IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チューハイ セイルナー スリーディー テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特許73072763Dインクジェット印刷支持構造用の組成物及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】3Dインクジェット印刷支持構造用の組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20230704BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20230704BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20230704BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20230704BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20230704BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230704BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230704BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230704BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20230704BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20230704BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230704BHJP
【FI】
B29C64/314
C08F220/26
C08F220/56
C08L33/06
C08L33/26
C08L71/02
C08K5/09
C08F2/44 B
B29C64/40
B29C64/112
B33Y70/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022529602
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2020121051
(87)【国際公開番号】W WO2021120809
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】201911325181.4
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519314847
【氏名又は名称】チューハイ セイルナー スリーディー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHUHAI SAILNER 3D TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】余 嘉
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 前程
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167948(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107501477(CN,A)
【文献】国際公開第2019/130321(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103524332(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dインクジェット印刷支持構造用組成物であって、前記組成物の総重量に基づき、18~40重量部の光硬化本体材料、2~30重量部の機能性反応促進材料、非硬化性水混和性材料、光開始剤及び補助剤を含み、前記機能性反応促進材料の分子構造にはカルボキシル基と活性水素が含まれ、前記活性水素が過酸化ラジカルと反応し、
前記機能性反応促進材料は、下式(I)の構造を有し、
【化1】
前記R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、窒素含有複素環、酸素含有複素環及びベンゼン環の少なくとも1種の基から選択され、かつRが水素である場合、RとRの少なくとも1つは水素から選択され、前記n、mはそれぞれ独立して1以上の整数から選択され、かつn≦7、m≦14とする3Dインクジェット印刷支持構造用組成物。
【請求項2】
、R、R及びRの少なくとも1つは水素である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
n≦2、m≦2とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコキシ基はC1-3の低級アルコキシ基である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記機能性反応促進材料は5~10重量部である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記非硬化性水混和性材料は48~78重量部であり、前記光開始剤は1~5重量部であり、前記補助剤は0.4~5重量部である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記非硬化性水混和性材料はポリオールである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記光硬化本体材料は(メタ)アクリレート類化合物及び/又は(メタ)アクリルアミ
ド類化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の総重量に基づき、前記光硬化本体材料中の分子量が300以上の単官能化合物は15~30重量部を占め、光硬化本体材料中の分子量が50より大きくかつ277未満の化合物は3~6重量部を占める請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の総重量に基づき、前記光硬化本体材料中の多官能(メタ)アクリレート類化合物は0~4重量部を占める請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、25℃での粘度が20~70cpsであり、表面張力が26.7~33.5mN/mであり、かつ30~70℃での粘度が8~11cpsであり、表面張力が26.7~33.5mN/mである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、各成分の光誘起重合反応を回避する条件で各成分を混合して得られる請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を製造する方法であって、前記組成物における各成分の光誘起重合反応を回避する条件で、
前記光開始剤以外の成分を均一に混合して、第1の混合物を得、その後、前記第1の混合物に前記光開始剤を添加し、第2の混合物を得るステップ1)、及び
前記第2の混合物を濾過し、濾液、即ち前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を収集するステップ2)を含む方法。
【請求項14】
印刷過程は、3Dインクジェット印刷装置を使用して、請求項1~12のいずれか1項に記載の3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて支持構造を印刷することを含む3Dインクジェット印刷方法。
【請求項15】
前記支持構造の支持により対象物を印刷することをさらに含む請求項14に記載の3Dインクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、印刷用の組成物及びその製造方法に関し、特に、3Dインクジェット印刷支持構造用の組成物及びその製造方法に関し、3D印刷技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
3Dインクジェット印刷過程では、例えば、サスペンション構造を有する物体を印刷する場合、物体のサスペンション構造の下のサスペンション部分は、対象物を形成できるように支持構造を印刷する必要がある。対象物を形成した後、支持構造は、対象物の表面精度に影響を与えることなく対象物から除去される必要がある。従って、支持構造は、対象物を支持するのに十分な機械的強度を有するとともに、対象物からの除去を容易にする必要がある。
【0003】
従来の支持体材料の種類は、支持構造の除去方式により、機械力で除去可能な支持体材料、水溶性支持体材料、水膨潤支持体材料及びアルカリ可溶性支持体材料などに分けられる。ここで、機械力で除去可能な支持体材料は支持構造の除去過程において、機械力の衝撃作用によって対象物を損傷する可能性があり、それに微細孔構造における支持構造の除去が困難である。水溶性支持体材料と水膨潤支持体材料は、それぞれ水への溶解と膨潤速度が遅く、特に支持構造の体積が大きい場合、支持構造の除去速度が遅い。アルカリ可溶性支持体材料は支持構造の除去過程において、時間の延長に伴い、アルカリ可溶性支持体材料はすぐに飽和に達し、支持構造の除去速度は遅くなるので、常にアルカリ溶液を切り替える必要があり、これにより、支持構造の除去コストを高める一方で、大量のアルカリ液を使用して環境汚染を引き起こす。
【0004】
中国特許CN108136677Aは、非硬化性の水混和性ポリマー、第1の水混和性の硬化性材料、及び少なくとも1種の第2の水混和性の硬化性材料を含む支持体材料組成物を開示し、ここで、第2の水混和性の硬化性材料は、第1の水混和性材料を硬化エネルギーにさらしたときに形成される複数のポリマー鎖の間における複数の分子間の相互作用を妨げることができるように選択される。この公知の従来技術では、第2の硬化性材料を用いて第1の硬化性材料のポリマー反応を妨げ、ポリマーの架橋度を下げることで、光硬化により形成された支持構造は、アルカリ溶液中で容易かつ効率的に除去されることが可能であり、減少した溶解時間及び増大した溶解速度を伴って、支持体材料の機械的特性を損なわない。しかしながら、第2の水混和性の硬化性材料の分子構造に不飽和二重結合が含まれているため、光硬化反応中にこの二重結合も光硬化反応に関与し、光硬化生成物の機械的強度を増加させる一方で、アルカリ溶液での溶解速度に一定の影響を及ぼす。
【0005】
したがって、光硬化生成物が増大した支持強度を有するとともに、向上したアルカリ溶液への溶解速度を有する支持体材料組成物をどのように提供することは、解決する必要のある問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願に係る3Dインクジェット印刷用組成物は、特定の機能性反応促進材料を含み、光硬化本体材料と組み合わせて使用され、著しく向上した光硬化反応転化率を有し、かつその光硬化生成物が増大した支持強度を有するとともに、著しく向上したアルカリ溶液への溶解速度を有する。
【0007】
本願に係る3Dインクジェット印刷用組成物を製造する方法は、前記3Dインクジェット印刷用組成物を効率的に製造することができる。
【0008】
本願はまた、前記3Dインクジェット印刷用組成物を用いて印刷することができるインクジェット印刷ヘッドを含む3Dインクジェット印刷装置を提供する。
【0009】
本願はまた、前記3Dインクジェット印刷装置を使用して、前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて支持構造を印刷することができる3Dインクジェット印刷方法を提供する。
【0010】
本願はまた、前記3Dインクジェット印刷装置を使用して、前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて印刷される支持構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る3Dインクジェット印刷支持構造用組成物は、前記組成物の総重量に基づき、18~40重量部の光硬化本体材料、2~30重量部の機能性反応促進材料、非硬化性水混和性材料、光開始剤及び補助剤を含み、前記機能性反応促進材料の分子構造にはカルボキシル基と活性水素が含まれ、前記活性水素が過酸化ラジカルと反応することができる。
【0012】
本願の技術案において、活性水素とは、官能基に最も近い炭素原子上の水素を意味する。COOHが官能基であり、RとRが水素から選択される場合、その水素は活性水素であり、Rが官能基である場合、Rに結合する炭素原子上の水素も活性水素である。
【0013】
本願の一具体的な実施形態において、前記機能性反応促進材料は、下式(I)の構造を有する。
【化1】
【0014】
前記R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、窒素含有複素環、酸素含有複素環及びベンゼン環の少なくとも1種の基から選択され、かつRが水素である場合、RとRの少なくとも1つは水素から選択され、前記n、mはそれぞれ独立して1以上の整数から選択され、かつn≦7、m≦14とする。
【0015】
本願の技術案において、式(I)の構造を有する機能性反応促進材料は、当技術分野における従来の方法、例えばCN103524332Aに記載の方法により合成して得るか、又は購入して得ることができる。
【0016】
さらに、R、R、R及びRの少なくとも1つは水素である。
【0017】
さらに、式(I)では、n≦2、m≦2とする。
【0018】
さらに、前記アルコキシ基は、C1-3の低級アルコキシ基である。
【0019】
具体的に、表1に前記機能性反応促進材料の一部の具体的な構造を列挙したが、本願の組成物に用いられる機能性反応促進材料は表1に限定されるものではなく、本願における式(I)に記載の構造を満す機能性反応促進材料は、いずれも本願の保護範囲内にある。
【0020】
【表1】
【0021】
本願の別の具体的な実施形態において、前記機能性反応促進材料は5~10重量部である。前記機能性反応促進材料の重量がこの範囲にある場合、前記光硬化本体材料の光硬化性反応の転化率は80~95%に達する。
【0022】
さらに、前記非硬化性水混和性材料は48~78重量部であり、前記光開始剤は1~5重量部であり、前記補助剤は0.4~5重量部である。
【0023】
さらに、前記光硬化本体材料は(メタ)アクリレート類化合物及び/又は(メタ)アクリルアミド類化合物である。
【0024】
本願の一具体的にな実施形態において、前記(メタ)アクリレート類化合物は、単官能(メタ)アクリレート類化合物及び/又は多官能(メタ)アクリレート類化合物である。
【0025】
さらに、前記単官能(メタ)アクリレート類化合物は、グリシジルメタクリレート(分子量142)、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(分子量214)、2-(メタクリロキシ)エチル3-ヒドロキシブチレート(分子量216)、アクリル酸ヒドロキシエチル(分子量116)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(分子量144)、ポリエチレングリコール(200)モノアクリレート(分子量450)、ポリエチレングリコール(400)モノアクリレート(分子量912)、メトキシポリエチレングリコール(400)モノアクリレート(分子量842)及びメトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート(分子量620)の1種以上から選択される。
【0026】
さらに、前記多官能(メタ)アクリレート類化合物は、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量352)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量298)、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート(分子量336)、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(分子量508)及びポリエチレングリコール(600)ジアクリレート(分子量708)の1種以上から選択される。
【0027】
さらに、前記(メタ)アクリルアミド類化合物は、アクリロイルモルホリン(分子量141)、ジメチルアクリルアミド(分子量99)、ジエチルアクリルアミド(分子量127)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(分子量156)及びヒドロキシエチルアクリルアミド(分子量115)の1種以上から選択される。
【0028】
本願の別の具体的な実施形態において、前記組成物の総重量に基づき、前記光硬化本体材料中の分子量が300以上の単官能化合物は15~30重量部を占め、光硬化本体材料中の分子量が50より大きくかつ277未満の化合物は3~6重量部を占める。本願の技術案において、上記光硬化本体材料中の異なる分子量範囲の化合物の割合を制御することにより、前記組成物の光硬化生成物のアルカリ溶液での溶解性をより良くする。
【0029】
さらに、前記組成物の総重量に基づき、前記光硬化本体材料中の多官能(メタ)アクリレート類化合物は0~4重量部を占める。
【0030】
本願の別の具体的な実施形態において、前記光硬化本体材料は、分子量が300以上の(メタ)アクリレート類化合物、(メタ)アクリルアミド類化合物の少なくとも1種から選択されるとともに、分子量が50より大きくかつ277未満の(メタ)アクリレート類化合物、(メタ)アクリルアミド類化合物の少なくとも1種から選択される。
【0031】
さらに、前記組成物は、25℃での粘度が20~70cpsであり、表面張力が26.7~33.5mN/mであり、かつ30~70℃での粘度が8~11cpsであり、表面張力が26.7~33.5mN/mである。
【0032】
本願の一具体的な実施形態において、前記組成物は、各成分の光誘起重合反応を回避する条件で各成分を混合して得られる。
【0033】
本願の技術案において、前記非硬化性水混和性材料はポリオールである。
【0034】
前記組成物の光硬化性反応過程において、この非硬化性水混和性材料は、光硬化性反応により形成された網状構造に浸透し、この組成物が光硬化により形成した生成物の水又はアルカリ溶液での溶解速度をさらに向上させる。「水混和性材料」は、自体が液体であり、少なくとも部分的に水に可溶であるか、又は水に分散されており、さらに例えば、水と接触(例えば混合)する場合、少なくとも50%の分子が水に可溶である。
【0035】
さらに、前記ポリオールは、ポリオール3165、ポリオール3610、エチレンオキシドテトラヒドロフラン共重合体(EO/THF共重合体)、ポリプロピレングリコール、ポリグリセロール、1,2-プロパンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(400)、ポリエチレングリコール(400)及びポリエチレングリコール(200)の1つ以上から選択され得る。
【0036】
本願の実施形態では、前記光開始剤はフリーラジカル光開始剤である。
【0037】
さらに、前記フリーラジカル光開始剤は、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインα,α-ジメチルベンジルケタール、α,α-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルアセトン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-p-ヒドロキシエチルエーテルフェニルアセトン-1、2-メチル-1-[4-メチルチオフェニル]-2-モルホリニル-1-アセトン、[2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリンフェニル)ブタノン-1]、フェニルグリオキシル酸メチル、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エトキシ-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び4-p-トルエンメルカプトベンゾフェノンの1つ以上から選択され得る。
【0038】
さらに、前記補助剤は、界面活性剤及び/又は重合禁止剤から選択される。
【0039】
本願の3Dインクジェット印刷支持構造用組成物に添加される界面活性剤は、水又は水性溶液に一定の溶解性を有し、その主な作用は、組成物の表面張力を調整して正常に印刷できるようにするとともに、組成物の流動性及び基材に対する湿潤性能を向上させる。重合禁止剤の添加は、組成物中のラジカル重合反応を阻止し、組成物の保存安定性を向上させ、重合禁止剤は、保存安定性を向上させるとともに、組成物の光硬化性反応に影響を与えない製品が好ましい。
【0040】
さらに、前記界面活性剤は、ポリエーテル修飾シロキサンと非シリコンポリエーテルの少なくとも1種から選択される。前記ポリエーテル修飾シロキサンは、例えば、様々な市販のポリエーテル修飾シロキサン類界面活性剤であってもよく、例えば、BYK会社の商品名BYK345、BYK346、BYK333などの少なくとも1種であってもよいし、TEGO会社の商品名TEGO wet 270、TEGO Glide 450などの少なくとも1種であってもよいし、AFCONA会社の商品名AFCONA-3580、AFCONA-3585、AFCONA-3587、AFCONA-3588などの少なくとも1種であってもよい。前記非シリコンポリエーテルは、様々な市販の非シリコンポリエーテル界面活性剤であってもよく、例えばBYK会社の商品名BYK800Dなどの少なくとも1種であってもよいし、TEGO会社の商品名TEGO WET 500、TEGO Airex 920、TEGO Airex 921などの少なくとも1種であってもよいし、AFCONA会社の商品名AFCONA-3500、AFCONA-3590などの少なくとも1種であってもよい。
【0041】
さらに、前記重合禁止剤は、瑞昴(Rahn AG)の商品名GENORAD*16、GENORAD*18、GENORAD*20、GENORAD*22などの少なくとも1種であってもよいし、BASFの商品名Tinuvin234、Tinuvin770、Irganox245、CytecS100、Cytec130などの少なくとも1種であってもよいし、CIBAの商品名Irgastab UV10、Irgastab UV 22Dなどの少なくとも1種であってもよいし、米国アマリコ(Amarico)のMEHQなどの少なくとも1種であってもよいし、上海Boer化学試薬株式会社の510重合禁止剤などであってもよい。
【0042】
本願はまた、前記組成物における各成分の光誘起重合反応を回避する条件で以下のステップを行うことを含む前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を製造する方法を提供する。
1)前記光開始剤以外の成分を均一に混合して、第1の混合物を得、この後、前記第1の混合物に前記光開始剤を添加し、第2の混合物を得る。
2)前記第2の混合物を濾過し、濾液、即ち前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を収集する。
【0043】
さらに、前記方法のステップ1)において、第1の混合物を得る過程における各成分の添加順序は限定されない。
【0044】
さらに、前記方法のステップ2)において、濾過は、複数回濾過、特に段階的濾過で行われてもよい。具体的に、微孔性濾過膜を用いて第2の混合物を少なくとも2回濾過することができる。ここで、前回濾過で用いられる微孔性濾過膜の孔径は次回濾過で用いられる微孔性濾過膜の孔径よりも大きく、且つ、最終回濾過で用いられる微孔性濾過膜の孔径は3Dインクジェット印刷装置における印刷ヘッドのノズル孔の孔径より小さく、このようにして、支持構造を3Dインクジェット印刷する際の良好な印刷流暢さを確保し、印刷ヘッドのノズル孔を塞ぐことを回避する。
【0045】
本願の具体的な実施過程において、二次濾過で第2の混合物を処理し、そのうち、第一次の濾過では孔径が0.45~0.6μmであるガラス繊維膜が用いられ、第二次の濾過では孔径が0.2μmであるポリプロピレンフィルムが用いられる。
【0046】
さらに、収集した濾液を脱気処理してもよい。濾液を脱気処理することにより、使用過程中に前記組成物が良い流暢さを有することをさらに確保し、組成物中の気泡の干渉による印刷断線の発生、さらに支持構造の成形精度に支障を与えるようなことを回避する。
【0047】
具体的に、脱気処理の操作方式は、真空脱気、大気圧脱気又は加熱脱気であってもよく、そのうちの任意の2種又は多種の脱気方式を選択してもよい。一般的に、脱気処理の時間が5時間を超えないように制御し、本願の具体的な実施過程において、一般的に、脱気時間を0.5~3時間内に制御する。
【0048】
本願に係る3Dインクジェット印刷装置は、インクジェット印刷ヘッドを含み、前記インクジェット印刷ヘッドは、前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて印刷することができる。
【0049】
本願に係る3Dインクジェット印刷方法の印刷過程は、前記3Dインクジェット印刷装置を使用して、前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて支持構造を印刷することを含む。
【0050】
本願はまた、前記3Dインクジェット印刷装置を使用して、前記3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて印刷される支持構造を提供する。
【0051】
本願の技術案において、前記支持構造は、対象物の印刷過程中の対象物以外の任意の構造を含み、もちろん、本願に係る前記組成物は所望の対象物を印刷するために使用されてもよい。
【0052】
本願によれば、組成物に機能性反応促進材料を添加し、前記機能性反応促進材料の分子構造には、活性水素のドナーとして、酸素阻害の影響によって不活化されたラジカルを再び活性化させ、及び/又は、酸素阻害の影響によって不活化されたラジカルを変換して、活性があるアルコキシ基ラジカルと水酸基ラジカルを得ることができる活性水素が含まれており、紫外光照射で、十分な活性ラジカルは、光硬化本体材料を十分に光硬化反応させ、光硬化本体材料の光硬化転化率を向上させ、3Dインクジェット印刷過程において、同じ露光時間と露光強度で所望の支持構造の支持機械強度に至る光硬化本体材料の含有量を大幅に減少させる。本願に係る3Dインクジェット印刷支持構造用組成物は、光硬化本体材料の含有量が少なく、硬化後の組成物をアルカリ溶液に置くと、その溶解速度が大幅に向上する。本願に係る機能性反応促進材料の分子構造にはカルボキシル基が含まれており、それ自体及びその反応生成物がアルカリ溶液でアルカリと反応して光硬化後の支持体材料組成物のアルカリ溶解速度を加速させることができる。また、前記機能性反応促進材料の分子構造にはカルボキシル基が含まれており、水溶性又は親水性を有し、アルカリ溶液によりよく溶解することができる。
【発明の効果】
【0053】
本願の技術案は以下のような利点がある。
1、本願に係る組成物は、著しく向上した光硬化反応転化率を有し、それにその光硬化生成物は、増大した支持強度を有するとともに、著しく向上したアルカリ溶液への溶解速度を有する。
2、本願に係る支持構造は支持強度が高く、標準GB/T 14484-2008に従って印刷される支持構造試料は、その支持強度が少なくとも0.1MPaであり、対象物の印刷を効果的に支持することができる。
3、本願に係る支持構造は、アルカリ溶液で急速に溶解でき、対象物の後処理効率を向上し、例えば20mm×20mm×20mmの支持構造試料は、アルカリ溶液での溶解時間が90min未満である。
4、本願に係る組成物は、同じ硬化生成物(即ち印刷される支持構造)の支持強度に達することを前提として、前記組成物における光硬化本体材料の含有量が少なく、光硬化性反応速率を向上させ、放射強度や放射時間の長さを低減し、エネルギーを節約する。
5、本願に係る組成物は、室温25℃での粘度が20~70cpsであり、表面張力が26.7~33.5mN/mであり、かつ、動作温度(30~70℃)での粘度が8~11cpsであり、表面張力が26.7~33.5mN/mである。本願に係る組成物は、高温例えば70℃で通常のインクジェット印刷を行うことができるだけでなく、より低い動作温度例えば30℃でも通常のインクジェット印刷を行うことができ、印刷ヘッドの寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
<実施例1>
本実施例は、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供し、下記の表2のような組成を持っている。
【0055】
【表2】
【0056】
表2の機能性反応促進材料は、TCI(上海)化成工業株式会社又はSigma-Aldrich(上海)貿易株式会社から購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は、TCI(上海)化成工業株式会社から購入した。
【0057】
この3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、以下の通りである。
(1)光開始剤以外の成分をガラス容器に入れ、撹拌器で撹拌し、均一に混合した第1の混合物を得る。その後、第1の混合物に光開始剤を添加し、光開始剤が完全に溶解するまで攪拌し続け、第2の混合物を得る。
(2)0.6μmのガラス繊維膜で第2の混合物を一次濾過し、さらに0.2μmのポリプロピレンフィルム(PP膜)で二次濾過し、濾液を得る。
(3)0.1MPa真空下で、真空吸引濾過を1時間行い、濾液中の気泡を除去した後、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を得る。
【0058】
<実施例2>
本実施例は、下記の表3のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0059】
【表3】
【0060】
表3の機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社(Shanghai Ziyu Material Technology CO., LTD.)又はTOKYO CHEMICAL INDUSTRY CO., LTD.(東京化学工業株式会社)から購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は上海梓域材料科技株式会社から購入した。
【0061】
本実施例において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、製造方法のステップ(3)では、加熱脱気の方式を利用してステップ(2)で得られた濾液を40℃まで加熱して脱気処理し、脱気時間が50minであることだけが違っている。
【0062】
<実施例3>
本実施例は、下記の表4のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0063】
【表4】
【0064】
表4の機能性反応促進材料は、南京化学試薬株式会社又は西亜(Xiya)化学科技(山東)株式会社から購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は南京化学試薬株式会社から購入した。
【0065】
本実施例において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、製造方法のステップ(3)での真空脱気の具体的な時間を2時間に調整することだけが違っている。
【0066】
<実施例4>
本実施例は、下記の表5のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0067】
【表5】
【0068】
表5の機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社又はTOKYO CHEMICAL INDUSTRY CO., LTD.(東京化学工業株式会社)から購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社から購入した。
【0069】
本実施例において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、製造方法のステップ(3)で大気圧静置脱気を利用して脱気処理し、静置時間が3hであることだけが違っている。
【0070】
<実施例5>
本実施例は、下記の表6のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0071】
【表6】
【0072】
表6の機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社又はTOKYO CHEMICAL INDUSTRY CO., LTD.(東京化学工業株式会社)から購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社から購入した。
【0073】
本実施例において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、製造方法のステップ(3)では加熱脱気の方式を利用して、ステップ(2)で得られた濾液を50℃程度まで加熱して脱気処理し、脱気時間が30minであることだけが違っている。
【0074】
<実施例6>
本実施例は、下記の表7のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0075】
【表7】
【0076】
表7の機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社又はTCI Europeから購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は上海梓域材料科技株式会社から購入した。
【0077】
本実施例において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換することだけが違っている。
【0078】
<実施例7>
本実施例は、下記の表8のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0079】
【表8】
【0080】
表8の機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社又はSimagchem Corporationから購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社から購入した。
【0081】
本実施例において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換することだけが違っている。
【0082】
<実施例8>
本実施例は、下記の表9のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0083】
【表9】
【0084】
表9の機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社又はTOKYO CHEMICAL INDUSTRY CO., LTD.(東京化学工業株式会社)から購入できる。本実施例における機能性反応促進材料は、上海梓域材料科技株式会社から購入した。
【0085】
本実施例において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換することだけが違っている。
【0086】
<比較例1>
本比較例は、下記の表10のような組成を持っている3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を提供する。
【0087】
【表10】
【0088】
比較例1において、3Dインクジェット印刷支持構造用組成物の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換することだけが違っている。
【0089】
<実施例9>
本実施例は、前記いずれの実施例に記載の3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて支持構造を印刷できるインクジェット印刷ヘッドを含む3Dインクジェット印刷装置を提供する。さらに、前記支持構造上に対象物を印刷することもできる。
【0090】
<実施例10>
本実施例は、実施例9に記載の3Dインクジェット印刷装置を使用して、実施例1~8のいずれかに記載の3Dインクジェット印刷支持構造用組成物を用いて支持構造を印刷できる印刷方法を提供する。
【0091】
上記の各実施例及び比較例における3Dインクジェット印刷支持構造用組成物に対して性能試験を行い、試験方法は以下の通りであり、試験結果は表11に示される。
1、粘度
DV-Iデジタルディスプレイ粘度計を用いて前記組成物の粘度をテストする。
2、表面張力
BZY-1全自動表面張力計を用いて前記組成物の表面張力をテストする。
3、支持強度
本願における前記組成物を賽納(Sailner)J5013D光硬化インクジェットプリンタに応用し、GB/T 14484-2008『プラスチック荷重強度の測定』に要求するサイズ規格の立方体試料(即ち、組成物硬化後の生成物試料又は支持構造試料)を印刷し、LLOYD張力計番号LR5K PLUSによる圧縮試験でその支持強度を決定し、前記試験は標準圧縮組合せパラメータで操作され支持強度は上記立方体に対してMPaで表される。
4、溶解速度
前記組成物を賽納J501 3D光硬化インクジェットプリンタに応用し、ノズル温度を30~70℃に設定し、長、幅、高さが20mm×20mm×20mmである立方体を印刷し、印刷完了後、立方体(組成物硬化後の生成物試料又は支持構造試料)を800mLの2%重量比率の水酸化ナトリウム水溶液に浸し、立方体、例えば支持構造試料が完全に溶解する時間を記録する。
5、光硬化反応転化率
赤外分光分析技術を用いて、前記組成物硬化前後のC=C二重結合の1648~1589cm-1での特徴吸収ピーク面積(硬化前のA1、硬化後のA2)を測定し、式C%=(A1-A2)/A1*100%により、光硬化反応転化率を測定する。
【0092】
【表11】
【0093】
以上から分かるように、機能性反応促進材料を添加していない比較例に対して、実施例1~8における組成物は、著しく向上した光硬化反応転化率を有し、その光硬化生成物(即ち、支持構造)が、増大した支持強度を有するとともに、著しく向上したアルカリ溶液への溶解速度を有し、印刷した20mm×20mm×20mmの支持構造試料は、アルカリ溶液での溶解時間が90min未満である。
【0094】
同じ硬化生成物(即ち、印刷された支持構造)の支持強度を得ることを前提として、上記組成物における光硬化本体材料の含有量が少なく、光硬化性反応速度が著しく向上した。
【0095】
本願に係る組成物は、高温例えば70℃で通常のインクジェット印刷を行うことができるだけでなく、より低い動作温度例えば30℃でも通常のインクジェット印刷を行うことができ、印刷ヘッドの寿命を延ばすことができる。
【0096】
本願は、2019年12月20日に中国特許庁に提出された、出願番号が201911325181.4で、出願名称が「3Dインクジェット印刷支持構造用組成物及びその製造方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全部内容は、援用により本願に組み込まれる。