(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】トンネルの覆工鉄筋支持装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20230705BHJP
E21D 11/38 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
E21D11/38 Z
(21)【出願番号】P 2020072148
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390027661
【氏名又は名称】株式会社金澤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】川野 雄毅
(72)【発明者】
【氏名】穴吹 亮太
(72)【発明者】
【氏名】金澤 光雄
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026930(JP,A)
【文献】特開2017-190608(JP,A)
【文献】特開昭49-020920(JP,A)
【文献】特開2000-352299(JP,A)
【文献】特開2004-150117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
E04C 5/00- 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの一次覆工の内周に防水シートを定着させる定着構造と、前記定着構造に連結されて前記定着構造からトンネルの径方向内方向に延びるアンカー構造と、を備え、前記アンカー構造により、二次覆工の鉄筋組立体を構成する覆工鉄筋を支持する装置において、
前記アンカー構造は、
基端部が前記定着構造に連結されてトンネルの径方向内方向に延びるアンカーロッドと、
前記アンカーロッドに外装されて前記アンカーロッドの軸線方向にスライド可能な支持筒と、
前記支持筒に取り付けられ、前記覆工鉄筋を連結する連結構造と、
前記アンカーロッドにおいて
前記支持筒より先端側に螺合され、前記支持筒の位置を調節することにより前記連結構造の位置を調節する調節ナットと、
を備え、
前記連結構造は、前記支持筒に対して軸線方向に位置調節可能な連結金具と、締付ねじを有し、前記連結金具は、前記覆工鉄筋と前記支持筒の一方に係合される部位を含み、
前記締付ねじが前記連結金具に螺合され、その先端が前記覆工鉄筋と前記支持筒の他方に当たった状態で締め付けられることにより、前記覆工鉄筋と前記支持筒が互いに当たった状態で連結されることを特徴とするトンネルの覆工鉄筋支持装置。
【請求項2】
前記鉄筋組立体が、トンネルの径方向外側に配置された外側鉄筋組立体と、径方向内側に配置された内側鉄筋組立体と、を含み、
前記支持筒に取り付けられ、前記外側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する
前記連結構造としての第1連結構造と、
前記支持筒と前記調節ナットの間に挟持され、前記内側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する第2連結構造と、
を備えたことを特徴とする請求項
1に記載のトンネルの覆工鉄筋支持装置。
【請求項3】
前記第2連結構造が、挿通穴を有する連結板部と、この連結板部に連なり前記内側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する部位とを含み、前記連結板部は、前記挿通穴に前記アンカーロッドが挿通された状態で、前記支持筒と前記調節ナットにより挟持されることを特徴とする請求項2に記載の覆工鉄筋支持装置。
【請求項4】
前記鉄筋組立体が、トンネルの径方向外側に配置された外側鉄筋組立体と、径方向内側に配置された内側鉄筋組立体と、を含み、
前記連結構造が、前記外側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する第1連結構造と、前記内側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する第2連結構造と、を含み、
前記第1連結構造と前記第2連結構造が互いに間隔をおいて前記支持筒に取り付けられることを特徴とする請求項
1に記載のトンネルの覆工鉄筋支持装置。
【請求項5】
前記定着構造は、前記防水シートの内側に配置され前記トンネルの径方向内方向に突出する長ナットを有し、前記長ナットに前記アンカーロッドの基端部が螺合深さを調節可能にして螺合されることを特徴とする請求項
1~4のいずれかに記載のトンネルの覆工鉄筋支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの二次覆工の鉄筋(覆工鉄筋)を支持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM(New Austrian Tunneling Method)工法によって構築される山岳トンネルでは、地山の掘削面に沿ってアーチ状の鋼製支保工を建て込むとともに掘削面に吹付コンクリートを吹き付けることにより一次覆工を構築し、一次覆工の内周側に防水シートを介して鉄筋コンクリート構造の二次覆工を構築する。
【0003】
二次覆工は、鉄筋組立体を一次覆工の内周に沿って配置した状態でコンクリートを打設することにより構築される。鉄筋組立体は、コンクリート打設に先立ち、一次覆工の内周に分散配置された多数の覆工鉄筋支持装置を用いて支持される。
【0004】
特許文献1の
図5、特許文献2の
図9~
図15、特許文献3等に開示されているように、一般的な覆工鉄筋支持装置は、防水シートを一次覆工に定着するための定着構造と、この定着構造に基端部が螺合されてトンネルの径方向内方向に延びるアンカーロッドとを備えており、このアンカーロッドに鉄筋組立体の鉄筋(覆工鉄筋)が連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-352299号公報
【文献】特開2004-150117号公報
【文献】特開2006-70656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次覆工のコンクリートのかぶり厚さを確保するためには前記鉄筋組立体の配筋位置が重要であるが、前記一般的な覆工鉄筋支持装置では、アンカーロッドに覆工鉄筋を位置調節しながら連結するのは容易でない。また、アンカーロッドに覆工鉄筋を連結した後で位置調節するのも容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、トンネルの一次覆工の内周に防水シートを定着させる定着構造と、前記定着構造に連結されて前記定着構造からトンネルの径方向内方向に延びるアンカー構造と、を備え、前記アンカー構造により、二次覆工の鉄筋組立体を構成する覆工鉄筋を支持する装置において、
前記アンカー構造は、基端部が前記定着構造に連結されてトンネルの径方向内方向に延びるアンカーロッドと、前記アンカーロッドにその軸線方向に移動可能に装着され、前記覆工鉄筋を連結する連結構造と、前記アンカーロッドにおいて前記連結構造の装着位置より先端側に螺合され、前記連結構造の位置を調節する調節ナットと、を備えたことを特徴とする。
前記構成によれば、調節ナットを回すことにより連結構造の位置を容易に調節することができ、ひいては鉄筋組立体の位置を調節することができる。特に、鉄筋組立体を覆工鉄筋支持装置に連結した後でも、ナットの回動操作により鉄筋組立体の位置調節を容易に行うことができる。
【0008】
本発明の一態様では、前記アンカー構造はさらに、前記アンカーロッドに外装されて前記アンカーロッドの軸線方向にスライド可能な支持筒を備え、前記連結構造は、前記支持筒に取り付けられ、前記支持筒を介して前記アンカーロッドに装着されており、前記調節ナットは、前記アンカーロッドにおいて前記支持筒より先端側に螺合されており、前記支持筒の位置を調節することにより前記連結構造の位置を調節する。
前記構成によれば、アンカーロッドにスライド可能に外装された支持筒を介して連結構造の位置を調節するので、位置調節作業をより一層容易に行うことができる。
【0009】
上記一態様において、好ましくは、前記鉄筋組立体が、トンネルの径方向外側に配置された外側鉄筋組立体と、径方向内側に配置された内側鉄筋組立体と、を含み、前記連結構造が、前記外側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する第1連結構造と、前記内側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する第2連結構造と、を含み、前記第1連結構造が前記支持筒に取り付けられ、前記第2連結構造が前記支持筒と前記調節ナットの間に挟持される。
【0010】
上記一態様において、好ましくは、前記鉄筋組立体が、トンネルの径方向外側に配置された外側鉄筋組立体と、径方向内側に配置された内側鉄筋組立体と、を含み、前記連結構造が、前記外側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する第1連結構造と、前記内側鉄筋組立体の前記覆工鉄筋を連結する第2連結構造と、を含み、前記第1連結構造と前記第2連結構造が互いに間隔をおいて前記支持筒に取り付けられる。
【0011】
上記他の態様において、好ましくは、前記連結金具が、雌ねじ部を有する基部と、前記基部の両側縁から延びる互いに平行な一対のフック部とを有し、前記フック部に前記覆工鉄筋が挿入され、前記基部と前記一対のフック部により前記挿通部が構成され、前記連結構造はさらに締付ねじを有し、前記締付ねじが前記基部の前記雌ねじ部に螺合されその先端が前記アンカーロッドの周面に当たる。
【0012】
好ましくは、前記定着構造は、前記防水シートの内側に配置され前記トンネルの径方向内方向に突出する長ナットを有し、前記長ナットに前記アンカーロッドの基端部が螺合深さを調節可能にして螺合される。
前記構成によれば、アンカーロッドの定着構造からの突出長さを調節することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の覆工鉄筋支持装置によれば、トンネルの覆工鉄筋の位置調節を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る覆工鉄筋支持装置を用いて構築されたトンネルの概略構造を示す横断面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う拡大縦断面図であり、第1実施形態に係る覆工鉄筋支持装置を二次覆工コンクリートの打設前の状態で示す。
【
図3】前記覆工鉄筋支持装置の要部を
図2図中III方向から見た側面図である。
【
図4】第2実施形態に係る覆工鉄筋支持装置を示す
図3相当図である。
【
図5】第3実施形態に係る覆工鉄筋支持装置の連結構造を示す縦断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る覆工鉄筋支持装置において、内側鉄筋組立体の覆工鉄筋を連結する第2連結構造を示す側面図である。
【
図7】第5実施形態に係る覆工鉄筋支持装置の連結構造を示す側面図である。
【
図8】第6実施形態に係る覆工鉄筋支持装置において、異なる定着構造を示す
図2相当図である。
【
図9】第7実施形態に係る覆工鉄筋支持装置において、さらに異なる形態の定着構造を示す縦断面図である。
【
図10】第8実施形態に係る覆工鉄筋支持装置において、さらに異なる形態の定着構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態を
図1~
図3にしたがって説明する。
図1に示すように、NATMトンネルは、地山1の掘削面1aに構築された一次覆工2と、一次覆工2の内周に防水シート5を介して構築された二次覆工6とを備えている。
一次覆工2は、掘削面1aに沿ってアーチ状をなしトンネルの長手方向に間隔をおいて建て込まれたH型鋼の支保工3と、掘削面1aに吹き付けられたコンクリート4により構築されている。
防水シート5は、EVA等の樹脂シートからなり、地山1からの水が一次覆工2を通って二次覆工6に侵入するのを防ぐ役割を担う。
【0016】
二次覆工6は、コンクリート7と、このコンクリート7に埋設された鉄筋組立体8,9により構築されている。
トンネルの径方向外側(一次覆工2側)の鉄筋組立体8(以下、外側鉄筋組立体と言う)と、トンネルの径方向内側の鉄筋組立体9(以下、内側鉄筋組立体と言う)は、トンネルの径方向に離間して配置されている。鉄筋組立体8、9はそれぞれ、トンネルの長手方向(
図1の紙面と直交する方向)に延びる多数の鉄筋8a、9a(覆工鉄筋)と、トンネルの周方向に湾曲して延びる多数の鉄筋8b、9b(覆工鉄筋)とを、その交差部で結束することにより、格子状(ネット状)に形成されている。
【0017】
二次覆工6のコンクリート7の打設に先立ち、多数の覆工鉄筋支持装置Aにより防水シート5を一次覆工2の内周に定着させ、鉄筋組立体8,9を一次覆工2に支持する。多数の覆工鉄筋支持装置Aは、トンネルの周方向及び長手方向に間隔を置いて配置される。
【0018】
図2及び
図3に示すように、各覆工鉄筋支持装置Aは、定着構造10と、定着構造10に連結されてトンネル径方向内方向に延びる長尺のアンカー構造20とを備えている。定着構造10は、防水シート5を一次覆工2に定着するとともに、アンカー構造20を保持する役割を担う。アンカー構造20は、内側鉄筋組立体8と外側鉄筋組立体9を支持する役割を担う。
【0019】
定着構造10は、防水シート5の外側に配置された受け金具11と、防水シート5の内側に配置された係合金具12と、押込ねじ13と、長ナット14と、を有している。
受け金具11は、ベース部11aと、ベース部11aの両側縁に連なり互いに近づくように傾斜した一対の受片11bと、を有しており、ベース部11aが溶接により支保工3のフランジ部に固定されている。係合金具12は、基部12aと、この基部12aの両側縁に連なり先端に向かって互いに近づくように傾斜した一対の脚部12bと、一対の脚部12bの先端から互いに逆方向に張り出す一対の係合片12cとを有している。一対の脚部12bは、自然状態では
図2に示す位置より近づいた状態にある。係合金具12の基部12aにはナット12n(雌ねじ部)が固定され、一対の脚部12b間に配置されている。ナット12nには押込ねじ13が螺合されている。
【0020】
防水シート5が受け金具11を覆った状態で、係合金具12を防水シート5を介して受け金具11に向かって押し込んだ後、押込ねじ13の端面に形成された六角穴からなる工具掛部13aに工具を差し込んで押込ねじ13をねじ込むことにより、係合金具12の一対の脚部12bを押し広げる。その結果、一対の係合片12cが防水シート5を介して受け金具11の一対の受片11bに係合される。このようにして、防水シート5を傷つけずに支保工3に定着することができる。
上記防水シート5の定着状態において、押込ねじ13は係合金具12の基部12aからトンネルの径方向内方向に突出しており、この突出端部に長ナット14が螺合され、好ましくは螺合状態で押込ねじ13にかしめられている。なお、押込ねじ13と長ナット14は、金属板を介して溶接により一体化してもよい。
【0021】
アンカー構造20は、基端部が定着構造10の長ナット14に螺合されたアンカーロッド22と、このアンカーロッド22に外装された支持筒23と、このアンカーロッド22の先端部に螺合された調節ナット24と、外側鉄筋組立体8を連結する連結構造30(第1連結構造)と、内側鉄筋組立体9を連結する連結構造40(第2連結構造)と、を有している。
【0022】
本実施形態ではアンカーロッド22は全長にわたって雄ねじを有しているが、両端部のみに雄ねじを有していてもよい。アンカーロッド22の先端には、長ナット14に螺合する際に工具がかけられる断面六角形状の工具掛部22aが形成されている。
支持筒23は、アンカーロッド22の軸線方向にスライド可能である。調節ナット24は、支持筒23より先端側に配置されている。
【0023】
連結構造30は、金属板を曲げ加工してなる連結金具31と、締付ねじ35とを有している。連結金具31は、基部32と、この基部32の両側縁から直角をなして延びる互いに平行な板状の一対のフック部33とを有している。基部32と一対のフック部33における基部32の近傍部により、挿通部34が構成されている。
基部32の内面にはナット32a(雌ねじ部)が固定されており、このナット32aに締付ねじ35が螺合されている。
【0024】
連結金具31の挿通部34に支持筒23を挿通し、一対のフック部33に外側鉄筋組立体8の例えば鉄筋8aを嵌め、この状態で締付ねじ35をねじ込んでその先端を支持筒23の周面に押し付けることにより、外側鉄筋組立体8が支持筒23に連結される。
【0025】
連結構造40は、金属板を曲げ加工してなる連結金具41と、締付ねじ45とを有している。連結金具41は、挿通穴42a(挿通部)を有する連結板部42と、この連結板部42の一側に連なる湾曲した押さえ部43と、この押さえ部43の両側に連なり連結板部41と直交する方向に延びる互いに平行な一対のフック部44と、を有している。押さえ部43の雌ねじ部に締付ねじ45が螺合されている。
【0026】
連結金具40の挿通穴42aにアンカーロッド22を通し、支持筒23と調節ナット24で連結板部41を挟み、一対のフック部44に内側鉄筋組立体9の鉄筋9aを挿入し、押さえ部43に鉄筋9bを挿入し、締付ねじ45をねじ込んでその先端を鉄筋9bに押し付けることにより、内側鉄筋組立体9がアンカーロッド22に連結される。
【0027】
上記構成によれば、アンカーロッド22の長ナット14に対する螺合深さを調節することにより、アンカーロッド22の定着構造10からの突出長さを調節することができる。また、連結構造30では、締付ねじ35を緩めた状態で連結金具31を支持筒23に対してアンカーロッド22の軸線方向に位置調節可能であり、これにより外側鉄筋組立体8と内側鉄筋組立9との間の間隔を適宜調節することができる。
【0028】
調節ナット24を回すことにより、支持筒23をアンカーロッド22に沿って位置調節することができ、ひいては支持筒23に連結された連結構造30を位置調節することができる。これと同時に連結金具40も支持筒23と調節ナット24に挟持された状態でアンカーロッド22に沿って位置調節することができる。調節ナット24の回動操作により調節するため、連結構造30,40により鉄筋組立体8,9をアンカー構造Aに連結する前は勿論のこと、鉄筋組立体8,9を連結した後でも、比較的小さな力で容易に位置調節することができる。
特に、支持筒23はアンカーロッド22に対してスライドするので、連結構造30の位置調節作業をより円滑に行うことができる。
【0029】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において先行する実施形態に対応する構成部に関しては図面に同一符号または類似の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0030】
図4に示す第2実施形態では、内側鉄筋組立体9を連結する連結構造30A(第2連結構造)も、支持筒23に取り付けられている。この連結構造30Aは、外側鉄筋組立体8を連結する連結構造30(第1連結構造)と同様の構成である。この実施形態では、調節ナット24が支持筒23の端面に直接またはワッシャ(図示しない)を介して当たっている。第2実施形態では、2つの連結構造30,30Aが支持筒23に取り付けられているので、調節ナット24による位置調節をより円滑に行うことができる。
【0031】
図5に示す第3実施形態では、異なる形態をなす連結構造50が用いられている。この連結構造50は、第1実施形態の連結構造30または第2実施形態の連結構造30,30Aの代わりに用いることができる。この連結構造50は、金属板を曲げ加工してなる連結金具51と締付ねじ55を有している。連結金具51は、雌ねじ部52aが形成された基部52と、この基部52の両側縁から互いに平行をなして延びる一対の係合部53と、を有している。一対の係合部53には挿通穴53aが形成されている。
【0032】
連結金具51の一対の係合部53の挿通穴53aに支持筒23を通し、基部52と一対の係合部53と支持筒23との間の空間に、例えば外側鉄筋組立体8の鉄筋8aを通した状態で、基部52の雌ねじ部52aに螺合された締付ねじ55を締め付けて、その先端を鉄筋8aの周面に押し付けることにより、鉄筋8aが支持筒23に強く当たった状態で連結される。
【0033】
図6に示す第4実施形態では、内側鉄筋組立体9のための連結構造30Bは、第1、第2実施形態の連結構造30,30Aと同様の構成をなし、連結金具31と締付ねじ35とを有している。ただし、連結金具31の一対のフック部33の間隔はアンカーロッド22の外径より若干大きく支持筒23の外径より小さい。この実施形態では、一対のフック部33が支持筒23と調節ナット24との間で挟持される。フック部33と調節ナット24との間にはワッシャ39が介在されている。
【0034】
外側鉄筋組立体のための連結構造(図示しない)が取り付けられた支持筒23と一緒に連結構造30Bを位置調節する場合には、予め締付ねじ35を緩めておく。調節ナット24の回動操作による位置調節が終了した後で、締付ねじ35を締め付けてその先端をアンカーロッド22の周面に押し当てることにより、アンカーロッド22と鉄筋9aを強く押し付ける。
【0035】
図7に示す第5実施形態では、支持筒23を用いず、連結構造30Cだけで、鉄筋9aをアンカーロッド22に連結する。この連結構造30Cは第4実施形態の連結構造30Bと同様の構成である。2つの連結構造30Cで外側鉄筋組立体8と内側鉄筋組立体9をアンカーロック22に連結する場合には、それぞれの連結構造30Cに調節ナット24が配置される。調節ナット24の回動操作による連結構造30Cの位置調節、締付ねじ35によるアンカーロッド22と鉄筋9aの連結に関しては、第4実施形態と同様である。
【0036】
次に、異なる定着構造を用いた実施形態について説明する。これら定着構造は、第1~第5実施形態のいずれのアンカー構造とも組み合わせることができる。
図8に示す第6実施形態の定着構造10Aでは、第1実施形態の押込ねじ13と長ナット14を用いず、アンカーロッド22の基端部が係合金具12のナット12nに螺合されている。このアンカーロッド22の基端部で係合金具12の一対の脚部12bを押し広げることにより、一対の係合片12cを受け金具11に係合する。この構成では、アンカーロッド22の突出長さの調節はできないが、定着構造10Aの部品点数を減じることができる。
【0037】
図9に示す第7実施形態の定着構造60は、受け金具61と押さえ板62と貫通ボルト63と長ナット64を有している。受け金具61は雌ねじ部61aを有し、防水シート5の外側に配置され第1覆工2の支保工3に溶接により固定されている。押さえ板62は防水シート5の内側に配置され、防水シート5を介して受け金具61と対向している。貫通ボルト63は、押さえ板62と防水シート5を貫通して受け金具61の雌ねじ部61aに螺合されている。貫通ボルト63は押さえ板62から突出しており、この突出端部には長ナット64が螺合されている。この長ナット64を締め付けることにより、防水シート5が押さえ板61と受け金具61との間で挟持される。この長ナット64にアンカーロッド22の基端部が螺合深さを調節可能にして螺合されている。
【0038】
図10に示す第8実施形態の定着構造60Aは、第7実施形態と同様の受け金具61と押さえ板62が用いられているが、貫通ボルト63と長ナット64は用いられていない。この実施形態では、アンカーロッド22の基端部が押さえ板62と防水シート5を貫通して受け金具61の雌ねじ部61aに螺合されている。アンカーボルト22には固定ナット65が螺合されており、この固定ナット65を押さえ板62に向かって締め付けることにより、防水シート5が押さえ板62と受け金具61との間で挟持される。
【0039】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
連結構造は支持筒に位置調節不能に固定されていてもよい。この場合、連結構造は短尺の鉄筋で構成してもよい。
前記実施形態では、二次覆工の鉄筋組立体が外側鉄筋組立体8と内側鉄筋組立体9を含んで二層構造をなしているが、一層構造であってもよい。
前記実施形態では、連結構造は鉄筋組立体においてトンネルの長手方向に延びる鉄筋を連結したが、周方向に延びる鉄筋を連結してもよい。
定着構造は一次覆工において支保工以外の箇所で防水シートを定着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、トンネルの施工に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
2 一次覆工
5 防水シート
6 二次覆工
7 コンクリート
8,9 鉄筋組立体
8a,8b,9a,9b 鉄筋(覆工鉄筋)
10,10A,60,60A 定着構造
14,64 長ナット
20 アンカー構造
22 アンカーロッド
23 支持筒
24 調節ナット
30,30A,30B,30C 連結構造
31 連結金具
32 基部
32a ナット(雌ねじ部)
33 フック部
34 挿通部
35 締付ねじ
40 連結構造
41 連結金具
42 連結板部
44 フック部
A 覆工鉄筋支持装置