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特許7307514レースチャージャの制御装置およびこれを備えるレースチャージャ並びにレースチャージャの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】レースチャージャの制御装置およびこれを備えるレースチャージャ並びにレースチャージャの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B27L 5/02 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
B27L5/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022513702
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015449
(87)【国際公開番号】W WO2021205492
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000155182
【氏名又は名称】株式会社名南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓太
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-158204(JP,A)
【文献】特開昭60-176720(JP,A)
【文献】特開平06-293002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27L 5/00 - 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原木の外形形状を計測するための計測装置を備えると共に前記原木をベニヤレースに搬送可能なレースチャージャを制御するレースチャージャの制御装置であって、
前記計測装置によって計測された前記原木の前記外形形状に基づいて、前記原木を旋削するために適した旋削軸中心線を算定するプロセッサと、
所望の精度をもって前記外形形状の計測および前記旋削軸中心線の算定を行うために該外形形状の計測から前記旋削軸中心線の算定までに要する基準時間を記憶するメモリと、
を備え、
前記プロセッサは、前記原木のうち前記計測装置から前記ベニヤレースに向けて搬送される第1原木の前記外形形状および前記旋削軸中心線に基づいて、前記ベニヤレースによる該第1原木の旋削開始から旋削完了までに要する旋削時間を含む第1時間を算定すると共に、算定した該第1時間が前記基準時間以下の場合には、前記原木のうち新たに前記計測装置に供給される第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記基準時間で完了するよう前記計測装置に制御信号を出力し、算定した前記第1時間が前記基準時間よりも長い場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記第1時間で完了するよう前記計測装置に制御信号を出力する
レースチャージャの制御装置。
【請求項2】
前記メモリは、前記計測装置から前記ベニヤレースまで前記原木を搬送するために必要な搬送時間を記憶可能であり、
前記プロセッサは、前記第1時間として、前記第1原木の前記旋削時間と前記第1原木の前記搬送時間との差の絶対値を算定する
請求項1に記載のレースチャージャの制御装置。
【請求項3】
前記レースチャージャは、前記原木の仮外径を計測するよう前記原木の搬送方向において前記計測装置よりも上流に配置された仮外径計測部を有しており、
前記メモリは、前記搬送時間として前記仮外径と関連付けされた複数の搬送時間を記憶しており、
前記プロセッサは、前記第1時間として、前記第1原木の前記旋削時間と、前記第1原木の前記仮外径に対応する前記搬送時間と、の差の絶対値を算定する
請求項2に記載のレースチャージャの制御装置。
【請求項4】
前記計測装置は、前記原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部と、を有しており、
前記プロセッサは、算定した前記第1時間が前記基準時間以下の場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記基準時間で完了するべく第1回転速度で前記第2原木を回転するよう前記駆動部に制御信号を出力し、算定した前記第1時間が前記基準時間よりも長い場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記第1時間で完了するべく第1回転速度よりも遅い第2回転速度で前記第2原木を回転するよう前記駆動部に制御信号を出力する
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレースチャージャの制御装置。
【請求項5】
前記計測装置は、前記原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部と、前記一対の心出し用スピンドルの回転に伴って回転する前記原木が所望の回転角度回転される毎に前記外形形状を検出可能な位置に配置された検出部と、を有しており、
前記プロセッサは、算定した前記第1時間が前記基準時間以下の場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記基準時間で完了するべく第1回転角度毎に前記第2原木の前記外形形状を検出するよう前記検出部に検出信号を出力し、算定した前記第1時間が前記基準時間よりも長い場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記第1時間で完了するべく前記第1回転角度よりも小さな第2回転角度毎に前記第2原木の前記外形形状を検出するよう前記検出部に検出信号を出力する
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレースチャージャの制御装置。
【請求項6】
原木をベニヤレースに搬送可能なレースチャージャであって、
フレームと、
前記原木の外形形状を計測可能に前記フレームに配置された計測装置と、
該計測装置を制御するよう該計測装置に有線または無線で接続された請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレースチャージャの制御装置と、
を備えるレースチャージャ。
【請求項7】
原木の外形形状を計測するための計測装置を備えると共に前記原木をベニヤレースに搬送可能なレースチャージャを制御するレースチャージャの制御方法であって、
(a)所望の精度をもって前記原木の前記外形形状の計測および前記原木の旋削に適した旋削軸中心線の算定を行うために前記外形形状の計測から前記旋削軸中心線の算定までに要する基準時間を記憶し、
(b)前記計測装置によって計測された前記原木の前記外形形状に基づいて前記原木の旋削に適した旋削軸中心線を算定し、
(c)前記原木のうち前記計測装置から前記ベニヤレースに向けて搬送される第1原木の前記外形形状および前記旋削軸中心線に基づいて、前記ベニヤレースによる該第1原木の旋削開始から旋削完了までに要する旋削時間を含む第1時間を算定すると共に、
(d)算定した該第1時間が前記基準時間以下の場合には、前記原木のうち新たに前記計測装置に供給される第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記基準時間で完了するよう前記計測装置を制御し、算定した前記第1時間が前記基準時間よりも長い場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記第1時間で完了するよう前記計測装置を制御する
レースチャージャの制御方法。
【請求項8】
前記計測装置から前記ベニヤレースまで前記原木を搬送するために必要な搬送時間を記憶するステップをさらに備え、
前記ステップ(c)は、前記第1時間として、前記第1原木の前記旋削時間と前記第1原木の前記搬送時間との差の絶対値を算定するステップである
請求項7に記載のレースチャージャの制御方法。
【請求項9】
前記計測装置は、前記原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部を有しており、
前記ステップ()は、算定した前記第1時間が前記基準時間以下の場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記基準時間で完了するべく第1回転速度で前記第2原木を回転するよう前記駆動部を制御し、算定した前記第1時間が前記基準時間よりも長い場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記第1時間で完了するべく前記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で前記第2原木を回転するよう前記駆動部を制御する
請求項7または8に記載のレースチャージャの制御方法。
【請求項10】
前記計測装置は、前記原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部と、前記一対の心出し用スピンドルの回転に伴って回転する前記原木が所望の回転角度回転される毎に該原木の外形形状を計測可能な位置に配置された検出部と、を有しており、
前記ステップ()は、算定した前記第1時間が前記基準時間以下の場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記基準時間で完了するべく第1回転角度毎に前記第2原木の前記外形形状を計測するよう前記検出部を制御し、算定した前記第1時間が前記基準時間よりも長い場合には、前記第2原木の前記外形形状の計測から該第2原木の前記旋削軸中心線の算定までを前記第1時間で完了するべく前記第1回転角度よりも小さな第2回転角度毎に前記第2原木の前記外形形状を計測するよう前記検出部を制御する
請求項7ないし9のいずれか1項に記載のレースチャージャの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原木の外形形状を計測する計測装置を備えると共に原木をベニヤレースに搬送可能なレースチャージャを制御するレースチャージャの制御装置およびこれを備えるレースチャージャ並びにレースチャージャの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4594643号公報(特許文献1)には、レースチャージャを制御するレースチャージャの制御装置が記載されている。当該レースチャージャは、原木を挟持可能な一対の仮回転軸と、当該一対の仮回転軸を回転可能なモータと、原木の外形形状を計測する計測器と、を備えている。そして、レースチャージャの制御装置は、原木の外形形状を計測するために一対の仮回転軸を回転するようモータを制御すると共に、計測器によって計測された当該外形形状に基づいて原木の旋削に適した旋削軸中心線を算定する。当該レースチャージャの制御装置によれば、原木の旋削に適した旋削軸中心線を精度よく計測できるため、ベニヤレースが原木から単板を旋削する際に、連続した状態の単板を有効に収得することができる。これにより、単板の歩留まりが向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4594643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単板の歩留まりの更なる向上という観点においては、原木の外形形状の計測から旋削軸中心線の算定までに要する時間を長くして、外形形状の計測精度および旋削軸中心線の算定精度の向上を図ることが望まれる。一方で、原木の外形形状の計測から旋削軸中心線の算定までに要する時間を長くすると、外形形状の計測精度および旋削軸中心線の算定精度を向上することはできるが、ベニヤレースへ原木を供給するまでの時間が長くなり、ベニヤレースに作業待ちの時間が発生して、作業能率の低下を招く場合がある。原木の外形形状の計測精度および旋削軸中心線の算定精度をある程度犠牲にして、外形形状の計測から旋削軸中心線の算定までに要する時間の短縮を図り、作業能率を向上させることも考えられるが、ベニヤレースに新たな原木を供給する際に、当該新たな原木とベニヤレースの刃との干渉回避のためにベニヤレースを退避させる移動距離を、安全を見て大きく設定する必要があり、原木の旋削開始に際してベニヤレースの刃を原木に接触させるまでのベニヤレースの移動距離が大きくなって、原木の旋削開始までのロスタイムが増大するため、返って作業能率の低下を招く場合もある。このように、上述した公報に記載のレースチャージャは、単板の歩留まりの更なる向上という点において、なお改良の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、作業能率の低下を招くことなく、単板の歩留まりの更なる向上を図ることができるレースチャージャの制御装置およびこれを備えるレースチャージャ並びにレースチャージャの制御方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレースチャージャの制御装置およびこれを備えるレースチャージャ並びにレースチャージャの制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明に係るレースチャージャの制御装置の好ましい形態によれば、原木の外形形状を計測するための計測装置を備えると共に原木をベニヤレースに搬送可能なレースチャージャを制御するレースチャージャの制御装置が構成される。当該レースチャージャの制御装置は、計測装置によって計測された原木の外形形状に基づいて原木の旋削に適した旋削軸中心線を算定するプロセッサと、基準時間を記憶するメモリと、を備えている。基準時間は、所望の精度をもって外形形状の計測および旋削軸中心線の算定を行うために外形形状の計測から旋削軸中心線の算定までに要する時間である。プロセッサは、第1時間を算定する。第1時間は、原木のうち計測装置からベニヤレースに向けて搬送される第1原木の外形形状および旋削軸中心線に基づいて、ベニヤレースによる第1原木の旋削開始から旋削完了までに要する旋削時間を含む時間である。そして、プロセッサは、算定した第1時間が基準時間以下の場合には、原木のうち新たに計測装置に供給される第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するように計測装置に制御信号を出力する。一方、算定した第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するように計測装置に制御信号を出力する。ここで、本発明における「原木の外形形状を計測するための計測装置」とは、実際に原木の外形形状を計測する機器・装置(例えば、センサなど)のみならず、当該機器・装置(例えば、センサなど)を用いて原木の外形形状を計測する際に作動する機器・装置(例えば、軸受箱や心出し用スピンドルなど)を含む概念である。また、本発明における「旋削時間を含む第1時間」には、旋削時間のみ、即ち、旋削時間と第1時間とが等しい態様を好適に包含する。
【0008】
本発明によれば、第1原木の旋削時間を含む第1時間が基準時間よりも長い場合には、新たに計測装置に供給される第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するため 、第2原木の外形形状の計測精度および旋削軸中心線の算定精度の向上を図ることができる。一方、第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状の計測から旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するため、第2原木の外形形状の計測精度および旋削軸中心線の算定精度が低下することもない。なお、いずれの場合であっても、ベニヤレースの作業待ち時間は、減少することはあっても増加することはない。これにより、作業能率の低下を招くことなく、単板の歩留まりの更なる向上を図ることができる。
【0009】
本発明に係るレースチャージャの制御装置の更なる形態によれば、メモリは、計測装置からベニヤレースまで原木を搬送するために必要な搬送時間を記憶可能である。そして、プロセッサは、第1時間として、第1原木の旋削時間と第1原木の搬送時間との差の絶対値を算定する。
【0010】
本形態によれば、旋削時間に加えて搬送時間をも考慮した第1時間を基準時間と比較して、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までの計測時間を決定するため、ベニヤレースの作業待ち時間をより一層減少することができる。
【0011】
本発明に係るレースチャージャの制御装置の更なる形態によれば、レースチャージャは、原木の仮の外径を測定するように当該原木の搬送方向において計測装置よりも上流に配置された仮外径計測部を有している。また、メモリは、搬送時間として原木の仮外径と関連付けされた複数の搬送時間を記憶している。そして、プロセッサは、第1時間として、算定した第1原木の前記旋削時間と、仮外径検出部により測定された第1原木の仮外径に対応する搬送時間と、の差の絶対値を算定する。
【0012】
本形態によれば、例えば、搬送時間を原木の仮外径が大きいほど長くなるように設定しておくことによって、原木の仮外径に関わらず一定の搬送時間で原木を搬送する構成に比べて、原木を搬送する際の搬送方向に関する慣性力の振れ幅を低減することができる。これにより、安定した原木の搬送を実現することができると共に、搬送に際し装置に掛かる負担の軽減を図ることができる。
【0013】
本発明に係るレースチャージャの制御装置の更なる形態によれば、計測装置は、原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、当該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部を有している。そして、プロセッサは、算定した第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するべく第1回転速度で第2原木を回転するように駆動部に制御信号を出力する。一方、プロセッサは、算定した第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するべく第1回転速度よりも遅い第2回転速度で第2原木を回転するように駆動部に制御信号を出力する。
【0014】
本形態によれば、一対の心出し用スピンドルにより原木を回転することによって、原木の外形形状を計測する態様の計測装置において、第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木を第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させながら当該第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度を向上することができる。一方で、第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状を所望の精度をもって計測可能な第1回転速度で第2原木を回転させながら当該第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度が低下することはない。
【0015】
本発明に係るレースチャージャの制御装置の更なる形態によれば、計測装置は、原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、当該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に当該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部と、一対の心出し用スピンドルの回転に伴って回転する原木が所望の回転角度回転される毎に当該原木の外形形状を計測可能な位置に配置された検出部と、を有している。そして、プロセッサは、算定した第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するべく第1回転角度毎に第2原木の外形形状を検出するように検出部に検出信号を出力する。一方、プロセッサは、算定した第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するべく第1回転角度よりも小さな第2回転角度毎に第2原木の外形形状を検出するように検出部に検出信号を出力する。
【0016】
本形態によれば、一対の心出し用スピンドルにより原木を回転することによって、原木の外形形状を計測する態様の計測装置において、第1時間が基準時間よりも長い場合には、第1回転角度よりも小さい第2回転角度毎に第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度を向上することができる。一方で、第1時間が基準時間以下の場合には第2原木の外形形状を所望の精度をもって計測可能な第1回転角度毎に第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度が低下することはない。
【0017】
本発明に係るレースチャージャの好ましい形態によれば、原木をベニヤレースに搬送可能なレースチャージャが構成される。当該レースチャージャは、フレームと、原木の外形形状を計測可能にフレームに配置された計測装置と、計測装置を制御するよう当該計測装置に有線または無線で接続された上述のいずれかの態様の本発明のレースチャージャの制御装置と、を備えている。
【0018】
本発明によれば、上述のいずれかの態様の本発明のレースチャージャの制御装置が奏する作用効果と同様の作用効果、例えば、作業能率の低下を招くことなく、単板の歩留まりの更なる向上を図ることができるという作用効果を奏することができる。
【0019】
本発明に係るレースチャージャの制御方法の好ましい形態によれば、原木の外形形状を計測するための計測装置を備えると共に原木をベニヤレースに搬送可能なレースチャージャを制御するレースチャージャの制御方法が構成される。当該レースチャージャの制御方法は、(a)所望の精度をもって原木の外形形状の計測および原木の旋削に適した旋削軸中心線の算定を行うために外形形状の計測から旋削軸中心線の算定までに要する基準時間を記憶し、(b)計測装置によって計測された原木の外形形状に基づいて原木の旋削に適した旋削軸中心線を算定し、(c)原木のうち計測装置からベニヤレースに向けて搬送される第1原木の外形形状および旋削軸中心線に基づいて、ベニヤレースによる第1原木の旋削開始から旋削完了までに要する旋削時間を含む第1時間を算定すると共に、(d)算定した第1時間が基準時間以下の場合には、原木のうち新たに計測装置に供給される第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するように計測装置を制御し、算定した第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するように計測装置を制御する。ここで、本発明における「原木の外形形状を計測するための計測装置」とは、実際に原木の外形形状を計測する機器・装置(例えば、センサなど)のみならず、当該機器・装置(例えば、センサなど)を用いて原木の外形形状を計測する際に作動する機器・装置(例えば、軸受箱や心出し用スピンドルなど)を含む概念である。また、本発明における「旋削時間を含む第1時間」には、旋削時間のみ、即ち、旋削時間と第1時間とが等しい態様を好適に包含する。
【0020】
本発明によれば、第1原木の旋削時間を含む第1時間が基準時間よりも長い場合には、新たに計測装置に供給される第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するため 、第2原木の外形形状の計測精度および旋削軸中心線の算定精度の向上を図ることができる。一方、第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状の計測から旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するため 、第2原木の外形形状の計測精度および旋削軸中心線の算定精度が低下することもない。なお、いずれの場合であっても、ベニヤレースの作業待ち時間は、減少することはあっても増加することはない。これにより、作業能率の低下を招くことなく、単板の歩留まりの更なる向上を図ることができる。
【0021】
本発明に係るレースチャージャの制御方法の更なる形態によれば、計測装置からベニヤレースまで原木を搬送するために必要な搬送時間を記憶するステップをさらに備えている。そして、ステップ(c)は、第1時間として、第1原木の旋削時間と第1原木の搬送時間との差の絶対値を算定するステップである。
【0022】
本形態によれば、旋削時間に加えて搬送時間をも考慮した第1時間を基準時間と比較して、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までの計測時間を決定するため、ベニヤレースの作業待ち時間をより一層減少することができる。
【0023】
本発明に係るレースチャージャの制御方法の更なる形態によれば、計測装置は、原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、当該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に当該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部を有している。そしてステップ(e)は、算定した第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するべく第1回転速度で第2原木を回転するように駆動部を制御し、算定した第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するべく第1回転速度よりも遅い第2回転速度で第2原木を回転するように駆動部を制御する。
【0024】
本形態によれば、一対の心出し用スピンドルにより原木を回転することによって、原木の外形形状を計測する態様の計測装置において、第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木を第1回転速度よりも遅い第2回転速度で回転させながら当該第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度を向上することができる。一方で、第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状を所望の精度をもって計測可能な第1回転速度で第2原木を回転させながら当該第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度が低下することはない。
【0025】
本発明に係るレースチャージャの制御方法の更なる形態によれば、計測装置は、原木の両木口面を挟持可能な一対の心出し用スピンドルと、当該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方に接続されると共に当該一対の心出し用スピンドルの少なくとも一方を回転可能な駆動部と、一対の心出し用スピンドルの回転に伴って回転する原木が所望の回転角度回転される毎に当該原木の外形形状を計測可能な位置に配置された検出部と、を有している。そして、ステップ(e)は、算定した第1時間が基準時間以下の場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを基準時間で完了するべく第1回転角度毎に第2原木の外形形状を計測するように検出部を制御し、算定した第1時間が基準時間よりも長い場合には、第2原木の外形形状の計測から当該第2原木の旋削軸中心線の算定までを第1時間で完了するべく第1回転角度よりも小さな第2回転角度毎に第2原木の外形形状を計測するように検出部を制御する。
【0026】
本形態によれば、一対の心出し用スピンドルにより原木を回転することによって、原木の外形形状を計測する態様の計測装置において、第1時間が基準時間よりも長い場合には、第1回転角度よりも小さい第2回転角度毎に第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度を向上することができる。一方で、第1時間が基準時間以下の場合には第2原木の外形形状を所望の精度をもって計測可能な第1回転角度毎に第2原木の外形形状を計測するため、第2原木の外形形状の計測精度が低下することはない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、作業能率の低下を招くことなく、単板の歩留まりの更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係るレースチャージャ2を備える原木加工装置1の構成の概略を示す概略構成図である。
図2】原木回転装置20の構成の概略を示す概略構成図である。
図3】実施例の原木加工装置1の電子制御装置8により実行される心出し処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図4】原木PWの仮回転軸中心線を、第2受取位置にある心出し用スピンドル24a,24bの回転軸中心線に合致させるために、載置部42,42を移動させる必要がある距離L2の算定の詳細を示す説明図である。
図5】計測板50を用いて原木PWの外形形状を計測する態様を示す説明図である。
図6】変形例のレースチャージャ102を備える原木加工装置101の構成の概略を示す概略構成図である。
図7】実施例の原木加工装置1の電子制御装置8により実行される心出し処理ルーチンの別例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【0030】
本発明の実施の形態に係るレースチャージャ2を備える原木加工装置1は、原木PWを回転させながら切削(旋削)することにより、所定板厚を有する単板を製造する装置として構成されており、図1に示すように、本発明の実施の形態に係るレースチャージャ2と、レースチャージャ2よりも原木PWの搬送方向において下流側(図1における右側)に配置されたベニヤレース6と、装置全体をコントロールする電子制御装置8と、を備えている。
【0031】
本発明の実施の形態に係るレースチャージャ2は、図1に示すように、主に、フレーム10と、当該フレーム10に支持された原木回転装置20と、当該原木回転装置20よりも原木PWの搬送方向の上流側においてフレーム10に支持された仮心出し用搬送装置40と、当該仮心出し用搬送装置40よりも原木PWの搬送方向(図1における左右方向)において上流側(図1における左側)に配置された第1および第2搬入コンベヤ4a,4bと、原木回転装置20よりも原木PWの搬送方向の下流側においてフレーム10に支持された振り子搬送装置50と、から構成されている。
【0032】
フレーム10は、図1に示すように、下部フレーム12と、当該下部フレーム12上に配置された上部フレーム18,18と、を有している。下部フレーム12は、前側フレーム14と、原木PWの搬送方向において前側フレーム14よりも下流側に配置された後側フレーム15と、前側フレーム14および後側フレーム15を連結する中間フレーム16と、を有している。前側フレーム14および後側フレーム15は、床面に設置される図示しない底壁と、当該底壁から鉛直方向に延出した一対の縦壁14b,14b,15b,15bと、を有している。一対の縦壁14b,14b,15b,15bは、原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向および鉛直方向の両方に直交する方向に、互いに離れて配置されている。これにより、前側フレーム14および後側フレーム15は、原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向の一方側から見た場合に、略U字状を有している。
【0033】
前側フレーム14の縦壁14b,14bの上部であって、原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向の上流側の端面には、図1に示すように、連結梁13が取り付けられている。換言すれば、連結梁13によって縦壁14b,14bが連結されていると言うことができる。当該連結梁13には、原木PWを検知するセンサS1が設置されている。センサS1は、図1に示すように、鉛直方向において、仮心出し用搬送装置40が第2搬入コンベヤ4bから原木PWを受け取る位置(図1に記載の位置。以下、「第1受取位置」という。)と、仮心出し用搬送装置40が原木回転装置20の後述する心出し用スピンドル24a,24bに原木PWを受け渡す位置(以下、「第1受渡位置」という。)と、の間に配置されている。なお、センサS1は、当該センサS1から照射される光の光軸が、原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向の下流側を向くように設置されている。
【0034】
また、連結梁13には、延出片11が一体に取り付けられている。延出片11は、連結梁13の長手方向(原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向および鉛直方向の両方に直交する方向)のほぼ中央部に配置されている。また、延出片11は、原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向の上流側に向かって延出しており、原木PWを検知するセンサS2,S3が取り付けられている。延出片11は、図1に示すように、第1搬入コンベヤ4aと第2搬入コンベヤ4bとの境界部に達する長さを有している。
【0035】
センサS2は、図1に示すように、検知部が鉛直方向の下方向を向くように延出片11の先端部近傍に配置されている。これにより、センサS2が原木PWを検知したことによって、原木PWが第1搬入コンベヤ4aから第2搬入コンベヤ4bに受け渡されたことを知ることができる。また、センサS3は、検知部が第2搬入コンベヤ4bの原木PWを載置する載置面を含む平面に直交する方向を向くようにセンサS2よりも連結梁13寄りの位置に配置されている。当該センサS3が原木PWを検知してから検知しなくなるまでの搬送距離を測定することによって、第2搬入コンベヤ4bによる原木PWの搬送方向に沿う原木PWの直径を求めることができる。
【0036】
中間フレーム16は、図1に示すように、前側フレーム14の縦壁14b,14bの上部と、後側フレーム15の縦壁15b,15bの上部と、を連結している。これにより、下部フレーム12は、当該下部フレーム12を側方(原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向および鉛直方向の両方に直交する方向)から見た場合に、図1に示すように、略逆U字状を有している。また、中間フレーム16の上面は、前側および後側フレーム14,15の縦壁14b,14b,15b,15bの上面と面一となっている。前側フレーム14、中間フレーム16および後側フレーム15の上面には、図1に示すように、レールR1が設置されている。即ち、レールR1は、前側フレーム14から中間フレーム16を経て後側フレーム15まで、水平方向に連続して延在している。
【0037】
また、中間フレーム16には、図1に示すように、センサS4が取り付けられている。当該センサS4は、後述する軸受箱22a,22bが原木PWを振り子搬送装置50に受け渡す位置(以下、「第2受渡位置」という。)まで移動したことを検知するためのセンサである。なお、本実施の形態では、センサS4が軸受箱22a,22bを検知してから当該軸受箱22a,22bを検知しなくなったときに、軸受箱22a,22bの移動が完了したと判定される。
【0038】
上部フレーム18,18は、側方(原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向および鉛直方向の両方に直交する方向)から見た場合に、図1に示すように、略逆U字状を有しており、上部フレーム18,18の一端が前側フレーム14の縦壁14b,14bの上面に一体に接続されており、他端が後側フレーム15の縦壁15b,15bの上面に一体に接続されている。なお、上部フレーム18,18の一端は、縦壁14b,14bの上面のうち原木PWの搬送方向であって水平方向に沿う方向の最上流側に配置されている。
【0039】
また、上部フレーム18,18の一方の縦柱部18a,18aの高さ方向のほぼ中間部には、図1に示すように、連結梁17が水平に取り付けられている。換言すれば、連結梁17によって縦柱部18a,18aが連結されていると言うことができる。連結梁17には、原木PWの形状を計測するための複数のレーザ測長器17aが設置されている(図1には1つのみ記載)。レーザ測長器17aは、本発明における「計測装置」および「検出部」に対応する実施構成の一例である。
【0040】
複数のレーザ測長器17aは、原木PWの外周面までの距離を測定するセンサであり、連結梁17の長手方向(原木PWの搬送方向のうち水平方向に沿う方向および鉛直方向の両方に直交する方向)に沿って等間隔に配置されている。ここで、レーザ測長器17aは、レーザ測長器17aから照射されるレーザが、後述する軸受箱22a、22bが仮心出し用搬送装置40から原木PWを受け取る位置(以下、「第2受取位置」という。)にあるときの心出し用スピンドル24a,24bの回転軸中心線に直交するような角度をもって連結梁17に設置されている。
【0041】
原木回転装置20は、図2に示すように、レールR1上に配置された軸受箱22a,22bと、当該軸受箱22a,22bに回転可能かつ軸中心線方向に摺動可能に支持された心出し用スピンドル24a,24bと、当該心出し用スピンドル24aにタイミングベルトBELT1を介して接続されたモータM1と、心出し用スピンドル24a,24bの軸中心線方向の一方の端部に接続された図示しないシリンダロッドを有する流体シリンダCL1a,CL1bと、軸受箱22a,22bに接続された図示しないシリンダロッドを有する流体シリンダCL2a,CL2b(図1に流体シリンダCL2aのみ記載)と、から構成されている。原木回転装置20は、本発明における「計測装置」に対応する実施構成の一例である。
【0042】
軸受箱22a,22bは、図1に示すように、流体シリンダCL2a,CL2bによって、第2受取位置と、第2受渡位置と、の間でレールR1上を往復移動される。ここで、第2受取位置は、心出し用スピンドル24a,24bの回転軸中心線が、仮心出し用搬送装置40の後述する載置部42,42上に設定された基準線Bpを通る鉛直線と交差する位置として規定されている。また、第2受渡位置は、第2受取位置よりも原木PWの搬送方向の下流側に、本発明の実施の形態に係る原木加工装置1に供給される原木PWの直径のうち想定される最大直径よりも若干大きな距離離れた位置として規定されている。
【0043】
心出し用スピンドル24a,24bは、図2に示すように、互いに対向する状態で軸受箱22a,22bに支持されており、原木PWの両木口面(長手方向の両端面)を挟持するための図示しないチャックを先端部に有している。心出し用スピンドル24a,24bは、流体シリンダCL1a,CL1bによって、軸中心線方向に往復移動される。心出し用スピンドル24a,24bが互いに接近する方向に移動されることによって、原木PWを挟持可能であり、心出し用スピンドル24a,24bが互いに離れる方向に移動されることによって、原木PWの挟持が解除可能である。なお、本実施の形態では、心出し用スピンドル24aのみがモータM1によって回転駆動される。モータM1が心出し用スピンドル24aを回転駆動することによって、心出し用スピンドル24a,24bおよび原木PWが一体回転する。ここで、心出し用スピンドル24bは、図2に示すように、ベルトBELT2を介してロータリーエンコーダREに接続されている。これにより、心出し用スピンドル24a,24bの回転角度、即ち、原木PWの回転角度を検出することができる。この結果、原木PWを所望の回転角度に位置制御が可能である。モータM1は、本発明における「駆動部」に対応する実施構成の一例である。
【0044】
仮心出し用搬送装置40は、図1に示すように、原木回転装置20の鉛直方向下方に配置されている。より具体的には、仮心出し用搬送装置40は、当第2受取位置に配置された軸受箱22a,22bの鉛直方向の真下に配置されている。このように、仮心出し用搬送装置40を原木回転装置20の鉛直方向下方に配置する構成とすることにより、原木加工装置1が原木PWの搬送方向に大型化することを良好に抑制することができる。
【0045】
仮心出し用搬送装置40は、図1に示すように、第2搬入コンベヤ4bから搬入される原木PWを受け取り載置可能な載置部42,42を有しており、図示しないモータによって、載置部42,42が第1受取位置と第1受渡位置との間で往復移動される。なお、図示しないモータは、ロータリーエンコーダ(図示せず)を有しており、載置部42,42の鉛直方向の移動量を検出可能である。これにより、載置部42,42、即ち、原木PWを所望の鉛直方向の位置に位置制御が可能である。仮心出し用搬送装置40は、本発明における「仮外径計測部」に対応する実施構成の一例である。
【0046】
載置部42,42は、図4に示すように、鉛直方向上方に向かって開口する略V字の載置面42a,42aを有しており、当該載置面42a,42aに原木PWを当接させて当該原木PWを保持する。なお、本実施の形態では、載置面42a,42aのV字を構成する2つの平面の交線を、原木PWの後述する仮回転軸中心線を求める際の基準線Bpとして用いる構成としている。
【0047】
振り子搬送装置50は、図1に示すように、回転軸50aと、当該回転軸50aと一体回転可能に当該回転軸50を介して上部フレーム18,18に支持された一対の挟持アーム56,56と、回転軸50aに接続されたモータ(図示せず)と、を備えている。
【0048】
挟持アーム56,56は、原木PWの両木口面(長手方向の両端面)を挟持するための図示しないチャックを先端部に有している。挟持アーム56,56は、上述した図示しないモータが回転軸50aを回転したときに、当該回転軸50aを中心に回転(揺動)する。なお、当該モータ(図示せず)は、図示しないロータリーエンコーダを有しており、挟持アーム56,56を所望の回転角度に位置制御が可能である。また、挟持アーム56,56は、図示しないアクチュエータによって、互いに近付く方向および遠ざかる方向に移動可能であると共に、前述のアクチュエータとは異なるアクチュエータ(図示せず)によって、回転軸50aに近付く方向および遠ざかる方向に往復移動可能である。
【0049】
第1および第2搬入コンベヤ4a,4bは、図1に示すように、無端環状のチェーンが一対のスプロケットに巻き掛けられた構造を有しており、一方のスプロケットを図示しないモータなどによって回転することによりチェーンをスプロケットの回転方向に移動させながら原木PWを仮心出し用搬送装置40に搬入する。
【0050】
第1搬入コンベヤ4aは、図1に示すように、原木PWを載置する載置面が床面に対して平行となるように設置されている。第2搬入コンベヤ4bは、第1搬入コンベヤ4aの下流側端部から仮心出し用搬送装置40まで達する長さを有している。
【0051】
また、第2搬入コンベヤ4bは、第1搬入コンベヤ4a側から仮心出し用搬送装置40側に向かって上り傾斜を有するように設置されている。なお、第2搬入コンベヤ4bの仮心出し用搬送装置40側のスプロケットは、第1受取位置にある仮心出し用搬送装置40の載置面42a,42aよりも高い位置に設定されている。また、第2搬入コンベヤ4bのスプロケットを回転させるモータ(図示せず)は、図示しないロータリーエンコーダを有しており、原木PWを所望の位置に位置制御可能であると共に、当該ロータリーエンコーダが出力するパルスをカウントすることにより原木PWの搬送距離を計算可能である。
【0052】
ベニヤレース6は、図1に示すように、後側フレーム15の縦壁15b,15bに回転可能に支持された切削用スピンドル72a,72bと、縦壁15b,15bに取り付けられ,切削用スピンドル72a,72bの軸方向の一方の端部に接続された図示しないシリンダロッドを有する流体シリンダ(図示せず)と、切削用スピンドル72a,72bに挟持された原木PWに向かって前後進可能に後側フレーム15に配置されたナイフ74と、から構成されている。
【0053】
切削用スピンドル72a,72bは、互いに対向する状態、かつ、心出し用スピンドル24a,24bと平行となるように縦壁15b,15bに支持されている。また、切削用スピンドル72a,72bは、原木PWの両木口面(長手方向の両端面)を挟持するための図示しないチャックを先端部に有している。また、切削用スピンドル72a,72bは、軸中心線方向に往復移動可能である。切削用スピンドル72a,72bが互いに接近する方向に移動されることによって、原木PWの両木口面(長手方向の両端面)が挟持され、切削用スピンドル72a,72bが互いに離れる方向に移動されることによって、原木PWの両木口面(長手方向の両端面)の挟持が解除される。なお、本実施の形態では、切削用スピンドル72aのみが図示しないモータによって回転駆動される構成としており、モータ(図示せず)により切削用スピンドル72aが回転駆動されることによって、切削用スピンドル72a,72bおよび原木PWが一体回転する。
【0054】
ナイフ74は、後側フレーム15に対して水平方向に往復移動可能に配置された図示しない鉋台に取り付けられている。当該鉋台が切削用スピンドル72a,72bに挟持された原木PWに所定の速度で近付くことによって、原木PWから所望の厚さの単板が剥き出される。
【0055】
電子制御装置8は、CPU82を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU82の他に処理プログラムを記憶するROM84と、データを一時的に記憶するRAM86と、入出力ポートおよび通信ポートと、を備えている。電子制御装置8には、原木PWを検知するセンサS1,S2,S3からの検知信号や、軸受箱22a,22bが第2受渡位置に到達しことを検知するセンサS4からの検知信号、レーザ測長器17aからの原木PWの外周面までの距離、モータM1や図示しないモータ、ロータリーエンコーダRE、図示しないロータリーエンコーダからのパルスなどが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御装置8からは、第1および第2搬入コンベヤ4a,4bへの駆動信号や、流体シリンダCL1a,CL1b,CL2a,CL2bへの駆動信号、モータM1および図示しないモータへの駆動信号、ベニヤレース6への駆動信号(具体的には、切削用スピンドル72a,72bおよび図示しない鉋台への駆動信号)などが出力ポートを介して出力されている。CPU82は、本発明における「プロセッサ」に対応し、ROM84は、本発明における「メモリ」に対応する実施構成の一例である。
【0056】
次に、こうして構成された原木加工装置1の動作、特に、レースチャージャ2がベニヤレース6へ原木を供給する際の動作について説明する。図3は、本発明の実施の形態にかかる原木加工装置1の電子制御装置8により実行される心出し処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0057】
心出し処理が実行されると、電子制御装置8のCPUは、まず、原木回転装置20に原木PWが供給されたか否かの判定を行う(ステップS100)。原木回転装置20に原木PWが供給されたか否かの判定は、本実施の形態では、第2搬入コンベヤ4bから原木PWを受け取った載置部42,42の鉛直方向への移動量を検出することにより行う構成とした。具体的には、第1受取位置にある載置部42,42が鉛直方向の上方へ移動して、原木PWがセンサS1によって検知されてから、載置部42,42が距離L2(図4参照)を移動したか否かを判定する。即ち、距離L2は、原木PWの仮回転軸中心線を、第2受取位置にある原木回転装置20の心出し用スピンドル24a,24bの回転軸中心線に合致させるために、原木PWがセンサS1によって検知されてから載置部42,42を移動させる必要がある距離である。なお、距離L2は、本実施の形態では、載置部42,42を往復移動させる図示しないモータが有するロータリーエンコーダ(図示せず)から出力されるパルスを積算し、当該パルスの積算値を利用して算定する構成とした。距離L2は、次式(1)から(3)を用いて算出する。
【0058】
(数1)
L2=r+Hss・・・・・・・・・・(1)
r=Hbc・cosθ・・・・・・・・(2)
Hbc=Hs1-Hbp-r・・・・・(3)
【0059】
ここで、Hs1は、第1受取位置にある載置部42,42の基準線BpからセンサS1までの鉛直方向の高さであり、Hssは、センサS1から,軸受箱22a,22bが第2受取位置にあるときの心出し用スピンドル24a,24bの回転軸中心線までの鉛直方向の高さであり、θは、載置部42,42の載置面42a,42aの開き角の1/2であり、Hbpは、載置部42,42が第1受取位置から鉛直方向へ移動して原木PWがセンサS1によって検知されるまでの基準線Bpの移動距離であり、rは、2つの載置面42a,42aとセンサS1,S1からの照射される光の光軸との両方に接する原木PWの仮想半径であり、Hbcは、センサS1が原木PWを検知した際の載置部42,42上の基準線Bpから原木PWの仮回転軸中心線までの高さである(図4参照)。
【0060】
ステップS100で原木回転装置20に原木PWが供給されたと判定された場合には、原木PWの仮外径Rtおよび基準計測時間Tsを読み込む処理を実行する(ステップS102)。原木PWの仮外径Rtは、原木PWの仮想半径rを2倍した値である。また、基準計測時間Tsは、所望の精度をもって原木PWの外形形状(具体的には、原木PWの軸中心線に沿う方向において、レーザ測長器17aが配置された位置に対応する原木PWの周方向形状)の計測および原木PWの旋削軸中心線の算定を行うために、当該原木PWの外形形状を計測し始めてから旋削軸中心線の算定が完了するまでに要する時間であり、原木PWの外形形状を計測するための構造(本実施の形態では、レーザ測長器17aを用いて原木PWの外形形状を計測するため、当該レーザ測長器の性能)や電子制御装置8の性能を考慮して定められる。なお、原木PWの旋削軸中心線の算定は、本実施の形態では、以下の通りに実施される。即ち、複数のレーザ測長器17aから照射されるレーザによって、原木PWの軸中心線に沿う方向の複数個所において、後述する計測回転角度α毎に原木PWの外周までの距離を計測する。続いて、計測した距離と計測回転角度αとに基づいて、各箇所における原木PWの外形形状を概算する。そして、当該各外形形状を立体的に合成することによって、原木PWの立体形状を概算する。最後に、当該立体形状に適応する旋削軸中心線を求める。ここで、原木PWの計測回転角度αは、ロータリーエンコーダREにより検出することができる。
【0061】
原木PWの仮外径Rtおよび基準計測時間Tsを読み込むと、続いて、搬送時間Tcを選定すると共に(ステップS104)、フラグfを読み込む処理を実行し(ステップS106)、当該フラグfが値1であるか否かの判定を行う(ステップS108)。ここで、搬送時間Tcは、旋削軸中心線が算定された原木PWを第2受取位置から切削用スピンドル72a,72bまで搬送するために必要な時間であり、原木PWの仮外径Rtが基準外径Rt*以下の場合には、搬送時間Tc1が選定され、原木PWの仮外径Rtが基準外径Rt*より大きければ、搬送時間Tc1よりも長い搬送時間Tc2が選定される。搬送時間Tc1,Tc2は、本発明における「仮外径と関連付けされた複数の搬送時間」に対応する実施構成の一例である。
【0062】
このように、原木PWの仮外径Rtが基準外径Rt*よりも大きいときに、搬送時間Tcとして搬送時間Tc1よりも長い搬送時間Tc2を選定することにより、原木PWを搬送する際に生じる搬送方向に関する慣性力の振れ幅を低減することができる。これにより、原木PWの搬送の安定化を実現することができると共に、原木PWの搬送の際にレースチャージャ2に掛かる負担の軽減を図ることができる。なお、フラグfは、当該心出し処理ルーチンが実行されてから初めてステップS108の処理を実行する際には値0が設定され、それ以外では値1が設定される。
【0063】
ステップS108の判定において、フラグfが値1である場合、即ち、心出し処理ルーチンが実行されてからステップS108の処理を実行するのが初めてではない場合には、レースチャージャ6による原木PWの旋削時間Ttの算定を行う(ステップS110)。ここで、旋削時間Ttは、これから旋削軸中心線を計測する原木PWよりも前に既に旋削軸中心線が計測された原木PWの最大外径Rmaxと、旋削する板厚tと、切削用スピンドル72a,72bの回転速度Vと、に基づいて算定される。なお、最大外径Rmaxは、本実施の形態では、原木PWの旋削軸中心線の算定の際に求めた,原木PWの軸中心線に沿う方向の複数個所における外形形状から求まる複数の外径Rのうち最大のものを用いる構成とした。ここで、これから旋削軸中心線を計測する原木PWは、本発明における「第2原木」に対応し、これから旋削軸中心線を計測する原木PWよりも前に既に旋削軸中心線が計測された原木PWは、本発明における「第1原木」に対応する実施構成の一例である。
【0064】
そして、ステップS110において、旋削時間Ttが求まると、当該旋削時間Ttと搬送時間Tcとの差の絶対値(|Tt-Tc|)を算定する処理を実行すると共に(ステップS112)、算定した絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Ts以下であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS114)。絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Ts以下の場合には、原木PWの外形形状の計測し始めから原木PWの旋削軸中心線の算定完了までの時間Tm(以下、「旋削軸中心線計測時間Tm」という。)を基準計測時間Tsに設定する(ステップS116)。絶対値(|Tt-Tc|)は、本発明における「第1時間」に対応する実施構成の一例である。
【0065】
続いて、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsに設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsに設定する(ステップS118)。ここで、基準回転速度Wsは、原木PWの外形形状を計測し始めてから旋削軸中心線の算定完了までを基準計測時間Tsで完了可能な回転速度として定められている。また、計測回転角度αは、レーザ測長器17aによる原木PWの外形形状の検出タイミングとして用いられるものである。さらに、基準計測回転角度αsは、所望の精度をもって原木PWの外形形状を計測するために、最低限必要なデータ数を確保できる角度として定められるものである。基準回転速度Wsは、本発明における「第1回転速度」に対応し、基準計測回転角度αsは、本発明における「第1回転角度」に対応する実施構成の一例である。
【0066】
一方、絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Tsよりも長い場合には、旋削軸中心線計測時間Tmを当該絶対値(|Tt-Tc|)に設定する(ステップS120)。続いて、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsよりも遅い回転速度(W×Ts/Tm)に設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定する(ステップS122)。基準回転速度Wsよりも遅い回転速度(W×Ts/Tm)は、本発明における「第2回転速度」に対応し、基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)は、本発明における「第2回転角度」に対応する実施構成の一例である。
【0067】
このように、本実施の形態では、絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Tsより長い場合、即ち、旋削軸中心線計測時間Tmとして基準計測時間Tsよりも長い時間を掛けることができる場合には、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsよりも遅い回転速度(Ws×Ts/Tm)に設定すると共に、計測回転角度αを基準計測時間αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定するのである。
【0068】
なお、回転速度Wは、遅いほど精度よく原木PWの外形形状を計測することができる。また、計測回転角度αは、小さいほど多くのデータ数を計測することができるため、原木PWの外形形状の計測精度を向上することができる。しかしながら、回転速度Wの低下およびデータ数の増加は、原木PWの旋削軸中心線の算定に要する時間の増大を引き起こす。本実施の形態では、旋削軸中心線計測時間Tmとして基準計測時間Tsよりも長い時間を掛けることができる場合にのみ、旋削軸中心線計測時間Tm(=|Tt-Tc|)内で、原木PWの外形形状の計測および原木PWの旋削軸中心線の算定が可能な範囲で、回転速度Wを基準回転速度Wsよりも遅い速度(Ws×Ts/Tm)に設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定する。したがって、ベニヤレース6が、原木PWの旋削作業を終えてから新たな原木PWを受け取るまでに掛かる時間(ベニヤレース6の作業待ち時間)を増加させることなく、原木PWの外形形状の計測精度および原木PWの旋削軸中心線の算定精度の向上を図ることができる。
【0069】
なお、ステップS108において、フラグfが値1であった場合、即ち、心出し処理ルーチンが実行されてから初めてステップS108の処理を実行する場合には、フラグfを値1に設定すると共に(ステップS124)、旋削軸中心線計測時間Tmとして基準計測時間Tsを設定する(ステップS116)。続いて、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsに設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsに設定する(ステップS118)。
【0070】
こうして回転速度Wおよび計測回転角度αを設定した後、原木PWの外形形状を計測し始めてから旋削軸中心線の算定までを、当該設定した旋削軸中心線計測時間Tmで完了するように、駆動モータMに回転速度指令Wを出力すると共に、レーザ測長器17aに計測回転角度指令αを出力する(ステップS126)。
【0071】
そして、単板を旋削する作業が終了したか否かを判定する(ステップS128)。ここで、単板を旋削する作業が終了したか否かの判定は、原木加工装置1による単板の旋削作業を終了するものとして、当該原木加工装置1の電源、具体的には、レースチャージャ2やベニヤレース6の電源がオフされたか否かを検知することにより行うことができる。
【0072】
単板を旋削する作業が終了した場合には、フラグfを値0にリセットして(ステップS130)、本処理ルーチンを終了する。一方、単板を旋削する作業が終了しない場合には、ステップS100に戻って、単板を旋削する作業が終了するまで本処理ルーチンを繰り返し実行する。
【0073】
以上説明した本発明の実施の形態に係る原木加工装置1によれば、原木PWの旋削時間Ttと、当該原木PWの搬送時間Tcと、の差の絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Tsよりも長い場合、即ち、旋削軸中心線計測時間Tmとして基準計測時間Tsよりも長い時間を掛けることができる場合には、旋削軸中心線計測時間Tmを当該絶対値(|Tt-Tc|)に設定する。そして、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsよりも遅い速度(Ws×Ts/Tm)に設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定する。これにより、原木PWの外形形状の計測精度および原木PWの旋削軸中心線の算定精度の向上を図ることができる。一方、絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Ts以下の場合、即ち、旋削軸中心線計測時間Tmとして基準計測時間Tsよりも長い時間を掛けることができない場合には、旋削軸中心線計測時間Tmを基準計測時間Tsに設定して、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsに設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsに設定するため、原木PWの外形形状の計測精度および原木PWの旋削軸中心線の算定精度が低下することはない。なお、いずれの場合であっても、ベニヤレース6の作業待ち時間は、減少することはあっても増加することはない。これにより、作業能率の低下を招くことなく、単板の歩留まりの更なる向上を図ることができる。
【0074】
また、本発明の実施の形態に係る原木加工装置1によれば、原木PWの仮外径Rtの大きさによって搬送時間Tcを変更する構成、具体的には、原木PWの仮外径Rtが基準外径Rt*以下の場合には、搬送時間Tc1を選定し、原木PWの仮外径Rtが基準外径Rt*より大きければ、搬送時間Tc1よりも長い搬送時間Tc2を選定する構成であるため、原木PWを搬送する際の搬送方向に関する慣性力の振れ幅を抑制することができる。これにより、原木PWの搬送の安定化を実現することができると共に、原木PWの搬送の際にレースチャージャ2に掛かる負担の軽減を図ることができる。
【0075】
本実施の形態では、原木PWの旋削時間Ttと、当該原木PWの搬送時間Tcと、の差の絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Tsよりも長い場合に、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsよりも遅い速度(Ws×Ts/Tm)に設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定する構成としたが、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wのみを基準回転速度Wsよりも遅い速度(Ws×Ts/Tm)に設定する構成や、計測回転角度αのみを基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定する構成としても良い。
【0076】
本実施の形態では、レーザ測長器17によって原木PWの外形形状を計測する構成に本発明を適用したが、これに限らない。例えば、図5に示すように、フレーム10に揺動可能かつ心出し用スピンドル24a,24bに挟持された原木PWに当接可能に配置された計測板50を用いて原木PWの外形形状を計測する構成に本発明を適用しても良い。この場合、原木PWの旋削時間Ttと、当該原木PWの搬送時間Tcと、の差の絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Tsよりも長い場合には、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsよりも遅い速度(Ws×Ts/Tm)に設定すると共に、計測板50による計測回転角度αを基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定する一方、絶対値(|Tt-Tc|)が基準計測時間Ts以下の場合には、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsに設定すると共に、計測板50による計測回転角度αを基準計測回転角度αsに設定すれば良い。
【0077】
本実施の形態では、原木回転装置20が第2受取位置と第2受渡位置との間で往復移動可能な構成に本発明を適用したが、これに限らない。例えば、図6に例示する変形例のレースチャージャ102に適用しても良い。なお、レースチャージャ102は、原木回転装置120が原木PWの搬送方向に移動しない構成(第2受取位置に固定)とされていると共に、振り子搬送装置50がフレーム10に固定された原木回転装置120とベニヤレース6との間で搖動可能な構成とされている点を除いて本実施の形態のレースチャージャ2と同一の構成を有している。即ち、レースチャージャ102は、フレーム10に固定された原木回転装置120からベニヤレース6まで振り子搬送装置50によって原木PWを搬送する構成である。なお、原木加工装置120は、第2受取位置と第2受渡位置との間で往復移動しない点を除いて上述した本実施の形態の原木回転装置20と同一の構成を有している。
【0078】
本実施の形態では、搬送時間Tcとして、搬送時間Tc1と、搬送時間Tc1よりも長い搬送時間Tc2と、の二つを設定したが、これに限らない。例えば、搬送時間Tcを三つ以上設定しても良い。この場合、原木PWの仮外径Rtの値に応じて、いずれか一つの搬送時間を選定すれば良い。
【0079】
本実施の形態では、旋削時間Ttと搬送時間Tcとの差の絶対値(|Tt-Tc|)を基準計測時間Tsと比較して、旋削軸中心線計測時間Tmを設定したが、搬送時間Tcは考慮せず、旋削時間Ttのみを基準計測時間Tsと比較して、旋削軸中心線計測時間Tmを設定しても良い。この場合、原木加工装置1の電子制御装置8によって、図7に例示する心出し処理ルーチンを実施することができる。図7の心出し処理ルーチンは、図3の心出し処理ルーチンのステップS104、S112を削除すると共に、図3の心出し処理ルーチンのステップS102、S114、S120をそれぞれステップS202、S214、S220に代えた点を除いて、図3の心出し処理ルーチンと同一の処理を行う。
【0080】
即ち、図7に示す心出し処理が実行されると、電子制御装置8のCPUは、まず、原木回転装置20に原木PWが供給されたか否かの判定を行い(ステップS100)、当該ステップS100で原木回転装置20に原木PWが供給されたと判定された場合に、基準計測時間Tsを読み込む処理を実行する(ステップS202)。続いて、フラグfを読み込むと共に(ステップS106)フラグfの値が1であるか否かの判定を行い(ステップS108)、フラグfが値1である場合に、レースチャージャ6による原木PWの旋削時間Ttの算定を行う(ステップS110)。そして、旋削時間Ttが基準計測時間Ts以下であるか否かを判定し(ステップS214)、絶旋削時間Ttが基準計測時間Ts以下の場合には、旋削軸中心線計測時間Tmを基準計測時間Tsに設定して(ステップS116)、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsに設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsに設定する(ステップS118)。一方、旋削時間Ttが基準計測時間Tsよりも長い場合には、旋削軸中心線計測時間Tmを当該旋削時間Ttがに設定して(ステップS220)、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsよりも遅い回転速度(W×Ts/Tm)に設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsよりも小さい角度(αs×Ts/Tm)に設定する(ステップS122)。
【0081】
なお、ステップS108において、フラグfが値1であった場合には、フラグfを値1に設定すると共に(ステップS124)、旋削軸中心線計測時間Tmとして基準計測時間Tsを設定し(ステップS116)、心出し用スピンドル24a,24bの回転速度Wを基準回転速度Wsに設定すると共に、計測回転角度αを基準計測回転角度αsに設定する(ステップS118)。
【0082】
こうして回転速度Wおよび計測回転角度αを設定した後、原木PWの外形形状を計測し始めてから旋削軸中心線の算定までを、当該設定した旋削軸中心線計測時間Tmで完了するように、駆動モータMに回転速度指令Wを出力すると共に、レーザ測長器17aに計測回転角度指令αを出力する(ステップS126)。そして、単板を旋削する作業が終了したか否かを判定し(ステップS128)、単板を旋削する作業が終了した場合には、フラグfを値0にリセットして(ステップS130)、本処理ルーチンを終了する。一方、単板を旋削する作業が終了しない場合には、ステップS100に戻って、単板を旋削する作業が終了するまで本処理ルーチンを繰り返し実行する。
【0083】
以上説明した図7の心出し処理ルーチンを実行することによっても、作業能率の低下を招くことなく、単板の歩留まりの更なる向上を図ることができるという作用効果を奏する。
【0084】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。
【符号の説明】
【0085】
1 原木加工装置
2 レースチャージャ(レースチャージャ)
4a 第1搬入コンベヤ
4b 第2搬入コンベヤ
6 ベニヤレース(ベニヤレース)
8 電子制御装置(レースチャージャの制御装置)
10 フレーム(フレーム)
11 延出片
12 下部フレーム
14 前側フレーム
13 連結梁
14b 縦壁
15 後側フレーム
15b 縦壁
16 中間フレーム
17 連結梁
17a レーザ測長器(計測装置、検出部)
18 上部フレーム
18a 縦柱部
20 原木回転装置(計測装置)
22a 軸受箱
22b 軸受箱
24a 心出し用スピンドル(心出し用スピンドル)
24b 心出し用スピンドル(心出し用スピンドル)
40 仮心出し用搬送装置(仮外径計測部)
42 載置部
42a 載置面
50 振り子搬送装置
50a 回転軸
56 挟持アーム
72a 切削用スピンドル
72b 切削用スピンドル
74 ナイフ
82 CPU(プロセッサ)
84 ROM(メモリ)
86 RAM
PW 原木
S1 センサ
S2 センサ
S3 センサ
S4 センサ
R1 レール
BELT1 タイミングベルト
BELT2 タイミングベルト
M1 モータ(駆動部)
CL1a 流体シリンダ
CL1b 流体シリンダ
CL2a 流体シリンダ
CL2b 流体シリンダ
Bp 基準線
Re ロータリーエンコーダ
Rt 原木PWの仮外径
Ts 基準計測時間(基準時間)
Tc 搬送時間(搬送時間)
Tc1 搬送時間(仮外径と関連付けされた複数の搬送時間)
Tc2 搬送時間(仮外径と関連付けされた複数の搬送時間)
Tt 旋削時間(旋削時間)
Rmax 原木PWの最大外径
t 旋削する板厚
V 切削用スピンドル72a,72bの回転速度
Tm 旋削軸心計測時間
W 心出し用スピンドル24a,24bの回転速度
Ws 心出し用スピンドル24a,24bの回転速度(第1回転速度)
α 計測回転角度(所望の回転角度)
αs 基準計測回転角度(第1回転角度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7