(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】シールド掘進機のカッタビット交換方法とシールド掘進機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/087 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
E21D9/087 C
(21)【出願番号】P 2020086333
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2019239488
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠也
(72)【発明者】
【氏名】内田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 秀之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡志
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-254695(JP,A)
【文献】特開平04-064693(JP,A)
【文献】特開昭52-121929(JP,A)
【文献】特開2009-046810(JP,A)
【文献】特開2008-069246(JP,A)
【文献】特開2000-291384(JP,A)
【文献】特開2007-077682(JP,A)
【文献】特開昭55-081996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機のカッタヘッドに装着されているカッタビットを地中において交換する、シールド掘進機のカッタビット交換方法であって、
前記シールド掘進機の停止位置の周辺の地盤を凍結させて凍土を造成する、凍結工程と、
前記凍土内に前記カッタヘッドが位置するようにして前記シールド掘進機を停止させ、
前記カッタヘッドの後方の前記シールド掘進機の側面と前記凍土の界面に形成されている水道を、該シールド掘進機の内部から凍結手段によって凍結して止水する、水道止水工程と、
前記カッタヘッドの前面の少なくとも一部に不凍結加泥材を充填する、充填工程と、
前記不凍結加泥材を、前記カッタヘッドの背面に位置するチャンバ内に取り込み、後方に排土する、排土工程と、
前記カッタヘッドの前面の一部の前記凍土を掘削して作業スペースを形成し、前記カッタビットを交換する、掘削交換工程と、を有し、
少なくとも前記充填工程までの過程において、前記カッタヘッドを連続的もしくは間欠的に回転させることを特徴とする、シールド掘進機のカッタビット交換方法。
【請求項2】
前記凍土内に前記カッタヘッドが位置するようにして前記シールド掘進機を停止させた後、少なくとも前記カッタヘッドを後退させることにより、前方の前記凍土と該カッタヘッドの前記前面の間に隙間を形成する、隙間形成工程をさらに有し、
前記充填工程では、前記隙間に不凍結加泥材を充填することを特徴とする、請求項1に記載のシールド掘進機のカッタビット交換方法。
【請求項3】
前記掘削交換工程では、前記作業スペースにある前記カッタビットを交換した後、該カッタヘッドを所定角度だけ回動させ、新たに該作業スペースに位置決めされた該カッタビットを交換することを特徴とする、請求項1又は2に記載のシールド掘進機のカッタビット交換方法。
【請求項4】
前記シールド掘進機
は、前記チャンバを貫通して、前記カッタヘッドの前面の開口に連通する充填管を備えており、
前記充填工程では、前記カッタヘッドの前面への前記不凍結加泥材の充填に先行して、前記充填管の内部に前記不凍結加泥材を充填しておくことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシールド掘進機のカッタビット交換方法。
【請求項5】
カッタビットを備えたカッタヘッドを有するシールド掘進機であって、
前記シールド掘進機は制御盤をさらに有し、
前記制御盤は、
前記カッタヘッドの前面に不凍結加泥材を充填する制御を実行し、もしくは、少なくとも前記カッタヘッドを後退させることにより、該カッタヘッドの前方にある凍土と該カッタヘッドの間に隙間を形成し、前記隙間に不凍結加泥材を充填する制御を実行し、
前記カッタヘッドを連続的もしくは間欠的に回転させる制御を実行
し、
前記不凍結加泥材を、前記カッタヘッドの背面に位置するチャンバ内に取り込み、後方に排土する制御を実行することを特徴とする、シールド掘進機。
【請求項6】
前記カッタビットの交換に際し、前記制御盤が、前記カッタヘッドを所定角度だけ回動する制御を実行することを特徴とする、請求項5に記載のシールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機のカッタビット交換方法とシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法では、例えばシールド掘進機による掘進長が長い場合に、地中においてカッタヘッドに装着されているカッタビットの交換が行われる場合がある。このカッタビットの交換に際しては、シールド掘進機におけるカッタヘッド背面のチャンバ内に作業員が入り、チャンバ内において機内側からカッタビットの交換を行う方法や、切羽とカッタヘッドの間に作業員が入り、カッタヘッドの前方からカッタビットの交換を行う方法が適用される。
前者の場合、機内側からカッタビットを交換可能なカッタビットの構造は、所謂ボルト取付け型のカッタビットとなる。このボルト取付け型のカッタビットは、カッタヘッドにおけるビット一つ当たりの設置スペースを広く取る必要があり、従って、カッタビットの全体数量が減少する傾向にあることから、例えば礫層地盤での長距離掘進等においては、カッタビットの数量が不足して施工できない事態が生じ得ることになり、地盤条件により施工できないといった制約を受ける。
一方、後者の場合、例えば作業員がカッタヘッドと切羽の間に進入する前に、予めシールド掘進機の周辺地盤を凍結させて凍土を造成し、カッタヘッドと切羽の間の空間への地下水等の浸入を防ぐ対策が講じられる。尚、前者の場合でも、チャンバ内に作業員が入る前に、チャンバ内の圧力を低下させる必要があるが、このチャンバ内圧力の低下によりチャンバ内に地下水等が浸入するのを防止するべく、凍結工法により凍土が造成されることがある。
例えば、凍結工法にて凍土を造成した後、凍土内にシールド掘進機を進入させ、カッタヘッドの前面の全域を掘削して作業スペースを形成した後、チャンバから作業スペースに作業員がアクセスし、作業スペースにてカッタヘッドの前面の全域におけるカッタビットの交換作業が行われる。しかしながら、このようにカッタヘッドの前面の全域の凍土を掘削することから掘削作業量が多くなり、凍土掘削に要する作業時間が長くなるといった課題を有する。さらに、凍土に包囲された広範な作業スペースに支保工や足場を設置し、交換作業を行うことから、凍土の掘削からカッタビットの交換までに要する作業時間、すなわち、凍土直下での作業時間が長くなり、このことは作業安全性の課題に繋がる。
【0003】
ここで、特許文献1には、高強度モルタルなどの固化材を用いることなく、地山の水と土圧に対抗させることができるシールド掘進機及びシールド掘進機における作業領域形成方法が提案されている。より具体的には、シールド掘進機における掘削方向前方部位に薬液注入を行って地盤改良領域を形成し、次いで、シールド掘進機の周囲において、地盤改良領域にラップする形で凍結領域を形成し、この地盤改良領域により主に地山の土圧に対抗し、凍結領域及び地盤改良領域により作業領域に地下水が浸入することを防止する、作業領域形成方法である。ここで、作業領域として、カッタディスクに取り付けられたカッタビットを交換する作業を行うための領域が挙げられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の作業領域形成方法によれば、高強度モルタルなどの固化材を用いることなく、地山の水と土圧に対抗させることができる一方で、上記する課題、すなわち、凍土とカッタヘッドの間に作業員が進入してカッタビットを交換するに当たり、カッタヘッドの前面の全域における凍土を掘削してカッタヘッドの全域のカッタビットを交換する際に作業時間が長時間に及ぶといった課題と、作業安全性の課題を解消する解決手段とはならない。
【0006】
本発明は、凍土とカッタヘッドの間に作業員が進入してカッタビットを交換するに当たり、凍土の掘削量を低減して交換作業時間を短縮でき、このことによって作業安全性を高めることのできる、シールド掘進機のカッタビット交換方法とシールド掘進機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明によるシールド掘進機のカッタビット交換方法の一態様は、
シールド掘進機のカッタヘッドに装着されているカッタビットを地中において交換する、シールド掘進機のカッタビット交換方法であって、
前記シールド掘進機の停止位置の周辺の地盤を凍結させて凍土を造成する、凍結工程と、
前記凍土内に前記カッタヘッドが位置するようにして前記シールド掘進機を停止させ、
前記カッタヘッドの後方の前記シールド掘進機の側面と前記凍土の界面に形成されている水道を、該シールド掘進機の内部から凍結手段によって凍結して止水する、水道止水工程と、
前記カッタヘッドの前面の少なくとも一部に不凍結加泥材を充填する、充填工程と、
前記カッタヘッドの前面の一部の前記凍土を掘削して作業スペースを形成し、前記カッタビットを交換する、掘削交換工程と、を有し、
少なくとも前記充填工程までの過程において、前記カッタヘッドを連続的もしくは間欠的に回転させることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、凍土に進入したシールド掘進機の内部から凍結手段にてシールド掘進機の側面の水道を凍結して止水した後、カッタヘッドの前面の少なくとも一部の凍土等に不凍結加泥材を充填することにより、凍土にてカッタヘッドが凍結して回転不能になることを防止できる。そして、カッタヘッドの前面の全域の凍土ではなく、前面の一部の凍土を掘削して作業スペースを形成し、この可及的に狭い作業スペースを利用してカッタビットを交換することにより、カッタヘッドの前面の全域の凍土を掘削する際に要する作業時間を短縮することができる。
そして、カッタヘッドの前面の少なくとも一部の凍土等に不凍結加泥材が充填されていることと、少なくとも充填工程までの過程においてカッタヘッドを連続的もしくは間欠的に回転させることにより、カッタヘッドは回転可能な状態が維持されていることから、カッタヘッドの前面の一部の作業スペースに露出したカッタビットを交換した後、カッタヘッドを回動させ、新たなカッタビットの交換をこの一部の作業スペースにて行うことができる。
【0009】
ここで、シールド掘進機としては、一般のシールド掘進機の他、前胴と後胴が中折れ機構を介して接続されている中折れ式のシールド掘進機等が挙げられる。
また、「カッタヘッドの前面の少なくとも一部」とは、例えば正面視円形のカッタヘッドにおいて、カッタヘッドの全域の他、カッタヘッドの上方の半円形範囲、右上1/4の範囲(12時から3時の範囲)、右上1/8の範囲(12時から1.5時の範囲)など、様々な範囲が含まれる。例えば、カッタヘッドの前面が当接する凍土に対して、カッタヘッドの前面の全域もしくは一部の領域に不凍結加泥材を充填する。
また、「シールド掘進機の内部からの凍結手段」としては、貼り付け凍結管等をシールド掘進機の内部の壁面に設置すること等が挙げられる。
また、「不凍結加泥材」とは、凍土の影響によっても凍らない加泥材のことであり、「凍らない加泥材」や「不凍性加泥材」と称することができる。不凍結加泥材としては、例えば、不凍結材を含む加泥材や、さらにベントナイトと水と増粘剤等を含む加泥材が挙げられる。ここで、「不凍結材」には、水溶液とした際の液体の凝固点を降下させる塩(例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウム)等が挙げられる。
さらに、「少なくとも充填工程までの過程において、カッタヘッドを連続的もしくは間欠的に回転させる」とは、作業員が作業スペースに入ってカッタビットを交換する掘削交換工程以前の全工程において、凍土や凍結手段によりカッタヘッドが回転不能にならないように、連続的にカッタヘッドを回転させることの他、カッタヘッドを一定時間置きに回転させること、ランダムな時間間隔で回転させること等を含んでいる。尚、掘削交換工程では、上記するように、カッタヘッドを回動させることにより作業スペースに要交換のカッタビットを露出させることから、掘削交換工程においては、交換作業の目的としてカッタヘッドの所定角度の回動制御が実行される。
【0010】
また、本発明によるシールド掘進機のカッタビット交換方法の他の態様は、前記凍土内に前記カッタヘッドが位置するようにして前記シールド掘進機を停止させた後、少なくとも前記カッタヘッドを後退させることにより、前方の前記凍土と該カッタヘッドの前記前面の間に隙間を形成する、隙間形成工程をさらに有し、
前記充填工程では、前記隙間に不凍結加泥材を充填することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、凍土に進入したシールド掘進機の少なくともカッタヘッドを後退させて隙間を形成し、カッタヘッドの前面の隙間に不凍結加泥材を充填することにより、凍土にてカッタヘッドが凍結して回転不能になることを防止できる。そして、カッタヘッドの前面の全域の凍土ではなく、前面の一部の凍土を掘削して作業スペースを形成し、この可及的に狭い作業スペースを利用してカッタビットを交換することにより、カッタヘッドの前面の全域の凍土を掘削する際に要する作業時間を短縮することができる。
【0012】
本態様において適用されるシールド掘進機としては、一般のシールド掘進機の他、前胴と後胴が中折れ機構を介して接続されている中折れ式のシールド掘進機等が挙げられる。本態様のカッタビット交換方法では、カッタビットの交換に際して少なくともカッタヘッドを後退させることから、適用されるシールド掘進機が一般的なシールド掘進機の場合は、シールド掘進機の全体を、後方のセグメントリングに反力を取りながらジャッキ等により後退させる方法が適用される。また、中折れ式のシールド掘進機が適用される場合は、中折れ機構を作動することにより、前胴のみを後退させる方法が適用される。さらに、本体に対してカッタヘッドのみが進退自在に取り付けられている形態のシールド掘進機が適用される場合は、カッタヘッドのみを後退させる方法が適用される。このように、「少なくともカッタヘッドを後退させ」るとは、適用されるシールド掘進機の形態に応じて、カッタヘッドのみを後退させること、カッタヘッドを含む前胴を後退させること、カッタヘッドを含むシールド掘進機の全体を後退させること等を含んでいる。
また、「隙間に不凍結加泥材を充填する」とは、隙間の一部に不凍結加泥材を充填することを意味しているが、隙間が不凍結加泥材により完全に満たされるまで充填することを排除するものではない。
【0013】
また、本発明によるシールド掘進機のカッタビット交換方法の他の態様は、前記掘削交換工程では、前記作業スペースにある前記カッタビットを交換した後、該カッタヘッドを所定角度だけ回動させ、新たに該作業スペースに位置決めされた該カッタビットを交換することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、カッタヘッドの前面の一部の凍土を掘削して形成された作業スペースに対して、カッタヘッドの任意の領域のカッタビットを露出させてカッタビットの交換を行った後、カッタヘッドを所定角度回動させて、その側方にあるあらたなカッタヘッドの領域を作業スペースに露出させ、同様にカッタビットの交換を行い、このようなカッタヘッドの回動及び停止とカッタビットの交換を所定回数実行することにより、僅かな作業スペースを利用してカッタヘッドの全領域のカッタビットの交換を行うことができる。そのため、凍土の掘削量を低減して掘削作業に要する作業時間を短縮できる。
また、カッタヘッドの前面の一部の領域の作業スペースに対して、交換を要するカッタビットを備えたカッタヘッド領域を順次露出させてカッタビットの交換を行うことから、スムーズなカッタビットの交換作業を実現することができる。尚、作業スペースにおいては、例えばカッタヘッドの隙間を介して機内から単管パイプや角型鋼管等を持ち出して支保工や足場を組み付け、支保工にて作業スペースを周囲の凍土から防護する措置を講じるのが好ましいが、この場合でも、作業スペースが可及的に狭い範囲に限定されていることから、仮設する支保工の規模も可及的に小さくなる。
【0015】
また、本発明によるシールド掘進機のカッタビット交換方法の他の態様において、前記シールド掘進機は前記カッタヘッドの背面の内部にチャンバを備え、該チャンバを貫通して、前記カッタヘッドの前面の開口に連通する充填管を備えており、
前記充填工程では、前記カッタヘッドの前面への前記不凍結加泥材の充填に先行して、前記充填管の内部に前記不凍結加泥材を充填しておくことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、充填工程において、カッタヘッドの前面の凍土もしくは隙間への不凍結加泥材の充填に先行して、カッタヘッドの前面の開口に連通する充填管に不凍結加泥材を充填しておくことにより、充填管や充填管に連通する各種加泥ポートが凍土により凍結して閉塞することを防止できる。ここで、充填管の前面の開口は、カッタヘッドの中央のセンターカッタ(フィッシュテール)に対応する位置や、カッタヘッドの中央から径方向に延設する複数のスポークの途中位置や端部位置等に設けられる。
【0017】
また、本発明によるシールド掘進機の一態様は、
カッタビットを備えたカッタヘッドを有するシールド掘進機であって、
前記シールド掘進機は制御盤をさらに有し、
前記制御盤は、
前記カッタヘッドの前面に不凍結加泥材を充填する制御を実行し、もしくは、少なくとも前記カッタヘッドを後退させることにより、該カッタヘッドの前方にある凍土と該カッタヘッドの間に隙間を形成し、前記隙間に不凍結加泥材を充填する制御を実行し、
前記カッタヘッドを連続的もしくは間欠的に回転させる制御を実行することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、カッタヘッドの前面の凍土内に不凍結加泥材を充填する、もしくは、少なくともカッタヘッドを後退させてカッタヘッドと凍土の間に隙間を形成し、この隙間に不凍結加泥材を充填するとともに、カッタヘッドを連続的もしくは間欠的に回転させる制御を実行することにより、凍土の中にあってもカッタヘッドが回転不能になることを防止することができる。従って、係る制御を実行する本態様のシールド掘進機を適用することにより、上記する本発明のカッタビット交換方法を実行することが可能となり、凍土の掘削量を低減して、凍土掘削からカッタビット交換までの全作業時間を短縮しながら、高い作業安全性の下でカッタビットの交換を行うことができる。
【0019】
ここで、上記するように、シールド掘進機には、前胴と後胴が中折れ機構を介して接続されている中折れ式のシールド掘進機や、本体に対してカッタヘッドのみが進退するシールド掘進機等が含まれる。また、隙間を形成して不凍結加泥材を充填する場合は、制御盤により少なくともカッタヘッドが後退制御される。一方、上記する本態様のカッタビット交換方法にて適用されるシールド掘進機は、これら中折れ式のシールド掘進機等の他に、一般のシールド掘進機が含まれてよい。
また、「制御盤」は、シールド掘進機の後続台車内に装備されてもよいし、地上の遠隔操作室に装備されてもよいし、シールド掘進機の機内に装備されてもよく、シールド掘進機の運転操作装置の一部である。
【0020】
また、本発明によるシールド掘進機の他の態様は、
前記カッタビットの交換に際し、前記制御盤が、前記カッタヘッドを所定角度だけ回動する制御を実行することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、カッタヘッドを所定角度回動する制御が実行されることにより、カッタヘッドの前面の一部の凍土を掘削して形成された作業スペースに対して、カッタヘッドの任意の領域のカッタビットを露出させてカッタビットの交換を行った後、カッタヘッドを所定角度回動させて、その側方にある新たなカッタヘッドの領域を作業スペースに露出させ、作業スペースにおいて同様にカッタビットの交換を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシールド掘進機のカッタビット交換方法とシールド掘進機によれば、凍土とカッタヘッドの間に作業員が進入してカッタビットを交換するに当たり、凍土の掘削量を低減して交換作業時間を短縮でき、作業安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図であって、かつ実施形態に係るシールド掘進機の一例を示す図である。
【
図3】シールド掘進機を構成する制御盤のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】
図1に続いて、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。
【
図6】
図5に続いて、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。
【
図7】
図6に続いて、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。
【
図8】
図7に続いて、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。
【
図9】
図8のIX方向矢視図であり、さらに、
図8に続いて、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。
【
図10】第2実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法とシールド掘進機について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法、及び実施形態に係るシールド掘進機]
はじめに、
図1乃至
図9を参照して、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例と、実施形態に係るシールド掘進機の一例について説明する。ここで、
図1、
図5乃至
図9は順に、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。また、
図1、
図5等は、さらに実施形態に係るシールド掘進機の一例を示している。
【0026】
まず、
図1乃至
図4を参照して、実施形態に係るシールド掘進機の一例について説明する。図示するシールド掘進機60は中折れ式のシールド掘進機であり、前面にカッタヘッド20を備えた前胴10と、後胴30と、前胴10と後胴30を繋ぐ中折れジャッキ15(中折れ機構の一例)とを有する、泥土圧式シールド掘進機である。尚、シールド掘進機60は、泥土圧式シールド掘進機の他にも、泥水式シールド掘進機や土圧式シールド掘進機であってもよい。また、シールド掘進機としては、中折れ式のシールド掘進機の他、本体に対してカッタヘッドのみが進退するシールド掘進機が適用されてもよく、制御盤により、少なくともカッタヘッドを後退させる制御が実行されるシールド掘進機であればよい。尤も、カッタビット交換方法のみに着目すれば、一般のシールド掘進機が適用されてもよく、一般のシールド掘進機が適用される場合は、カッタビットの交換に際して、シールド掘進機の全体を、後方のセグメントリングに反力を取りながらジャッキ等により後退させる方法が適用される。
【0027】
前胴10の前方位置には隔壁11が設けられ、前胴10の前端にカッタヘッド20がX1方向に回転可能に装備されており、カッタヘッド20と隔壁11の間に、掘削された土砂(凍土を含む)を取り込むチャンバ16が形成されている。隔壁11の後方には、カッタヘッド20の回転源となる電動モータ12が配設されている。
【0028】
前胴10には中折れジャッキ15が取り付けられており、中折れジャッキ15の一端が後胴30の前方にある垂れ壁32に固定されている。尚、
図1等には、一基の中折れジャッキ15のみを示しているが、複数の中折れジャッキ15が前胴10の内部においてその周方向に間隔を置いて配設され、それらの一端が後胴30の垂れ壁32に固定されている。各中折れジャッキ15のストローク量がそれぞれ異なるストローク量にて調整されてX4方向に伸縮することにより、前胴10の掘進方向を所望に変更することができる。また、各中折れジャッキ15のストローク量を同量に調整して伸縮することにより、後胴30に対して前胴10を相対的に後退(バックリング)させたり、相対的に前進させることができる。
【0029】
後胴30の内周面には、複数のシールドジャッキ14が取り付けられており(
図1等では一基のシールドジャッキのみを図示)、複数のセグメントSがエレクタ(図示せず)にてリング状に組み付けられたセグメントリングに対してシールドジャッキ14のシリンダジャッキをX3方向に押し込むことにより、シールド掘進機60がX2方向に掘進される。
【0030】
後胴30の後方内側には、複数箇所において、周方向に亘るテールシール31が設けられており、設置されたセグメントリングに対してテールシール31が常時摺接することにより、後胴30の止水性が確保されている。
【0031】
隔壁11の下端には開口11aが開設され、後胴30まで傾斜した姿勢で延設するスクリュコンベア13の一端が開口11aに臨んでいる。カッタヘッド20から取り込まれた土砂(凍土を含む)は、チャンバ16内にて撹拌された後、スクリュコンベア13にてシールド掘進機60の後方に搬送される。
【0032】
カッタヘッド20は、中央のフィッシュテール21から放射状に延設する複数のカッタスポーク22を備え、フィッシュテール21と各カッタスポーク22には、多数のカッタビット23が取り付けられている。また、カッタスポーク22の先端からは、コピーカッタ24が出没自在に装備されている。さらに、各カッタスポーク22における所定の部位とフィッシュテール21には、機内側からカッタヘッド20の前方へ不凍結加泥材を充填するための充填管25(
図2に一点鎖線で図示)が設けられている。
【0033】
カッタヘッド20の背面(機内側面)には、複数の練り混ぜ翼26が取り付けられており、カッタヘッド20が回転して地盤を掘削し、各カッタスポーク22の間の隙間を介してチャンバ16に取り込まれた掘削土砂が、回転する練り混ぜ翼26により撹拌されるようになっている。
【0034】
カッタヘッド20においては、カッタスポーク22の先端からコピーカッタ24が突出していること等により、カッタヘッド20と略同径の前胴10の側面には、水道WPが形成される。
【0035】
尚、シールド掘進機60の内部には、図示する構成部材の他にも、セグメントの形状を保持する形状保持装置、送泥管や排泥管、送泥管と排泥管が連通する混合タンク、不凍結加泥材を収容するタンク、不凍結加泥材を充填管25やカッタヘッド20の前方へ送り出す送出ポンプ(いずれも図示せず)等、様々な機器が存在する。
【0036】
図示例のシールド掘進機60は泥土圧式シールド掘進機であることから、カッタヘッド20は図示例のようにスポーク型の形態が一般に適用されるが、泥水式シールド掘進機が適用される場合は、カッタビットが装備された面板型のカッタヘッドが一般に適用される。
【0037】
シールド掘進機60には、各種機器の動作を制御する制御盤40が設けられている。制御盤40は、シールド掘進機60の後続台車(図示せず)内に装備されてもよいし、地上の遠隔操作室(図示せず)に装備されてもよいし、シールド掘進機60の機内に装備されてもよく、シールド掘進機60の運転操作装置の一部である。尚、
図1等においては、シールド掘進機60の機内に制御盤40が装備されている例を示している。ここで、
図3及び
図4を参照して、制御盤40について説明する。
図3は、シールド掘進機を構成する制御盤のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図4は、制御盤の機能構成の一例を示す図である。
【0038】
制御盤40はコンピュータにより構成されている。
図3に示すように、制御盤40は、CPU(Central Processing Unit)41、RAM(Random Access Memory)42、ROM(Read Only Memory)43、無線通信装置44、表示装置45、及び入力装置46を有し、それらがシステムバス47にてデータ通信可能に接続されている。
【0039】
ROM43には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAM42は、ROM43に記憶されているプログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPU41は、RAM42にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。例えば、以下で説明するように、中折れジャッキ15を所定量短縮させることにより、後胴30に対して前胴10を所定量後退させ、凍土F内の切羽Kとカッタヘッド20の間に隙間を形成する制御を実行する。また、凍土や凍結手段によりカッタヘッド20が凍り付いて回転不能にならないように、カッタビットの交換までの各工程において、カッタヘッド20を連続的もしくは間欠的に回転させるべく、電動モータ12の回転制御を実行する。さらに、カッタヘッド20の前方において、カッタヘッド20の前面の一部の領域にのみ造成された作業スペースに対して、カッタヘッド20を所定角度回動させて停止させる制御を実行する。尚、制御盤40はその他、インストールされたプログラム等を記憶する補助記憶装置(図示せず)を有していてもよい。
【0040】
表示装置45は、液晶ディスプレイ等からなり、たとえばタッチパネルの表示機能を担う。入力装置46は、表示装置45に対する接触体の接触を検出するセンサを有する電子部品である。接触体の接触の検出方式としては、静電方式や抵抗膜方式、光学方式などがある。この接触体として、オペレータ等の指や専用ペン等が挙げられる。無線通信装置44は、無線LAN又は移動体通信網等において通信を行う際に必要となる、アンテナ等の電子部品である。
【0041】
制御盤40は、CPU41による制御により、
図4に示す入力部410、送受信部420、表示部430、及び格納部440として機能する。
【0042】
入力部410には、凍土F内の切羽Kとカッタヘッド20の間に隙間を形成するに当たり、後胴30に対して前胴10を後退させる後退量が施工管理者により入力され、入力された後退量は格納部440に格納される。この設定された後退量が、中折れジャッキ15のストローク量となる。
【0043】
また、入力部410には、凍土によりカッタヘッド20が凍り付いて回転不能にならないように、カッタビットの交換までの各工程において、カッタヘッド20を連続的もしくは間欠的に回転させるべく、電動モータ12の回転駆動や回転駆動停止のタイミング、回転継続時間等が入力され、入力されたデータは格納部440に格納される。
【0044】
さらに、入力部410には、カッタヘッド20の前面の一部の領域にのみ造成された作業スペースに対して、カッタヘッド20を所定角度回動させて停止させる際の回動角度が入力され、入力されたデータは格納部440に格納される。
【0045】
送受信部420は、格納部440にて格納されている、中折れジャッキ15のストローク量データを中折れジャッキ15に送信する。また、送受信部420は、格納部440にて格納されている、電動モータ12の回転駆動や回転駆動停止の制御信号を電動モータ12に送信する。また、送受信部420は、カッタビット23の交換作業において、カッタヘッド20を所定角度回動させて停止させる制御信号を電動モータ12に送信する。さらに、送受信部420は、シールド掘進機60が備えるGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)による位置データを受信する。
【0046】
表示部430は、シールド掘進機60の三次元位置や掘進線形、凍土F内におけるシールド掘進機60のカッタヘッド20の三次元位置等を表示する。また、各カッタビットの交換の要否は、作業員が各カッタビットの摩耗量を計測することにより決定されるが、カッタビットの摩耗量をセンサにより検知する場合には、各カッタビットの摩耗量の検知結果が制御盤40に送信され、表示部430において、カッタヘッド20における交換要のカッタビットが表示されてもよいし、さらには、交換が完了したカッタビットが表示されてもよい。また、カッタヘッド20のうち、作業スペースに露出している領域がカッタヘッドの前方から撮像され、撮像データが制御盤40に送信されて表示部430に表示されてもよいし、この領域において、未だ交換されていないカッタビットと交換が完了しているカッタビットが表示部430においてさらに表示されてもよい。
【0047】
次に、
図1、
図2、
図5乃至
図9を参照して、第1実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例について説明する。
【0048】
まず、
図1に示すように、原地盤Gにおけるシールド掘進機60の停止位置(カッタビット交換位置)の周辺の地盤を凍結することにより、凍土Fを造成する。例えば、地上から凍結領域に対して複数の凍結管(図示せず)を打設し、これら凍結管に-35℃乃至-30℃程度の冷媒を循環させることにより、凍結領域の地盤を凍結させて凍土Fを造成する。ここで、造成された凍土Fの平均的な温度は-10℃程度である。
図1に示すように、凍土Fは、進入するシールド掘進機60の少なくとも前胴10を完全に収容できる寸法を有する態様で造成される(以上、凍結工程)。
【0049】
次に、同
図1に示すように、カッタヘッド20をX1方向に回転させつつX2方向に掘進するシールド掘進機60を凍土Fに進入させ、
図1に示すように、例えば前胴10が完全に凍土Fに進入した段階でシールド掘進機60の掘進を停止させる。
【0050】
凍土F内にカッタヘッド20が位置する状態でシールド掘進機60を停止させた後、
図5に示すように、制御盤40による制御により、中折れジャッキ15をX4'方向に短縮させることにより、前胴10をX5方向に後退させ、前方の凍土Fの切羽Kとカッタヘッド20の間に隙間GPを形成する。ここで、前胴10の後退量は、例えば数十cm程度である(以上、隙間形成工程)。この隙間形成工程においては、凍土Fによりカッタヘッド20が凍り付いて回転不能にならないように、制御盤40により、カッタヘッド20が連続的もしくは間欠的に回転制御される。
【0051】
次に、シールド掘進機60のうち、例えば前胴10の内壁面に複数の貼り付け凍結管50(凍結手段の一例)を設置し、貼り付け凍結管50に冷媒を循環させることにより、カッタヘッド20の後方のシールド掘進機60の側面(例えば、前胴10の側面)と凍土Fの界面に形成されている水道WPを凍結させて凍結止水層SLを造成し、水道WPを止水する(以上、水道止水工程)。この水道止水工程においては、凍土Fに加えて貼り付け凍結管50によりカッタヘッド20が凍り付いて回転不能にならないように、制御盤40により、カッタヘッド20が連続的もしくは間欠的に回転制御される。
【0052】
次に、
図7に示すように、機内から充填管25(
図2参照)を介して、隙間GPに不凍結加泥材Dを充填する。ここで、隙間GPに不凍結加泥材Dを充填するのに先行して、充填管25の内部に不凍結加泥材を充填しておくことにより、充填管25の内部が凍土Fにて凍り付き、閉塞するのを防止することができる。
【0053】
ここで、不凍結加泥材Dは、ベントナイトと、水と、増粘剤と、不凍結材を含む加泥材が適用できる。不凍結材には、水溶液とした際の液体の凝固点を降下させる塩(例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)が好ましいが、その他、CMA(カルシウム・マグネシウム・アセテート、酢酸カルシウム・マグネシウム)、ギ酸ナトリウム、ケイ酸ソーダ、グリセリン、エチレングリコール等が適用できる(以上、充填工程)。
【0054】
尚、図示例では、不凍結加泥材Dが、カッタヘッド20の前方の隙間GPの他に、カッタヘッド20の側端まで充填されており、カッタヘッド20の回転を可能にしている。この充填工程においても、凍土Fに加えて貼り付け凍結管50によりカッタヘッド20が凍り付いて回転不能にならないように、制御盤40により、カッタヘッド20が連続的もしくは間欠的に回転制御される。
【0055】
次に、
図8及び
図9に示すように、カッタヘッド20を回転させつつ不凍結加泥材Dをチャンバ16に取り込み、チャンバ16内に残存する掘削凍土(図示せず)と不凍結加泥材Dを、回転する練り混ぜ翼26にて撹拌し、スクリュコンベア13を介して後方に排土する。この排土により、チャンバ16と、カッタヘッド20の前方の隙間GPが空洞となり、作業員がチャンバ16を介して隙間GPにアクセスできるようになる。
【0056】
作業員は、チャンバ16を介して隙間GPにアクセスし、カッタヘッド20の前面の一部の凍土Fを掘削することにより、交換要のカッタビットを交換するための作業スペースWSを造成する。
【0057】
ここで、図示例においては、
図9に示すように、カッタヘッド20の前面の全域のうち、右上の領域(全域の略1/4の領域)のみ凍土Fの掘削が行われて、作業スペースWSが造成されている。尚、作業スペースWSの奥行きは、例えば1m乃至2m程度である。このように、作業スペースWSがカッタヘッド20の前面の全域でなく、一部領域のみに限定されていることにより、凍土Fの掘削量が低減され、作業スペースWSの造成に要する作業時間を大幅に短縮することができる。尚、作業スペースは、図示例以外にも、左上領域、右上領域におけるさらに狭い領域等、様々な領域に造成することができる。
【0058】
作業員は、チャンバ16を介し、カッタスポーク22の間の空間を介して、単管パイプや角型鋼管等を作業スペースWSに持ち出し、支保工や足場を組み付け(いずれも図示せず)、支保工にて作業スペースWSを周囲の凍土Fから防護する。
【0059】
そして、
図9に示すように、カッタヘッド20のうち、作業スペースWSに露出している領域において交換要のカッタビット23を交換する。
【0060】
図9に示す領域におけるカッタビット23の交換が完了した後、制御盤40による回動制御により、カッタヘッド20を例えば時計周りであるX1'方向に45度程度回動させることにより、新たなカッタヘッド領域を作業スペースWSに露出させ、新たなカッタヘッド領域において交換要のカッタビット23を交換する。
【0061】
このカッタヘッド20の所定角度の回動と、作業スペースWSに露出したカッタヘッド領域における交換要のカッタビット23の交換を繰り返すことにより、カッタヘッド20の全域における交換要のカッタビット23の交換が行われる(以上、掘削交換工程)。
【0062】
図示するシールド掘進機のカッタビット交換方法によれば、凍土Fに進入した中折れ式のシールド掘進機60の前胴10を後退させて隙間GPを形成し、シールド掘進機60の内部から凍結手段50にてシールド掘進機60の側面の水道を凍結して止水した後、カッタヘッド20の前面の隙間GPに不凍結加泥材Dを充填することにより、凍土Fや凍結手段50にてカッタヘッド20が凍結して回転不能になることを防止できる。そして、カッタヘッド20の前面の全域の凍土Fではなく、前面の一部の凍土Fを掘削して作業スペースWSを形成し、この可及的に狭い作業スペースWSを利用してカッタビット23を交換することにより、カッタヘッド20の前面の全域の凍土Fを掘削する際に要する作業時間を短縮することができ、凍土Fの掘削からカッタビット23の交換完了までに要する作業時間を大幅に短縮することができる。そして、凍土Fの直下の作業スペースWSにおける作業時間が短縮されることにより、作業安全性を高めることができる。
【0063】
[第2実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法]
次に、
図10を参照して、第2実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例について説明する。ここで、
図10は、第2実施形態に係るシールド掘進機のカッタビット交換方法の一例の工程図である。
【0064】
既に説明した第1実施形態に係るカッタビット交換方法が隙間形成工程を有する方法であるのに対して、第2実施形態に係るカッタビット交換方法は、隙間形成工程を有していない点において双方の方法は相違する。
【0065】
すなわち、
図10に示すように、凍結工程を経て、シールド掘進機60の前胴10を凍土Fに進入させて停止させた後、水道止水工程にて水道WPを止水する。
【0066】
次に、前胴10を停止位置に停止させた状態(後退させない)で、カッタヘッド20の前面の少なくとも一部の凍土Fに対して不凍結加泥材Dを充填する、充填工程を行う。ここで、図示例は、カッタヘッド20の前面の全域の凍土Fに対して不凍結加泥材Dを充填している状態を示すが、カッタヘッド20の前面の一部の領域(上半領域、下半領域、前面の1/4領域等)の凍土Fに対して不凍結加泥材Dを充填してもよい。
図10においても、不凍結加泥材Dは、カッタヘッド20の前面の他に、カッタヘッド20の側端まで充填されており、カッタヘッド20の回転を可能にしている。この充填工程においても、凍土Fに加えて貼り付け凍結管50によりカッタヘッド20が凍り付いて回転不能にならないように、制御盤40により、カッタヘッド20が連続的もしくは間欠的に回転制御される。
【0067】
次に、
図8及び
図9に示す方法と実質的に同様の方法により、掘削交換工程にて、カッタヘッド20を回転させつつ不凍結加泥材Dをチャンバ16に取り込み、チャンバ16内に残存する掘削凍土(図示せず)と不凍結加泥材Dを、回転する練り混ぜ翼26にて撹拌し、スクリュコンベア13を介して後方に排土する。このことにより、カッタヘッド20の前面の一部の領域に空洞が形成され、形成された空洞に対してチャンバ16を介して作業員がアクセスすることができる。作業員は、チャンバ16を介して空洞にアクセスし、カッタヘッド20の前面の一部の凍土Fを掘削することにより、交換要のカッタビットを交換するための作業スペースWSを造成する。そして、造成された作業スペースWSに露出している領域において、交換要のカッタビット23を交換する。
【0068】
第2実施形態に係るカッタビット交換方法によっても、シールド掘進機60の内部から凍結手段50にてシールド掘進機60の側面の水道を凍結して止水した後、カッタヘッド20の前面の少なくとも一部の凍土Fに対して、不凍結加泥材Dを充填することにより、凍土Fや凍結手段50にてカッタヘッド20が凍結して回転不能になることを防止できる。そして、カッタヘッド20の前面の全域の凍土Fではなく、前面の一部の凍土Fを掘削して作業スペースWSを形成し、この可及的に狭い作業スペースWSを利用してカッタビット23を交換することにより、カッタヘッド20の前面の全域の凍土Fを掘削する際に要する作業時間を短縮することができ、凍土Fの掘削からカッタビット23の交換完了までに要する作業時間を大幅に短縮することができる。そして、凍土Fの直下の作業スペースWSにおける作業時間が短縮されることにより、作業安全性を高めることができる。
【0069】
尚、上記するように、中折れ式のシールド掘進機でなく、一般のシールド掘進機が適用される場合は、隙間形成工程において、シールド掘進機の全体を、後方のセグメントリングに反力を取りながらジャッキ等により後退させる方法が適用される。
【0070】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0071】
10:前胴
11:隔壁
12:電動モータ
13:スクリュコンベア
14:シールドジャッキ
15:中折れジャッキ(中折れ機構)
16:チャンバ
20:カッタヘッド
21:フィッシュテール
22:カッタスポーク
23:カッタビット
24:コピーカッタ
25:充填管(の開口)
26:練り混ぜ翼
30:後胴
31:テールシール
40:制御盤
50:貼り付け凍結管(凍結手段)
60:中折れ式のシールド掘進機(シールド掘進機)
G:原地盤
F:凍土
WP:水道
S:セグメント
z:切羽
GP:隙間
D:不凍結加泥材
WS:作業スペース
SL:凍結止水層