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特許7307411N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法及びその中間体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法及びその中間体
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/70 20060101AFI20230705BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
C07D211/70 CSP
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019566519
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2019001426
(87)【国際公開番号】W WO2019142900
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018007427
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000246398
【氏名又は名称】有機合成薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴洋乃
(72)【発明者】
【氏名】伊東 義博
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐未子
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-131486(JP,A)
【文献】国際公開第04/031153(WO,A1)
【文献】特開2006-104130(JP,A)
【文献】国際公開第98/057962(WO,A1)
【文献】国際公開第98/057968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1):
【化1】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールメチル基であり、Rはアルキル基である)
で表されるピペリジリデン酢酸誘導体と4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させて、下記式(2)又は式(3):
【化2】
【化3】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールメチル基である)
で表されるヒドロキシピペリジン誘導体を得る工程、
を含む、ヒドロキシピペリジン誘導体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工程(A)、
(B)工程(A)で得られるヒドロキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、下記式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基である)
で表されるジカーボネートと反応させ、下記式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基である)
で表されるアルコキシカルボニル体を得る工程、及び
(C)前記アルコキシカルボニル体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、下記式(6):
【化6】
(式中、Rはアルキル基であり、Msはメシル基である)
で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程
を含むN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の工程(A)、
(D)前記工程(A)で得られるヒドロキシピペリジン誘導体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、下記式(7)又は式(8):
【化7】
【化8】
(式中、Rは置換基を有してもよいアリールメチル基である)
で表されるメシルオキシピペリジン誘導体を得る工程、及び
(E)前記メシルオキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、下記式(4):
【化9】
(式中、Rはアルキル基である)
で表されるジカーボネートと反応させ、下記式(6):
【化10】
(式中、Rはアルキル基であり、Msはメシル基である)
で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程、
を含む、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法。
【請求項4】
下記式(9):
【化11】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン。
【請求項5】
下記式(10):
【化12】
で表される1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン。
【請求項6】
下記式(11):
【化13】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジン。
【請求項7】
下記式(12):
【化14】
で表される1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法及びその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、例えばファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の合成中間体として有用であることが開示されている(特許文献1)。
特許文献2には、新規物質であるN-アラルキルピペリジン誘導体を用いて、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを製造する方法が記載されている。具体的には、N-アラルキルピペリジン誘導体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させ、得られたメシル体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、ジカーボネートと反応させることによってN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体(1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン)を製造する方法、及びN-アラルキルピペリジン誘導体をジカーボネートと反応させ、得られたアルコキシカルボニル体をメシルハライドと反応させることによって、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体(1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン)を製造する方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2006-511481号公報
【文献】特開2004-131486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡便なN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法を提供することである。また、本発明の目的は不純物の少ないN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、簡便なN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、ピペリジリデン酢酸誘導体を4-ヒドロキシピペリジンと反応させることにより、新規なヒドロキシピペリジン誘導体を見出し、この化合物を用いて、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を簡便に製造できることを見いだした。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1](A)下記式(1):
【化1】
(式中、Rは置換基を有してもよいアラルキル基であり、Rはアルキル基である)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体と4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させて、下記式(2)又は式(3):
【化2】
【化3】
(式中、Rは置換基を有してもよいアラルキル基である)で表されるヒドロキシピペリジン誘導体を得る工程、を含む、ヒドロキシピペリジン誘導体の製造方法、
[2]前記[1]に記載の工程(A)、(B)工程(A)で得られたヒドロキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、下記式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基である)で表されるジカーボネートと反応させ、下記式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基である)で表されるアルコキシカルボニル体を得る工程、及び(C)前記アルコキシカルボニル体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、下記式(6):
【化6】
(式中、Rはアルキル基であり、Msはメシル基である)で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程、を含むN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法、
[3]前記[1]に記載の工程(A)、(D)前記工程(A)で得られるヒドロキシピペリジン誘導体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、下記式(7)又は式(8):
【化7】
【化8】
(式中、Rは置換基を有してもよいアラルキル基である)で表されるメシルオキシピペリジン誘導体を得る工程、及び(E)前記メシルオキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、下記式(4):
【化9】
(式中、Rはアルキル基である)で表されるジカーボネートと反応させ、下記式(6):
【化10】
(式中、Rはアルキル基であり、Msはメシル基である)で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程、を含む、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法、
[4]下記式(9):
【化11】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン、
[5]下記式(10):
【化12】
で表される1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン、
[6]下記式(11):
【化13】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジン、及び
[7]下記式(12):
【化14】
で表される1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法によれば、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を従来の製造方法と比較して、少ない工程数で製造することができる。また、本発明の製造方法により得られたN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体は、特許文献2に記載の製造方法によって製造されたN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体と比較して、副生成物の混入量の非常に少ないN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[1]N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法
本発明のN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法の第1の態様は、
(A)前記式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体と4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させて、前記式(2)又は式(3)で表されるヒドロキシピペリジン誘導体を得る工程(以下、工程(A)と称することがある)、
(B)工程(A)で得られるヒドロキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、前記式(4)で表されるジカーボネートと反応させ、前記式(5)で表されるアルコキシカルボニル体を得る工程(以下、工程(B)と称することがある)、及び
(C)前記アルコキシカルボニル体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、前記式(6)で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程(以下、工程(C)と称することがある)、
を含む。
【0008】
本発明のN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法の第2の態様は、
(A)前記式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体と4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させて、前記式(2)又は式(3)で表されるヒドロキシピペリジン誘導体を得る工程、
(D)前記工程(A)で得られるヒドロキシピペリジン誘導体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、前記式(7)又は式(8)で表されるメシルオキシピペリジン誘導体を得る工程(以下、工程(D)と称することがある)、及び
(E)前記メシルオキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、前記式(4)で表されるジカーボネートと反応させ、前記式(6)で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程(以下、工程(E)と称することがある)、を含む。
【0009】
本明細書において、置換基を有してもよいアラルキル基とは、アラルキル基及び置換基を有するアラルキル基を含む。アラルキル基とはアルキル基の水素原子の1つがアリール基で置換されたものである。アラルキル基の炭素数は、限定されるものではないが、好ましくは7~16であり、より好ましくは7~10である。
置換基を有するアラルキル基の置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はニトロ基が挙げられる。置換基を有するアラルキル基の炭素数も、限定されるものではないが、好ましくは7~16であり、より好ましくは7~10である。この場合、置換基の炭素数は含まない。
具体的には、置換基を有してもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α-メチルベンジル基、p-メチルベンジル基、p-ニトロベンジル基、又はp-メトキシベンジル基などが挙げられる。
【0010】
アルキル基は、特に限定されるものではないが、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数2~5のアルキル基がより好ましく、2~4のアルキル基が最も好ましい。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、又はシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0011】
本発明のN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法の出発材料である式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体は、限定されるものではないが、特許文献2に記載の方法で調製できる。
具体的には、下記式(13):
【化15】
(式中、Rは置換基を有してもよいアラルキル基である)
で表されるピペリドン誘導体と、下記式(14):
【化16】
(式中、Rはアルキル基であり、Rはアルキル基又はアリール基を示す)
で表されるリン試薬とを塩基の存在下に反応させて、前記式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体を得る。
前記アルキル基としては、限定されるものではないが、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、限定されるものではないが、好ましくは炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
【0012】
リン試薬としては、ジメチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジフェニルホスホノ酢酸エチルなどが挙げられる。好ましくは、ジエチルホスホノ酢酸エチルである。リン試薬の使用量は、ピペリドン誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モルである。
塩基としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。好ましくは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドである。塩基の使用量は、ピペリドン誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは、1~1.2倍モルである。
【0013】
反応は通常溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;アセトニトリルなどのニトリル類が挙げられる。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常-10~30℃である。反応時間は、原料、反応温度などによって異なるが、通常1~5時間以内に終了する。
【0014】
本発明のN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法においては、式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体を工程(A)、工程(B)、及び工程(C)の順番に反応させることによって、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得ることができる。また、式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体を工程(A)、工程(D)、及び工程(E)の順番に反応させることによって、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得ることができる。
【0015】
《工程(A)》
前記工程(A)は、前記式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体と4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させて、前記式(2)又は式(3)で表されるヒドロキシピペリジン誘導体を得る工程である。
ピペリジリデン酢酸誘導体は限定されるものではないが、例えば1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルが挙げられる。
4-ヒドロキシピペリジンの使用量は、ピペリジリデン酢酸誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モルである。
【0016】
工程(A)で使用する塩基としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムが挙げられる。好ましくは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドである。塩基の使用量は、ピペリジリデン酢酸誘導体に対して等モル前後あれば十分であり、好ましくは、0.5~1.5倍モルである。
【0017】
反応は通常溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常50~120℃である。反応時間は、原料、反応温度などによって異なるが、通常1~10時間以内に終了する。
【0018】
式(2)で表されるヒドロキシピペリジン誘導体としては、例えば1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンが挙げられる。式(3)で表されるヒドロキシピペリジン誘導体としては、例えば1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンが挙げられる。
【0019】
《工程(B)》
前記工程(B)は、ヒドロキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、前記式(4)で表されるジカーボネートと反応させ、前記式(5)で表されるアルコキシカルボニル体を得る工程である。
ジカーボネートとしては、ジメチルジカーボネート、ジエチルジカーボネート、ジプロピルジカーボネート、ジイソプロピルジカーボネート、ジブチルジカーボネート、ジイソブチルジカーボネート、ジ-tert-ブチルジカーボネート、又はジ-tert-アミルジカーボネートなどが挙げられる。ジカーボネートの使用量はヒドロキシピペリジン誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モル量である。
【0020】
触媒としては、パラジウムを含有する触媒であれば特に制限されない。例えば、パラジウム-炭素、パラジウム-アルミナ、パラジウム-シリカ、パラジウム-硫酸バリウムなどが挙げられる。好ましくは、パラジウム-炭素である。触媒の使用量(パラジウム換算)は、N-アラルキルピペリジン誘導体に対して少量あれば十分であり、通常0.05~2質量%である。水素圧は特に制限されないが、好ましくは常圧~1MPaの範囲である。
反応は通常溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが通常30~80℃である。反応時間は、原料、反応温度などによって異なるが、通常1~8時間以内に終了する。
得られるアルコキシカルボニル体は、限定されるものではないが、例えば1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンが挙げられる。
【0021】
《工程(C)》
前記工程(C)は、前記アルコキシカルボニル体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、前記式(6)で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程である。
メシルハライドとしてはメシルクロリドなどが挙げられ、塩基としてはピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
塩基の使用量は、メシルハライドに対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モルである。
メシルハライドの使用量は、アルコキシカルボニル体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モルである。
反応は通常溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;アセトニトリルなどのニトリル類が挙げられる。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常-10~20℃である。反応時間は、原料、反応温度などによって異なるが、通常1~5時間以内に終了する。
N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体は限定されるものではないが、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンが挙げられる。
【0022】
《工程(D)》
前記工程(D)は、ヒドロキシピペリジン誘導体を塩基の存在下にメシルハライドと反応させて、前記式(7)又は式(8)で表されるメシルオキシピペリジン誘導体を得る工程である。
メシルハライドとしてはメシルクロリドなどが挙げられ、塩基としてはピリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
塩基の使用量は、メシルハライドに対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モルである。
メシルハライドの使用量は、ヒドロキシピペリジン誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モルである。
反応は通常溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;アセトニトリルなどのニトリル類が挙げられる。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常-10~20℃である。反応時間は、原料、反応温度などによって異なるが、通常1~5時間以内に終了する。
式(7)で表されるメシルオキシピペリジン誘導体としては、例えば1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンが挙げられる。また、式(8)で表されるメシルオキシピペリジン誘導体としては、例えば1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジンが挙げられる。
【0023】
《工程(E)》
前記工程(E)は、前記メシルオキシピペリジン誘導体を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、前記式(4)で表されるジカーボネートと反応させ、前記式(6)で表されるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得る工程である。
ジカーボネートとしては、ジメチルジカーボネート、ジエチルジカーボネート、ジプロピルジカーボネート、ジイソプロピルジカーボネート、ジブチルジカーボネート、ジイソブチルジカーボネート、ジ-tert-ブチルジカーボネート、ジ-tert-アミルジカーボネートなどを挙げることができる。ジカーボネートの使用量はメシルオキシピペリジン誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1~1.5倍モル量である。
【0024】
触媒としては、パラジウムを含有する触媒であれば特に制限されない。例えば、パラジウム-炭素、パラジウム-アルミナ、パラジウム-シリカ、パラジウム-硫酸バリウムなどが挙げられる。好ましくは、パラジウム-炭素である。触媒の使用量(パラジウム換算)は、メシル体に対して少量あれば十分であり、通常0.05~2質量%である。水素圧は特に制限されないが、好ましくは常圧~1MPaの範囲である。
反応は通常溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。これらは、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが通常30~80℃である。反応時間は、原料、反応温度などによって異なるが、通常1~8時間以内に終了する。
N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体は限定されるものではないが、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンが挙げられる。
【0025】
(ヒドロキシピペリジン誘導体の製造方法)
本発明のN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の製造方法における工程(A)によって、ヒドロキシピペリジン誘導体を製造できる。すなわち、本発明のヒドロキシピペリジン誘導体の製造方法は、(A)前記式(1)で表されるピペリジリデン酢酸誘導体と4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させて、前記式(2)又は式(3)で表されるヒドロキシピペリジン誘導体を得る工程、を含む。
本発明の製造方法により得られたヒドロキシピペリジン誘導体は、N-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体の原料として有用に用いることができる。
【0026】
[2]1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン
本発明の1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンは下記式(9):
【化17】
で表される化合物である。
1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンは、1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを前記工程(A)のピペリジリデン酢酸誘導体として用いることによって、製造できる。1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンは、医薬品の中間体として有用である。
【0027】
[3]1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン
本発明の1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンは、下記式(10):
【化18】
で表される化合物である。
1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンは、1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを前記工程(A)のピペリジリデン酢酸誘導体として用いることによって、製造できる。1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンは、医薬品の中間体として有用である。
【0028】
[4]1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジン
本発明の1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは下記式(11):
【化19】
で表される化合物である。
1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを前記工程(D)のヒドロキシピペリジン誘導体として用いることによって、製造できる。1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、医薬品の中間体として有用である。
【0029】
[5]1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン
本発明の1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは下記式(12):
【化20】
で表される化合物である。
1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを前記工程(D)のヒドロキシピペリジン誘導体として用いることによって、製造できる。1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、医薬品の中間体として有用である。
【0030】
《作用》
本発明の製造方法においては、ピペリジリデン酢酸誘導体に対して、アミン(4-ヒドロキシピペリジン)による求核反応を選択的に生じさせることができた。この反応によって得られた生成物は、ヒドロキシピペリジン誘導体の異性体混合物であったが、メシル化の反応工程、及び脱ベンジル化、Boc化、及びオレフィン還元の反応工程を行うことにより、不純物の少ないN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体を得ることができた。異性体混合物を中間体として用い、複数の反応を1つの工程で行うにもかかわらず、副生成物の混入量の非常に少なく、純度の高いN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体が得られることは驚くべきことである。
【実施例
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
《実施例1》1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの合成
[工程1]
1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルの合成
特許文献2の実施例1の工程1に記載の、下記の方法で合成した。
ジエチルホスホノ酢酸エチル235.4g(1.05mol)、トルエン618g、20%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液374.3g(ナトリウムエトキシド換算1.10mol)の混合物に、1-ベンジル-4-ピペリドン189.3g(1.00mol)とトルエン190gとの混合溶液を5~15℃で滴下した。同温度で1時間反応させた後、室温で反応混合物を水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。残渣として橙色オイル状の標記化合物247.2gを得た(収率95.3%)。
【0033】
[工程2]
1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン及び1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの混合物の合成
容量30mLの反応フラスコに、1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステル4.00g(0.015mol)、トルエン16.0g、4-ヒドロキシピペリジン1.64g(0.016mol)及び28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液1.49g(ナトリウムメトキシド換算0.008mol)を加えて昇温し、還流温度108~112℃で3時間反応させた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、食塩水を加えた後、10%塩酸2.80gを加えた。トルエンを用いて抽出し、得られた有機層を減圧下濃縮した。残渣として、褐色オイル状の標記化合物5.36gを得た。

質量分析(EI):315(M+H)

1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン
HNMR(CDCl)δ(ppm):1.47(m,2H),1.84(m,2H),2.30(t,J=5.7Hz,2H),2.49(s,4H),2.50(t,J=6.1Hz,2H),2.77(br,1H),3.18(m,2H),3.51(s,2H),3.79(m,1H),3.88(m,1H),4.06(m,1H),5.74(s,1H),7.30(m,5H)

1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン
HNMR(CDCl)δ(ppm):1.47(m,2H),1.84(m,2H),2.14(s,2H),2.59(t,J=5.7Hz,2H),2.77(br,1H),2.98(s,2H),3.06(s,2H),3.18(m,2H),3.57(s,2H),3.69(m,1H),3.88(m,1H),4.06(m,1H),5.44(t,J=1.6Hz,1H),7.30(m,5H)
【0034】
[工程3]
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの合成
容量200mLのオートクレーブに工程2で得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン及び1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの混合物5.36g(0.017mol)、2-プロパノール44.5g、ジ-tert-ブチルジカーボネート3.72g(0.017mol)及び50%含水の5%パラジウム-炭素1.07gを加え、水素0.5MPa加圧下、45℃で6時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、触媒を濾別した。濾液を減圧下濃縮し、残渣として、オイル状の標記化合物5.37gを得た(収率85.9%)。
【0035】
[工程4]
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの合成
容量100mLの反応フラスコに工程3で得られた1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン5.37g(0.016mol)、トルエン48.4g及びトリエチルアミン2.16g(0.021mol)を加えた。メシルクロリド1.88g(0.016mol)を0~10℃で滴下した。同温で1時間反応させた。炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、減圧下濃縮した結果、褐色オイル状の標記化合物6.11gを得た(収率93.3%)。濃縮残渣にトルエン21.5gを加えて氷冷し、析出した結晶を濾取した。湿結晶を減圧下乾燥し、微黄色結晶性粉末の標記化合物を得た。得られた化合物のHNMR、13CNMR分析の結果は、特許文献2の実施例2に記載の結果と同様であった。
【0036】
《実施例2》
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの合成
[工程1]
1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジン及び1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの混合物の合成
容量300mLの四つ口フラスコに、実施例1の工程2の方法で得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン及び1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの混合物12.0g(38mmol)、トリエチルアミン4.52g(0.045mol)及びトルエン108.0gを加え、4℃まで冷却した。メシルクロリド4.72g(0.041mol)を0~10℃で滴下した。同温で1時間反応させた。炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、減圧下濃縮した。残渣として、オイル状の標記化合物12.4gを得た(収率83.0%)。

質量分析(EI):393(M+H)

1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジン
HNMR(CDCl)δ(ppm):1.84(m,2H),1.96(m,2H),2.31(t,J=5.7Hz,2H),2.41(s,1H),2.50(m,1H),2.51(d,J=4.7Hz,4H),3.04(s,3H),3.46(m,1H),3.52(s,2H),3.54(m,1H),3.73(m,1H),3.82(m,1H),4.92(m,1H),5.74(s,1H),7.25(m,5H)

1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン
HNMR(CDCl)δ(ppm):1.84(m,2H),1.96(m,2H),2.14(s,2H),2.59(t,J=8.0Hz,2H),2.98(s,2H),3.04(s,3H),3.07(s,2H),3.37(m,1H),3.54(m,1H),3.58(s,2H),3.64(m,1H),3.82(m,1H)、4.92(m,1H),5.45(s,1H),7.25(m,5H)
【0037】
[工程2]
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの合成
容量200mLのオートクレーブに、工程1で得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジリデンアセチル)-4-メシルオキシピペリジン及び1-(1-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの混合物1.60g(0.004mol)、ジ-tert-ブチルジカーボネート0.89g(0.004mol)、2-プロパノール13g及び50%含水の5%パラジウム-炭素0.96gを加え、50℃、水素0.5MPa加圧下で10時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、触媒を濾別した。ろ液を減圧下濃縮した。濃縮残渣にトルエン及び食塩水で洗浄し、減圧下濃縮した結果、無色オイル状の標記化合物1.36gを得た(収率82.5%)。濃縮残渣にトルエン1.65gを加えて氷冷し、析出した結晶を濾取した。湿結晶を減圧下乾燥し、白色結晶性粉末の標記化合物0.70gを得た(収率42.5%)。得られた化合物のHNMR、13CNMR分析の結果は、特許文献2の実施例2に記載の結果と同様であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法によって得られるN-アルコキシカルボニルピペリジン誘導体、例えば1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、医薬品の合成のための中間体として有用である。