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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】空調用レジスタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20230705BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019111858
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020203561
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595115581
【氏名又は名称】株式会社浜名プラスチック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三井 靖之
(72)【発明者】
【氏名】外山 真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳巳
【審査官】嶋田 研司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-026915(JP,U)
【文献】実開昭62-038542(JP,U)
【文献】実開平04-132349(JP,U)
【文献】特開2015-071383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の通風路が形成されたリテーナと、
前記通風路に配置され、かつ前記リテーナに傾動可能に支持された下流フィンと、
前記下流フィンにスライド可能に装着された操作ノブと、
前記空調用空気の流れ方向における前記下流フィンよりも上流に配列された複数の上流フィン本体を備え、かつ各上流フィン本体が上流フィン軸により前記リテーナに傾動可能に支持された複数の上流フィンと、
前記操作ノブのスライド操作に連動して各上流フィンを傾動させる駆動機構と
を備え、
前記駆動機構は、
前記上流フィン毎の前記上流フィン軸から前記流れ方向へ離れた箇所であり、かつ各上流フィン本体から、互いに同上流フィン本体の厚み方向における同一方向に離れた箇所において、前記上流フィン軸に平行に延びるように前記上流フィン本体に繋がった状態で設けられた連結軸と、
全ての前記連結軸に連結され、かつ前記操作ノブのスライドが伝達機構を介して伝達されることにより前記上流フィンの配列方向に移動するロッドと
を備え、
前記配列方向における両端の前記上流フィンのうち、前記連結軸が自身と隣の前記上流フィンとの間に位置しないものと、同配列方向における中間部分の前記上流フィンとを対象としたとき、前記対象とされた上流フィンにおける前記上流フィン本体には、前記流れ方向における下流端から上流側へ延びる切欠きが形成されており、
前記配列方向における前記ロッドの複数箇所には、前記連結軸を支持する軸支持部が形成され、
前記流れ方向における前記ロッドの少なくとも上流部において前記軸支持部が形成されていない箇所が、前記対象とされた前記上流フィン毎の前記切欠き内に挿入されている空調用レジスタ。
【請求項2】
各上流フィンは、前記上流フィン本体から、互いに前記厚み方向における同一方向へ突出する支持突部を有し、前記連結軸は前記支持突部を介して前記上流フィン本体に繋がっている請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記配列方向における前記ロッドの複数箇所には、前記連結軸を支持する軸支持部が形成されるとともに、前記流れ方向における前記ロッドの上流端面と前記軸支持部とを連通させる連通部が形成されており、
前記連通部の最も狭い箇所での前記配列方向における寸法は、前記厚み方向における前記連結軸の寸法の最も大きい箇所でのその寸法よりも小さく設定されている請求項1又は2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
前記伝達機構は、
前記操作ノブから前記流れ方向における上流側へ突出する板状の第1リブと、
前記ロッドから前記流れ方向における下流側へ突出する板状の第2リブと
を備え、前記第1リブ及び前記第2リブの一方は、互いに平行な状態で前記流れ方向に延びて、他方を前記配列方向における両側から挟み込んでいる請求項1~のいずれか1項に記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の空調用レジスタを製造する方法であって、
複数の前記上流フィンを、第1成形型及び第2成形型を備える金型装置により成形する成形工程を含み、
前記成形工程では、前記金型装置として、型閉じされた前記第1成形型及び前記第2成形型の間において、複数の前記上流フィンを、前記上流フィン本体の厚み方向に互いに平行となるように配置した状態で成形するものが用いられ、
前記成形工程では、前記第1成形型及び前記第2成形型が前記上流フィン本体の側面に沿う方向に相対移動させられることにより、前記金型装置が型閉じ及び型開きされて前記上流フィンが成形される空調用レジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきて室内に吹出す空調用空気の向きを変更等する空調用レジスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてきた空調用空気を車室内に吹出す空調用レジスタが組込まれている。空調用レジスタは、空調用空気の通風路を有するリテーナを備えている。通風路には、図10に示すように、空調用空気A1の流れ方向における下流から上流に向けて、図示しない下流フィン及び複数の上流フィン72,73が配置されている。下流フィンには、操作ノブ71がスライド可能に装着されている。各上流フィン72,73は、上流フィン軸74によりリテーナに傾動可能に支持されている。空調用レジスタは、さらに、操作ノブ71のスライドに連動して各上流フィン72,73を傾動させるための駆動機構75を備えている。
【0003】
駆動機構75は、操作ノブ71のスライドを上流フィン72に伝達するための伝達機構76と、上流フィン73を上流フィン72に同期させた状態で傾動させるための連動機構77とを備えている。
【0004】
伝達機構76は、例えば、特許文献1では同図10に示すように、操作ノブ71に設けられたフォーク78と、上流フィン72に設けられた伝達軸部79及び切欠き部81とを備えている。フォーク78は二股状に分岐されており、伝達軸部79を、上流フィン72,73の配列方向における両側から挟み込んでいる。
【0005】
連動機構77は、上流フィン72,73毎に上流フィン軸74から離れた箇所に形成された連結ピン82と、全ての連結ピン82を連結する連結ロッド83とを備えている。
上記特許文献1に記載の空調用レジスタにおいて、操作ノブ71が上記配列方向へスライド操作されると、フォーク78が、伝達軸部79を同方向に押圧する。この押圧により、上流フィン72が上流フィン軸74を支点として傾動される。上流フィン72の傾動は、連結ロッド83及び連結ピン82を介して各上流フィン73に伝達される。その結果、上流フィン72に同期して各上流フィン73が傾動され、空調用空気A1の向きが変更される。
【0006】
ところで、上記空調用レジスタの製造工程中、上流フィン72,73を成形する成形工程では、図11及び図12に示す金型装置84が用いられる。上流フィン72,73は、型閉じされた第1成形型85及び第2成形型86の間において、全ての上流フィン72,73の側面が略同一平面上に位置するように配置された状態で成形される。この場合、上流フィン72が、上流フィン軸74の下流側に伝達軸部79及び切欠き部81を有することから、第1成形型85及び第2成形型86を、上流フィン72,73の側面に沿う方向へ相対移動させることが難しい。そのため、図12に示すように、第1成形型85及び第2成形型86が上流フィン72,73の厚み方向へ相対移動させられることにより、金型装置84が型閉じ及び型開きされて上流フィン72,73が成形される。従って、上流フィン72,73の配置方向、図11及び図12では左右方向における金型装置84の大型化が避けられない。
【0007】
そこで、例えば、特許文献2では、図13図15に示すように、伝達機構76として、駆動ギヤ87及び被動ギヤ88が用いられている。駆動ギヤ87は、上記フォーク78に代えて設けられており、上記流れ方向における操作ノブ71の上流端部に形成されている。被動ギヤ88は、上記伝達軸部79及び切欠き部81に代えて設けられている。被動ギヤ88は、上流フィン72に形成された被着部89に対し装着されており、上記駆動ギヤ87に噛み合わされている。
【0008】
ここで、上記のように、被動ギヤ88を、上流フィン72とは別部材によって構成したのは、上流フィン72及び被動ギヤ88を一体に成形することが難しいからである。
なお、図13図16に示す空調用レジスタの構成部材のうち、図10図12に示す空調用レジスタの構成部材と同様のものについては、同一の符号が付されている。
【0009】
上記特許文献2に記載された空調用レジスタにおいて、操作ノブ71をスライド操作すると、駆動ギヤ87の被動ギヤ88との噛み合い箇所が変化し、上流フィン72が上流フィン軸74を支点として傾動される。上流フィン72の傾動は、連結ロッド83及び連結ピン82を介して各上流フィン73に伝達される。その結果、上流フィン72に同期して各上流フィン73が傾動される。そのため、この場合にも、操作ノブ71を操作することで、空調用空気A1の向きを変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-225839号公報
【文献】特開2011-148455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2に記載された空調用レジスタによると、上流フィン72,73の成形工程では、図16に示すように、金型装置90として、型閉じされた第1成形型91及び第2成形型92の間において、全ての上流フィン72,73を、厚み方向に互いに平行となるように配置された状態で成形される。この場合、第1成形型91及び第2成形型92が上流フィン72,73の側面に沿う方向、図16では上下方向へ相対移動させられることにより、金型装置90が型閉じ及び型開きされて上流フィン72,73が成形される。そのため、上流フィン72,73の配置方向、図16では左右方向における金型装置90の小型化を図ることが可能である。
【0012】
ところが、特許文献2に記載された空調用レジスタでは、連結ピン82を連結する連結ロッド83が上流フィン72,73とは別に設けられていることに加え、被動ギヤ88が上流フィン72とは別に設けられることから、駆動機構75を構成する部品の数が多くなってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、金型装置の小型化を図りつつ、駆動機構を少ない部品点数で構成することのできる空調用レジスタ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する空調用レジスタは、空調用空気の通風路が形成されたリテーナと、前記通風路に配置され、かつ前記リテーナに傾動可能に支持された下流フィンと、前記下流フィンにスライド可能に装着された操作ノブと、前記空調用空気の流れ方向における前記下流フィンよりも上流に配列された複数の上流フィン本体を備え、かつ各上流フィン本体が上流フィン軸により前記リテーナに傾動可能に支持された複数の上流フィンと、前記操作ノブのスライド操作に連動して各上流フィンを傾動させる駆動機構とを備え、前記駆動機構は、前記上流フィン毎の前記上流フィン軸から前記流れ方向へ離れた箇所であり、かつ各上流フィン本体から、互いに同上流フィン本体の厚み方向における同一方向に離れた箇所において、前記上流フィン軸に平行に延びるように前記上流フィン本体に繋がった状態で設けられた連結軸と、全ての前記連結軸に連結され、かつ前記操作ノブのスライドが伝達機構を介して伝達されることにより前記上流フィンの配列方向に移動するロッドとを備える。
【0015】
上記の構成によれば、操作ノブがスライド操作されると、その操作ノブの動きが駆動機構における伝達機構を介してロッドに伝達され、同ロッドが上流フィンの配列方向に移動する。ロッドの動きは、駆動機構における上流フィン毎の連結軸を介して全ての上流フィン本体に伝達される。上流フィン毎の連結軸は、上流フィン軸から空調用空気の流れ方向へ離れた箇所において、上流フィン軸に平行に延びている。そのため、各上流フィンが、互いに同期した状態で、自身の上流フィン軸を支点として、同一方向へ傾動される。通風路を流れる空調用空気は、各上流フィンに沿って流れることで向きを変えられる。
【0016】
このように、駆動機構における伝達機構及びロッドは、操作ノブのスライドを上流フィン毎の連結軸に伝達して、全ての上流フィンを同期させた状態で傾動させる。そのため、特定の上流フィンを傾動させて、他の上流フィンを上記特定の上流フィンに同期させる特許文献1及び特許文献2とは異なり、上流フィン毎の連結ピンを連結する連結ロッドが不要となる。その分、駆動機構を構成する部品の数が少なくなる。
【0017】
また、上流フィン毎の連結軸が、各上流フィン本体から、互いに同上流フィン本体の厚み方向における同一方向に離れた箇所に位置している。そのため、空調用レジスタの製造工程の一部をなす成形工程において、全ての上流フィンを金型装置により成形する場合、第1成形型及び第2成形型を上流フィン本体の側面に沿う方向へ相対移動させて、金型装置を型閉じ及び型開きさせる。こうすることで、全ての上流フィンを、上流フィン本体の厚み方向に互いに平行となるように配置した状態で成形することが可能となる。その結果、第1成形型及び第2成形型を上記厚み方向へ相対移動させて、金型装置を型閉じ及び型開きさせることで、全ての上流フィンを、上流フィン本体の側面が略同一平面上に位置するように配置した状態で成形する場合に比べ、上流フィンの配置方向における金型装置の寸法が小さくなる。
【0018】
上記空調用レジスタにおいて、各上流フィンは、前記上流フィン本体から、互いに前記厚み方向における同一方向へ突出する支持突部を有し、前記連結軸は前記支持突部を介して前記上流フィン本体に繋がっていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、操作ノブのスライド操作に応じてロッドが上流フィンの配列方向に移動すると、そのロッドの動きが、上流フィン毎の連結軸及び支持突部を介して各上流フィン本体に伝達される。
【0020】
また、上流フィン毎の支持突部は、上流フィン本体から同上流フィン本体の厚み方向における同一方向へ突出している。そのため、第1成形型及び第2成形型を上流フィン本体の側面に沿う方向へ相対移動させて、金型装置を型閉じ及び型開きさせることにより、全ての上流フィンを、上記厚み方向に互いに平行となるように配置された状態で成形することが可能である。
【0021】
上記空調用レジスタにおいて、前記配列方向における中間部分の前記上流フィンと、同配列方向における両端の前記上流フィンのうち、前記連結軸が隣の前記上流フィンとの間に位置しないものとを対象とし、前記対象とされた上流フィンにおける前記上流フィン本体には、前記流れ方向における下流端から上流側へ延びる切欠きが形成されており、前記流れ方向における前記ロッドの少なくとも上流部は、前記対象とされた前記上流フィン毎の前記切欠き内に挿入されていることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、操作ノブがスライド操作されると、その操作ノブの動きが伝達機構を介してロッドに伝達され、同ロッドが上流フィンの配列方向に移動する。この際、上記対象とされた上流フィンでは、上記流れ方向におけるロッドの少なくとも上流部の一部が、切欠き内を移動する。
【0023】
上記空調用レジスタにおいて、前記配列方向における前記ロッドの複数箇所には、前記連結軸を支持する軸支持部が形成されるとともに、前記流れ方向における前記ロッドの上流端面と前記軸支持部とを連通させる連通部が形成されており、前記連通部の最も狭い箇所での前記配列方向における寸法は、前記厚み方向における前記連結軸の寸法の最も大きい箇所でのその寸法よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、ロッドが複数の上流フィンに組付けられる場合には、配列された複数の上流フィンに対し、上記流れ方向に沿ってロッドが近づけられることにより、上流フィン毎の連結軸が、連通部を通って軸支持部内に入り込む。そのため、連通部が形成されず、軸支持部が孔によって構成されたロッドを連結軸及び軸支持部の軸線方向に沿って上流フィンに近づけることにより、連結軸を軸支持部に係合させる場合に比べ、上流フィンに対するロッドの組付け性が向上する。
【0025】
軸支持部に連結軸が係合された状態では、連通部の最も狭い箇所が、連結軸において上記厚み方向における寸法の最も大きい箇所に対し、同厚み方向にラップする。このラップ部分により、軸支持部から連結軸が抜け出すことが規制される。
【0026】
上記空調用レジスタにおいて、前記伝達機構は、前記操作ノブから前記流れ方向における上流側へ突出する板状の第1リブと、前記ロッドから前記流れ方向における下流側へ突出する板状の第2リブとを備え、前記第1リブ及び前記第2リブの一方は、互いに平行な状態で前記流れ方向に延びて、他方を前記配列方向における両側から挟み込んでいることが好ましい。
【0027】
ここで、特許文献2に記載された空調用レジスタでは、通風路の中央部分に、駆動機構として、被動ギヤを備える大きな構造物が位置する。この大きな構造物が、空調用空気の流れの妨げとなり、圧力損失や騒音の増大を招くおそれがある。また、空調用レジスタを下流側から見た場合、通風路の中央部分に上記大きな構造物が見えるため、見栄えが悪くなる問題もある。
【0028】
この点、上記の構成によれば、伝達機構を構成する第1リブも第2リブも板状をなしており、しかも上記流れ方向に延びている。伝達機構は、駆動ギヤ及び被動ギヤにより構成される伝達機構よりも小型となる。そのため、第1リブ及び第2リブは、空調用空気の流れの妨げとなりにくい。従って、上記特許文献2に記載の空調用レジスタに比べ、圧力損失や騒音が低減される。また、空調用レジスタの下流側からは、上記と同様の理由により、第1リブ及び第2リブが見えにくく、見栄えが向上する。
【0029】
上記課題を解決する空調用レジスタの製造方法は、請求項1~5のいずれか1項に記載の空調用レジスタを製造する方法であって、複数の前記上流フィンを、第1成形型及び第2成形型を備える金型装置により成形する成形工程を含み、前記成形工程では、前記金型装置として、型閉じされた前記第1成形型及び前記第2成形型の間において、複数の前記上流フィンを、前記上流フィン本体の厚み方向に互いに平行となるように配置した状態で成形するものが用いられ、前記成形工程では、前記第1成形型及び前記第2成形型が前記上流フィン本体の側面に沿う方向に相対移動させられることにより、前記金型装置が型閉じ及び型開きされて前記上流フィンが成形される。
【0030】
上記の方法によれば、請求項1~5のいずれか1項に記載の空調用レジスタの製造に際し、成形工程が行われる。成形工程では、第1成形型及び第2成形型が上流フィン本体の側面に沿う方向に相対移動させられることにより、金型装置が型閉じ及び型開きさせられる。型閉じされた第1成形型及び第2成形型の間には、複数の上流フィンを、上流フィン本体の厚み方向に互いに平行となるように配置した状態で成形するための成形空間であるキャビティが形成される。これらのキャビティに溶融樹脂が充填されて硬化されることにより、連結軸を有する上流フィンが成形される。
【0031】
上記のように、厚み方向に互いに平行となるように配置された状態で成形される上流フィン本体の側面に沿う方向に第1成形型及び第2成形型が型閉じ及び型開きされるため、上流フィンの配置方向における金型装置の小型化を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0032】
上記空調用レジスタ及びその製造方法によれば、金型装置の小型化を図りつつ、駆動機構を少ない部品点数で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態の空調用レジスタにおける操作ノブ、ロッド及び複数の上流フィンの分解斜視図。
図2】一実施形態の空調用レジスタにおいて、中立状態にされた複数の上流フィン、下流フィン、操作ノブ及びロッドを示す平断面図。
図3】一実施形態の空調用レジスタにおける複数の上流フィンをロッドとともに示す正面図。
図4】(a)は、一実施形態の空調用レジスタにおいて、上流フィンの連結軸とロッドとの連結部分を示す部分平断面図、(b)は、連結軸に対しロッドが連結される前の状態を示す部分平断面図。
図5】一実施形態の空調用レジスタにおける複数の上流フィンを金型装置とともに示す平断面図。
図6】一実施形態の空調用レジスタにおける複数の上流フィンが連結部により連結された中間成形品を示す正面図。
図7図2の中立状態から操作ノブが右方へスライド操作されたときの下流フィン、操作ノブ、ロッド及び複数の上流フィンを示す平断面図。
図8図7の状態からさらに操作ノブが右方へスライド操作されたときの下流フィン、操作ノブ、ロッド及び複数の上流フィンを示す平断面図。
図9図2の中立状態から操作ノブが左方へスライド操作されたときの下流フィン、操作ノブ、ロッド及び複数の上流フィンを示す平断面図。
図10】特許文献1に対応する従来の空調用レジスタにおける操作ノブ、複数の上流フィン及び連結ロッドの分解斜視図。
図11】金型装置を用いて、図10における複数の上流フィンを、それらの側面が略同一平面上に位置するように配置した状態で成形する場合の、上流フィンと金型装置との関係を示す説明図。
図12図10における一部の上流フィンと金型装置との関係を示す部分平断面図。
図13】特許文献2に対応する従来の空調用レジスタにおける操作ノブ、被動ギヤ、複数の上流フィン及び連結ロッドの分解斜視図。
図14図13における複数の上流フィンの正面図。
図15図13における操作ノブ、被動ギヤ、複数の上流フィン及び連結ロッドの分解平断面図。
図16図13における複数の上流フィンを金型装置とともに示す平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、車両に組込まれて使用される空調用レジスタ、及びその空調用レジスタを製造する方法に具体化した一実施形態について、図1図9を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向、すなわち、左右方向については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0035】
車室内において、車両の前席の前方には、図示しないインストルメントパネルが設けられ、その左右方向における中央部、側部等には空調用レジスタが組込まれている。この空調用レジスタの主な機能は、空調装置から送られてきて車室内に吹出す空調用空気の向きを変更等することである。
【0036】
図1及び図2に示すように、空調用レジスタは、リテーナ10、下流フィン15、操作ノブ21、上流フィン26及び駆動機構35を備えている。下流フィン15及び上流フィン26は、複数ずつ設けられている。次に、これら各部の構成について説明する。
【0037】
<リテーナ10>
リテーナ10は、空調装置の図示しない送風ダクトと、インストルメントパネルに設けられた開口とを繋ぐためのものである。リテーナ10は、樹脂材料によって形成された複数の部材からなり、両端が開放された筒状をなしている。リテーナ10の内部空間は、空調装置から送られてくる空調用空気A1の流路(以下「通風路11」という)を構成している。ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側を「上流」といい、同空調装置から遠い側を「下流」というものとする。通風路11の下流端は、空調用空気A1の吹出口12を構成している。
【0038】
<下流フィン15>
複数の下流フィン15は、通風路11であって吹出口12の上流において、上下方向へ互いに離間した状態で配列されている。下流フィン15は、板状の下流フィン本体16と、一対の下流フィン軸17と下流連結ピン18とを備えている。各下流フィン本体16は、上下方向及び空調用空気A1の流れ方向よりも左右方向に細長い板状をなしている。下流フィン15毎の両下流フィン軸17は、下流フィン本体16の左右両端部において、左右方向に延びている。各下流フィン15は、両下流フィン軸17において、リテーナ10の縦壁部13に支持されており、両下流フィン軸17を支点として上下方向へ傾動可能である。下流連結ピン18は、各下流フィン本体16の右端面であって、下流フィン軸17から上流へ離れた箇所に設けられている。下流連結ピン18は、下流フィン軸17と同様、左右方向に延びている。
【0039】
下流フィン15毎の下流連結ピン18は、略上下方向へ延びる下流連結ロッド19によって相互に連結されている。そのため、操作ノブ21の装着された特定の下流フィン15が下流フィン軸17を支点として傾動されると、その傾動が下流連結ピン18及び下流連結ロッド19を介して他の下流フィン15に伝達される。他の下流フィン15が上記特定の下流フィン15に同期して傾動される。
【0040】
<操作ノブ21>
操作ノブ21は、吹出口12から吹出される空調用空気A1の向きを変更する際に乗員によって操作される部材であり、特定の1つの下流フィン本体16に対し、その長さ方向である左右方向へスライド可能に装着されている。
【0041】
<上流フィン26>
複数の上流フィン26は、通風路11の下流フィン15よりも上流において、左右方向へ互いに離間した状態で配列されている。この方向は、上記流れ方向及び上記下流フィン15の配列方向に対し交差する方向である。
【0042】
図1図3に示すように、各上流フィン26は、板状の上流フィン本体27と、上下一対の上流フィン軸28とを備えている。各上流フィン本体27は、上記流れ方向及び下流フィン本体16に対し交差する方向である上下方向へ延びる板状をなしている。
【0043】
上流フィン26毎の両上流フィン軸28は、上流フィン本体27の上下両端部において、上下方向に延びている。各上流フィン26は、両上流フィン軸28において、リテーナ10の図示しない横壁部に支持されており、両上流フィン軸28を支点として左右方向へ傾動可能である。
【0044】
<駆動機構35>
図2及び図4(a),(b)に示すように、駆動機構35は、操作ノブ21のスライド操作に連動して各上流フィン26を傾動させるための機構である。駆動機構35は、上流フィン26毎に設けられた連結軸36、ロッド41及び伝達機構51を備えている。上流フィン26毎の連結軸36は、上流フィン本体27の厚み方向における寸法が下流側ほど小さくなる断面形状を有している。
【0045】
上流フィン26毎の連結軸36は、次の条件を満たす箇所に設けられている。
・上流フィン26毎の上流フィン軸28から空調用空気A1の流れ方向へ離れた箇所であること。
【0046】
・各上流フィン本体27から、互いに同上流フィン本体27の厚み方向における同一方向に離れた箇所であること。
上記条件を満たす箇所として、本実施形態では、上流フィン本体27の上流フィン軸28よりも下流側であって、同上流フィン本体27から左方に離れた箇所が設定されている。
【0047】
そして、図3及び図4(a),(b)に示すように、各連結軸36は、上流フィン軸28に平行に延びるように上流フィン本体27に繋がった状態で設けられている。より詳しくは、各上流フィン26は、上流フィン本体27から、互いに上記厚み方向における同一方向へ突出する上下一対の支持突部37を有している。上流フィン26毎の連結軸36は、両支持突部37間に架け渡されている。これらの連結軸36及び両支持突部37は、上流フィン本体27に一体形成されている。このようにして、上流フィン26毎の連結軸36は、上下一対の支持突部37を介して、上流フィン本体27に繋がっている。
【0048】
ここで、図1及び図2に示すように、複数の上流フィン26のうち、左右方向における中間部分に位置する上流フィン26の上流フィン本体27には、切欠き29が形成されている。左右方向における両端に位置する上流フィン26のうち、連結軸36が隣の上流フィン26との間に位置しない上流フィン本体27、本実施形態では左端の上流フィン本体27に対しても切欠き29が形成されている。右端の上流フィン本体27には切欠き29が形成されていない。各切欠き29は、連結軸36と同じ高さ位置において、上流フィン本体27の下流端から上流側へ延びている。
【0049】
ロッド41は、左右方向に延びる板状のロッド本体42を備えている。ロッド本体42の上流部であって、左右方向に互いに離間した複数箇所には、軸支持部43が形成されている。図1及び図4(a),(b)に示すように、各軸支持部43は、ロッド本体42の上流端面から下流側へ僅かに離れた箇所に形成されており、略円弧状をなす内壁面を有している。ロッド41には、その上流端面と各軸支持部43とを連通させる連通部44が形成されている。各連通部44は、左右方向に互いに離間する一対のガイド面45を有している。各ガイド面45は、両ガイド面45間の間隔D1が下流側ほど小さくなるように、上記流れ方向に対し傾斜している。
【0050】
各連通部44の各軸支持部43との境界部分での左右方向における寸法M1は、各連結軸36の下流端での上記厚み方向における寸法M2よりも大きく設定されている。上記寸法M1は、各連結軸36の上流端での上記厚み方向における寸法M3よりも小さく設定されている。上記寸法M1は、連通部44の最も狭い箇所での左右方向における寸法に該当する。寸法M3は、連結軸36において上記厚み方向の寸法の最も大きい箇所でのその寸法に該当する。
【0051】
そして、各軸支持部43に対し、上流フィン26毎の連結軸36が係合されることにより、ロッド41が全ての連結軸36に連結されている。この状態では、ロッド41の上流部の一部が、切欠き29内に挿入されている。
【0052】
図1及び図2に示すように、伝達機構51は、操作ノブ21のスライドをロッド41に伝達して、同ロッド41を左右方向に移動させるための機構であり、本実施形態では、左右方向における2箇所に設けられている。各伝達機構51は、一部の軸支持部43の下流となる箇所に設けられている。各伝達機構51は互いに同一の構成を有しており、第1リブ52及び第2リブ53を備えている。伝達機構51毎の第1リブ52は、操作ノブ21の左右両端部から上流側へ突出している。伝達機構51毎の第2リブ53は、ロッド本体42から下流側へ突出している。第1リブ52は、伝達機構51毎に1つずつ設けられているのに対し、第2リブ53は、伝達機構51毎に一対ずつ設けられている。伝達機構51毎の一対の第2リブ53は、左右方向に接近した状態で、上記流れ方向へ互いに平行に延びている。第1リブ52及び第2リブ53のいずれも、左右方向における寸法が上下方向における寸法よりも小さな板状をなしている。伝達機構51毎の一対の第2リブ53は、対応する第1リブ52を左右方向における両側から挟み込んでいる。第1リブ52及び第2リブ53のそれぞれの上記流れ方向における寸法は、ロッド41が左右方向におけるどの箇所に位置するときにも、上記流れ方向にラップする寸法に設定されている。
【0053】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
最初に、空調用レジスタの製造工程のうち、複数の上流フィン26を、リテーナ10に組込まれた状態での形態と同様の形態で成形するための成形工程について説明する。同様の形態とは、図6に示すように、複数の上流フィン本体27が厚み方向に互いに平行に離間した状態で配置され、かつ上流フィン26毎の上側の上流フィン軸28が上側の連結部55によって連結され、かつ上流フィン26毎の下側の上流フィン軸28が下側の連結部55によって連結された形態である。
【0054】
成形工程では、図5に示すように、第1成形型61及び第2成形型62を備える金型装置60が用いられる。そして、第1成形型61及び第2成形型62が各上流フィン本体27の側面に沿う方向、図5では上下方向に相対移動させられることにより、金型装置60が型閉じされる。型閉じされた第1成形型61及び第2成形型62の間には、全ての上流フィン26を、上流フィン本体27の厚み方向、図5では左右方向に互いに平行となるように配置した状態で成形するための成形空間であるキャビティ63が形成される。
【0055】
各キャビティ63に対し、図示しないランナー及びゲートを介して溶融樹脂が充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、各キャビティ63では、図6に示すように、上流フィン本体27、両上流フィン軸28、連結軸36及び両支持突部37をそれぞれ有する複数の上流フィン26が成形される。また、ランナー及びゲート内の溶融樹脂が硬化されることにより、上側の複数の上流フィン軸28を繋ぐ上側の連結部55と、下側の複数の上流フィン軸28を繋ぐ下側の連結部55とが成形される。このようにして、厚み方向に互いに平行となるように配置された複数の上流フィン26を連結部55によって相互に連結してなる中間成形品56が成形される。
【0056】
次に、図5における第1成形型61及び第2成形型62が、上流フィン本体27の側面に沿う方向である上下方向に相対移動させられることにより、金型装置60が型開きされ、同金型装置60から上記中間成形品56が取出される。
【0057】
上記のように、成形工程では、全ての上流フィン26が、上流フィン本体27の厚み方向に互いに平行となるように配置された状態で成形される。上流フィン本体27の側面に沿う方向に第1成形型61及び第2成形型62が型閉じ及び型開きされる。そのため、全ての上流フィン72,73を、それらの側面が略同一平面上に位置するように配置させた状態で成形する場合に比べ、上流フィン26の配置方向である左右方向における金型装置60の寸法を小さくし、同方向における金型装置60の小型化を図ることができる。
【0058】
なお、上記のように金型装置60から取出された、図6に示す中間成形品56は、リテーナ10の所定の箇所に組付けられる。この際、複数の上流フィン26はリテーナ10の内部に配置され、両連結部55はリテーナ10の外部に配置される。各上流フィン軸28がリテーナ10に対し傾動可能に支持される。
【0059】
次に、図1及び図4(a),(b)に示すように、リテーナ10内の上記複数の上流フィン26にロッド41が組付けられる。すなわち、上記複数の上流フィン26に対し、下流側から上流側に向けてロッド41が近づけられることにより、各連結軸36が、対応する連通部44に入り込む。本実施形態では、各連結軸36として、上流フィン本体27の厚み方向の寸法が下流側ほど小さくなる形状をなすものが用いられている。そのため、連結軸36が連通部44に入り込みやすい。
【0060】
各連結軸36が連通部44に入り込んだ状態で、ロッド41がさらに上流フィン26に近づけられると、各連結軸36が連通部44の軸支持部43との境界部分を通過し、各軸支持部43内に挿入される。この挿入により、各連結軸36が、対応する軸支持部43に係合された状態となる。
【0061】
本実施形態では、各連通部44の最も狭い箇所での寸法M1が、各連結軸36中、最も寸法の小さな箇所である下流端での寸法M2よりも大きい。そのため、各連結軸36の下流端が、各連通部44の上記境界部分を通過しやすい。
【0062】
また、各連通部44における一対のガイド面45は、下流側ほど間隔D1が小さくなるように、上記流れ方向に対し傾斜している。そのため、ロッド41が上流フィン26に近づけられると、各連結軸36がガイド面45によって軸支持部43内に導かれる。各連結軸36を、対応する軸支持部43内にスムーズに挿入させることができる。
【0063】
このように、本実施形態によれば、リテーナ10内の複数の上流フィン26に対し、上記流れ方向に沿ってロッド41を近付けることにより、上流フィン26毎の連結軸36を、各軸支持部43に係合させることができる。そのため、連通部44が形成されず、軸支持部43が孔によって構成されたロッド41を、連結軸36及び軸支持部43の軸線方向に沿って移動させることによって、連結軸36を軸支持部43に係合させる場合に比べ、複数の上流フィン26に対するロッド41の組付け性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、寸法M1が、各連結軸36中、最も寸法の大きな箇所である上流端での寸法M3よりも小さい。そのため、図4(a)に示すように、各連結軸36が各軸支持部43に挿入された状態では、各連通部44の軸支持部43との境界部分が、各連結軸36の上流端部に対し、上流フィン本体27の厚み方向にラップする。このラップ部分により、軸支持部43から連結軸36が抜け出すことが規制される。
【0065】
続いて、図2に示すように、操作ノブ21の装着された下流フィン15が他の下流フィン15とともに、下流連結ピン18に下流連結ロッド19が連結された状態で、リテーナ10の所定の箇所に組付けられる。この組付けにより、複数の下流フィン15のそれぞれが両下流フィン軸17においてリテーナ10に傾動可能に支持される。また、このときには、操作ノブ21から上流側へ突出する伝達機構51毎の第1リブ52が、同第1リブ52の上流側においてロッド本体42から下流側へ突出する伝達機構51毎の一対の第2リブ53間に挿入される。
【0066】
なお、上記のように、リテーナ10に組付けられた中間成形品56における各連結部55は、適宜のタイミングで上流フィン軸28から切り離される。その後、他の部品が組付けられることにより、目的とする空調用レジスタが得られる。そして、この空調用レジスタは、車両のインストルメントパネルに組込まれる。
【0067】
ところで、上記図2は、インストルメントパネルに組込まれた空調用レジスタにおいて、操作ノブ21が下流フィン本体16の左右方向における可動範囲の略中央部分に位置するときの、上流フィン26等の状態を示している。この状態では、各上流フィン本体27が、通風路11の中心軸線CLに対し略平行な状態(以下「中立状態」という)になる。従って、空調用空気A1は上流フィン26毎の上流フィン本体27に沿って、下流側へ向けて真っ直ぐ流れる。
【0068】
上記中立状態から操作ノブ21が、右方へスライド操作されると、図7に示すように、その操作ノブ21の動きが伝達機構51を介してロッド41に伝達される。すなわち、上記スライド操作に伴い第1リブ52が右方へ移動する。第1リブ52を左右両側から挟み込む一対の第2リブ53のうち、右側に位置するものが第1リブ52によって右方へ押され、ロッド41に対し、右方へ向かう力が加わる。ロッド41は、軸支持部43において上流フィン26毎の連結軸36に連結されている。一方、各連結軸36は、上流フィン軸28を中心とする円弧に沿って移動する。また、上述したように、各連結軸36は軸支持部43に対し係合されていて、同軸支持部43から抜け出すのを規制されている。そのため、ロッド41は、上流フィン26毎の連結軸36に追従して、下流側へ膨らむように緩やかに湾曲する円弧状の経路に沿って右方へ移動する。
【0069】
この際、ロッド41の上流部の一部は、上流フィン26毎の切欠き29内において移動する。また、伝達機構51毎の一対の第2リブ53は、第1リブ52に対し、上記流れ方向にラップした状態で移動する。
【0070】
ロッド41の動きは、上流フィン26毎の連結軸36及び支持突部37を介して全ての上流フィン本体27に同時に伝達される。上流フィン26毎の連結軸36は、上流フィン軸28から下流側へ離れた箇所であり、かつ上流フィン本体27から厚み方向へ離れた箇所において、上流フィン軸28に平行に延びている。そのため、各上流フィン26が、互いに同期した状態で、自身の上流フィン軸28を支点として、図2の反時計回り方向へ傾動される。通風路11を流れる空調用空気A1は、各上流フィン26に沿って流れることで、向きを斜め右方へ変えられる。
【0071】
上記図7の状態から操作ノブ21がさらに右方へスライド操作されると、図8に示すように、各上流フィン26がさらに上記反時計回り方向へ傾動する。隣り合う上流フィン26のうち、傾動方向後側に位置するもの、すなわち、図7では右側に位置するものの上流部分が、傾動方向前側に位置するもの、すなわち、図7では左側に位置するものの下流部分に重ね合わされる。複数の上流フィン26によって通風路11が閉鎖された状態となり、空調用空気A1が上流フィン26よりも下流側へ流れることが遮断される。
【0072】
一方、上記図2の中立状態から、操作ノブ21が左方へスライド操作されると、図9に示すように、その操作ノブ21の動きが伝達機構51を介してロッド41に伝達され、同ロッド41が、下流側へ膨らむように緩やかに湾曲する円弧状の経路に沿って左方へ移動する。この際、上流フィン26では、ロッド41の上流部の一部が切欠き29内を移動する。ロッド41の動きは、上流フィン26毎の連結軸36及び支持突部37を介して全ての上流フィン本体27に同時に伝達される。各上流フィン26が、互いに同期した状態で、自身の上流フィン軸28を支点として、図2の時計回り方向へ傾動される。通風路11を流れる空調用空気A1は、各上流フィン26に沿って流れることで向きを、斜め左方へ変えられる。
【0073】
このように、本実施形態によると、駆動機構35における伝達機構51及びロッド41は、操作ノブ21のスライドを上流フィン26毎の連結軸36に伝達して、全ての上流フィン26を同期させた状態で傾動させる。そのため、特定の上流フィン72を傾動させて、他の上流フィン73を上記上流フィン72に同期させる特許文献2とは異なり、上流フィン72,73毎の連結ピン82を連結する連結ロッド83が不要となる。その分、駆動機構35を構成する部品の数を少なくすることができる。
【0074】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・特許文献2に記載された空調用レジスタでは、図13及び図14に示すように、被動ギヤ88及び被着部89を備える伝達機構76が、大きな構造物として通風路の中央部分に位置する。この大きな構造物が、空調用空気A1の流れの妨げとなり、圧力損失や騒音の増大を招くおそれがある。また、空調用レジスタを下流側から見た場合、通風路11の中央部分に上記構造物が見えるため、見栄えが悪くなる問題もある。
【0075】
この点、本実施形態では、図2及び図3に示すように、伝達機構51を構成する第1リブ52も第2リブ53も板状をなしており、しかも上記流れ方向に沿って延びている。この伝達機構51は、上記伝達機構76よりも小型となる。そのため、第1リブ52及び第2リブ53は、空調用空気A1の流れの妨げとなりにくい。従って、本実施形態の空調用レジスタでは、上記特許文献2に記載の空調用レジスタに比べ、圧力損失や騒音が低減される。また、本実施形態の空調用レジスタの下流側からは、上記と同様の理由により、第1リブ52及び第2リブ53が見えにくく、見栄えが向上する。
【0076】
図4(a)に示すように、各軸支持部43に各連結軸36が係合された状態では、連通部44の最も狭い箇所が、連結軸36において上流フィン本体27の厚み方向の寸法の最も大きい箇所に対し、同厚み方向にラップしている。そのため、車両に組付けられた状態の空調用レジスタに対し、同車両の振動等が伝わったとしても、ラップ部分により、軸支持部43から連結軸36が抜け出すのを抑制することができる。
【0077】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0078】
・伝達機構51毎の第1リブ52の数と第2リブ53の数との関係が、上記実施形態とは逆の関係になるように変更されてもよい。すなわち、伝達機構51毎の第1リブ52の数が2つに変更され、第2リブ53の数が1つに変更されてもよい。この場合、各伝達機構51では、操作ノブ21における一対の第1リブ52が、ロッド41における第2リブ53を左右方向における両側から挟み込むことになる。
【0079】
・伝達機構51の数が1又は3以上に変更されてもよい。
・伝達機構51の上記配列方向における位置が、隣り合う軸支持部43間となる箇所に変更されてもよい。この場合、上記流れ方向におけるロッド41の全体が切欠き29内に挿入されてもよい。
【0080】
・上記実施形態において、各連結軸36の下流端での寸法M2は、各連通部44の最も狭い箇所での寸法M1と同一、又は同寸法M1よりも僅かに大きく設定されてもよい。
・各連結軸36は、寸法M2,M3が上記流れ方向に同一となる形状に形成されてもよい。
【0081】
・連通部44における一方のガイド面45のみが、上記流れ方向に対し傾斜してもよい。
・両ガイド面45は、間隔D1が上記流れ方向に一定となるように、平行に形成されてもよい。
【0082】
・連結軸36の形状が上記実施形態とは異なる形状、例えば、円柱状に変更されてもよい。
・一対の支持突部37のうちの一方が省略されてもよい。
【0083】
・配列方向における右端の上流フィン本体27にも切欠き29が形成されてもよい。すなわち、全ての上流フィン本体27に切欠き29が形成されてもよい。
・上記空調用レジスタは、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に組込まれるものであってもよい。
【0084】
・上記空調用レジスタは、空調装置から送られてきて室内に吹出される空調用空気の向きをフィンによって調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【0085】
・下流フィン本体16として、上下方向及び上記流れ方向に延びるものが用いられ、上流フィン本体27として、左右方向及び上記流れ方向に延びるものが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10…リテーナ、11…通風路、15…下流フィン、21…操作ノブ、26…上流フィン、27…上流フィン本体、28…上流フィン軸、29…切欠き、35…駆動機構、36…連結軸、37…支持突部、41…ロッド、43…軸支持部、44…連通部、51…伝達機構、52…第1リブ、53…第2リブ、60…金型装置、61…第1成形型、62…第2成形型、A1…空調用空気、M1,M2,M3…寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16