菌を用いた治療により有益な効果を奏する哺乳動物であってもよい。このような個体の好ましい例には、ヒトのような霊長類、ラット、マウス、猿、犬、猫、牛、馬、豚、羊またはヤギが含まれる。また、このような個体には、脳神経精神疾患または炎症疾患の症状を有するかまたはこのような症状を有する危険のある個体は全て含まれる。
【0046】
前記目的を達成するためのまた他の様態として、本発明は、ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)またはこれらの混合物を含む脳神経精神疾患の予防または改善用の健康機能食品を提供する。
【0047】
前記目的を達成するためのまた他の様態として、本発明は、ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)またはこれらの混合物を含む炎症疾患の予防または改善用の健康機能食品を提供する。
【0048】
本発明の「ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)」、「ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)」、「投与」、「脳神経精神疾患」および「炎症疾患」などの用語は、前記で説明した通りである。
【0049】
前記健康機能食品は、食品の生体調節機能を強調した食品であり、物理的、生化学的、生物工学的な方法を利用して特定の目的に作用および発現するように付加価値を付与した食品である。このような健康機能食品の成分は、生体防御と身体リズムの調節、疾患の防止および回復に関係する身体調節機能を生体に対して十分に発揮するように設計して加工し、食品として許容可能な食品補助添加剤、甘味料または機能性原料を含有することができる。
【0050】
本発明のラクトバチルス・ロイテリNK33またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を健康機能食品(または、健康機能飲料添加物)として用いる場合、前記乳酸菌をそのまま添加するかまたは他の食品または食品成分と共に使用し、通常の方法に従って適切に使用できる。前記乳酸菌の混合量は、その使用目的(予防、健康または改善、治療的処置)に応じて適宜に決定できる。
【0051】
前記健康機能食品は、種々の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、保存剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有することができる。また、本発明の健康機能食品は、果物および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は単独でまたは組み合わせて使用でき、このような添加剤の比率は組成物の全体重量当たりに0.001~50重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0052】
前記健康機能食品の種類に特に制限はない。前記乳酸菌を添加できる食品としては、ソーセージ、肉類、パン、チョコレート類、スナック類、キャンデー類、菓子類、インスタントラーメン、ピザ、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などが挙げられる。飲料に剤形化する場合、新規な乳酸菌の他に添加される液体成分としては、これらに限定されないが、通常の飲料のように種々の香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、単糖類(例えば、ブドウ糖、果糖など)、二糖類(例えば、マルトース、スクロースなど)および多糖類(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖)、およびキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールであってもよい。
【0053】
前記目的を達成するためのまた他の様態として、本発明は、腸内微生物レベルを測定する製剤を含む脳神経精神疾患診断用の組成物を提供する。
【0054】
本発明の「脳神経精神疾患」などの用語は、前記で説明した通りである。
【0055】
本発明における用語「腸内微生物」は、消化管、具体的には腸内に特異的に存在する微生物であって、具体的にはバクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)、ビフィズス菌(Bifidobacteria)、乳酸菌(Lactobacilli)、β-プロテオバクテリア(proteobacteria)、δ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、ε-プロテオバクテリア(proteobacteria)および腸内細菌(Enterobacteriaceae)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0056】
具体的には、本発明の診断用の組成物は、前記腸内微生物のうちβ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、δ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、ε-プロテオバクテリア(proteobacteria)および腸内細菌(Enterobacteriaceae)を含む群より選択されたいずれか一つ以上のレベルが増加する場合には脳神経精神疾患と診断し、前記腸内微生物のうちバクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)、ビフィズス菌(Bifidobacteria)および乳酸菌(Lactobacilli)を含む群より選択されたいずれか一つのレベルが減少する場合には脳神経精神疾患と診断し、前記腸内微生物のうちβ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、δ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、ε-プロテオバクテリア(proteobacteria)および腸内細菌(Enterobacteriaceae)を含む群より選択されたいずれか一つ以上のレベルが増加し、腸内微生物のうちバクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)、ビフィズス菌(Bifidobacteria)および乳酸菌(Lactobacilli)を含む群より選択されたいずれか一つのレベルが減少する場合には脳神経精神疾患と診断することができる。
【0057】
具体的には、前記レベルが増加する腸内細菌は、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌(Escherichia coli)およびモルガネラ・モルガニー(Morganella morganii)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0058】
また、前記レベルが減少する乳酸菌はラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよく、前記レベルが減少するビフィズス菌はビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)であってもよい。
【0059】
本発明により提供される脳神経精神疾患診断用の組成物は腸内微生物レベルを測定できる製剤を含み、前記組成物に含まれた製剤を用いて脳神経精神疾患の発病有無を確認しようとする個体から分離した糞便からの腸内微生物のレベルを測定することにより、個体の脳神経精神疾患の発病有無を確認することができる。前記個体は動物であってもよく、好ましくは哺乳類であり、例えば、ヒトのような霊長類、ラット、マウス、猿、犬、猫、牛、馬、豚、羊またはヤギである。
【0060】
個体の糞便から分離した腸内微生物のレベルを測定することにより、前記個体に脳神経精神疾患が発病したか否かを確認するのに使用できる。
【0061】
前記腸内微生物レベルを測定できる製剤としては、個体の糞便から分離した腸内微生物を定量的に分析するのに使用できる限り、特にこれらに制限されるものではないが、具体的には、腸内微生物の特異的な遺伝子のレベルを測定できるプライマーまたはプローブなどであってもよく、前記特異的な遺伝子から発現されるタンパク質のレベルを測定できる抗体またはアプタマーなどであってもよく、腸内微生物の16S rDNAの配列を定量的に分析するためのプライマーまたはプローブなどであってもよく、腸内微生物のゲノムDNA配列を定量的に分析するためのパイロシークエンシング用製剤などであってもよい。
【0062】
具体的には、前記腸内微生物であるフィルミクテス(Firmicutes)に特異的なプライマーは配列番号2および配列番号3の配列番号で構成されるプライマー対であり、バクテロイデス(Bacteroidetes)に特異的なプライマーは配列番号4および配列番号5の配列番号で構成されるプライマー対であり、β-プロテオバクテリア(proteobacteria)に特異的なプライマーは配列番号6および配列番号7の配列番号で構成されるプライマー対であり、δ/γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)に特異的なプライマーは配列番号8および9の配列番号で構成されるプライマー対であり、ε-プロテオバクテリア(proteobacteria)に特異的なプライマーは配列番号10および配列番号11の配列番号で構成されるプライマー対であり、放線菌類(actinobacteria)に特異的なプライマーは配列番号12および配列番号13の配列番号で構成されるプライマー対であり、腸内細菌(Enterobacteriaceae)に特異的なプライマーは配列番号18および配列番号19の配列配列で構成されるプライマー対であってもよい。
【0063】
本発明の一実施例においては、表1の配列番号2~19のbarcodedプライマーを含むパイロシークエンシング用製剤を用いてパイロシークエンシングを行って腸内微生物レベルを測定した(試験例3)。
【0064】
本発明の組成物は、リポポリサッカライド(lipopolysacharide、LPS)の量を測定する製剤をさらに含むことができる。具体的には、前記リポポリサッカライドの量を測定する製剤はリポポリサッカライドの量を測定するのに通常用いられる製剤であってもよく、より具体的にはLimulus amoebocyte lysate(LAL)assay kitに含まれる製剤であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0065】
本発明の一実施例においては、精神障害が誘導された動物モデルの糞便を分析した結果、リポポリサッカライドの量が増加したことを確認した(図1、2、7および11)。
【0066】
本発明は、また他の様態として、前記組成物を含む脳神経精神疾患診断用のキットを提供する。
本発明のキットは、前記組成物を用いて脳神経精神疾患の発病有無の確認対象個体の糞便を収集できる収集容器、糞便内の腸内微生物を抽出するための緩衝液、腸内微生物を測定するのに用いられる測定手段などを含むことができる。
【0067】
本発明は、また他の様態として、脳神経精神疾患が疑われる個体から分離した糞便から腸内微生物レベルを測定するステップ、および前記腸内微生物レベルを脳神経精神疾患ではない対照群の糞便の腸内微生物レベルと比較するステップを含む脳神経精神疾患の診断方法を提供する。
【0068】
また、本発明は、脳神経精神疾患が疑われる個体から分離した糞便から腸内微生物レベルを測定するステップ、および前記腸内微生物レベルを脳神経精神疾患ではない対照群の糞便の腸内微生物レベルと比較するステップを含む脳神経精神疾患の診断のための情報提供方法を提供する。
【0069】
前記糞便は、腸内微生物レベルを測定するための試料であって、個体から分離して収集された糞便を意味する。
具体的には、前記腸内微生物は、バクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)、ビフィズス菌(Bifidobacteria)、乳酸菌(Lactobacilli)、β-プロテオバクテリア(proteobacteria)、δ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、ε-プロテオバクテリア(proteobacteria)および腸内細菌(Enterobacteriaceae)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0070】
本発明の脳神経精神疾患の診断または情報提供方法は、前記腸内微生物のうちレベルが増加する微生物を確認して脳神経精神疾患の発病または危険性の有無を診断することができる。
具体的には、前記脳神経精神疾患の診断または情報提供方法は、脳神経精神疾患が疑われる個体の糞便の腸内微生物レベルを脳神経精神疾患ではない対照群の糞便の腸内微生物レベルと比較して、腸内微生物レベルが増加する個体に対して脳神経精神疾患と判断するステップをさらに含むことができる。
【0071】
前記レベルが増加する腸内微生物は、β-プロテオバクテリア(proteobacteria)、δ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、ε-プロテオバクテリア(proteobacteria)および腸内細菌(Enterobacteriaceae)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
特に、前記腸内細菌は、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌(Escherichia coli)およびモルガネラ・モルガニー(Morganella morganii)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0072】
また、本発明の脳神経精神疾患の診断または情報提供方法は、前記腸内微生物のうちレベルが減少する微生物を確認して脳神経精神疾患の発病または危険性の有無を診断することができる。
【0073】
本発明の「脳神経精神疾患」などの用語は、前記で説明した通りである。
具体的には、前記脳神経精神疾患の診断または情報提供方法は、脳神経精神疾患が疑われる個体の糞便の腸内微生物レベルを脳神経精神疾患ではない対照群の糞便の腸内微生物レベルと比較して、腸内微生物レベルが減少する個体に対して脳神経精神疾患と判断するステップをさらに含むことができる。
【0074】
前記レベルが減少する腸内微生物は、バクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)、ビフィズス菌(Bifidobacteria)および乳酸菌(Lactobacilli)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
特に、前記乳酸菌はラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよく、前記ビフィズス菌はビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)であってもよい。
【0075】
本発明の一実施例においては、拘束ストレスまたは抗生剤ストレスなどのストレスを誘導した動物モデルから分離した糞便を用いて腸内微生物の群集変化を確認した結果、ストレスを受けていない動物モデルに比べて、β-プロテオバクテリア(proteobacteria)、δ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)、ε-プロテオバクテリア(proteobacteria)および腸内細菌(Enterobacteriaceae)のレベルが増加し、バクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)、ビフィズス菌(Bifidobacteria)および乳酸菌(Lactobacilli)のレベルが減少することを確認した(図2、6、8、10および12)。特に、レベルが増加した具体的な腸内細菌としてクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌(Escherichia coli)およびモルガネラ・モルガニー(Morganella morganii)があり、レベルが減少した具体的な乳酸菌としてラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)があり、レベルが減少した具体的なビフィズス菌としてビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)があることを確認した。
【0076】
本発明は、また他の様態として、脳神経精神疾患の予防または治療のための新規な乳酸菌の用途を提供する。具体的には、本発明は、脳神経精神疾患の予防または治療のためのラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)の用途を提供する。また、本発明は、脳神経精神疾患の予防または治療のためのビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)の用途を提供する。
【0077】
本発明は、また他の様態として、炎症疾患の予防または治療のための新規な乳酸菌の用途を提供する。具体的には、本発明は、炎症疾患の予防または治療のためのラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)の用途を提供する。また、本発明は、炎症疾患の予防または治療のためのビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)の用途を提供する。
【0078】
本発明は、また他の様態として、脳神経精神疾患の予防または治療のための薬剤の製造において新規な乳酸菌を含む組成物の用途を提供する。具体的には、本発明は、脳神経精神疾患の予防または治療のための薬剤の製造においてラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)を含む組成物の用途を提供する。また、本発明は、脳神経精神疾患の予防または治療のための薬剤の製造においてビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)を含む組成物の用途を提供する。
【0079】
本発明の「ラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)」、「ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)」、「脳神経精神疾患」および「炎症疾患」などの用語は、前記で説明した通りである。
【0080】
以上、本明細書に記載された数値は、特に明示していない限り、均等範囲まで含むものとして解釈しなければならない。
【0081】
以下では、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。但し、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【発明の効果】
【0082】
本発明に係る新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリNK33(Lactobacillus reuteri NK33)またはビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98(Bifidobacterium adolescentis NK98)は、神経退行性疾患誘発因子を抑制し、不安およびうつ行動を改善するという効果がある。したがって、本発明に係る新規な乳酸菌は、脳神経精神疾患の予防または治療用の組成物として用いることができ、特に、神経退行性疾患および精神障害の予防および治療に効果的である。
【0083】
また、本発明に係る新規な乳酸菌は、炎症反応を抑制する効果があって炎症疾患の予防または治療用の組成物に用いることができ、特に、大腸炎の予防および治療に効果的である。
【0084】
さらに、本発明に係る腸内微生物のレベルを測定する組成物は、腸内微生物のレベルを測定して脳神経精神疾患を診断するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】拘束ストレスを加えたマウス(IS)に対する不安行動の測定および血液指標を測定した結果である;(a)は、高架式十字迷路試験の結果、開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少することを確認したグラフである;(b)は、明暗往来試験の結果、明るい所で過ごす時間が減少することを確認したグラフである;(c)は、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認したグラフである;(d)は、海馬においてNF-κB活性(p-p65/p65)の増加および脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が減少することを確認した図である;(e)は、血液中のコルチコステロンが増加することを確認したグラフである;(f)は、血液中のIL-6が増加することを確認したグラフである;(g)は、血液中のTNF-αが増加することを確認したグラフである;(h)は、血液中のリポポリサッカライドが増加することを確認したグラフである。
図2】(a)は、拘束ストレスを加えたマウス(IS)の糞便の腸内微生物群集が変化することを確認した図である;(b)は、拘束ストレスを加えたマウス(IS)の糞便においてリポポリサッカライドが増加することを確認したグラフである。
図3】拘束ストレスを加えたマウス(IS)に対する大腸炎指標を測定した結果である;(a)は、拘束ストレスを加えたマウス(IS)の大腸の長さが減少することを確認したグラフである;(b)は、大腸においてミエロペルオキシダーゼが増加することを確認したグラフである;(c)は、大腸においてTNF-αが増加することを確認したグラフである;(d)は、大腸におけるNF-κB活性(p-p65/p65)の増加、COX-2およびiNOSの発現が増加することを確認した図である;(e)は、大腸においてオクルディンとクローディン-1が減少することを確認した図である。
図4】拘束ストレスを誘導した動物モデルの糞便を投与した動物モデル(FIS)の状態を確認した結果である;(a)は、高架式十字迷路試験の結果、開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少することを確認したグラフである;(b)は、明暗往来試験の結果、明るい所で過ごす時間が減少することを確認したグラフである;(c)は、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認したグラフである;(d)は、海馬においてNF-κB活性(p-p65/p65)の増加および脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が減少することを確認した図である;(e)は、大腸の長さが減少することを確認したグラフである;(f)は、大腸においてミエロペルオキシダーゼが増加することを確認したグラフである。
図5】拘束ストレスを誘導した動物モデルの糞便を投与した動物モデル(FIS)の血液指標を測定した結果である;(a)は、血液中のコルチコステロンが増加することを確認したグラフである;(b)は、血液中のIL-6が増加することを確認したグラフである;(c)は、血液中のTNF-αが増加することを確認したグラフである。
図6】拘束ストレスを誘導した動物モデルの糞便を投与した動物モデル(FIS)に対する大腸炎指標および微生物群集変化を確認した結果である;(a)は、TNF-αが増加することを確認したグラフである;(b)は、大腸においてIL-6が増加することを確認したグラフである;(c)は、大腸においてIL-10が減少することを確認したグラフである;(d)は、大腸におけるNF-κB活性(p-p65/p65)の増加、COX-2およびiNOSの発現が増加することを確認した図である;(e)は、糞便の腸内微生物群集が変化することを確認した図である。
図7】抗生剤ストレスを加えたマウス(AP)に対する不安行動の測定および血液指標を測定した結果である;(a)は、高架式十字迷路試験の結果、開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少することを確認したグラフである;(b)は、明暗往来試験の結果、明るい所で過ごす時間が減少することを確認したグラフである;(c)は、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認したグラフである;(d)は、海馬においてNF-κB活性(p-p65/p65)の増加および脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が減少することを確認した図である;(e)は、血液中のコルチコステロンが増加することを確認したグラフである;(f)は、血液中のIL-6が増加することを確認したグラフである;(g)は、血液中のTNF-αが増加することを確認したグラフである;(h)は、血液中のリポポリサッカライドが増加することを確認したグラフである。
図8】(a)は、抗生剤ストレスを加えたマウス(AP)の糞便の腸内微生物群集が変化することを確認した図である;(b)は、抗生剤ストレスを加えたマウス(AP)の糞便のリポポリサッカライドが増加することを確認したグラフである。
図9】抗生剤ストレスを加えたマウス(AP)に対する大腸炎指標を測定した結果である;(a)は、大腸の長さが減少することを確認したグラフである;(b)は、大腸においてミエロペルオキシダーゼが増加することを確認したグラフである;(c)は、大腸においてTNF-αが増加することを確認したグラフである;(d)は、大腸におけるNF-κB活性(p-p65/p65)の増加、COX-2およびiNOSの発現が増加することを確認した図である;(e)は、大腸においてオクルディンとクローディン-1が減少することを確認した図である。
図10】(A)は、拘束ストレスを加えたマウス(IS)および抗生剤ストレスを加えたマウス(AP)の糞便を選択培地で培養した結果、増加する菌を確認した図である;(B)は、拘束ストレスを加えたマウス(IS)および抗生剤ストレスを加えたマウス(AP)の糞便を選択培地で培養した結果、減少する菌を確認した図である。
図11】拘束ストレスおよび抗生剤ストレスを加えたマウスの糞便において増加した微生物を投与したマウスに対する不安行動の測定および血液指標を測定した結果である;(a)は、クレブシエラ・オキシトカ(KO)、大腸菌(EC)、アエロコッカス・ウリナエクイー(Aerococcus urinaeequi、AU)およびモルガネラ・モルガニー(MM)を投与したマウスの高架式十字迷路試験の結果、クレブシエラ・オキシトカを投与した群が開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が顕著に減少することを確認したグラフである;(b)は、クレブシエラ・オキシトカ(KO)を投与したマウスの高架式十字迷路試験の結果、開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少することを確認したグラフである;(c)は、明暗往来試験の結果、明るい所で過ごす時間が減少することを確認したグラフである;(d)は、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認したグラフである;(e)は、海馬においてNF-κB活性(p-p65/p65)の増加および脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が減少することを確認した図である;(f)は、血液中のコルチコステロンが増加することを確認したグラフである;(g)は、血液中のIL-6が増加することを確認したグラフである;(h)は、血液中のTNF-αが増加することを確認したグラフである;(i)は、血液中のリポポリサッカライドが増加することを確認したグラフである。
図12】(a)は、クレブシエラ・オキシトカを投与したマウス(KO)の糞便の腸内微生物群集が変化することを確認した図である;(b)は、クレブシエラ・オキシトカを投与したマウス(KO)の糞便のリポポリサッカライドが増加することを確認したグラフである。
図13】クレブシエラ・オキシトカを投与したマウス(KO)に対する大腸炎指標を測定した結果である;(a)は、大腸の長さが減少することを確認したグラフである;(b)は、大腸においてミエロペルオキシダーゼが増加することを確認したグラフである;(c)は、大腸においてTNF-αが増加することを確認したグラフである;(d)は、大腸におけるNF-κB活性(p-p65/p65)の増加、COX-2およびiNOSの発現が増加することを確認した図である;(e)は、大腸においてオクルディンとクローディン-1が減少することを確認した図である。
図14】拘束ストレスを加えたマウスに生理食塩水を投与した群(IS)と新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)NK33(IS+LR)を投与した群に対する不安行動の測定および血液指標を比較した結果である;(a)は、新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)NK33(IS+LR)を投与した群の高架式十字迷路試験の結果、開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が増加することを確認したグラフである;(b)は、明暗往来試験の結果、明るい所で過ごす時間が増加することを確認したグラフである;(c)は、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が減少することを確認したグラフである;(d)は、海馬においてNF-κB活性(p-p65/p65)の抑制および脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が増加することを確認した図である;(e)は、血液中のコルチコステロンが減少することを確認したグラフである;(f)は、血液中のIL-6が減少することを確認したグラフである;(g)は、血液中のTNF-αが減少することを確認したグラフである。
図15】拘束ストレスを加えたマウスに生理食塩水を投与した群(IS)と新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)NK33(IR)を投与した群に対する大腸炎指標を測定した結果である;(a)は、大腸の長さが回復することを確認したグラフである;(b)は、大腸においてミエロペルオキシダーゼが減少することを確認したグラフである;(c)は、大腸においてTNF-αが減少することを確認したグラフである;(d)は、大腸におけるNF-κB活性(p-p65/p65)の減少、COX-2およびiNOSの発現が減少することを確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下では、本発明の理解を助けるために好ましい実施例および試験例を提示する。但し、下記の実施例および試験例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これらにより本発明の内容が限定されるものではない。
【0087】
試験例1:精神障害誘導動物モデル
【0088】
(1)拘束ストレス
不安症、うつ病またはストレスなどの精神障害を誘導するために3×10cmの円筒状の拘束ストレス装置にマウスを動かないように固定した。
【0089】
具体的には、拘束ストレスによる不安誘導マウスを作製するために、装置に固定された前記マウスを2日に1回ずつ頭が上に行くように2時間ずつ立たせておく方法で拘束ストレスを5回繰り返し、最後の拘束ストレスの2時間後に行動試験を行った。
また、拘束ストレスによるうつ誘導マウスを作製するために、装置に固定された前記マウスを頭が上に行くように12時間ずつ立たせておく方法で毎日1回ずつ2日間連続拘束ストレスを繰り返した。乳酸菌の投与は毎日1回ずつ5日間投与し、最終投与の1時間後に行動試験を行った。
【0090】
(2)抗生剤ストレス
不安症、うつ病またはストレスなどの精神障害を誘導するためにアンピシリン(100mg/kg)を2日間連続でマウスに投与した。投与の10日後に不安行動を測定した。
【0091】
(3)精神障害誘導動物モデルに対する試験方法
拘束ストレスを誘導したマウスモデルに対し、拘束ストレスを開始して7日目から1日1回ずつ3日間試験群に応じて乳酸菌または生理食塩水を投与した。抗生剤ストレスを誘導したマウスモデルに対し、抗生剤ストレスを誘導して7日目から1日1回ずつ3日間試験群に応じて乳酸菌または生理食塩水を投与した。
【0092】
不安行動は乳酸菌または生理食塩水を投与して5時間後に測定し、血液指標(コルチコステロン、IL-6、TNF-αなど)は高架式十字迷路試験が終わって1時間後に血液を採取して測定した。
【0093】
試験例2:ストレス診断のための行動測定方法
【0094】
(1)高架式十字迷路(elevated plus maze、EPM)試験
高架式十字迷路は、ストレスまたは不安症などの精神障害の程度を測定するための試験装置である。本試験に用いられた高架式十字迷路試験装置は、二つの開放通路(Open arm(30×7cm))と20cm高さの壁を有した二つの閉鎖通路(Enclosed arm(30×7cm))が底部から50cmだけ高く、中央プラットフォームから7cmずつ伸びている黒色プレキシガラス装置である。本試験は、20ルクスの明るさにビデオカメラが上に設置されている部屋で高架式十字迷路に置かれたマウスの動きを記録した。
【0095】
具体的には、C57BL/6マウス(雄、19~22g)を高架式十字迷路の真ん中に置き、頭は開放通路に向かうようにした。5分間開放通路と閉鎖通路で過ごした時間と回数を測定した。通路の進入(Arm entry)は、四つの足が全て入っているのを認めることにした。
【0096】
全試験時間の中、開放通路で過ごした時間(Time spent in open arms、OT)は、[開放通路で過ごした時間/(開放通路で過ごした時間+閉鎖通路で過ごした時間)]×100で計算した。そして、開放通路進入(open arm entries、OE)は、[開放通路に入場/(開放通路に入場+閉鎖通路に入場)]×100で計算した。毎行動試験の終了後には、70%エタノールで残っている臭いを除去した。
【0097】
公知の試験結果の解釈により、開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少する場合に不安症またはうつ病などの精神障害症状が現れたと解釈した。
【0098】
(2)明暗往来(Light-dark transition)試験
暗/明に転換試験に用いられる装置は、戸(7.5×7.5cm)があるパーティションにおいて同じ大きさの明るい部分(21×42×25cm、390ルクス白色ダイオード)と暗い部分(21×42×25cm、2ルクス)とから構成されている。明るい部分にマウスを置き、5分間観察しつつ、明るい部分に留まった時間(time in bright area)および明るい部分に往来した回数(number of transitions)を測定した。毎行動試験の終了後には、70%エタノールで残っている臭いを除去した。
【0099】
公知の試験結果解釈により、明るい部分に留まった時間および明るい部分に往来した回数が減少する場合に不安症またはうつ病などの精神障害症状が現れたと解釈した。
【0100】
(3)ガラス玉覆い隠し(marble burying)試験
おがくずが5cm深さで満たされている透明ケージにマウスを15分間置いた。その後、5cm間隔で25個のガラス玉(直径2cmの透明なガラス玉)をおがくず上に置いた。マウスを一方の中央に置き、30分間覆い隠したガラス玉の個数を測定した。
【0101】
公知の試験結果解釈により、マウスが覆い隠したガラス玉を隠す行動が増加する場合に不安症またはうつ病などの精神障害症状が現れたと解釈した。
【0102】
(4)強制水泳試験(Forced Swimming Test、FST)
Porsoltら(Porsolt RD、Le Pichon、Jalfre M(1977)Depression:A new animal model sensitive to antidepressant treatments、Nature、Vol.266;pp.730-732)の方法に従い、高さ40cm、直径20cmの水槽に温度25±1℃の水を25cm高さまで満たした。試験用マウスを1匹ずつ水槽に入れ、総6分間のうち最初の2分間は適応時間として測定せず、最後の4分間試験動物の不動状態(immobility)時間を測定した。不動状態は、頭だけを水上に露呈するための最小限の動きをし、真っすぐ立って動かずに浮いている状態を意味する。
【0103】
(5)尾懸垂試験(Tail Suspension Test、TST)
Steruら(Steru L、Chermat R、Thierry B、Simon P(1985)The tail suspension test:A new method for screening antidepressants in mice、Psychopharmacology、Vol.85;pp.367-370)の方法に従い、直径35cmおよび高さ50cmの筒内にマウス尾端1cm程度に固定装置を取り付けた後、地面から50cm離れた位置にぶら下げた。総6分間試験動物の不動状態(immobility)時間を測定した。
【0104】
試験例3:腸内微生物群集の確認試験
腸内微生物群集においてフィルミクテス(Firmicutes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、放線菌類(Actinobacteria)およびバクテロイデス(Bacteroidetes)などの占有率を測定するためにリアルタイムPCR(real-time PCR)または454パイロシークエンシング(pyrosequencing)を行った。
【0105】
具体的には、動物モデルから得た糞便のDNAは、QIAamp DNA stool mini kit(Qiagen、Germany)を用いて分離した。パイロシークエンシングは、barcodedプライマー(bacterial 16S rDNA遺伝子のV1~V3部分)を用いた。qPCRは、下記表1のプライマーを用いて分析した。
【0106】
【表1】
【0107】
試験例4:リポポリサッカライドの測定方法
【0108】
(1)糞便中のリポポリサッカライドの測定方法
糞便(20mg)を30mLのPBSに懸濁し、1時間超音波処理して微生物を粉砕した後、500rpmで15分間遠心分離した。その上澄みを0.45μmのフィルタで濾過し、その次に0.22μmのフィルタで濾過した後、70℃で10分間処理して検体として用いた。前記検体をLimulus amoebocyte lysate(LAL) assay kit(Cape Cod Inc.、East Falmouth、MA、U.S.A.)を用いてリポポリサッカライドを測定した。
【0109】
(2)血液中のリポポリサッカライドの測定方法
血液をPBSで10倍希釈し、遠心分離した後、上澄みを0℃で10分間処理した。前記上澄みを0.45μmのフィルタで濾過し、その次に0.22μmのフィルタで濾過して検体として用いた。前記検体をLimulus amoebocyte lysate(LAL) assay kit(Cape Cod Inc.、East Falmouth、MA、U.S.A.)を用いてリポポリサッカライドを測定した。
【0110】
試験例5:大腸炎指標の測定方法
【0111】
(1)ミエロペルオキシダーゼ活性の測定
大腸組織100mgに0.5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(hexadecyl trimethyl ammonium bromide)含有の10mMリン酸カルシウム緩衝液(potassium phosphate buffer、pH 7.0)200μlを入れて均質化(homogenization)した。4℃および10,000gの条件で10分間遠心分離して上澄みを得た。上澄み50μlを0.95mlの反応液(1.6mM テトラメチルベンジジン(tetramethyl benzidine)と0.1mM H含有)に入れ、37℃で反応させながら、650nmで経時的に吸光度を測定した。前記ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase、MPO)の活性は、反応物として生じたH 1μmol/mlを1ユニットに計算した。
【0112】
(2)炎症指標の測定
ウェスタンブロット法を利用してp-p65、p65、iNOS、COX-2およびβ-actinのような炎症反応指標物質を測定した。具体的には、前記ミエロペルオキシダーゼ(Myeloperoxidase、MPO)活性測定試験と同様の方法により得られた上澄み50μgを取って免疫ブロット法を行った。また、サイトカインの発現量は、ELISA kitを用いて、LPSはLAL assay kitを用いて測定した。
【0113】
実施例1:拘束ストレスを誘導した動物モデルの状態確認
前記試験例1-(1)のような方法により2日に1回ずつ総5回拘束ストレスを加えたマウス(IS)に対して試験例2~4の試験を行った。
試験例2を行った結果、高架式十字迷路試験において開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少し、明暗往来試験において明るい所で過ごす時間が減少し、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認した(図1(a)~(c))。
【0114】
また、ウェスタンブロットにより確認した結果、海馬(Hippocampus)においてNF-κB活性(p-p65/p65)が増加し、脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が減少し(図1(d))、血液中のコルチコステロン(corticosterone)、IL-6、TNF-αおよびリポポリサッカライドの量が増加することを確認した(図1(e)~(h))。
【0115】
試験例3を行った結果、糞便中のバクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)が減少し、δ、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)とε-プロテオバクテリア(proteobacteria)が増加することを確認し、試験例4を行った結果、糞便中のリポポリサッカライドが増加することを確認した(図2)。
試験例5を行った結果、大腸炎の指標である大腸の長さが減少し、ミエロペルオキシダーゼが増加し、大腸のTNF-αが増加し、大腸のCOX-2およびiNOSの発現が増加し、NF-κBの活性が増加し、密着結合タンパク質であるオクルディン(occludin)とクローディン-1(claudin-1)が減少することを確認した(図3(a)~(e))。
【0116】
実施例2:拘束ストレスを誘導した動物モデルの糞便を投与した動物モデルの状態確認
前記試験例1-(1)のような方法により2日に1回ずつ総5回拘束ストレスを加えたマウスの糞便を投与したマウス(FIS)に対して試験例2~4の試験を行った。
試験例2を行った結果、高架式十字迷路試験において開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少し、明暗往来試験において明るい所で過ごす時間が減少し、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認した(図4(a)~(c))。
【0117】
また、ウェスタンブロットにより確認した結果、海馬(Hippocampus)においてNF-κB活性(p-p65/p65)が増加し、脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が減少し(図4(d))、血液中のコルチコステロン(corticosterone)、IL-6およびTNF-αの量が増加することを確認した(図5(a)~(c))。
試験例5を行った結果、大腸炎の指標である大腸の長さが減少し、ミエロペルオキシダーゼが増加し(図4(e)および(f))、大腸のTNF-αおよびIL-6が増加し、大腸のIL-10が減少し、大腸のCOX-2およびiNOSの発現が増加し、NF-κBの活性が増加することを確認した(図6(a)~(d))。
【0118】
試験例3を行った結果、糞便中のバクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)が減少し、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)とε-プロテオバクテリア(proteobacteria)が増加することを確認した(図6(e))。
【0119】
実施例3:抗生剤ストレスを誘導した動物モデルの状態確認
前記試験例1-(2)のような方法によりアンピシリン(100mg/kg)を2日間連続で投与して抗生剤ストレスを加えたマウス(AP)に対して試験例2~4の試験を行った。
【0120】
試験例2を行った結果、高架式十字迷路試験において開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少し、明暗往来試験において明るい所で過ごす時間が減少し、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認した(図7(a)~(c))。
【0121】
海馬(Hippocampus)においてNF-κB活性(p-p65/p65)が増加し、脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量が減少し(図7(d))、血液中のコルチコステロン(corticosterone)、IL-6、TNF-αおよびリポポリサッカライドの量が増加することを確認した(図7(e)~(h))。
【0122】
試験例3を行った結果、糞便中のバクテロイデス菌(bacteroidetes)、放線菌類(actinobacteria)、フィルミクテス(firmicutes)が減少し、δ、γ-プロテオバクテリア(proteobacteria)とε-プロテオバクテリア(proteobacteria)が増加することを確認し、試験例4を行った結果、糞便中のリポポリサッカライドが増加することを確認した(図8(a)および(b))。
【0123】
試験例5を行った結果、大腸炎の指標である大腸の長さが減少し、ミエロペルオキシダーゼが増加し、大腸のTNF-αが増加し、大腸のCOX-2およびiNOSの発現が増加し、NF-κBの活性が増加し、密着結合タンパク質であるオクルディン(occludin)とクローディン-1(claudin-1)が減少することを確認した(図9(a)~(e))。
【0124】
実施例4:ストレス誘導動物モデルの糞便から分離した微生物を投与した動物モデルの状態確認
【0125】
(1)ストレス誘導動物モデルの糞便から微生物の分離
拘束ストレスを加えたマウスおよび抗生剤ストレスを加えたマウスの糞便を選択培地で培養した。その結果、DHL培地で育つ腸内細菌(Enterobacteriaceae)が増加したが、特にクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌(Escherichia coli)およびモルガネラ・モルガニー(Morganella morganii)が増加することを確認した(図10(A))。
【0126】
その反面、BL培地で育つビフィズス菌(Bifidobacteria)および乳酸菌(Lactobacilli)は減少したが、特にラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)およびビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)が減少することを確認した(図10(B))。
【0127】
(2)微生物を投与した動物モデルの状態確認
拘束ストレスを加えたマウスおよび抗生剤ストレスを加えたマウスの糞便において増加したクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌(Escherichia coli)およびモルガネラ・モルガニー(Morganella morganii)を各々マウスに1×10CFUだけ投与した後、前記試験例2-(1)の高架式十字迷路試験を行った。その結果、他の微生物投与群に比べてクレブシエラ・オキシトカを投与した群の開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が顕著に減少することを確認した(図11(a))。
その後、クレブシエラ・オキシトカを投与したマウス(KO)に対して試験例2~5の試験を行った。
【0128】
試験例2を行った結果、高架式十字迷路試験において開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少し、明暗往来試験において明るい所で過ごす時間が減少し、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加することを確認した(図11(b)~(d))。
【0129】
海馬においてNF-κB活性(p-p65/p65)が増加し、脳由来神経栄養因子の発現量が減少し(図11(e))、血液中のコルチコステロン、IL-6、TNF-αおよびリポポリサッカライドの量が増加することを確認した(図11(f)~(i))。
【0130】
試験例3を行った結果、糞便中のバクテロイデス菌、放線菌、フィルミクテスが減少し、δ、γ-プロテオバクテリアとε-プロテオバクテリアが増加することを確認し、試験例4を行った結果、糞便中のリポポリサッカライドが増加することを確認した(図12(a)および(b))。
【0131】
試験例5を行った結果、大腸炎の指標である大腸の長さが減少し、ミエロペルオキシダーゼが増加し、大腸のTNF-αが増加し、大腸のCOX-2およびiNOSの発現が増加し、NF-κBの活性が増加し、密着結合タンパク質であるオクルディン(occludin)とクローディン-1(claudin-1)が減少することを確認した(図13(a)~(e))。
【0132】
実施例5:乳酸菌の分離および同定
【0133】
(1)ヒトおよびマウスの糞便から乳酸菌の分離
ヒトおよびマウスの新鮮な糞便をGAM液体培地(GAM broth;Nissui Pharmaceutical、Japan)に入れて懸濁した。その後、上澄みを取ってMRS、BHI(Brain-Heart-Infusion)またはBL寒天培地(BL agar medium;Nissui Pharmaceutical、Japan)に移植し、37℃で約48時間~72時間嫌気的に培養した後、コロニー(colony)を形成した菌株を分離した。
【0134】
(2)分離した乳酸菌の同定
ヒトまたはマウスの糞便から分離した菌株の生理学的特性および16S rDNA配列を分析して菌株の種を確定し、菌株名を付与した。付与された乳酸菌の菌株名は下記表2の通りである。具体的には、ヒトまたはマウスの糞便から分離した乳酸菌は、9種のラクトバチルス属および22種のビフィドバクテリウム属であった。
【0135】
【表2】
【0136】
(3)新規な乳酸菌ラクトバチルス・ロイテリNK33の生理学的特性
表2に記載された菌株のうちラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)NK33(受託番号KCCM12090P)は、グラム陽性桿菌であることが確認された。また、ラクトバチルス・ロイテリNK33の16S rDNAは、配列番号1の塩基配列を有することが明らかになった。ラクトバチルス・ロイテリNK33の16S rDNA塩基配列をBLAST検索で比較した結果、同一な16S rDNA塩基配列を有するラクトバチルス・ロイテリ菌株は検索されず、公知のラクトバチルス・ロイテリ菌株の16S rDNA配列と99%の相同性を示すことを確認した。
【0137】
ラクトバチルス・ロイテリNK33の生理学的特性中の炭素源利用性をAPI 50 CHLキット(BioMerieux’s、USA)を用いて糖発酵試験で分析した。その結果は下記表3の通りである。下記表3において、「+」は炭素源利用性が陽性の場合を示し、「-」は炭素源利用性が陰性の場合を示す。
【0138】
【表3】
【0139】
(4)新規な乳酸菌ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の生理学的特性
表2に記載された菌株のうちビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)NK98(受託番号KCCM12297P)の16S rDNAは、配列番号38の塩基配列を有することが明らかになった。ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の16S rDNA塩基配列をBLAST検索で比較した結果、同一な16S rDNA塩基配列を有するビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)菌株は検索されず、公知のビフィドバクテリウム・アドレセンティス菌株の16S rDNA配列と98%の相同性を示すことを確認した。
【0140】
ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の生理学的特性中の炭素源利用性などをAPIキット(API 20A、BioMerieux’s、USA)を用いて糖発酵試験で分析した。その結果は下記表4の通りである。下記表4において、「+」は炭素源利用性が陽性の場合を示し、「-」は炭素源利用性が陰性の場合を示す。
【0141】
【表4】
【0142】
実施例6:分離した乳酸菌の活性比較
【0143】
(1)抗酸化活性(in vitro)
DPPH(2,2-Diphenyl-1-picrylhydrazyl)を0.2mM濃度になるようにエタノールに溶かしてDPPH溶液を製造した。前記DPPH溶液0.1mlに乳酸菌の懸濁液(1×10CFU/ml)またはビタミンC溶液(1g/ml)を入れて20分間37℃で培養した。培養液を3000rpmで5分間遠心分離して上澄みを得た。その後、517nmで上澄みの吸光度を測定して、分離した乳酸菌の抗酸化活性を計算した。各乳酸菌別の抗酸化活性は、下記表5(ラクトバチルス属)および表6(ビフィドバクテリウム属)の通りである。
【0144】
(2)マクロファージでの炎症指標の測定
C57BL/6マウス(male、6週齢、20~23g)の腹腔に滅菌された4%チオグリコレート(thioglycolate)2mlを投与した。96時間の経過後にマウスを麻酔し、マウスの腹腔にRPMI 1640培地8mlを投与した。5~10分後にマウスの腹腔内のRPMI培地(マクロファージ)を抜き取り、1000gで10分間遠心分離し、さらにRPMI 1640培地で2回洗浄した。前記マクロファージを各ウェル当たりに0.5×10の数で24-ウェルプレートに敷き、分離したラクトバチルス属乳酸菌と炎症反応誘導物質であるリポポリサッカライドを2時間または24時間処理した後に上澄みおよび細胞を得た。得られた細胞をRIPAバッファ(Gibco社)に入れて均質化した。24時間処理した培養上澄みにおいてTNF-αなどのサイトカイン発現量を、2時間処理して得られた細胞からp65(NF-κB)、p-p65(phosphor-NF-κB)およびβ-actinの発現量を免疫ブロット法(immunoblotting)により測定した。各ラクトバチルス属乳酸菌別の炎症指標の発現レベルは下記表5の通りである。
【0145】
(3)小膠細胞の炎症指標の測定
BV-2小膠細胞を各ウェル当たりに0.5×10の数で24-ウェルプレートに敷き、分離したビフィドバクテリウム乳酸菌と炎症反応誘導物質であるリポポリサッカライドを2時間または24時間処理した後に上澄みおよび細胞を得た。得られた細胞をRIPAバッファ(Gibco社)に入れて均質化した。2時間処理して得られた細胞からp65(NF-kB)、p-p65(phosphor-NF-kB)およびβ-actinの発現量を免疫ブロット法により測定した。各ビフィドバクテリウム属乳酸菌別の炎症指標の発現レベルは、下記表6の通りである。
【0146】
(4)SH-SY5Y細胞に対する脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現効果およびNF-κBの活性化効果
神経細胞であるSH-SY5Y細胞を韓国細胞株バンクから分譲して10%FBSおよび1%抗生剤が添加されたDMEM培地で培養し、12-ウェルプレートにウェル当たりに2×10細胞数で分株した。その後、各ウェルに乳酸菌(1×10CFU/ml)と共にコルチコステロン(corticosterone)を300mg/mlの濃度で添加して培養した後、NF-κB(p65、p-p65)および脳由来神経栄養因子(brain derivated neurotrophic factor、BDNF)の発現量を免疫ブロット法により測定した。各乳酸菌別のBDNF発現レベルおよびNF-κB活性化レベルは、下記表5(ラクトバチルス属)および表6(ビフィドバクテリウム属)の通りである。
【0147】
【表5】
【0148】
【表6】
【0149】
(5)試験結果
分離した乳酸菌の活性を評価した結果、分離したラクトバチルス属またはビフィドバクテリウム属乳酸菌のうち、本願のラクトバチルス・ロイテリNK33およびビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の抗酸化活性および炎症反応抑制効果が顕著に優れることを確認した。特に、アルツハイマーのような老化関連疾患を誘発する物質として知られたNF-κBの活性を抑制し、老化および痴呆などに見られる小膠細胞の炎症反応を抑制し、老化および痴呆などにおいて減少する脳の神経が産生する脳由来神経栄養因子の発現を増加させることを確認した(表5および表6)。
【0150】
実施例8:分離したビフィドバクテリウム属乳酸菌の免疫調節効能の評価
糞便から分離したビフィドバクテリウム属乳酸菌の免疫調節効能を評価するために、マクロファージおよび脾臓細胞の免疫反応にビフィドバクテリウム属乳酸菌が及ぼす影響を測定した。
【0151】
(1)マクロファージでの免疫反応
C57BL/6マウス(雄、6週齢、20~23g、ラウンバイオ(株))の腹腔に滅菌された4%チオグリコレート(thioglycolate)2mlを投与した。投与して96時間の経過後にマウスを麻酔し、マウスの腹腔にRPMI 1640培地8mlを投与した。5~10分後にマウスの腹腔内のRPMI培地(マクロファージ含む)を抜き取り、1000rpmで10分間遠心分離した後、さらにRPMI 1640培地で2回洗浄した。前記マクロファージを各ウェル当たりに0.5×10の数で24-ウェルプレートに敷き、24時間培養した後に付着していない細胞を除去して用いた。
【0152】
前記マクロファージ培養液にビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98と炎症反応誘導物質であるリポポリサッカライドを2時間または24時間処理した後に上澄みおよび細胞を得て、この時、乳酸菌処理濃度は1×10CFU/mlであった。得られた細胞をRIPAバッファ(Gibco社)に入れて均質化した。得られた上澄みからTNF-αの発現量をELISA kitを用いて測定し、得られた細胞からp65(NF-κB)、p-p65(phosphor-NF-κB)およびβ-actinの発現量を免疫ブロット法により測定した。具体的には、上澄み50μgを取って、SDS 10%(w/v)polyacrylamide gelにおいて1時間30分間電気泳動をした。電気泳動したサンプルをニトロセルロース紙に100Vおよび400mAの条件で1時間10分間トランスファー(transfer)した。サンプルがトランスファーされたニトロセルロース紙を5%脱脂乳で30分間blockingした後、5分ずつ3回にかけてPBS-Tweenで洗浄し、1次抗体(Santa Cruz Biotechnology、米国)を1:100の比率にして一晩反応させた。その後、10分ずつ3回にかけて洗浄し、2次抗体(Santa Cruz Biotechnology、米国)を1:1000の比率にして1時間20分間反応させた。その後、15分ずつ3回にかけて洗浄し、蛍光発色させた後に現像し、発色バンドの強度(Intensity)を測定し、その結果は下記表7の通りである。
【0153】
【表7】
【0154】
(2)脾臓細胞での免疫反応
C57BL/6マウス(雄、6週齢、20~22g、(株)オリエントバイオ)の脾臓を分離および粉砕して10%FCS含有RPMI 1640培地に懸濁した。CD4 T cell isolation kit(MiltenyiBiotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)を用いてCD4 T細胞を分離し、分離したCD4 T細胞を12-ウェルプレートに各ウェル当たりに5×10の数で分株した。
【0155】
T細胞のTh1細胞への分化を誘導するために抗-CD3、抗-CD28、IL-2およびIL-12を、T細胞のTh2細胞への分化を誘導するために抗-CD3、抗-CD28、IL-2およびIL-4を、T細胞のTh17細胞への分化を誘導するために抗-CD3、抗-CD28、IL-6およびTGF-βを、T細胞のTreg細胞への分化を誘導するために抗-CD3および抗-CD28を入れて細胞を培養しつつ、乳酸菌をウェル当たりに1×10CFU/mlの量で入れて4日間培養した。
【0156】
その後、脾臓から分離したT細胞のTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびTreg細胞への分化能を測定した。具体的には、培養液の細胞を抗-FoxP3または抗-IL-17A抗体で染色し、FACS(Fluorescence-activated cell sorting)装置(C6 Flow Cytometer System、San Jose、CA、USA)を用いてTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびTreg細胞の分布を分析し、その結果は下記表8の通りである。
【0157】
【表8】
【0158】
また、脾臓T細胞から分化したTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびTreg細胞の転写因子およびサイトカイン発現率を測定した。具体的には、qRT-PCRを用いてTh1細胞分化誘導培養液からT-bet、IFN-γおよびIL-12を、Th2細胞分化誘導培養液からGATA3およびIL-5を、Th17細胞分化誘導培養液からRORγtおよびIL-17を、Treg細胞分化誘導培養液からFoxp3およびIL-10の発現量を分析し、その結果は下記表9の通りである。
【0159】
【表9】
【0160】
表8および表9から確認できるように、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98は、T細胞のTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞への分化抑制率が高く、特にT細胞のTreg細胞への分化増加率が高くて炎症反応を効果的に抑制し、それにより炎症性疾患を効果的に改善できることを確認した。
【0161】
実施例9:ラクトバチルス・ロイテリNK33のストレス改善効果
【0162】
前記試験例1のように拘束ストレスを加えたマウスに拘束ストレスを開始して7日目から1日1回ずつ5日間新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリNK33 1×10cfuまたは生理食塩水を投与した。前記マウスに対して試験例2~5の試験を行った。
【0163】
試験例2を行った結果、生理食塩水を投与した群(IS)は、高架式十字迷路試験において開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が減少し、明暗往来試験において明るい所で過ごす時間が減少し、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が増加した。しかし、ラクトバチルス・ロイテリNK33を投与した群(IS+LR)は、開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)が増加し、明るい所で過ごす時間が増加し、ガラス玉覆い隠し試験においてガラス玉を覆い隠す行動が減少することを確認した(図14(a)~(c))。
【0164】
海馬において生理食塩水を投与した群(IS)は、NF-κB活性(p-p65/p65)が増加し、脳由来神経栄養因子の発現量が減少し、血液中のコルチコステロン、IL-6、TNF-αおよびリポポリサッカライドの量が増加することを確認した。しかし、ラクトバチルス・ロイテリNK33を投与した群(IS+LR)は、NF-κB活性化(p-p65/p65)が抑制され、脳由来神経栄養因子の発現量が増加し、血液中のコルチコステロン、IL-6、TNF-αおよびリポポリサッカライドの量が減少することを確認した(図14(d)~(g))。
【0165】
試験例5を行った結果、生理食塩水を投与した群(IS)は、大腸炎の指標である大腸の長さが減少し、ミエロペルオキシダーゼが増加し、大腸のTNF-αが増加し、大腸のCOX-2およびiNOSの発現が増加し、NF-κBの活性が増加することを確認した。しかし、ラクトバチルス・ロイテリNK33を投与した群(IR)は、大腸の長さが正常レベルに回復し、ミエロペルオキシダーゼが減少し、大腸のTNF-αが減少し、大腸のCOX-2およびiNOSの発現が減少し、NF-κBの活性が抑制されることを確認した(図15(a)~(d))。
それにより、新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリNK33は、不安症、うつ病およびストレスなどの精神障害の改善効果に優れることを確認した。
【0166】
実施例10:ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98のストレス改善効果
前記試験例1の拘束ストレスを加えたマウスに拘束ストレスを開始して7日目から1日1回ずつ3日間ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98 1×10cfu(NK98)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)IM38 1×10cfu(IM38)、生理食塩水(IS)またはブスピロン(Buspirone)1mg/kgを投与し、前記試験例2および試験例5の試験を行った。
【0167】
(1)高架式十字迷路試験
前記試験例2-(1)の高架式十字迷路試験と共に血中コルチコステロン(BC)の量を測定し、その結果は下記表10の通りである。
【0168】
【表10】
【0169】
表10から確認できるように、拘束ストレスモデルに生理食塩水を投与した群(IS)は、拘束ストレスを与えていない正常対照群に比べて、高架式十字迷路試験において開放通路で過ごした時間(OT)および開放通路進入(OE)がいずれも減少した。しかし、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は、開放通路で過ごす時間と頻度が増加し、血中コスティコステロンの量が顕著に減少し、このような効果はビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38に比べて優れることを確認した。
【0170】
(2)明暗往来試験
前記試験例2-(2)の明暗往来試験を行い、その結果は下記表11の通りである。
【0171】
【表11】
【0172】
表11から確認できるように、拘束ストレスモデルに生理食塩水を投与した群(IS)は拘束ストレスを与えていない正常対照群に比べて明るい所で過ごす時間が減少したが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は明るい所で過ごす時間が増加し、これはビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38を投与した群より増加したことを確認した。
【0173】
(3)強制水泳試験
前記試験例2-(4)の強制水泳試験を行い、その結果は下記表12の通りである。
【0174】
【表12】
【0175】
表12から確認できるように、うつマウスモデルに生理食塩水を投与した群(IS)は拘束ストレスを与えていない正常対照群に比べて不動状態時間が増加したが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は不動状態時間が減少し、これはビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38を投与した群より減少したことを確認した。
【0176】
(4)尾懸垂試験
前記試験例2-(5)の尾懸垂試験を行い、その結果は下記表13の通りである。
【0177】
【表13】
【0178】
表13から確認できるように、うつマウスモデルに生理食塩水を投与した群(IS)は拘束ストレスを与えていない正常対照群に比べて不動状態時間が増加したが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は不動状態時間が減少したことを確認した。
【0179】
(5)バイオマーカー測定
うつマウスの最後の行動試験を行い、2時間後にマウスを麻酔し、前記試験例5のような方法により、血液のコルチコステロンはELISAにより、脳の脳由来神経栄養因子およびNF-kBと大腸のNF-kBは免疫ブロット法により測定し、その結果は下記表14の通りである。
【0180】
【表14】
【0181】
表14から確認できるように、生理食塩水を投与した群(IS)は、海馬においてNF-kB活性(p-p65/p65)が増加し、脳由来神経栄養因子の発現量が減少し、血液中のコルチコステロン量が増加することを確認した。しかし、NK98を投与した群は、NF-kB活性が抑制され、脳由来神経栄養因子の発現量が増加し、血液中のコルチコステロン量が減少し、このような効果はIM38を投与した群に比べて優れることを確認した。
【0182】
(6)大腸炎の改善効果
試験例1の不安マウスの最後の行動試験を行い、2時間後にマウスを麻酔し、前記試験例5のような方法により腸の長さ、MPO、COX-2、TNF-αおよびNF-kBの活性化を測定し、その結果は下記表15の通りである。
【0183】
【表15】
【0184】
表15から確認できるように、拘束ストレスモデルに生理食塩水を投与した群(IS)は、拘束ストレスを与えていない正常対照群に比べて、腸の長さが減り、MPOおよび炎症指標が増加したが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は、腸の長さが回復し、MPO阻害能および炎症指標が改善されたことを確認した。
【0185】
(7)抗生剤誘導ストレスの改善効果
前記試験例1-(2)のような方法によりアンピシリン(100mg/kg)を2日間連続投与して抗生剤ストレスを誘導したマウスに対して試験例2および5の試験を行い、その結果は下記表16および17の通りである。
【0186】
【表16】
【0187】
【表17】
【0188】
表16から確認できるように、抗生剤誘導ストレスモデルに生理食塩水を投与した群(IS)は、正常対照群に比べて、高架式十字迷路試験において開放通路で過ごした時間および開放通路進入がいずれも減少したが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は、開放通路で過ごす時間と頻度が増加し、血中コスティコステロンの量が顕著に減少し、このような効果はビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38に比べて優れることを確認した。
【0189】
また、表17から確認できるように、抗生剤誘導ストレスモデルに生理食塩水を投与した群(IS)は、正常対照群に比べて、腸の長さが減り、MPOおよび炎症指標が増加したが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は、腸の長さが回復し、MPO阻害能および炎症指標が改善されたことを確認した。
【0190】
実施例11:ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98の認知機能改善効果
【0191】
E.coli分離LPS(0.5mg/kg/day)でマウスの腹腔に5日間投与した後に翌日から乳酸菌を投与し、乳酸菌の認知機能改善効能を物体認知試験、Y迷路試験、および海馬においてBDNFを免疫ブロット法により測定し、その結果は下記表18の通りである。
【0192】
具体的には、物体認知試験方法として、内部では外部が見えないように製作された箱(40×40×40cm)内に形状と大きさが同一な二つの物体(A、A’)を固定した後、マウスを箱の中心から出発させて、10分間マウスが二つの物体を触る回数を記録した。24時間が経過した後、二つの物体のうちの一つを新しい物体に変更した後(A、B)、本来にあった物体と新しい物体を触る回数を記録して数値化した。
【0193】
また、Y迷路(Y maze)試験方法として、試験装置は同一な3個のアーム(arm)(横8cm、縦30cm、高さ14cm)で構成されており、各々は互いに120°の一定の角度で配置した。マウスを一方のアーム端に位置させた後、8分間自由にY迷路を歩き回るようにし、各アームに入った回数および順序を測定して自発的変更(spontaneous alteration)(%)を評価した。変更(alteration)は、3個のアームを順次入る場合、すなわち、ABC、BCA、CABなどに定義した。
%変更(alteration)=[総変更数]/[アーム(arm)に入った総回数-2]×100
【0194】
【表18】
【0195】
表18から確認できるように、物体認知試験およびY迷路試験を通じて、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98を投与した群は、認知機能が改善され、BDNF発現が増加することを確認した。
【0196】
実施例12:2種の乳酸菌の併用投与に応じたストレス改善効果
【0197】
新規な乳酸菌であるラクトバチルス・ロイテリNK33、大韓民国公開特許第10-2017-0090359号に開示された乳酸菌であるビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)IM38(受託番号:KCCM11807P)またはこれらの混合物のストレス改善効果を比較した。
【0198】
具体的には、前記試験例1-(1)のように拘束ストレスが誘導されたモデルに生理食塩水(IS)、1×10cfuのラクトバチルス・ロイテリNK33(NK33)、1×10cfuのビフィドバクテリウム・アドレセンティスIM38(IM38)または前記乳酸菌を併用(NK33+IM38)して各々0.5×10cfuずつ投与した後、高架式十字迷路試験を行った。その後、各群別に血液を採取して血中コルチコステロンの量を測定し、その結果は下記表19の通りである。
【0199】
【表19】
【0200】
表19から確認できるように、単独の乳酸菌投与群に比べて併用投与群の開放通路で過ごした時間および開放通路進入が増加し、血中コルチコステロンの量が顕著に減少することを確認した。
【0201】
また、ラクトバチルス・ロイテリNK33およびビフィドバクテリウム・アドレセンティスNK98混合物のストレス改善効果を前記NK33およびIM38の併用投与試験と同様の方法により比較し、その結果は下記表20の通りである。
【0202】
【表20】
【0203】
表20から確認できるように、単独の乳酸菌投与群に比べて併用投与群の開放通路で過ごした時間および開放通路進入が増加し、血中コルチコステロンの量が顕著に減少することを確認した。
【0204】
<乳酸菌の受託情報>
本発明の発明者らは、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)NK33を2017年8月4日に公認寄託機関である韓国微生物保存センター(アドレス:大韓民国、ソウル西大門区弘済内2街ギル45ユリムビル)に特許寄託してKCCM12090Pの受託番号を与えられた。
また、本発明の発明者らは、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)NK98を2018年8月3日に公認寄託機関である韓国微生物保存センター(アドレス:大韓民国、ソウル西大門区弘済内2街ギル45ユリムビル)に特許寄託してKCCM12297Pの受託番号を与えられた。

【表21】
【表22】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
0007307216000001.app