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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】回転式ごみ焼却炉システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20230704BHJP
   F23G 5/20 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F23G5/50 N
F23G5/50 M
F23G5/20 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023062017
(22)【出願日】2023-04-06
【審査請求日】2023-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲富 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 麻希子
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-20123(JP,A)
【文献】特開平7-233927(JP,A)
【文献】特開2000-291933(JP,A)
【文献】特開2009-47318(JP,A)
【文献】特開平1-302018(JP,A)
【文献】特開昭62-52315(JP,A)
【文献】特開平4-254101(JP,A)
【文献】特開平10-267239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23G 5/20
F23G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥段と燃焼段とを回転式ストーカ炉で形成し、後燃焼段を順送式ストーカ炉で形成し、廃棄物を焼却する回転式ごみ焼却炉と、
前記順送式ストーカ炉の上流の温度を測定する温度測定装置と、
前記回転式ストーカ炉を回転させる回転装置と、
前記温度測定装置の測定した温度に基づいて、前記回転装置の回転速度を制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記測定した温度の移動平均値に第一閾値を加算した値より前記測定した温度の瞬時値が大きい場合、前記回転式ストーカ炉を現在の回転速度より遅く回転する制御を実施する回転式ごみ焼却炉システム。
【請求項2】
前記廃棄物を前記回転式ストーカ炉の入口に投入する投入装置と、
前記入口の近傍の温度である入口温度を測定する入口温度測定装置と、
前記回転式ストーカ炉に空気を供給する空気供給装置と
をさらに有し、
前記制御装置は、
前記入口温度が所期の燃焼状態を示す温度域より大きく、且つ、前記瞬時値が前記加算した値より大きい場合、前記投入装置が投入する廃棄物の量を現在の投入量より減少させ、且つ、前記空気供給装置が供給する空気の量を現在の供給量より減少させ、
前記入口温度が前記所期の燃焼状態を示す温度域より小さく、且つ、前記瞬時値が前記加算した値より大きい場合、前記廃棄物の量を前記現在の投入量より減少させ、且つ、前記空気の量を前記現在の供給量より増加させる制御を実施する請求項1に記載の回転式ごみ焼却炉システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記入口温度が前記所期の燃焼状態を示す温度域より大きく、且つ、前記瞬時値が前記加算した値より小さい場合、前記投入装置が投入する廃棄物の量を現在の投入量より減少させ、前記回転速度は、前記入口温度が上昇するほど前記回転速度が増加する第一線形式に基づいて設定し、前記空気の量は、前記入口温度が上昇するほど前記空気の量が増加する第二線形式に基づいて供給し、
前記入口温度が前記所期の燃焼状態を示す温度域より小さく、且つ、前記瞬時値が前記加算した値より小さい場合、前記投入装置が投入する廃棄物の量を現在の投入量より減少させ、前記回転速度は、前記入口温度が上昇するほど前記回転速度が増加する第三線形式に基づいて設定し、前記空気の量は、前記入口温度が上昇するほど前記空気の量が増加する第四線形式に基づいて供給する制御を実施する請求項2に記載の回転式ごみ焼却炉システム。
【請求項4】
前記回転式ストーカ炉の外面温度を測定する外面温度測定装置をさらに有し、
前記制御装置は、
前記入口温度が前記所期の燃焼状態を示す温度域内であり、且つ、前記瞬時値が前記加算した値より小さい場合であって、前記外面温度測定装置が測定した前記外面温度の平均値が第二閾値より大きい場合、前記回転速度は、前記入口温度が増加する方向に前記第一線形式を平行移動して算出した値に設定し、前記空気の量は、前記入口温度が増加する方向に前記第二線形式を平行移動して算出した値を供給し、
前記入口温度が前記所期の燃焼状態を示す温度域内であり、且つ、前記瞬時値が前記加算した値より小さい場合であって、前記外面温度測定装置が測定した前記外面温度の平均値が第三閾値より小さい場合、前記回転速度は、前記入口温度が減少する方向に前記第三線形式を平行移動して算出した値に設定し、前記空気の量は、前記入口温度が減少する方向に前記第四線形式を平行移動して算出した値を供給する制御を実施する請求項3に記載の回転式ごみ焼却炉システム。
【請求項5】
前記回転式ストーカ炉及び前記順送式ストーカ炉で発生した排ガスを除塵するバグフィルタと、
前記バグフィルタで除塵された排ガスの一部を前記回転式ストーカ炉に供給する誘引送風機とをさらに有し、
前記制御装置は、前記空気の量と前記排ガスの一部の総量が一定量となるよう前記誘引送風機を制御する請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の回転式ごみ焼却炉システム。
【請求項6】
前記回転式ストーカ炉内部の燃焼状態を撮影し、前記撮影した情報を前記制御装置へ送信する火焔透過型カメラをさらに有し、
前記制御装置が前記制御を実施した後、前記回転速度、前記投入量、または、前記空気の量が、前記情報に基づき、前記制御装置または作業員により修正される請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の回転式ごみ焼却炉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥段及び燃焼段としての回転式ストーカ炉および後燃焼段としての順送式ストーカ炉を備えた廃棄物(産業廃棄物等のごみ)を焼却処理する回転式ごみ焼却炉を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転式ごみ焼却炉は、乾燥段と燃焼段とを回転式ストーカ炉(一般的には、ロータリーキルン炉)で、また、後燃焼段を順送式ストーカ炉で構成する焼却炉である。回転式ストーカ炉は、例えば、熱量の高い廃プラスチックや熱量の低い汚泥などが混在し、ごみの熱量のばらつきが広範な産業廃棄物を適切に焼却処理できる。
【0003】
また、後燃焼段で燃え残りがないよう制御するために、例えば、回転式ストーカ炉の内部をカメラで監視する技術(例えば、特許文献1参照)や、回転式ストーカ炉の外側から温度を測定する技術(例えば、特許文献2参照)、後燃焼段に温度計を設置する技術(例えば特許文献3参照)がある。回転式ストーカ炉や後燃焼段を監視することで、回転式ストーカ炉のごみ送り速度(回転速度)、空気供給量、順送式ストーカ炉のごみ送り速度などを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-169908号公報
【文献】特開平2-310834号公報
【文献】特開2000-291933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように回転式ストーカ炉の内部を撮影するカメラ等を設置しても、回転式ストーカ炉は円筒形であるため、内部の燃焼状態を奥の方まで把握することは困難である。また、特許文献2のように回転式ストーカ炉の外側の温度を測定しても、内部温度が外側に熱伝導するのに遅延が生じるため、回転式ストーカ炉の燃焼状態を適切かつ迅速に制御することは困難である。
【0006】
さらに、特許文献3のように順送式ストーカ炉の温度を測定して、回転式や順送式の炉のごみ送り速度を変化させても、例えば、熱量の高いプラスチックと熱量の低い汚泥とでは、燃焼段で適切に燃焼した場合であっても後燃焼段に落下する際の温度がそれぞれ異なるため、やはり回転式ストーカ炉の燃焼状態を適切に制御することは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、後燃焼段の温度を測定する構成でありながら、回転式ストーカ炉の燃焼状態を適切に制御することができる回転式ごみ焼却炉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回転式ごみ焼却炉システムは、乾燥段と燃焼段とを回転式ストーカ炉で形成し、後燃焼段を順送式ストーカ炉で形成し、廃棄物を焼却する回転式ごみ焼却炉と、前記順送式ストーカ炉の上流の温度を測定する温度測定装置と、前記回転式ストーカ炉を回転させる回転装置と、前記温度測定装置の測定した温度に基づいて、前記回転装置の回転速度を制御する制御装置とを有する。
そして、前記制御装置は、前記測定した温度の移動平均値に第一閾値を加算した値より前記測定した温度の瞬時値が大きい場合、前記回転式ストーカ炉を現在の回転速度より遅く回転する制御を実施する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転式ごみ焼却炉システムが備える回転式ごみ焼却炉において、後燃焼段である順送式ストーカ炉の温度を測定する構成でありながら、廃棄物の熱量の高低によらず、乾燥段と燃焼段である回転式ストーカ炉の燃焼状態を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る回転式ごみ焼却炉システムの構成を示す図である。
図2】後燃焼段である順送式ストーカ炉の上流側の温度の測定値とその移動平均値との関係を示すイメージ図である。
図3】回転式ごみ焼却炉システム(第1~第3変形例を含む)における制御情報を例示する表である。
図4図3に示した制御情報に関して入口温度と回転速度および空気量との関係を示す図である。
図5】第1変形例の回転式ごみ焼却炉システムの構成を示す図である。
図6】第2変形例の回転式ごみ焼却炉システムの構成を示す図である。
図7】第3変形例の回転式ごみ焼却炉システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1乃至図7を参照して、本発明の回転式ごみ焼却炉システムについて説明する。以下の実施形態と変形例(第1変形例、第2変形例、第3変形例)に示す構成等はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態及び変形例で示す各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、当該各構成は、本発明の必須の構成要件を除き、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[回転式ごみ焼却炉システムの構成]
図1は、実施形態に係る回転式ごみ焼却炉システム1(以下、「焼却炉システム1」という)の構成を示す図である。
焼却炉システム1は、乾燥段と燃焼段とを回転式ストーカ炉2で形成し、後燃焼段を順送式ストーカ炉3で形成し、廃棄物を焼却する回転式ごみ焼却炉4と、順送式ストーカ炉3の上流の温度を測定する温度測定装置5と、回転式ストーカ炉2を回転させる回転装置6と、温度測定装置5の測定した温度に基づいて、回転装置6の回転速度を制御する制御装置7とを、少なくとも備える。
廃棄物(ごみ)は、例えば、産業廃棄物であってよい。熱量の高い廃棄物(例えば、プラスチック)や、熱量の低い廃棄物(例えば、汚泥)が、異なるタイミングで連続的に投入される場合であっても、後述のように、焼却炉システム1は、適切に燃焼制御することができる。
【0013】
焼却炉システム1は、上述の構成を少なくとも備えるが、図1に示す他の構成を備えてもよい。そこで、まず、図1に示す構成を順次説明してから、廃棄物の燃焼制御について説明する。
【0014】
焼却炉システム1は、一般的に、廃棄物清掃工場などの廃棄物処理プラントに設置される。図1のごみピット8は、廃棄物処理プラントに運搬された廃棄物(例えば、産業廃棄物)を貯留する。
ごみクレーン9は、ごみピット8に貯留された廃棄物の一部を、所定量だけ、バケットなどで運搬し、ごみホッパ10に投入する装置である。
ごみホッパ10は、一般的に、口径の大きい入口と口径の小さい出口を備えた漏斗状の形状をしており、ごみクレーン9が運搬した廃棄物は、当該入口に投入される。
ごみ投入装置11は、ごみホッパ10の出口と回転式ストーカ炉2の入口とを接続するシュートと、当該シュート内を滑り落ちる廃棄物の流れを塞き止める開閉可能な扉11aとを備える装置である。後述するように、扉11aの開閉は、制御装置7により制御される。
【0015】
ごみ投入装置11から回転式ごみ焼却炉4の回転式ストーカ炉2に投入された廃棄物は、回転装置6により回転する回転式ストーカ炉2内に、空気供給装置12から燃焼用の空気が供給されて、乾燥および燃焼がなされる。回転式ストーカ炉2は、例えば、ロータリーキルンである。回転式ストーカ炉2の入口近傍の温度(入口温度)は、例えば回転式ストーカ炉2の外面に設置した熱電対などの入口温度測定装置13で測定される。
回転式ストーカ炉2の出口の下方に順送式ストーカ炉3が配置され、回転式ストーカ炉2と順送式ストーカ炉3とは段差を経て連続的に接続される。順送式ストーカ炉3は、複数の固定火格子と複数の移動火格子とを備えるストーカ炉である。移動火格子が廃棄物の搬送方向の前後に周期的に駆動されることで、これら火格子上の廃棄物は、搬送方向に向かって移動される。順送式ストーカ炉3には、火格子の下方から、空気供給装置12により燃焼用の空気が供給される。
温度測定装置5は、順送式ストーカ炉3の上流の温度、すなわち、上記段差直下の順送式ストーカ炉3の周辺の温度を測定する装置であり、例えば、赤外線温度測定装置である。
なお、入口温度測定装置13の測定値と温度測定装置5の測定値は、無線または有線の通信ネットワーク14により、連続的または定期的に制御装置7に送信される。また、後述するが、これらの測定結果に基づき、制御装置7は、無線または有線の通信ネットワーク14を介して、回転装置6の回転数、空気供給装置12の空気供給量、ごみ投入装置11の扉11aの開閉頻度を制御する。
【0016】
順送式ストーカ炉3の搬送方向の最後部には、順送式ストーカ炉3で搬送された焼却残渣(主灰)を直下へ落下させる灰シュートが接続され、当該灰シュートの下方には水封コンベヤ15が接続される。
水封コンベヤ15は、その内部に貯留する水中に灰シュートの出口が配置される構成であるため、水封とともに、焼却残渣が貯留された水で冷却される。当該冷却された焼却残渣は、水封コンベヤ15から排出されて、灰保管施設等に搬送される。
【0017】
順送式ストーカ炉3の上方には再燃焼室16が配置される。再燃焼室16では、回転式ストーカ炉2と順送式ストーカ炉3において、廃棄物の燃焼により生じた排ガス中のダイオキシンや窒素化合物が、バーナー17によって熱分解される。
再燃焼室16の下流には廃熱ボイラ18が設置される。廃熱ボイラ18は、再燃焼室16を通過した排ガスを熱源として熱交換により蒸気を生成する。廃熱ボイラ18によって生成された蒸気は、蒸気タービン19の回転に利用され、当該回転によって発電機20が発電する。当該発電された電気は、廃棄物処理プラント内の各施設や各装置の電力として利用したり、電力会社へ売電することができる。
【0018】
廃熱ボイラ18の下流には減温塔21が配置される。減温塔21は、廃熱ボイラ18を通過した排ガスに水噴霧等して排ガスを冷却し減温する。
減温塔21の下流にはバグフィルタ22が配置される。減温塔21とバグフィルタ22の間の排ガス流路で消石灰や活性炭等が噴霧された後、排ガスはバグフィルタ22で除塵される。
バグフィルタ22によって煤塵が取り除かれた排ガスは、誘引送風機23によって煙突24に送り込まれ、煙突24から大気に放散される。
なお、廃熱ボイラ18、減温塔21、およびバグフィルタ22の下方に堆積した煤塵(飛灰)は排出されて、灰保管施設等に搬送される。
【0019】
[制御装置による制御]
では、図2および図3を用いて、制御装置7による焼却炉システム1の制御について説明する。制御装置7は、以下に説明する制御のみならず、焼却炉システム1が備える種々の装置の制御を行なうが、ここでは本発明に関連する装置の制御に特化して説明する。
なお、先述のように、制御装置7は、有線または無線の通信ネットワーク14を介して、ごみ投入装置11、回転装置6、空気供給装置12、入口温度測定装置13および温度測定装置5と接続される。
【0020】
後述するように、制御装置7は、温度測定装置5が測定した温度の移動平均値に第一閾値を加算した値より当該測定した温度の瞬時値が大きい場合、回転式ストーカ炉2を現在の回転速度より遅く回転する制御を実施する。
この理由を、図2を用いて説明し、その後、より複雑な制御について、図3及び図4を用いて説明する。
【0021】
図2は、順送式ストーカ炉3において上流側の火格子近傍の温度(以下、「順送式ストーカ炉3の上流の温度」という)、言い換えれば、回転式ストーカ炉2から順送式ストーカ炉3上の火格子に落下した廃棄物の温度を温度測定装置5(赤外線温度測定装置)が測定した測定値と、当該温度の移動平均値との関係を示すイメージ図である。図2の縦軸は温度(T)、横軸は経過時間(t)である。また、図2において、当該測定値(瞬時値)を実線で示し、当該移動平均値を破線で示す。
温度測定装置5(赤外線温度測定装置)が測定した温度の測定値(瞬時値)は連続的に所定のタイミング(例えば、1秒間隔)で通信ネットワーク14を介して制御装置7に送信され、制御装置は受信した当該測定値を用いて当該受信した時点の温度の移動平均値(例えば、60分間の上記測定値(所定時間範囲の時系列データ)の移動平均値)を演算する。
廃棄物(ごみ)が産業廃棄物の場合、回転式ストーカ炉2に、例えば、ある時期には熱量の高いごみが継続的に投入され、また、ある時期には熱量の低いごみが継続的に投入される場合がある。また、同時期であっても、熱量の高いごみと熱量の低いごみとが頻繁に入れ替わって投入される場合もありうる。しかし、ここでは、単純モデル化して説明するため、図2においては、まず熱量の低いごみが継続して回転式ストーカ炉2に投入されて焼却され、その後、熱量の高いごみが継続して回転式ストーカ炉2に投入されて焼却される例を示す。
【0022】
一般的に、熱量の高いごみが回転式ストーカ炉2で適切に燃焼されて排出された場合の順送式ストーカ炉3の上流の温度と、熱量の低いごみが回転式ストーカ炉2で適切に燃焼されて排出された場合の順送式ストーカ炉3の上流の温度とを比較すると、熱量の高いごみの方の温度が高い傾向となる。言い換えれば、熱量の高いごみが回転式ストーカ炉2で適切に燃焼された場合の上記上流の温度と、熱量の低いごみが回転式ストーカ炉2で適切に燃焼された場合の上記上流の温度は、異なる温度である。
したがって、回転式ストーカ炉2に投入されるごみの熱量の高低を把握していない状態で、順送式ストーカ炉3の上流の温度のみを回転式ストーカ炉2の制御の基準としても、熱量の高いごみと熱量の低いごみとが入れ替わって投入される焼却炉システム1では、回転式ストーカ炉2におけるごみの燃焼状態を、熱量の高低によらずいずれのごみにおいても適切に制御することが難しい。
【0023】
そこで、焼却炉システム1では、制御装置7は、上記上流の温度のみならず、上記上流の温度とその移動平均値の2つを少なくとも用いて、回転式ストーカ炉2の制御を行う。
具体的には、制御装置7は、上記所定のタイミングで受信した温度測定装置5の測定値(瞬時値)と、当該受信した時点の温度の移動平均値(制御装置7が当該受信した時点の測定値(瞬時値)を用いて演算した移動平均値であり、例えば、当該測定値(瞬時値)を含んでこれより前に受信した複数の測定値との60分間の平均値)とを比較し、以下のように回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を変更する。なお、以下に述べる所定温度T1(第一閾値)は、ここでは一例として100℃として説明するが、焼却炉システム1の仕様や焼却する廃棄物の種類に応じて、適宜変更可能である。
【0024】
まず、(測定値)-(移動平均値)≧ 所定温度T1(第一閾値)の場合、すなわち、ある時点で制御装置7が受信した測定値(瞬時値)が移動平均値より所定温度T1(第一閾値)以上の場合、回転式ストーカ炉2から順送式ストーカ炉3に、燃焼しきっておらず燃焼中のごみが落下したと考えられる。すなわち、当該ごみは、回転式ストーカ炉2で適切に燃焼されて排出されたものではないといえる。
そこで、制御装置7は、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を現時点の回転速度より遅くする。これにより、回転式ストーカ炉2の内部でごみが主に燃焼している位置(主燃焼部位)を回転式ストーカ炉2内の上流側にずらし、回転式ストーカ炉2内におけるごみの燃焼時間を長くする。
この制御により、回転式ストーカ炉2で燃焼中のごみであって且つ上記落下したごみと熱量が同程度と考えられるごみを、適切に燃焼させることができる。
なお、説明の簡便のため、以下では、「(測定値)-(移動平均値)」の温度差を、「後燃焼段温度差」と定義して、図3の説明時に使用する。
【0025】
図2に示す例においては、熱量が高いごみを回転式ストーカ炉2で燃焼している場合に、矢印P1の時点で測定値(瞬時値)が移動平均値より所定温度T1(第一閾値)以上となっている。また、熱量が低いごみを回転式ストーカ炉2で燃焼している場合に、矢印P2の時点で測定値(瞬時値)が移動平均値より所定温度T1(第一閾値)以上となっている。
いずれの時点においても、焼却炉システム1では、制御装置7が回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度をその時点の回転速度より遅くするので、回転式ストーカ炉2のごみを適切に燃焼させることができる。
【0026】
では、以上の制御を基本にし、さらに複雑な制御について、図3及び図4を用いて説明する。図3及び図4では、制御装置7は、入口温度測定装置13が測定した回転式ストーカ炉2の入口温度TEも加味して回転式ストーカ炉2の制御を行う。
具体的には、制御装置7は、入口温度TEと上述の後燃焼段温度差の少なくとも2つの情報に基づき、ごみ投入装置11を制御してごみ供給量を調整し、回転装置6を制御して回転式ストーカ炉2の回転速度を調整し、空気供給装置12を制御して回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を調整する。
なお、図3に記載の「EGRガス吹込量」については、後述の変形例(第1変形例、第2変形例、第3変形例)の説明にて使用する項目であるので、図1の焼却炉システム1の説明の時点では、説明しない。
【0027】
図3は、制御装置7が制御の判断基準とする入口温度TEと後燃焼段温度差の2つの温度情報の7つのパターン(パターン1乃至パターン7)と、それに対応する制御内容(ごみ供給量、回転速度、空気量)を表にまとめたものである。
本来、8つのパターンがあり得るが、ここでは、回転式ストーカ炉2の耐熱温度などの仕様を考慮し、回転式ストーカ炉2が故障せずに安定稼働できる温度内で制御する。そのため、後述のパターン1における制御装置7の制御により、入口温度TEが、後述のHHを超えることはない。従って、入口温度TEがHH<TEの場合を、図3の表に含めていない。このため、8つのパターンではなく、7つのパターンとなっている。
図4では、縦軸が入口温度TEであり、横軸は回転速度または空気量である。図4は、後述の第1A式と第1B式が線形式となり、また、第2A式と第2B式が線形式となることを示し、さらにこれらの解の範囲を示す図である。
【0028】
なお、以下の説明においては、図3図4を適宜使用するが、それらで使用する各変数であって、焼却炉システム1の仕様に応じて変わりうる変数は、当該仕様に応じて、例えば、次のような定数、すなわち設定値を想定している。ただし、あくまで一例であり、回転式ストーカ炉2の仕様に応じて、これらと異なる値を適宜設定可能である。ただし、Rα>Rβ、Vα>Vβの関係にある。
ここでは、入口温度TEに関し、HH=1000℃、H=800℃、L=400℃、LL=300℃とする。回転式ストーカ炉2の回転速度に関し、図3の「通常」の回転速度Rn=0.25rpm、図3の「減少」の回転速度Rd=0.1rpm、図3にはないが「増加」の回転速度Ri=0.5rpmとする。回転式ストーカ炉2に供給する空気量に関し、図3の「通常」の空気量Vn=10000ノルマル立米/h、図3の「減少」の空気量Vd=5000ノルマル立米/h、図3の「増加」の空気量Vi=15000ノルマル立米/hとする。また、Rα=0.1rpm、Rβ=0.05rpm、Vα=3000ノルマル立米/h、Vβ=1000ノルマル立米/h、として話を進める。
【0029】
図3図4に示す回転速度RA、RB、また、空気量VA、VBは、それぞれ次の式で算出される。
RA=((TE-C1A)×((Ri-Rα)-(Rd+Rα)))/(HH-H)
・・・(第1A式)
RB=((TE-C1B)×((Ri-Rβ)-(Rd+Rβ)))/(LL-L)
・・・(第1B式)
VA=((TE-C2A)×((Vi-Vα)-(Vd+Vα)))/(HH-H)
・・・(第2A式)
VB=((TE-C2B)×((Vi-Vβ)-(Vd+Vβ)))/(L-LL)
・・・(第2B式)
これらの式において、C1A、C2A、C1BおよびC2Bは、任意に設定される定数である。ここでは、上記のように、Rα=0.1rpm、Rβ=0.05rpm、Vα=3000ノルマル立米/h、Vβ=1000ノルマル立米/hと設定しているので、C1A =600、C2A=400、C1B=250、C2B=255となる。
従って、第1A式、第1B式、第2A式、第2B式の各々は、以下に示すような一次関数の式、すなわち線形式で表される。
RA=0.001×(TE-600) ・・・(第1A式、第1線形式)
VA=20×(TE-400) ・・・(第2A式、第2線形式)
RB=0.003×(TE-250) ・・・(第1B式、第3線形式)
VB=80×(TE-225) ・・・(第2B式、第4線形式)
【0030】
そして、図3に示すごみ供給量の「通常」は、例えば、6分経過毎に400kgのごみを1回(1回/6分)、回転式ストーカ炉2に投入することを意味する。また、ごみ供給量の「減少」は、例えば、12分経過毎に400kgのごみを1回(1回/12分)、回転式ストーカ炉2に投入することを意味する。さらに、ごみ供給量の「直ちに投入(その後減少)」は、例えば、400kgのごみを即時に1回投入し、その後、先述の「減少」と同一のタイミングで400kgのごみを回転式ストーカ炉2に投入することを意味する。
なお、ここでは、ごみ供給量は、一定量(400kg)のごみを投入する時間間隔の長短で上記「通常」や「減少」を制御装置7が調整するが、投入するごみの量を変化可能なごみ投入装置を採用して当該調整を行ってもよい。
【0031】
では、以下に先述の7つの各パターンにつき、順次、制御装置7の制御を説明する。
図3のパターン1について>
パターン1では、制御装置7が受信した入口温度TEが、H(例えば800℃)<TE≦HH(例えば1000℃)であり、制御装置7が演算した後燃焼段温度差が第一閾値T1以上の値であるので、乾燥段および燃焼段である回転式ストーカ炉2に熱量の高いごみが多量に供給され、後燃焼段である順送式ストーカ炉3の上流に燃焼中のごみが落下したものと推測される。
そこで、制御装置7は、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を「減少」にすべく、現時点の回転速度からRd(例えば、0.1rpm)に減少させる。これにより、回転式ストーカ炉2の内部でごみが主に燃焼している位置(主燃焼部位)は、回転式ストーカ炉2内の上流側にずれることになる。
また、制御装置7は、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「減少」させるべく、ごみ投入装置11を制御して、12分経過毎に400kgのごみを1回(1回/12分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。
また、熱量の高いごみは空気量が少なくとも燃えるので、NOxやダイオキシンの低減ために、制御装置7は、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を「減少」にすべく、現時点の空気量からVd(例えば5000ノルマル立米/h)に減少させる。
【0032】
図3のパターン2について>
パターン2では、制御装置7が受信した入口温度TEが、H(例えば800℃)<TE≦HH(例えば1000℃)であり、制御装置7が演算した後燃焼段温度差が第一閾値T1未満の値であるので、熱量の高いごみが多量に供給される一方、回転式ストーカ炉2内の上流に主燃焼部位があるものと推測される。
そこで、制御装置7は、第1A式を演算し、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を、RAに変更する。例えば、現在の入口温度TEが850℃の場合、第1A式により回転速度RAは、0.25rpmとなる。すなわち、図4に第1A式を右肩上がりの直線で示すように、入口温度TEに一対一で対応する回転速度RAに変更する。
また、制御装置7は、第2A式を演算し、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を、VAに変更する。例えば、現在の入口温度TEが850℃の場合、第2A式により空気量は、9000ノルマル立米/hとなる。すなわち、図4に第2A式を右肩上がりの直線で示すように、入口温度TEに一対一で対応する空気量VAに変更する。
さらに、制御装置7は、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「減少」させるべく、ごみ投入装置11を制御して、12分経過毎に400kgのごみを1回(1回/12分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。
【0033】
図3のパターン3について>
パターン3では、制御装置7が受信した入口温度TEが、L(例えば400℃)<TE≦H(例えば800℃)であり、制御装置7が演算した後燃焼段温度差が第一閾値T1以上の値であるので、後燃焼段である順送式ストーカ炉3の上流に燃焼中のごみが落下したものと推測される。
そこで、制御装置7は、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を「減少」にすべく、現時点の回転速度からRd(例えば、0.1rpm)に減少させる。これにより、回転式ストーカ炉2の内部でごみが主に燃焼している位置(主燃焼部位)は、回転式ストーカ炉2内の上流側にずれることになる。
ここで、L(例えば400℃)<TE≦H(例えば800℃)は、回転式ストーカ炉2の設計で予定された所期の燃焼状態を、本来、示すはずの温度域である。
そこで、制御装置7は、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「通常」にすべく、ごみ投入装置11を制御して、6分経過毎に400kgのごみを1回(1回/6分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。
また、制御装置7は、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を「通常」のVn(例えば10000ノルマル立米/h)に調整する。
【0034】
図3のパターン4について>
パターン4では、制御装置7が受信した入口温度TEが、L(例えば400℃)<TE≦H(例えば800℃)であり、制御装置7が演算した後燃焼段温度差が第一閾値T1未満の値であるので、上記所期の燃焼状態、すなわち、回転式ストーカ炉2でごみの適切な燃焼が良好に行われている状態であると推測される。
そこで、制御装置7は、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を「通常」のRn(例えば0.25rpm)に調整する。
また、制御装置7は、ごみ投入装置11を制御して、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「通常」にすべく、6分経過毎に400kgのごみを1回(1回/6分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。
さらに、制御装置7は、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を「通常」のVn(例えば10000ノルマル立米/h)に調整する。
【0035】
図3のパターン5について>
パターン5では、制御装置7が受信した入口温度TEが、LL(例えば300℃)<TE≦L(例えば400℃)であり、制御装置7が演算した後燃焼段温度差が第一閾値T1以上の値であるので、回転式ストーカ炉2に熱量の低いごみが多量に供給される一方、順送式ストーカ炉3の上流に燃焼中のごみが落下したものと推測される。
そこで、制御装置7は、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を「減少」にすべく、現時点の回転速度からRd(例えば、0.1rpm)に減少させる。これにより、回転式ストーカ炉2の主燃焼部位は、回転式ストーカ炉2内の上流側にずれることになる。
また、熱量の低いごみは燃えずらいため、制御装置7は、空気供給装置12を制御して「増加」にすべく、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量をVi(例えば15000ノルマル立米/h)に増加する。これにより、熱量の低いごみの燃焼を促進する。
さらに、制御装置7は、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「減少」させるべく、ごみ投入装置11を制御して、12分経過毎に400kgのごみを1回(1回/12分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。
【0036】
図3のパターン6について>
パターン6では、制御装置7が受信した入口温度TEが、LL(例えば300℃)<TE≦L(例えば400℃)であり、制御装置7が演算した後燃焼段温度差が第一閾値T1未満の値であるので、熱量の低いごみが多量に供給される、または、ごみ投入装置11のシュート詰まりなどのごみ供給不備があり、回転式ストーカ炉2内のごみが適切に燃焼できていないものと推測される。
そこで、制御装置7は、第1B式を演算し、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を、RBに変更する。例えば、現在の入口温度TEが350℃の場合、第1B式により回転速度RBは、0.3rpmとなる。すなわち、図4に第1B式を右肩上がりの直線で示すように、入口温度TEに一対一で対応する回転速度RBに変更する。
また、制御装置7は、第2B式を演算し、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を、VBに変更する。例えば、現在の入口温度TEが350℃の場合、第2B式により空気量は、10000ノルマル立米/hとなる。すなわち、図4に第2B式を右肩上がりの直線で示すように、入口温度TEに一対一で対応する空気量VBに変更する。
さらに、制御装置7は、ごみ供給不備か否かを確認するため、ごみ供給量が「通常」または「減少」のいずれであっても直ちに、具体的には、6分経過毎に1回または12分経過毎に1回のごみ供給のインターバルを待たずに、直ちにごみ投入装置11を制御して、400kgのごみを1回、回転式ストーカ炉2へ供給する。これにより、入口温度TEが上昇しなかった場合、制御装置7はごみ供給不備と判断し、例えば、焼却炉システム1の中央制御室に設置したアラームを鳴らしたり、モニター画面にその旨の表示をする制御を実施することで作業員に異常を知らせ、作業員にごみ詰まり等の不備を解消させる。一方、入口温度TEが上昇すれば、ごみ供給不備ではなく、熱量の低いごみが回転式ストーカ炉2で燃焼しているものと推察される。そこで、入口温度TEの上昇により、制御装置7がごみ供給不備がないと判断した場合、制御装置7は、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「減少」させるべく、ごみ投入装置11を制御して、12分経過毎に400kgのごみを1回(1回/12分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。
【0037】
図3のパターン7について>
パターン7では、制御装置7が受信した入口温度TEが、TE≦LL(例えば300℃)であり、回転式ストーカ炉2内でごみが燃焼しておらず、火が消えている可能性があるものと推測される。
このため、制御装置7は、例えば、焼却炉システム1の中央制御室に設置したアラームを鳴らしたり、モニター画面にその旨の表示をする制御を実施することで、作業員に異常を知らせ、作業員に回転式ストーカ炉2内のごみの燃焼状況を確認させる。
作業員が確認したところ、回転式ストーカ炉2内のごみに炎が確認できない、または、炎が微弱という場合には、回転式ストーカ炉2に設置したバーナーでごみに着火、または、運搬可能なバーナーを用いて作業員が自ら着火するなどして、回転式ストーカ炉2内のごみに着火する。そして、当該着火後、制御装置7は、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を「通常」のRn(例えば0.25rpm)に調整する。また、制御装置7は、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「通常」にすべく、ごみ投入装置11を制御して、6分経過毎に400kgのごみを1回(1回/6分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。さらに、制御装置7は、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を「通常」のVn(例えば10000ノルマル立米/h)に調整する。
作業員が確認したところ、回転式ストーカ炉2内のごみに、微弱よりも大きい程度の炎が確認できる場合には、制御装置7は、「通常」の動作で炎を大きくすべく、回転式ストーカ炉2の制御を行う。すなわち、制御装置7は、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度を「通常」のRn(例えば0.25rpm)に調整する。また、制御装置7は、回転式ストーカ炉2へのごみ供給量を「通常」にすべく、ごみ投入装置11を制御して、6分経過毎に400kgのごみを1回(1回/6分)、回転式ストーカ炉2へ供給する。さらに、制御装置7は、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量を「通常」のVn(例えば10000ノルマル立米/h)に調整する。
【0038】
以上の制御装置7による制御により、焼却炉システム1の回転式ストーカ炉2におけるごみの燃焼状態を、最適に維持することができる。詳しく言えば、回転式ストーカ炉2においては、後燃焼段である順送式ストーカ炉3の温度を測定する構成でありながら、ごみの熱量の高低によらず、乾燥段と燃焼段である回転式ストーカ炉2の燃焼状態を適切に保つことができる。
【0039】
[3.変形例]
では、次に、先述の焼却システム1の変形例を、第1変形例、第2変形例、および第3変形例の順に、説明する。これら変形例の説明においては、実施形態の焼却システム1と同一の構成については、同一番号を付して、その構成の説明を省略する。
【0040】
[3-1.第1変形例]
図5は、図1に示した焼却炉システム1の第1変形例である回転式ごみ焼却炉システム1a(以下、「焼却炉システム1a」という)の構成を示す図である。
焼却炉システム1aは、焼却炉システム1が備える各種装置に加え、EGR誘引送風機25をさらに備えている。焼却炉システム1aの他の装置構成は、焼却炉システム1と同様である。
なお、EGRは、Exhaust Gas Recirculation の略であり、排ガス再循環と言われる。焼却炉システム1aは、排ガス再循環の構成であるため、回転式ストーカ炉2の内部の酸素量を減少させることができ、結果として、ごみの燃焼により発生する排ガス中のNOxやダイオキシンを低減することができる。
【0041】
EGR誘引送風機25は、誘引送風機23が排出する排ガスの一部を引き込み、且つ、回転式ストーカ炉2の内部へ供給する。なお、誘引送風機23は、バグフィルタ22で除塵された排ガスを引込み、煙突24に向けて排出する。
制御装置7は、有線または無線の通信ネットワーク14を介して、EGR誘引送風機25を制御し、回転式ストーカ炉2への排ガスの供給量(EGRガス吹込量)を調整する。
制御装置7は、空気供給装置12が回転式ストーカ炉2へ供給する空気量と、EGRガス吹込量との総和が常に一定となるように、相補的に空気供給装置12とEGR誘引送風機25を制御するので、図3の各パターンごとのEGRガス吹込量は、図3の表に示す通りとなる。
【0042】
すなわち、図3のパターン1では、空気量が「減少」するので、EGRガス吹込量は、上記総和から空気量の「減少」の量、すなわちVd(例えば5000ノルマル立米/h)を減じた量になる。言い換えれば、EGRガス吹込量は増加する。
図3のパターン2では、空気量が第2A式の解「VA」となるので、EGRガス吹込量は、上記総和からVAを減じた量になる。言い換えれば、EGRガス吹込量は、空気量であるVAに応じて増加する場合もあれば、減少する場合もある。
図3のパターン3、パターン4、及び、パターン7では、空気量が「通常」であるので、EGRガス吹込量は、上記総和から空気量の「通常」の量、すなわちVn(例えば10000ノルマル立米/h)を減じた量になる。言い換えれば、EGRガス吹込量は、焼却炉システム1aの仕様により予め設定した「通常」の量になる。
図3のパターン5では、空気量が「増加」するので、EGRガス吹込量は、上記総和から空気量の「増加」の量、すなわちVi(例えば15000ノルマル立米/h)を減じた量になる。言い換えれば、EGRガス吹込量は減少する。
パターン6では、空気量が第2B式の解「VB」となるので、EGRガス吹込量は、上記総和からVBを減じた量になる。言い換えれば、EGRガス吹込量は、空気量であるVBに応じて増加する場合もあれば、減少する場合もある。
【0043】
[3-2.第2変形例]
図6は、図1に示した焼却炉システム1の第2変形例である回転式ごみ焼却炉システム1b(以下、「焼却炉システム1b」という)の構成を示す図である。
焼却炉システム1bは、図5に示した第1変形例の焼却炉システム1aに加えて、回転式ストーカ炉2の外面の温度を測定する外面温度測定装置26を備える。焼却炉システム1bの他の装置構成は、焼却炉システム1aと同様である。
【0044】
外面温度測定装置26は、回転式ストーカ炉2の外側に配置され、回転式ストーカ炉2の長さ方向の外面の温度を幅広く測定し、有線または無線の通信ネットワーク14を介して、制御装置7へ温度の測定値を送信する装置である。外面温度測定装置27は、例えば、赤外線で走査(スキャン)する方式の温度測定装置でよい。
外面温度測定装置26が測定する上記長さ方向の範囲は、回転式ストーカ炉2の全長分が望ましいが、回転式ストーカ炉2の内部で移動しうる主燃焼部位による高温箇所を含む範囲であれば、一部であってもよい。
回転式ストーカ炉2の内部の温度は、回転式ストーカ炉2の大きさや肉厚などの仕様に応じて、数十分から約1時間程度をかけて回転式ストーカ炉2の外面まで熱伝導により伝達する。そのため、外面温度測定装置27の測定値は、精密な正確性は求められず、単におおよその温度の傾向を示す指標として、制御装置7による回転式ストーカ炉2の制御に使用する。
【0045】
制御装置7は、外面温度測定装置26の測定値を所定のタイミング(例えば、1秒間隔)で受信して、上記長さ方向の温度の平均値TAを演算する。そして、制御装置7は、制御装置7が図3のパターン4の制御を実行している際、L(例えば400℃)<T3<T2<H(例えば800℃)の関係にある第二閾値T2(例えば、700℃)及び第三閾値T3(例えば、500℃)と平均値TAを、判断基準に加える。
これにより、制御装置7は、入口温度TEの変化の傾向を事前にとらえ、入口温度TEが実際に図3のパターン2またはパターン6のいずれか一方の入口温度へ変化する前に、回転式ストーカ炉2に対してパターン2またはパターン6に準じた制御を事前に速やかに開始することができる。
言い換えれば、図3のパターン2またはパターン6において、制御装置7が解消しようとする回転式ストーカ炉2のごみの燃焼状態が発現または深刻化する前に、その予兆を捉え、すなわち予見して、制御装置7は、回転式ストーカ炉2の燃焼状態を改善すべく制御することができる。よって、焼却炉システム1bは、焼却炉システム1と焼却炉システム1aに比べ、より優れたごみの燃焼制御を行うことができる。
【0046】
では、以上の焼却炉システム1aの制御装置7の制御につき説明する。
図3のパターン4では、制御装置7が受信した入口温度TEが、L(例えば400℃)<TE≦H(例えば800℃)であり、制御装置7が演算した後燃焼段温度差が第一閾値T1未満の値であるので、所期の燃焼状態、すなわち、回転式ストーカ炉2でごみの適切な燃焼が良好に行われている状態であると推測される。
ここで、T2≦TAの場合、すなわち、平均値TAが第二閾値T2(例えば、700℃)以上の場合、すでに長時間、熱量の高いごみが供給され続けている可能性が高い。そのため、制御装置7は、入口温度TEが図3のパターン2の状態となる前に、早めにパターン2に対応する制御を行なう。具体的には、入口温度TEを「TE+(H-T2)」に入れ替え、言い換えれば入口温度TEに下駄を履かせた値を、入口温度TEとして、第1A式と第2A式にそれぞれ代入して、回転式ストーカ炉2の制御を行なう。
【0047】
例えば、Hが800℃、T2が700℃の場合は、上述の第1A式は、
RA=0.001×((TE+100)-600)
=0.001×(TE-500)
となる。これは、図4において、上記第1線形式を、入口温度TEが増加する方向に平行移動した式に相当する。
また、上述の第2A式は、
VA=20×((TE+100)-400)
=20×((TE-300)
となる。これは、図4において、上記第2線形式を、入口温度TEが増加する方向に平行移動した式に相当する。
従って、L(例えば400℃)<TE≦H(例えば800℃)、且つ、後燃焼段温度差が第一閾値T1未満の値、且つ、T2(例えば700℃)≦TAの場合、制御装置7は、図3のパターン4の制御ではなく、上記代入した式に基づき、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度をRAに変更し、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量をVAに変更する。
【0048】
一方、TA≦T3の場合、すなわち、平均値TAが第三閾値T3(例えば、500℃)以下の場合、すでに長時間、熱量の低いごみが供給され続けている可能性が高い。そのため、制御装置7は、入口温度TEが図3のパターン6の状態となる前に、早めにパターン6に対応する制御を行なう。具体的には、「TE+(T3-L)」を入口温度TEとして、第1B式と第2B式にそれぞれ代入して、回転式ストーカ炉2の制御を行なう。
例えば、Lが400℃、T3が500℃の場合は、上述の第1B式は、
RB=0.003×((TE+100)-250)
=0.003×(TE-150)
となる。これは、図4において、上記第3線形式を、入口温度TEが減少する方向に平行移動した式に相当する。
また、上述の第2B式は、
VB=80×((TE+100)-225)
=80×((TE-125)
となる。これは、図4において、上記第4線形式を、入口温度TEが減少する方向に平行移動した式に相当する。
従って、L(例えば400℃)<TE≦H(例えば800℃)、且つ、後燃焼段温度差が第一閾値T1未満の値、且つ、TA≦T3(例えば500℃)の場合、制御装置7は、図3のパターン4の制御ではなく、上記代入した式に基づき、回転装置6を制御して、回転式ストーカ炉2の回転速度をRBに変更し、空気供給装置12を制御して、回転式ストーカ炉2へ供給する空気量をVBに変更する。
【0049】
[3-3.第3変形例]
図7は、図1に示した焼却炉システム1の第3変形例である回転式ごみ焼却炉システム1c(以下、「焼却炉システム1c」という)の構成を示す図である。
焼却炉システム1cは、図5に示した第1変形例の焼却炉システム1aに加えて、回転式ストーカ炉2の入口側に、回転式ストーカ炉2の長さ方向の燃焼状態を撮影する火焔透過型カメラ27を備える。焼却炉システム1cの他の装置構成は、焼却炉システム1aと同様である。
火焔透過型カメラ27は、炎を透過してごみの燃焼状態を撮影できるカメラであり、回転式ストーカ炉2の内部を入口側から出口側に向かって撮影する。そして、火焔透過型カメラ27は、撮影した映像を、所定のタイミングで有線または無線の通信ネットワーク14を介して、制御装置7へ送信する。
制御装置7が、人工知能(AI(Artificial Intelligence))を備える場合、図3の制御を行った後に、火焔透過型カメラ27から受信した映像の情報に基づいて、より適切な燃焼状態となるよう、これら制御を自動で補正することができる。また、制御装置7が中央制御室に設置されたモニターに当該受信した映像を映し出し、制御装置7による図3の制御が行われた後に、より適切な燃焼状態となるよう、作業員が当該映像に基づき手作業で当該制御を補正することもできる。
よって、焼却炉システム1cは、焼却炉システム1と焼却炉システム1aに比べ、より優れたごみの燃焼制御を行うことができる。
なお、第2変形例である図6の焼却炉システム1bに、火焔透過型カメラ27を設置し、第3変形例である図7の焼却炉システム1cと同様の制御を行ってもよい。
【0050】
以上のとおり、焼却炉システム1、1a、1b、1cによれば、後燃焼段である順送式ストーカ炉3の温度を測定する構成でありながら、廃棄物の熱量の高低によらず、乾燥段と燃焼段である回転式ストーカ炉の燃焼状態を適切に制御することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b、1c 回転式ごみ焼却炉システム(焼却炉システム)
2 回転式ストーカ炉
3 順送式ストーカ炉
4 回転式ごみ焼却炉
5 温度測定装置(赤外線温度測定装置)
6 回転装置
7 制御装置
8 ごみピット
9 ごみクレーン
10 ごみホッパ
11 ごみ投入装置
11a 扉
12 空気供給装置
13 入口温度測定装置
14 通信ネットワーク
15 水封コンベヤ
16 再燃焼室
17 バーナー
18 廃熱ボイラ
19 蒸気タービン
20 発電機
21 減温塔
22 バグフィルタ
23 誘引送風機
24 煙突
25 EGR誘引送風機
26 外面温度測定装置
27 火焔透過型カメラ
【要約】
【課題】回転式ストーカ炉の燃焼状態を適切に制御することができる回転式ごみ焼却炉システムを提供する。
【解決手段】順送式ストーカ炉3の上流の温度を測定する温度測定装置5と、回転式ストーカ炉2を回転させる回転装置6と、温度測定装置5の測定した温度に基づいて、回転装置6の回転速度を制御する制御装置7とを有し、制御装置7は、測定した温度の移動平均値に第一閾値を加算した値より当該測定した温度の瞬時値が大きい場合、回転式ストーカ炉2を現在の回転速度より遅く回転する制御を実施する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7