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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】フレキシブル配線基板用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/79 20110101AFI20230705BHJP
   H01R 12/88 20110101ALI20230705BHJP
   H01R 13/6471 20110101ALI20230705BHJP
【FI】
H01R12/79
H01R12/88
H01R13/6471
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019050483
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020155243
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜也
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-196995(JP,A)
【文献】特開2010-056066(JP,A)
【文献】特許第3029985(JP,B2)
【文献】特開平09-167663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/56/13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル配線基板用コネクタ(9)であって、
コネクタ本体(10)と、
1以上の信号端子(20S)と1以上のグランド端子(20G)を含み、各々がフレキシブル配線基板(8)の端子(8T)との電気的な接続のために前記コネクタ本体(10)に設けられた複数のコンタクト端子(20)と、
前記コネクタ本体(10)により回動可能に支持されると共に、前記コネクタ本体(10)側に前記フレキシブル配線基板(8)を押圧するように構成されたロック部(34)を有するロックカバー(30)と、
前記コネクタ本体(10)に対して取り付けられると共に、前記フレキシブル配線基板(8)側に前記ロック部(34)を押圧するように構成された1以上の導電性の押圧片(40)とを備え、
前記コンタクト端子(20)及び前記押圧片(40)は、互いに電気的に非接続であって、かつ、前記コネクタ本体(10)に対して別々に設けられ、
前記押圧片(40)が、前記フレキシブル配線基板(8)の前記端子(8T)に電気的に非接続に設けられ
前記押圧片(40)は、前記ロックカバー(30)の回動軸に沿う方向において隣接する前記コンタクト端子(20)の間に設けられることを特徴とする、フレキシブル配線基板用コネクタ。
【請求項2】
前記押圧片(40)は、前記ロックカバー(30)の回動軸に対して直交するように配置された平板部分を含む、請求項1に記載のフレキシブル配線基板用コネクタ。
【請求項3】
前記コネクタ本体(10)は、誘電体(50)を収容する収容部(19)を含み、
前記押圧片(40)は、前記収容部(19)から前記誘電体(50)が脱落することを阻止する、請求項1又は2に記載のフレキシブル配線基板用コネクタ。
【請求項4】
前記押圧片(40)は、押圧片主部(41)と回転阻止部(42)を含む屈曲部材であり、前記回転阻止部(42)と前記コネクタ本体(10)の接触により前記押圧片(40)の回転が阻止される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフレキシブル配線基板用コネクタ。
【請求項5】
少なくとも一つの前記信号端子(20S)と少なくとも一つの前記グランド端子(20G)の組み合わせから成るコンタクト端子(20)の端子配列サブセット(20U)が前記ロックカバー(30)の回動軸に沿う方向に配列され、
各押圧片(40)は、前記端子配列サブセット(20U)の配列方向において隣接する一方の端子配列サブセット(20U)に含まれる前記少なくとも一つの信号端子(20S)と他方の端子配列サブセット(20U)に含まれる前記少なくとも一つの信号端子(20S)の間に設けられる、請求項1乃至のいずれか一項に記載のフレキシブル配線基板用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたフレキシブル配線基板用コネクタは、コネクタ本体に抑え金具が取り付けられ、フレキシブル配線基板の上方変位が規制されるようになっている。結果として、フレキシブル配線基板から受ける力(反力)に応じて加圧部材が解放位置側に回動し、フレキシブル配線基板に対する加圧部材からの加圧力の低下が抑制される。同文献の図3に示すように、接触子は、U字状形状を呈し、接触フィンガー部4と、加圧部材の回動を支持する円形状部分5を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3029985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のコネクタの接触子は、信号伝送路の部分(上述の符号4が付与された部分)と加圧部材を抑える部分(上述の符号5が付与された部分)が一体化されている。この構成は、高周波信号の伝送において不利に働き得る。本願発明者は、高周波信号の伝送を可能とするフレキシブル配線基板用コネクタを提供するという新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタは、コネクタ本体と、コネクタ本体に設けられた複数のコンタクト端子と、コネクタ本体により回動可能に支持されると共に、コネクタ本体側にフレキシブル配線基板を押圧するように構成されたロック部を有するロックカバーと、コネクタ本体に対して取り付けられると共に、フレキシブル配線基板側にロック部を押圧するように構成された1以上の導電性の押圧片とを含む。コンタクト端子及び押圧片は、互いに電気的に非接続であって、かつ、コネクタ本体に対して別々に設けられる。
【0006】
幾つかの実施形態においては、押圧片は、ロックカバーの回動軸に対して直交するように配置された平板部分を含む。
【0007】
幾つかの実施形態においては、コネクタ本体は、誘電体を収容する収容部を含み、押圧片は、収容部から誘電体が脱落することを阻止する。
【0008】
幾つかの実施形態においては、押圧片は、押圧片主部と回転阻止部を含む屈曲部材である。
【0009】
幾つかの実施形態においては、押圧片は、ロックカバーの回動軸に沿う方向において隣接するコンタクト端子の間に設けられる。
【0010】
幾つかの実施形態においては、少なくとも一つの信号端子と少なくとも一つのグランド端子の組み合わせから成るコンタクト端子の端子配列サブセットがロックカバーの回動軸に沿う方向に配列され、
各押圧片は、端子配列サブセットの配列方向において隣接する一方の端子配列サブセットに含まれる少なくとも一つの信号端子と他方の端子配列サブセットに含まれる少なくとも一つの信号端子の間に設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、高周波信号の伝送を可能とするフレキシブル配線基板用コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタの概略的な斜視図である。
図2】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタの概略的な斜視図であり、図1の反対側が示される。
図3】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタの概略的な上面図である。
図4】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタの概略的な前側面図である。
図5】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタにおける図4のV-V線に沿う概略的な断面図であり、ロックカバーがロック状態にある。
図6】本開示の一態様に係るコネクタにおける概略的な断面図であり、ロックカバーが非ロック状態にある。
図7】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、ロックカバーが非ロック状態においてフレキシブル配線基板が挿入されることを示す模式図である。
図8】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、ロックカバーが非ロック状態においてフレキシブル配線基板が挿入された状態を示す模式図である。
図9】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、ロックカバーが非ロック状態からロック状態に回動され、フレキシブル配線基板がロックカバーとコネクタ本体の間で挟まれることを示す模式図である。フレキシブル配線基板は、ロックカバーのロック部とコンタクト端子の間で挟まれる。
図10】本開示の一態様に係るフレキシブル配線基板用コネクタにおいてフレキシブル配線基板がロックカバーとコネクタ本体の間で挟まれ、フレキシブル配線基板の端子がコンタクト端子に接触した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1乃至図10を参照しつつ、本開示に係る様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示されたコネクタ及びその製造方法にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々なコネクタ及びその製造方法にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0014】
図1は、コネクタ9の概略的な斜視図である。図2は、コネクタ9の概略的な斜視図であり、図1の反対側が示される。コネクタ9の構造を具体的に説明するため、次のように方向が定義される。幅方向は、L,Riの間を延びる双頭矢印により特定される。後述の説明から分かるように、幅方向は、ロックカバー30の回動軸に沿う方向に等しい。代替的として、幅方向を左右方向と呼ぶこともできる。厚み方向は、U,Dの間を延びる双頭矢印により特定される。前後方向は、F,Reの間を延びる双頭矢印により特定される。RiからLに向かう方向が左方と呼ばれ、反対が右方と呼ばれる。DからUに向かう方向が上方と呼ばれ、反対が下方と呼ばれる。ReからFに向かう方向が前方と呼ばれ、反対が後方と呼ばれる。本段落で述べた方向は、本明細書の以下の記述又は図面の内容に照らして再定義可能であるものとする。
【0015】
コネクタ9は、樹脂パーツと金属パーツの複合体であり、フレキシブル配線基板8(図7参照)を機械的に固定する役割とフレキシブル配線基板8を外部配線、ひいては外部回路に対して電気的に接続する役割を担う。外部配線は、例えば、コネクタ9が実装された基板(不図示)上の配線である。コネクタ9は、リフロー工程により実装基板に対して固定され得る。外部回路は、例えば、コネクタ9が実装された基板上の回路である。
【0016】
図1及び図2に示すように、コネクタ9は、絶縁性のコネクタ本体10と、コネクタ本体10に設けられた複数のコンタクト端子20と、コネクタ本体10により回動可能に支持されたロックカバー30と、コネクタ本体10に対して取り付けられた1以上の押圧片40を含む。ロックカバー30は、コネクタ本体10側にフレキシブル配線基板8を押圧するように構成されたロック部34を有する。押圧片40は、コネクタ本体10とロックカバー30の間でフレキシブル配線基板8が挟まれる時、フレキシブル配線基板8側にロック部34を押圧するように構成される。コネクタ本体10及びロックカバー30は、プラスチック材料(例えば、LCP)から成り、コンタクト端子20及び押圧片40は、導電性材料(例えば、りん青銅といった金属)から成る。コンタクト端子20は、表面保護又は半田ぬれ性を確保するためにメッキ(例えば、金メッキ)が施され得る。
【0017】
本実施形態においては、コンタクト端子20及び押圧片40は、互いに電気的に非接続であって、コネクタ本体10に対して別々に設けられる。これによりフレキシブル配線基板8との良好な電気的な接続のためにコンタクト端子20の形状を最適化することができる。また、コンタクト端子20に対してバネ性を付与することができ、フレキシブル配線基板8との良好な接触が確保される。更には、コンタクト端子20及び押圧片40が互いに非接触となるように分離したことにより、コンタクト端子20及び押圧片40が接触せず、かつ導通せず、高周波信号の伝送のためにコンタクト端子20の形状が最適化される。その結果、コンタクト端子20は、信号伝送路以外の不要な部分を持たず、例えば、30GHz以上の高周波信号の伝送にコネクタ9を用いることができる。
【0018】
コネクタ本体10は、コネクタ9の幅方向(左右方向)において長尺であり、同方向において第1端部11と第2端部12を有する。第1端部11を右側端部と呼び、第2端部12を左側端部と呼んでも良い。コネクタ本体10は、更に、第1端部11と第2端部12の間を延びる平板部13と壁部14を有する。平板部13は、壁部14の前方に間隔を開けて配置される。第1端部11及び第2端部12の各々に取付部18が設けられ、各取付部18に金属製の補強部材19が取り付けられる。第1端部11と第2端部12の間でロックカバー30が回動可能に軸支される。平板部13の上面には、1以上のガイド突起、図示例では、第1及び第2ガイド突起16,17が設けられる。各ガイド突起16,17は、前方から後方に向かうに応じて徐々に上方に延びる傾斜面を有する。
【0019】
図3及び図4に示すように、コネクタ本体10には複数のコンタクト端子20が設けられる。幾つかの実施形態では、コンタクト端子20は、インサート成形によって部分的にコネクタ本体10に埋め込まれ、コネクタ本体10に固定される。図5に示すように、コンタクト端子20は、フレキシブル配線基板8の端子8T(図10参照)に接触するべきコンタクト部21が設けられたバネ部22と、コネクタ本体10に埋め込まれた埋め込み部23と、外部配線との電気的な接続のための屈曲部24を含む。コンタクト部21は、上方に凸状に湾曲している。バネ部22は、コンタクト部21に向かって漸次上方に延びる部分を含む。バネ部22は、更に、コンタクト部21を頂部とし、そこから前方に向かうに応じて漸次下方に延びる部分を含む。埋め込み部23は、前後方向に平坦に延びる。屈曲部24は、2箇所で屈曲している。屈曲部24の後端部は、コネクタ9の実装基板上に載置される。コネクタ本体10に対してコンタクト端子20を圧入して固定する形態も想定される。
【0020】
図3に示すように、複数のコンタクト端子20がコネクタ9の幅方向に配列される。幾つかの実施形態では、複数のコンタクト端子20は、少なくとも一つの信号端子20Sと少なくとも一つのグランド端子20Gの組み合わせから成るコンタクト端子20の端子配列サブセット20Uがコネクタ9の幅方向(ロックカバー30の回動軸に沿う方向)に配列されて構成される。端子配列サブセット20Uは、信号端子20Sのペアと、信号端子20Sのペアを挟むグランド端子20Gのペアから構成された4端子サブセットである。端子配列サブセット20UをGSSG端子配列サブセットと呼ぶことができ、ここで、Gは、グランド端子を表し、Sは信号端子を表す。信号端子20Sのペアは、差動信号の伝送のために用いられ得る。コネクタ9の幅方向において隣接する端子配列サブセット20Uの間に押圧片40が配置される。
【0021】
各押圧片40は、端子配列サブセット20Uの配列方向において隣接する一方の端子配列サブセット20Uに含まれる少なくとも一つの信号端子20Sと他方の端子配列サブセット20Uに含まれる少なくとも一つの信号端子20Sの間に設けられる。高周波信号の伝送路である信号端子20Sに対して押圧片40が与え得る電気的な影響、例えば、寄生容量成分が低減される。
【0022】
押圧片40は、コネクタ9の幅方向(ロックカバー30の回動軸に沿う方向)において隣接するコンタクト端子20、図示例ではグランド端子20Gの間に設けられる。押圧片40は、幅方向において隣接する一方の端子配列サブセット20Uに含まれるグランド端子20Gと、他方の端子配列サブセット20Uに含まれるグランド端子20Gの間に配置される。高周波信号の伝送路である信号端子20Sに対して押圧片40が与え得る電気的な影響、例えば、寄生容量成分が低減される。
【0023】
上述のように、ロックカバー30は、コネクタ本体10の第1端部11と第2端部12の間で回動可能に軸支される。ロックカバー30は、コネクタ本体10とは別に射出成形により成形され、コネクタ本体10に対して取り付けられる。ロックカバー30は、第1端部31、第2端部32、及び第1端部31と第2端部32の間を延びるカバー本体33を有する。第1端部31には右方に突出した凸部が設けられ、コネクタ本体10の第1端部11の凹部に対して嵌合する。第1端部31に凹部が設けられ、コネクタ本体10の第1端部11の凸部が設けられる形態も想定される。第2端部32には左方に突出した凸部が設けられ、コネクタ本体10の第2端部12の凹部に対して嵌合する。第2端部32に凹部が設けられ、コネクタ本体10の第2端部12に凸部が設けられる形態も想定される。なお、参考までに、図7は、上述の凸部及び凹部の嵌合を模式的に示す。
【0024】
図5に示すように、ロックカバー30は、ロックカバー30の回動軸に沿って延びるロック部34を有する。ロック部34は、ロックカバー30の回動軸上に配される部分を含み得る。しかし、このような態様に限らず、ロック部34が、ロックカバー30の回動軸からオフセットして配置される形態も想定される。図示例に示すように、第1端部31と第2端部32の間において、複数のロック部34が配置される形態が想定される。複数のロック部34は、例えば、同軸上又は同一線上に配置される。好適には、各ロック部34が、コネクタ9の幅方向に直交する断面において同一の断面形状を有するが、必ずしもこの限りではない。ロックカバー30に設けられるロック部34の個数は、コネクタ本体10に対して取り付けられる押圧片40の個数と同一であるが、必ずしもこの限りではない。
【0025】
上述の形態の代替として、第1端部31と第2端部32の間において、一つのロック部34が幅方向に沿って連続的に延びる形態が想定される。この形態では、コネクタ本体10に対して取り付けられる複数の押圧片40に対して共通の単一のロック部34が用いられる。
【0026】
ロック部34は、ロックカバー30の回動に応じてロックカバー30の回動軸に関して回動する。ロック部34は、押圧片40の押圧部44により下方に押圧されるべき部分である。ロック部34は、コネクタ9の幅方向に直交する断面において1以上の(有利には複数の)弧状面を有する。図示例では、ロック部34は、ロックカバー30の回動軸に対して直交する断面において反対側を臨むように設けられた第1及び第2弧状面34m,34nを含む。図5に示すように、ロックカバー30がロック状態の時、ロック部34の第1弧状面34mが上方を臨み、第2弧状面34nが下方を臨む。図6に示すように、ロックカバー30が非ロック状態の時、ロック部34の第1弧状面34mが後方を臨み、第2弧状面34nが前方を臨む。第1弧状面34mは、第2弧状面34nよりも大きい曲率半径を有する。第1弧状面34mと第2弧状面34nの間には第1弧状面34mから第2弧状面34nに向けてお互いに接近するテーパー状の傾斜面が設けられる。
【0027】
ロック部34は、コンタクト端子20と協調してフレキシブル配線基板8を挟むように構成される。ロック部34は、コンタクト端子20、端的には、そのバネ部22の直上に配置され得る。コンタクト端子20によりフレキシブル配線基板8がロック部34に向けて付勢された状態となり、コンタクト端子20とロック部34の間でフレキシブル配線基板8がより強固に挟まれることが促進される(図9,10参照)。なお、図9,10に示すように、コネクタ本体10とロックカバー30の間でフレキシブル配線基板8が挟まれる時、第1弧状面34mと押圧部44が接触し、第2弧状面34nとフレキシブル配線基板8が接触する。
【0028】
ロックカバー30は、ロック部34に隣接して形成された1以上のスロット35を有する。ロックカバー30にスロット35を設けることにより、ロックカバー30と押圧片40の干渉が回避される。スロット35は、ロック部34に隣接する位置で、ロックカバー30の上面30pと下面30qの間を貫通する。図5に示すように、ロックカバー30がロック状態の時、押圧部44(その前端部)がスロット35上に配置される。図6に示すように、ロックカバー30が非ロック状態の時、押圧部44(その前端部)がスロット35に挿入される。スロット35は、矩形状の上側口及び下側口を有する。上側口は、下側口よりも広い開口面積を有する。
【0029】
幾つかの形態では、ロックカバー30の幅方向に複数のスロット35が配置される。ロックカバー30の幅方向に隣接するスロット35の間には、幅方向に延びるカバー本体33の部分が存在する。ロックカバー30に設けられるスロット35の個数は、ロックカバー30に設けられるロック部34の個数と同一であり得る。ロックカバー30に設けられるスロット35の個数は、押圧片40に設けられる押圧部44の個数と同一であり得る。ロックカバー30の幅方向において隣接するスロット35を統合して一つの幅広なスロットを形成することもできる。
【0030】
コネクタ9の幅方向(ロックカバー30の回動軸に沿う方向)において複数の押圧片40が配列される。各押圧片40は、ロックカバー30の回動軸に対して直交するように配置された平板部分を含み(端的には、平板材であり)、例えば、プレス機による金属板の打ち抜き加工により製造される。押圧片40の厚み方向は、コネクタ9の幅方向に一致する。他方、コンタクト端子20の厚み方向は、コネクタ9の厚み方向に一致する。押圧片40の厚み方向とコンタクト端子20の厚み方向は直交している。結果として、コンタクト端子20、すなわち信号端子20Sに対する寄生容量成分が低減される。なお、金属板の打ち抜き加工と曲げ加工の組み合わせにより、図2に示す複数の個別の押圧片40を一部品とすることもできる。
【0031】
押圧片40は、ロック部34を下方に押圧する押圧部44を有する。押圧部44は、ロック部34の回動を妨げないように適切に形状付けられる。押圧部44は、ロック部34の第1弧状面34mを下方に押圧するための押圧面44pとこれに隣接して設けられた逃がし面44qを有する。ロックカバー30がロック状態から非ロック状態に回動する時、ロック部34の第1弧状面34mは、押圧面44pに接触又は対面した状態から逃がし面44qに接触又は対面した状態になる。逃がし面44qは、後方に向かうに応じて徐々に下降する傾斜面である。
【0032】
押圧片40は、少なくとも押圧片主部41と回転阻止部42を含む屈曲部材、端的には、L字形部材である。押圧片主部41は、コネクタ9の前後方向(コネクタ9に対するフレキシブル配線基板8の挿脱方向)に延び、コネクタ本体10のスロット15に挿入される。回転阻止部42は、コネクタ9の厚み方向に延び、コネクタ本体10の壁部14の後方に配置される。フレキシブル配線基板8がロック部34とコンタクト端子20の間に挟まれる時、コンタクト端子20によりフレキシブル配線基板8が上方に付勢され、フレキシブル配線基板8によりロック部34、続いて押圧片40の押圧部44が上方に押される。押圧片40の押圧部44が上方に押され、押圧片40は、図5を正面視して時計回りの回転力を受ける。押圧片40に回転阻止部42を設けることにより、仮に押圧片40が上述の回転力に応じて回転するとしても、押圧片40の回転阻止部42とコネクタ本体10、特にその壁部14の接触により、押圧片40は、上述の回転力に対して十分に耐えることができる。これにより、コネクタ本体10に対する押圧片40のより強固な取付が促進される。
【0033】
押圧片主部41は、コネクタ本体10の壁部14のスロット15に挿入される。スロット15は、矩形状の前口と後口を有する。コネクタ本体10に対して押圧片40が取り付けられる時、スロット15の後口を介してスロット15内に押圧片主部41が挿入される。この挿入の結果、押圧片主部41がスロット15の前口から十分に突出し、回転阻止部42が壁部14に接触又は近接して配置される。なお、スロット15は、コネクタ9の幅方向において狭く、コネクタ9の厚み方向において長い開口である。コネクタ本体10に対する押圧片40の取り付けは、他の様々な態様が想定され、図示例に限定されるべきではない。コネクタ本体10の壁部14の上面に溝を設ける形態も想定される。
【0034】
オプションとして、コネクタ本体10は、誘電体50を収容する収容部10Hを含む。誘電体50は、例えば、LCPベース導電性樹脂から成る。押圧片40、特にその回転阻止部42は、収容部10Hから誘電体50が脱落することを阻止する。誘電体50は、高周波信号にリップルが生じることを抑制するために設けられる。
【0035】
図7乃至図10を参照してコネクタ9に対するフレキシブル配線基板8を取り付ける方法について説明する。図7に示すように、まず、ロックカバー30をコネクタ本体10から離間するように後方に回動して非ロック状態にする。ロックカバー30が非ロック状態の時、平板部13上にロックカバー30が配されない。従って、ロックカバー30により妨害されることなく、平板部13上にフレキシブル配線基板8の一端を簡単に配置することができる。平板部13上にはガイド突起17が形成されている。従って、フレキシブル配線基板8を後方に移動させる時、フレキシブル配線基板8の挿入端がガイド突起17により上方に変位し、コンタクト端子20に衝突して停止してしまうことが回避又は抑制される。フレキシブル配線基板8は、ガイド突起17との接触に応じて局所的に撓むことができる。コンタクト端子20は、その前端からコンタクト部21まで後方に向かうに応じて徐々に上方に延びる傾斜面を有する。このようにコンタクト端子20自体がガイド性能を有する場合、ガイド突起17を省略することもできる。
【0036】
図8に示すように、フレキシブル配線基板8は、壁部14の前壁面に衝突して停止する。フレキシブル配線基板8の適切な停止位置を決定するためのフレキシブル配線基板8に対して停止部をコネクタ本体10に設けることができる。例えば、壁部14の前壁面に停止用突起を設けることができる。
【0037】
次に、カバー本体10に接近するようにロックカバー30を前側に回動させてロック状態とする(図9参照)。これによりロックカバー30、特にカバー本体33とロック部34によりフレキシブル配線基板8が下方に押され、フレキシブル配線基板8によりコンタクト端子20が下方に押される。結果として、図10に示すように、ロックカバー30とコンタクト端子20の間でフレキシブル配線基板8が挟まれ、また、フレキシブル配線基板8の端子8Tがコンタクト端子20のコンタクト部21に接触して導通する。前後方向において、端子8Tとコンタクト部21の接触箇所よりも前方にフレキシブル配線基板8とカバー本体33の接触箇所が存在する。前後方向において、端子8Tとコンタクト部21の接触箇所よりも後方にフレキシブル配線基板8とロック部34の接触箇所が存在する。ロックカバー30とフレキシブル配線基板8の接触箇所を2以上設けることにより、ロックカバー30とコンタクト端子20の間でフレキシブル配線基板8をより安定して保持することができる。なお、ロックカバー30の下面30qに幅方向に配置された複数の押圧突起を設けることもできる。
【0038】
上述の教示を踏まえると、当業者は、各実施形態及び各特徴に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0039】
8 :フレキシブル配線基板
9 :コネクタ

10 :コネクタ本体
10H :収容部
11 :第1端部
12 :第2端部
13 :平板部
14 :壁部
15 :スロット

20 :コンタクト端子
20G :グランド端子
20S :信号端子
20U :端子配列サブセット
21 :コンタクト部
22 :バネ部
23 :埋め込み部
24 :屈曲部

30 :ロックカバー
31 :第1端部
32 :第2端部
33 :カバー本体
34 :ロック部
34m :第1弧状面
34n :第2弧状面
35 :スロット

40 :押圧片
41 :押圧片主部
42 :回転阻止部
44 :押圧部
44p :押圧面
44q :逃がし面
50 :誘電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10