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  • 特許-毛材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】毛材
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20230705BHJP
   A46D 1/00 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
D01F1/10
A46D1/00 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019003763
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020111849
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】595027549
【氏名又は名称】アラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 利一
(72)【発明者】
【氏名】吉富 進吾
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225567(WO,A1)
【文献】特表2016-505084(JP,A)
【文献】特開2017-117937(JP,A)
【文献】特開平09-276046(JP,A)
【文献】特開2009-219361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00- 6/96
C08K 3/00-13/08
A46D 1/00-99/00
A47J 42/00-44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含む高分子材料と、高分子材料に分散して混入されるタングステン含有粉とを含み、前記タングステン含有粉の粒径分布の広がりを示す指標である[(d90-d10)/d50]が、2.0以下であることを特徴とする毛材。
【請求項2】
前記タングステン含有粉の含有量が、1~40質量%であることを特徴とする請求項1記載の毛材。
【請求項3】
前記タングステン含有粉の粒径が、0.4~10μmであることを特徴とする請求項1または2記載の毛材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造や加工などを行なう食品工場において、異物が食品に混入することは、衛生上の問題から、回避すべき重要な課題である。したがって、食品工場においては、まず、食品に異物が混入するのを回避することが求められるが、たとえ食品に異物が混入したとしても、食品の出荷前に異物を検出することができれば、異物が混入した食品の流通を回避することができる。
【0003】
食品工場においては、たとえば清掃用器具として、ブラシやタワシなどが用いられる。ブラシやタワシを構成する毛材は、非常に細いために、毛材を保持している部分から抜けたり、破断したりして、食品に混入してしまう可能性がある。そのような観点から、毛材が食品に混入したとしても容易に検出することができるように、たとえば特許文献1には、磁性体を含む樹脂材料により構成された毛材が開示されている。特許文献1の毛材は、その一部または全部が食品に混入したとしても、磁性体に金属探知機が反応することで、金属探知機により検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3165874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属探知機による異物の検知は、低コストで実現可能であるという理由により、これまで広く採用されてきた。しかし、近年では、食品への異物混入をより確実に検知するために、より精度の高いX線検査装置を採用する事例が多くなってきている。
【0006】
ところが、特許文献1に開示されるような毛材に含まれる磁性体は、X線に対する感度が低いために、X線検査装置で検知するためには、毛材に大量に含ませる必要がある。毛材は、細長く形成されるために、磁性体を大量に含ませることにより、素材が脆くなって製造が困難になるだけでなく、使用中も破断しやすくなってしまう。さらに、磁性体は、たとえ少ない量であっても、その磁性により凝集しやすいために、樹脂材料中で均一に分散させることが難しい。そのため、磁性体が凝集して2次粒子を形成した部分において、製造中、使用中を問わず、毛材が破断してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたもので、X線検査装置で容易に検知することが可能な毛材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の毛材は、高分子材料と、高分子材料に分散して混入されるタングステン含有粉とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記タングステン含有粉の含有量が、1~40質量%であることが好ましい。
【0010】
また、前記タングステン含有粉の粒径が、0.4~10μmであることが好ましい。
【0011】
また、前記タングステン含有粉の粒径分布の広がりを示す指標である[(d90-d10)/d50]が、2.0以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、X線検査装置で容易に検知することが可能な毛材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る毛材を備えるブラシの斜視図と、毛材の拡大図であり、(b)は、(a)のA-A線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る毛材を説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例であり、本発明の毛材は以下の例に限定されることはない。
【0015】
本実施形態の毛材1は、図1(a)に示されるように、可撓性を有する細長い部材である。毛材1は、たとえば、図示されるように、ブラシBの毛材として用いることができる。ブラシBは、複数の毛材1と、複数の毛材1を保持する毛材保持部材Hとを備えている。ブラシBは、たとえば、清掃用品として、清掃対象物の表面の汚れを落とす用途などに用いることができる。ただし、本発明の毛材は、本実施形態に限定されることはなく、タワシ、刷毛、ホウキなどの毛材としてなど、可撓性を有する細長い部材を適用可能な他の用途にも用いることができる。本発明の毛材は、特に、食品などに混入したような場合にX線検査装置により検知する必要のある、食品の製造や加工などを行なう食品工場などにおいて使用する必要のある用途に好適に用いられる。
【0016】
毛材1は、図1(b)に示されるように、高分子材料11と、高分子材料11に分散して混入されるタングステン含有粉12とを含む。毛材1は、X線に対する感度の高いタングステンを含むタングステン含有粉12を含むことにより、従来の磁性体を含む毛材と比べて、X線検査装置で容易に検知することができる。したがって、毛材1は、食品の製造や加工などを行なう食品工場において、毛材1を保持している部分(毛材保持部材H)から抜け落ちたり、部分的に破損して落下したりしても、X線検査装置で容易に検知することができるので、食品への混入を抑制することができる。さらに、従来の毛材の磁性体と比べて、タングステン含有粉12の含有量が少なくてもX線検査装置で検知することができるので、タングステン含有粉12の含有量を少なく抑えることができ、毛材1の破断強度を高いレベルで維持することができ、耐摩耗性など本来の高分子材料が有する物性の低下を抑制できる。
【0017】
毛材1は、可撓性を有する細長い部材として形成されていればよく、その形状や長さ、太さは、特に限定されることはなく、その用途に応じて適宜設定することができる。たとえば、毛材1は、図1に示されるように、断面が略円形の直線状に形成することができるが、断面が略矩形であってもよいし、長手方向で湾曲していてもよい。また、毛材1は、たとえば、10~300mmの長さで、0.1~5mmの直径とすることができる。
【0018】
毛材1に含まれる高分子材料11は、毛材1に可撓性を付与することができれば、特に限定されることはない。高分子材料11は、たとえば、合成樹脂またはゴムを含み、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、共重合ナイロンなどのポリアミド系樹脂、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴム、オレフィン系エラストマーなどのプラスチックエラストマーなどを含む。高分子材料11は、これらの成分が1種だけ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0019】
毛材1に含まれるタングステン含有粉12は、タングステンを含む粉(粒子)であり、たとえば、金属タングステン粉、酸化タングステン粉、炭化タングステン粉、窒化タングステン粉、またはそれらの混合粉などであり、その中でも、金属タングステン粉または酸化タングステン粉が好適に用いられる。タングステン含有粉12は、毛材1に含ませることができればよく、その大きさ、形状、含有量などは特に限定されることはない。
【0020】
タングステン含有粉12の粒径は、特に限定されることはなく、たとえば0.1~50μmとすることができるが、高分子材料11内でのタングステン含有粉12の分散性や、高分子材料11およびタングステン含有粉12を含む毛材1の破断強度の観点から、0.4~10μmが好ましく、0.6~4μmがさらに好ましく、1~3μmがよりさらに好ましい。
【0021】
タングステン含有粉12の粒径分布は、特に限定されることはないが、高分子材料11内でのタングステン含有粉12の分散性を高めるために、レーザー回折法による粒径分布測定によって求められる粒径分布の広がりを示す指標である[(d90-d10)/d50]が、2.0以下であることが好ましい。毛材1は、細長く成形する必要があるために、原料となるタングステン含有粉12を含む高分子材料11には高い加工性が要求される。タングステン含有粉12の粒径分布を上記範囲とすることにより、高分子材料11中でのタングステン含有粉12の分散性を高めることができ、タングステン含有粉12を含む高分子材料11の加工性を向上させることができる。そのような観点から、タングステン含有粉12の[(d90-d10)/d50]が、1.6以下であることがさらに好ましく、1.2以下であることがよりさらに好ましい。
【0022】
タングステン含有粉12の形状は、特に限定されることはないが、高分子材料11内でのタングステン含有粉12の凝集を抑えて、高分子材料11内でのタングステン含有粉12の分散性を高めるために、略球形であることが好ましい。タングステン含有粉12の形状を略球形とすることで、毛材1の製造時に、高分子材料11中でタングステン含有粉12同士が接触しても互いに接着することが抑制され、たとえ接着しても分離しやすいので、タングステン含有粉12の凝集が抑制され、タングステン含有粉12の凝集部分における毛材1の破断を抑制できる。
【0023】
毛材1に含まれるタングステン含有粉12の含有量は、特に限定されることはなく、X線検査装置によって検知可能な範囲で適宜設定が可能である。たとえば、毛材1に含まれるタングステン含有粉12の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、たとえば、毛材1の破断強度を高く保つという観点から、毛材1に含まれるタングステン含有粉12の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
毛材1は、高分子材料にタングステン含有粉12を混入し、その混合物を紡糸し、その後必要に応じて延伸することで形成することができる。たとえば従来技術のような磁性体を含む毛材であれば、X線検査装置により検知するために磁性体を大量に含ませる必要があるが、そうすると、紡糸工程および延伸工程において、磁性体を含む高分子材料が破断してしまう可能性が高くなる。しかし、本実施形態のように、タングステン含有粉12を含むことで、従来の磁性体と比べて、含有量を少なくすることができるので、製造工程における破断が抑制される。
【符号の説明】
【0025】
1 毛材
11 高分子材料
12 タングステン含有粉
B ブラシ
H 毛材保持部材
図1