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特許7307222電子ラックの相変化冷却のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】電子ラックの相変化冷却のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
G06F1/20 D
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022033597
(22)【出願日】2022-03-04
(65)【公開番号】P2022078210
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】17/194,143
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516357421
【氏名又は名称】バイドゥ ユーエスエイ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Baidu USA LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ティエンイ
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-078206(JP,A)
【文献】特表2019-523384(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146535(WO,A1)
【文献】特開2008-191996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ラック用の冷却システムであって、
前記冷却システムは、
一次凝縮器と、
一次供給ラインおよび一次リターンラインと、
二次凝縮器と、
前記二次凝縮器を前記一次供給ラインに結合する二次供給ラインと、
前記二次凝縮器を前記一次リターンラインに結合する二次リターンラインと、および
前記二次リターンラインに結合する一次バルブを含み、
前記一次供給ラインおよび一次リターンラインにおいて、前記一次凝縮器をコールドプレートに結合して一次熱伝達ループを構築し、前記コールドプレートは、情報技術機器の情報技術コンポーネントに取り付けられるように配置され、前記情報技術機器は、前記電子ラック内に設置され、前記一次熱伝達ループにおいて、前記一次凝縮器は、1)前記一次供給ラインを介して前記コールドプレートに液体冷却剤を供給し、および2)前記情報技術コンポーネントによって生成される熱が前記コールドプレートを介して前記液体冷却剤に伝達される場合、前記一次リターンラインを介して前記コールドプレートによって生成される蒸気を受け取り、
前記一次バルブは、圧力閾値を超える前記蒸気の圧力に応答して少なくとも部分的に開かれるように構成され、
前記一次バルブが少なくとも部分的に開くことに応答して二次熱伝達ループが構築され、前記二次熱伝達ループにおいて、前記二次凝縮器は、前記二次リターンラインを介して前記蒸気の少なくとも一部を受け取り、前記蒸気の前記少なくとも一部を前記二次供給ラインを介して前記一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻すことを特徴とする、冷却システム。
【請求項2】
1)前記二次凝縮器の冷却コイルを使用して周囲空気を移動させるように配置されるファン、または2)前記二次凝縮器を冷却源および二次バルブに結合するラック供給ラインとラックリターンラインをさらに含み、前記二次バルブは、前記ラック供給ラインまたは前記ラックリターンラインに結合されることを特徴とする
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
圧力センサをさらに含み、前記圧力センサは、前記二次リターンラインに結合され、かつ前記ファンまたは前記二次バルブに通信可能に結合され、前記圧力センサは、
前記二次リターンライン内の蒸気圧を感知し、および
感知された圧力に基づいて1)前記ファンのファン速度または2)前記二次バルブの開放率を調整するように構成されることを特徴とする
請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記一次バルブに通信可能に結合されるコントローラをさらに含み、前記コントローラは、
前記電子ラックの最大電力閾値および前記一次凝縮器の冷却能力のうちの少なくとも一つに基づいて前記圧力閾値を決定し、および
前記圧力閾値に応じて前記一次バルブの開放圧力を設定するように構成されることを特徴とする
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記一次供給ラインを前記コールドプレートに結合する供給分配マニホールドと、および
前記一次リターンラインを前記コールドプレートに結合するリターン分配マニホールドとをさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記一次供給ラインと前記供給分配マニホールドとの間に結合される液体冷却剤緩衝器をさらに含むことを特徴とする
請求項5に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記二次凝縮器は、前記一次凝縮器の上に配置され、前記一次凝縮器は、前記情報技術機器の上に配置され、蒸気および液体冷却剤は、任意の蒸気ポンプおよび任意の液体ポンプなしで、前記一次熱伝達ループおよび前記二次熱伝達ループのそれぞれを通って循環することを特徴とする
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記一次凝縮器は、第1のタイプの二相熱交換器であり、前記二次凝縮器は、第2のタイプの二相熱交換器であることを特徴とする
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項9】
電子ラックであって、
データ処理サービスを提供するためにスタック形態で配置され、それぞれが一つまたは複数のプロセッサを含む複数の情報技術機器と、
一次凝縮器と、
一次供給ラインおよび一次リターンラインと、
二次凝縮器と、
前記二次凝縮器を前記一次供給ラインに結合する二次供給ラインと、
前記二次凝縮器を前記一次リターンラインに結合する二次リターンラインと、および
前記二次リターンラインに結合する一次バルブとを含み、
前記一次供給ラインおよび一次リターンラインにおいて、前記一次凝縮器をコールドプレートに結合して一次熱伝達ループを構築し、前記コールドプレートは、前記複数の情報技術機器の一部の情報技術機器のプロセッサに取り付けられるように配置され、前記一次熱伝達ループにおいて、前記一次凝縮器は、1)前記一次供給ラインを介して前記コールドプレートに液体冷却剤を供給し、および2)前記情報技術コンポーネントによって生成される熱が前記コールドプレートを介して前記液体冷却剤に伝達される場合、前記一次リターンラインを介して前記コールドプレートによって生成される蒸気を受け取り、
前記一次バルブは、圧力閾値を超える前記蒸気の圧力に応答して少なくとも部分的に開かれるように構成され、
前記一次バルブが少なくとも部分的に開くことに応答して二次熱伝達ループが構築され、前記二次熱伝達ループにおいて、前記二次凝縮器は、前記二次リターンラインを介して前記蒸気の少なくとも一部を受け取り、前記蒸気の前記少なくとも一部を前記二次供給ラインを介して前記一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻すことを特徴とする、電子ラック。
【請求項10】
1)前記二次凝縮器の冷却コイルを使用して周囲空気を移動させるように配置されるファン、または2)前記二次凝縮器を冷却源および二次バルブに結合するラック供給ラインおよびラックリターンラインをさらに含み、前記二次バルブは、前記ラック供給ラインまたは前記ラックリターンラインに結合されることを特徴とする
請求項9に記載の電子ラック。
【請求項11】
圧力センサをさらに含み、前記圧力センサは、前記二次リターンラインに結合され、かつ前記ファンまたは前記二次バルブに通信可能に結合され、前記圧力センサは、
前記二次リターンライン内の蒸気圧を感知し、および
感知された圧力に基づいて1)前記ファンのファン速度または2)前記二次バルブの開放率を調整するように構成されることを特徴とする
請求項10に記載の電子ラック。
【請求項12】
前記一次バルブに通信可能に結合されるコントローラをさらに含み、前記コントローラは、
前記電子ラックの最大電力閾値および前記一次凝縮器の冷却能力のうちの少なくとも一つに基づいて前記圧力閾値を決定し、および
前記圧力閾値に応じて前記一次バルブの開放圧力を設定するように構成されることを特徴とする
請求項9に記載の電子ラック。
【請求項13】
前記一次供給ラインを前記コールドプレートに結合する供給分配マニホールドと、および
前記一次リターンラインを前記コールドプレートに結合するリターン分配マニホールドとをさらに含むことを特徴とする
請求項9に記載の電子ラック。
【請求項14】
前記一次供給ラインと前記供給分配マニホールドとの間に結合される液体冷却剤緩衝器をさらに含むことを特徴とする
請求項13に記載の電子ラック。
【請求項15】
前記二次凝縮器は、前記一次凝縮器の上に配置され、前記一次凝縮器は、前記複数の情報技術機器の上に配置され、蒸気および液体冷却剤は、任意の蒸気ポンプおよび任意の液体ポンプなしで、前記一次熱伝達ループおよび前記二次熱伝達ループのそれぞれを通って循環することを特徴とする
請求項9に記載の電子ラック。
【請求項16】
前記一次凝縮器は、第1のタイプの二相熱交換器であり、前記二次凝縮器は、第2のタイプの二相熱交換器であることを特徴とする
請求項9に記載の電子ラック。
【請求項17】
電子ラック内に取り付けられる情報技術機器の情報技術コンポーネントを液冷する方法であって、
前記方法は、
一次熱伝達ループ内の蒸気圧を決定し、前記一次熱伝達ループにおいて、前記情報技術コンポーネントに取り付けられるコールドプレートは、1)一次供給ラインと2)一次リターンラインとを介して一次凝縮器に結合され、前記一次供給ラインは、液体冷却剤を前記コールドプレートに供給し、前記情報技術コンポーネントによって生成される熱が前記コールドプレートを介して前記液体冷却剤に伝達される場合、前記一次リターンラインは、前記コールドプレートによって生成される蒸気を前記一次凝縮器に戻すステップと、
前記一次熱伝達ループ内の前記蒸気圧が圧力閾値を超えるとの決定に応答して、閉じた一次バルブを開き、前記一次バルブは、前記一次リターンラインを二次凝縮器に結合し、前記二次凝縮器は、二次供給ラインを介して前記一次供給ラインに結合され、前記閉じた一次バルブが開かれる場合、二次熱伝達ループが構築され、前記二次熱伝達ループにおいて、前記蒸気の少なくとも一部は、前記二次凝縮器を介して、前記二次供給ラインによって前記一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻されるステップと、および
前記一次熱伝達ループ内の前記蒸気圧が前記圧力閾値を超えないとの決定に応答して、前記蒸気が前記一次凝縮器のみを介して液体冷却剤に凝縮して戻されるように、前記閉じた一次バルブの閉鎖状態を維持するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記一次バルブは、二次リターンラインに結合され、前記二次リターンラインは、前記一次リターンラインを前記二次凝縮器に結合し、前記方法は、
前記二次リターンライン内の蒸気圧を感知するステップと、および
感知された圧力に基づいて1)ファンのファン速度または2)二次バルブの開放率を調整するステップとをさらに含み、前記ファンは、前記二次凝縮器の冷却コイルを使用して周囲空気を移動させるように配置され、前記二次バルブは、前記二次凝縮器を液体冷却源に結合することを特徴とする
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電子ラックの最大電力閾値および前記一次凝縮器の冷却能力のうちの少なくとも一つに基づいて前記圧力閾値を決定するステップと、および
前記圧力閾値に応じて前記一次バルブの開放圧力を設定するように構成されるステップとをさらに含むことを特徴とする
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記電子ラックの構成変更に基づいて、前記電子ラックの新しい最大電力閾値を決定するステップと、
少なくとも前記新しい最大電力閾値に基づいて新しい圧力閾値を決定するステップと、および
前記新しい圧力閾値に応じて前記一次バルブの開放圧力を設定するステップとをさらに含むことを特徴とする
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、電子ラックの相変化冷却のための冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアクティブな電子ラックを含むデータセンターの熱管理は、ラックで実行されているサーバーや他の情報技術(IT)機器(例えば、ITデータ処理サービスを実行する)の正常なパフォーマンスを確保するために不可欠である。しかしながら、適切な熱管理がない場合、ラック内の熱環境(例えば、温度)が熱動作閾値を超える可能性があり、これは、好ましくない結果(例えば、サーバー故障等)が発生する可能性がある。熱環境を管理する一つの方法は、冷却空気を使用してIT機器を冷却することである。冷却空気は、冷却ユニットを使用して再循環され、冷却ユニットは、冷却空気によって捕捉された熱を抽出する。一般的に使用される冷却ユニットは、コンピュータルーム空調(CRAC)ユニットであり、高温の排気ガスを吸い込み、データセンターに冷却空気供給してデータセンターの熱環境を維持する機器である。CRACは、既存の空冷データセンターで広く使用されている空冷ユニットであり、空冷データセンターに使用される多くの他のタイプの解決策がある。さらに、ほとんどの既存のデータセンターは、空冷式である。
【0003】
最近、データセンターには、より高い電力密度の電子ラックが導入され、よりより高い密度のチップがより密集して、より強力な処理能力を提供する。制御処理装置(CPU)やグラフィックス処理装置(GPU)等の高パフォーマンスおよび高電力密度のプロセッサを必要とする人工知能(AI)およびクラウドベースのサービスの発展によるものであり、このような状況は特にそうである。既存の冷却システム(例えば、データセンターの空冷システム)を介して適切な熱環境を維持して、これらの高密度ラックを冷却することは、問題となる可能性がある。例えば、空気システムユニットは、より従来型の(またはより低密度の)ラックを使用して熱環境を維持できるが、当該ユニットは、高電力密度のラックを効果的に冷却できない可能性があり、高電力密度のラックは、より高い密度の電子機器のために、より高い速度で熱負荷を生成する可能性があるためである。場合によっては、液冷は、高電力密度または高熱流束の状況で、より効果的で実行可能な冷却解決策になる。
【発明の概要】
【0004】
本発明のいくつかの態様は、電子ラック用の冷却システムを提供し、当該冷却システムは、一次凝縮器と、一次供給ラインおよび一次リターンラインと、二次凝縮器と、二次凝縮器を一次供給ラインに結合する二次供給ラインと、二次凝縮器を一次リターンラインに結合する二次リターンラインと、および二次リターンラインに結合する一次バルブとを含むことができ、一次供給ラインおよび一次リターンラインにおいて、一次凝縮器をコールドプレートに結合して一次熱伝達ループを構築し、コールドプレートは、情報技術機器の情報技術コンポーネントに取り付けられるように配置され、情報技術機器は、電子ラック内に設置され、一次熱伝達ループにおいて、一次凝縮器は、1)一次供給ラインを介してコールドプレートに液体冷却剤を供給し、および2)情報技術コンポーネントによって生成される熱がコールドプレートを介して液体冷却剤に伝達される場合、一次リターンラインを介してコールドプレートによって生成される蒸気を受け取る。いくつかの実施形態において、一次バルブは、圧力閾値を超える蒸気の圧力に応答して少なくとも部分的に開かれるように構成される。いくつかの実施形態において、一次バルブが少なくとも部分的に開くことに応答して二次熱伝達ループが構築されることができ、二次熱伝達ループにおいて、二次凝縮器は、二次リターンラインを介して蒸気の少なくとも一部を受け取ることができ、蒸気の少なくとも一部を二次供給ラインを介して一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻す。
【0005】
本発明の他のいくつかの態様は、電子ラックを提供し、当該電子ラックは、データ処理サービスを提供するためにスタック形態で配置され、それぞれが一つまたは複数のプロセッサを含む複数の情報技術機器と、一次凝縮器と、一次供給ラインおよび一次リターンラインと、二次凝縮器と、二次凝縮器を一次供給ラインに結合する二次供給ラインと、二次凝縮器を一次リターンラインに結合する二次リターンラインと、および二次リターンラインに結合する一次バルブとを含むことができ、一次供給ラインおよび一次リターンラインにおいて、一次凝縮器をコールドプレートに結合して一次熱伝達ループを構築し、コールドプレートは、複数の情報技術機器の一部の情報技術機器のプロセッサに取り付けられるように配置され、一次熱伝達ループにおいて、一次凝縮器は、1)一次供給ラインを介してコールドプレートに液体冷却剤を供給し、および2)情報技術コンポーネントによって生成される熱がコールドプレートを介して液体冷却剤に伝達される場合、一次リターンラインを介してコールドプレートによって生成される蒸気を受け取る。いくつかの実施形態において、一次バルブは、圧力閾値を超える蒸気の圧力に応答して少なくとも部分的に開かれるように構成される。いくつかの実施形態において、一次バルブが少なくとも部分的に開くことに応答して二次熱伝達ループが構築されることができ、二次熱伝達ループにおいて、二次凝縮器は、二次リターンラインを介して蒸気の少なくとも一部を受け取ることができ、蒸気の少なくとも一部を二次供給ラインを介して一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻す。
【0006】
本発明のさらに他のいくつかの態様は、電子ラック内に取り付けられる情報技術機器の情報技術コンポーネントを液冷する方法を提供し、当該方法は、一次熱伝達ループ内の蒸気圧を決定し、一次熱伝達ループにおいて、情報技術コンポーネントに取り付けられるコールドプレートは、1)一次供給ラインと2)一次リターンラインとを介して一次凝縮器に結合され、一次供給ラインは、液体冷却剤をコールドプレートに供給し、情報技術コンポーネントによって生成される熱がコールドプレートを介して液体冷却剤に伝達される場合、一次リターンラインは、コールドプレートによって生成される蒸気を一次凝縮器に戻すステップと、一次熱伝達ループ内の蒸気圧が圧力閾値を超えるとの決定に応答して、閉じた一次バルブを開き、一次バルブは、一次リターンラインを二次凝縮器に結合し、二次凝縮器は、二次供給ラインを介して一次供給ラインに結合され、閉じた一次バルブが開かれる場合、二次熱伝達ループが構築され、二次熱伝達ループにおいて、蒸気の少なくとも一部は、二次凝縮器を介して、二次供給ラインによって一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻されるステップと、および一次熱伝達ループ内の蒸気圧が圧力閾値を超えないとの決定に応答して、蒸気が一次凝縮器のみを介して液体冷却剤に凝縮して戻されるように、閉じた一次バルブの閉鎖状態を維持するステップとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
限定としてではなく例として実施形態を図面に示し、図面中の同じ参照番号は、同じ要素を表す。本開示における「実施形態」または「一実施形態」は、必ずしも同じ実施形態を示すものではなく、少なくとも一つの実施形態を意味することに留意されたい。さらに、単純化し、図面の総数を減らすために、所与の図面を使用して複数の実施形態の特徴を説明することができ、図中のすべての要素が所与の実施形態に必要であるとは限らない。
図1】一実施形態による冷却システムの一例を示すブロック図であり,当該冷却システムは、一次凝縮器を有する情報技術(IT)機器の冷却部分である。
図2】一実施形態による冷却システムの一例を示すブロック図であり,当該冷却システムは、一次凝縮器と二次凝縮器とを有するIT機器の冷却部分である。
図3】一実施形態による緩衝器を有する冷却システムの別の例を示すブロック図である。
図4】一実施形態によるIT機器の液冷部分のプロセスのフローチャートである。
図5】一実施形態によるIT機器の液冷部分の別のプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面を参照して本開示のいくつかの実施形態を説明する。所与の実施形態に記載の構成要素の形状、相対位置、および他の実施形態が明確に定義されていない限り、本開示の範囲は、示される構成要素に限定されず、示される構成要素は、例示のみを目的とする。さらに、多くの詳細が示されているが、これらの詳細なしでいくつかの実施形態を実施することができることを理解されたい。他の場合、本明細書に対する理解を曖昧にしないために、よく知られている回路、構造および技術を詳細に示されていない。さらに、意味が明確に反対でない限り、本明細書に記載のすべての範囲には、各範囲のエンドポイントが含まれると見なされる。
【0009】
明細書で言及される「一実施形態」または「実施形態」とは、当該実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれることができることを意味する。明細書の様々な場所で現れる「一実施形態において」という句は、必ずしも同じ実施形態を意味するわけではない。
【0010】
本開示の各実施形態は、データセンター室内に取り付けることができる(例えば、高電力密度)電子ラックのための相変化冷却システムを説明する。冷却システムの解決策は、二相変化技術を使用して、情報技術(IT)機器によって生成される熱を絶えずに伝達するために使用される第1の(またはメイン)熱伝達ループ、および高電力ワークロード期間(例えば、電子ラックの電力密度が電力閾値よりも高い場合)中にIT機器によって生成される余分な熱を伝達するために使用される第2の(または副)熱伝達ループ等の二つの熱伝達ループを設計する。一次熱伝達ループは、一次凝縮器を含むことができ、当該一次凝縮器は、ラックに取り付けられるIT機器のITコンポーネント(例えば、プロセッサ)の一つまたは複数のコールドプレートに結合される。液体冷却剤は、一次凝縮器からコールドプレートに流れることができ、ITコンポーネントによって生成される熱がコールドプレートを介して液体冷却剤に伝達される場合、液体冷却剤は、蒸気を生成する。次に、当該蒸気は、一次凝縮器を介して液体冷却剤に凝縮して戻され、液体冷却剤は、続いてコールドプレートに補給して戻される。
【0011】
二次熱伝達ループは、二次凝縮器を含むことができ、当該二次凝縮器は、一次バルブを介してコールドプレートに結合され、電子ラックが「公称」または通常の動作状態にある場合(例えば、電力密度が電力閾値よりも低い場合)、当該一次バルブは、閉鎖されたままで、ラックは、一次熱伝達ループによって冷却される。しかしながら、システム内の蒸気圧が圧力閾値以上に上昇する場合、一次バルブを開くことができ、これにより蒸気が凝縮のために二次凝縮器を通過できるようになる。このような状況は、電子ラックの高電力ワークロード条件下で発生する可能性があり、ITコンポーネントによって生成される余分な熱により、コールドプレートは、より多くの蒸気を生成し、これにより密閉系内の蒸気圧が上昇する。蒸気圧が低下する場合(例えば、ラックがラックの消費電力がより少ない公称動作条件に戻る場合)、圧力バルブを閉鎖することができ、その後、システムは、二次ループを使用せずに、一次熱伝達ループを介して冷却することができる。従って、一次熱伝達ループの一次凝縮器は、電子ラックの消費電力に関係なく、固定かつ一定の冷却能力を提供することができる(例えば、システムの任意の制限なしに)。本明細書に記載の冷却システムは、利点を提供することができる。例えば、当該システムは、様々な動作条件下でより優れたパフォーマンスを実現する自己調整システムとして設計されており、熱伝達ループの冷却能力およびIT機器の熱負荷によって大きな変化が生じるようにする。さらに、当該システムは、二次凝縮器が必要な場合にのみ使用される費用効果の高い制御を可能にする。さらに、冷却システムは、ラックが通常の動作状態下で動作する場合に、一次熱伝達ループが十分かつ一定の冷却を提供できるようにすることで、複雑さを軽減する。
【0012】
さらに、冷却システムは、電子ラックの冷却需要の変化に基づいて、一次バルブの開放圧力を再構成(または調整)することができる。例えば、一次バルブが開く圧力閾値は、電子ラックの構成(例えば、ラック内に取り付けられるIT機器の数およびタイプ)および一次凝縮器の冷却能力に基づくことができる。これらのいずれかが変更される場合(例えば、ラック内に取り付けられるIT機器を交換、追加および/または除去することによりラックの構成が変更される)、圧力閾値も変更される可能性がある。例えば、より高い電力密度の機器がラックに追加される場合、構成全体の最大電力密度が増加することができる。追加された高電力密度機器によって生成され、かつ対がされた高電力密度機器から転送される必要がある熱がそれに応じて増加するため、ラックに電力密度が低い機器が取り付けられることに比較して、圧力閾値を減少させる必要がある可能性がある。従って、冷却システムは、電子ラックの現在の構成におうじて一次バルブの開放圧力を調整して電子ラックを冷却することにより、一次凝縮器の冷却能力(一定のままで)に対する二次凝縮器の冷却能力の増加を制御することができる。
【0013】
一実施形態によれば、電子ラック用の冷却システムは、一次凝縮器と、一次供給ラインおよび一次リターンラインと、二次凝縮器と、二次凝縮器を一次供給ラインに結合する二次供給ラインと、二次凝縮器を一次リターンラインに結合する二次リターンラインと、および二次リターンラインに結合する一次バルブとを含むことができ、一次供給ラインおよび一次リターンラインにおいて、一次凝縮器を電子ラック内の情報技術(IT)機器に設置されるITコンポーネント上に取り付けられるように配置されるコールドプレートに結合して、一次熱伝達ループを構築し、当該一次熱伝達ループにおいて、一次凝縮器は、1)一次供給ラインを介してコールドプレートに液体冷却剤を供給し、および2)ITコンポーネントによって生成される熱がコールドプレートを介して液体冷却剤に伝達される場合、一次リターンラインを介してコールドプレートによって生成される蒸気を受け取る。一次バルブは、蒸気の圧力が一次バルブの圧力閾値を超えることに応答して少なくとも部分的に開かれるように構成され、一次バルブが少なくとも部分的に開かれることに応答して二次熱伝達ループが構築され、二次熱伝達ループにおいて、二次凝縮器は、二次リターンラインを介して蒸気の少なくとも一部を受け取り、蒸気の少なくとも一部を二次供給ラインを介して一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻す。
【0014】
一実施形態において、冷却システムは、1)二次凝縮器の冷却コイルを使用して周囲空気を移動させるように配置されるファン、または2)二次凝縮器を冷却源および二次バルブに結合するラック供給ラインおよびラックリターンラインをさらに含み、二次バルブは、二次冷却凝縮器の冷却方法(空冷凝縮器または液冷凝縮器)に応じて、ラック供給ラインまたはラックリターンラインに結合される。いくつかの実施形態において、冷却システムは、圧力センサをさらに含み、圧力センサは、二次リターンラインに結合され、かつファンまたは二次バルブに通信可能に結合され、圧力センサは、二次リターンライン内の蒸気圧を感知し、かつ感知された圧力に基づいて1)ファンのファン速度または2)二次バルブの開放率を調整するように構成される。
【0015】
一実施形態において、冷却システムは、一次バルブに通信可能に結合されるコントローラをさらに含み、コントローラは、電子ラックの最大電力閾値および一次凝縮器の冷却能力のうちの少なくとも一つに基づいて圧力閾値を決定すし、かつ圧力閾値に応じて一次バルブの開放圧力を設定するように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態において、冷却システムは、一次供給ラインをコールドプレートに結合する供給分配マニホールドと、および一次リターンラインをコールドプレートに結合するリターン分配マニホールドとをさらに含む。別の実施形態において、冷却システムは、一次供給ラインと供給分配マニホールドとの間に結合される液体冷却剤緩衝器をさらに含む。一実施形態において、二次凝縮器は、一次凝縮器の上に配置され、一次凝縮器は、IT機器の上に配置され,蒸気および液体冷却剤は、任意の蒸気ポンプおよび任意の液体ポンプなしで、一次熱伝達ループおよび二次熱伝達ループのそれぞれを通って循環する。別の実施形態において、一次凝縮器は、第1のタイプの二相熱交換器であり、二次凝縮器は、第2のタイプの二相熱交換器である。
【0017】
一実施形態によれば、電子ラックは、データ処理サービスを提供するためにスタックに配置される複数の情報技術(IT)機器を含み、本明細書で説明される冷却システムの少なくともいくつかのコンポーネントを含み、それぞれのIT機器は、一つまたは複数のプロセッサを含む。
【0018】
別の実施形態によれば、電子ラック内に取り付けられるIT機器の情報技術(IT)コンポーネントを液冷する方法は、一次熱伝達ループ内の蒸気圧を決定し、当該一次熱伝達ループにおいて、ITコンポーネントに取り付けられるコールドプレートは、一次供給ラインと一次リターンラインとを介して一次凝縮器に結合され、1)一次供給ラインは、液体冷却剤をコールドプレートに供給し、かつ2)ITコンポーネントによって生成される熱がコールドプレートをかいして液体冷却剤に伝達される場合、一次リターンラインは、コールドプレートによって生成される蒸気を一次凝縮器に戻すステップと、一次熱伝達ループ内の蒸気圧が圧力閾値を超えるとの決定に応答して、閉じた一次バルブを開き、当該一次バルブは、一次リターンラインを二次凝縮器に結合し、当該二次凝縮器は、二次供給ラインを介して一次供給ラインに結合され、一次バルブが開かれる場合、二次熱伝達ループが構築され、当該二次熱伝達ループにおいて、蒸気の少なくとも一部は、二次凝縮器を介して、二次供給ラインによって一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻されるステップと、および一次熱伝達ループ内の蒸気圧が圧力閾値を超えないとの決定に応答して、蒸気が一次凝縮器のみを介して液体冷却剤に凝縮して戻されるように、閉じた一次バルブの閉鎖状態を維持するステップとを含む。
【0019】
一実施形態において、一次バルブは、一次リターンラインを二次凝縮器に結合する二次リターンラインに結合され、前記方法は、二次リターンライン内の蒸気圧を感知するステップと、および1)ファンのファン速度または2)二次バルブの開放率を調整するステップとをさらに含み、ファンは、二次凝縮器の冷却コイルを使用して周囲空気を移動させるように配置され、二次バルブは、感知された圧力に基づいて二次凝縮器を液体冷却源に結合する。いくつかの実施形態において、前記方法は、電子ラックの最大電力閾値および一次凝縮器の冷却能力のうちの少なくとも一つに基づいて圧力閾値を決定するステップと、および圧力閾値に応じて一次バルブの開放圧力を設定するステップとをさらに含む。一実施形態において、前記方法は、電子ラックの構成変更に基づいて、電子ラックの新しい最大電力閾値を決定するステップ、少なくとも新しい最大電力閾値に基づいて新しい圧力閾値を決定するステップと、および新しい圧力閾値に応じて一次バルブの開放圧力を設定するステップとをさらに含む。
【0020】
一実施形態において、本明細書で使用されるように、一つの構成要素(または要素)別の構成要素に「結合」することとは、冷却液または液体冷却剤等の流体(または蒸気)が二つの構成要素間を流れることができるように、二つの構成要素を「流体的に」結合することを指すことができる。例えば、第1のチューブを第2のチューブに結合することとは、流体が第1のチューブから第2のチューブに流れることができるように、二つのチューブを一緒に結合することを指すことができる。
【0021】
図1は、一実施形態による冷却システム1の一例を示すブロック図であり,当該冷却システムは、一次凝縮器を有する情報技術(IT)機器の冷却部分である。具体的には、図1は、(例えば、相変化液体)冷却システム1が、一次凝縮器3、二次凝縮器4、コントローラ6、一次バルブ13、圧力センサ14、ファン16、二次バルブ15、一次供給ライン9、二次供給ライン11、供給分配マニホールド7、一次リターンライン10、二次リターンライン12およびリターン分配マニホールド8を含むことを示す。一実施形態において、システムは、本明細書に示される一つまたは複数の構成要素(または要素)を含むことができる。例えば、システムは、一つまたは複数の圧力センサ、一つまたは複数のファンおよび/または一つまたは複数の(追加の)バルブを含むことができる。別の例として、システムは、本明細書に記載のファン16または二次バルブ15を含むことができる。
【0022】
図1は、スタックに配置された一つまたは複数のIT機器5a~5nを含む電子ラック2をさらに示す。一実施形態において、電子ラックは、一つまたは複数の(サーバー)スロットを含むことができ、これらのスロットは、それぞれが一つまたは複数のIT機器を含むように設計される。それぞれのIT機器は、一つまたは複数のITコンポーネント(例えば、一つまたは複数のプロセッサ、中央処理装置またはCPU、グラフィックス処理装置(GPU)、メモリおよび/またはストレージデバイス)を含むことができる。ITコンポーネントは、データ処理タスクを実行することができ、ITコンポーネントは、ストレージデバイスに取り付けられ、メモリにロードされ、かつ一つまたは複数のプロセッサによって実行されて、データ処理タスクを実行するソフトウェアを含むことができる。一実施形態において、IT機器は、一つまたは複数のコンピューティングサーバー(CPUサーバーおよびGPUサーバー等のコンピューティングノードとも呼ばれる)に結合されるホストサーバー(ホストノードとも呼ばれる)を含むことができる。ホストサーバー(一つまたは複数のCPUを搭載)は、通常、ネットワーク(例えば、インターネット(Internet))を介して、クライアントとインターフェイスすることによって、ストレージサービス(例えば、バックアップおよび/またはリカバリ等のクラウドベースのストレージサービス)等の特定のサービスを受信し、アプリケーションを実行して特定の操作(例えば、ソフトウェア、即ちサービスまたはSaaSプラットフォームの一部としての画像処理、ディープデータラーニングアルゴリズムまたはモデル等)の要求を実行する。当該要求に応答して、ホストサーバーは、ホストサーバーによって管理される一つまたは複数のパフォーマンスコンピューティングノードまたはコンピューティングサーバー(一つまたは複数のGPUまたは異なるタイプのアクセラレーターを有する)にタスクを割り当てる。ITコンポーネント(例えば、プロセッサ)は、熱を生成するコンピューティングタスクを実行する。本明細書に示されるように、これらの熱は、コンポーネントから伝達され、故障の原因となる可能性のある過熱を防ぐ必要がある。
【0023】
それぞれのIT機器5a~5nは、コールドプレート21a~21nのうちの少なくとも一つを含み、コールドプレート21a~21nは、対応するIT機器のITコンポーネント(図示せず)に取り付けられるように配置される。各コールドプレートは、コールドプレートが取り付けられる一つまたは複数のITコンポーネントに対して相変化液冷するように設計される。例えば、コールドプレートが取り付けられるITコンポーネントによって生成される熱が、コールドプレートを介して液体冷却剤に伝達される場合、コールドプレートは、液体冷却剤を受け取り、かつ蒸気を生成する。本明細書は、コールドプレートのより多くの内容について説明する。
【0024】
一実施形態において、液体冷却剤は、任意のタイプ(または一つまたは複数のタイプ)の相変化液体(または流体)であり得る。いくつかの実施形態において、冷却剤は、コールドプレートが取り付けられるIT機器(例えば、IT機器に取り付けられるITコンポーネント)に基づいて、冷却剤の相変化(例えば、ガスまたは蒸気に相変化する)できる沸点を有することができる。具体的には、冷却剤は、ITコンポーネントの動作温度(例えば、所定の電力密度を引き出す場合、ITコンポーネントによって生成される熱を発生させるチップのケース温度等のITコンポーネントの温度)閾値よりも低い(または等しい)沸点を有することができる。
【0025】
本明細書に示されるように、冷却システム1の少なくともいくつかの構成要素(少なくとも部分的に)は、電子ラック2内に含まれる(または設置される)。例えば、IT機器5a~5n、コントローラ6、供給分配マニホールド7とリターン分配マニホールド8、および一次凝縮器3と二次凝縮器4は、電子ラック内に含まれる。別の実施形態において、図1に示される冷却システム1の構成要素の一部(または全部)は、ラック内に含まれることができる。従って、この例において、冷却システムは、すべてラック2内に含まれる(または取り付けられる)。別の実施形態において、一つまたは複数の構成要素は、ラックの外側に設置されることができる。例えば、二つ(または少なくとも一つ)の凝縮器は、ラックの上部(および/または外側)に配置されることができる。別の例として、ファン16および/または二次バルブ15は、ラックの外側に配置され、かつラックに結合されることができる。例えば、ファン16は、ラック(例えば、ラックの後端)に結合して、周囲空気(例えば、データセンター室の冷却空気)を押し出す(または吸い込んで送る)ことができる。別の例として、コントローラ6は、ラックの外側(例えば、異なるラック内に含まれる)に設置されることができる。
【0026】
一次凝縮器3は、蒸気を冷却(凝縮)液体(または凝縮物)に凝縮するように設計された任意のタイプの二相熱交換器(例えば、液体から液体への熱交換器、液体から空気への熱交換器等)であり得る。同様に、二次凝縮器4は、任意のタイプの二相熱交換器であり得る。一実施形態において、冷却システム1は、二次凝縮器が含む熱交換器のタイプに基づいて、ファン16または二次バルブ15を含むことができる。例えば、二次凝縮器が液体から空気への熱交換器である場合、冷却システムは、二次凝縮器の(少なくとも一つ)冷却コイルを使用して冷却空気を移動させるように配置される一つまたは複数のファン16を含むことができる。次に、冷却空気は、冷却コイルに流入する蒸気を冷却するために使用される。さらに、二次凝縮器が液体から液体への熱交換器である場合、冷却システムは、1)ラック供給ライン17または2)ラックリターンライン18に結合することができる二次バルブ15を含み、ラック供給ライン17は、冷却源(例えば、データセンターの冷却液システム)から二次凝縮器4に液体冷却剤を供給し、ラックリターンライン18は、加熱された液体冷却剤を冷却源に送り返す。次に、冷却液は、蒸気を冷却するために使用される。一実施形態において、二つの凝縮器は、異なるタイプの熱交換器(例えば、一次凝縮器は、液体から液体への熱交換器であり、二次凝縮器は、液体から空気への熱交換器である)であってもよい。いくつかの実施形態において、冷却システム1は、一次凝縮器を冷却するための余分なファン、バルブおよび供給/リターンラインを含むことができる。一方、本明細書に示されるように、冷却システムは、コールドプレートに結合される余分な凝縮器を含むことができる。
【0027】
図に示されるように、一次供給ライン9および一次リターンライン10は、一次凝縮器3を一つまたは複数のコールドプレート21a~21nに結合して、一次熱伝達ループ(例えば、各コールドプレートの一つのループに使用される)を構築する。具体的には、一次供給ラインは、一次凝縮器を供給分配マニホールド7に結合し、一次リターンラインは、一次凝縮器をリターン分配マニホールド8に結合する。従って、供給マニホールドとリターンマニホールドは、それぞれ一つまたは複数のコールドプレート(例えば、取り外し可能に)を一次供給ラインおよび一次リターンラインに結合するように構成されるため、コールドプレートの熱伝達ループが冷却システム1に追加されるか、または冷却システム1から取り外すことができる。特に、コールドプレート21aを参照して示されるように、各コールドプレートは、IT供給ライン19を介して供給分配マニホールドに結合され、同様に、各コールドプレートは、ITリターンライン20を介してリターン分配マニホールドに結合される。本明細書に示されるように、一次熱伝達ループは、IT機器(例えば、コールドプレートが取り付けられるITコンポーネント)から熱を引き出す。例えば、一次凝縮器は、一次供給ライン9を介して、液体冷却剤(例えば、凝縮物)を供給分配マニホールドに供給し、次に、供給分配マニホールドは、IT供給ライン19を介して各コールドプレート21a~21nに冷却剤を分配および供給する。コールドプレートは、液体冷却剤を加熱して蒸気にし、当該蒸気は、ITリターンライン20を介してリターン分配マニホールドに流入する。次に、蒸気は、リターンマニホールドから一次リターンライン10に流れ込み、一次凝縮器3は、一次リターンライン10から液体冷却剤に凝縮して戻される蒸気を受け取る。
【0028】
二次凝縮器4は、一次凝縮器3と並列に結合される。図に示されるように、二次供給ライン11は、二次凝縮器4を一次供給ライン9に結合し、二次リターンライン12は、二次凝縮器を一次リターンライン10に結合して、(例えば、本明細書に示されるように、高電力ワークロードを処理する時の電子ラック等の特定の動作条件下で)二次熱伝達ループを生成する。本明細書は、二次熱伝達ループについてより多くの内容を説明する。一実施形態において、二次凝縮器は、他の形態で結合されることができる。例えば、二次供給ラインは、一次供給ラインに結合される代わりに、供給分配マニホールド7に結合されることができる。一次バルブ13および圧力センサ14は、二次リターンラインに結合される。一実施形態において、二次リターンラインは、一次リターンラインと一次バルブとの間に結合される二次リターンラインの第1の部分および二次凝縮器と一次バルブとの間に結合されかつ圧力センサが結合される二次リターンラインの第2の部分の二つの部分を含むことができる。一実施形態において、圧力センサは、二次リターンラインの第1の部分に結合されることができる。
【0029】
一実施形態において、一次バルブ13は、一次リターンラインから(二次リターンラインを通って)二次凝縮器4への蒸気の流れを制御するように構成される。一実施形態において、一次バルブは、圧力閾値を超える一次熱伝達ループ内の蒸気圧(例えば、一次リターンライン10中の蒸気圧)に応答して、少なくとも部分的に開くように構成される、圧力バルブであり得る。例えば、一次バルブは、圧力閾値に応じて限定(または設定)された開放圧力(例えば、バルブが少なくとも部分的に開かれる圧力)を有することができる。従って、一次バルブが開かれる場合、二次熱伝達ループが構築され、これにより、一次バルブ13が少なくとも部分的に開かれることに応答して、蒸気が二次凝縮器に流入することができる。特に、バルブが開かれる場合、コールドプレートによって生成される蒸気(または蒸気の少なくとも一部)は、一次リターンラインから二次リターンライン12を通って流れ、二次凝縮器4によって受け取られ、二次凝縮器4は、蒸気を凝縮して液体冷却剤に戻し、次に、二次供給ライン11を介して二次凝縮器によって一次供給ライン9に供給される。一実施形態において、一次バルブ13の開放は、余分な蒸気(例えば、一次凝縮器3が効果的に凝縮することができない余分な蒸気)が二次凝縮器を通して凝縮されることを可能にする。いくつかの実施形態において、一次バルブは、(例えば、自動的に)その開放率を調整して、入力圧力(例えば、一次リターンライン10に結合されるバルブの入口の圧力)の変化と同様(または同じ)の出力圧力(例えば、二次リターンラインに結合されるバルブの出口の圧力)の比例変化を提供する比例バルブであり得る。
【0030】
しかしながら、図1に示されるように、冷却システム1は、二次熱伝達ループの代わりに一次熱伝達ループを使用して、電子ラック上で相変化冷却を実行する。例えば、供給ライン9および19ならびに供給分配マニホールド7は、コールドプレート21a~21n(黒い実線で示されるように)に液体冷却剤(例えば、凝縮物)を提供し、リターンライン10および20ならびにリターン分配マニホールド8は、蒸気(例えば、蒸発された液体冷却剤)をコールドプレートから一次凝縮器3(黒い点線で示されるように)に戻すために使用される。一次バルブ13が閉鎖され、蒸気が二次リターンライン12を通って流れず、凝縮物は、二次凝縮器4から二次供給ライン11を介して一次供給ライン(黒い点線で示される二次リターンラインおよび供給ラインで示されるように)に流れない。
【0031】
コントローラ6は、特定用途向け集積回路(ASIC)、汎用マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号コントローラまたは一組のハードウェア論理構造(例えば、フィルター、算術論理演算装置および専用ステートマシン)等の専用プロセッサであり得る。一実施形態において、コントローラは、アナログ要素(例えば、抵抗器、コンデンサ、インダクタ等)および/またはデジタル要素(例えば、トランジスタなどの論理ベースの要素等)を有する回路であり得る。コントローラは、メモリを含むことができる。図に示されるように、一実施形態において、コントローラは、電子ラック2の一部であってもよい(または電子ラック2に集積されてもよい)。別の実施形態において、コントローラは、電子ラック内に取り付けられるIT機器の一部であってもよい(またはそのうちの一つ)。コントローラは、電子ラック内に取り付けられるIT機器を冷却するために一つまたは複数の相変化操作を実行するように構成される。本明細書は、これらの操作のより多くの内容について説明する。
【0032】
本明細書に示されるように、冷却システムは、一次熱伝達ループ内(流動)の蒸気の蒸気圧が圧力閾値を超えたことに応答して、二次熱伝達ループを構築する。一実施形態において、圧力閾値は、高電力ワークロード(またはそれ以上)での電子ラックの動作に対応する蒸気圧であり得る。例えば、蒸気圧が圧力閾値よりも低い場合、電子ラック2(例えば、電子ラック2のIT機器5a~5n)は、公称動作条件下でまたは公称動作条件より下で動作することができ(例えば、(最大)電力密度(または閾値)よりも少ない電力を消費する)、ラックのITコンポーネントは、一次凝縮器を介して放散することができる制御可能な量の熱を生成する。具体的には、機器が高電力ワークロードで動作しない場合、一次凝縮器の(メイン)冷却能力は、IT機器によって生成される熱よりも大きい(または等しい)。従って、ラックが電力閾値を超える電力を引き出さない通常の電力負荷条件下で動作する場合、メイン冷却能力は、コールドプレート21a~21nを介して生成される蒸気を効率的かつ効果的に凝縮することができる。しかしながら、IT機器が高電力ワークロードを処理する場合(例えば、IT機器が電力閾値よりも高い電力密度を有する場合)、ITコンポーネントは、余分な熱を生成することにより、コールドプレートを介して余分な蒸気を生成する。電子ラック内(例えば、一次リターンライン10内)の蒸気の体積が増加するにつれて、蒸気圧も増加する。従って、冷却システム1は、必要に応じて(例えば、IT機器の高電力密度のワークロード期間に)二次熱伝達ループを作動させるように構成される。一実施形態において、冷却システム1は、通常、一次熱伝達ループを使用して、電子ラック内の機器を液冷する。
【0033】
一実施形態において、コントローラ6は、電子ラック2の構成に基づいて(一次バルブ13が開かれた)圧力閾値を決定するように構成される。電子ラックの構成は、ラック内に取り付けられるIT機器(および機器のITコンポーネント)の数および/またはタイプを含むことができる。電子ラックの構成に応じて、コントローラは、電子ラックの最大電力閾値(またはワークロード)を決定することができる。例えば、それぞれのIT機器は、機器の動作のための電力要件および/または電力閾値を有することができる。コントローラは、電子ラック内に取り付けられるすべての機器の情報を総合して、ラックの最大電力閾値を決定することができる。一実施形態において、コントローラは、様々な方法で機器に関する電力情報を決定することができる。例えば、機器がラック内に取り付けられる場合、コントローラは、機器から電力要件を検索することができる(例えば、コントローラは、それぞれのIT機器と通信可能に結合されることができる)。別の実施形態において、コントローラは、電子ラックを充填する時に、ユーザから(例えば、ユーザ端末から)電力情報を受け取ることができる。ラックの構成に加えて(または代替的に)、圧力閾値は、一次凝縮器の冷却能力に基づくことができる。一実施形態において、冷却能力は、ラック内の凝縮器の数におうじて決定されることができる。一実施形態において、コントローラは、最大電力閾値で動作する時に、電子ラックによって生成される熱に基づいて圧力閾値を決定する。例えば、コントローラは、最大電力閾値に基づいて電子ラックによって生成される総熱を決定し、かつ閾値を一次凝縮器のメイン冷却能力と比較するように構成されることができる。例えば、コントローラは、一次凝縮器のメイン冷却能力が、高電力ワークロード期間に電子ラックが生成できる総熱よりも大きいかどうかを決定することができる。最大電力閾値がメイン冷却能力よりも大きい場合、コントローラは、メイン冷却能力におうじて圧力閾値を限定することができ、最大電力閾値よりも小さいラックの電力密度に対応することができる。別の実施形態において、コントローラは、他の方法を使用して、圧力閾値を決定することができる。いくつかの実施形態において、コントローラは、圧力閾値を決定(限定)および設定する時に、ラックの動作構成を考慮することができる。
【0034】
例えば、コントローラは、最大電力および/または一次凝縮器の冷却(動作)能力を、出力蒸気圧力値の所定の蒸気圧モデルに入力することができ、当該蒸気圧力値(または当該蒸気圧力値より高い値)では、二次熱伝達ループ(一次熱伝達ループとともに)をラックの冷却に使用される。言い換えれば、これは、二次熱伝達ループを使用して、一次凝縮器の冷却能力を超える電子ラックの熱負荷量を冷却することとして理解することができる。別の例として、コントローラは、最大電力ワークロードを使用して、電力値を蒸気圧力値に関連付けるデータ構造でテーブルルックアップを実行することができる。
【0035】
別の実施形態において、コントローラは、最大電力ワークロードの所定の部分(または数値)に基づいて圧力閾値を決定することができる。例えば、最大電力ワークロードを決定する場合、コントローラは、当該値をパーセンテージ(例えば、50%)減らすことができ、その結果、最大電力ワークロードが半分になる。一実施形態において、当該減少されたワークロードは、少なくとも電子ラックの平均ワークロードを表すことができる。コントローラは、圧力閾値を決定して、ラック内に取り付けられる機器が減少したワークロード(またはそれ以上)を吸収し始めるとすぐに、冷却システムが二次熱伝達ループをアクティブすることができる。
【0036】
一実施形態において、コントローラ6は、(例えば、制御ライン22によって)一次バルブ13に通信可能に結合される。いくつかの実施形態において、制御ラインは、任意の通信プロトコルを介した有線接続であり得る。いくつかの実施形態において、コントローラ6は、制御ライン22を使用して一次バルブ13に制御信号(例えば、電気信号)を送信することにより、圧力閾値に応じて一次バルブの開放圧力を設定するように構成される。例えば、一実施形態において、コントローラは、電子ラックの構成変更(例えば、異なる電力要件を有するIT機器の交換、追加および/または取り外し)に基づいて、一次バルブの開放圧力を動的に調整することができる。本明細書は、一次バルブの開放圧力を動的に調整するより多くの内容について説明する。
【0037】
図2は、一実施形態による冷却システム1の例を示すブロック図であり、当該冷却システム1は、一次凝縮器と二次凝縮器とを有するIT機器の冷却部分である。具体的には、図2は、冷却システムが、一次バルブ13が少なくとも部分的に開かれるため、一次熱伝達ループと二次熱伝達ループとの両方を使用して、IT機器5a~5nを冷却することを示す。これは、点線で示される二次リターンライン12および実線で示される二次供給ライン11によって示される。従って、本明細書に示されるように、図2において、冷却システムは、余分な二次凝縮器4の冷却能力を使用して、高電力ワークロード下で動作できる電子ラックを冷却する。
【0038】
図1に示されるように、冷却システム1は、二次リターンライン12に結合される圧力センサ14を含む。一実施形態において、圧力センサ14は、二次リターンライン12内の(例えば、蒸気)圧力の変化を検出(または感知)するように構成された任意のタイプのセンサ(例えば、圧電圧力センサ、集電型センサ、圧力センサ等)であり得る。具体的には、圧力センサは、(二次リターンラインを流れる蒸気の)蒸気圧を感知し、かつライン内の蒸気圧を示す対応する電気信号を生成する。しかしながら、別の実施形態において、圧力センサは、任意のリターンラインおよび/またはリターン分配マニホールド内の任意の位置に配置されることができる。図に示されるように、本明細書で説明されるように、圧力センサは、二次凝縮器のタイプに基づいて(例えば、有線接続であり得る制御ライン23を介して)、一つまたは複数のファン16、二次バルブ15または両方と通信可能に結合される。
【0039】
一実施形態において、圧力センサ14は処理要素(例えば、プロセッサ、メモリ等)を含み得、感知された圧力に基づいて1)(複数の)ファン16のファン速度または2)二次バルブ15の開放率を調整するように構成されることができる。特に、圧力センサは、蒸気圧を感知するように構成されることができ、感知された圧力に基づいて調整を決定するように構成されることができる。圧力センサは、感知された圧力を使用して、蒸気圧をファン速度および/または開放率と関連付けるデータ構造に対して、テーブルルックアップを実行することができる。調整を決定する場合、圧力センサは、制御ライン23を介して制御信号を(複数の)ファンに送信して、ファン速度を変更させるか、または制御信号を二次バルブに送信してバルブの開放率を調整する(例えば、少なくとも部分的に開かれる)ことができる。例えば、圧力センサは、二次リターンライン内の蒸気圧が増加するにつれて、ファン速度を増加させるか、または開放率を増加させて、二次凝縮器の冷却能力を向上させることができる。例えば、ファン速度が増加する場合、冷却コイルを流れる冷却空気が増加し、これは、コイルから流れる空気への熱伝達が改善されることにより、二次凝縮器の冷却能力を増加する。
【0040】
いくつかの実施形態において、圧力センサは、一次バルブ13が開かれる(例えば、第1の)圧力閾値よりも高い蒸気圧(例えば、第2の圧力閾値)を感知することに応答して、ファンを動作させるか、または(例えば、閉鎖状態から)二次バルブ15を少なくとも部分的に開くことができる。一実施形態において、二次リターンライン12内の蒸気圧が第1の圧力閾値と第2の圧力閾値との間に維持される場合、二次熱伝達ループは、二次凝縮器の自然対流に依存して蒸気を凝縮物に凝縮することができる(例えば、ファンを使用して二次凝縮器の冷却コイルに周囲空気を押し出したり、ラック供給ライン17を使用して二次凝縮器に液体冷却剤を供給したりしない)。このように、冷却システムは、自然対流を使用して、高電力ワークロードを実行する時にIT機器によって生成される余分な熱を自動的かつ受動的に管理され、これは、二次凝縮器を使用して流体相を変更し、かつ冷却液をコールドプレートに循環させて、コールドプレートが取り付けられるITコンポーネントから熱を抽出することによって実現される。このようにして、冷却システムは、余分な電力リソースを使用してファンを稼働させることなく、かつ冷却源から液体冷却剤を引き出して二次凝縮器の冷却能力を向上させることなく、余分な相変化冷却を提供することができる。
【0041】
一実施形態において、凝縮器は、電子ラックの相変化冷却を容易にするように配置されることができる。例えば、図に示されるように、一次凝縮器および二次凝縮器定とは、IT機器の上に配置される(例えば、電子ラックの高さ方向に延びる垂直軸に沿って)。二つの凝縮器をIT機器の上に配置することにより、冷却システムは、重力を使用してコールドプレートによって生成される蒸気を吸い上げ、凝縮物が下に向けてコールドプレート流し込むようにする。従って、蒸気および液体冷却剤は、自然循環を促進する機械装置を使用せずに、一次熱伝達ループおよび二次熱伝達ループのそれぞれ(または少なくとも一つ)を通って循環されることができる。例えば、冷却システムは、蒸気ポンプなしで(例えば、任意のリターンラインに結合される)および液体ポンプなしで(例えば、任意の供給ラインに結合される)蒸気を循環させる。一実施形態において、二次凝縮器は、ラックの高電力ワークロード期間にのみ蒸気を凝縮するために二次凝縮器を使用することができるため、一次凝縮器の上に配置される。
【0042】
図3は、一実施形態による緩衝器25を有する冷却システム1の別の例を示すブロック図である。具体的には、冷却システムは、液体冷却剤を貯蔵(または蓄積)するように設計される緩衝器を含む。図に示されるように、緩衝器は、一次供給ライン9と供給分配マニホールド7との間に結合されるため、一次凝縮器3および/または二次凝縮器4によって供給される液体冷却剤(または凝縮物)を貯蔵する。貯蔵された液体冷却剤は、その後供給分配マニホールドに供給されて、コールドプレート21a~21nに供給される。一実施形態において、緩衝器は、熱伝達ループがコールドプレートを冷却するのに十分な液体冷却剤を有することを確保する。図に示されるように、緩衝器は、コールドプレート21a~21nの上に配置される。これにより、十分な量の液体冷却剤が常にコールドプレートに流入する。いくつかの実施形態において、緩衝器は、他の場所で結合することができ、および/または冷却システムは、二つまたは複数の緩衝器を含むことができる。例えば、各凝縮器は、対応する緩衝器に結合されることができる。
【0043】
一実施形態において、冷却システム1の構成要素は、コネクタを介して互いに結合されることができる。例えば、一次凝縮器は、コネクタを有する供給ポートを含むことができ、当該コネクタは、一次供給ライン9に結合(または接続)されるコネクタとして構成される。同様に、一次凝縮器は、別のコネクタをゆするリターンポートを含むことができ、当該別のコネクタは、一次リターンライン10のコネクタに接続される。一実施形態において、コネクタは、ドリップレスブラインドメイティングクイックディスコネクト(dripless blind mating quick disconnects)等の、互いに取り外し可能に結合される任意のタイプのコネクタであり得る。一実施形態において、これらのコネクタは、構成要素を互いに取り外し可能に結合されることを可能にする。従って、冷却システムの構成要素は、必要に応じて分解および交換されることができる。例えば、一次供給ライン9および一次リターンライン10を一次凝縮器から取り外して(分離して)、凝縮器を交換することができる。
【0044】
一実施形態において、少なくともいくつかのリターンライン(例えば、ライン10、12および/または20)は、少なくともいくつかの供給ライン(例えば、ライン9、11および/または19)とは異なることができる。例えば、リターンラインを流れる蒸気の体積が供給ラインを流れる液体冷却剤の体積よりも大きい可能性があるため、リターンラインの直径は、供給ラインの直径よりも大きくなることができる。一実施形態において、供給ラインおよびリターンラインは、任意の材料で構築されることができる。例えば、ラインは、銅等の金属、ポリマー(例えば、EPDMゴム)および/またはプラスチックで構成されることができる。一実施形態において、ラインは、ゴム等の可撓性材料で構成されることができる。
【0045】
図4および図5は、それぞれいくつかの実施形態によるIT機器の液冷部分のプロセス30およびプロセス40のフローチャートである。図1および図2の冷却システム1を参照して、図4および図5を説明する。一実施形態において、プロセスの少なくともいくつかの動作は、コントローラ6、一次バルブ13および/または圧力センサ14によって実行されることができる。
【0046】
プロセス30は、コントローラが電子ラック(例えば、電子ラック内に取り付けられるIT機器)の最大電力閾値(例えば、最大電力密度)を決定することができる(ブロック31で)。特に、ラックにIT機器を充填して電子ラックを構成すると(例えば、サーバーがラックのサーバースロットに追加される)、コントローラは、構成の最大電力密度を決定することができる。本明細書に示されるように、コントローラは、機器の電力情報(例えば、電力情報は、電力要件、閾値等を含むことができる)に基づいて構成された最大電力密度を決定することができる。例えば、機器は、コントローラと通信可能に結合され、機器が取り付けられる時に情報を送信することができる。別の実施形態において、コントローラは、機器の識別情報(例えば、モデル番号等)に基づいて当該データを検索することができる。コントローラは、一次凝縮器の最大電力閾値および冷却能力のうちの少なくとも一つに基づいて圧力閾値を決定する(ブロック32で)。本明細書に示されるように、コントローラは、電子ラックの最大電力閾値と一次凝縮器のメイン冷却能力との比較に基づいて圧力閾値を決定することができる。コントローラは、圧力閾値に応じて一次バルブ13の開放圧力を設定する(ブロック33で)。一実施形態において、コントローラは、制御信号を一次バルブに送信して、蒸気圧が圧力閾値を超えた時に当該バルブが自動的に開くようにする。
【0047】
コントローラ6は、蒸気圧(例えば、一次リターンライン10内の蒸気圧)が圧力閾値を超えるかどうかを決定する(決定ブロック34で)。例えば、冷却システムは、追加の圧力センサを含むことができ、当該圧力センサは、コントローラと通信可能に結合され、かつ例えば、一次リターンライン10内の蒸気圧を感知するように構成される。蒸気圧(例えば、一次リターンライン10内の蒸気圧)が圧力閾値を超えると、コントローラは、一次バルブを開いて(例えば、制御ライン22を介して制御信号を送信する)、一次凝縮器と二次凝縮器との両方が蒸気を液体冷却剤に凝縮する(ブロック35で)。コントローラは、二次リターンライン12内の蒸気圧が閾値(例えば、圧力)を超えるかどうかを決定する(決定ブロック36で)。本明細書に示されるように、圧力センサ14は、二次リターンライン12内の蒸気圧を感知することができ、当該圧力閾値は、一次バルブを(少なくとも部分的に)開く原因となる圧力閾値とは異なる(例えば、より大きい)ことができる。二次リターンライン12内の蒸気圧が圧力閾値を超えると、コントローラは、感知された蒸気圧に基づいて、1)一つまたは複数のファン16のファン速度および2)二次バルブ15の開放率のうちの少なくとも一つを調整する(ブロック37で)。
【0048】
本明細書に示されるように、圧力閾値は、少なくとも電子ラックの最大電力閾値および一次凝縮器のメイン冷却能力に基づくことができる。しかしながら、これらのパラメータは、時間の経過とともに変化することができる。例えば、最大電力閾値は、ラック構成の変更(例えば、IT機器の追加および/または電子ラックからのIT機器の削除)によって変更される可能性がある。同様に、(例えば、修理または故障のため)一次凝縮器は、交換されることができる。従って、コントローラ6は、ラック構成の変更に応答して、少なくともプロセス30の少なくともいくつかの動作を実行するように構成されることができる。例えば、変更に応答して、コントローラは、少なくともブロック31~ブロック33の動作を実行して、圧力閾値が変更されたかどうかを決定し、かつ一次バルブの開放圧力を対応的に設定することができる。例えば、コントローラは、電子ラックの構成の変更(例えば、電子ラックにより高い電力密度の機器を追加する)に基づいて、電子ラックの新しい最大電力閾値を決定することができ、新しい電力閾値に基づいて新しい圧力閾値を決定することができ、一次バルブの開放圧力を対応的に設定することができる。別の実施形態において、コントローラは、圧力閾値を定期的に(例えば、少なくとも1日1回、1周1回、1か月1回等)再評価して、電子ラックの冷却要求を満たすことができる。本明細書に示されるように、図5は、一実施形態によるIT機器の液冷部分のプロセス40のフローチャートである。プロセス40は、コントローラ6が一次熱伝達ループ内の蒸気圧を決定することから始まり、一次熱伝達ループのITコンポーネントに取り付けられるコールドプレートは、1)一次供給ラインと2)一次リターンラインとを介して一次凝縮器に結合され、一次供給ラインは、液体冷却剤をコールドプレートに供給し、ITコンポーネントによって生成される熱がコールドプレートを介して液体冷却剤に伝達される場合、一次リターンラインは、コールドプレートを介して生成される蒸気を一次凝縮器に送り返す(ブロック41で)。一次熱伝達ループ内の蒸気圧が圧力閾値を超えるとの決定に応答して、コントローラ閉じた一次バルブを開き、一次バルブは、一次リターンラインを二次凝縮器に結合し、二次凝縮器は、二次供給ラインを介して一次供給ラインに結合され、閉じた一次バルブが開かれる場合、二次熱伝達ループが構築され、二次熱伝達ループにおいて、蒸気の少なくとも一部は、二次凝縮器によって、二次供給ラインを介して一次供給ラインに供給される液体冷却剤に凝縮して戻される(ブロック42で)。しかしながら、一次熱伝達ループ内の蒸気圧が圧力閾値を超えないとの決定に応答して、コントローラは、閉じた一次バルブの閉鎖状態を維持して、蒸気が一次凝縮器を介して液体冷却剤にのみ凝縮して戻される(ブロック43で)。
【0049】
一実施形態において、プロセス30およびプロセス40に記載される少なくともいくつかの動作を定期的に実行することができる。具体的には、冷却システム1(例えば、冷却システム1のコントローラ6)は、電子ラックが動作する時に(例えば、本明細書に示されるように、一つまたは複数のIT機器がデータを処理する時に)、少なくともいくつかの動作を実行することができる。例えば、最大電力閾値に基づいて圧力閾値を決定する操作は、一つまたは複数のIT機器の電力要件の変化および/または一次凝縮器および二次凝縮器の冷却能力の変化に基づいて定期的に実行されることができる。本明細書に示されるように、圧力閾値は、機器の仕様パラメータに基づいて決定されることができる電子ラックの最大電力閾値または密度に基づく。別の実施形態において、最大電力閾値は、一定期間(例えば、1日、1週、1か月等)にわたる電子ラックの動作中の機器の過去の電力密度に基づくことができる。例えば、当該期間中に、コントローラは、電子ラックが最大電力密度よりも低い平均電力密度を引き出すことを決定することができる。一実施形態において、コントローラは、平均電力密度に基づいて圧力閾値を決定することができる。
【0050】
いくつかの実施形態は、プロセス30およびプロセス40の変形を実行することができる。例えば、プロセスの具体的な操作は、示され、かつ説明される正確な順序で実行されないことができる。特定の操作は、一つの連続的操作のシーケンスで実行されないことができ、異なる特定の操作は、異なる実施形態で実行されることができる。例えば、本明細書に示されるように、これらのプロセスの操作は、冷却システム1のコントローラ6によって実行される。しかしながら、本明細書に示されるように、別の実施形態において、他の構成要素は、前記操作の少なくともいくつかを実行することができる。例えば、ブロック35で、一次バルブ13は、圧力閾値を超える蒸気圧に応答して、自動的に開くことができる。別の例として、ブロック36およびブロック37で、圧力センサ14は、二次リターンライン内の蒸気圧が圧力閾値を超えるかどうかを決定し、対応的に調整を実行することができる。
【0051】
上記のように、本開示の実施形態は、その上に命令が記憶された非一時的な機械可読媒体(例如マイクロエレクトロニクスメモリ)であり得る(または含む)、前記命令は、一つまたは複数のデータ処理コンポーネント(本明細書では一般に「プロセッサ」と呼ばれる)をプログラミングして、相変化冷却操作を実行し、例えば、圧力閾値が決定され、かつ当該閾値におうじて一次バルブの開放圧力を設定する。他の実施形態において、これらの操作のいくつかは、ハードワイヤード論理を含む特定のハードウェアコンポーネントによって実行されることができる。選択可能に、これらの操作は、プログラムデータ処理コンポーネントおよび固定ハードワイヤー度回路コンポーネントの任意の組み合わせで実行されることができる。
【0052】
前述の明細書において、本開示の具体的な例示的な実施形態を参照して本開示の実施形態を説明した。明らかに、添付の特許請求の範囲に記載されるように、本開示のより広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。従って、明細書および図面は、例示的であり、限定的ではないと見なされる。
【0053】
図面に特定の実施形態を記載および示されているが、これらの実施形態は単なる例示であり、広範な開示を限定するものではなく、本開示は、示され、かつ説明された具体的な構造および配置に限定されず、当業者によって様々な他の修正を行うことができることを理解されたい。従って、本明細書は、限定的なものではなく、例示的なものと見なされる。
【0054】
いくつかの実施形態において、本開示は、「[要素A]および[要素B]のうちの少なくとも一つ」等の表現を含むことができる。当該表現とは、一つまたは複数の前記要素を指すことができる。例えば、「AおよびBのうちの少なくとも一つ」とは、「A」、「B」または「AおよびB」を指すことができる。具体的には、「AおよびBのうちの少なくとも一つ」とは、「Aの少なくとも一つおよびBの少なくとも一つ」または「AまたはBの少なくとも一つ」を指すことができる。いくつかの実施形態において、本開示は、「[要素A]、[要素B]および/または[要素C]」等の表現を含むことができる。当該表現とは、任意の一つの要素または要素の任意の組み合わせを指すことができる。例えば、「A、Bおよび/またはC」とは、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」または「A、BおよびC」を指すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5