IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケイシー・カンパニー・リミテッドの特許一覧 ▶ ウリ ファイン ケム シーオー., エルティーディー.の特許一覧

特許7307440光学レンズ用ジイソシアネート組成物およびその調製方法
<>
  • 特許-光学レンズ用ジイソシアネート組成物およびその調製方法 図1
  • 特許-光学レンズ用ジイソシアネート組成物およびその調製方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】光学レンズ用ジイソシアネート組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/76 20060101AFI20230705BHJP
   C07C 263/10 20060101ALI20230705BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C08G18/76 014
C07C263/10
G02B1/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020202272
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2021091893
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0162101
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0099495
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0099496
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(73)【特許権者】
【識別番号】520471829
【氏名又は名称】ウリ ファイン ケム シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】WOORI FINE CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】179,Baekhaksandan-gil,Baekhak-myeon,Yeoncheon-gun,Gyeonggi-do 11049,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ベ、ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンム
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヒョクヒ
(72)【発明者】
【氏名】ミョン、ジョンファン
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/190290(WO,A1)
【文献】特開平08-034774(JP,A)
【文献】特開平05-246973(JP,A)
【文献】特表2010-540552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 265/14
C07C 263/10
C08G 18/00-18/87
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.0~5.8のpHを有し、
塩素イオン含有量が100ppm以下であり、
キシリレンジイソシアネートを含み、
キシリレンジイソシアネートの含有量が99.9重量%以上である、光学レンズ用ジイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ジイソシアネート組成物のpHが5.5~5.7である、請求項1に記載の光学レンズ用ジイソシアネート組成物。
【請求項3】
ジアミンを塩酸水溶液と反応させてジアミン塩酸塩組成物を得る段階と、
前記ジアミン塩酸塩組成物からホスゲン化反応によりジイソシアネート組成物を得る段階とを含み、
前記ジアミンと前記塩酸水溶液との反応後に、前記ジアミン塩酸塩組成物を処理する段階をさらに含み、
前記ジアミン塩酸塩組成物を処理する段階は、前記ジアミン塩酸塩組成物を沈殿させる段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物をろ過する段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物を乾燥させる段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物を洗浄する段階とのうち、少なくとも一つを含み、
前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが2.02モル~4.00モルとなるように反応に投入され、
前記ジアミン塩酸塩組成物は、10重量%の濃度で水に溶解する際に3.0~4.0のpHを有し、
前記ジイソシアネート組成物内の塩素イオン含有量が100ppm以下であり、
前記ジイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートを含み、
前記ジイソシアネート組成物内のキシリレンジイソシアネートの含有量が99.9重量%以上である、光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法。
【請求項4】
前記ホスゲン化反応がトリホスゲンを用いて115℃~130℃の温度条件で行われ、
前記塩酸水溶液は、20重量%~45重量%の濃度を有する、請求項3に記載の光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法。
【請求項5】
前記ジアミン塩酸塩組成物内の自由アミン基の含有量が0.1重量%以下であり、
前記ジアミン塩酸塩組成物内の塩素イオン含有量が0.1重量%以下であり、
前記ジイソシアネート組成物は5.0~5.8のpHを有する、請求項3に記載の光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法。
【請求項6】
前記ジイソシアネート組成物は、前記ホスゲン化反応後に蒸留して得られたものであり、
前記蒸留が、100℃~130℃の温度および2torr以下の圧力条件におけるジイソシアネート蒸留を含み、
前記ジイソシアネート蒸留の収率が88%以上である、請求項3に記載の光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法。
【請求項8】
前記ジアミンがキシリレンジアミンである、請求項3に記載の光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、光学レンズ用ジイソシアネート組成物およびその調製方法に関するものである。より具体的に、実現例は光学レンズの製造に用いられるジイソシアネート組成物、前記ジイソシアネート組成物を調製する方法、およびこれを用いて光学レンズを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光学レンズの原料として用いられるイソシアネートは、ホスゲン法、非ホスゲン法、熱分解法などによって調製される。
【0003】
ホスゲン法は、原料アミンをホスゲン(COCl)ガスと反応させてイソシアネートを合成するものであり、また、非ホスゲン法は、キシリレンクロリドを触媒の存在下でシアン酸ナトリウムと反応させてイソシアネートに合成するものであり、熱分解法は、アミンをアルキルクロロホルメートと反応させてカルバメートを調製した後、触媒存在下の高温にて熱分解してイソシアネートを合成するものである。
【0004】
これらのイソシアネートの調製法の中でホスゲン法が最も広く使用されており、特に、アミンにホスゲンガスを直接反応させる直接法が一般的に利用されてきたが、これはホスゲンガスの直接反応のための多数の装置を必要とする問題があった。一方、前記直接法を補完するために、特許文献1のように、アミンに塩化水素ガスを反応させ中間物質であるアミン塩酸塩を得て、これをホスゲンと反応させる塩酸塩法が開発された。
【0005】
しかし、従来のイソシアネート合成のためのホスゲン法の中で、アミンを塩化水素ガスと反応させて中間物質として塩酸塩を得る方法は、常圧で塩酸塩が微粒子として生成され、反応器内部の撹拌状態がスムーズではないので、反応器内部の圧力を高めるために温度を上昇させる追加工程が必要であり、最終製品の収率も低い問題があった。
【0006】
そこで、塩化水素ガスではなく、塩酸水溶液を用いて塩酸塩を得ようとする試みがあるが、塩酸水溶液中にアミンが溶解され収率が50%まで大きく落ちて、実際に適用するのが難しく、最終製品の純度を高めるために、原料として水分および不純物の含有量の低いアミンを利用しなければならない難しさがあった。また、従来のホスゲン法で用いられるホスゲンガスは、猛毒性により環境規制対象の物質であり、これを保管するために別途の冷却装置が必要なので保管および管理が難しい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第10-1994-0001948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、プラスチック光学レンズの原料として主に用いられるジイソシアネートをジアミンから塩酸塩を経て調製する過程において、塩化水素ガスの代わりに塩酸水溶液と有機溶媒とを用い、ホスゲンガスの代わりに固相のトリホスゲンを用いて、反応条件を調節して、従来の環境、収率および品質問題を解決することができた。
【0009】
さらに、本発明者らは、このようなホスゲン化反応を経て得られたジイソシアネート組成物内に残存する塩素成分または一部の塩が、光学レンズの製造のための重合過程において反応速度に影響を与えて脈理を発生させたり、レンズ成形のためのモールド側面のテーピング部分で接着剤の溶出を起こしてレンズ側面の白濁を発生させたりする点に注目した。特に、本発明者らは、ジイソシアネート組成物のpHが、このように光学レンズの製造に影響を与え得る様々な残存物の種類と量に密接な関連性を持つことに注目した。
【0010】
そこで、本発明者らが研究した結果、ジイソシアネート組成物のpHを特定範囲に調整することにより、最終的な光学レンズの光学的特性を向上させ得ることを見出した。また、本発明者らは、ジイソシアネート組成物の調製過程において反応に投入される塩酸水溶液の量を調節して、ジイソシアネート組成物のpHを所望の範囲に調整することができ、収率と純度も向上させ得ることを見出した。
【0011】
したがって、実現例の目的は、光学レンズの特性を向上させ得るpH範囲のジイソシアネート組成物を提供するとともに、前記ジイソシアネート組成物を高い純度および収率で調製する方法、並びにこのことから優れた品質の光学レンズを製造する方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明者らは、ジアミン塩酸塩組成物内に残存する塩素成分または自由アミンなどは、これにより調製されたジイソシアネート組成物の収率と純度を低下させ、最終的な光学レンズにおいて脈理や白濁または黄変を発生させることに注目した。特に、本発明者らは、ジアミン塩酸塩組成物の水中におけるpH値が、このような残存物が存在する程度と関連性を持つことに注目した。
【0013】
そこで、本発明者らが研究した結果、ジイソシアネート組成物の調製に用いられるジアミン塩酸塩組成物のpHを特定範囲に調整して、ジイソシアネート組成物の収率と純度だけでなく、最終的な光学レンズの光学的特性を向上させ得ることを見出した。
【0014】
したがって、実現例の目的は、pHが調整されたジアミン塩酸塩組成物を利用して、純度および収率が向上されたジイソシアネート組成物を調製する方法、および光学的特性が向上された光学レンズを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実現例によると、5.0~5.8のpHを有する、光学レンズ用ジイソシアネート組成物が提供される。
【0016】
他の実現例によると、ジアミンを塩酸水溶液と反応させてジアミン塩酸塩組成物を得る段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物からホスゲン化反応によりジイソシアネート組成物を得る段階とを含み、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが2.02モル~4.00モルとなるように反応に投入され、前記ジアミン塩酸塩組成物は、10重量%濃度で水に溶解する際に3.0~4.0のpHを有する、光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
一実現例によると、光学レンズの製造に用いられるジイソシアネート組成物のpHを特定範囲に調整して、最終的な光学レンズの脈理や白濁を抑制し、光学的特性を向上させ得る。特に、前記実現例は、ジイソシアネート組成物において、従来では考慮していなかったpHが、光学レンズの特性と密接な関連性を持つことを新たに提示するのみならず、従来の複雑な品質管理手順に比べて、pH調整による効率的な管理手段を提示し得る。また、前記実現例の調製方法によると、反応に投入される塩酸水溶液の量を調節して、ジイソシアネート組成物のpHを所望の範囲に調整することができ、収率と純度も向上させ得る。
【0018】
他の実現例によると、ジイソシアネート組成物の調製に用いられるジアミン塩酸塩組成物のpHを特定範囲に調整して、ジイソシアネート組成物の収率と純度だけでなく、最終的な光学レンズの光学的特性を向上させ得る。具体的に、前記pHを特定範囲内に調整することにより、ジアミン塩酸塩組成物内に残存する塩素成分または自由アミンの含有量が制御され得、その結果、ジイソシアネート組成物を調製する過程でウレアが形成されるなどの副反応を抑制できる。
【0019】
また、好ましい実現例によるジイソシアネートの調製方法は、中間物質であるジアミン塩酸塩の調製に塩化水素ガスを使用せず塩酸水溶液を用いることにより、常圧でも反応が進行可能なので、高温加熱および冷却のための追加の装置が必要なく収率も向上させ得る。
【0020】
また、好ましい実現例によるジイソシアネート組成物の調製方法は、塩酸水溶液と一緒に有機溶媒を用い反応条件を調節してジアミン塩酸塩組成物を調製することにより、塩酸水溶液内に塩酸塩が溶解されることを最小化して、最終収率をさらに高めることができ、原料ジアミン内の水分および不純物の含有量に大きく影響を受けないので、原料選択の幅が大きくなる。
【0021】
また、好ましい実現例によるジイソシアネートの調製方法は、保管および管理が難しく猛毒性のホスゲンガスを使用せず、常温にて固体状で別途の冷却保管装置を必要とせず、かつ、毒性の少ないトリホスゲンを使用するので、取扱性および工程性に優れる。
【0022】
したがって、前記実現例によるジイソシアネート組成物の調製方法は、高品質のプラスチック光学レンズの製造に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実現例によるジイソシアネート組成物の調製方法を概略的に示すものである。
図2図2は、ジアミン塩酸塩とトリホスゲンとの反応のための工程装置の例示を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外することではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0025】
また、本明細書に記載された構成成分の物性値、含有量、寸法等を表すすべての数値範囲は、特に記載がない限り、すべての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0026】
本明細書で、「アミン(amine)」は、末端にアミン基を1個以上有する化合物のことを意味し、「ジアミン(diamine)」は、末端にアミン基を2個有する化合物のことを意味し、脂肪族鎖、脂環式、芳香族環の骨格により非常に多様な構造を有し得る。前記ジアミンの具体的な例としては、キシリレンジアミン(XDA)、ヘキサメチレンジアミン(HDA)、2,2-ジメチルペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン、ブテンジアミン、1,3-ブタジエン-1、4-ジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(アミノエチル)カーボネート、4,4'-メチレンジアミン(MDA)、ビス(アミノエチル)エーテル、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼン、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジアミン、ビス(アミノブチル)ベンゼン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノメチル)ジフェニルエーテル、フタル酸ビス(アミノエチル)、2,6-ジ(アミノメチル)フラン、水添キシリレンジアミン(H6XDA)、ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、ジシクロヘキシルジメチルメタンジアミン、2,2-ジメチルジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ノルボルネンジアミン(NBDA)、ビス(アミノメチル)スルフィド、ビス(アミノエチル)スルフィド、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノヘキシル)スルフィド、ビス(アミノメチル)スルホン、ビス(アミノメチル)ジスルフィド、ビス(アミノエチル)ジスルフィド、ビス(アミノプロピル)ジスルフィド、ビス(アミノメチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)エタン、ビス(アミノメチルチオ)エタンなどが挙げられる。より具体的に、前記ジアミンは、キシリレンジアミン(XDA)、ノルボルネンジアミン(NBDA)、水添キシリレンジアミン(H6XDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、およびヘキサメチレンジアミン(HDA)からなる群より選択される1種以上であり得る。前記キシリレンジアミン(XDA)は、オルトキシリレンジアミン(o-XDA)、メタキシリレンジアミン(m-XDA)、およびパラキシリレンジアミン(p-XDA)を含む。
【0027】
本明細書で「イソシアネート(isocyanate)」は、NCO基を有する化合物のことを意味し、「ジイソシアネート(diisocyanate)」は、末端にNCO基を2個有する化合物のことを意味し、脂肪族鎖、脂環式、芳香族環の骨格により非常に多様な構造を有し得る。前記ジイソシアネートの具体的な例としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,2-ジイソシアネートベンゼン、1,3-ジイソシアネートベンゼン、1,4-ジイソシアネートベンゼン、2,4-ジイソシアネートトルエン、エチルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、1,2-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,2-ビス(イソシアネートエチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアネートエチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアネートエチル)ベンゼン、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)ナフタレン、ビス(イソシアネートメチルフェニル)エーテル、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、ビス(イソシアネートメチル)スルフィド、ビス(イソシアネートエチル)スルフィド、ビス(イソシアネートプロピル)スルフィド、2,5-ジイソシアネートテトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアネートメチルテトラヒドロチオフェン、3,4-ジイソシアネートメチルテトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアネート-1,4-ジチアン、2,5-ジイソシアネートメチル-1,4-ジチアンなどが挙げられる。より具体的に、前記ジイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選択される1種以上であり得る。前記キシリレンジイソシアネート(XDI)は、オルトキシリレンジイソシアネート(o-XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(m-XDI)、およびパラキシリレンジイソシアネート(p-XDI)を含む。具体的な一例として、前記ジアミンがキシリレンジアミンを含み、前記ジイソシアネートはキシリレンジイソシアネートを含み得る。
【0028】
本明細書において「組成物」とは、公知の通り、2種以上の化学的成分が個々の固有の特性を概ね維持したままで固相、液相および/または気相で混合または複合された形態のことを意味し得る。
【0029】
前記実現例による各反応段階で用いられる化合物(例えば、トリホスゲン)や反応の結果得られる化合物(例えば、ジアミン塩酸塩、ジイソシアネート)は、通常、各反応段階で未反応試料の残留、副反応や水分との反応、または化合物の自然分解により生じる異種の成分と混合または結合された状態で存在し、これらの異種成分は数回の精製を経ても微量が残り、主成分とともに存在し得る。
【0030】
前記実現例によると、主化合物と混合または結合されたこのような異種成分に注目しているので、微量の異種成分であっても主化合物と混合または結合された状態を組成物として扱い、その成分および含有量を具体的に例示している。
【0031】
また、本明細書には、様々な組成物間において明確かつ容易に区分するために、組成物内の主成分の名称とともに複合して用語を記載することもあり、例えば「ジアミン塩酸塩組成物」は、ジアミン塩酸塩を主成分として含む組成物のことを指し、「ジイソシアネート組成物」は、ジイソシアネートを主成分として含む組成物のことを指す。この際、組成物内の主成分の含有量は、50重量%以上、80重量%以上、または90重量%以上であり得、例えば、90重量%~99.9重量%であり得る。
【0032】
本明細書においてppm単位は、重量を基準にしたppmを意味する。
【0033】
[光学レンズ用ジイソシアネート組成物]
一実現例による光学レンズ用ジイソシアネート組成物は、5.0~5.8の範囲のpHを有する。
【0034】
前記実現例によると、光学レンズの製造に用いられるジイソシアネート組成物のpHを特定範囲に調整して、最終的な光学レンズの脈理や白濁を抑制し、光学的特性を向上させ得る。もし、ジイソシアネート組成物のpHが5.0未満の場合は、光学レンズの製造のための重合反応の速度が低下して、レンズ成形のためのモールド側面のテーピング部分で接着剤の溶出を起こし、レンズ側面の白濁を発生させ得る。また、ジイソシアネート組成物のpHが5.8を超える場合は、光学レンズの製造のための重合反応の速度が促進され、重合物の流動性が表れることにより光学レンズに脈理が発生し得る。
【0035】
このように、前記実現例は、ジイソシアネート組成物において、従来では考慮していなかったpHが、光学レンズの特性と密接な関連性を持つことを新たに提示するのみならず、従来の複雑な品質管理手順に比べてpH調整による効率的な管理手段を提示し得る。
【0036】
より多様な例示として、前記ジイソシアネート組成物のpHは、5.0以上、5.1以上、5.2以上、5.3以上、または5.5以上であり得、また、5.8以下、5.7以下、または5.6以下であり得る。具体的に、前記ジイソシアネート組成物のpHは、5.1~5.8、5.2~5.8、5.3~5.8、5.0、~5.7、または5.0~5.6であり得る。具体的な一例として、前記ジイソシアネート組成物のpHは5.5~5.7であり得る。
【0037】
また、このようにpHが調整されたジイソシアネート組成物は、色とヘイズに優れる。例えば、前記ジイソシアネート組成物は、APHA(American Public Health Association)色数が20以下、または10以下であり得る。具体的に、前記ジイソシアネート組成物は、APHA色数が1~20、または1~10であり得る。また、前記ジイソシアネート組成物のヘイズは、10%以下、5%以下、または3%以下であり得る。
【0038】
前記ジイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートまたはその他の前記例示したような光学レンズの製造に用いられるジイソシアネートを含み得る。具体的な例として、前記ジイソシアネート組成物は、オルトキシリレンジイソシアネート(o-XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(m-XDI)、パラキシリレンジイソシアネート(p-XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0039】
前記ジイソシアネート組成物内のジイソシアネートの含有量は、90重量%以上、95重量%以上、99.5重量%以上、または99.9重量%以上であり得、具体的に90重量%~99.9重量%であり得る。
【0040】
また、前記ジイソシアネート組成物内の塩素イオン含有量が1000ppm以下、500ppm以下、または100ppm以下であり得る。
【0041】
また、前記ジイソシアネート組成物は、ベンジルイソシアネート、メチルベンジルイソシアネート、シアノベンジルイソシアネートなどをさらに含むことができ、これらの成分の総含有量は約1重量%以下であり得る。
【0042】
したがって、前記実現例によるジイソシアネート組成物は、高品質のプラスチック光学レンズの製造に適用され得る。
【0043】
[光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法]
他の実現例によると、ジアミンを塩酸水溶液と反応させてジアミン塩酸塩組成物を得る段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物からホスゲン化反応によりジイソシアネート組成物を得る段階とを含み、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが2.02モル~4.00モルとなるように反応に投入され、前記ジアミン塩酸塩組成物は、10重量%の濃度で水に溶解する際に3.0~4.0のpHを有する、光学レンズ用ジイソシアネート組成物の調製方法が提供される。
【0044】
前記実現例によると、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りの前記HClが2.02モル~4.00モルとなるように反応に投入される。もし、前記投入量未満の場合は、一部のジアミンが塩酸水溶液と反応できなく残存して、自由アミン基が後続の反応でジイソシアネートと反応してウレアを形成することになる。また、前記投入量を超える場合は、過量の塩酸水溶液に起因して残存する塩素イオンが、後続のホスゲン化反応の際に塩素濃度を高め、不純物を生成することになる。
【0045】
様々な例示として、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが、2.02モル以上、2.05モル以上、2.10モル以上、または2.20モル以上となるように投入され得る。また、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが、4.00モル以下、3.80モル以下、3.70モル以下、3.50モル以下、3.40モル以下、3.35モル以下、または3.25モル以下となるように投入され得る。具体的な例として、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが、2.02モル~3.80モル、2.50モル~3.70モル、または3.00モル~3.60モルとなるように投入され得る。
【0046】
特に、前記実現例の調製方法によると、反応に投入される塩酸水溶液の量を調節して、ジイソシアネート組成物のpHを5.0~5.8に調整でき、ジイソシアネート組成物の収率と純度も向上させ得る。
【0047】
図1は、一実現例によるジイソシアネート組成物の調製方法を概略的に示すものである。図1においてRは、芳香族環、脂環式、脂肪族鎖などを含み、具体的な例としてRは、キシリレン、ノルボルネン、水添キシリレン、イソホロン、またはヘキサメチレンであり得るが、これに限定されない。
【0048】
図1の(a)において(i)は、塩酸水溶液を添加することにより、ジアミンと塩酸水溶液とを反応させる段階を含み得る。図1の(a)において(ii)は、沈殿段階、ろ過段階、乾燥段階、および洗浄段階の中から選ばれた少なくとも1つの段階を含み得る。図1の(b)において(iii)は、トリホスゲンを添加することにより、ジアミン塩酸塩組成物をトリホスゲンと反応させる段階を含み得る。図1(b)において(iv)は、脱気段階、ろ過段階、および蒸留段階の中から選ばれた少なくとも1つの段階を含み得る。
以下、各段階別に具体的に説明する。
【0049】
<ジアミン塩酸塩組成物の調製>
前記ジアミン塩酸塩組成物は、ジアミンを塩酸水溶液と反応させて得る。また、前記ジアミンと塩酸水溶液との反応後に第1有機溶媒をさらに投入して、前記ジアミン塩酸塩組成物を固相で得られる。
【0050】
下記反応式1は、本段階の反応の一例を示したものである。
[反応式1]
【0051】
前記式においてRは、芳香族環、脂環式、脂肪族鎖などを含み、具体的な例としてRは、キシリレン、ノルボルネン、水添キシリレン、イソホロン、またはヘキサメチレンであり得るが、これに限定されない。
【0052】
従来、塩化水素ガスを用いる場合には、常圧反応時に塩酸塩が微粒子として生成され、反応器内部の撹拌状態がスムーズではないため、圧力を高めて反応器内部の温度を上昇させる追加工程が必要であり、最終工程製品の収率も低い問題があった。
【0053】
しかし、前記実現例によると、塩酸水溶液を使用するので、従来の塩化水素ガスを利用する際に発生する問題を解決し得る。具体的に、塩酸水溶液を使用すると、反応により調製される生成物がスラリー状ではなく固体状であるため収率が高く、常圧においても反応が進行可能なので、急冷のための別途の装置または工程を必要としない。
【0054】
前記塩酸水溶液の濃度は5重量%~50重量%であり得る。前記濃度範囲内のとき、塩酸水溶液内に塩酸塩が溶解されることを最小化して、最終収率を上げることができ、取扱性も向上させ得る。具体的に、前記塩酸水溶液の濃度は、10重量%~45重量%、20重量%~45重量%、または30重量%~40重量%であり得る。より具体的に、前記塩酸水溶液は20重量%~45重量%の濃度を有し得る。
【0055】
また、前記塩酸水溶液の投入量は、前記ジアミンの投入量に対する相対的モル比で調節され得、具体的な投入量の例示は前述の通りである。
【0056】
前記ジアミンおよび前記塩酸水溶液の投入は、反応器内部の温度を一定に維持しながら行われ得る。
【0057】
前記ジアミンおよび前記塩酸水溶液の投入時の反応器内部の温度は、20℃~100℃であり得る。前記温度範囲内のとき、温度が沸点以上に高くなって反応に不適となるか、または温度が低くなり過ぎて反応効率が落ちることを防止し得る。
【0058】
具体的に、前記ジアミンおよび前記塩酸水溶液の投入時の反応器内部の温度は、20℃~60℃または20℃~40℃であり得る。
【0059】
従来の塩酸塩法においては、反応過程において熱が多く発生して、別途の冷却器による急冷を必要とするのに対し、前記実現例によると、低い温度を維持しながら反応物質を投入するので、別途の冷却器を必要としない。
【0060】
前記ジアミンおよび前記塩酸水溶液の投入は、例えば、反応器に前記塩酸水溶液を先に投入した後、前記ジアミンをゆっくり投入する順序で行われ得る。前記ジアミンおよび/または前記塩酸水溶液の投入は、30分~1時間行われ得る。
【0061】
前記ジアミンおよび前記塩酸水溶液の投入が完了した後には、反応器内部の温度を0℃~20℃、0℃~10℃、または10℃~20℃に冷却させ得る。
【0062】
前記ジアミンと塩酸水溶液との反応は常圧において行われ、例えば、30分~2時間撹拌しながら行われ得る。
【0063】
前記ジアミンと塩酸水溶液との反応により、ジアミン塩酸塩組成物が水に溶解された水溶液状の反応結果物を得られる。
【0064】
以降、前記ジアミン塩酸塩組成物を処理する段階をさらに行われ得る。例えば、前記ジアミン塩酸塩組成物を処理する段階は、前記ジアミン塩酸塩組成物を沈殿させる段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物をろ過する段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物を乾燥させる段階と、前記ジアミン塩酸塩組成物を洗浄する段階とのうち少なくとも1つを含み得る。
【0065】
具体的に、前記反応結果物に第1有機溶媒を投入して、固相のジアミン塩酸塩組成物を沈殿させ得る。すなわち、前記第1有機溶媒は、結晶化による固相のジアミン塩酸塩組成物の析出を誘導し得る。より具体的に、第1有機溶媒を前記反応結果物に投入し、冷却後さらに撹拌しながら反応を進められる。
【0066】
前記第1有機溶媒は、具体的にジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、n-ブタノール、イソブタノール、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、イソプロパノール、ヘキサン、クロロホルム、および酢酸メチルからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0067】
前記第1有機溶媒の投入量(重量)は、前記ジアミン組成物の重量対比1倍~5倍であり得る。前記投入量範囲内のとき、最終塩酸塩の収率が高く、かつ、過剰な有機溶媒の使用を防止し得る。具体的に、前記第1有機溶媒は、前記ジアミンの重量対比1倍~2倍、または1倍~1.5倍、または1.3倍~1.5倍の量で反応に投入され得る。
【0068】
前記第1有機溶媒の投入以降の冷却温度は、-10℃~10℃または-5℃~5℃であり得る。また、前記冷却以降の追加反応時間は30分~2時間、または30分~1時間であり得る。
【0069】
具体的な一例によると、(1a)第1反応器に前記塩酸水溶液を投入する段階と、(1b)前記第1反応器に前記ジアミンを投入および撹拌する段階と、(1c)前記第1反応器に前記第1有機溶媒を投入および撹拌する段階とを順次行える。
【0070】
より具体的に、前記段階(1b)において、前記ジアミンの投入後で撹拌前に、前記反応器の内部を0℃~10℃の温度で冷却する段階と、前記段階(1c)において、前記第1有機溶媒の投入後で撹拌前に、前記反応器の内部を-5℃~5℃の温度で冷却する段階とをさらに含み得る。
【0071】
前記第1有機溶媒の投入後に、分離、ろ過、洗浄、および乾燥をさらに経ても良い。例えば、前記第1有機溶媒の投入後に水層を分離し、ろ過、洗浄、および乾燥することにより、固相のジアミン塩酸塩組成物が得られる。前記洗浄は、例えば5.7以下の極性を有する溶媒を用いて1回以上行われ得る。また、前記乾燥は、真空乾燥を利用することができ、例えば、40℃~90℃の温度および2.0torr以下の圧力において行われ得る。
【0072】
その結果、前記ジアミン塩酸塩組成物を得る段階で発生する不純物が、前記第1有機溶媒と一緒に除去され得る。したがって、前記方法は、前記ジアミン塩酸塩組成物を得る段階で発生する不純物を、前記第1有機溶媒と一緒に除去する段階をさらに含み得る。前記ジアミン塩酸塩組成物を調製するための反応過程において不純物が発生して前記第1有機溶媒に含まれるが、前記第1有機溶媒の除去段階により、このような不純物を除去して製品の純度を高め得る。
【0073】
前記方法によると、ジアミンを塩酸水溶液と反応させ、沈殿、ろ過、乾燥、洗浄などの追加処理を経て、固相のジアミン塩酸塩組成物を高純度で得られる。一方、従来のようにジアミンを塩化水素ガスと有機溶媒中で反応させる場合、ジアミン塩酸塩のスラリーが得られ、精製が容易ではなかった。
【0074】
このように得られたジアミン塩酸塩組成物の収率は50%以上、65%以上、80%以上、85%以上、または90%以上であり得、具体的に85%~95%、または88%~92%であり得る。
【0075】
なお、反応物の中から有機層を分離して有機溶媒として再利用し得る。これにより、前記第1有機溶媒の回収率は80%以上、85%以上、または90%以上であり得、具体的に、80%~95%、または80%~82%であり得る。
【0076】
<ジアミン塩酸塩組成物>
以上の過程から得られたジアミン塩酸塩組成物は、ジアミン塩酸塩を主に含み、例えば組成物の総重量を基準にしたジアミン塩酸塩の含有量が85重量%以上~99.9重量%であり得る。この際、前記ジアミン塩酸塩は、ジアミンの2個の末端アミン基と結合した2個のHClを含有し得る。
【0077】
また、前記ジアミン塩酸塩組成物の水分含有量は、5重量%以下、1重量%以下、0.1重量%以下、または0.01重量%以下であり得る。
特に、前記実現例によると、ジアミン塩酸塩組成物の調製に用いられる塩酸水溶液の投入量が調節されて、ジアミン塩酸塩組成物内に残存する塩素成分または未反応ジアミンの量が制御され得、このような残存成分に影響を受けるジアミン塩酸塩組成物のpHも制御され得る。
【0078】
例えば、前記ジアミン塩酸塩組成物は、10重量%の濃度で水に溶解する際に3.0~4.0のpHを有し得る。また、前記pH範囲内のとき、前記ジアミン塩酸塩組成物を用いて調製されたジイソシアネート組成物の収率および純度が向上し、また、最終的な光学レンズの光学的特性がより向上し得る。
【0079】
これとは異なり、前記pHが3.0未満であると、前記ジアミン塩酸塩組成物内にジアミンと結合されていないHClが存在して、後続のホスゲン化反応時に塩素濃度を高めて、不純物を生成することとなる。また、前記pHが4.0を超えると、前記ジアミン塩酸塩組成物内にHClで結合されていない自由アミン基が存在して、後続の反応で合成されたジイソシアネートと反応してウレアを形成することとなる。
【0080】
様々な例示として、前記ジアミン塩酸塩組成物が10重量%の濃度で水に溶解する際にpHは、3.0以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上、または3.5以上であり得、4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、または3.6以下であり得る。具体的な例として、前記ジアミン塩酸塩組成物が10重量%の濃度で水に溶解する際にpHは、3.0~3.9、3.1~4.0、3.2~4.0、または3.3~4.0であり得る
【0081】
前記好ましいpH範囲で調整される場合、ジアミン塩酸塩組成物内に自由アミンが一定含有量の範囲以下で含有され得る。具体的に、前記ジアミン塩酸塩組成物内の自由アミン基の含有量が0.1重量%以下、または0.01重量%以下であり得る。前記範囲内のとき、ジアミン塩酸塩組成物内に残存する自由アミン基が後続の反応で合成されたジイソシアネートと反応してウレアを形成することを防止するのになお有利であり得る。
【0082】
また、前記好ましいpH範囲で調整される場合、ジアミン塩酸塩組成物内に塩素成分が一定含有量の範囲以下で含有され得る。具体的に、前記ジアミン塩酸塩組成物内の塩素イオン含有量が、0.1重量%以下、または0.01重量%以下であり得る。前記範囲内のとき、前記ジアミン塩酸塩組成物内に残存するHClが、後続のホスゲン化反応時に塩素濃度を高めて、不純物を生成することを防止するのに、なお有利であり得る。
【0083】
このようなpHは、ジアミン塩酸塩組成物の調製過程で工程条件を調節して制御し得る。例えば、前記ジアミン塩酸塩組成物を、ジアミンと塩酸水溶液とを反応させて得る場合、前記塩酸水溶液の投入量を調節してジアミン塩酸塩組成物のpHを調整し得る。
【0084】
前記塩酸水溶液の投入量は、前記ジアミンの投入量に対する相対的なモル比で調節され得る。例えば、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが2.00モル以上、2.02モル以上、2.05モル以上、2.10モル以上、または2.20モル以上となるように投入され得る。また、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが4.00モル以下、3.80モル以下、3.70モル以下、3.50モル以下、3.40モル以下、3.35モル以下、または3.25モル以下となるように投入され得る。
【0085】
具体的に、前記塩酸水溶液は、前記ジアミン1モル当りのHClが2.02モル~4.00モルとなるように反応に投入され得る。前記範囲内のとき、一部のジアミンが塩酸水溶液と反応できなく残存して、自由アミン基が後続の反応でジイソシアネートと反応してウレアを形成することを防止するのに、より有利であり得ると同時に、過量の塩酸水溶液に起因して残存する塩素イオンが、後続のホスゲン化反応時に塩素濃度を高めて不純物を生成することを防止するのに、より有利であり得る。
【0086】
<ジイソシアネート組成物の調製>
次に、前記ジアミン塩酸塩組成物からホスゲン化反応によりジイソシアネート組成物を得る。前記ホスゲン化反応はトリホスゲンを用いて行われ得る。すなわち、前記ジアミン塩酸塩組成物をトリホスゲンと反応させてジイソシアネート組成物を得られる。この際、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応は、第2有機溶媒の中で行われ得る。
【0087】
下記反応式2は、本段階の反応の一例を示したものである。
[反応式2]
【0088】
前記式においてRは、芳香族環、脂環式、脂肪族鎖などを含み、具体的な例としてRは、キシリレン、ノルボルネン、水添キシリレン、イソホロン、またはヘキサメチレンであり得るが、これに限定されない。
【0089】
具体的に、前記調製されたジアミン塩酸塩組成物を有機溶媒に投入し、トリホスゲン(triphosgene、BTMC、bis(trichloromethyl)carbonate)と反応させた後、ろ過および蒸留によりジイソシアネート組成物を得る。
【0090】
前記第2有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、1-クロロ-n-ブタン、1-クロロ-n-ペンタン、1-クロロ-n-ヘキサン、クロロホルム、カーボンテトラクロリド、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、およびメチルシクロヘキサンからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0091】
前記第2有機溶媒の投入量(重量)は、前記ジアミン塩酸塩組成物の重量対比1倍~5倍であり得る。前記投入量の範囲内のとき、最終ジイソシアネートの収率が高く、かつ、過剰な有機溶媒の使用を防止し得る。具体的に、前記第2有機溶媒は、前記ジアミン塩酸塩組成物の重量対比2倍~5倍、または3倍~5倍の量で反応に投入され得る。
【0092】
前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応(つまり、ホスゲン化反応)温度は115℃以上のものが、ジアミン塩酸塩とトリホスゲンとの間において反応がよりスムーズとなり、収率上昇と反応時間の短縮に有利であり得る。また、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応温度は160℃以下のものが、最終ジイソシアネートの生成時にタールのような不純物の生成を抑制し得る。例えば、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応温度は、115℃~160℃、115℃~130℃、または130℃~160℃であり得る。
【0093】
また、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応温度が130℃以下の場合、塩素を含有する不純物(例えば、クロロメチルベンジルイソシアネート、1,3-ビス(クロロメチル)ベンゼン等)の抑制にさらに有利であり得る。具体的に、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応温度は、115℃~130℃であり得る。より具体的に、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応温度は、115℃~120℃であり得る。
【0094】
前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応は、5時間~100時間行われ得る。前記反応時間の範囲内のとき、反応時間が過度でなく、かつ、ホスゲン発生による未反応物質の生成を最小化し得る。具体的に、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応は、15時間~40時間、20時間~35時間、または24時間~30時間行われ得る。
【0095】
具体的な例として、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応が、115℃~160℃の温度にて5時間~100時間行われ得る。
【0096】
前記ジアミン塩酸塩組成物および前記トリホスゲンは1:0.65~1のモル比で反応に投入され得る。具体的に、前記ジアミン塩酸塩組成物および前記トリホスゲンは、1:0.70超~0.95未満、または1:0.73~0.90のモル比で反応に投入され得る。前記モル比範囲内のとき、前記ホスゲン化反応により得られたジイソシアネート組成物のpHを好ましい範囲内に調整するのになお有利であり得る。また、前記モル比範囲内のとき、反応効率が高く、かつ、過剰な投入により反応時間が増加することを防止するのになお有利であり得る。
【0097】
前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応は、ジアミン塩酸塩組成物および前記第2有機溶媒を混合して第1溶液を得る段階と、トリホスゲンおよび前記第2有機溶媒を混合して第2溶液を得る段階と、前記第1溶液に前記第2溶液を投入および撹拌する段階とを順次含み得る。
【0098】
この際、前記第2溶液の投入および撹拌が、115℃~160℃の温度にて行われ得る。また、前記第2溶液の投入は、合計25時間~40時間の間に2回以上に分けて投入することであり得る。また、この際、各回別の投入時間は、5時間~25時間、または10時間~14時間であり得る。また、前記投入後撹拌して、さらに反応させる時間は、2時間~5時間または3時間~4時間であり得る。
【0099】
または、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応は、(2a)第2反応器に前記第2有機溶媒を投入する段階と、(2b)前記第2反応器に前記ジアミン塩酸塩組成物を投入および撹拌する段階と、(2c)前記第2反応器に前記トリホスゲンを投入および撹拌する段階とを順次含み得る。
【0100】
この際、前記段階(2c)において、前記トリホスゲンの投入は、前記第2有機溶媒と同じ溶媒中に前記トリホスゲンが溶解された溶液を、前記反応器に115℃~130℃の温度にて、合計25時間~40時間の間に2回以上に分けて投入することであり得る。また、この際、各回別の投入時間は5時間~25時間、または10時間~14時間であり得る。また、前記投入後に撹拌してさらに反応させる時間は、2時間~5時間または3時間~4時間であり得る。
【0101】
反応後は、反応結果物を90℃~110℃にて冷却し得る。
前記反応により得られた結果物は、分離、脱気、ろ過、蒸留などをさらに経ても良い。
【0102】
例えば、前記反応後に反応結果物を窒素ガスでバブリングしながら、80℃~150℃で脱気を行える。また、前記脱気後には、10℃~30℃まで冷却し、固形分をろ過して除去し得る。
【0103】
前記ジイソシアネート組成物は、前記ジアミン塩酸塩組成物と、前記ホスゲン化反応後に蒸留して得られたものであり得る。
【0104】
前記蒸留は、前記第2有機溶媒を除去するための蒸留を含み得る。例えば、前記反応後に、反応結果物を40℃~60℃にて2時間~8時間蒸留して、前記第2有機溶媒を除去し得る。前記蒸留する際の圧力は、2.0torr以下、1.0torr以下、0.5torr以下、または0.1torr以下であり得る。また、前記蒸留を介して前記第2有機溶媒を回収して再利用し得る。
【0105】
また、前記蒸留は、ジイソシアネートを蒸留することを含み得る。例えば、前記蒸留は、100℃~130℃におけるジイソシアネート蒸留を含み得る。前記蒸留温度の範囲内のとき、クロロメチルベンジルイソシアネート(CBI)や1,3-ビス(クロロメチル)ベンゼンのように、高温で生成される加水分解性塩素化合物を効果的に除去して、最終的な光学レンズにおいて脈理、白濁、黄変のような物性低下を防止するのになお有利であり得る。具体的に、前記蒸留は、蒸留器の底(bottom)の温度を100℃~130℃に設定して行われ得る。例えば、前記蒸留は、リボイラー(reboiler)の温度を100℃~130℃に設定して行われ得る。
【0106】
また、前記蒸留時の圧力は、2.0torr以下、1.0torr以下、0.5torr以下、または0.1torr以下であり得る。具体的に、前記蒸留は100℃~130℃の温度および2torr以下の圧力条件におけるジイソシアネート蒸留を含み得る。
【0107】
また、前記ジイソシアネート蒸留時間は、1時間以上、2時間以上、または3時間以上であり得、10時間以下、または5時間以下であり得る。具体的に、前記ジイソシアネート蒸留は2時間~10時間行われ得る。
【0108】
前記ジイソシアネート蒸留の収率は80%以上であり、具体的に、85%以上、87%以上、または90%以上であり得る。この際、蒸留収率は、ホスゲン化反応に投入されたジアミン塩酸塩組成物の量から算出された理論的ジイソシアネート組成物の生成量に対する、蒸留後のジイソシアネート組成物の収得量を測定して計算し得る。
【0109】
前記実現例の方法によると、ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応温度の範囲を調節することにより、精製前の組(crude)ジイソシアネート組成物にも不純物が非常に少ない。具体的に、前記ジイソシアネート組成物は、前記ジイソシアネート蒸留前に、ジイソシアネートを98.7重量%以上で含み得る。また、前記ジイソシアネート組成物は、前記ジイソシアネート蒸留後に、ジイソシアネートを99.9重量%以上で含み得る。
【0110】
また、前記ジイソシアネート組成物内のハロゲン基を有する芳香族化合物の含有量が1000ppm以下であり得る。
【0111】
また、最終的に得られたジイソシアネート組成物の収率は、80%以上、85%以上、88%以上、または90%以上であり得る。
【0112】
[ジイソシアネート組成物]
このように調製されたジイソシアネート組成物は、色とヘイズが改善され得る。例えば、前記ジイソシアネート組成物は、APHA(American Public Health Association)色数が20以下、または10以下であり得る。具体的に、前記ジイソシアネート組成物は、APHA色数が1~20、または1~10であり得る。また、前記ジイソシアネート組成物のヘイズは、10%以下、5%以下、または3%以下であり得る。
【0113】
また、前記ジイソシアネート組成物のpHは、4.5以上、5以上、または5.5以上であり得、また、6.5以下、6以下、または5.8以下であり得る。具体的に、前記ジイソシアネート組成物は5.0~5.8のpHを有し得る。前記範囲内のとき、レンズ製造のための適切な重合反応速度を示し、脈理や白濁または黄変を抑制するのになお有利であり得る。また、前記pH範囲内のとき、ジイソシアネート組成物内の塩素成分が一定含有量の範囲以下で含有され得る。具体的に、前記ジイソシアネート組成物内の塩素イオン含有量が1000ppm以下または100ppm以下であり得る。
【0114】
前記ジイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートまたはその他光学レンズの製造に用いられるジイソシアネートを含み得、具体的にオルトキシリレンジイソシアネート(o-XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(m-XDI)、パラキシリレンジイソシアネート(p-XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0115】
前記ジイソシアネート組成物内のジイソシアネートの含有量は、90重量%以上、95重量%以上、99.5重量%以上、または99.9重量%以上であり得、具体的に90重量%~99.9重量%であり得る。
【0116】
また、前記ジイソシアネート組成物は、ベンジルイソシアネート、メチルベンジルイソシアネート、シアノベンジルイソシアネートなどをさらに含み得、これらの成分の総含有量は約1重量%以下であり得る。
【0117】
したがって、前記実現例による調製方法により得るジイソシアネート組成物は高品質のプラスチック光学レンズの製造に適用され得る。
【0118】
<反応溶液の色および透明度の測定>
前記ジアミン塩酸塩組成物からホスゲン化反応によりジイソシアネート組成物を得る段階は、(aa)反応器内で前記ジアミン塩酸塩組成物をトリホスゲンと第2有機溶媒中で反応させて反応溶液を得る段階と、(ab)前記反応溶液の色および透明度を測定する段階と、(ac)前記反応溶液からジイソシアネート組成物を得る段階とを含み得る。
【0119】
前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応において、前記反応溶液の色および透明度を測定して反応条件を調節し得る。
【0120】
例えば、メタキシリレンジアミン塩酸塩およびトリホスゲンからメタキシリレンジイソシアネートを得る反応において、反応初期の反応溶液は不透明な無色~白色であり得、反応が正常に完了した時点における反応溶液は、透明または透明に近く淡い茶系の色を有し得る。
【0121】
例えば、前記反応溶液の色および透明度を測定する段階において、前記反応溶液は透明な薄茶色を示し得る。
【0122】
具体的に、前記反応溶液がCIE-LAB色座標において、45~60のL*値、3~15のa*値、および15~30のb*値を有し得る。より具体的に、前記反応溶液は、CIE-LAB色座標において、50~55のL*値、5~10のa*値、および20~25のb*値を有し得る。
【0123】
また、前記反応溶液は、550nm波長の光に対する透過率が60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上であり得る。また、前記反応溶液は、ヘイズが20%以下、10%以下、5%以下、または3%以下であり得る。具体的に、前記反応溶液は、550nm波長の光に対して70%以上の透過率および10%以下のヘイズを有し得る。より具体的に、前記反応溶液が550nm波長の光に対して80%以上の透過率および5%以下のヘイズを有し得る。
【0124】
これとは別に、もし前記メタキシリレンジアミン塩酸塩とトリホスゲンとの反応が完了していない場合は、反応溶液が不透明であるか沈殿物を有し得、色がぼやけているか白色または無色であり得る。また、もし副反応が多く発生した場合には、反応溶液が不透明かまたは薄茶色以外の色を示すことがあり、例えば、黒褐色~暗い色を示し得る。
【0125】
前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応段階は、前記反応溶液の色および透明度を測定する段階と同時に行われ得る。
【0126】
すなわち、前記ジアミン塩酸塩組成物およびトリホスゲンの反応が進行している中で、リアルタイムで前記反応溶液の色および透明度を測定し得る。
【0127】
また、より正確な測定のために、反応溶液の一部を採取して色および透明度を精密測定し得る。例えば、前記反応溶液の色および透明度の測定は、前記反応溶液の一部を採取し、採取された反応溶液の色および透明度を測定することにより行われ得る。
【0128】
この際、前記反応溶液の色および透明度に応じて、反応当量、反応温度、または反応時間を調節し得る。例えば、前記反応溶液の色および透明度に応じて、反応終了時点を決定し得る。具体的に、前記反応終了時点は、前記反応溶液が透明な薄茶色に変わった時点以降であり得る。
【0129】
一例として、前記反応器は透視窓を備え、前記反応溶液の色および透明度の測定が前記透視窓を介して行われ得る。
【0130】
前記反応器は1段以上のコンデンサと連結され、前記反応器内で発生したガスが前記1段以上のコンデンサに移送された後、前記ガス中に存在する前記第2有機溶媒が凝縮され、前記反応器に回収され得る。
【0131】
前記1段以上のコンデンサは、第1スクラバーおよび第2スクラバーと連結され、前記反応器から前記1段以上のコンデンサに移送されたガスが塩化水素ガスおよびホスゲンガスを含み、前記第1スクラバーが前記塩化水素ガスを水に溶解して水溶液を生成し、前記第2スクラバーが前記ホスゲンガスをNaOH水溶液により中和させ得る。
【0132】
また、前記反応器が1段以上の蒸留器と連結され、前記反応溶液が前記1段以上の蒸留器に移送され、前記1段以上の蒸留器が前記反応溶液からジイソシアネート組成物および第2有機溶媒を分離し得る。
【0133】
前記分離された第2有機溶媒は、前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応に再利用され得る。
【0134】
図2は、ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応のための工程装置の例を示したものである。
【0135】
まず、第1タンク(T-1)に第2有機溶媒およびトリホスゲンを満たして温水還流などにより一定温度を維持する。反応器(R-1)の内部を窒素で置換し、これに第2有機溶媒を投入して撹拌しながら、ジアミン塩酸塩組成物を徐々に投入し、反応器の内部を一定の温度に維持しながら撹拌する。
【0136】
その後、第1タンク(T-1)から第2有機溶媒中のトリホスゲンを反応器(R-1)に徐々に投入する。前記第2有機溶媒中のトリホスゲンの投入は、1回または2回以上に分けて行い、この際、反応器(R-1)の内部温度を一定に維持しながら撹拌を行う。投入が完了した後、一定時間さらに撹拌しながら追加の反応を行う。一例として、反応器(R-1)に備えられた透視窓(G-1)を介して目視で反応溶液の色および透明度を観察する。別の例として、反応器(R-1)に備えられた透視窓(G-1)を介して光学機器により反応溶液の色および透明度を測定する。前記光学機器は、デジタルカメラ、スペクトロメータ、光学分析機器などを含み得る。
【0137】
反応器(R-1)の内部に存在するガス(第2有機溶媒、塩化水素、ホスゲンなど)は第1コンデンサ(C-1)に移送される。第1コンデンサ(C-1)において、冷却により第2有機溶媒が1次凝縮され反応器(R-1)に回収され、残りのガスは第2コンデンサ(C-2)に移送される。第2コンデンサ(C-2)において、冷却により第2有機溶媒が2次凝縮され反応器(R-1)に回収され、残りのガスは第3コンデンサ(C-3)に移送される。第3コンデンサ(C-3)において、冷却により第2有機溶媒が3次凝縮され反応器(R-1)に回収される。
【0138】
このように多段のコンデンサを経て第2有機溶媒を除去した後、残りのガス(塩化水素、ホスゲンなど)は第1スクラバー(S-1)に移送される。第1スクラバー(S-2)において、塩化水素ガスを水に溶解させ塩酸水溶液を得て第2タンク(T-2)に保存し、残りのガスは第2スクラバー(S-2)に移送される。第2スクラバー(S-2)において、第3タンク(T-3)に保存されていた水酸化ナトリウム水溶液を用いてホスゲン(COCl)ガスを中和させ除去し得る。
【0139】
反応器(R-1)で得られた反応溶液は、第1蒸留器(D-1)および第2蒸留器(D-2)に順次移送され、1次蒸留および2次蒸留を経ながら、前記反応溶液からジイソシアネート組成物および第2有機溶媒を分離する。
【0140】
前記反応溶液から分離された第2有機溶媒は、溶媒回収器(V-1)に移送され保管され得、その後前記ジアミン塩酸塩組成物とトリホスゲンとの反応に再利用され得る。
【0141】
また、前記反応溶液から分離されたジイソシアネート組成物は、ろ過および乾燥等をさらに経て、最終製品として提供され得る。
【0142】
[光学レンズの製造方法]
前記実現例で調製されたジイソシアネート組成物を他の成分と組み合わせることにより、光学材料用組成物を調製し得る。すなわち、前記光学材料用組成物は、前記実現例により調製されたジイソシアネート組成物、およびチオールまたはエピスルフィドを含む。光学材料用組成物を用いて光学材料、具体的には、光学レンズを製造し得る。例えば、前記光学材料用組成物を混合してモールドで加熱硬化することにより、光学レンズを製造し得る。以下で説明する光学レンズの製造方法や特性は、光学レンズの他にも、前記実現例によるジイソシアネート組成物を利用して実現し得る様々な光学材料の製造方法や特性として理解するべきである。
【0143】
一実現例による光学レンズの製造方法は、ジイソシアネート組成物をチオールまたはエピスルフィドと混合して、モールドで重合および硬化させる段階を含み、前記ジイソシアネート組成物は5.0~5.8のpHを有する。前記実現例によると、光学レンズの製造に用いられるジイソシアネート組成物のpHを特定範囲に調整して、最終的な光学レンズの脈理や白濁を抑制し、光学的特性を向上させ得る。
【0144】
他の実現例による光学レンズの製造方法は、ジアミン塩酸塩組成物からホスゲン化反応によってジイソシアネート組成物を得る段階と、前記ジイソシアネート組成物をチオールまたはエピスルフィドと混合して、モールドで重合および硬化させる段階とを含み、前記ジアミン塩酸塩組成物は10重量%濃度で水に溶解する際に3.0~4.0のpHを有する。
【0145】
前記チオールは、2個以上のSH基を含むポリチオールであり得、脂肪族、脂環式、または芳香族の骨格を有し得る。前記エピスルフィドは、2個以上のチオエポキシ基を有し得、脂肪族、脂環式、または芳香族の骨格を有し得る。
【0146】
前記チオールの具体的な例は、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2-[2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ]エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニール)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニール)ジスルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,2-ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピルチオ)エタン、ビス[2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル]スルフィド、ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル)ジスルフィド、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2,2-ビス-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-ブチルエステル、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-(2-{2-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]エチルチオ}エチルチオ)プロパン-1-チオール、(4R,11S)-4,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン-1,14-ジチオール、(S)-3-[(R-2,3-ジメルカプトプロピル)チオ]プロパン-1,2-ジチオール、(4R,14R)-4,14-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタン-1,17-ジチオール、(S)-3-({R-3-メルカプト-2-[(2-メルカプトエチル)チオ]プロピル}チオ)-2-[(2-メルカプトエチル)チオ]プロパン-1-チオール、3,3'-ジチオビス(プロパン-1,2-ジチオール)、(7R,11S)-7,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(7R,12S)-7,12-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,10,13,16-ヘキサチアオクタデカン-1,18-ジチオール、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ビスペンタエリトリトール-エーテル-ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトジメチルチオ)エチル)-1,3-ジチアン、2,5-ビスメルカプトメチル-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール等を含む。
【0147】
好ましくは、前記チオールは、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,2-ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピルチオ)-エタン、ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル)スルフィド、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2,2'-チオジエタンチオール、4,14-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘクタデカン-1,17-ジチオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-[4-(1-{4-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロポキシ]-フェニル}-1-メチルエチル)-フェノキシ]-プロパン-1-チオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート、グリセロールトリメルカプトプロピオネート、ジペンタエリトリトールヘキサメルカプトプロピオネート、2,5-ビスメルカプトメチル-1,4-ジチアン等であり得る。前記チオールは、前記例示化合物のうちのいずれか1つまたは2つ以上であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0148】
また、前記エピスルフィドの具体的な例は、ビス(β-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-(β-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-3-(β-エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-5-(β-エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオ]エタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-{[2-(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオエチル]チオ}エタン、テトラキス(β-エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1-トリス(β-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2-(β-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1,5ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2,2-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-4-チアヘキサン、1,5,6-トリス(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアヘキサン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,5-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2,4,5-トリス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,9-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5-(β-エピチオプロピルチオメチル)-5-[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオメチル]-3,7-ジチアノナン、1,10-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5,6-ビス[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオ]-3,6,9-トリチアデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,8-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5,7-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5,7-[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオメチル]-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,7-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル]メタン、2,2-ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル]スルフィド、2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオエチルチオメチル)-1,4-ジチアン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2-ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルホン、4,4'-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ビフェニル等を含む。
【0149】
前記エピスルフィドは、前記例示化合物のうちのいずれか1つまたは2つ以上であり得るが、これらに限定されるものではない。また、前記エピスルフィドは、そのチオエポキシ基の水素のうちの少なくとも1つがメチル基で置換された化合物でもあり得る。
【0150】
前記光学材料用組成物は、前記ジイソシアネート組成物および前記チオールまたはエピスルフィドを混合状態で含むか、または分離された状態で含み得る。すなわち、前記組成物内で、これらは互いに接触して配合された状態であるか、または互いに接触しないように分離された状態であり得る。
【0151】
前記光学材料用組成物は、前記チオールまたはエピスルフィドを前記ジイソシアネート組成物と2:8~8:2、3:7~7:3、または4:6~6:4の重量比で含み得る。
【0152】
前記光学材料用組成物および光学レンズの製造時に、目的に応じて触媒、鎖延長剤、架橋剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、離型剤などをさらに添加し得る。
【0153】
これらのチオールまたはエピスルフィドをジイソシアネート組成物およびその他の添加剤と混合し脱泡した後、モールドに注入して低温から高温に徐々に昇温しながら徐々に重合させ、これを加熱することにより樹脂を硬化して、光学材料を製造し得る。
【0154】
前記重合反応の温度は、例えば20℃~150℃であり、具体的に25℃~120℃であり得る。また、反応速度を調節するために、ポリチオウレタンの調製に通常用いられる反応触媒が添加され得、その具体的な種類は、前記で例示した通りである。
【0155】
また、前記製造された光学レンズには、必要に応じて反射防止、高硬度付与、耐摩耗性の向上、耐薬品性の向上、曇り防止性付与、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理などの物理的または化学的処理がさらに施され得る。
【0156】
前記方法により製造された光学レンズは、透明性、屈折率、黄色度などの光学性特性に優れる。例えば、前記光学レンズは1.55以上の屈折率を有し得、具体的に1.55~1.77の屈折率を有し得る。または前記光学レンズは1.6以上の屈折率を有し得、具体的に1.6~1.7の屈折率を有し得る。
【0157】
また、前記光学レンズは、アッベ数が30~50であり得、具体的に30~45または31~40であり得る。また、前記光学レンズは、光透過率が80%以上、85%以上、または87%以上であり得、これは全光線透過率であり得る。また、前記光学材料は、黄色度(Y.I.)が30以下、25以下、または20以下であり得、例えば、1~25、10~20であり得る。具体的に、前記光学レンズは、85%以上の透過率および22以下の黄色度を有し得る。
【0158】
(実施例)
以下において、より具体的な実施例を例示するが、これらに限定されない。
【0159】
(実施例1-1:ジイソシアネート組成物の調製)
<段階1>
反応器に35重量%濃度の塩酸水溶液1009.4g(9.46mol)を投入して撹拌しながら、反応器内部の温度を15℃に冷却した。反応器の温度を60℃に維持しながらm-XDA600.0g(4.4mol)を1時間かけて投入した。この際、塩酸水溶液の投入量はm-XDA1mol当りのHClが2.15molに相当する量であった。投入完了後、反応器内部の温度を10℃に冷却して1時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(THF)1320.0gを追加投入し、反応器内部の温度を-5℃に冷却して1時間さらに撹拌した。反応完了後、フィルターを用いる真空ろ過により、m-XDA・2HClを含有するジアミン塩酸塩組成物を分離し、ろ過されたテトラヒドロフランは再利用するために回収した。残留溶媒および水分除去のために、分離されたジアミン塩酸塩組成物内の残留溶媒および水分を90℃にて除去し、0.1Torrで真空乾燥を行った。
【0160】
<段階2>
前の段階で得たジアミン塩酸塩組成物800gおよびオルトジクロロベンゼン(ODCB)3550gを反応器Aに投入して撹拌しながら、約125℃にて加熱した。反応器Bに、トリホスゲン(BTMC)950gおよびODCB800gを入れて約60℃にて撹拌溶解し、析出されないように125℃の温度を維持しながら、反応器Aに24時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間の撹拌を行い、反応が終了すると、125℃にて窒素ガスを溶媒内部に吹き込んでバブリングしながら脱気した。以降、10℃まで冷却した後、セライトを用いて残存固形分をろ過し、有機溶媒(ODCB)の除去および蒸留工程を行い、m-XDIを含有するジイソシアネート組成物を得た。この際、有機溶媒の除去は、0.5torr以下の圧力および60℃の温度にて8時間行っており、また、蒸留は、0.5torr以下の圧力および120℃の温度にて10時間行った。
【0161】
(実施例1-2~1-5および比較例1-1~1-4)
実施例1-1における段階1の手順を繰り返すが、塩酸水溶液の投入量を下記表1のように変更してジアミン塩酸塩組成物を得た後、前記ジアミン塩酸塩組成物から実施例1-1における段階2の手順に従ってジイソシアネート組成物を得た。
【0162】
前記実施例および比較例の段階1および2でそれぞれ得られたジアミン塩酸塩組成物およびジイソシアネート組成物のpHを下記表1に示した。ジアミン塩酸塩組成物のpHは、固相のサンプルを水に10重量%の濃度で溶解してからpHを測定した。ジイソシアネート組成物のpHは、測定器(LAQUA F-72G、HORIBA社)および非水溶性電極(6377-10D)を利用し、緩衝溶液により予めpH4.0、7.0、および10.0を較正(calibration)した。サンプルを100mLガラス瓶に50mL以上満たして電極を浸し、1時間安定化した後、3回測定して平均値を得た。
【0163】
【表1】
【0164】
前記表から分かるように、塩酸水溶液の投入量を調節することにより、ジアミン塩酸塩組成物のpHを変化させることができた。
【0165】
<光学レンズの製造>
4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール49.3重量部、前記実施例または比較例で調製したm-XDI組成物50.7重量部、ジブチルスズクロリド0.01重量部、リン酸エステル離型剤(ZELEC(登録商標)UN、Stepan社)0.1重量部を均一に混合して、600Paで1時間脱泡した後、3μmテフロンフィルターにろ過して、ガラスモールドとテープにより製作されたモールドに注入した。前記モールドを25℃にて8時間維持した後、130℃まで8時間かけて一定の速度でゆっくり昇温し、130℃にて2時間重合した。成形物をモールドから離型した後、120℃にて2時間さらに硬化して、光学レンズを得た。
【0166】
<評価方法>
前記実施例および比較例に対する評価方法は以下の通りである。
【0167】
(1)蒸留収率
蒸留収率は、トリホスゲンとの反応に投入されたジアミン塩酸塩組成物の量から算出された理論的ジイソシアネート組成物の生成量に対する、蒸留後のジイソシアネート組成物の収得量を測定して算出した。
【0168】
(2)ジイソシアネート含有量
ジイソシアネート組成物内のジイソシアネート含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した(機器:Agilent社の6890/7890、キャリアガス:He、注入温度250℃、オーブン温度40℃~320℃、カラム:HP-1、Wax、30m、検出器:FID、300℃)
【0169】
(3)脈理
直径75mm、-2.00D、-8.00Dのレンズを製造し、マーキュリーランプ光源を製造済みのレンズに透過させ、透過光を白色板に投影して明暗差の有無により脈理発生の有無を判断した。
【0170】
(4)白濁(ヘイズ)
光学レンズを暗所にてプロジェクターに照射して、光学レンズの曇りや不透明物質の有無を目視で確認した。
【0171】
(5)透過率および黄色度(Y.I.)
半径16mmおよび高さ45mmの円柱状に光学レンズを作製し、高さ方向に光を透過して、黄色度および透過率を測定した。黄色度は、測定結果のxとyの値に基づいて、下記数学式により算出した。
[数1]
Y.I=(234x+106y)/y
【0172】
【表2】
【0173】
前記表1および2から分かるように、実施例1-1~1-5のように、好ましいpH範囲を有するジイソシアネート組成物を用いて製造された光学レンズは、透過率が高く、脈理、白濁および黄変が発生しなかった。一方、比較例1-1~1-4のように、好ましいpH範囲から外れたジイソシアネート組成物を用いて製造された光学レンズには、脈理や白濁または黄変が発生した。
(実施例2-1:ジイソシアネート組成物の調製)
<段階1>
反応器に35重量%濃度の塩酸水溶液1009.4g(9.46mol)を投入して撹拌しながら、反応器内部の温度を15℃に冷却した。反応器の温度を60℃に維持しながらm-XDA600.0g(4.4mol)を1時間かけて投入した。この際、塩酸水溶液の投入量は、m-XDA1mol当りのHClが2.15molに相当する量であった。投入完了後、反応器内部の温度を10℃に冷却して1時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(THF)1320.0gを追加投入し、反応器内部の温度を-5℃に冷却して1時間さらに撹拌した。反応完了後、フィルターを用いる真空ろ過により、m-XDA・2HClを含有するジアミン塩酸塩組成物を分離し、ろ過されたテトラヒドロフランは再利用するために回収した。残留溶媒および水分除去のために、分離されたジアミン塩酸塩組成物内の残留溶媒および水分を90℃にて除去し、0.1Torrで真空乾燥を行った。
【0174】
<段階2>
前の段階で得たジアミン塩酸塩組成物800gおよびオルトジクロロベンゼン(ODCB)3550gを反応器Aに投入して撹拌しながら、約125℃にて加熱した。反応器Bに、トリホスゲン(BTMC)950gおよびODCB800gを入れて約60℃にて撹拌溶解し、析出されないように125℃の温度を維持しながら、反応器Aに24時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間の撹拌を行い、反応が終了すると、125℃にて窒素ガスを溶媒内部に吹き込んでバブリングしながら脱気した。以降、10℃まで冷却した後、セライトを用いて残存固形分をろ過し、有機溶媒(ODCB)の除去および蒸留工程を行い、m-XDIを含有するジイソシアネート組成物を得た。この際、有機溶媒の除去は、0.5torr以下の圧力および60℃の温度にて8時間行っており、また、蒸留は、0.1torr以下の圧力および120℃の温度にて10時間行った。
【0175】
(実施例2-2~2-5および比較例2-1~2-3)
実施例2-1における段階1の手順を繰り返すが、塩酸水溶液の投入量を下記表3のように変更してジアミン塩酸塩組成物を得た後、前記ジアミン塩酸塩組成物から実施例2-1における段階2の手順によりジイソシアネート組成物を得た。
【0176】
前記実施例および比較例における段階1で得たそれぞれのジアミン塩酸塩組成物を、水に10重量%濃度で溶解する際のpHを下記表3に示した。
【0177】
【表3】
【0178】
前記表から分かるように、塩酸水溶液の投入量を調節することにより、ジアミン塩酸塩組成物のpHを変化させることができた。
【0179】
<光学レンズの製造>
4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール49.3重量部、前記実施例または比較例で調製したm-XDI組成物50.7重量部、ジブチルスズクロリド0.01重量部、リン酸エステル離型剤(ZELEC UN、Stepan社)0.1重量部を均一に混合して、600Paで1時間脱泡した後、3μmテフロンフィルターにろ過して、ガラスモールドとテープにより製作されたモールドに注入した。前記モールドを25℃にて8時間維持した後、130℃まで8時間かけて一定の速度でゆっくり昇温し、130℃にて2時間重合した。成形物をモールドから離型した後、120℃にて2時間さらに硬化して、光学レンズを得た。
【0180】
<評価方法>
前記実施例および比較例に対する評価方法は以下の通りである。
【0181】
(1)蒸留収率
蒸留収率は、トリホスゲンとの反応に投入されたジアミン塩酸塩組成物の量から算出された理論的ジイソシアネート組成物の生成量に対する、蒸留後のジイソシアネート組成物の収得量を測定して算出した。
【0182】
(2)ジイソシアネート含有量
ジイソシアネート組成物内のジイソシアネート含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した(機器:Agilent社の6890/7890、キャリアガス:He、注入温度250℃、オーブン温度40℃~320℃、カラム:HP-1、Wax、30m、検出器:FID、300℃)
【0183】
(3)脈理
直径75mm、-2.00D、-8.00Dのレンズを製造し、マーキュリーランプ光源を製造済みのレンズに透過させ、透過光を白色板に投影して明暗差の有無により脈理発生の有無を判断した。
【0184】
(4)白濁(ヘイズ)
光学レンズを暗所にてプロジェクターに照射して、光学レンズの曇りや不透明物質の有無を目視で確認した。
【0185】
(5)透過率および黄色度(Y.I.)
半径16mmおよび高さ45mmの円柱状に光学レンズを作製し、高さ方向に光を透過して、黄色度および透過率を測定した。黄色度は、測定結果のxとyの値に基づいて、下記数学式により算出した。
[数1]
Y.I=(234x+106y)/y
【0186】
(6)pH測定法
pH測定は、25℃条件で実施した。pHは、固相のサンプルの場合は水に10重量%の濃度で溶解してからpHを測定し、液相の場合は原液状態で別途処理することなく測定した。pHは、測定器(LAQUA F-72G、HORIBA社)および非水溶性電極(6377-10D)を利用し、緩衝溶液により予めpH4.0、7.0、および10.0を較正(calibration)した。サンプルを100mLガラス瓶に50mL以上満たして電極を浸し、1時間安定化した後、3回測定して平均値を得た。
【0187】
【表4】
【0188】
前記表3および4から分かるように、実施例2-1~2-5のように、好ましいpH範囲を有するジアミン塩酸塩組成物を用いて調製されたジイソシアネート組成物は、収率および純度に優れており、最終的な光学レンズの透過率が高く、脈理、白濁および黄変が発生しなかった。一方、比較例2-1~2-3のように、好ましいpH範囲から外れたジアミン塩酸塩組成物を用いて調製されたジイソシアネート組成物は、収率や純度が相対的に低調であり、最終的な光学レンズに脈理や白濁または黄変が発生した。
【符号の説明】
【0189】
T-1:第1タンク
T-2:第2タンク
T-3:第3タンク、
R-1:反応器
D-1:第1蒸留器
D-2:第2蒸留器
C-1:第1コンデンサ
C-2:第2コンデンサ
C-3:第3コンデンサ
S-1:第1スクラバー
S-2:第2スクラバー
G-1:透視窓
V-1:溶媒回収器
図1
図2