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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】温水機器
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/421 20220101AFI20230705BHJP
   F24H 15/45 20220101ALI20230705BHJP
【FI】
F24H15/421
F24H15/45
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019025466
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020133958
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真一
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185352(JP,A)
【文献】特開2002-318003(JP,A)
【文献】特開2003-172199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御部と、
外部の管理装置から前記複数の制御部のファームウェアをダウンロードするための通信部と、
前記管理装置からダウンロードした前記ファームウェアを記憶する記憶部と、を備えた温水機器であって、
前記複数の制御部のうちの一の制御部は、他の制御部からの所定の信号の送信の有無によって前記他の制御部の異常を判定する異常判定部として機能し、
前記異常判定部は、前記他の制御部が前記ファームウェアを更新しているファームウェア更新期間において、前記他の制御部に対する異常判定を無効とし、
前記記憶部は、制御部ごとに互いに異なる複数の前記ファームウェアを記憶可能に構成され、
前記複数の制御部は、それぞれ、前記記憶部にアクセスすることにより、対応する前記ファームウェアを取得し、
前記複数の制御部は、前記記憶部に前記ファームウェアが記憶されているか否かを監視する監視部として機能する第1制御部と、前記第1制御部とは異なる第2制御部とを含み、
前記監視部は、前記第2制御部のためのファームウェアが記憶されている場合に、前記第2制御部に前記記憶部へのアクセスを許可する許可通知を送信可能であり、
前記第2制御部は、前記許可通知を受信した場合に前記記憶部へのアクセスを実行する、温水機器。
【請求項2】
前記監視部は、
前記記憶部に前記第1制御部のためのファームウェアが記憶されていると判定した場合、当該ファームウェアの更新処理を実行するとともに、前記第2制御部に対して、前記第1制御部に対する異常判定を無効とするための判定無効通知を送信し、
前記記憶部に前記第2制御部のためのファームウェアが記憶されていると判定した場合、前記第2制御部に当該ファームウェアの読み出し要求通知を送信するとともに、前記第1制御部の前記異常判定部における前記第2制御部に対する異常判定を無効とする、請求項に記載の温水機器。
【請求項3】
複数の制御部と、
外部の管理装置から前記複数の制御部のファームウェアをダウンロードするための通信部と、
前記管理装置からダウンロードした前記ファームウェアを記憶する記憶部と、を備えた温水機器であって、
前記複数の制御部のうちの一の制御部は、他の制御部からの所定の信号の送信の有無によって前記他の制御部の異常を判定する異常判定部として機能し、
前記異常判定部は、前記他の制御部が前記ファームウェアを更新しているファームウェア更新期間において、前記他の制御部に対する異常判定を無効とし、
前記記憶部は、制御部ごとに互いに異なる複数の前記ファームウェアを記憶可能に構成され、
前記複数の制御部は、それぞれ、前記記憶部にアクセスすることにより、対応する前記ファームウェアを取得し、
前記複数の制御部は、前記記憶部に前記ファームウェアが記憶されているか否かを監視する監視部として機能する第1制御部と、前記第1制御部とは異なる第2制御部とを含み、
前記監視部は、
前記記憶部に前記第1制御部のためのファームウェアが記憶されていると判定した場合、当該ファームウェアの更新処理を実行するとともに、前記第2制御部に対して、前記第1制御部に対する異常判定を無効とするための判定無効通知を送信し、
前記記憶部に前記第2制御部のためのファームウェアが記憶されていると判定した場合、前記第2制御部に当該ファームウェアの読み出し要求通知を送信するとともに、前記第1制御部の前記異常判定部における前記第2制御部に対する異常判定を無効とする温水機器。
【請求項4】
各制御部は、自身の制御部における前記ファームウェアの更新処理が終了した場合、他の制御部に対して、前記自身の制御部に対する異常判定を再開するための再開処理実行通知を送信するよう構成される、請求項1からの何れかに記載の温水機器。
【請求項5】
前記複数の制御部は、何れも前記温水機器本体に設けられる、請求項1からの何れかに記載の温水機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器等の温水機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯器等の温水機器において、温水機器に設けられた制御部(マイクロコンピュータ)のファームウェアを更新するために、サーバ装置等の外部の管理装置から通信網を介してファームウェアをダウンロードするような構成が知られている。
【0003】
温水機器に複数の制御部が備えられている場合、制御部の種類、役割に応じたファームウェアをダウンロードし、対応する制御部においてファームウェアの更新処理を行う必要がある。下記特許文献1には、複数の制御部にそれぞれ対応するファームウェアを更新する態様が開示されている。
【0004】
また、温水機器においては、上記複数の制御部間で相互に異常判定を行うことがある。例えば一の制御部から所定の信号を送信し、他の制御部から当該所定の信号を受信した場合に一の制御部に応答信号を返信する。所定信号を送信した一の制御部は、所定時間内に応答信号が返ってこない場合、他の制御部に異常があると判定する。一の制御部は、異常ありと判定された他の制御部に強制的なリセット処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4613445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような応答信号の返信の有無で制御部の異常判定を行う構成において、上記のようなファームウェアの更新処理を行う際に以下の問題が生じる。すなわち、ファームウェアの更新処理中は、当該制御部は他の制御部に対して通信を行うことができないため、他の制御部から異常判定のための所定の信号が送信されてきた場合に、ファームウェア更新処理中の制御部は、当該所定の信号に対する応答信号を送信することができない。
【0007】
この結果、所定の信号を送信した制御部は、ファームウェア更新処理中の制御部を異常であると判定してしまい、ファームウェア更新処理中の制御部に対して強制的なリセット処理を実行してしまう。このようにファームウェア更新処理中の制御部は、異常が発生していないにもかかわらず、異常と判定されるおそれがある。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、複数の制御部間で通信を行うことによる異常判定を適切に行うことができる温水機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る温水機器は、複数の制御部と、外部の管理装置から前記複数の制御部のファームウェアをダウンロードするための通信部と、を備えた温水機器であって、前記複数の制御部のうちの一の制御部は、他の制御部からの所定の信号の送信の有無によって前記他の制御部の異常を判定する異常判定部として機能し、前記異常判定部は、前記他の制御部が前記ファームウェアを更新しているファームウェア更新期間において、前記他の制御部に対する異常判定を無効とするよう構成されている。
【0010】
上記構成によれば、複数の制御部13,14のうちの一の制御部が他の制御部からの所定の信号の送信の有無で異常判定を行う一方で、他の制御部がファームウェアを更新しているファームウェア更新期間においては、他の制御部に対する異常判定が無効になる。したがって、ファームウェアの更新中に他の制御部と通信ができなくなる複数の制御部を備えた構成において、複数の制御部間で通信を行うことによる異常判定を適切に行うことができる。
【0011】
前記温水機器は、前記管理装置からダウンロードした前記ファームウェアを記憶する記憶部を備え、前記記憶部は、制御部ごとに互いに異なる複数の前記ファームウェアを記憶可能に構成され、前記複数の制御部は、それぞれ、前記記憶部にアクセスすることにより、対応する前記ファームウェアを取得してもよい。
【0012】
これによれば、複数の制御部において制御部ごとに異なる複数のファームウェアが、1つの記憶部に記憶される。したがって、管理装置から通信網を介してダウンロードしたファームウェアを温水機器の記憶部に一度記憶させてから各制御部のファームウェアを更新することにより、制御部までの通信経路に低速な経路が含まれている場合でも、各制御部におけるファームウェアの更新期間を短くすることができる。さらに、記憶部を複数の制御部に共通とすることにより、制御部が設けられる制御基板の面積を小さくすることができる。
【0013】
前記複数の制御部は、前記記憶部に前記ファームウェアが記憶されているか否かを監視する監視部として機能する第1制御部と、前記第1制御部とは異なる第2制御部とを含み、前記監視部は、前記第2制御部のためのファームウェアが記憶されている場合に、前記第2制御部に前記記憶部へのアクセスを許可する許可通知を送信可能であり、前記第2制御部は、前記許可通知を受信した場合に前記記憶部へのアクセスを実行するようにしてもよい。
【0014】
これによれば、監視部が記憶部へアクセスする制御部を把握することができるため、複数の制御部が同時にアクセスすることによる悪影響を防止することができる。
【0015】
前記複数の制御部は、前記記憶部に前記ファームウェアが記憶されているか否かを監視する監視部として機能する第1制御部と、前記第1制御部とは異なる第2制御部とを含み、前記監視部は、前記記憶部に前記第1制御部のためのファームウェアが記憶されていると判定した場合、当該ファームウェアの更新処理を実行するとともに、前記第2制御部に対して、前記第1制御部に対する異常判定を無効とするための判定無効通知を送信し、前記記憶部に前記第2制御部のためのファームウェアが記憶されていると判定した場合、前記第2制御部に当該ファームウェアの読み出し要求通知を送信するとともに、前記第1制御部の前記異常判定部における前記第2制御部に対する異常判定を無効としてもよい。
【0016】
これによれば、第1制御部の監視部が記憶部に記憶されたファームウェアの更新対象である制御部を判別し、第2制御部に対してファームウェアの読み出し要求を行ったり、異常判定を無効とするための通信が実施される。したがって、一の制御部において複数の制御部におけるファームウェアの更新処理およびその間の異常判定無効処理を統括制御することができる。
【0017】
各制御部は、自身の制御部における前記ファームウェアの更新処理が終了した場合、他の制御部に対して、前記自身の制御部に対する異常判定を再開するための再開処理実行通知を送信するよう構成されてもよい。これにより、ファームウェアの更新処理の終了後において自動的に異常判定が再開されるため、異常判定が無効な期間を最小限にすることができる。
【0018】
前記複数の制御部は、何れも前記温水機器本体に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上に説明した構成を有し、複数の制御部間で通信を行うことによる異常判定を適切に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る一実施の形態における温水機器を含む温水機器システムを示す概略構成図である。
図2図2は、図1に示す制御装置を示す概略ブロック図である。
図3図3は、図2に示す制御装置におけるファームウェア更新処理の流れを示すシーケンス図である。
図4図4は、図2に示す制御装置におけるファームウェア更新処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されない。
【0022】
(一実施の形態)
図1は、本発明に係る一実施の形態における温水機器を含む温水機器システムを示す概略構成図である。
【0023】
この温水機器システムは、温水機器の一例である給湯器1(例えば、燃焼加熱式の給湯器)と、給湯器1に内蔵されている制御装置12と通信可能に接続された給湯器専用の中継装置2と、インターネット等の通信網4に接続されたコンピュータからなる管理装置5とを備えている。管理装置5は、通信網4およびこの通信網4に接続された無線ルータ(無線LANルータ)3を介して中継装置2と通信を行う。
【0024】
管理装置5は、例えば、中継装置2から送信された給湯器1の機器情報を記憶するクラウドサーバ、およびクラウドサーバと給湯器1との間の連係を行うアプリケーションサーバ等から構成される。ここで、機器情報としては、給湯器1の制御装置12から電源投入後に最初に中継装置2へ送信される機器構成情報、給湯器1の制御装置12から定期的(例えば1時間間隔)に中継装置2へ送信される給湯器1の運転状態を示す運転状態情報、エラー情報等がある。機器構成情報は、給湯器1の種類等を示す情報であり、運転状態情報は、給湯器1の給湯設定温度、燃焼運転回数、燃焼運転時間等を含む情報である。なお、管理装置5は、後述するファームウェアを供給する供給源として機能する限りいかなるものでもよい。
【0025】
この温水機器システムは、通信網4、および無線LANルータ3を利用するものである。無線LANルータ3は、給湯器1が設置されている住宅の入居者(使用者)が所有しているものである。
【0026】
なお、給湯器1が設置されている住宅は1つでもよいが通常多数存在し、設備機器システムを構成する給湯器1も1つでもよいが通常多数存在する。ここでは、代表して、1台の給湯器1のみを図示し、また、その給湯器1のみに対応する中継装置2、および無線LANルータ3を図示している。以下では、図示されたものについて説明する。
【0027】
給湯器1は、住宅の屋外または屋内の所定の場所に設置され、台所や浴槽等に湯水を供給する給湯機能を有する給湯器本体(温水機器本体)11と、給湯器本体11を制御する制御装置12と、を備えている。給湯器1は、外部交流電源(商用電源)から供給される交流電圧を変換して所定の直流電圧を生成する電源部(図示せず)を有し、給湯器本体11は、この電源部で生成した直流電圧を使用するとともに、生成した直流電圧を2芯ケーブルC1を介して中継装置2へその動作用電源電圧として供給する。
【0028】
中継装置2は、住宅の屋外または屋内の所定の場所に設置され、2芯ケーブルC1によって給湯器1の制御装置12と接続されている。これにより、2芯ケーブルC1を介して中継装置2と給湯器1の制御装置12との間で相互に通信(双方向通信)が行われる。ここで、2芯ケーブルC1には、前述の電源部から中継装置2へ供給される動作用電源電圧に通信の情報が重畳される。
【0029】
また、中継装置2は、無線LANルータ3と無線LANの接続設定が行われると、無線LANルータ3との間で無線LANによる無線通信が可能である。この中継装置2は、給湯器1の制御装置12との間の通信処理を実行するとともに、無線LANルータ3および通信網4を介して行う管理装置5との間の通信処理を実行する。中継装置2は、例えば、給湯器1の制御装置12から送信されてきた機器情報を、通信形式を変換して無線LANルータ3および通信網4を介して管理装置5へ送信する。また、管理装置5から通信網4および無線LANルータ3を介して送信されてきた情報(例えば後述するファームウェアのデータ)を、通信形式を変換して給湯器1の制御装置12へ送信する。
【0030】
図2は、図1に示す制御装置を示す概略ブロック図である。図2に示すように、制御装置12は、複数の制御部を備えている。本実施の形態において、複数の制御部は、主制御部である第1制御部13と、副制御部である第2制御部14とを備えている。第1制御部13は、主に給湯器本体11の制御を行う。第2制御部14は、主に第1制御部13の状態監視や給湯器本体11への補助的な制御を行う。これらの制御部は、マイクロコントローラ、RAM、ROM等により構成される。
【0031】
複数の制御部13,14は、通信バス15を介して通信可能に接続される。また、通信バス15には、給湯器本体11とのインターフェースである入出力部16が接続されている。第1制御部13で生成される給湯器制御信号は、入出力部16を介して給湯器本体11に伝達される。また給湯器本体11における各種情報(給湯温度等の状態情報等)は、入出力部16を介して第1制御部13および/または第2制御部14に入力される。
【0032】
複数の制御部13,14は、それぞれ、他の制御部の異常を判定する異常判定部13a,14aとして機能する。異常判定部13a,14aは、他の制御部からの所定の信号の送信の有無によって他の制御部の異常を判定する。例えば、第1制御部13の異常判定部13aは、第2制御部14に対して定期的に(例えば200m秒間隔で)確認信号を送信する。確認信号を受信した第2制御部14の異常判定部14aは、所定の応答信号を返信する。
【0033】
第1制御部13の異常判定部13aは、第2制御部14から所定期間(例えば2秒)以内に応答信号を受信した場合、第2制御部14が正常であると判定し、所定期間内に応答信号を受信できない場合、第2制御部14が異常であると判定する。同様に、第2制御部14の異常判定部14aは、第1制御部13から所定間隔(例えば3秒)以内に確認信号を受信した場合、第1制御部13が正常であると判定し、所定期間内に確認信号を受信できない場合、第1制御部13が異常であると判定する。異常判定の確認間隔は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
異常判定部13a,14aが他の制御部が異常であると判定した場合、当該制御部に対して強制的なリセット処理を実行する。各制御部13,14には、図示しないリセット端子が設けられている。各制御部13,14は、リセット端子にリセット信号が入力される(例えばリセット端子に入力される電圧が所定期間ハイ状態からロー状態に切り替えられる)と電源供給が遮断され、リセットされるように構成されている。
【0035】
さらに、制御装置12は、中継装置2との通信を行う通信部17と、例えば不揮発性メモリ等により構成される記憶部18と、を備えている。通信部17および記憶部18も通信バス15に接続されている。通信部17は、外部の管理装置5から複数の制御部13,14のファームウェアをダウンロード可能に構成される。ダウンロードされたファームウェアは、記憶部18に記憶される。
【0036】
記憶部18は、制御部13,14ごとに互いに異なる複数のファームウェアを記憶可能に構成されている。例えば、記憶部18は、第1制御部13のためのファームウェア(第1ファームウェア)を記憶する第1記憶領域181と、第2制御部14のためのファームウェア(第2ファームウェア)を記憶する第2記憶領域182とを備えている。複数の制御部13,14は、それぞれ、記憶部18にアクセスすることにより、対応するファームウェアを取得し、ファームウェアの更新処理を実行する。
【0037】
上述したように、管理装置5から給湯器1の制御装置12までの通信経路のうち、中継装置2と制御装置12の通信部17との間は、2芯ケーブルC1による通信が行われる。2芯ケーブルC1による通信では、有線LAN等に用いられる通信規格に比べて通信速度が低速となる。このため、管理装置5から各制御部13,14にファームウェアを直接ダウンロードしつつ更新処理を行うとファームウェアの受信に時間がかかってしまう。ファームウェアの更新期間は、当該制御部13,14における動作不能時間となるため、なるべく短いことが望まれる。
【0038】
これに対し、本実施の形態によれば、受信したファームウェアは、一旦記憶部18に記憶される。その上で、各制御部13,14が個別にアクセスすることにより、記憶部18に記憶されているファームウェアを各制御部13,14において一気に更新させることができ、制御部13,14における動作不能時間を短くすることができる。
【0039】
各異常判定部13a,14aは、他の制御部がファームウェアを更新しているファームウェア更新期間において、他の制御部に対する異常判定を無効とする。
【0040】
図3および図4は、図2に示す制御装置におけるファームウェア更新処理の流れを示すシーケンス図である。本実施の形態において、第1制御部13は、記憶部18にファームウェアが記憶されているか否かを監視する監視部13bとして機能する。
【0041】
まず、監視部13bは、所定のタイミングで、記憶部18に第1ファームウェアの読み出し要求を行う(ステップS1)。所定のタイミングは、例えば給湯器1の電源が投入されたタイミングまたは第1制御部13においてリセット処理が実行されたタイミング(再起動時)である。本実施の形態では、記憶部18にファームウェアが記憶された場合、かつ、給湯器本体11が待機状態(何らかの動作を行っていない状態)である場合に、複数の制御部13,14に対してリセット処理が実行される。
【0042】
記憶部18は、第1記憶領域181に第1ファームウェアが記憶されているか否かを判定し、第1ファームウェアが記憶されている場合、第1ファームウェアを第1制御部13にデータ送信する(ステップS2)。なお、第1記憶領域181に第1ファームウェアが記憶されていない場合には、第1ファームウェアがないことを示す信号を第1制御部13に送信する。この場合、第1制御部13は、記憶部18に後述する第2ファームウェアの確認要求を行う(後述するステップS15)。
【0043】
記憶部18から第1制御部13への第1ファームウェアのデータ送信の開始に際し、記憶部18から第1制御部13へ第1ファームウェアが記憶部18に記憶されていることを示すデータ送信準備信号が送られる。監視部13bは、データ送信準備信号を受信することにより、記憶部18に第1ファームウェアが記憶されていると判定する。この場合、監視部13bは、第2制御部14に対して、第1制御部13に対する異常判定を無効とするための判定無効通知を送信する(ステップS3)。
【0044】
その後、監視部13b(第1制御部13)は、第1ファームウェアの更新処理を実行する(ステップS4)。一方、第2制御部14は、判定無効通知に基づいて第1制御部13に対する異常判定を無効にする異常判定無効処理を実行する(ステップS5)。異常判定無効処理において、第2制御部14は、何らの処理も行わない(異常判定以外の処理も行わず、待機状態に移行する)ようにしてもよい。
【0045】
例えば、異常判定無効処理の実行中において、第2制御部14は、所定期間内に第1制御部13からの確認信号を受信しなかった場合であっても、第1制御部13が異常であるとの判定は行わない。
【0046】
第1制御部13においてファームウェア更新処理が終了した後、監視部13bは、記憶部18に第1ファームウェアの消去要求を行う(ステップS6)。記憶部18は、当該消去要求に応じて第1ファームウェアの消去処理を行う(ステップS7)。その後、監視部13bは、第1ファームウェアが消去されたことを確認するために、再度第1ファームウェアの読み出し要求を行う(ステップS8)。記憶部18は、第1ファームウェアが記憶されていない(消去された)ことを示す応答を行う(ステップS9)。
【0047】
第1制御部13は、記憶部18において第1ファームウェアが消去されたことを確認した後、第2制御部14にリセット要求通知を送信する(ステップS10)。さらに、第1制御部13は、自身のリセット処理を実行する(ステップS11)。リセット要求通知を受信した第2制御部14もリセット処理を実行する(ステップS12)。これにより、第2制御部14における異常判定無効処理が解除され、リセット処理後、第2制御部14が再起動すると、第2制御部14における第1制御部13に対する異常判定が有効化される。
【0048】
なお、各制御部13,14における上記リセット処理は、上述した強制的なリセット処理であってもよいし、各制御部13,14の動作プログラムに基づく自発的なリセット処理でもよい。
【0049】
リセット処理による再起動後、第1制御部13の監視部13bは、ステップS1と同様に、記憶部18に第1ファームウェアの読み出し要求を行う(ステップS13)。記憶部18は、ステップS9と同様に、第1ファームウェアが記憶されていないことを示す応答を行う(ステップS14)。この応答を受信した監視部13bは、記憶部18に第2ファームウェアの有無を確認するための確認要求を行う(ステップS15)。
【0050】
記憶部18は、第2記憶領域182に第2ファームウェアが記憶されているか否かを判定し、第2ファームウェアが記憶されている場合、第2ファームウェアが記憶されていることを示す応答信号を第1制御部13に送信する(ステップS16)。
【0051】
監視部13bは、この応答信号を受信することにより、記憶部18に第2ファームウェアが記憶されていると判定する。この場合、監視部13bは、第2制御部14に第2ファームウェアの読み出し要求通知を送信する(ステップS17)。さらに、監視部13bは、第1制御部13の異常判定部13aに第2制御部14に対する異常判定を無効にする指令を伝達する。異常判定部13aは、これを受けて異常判定無効処理を実行する(ステップS18)。異常判定無効処理において、第1制御部13は、給湯器本体11への動作制御を行わない(異常判定以外の処理も行わず、待機状態に移行する)ようにしてもよい。
【0052】
例えば、異常判定無効処理の実行中において、第1制御部13は、第2制御部14に確認信号を送った後、所定期間内に第2制御部14からの応答信号を受信しなかった場合であっても、第2制御部14が異常であるとの判定は行わない。これに代えて、第1制御部13は、異常判定無効処理の実行中において、第2制御部14に確認信号を送信しないようにしてもよい。
【0053】
第2制御部14は、監視部13bからの読み出し要求通知を受けて記憶部18に第2ファームウェアの読み出し要求を行う(ステップS19)。記憶部18は、第2記憶領域182に第2ファームウェアが記憶されているか否かを判定し、第2ファームウェアが記憶されている場合、第2ファームウェアを第2制御部14にデータ送信する(ステップS20)。
【0054】
第2制御部14は、記憶部18からのデータ送信に基づいて第2ファームウェアの更新処理を実行する(ステップS21)。第2制御部14においてファームウェア更新処理が終了した後、第2制御部14は、記憶部18に第2ファームウェアの消去要求を行う(ステップS22)。記憶部18は、当該消去要求に応じて第2ファームウェアの消去処理を行う(ステップS23)。その後、第2制御部14は、第2ファームウェアが消去されたことを確認するために、再度第2ファームウェアの読み出し要求を行う(ステップS24)。記憶部18は、第2ファームウェアが記憶されていない(消去された)ことを示す応答を行う(ステップS25)。
【0055】
第2制御部14は、記憶部18において第2ファームウェアが消去されたことを確認した後、第1制御部13にリセット要求通知を送信する(ステップS26)。さらに、第2制御部14は、自身のリセット処理を実行する(ステップS27)。リセット要求通知を受信した第1制御部13もリセット処理を実行する(ステップS28)。これにより、第1制御部13における異常判定無効処理が解除され、リセット処理後、第1制御部13が再起動すると、第1制御部13における第2制御部14に対する異常判定が有効化される。
【0056】
上記構成によれば、複数の制御部13,14のうちの一の制御部が他の制御部からの所定の信号の送信の有無で異常判定を行う一方で、他の制御部がファームウェアを更新しているファームウェア更新期間においては、他の制御部に対する異常判定が無効になる。したがって、ファームウェアの更新中に他の制御部と通信ができなくなる複数の制御部13,14を備えた構成において、複数の制御部13,14間で通信を行うことによる異常判定を適切に行うことができる。
【0057】
また、本実施の形態においては、複数の制御部13,14において制御部ごとに異なる複数のファームウェアが、1つの記憶部18に記憶される。したがって、管理装置5から通信網4を介してダウンロードしたファームウェアを給湯器1の記憶部18に一度記憶させてから各制御部13,14のファームウェアを更新することにより、制御部までの通信経路に低速な経路(2芯ケーブルC1による通信経路)が含まれている場合でも、各制御部13,14におけるファームウェアの更新期間を短くすることができる。さらに、記憶部18を複数の制御部13,14に共通とすることにより、制御部13,14が設けられる制御基板の面積を小さくすることができる。
【0058】
さらに、本実施の形態においては、第1制御部13における監視部13bが、第2ファームウェアが記憶されている場合に、第2制御部14に記憶部18へのアクセスを許可する許可通知(本実施の形態における第2ファームウェアの読み出し要求)を送信可能であり、第2制御部14は、当該許可通知を受信した場合に記憶部18へのアクセスを実行する。
【0059】
より具体的には、上述したように、第1制御部13の監視部13bが記憶部18に記憶されたファームウェアの更新対象である制御部を判別し、第2制御部14に対してファームウェアの読み出し要求通知を送信する。第2制御部14は、監視部13bからの読み出し要求通知を受けて記憶部18に第2ファームウェアの読み出し要求を行う。すなわち、監視部13bとして機能する第1制御部13以外の制御部(第2制御部14)は、監視部13bからの読み出し要求を受けない限り、記憶部18にアクセスすることがない。
【0060】
これにより、監視部13bが記憶部18へアクセスする制御部を把握することができるため、複数の制御部13,14が、制御部ごとに異なる複数のファームウェアが記憶され得る1つの記憶部18に、同時にアクセスすることによる悪影響を防止することができる。
【0061】
例えば、一の制御部が記憶部18からファームウェアのデータを読み出して一の制御部のメモリに転送する際には一の制御部が記憶部18のクロック周波数に同期する必要がある。しかし、複数の制御部13,14が同時に記憶部18にアクセスしようとすると、記憶部18のクロック周波数が乱れる等の影響が生じ得る。これによって、正常なデータ転送が行えない、転送速度が遅くなる等の問題が生じる。一方、上記のように、記憶部18にアクセスできる制御部を1つの制御部に制限することにより、このような問題が生じるのを防止することができる。
【0062】
また、第1制御部13の監視部13bからの通信に基づいて第2制御部14における、異常判定無効化処理が実施される。したがって、一の制御部13において複数の制御部13,14におけるファームウェアの更新処理およびその間の異常判定無効処理を統括制御することができる。
【0063】
さらに、本実施の形態においては、上述したように、各制御部13,14は、自身の制御部におけるファームウェアの更新処理が終了した場合、他の制御部に対して、自身の制御部に対する異常判定を再開するための再開処理実行通知(リセット要求通知)を送信する。これにより、ファームウェアの更新処理の終了後において自動的に異常判定が再開されるため、異常判定が無効な期間を最小限にすることができる。
【0064】
また、本実施の形態においては、ファームウェアの更新処理後に、記憶部18に対して対応するファームウェアの消去要求が行われる。これにより、更新済みのファームウェアを記憶部18から逐次削除することができ、記憶部18の記憶容量を小さく抑えることができる。したがって、制御装置12の低コスト化、制御基板の小面積化を図ることができる。
【0065】
(他の実施の形態)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
【0066】
例えば、上記実施の形態においては、制御装置12の内部に複数の制御部が設けられる態様について説明したが、複数の制御部において互いに異なるファームウェアの更新が要求される構成であれば、これに限られない。例えば、給湯器本体11に設けられた操作部に制御部が設けられる構成において、当該制御部と、制御装置12の内部に設けられる上記第1制御部13および/または第2制御部14との間で上記制御態様を適用してもよい。
【0067】
また、給湯器1の温度設定操作等を行うために、浴室または台所等に設置されるリモコンに複数の制御部が設けられる構成において、当該複数の制御部間で上記制御態様を適用してもよい。この場合、記憶部18は、リモコン(の制御基板)に設けられる。さらに、リモコンにおける1または複数の制御部と、制御装置12に設けられる1または複数の制御部13,14との間で上記制御態様を適用してもよい。
【0068】
リモコンは、制御装置12の通信部17に2芯ケーブルC1を介して接続される。したがって、このような複数の制御部間に低速な経路が含まれる場合には、記憶部18を各制御部が設けられている制御基板にそれぞれ設けることが好ましい。例えば、制御装置12に第1の記憶部が設けられるとともに、リモコンに第2の記憶部が設けられてもよい。また、リモコンが複数設けられる場合には、複数のリモコンにそれぞれ設けられる制御部間で上記制御態様を適用してもよい。
【0069】
また、上記実施の形態において、記憶部18は、制御部ごと(ファームウェアの更新対象ごと)に異なる複数の記憶領域181,182を備える態様を例示したが、これに限られない。例えば、記憶部18は、複数のファームウェアを共通の記憶領域に記憶するように構成され、一のファームウェアが記憶されている場合(更新されていない場合)には他のファームウェアを記憶させないように構成されてもよい。また、記憶部18は複数の記憶部により構成されてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態において、制御部13,14、入出力部16、通信部17および記憶部18が通信バス15を介して互いに接続される構成について説明したが、これに代えて、独立した複数の信号線を用いて各構成間を相互に接続するように構成してもよい。
【0071】
また、上記実施の形態において、複数の制御部として2つの制御部13,14を備える態様について説明したが、制御部は3つ以上でもよい。例えば第1制御部13および第2制御部14に加えて、第3制御部が設けられる場合、第1制御部13がファームウェア更新処理を実行する際、第1制御部13の監視部13bは、第2制御部14および第3制御部に判定無効通知を送信する。第2制御部14がファームウェア更新処理を実行する際、第1制御部13の監視部13bは、第3制御部に判定無効通知を送信し、第1制御部13において異常判定無効処理を実行する。
【0072】
また、上記実施の形態において、ファームウェアの更新処理が終了した場合に、他の制御部に対して送信する再開処理実行通知としてリセット要求通知を行う態様について説明したが、これに限られない。例えば、リセット要求通知とは独立した再開処理実行通知を他の制御部に送信してもよい。すなわち、他の制御部においてリセット処理を行うことなく異常判定の有効化処理を行ってもよい。
【0073】
また、温水機器として、給湯器1を例に挙げたが、これに限らず、中継装置2を介して管理装置5と通信可能に構成された温水機器であればよい。例えば、本発明は、住宅設備機器である給湯器を備えた住宅設備機器システムだけでなく業務用の設備機器である業務用浴場システムにも適用可能である。また、温水機器システムは、無線LANルータ3の代わりに、中継装置2と有線LAN接続されるルータを備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、複数の制御部間で通信を行うことによる異常判定を適切に行うために有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 給湯器(温水機器)
4 通信網
5 管理装置
11 給湯器本体(温水機器本体)
13 第1制御部
13a,14a 異常判定部
13b 監視部
14 第2制御部
17 通信部
18 記憶部
図1
図2
図3
図4