(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】建築ユニット構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
E04B1/348 H
E04B1/348 U
(21)【出願番号】P 2019163917
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593036855
【氏名又は名称】大場建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚治
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特許第6288959(JP,B2)
【文献】特許第4553649(JP,B2)
【文献】特開2015-086598(JP,A)
【文献】特開2015-212463(JP,A)
【文献】特開2019-078093(JP,A)
【文献】特開2001-241137(JP,A)
【文献】特開2012-031674(JP,A)
【文献】米国特許第04294054(US,A)
【文献】特許第6579636(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接され、階上の建築ユニット構造体の前記通しダイアフラムと締結手段によって締結される接続板と、
天井梁と、
前記接続板よりも下方に離れて前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体。
【請求項2】
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
前記柱の下端に溶接される下部通しダイアフラムと、
前記柱の上端に溶接される上部通しダイアフラムと、
前記上部通しダイアフラムの上端に溶接される中空断面の追加柱と、
前記下部通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記上部通しダイアフラムに溶接される天井梁と、
前記追加柱の上端に溶接され、階上の建築ユニット構造体の前記下部通しダイアフラムと締結手段によって締結される接続板と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体。
【請求項3】
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接される上部接続板と、
前記通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、
該追加柱の下端に溶接され、階下の建築ユニット構造体の前記上部接続板と締結手段によって締結される下部接続板と、
天井梁と、
前記上部接続板よりも下方に離れて前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体。
【請求項4】
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接される上部接続板と、
前記通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、
該追加柱の下端に溶接され、階下の建築ユニット構造体の前記上部接続板と締結手段によって締結される下部接続板と、
前記床梁よりも高さが低い天井梁と、
前記上部接続板の直下で前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
前記天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体。
【請求項5】
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接される上部接続板と、
前記通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、
該追加柱の下端に溶接され、階下の建築ユニット構造体の前記上部接続板と締結手段によって締結される下部接続板と、
前記床梁と同一高さの天井梁と、
前記上部接続板の直下で前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記建築ユニット構造体は、平面視で、長手方向及び短手方向を有する矩形であり、
前記建築ユニット構造体の前記短手方向と平行に延び、前記天井材が張り付けられる下面を有する複数の野縁と、
前記建築ユニット構造体の前記長手方向と平行に延びる2本の前記天井梁の前記上面に固定され、前記複数の野縁の各々の両端部を、前記複数の野縁の下面と前記天井梁の前記上面との間の間隔が前記天井材の厚さよりも大きくなる位置に固定する少なくとも2つの固定具と、
をさらに有する建築ユニット構造体。
【請求項7】
請求項6において、
前記少なくとも2つの固定具の各々は、前記建築ユニット構造体の前記長手方向と平行に延びる2本の前記天井梁の前記上面と、前記複数の野縁の各々の両端部の前記下面との間に固定されるスペーサーである建築ユニット構造体。
【請求項8】
請求項6において、
前記少なくとも2つの固定具の各々は、前記建築ユニット構造体の前記長手方向と平行に延びる2本の前記天井梁の前記上面に固定される水平片と、前記複数の野縁の各々の両端部が固定される垂直片と、を含むアングルである建築ユニット構造体。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一項において、
前記複数の野縁の各々の両端部が嵌入されて固定されるコ字状断面の少なくとも2つのランナーをさらに有し、
前記少なくとも2つのランナーの各々が、前記少なくとも2つの固定具の各々に固定される建築ユニット構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場で上下に連結されて建築物を構築するための、工場で組み立てられる建築ユニット構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
現場での施工人員の縮小や施工期間の短縮のために、予め工場で組み立てられた建築ユニット構造体を、現場で上下に連結させて建築物を構築することが行われている。特許文献1では、階下のユニットの柱の上端に接合された通しダイアフラムと、階上のユニットの柱の下端に接合された通しダイアフラムとを、現場においてボルトとナットとにより締結している。
【0003】
しかし、特許文献1の構造では、階下の通しダイアフラムに接合される天井梁と、階上の通しダイアフラムに接合される床梁との間の隙間が狭い。このため、天井梁と床梁との間に配管を配置したり、あるいは天井梁及び床梁に耐火材を被覆することができない。
【0004】
一方、特許文献2では、天井梁及び床梁に耐火材を被覆するため、階上の床梁の取り付け位置を高くして、天井梁と床梁との間に比較的大きなスペースを確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-171694号公報
【文献】特許第4553649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のように床梁の取り付け位置を高くすると、各階の床面から天井面までの室内空間高さが狭まり、居住性が低下してしまう。
【0007】
そこで、本願出願人は、特願2018-198749により、各階の床面から天井面までの室内空間高さを拡大して居住性を高め、高い開放性を確保しながら、天井梁と床梁との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる建築ユニット構造体を提案している。
【0008】
本発明の幾つかの態様は、特願2018-198749により提案された構造において床面から天井面までの室内空間高さをより拡大できる建築ユニット構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接され、階上の建築ユニット構造体の前記通しダイアフラムと締結手段によって締結される接続板と、
天井梁と、
前記接続板よりも下方に離れて前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結
される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体に関する。
【0010】
本発明の一態様(1)によれば、床梁は、柱の下端に溶接される通しダイアフラムに溶接される。よって、床梁に支持される床面の位置が高くなることがない。一方、天井梁は、柱の上端の接続板よりも下方に離れた位置にて柱に溶接される天井梁接続金具に締結手段によって締結される。よって、天井梁の取り付け高さ位置は低くなり、天井梁と床梁との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井梁の取り付け高さ位置は低くなるが、天井面は天井梁以外の領域では低くする必要はなく、天井面を天井梁の上面よりも高くしている。よって、各階の床面から天井面までの室内空間高さをより拡大して居住性を高め、高い開放性を確保できる。なお、床梁を接合するためのダイアフラムは、通しダイアフラムだけでなく、通しダイアフラムと内ダイアフラムとを併用するものも本発明の範囲である。また、天井梁は現場で取り外して施工できる自由度がある。天井梁を取りはずした場合には、天井面を階下と階上との境界面を超えた高い位置に設定でき、室内空間高さがさらに拡大されて居住性がさらに高められ、さらに高い開放性を確保できる。
【0011】
(2)本発明の一態様(1)では、前記通しダイアフラムは、ダイアフラム管と、該ダイアフラム管の上端と溶接される上部接合板と、前記ダイアフラム管の下端と溶接される下部接合板と、を含むことができる。従って、前記下部接合板は、階下の建築ユニット構造体の前記接続板と締結手段によって締結されて、階下と階上の建築ユニット構造体同士が連結される。
【0012】
(3)本発明の一態様(2)では、前記下部接合板には長穴が形成されても良い。この場合、前記長穴は、前記建築ユニット構造体が搭載される車両の荷台に上向きで突出するツイストロックが嵌入するのに適合する形状とされる。ツイストロックは、長穴に挿通された後に回転されることで、長穴がツイストロックにより抜け止めされる。それにより、建築ユニット構造体をトレーラー等の車両の荷台に搭載して安全に搬送できる。
【0013】
(4)本発明の他の態様は、
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される下部通しダイアフラムと、
前記柱の上端に溶接される上部通しダイアフラムと、
該上部通しダイアフラムの上端に溶接される中空断面の追加柱と、
前記下部通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記上部通しダイアフラムに溶接される天井梁と、
前記追加柱の上端に溶接され、階上の建築ユニット構造体の前記下部通しダイアフラムと締結手段によって締結される接続板と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体に関する。
【0014】
本発明の他の態様(4)によれば、床梁は、柱の下端に溶接される下部通しダイアフラムに溶接される。よって、床梁に支持される床面の位置が高くなることがない。一方、天井梁は、柱の上端に溶接された上部通しダイアフラムに溶接されるが、上部通しダイアフラムの上端には追加柱が設けられる。よって、天井梁の取り付け高さ位置は低くなり、天井梁と床梁との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井梁の取り付け高さ位置は低くなるが、天井面は天井梁以外の領域では低くする必要はなく、天井面を天井梁の上面よりも高くしている。そのため、各階の床面から天井面までの室内空間高さをより拡大して居住性を高め、高い開放性を確保できる。
【0015】
(5)本発明の他の態様(4)では、前記下部通しダイアフラム及び上部通しダイアフラムの各々は、ダイアフラム管と、該ダイアフラム管の上端と溶接される上部接合板と、前記ダイアフラム管の下端と溶接される下部接合板と、を含むことができる。従って、前記下部通しダイアフラムの前記下部接合板は、階下の建築ユニット構造体の前記接合板と締結手段によって締結されて、階下と階上の建築ユニット構造体同士が連結される。
【0016】
(6)本発明の他の態様(5)では、前記下部通しダイアフラムの前記下部接合板には長穴が形成されても良い。この場合、前記長穴は、前記建築ユニット構造体が搭載される車両の荷台に上向きで突出するツイストロックが嵌入するのに適合する形状とされる。ツイストロックは、長穴に挿通された後に回転されることで、長穴がツイストロックにより抜け止めされる。それにより、建築ユニット構造体をトレーラー等の車両の荷台に搭載して安全に搬送できる。
【0017】
(7)本発明のさらに他の態様は、
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接される上部接続板と、
前記通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、
該追加柱の下端に溶接され、階下の建築ユニット構造体の前記上部接続板と締結手段によって締結される下部接続板と、
天井梁と、
前記上部接続板よりも下方に離れて前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体に関する。
【0018】
本発明のさらに他の態様(7)によれば、床梁は、柱の下端に溶接される通しダイアフラムに溶接される。ここで、通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、追加柱の下端に溶接される下部接続板とがさらに設けられる。よって、床梁に支持される床面の位置は高くなる。一方、天井梁は、上部接続板よりも下方に離れて柱に溶接される天井梁接続金具に締結手段によって締結される。よって、天井梁の取り付け高さ位置は低くなる。このため、天井梁と床梁との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井梁の取り付け高さ位置は低くなるため、天井梁と床梁との間に十分なスペースは確保するのに、床梁の取り付け高さを過度に高くしなくても済む。また、天井面は天井梁以外の領域では低くする必要はなく、天井面を天井梁の上面よりも高くしている。よって、各階の床面から天井面までの室内空間高さをより拡大して居住性を高め、高い開放性を確保できる。また、天井梁は現場で取り外して施工できる自由度がある。天井梁を取りはずした場合には、天井面を階下と階上との境界面を超えた高い位置に設定でき、室内空間高さがさらに拡大されて居住性がさらに高められ、さらに高い開放性を確保できる。
【0019】
(8)本発明のさらに他の態様は、
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接される上部接続板と、
前記通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、
該追加柱の下端に溶接され、階下の建築ユニット構造体の前記上部接続板と締結手段によって締結される下部接続板と、
前記床梁よりも高さが低い天井梁と、
前記上部接続板の直下で前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体に関する。
【0020】
本発明のさらに他の態様(8)によれば、床梁は、柱の下端に溶接される通しダイアフラムに溶接される。ここで、通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、追加柱の下端に溶接される下部接続板とがさらに設けられる。よって、床梁に支持される床面の位置は高くなる。一方、天井梁は、上部接続板の直下で柱に溶接される天井梁接続金具に締結手段によって締結される。よって、天井梁の取り付け高さ位置は最上位となる。天井梁は最上位の高さ位置であっても、床梁は高い位置に取り付けられるので、階下の天井梁と階上の床梁との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井面は天井梁以外の領域では低くする必要はなく、天井面を天井梁の上面よりも高くしている。しかし、床面は床梁の位置に依存して高くなるので、各階の床面から天井面までの室内空間高さは、本発明の上述した態様(1)(4)(7)よりも狭められる。ただし、床梁よりも高さが低い天井梁を用いているので、特許文献2と比較すれば、床面から天井面までの室内空間高さは拡大され、しかも床面から天井梁下の天井面までの間隔が広がる。また、天井梁は現場で取り外して施工できる自由度がある。天井梁を取りはずした場合には、天井面を階下と階上との境界面を超えた高い位置に設定でき、室内空間高さが拡大されて居住性が高められ、高い開放性を確保できる。
【0021】
(9)本発明のさらに他の態様は、
上下に連結されて建築物を構築するための建築ユニット構造体において、
中空断面の柱と、
該柱の下端に溶接される通しダイアフラムと、
該通しダイアフラムに溶接される床梁と、
前記柱の上端に溶接される上部接続板と、
前記通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱と、
該追加柱の下端に溶接され、階下の建築ユニット構造体の前記上部接続板と締結手段によって締結される下部接続板と、
前記床梁と同一高さの天井梁と、
前記上部接続板の直下で前記柱に溶接され、前記天井梁が締結手段によって締結される天井梁接続金具と、
前記天井梁に支持されて天井面を形成する天井材と、
を有し、
該天井材の前記天井面は、前記天井梁の上面よりも高い建築ユニット構造体に関する。
【0022】
本発明のさらに他の態様(9)によれば、本発明の前記態様(8)と同様にして、階下の天井梁と階上の床梁との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができるが、各階の床面から天井面までの室内空間高さは、本発明の上述した態様(1)(4)(7)よりも狭められる。特許文献2と比較すれば、床面から天井面までの室内空間高さは拡大され、天井梁は現場で取り外して施工できる自由度がある。天井梁を取りはずした場合には、天井面を階下と階上との境界面を超えた高い位置に設定でき、室内空間高さがさらに拡大されて居住性が高められ、高い開放性を確保できる。
【0023】
(10)本発明の他の態様(7)~(9)では、前記下部接続板には長穴が形成されても良い。この場合、前記長穴は、前記建築ユニット構造体が搭載される車両の荷台に上向きで突出するツイストロックが嵌入するのに適合する形状とされる。ツイストロックは、長穴に挿通された後に回転されることで、長穴がツイストロックにより抜け止めされる。それにより、建築ユニット構造体をトレーラー等の車両の荷台に搭載して安全に搬送できる。
【0024】
(11)本発明の態様(1)~(3)、(7)~(10)では、前記床梁は、耐火材で被覆されていることが好ましい。床梁は、通しダイアフラムに剛接合され、建築ユニット構造体の強度計算に用いられる主要構造である。よって、主要構造である床梁は耐火材により保護されることが好ましい。一方、天井梁は天井梁接続金具に締結手段によって締結されるのでピン接合となり、主要構造とはならない。よって、天井梁は必ずしも耐火材で被覆する必要はない。
【0025】
(12)本発明の態様(4)~(6)では、前記床梁及び前記天井梁は、耐火材で被覆されていることが好ましい。床梁及び天井梁は、下部及び上部の通しダイアフラムに剛接合され、建築ユニット構造体の強度計算に用いられる主要構造である。よって、床梁及び天井梁を耐火材で保護されることが好ましい。
【0026】
(13)本発明の態様(1)~(12)では、前記建築ユニット構造体は、平面視で、長手方向及び短手方向を有する矩形であり、前記建築ユニット構造体の前記短手方向と平行に延び、前記天井材が張り付けられる下面を有する複数の野縁と、前記建築ユニット構造体の前記長手方向と平行に延びる2本の前記天井梁の前記上面に固定され、前記複数の野縁の各々の両端部を、前記複数の野縁の下面と前記天井梁の前記上面との間の間隔が前記天井材の厚さよりも大きくなる位置に固定する少なくとも2つの固定具と、をさらに有することができる。それにより、天井材の天井面を、天井梁の上面よりも高い位置とすることができる。
【0027】
(14)本発明の態様(13)では、前記少なくとも2つの固定具の各々は、前記建築ユニット構造体の前記長手方向と平行に延びる2本の前記天井梁の前記上面と、前記複数の野縁の各々の両端部の前記下面との間に固定されるスペーサーとすることができる。この場合、天井材の厚さより厚いスペーサーにより、野縁の各々の両端部を天井梁の上面より高い位置にて確実に固定することができる。
【0028】
(15)本発明の態様(13)では、前記少なくとも2つの固定具の各々は、前記建築ユニット構造体の前記長手方向と平行に延びる2本の前記天井梁の前記上面に固定される水平片と、前記複数の野縁の各々の両端部が固定される垂直片と、を含むアングルとすることができる。アングルにより、複数の野縁の下面と天井梁の上面との間の間隔を、天井材の厚さよりも大きくすることができる。
【0029】
(16)本発明の態様(13)~(15)では、
前記複数の野縁の各々の両端部が嵌入されて固定されるコ字状断面の少なくとも2つのランナーをさらに有し、前記少なくとも2つのランナーの各々を、前記少なくとも2つの固定具の各々に固定しても良い。それにより、野縁の両端を安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1~第3実施形態に係る建築ユニット構造体の概要を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの断面を示す正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの断面を示す側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の変形例として、全長の短い建築ユニット構造体の骨組みの平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の階下/階上の接合部の拡大図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す正面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す平面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す側面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの断面を示す正面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの平面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの断面を示す側面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体の階下/階上の接合部の拡大図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す正面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す平面図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す側面図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの断面を示す正面図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの平面図である。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体の骨組みの断面を示す側面図である。
【
図20】本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体の階下/階上の接合部の拡大図である。
【
図21】本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す正面図である。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す平面図である。
【
図23】本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体の断面を示す側面図である。
【
図24】本発明の第4実施形態に係る建築ユニット構造体の階下/階上の接合部の拡大図である。
【
図25】本発明の第5実施形態に係る建築ユニット構造体の階下/階上の接合部の拡大図である。
【
図26】本発明の第4,5実施形態の変形例として、現場で天井梁を取り外して構築される建築ユニット構造体の断面を示す正面図である。
【
図27】通しダイアフラムの構造を説明するための図である。
【
図28】本発明の第6実施形態に係る建築ユニット構造体の長穴を示す図である。
【
図29】本発明の第7実施形態に係る建築ユニット構造体の階下の天井裏の平面図である。
【
図30】本発明の第7実施形態に係る建築ユニット構造体の
図13の一部を拡大した天井材の取付構造を示す断面図である。
【
図31】本発明の第8実施形態に係る建築ユニット構造体の階下の天井裏の平面図である。
【
図32】本発明の第8実施形態に係る建築ユニット構造体の
図13の一部を拡大した天井材の取付構造を示す断面図である。
【
図33】本発明の第9実施形態に係る上下左右4つの建築ユニット構造体同士の連結構造を示す正面図である。
【
図35】
図33に示す建築ユニット構造体に補強プレートを取り付ける前の正面図である。
【
図39】
図37に示す建築ユニット構造体に補強プレートを取り付ける前の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
1.本発明の第1~第3実施形態の概要
図1は、本発明の第1~第3実施形態に係る建築ユニット構造体100,200,300と、特許文献2の建築ユニット構造体1とを対比して示す。なお、以下に示す各図は、建築ユニット構造体1,100,200,300等について、階下と階上との2階建て構造について示すが、3階建て以上の各階についても同様である。
図1では、建築ユニット構造体100,200,300の各階の床面141,241,341から天井面151,251,351までの室内空間高さH1,H2,H3を、特許文献2の建築ユニット構造体1の床面41から天井面51までの室内空間高さH0と比較している。
図1では、天井面51,151,251,351の高さ位置は同じに設定される。ただし、特許文献2の天井面51は天井梁20の上面に設置された部材に設けられた吊りボルト受より吊りボルトにより吊架される形態で設けられるので天井梁20の上面よりも低い。これに対して、建築ユニット構造体100,200,300では、その取付構造を後述する通りとすることで、天井面151,251,351は天井梁120,220,320の上面よりも高い。一方、床面141,241,341は、二点鎖線で延長して示す床面41の高さ位置Aよりも低い。
図1から、H1=H2>H3>H0であることが分かる。ただし、階下の天井梁20,120,220,320と階上の床梁10,110,210,310との間の距離hはいずれも等しく、天井梁と床梁との間に所定のスペースは確保されている。それにより、本発明の第1~第3実施形態によれば、天井梁120,220,320と床梁110,210,310との間に配管スペースや耐火材の被覆スペースを特許文献2と同等に確保しながら、床面141,241,341から天井面151,251,351までの室内空間高さH1,H2,H3が特許文献2のH0よりも高いことが分かる。なお、床面41,141,241,341と天井梁下の天井面51,151,251,351との間隔L0,L1,L2,L3の関係は、L0=L1=L2=L3となっている。
【0033】
2.本発明の第1実施形態
図2~
図4は、本発明の第1実施形態に係る建築ユニット構造体100の軸組みの断面を示す正面図、平面図、断面を示す側面図である。建築ユニット構造体100の軸組みは、床梁110と、天井梁120と、柱体130とを連結している。床梁110と天井梁120は、例えばH鋼で形成される。床梁110は、長さの異なる複数種類例えば3種類の床梁110A,110B,110Cを含む。天井梁120は、
図2及び
図4に示すように、長さの異なる複数種類例えば3種類の天井梁120A,120B,120Cを含む。柱体130は、建築ユニット構造体100の四隅の4本と、床梁110A,110Bの継ぎ
手部分の1本と、天井梁120A,120Bの継ぎ手部分の1本と、の例えば計6本を含む。なお、
図2~
図4は全長が例えば40フィートの建築ユニット構造体100を示す。例えば全長が20フィートの建築ユニット構造体100の場合には、
図5に示すように四隅に4本の柱体130を設けるだけでも良い。
【0034】
柱体130は、
図2に示すように、中空断面の例えば矩形の柱132と、柱132の下端に接合例えば溶接される通しダイアフラム134と、柱132の上端に接合例えば溶接される接続板136と、接続板136よりも下方にて柱132に接合例えば溶接された天井梁接続金具138とを有する。通しダイアフラム134には床梁110の端部が接合例えば溶接される。接続板136は、階上の建築ユニット構造体100の通しダイアフラム134と、例えば柱132よりも外側の4箇所にて例えばボルト、ナット等の締結手段によって締結される。天井梁接続金具138には、天井梁120の端部が例えばボルト、ナット等の締結手段によって締結される。
【0035】
図6は、
図4の階下/階上の連結部を拡大して示す。床梁110(110A,110B,110C)は、
図6に示すように、通しダイアフラム134に剛接合される主要構造であるH鋼112を被覆する耐火材114を有する。一方、天井梁接続金具138にピン接合されて主要構造とはならない天井梁120(120A,120B,120C)は耐火材114により被覆されていない。
【0036】
図6には、階上の床材140と階下の天井材150とが示されている。床梁110は柱132の下端に溶接された通しダイアフラム134に溶接される。床材140は、床梁110に支持される。一方、天井梁120は、柱132の上端の接続板136よりも下方に離れた位置にて柱132に溶接された天井梁接続金具138に締結手段によって締結される。よって、天井梁120の取り付け高さ位置は低くなり、天井梁120と床梁110との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井梁120の取り付け高さ位置は低くなるが、天井面151は天井梁120以外の領域では低くする必要はない。次に、床材140の床面141は、階下/階上の境界面Aよりも、少なくとも床梁110の高さ及び床材140の高さ分だけ高くなる。しかし、
図1に示す特許文献2の建築ユニット構造体1では、床材40の床面41は、階下/階上の境界面Aよりも、少なくとも床梁10の高さ及び床材40の高さに加え、階下の天井梁20と階上の床梁110との間の距離h分だけさらに高くなる。従って、
図1に示すように、建築ユニット構造体100の各階の床面141から天井面151までの室内空間高さH1は、特許文献2の建築ユニット構造体1の室内空間高さH0よりも広くなる(H1>H0)。
【0037】
図7~
図9は、工場で組み立てられる完成体の建築ユニット構造体100の断面を示す正面図、断面を示す平面図、断面を示す側面図である。完成体の建築ユニット構造体100は、
図2~
図4に示す骨組みに加えて、床材140、天井材150、窓を有する壁材160、部屋と廊下180とを仕切る間仕切り材170等の他、部屋内に設置されるユニットバストイレ190やベッド192を有することができる。なお、ベッド192は現場で取り付けても良い。このように、建築ユニット構造体100に設けられる部材が多いほど、現場での施工人数を縮小でき、施工期間も短縮される。
【0038】
3.本発明の第2実施形態
図10~
図12は、本発明の第2実施形態に係る建築ユニット構造体200の軸組みの断面を示す正面図、平面図、断面を示す側面図である。建築ユニット構造体200の軸組みは、床梁210と、天井梁220と、柱体230とを連結している。床梁210と天井梁220は、例えばH鋼で形成される。床梁210は、長さの異なる複数種類例えば3種類の床梁210A,210B,210Cを含む。天井梁220は、
図10及び
図12に示すように、長さの異なる複数種類例えば3種類の天井梁220A,220B,220Cを
含む。柱体230は、建築ユニット構造体200の四隅の4本と、床梁210A,210Bの継ぎ手部分の1本と、天井梁220A,220Bの継ぎ手部分の1本と、の例えば計6本を含む。ただし全長が短い建築ユニット構造体200の場合には、
図5と同様に四隅に4本の柱体230を設けるだけでも良い。
【0039】
柱体230は、
図10に示すように、中空断面の例えば矩形の柱232と、柱232の下端に接合例えば溶接される下部通しダイアフラム234と、柱232の上端に溶接される上部通しダイアフラム236と、上部通しダイアフラム236の上端に溶接される中空断面の追加柱235と、追加柱235の上端に溶接された接続板238とを有する。下部通しダイアフラム234には床梁210の端部が接合例えば溶接される。上部通しダイアフラム236には天井梁220の端部が接合例えば溶接される。接続板238は、階上の建築ユニット構造体200の下部通しダイアフラム234と、例えば柱232よりも外側の4箇所にて例えばボルト及びナット等の締結手段により、現場において締結される。
【0040】
図13は、
図10の階下/階上の連結部を拡大して示す。床梁210(210A,210B,210C)は、
図13に示すように、下部通しダイアフラム234に剛接合される主要構造であるH鋼212を被覆する耐火材214を有する。上部通しダイアフラム236に剛接合される主要構造であるH鋼216を被覆する耐火材218を有する。
【0041】
図13には、階上の床材240と階下の天井材250とが示されている。床梁210は、柱232の下端に溶接された下部通しダイアフラム234に溶接される。床材240は、床梁210に支持される。一方、天井梁220は、柱232の上端に溶接された上部通しダイアフラム236に溶接されるが、上部通しダイアフラム236の上端には追加柱235が設けられる。よって、天井梁220の取り付け高さ位置は低くなり、天井梁220と床梁210との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井梁220の取り付け高さ位置は低くなるが、天井面251は天井梁220以外の領域では低くする必要はない。次に、床材240の床面241は、階下/階上の境界面Aよりも、少なくとも床梁210の高さ及び床材240の高さ分だけ高くなる。しかし、
図1に示す特許文献2の建築ユニット構造体1では、床材40の床面41は、階下/階上の境界面Aよりも、少なくとも床梁10の高さ及び床材40の高さに加え、階下の天井梁20と階上の床梁110との間の距離h分だけさらに高くなる。従って、
図1に示すように、建築ユニット構造体200の各階の床面から天井面までの室内空間高さH2は、特許文献2の建築ユニット構造体1の室内空間高さH0よりも広くなる(H2>H0)。
【0042】
図14~
図16は、工場で組み立てられる完成体の建築ユニット構造体200の断面を示す正面図、断面を示す平面図、断面を示す側面図である。完成体の建築ユニット構造体200は、
図10~
図12に示す骨組みに加えて、床材240、天井材250、窓を有する壁材260、部屋と廊下280とを仕切る間仕切り材270等の他、部屋内に設置されるユニットバストイレ290やベッド292を有することができる。このように、建築ユニット構造体200に設けられる部材が多いほど、現場での施工人数を縮小でき、施工期間も短縮される。
【0043】
4.本発明の第3実施形態
図17~
図19は、本発明の第3実施形態に係る建築ユニット構造体300の軸組みの断面を示す正面図、平面図、断面を示す側面図である。建築ユニット構造体300の軸組みは、床梁310と、天井梁320と、柱体330とを連結している。床梁310と天井梁320は、例えばH鋼で形成される。床梁310は、長さの異なる複数種類例えば3種類の床梁310A,310B,310Cを含む。天井梁320は、
図17及び
図19に示すように、長さの異なる複数種類例えば3種類の天井梁320A,320B,320Cを含む。柱体330は、建築ユニット構造体300の四隅の4本と、床梁310A,310
Bの継ぎ手部分の1本と、天井梁320A,320Bの継ぎ手部分の1本と、の例えば計6本を含む。ただし全長が短い建築ユニット構造体300の場合には、
図5と同様に四隅に4本の柱体330を設けるだけでも良い。
【0044】
柱体330は、
図17に示すように、中空断面の例えば矩形の柱332と、柱332の下端に接合例えば溶接される通しダイアフラム334と、柱332の上端に接合例えば溶接される上部接続板335と、通しダイアフラム334の下端に溶接される中空断面の追加柱336と、追加柱336の下端に溶接される下部接続板337と、上部接続板335よりも下方にて柱332に接合例えば溶接される天井梁接続金具338とを有する。通しダイアフラム334には床梁310の端部が接合例えば溶接される。上部接続板335は、階上の建築ユニット構造体300の下部接続板337と、例えば柱332よりも外側の4箇所にて例えばボルト、ナット等の締結手段により、現場において締結される。天井梁接続金具338には、天井梁320の端部が締結手段により工場において締結される。
【0045】
図20は、
図18の階下/階上の連結部を拡大して示す。床梁310(310A,310B,310C)は、
図20に示すように、通しダイアフラム334に剛接合される主要構造であるH鋼312を被覆する耐火材314を有する。一方、天井梁続金具338にピン接合されて主要構造とはならない天井梁320(320A,320B,320C)は耐火材114により被覆されていない。
【0046】
図20には、階上の床材340と階下の天井材350とが示されている。床梁310は、柱332の下端に溶接される通しダイアフラム334に溶接される。床材340は、通しダイアフラム334に溶接される床梁310に支持される。ここで、通しダイアフラム334の下端に溶接される追加柱336と、追加柱336の下端に溶接される下部接続板337とがさらに設けられる。よって、床梁310に支持される床材340の床面341の位置は、第1,第2実施形態よりも高くなる。
図20では、床梁310の下面は階下/階上境界線Aよりも寸法h1だけ高い位置に設定される。一方、天井梁320は、上部接続板335よりも下方に離れた位置にて柱332に溶接された天井梁接続金具338に締結手段によって締結される。よって、天井梁320の取り付け高さ位置は低くなる。
図20では、天井梁320の上面は階下/階上境界線Aよりも寸法h2だけ低い位置に設定される。なお、h1+h2=hであり、床梁310と天井梁320との間隔hは第1~第3実施形態で同一である。このため、天井梁320と床梁310との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井梁320の取り付け高さ位置は低くなるが、天井面351は天井梁320以外の領域では低くする必要はない。次に、床材340の床面341は、階下/階上の境界面Aよりも、寸法h1、床梁310の高さ及び床材340の高さを加えた分だけ高くなる。しかし、
図1に示す特許文献2の建築ユニット構造体1では、床材40の床面41は、階下/階上の境界面Aよりも、寸法h、床梁10の高さ及び床材40の高さを加えた分だけ高くなる。ここで、h1<hであるから、
図1に示すように、建築ユニット構造体300の各階の床面から天井面までの室内空間高さH3は、特許文献2の建築ユニット構造体1の室内空間高さH0よりも広くなる(H3>H0)。なお、
図1から、H3<H1=H2であることから、第3実施形態の室内空間高さH3は第1,第2実施形態の室内空間高さH1,H2よりもh1分だけ狭い。ただし、第3実施形態では、天井梁320の取り付け高さ位置が第1,第2実施形態ほど低くないので、床面から天井梁下の天井面までの間隔L3は、L3=L1=L2となり、第3実施形態の間隔L3は、第1,第2実施形態の間隔L1,L2と同じになる。
【0047】
図21~
図23は、工場で組み立てられる完成体の建築ユニット構造体300の断面を示す正面図、断面を示す平面図、断面を示す側面図である。完成体の建築ユニット構造体300は、
図17~
図19に示す骨組みに加えて、床材340、天井材350、窓を有する壁材360、部屋と廊下380とを仕切る間仕切り材370等の他、部屋内に設置され
るユニットバストイレ390やベッド392を有することができる。このように、建築ユニット構造体300に設けられる部材が多いほど、現場での施工人数を縮小でき、施工期間も短縮される。
【0048】
5.第4実施形態
図24は、本発明の第4実施形態に係る建築ユニット構造体における階下と階上との連結領域を示す。建築ユニット構造体400の軸組みは、床梁410と、天井梁420と、柱体430とを連結している。柱体430は、中空断面の柱432と、柱432の下端に溶接される通しダイアフラム434と、柱432の上端に溶接される上部接続板435と、通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱436と、追加柱436の下端に溶接される下部接続板437と、上部接続板435の直下で柱432に溶接される天井梁接続金具438と、を有する。通しダイアフラム434には床梁410の端部が接合例えば溶接される。上部接続板435は、階上の建築ユニット構造体400の下部接続板437と、例えば柱432よりも外側の4箇所にて例えばボルト、ナット等の締結手段により、現場において締結される。天井梁接続金具438には、天井梁420の端部が締結手段により工場において締結される。通しダイアフラム434に剛接合される主要構造である床梁410は、H鋼412を被覆する耐火材414を有する。主要構造でない天井梁420は、床梁410の高さよりも低い。
【0049】
図24には、階上の床材440と階下の天井材450とが示されている。床材440は、通しダイアフラム434に溶接される床梁410に支持される。ここで、通しダイアフラム434の下端に溶接される追加柱436と、追加柱436の下端に溶接される下部接続板437とがさらに設けられる。よって、床梁410に支持される床材440の床面441の位置は、第1,第2実施形態よりも高くなる一方、天井梁420は、上部接続板435の直下にて柱432に溶接された天井梁接続金具438に締結手段によって締結される。よって、天井梁420の取り付け高さ位置は最上位となり、第1,第2実施形態よりも高くなる。つまり、
図24では、第1,第2実施形態の床梁及び天井梁を寸法hだけ上方に平行移動させた状態と同じである。よって、第4実施形態でも、第1~第3実施形態と同じく、床梁410と天井梁420との間隔はhとなる。このため、天井梁420と床梁410との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。ここで、天井梁420の取り付け高さ位置は低くなるが、天井面451は天井梁420以外の領域では低くする必要はなく、天井面451は高く確保できる。しかし、床面441は床梁410の位置に依存して高くなるので、各階の床面441から天井面451までの室内空間高さH4は、第1~第3実施形態の高さH1~H3よりも狭められる。ただし、床梁410よりも高さが低い天井梁420を用いているので、特許文献2と比較すれば、床面441から天井面451までの室内空間高さH4はH0と同等であっても、床面441から天井梁420下の天井面451までの間隔L4が広がる(L4>L0)。よって、天井梁420下の天井面451の高さが高くなるので、床面441から天井面451全体までの室内空間高さは、居住性が低下するほど狭められることはない。また、天井梁420は現場で取り外して施工できる自由度がある。天井梁420を取りはずした場合には、天井面451は階下と階上の境界面を超えた高い位置に設定できる。よって、室内空間高さが拡大されて居住性が高められ、高い開放性を確保できる。
【0050】
6.第5実施形態
図25は、本発明の第5実施形態に係る建築ユニット構造体における階下と階上との連結領域を示す。建築ユニット構造体500の軸組みは、床梁510と、天井梁520と、柱体530とを連結している。柱体530は、中空断面の柱532と、柱532の下端に溶接される通しダイアフラム534と、柱532の上端に溶接される上部接続板535と、通しダイアフラムの下端に溶接される中空断面の追加柱536と、追加柱536の下端に溶接される下部接続板537と、上部接続板535の直下で柱532に溶接される天井
梁接続金具538と、を有する。通しダイアフラム534には床梁510の端部が接合例えば溶接される。上部接続板535は、階上の建築ユニット構造体500の下部接続板537と、例えば柱532よりも外側の4箇所にて例えばボルト、ナット等の締結手段により、現場において締結される。天井梁接続金具538には、天井梁520の端部が締結手段により工場において締結される。通しダイアフラム534に剛接合される主要構造である床梁510は、H鋼512を被覆する耐火材514を有する。主要構造でない天井梁520は、第4実施形態とは異なり、床梁510と同じ高さである。
【0051】
図25には、階上の床材540と階下の天井材550とが示されている。床材540は、通しダイアフラム534に溶接される床梁510に支持される。ここで、第5実施形態は、第4実施形態と比較して、天井梁520の高さが天井梁420よりも高いことが相違している。このように、第5実施形態は、天井梁の高さを除いて第4実施形態と同じ構造であるので、床梁510に支持される床材540の床面541の位置は、第1,第2実施形態よりも高くなる一方、天井梁520は、上部接続板535の直下にて柱532に溶接された天井梁接続金具538に締結手段によって締結される。よって、天井梁520の取り付け高さ位置は最上位となり、第1,第2実施形態よりも高くなる。また、
図25でも、第1,第2実施形態の床梁及び天井梁を寸法hだけ上方に平行移動させた状態と同じである。よって、第5実施形態でも、第1~第3実施形態と同じく、床梁510と天井梁520との間隔はhとなる。このため、天井梁520と床梁510との間に、配管スペースや耐火材の被覆スペースを確保することができる。一方、各階の床面541から天井面551までの室内空間高さH5は、第1~第3実施形態の高さH1~H3よりも狭められる。特許文献2と比較すれば、床面541から天井面551までの室内空間高さH5はH0と同等であり(H5=H0)、床面541から天井梁520下の天井面551までの間隔L5も同等である(L5=L0)。ただし、天井梁520は現場で取り外して施工できる自由度がある。天井梁520を取りはずした場合には、天井面551は階下と階上の境界面を超えた高い位置に設定できる。よって、室内空間高さが拡大されて居住性が高められ、高い開放性を確保できる。
【0052】
上述した通り、第1,第3~第5実施形態のいずれかにおいて、天井梁120,320~520を現場で取り外して施工することが可能である。
図26は第4実施形態の天井梁420を取り外した施工例を示す。
図26に示すように、現場において、階下/階上の境界面Aを越えて、階下の天井材450を階上の床梁410の直下に配置できるので、床面441から天井面451までの室内空間高さH4を最大限に拡大することができる。よって、第1,第3~第5実施形態の建築ユニット構造体を用いて例えばホテルを構築する場合、1階の天井梁を取り外すことで1階ロビーの天井高を大きく確保することができる。
【0053】
7.第6実施形態
図27及び
図28に基づいて、第1実施形態の建築ユニット構造体100をトレーラー等の車両による運搬に適するように変形実施する本発明の第6実施形態について説明する。先ず、第1実施形態の補足説明として、
図27に基づいて通しダイアフラム134について説明する。通しダイアフラム134は、
図27に示すように、ダイアフラム管134Aと、該ダイアフラム管134Aの上端と溶接される上部接合板134Bと、ダイアフラム管134Aの下端と溶接される下部接合板134Cと、を含むことができる。従って、階上の建築ユニット構造体100下部接合板134Cは、階下の建築ユニット構造体100の接続板136と、ボルト139A及びナット139B等の締結手段によって締結されて、階下と階上の建築ユニット構造体100同士が連結される。1階の建築ユニット構造体100の下部接合板134Cは基礎に締結することができる。
【0054】
建築ユニット構造体100は、例えばコンテナサイズに形成すれば、コンテナ搬送用のトレーラーにより工場から施工現場まで搬送することができる。その際、トレーラーの荷
台の4か所には、ツイストロック又はクイックスナップと称される緊締装置が配置される。クイックスナップは、被搬送物体に設けられる長穴に挿入された後に90度回転される。それにより、被搬送物体はクイックスナップにより抜け止めされる。
【0055】
図28に示すように、建築ユニット構造体100の下部接合板134Cに長穴134C1を設けることができる。この長穴134C1は、
図3または
図5に示す四隅の下部接合板134Cに設ければよい。それにより、建築ユニット構造体100は長穴134C1とクイックスナップとにより緊締され、トレーラーにより安全に運搬することができる。第2実施形態でも同様に、下部通しダイアフラム234の下部接合板に長穴を設けられ場良い。第3~第5実施形態では、下部接続板337,437,537に長穴を設ければ良い。
【0056】
8.第7実施形態
次に、上述した第1~第6実施形態のいずれにも適用できる、建築ユニット構造体100,200,300,400,500の連結構造の第7実施形態について、
図29及び
図30を用いて説明する。第7実施形態は、第2実施形態の建築ユニット構造体200を上下で連結した構造に適用したものを例に挙げて説明するが、他の実施形態にも同様に適用できる。
【0057】
建築ユニット構造体200は、例えば
図11に示すように平面視で矩形であり、長手方向及び短手方向を有する。建築ユニット構造体200は、天井材250を固定するための複数の野縁600を有する。複数の野縁600は、建築ユニット構造体200の階下の天井裏の平面図である
図29に示すように、建築ユニット構造体200の短手方向Xと平行に延びる。複数の野縁600は、木材、金属等であれば材質は問わないが、本実施形態では角パイプとしている。
図29において、2本の天井梁220A,220Bが長手方向Yと平行に延び、天井梁220Cは短手方向Xと平行に延びる。
【0058】
図13に示す建築ユニット構造体200の一部を拡大した
図30にも示すように、建築ユニット構造体200長手方向Yと平行に延びる2本の天井梁220A,220B(
図30では天井梁220Aのみを示す)の上面と、複数の野縁600の各々の両端部の下面との間に固定される少なくとも2つの固定具700A,700Bが設けられる。少なくとも2つの固定具700A,700Bは、複数の野縁600の下面と2本の天井梁220A,220Bの上面との間の間隔が、天井材250の厚さよりも大きくなる位置に複数の野縁600を固定するものであり、スペーサーと称することができる。この場合、スペーサー700A,700Bの厚さは、天井材250の厚さより厚い。本実施形態では、天井梁220Aの上に固定されて長手方向Yと平行に延びる固定具700Aと、天井梁220Bの上に固定されて長手方向Yと平行に延びる固定具700Bとの計2本であるが、長手方向Yで分割して本数を増やしても良い。少なくとも2つの固定具700A,700Bは、木材、金属等であれば材質は問わないが、本実施形態では鋼製角パイプとしている。この場合、少なくとも2つの固定具700A,700Bは、2本の天井梁220A,220Bと溶接により固定される。
【0059】
図30に示すように、天井材250は、複数の野縁600の下面に、例えばタッピングスクリュー等により固定される。このように、少なくとも2つの固定具700A,700B、つまり天井材250の厚さより厚いスペーサー700A,700Bにより、複数の野縁600の下面と2本の天井梁220A,220Bの上面との間の間隔が、天井材250の厚さよりも大きくなるので、天井材250の天井面251は、2本の天井梁220A,220Bの上面よりも高くなる。それにより、
図1に示すように、床面241から天井面251までの室内空間高さH2を高く確保することができる。なお、複数の野縁600の下面と2本の天井梁220A,220Bの上面との間の間隔を、天井材250の厚さよりも大きくすることができれば、固定具700A,700Bは、鋼製角パイプに代えて鋼製C形鋼等の他の断面形状を有していても良い。
【0060】
ここで、複数の野縁600の両端部を少なくとも2つの固定具700に直接固定(例えば溶接)しても良いが、本実施形態では複数の野縁600の各々の両端部が嵌入されて固定されるコ字状断面の少なくとも2つのランナー610A,610Bを設けている。本実施形態では、固定具700Aの上に固定されて長手方向Yと平行に延びるランナー610Aと、固定具700Bの上に固定されて長手方向Yと平行に延びるランナー610Bとの計2本であるが、長手方向Yで分割して本数を増やしても良い。少なくとも2つのランナー610A,610Bは、金属、樹脂等であれば材質は問わないが、本実施形態では鋼製チャネルとしている。この場合、少なくとも2つのランナー610A,610Bは、少なくとも2つの固定具700A,700Bと溶接により固定される。なお、少なくとも2つのランナー610A,610Bと複数の野縁600とは、例えばタッピングスクリューで固定される。このように、複数の野縁600の各々の両端部が嵌入されて固定されるコ字状断面の少なくとも2つのランナー610A,610Bを設けることで、複数の野縁600の各々の両端部を少なくとも2つの固定具700A,700Bに対して安定して支持することができる。
【0061】
9.第8実施形態
次に、上述した第1~第6実施形態のいずれにも適用できる、建築ユニット構造体100,200,300,400,500の連結構造の第8実施形態について、
図31及び
図32を用いて説明する。第8実施形態は、第2実施形態の建築ユニット構造体200を上下で連結した構造に適用したものを例に挙げて説明するが、他の実施形態にも同様に適用できる。
【0062】
第8実施形態では、
図29及び
図30に示す第7実施形態にて用いられた少なくとも2つの固定具(スペーサー)700A,700Bを、
図31及び
図32に示すように、少なくとも2つの固定部(アングル)800に置き換えている。本実施形態では、
図31に示すように、天井梁220A,220Bの各々にて等間隔で複数のアングル800を設けているので、アングル800の数は3以上である。ただし、天井梁220Aの上に固定されて長手方向Yと平行に延びるアングル800と、天井梁220Bの上に固定されて長手方向Yと平行に延びるアングル800との計2本を設けるものでも良い。
【0063】
アングル800は、長手方向Yと平行に延びる2本の天井梁220A,220Bの上面に固定される水平片810と、複数の野縁600の各々の両端部またはランナー610A,610Bが固定される垂直片820と、を含むことができる。スペーサー700A,700Bに代わるアングル800によっても、複数の野縁600の下面と2本の天井梁220A,220Bの上面との間の間隔を、天井材250の厚さよりも大きくすることができる。なお、複数の野縁600の下面と2本の天井梁220A,220Bの上面との間の間隔を、天井材250の厚さよりも大きくすることができれば、アングル800に代えて鋼製角パイプであっても良い。
【0064】
10.第9実施形態
次に、上述した第1~第8実施形態のいずれにも適用できる、建築ユニット構造体100,200,300,400,500の連結構造の第9実施形態について、
図33~
図36を用いて説明する。第9実施形態は、第2実施形態の建築ユニット構造体200を上下左右で連結した構造に適用したものを例に挙げて説明するが、他の実施形態にも同様に適用できる。
【0065】
上下左右で連結される4つの建築ユニット構造体200の4本の柱230を示す。
図33において、階下の2つの建築ユニット構造体200の2本の柱230の上端の2つの接続板238と、階上の2つの建築ユニット構造体200の2本の柱230の下端の2つの接続板239との間には、接続プレート900が配置される。接続プレート900は、鋼鉄製であって、左右の2つの建築ユニット構造体200の2本の柱230の2つの接続板238(239)の長さに亘る全長を有し、上下で連結される各2つの建築ユニット構造体200の接続板238,239がボルト・ナットで締結されるときに、接続板238,239間で共締される。
【0066】
接続プレート900を配置することにより、上下左右で連結される4つの建築ユニット構造体200間の締結部に生ずる前後左右の水平荷重を分担して、4つの建築ユニット構造体200の変形を抑制することができる。それにより、特に横揺れ地震時でも変形・破損しない耐久強度を確保することができる。
【0067】
図33ではさらに、上下左右で連結される4つの建築ユニット構造体200間のうち、左右で連結される2つの建築ユニット構造体200の2本の柱230を締結する構造を有する。そのために、
図35及び
図36にも示すように、2本の柱230の上部通しダイアフラム236から2本の柱230間に延びる鋼鉄製のフィン910が設けられる。フィン910は上部通しダイアフラム236に溶接することができる。
【0068】
図34にも示すように、この2つのフィン910の両側にて、片側に一つ、計2つの鋼鉄製の補強プレート920がボルト・ナットにより2つのフィン910に締結される。この締結構造により、上下左右で連結される4つの建築ユニット構造体200間の締結部に生ずる上下の垂直荷重を分担して、4つの建築ユニット構造体200の変形を抑制することができる。それにより、特に縦揺れ地震時でも変形・破損しない耐久強度を確保することができる。
【0069】
ここで、
図33では、フィン910及び補強プレート920による補強効果を高めるために、フィン910は上部通しダイアフラム236の縦長さを超えて下方に延長される延長部を含み、補強プレート920もフィン910とほぼ等しい長さに延長されている。
【0070】
上述した
図33~
図36の構造は、例えば
図37~
図40に示すように変形実施しても良い。
図37では、接続プレート930は、例えば階上の2つの建築ユニット構造体200の下端の2つの接続板239の上面にボルト・ナットにより締結される。
図33に示す接続プレート900によりも想定される水平荷重が小さい時には、
図37の接続プレート930でも良い。
【0071】
図37~
図40に示すフィン940及び補強プレート950は、延長部がなく、
図33~
図36に示すフィン910及び補強プレート920よりも面積が小さい。想定される垂直荷重が小さい場合には、
図33~
図36に示すフィン910及び補強プレート920に代えて、
図37~
図40のフィン940及び補強プレート950を使用しても良い。
【0072】
なお、
図33の接続プレート900と
図37のフィン940及び補強プレート950との組み合わせ、あるいは
図33のフィン910及び補強プレート920と
図37の接続プレート930とを組み合わせなど、適宜変形実施が可能ある。
【0073】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【0074】
また、例えば40フィートの建築ユニット構造体を運搬可能なトレーラーの荷台前方には、床梁の一部と干渉するグースネック部などと呼ばれる突出部があるため、建築ユニット構造体に前記突出部との干渉を回避した形状の床梁を接合しても良い。この場合、例えば第1,第2実施形態では、柱下端の通しダイアフラムの上方に内ダイアフラムを増設し、前記突出部との干渉を回避した形状の床梁を通しダイアフラム及び内ダイアフラムに接合しても良い。
【0075】
また、図示していないが、最下層の建物ユニット構造体と基礎との連結として、基礎コンクリート内に埋め込まれた長いアンカーボルトに、最下層の建物ユニット構造体の下部接続板(フランジ)を固定することができる。こうすると、例えば高層で高重量な8階建て等の場合でも、基礎コンクリートが圧縮荷重により破壊されることを防止することができる。この際の施工は例えば次の通りとなる。先ず、アンカーボルトに螺合された第1ナットを調整して、第1ナット上に支持される水平プレートの水平度を確認する。次に、水平プレートを一旦取り外した後にモルタルを充填し、その後第1ナット上に再度水平プレートを設置する。この水平プレート上に、最下層の建物ユニット構造体の下部接続板(フランジ)を載置した後に、その下部接続板が第2ナットにより水平プレートに固定される。こうして、アンカーボルトに、最下層の建物ユニット構造体の下部接続板を固定することができる。
【符号の説明】
【0076】
1,100,200,300,400,500…建築ユニット構造体、10,110,210,310,410,510…床梁、20,120,220,320,420,520…天井梁、130,230,330,430,530…柱体、132,232,332,432,532…柱、134,334,434,534…通しダイアフラム、136、238…接続板、138,338,438,538…天井梁接続金具、40,140,240,340,440,540…床材、41,141,241,341,441,541…床面、50,150,250,350,450,550…天井材、51,151,251,351,451,551…天井面、234…下部通しダイアフラム、235,336,436,536…追加柱、236…上部通しダイアフラム、335,435,535…上部接続板、337,437,537…下部接続板、600…野縁、610A,610B…ランナー、700A,700B…固定具(スペーサー),800…固定具(アングル)、810…水平片、820…垂直片、900…接続プレート、910…フィン、920…補強プレート、930…接続プレート、940…フィン、950…補強プレート、A…階下/階上の境界面、H0~H5…室内空間高さ、h…階下の天井梁と階上の床梁との距離、L0~L5…床面と天井梁下の天井面との間の間隔