(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
A61N1/39
(21)【出願番号】P 2022502763
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008250
(87)【国際公開番号】W WO2021171540
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 康弘
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特許第4672802(JP,B1)
【文献】特開2016-128052(JP,A)
【文献】特開2018-134447(JP,A)
【文献】特表2007-524456(JP,A)
【文献】特表2005-520650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/39
A61N 1/05
A61N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心腔内に挿入されて電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力供給を行う電源装置であって、
前記電力供給を行う電源部と、
前記除細動カテーテル内に保持されている
、固有の識別情報
および前記除細動カテーテルの使用回数の情報を、それぞれ読み出す読出部と、
前記読出部によって読み出された
、前記識別情報
および前記除細動カテーテルの使用回数の情報に基づいて、前記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定する判定部と
を備え、
前記判定部は、
前記識別情報が非正規な情報であると判定された場合には、前記除細動カテーテルの使用が無効であると判定し、
前記識別情報が正規な情報であると判定された場合には、前記除細動カテーテルの使用開始時からの経過時間も考慮して、前記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定すると共に、
前記識別情報が正規な情報であると判定された場合において、前記経過時間が閾値時間以内である場合には、前記除細動カテーテルの使用が有効であると判定し、
前記識別情報が正規な情報であると判定された場合において、前記経過時間が前記閾値時間超過である場合には、前記除細動カテーテルの使用回数の情報も考慮して、前記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定する
電源装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記経過時間が前記閾値時間超過である場合において、
前記使用回数が閾値回数以内である場合には、前記除細動カテーテルの使用が有効であると判定し、
前記使用回数が前記閾値回数超過である場合には、前記除細動カテーテルの使用が無効であると判定する
請求項
1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記読出部は、前記除細動カテーテル内に保持されている、前記除細動カテーテルの使用状況情報を、更に読み出すようになっており、
前記判定部は、
前記識別情報が正規な情報であると判定された場合において、
前記読出部によって読み出された前記使用状況情報が、未使用中を示している場合には、前記除細動カテーテルの使用が有効であると判定し、
前記読出部によって読み出された前記使用状況情報が、使用中を示している場合には、前記経過時間も考慮して、前記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定する
請求項
1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
操作者による操作が行われる入力部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部と、
前記判定部によって前記除細動カテーテルの使用が有効であると判定された場合にのみ、前記電力供給を実行させるための、前記入力部での前記操作者による操作の受付を有効化する、実行許可部と、
を更に備えた
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動カテーテルに対して電力供給を行う電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルを備えたカテーテルシステムの一例として、以下のような除細動カテーテルシステムが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。具体的には、例えば心臓カテーテル術中に生じた心房細動を除去する(電気的な除細動を行う)ための医療機器の1つとして、除細動カテーテルシステムが開発されている。この除細動カテーテルシステムは、心腔内に挿入されて除細動を行う除細動カテーテルと、この除細動カテーテルに対して除細動の際の電力供給を行う電源装置とを備えている。このような除細動カテーテルシステムを用いることで、心房細動を起こした心臓に対し、心腔内で直接的に電気的刺激(例えば直流電圧からなる電気的エネルギー)が付与される結果、効果的な除細動治療が実現されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、上記した除細動カテーテルシステムに適用される電源装置では一般に、例えば、除細動カテーテルを使用する際の利便性を向上することが求められている。除細動カテーテルを使用する際の利便性を向上させることが可能な電源装置を提供することが望ましい。
【0005】
本発明の一実施の形態に係る電源装置は、患者の心腔内に挿入されて電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力供給を行う電源装置であって、上記電力供給を行う電源部と、上記除細動カテーテル内に保持されている、固有の識別情報および除細動カテーテルの使用回数の情報を、それぞれ読み出す読出部と、この読出部によって読み出された、識別情報および除細動カテーテルの使用回数の情報に基づいて、上記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定する判定部と、を備えている。上記判定部は、上記識別情報が非正規な情報であると判定された場合には、上記除細動カテーテルの使用が無効であると判定し、上記識別情報が正規な情報であると判定された場合には、上記除細動カテーテルの使用開始時からの経過時間も考慮して、上記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定すると共に、上記識別情報が正規な情報であると判定された場合において、上記経過時間が閾値時間以内である場合には、上記除細動カテーテルの使用が有効であると判定し、上記識別情報が正規な情報であると判定された場合において、上記経過時間が上記閾値時間超過である場合には、上記除細動カテーテルの使用回数の情報も考慮して、上記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定する。
【0006】
本発明の一実施の形態に係る電源装置では、上記除細動カテーテル内に保持されている固有の識別情報が読み出され、その固有の識別情報に基づいて、その除細動カテーテルの使用に関する有効性が判定される。これにより、上記除細動カテーテル内における固有の識別情報を利用して、その除細動カテーテルの使用が有効なのか否かの判定結果が、容易に得られるようになる。その結果、非正規な除細動カテーテル(例えば、劣化品や模倣品など)の使用を、効果的に排除できるようになる。
また、上記判定部において、上記識別情報が非正規な情報であると判定された場合には、上記除細動カテーテルの使用が無効であると判定し、上記識別情報が正規な情報であると判定された場合には、上記除細動カテーテルの使用開始時からの経過時間も考慮して、上記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定すると共に、上記経過時間が閾値時間以内である場合には、上記除細動カテーテルの使用が有効であると判定することから、以下のようになる。すなわち、上記識別情報が正規な情報である場合でも、上記除細動カテーテルの使用開始時からの経過時間も考慮して、その除細動カテーテルの使用に関する有効性が判定されることから、使用に関する有効性が、より効果的に判定されるようになる。その結果、利便性の更なる向上が図られる。
更に、上記判定部が、上記識別情報が正規な情報であると判定された場合において、上記経過時間が上記閾値時間超過である場合には、上記読出部によって読み出された上記除細動カテーテルの使用回数の情報も考慮して、上記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定することから、以下のようになる。すなわち、上記識別情報が正規な情報であると共に、上記経過時間が上記閾値時間超過である場合でも、上記除細動カテーテルの使用回数の情報も考慮して、その除細動カテーテルの使用に関する有効性が判定されることから、上記経過時間および上記使用回数の双方の情報を加味して、使用に関する有効性が、更に効果的に判定されるようになる。その結果、利便性の更なる向上が図られる。
【0010】
この場合において、例えば、上記判定部が、上記経過時間が上記閾値時間超過である場合において、上記使用回数が閾値回数以内である場合には、上記除細動カテーテルの使用が有効であると判定し、上記使用回数が上記閾値回数超過である場合には、上記除細動カテーテルの使用が無効であると判定するようにしてもよい。このようにした場合、上記経過時間および上記使用回数と、上記閾値時間および上記閾値回数との兼ね合いを考慮することで、使用期限や使用回数限度を超えた劣化品となる除細動カテーテルの使用を、より効果的に排除できるようになる。その結果、利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る電源装置では、上記読出部が、上記除細動カテーテル内に保持されている上記除細動カテーテルの使用状況情報を、更に読み出すようになっていると共に、上記判定部が、上記識別情報が正規な情報であると判定された場合において、上記読出部によって読み出された上記使用状況情報が、未使用中を示している場合には、上記除細動カテーテルの使用が有効であると判定し、上記読出部によって読み出された上記使用状況情報が、使用中を示している場合には、上記経過時間も考慮して、上記除細動カテーテルの使用に関する有効性を判定するようにしてもよい。このようにした場合、上記使用状況情報が使用中を示している場合でも、上記経過時間も考慮して、その除細動カテーテルの使用に関する有効性が判定されることから、使用に関する有効性が、より効果的に判定されるようになる。その結果、利便性の更なる向上が図られる。
【0012】
また、上記電源装置が、操作者による操作が行われる入力部と、上記判定部による判定結果を出力する出力部と、上記判定部によって上記除細動カテーテルの使用が有効であると判定された場合にのみ、上記電力供給を実行させるための、上記入力部での上記操作者による操作の受付を有効化する実行許可部と、を更に有しているようにしてもよい。このようにした場合、上記判定部による判定結果を、操作者(ユーザ)が容易に把握できるようになる。また、上記除細動カテーテルの使用が有効であると判定された場合にのみ、操作者による上記入力部での操作(上記電力供給を実行させるための操作)の受付が有効化されることから、非正規な除細動カテーテルの使用を、より効果的に排除できるようになる。これらの結果、利便性の更なる向上が図られる。
【0013】
本発明の一実施の形態に係る電源装置では、上記識別情報として、例えば、暗号化された情報を用いるようにしてもよい。このようにした場合、上記識別情報が暗号化された情報であることから、識別情報の秘匿性(機密性)が高くなり、例えば他人による識別情報の悪用等が、容易に防止されるようになる。その結果、利便性の更なる向上が図られる。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る電源装置によれば、除細動カテーテル内に保持されている固有の識別情報が読み出され、その固有の識別情報に基づいて、その除細動カテーテルの使用に関する有効性が判定されるようにしたので、非正規な除細動カテーテルの使用を、効果的に排除できるようになる。よって、除細動カテーテルを使用する際の利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る除細動カテーテルシステムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
【
図2】
図1に示した除細動カテーテルの概略構成例を表す模式図である。
【
図3】
図2に示したII-II線に沿ったシャフトの断面構成例を表す模式図である。
【
図4】
図1に示した2種類の時計部および日時情報について説明するための図である。
【
図5】
図1に示した除細動カテーテル内の記憶部に保持されている各種データの一例を表すブロック図である。
【
図6】
図1に示した電源装置内の記憶部に保持されている各種データの一例を表すブロック図である。
【
図7】実施の形態に係る除細動処理の全体処理例を表す流れ図である。
【
図8】
図7中に示した使用の有効性の判定処理における詳細処理例を表す流れ図である。
【
図9】
図7に示した心電位測定の際の動作状態例を模式的に表すブロック図である。
【
図10】
図7に示した抵抗測定の際の動作状態例を模式的に表すブロック図である。
【
図11】
図7に示した除細動実行の際の動作状態例を模式的に表すブロック図である。
【
図12】変形例1に係る使用の有効性の判定処理の詳細処理例を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(除細動カテーテルの使用回数の情報を考慮しない判定処理の場合の例)
2.変形例1~3(除細動カテーテルの使用回数の情報も考慮した判定処理の場合の例)
3.その他の変形例
【0017】
<1.実施の形態>
[全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る除細動カテーテルシステム3の全体構成例を、模式的にブロック図で表したものである。この除細動カテーテルシステム3は、例えば心臓カテーテル術中において患者(この例では患者9)に生じた心房細動を除去する(電気的な除細動を行う)際などに用いられるシステムである。
【0018】
除細動カテーテルシステム3は、
図1に示したように、除細動カテーテル1および電源装置2を備えている。また、この除細動カテーテルシステム3を用いた除細動等の際には、例えば
図1に示したように、心電計4、心電図表示装置5(波形表示装置)および生体測定機構6についても、適宜、用いられるようになっている。
【0019】
(A.除細動カテーテル1)
除細動カテーテル1は、血管を通して患者9の体内(心腔内)に挿入されて、電気的な除細動を行うための電極カテーテルである。
図2は、この除細動カテーテル1の概略構成例を、模式的に表したものである。除細動カテーテル1は、カテーテル本体としてのシャフト11(カテーテルシャフト)と、このシャフト11の基端に装着されたハンドル12と、後述する各種データが保持(記憶)されている記憶部13とを有している。
【0020】
(シャフト11)
シャフト11は、可撓性を有する絶縁性の管状構造(管状部材,チューブ部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。また、シャフト11は、自身の軸方向に沿って延在するように内部に複数のルーメン(細孔,貫通孔)が形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。各ルーメンには、詳細は後述するが、各種の細線(導線や操作用ワイヤ等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。なお、このシャフト11の外径は、例えば1.2mm~3.3mm程度である。
【0021】
このようなシャフト11の先端領域P1には、例えば
図2に示したように、複数の電極(先端電極110およびリング状電極111,112,113)が設けられている。具体的には、シャフト11の軸方向に沿って、1つの先端電極110および複数のリング状電極111,112,113がそれぞれ、シャフト11の先端側から基端側へ向けて、この順で所定の間隔をおいて配置されている。リング状電極111,112,113はそれぞれ、シャフト11の外周面上に固定配置される一方、先端電極110は、シャフト11の最先端に固定配置されている。また、
図2に示したように、互いに間隔をおいて配置された複数のリング状電極111によって、電極群111Gが構成されている。同様に、互いに間隔をおいて配置された複数のリング状電極112によって、電極群112Gが構成され、互いに間隔をおいて配置された複数のリング状電極113によって、電極群113Gが構成されている。
【0022】
なお、ここで言う「電極群」とは、同一の極を構成し(同一の極性を有し)、または、同一の目的を持って、狭い間隔(例えば5mm以下)で装着された複数の電極の集合体を意味しており、以下同様である。また、電極群111G(基端側のリング状電極111)と、電極群112G(先端側のリング状電極112)との離間距離は、例えば40~100mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、66mmである。
【0023】
リング状電極111,112,113はそれぞれ、詳細は後述するが、シャフト11のルーメン内に挿通された複数の導線(リード線)を介して、ハンドル12と電気的に接続されている。一方、この例では先端電極110には、導線が接続されていないようになっている。ただし、この先端電極110にも導線が接続されているようにしてもよい。
【0024】
このような先端電極110およびリング状電極111,112,113はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料、あるいは、各種の樹脂材料により構成されている。なお、除細動カテーテル1の使用時におけるX線に対する造影性を良好にするためには、これらの先端電極110およびリング状電極111,112,113がそれぞれ、白金またはその合金により構成されていることが好ましい。
【0025】
ここで、上記した電極群111Gは、同一の極(-極または+極)を構成することになる、複数のリング状電極111からなる。この電極群111Gを構成するリング状電極111の個数は、電極の幅や配置間隔によっても異なるが、例えば4~13個であり、好ましくは8~10個である。また、リング状電極111の幅(軸方向の長さ)は、例えば2~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、4mmである。リング状電極111の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、例えば1~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、2mmである。なお、除細動カテーテル1の使用時(心腔内に配置されるとき)において、この電極群111Gは、例えば冠状静脈内に位置するようになっている。
【0026】
電極群112Gは、上記した電極群111Gとは逆の極(+極または-極)を構成することになる、複数のリング状電極112からなる。この電極群112Gを構成するリング状電極112の個数は、電極の幅や配置間隔によっても異なるが、例えば4~13個であり、好ましくは8~10個である。また、リング状電極112の幅(軸方向の長さ)は、例えば2~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、4mmである。リング状電極112の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、例えば1~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、2mmである。なお、除細動カテーテル1の使用時(心腔内に配置されるとき)において、この電極群112Gは、例えば右心房に位置するようになっている。
【0027】
電極群113Gは、この例では、4個のリング状電極113から構成されている。このリング状電極113の幅(軸方向の長さ)は、例えば0.5~2.0mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、1.2mmである。リング状電極113の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、例えば1.0~10.0mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、5mmである。なお、除細動カテーテル1の使用時(心腔内に配置されるとき)において、この電極群113Gは、例えば、異常電位が発生しやすい上大静脈に位置するようになっている。
【0028】
図3は、
図2中のII-II線に沿ったシャフト11の断面構成例(X-Y断面構成例)を、模式的に表したものである。この例では
図3に示したように、シャフト11は、アウター部70(シェル部)、素線71、インナー部72(コア部)および樹脂層73を有するマルチルーメン構造となっている。具体的には、このシャフト11には、互いに分離した4つのルーメンL1~L4が形成されている。
【0029】
アウター部70は、
図3に示したように、シャフト11の最外周に位置するチューブ状の部材である。このアウター部70は、例えば、高硬度のナイロンエラストマーにより構成されている。このアウター部70を構成するナイロンエラストマーとしては、例えば、軸方向(Z軸方向)に沿って異なる硬度のものが用いられている。これによりシャフト11は、その先端側から基端側に向けて、段階的に硬度が高くなるように構成されている。
【0030】
素線71は、
図3に示したように、アウター部70とインナー部72との層間に配置されており、編組ブレードを形成するようになっている。また、この編組ブレードは、例えば、シャフト11における軸方向に沿った一部の領域にのみ形成されている。このような素線71は、例えばステンレスにより構成されており、ステンレス素線となっている。
【0031】
インナー部72は、
図3に示したように、アウター部70および素線71の内周側に位置する、コア部材である。このインナー部72は、例えば、低硬度のナイロンエラストマーにより構成されている。なお、このインナー部72内に、上記した4つのルーメンL1~L4がそれぞれ形成されるようになっている。
【0032】
樹脂層73は、
図3に示したように、4つのルーメンL1~L4を区画する層であり、例えばフッ素樹脂により構成されている。このフッ素樹脂としては、例えば、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の、絶縁性の高い材料が挙げられる。
【0033】
ルーメンL1(第1ルーメン)は、この例では
図3に示したように、シャフト11内におけるX軸の正方向側に配置されている。このルーメンL1には、複数の導線81からなる導線群81Gが挿通されている。これらの導線81はそれぞれ、前述した電極群111Gにおける複数のリング状電極111に対して、個別に電気的接続されている。なお、このようにしてリング状電極111に電気的接続された導線81は、後述する心電位信号Sc0aの信号線を構成している(
図2参照)。
【0034】
ルーメンL2(第2ルーメン)は、この例では
図3に示したように、シャフト11内におけるX軸の負方向側に配置されている。このルーメンL2には、複数の導線82からなる導線群82Gが挿通されている。これらの導線82はそれぞれ、前述した電極群112Gにおける複数のリング状電極112に対して、個別に電気的接続されている。なお、このようにしてリング状電極112に電気的接続された導線82もまた、後述する心電位信号Sc0aの信号線を構成している(
図2参照)。
【0035】
ルーメンL3(第3ルーメン)は、この例では
図3に示したように、シャフト11内におけるY軸の負方向側に配置されている。このルーメンL3には、複数の導線83からなる導線群83Gが挿通されている。これらの導線83はそれぞれ、前述した電極群113Gにおける複数のリング状電極113に対して、個別に電気的接続されている。なお、このようにしてリング状電極113に電気的接続された導線83は、後述する心電位信号Sc0bの信号線を構成している(
図2参照)。
【0036】
ルーメンL4(第4ルーメン)は、この例では
図3に示したように、シャフト11内におけるY軸の正方向側に配置されている。このルーメンL4には、この例では1本の操作用ワイヤ80が挿通されている。つまり、操作用ワイヤ80は、シャフト11の中心軸に対して偏心した状態で配置されている。この操作用ワイヤ80は、詳細は後述するが、シャフト11の先端付近を偏向させる(湾曲させる)際の操作である、偏向移動操作(首振り操作)を行うための部材である。このような操作用ワイヤ80の先端部分は、例えばハンダによって、先端電極110に固定されている。なお、操作用ワイヤ80の先端に、抜け止め用の大径部(抜け止め部)が形成されていてもよい。一方、操作用ワイヤ80の基端部分は、後述するハンドル12内(回転板122)に接続されるようになっている。
【0037】
なお、上記した導線81,82,83はそれぞれ、例えば、ポリイミドなどの樹脂によって金属導線の外周面が被覆された、樹脂被覆線により構成されている。また、操作用ワイヤ80は、例えば、ステンレスやNi(ニッケル)-Ti(チタン)系超弾性合金により構成されている。ただし、この操作用ワイヤ80は、必ずしも金属により構成されている必要はなく、例えば、高強度の非導電性ワイヤなどにより構成されていてもよい。
【0038】
(ハンドル12)
図2に示したように、ハンドル12は、シャフト11の基端に装着されており、ハンドル本体121(把持部)および回転板122を有している。
【0039】
ハンドル本体121は、除細動カテーテル1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。このハンドル本体121の内部には、シャフト11の内部から前述した各種の細線(導線81,82,83および操作用ワイヤ80等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で延伸している。
【0040】
回転板122は、詳細は後述するが、シャフト11の先端付近を偏向させる際の操作である、偏向移動操作を行うための部材である。具体的には、例えば
図2中の破線の矢印で示した回転方向d1に沿って、回転板122を回転させる操作が可能となっている。このような回転操作によって、前述した操作用ワイヤ80が基端側に引っ張られることで、シャフト11の先端付近を偏向させる操作(偏向移動操作)が可能となっている。
【0041】
(記憶部13)
記憶部13は、例えば
図2に示したように、ハンドル12(ハンドル本体121)内に配置されており、後述する各種データを保持する部分(メモリ)である。なお、この記憶部13に保持されている各データの詳細例については、後述する(
図5)。
【0042】
(B.電源装置2)
電源装置2は、除細動カテーテル1に対して、除細動の際の電力供給を行う装置である。具体的には
図1~
図3に示したように、この電源装置2は、除細動の際に印加される直流電圧Vdcを、除細動カテーテル1のシャフト11における電極群111G,112G(リング状電極111,112)に対し、導線群81G,82G(導線81,82)を介して供給するようになっている。
【0043】
電源装置2は、
図1に示したように、入力部21、電源部22、切替部23、演算処理部24(制御部)、表示部25および音声出力部26を有している。この電源装置2はまた、
図1に示したように、2つ(2種類)の入力端子Tin1,Tin2と、2つ(2種類)の出力端子Tout1,Tout2とを有している。また、この電源装置2では、詳細は後述するが、心電位測定が行われる「心電位測定モード(
図9参照)」と、後述する抵抗値Rの測定処理が行われる「抵抗測定モード(
図10参照)」と、除細動が行われる「除細動モード(
図11参照)」とが、切り替え可能となっている。すなわち、電源装置2では、これら複数種類(例えば3種類)のモード間での切り替えが可能となっている。
【0044】
入力部21は、各種の設定値や、所定の動作を指示するための入力信号Sin(操作入力信号)が入力される部分であり、例えば所定のダイヤルやスイッチ、タッチパネル等を用いて構成されている。これらの設定値や指示(入力信号Sin)は、電源装置2の操作者(例えば技師等)による操作に応じて入力されるようになっている。ただし、一部の設定値等については、操作者による操作に応じて入力されるのではなく、製品の出荷時等に予め電源装置2内で設定されているようにしてもよい。また、上記したスイッチとしては、詳細は後述するが、例えば、上記した複数種類のモード(「心電位測定モード」,「抵抗測定モード」,「除細動モード」)間での切り替えを行うためのモード切替スイッチ、除細動の際に印加する電気エネルギー(直流電圧Vdc)を設定する印加エネルギー設定スイッチ、電源部22を充電するための充電スイッチ、電気エネルギーを印加して除細動を実行するためのエネルギー印加スイッチ(放電スイッチ)等が挙げられる。なお、この入力部21において入力された入力信号Sinは、
図1に示したように、演算処理部24へ供給されるようになっている。
【0045】
電源部22は、上記した直流電圧Vdcを、除細動カテーテル1における電極群111G,112G(リング状電極111,112)へ向けて出力する部分である。このような電源部22における電力供給動作は、例えば、入力部21からの入力信号Sinに基づいて、演算処理部24によって制御されるようになっている。また、この電源部22は、所定の電源回路(例えばスイッチングレギュレータ等)、および、電気エネルギーを充電するためのコンデンサ(容量素子)等を用いて構成されている。
【0046】
切替部23は、
図1に示したように、直流電圧Vdcや、後述する抵抗値Rおよび心電位信号Sc0aの供給経路を切り替える動作(切替動作)を行う部分である。このような切替部23における切替動作は、例えば、入力部21からの入力信号Sinに基づいて、演算処理部24によって制御されるようになっている。なお、この切替部23における切替動作の詳細については、後述する。
【0047】
(演算処理部24)
演算処理部24は、電源装置2全体を制御すると共に所定の演算処理を行う部分であり、例えばマイクロコンピュータ等を含んで構成されている。具体的には、演算処理部24は、入力部21からの入力信号Sinに基づいて、電源部22、切替部23、表示部25および音声出力部26の動作をそれぞれ制御するようになっている。なお、このような演算処理部24での動作例の詳細については、後述する。
【0048】
また、この演算処理部24は、
図1に示した例では、出力回路241、記憶部242、時計部243a,243b、導出部244、読出部245、判定部246および実行許可部247を有している。
【0049】
出力回路241は、電源部22から出力された直流電圧Vdcを、切替部23および後述する出力端子Tout1を介して、除細動カテーテル1の電極群111G,112G(リング状電極111,112)へ出力するための回路である。具体的には、詳細は後述するが、この出力回路241は、電極群111G,112Gが互いに異なる極性となる(一方の電極群が-極のときには、他方の電極群は+極となる)ように、直流電圧Vdcを出力するようになっている。
【0050】
記憶部242は、後述する各種データを保持する部分(メモリ)である。なお、この記憶部242に保持されている各データの詳細例については、後述する(
図6)。
【0051】
時計部243aは、日時情報Idt1を出力するようになっており、時計部243bは、日時情報Idt2を出力するようになっている(
図1参照)。これらの時計部243a,243bはそれぞれ、例えば、RTC(Real-Time Clock:リアルタイムクロック)機能を有するIC(Integrated Circuit)を含んで構成されている。なお、ここで言う「日時情報」とは、「日付情報」と「時刻情報」とを含む情報のことを意味しており、以下同様である。
【0052】
図4は、このような2種類の時計部243a,243bおよび日時情報Idt1,Idt2について説明するための図である。具体的には、この
図4では、電源装置2内の時計部の種類と、電源装置2内の日時情報の種類と、電源装置2の操作者(ユーザ)による入力部21への操作に応じた日時情報の設定変更の可否と、日時情報の利用例とについて、表でまとめて示している。
【0053】
時計部243a内の日時情報Idt1は、
図4に示したように、操作者による操作に応じて、随時(任意)に設定変更が可能となっている。また、この時計部243aにおける日時情報Idt1は、例えば、電源装置2とは異なる他の機器内で設定されている日時情報(たとえば、後述する心電計4内で設定されている日時情報Idt3:
図1参照)と一致するように、設定可能となっている。
【0054】
一方、時計部243b内の日時情報Idt2は、
図4に示したように、電源装置2の操作者による操作に応じた設定変更が、制限されるようになっている。つまり、この日時情報Idt2は、基本的には、例えば工場出荷時(製造時)などに、初期設定されるようになっている。具体的には、この日時情報Idt2については、操作者による操作に応じた設定変更が、例えば、電源装置2の初回起動時に限って、可能となっている(
図4参照)。あるいは、この日時情報Idt2については、操作者による操作に応じた設定変更が、例えば、一切不可能となっている(
図4参照)。
【0055】
また、このような日時情報Idt2を利用することで、後述する導出部244において、除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間Δt1と、日時情報Idt2の初期設定時からの電源装置2の経過時間Δt2とがそれぞれ、導出されるようになっている(
図4参照)。
【0056】
なお、このような時計部243aは、「第1の時計部」の一具体例に対応し、時計部243bは、「第2の時計部」の一具体例に対応している。また、日時情報Idt1は、「第1の日時情報」の一具体例に対応し、日時情報Idt2は、「第2の日時情報」の一具体例に対応し、日時情報Idt3は、「第3の日時情報」の一具体例に対応している。
【0057】
導出部244は、上記したように、日時情報Idt2を利用することで、除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間Δt1と、日時情報Idt2の初期設定時からの電源装置2の経過時間Δt2とをそれぞれ、導出するものである。なお、このような経過時間Δt1,Δt2の詳細については、後述する。
【0058】
読出部245は、除細動カテーテル1内(前述した記憶部13:
図2参照)に保持されている各種データの情報を、読み出すものである。このようにして読み出される各種データとしては、詳細は後述するが(
図5参照)、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0059】
すなわち、まず、除細動カテーテル1に固有の識別情報(除細動カテーテル1ごとに個別に割り当てられた情報)としての、識別情報131が挙げられる。ここで、このような識別情報131とは、例えば、特定の法則によって付与された、数字、アルファベットおよび英数字のうちの少なくとも1種類の情報の羅列からなる、シリアル番号である。なお、識別情報131が、例えば、このようなシリアル番号が暗号化された情報(暗号化された識別情報)であってもよい。また、上記した各種データとしては、除細動カテーテル1の使用状況を示す、使用状況情報132が挙げられる。更に、除細動カテーテル1の使用日時を示す、使用日時情報133が挙げられる。加えて、除細動カテーテル1の使用回数を示す情報(使用回数Nの情報)が挙げられる。
【0060】
判定部246は、読出部245によって読み出された識別情報131に基づいて、除細動カテーテル1の使用に関する有効性を判定するものである。つまり、判定部246は、その除細動カテーテル1の使用が有効であるのか、あるいは、無効であるのかについての、判定処理を行うようになっている。換言すると、使用が有効であると判定された場合とは、その除細動カテーテル1が正規品であると判定されたことになり、使用が無効であると判定された場合とは、その除細動カテーテル1が非正規品(例えば、劣化品や模倣品など)であると判定されたことになる。具体的には、判定部246は、例えば、識別情報131における上記したシリアル番号が、上記した特定の法則に従って付与されているのか否かに応じて、除細動カテーテル1の使用に関する有効性を判定するようになっている。つまり、例えば、そのようなシリアル番号が、上記した特定の法則に従って付与されている場合には、識別情報131が正規な情報であり、除細動カテーテル1の使用が有効であると判定される。一方、例えば、そのようなシリアル番号が、上記した特定の法則に従って付与されていない場合には、識別情報131が非正規な情報であり、除細動カテーテル1の使用が無効であると判定される。このような判定処理が行われることで、非正規な除細動カテーテル1の使用を、容易に排除することが可能となっている。なお、このような判定部246による判定処理の詳細処理例については、後述する(
図8)。
【0061】
実行許可部247は、判定部246によって除細動カテーテル1の使用が有効であると判定された場合にのみ、入力部21における操作者による操作(例えば、電源部22による除細動用の電力供給を実行させるための操作)の受付を、有効化するものである。つまり、このような操作の受付が無効化されたままの場合(有効化されていない場合)、操作者によって入力部21に対する操作が行われたとしても、除細動用の電力供給が実行されず、除細動カテーテル1による電気的な除細動も実行されないようになっている。言い換えると、このような操作の受付が有効化された場合にのみ、操作者によって入力部21に対する操作が行われた際に、除細動用の電力供給が実行され、除細動カテーテル1による電気的な除細動が実行されるようになっている。なお、このような実行許可部247における詳細な処理例については、後述する(
図8)。
【0062】
表示部25は、演算処理部24から供給された各種信号に基づいて各種情報を表示し、外部へと出力する部分(モニター)である。具体的には、表示部25は、例えば後述する心電位信号Sc1に基づいて、心電位波形を表示する機能を有している。ただし、表示対象の情報としては、このような心電位に関する情報には限られず、他の情報も加えて表示するようにしてもよい。具体的には、例えば、上記した判定部246による判定結果などの情報も、この表示部25に表示されるようにしてもよい。このような各種情報が表示部25に表示されることで、電源装置2の操作者(例えば技師等)は、例えば上記した心電位波形や、判定部246による判定結果等を監視しながら、除細動治療(入力部21への入力操作等)を行うことが可能となっている。なお、このような表示部25は、各種の方式によるディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなど)を用いて構成されている。
【0063】
音声出力部26は、
図1に示したように、演算処理部24から供給された音声信号Ssに基づいて、各種の音声を外部へと出力する部分である。このような音声信号Ssの一例としては、詳細は後述するが、上記した判定部246による判定結果に応じて生成される音声信号Ssが、挙げられる。なお、このような音声出力部26は、例えばスピーカ等を用いて構成されている。
【0064】
ここで、これらの表示部25および音声出力部26はそれぞれ、本発明における「出力部」の一具体例に対応している。
【0065】
(入力端子Tin1,Tin2)
入力端子Tin1は、
図1に示したように、後述する心電計4から出力される心電位信号Sc1を入力するための端子である。なお、詳細は後述するが、この心電位信号Sc1は、後述する生体測定機構6(後述する複数の電極パッド61)における測定により得られて心電計4へと供給された生体信号である。なお、そのような生体測定機構6により得られた心電位信号Sc1が、心電計4を経由せずに、入力端子Tinに直接入力されるようにしてもよく、以下同様である。このようにして入力端子Tin1へ入力された心電位信号Sc1(例えばアナログ信号)は、演算処理部24へと供給されるようになっている。
【0066】
入力端子Tin2は、
図1に示したように、除細動カテーテル1において測定された心電位信号Sc0a,Sc0bおよび抵抗値Rを入力するための端子である。ここで、心電位信号Sc0aは、前述した電極群111G,112G(リング状電極111,112)において測定され、前述した導線81,82を介して伝送された心電位信号である(
図2,
図3参照)。一方、心電位信号Sc0bは、前述した電極群113G(リング状電極113)において測定され、前述した導線83を介して伝送された心電位信号である(
図2,
図3参照)。また、抵抗値Rは、電極群111G,112G間の抵抗値である。このようにして入力端子Tin2へ入力された各信号のうち、心電位信号Sc0aについては、
図1に示したように、切替部23および後述する出力端子Tout2をこの順に経由して、後述する心電計4へと供給されるようになっている。一方、心電位信号Sc0bについては、
図1に示したように、切替部23を介さずに後述する出力端子Tout2のみを介して、心電計4へと供給されるようになっている。また、抵抗値Rについては、
図1に示したように、切替部23を介して演算処理部24へと供給されるようになっている。
【0067】
(出力端子Tout1,Tout2)
出力端子Tout1は、
図1に示したように、前述した出力回路241から出力されて切替部23を経由して供給されてきた直流電圧Vdcを、除細動カテーテル1の電極群111G,112G(リング状電極111,112)へと出力するための端子である。
【0068】
出力端子Tout2は、
図1に示したように、前述した入力端子Tin2を介して除細動カテーテル1から供給されてきた心電位信号Sc0bと、入力端子Tin2および切替部23をこの順に経由して除細動カテーテル1から供給されてきた心電位信号Sc0aとを、心電計4へと出力するための端子である。
【0069】
(C.心電計4)
心電計4は、心電位信号(
図1の例では、心電位信号Sc0a,Sc0b,Sc1)等の情報を記録する機能を有する機器である。具体的には、
図1の例では、心電計4は、電源装置2の前述した出力端子Tout2から出力された心電位信号Sc0a,Sc0bと、後述する生体測定機構6(後述する複数の電極パッド61)から出力された心電位信号Sc1とを、入力して記録するようになっている。
【0070】
また、
図1の例では、心電計4は、入力して記録した心電位信号を外部へ出力する機能も有している。具体的には、詳細は後述するが、
図1の例では心電計4は、上記した心電位信号Sc1を、電源装置2の入力端子Tin1へと出力するようになっている。また、
図1の例では心電計4は、上記した心電位信号Sc1,Sc0a,Sc0bをそれぞれ、後述する心電図表示装置5へと出力するようになっている。
【0071】
なお、この心電計4内(例えば、図示しない時計部)には、例えば
図1に示したように、前述した日時情報Idt3が設定されるようになっている。
【0072】
(D.心電図表示装置5)
心電図表示装置5は、上記した心電計4から出力される心電位信号Sc1,Sc0a,Sc0bに基づいて、心電位波形(心電図)等を表示する装置である。なお、これらの心電計4および心電図表示装置5を総称して、ポリグラフ、生体情報モニタ、心臓カテーテル用検査装置、またはEPレコーディングシステムと呼ばれることもある。このようにして心電図表示装置5に表示される心電位波形等は、例えば除細動カテーテル1の操作者(医師)によって、随時監視されるようになっている。
【0073】
(E.生体測定機構6)
生体測定機構6は、除細動治療等の際に、患者9の体表面に装着(貼付)された状態で用いられるものであり、前述した生体信号(心電位信号Sc1など)を患者9から測定するための機器である。
図1に示した例では、この生体測定機構6は、複数(例えば、4個または6個)の電極パッド61を用いて構成されている。
【0074】
ここで、複数の電極パッド61のうちの6つの組み合わせからは、一般的な測定手法を用いることで、
図1に示したように、前述した心電位信号Sc1が測定されるようになっている。このようにして電極パッド61から得られた心電位信号Sc1は、心電計4へと供給されるようになっている。なお、上記した一般的な測定手法(6つの電極パッド間での組み合わせを用いた測定手法)により得られる心電位信号Sc1の心電波形は、「12誘導心電図」と呼ばれるものに対応している。
【0075】
[記憶部13,242に保持されている各種データの構成例]
続いて、
図1~
図4に加えて
図5,
図6を参照して、前述した記憶部13,242に保持されている各種データの構成例について、詳細に説明する。
【0076】
図5は、
図1に示した除細動カテーテル1内の記憶部13に保持されている各種データの一例を、ブロック図で表したものである。
図6は、
図1に示した電源装置2内の記憶部242に保持されている各種データの一例を、ブロック図で表したものである。なお、これらの記憶部13,242に保持されている各種データの例としては、
図5,
図6に示したデータには限られず、これに加えて(あるいは代えて)他のデータが保持されているようにしてもよい。
【0077】
(記憶部13)
まず、
図5に示した例では、除細動カテーテル1内の記憶部13に、例えば以下のような各種データが、保持されている。すなわち、例えば、前述した識別情報131と、前述した使用状況情報132と、前述した使用日時情報133と、前述した除細動カテーテル1の使用回数Nの情報と、所定の除細動情報Idefとが、それぞれ保持されている。
【0078】
なお、この
図5に示したように、使用日時情報133としては、例えば、除細動カテーテル1の初回(初回接続時)の使用開始日時dtsと、除細動カテーテル1の2回目以降の(各回の接続時の)使用開始日時dtnとが、それぞれ含まれている。また、除細動情報Idefは、例えば、不具合発生時の解析用としても利用される情報であり、例えば以下のような各情報を含んでいる。すなわち、例えば、除細動時の日時(前述した日時情報Idt1)、除細動回数、除細動時の電圧値、除細動時間、除細動時のインピーダンス値(前述した抵抗値R)、および、除細動時のジュール設定値などが、除細動情報Idefとして含まれるようになっている。
【0079】
(記憶部242)
一方、
図6に示した例では、電源装置2内の記憶部242に、例えば以下のような各種データが、保持されている。すなわち、例えば、前述した識別情報131と、後述する各種の閾値(閾値時間Δtth1、報知閾値Δtth2および閾値回数Nth)と、上記した除細動情報Idefとが、それぞれ保持されている。
【0080】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
この除細動カテーテルシステム3では、例えば心臓カテーテル術中における除細動治療(除細動処理)の際などに、除細動カテーテル1におけるシャフト11の先端側が、血管を通して患者9の体内に挿入される(
図1参照)。このとき、除細動カテーテル1の操作者(医師)によるハンドル12での操作に応じて、患者9の体内に挿入されたシャフト11の先端領域P1付近の形状が偏向する。具体的には、操作者の指によって、例えば
図2中の矢印で示した回転方向d1に沿って回転板122が回転操作されると、シャフト11内で操作用ワイヤ80が、基端側へ引っ張られる。その結果、シャフト11の先端領域P1付近が、例えば
図2中の矢印で示した方向d2に沿って湾曲する。
【0081】
(A-1.除細動処理)
ここで、上記した除細動処理を行う際には、電源装置2(電源部22)から除細動カテーテル1の電極群111G,112G(リング状電極111,112)に対し、除細動のための電気エネルギーとしての直流電圧Vdcが供給される。具体的には、これらの電極群111G,112Gが互いに異なる極性となる(一方の電極群が-極のときには、他方の電極群は+極となる)ように、電源装置2内の出力回路241から直流電圧Vdcが出力される。このようにして、電極群111G,112Gが互いに異なる極性となる直流電圧Vdcが、患者9の体内に挿入された除細動カテーテル1の先端領域P1からこの患者9の心臓に対し、直接的な電気エネルギーとして付与されることで、電気的な除細動処理がなされる。
【0082】
このような除細動カテーテルシステム3(除細動カテーテル1)を用いた除細動処理では、例えば、電気エネルギーを患者の体外から供給する機器である、AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)等と比べ、例えば以下の利点がある。すなわち、まず、心腔内に配置された除細動カテーテル1の電極群111G,112Gによって、細動を起こした心臓に対して直接的に電気エネルギーが付与されることで、除細動治療に必要かつ十分な電気的刺激(電気ショック)が、心臓のみに確実に供給できるようになる。その結果、例えば上記したAED等を用いた場合と比べ、より効果的(効率的)な除細動処理を行うことが可能となる。また、心臓に対して直接的に電気エネルギーを付与することから、例えば上記したAED等を用いた場合とは異なり、患者9の体表面に火傷を生じさせることがなくなるため、除細動処理の際の患者への侵襲性を低減することも可能となる。
【0083】
(A-2.心電位の測定処理)
一方、患者9の心電位を測定する際には、患者9の体表面に装着された生体測定機構6(電極パッド61)、または、患者9の体内に挿入された除細動カテーテル1の電極(リング状電極111,112,113)等を用いて、心電位が測定される(
図1参照)。あるいは、除細動カテーテル1とは異なる別の電極カテーテル(患者9の心腔内に挿入されたもの)を用いて、患者9の心電位が測定されるようにしてもよい。このようにして得られた心電位の情報のうち、心電位信号Sc1については、前述した心電計4および電源装置2の入力端子Tin1等を介してこの電源装置2内へ供給される(
図1参照)。また、得られた心電位の情報のうち、心電位信号Sc1,Sc0a,Sc0bについては、心電図表示装置5へと供給される(
図1参照)。そして、これらの心電位信号に基づく心電位波形が、電源装置2内の表示部25や、心電図表示装置5に表示されることで、電源装置2の操作者(技師等)や除細動カテーテル1の操作者(医師)によって、適宜監視されることになる。
【0084】
(B.除細動処理の詳細について)
次に、
図7~
図11を参照して、上記した除細動処理(除細動治療)の詳細について、説明する。
【0085】
(B-1.全体処理)
図7は、本実施の形態の除細動カテーテルシステム3における除細動処理の全体処理例を、流れ図で表したものである。
図8は、
図7中に示したステップS11(後述する、除細動カテーテル1の使用の有効性の判定処理)における詳細処理例を、流れ図で表したものである。また、
図9~
図11はそれぞれ、この除細動処理の際における、後述する各種の動作状態例を、模式的にブロック図で表したものである。
【0086】
図7に示した本実施の形態の除細動処理では、電源装置2の電源がオン(ON)状態になると、まず、この電源装置2内における時計部243a,243b(日時情報Idt1,Idt2)の機能(RTC機能)の正常性についての確認(自己チェック)が行われる(ステップS10)。なお、そのような機能が異常であることが確認された場合には、その機能が停止され、
図7に示した一連の処理が終了となる。
【0087】
次に、電源装置2内の判定部246において、前述した、除細動カテーテル1の使用の有効性の判定処理を行う(ステップS11)。なお、このような使用の有効性の判定処理の詳細処理例については、後述する(
図8)。
【0088】
続いて、X線画像等を用いることで、患者9の体内における、除細動カテーテル1の各電極(リング状電極111,112,113)の位置が確認される(ステップS12)。
【0089】
次に、例えば
図9に示したようにして、患者9の心電位の測定処理が行われる(ステップS13)。すなわち、この例では、除細動カテーテルシステム3が「心電位測定モード」に設定されることで、以下のようにして心電位の測定処理がなされる。また、続いて、所定のゲイン調整の際のゲイン設定が、電源装置2の操作者(技師等)による入力部21への操作に応じて行われる(ステップS14)。
【0090】
この
図9に示した「心電位測定モード」では、まず、生体測定機構6(電極パッド61)にて測定された心電位信号Sc1が、以下の経路にて、電源装置2へ入力される。すなわち、このようにして得られた心電位信号Sc1が、心電計4を経由して、電源装置2の入力端子Tin1へと入力される。そして、電源装置2へ入力された心電位信号Sc1については、上記したゲイン調整が演算処理部24内で行われ、そのようなゲイン調整後の心電位信号Sc1に基づく心電位波形が、表示部25にて表示される。また、心電計4に入力された心電位信号Sc1に基づく心電位波形が、心電図表示装置5にて表示される。
【0091】
また、この際に
図9に示したように、除細動カテーテル1の電極群111G,112G(リング状電極111,112)にて測定された心電位信号Sc0aは、電源装置2の入力端子Tin2、切替部23および出力端子Tout2をこの順に経由して、心電計4へと供給される。一方、
図9に示したように、除細動カテーテル1の電極群113G(リング状電極113)にて測定された心電位信号Sc0bは、電源装置2の入力端子Tin2および出力端子Tout2をこの順に経由して(切替部23を経由せずに)、心電計4へと供給される。このようにして心電計4へ供給された心電位信号Sc0a,Sc0bはそれぞれ、心電図表示装置5へと出力され、これらの心電位信号Sc0a,Sc0bに基づく心電位波形が、この心電図表示装置5にて表示される。
【0092】
続いて、電源装置2の操作者(技師等)による入力部21への操作(例えばモード切替スイッチへの入力操作)によって、入力信号Sinが演算処理部24へと供給されることで、除細動を実行するための「除細動モード」の設定がなされる(ステップS15)。
【0093】
すると、例えば
図10に示したようにして、除細動カテーテル1における電極群111G,112G間の抵抗値Rの測定処理が行われる(ステップS16)。すなわち、この除細動カテーテルシステム3が「抵抗測定モード」に設定されることで、以下のようにして抵抗値Rの測定処理がなされる。
【0094】
具体的には、まず、
図10に示したように、除細動カテーテル1の電極群111G,112G(リング状電極111,112)にて測定された抵抗値Rは、電源装置2の入力端子Tin2および切替部23をこの順に経由して、演算処理部24へと供給される。そして、このようにして得られた抵抗値Rの情報は、表示部25にて表示される。
【0095】
また、この際に
図10に示したように、生体測定機構6(電極パッド61)にて測定された心電位信号Sc1が、引き続き心電計4を経由して、電源装置2の入力端子Tin1および心電図表示装置5へと入力される。そして、前述したゲイン調整後の心電位信号Sc1に基づく心電位波形が、引き続き、表示部25にて表示されるとともに、心電位信号Sc1に基づく心電位波形が、引き続き、心電図表示装置5にて表示される。
【0096】
なお、この際に
図10に示したように、除細動カテーテル1の電極群113G(リング状電極113)にて測定された心電位信号Sc0bもまた、引き続き、電源装置2の入力端子Tin2および出力端子Tout2をこの順に経由して(切替部23を経由せずに)、心電計4へと供給される。そして、この心電位信号Sc0bは、心電計4から心電図表示装置5へと出力され、心電位信号Sc0bに基づく心電位波形が、この心電図表示装置5にて表示される。
【0097】
次いで、電源装置2内の演算処理部24は、このようにして得られた抵抗値Rが、所定の閾値Rth1,Rth2により規定される所定の範囲内に収まっているのか否か(Rth2>R>Rth1を満たすのか否か)について、判定を行う(ステップS17)。ここで、抵抗値Rが所定の範囲内に収まっていない(R≧Rth2またはRth1≧Rに該当する)と判定された場合(ステップS17:N)、除細動カテーテル1の電極群111G,112Gが、患者9の体内の所定の部位(例えば、冠状静脈の管壁や、右心房の内壁など)に、確実に当接されていないことを意味する。したがって、この場合には、前述したステップS12へと戻り、再び、X線画像等を用いて各電極(リング状電極111,112,113)の位置が確認されることになる。このようにして、除細動カテーテル1の電極群111G,112Gが、患者9の体内の所定の部位に確実に当接されている場合にのみ、これ以降の除細動が実行されるようになっているため、効果的な除細動治療を行うことが可能である。
【0098】
一方、抵抗値Rが所定の範囲内に収まっている(Rth2>R>Rth1を満たす)と判定された場合(ステップS17:Y)、上記したように、除細動カテーテル1の電極群111G,112Gが、患者9の体内の所定の部位に確実に当接されていることを意味している。したがって、この場合には次に、電源装置2の操作者(技師等)による入力部21への操作(例えば印加エネルギー設定スイッチへの入力操作)によって、入力信号Sinが演算処理部24へと供給されることで、除細動の際の印加エネルギーの設定がなされる(ステップS18)。具体的には、印加エネルギーとして、例えば1J(ジュール)から30Jまでの範囲内で、1J刻みで設定される。
【0099】
続いて、電源装置2の操作者(技師等)による入力部21への操作(例えば充電スイッチへの入力操作)によって、入力信号Sinが演算処理部24へと供給されることで、電源部22内のコンデンサに、除細動のためのエネルギー(電荷)が充電される(ステップS19)。
【0100】
そして、このようなエネルギー充電の完了後、除細動の実行が開始される(ステップS20)。具体的には、電源装置2の操作者(技師等)による入力部21への操作(例えばエネルギー印加スイッチへの入力操作)によって、入力信号Sinが演算処理部24へと供給されることで、以下説明する「除細動モード」が実行される。なお、このような「除細動モード」の際にも、例えば、後述する、除細動カテーテル1の接続の確認処理(
図8のステップS300)が、定期的に行われるようにしてもよい。ちなみに、「除細動モード」の途中で、除細動カテーテル1が電源装置2に対して非接続状態になったことが確認された場合、例えば、電源装置2内でエネルギーの放電処理がなされ、上記した「心電位測定モード」に移行することになる。
【0101】
この「除細動モード」では、例えば
図11に示したようにして、除細動カテーテル1における電極群111G,112G間に、電気エネルギーとしての直流電圧Vdcが印加されることで、患者9の体内での除細動が行われる。
【0102】
具体的には、
図11に示したように、電源装置2内の電源部22から出力された直流電圧Vdcが、演算処理部24内の出力回路241、切替部23および出力端子Tout1をこの順に経由して、除細動カテーテル1における電極群111G,112G間に印加される。このとき、前述したように、これらの電極群111G,112Gが互いに異なる極性となる(一方の電極群が-極のときには、他方の電極群は+極となる)ように、電源装置2内の出力回路241から直流電圧Vdcが出力される。
【0103】
また、この際に
図11に示したように、生体測定機構6(電極パッド61)にて測定された心電位信号Sc1が、引き続き心電計4を経由して、電源装置2の入力端子Tin1および心電図表示装置5へと入力される。そして、前述したゲイン調整後の心電位信号Sc1に基づく心電位波形が、引き続き、表示部25にて表示されるとともに、心電位信号Sc1に基づく心電位波形が、引き続き、心電図表示装置5にて表示される。
【0104】
なお、この際に
図11に示したように、除細動カテーテル1の電極群113G(リング状電極113)にて測定された心電位信号Sc0bもまた、引き続き、電源装置2の入力端子Tin2および出力端子Tout2をこの順に経由して(切替部23を経由せずに)、心電計4へと供給される。そして、この心電位信号Sc0bは、心電計4から心電図表示装置5へと出力され、心電位信号Sc0bに基づく心電位波形が、この心電図表示装置5にて表示される。
【0105】
また、この際に演算処理部24は、上記した経路にて供給された心電位信号Sc1に同期して直流電圧Vdcが印加されるように、電源部22に対して動作制御を行う。このようにして、演算処理部24に入力された心電位波形(最大ピークであるR波)に同期をとって直流電圧Vdcが印加されることで、効果的な除細動治療を行うことが可能となる。
【0106】
次に、所定時間の経過後に、演算処理部24が、電源部22からの直流電圧Vdcの出力を停止させることで、患者9の体内での除細動の実行が停止される(ステップS21)。
【0107】
続いて、除細動時の印加記録(心電位波形の記録等)が、電源装置2の表示部25にて、一時的(例えば5秒間)に表示される(ステップS22)。具体的には、例えば、前述した除細動情報Idefのうちの少なくとも一部の情報が、表示部25に表示されることになる。
【0108】
次いで、前述した「心電位測定モード」(ステップS13,
図9参照)に再び設定される。これにより、前述したゲイン調整後の心電位信号Sc1に基づく心電位波形が、表示部25に再び表示されるとともに、心電位信号Sc1,Sc0a,Sc0bに基づく心電位波形が、心電図表示装置5に再び表示される。つまり、上記した除細動が実行された後の心電位波形が表示される(ステップS23)。
【0109】
そして、このような除細動後の心電位波形が観察され、正常であるのか否かが判定される(ステップS24)。正常ではない(心房細動が治まっていない)と判定された場合(ステップS24:N)には、前述したステップS15へと戻り、再度の除細動へと進むことになる。一方、正常であると判定された場合(ステップS24:Y)には、
図7に示した一連の除細動処理が終了となる。
【0110】
(B-2.使用の有効性の判定処理の詳細について)
続いて、
図8を参照して、前述した、除細動カテーテル1の使用の有効性の判定処理(
図7中のステップS11)の詳細処理例について、説明する。なお、このような判定処理が行われる前段階では、前述した、入力部21における操作者による操作の受付(例えば、電源部22による除細動用の電力供給を実行させるための操作)が、無効化されているものとする。
【0111】
この
図8に示した本実施の形態の判定処理では、まず、除細動カテーテル1の電源装置2に対する接続(接続状態)の確認処理が、行われる(ステップS300)。すなわち、除細動カテーテル1が電源装置2に接続されているのか否か(接続状態であるのか、あるいは、非接続状態であるのか)が、判定される。ここで、除細動カテーテル1が接続状態であると判定された場合(ステップS300:Y)、後述するステップS302へと進むことになる。一方、除細動カテーテル1が非接続状態であると判定された場合(ステップS300:N)、表示部25において「Disconnected」と表示され(ステップS301)、ステップS300へと戻ることになる。なお、このような除細動カテーテル1の接続の確認処理が、その後も、定期的に行われるようにしてもよい。
【0112】
次に、上記したステップS302では、電源装置2内の読出部245が、除細動カテーテル1内の記憶部13に保持されている各種データ(例えば、前述した識別情報131、使用状況情報132、使用日時情報133および使用回数Nの、各情報など)を、読み出す。そして、電源装置2内の判定部246は、読み出された識別情報131が正規な情報であるのか否か等について、判定を行う(ステップS303)。
【0113】
ここで、識別情報131が非正規な情報であると判定された場合、または、上記した各種データの読出エラーが生じたと判定された場合には(ステップS303:N)、後述するステップS305へと進むことになる。一方、識別情報131が正規な情報であると判定された場合には(ステップS303:Y)、次に判定部246は、読み出された使用状況情報132の内容について、判定を行う(ステップS304)。
【0114】
ここで、使用状況情報132の内容が、予め設定された仕様とは異なる内容(仕様外)であると判定された場合には、判定部246が、その除細動カテーテル1の使用が「無効」であると判定すると共に、表示部25において「Invalid device connected」と表示される(ステップS305)。そして、この場合には実行許可部247は、前述した除細動の実行用の操作の受付の無効化を、維持するようにする(ステップS306)。したがって、操作者によって入力部21に対する操作が行われたとしても、引き続き、除細動用の電力供給が実行されず、除細動カテーテル1による電気的な除細動も実行されないことになる。
【0115】
なお、その後は、前述したステップS300へと戻り、除細動カテーテル1の接続の確認処理が、再度行われることになる。ただし、このようにしてステップS306からステップS300へと戻った場合において、除細動カテーテル1が接続状態であると判定された場合(ステップS300:Y)には、前述したステップS302へと進まずに、ステップS300へと戻ることになる。つまり、この場合には、記憶部13内のデータの読み出し(ステップS302)が行われずに、上記した除細動の実行用の操作の受付の無効化が、維持されることになる。なお、この点は、後述する変形例(変形例1の
図12等)においても同様である。
【0116】
一方、ステップS304において、使用状況情報132の内容が「使用禁止」を示していると判定された場合には、後述するステップS313へと進むことになる。
【0117】
また、ステップS304において、使用状況情報132の内容が、「未使用中」または「使用中」を示していると判定された場合には、次に判定部246は、その使用状況情報132の内容が、「未使用中」を示しているのか否かについて、判定を行う(ステップS307)。
【0118】
ここで、その使用状況情報132の内容が、「未使用中」を示していると判定された場合には(ステップS307:Y)、次に、以下のような各処理が行われる(ステップS308)。すなわち、まず、その時点における日時情報Idt2が、前述した(初回の)使用開始日時dtsとして、除細動カテーテル1内の記憶部13に対する書込み(前述した使用日時情報133に対する書込み)が行われる。また、この記憶部13内における使用状況情報132の内容が、現在の「未使用中」から「使用中」に変更されるよう、更新処理が行われる。その後は、判定部246が、その除細動カテーテル1の使用が「有効」であると判定すると共に、表示部25において「Valid device connected」と表示される(ステップS309)。次いで、この場合には実行許可部247は、前述した除細動の実行用の操作の受付を、有効化する(ステップS310)。これにより、操作者によって入力部21に対する操作が行われると、除細動用の電力供給が実行され、除細動カテーテル1による電気的な除細動が実行されることになる。そして、この場合、
図8に示した一連の処理(使用の有効性の判定処理)が終了となり、前述した
図7のステップS12へと進むことになる。なお、前述した除細動カテーテル1の接続の確認処理が、上記したステップS309の後の時点においても、行われるようにしてもよい。
【0119】
一方、上記した使用状況情報132の内容が、「使用中」を示していると判定された場合には(ステップS307:N)、次に、電源装置2内の導出部244は、以下のようにして、前述した経過時間Δt1(除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間)を導出する(ステップS311)。すなわち、導出部244は、その時点における日時情報Idt2と、読み出された使用日時情報133(使用開始日時dts)とを利用して、そのような経過時間Δt1を導出する。具体的には、導出部244は、その時点における日時情報Idt2から、使用開始日時dtsを差し引くことで、経過時間Δt1を導出する(Δt1=Idt2-dts)。
【0120】
なお、この場合において、例えば、読み出された使用開始日時dtsが、異常な情報となっている場合(例えば、読み出された使用開始日時dtsが、その時点での日時情報Idt2よりも未来の日時となっている場合など)には、前述したステップS305へと進むようにしてもよい。すなわち、除細動カテーテル1の使用が「無効」であると判定されると共に、表示部25において「Invalid device connected」と表示されるようにしてもよい。
【0121】
続いて、判定部246は、このようにして導出された経過時間Δt1が、前述した閾値時間Δtth1以内であるのか否か(Δt1≦Δtth1を満たすのか否か)について、判定を行う(ステップS312)。なお、この閾値時間Δtth1の一例としては、24時間(1日)が挙げられるが、この例には限られず、任意の値に設定可能である。
【0122】
ここで、経過時間Δt1が閾値時間Δtth1以内である(Δt1≦Δtth1を満たす)と判定された場合には(ステップS312:Y)、前述したステップS309へと進むことになる。すなわち、この場合においても、除細動カテーテル1の使用が「有効」であると判定されると共に、表示部25において「Valid device connected」と表示される。そして、除細動の実行用の操作の受付が有効化された(ステップS310)後、前述した
図7のステップS12へと進むことになる。
【0123】
一方、経過時間Δt1が閾値時間Δtth1超過である(Δt1>Δtth1を満たす)と判定された場合には(ステップS312:N)、次に、以下のような処理が行われる。すなわち、除細動カテーテル1内の記憶部13において、使用状況情報132の内容が、現在の「使用中」から「使用禁止」に変更されるよう、更新処理が行われる(ステップS313)。そして、判定部246は、期間満了によって除細動カテーテル1の使用が「無効」であると判定すると共に、表示部25において「Expiry device connected」と表示される(ステップS314)。なお、その後は、前述したステップS306へと進むことになる。すなわち、実行許可部247によって、除細動の実行用の操作の受付の無効化が維持された後、前述したステップS300へと戻り、除細動カテーテル1の接続の確認処理が、再度行われることになる。
【0124】
(B-3.作用・効果)
このようにして、本実施の形態の除細動カテーテルシステム3では、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0125】
(使用の有効性の判定処理について)
まず、本実施の形態では、除細動カテーテル1内に保持されている固有の識別情報131が、電源装置2側で読み出され、その固有の識別情報131に基づいて、その除細動カテーテル1の使用に関する有効性が判定されるようにしたので、以下のようになる。すなわち、この除細動カテーテル1内における固有の識別情報131を利用して、その除細動カテーテル1の使用が有効なのか否かの判定結果が、容易に得られるようになる。具体的には、まず、除細動カテーテルでは一般に、細動を起こした心臓に対して直接的に電気エネルギーを付与することから、非正規な除細動カテーテル(例えば、劣化品や模倣品など)が使用されると、効果的な除細動治療が実現されないおそれがある。具体的には、除細動カテーテルを利用した電気的な除細動処理の際には、一般に、非常に高い直流電圧(前述した直流電圧Vdcに相当)が印加されることから、例えば、上記した劣化品や模倣品などの非正規な除細動カテーテルが使用された場合、有効な除細動処理の実現が困難となってしまうおそれがある。これに対して本実施の形態では、上記したようにして、除細動カテーテル1の使用が有効なのか否かの判定結果が、容易に得られるようになることから、そのような非正規な除細動カテーテル1の使用を、効果的に排除できるようになる。よって、本実施の形態では、除細動カテーテルシステム3における利便性を、向上させることが可能となる。
【0126】
更に、本実施の形態では、判定部246において、上記した識別情報131が非正規な情報であると判定された場合には、除細動カテーテル1の使用が無効であると判定し、識別情報131が正規な情報であると判定された場合には、上記した経過時間Δt1も考慮して、除細動カテーテル1の使用に関する有効性を判定すると共に、この経過時間Δt1が閾値時間Δtth1以内である場合には、除細動カテーテル1の使用が有効であると判定するようにしたので、以下のようになる。すなわち、識別情報131が正規な情報である場合でも、経過時間Δt1(除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間)も考慮して、その除細動カテーテル1の使用に関する有効性が判定されることから、使用に関する有効性が、より効果的に判定されるようになる。その結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0127】
加えて、本実施の形態では、上記した識別情報131が正規な情報であると判定された場合において、上記した経過時間Δt1が閾値時間Δtth1超過である場合には、除細動カテーテル1の使用が無効であると判定するようにしたので、以下のようになる。すなわち、識別情報131が正規な情報である場合でも、経過時間Δt1が閾値時間Δtth1超過である場合には、除細動カテーテル1の使用が無効であると判定されることから、使用期限を超えた劣化品となる除細動カテーテル1の使用を、効果的に排除できるようになる。その結果、利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0128】
また、本実施の形態では、除細動カテーテル1内に保持されている除細動カテーテル1の使用状況情報132が、読み出されるようになっていると共に、上記した識別情報131が正規な情報であると判定された場合において、読み出された使用状況情報132が未使用中を示している場合には、除細動カテーテル1の使用が有効であると判定し、読み出された使用状況情報132が使用中を示している場合には、上記した経過時間Δt1も考慮して、除細動カテーテル1の使用に関する有効性を判定するようにしたので、以下のようになる。すなわち、そのような使用状況情報132が使用中を示している場合でも、経過時間Δt1(除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間)も考慮して、その除細動カテーテル1の使用に関する有効性が判定されることから、使用に関する有効性が、より効果的に判定されるようになる。その結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0129】
更に、本実施の形態では、前述した入力部21と、判定部246による判定結果を出力する出力部(表示部25や音声出力部26)と、除細動カテーテル1の使用が有効であると判定された場合にのみ、入力部21での操作者による操作(電源部22による電力供給を実行させるための操作)の受付を有効化する実行許可部247とがそれぞれ、電源装置2に設けられているようにしたので、以下のようになる。すなわち、判定部246による判定結果を、操作者(ユーザ)が容易に把握できるようになる。また、除細動カテーテル1の使用が有効であると判定された場合にのみ、操作者による上記した操作の受付が有効化されることから、非正規な除細動カテーテル1の使用を、より効果的に排除できるようになる。これらの結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0130】
加えて、本実施の形態では、上記した識別情報131として、暗号化された情報を用いるようにした場合には、以下のようになる。すなわち、上記した識別情報131が暗号化された情報であることから、その識別情報131の秘匿性(機密性)が高くなり、例えば他人による識別情報131の悪用等が、容易に防止されるようになる。その結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0131】
(時計部243a,243bについて)
また、本実施の形態では、日時情報Idt1を出力する時計部243aと、日時情報Idt2を出力する時計部243bとがそれぞれ、電源装置2に設けられている。そして、日時情報Idt1は、操作者による操作に応じて随時に設定変更が可能な情報である一方、日時情報Idt2は、操作者による操作に応じた設定変更が制限されている。したがって、このような2種類の日時情報Idt1,Idt2を利用して、このカテーテルシステム(除細動カテーテルシステム3)において、例えば前述したような、多様な処理が容易に実現可能となる。よって、本実施の形態ではこの点においても、除細動カテーテルシステム3における利便性を、向上させることが可能となる。
【0132】
また、本実施の形態では、日時情報Idt2についての、操作者による操作に応じた設定変更が、電源装置2の初回起動時に限って可能となっているようにした場合には、以下のようになる。すなわち、この日時情報Idt2についての設定変更が、電源装置2の初回起動時に限っては許容されていることから、そのような初回起動後における設定変更の制限は維持しつつ、設定変更の許容性も最低限は確保されることになる。したがって、このような日時情報Idt2が利用し易くなり、除細動カテーテルシステム3における多様な処理が、更に容易に実現可能となる。その結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0133】
更に、本実施の形態では、日時情報Idt2についての、操作者による操作に応じた設定変更が、一切不可能となっているようにした場合には、以下のようになる。すなわち、この日時情報Idt2についての設定変更が、完全に制限されることから、そのような日時情報Idt2についての設定変更の制限を利用した処理が、実現し易くなる。その結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0134】
加えて、本実施の形態では、時計部243aにおける日時情報Idt1が、電源装置2とは異なる他の機器内で設定されている日時情報(例えば、心電計4内で設定されている日時情報Idt3)と一致するように設定可能とした場合には、以下のようになる。すなわち、例えば、電源装置2内での日時情報Idt1を利用した処理を、他の機器内での日時情報(例えば日時情報Idt3)を利用した処理と同期させつつ、実行できるようになる。その結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0135】
また、本実施の形態では、前述した経過時間Δt1,Δt2をそれぞれ導出する導出部244が、電源装置2に設けられているようにしたので、以下のようになる。すなわち、経過時間Δt2(日時情報Idt2の初期設定時からの電源装置2の経過時間)を利用して、例えば、電源装置2自体やその内部部品(例えばバッテリー)等のメンテナンス時期などを把握したり、例えば表示部25や音声出力部26等を用いて、操作者(ユーザ)に報知(警告など)をしたりすることが可能となる。具体的には、この経過時間Δt2が、前述した報知閾値Δtth2超過となった場合に(Δt2>Δtth2)、そのような報知動作(警告動作など)を行うようにすればよい。また、経過時間Δt1(除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間)を利用して、例えば、この除細動カテーテル1の使用期限を把握して、その除細動カテーテル1の使用を制限したりすることが可能となる。これらの結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0136】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~3)について説明する。これらの変形例1~3はそれぞれ、実施の形態で説明した、除細動カテーテル1の使用の有効性の判定処理(
図8参照)に関する、変形例に対応している。具体的には、実施の形態で説明した判定処理では、除細動カテーテル1の使用回数Nの情報を考慮しない場合の判定処理となっていたが、以下説明する変形例1~3の判定処理ではそれぞれ、そのような使用回数Nの情報を考慮した場合の判定処理となっている。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0137】
[変形例1]
(使用の有効性の判定処理)
図12は、変形例1に係る、除細動カテーテル1の使用の有効性の判定処理の詳細処理例を、流れ図で表したものである。なお、この
図12では、実施の形態で説明した
図8から変更した部分の処理(後述するステップS401,S402,S408)と、その変更した部分の処理に関連する部分の処理とを、抽出して示しており、その他の部分の処理については、
図8に示した処理と同一であるため、図示を省略している。
【0138】
この
図12に示した本変形例の判定処理では、まず、前提として、
図8に示した実施の形態の判定処理におけるステップS308の代わりに、以下説明するステップS408の処理が行われる。すなわち、ステップS308と同様にして、その時点における日時情報Idt2が(初回の)使用開始日時dtsとして、記憶部13に対する書込みが行われると共に、この記憶部13内における使用状況情報132の内容が、現在の「未使用中」から「使用中」に変更されるよう、更新処理が行われる。加えて、このステップS408では、記憶部13内における、前述した除細動カテーテル1の使用回数Nの値が、「+1」となる(1つ増加する)ように、更新処理が行われる。
【0139】
また、本変形例の判定処理では、前述したステップS312において、前述した経過時間Δt1が閾値時間Δtth1超過であると判定された場合には(ステップS312:N)、次に、以下のような処理が行われる。すなわち、本変形例では実施の形態(
図8)とは異なり、使用状況情報132の内容が「使用中」から「使用禁止」へと、直ぐには変更されないようになっている。具体的には、この場合、次に判定部246は、ステップS302において読み出された使用回数Nが、前述した閾値回数Nth以内であるのか否か(N≦Nthを満たすのか否か)について、判定を行う(ステップS401)。なお、この閾値回数Nthの一例としては、5回が挙げられるが、この例には限られず、任意の値に設定可能である。
【0140】
ここで、使用回数Nが閾値回数Nth以内である(N≦Nthを満たす)と判定された場合には(ステップS401:Y)、次に、以下のような各処理が行われる(ステップS402)。すなわち、まず、除細動カテーテル1の記憶部13内における使用回数Nの値が、「+1」となるように、更新処理が行われる。また、その時点における日時情報Idt2が、前述した(初回の)使用開始日時dtsとして、記憶部13に対する上書き(前述した使用日時情報133に対する上書き)が行われる。
【0141】
なお、このようにして、使用開始日時dtsの上書きがなされることで、除細動カテーテル1の次回の接続時には、ステップS311において、この上書き後の使用開始日時dtsを利用して、前述した経過時間Δt1(除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間)が導出されることになる。これにより、その後のステップS312において、この経過時間Δt1が閾値時間Δtth1以内であれば(ステップS312:Y)、除細動カテーテル1の使用が「有効」であると判定される(ステップS309)ことになる。
【0142】
上記したステップS402の後は、前述したステップS309へと進むことになる。すなわち、除細動カテーテル1の使用が「有効」であると判定されると共に、表示部25において「Valid device connected」と表示される。そして、除細動の実行用の操作の受付が有効化された(ステップS310)後、
図12に示した一連の処理(使用の有効性の判定処理)が終了となり、前述した
図7のステップS12へと進むことになる。
【0143】
一方、使用回数Nが閾値回数Nth超過である(N>Nthを満たす)と判定された場合には(ステップS401:N)、次に、前述したステップS313へと進むことになる。すなわち、除細動カテーテル1内の記憶部13において、使用状況情報132の内容が、現在の「使用中」から「使用禁止」に変更されるよう、更新処理が行われる。その後は、前述したステップS314へと進むことになる。すなわち、期間満了によって除細動カテーテル1の使用が「無効」であると判定されると共に、表示部25において「Expiry device connected」と表示される。そして、実行許可部247によって、除細動の実行用の操作の受付の無効化が維持され(前述したステップS306)、その後は前述したステップS300へと戻り、除細動カテーテル1の接続の確認処理が、再度行われることになる。
【0144】
(作用・効果)
このようにして本変形例では、上記実施の形態で説明した作用および効果に加えて(あるいは代えて)、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0145】
すなわち、まず、本変形例では、除細動カテーテル1内に保持されている除細動カテーテル1の使用回数Nの情報が、読み出されるようになっていると共に、識別情報131が正規な情報であると判定された場合において、前述した経過時間Δt1が閾値時間Δtth1超過である場合には、読み出された除細動カテーテル1の使用回数Nの情報も考慮して、その除細動カテーテル1の使用に関する有効性を判定するようにしたので、以下のようになる。すなわち、上記した識別情報131が正規な情報であると共に、経過時間Δt1(除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間)が閾値時間Δtth1超過である場合でも、除細動カテーテル1の使用回数Nの情報も考慮して、その除細動カテーテル1の使用に関する有効性が判定されることになる。したがって、このような経過時間Δt1および使用回数Nの双方の情報を加味して、除細動カテーテル1の使用に関する有効性が、更に効果的に判定されるようになる。その結果、本変形例では、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0146】
また、本変形例では、上記した経過時間Δt1が閾値時間Δtth1超過である場合において、上記した使用回数Nが閾値回数Nth以内である場合には、除細動カテーテル1の使用が有効であると判定し、使用回数Nが閾値回数Nth超過である場合には、除細動カテーテル1の使用が無効であると判定するようにしたので、以下のようになる。すなわち、このような経過時間Δt1および使用回数Nと、閾値時間Δtth1および閾値回数Nthとの兼ね合いを考慮することで、使用期限や使用回数限度を超えた劣化品となる除細動カテーテル1の使用を、より効果的に排除できるようになる。その結果、本変形例では、利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0147】
[変形例2,3]
続いて、上記した変形例1(
図12に示した判定処理)における一部分のみを変更した判定処理に対応する、変形例2,3について説明する。これらの変形例2,3においても、基本的には、上記した変形例1と同様の作用および効果が得られる。
【0148】
まず、変形例2の判定処理では、
図12中のステップS311において、前述した(初回の)使用開始日時dtsの代わりに、以下の情報を用いて、前述した経過時間Δt1(除細動カテーテル1の使用開始時からの経過時間)が導出される。すなわち、この変形例2では、上記した使用開始日時dtsの代わりに、前述した2回目以降の(各回の接続時の)使用開始日時dtn(
図5参照)のうち、記憶部13内における「最新の使用開始日時dtn」の情報を利用して、上記した経過時間Δt1が導出されるようになっている(Δt1=Idt2-dtn)。具体的には、例えば、記憶部13内に、「dts,dt1,dt2,dt3,dt4」の各情報(使用開始日時の情報)が保持されている場合には、これらの各情報のうち、最新の使用開始日時である「dt4」(4回目の接続時における使用開始日時)の情報を利用して、経過時間Δt1が導出される。言い換えれば、この変形例2では、記憶部13内に保持されている使用開始日時dtnのうち、「n」(接続回数)の値が最も大きい情報が、利用されることになる。
【0149】
なお、上記した使用開始日時dtnは、前述した除細動カテーテル1の使用回数N(
図5参照)の値が、1つ増加する(「+1」となる)時点において、以下のようにして、記憶部13内に書き込まれるようになっている。すなわち、そのような時点における日時情報Idt2が、使用開始日時dtnとして、記憶部13に対する書込み(前述した使用日時情報133に対する書込み)が行われるようになっている。この点は、以下説明する変形例3においても、同様である。
【0150】
一方、変形例3の判定処理では、
図12中のステップS311において、(初回の)使用開始日時dtsの代わりに、以下の情報を用いて、上記した経過時間Δt1が導出される。すなわち、この変形例3では、使用開始日時dtsの代わりに、変形例2と同様の2回目以降の使用開始日時dtnのうち、記憶部13内における「除細動カテーテル1の使用回数N(
図5参照)に対応した、使用開始日時dtn」の情報を利用して、経過時間Δt1が導出されるようになっている(Δt1=Idt2-dtn)。具体的には、例えば、記憶部13内から読み出された使用回数Nが、4回目を示す情報である場合には、この使用回数Nに対応した使用開始日時である「dt4」の情報を利用して、経過時間Δt1が導出される。
【0151】
このような変形例2,3では、上記したステップS311の後のステップS312において、上記した使用開始日時dtnを基準とした経過時間Δt1が、閾値時間Δtth1以内であれば(ステップS312:Y)、以下のようになる。すなわち、除細動カテーテル1の使用が「有効」であると判定され(ステップS309)、除細動の実行用の操作の受付が、有効化される(ステップS310)ことになる。
【0152】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0153】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の材料等は限定されるものではなく、他の材料としてもよい。また、上記実施の形態等では、除細動カテーテル1の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えばシャフト11の内部に、首振り部材として、撓み方向に変形可能な板バネが設けられているようにしてもよい。また、シャフト11における電極の構成(リング状電極および先端電極の配置や形状、個数等)は、上記実施の形態等で挙げたものには限られない。更に、除細動カテーテル1における各部材の構成(形状、配置、材料、個数等)については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、材料、個数等であってもよい。加えて、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0154】
また、上記実施の形態等では、シャフト11における先端領域P1付近の形状が、ハンドル12での操作に応じて片方向に変化するタイプの除細動カテーテルを例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、本発明は、例えば、シャフト11における先端領域P1付近の形状がハンドル12での操作に応じて両方向に変化するタイプの除細動カテーテルにも適用することが可能であり、この場合には操作用ワイヤを複数本用いることとなる。また、本発明は、シャフト11における先端領域P1付近の形状が固定となっているタイプの除細動カテーテルにも適用することが可能であり、この場合には、操作用ワイヤや回転板122等が不要となる。すなわち、ハンドル本体121のみでハンドルが構成されることになる。
【0155】
更に、上記実施の形態等では、生体測定機構6が複数の電極パッド(電極パッド61)を用いて構成されている場合の例を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、除細動カテーテル1とは異なる別の電極カテーテル(患者9の心腔内に挿入されたもの)等を、生体測定機構として用いるようにしてもよい。
【0156】
加えて、上記実施の形態等では、電源装置2のブロック構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明した各ブロックを必ずしも全て備える必要はなく、また、他のブロックを更に備えていてもよい。また、電源装置2内の切替部23による供給経路の切替動作についても、上記実施の形態等で説明した切替動作には限られず、他の手法を用いた切替動作であってもよい。更に、除細動カテーテルシステム3全体としても、上記実施の形態等で説明した各装置に加えて、他の装置を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、場合によっては、心電計4や生体測定機構6(電極パッド61)等を、除細動カテーテルシステムに含めて構成するようにしてもよい。
【0157】
また、操作者による操作に応じた日時情報Idt2の設定変更の制限手法については、上記実施の形態等で説明した手法には限られず、他の手法を用いて、そのような設定変更の制限をするようにしてもよい。更に、日時情報Idt1,Idt2の利用方法についても、上記実施の形態等で説明した利用方法の例(
図4参照)には限られず、他の利用方法を適用するようにしてもよい。加えて、上記実施の形態等では、前述した経過時間Δt1,Δt2の双方が導出部244によって導出されている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、これらの経過時間Δt1,Δt2のうちの一方のみが、導出部244によって導出されるようにしてもよい。
【0158】
更に、上記実施の形態等では、判定部246における、除細動カテーテル1の使用の有効性に関する判定処理の手法について、具体的に挙げて説明したが、この例には限られず、他の手法を用いて、除細動カテーテル1の使用の有効性に関する判定処理を行うようにしてもよい。加えて、読出部245によって読み出される各種データの種類や、記憶部13,242にそれぞれ保持されている各種データの種類についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の種類のデータであってもよい。更に、実行許可部247によって実行が許可される(入力部21での操作の受付が有効化される)処理としては、上記実施の形態等で説明したような、電源部22からの電力供給用(除細動の実行用)の処理には限られない。すなわち、例えば、このような除細動の実行用の処理と、所定の電位測定(心電位測定等)の処理との双方が、実行許可部247によって実行が許可されるようにしてもよい。
【0159】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0160】
更に、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。