(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】リフトアップ式シェルター扉
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230705BHJP
B66F 7/06 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
E04H9/14 K
B66F7/06 Z
(21)【出願番号】P 2023049647
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-73856(JP,A)
【文献】特開2020-90876(JP,A)
【文献】国際公開第2022/181728(WO,A1)
【文献】特許第7137262(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
B66F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、
支柱を介して扉本体に接続する昇降台と、
一端が前記昇降台に、他端がシェルターの床にスライド可能に接続するパンタグラフ式のリンク機構と、
昇降方向に沿って延びる変位拘束レールと、
前記リンク機構の構成部材となるリンク部材同士が中間部で交差する中間交差部を軸支する軸支軸と、
前記リンク機構を駆動する駆動機構と、を備え、
前記軸支軸は前記変位拘束レールにスライド可能に接続し、
前記リンク機構を駆動させたとき、前記軸支軸、前記昇降台、および前記扉本体は同期して、昇降方向に沿って変位し、前記扉本体が前記開口部を開閉することを特徴とするリフトアップ式シェルター扉。
【請求項2】
前記変位拘束レールの一端は前記天井に固定され、他端は前記床に固定されることを特徴とする請求項1に記載のリフトアップ式シェルター扉。
【請求項3】
前記昇降台に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる上端スライド機構にスライド可能に接続し、前記床に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる下端スライド機構にスライド可能に接続することを特徴とする請求項1に記載のリフトアップ式シェルター扉。
【請求項4】
前記昇降台が前記天井の上面に達したとき、前記変位拘束レールに装着されたストッパーによって、前記軸支軸の上昇変位は拘束されることを特徴とする請求項3に記載のリフトアップ式シェルター扉。
【請求項5】
シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、
前記扉本体と所定間隔を維持できる状態で前記扉本体に接続する昇降台と、
一端が前記昇降台に、他端がシェルターの床にスライド可能に接続するパンタグラフ式のリンク機構と、
前記リンク機構を駆動する駆動機構と、
昇降方向に沿って延びる複数本で構成されるガイドレールと、
前記床に対向する状態で前記昇降台に接続する昇降台接続部と、を備え、
前記リンク機構を駆動したとき、前記昇降台接続部、前記昇降台、および前記扉本体は同期して、昇降方向に沿って変位し、前記扉本体が前記開口部を開閉することを特徴とするリフトアップ式シェルター扉。
【請求項6】
前記ガイドレールの一端は前記天井に固定され、他端は前記床に固定されることを特徴とする請求項5に記載のリフトアップ式シェルター扉。
【請求項7】
前記昇降台に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる昇降台スライド部にスライド可能に接続し、前記床に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる床スライド部にスライド可能に接続することを特徴とする請求項6に記載のリフトアップ式シェルター扉。
【請求項8】
前記昇降台が前記天井の上面まで上昇したとき、前記昇降台接続部は、前記天井に接触して前記昇降台の上昇を抑制することを特徴とする請求項7に記載のリフトアップ式シェルター扉。
【請求項9】
前記扉本体は、コンクリート製、鉄筋コンクリート製、コンクリートと鋼の合成構造のいずれかとなる重量扉であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のリフトアップ式シェルター扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内側に設けられるリフトアップ式昇降装置によって開閉するシェルター扉を備えたリフトアップ式シェルター扉に関する。
【背景技術】
【0002】
地下シェルターは、本体が地下に埋設されることから、津波、火災などの自然災害に対して極めて安全に避難できる施設である。また、放射線遮蔽性能を容易に高めることが可能であることから、核シェルターとしての利用も期待できる。
【0003】
しかし、地下シェルターの出入りは、重量のあるシェルター扉を開閉して、さらに昇降を伴うことが一般的である。重量のあるシェルター扉の開閉は、多大な労力を要すると考えられる。また、昇降は階段やタラップを利用するのが一般的であり、高齢者の方々や、歩行が不自由な方々には負担が大きなことも事実である。
【0004】
特許文献1は、パンタグラフ式のリフトを利用して人や物資の安全かつ容易で迅速な避難移動を可能にした防災地下シェルターが提案されている。この地下シェルターは、地上面から掘り込まれた埋設ピット内に設置されるシェルタードッグユニットと、シェルタードッグユニット地上出入口と地下シェルタードッグ地下出入口との間にエレベーターがパンタグラフ式リフト機構で構成されるエレベーター、およびエレベーターを駆動させる蓄電バッテリーが設けられている。さらに、蓄電池の全電力消費時又は商用電源の停電時に手動でクランクを回して空気濾過システムを作動させるバックアップ装置が設けられている。
【0005】
特許文献2は、上部が開放され、四方が壁から成る地下に埋設されたコンクリート製のシェルタードッグに連結した地下シェルターにおいて、シェルタードッグ内の内周寄りの床に固定された1本又は複数本のシェルターレールに沿って昇降駆動装置により上下移動ができる筐体を設けた地下シェルターが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-90876号公報
【文献】特開2014-198984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている発明は、地下シェルター内の地下空間に移動しようとすると、防水装甲ドアを開放してエレベーターに乗り込んだ後に、解放した防水装甲ドアを再び閉じてエレベーターで降下する手順を踏む必要がある。さらにエレベーターで降下した後に、中仕切りドアを開閉することを要する。上述のように、地上から地下空間への移動は多くの手順を踏む必要がある。また、防水装甲ドアは、爆風に伴う衝撃波・風圧・振動・放射線・爆弾の破片・ダスト・ガス・火災及び熱・電磁波・洪水に対し、内部を防護する性能を有するものであることから重量の重い扉であると考えられる。このような重量扉の開閉は、手足の不自由な方々にとっては大きな負担となる。特許文献2については、シェルタードッグそのものを昇降させる仕組みであることから、地下シェルターを構成するそれぞれの設備の大規模化は避けられない。
【0008】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、簡単な設備で容易に地上と地下シェルター間を往来できるリフトアップ式シェルター扉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、リフトアップ式シェルター扉であって、シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、支柱を介して扉本体に接続する昇降台と、一端が昇降台に、他端がシェルターの床にスライド可能に接続するパンタグラフ式のリンク機構と、昇降方向に沿って延びる変位拘束レールと、リンク機構の構成部材となるリンク部材同士が中間部で交差する中間交差部を軸支するとともに変位拘束レールにスライド可能に接続する軸支軸と、リンク機構を駆動する駆動機構とを備え、リンク機構を駆動させたとき、軸支軸、昇降台、および扉本体は同期して昇降方向に沿って変位し、扉本体が開口部を開閉することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、リンク機構を駆動させたとき、軸支軸、昇降台、および扉本体は同期して、昇降方向に沿って変位するので、昇降台の上昇・下降に伴って、扉本体はシェルターの天井に設けられる開口部を開放・閉鎖する。昇降台を開口部の高さまで上昇させて昇降台に乗り移り、その後、昇降台を降下させて開口部を扉本体で閉鎖することでシェルター内への避難が完了する。すなわち、昇降台を昇降する手順を遂行することのみで、避難者はシェルターに容易に避難できる。例えば、避難者がシェルターに避難するとき、あるいはシェルターから脱出するとき、施錠・解錠の動作を要しない。
【0011】
好ましくは、変位拘束レールの一端は天井に固定され、他端は床に固定されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、変位拘束レールは天井、および床の双方に固定されることで、剛性の増強を図ることができる。これにより、軸支軸、昇降台、および扉本体の円滑な昇降が可能となる。
【0013】
好ましくは、昇降台に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる上端スライド機構にスライド可能に接続し、床に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる下端スライド機構にスライド可能に接続することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、昇降中のそれぞれのリンク部材の応力変動は一定となる。これにより昇降台、および扉本体の円滑な昇降が可能となる。
【0015】
好ましくは、昇降台が天井の上面に達したとき、変位拘束レールに装着されたストッパーによって、軸支軸の上昇変位は拘束されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、昇降台が天井の上面に達したとき、変位拘束レールに装着されたストッパーによって、軸支軸の上昇変位は拘束されるので、特段の操作をすることなく昇降台と天井の上面をほぼ面一の状態とすることができる。これにより、昇降台から天井、あるいは天井から昇降台への移動は、段差を乗り越えることなく行い得る。
【0017】
上記課題を解決するための他の発明は、リフトアップ式シェルター扉であって、シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、扉本体と所定間隔を維持できる状態で扉本体に接続する昇降台と、一端が昇降台に、がシェルターの床にスライド可能に接続するパンタグラフ式のリンク機構と、リンク機構を駆動する駆動機構と、昇降方向に沿って延びる複数本で構成されるガイドレールと、床に対向する状態で昇降台に接続する昇降台接続部と、を備え、リンク機構を駆動機構により駆動させたとき、昇降台接続部、昇降台、および扉本体は同期して昇降方向に沿って変位し、扉本体が開口部を開閉することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、リンク機構を駆動させたとき、昇降台接続部、昇降台、および扉本体は同期して、昇降方向に沿って変位するので、昇降台の上昇・下降に伴って、扉本体はシェルターの天井に設けられる開口部を開放・閉鎖する。昇降台を開口部の高さまで上昇させて昇降台に乗り移り、その後、昇降台を降下させて開口部を扉本体で閉鎖することでシェルター内への避難が完了する。すなわち、昇降台を昇降する手順を遂行することのみで、避難者はシェルターに容易に避難できる。
【0019】
好ましくは、ガイドレールの一端は天井に固定され、他端は床に固定されることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ガイドレールは天井、および床の双方に固定されることで、剛性の増強を図ることができる。これにより、昇降台接続部、昇降台、および扉本体の円滑な昇降が可能となる。
【0021】
好ましくは、昇降台に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる昇降台スライド部にスライド可能に接続し、床に接するリンク部材の全ては、昇降方向と直交する方向であるスライド方向に延びる床スライド部にスライド可能に接続することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、昇降中のそれぞれのリンク部材が受ける応力変動は一定となる。これにより昇降台、および扉本体の円滑な昇降が可能となる。
【0023】
好ましくは、昇降台が天井の上面まで上昇したとき、昇降台接続部は、天井に接触して昇降台の上昇を抑制することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、昇降台が天井の上面まで上昇したとき、昇降台接続部は、天井に接触して昇降台の上昇を抑制するので、特段の操作をすることなく昇降台と天井の上面をほぼ面一の状態とすることができる。これにより、昇降台から天井、あるいは天井から昇降台への移動は、段差を乗り越えることなく行い得る。
【0025】
上述の扉本体は、コンクリート製、鉄筋コンクリート製、コンクリートと鋼の合成構造のいずれかとなる重量扉であることを特徴とする。
【0026】
扉本体を、コンクリート製、鉄筋コンクリート製、コンクリートと鋼の合成構造のいずれかとなる重量扉とすることで、その重量効果によって意図しない開閉を防止できる。さらに、強度を容易に高めることができるとともに、高い放射線遮蔽性能を容易に具備できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態1におけるリフトアップ式シェルター扉が開口部閉鎖する状態の正面断面図である。
【
図3】扉本体が開口部を閉鎖する状態の正面断面図である。
【
図4】軸支軸と変位拘束レールの関係を説明する部分平面断面図である。
【
図6】本実施形態2におけるリフトアップ式シェルター扉が開口部閉鎖する状態の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、
図1~5を参照して本発明のリフトアップ式シェルター扉1(以後、シェルター扉1と記す。)の実施形態1を詳述する。
【0029】
図1、2に示す通り、シェルター扉1は、シェルター100の天井101に設けられた開口部110を開閉するための扉本体10、支柱12を介して扉本体10に接続する昇降台20、昇降台20とシェルター100の床102に接続する伸縮変位可能なパンタグラフ式のリンク機構30、およびリンク機構30を動作するためのジャッキ40(駆動機構)、を備えている。さらに、リンク機構30が伸縮変位して扉本体10を昇降方向D1に昇降するための装置として、変位拘束レール50を備えている。シェルター100は一部または全部が地下120に設けられている、いわゆる地下シェルターである。
【0030】
シェルター扉1は、ジャッキ40を動作すると、リンク機構30が伸縮方向に変位し、これに伴い後述する軸支軸60、昇降台20および扉本体10が同期して昇降方向D1に上昇・下降して開口部110を開閉する仕組みとなっている。ジャッキ40においては、シリンダー40aの下端部が、床102に設けられた支持部102Aに回転可能に枢支され、シリンダー40aの上端部からはピストンロッド41が進退可能に変位する構成である。また、後述するように、扉本体10が上限位置で開口部110を開放した際、あるいは下限位置で開口部10を閉鎖した際、近接センサやリミットスイッチ(図示せず)などが作動する仕組みである。これにより、前述の上限位置および下限位置では、開口部110の開閉のために一旦動作させたジャッキ40を自動的に停止させるようにしている。なお、ジャッキ40の動作は、コンプレッサ(図示せず)を起動させて生じた空気圧によりピストンロッド41を進退変位させるものでもよい。
【0031】
扉本体10は、平面視矩形の平板であり、外縁上端部は突出して階段形状をなしている。また突出した部分の下面に、突出下面11が設けられている。一方で、開口部110は外縁下端部が突出して、扉本体10の外周部に対応する形状となる階段形状をなしている。また、また突出した部分の上面に、突出上面111が設けられている。突出上面111と突出下面11が接触することで、扉本体10の下降は制限されて、開口部110は扉本体10によって閉鎖される。突出下面11と突出上面111との間に生じる隙間の水密性能を向上させるために、突出下面11、あるいは突出上面111のいずれかにパッキン(図示略)を装着することが好ましい。
【0032】
扉本体10と天井101の厚さはほぼ同じであり、開口部110が扉本体10によって閉鎖されたとき、天井101の上面と扉本体10の上面は、ほぼ面一となっている。
【0033】
実施形態1における扉本体10は、鉄筋コンクリート製であるがこれに限るものではない、コンクリート製、鋼製、またコンクリートと鋼板の構成構造のいずれかであってもよい。また扉本体10の厚さとしては、20cm~40cmであることが好ましい。より好ましくは30cm~40cmである。これにより所定の放射線遮蔽性能を具備できる。
【0034】
昇降台20は、平面視矩形の平板であり、支柱12を介して扉本体10と接続している。支柱12は昇降台20の四隅に設けられて、昇降方向D1に延びており、扉本体10の四隅に接続している。スライド方向D2に列状に並ぶ支柱12と支柱12の間に、手摺13が設けられている。手摺13は、昇降時における昇降台20からの落下防止を目的としたものである。なお、スライド方向D2は昇降方向D1と直交する方向である。
【0035】
昇降台20は、一対のリンク機構30を介して床に接続している。一対のリンク機構30は昇降方向D1に延びる一対の変位拘束レール50に接続している。なお、リンク機構30は、一対のリンクがX字状構造で全体が伸縮変位可能に連結構成されるパンタグラフ構造である。ここでは、一対のリンク機構30、および一対の変位拘束レール50については一方のみについて詳述することとして、他方のリンク機構30、および変位拘束レール50については、一方のリンク機構30、および変位拘束レール50と同様であるので、その詳しい説明は省略する。
【0036】
リンク機構30は、X字状構造を一単位として昇降方向D1に3つ連続して積み重ねられたX字連鎖構造を有している。なお、一単位としてのX字状構造は1つでも、2つでもよいし、4つ以上であってもよく、その個数は使用状況などに応じて増減可能である。
【0037】
上段のX字状構造は、第1リンク部材31と第2リンク部材32を有している。第1リンク部材31と第2リンク部材32が交差する中間交差部に軸支軸60が挿通され、第1リンク部材31と第2リンク部材32は、互いに軸支軸60を支点として動可能に接続している。
【0038】
中段のX字状構造は、第3リンク部材33と第4リンク部材34を有している。第3リンク部材33と第4リンク部材34が交差する中間交差部に軸支軸60が挿通され、第3リンク部材33と第4リンク部材34は、互いに軸支軸60を支点として回動可能に接続している。
【0039】
下段のX字状構造は、第5リンク部材35と第6リンク部材36を有している。第5リンク部材35と第6リンク部材36が交差する中間交差部に軸支軸60が挿通され、第5リンク部材35と第6リンク部材36は、互いに軸支軸60を支点として回動可能に接続している。
【0040】
第1リンク部材31の下端部と第4リンク部材34の上端部は、端部軸支軸66を支点に回動可能に接続している。同様に、第2リンク部材32の下端部と第3リンク部材33の上端部は、端部軸支軸66を支点に、第3リンク部材33の上端部と第6リンク部材36の上端部は、端部軸支軸66を支点に、さらに、第4リンク部材34の下端部と第5リンク部材35の上端部は、端部軸支軸66を支点にそれぞれ回動可能に接続している。
【0041】
変位拘束レール50は、昇降方向D1に延びており、一端は天井101に、他端は床に固定されている。また、軸支軸60を挿入する変位拘束凸部55を有している。変位拘束凸部55は昇降方向D1に沿って延びている。一方、軸支軸60の端部に変位拘束凹部65が設けられている。変位拘束凹部65は変位拘束凸部55を覆う状態で変位拘束凸部55に嵌め込まれている。これにより、軸支軸60の移動方向は昇降方向D1のみに制限されて、軸支軸60は昇降方向D1方向に沿って移動する。
【0042】
変位拘束レール50の上端部にストッパー62が装着されている。軸支軸60が、ストッパー62に当接することでリンク機構30の上昇は制限される。なお、ストッパー62と軸支軸60との間には、圧縮コイルスプリングやゴム部材などの緩衝材を設け、ストッパー62に対する軸支軸60の当たりを緩和させてもよい。
【0043】
リンク機構30はジャッキ40を動作することで昇降方向D1に昇降する。ジャッキ40の一端は床102に、他端は連結バー45に回動可能に接続している。連結バー45は一対の第4リンク部材34同士を接続する棒部材である。なお、連結バー45の取付位置は第4リンク部材34に限るものではない。
【0044】
第5リンク部材35、および第6リンク部材36の下端部は、一対の下端スライド機構70を介して床102に沿ってスライド可能に接続している。同様に、第1リンク部材31、および第2リンク部材32の各上端部は、一対の上端スライド機構80を介して昇降台20の下面20aに沿ってスライド可能に接続している。
【0045】
図5に示す通り、下端スライド機構70は、スライドレール71と、スライド部材72を有している。スライドレール71は、スライド方向D2に延びるレールであり、床102に固定されている。スライド部材72は第5リンク部材35の下端部に回動可能に接続しており、スライドレール71を覆う状態でスライドレール71にスライド可能に嵌め込まれている。これにより、第5リンク部材35の下端部の移動方向はスライド方向D2のみに制限されて、スライド方向D2に沿って移動する。上端スライド機構80は、この構成とほぼ同じであることから説明は省略する。
【0046】
ジャッキ40の駆動に伴うリンク機構30による昇降について説明する。
【0047】
図1の状態では、昇降台20は支柱12を介して扉本体10を支持している。また、リンク機構30はそれぞれのリンク部材(31~36)に発生する軸力が同一となる状態で昇降台20を支持している。
【0048】
図1の状態から、ジャッキ40を駆動して、シリンダー40aからピストンロッド41を後退させると、そのロッド41の後退変位が軸支軸60に伝わるため、軸支軸60を引き下げて昇降方向D1に沿って下方に変位させる。これにより、リンク機構30が昇降方向D1に沿って縮小変位し、軸支軸60、昇降台20、および扉本体10は同期して下降するため、扉本体10の突出下面11が開口部110の突出上面111に降りて密着当接する(
図3参照)。この結果、扉本体10が開口部110を水密に覆って閉鎖し、ジャッキ40の駆動を停止する。この時に、関連するリンク部材(31~36)の作動を説明すると、第1リンク部材31および第2リンク部材32の上端部は上端スライド機構80によって移動方向が制限されて、スライド方向D2に沿って等距離に互いに遠ざかる方向に移動する。同様に、第5リンク部材35および第6リンク部材36の下端部は下端スライド機構70によって移動方向が制限されて、スライド方向D2に沿って等距離に互いに遠ざかる方向に移動する。第3リンク部材33および第4リンク部材34の移動についても、第1リンク部材31および第2リンク部材32の移動と同様である。それぞれのリンク部材(31~36)が、上述のように移動することで、昇降する過程で、昇降台20にそれぞれのリンク部材(31~36)に発生する軸力の変化割合は同一となる。これにより、扉本体10等の安定した昇降が可能となる。また、開口部110が閉鎖された状態から、ジャッキ40を駆動してピストンロッド41を進出させると、そのロッド41の進出変位が軸支軸60に伝わるため、軸支軸60を押し上げて昇降方向D1に沿って上方に変位させる。これにより、リンク機構30が昇降方向D1に沿って伸長変位し、軸支軸60、昇降台20、および扉本体10を同期して上昇させる(
図1参照)。このため、扉本体10の突出下面11が開口部110の突出上面111から離間する方向に引き上げられ、開口部110を開放してジャッキ40の駆動を停止する。
【0049】
図3の状態で、ジャッキ40の駆動を停止した状態を維持すると、扉本体10は、開口部を閉鎖した状態を維持し得る。すなわち、扉本体10の施錠は必ずしも必要とはならず、同様に開錠することも不要である。ただし、更なる安全性を確保するために、施錠機構を別途設けてもよい。
【0050】
図6を参照して、シェルター扉1の実施形態2について詳述する。実施形態1と実施形態2は共通する構成が含まれることから、主に異なる構成について説明する。また、実施形態1と同様の構成については同じ符号を付し、異なる構成については200番台の符号を付す。
【0051】
実施形態2は、昇降台20を昇降方向D1に沿って安定して昇降させるための装置として、スライド装置270を備えている。スライド装置270は、4本のガイドレール271と、4本のガイドレール271に沿ってスライド可能に接続する昇降台接続部221を有している。ガイドレール271は昇降方向D1に沿って延びるガイド凸部272を有する部材であり、一端は天井101に、他端は床102にそれぞれ固定されている。
【0052】
昇降台接続部221は、ガイド凸部272を覆う状態でガイドレール271にスライド可能に嵌め込まれるガイド凹部273を有している。ガイド凹部273がガイド凸部272に嵌め込まれることで、仮に昇降途中に不測の外力が負荷されたときでも、昇降台接続部221は昇降方向D1以外の移動は制限される。
【0053】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、実施形態1で説明した軸支軸60の変位を変位拘束レールで拘束する構成と、実施形態2で説明したスライド装置を併用してもよい。駆動機構40としては、ジャッキ40の代りに、電動モータ機構、油圧、空気圧、水圧シリンダーなどを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るリフトアップ式昇降装置は、歩行が困難で車椅子での移動を余儀なくされる方々も、容易に、しかも短時間にシェルターに避難できることから産業用の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0055】
1 :シェルター扉
10 :扉本体
20 :昇降台
30 :リンク機構
40 :ジャッキ(駆動機構)
50 :変位拘束レール
60 :軸支軸
62 :ストッパー
100 :シェルター
101 :天井
102 :床
110 :開口部
221 :昇降台接続部
271 :ガイドレール
D1 :昇降方向
D2 :スライド方向
【要約】
【課題】簡単な設備で容易に地上と地下シェルター間を往来できるリフトアップ式シェルター扉を提供する。
【解決手段】リフトアップ式シェルター扉1は、シェルター100の天井101に設けられる開口部110を開閉する扉本体10と、支柱12を介して扉本体10と所定間隔を維持できる状態で扉本体10に接続する昇降台20と、一端が昇降台20に、他端がシェルター100の床102にスライド可能に接続するパンタグラフ式のリンク機構30と、昇降方向D1に沿って延びる変位拘束レール50と、リンク機構30の構成部材となるリンク部材同士が中間部で交差する中間交差部を軸支するとともに変位拘束レール50にスライド可能に接続する軸支軸60と、リンク機構30を駆動する駆動機構40を備えている。駆動機構40を動作してリンク機構30を駆動させたとき、軸支軸60、昇降台20、および扉本体10は同期して、昇降方向D1に沿って変位する。
【選択図】
図1