(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
A47G9/10 M
(21)【出願番号】P 2019077377
(22)【出願日】2019-04-15
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】東海林 由佳
(72)【発明者】
【氏名】安藤 翠
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3059614(JP,U)
【文献】特開2016-106908(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0015230(KR,A)
【文献】特開2003-299560(JP,A)
【文献】特開2009-082638(JP,A)
【文献】実開昭56-018771(JP,U)
【文献】特開2007-000397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0073056(US,A1)
【文献】特開平11-206538(JP,A)
【文献】特開2008-018154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、及び第1方向に交差する第2方向、の双方に延びる長方形状の表地を含む直方体状の側地を備えた枕であって、
前記側地は、前記第1方向に沿って延びる第1長辺及び第2長辺と、前記第2方向に沿って延びる第1短辺及び第2短辺を有し、
前記第1短辺及び前記第2短辺のそれぞれから前記第1長辺まで延びる2つの仕切部によって仕切られ、前記2つの仕切部よりも前記側地の隅部側に位置する第1部分と、
前記第1部分の前記側地の
更に隅部側に位置する第2部分と、
を備え、
前記第2部分は、前記第1部分に対する前記第2部分の高さを高くする高さ調整部材を収容する収容空間を有する、
枕。
【請求項2】
前記収容空間は、前記表地の裏側に形成されており、
前記高さ調整部材は、前記表地の裏側に位置する前記収容空間に収容される、
請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記第2部分は、前記収容空間に前記高さ調整部材を出し入れ可能とする開口を有する、
請求項2に記載の枕。
【請求項4】
前記収容空間には、複数の前記高さ調整部材を出し入れ可能とされている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用者の頬が載せられる枕に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11-206538号公報には、個人別枕及びその製造方法が記載されている。この個人別枕は、基礎枕と、凸枕と、基礎枕及び凸枕を収納するセットアップカバーとを備える。枕の高さが低すぎる場合には、セットアップカバーの内部における基礎枕の下側に高さ微調節枕が付加される。また、使用者の頸部の高さが枕に合わない場合には、セットアップカバーの内部における凸枕の上に頸部圧迫感微調節枕が付加される。
【0003】
特開2008-18154号公報には、4つの枕部材が連結部を介して互いに連結された枕が記載されている。各枕部材は、連結部に対して着脱可能とされている。4つの枕部材は、羽毛を収納した枕部材、低反発ウレタンを収納した枕部材、そば殻を収納した枕部材、及びプラスチックパイプを収納した枕部材によって構成されている。使用者は、枕部材の枚数及び種類を選択し、選択した枕部材を連結部に取り付けることにより、枕の高さ及び硬さを調整可能とされている。
【0004】
特開2007-397号公報には、高さ調節可能な枕が記載されている。この枕は、長手方向の中央に位置する第1枕体と、第1枕体の長手方向の両側のそれぞれに位置する第2枕体とを備える。第1枕体の下部、及び第2枕体の下部、のそれぞれには複数の調節パッドが出し入れ可能となっている。第1枕体の下部、及び第2枕体の下部、のそれぞれにおける調節パッドの枚数を変更することによって枕の各部の高さを調整可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-206538号公報
【文献】特開2008-18154号公報
【文献】特開2007-397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、枕を使用する使用者の顔の形状は、人それぞれで異なっており、個人差がある。例えば、縦の長さと横の長さとの比率が1:1に近い丸顔の使用者もいれば、縦の長さが横の長さよりも長い面長の使用者もいれば、長方形の輪郭に近い顔の使用者もいれば、頬から顎にかけて引き締まった細い顔の使用者も存在する。従って、使用者の顔の形状を考慮して枕の高さを調整することが求められる。
【0007】
前述した枕では、長手方向の中央に位置する第1枕体の高さ、及び長手方向の両側のそれぞれに位置する第2枕体の高さを調整可能である。しかしながら、この枕では、使用者の顔の形状が考慮されないため、枕の高さを調整しても使用者に適した枕にならない可能性がある。枕が横向き寝をする使用者に適さない場合、横向き寝をするときに使用者の頬を圧迫する可能性がある。
【0008】
枕で横向き寝をするときに頬が圧迫されると、頬に圧力が集中して頬の血流が妨げられ、健康な肌の状態をキープできなくなる可能性がある。寝ている間に頬に圧力が集中すると、頬における血液循環が妨げられやすくなり、シミの原因を誘発する可能性がある。前述した枕では、高さ調整を行うことは可能である。しかしながら、高さ調整を行うと、長手方向の中央、及び長手方向の両側のそれぞれ、の全体の高さが変わってしまうため、使用者の顔の形状によっては、高さを調整しても横向き寝に相応しい枕を提供できない可能性がある。
【0009】
本開示は、使用者の顔の形状を加味して横向き寝に相応しい枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る枕は、第1方向、及び第1方向に交差する第2方向、の双方に延びる長方形状の表地を含む直方体状の側地を備えた枕であって、側地は、第1方向に沿って延びる第1長辺及び第2長辺と、第2方向に沿って延びる第1短辺及び第2短辺を有し、第1短辺及び第2短辺のそれぞれから第1長辺まで延びる2つの仕切部によって仕切られ、2つの仕切部よりも側地の隅部側に位置する第1部分と、第1部分の側地の更に隅部側に位置する第2部分と、を備え、第2部分は、第1部分に対する第2部分の高さを高くする高さ調整部材を収容する収容空間を有する。
【0011】
この枕では、表地が第1方向及び第2方向の双方に延びる長方形状とされると共に、表地を含む側地が直方体状とされる。枕の第1方向の両側のそれぞれには第1部分が設けられ、第1部分は横向き寝をした使用者の頬が当たる部位に相当する。また、第1部分の側地の隅部側には第2部分が設けられ、第2部分は高さ調整部材を収容する収容空間を有する。第2部分は使用者の頬から顎に向かう部分が載せられる部位であって、この第2部分の高さが高さ調整部材によって調整可能とされている。すなわち、収容空間に収容される高さ調整部材によって、頬から顎に向かう部分の高さが調整可能となっている。従って、頬から顎に向かう部分が引き締まっていて細い顔の使用者に対しては高さ調整部材によって第2部分の高さを高くし、頬から顎に向かう部分にエラが張っていて太い顔の使用者に対しては第2部分を低くして、頬から顎に向かう部分に対する枕の接触面積を増やすことができる。頬から顎に向かう部分の枕に対する接触面積を増やすことによって当該部分の圧力を緩和することができるので、使用者の顔の形状に応じた横向き寝に相応しい枕を提供することができる。
【0012】
また、収容空間は、表地の裏側に形成されており、高さ調整部材は、表地の裏側に位置する収容空間に収容されてもよい。この場合、高さ調整部材を収容する収容空間が表地の直ぐ裏に設けられるので、高さ調整部材の出し入れによってより確実に第2部分の高さを変えることができる。具体的には、収容空間が表地から遠く下方に設けられる場合には高さ調整部材を収容しても第2部分の高さが変わりにくいことがあるのに対し、収容空間が表地の直ぐ裏にある場合には高さ調整部材の収容によって第2部分の高さをより直接的に変更することができる。
【0013】
また、第2部分は、収容空間に高さ調整部材を出し入れ可能とする開口を有してもよい。この場合、開口を介して収容空間に高さ調整部材を容易に出し入れすることができるので、枕の頬から顎に向かう部分が当たる第2部分の高さを容易に調整することができる。また、高さ調整部材を容易に出し入れできることにより、高さ調整部材の洗濯等を容易に行うことができるので、衛生的な高さ調整部材とすることができる。
【0014】
また、収容空間には、複数の高さ調整部材を出し入れ可能とされていてもよい。この場合、収容空間を有する第2部分の高さを3段階以上で変更することができる。従って、頬から顎に向かう部分の形状によって使用者を3タイプ以上に分け、第2部分の高さを各タイプの顔の形状に応じた高さとすることができる。その結果、使用者の顔の形状を3タイプ以上に分類して、各タイプに応じて第2部分の高さをよりきめ細やかに変更することができる。よって、個人差に応じて第2部分の高さがよりきめ細やかに調整された枕を提供することができるので、横向き寝に一層相応しい枕を使用者に提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用者の顔の形状を加味して横向き寝に相応しい枕を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る例示的な枕を示す斜視図である。
【
図2】
図1の枕の表地を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図1の枕の表地を
図1とは反対側から見た斜視図である。
【
図7】
図1の枕の第1部分及び第2部分の開口を示す斜視図である。
【
図8】
図1の枕の第2部分の高さを調整する高さ調整部材の例を示す平面図である。
【
図9】(a)、(b)及び(c)のそれぞれは、使用者の顔の形状のタイプの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る枕の実施形態について説明する。本発明は、以降の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る枕1は側地10を備える。側地10の内部空間S(
図3及び
図4参照)には内容物20が収容され、枕1は内部空間Sを仕切る複数の仕切部30を備える。側地10は、表地11、及び表地11の反対側を向く裏地12を含む。側地10は全体的に直方体状を成しており、表地11及び裏地12のそれぞれは長方形状を成している。側地10は高い柔軟性を有している。枕1は、第1方向D1に延在する一対の長辺2と、第1方向D1に交差する第2方向D2に延在する一対の短辺3とを有する。第1方向D1は枕1の長手方向であり、第2方向D2は枕1の幅方向である。例えば、第1方向D1及び第2方向D2は互いに直交している。
【0019】
例えば、側地10の第1方向D1の長さは、40cm以上且つ90cm以下であり、50cm以上且つ80cm以下であってもよいし、60cm以上且つ70cm以下であってもよい。側地10の第2方向D2の長さは、20cm以上且つ70cm以下であり、30cm以上且つ60cm以下であってもよいし、40cm以上且つ50cm以下であってもよい。但し、これらの長さは適宜変更可能である。
【0020】
枕1は、例えば、汚れ防止のための枕カバーに収容された状態で使用される枕本体である。一例として、枕1は、マットレス又は敷き布団等の敷き寝具の上に載せられて使用される。長辺2は、第2方向D2の一方側に位置する第1長辺2bと、第2方向D2の他方側に位置する第2長辺2cとを含む。第2長辺2cは、例えば、使用者M(
図9参照)の首が載せられる部位である。短辺3は、第1方向D1の一方側(
図1及び
図2では左側)に位置する第1短辺3bと、第1方向D1の他方側に位置する第2短辺3cとを含む。本明細書において、「使用者」とは、枕1を使用する可能性がある者を示しており、例えば、枕1を購入する前に枕1を試用する者である。
【0021】
例えば、表地11には、キルティングが施されていてもよい。この場合、側地10の保温性を高めると共にデザイン性を高めることが可能となる。表地11の材料は、例えば、綿及びシルクを含んでいる。一例として、表地11の綿の割合は70%であり、表地11のシルクの割合は30%である。表地11は、例えば、表地11の中心O1を通り第2方向D2に延びる中心軸線L1に対して対称な形状とされている。
【0022】
仕切部30は、第1短辺3b及び第2短辺3cのそれぞれから第1長辺2bまで延びる第1仕切部31と、一対の第1仕切部31の間において第1方向D1に延びる第2仕切部32と、第2仕切部32の第1長辺2b寄りの位置において第1方向D1に延びる第3仕切部33と、各第1仕切部31よりも側地10の各隅部10b側に位置する第4仕切部34とを含む。
【0023】
枕1は、各第1仕切部31よりも各隅部10b側に第1部分P1を有し、各第1部分P1及び第4仕切部34よりも更に隅部10b側に第2部分P2を有する。第1部分P1及び第2部分P2は、枕1の第1方向D1の両端側のそれぞれに設けられる。例えば、第1部分P1は使用者Mの頬M1(
図9参照)が載せられる部分であり、第2部分P2は使用者Mの頬M1から顎M2に向かう部分が載せられる部位である。更に、各第1仕切部31及び第2仕切部32よりも第2長辺2c側に第3部分P3を有し、各第1仕切部31及び第2仕切部32よりも第1長辺2b側に第4部分P4を有する。例えば、第3部分P3は使用者Mの首が載せられる部位であり、第4部分P4は使用者Mの頭部が載せられる部位である。
【0024】
一例として、外力が付与されていない状態において、第1部分P1及び第2部分P2のそれぞれは、第3部分P3及び第4部分P4のそれぞれよりも盛り上がっている(膨らんでいる)。例えば、外力が付与されていない状態において、第3部分P3は第4部分P4よりも盛り上がっている(膨らんでいる)。
【0025】
このように、一対の第1部分P1、及び一対の第2部分P2が第3部分P3及び第4部分P4のそれぞれよりも盛り上がっていることにより、枕1に対する頬M1から顎M2までの接触面積を増大させて頬M1をやさしく包み込むと共に、頬M1から顎M2までの部分にかかる圧力を緩和することが可能である。また、使用者Mの首が載せられる第3部分P3が頭部が載せられる第4部分P4よりも盛り上がっていることにより、神経等の複雑な組織が通る首をより確実に保護することができる。
【0026】
図3は
図2のIII-III線断面図であり、
図4は
図2のIV-IV線断面図である。
図2~
図4に示されるように、第1仕切部31、第2仕切部32及び第3仕切部33のそれぞれは、例えば、側地10の内部空間Sにおいて表地11から裏地12まで延びている。この場合、第1仕切部31、第2仕切部32及び第3仕切部33のそれぞれは、表地11及び裏地12のそれぞれに縫い込まれている。
【0027】
従って、表地11及び裏地12のそれぞれには、第1仕切部31、第2仕切部32及び第3仕切部33のそれぞれの縫い目が形成されている。第1仕切部31、第2仕切部32及び第3仕切部33のそれぞれは、例えば、側地10の厚さ方向である方向D3に延びる中仕切り生地であり、内部空間Sを複数の領域に仕切るマチ部である。一例として、第1仕切部31、第2仕切部32及び第3仕切部33の材料は、ポリエステル及び綿の少なくともいずれかを含む。
【0028】
一例として、第1仕切部31は、第1短辺3b及び第2短辺3cのそれぞれから第1方向D1に延び出すと共に徐々に第2長辺2cに向かって湾曲する曲線状とされている。第2仕切部32は、各第1仕切部31の途中部分から側地10の第1方向D1の中央側に延び出すと共に第1方向D1の中央に向かうに従って第2長辺2c寄りに湾曲する曲線状とされている。
【0029】
一例として、第1仕切部31及び第2仕切部32は、共に曲線状とされている。しかしながら、第1仕切部31及び第2仕切部32のそれぞれの形状は適宜変更可能である。第3仕切部33は、例えば、中心O1よりも第1長辺2b寄りの位置において第1方向D1に沿って延在している。一例として、第3仕切部33は、第1方向D1の中央に向かうに従って第2長辺2c側に湾曲している曲線状とされている。
【0030】
枕1(側地10)の内部空間Sは、例えば、一対の第1仕切部31のそれぞれの隅部10b側に位置する一対の第1内部空間S1と、一対の第1仕切部31の間に位置する第2内部空間S2と、一対の第1仕切部31及び第2仕切部32の第1長辺2b側に位置する第3内部空間S3とを含む。各第1内部空間S1と第2内部空間S2とは第1仕切部31によって仕切られており、第2内部空間S2と第3内部空間S3とは第2仕切部32によって仕切られている。また、第3内部空間S3の一部が第3仕切部33によって仕切られている。
【0031】
側地10の内部空間Sには、内容物20が収容されている。内容物20は、例えば、各第1内部空間S1に収容される第1内容物21、第2内部空間S2に収容される第2内容物22、及び第3内部空間S3に収容される第3内容物23を含む。例えば、第1内容物21は、第2内容物22及び第3内容物23のいずれよりも柔らかい。第1内容物21は、例えば、綿(わた)である。一例として、第1内容物21の材料はポリエステルである。しかしながら、第1内容物21は、羽毛又はウレタンであってもよく、適宜変更可能である。
【0032】
第2内容物22は、中空とされた中空粒状体であってもよい。具体例として、第2内容物22は、中空とされたパイプ材又はビーズであってもよい。一例として、第2内容物22は、筒状を成すポリエチレン製のパイプ材であってもよい。しかしながら、第2内容物22は、例えば、第1内容物21より硬い綿(わた)であってもよい。第3内容物23の材料は、例えば、第2内容物22の材料と同一である。但し、第2内容物22の材料、及び第3内容物23の材料は適宜変更可能である。
【0033】
図5は枕1を第1長辺2b側から見た斜視図であり、
図6は枕1の裏地12を示す図である。裏地12の材料は、例えば、ポリエステル及び綿の少なくともいずれかを含んでおり、一例として、ポリエステルの割合が65%且つ綿の割合が35%である。
図5及び
図6に示されるように、裏地12は、例えば、裏地12の中心O2を通り第2方向D2に延びる中心軸線L2に対して対称な形状とされている。裏地12には、例えば、シート材が着脱可能とされていてもよく、シート材が裏地12に取り付けられることによって側地10の高さが変更可能とされていてもよい。このシート材は、一例として、ボタンによって裏地12に着脱可能とされる。
【0034】
枕1の各第1部分P1の裏地12には第1内部空間S1を開閉する第1ファスナー41が設けられており、枕1の第3部分P3の裏地12には第2内部空間S2を開閉する第2ファスナー42が設けられている。各第1ファスナー41及び第2ファスナー42のそれぞれは、例えば、第1方向D1に沿って直線状に延びている。第1ファスナー41を開閉することによって第1内部空間S1に収容される第1内容物21の量が調整され、第2ファスナー42を開閉することによって第2内部空間S2に収容される第2内容物22の量が調整される。
【0035】
第1長辺2bには第3内部空間S3を開閉する第3ファスナー43が設けられている。第3ファスナー43は、例えば、側地10の第1方向D1の中央を含む領域に配置されている。第3ファスナー43を開放することにより、第3内部空間S3に収容される第3内容物23の量が調整される。以上の第1ファスナー41、第2ファスナー42及び第3ファスナー43を備えることにより、第1内部空間S1、第2内部空間S2及び第3内部空間S3のそれぞれに収容される第1内容物21、第2内容物22及び第3内容物23の量が調整可能である。
【0036】
例えば、第1ファスナー41、第2ファスナー42及び第3ファスナー43は、いずれも表地11以外の箇所に配置されていてもよい。この場合、第1ファスナー41、第2ファスナー42及び第3ファスナー43のいずれかが使用者の身体に当たることを抑制することができる。但し、側地10のファスナーの態様は、第1ファスナー41、第2ファスナー42及び第3ファスナー43に限られず適宜変更可能である。すなわち、側地10のファスナーの数、長さ及び配置態様は適宜変更可能である。
【0037】
図7は、第1部分P1及び第2部分P2を拡大した斜視図である。
図2及び
図7に示されるように、第1部分P1及び第2部分P2は、第4仕切部34を介して仕切られている。第4仕切部34は、例えば、第1短辺3b及び第2短辺3cのそれぞれから第1方向D1に延び出すと共に第2長辺2cに向かって徐々に湾曲する曲線状とされている。
【0038】
図7及び
図8に示されるように、第2部分P2は、第2部分P2の高さを高くする高さ調整部材Hを収容する収容空間Kを有する。例えば、収容空間Kは、第2部分P2の表地11の裏側に形成されており、高さ調整部材Hは表地11の裏側に位置する収容空間Kに収容される。収容空間Kへの高さ調整部材Hの収容は、使用者Mによって行われてもよいし、枕1を販売する店員によって行われてもよい。収容空間Kの下方(裏地12側)には第1内部空間S1が設けられており、第2部分P2の高さ変更は第1内部空間S1への第1内容物21の量を変更することによっても可能である。
【0039】
すなわち、第2部分P2は、第1仕切部31よりも隅部10b側であって、且つ表地11及び収容空間Kを含むポケット状の部分を示しており、収容空間Kの下方に第1部分P1と共通の第1内部空間S1が設けられている。収容空間Kには、例えば、複数枚の高さ調整部材Hを出し入れ可能とされている。例えば、第2部分P2は、収容空間Kに高さ調整部材Hを出し入れ可能とする開口K1を有し、開口K1を介して収容空間Kに高さ調整部材Hを出し入れ自在となっている。
【0040】
開口K1は、例えば、第1短辺3b及び第2短辺3cのそれぞれに設けられており、第1方向D1を向くように開放されている。一例として、開口K1にはファスナーが設けられておらず、開口K1は常時開放されている。これにより、開口K1に高さ調整部材Hを出し入れしやすくすることができ、開口K1から高さ調整部材Hを出して高さ調整部材Hを洗濯しやすくすることができるので衛生的である。
【0041】
高さ調整部材Hは、例えば、柔軟性素材によって構成されると共に第1方向D1及び第2内部空間S2の双方に延びるシート状とされている。ここで、シート状とは、物体が二次元方向に長く延在する態様を示している。高さ調整部材Hの厚さは、例えば、0.5cmm以上且つ2.0cm以下であり、一例として1.0cmである。高さ調整部材Hの形状は、第2部分P2の形状に合った形状とされていてもよい。高さ調整部材Hは、例えば、第1方向D1に沿って延びる第1辺H1、第2方向D2に沿って延びる第2辺H2、及び第1辺H1と第2辺H2との間において延在する第3辺H3を有する。一例として、高さ調整部材Hは、第3辺H3を斜辺とした略直角三角形状とされている。
【0042】
高さ調整部材Hの材料は、例えば、綿(わた)及びウレタンの少なくともいずれかを含んでいる。高さ調整部材Hの材料が綿(わた)である場合、高さ調整部材Hを容易に洗濯することができる。また、高さ調整部材Hの材料がウレタンである場合、高さ調整部材Hの形状をより安定させることができるので、収容空間Kに更に出し入れしやすい高さ調整部材Hとすることが可能である。
【0043】
次に、本実施形態に係る枕1から得られる作用効果について詳細に説明する。
図2及び
図9に示されるように、枕1では、表地11が第1方向D1及び第2方向D2の双方に延びる長方形状とされると共に、表地11を含む側地10が直方体状とされる。枕1の第1方向D1の両側のそれぞれには第1部分P1が設けられ、第1部分P1は横向き寝をした使用者Mの頬M1が当たる部位に相当する。
【0044】
また、第1部分P1の側地10の隅部10b側には第2部分P2が設けられ、第2部分P2は、第1部分P1に対する第2部分P2の高さを高くする高さ調整部材Hを収容する収容空間Kを有する。第2部分P2は使用者Mの頬M1から顎M2に向かう部分が載せられる部位であって、第2部分P2の高さは高さ調整部材Hによって調整可能とされている。すなわち、収容空間Kに収容される高さ調整部材Hによって、頬M1から顎M2に向かう部分の高さを調整可能となる。
【0045】
従って、頬M1から顎M2に向かう部分が引き締まっていて細い顔の使用者M(例えば
図9(a)の使用者M)に対しては高さ調整部材Hによって第2部分P2の高さを高くし、頬M1から顎M2に向かう部分にエラが張っていて太い顔の使用者M(例えば
図9(c)の使用者M)に対しては第2部分P2を低くして、頬M1から顎M2に向かう部分に対する枕1の接触面積を増やすことができる。頬M1から顎M2に向かう部分の枕1に対する接触面積を増やすことによって当該部分の圧力を緩和することができるので、使用者Mの顔の形状に応じた横向き寝に相応しい枕1を提供することができる。
【0046】
更に、本実施形態に係る枕1では、頬M1から顎M2に向かう部分の接触面積を増やして当該部分の圧力を緩和することにより、頬への圧力を分散し、血流を妨げにくくすることができ、皮膚の機能が保たれて皮膚に角層が形成されてバリア機能が働くと共にターンオーバーを正常に回転することが可能となる。また、頬への圧力を分散することによって新陳代謝が正常に行われると共にメラニンの排出が良好に行われ、皮膚の機能を正常化させることができる。
【0047】
本実施形態において、収容空間Kは、表地11の裏側に形成されており、高さ調整部材Hは、表地11の裏側に位置する収容空間Kに収容される。よって、高さ調整部材Hを収容する収容空間Kが表地11の直ぐ裏に設けられるので、高さ調整部材Hの出し入れによってより確実に第2部分P2の高さを変えることができる。具体的には、収容空間が表地から遠く下方に設けられる場合には高さ調整部材を収容しても第2部分の高さが変わりにくいことがあるのに対し、収容空間Kが表地11の直ぐ裏にある場合には高さ調整部材Hの収容によって第2部分P2の高さをより直接的に変更することができる。
【0048】
本実施形態において、
図7及び
図8に示されるように、第2部分P2は、収容空間Kに高さ調整部材Hを出し入れ可能とする開口K1を有する。開口K1を介して収容空間Kに高さ調整部材Hを容易に出し入れすることができるので、枕1の頬M1から顎M2に向かう部分が当たる第2部分P2の高さを容易に調整することができる。また、高さ調整部材Hを容易に出し入れできることにより、高さ調整部材Hの洗濯等を容易に行うことができるので、衛生的な高さ調整部材Hとすることができる。
【0049】
本実施形態において、収容空間Kには、複数の高さ調整部材Hを出し入れ可能とされている。よって、収容空間Kを有する第2部分P2の高さを3段階以上で変更することができる。従って、頬M1から顎M2に向かう部分の形状によって使用者Mを3タイプ以上に分け、第2部分P2の高さを各タイプの顔の形状に応じた高さとすることができる。
【0050】
具体例として、
図9(a)に示されるような細い顔の使用者MのタイプをタイプA、
図9(c)に示されるような太い顔の使用者MのタイプをタイプC、
図9(b)に示されるような中間の細さの顔のタイプをタイプBと分けて、タイプAの使用者Mには2枚の高さ調整部材Hを収容空間Kに入れ、タイプBの使用者Mには1枚の高さ調整部材Hを収容空間Kに入れ、タイプCの使用者Mには高さ調整部材Hを入れない、というサービスが可能となる。
【0051】
その結果、使用者Mの顔の形状を3タイプ以上に分類することにより、第2部分P2の高さをよりきめ細やかに変更することができる。よって、個人差に応じて第2部分P2の高さがよりきめ細やかに調整された枕1を提供することができるので、横向き寝に一層相応しい枕1を使用者Mに提供することができる。
【0052】
更に、本実施形態に係る枕1では、
図2及び
図3に示されるように、第1部分P1及び第2部分P2の第1内容物21が第3部分P3及び第4部分P4の第2内容物22及び第3内容物23よりも柔らかい。従って、使用者Mの頬M1の形状に応じて第1部分P1及び第2部分P2の形状を変えやすくすることができるので、使用者Mの頬M1にかかる圧力を緩和することができる。また、第2内容物22及び第3内容物23が第1内容物21よりも硬いことにより、使用者Mの首及び頭部を第3部分P3及び第4部分P4のそれぞれにおいてしっかりと支えることができる。
【0053】
本実施形態に係る枕1では、収容空間Kの開口K1にファスナーが設けられておらず、開口K1は常時開放されている。従って、横向き寝をした使用者Mの頬M1又は顎M2がファスナー等に当たることがないので、使用者Mにより快適な寝心地を提供することができる。
【0054】
以上、本発明に係る枕の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。すなわち、枕の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0055】
例えば、前述の実施形態では、裏地12にボタンを介してシート材が着脱可能とされる例について説明した。しかしながら、このシート材は省略することも可能である。また、前述の実施形態では、収容空間Kの開口K1が常時開放されている例について説明した。しかしながら、収容空間の開口はファスナー等によって開閉されるものであってもよい。
【0056】
また、前述の実施形態では、シート状の高さ調整部材Hについて説明した。高さ調整部材Hがシート状である場合、開口K1を介して収容空間Kに高さ調整部材Hを出し入れしやすいという利点がある。但し、高さ調整部材の形状は、シート状に限られず適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、表地11にキルティングが施されている例について説明した。しかしながら、枕の側地にはキルティングが施されていなくてもよい。一例として、側地にジャガード織りが施されていてもよく、側地の素材及びデザインについては適宜変更可能である。
【0057】
また、前述の実施形態では、一対の第1仕切部31、第2仕切部32、第3仕切部33、及び一対の第4仕切部34を備える枕1について例示した。しかしながら、枕の仕切部の数、形状、大きさ及び配置態様は適宜変更可能である。例えば、第3仕切部33は省略することも可能である。更に、前述の実施形態では、一対の第1内部空間S1、第2内部空間S2及び第3内部空間S3を備える枕1について例示した。しかしながら、枕の内部空間の数、形状、大きさ及び配置態様についても適宜変更可能である。また、前述の実施形態では、柔らかい綿(わた)を含む第1内容物21、第1内容物21よりも硬い綿(わた)及びパイプ材のいずれかを含む第2内容物22及び第3内容物23について例示した。しかしながら、枕1の内容物の種類の数及び材料についても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…枕、2…長辺、2b…第1長辺、2c…第2長辺、3…短辺、3b…第1短辺、3c…第2短辺、10…側地、11…表地、12…裏地、20…内容物、21…第1内容物、22…第2内容物、23…第3内容物、30…仕切部、31…第1仕切部、32…第2仕切部、33…第3仕切部、34…第4仕切部、41…第1ファスナー、42…第2ファスナー、43…第3ファスナー、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…方向、H…高さ調整部材、H1…第1辺、H2…第2辺、H3…第3辺、K…収容空間、K1…開口、L1,L2…中心軸線、M…使用者、M1…頬、M2…顎、O1,O2…中心、P1…第1部分、P2…第2部分、P3…第3部分、P4…第4部分、S…内部空間、S1…第1内部空間、S2…第2内部空間、S3…第3内部空間。